JP3564119B2 - 植物中のビタミンu含量が高められた処理物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物中のビタミンU含量を高める方法に関する。さらに詳しくは、ビタミンUを含有する植物をメチオニン処理することを含む、植物中のビタミンU含量を高める方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
社会の多様化、複雑化が進み、現代人は、様々なストレスにさらされている。それに伴い、現代病の一つである胃潰瘍の罹患率が上昇している。胃潰瘍の原因としては、上記のストレスが主な原因として挙げられ、危険因子としては、暴飲暴食、菌による胃内感染、およびタバコ、強いアルコール飲料、コーヒーなどの摂取が挙げられる。これらの原因あるいは危険因子の回避は、個々の健康管理に依るところが多く、胃潰瘍を予防することは難しい。また、胃潰瘍は症状が現れるまでは気づかないことが多い。
【0003】
このような原因で生ずる胃潰瘍の対応策として、普段から食生活の中で予防を心がけることが好ましく、最近は抗潰瘍性作用を有するビタミンUの摂取が注目されている。ビタミンUは、古くから胃腸薬の成分として利用され、肝機能の改善効果や抗酸化性を有する物質としても知られている。
【0004】
ビタミンUを含有する植物としては、代表的にはキャベツが挙げられる。キャベツはよく口にする野菜であり、上記の抗潰瘍性効果を得るためには、生キャベツとして毎日200g〜500gの摂取が目安といわれている。しかし、この摂取量の達成は負担が大きい。
【0005】
一方、ビタミンUを含有する植物からビタミンUを抽出し、摂取する方法があるが、この場合はビタミンUの安定性が問題になる。すなわち、ビタミンUは、熱および高pHにより、非酵素的分解が促進される。したがって、従来のアミノ酸抽出法、例えば70%メタノールを用いる還流熱抽出では、熱分解が起こるため、ビタミンUを高濃度に含有する抽出液を得ることは難しい。このため、現在提供されているビタミンUの大半は、特開昭51−19111号公報などに記載されるように化学合成されたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況下、天然ビタミンUを高濃度に含有する食品が望まれている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、植物中のビタミンU含量を高める方法について鋭意検討したところ、ビタミンUを含有する植物をビタミンUの生合成に必須のメチオニンで処理することにより植物中のビタミンU含量が増加することを見出して本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、ビタミンUを含有する植物をメチオニン処理する工程を包含する、植物中のビタミンU含量を高める方法に関する。
【0009】
好ましい実施態様においては、上記メチオニン処理は、メチオニンを0.005重量%〜30重量%含有するメチオニン処理混合物中で行われる。
【0010】
さらに好ましい実施態様においては、上記メチオニン処理は、4℃〜50℃で行われる。
【0011】
別の好ましい実施態様においては、上記メチオニン処理は、さらに、乳酸菌を添加して行われる。
【0012】
さらに好ましい実施態様においては、上記ビタミンUを含有する植物は、キャベツである。
【0013】
本発明は、ビタミンUを含有する植物をメチオニン処理することによって得られる、ビタミンU含量が高められた処理物であって、該処理物のビタミンU含量が処理前の植物のビタミンU含量に比べて1.5倍以上である、処理物に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるビタミンUを含有する植物としては、キャベツ、赤キャベツ、紫キャベツ、ケール、カリフラワー、ブロッコリー、白菜、大根、ラディッシュ、カイワレ大根、ワサビなどのアブラナ科の植物;レタス、セロリー、セリ、パセリ、ニンジンなどのセリ科の植物;キュウリ、カボチャ、メロン、トウガン、スイカなどのウリ科の果実;玉ネギ、ニラ、ネギ、ニンニク、アスパラガスなどのユリ科の植物;チャノキ、トウチャ、アッサムチャ、ヒサカキなどのツバキ科の植物;などの他、浅草ノリ、ワカメ、コンブ、アラメ、テングサ、ヒジキなどの藻類;ミカン、ウメ、ブドウ、リンゴ、カキ、バナナ、ナシなどの果実類;などが挙げられる。これらの中で、アブラナ科のキャベツおよびブロッコリー、キク科のレタス、およびユリ科のネギなどが好適に用いられる。特にキャベツが好ましく用いられる。
【0015】
キャベツとしては、食用に用いられるキャベツであれば、種類を問わない。赤キャベツも、赤色を保ったまま発酵できるので好適に用いられ得る。キャベツの品種も特に限定されない。好ましくはビタミンU含量が、キャベツ100g当たり1mg〜30mgのものであり、さらに好ましくは1mg〜5mgのものである。
【0016】
これらのビタミンUを含有する植物の大きさは、特に限定されない。すなわち、まったく破砕しないもの;カッター、スライサーなどで処理した破砕物;ミキサー、ジューサー、ブレンダー、マスコロイダーなどで処理した粉砕物またはペースト;などでもよい。ビタミンUの生成効率の点から、一辺の長さが1mm〜10cm程度の固形状の破砕物が好ましい。
【0017】
本発明の方法では、メチオニン処理する場合にこれらのビタミンUを含有する植物を単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。あるいは処理後に、それぞれのメチオニン処理物を混合することもできる。
【0018】
以下、本発明の植物中のビタミンU含量を高める方法について説明する。本発明においては、ビタミンUを含有する植物をメチオニン処理する。ビタミンUを含有する植物を、ビタミンUの生合成に必要なメチオニンで処理することにより、植物中のビタミンU含量が増加する。ここで、メチオニン処理とは、ビタミンUを含有する植物とメチオニンあるいはメチオニンを豊富に含有する食品素材とを接触させ、所定の温度で所定の時間、放置または振盪することをいう。
【0019】
本発明に使用するメチオニンとしては、L−メチオニン、D−メチオニン、またはその混合物が挙げられる。メチオニンを豊富に含有する食品素材としては、例えば、カゼイン、牛乳、ヨーグルト、脱脂粉乳、チーズなどの乳製品;胚芽、大豆、米、大豆たんぱく質などの植物種子およびその加工品;牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉などの肉類およびこれらの加工品;卵白;などが挙げられる。
【0020】
ビタミンUを含有する植物のメチオニン処理においては、ビタミンUを含有する植物に、メチオニン粉末あるいはメチオニンを含有する食品素材を直接接触させてもよい。しかし、メチオニン処理を効率よく行うためには、所定のメチオニン濃度の溶液を調製し、ビタミンUを含有する植物を浸漬処理することが好ましい。メチオニンは、メチオニン処理混合物中に、好ましくは0.005重量%〜30重量%、さらに好ましくは0.01重量%〜10重量%含まれる。ここでメチオニン処理混合物とは、ビタミンUを含有する植物、メチオニンまたはメチオニンを含有する食品素材、および水を含む混合物をいう。
【0021】
ビタミンUを含有する植物とメチオニンまたはメチオニンを含有する食品素材と水とを混合する場合、特に順序に制限はない。すなわち、ビタミンUを含有した植物に水を加え、その後、メチオニンまたはメチオニンを含有する食品素材を添加してもよいし、あるいは、メチオニンまたはメチオニンを含有する食品素材と水を混合し、これをビタミンUを含有する植物に添加してもよい。なお、メチオニンを豊富に含む牛乳やヨーグルトをメチオニンとして使用する場合は、水を加えることなく、そのまま添加することができる。
【0022】
上記のようにして得られたメチオニン処理混合物に、静菌作用を目的として食塩を添加してもよい。食塩の代わりに、浸透圧調整作用を有する物質を添加することもできる。このような物質としては、浸透圧を高める糖類、例えば、ペントース(キシロース、アラビノース、リボースなど);澱粉のような還元性高分子炭水化物;乳糖;ガラクトース;などが用いられる。なお、還元性高分子炭水化物を用いる場合は、クロストリディウムなどの嫌気性菌あるいは腐敗菌などが生育してくる可能性があるので、使用には注意が必要である。添加する量は、浸透圧を考慮して決定すればよい。
【0023】
メチオニン処理混合物は、次いで、所定の温度、所定の時間で処理され得る。温度は、4℃〜50℃で行われる。時間の効率化を重視する場合は、20℃〜40℃が好ましく、メチオニン処理物または処理液の青臭みの除去などの品質面を重視する場合は、4℃〜10℃の低温で行うことが好ましい。ここで、メチオニン処理物とは、メチオニン処理されたメチオニン処理混合物をいう。処理液とは、メチオニン処理物から遠心分離または濾過などの分離操作によって得られる上清またはろ液をいう。
【0024】
これらの温度設定は、組み合わせてもよい。例えば、4℃にて5日間処理する場合、得られたメチオニン処理物のビタミンU量は処理前に比べ、1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上の量になる。一方、20℃〜30℃で処理した場合、1日間で上記の4℃、5日間の条件と同じ量のビタミンUを含むメチオニン処理物が得られる。したがって、まず20℃〜30℃で処理し、その後、さらに低温で処理すると、青臭みのないメチオニン処理物を短時間で得ることができる。
【0025】
処理時間は、処理温度に応じて決定すればよい。例えば20℃〜50℃の場合は、3時間〜48時間、好ましくは6時間〜24時間行う。4℃〜10℃の場合は、5日間〜20日間である。本発明のメチオニン処理により、植物中に含まれるビタミンUは、メチオニン処理前に比べて、1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上になる。
【0026】
メチオニン処理は、低pHで開始してもよい。低pHを維持することにより、ビタミンUが安定に保持される。例えば、メチオニン処理混合物におけるpHの低下または低pHの維持は、pH低下剤の添加、電気分解処理または陽イオン交換処理した水の使用などにより行われる。
【0027】
pH低下剤としては、塩酸、グルコン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、ソルビン酸などが挙げられる。メチオニン処理物の酸味を抑制するためには、グルコン酸が好ましい。これらのpH低下剤は、メチオニン処理混合物に対して約0.1重量%〜1.2重量%程度加えることが好ましく、グルコン酸では約1重量%、他の有機酸では約0.3重量%加えることが好ましい。
【0028】
添加する水を電気分解処理する場合、有隔膜の電解槽を用い、陽極側の水を使用する。得られた電解水のpHが低すぎる場合には、イオン交換水によって調整すればよい。
【0029】
添加する水を陽イオン交換処理する場合、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂または弱酸性イオン交換樹脂を使用すればよい。得られた陽イオン交換水のpHが低すぎる場合には、上記と同様、イオン交換水で調整すればよい。
【0030】
また、メチオニン処理混合物に、ビタミンUを含有する植物の細胞壁を分解する酵素を添加することができる。これらの酵素としては、ペクチン分解酵素(例えば、ポリガラクツロナーゼ、ペクチンリアーゼ、ペクチンエステラーゼ、プロトペクチナーゼなど)、セルロース分解酵素(例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼなど)などが挙げられる。これらの酵素は混合して用いることができ、プロトペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、およびセルラーゼを含む製剤が好適に用いられる。これらは、メチオニン処理混合物に対して0.001重量%〜約0.2重量%程度添加されるが、酵素の精製度により異なる。このような酵素の添加により、ビタミンUを含有する植物の細胞内に含まれる栄養分が処理液に多く溶出されて、栄養分の高い処理液が得られる。さらに、これらの酵素がビタミンUを含有する植物の細胞壁(膜)へ作用する結果、処理液中にセロビオース、セロオリゴ糖などが多く含まれ、処理液に機能性が付与されるという効果が得られる。特に、抗潰瘍性作用を有するビタミンU、核酸成分、グルタミン酸などが含まれ、栄養分が豊富になる。ポリガラクツロナーゼを用いる場合、この酵素の最適pHはアルカリ側にあるので、pHを低下させる前に添加することが好ましい。
【0031】
メチオニン処理は、適切な処理の温度または時間により、ビタミンUを含有する植物が発酵される場合を含む。すなわち、ビタミンUを含有する植物に付着した乳酸菌などが増殖し、嫌気的に有用物質を生産する場合、あるいは、新たに乳酸菌、酵母菌、酢酸菌などを添加することで有用物質を生産する場合を含む。発酵には、乳酸発酵、酢酸発酵、クエン酸発酵、アルコール発酵、およびこれらの組み合わせによる発酵などがある。これらの中でも、乳酸発酵が好ましく、乳酸菌により整腸作用を有する有機酸などが作られ、より胃腸機能改善効果の高い発酵物を得ることができる。また、乳酸発酵により、低いpHを維持できるため、ビタミンUが安定に保たれる。
【0032】
発酵を促進させるために乳酸菌を添加してもよい。乳酸菌は、メチオニン処理混合物100重量部に対して、好ましくは0.005〜5.0重量部、さらに好ましくは0.01〜2.0重量部添加する。乳酸菌を添加する場合は、菌が優先的に増殖できる環境をつくるため、pHを低くしておくことも好ましい。例えば、ラクトバチルス・プランタラムでは、pH4.0程度に調整してから発酵を開始すれば、短期間でその発酵を終了できる。
【0033】
乳酸菌としては、ロイコノストック・メセントロイデス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ストレプトコッカス・サーモフィラス、ストレプロコッカス・フェカリス、ビフィドバクテリウム・ロンガムなどが、単独でまたは組み合わされて用いられる。例えば、単独で用いる場合、ラクトバチルス・プランタラムが、その耐酸性、生育温度、および増殖速度の面から好適である。
【0034】
また、乳酸菌の優先的な生育のために、グルタミン酸またはその塩を加えることもできる。添加するグルタミン酸の量は、メチオニン処理混合物に対して0.05〜1重量%程度、好ましくは0.2重量%程度である。
【0035】
乳酸発酵する場合は、乳酸菌代謝性の糖を添加することができる。この糖の添加は、糖分含量が少ない植物を発酵させる場合に有用である。従って、糖分が3重量%以上含まれる植物を発酵させる場合には糖を添加しなくてもよい。しかし、糖は、発酵の促進および飲料への甘味の付加という目的で添加してもよい。添加される糖は、乳酸菌の生育と発酵に用いられる糖であり、例えば、庶糖、ぶどう糖、果糖、麦芽糖などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの糖は、好ましくは、糖分が植物の糖分と合わせて約3重量%になるように加えられるが、これ以上になっても構わない。
【0036】
乳酸発酵する場合は、嫌気性条件下で行うことが好ましい。嫌気性条件は、メチオニン処理混合物を脱気することにより、または発酵槽を密封するか、窒素ガス、二酸化炭素ガス等のガスで満たすか、減圧することにより、あるいはそれらを組み合わせることにより得られる。また、嫌気条件下で発酵することにより、ビタミンUを含有するメチオニン処理物または処理液の風味も良くなる。
【0037】
発酵の停止は、糖を加えて行うことも可能である。このような糖としては、糖アルコール(例えば、ソルビトール)、オリゴ糖(例えば、マルトオリゴ糖、キトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖)などが挙げられる。このようなオリゴ糖は、整腸作用、う蝕の予防などに効果があり、メチオニン処理物または処理液に食品としての機能性を付与し得る。
【0038】
メチオニン処理終了後、得られたメチオニン処理物から処理液を回収し得る。処理液の回収には公知の方法、例えば、遠心分離、濾過などが適用され得る。
【0039】
処理液は、濃縮してペースト状の食品素材とすることもできる。濃縮には、膜濃縮、加熱濃縮、真空(減圧)濃縮、凍結濃縮などの種々の方法が用いられ、ビタミンUの安定性を考慮すると、加熱を必要としない膜濃縮および凍結濃縮が好ましい。
【0040】
さらに必要に応じて、これらのメチオニン処理物または処理液を殺菌処理して保存する。殺菌は、気流殺菌、高圧殺菌、加熱殺菌などの当業者が用いる方法により行われる。殺菌は、各種の栄養分を保持するために、できるだけ低温、短時間で行うことが好ましい。なお、ビタミンUは、酸性側で加熱処理することが安定性の面から好ましい。
【0041】
このようにして得られる処理液は、ビタミンUを含有する植物由来の栄養成分と乳酸菌生成物等とを含む健康飲料として、そのままか、あるいは種々の調味料、例えば、グラニュー糖、蜂蜜、ソルビット等の甘味料、アルコール、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの酸味料、香料、色素等を加えて、好みの味に調整することができる。
【0042】
また、得られた処理液は、他の発酵ジュースや野菜ジュースなど、例えば人参ジュースあるいは混合野菜ジュースと混合すれば、更に栄養価の高いジュースとすることができる。混合割合は任意である。また、この混合ジュースは120℃、4分の完全殺菌をしなくても、低pHであれば、100℃以下の殺菌条件で殺菌できる。例えば、pHが4.0以下の場合では、65℃、10分相当の殺菌条件で十分に殺菌できる。あるいは、処理液は、他の製法により得られた液と、または野菜ジュース等と混合して食品に含ませることもできる。例えば、寒天等に混合してゼリーとすることもでき、シャーベット、フローズンヨーグルトあるいはアイスクリームとすることもできる。
【0043】
1つの実施態様において、メチオニン処理物または処理液は、乾燥、粉末化して、乾燥形態の食品素材、例えば、メチオニン処理粉末(メチオニン処理物の一形態)または処理液末(処理液の一形態)とすることができる。メチオニン処理物または処理液の乾燥は、当業者が一般的に用いる種々の方法が用いられるが、凍結乾燥、噴霧乾燥が好ましく用いられる。噴霧乾燥を行う場合、必要に応じてデキストリン、シクロデキストリン、デンプン、マルトースのような賦形剤を添加して行われる。好適にはデキストリンが用いられ、メチオニン処理物を乾燥する場合、メチオニン処理物とデキストリンの比は、重量比で1:5〜10:1が好ましく、処理液を乾燥する場合、処理液とデキストリンの比は、重量比で1:10〜5:1が好ましい。
【0044】
このようにして得られるメチオニン処理物または処理液は、必要に応じて、ローヤルゼリー、ビタミン類、ミネラル、キチン・キトサン、レシチン等の他の食品素材と組み合わせられる。抗潰瘍性効果を有する健康素材とする場合には、抗ストレス効果を有するビタミンCとの組み合わせが好ましい。そしてさらに、ハードカプセル、ソフトカプセル等のカプセル剤、錠剤、もしくは丸剤として成形されるか、または粉末、顆粒、ティーバッグなどにする。これらは、その形状または好みに応じて、そのままか、あるいは水、お湯、もしくは牛乳などに溶いて、または成分を浸出して飲むことができる。
【0045】
以下、本発明を説明するが、本発明がこの実施例に限定されないことはいうまでもない。
【0046】
【実施例】
(実施例1〜6)
キャベツを水洗いした後、1mm角のブロック状に破砕したキャベツ100gに対して0.1重量%メチオニン水溶液を100mL添加した。得られたメチオニン処理混合物をビニール袋に入れ、脱気し、表1に示す条件で処理した。処理終了後、メチオニン処理物をジューサーでペースト状にし、各サンプルの半量を遠心分離し、処理液を回収した。得られたメチオニン処理物および処理液は、凍結乾燥を行い、メチオニン処理粉末および処理液末とし、それぞれに含有されるビタミンU量を液体クロマトグラフィーにより測定した。なお、測定機器および条件は下記の通りである。結果を表1に示す。
ビタミンU量の測定条件
機種:JLC−600/V(日本電子株式会社製)
カラム:LCR−6 Φ4mm×120mm(日本電子株式会社製)
移動相:クエン酸緩衝液(日本電子株式会社製)
反応液:ニンヒドリン試薬(和光純薬株式会社製)
検体:メチオニン処理粉末または処理液末1gに対して、25mLの精製水を加え、溶解した後、フィルター濾過し、溶解液20μLを供した。
標準試薬:ビタミンU (東京化成工業株式会社製)
【0047】
(比較例1〜6)
0.1重量%メチオニン水溶液の代わりに精製水を添加した以外は、実施例1〜6と同様にして行い、得られたメチオニン処理粉末および処理液末に含有されるビタミンU量を液体クロマトグラフィーにより測定した。結果を表1に併せて示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1から、メチオニン処理することによって、ビタミンUを高濃度に含有することがわかる。さらに、メチオニン添加によるビタミンU含量の増加の割合を実施例/比較例として算出した結果、20℃〜30℃で最も高く、2.2倍〜2.3倍であった。さらに、処理温度10℃においては、12時間では、ビタミンU含量の大きな増加は見られなかったが、5日間では、メチオニンを添加しなかった場合に比べ、ビタミンU含量が1.5倍〜2.0倍になった。
【0050】
(実施例7〜11)
キャベツを水洗いした後、1mm角のブロック状に破砕したキャベツ100gに対して0.1重量%メチオニン水溶液を100mL添加した。得られたメチオニン処理混合物をビニール袋に入れ、脱気し、25℃で処理し、メチオニン処理物を経時的に分取した。得られたメチオニン処理物のその後の操作は実施例1〜6と同様にして行い、メチオニン処理粉末および処理液末に含有されるビタミンU量を液体クロマトグラフィーにより測定した。結果を表2に示す。
【0051】
(比較例7〜11)
0.1重量%メチオニン水溶液の代わりに精製水を添加した以外は、実施例7〜11と同様にして行い、得られたメチオニン処理粉末および処理液末に含有されるビタミンU量を液体クロマトグラフィーにより測定した。結果を表2に併せて示す。
【0052】
【表2】
【0053】
表2の結果から、メチオニン処理することによって、短時間でビタミンUを高濃度に含有するメチオニン処理物および処理液末が得られることがわかる。
【0054】
(実施例12および13)
キャベツを水洗いした後、1mm角のブロック状に破砕したキャベツ1kgに対して0.1重量%メチオニン水溶液を1L添加した。得られたメチオニン処理混合物を発酵槽に移し、気相を窒素置換し、25℃、12時間処理した。得られたメチオニン処理物のその後の操作は実施例1〜6と同様にして行い、メチオニン処理粉末および処理液末に含有されるビタミンU量を液体クロマトグラフィーにより測定した。結果を表3に示す。
【0055】
(比較例12および13)
0.1重量%メチオニン水溶液の代わりに精製水を添加した以外は、実施例12および13と同様にして行い、得られたメチオニン処理粉末および処理液末に含有されるビタミンU量を液体クロマトグラフィーにより測定した。結果を表3に併せて示す。
【0056】
【表3】
【0057】
表3の結果から、メチオニン処理することによって、ビタミンUを高濃度に含有するメチオニン処理物および処理液が得られることがわかる。また、メチオニン処理に用いるキャベツの形状は、ペースト状よりもブロック状の方が、得られたメチオニン処理物および処理液に多くのビタミンUを含み、ブロック状の方が好ましいことがわかった。
【0058】
(実施例14〜17)
4種類の野菜(キャベツ、ブロッコリー、レタス、およびネギ)をそれぞれ1mm角のブロック状に破砕し、各野菜100gに対して0.1重量%メチオニン溶液を100mL添加した。得られたメチオニン処理混合物をビニール袋に入れ、脱気し、25℃、12時間処理した。得られたメチオニン処理物のその後の操作は実施例1〜6と同様にして行い、メチオニン処理粉末および処理液末に含有されるビタミンU量を液体クロマトグラフィーにより測定した。結果を表4に示す。
【0059】
(比較例14〜17)
0.1重量%メチオニン溶液の代わりに水を用いた以外は、実施例14〜17と同様にして行い、各野菜のメチオニン処理粉末および処理液末に含有されるビタミンU量を液体クロマトグラフィーにより測定した。結果を表4に併せて示す。
【0060】
【表4】
【0061】
表4の結果から、メチオニン処理することによって、植物中のビタミンU含量が高められることがわかる。さらに、メチオニン処理による各野菜のビタミンU含量の増加の割合を実施例/比較例として算出した結果、キャベツが最も高く、約2倍増加した。
【0062】
(実施例18および19)
キャベツを水洗いした後、1mm角のブロック状に破砕したキャベツ1kgに対して0.1重量%メチオニン水溶液を1L添加したメチオニン処理混合物、さらにこのメチオニン処理混合物に、乾燥乳酸菌末を0.5g添加したメチオニン処理混合物をそれぞれ調製した。これらの各メチオニン処理混合物を発酵槽に移し、気相を窒素置換し、25℃、12時間発酵させた(実施例18および19)。得られたメチオニン処理物をジューサーでペースト状にし、各サンプルの半量を遠心分離し、発酵液を回収した。得られたメチオニン処理物および処理液は、凍結乾燥を行い、メチオニン処理粉末および処理液末とし、それぞれに含有されるビタミンU量を実施例1〜6と同様に液体クロマトグラフィーにより測定した。結果を表5に示す。
【0063】
(比較例18および19)
0.1重量%メチオニン溶液の代わりに水を用いた以外は、実施例18および19と同様にして行い、得られたメチオニン処理粉末および処理液末に含有されるビタミンU量を液体クロマトグラフィーにより測定した。結果を表5に併せて示す。
【0064】
【表5】
【0065】
表5の結果から、メチオニンと乳酸菌を添加した場合にも、ビタミンU含量が高められることがわかった。
【0066】
(実施例20)
キャベツを水洗いした後、1mm角のブロック状に破砕したキャベツ1kgに対して0.1重量%メチオニン水溶液を1Lおよび乾燥乳酸菌末を0.5g添加し、気相を窒素置換し、25℃、16時間発酵させた。発酵終了後、メチオニン処理物をジューサーでペースト状にし、遠心分離を行い、処理液を回収した。この処理液を湯煎で85℃、10分間殺菌した後、処理液:デキストリンが重量比で1:2となるようにデキストリンを添加して、噴霧乾燥を行い、処理液末を得た。得られた処理液末は、有機酸が生成され、ほどよい酸味があり、嗜好性に優れると共に胃腸機能改善に優れた食品素材であった。
【0067】
【発明の効果】
ビタミンUを含有する植物にメチオニン処理することにより、植物中のビタミンU含量を高めることができる。
Claims (1)
- ビタミンUを含有する植物を、メチオニンが0.005重量%〜30重量%含まれるメチオニン水溶液に浸漬処理することによって得られる、ビタミンU含量が高められた処理物であって、
該処理物のビタミンU含量が処理前の植物のビタミンU含量に比べて1.5倍以上である、処理物。
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