JP2004319916A - 受光素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】多波長の信号光を高効率で分離して光電変換することが可能な受光素子を提供すること。
【解決手段】第1のバンドギャップ波長を有する導波路層と、導波路層に設けられ、導波路層を通過する光を導波方向に該光の波長に依存して反射または透過する反射層と、導波路層近傍に設けられ、第1のバンドギャップ波長より長い第2のバンドギャップ波長を有する光吸収層とを具備する。また、別の態様として、第1のバンドギャップ波長を有する光ガイド層と、光ガイド層近傍に設けられ、第1のバンドギャップ波長より長い第2のバンドギャップ波長を有する第1の光吸収層と、光ガイド層の端部に設けられ、光ガイド層を通過する光を導波方向と交わる方向に反射する反射面と、反射面により反射された光が入射される第2の光吸収層を有する光電変換部とを具備する。
【選択図】 図1
【解決手段】第1のバンドギャップ波長を有する導波路層と、導波路層に設けられ、導波路層を通過する光を導波方向に該光の波長に依存して反射または透過する反射層と、導波路層近傍に設けられ、第1のバンドギャップ波長より長い第2のバンドギャップ波長を有する光吸収層とを具備する。また、別の態様として、第1のバンドギャップ波長を有する光ガイド層と、光ガイド層近傍に設けられ、第1のバンドギャップ波長より長い第2のバンドギャップ波長を有する第1の光吸収層と、光ガイド層の端部に設けられ、光ガイド層を通過する光を導波方向と交わる方向に反射する反射面と、反射面により反射された光が入射される第2の光吸収層を有する光電変換部とを具備する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光信号を電気信号に変換する受光素子に係り、特に、導波路を有する受光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インターネットの普及、発展に伴い大容量通信の需要が増加し、大容量通信に向く、光による通信網の構築が急速に進んでいる。このような光通信網の構築に必要不可欠な光電変換部品のひとつである受光素子には、主として面型と導波路型の2つがある。
【0003】
面型受光素子は、層面と垂直方向に光が入射する。層の厚さ方向にはバイアスがかけられており、入射光の吸収(光吸収)により生成したキャリアが光電流として取り出される。一方、導波路型受光素子は、層の端面から信号光が入射するもので、入射後に吸収層で光吸収され減衰しながら導波路を伝搬する。吸収層には逆バイアスが加えられており、光の吸収で生成された光励起キャリアが光電流となって電気信号に変換される。
【0004】
このように、導波路型受光素子では、光の入射方向が光励起キャリアの走行方向と垂直の関係となるため、光電変換効率を決める光の入射方向の素子長と高速性を決める吸収層の厚さとを独立に設定する事が可能であり、高速・高効率な受光素子として適している。また、半導体基板、セラミックス基板等のプラットフォーム上に半導体レーザやいくつかの導波路型光デバイスを集積し、表面実装型の光機能デバイスを実現することにも適している。
【0005】
従来の一般的な導波路型受光素子について信号波長1.55μmの場合を例に挙げ、図8を参照して説明する。図8は、一般的な導波路型受光素子の構成を模式的に示す斜視図である。図8に示すように、この導波路型受光素子は、n+−InP基板100、このn+−InP基板100上に形成されたIn0.65Ga0.35As0.79P0.21低キャリア濃度層101、この低キャリア濃度層101上に形成されたp+−InP層102、このp+−InP層102上に形成されたP電極104、n+−InP基板100の裏面側に形成されたN電極103で構成される。
【0006】
信号光は、図示するように、低キャリア濃度層101の端面に入射される。導波路構造としては、屈折率の高いIn0.65Ga0.35As0.79P0.21低キャリア濃度層101がコア層であり、屈折率の低いn+−InP基板100とp+−InP層102とがそれぞれ下部クラッド、上部クラッド層となる。コア層とクラッド層との屈折率差によって導波光をコア層近傍に閉じ込めることができる。コア層であるIn0.65Ga0.35As0.79P0.21低キャリア濃度層101は、1.55μmの信号光を吸収できる材料であり、これによりこの導波路型受光素子は波長1.55μmの信号光を受光し、光電変換できる。
【0007】
なお、下記特許文献1には、光を分波、合波するための集積型光制御素子が開示されている。この集積型光制御素子には、多層反射膜が用いられている。また、特許文献2には、導波路型光フィルタ装置が開示されている。いずれも光電変換を行なう受光素子ではないが、本願の説明の上で登場する構成要素に一部参考となる場合があるのでここで挙げておく。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−234033号公報
【特許文献2】
特開平9−68681号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
図8に示すような素子は、多波長の混合光を個別の波長ごとに光検出・光電変換することができない。また、導波路に対し平行に、バンドギャップ波長が入射光波長より長い光吸収層を設ける構成となっており、ここで導波路の端面サイズがμmオーダーと小さいので光結合効率が確保しにくく、一般的に効率よく光電変換することが難しい。また、850nmなどの短波長と1.3μmの長波長のように比較的離れた波長の混合光からそれぞれを光検出しようとすると、そもそも吸収感度を持つ材料系がそれらの光で異なるため、光をフイルターで分離後に個別のそれそれに対する受光素子を設ける必要がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、多波長の信号光を分離的に光電変換することが可能な受光素子を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様に係る受光素子は、第1のバンドギャップ波長を有する導波路層と、前記導波路層に設けられ、前記導波路層を通過する光を導波方向に該光の波長に依存して反射または透過する反射層と、前記導波路層近傍に設けられ、前記第1のバンドギャップ波長より長い第2のバンドギャップ波長を有する光吸収層とを具備することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の別の態様に係る受光素子は、第1のバンドギャップ波長を有する光ガイド層と、前記光ガイド層近傍に設けられ、前記第1のバンドギャップ波長より長い第2のバンドギャップ波長を有する第1の光吸収層と、前記光ガイド層の端部に設けられ、前記光ガイド層を通過する光を導波方向と交わる方向に反射する反射面と、前記反射面により反射された光が入射される第2の光吸収層を有する光電変換部とを具備することを特徴とする。
【0013】
また、本発明のさらに別の態様に係る受光素子は、第1の光吸収層と、前記第1の光吸収層に交わるように入射される光が到達する位置に設けられ、該到達した光を前記第1の光吸収層が広がる方向とほぼ平行の方向に反射する反射面と、前記反射された光を通過させかつ第1のバンドギャップ波長を有する光ガイド層と、前記光ガイド層近傍に設けられ、前記第1のバンドギャップ波長より長い第2のバンドギャップ波長を有する第2の光吸収層とを具備することを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の一態様に係る受光素子によれば、導波路層に設けられた反射層を介して複数の光電変換部を配置することができる。反射層は波長依存性を有しており光の波長により反射または透過する。したがって、反射層を挟んで異なる波長に相当する導波路層とすることができ、さらに導波路層近傍に設けられる光吸収層によりそれらの波長に対応してそれぞれ光電変換を行なうことができる。よって、多波長の信号光を分離的に光電変換することが可能な受光素子が提供できる。
【0015】
ここで、実施態様としての受光素子は、前記導波路層に設けられ、前記反射層を透過した光を前記導波路層の広がる方向に反射する第2の反射層をさらに具備してもよい。これにより、第2の反射層により反射されて光が導波路層内に留まるので効率的に光電変換することができる。
【0016】
また、ここで、前記導波路層に設けられ、前記第2の反射層に反射された光を該第2の反射層に帰還するように反射する再反射層をさらに具備してもよい。これにより、第2の反射層と再反射層とで多重反射光が得られさらに効率的に光電変換することができる。
【0017】
また、実施態様としての受光素子は、前記導波路層に設けられ、前記反射層に反射された光を該反射層に帰還するように反射する再反射層をさらに具備してもよい。これにより、反射層と再反射層とで多重反射光が得られ効率的に光電変換することができる。
【0018】
また、実施態様として、前記反射層は、DBR(distributed Bragg reflector)構造である。DBR構造により、光の反射、透過の波長依存性を所望に制御するよう構成できる。
【0019】
また、実施態様として、前記光吸収層は、厚く形成された部位と薄く形成された部位とを有する。複数の光電変換部に対応して光吸収層を厚く形成すればさらに効率的に光電変換することができる。
【0020】
また、本発明の別の態様に係る受光素子によれば、導波路型の光電変換部で光を光電変換し、さらに、導波路への光の入射方向と異なる方向に光を伝播させる反射面を設けて反射後の光についても光電変換する。よって、反射面を挟んで多波長の信号光を分離して光電変換することが可能な受光素子が提供できる。また、反射面を挟む光電変換部の構成(例えば材料系)の自由度が上記一態様の場合より高い。
【0021】
ここで、実施態様としては、前記第1の光吸収層のバンドギャップ波長は、前記第2の光吸収層のバンドギャップ波長より短い。このような場合には、第1の光吸収層におけるバンドギャップ波長を得る材料系と、第2の光吸収層におけるバンドギャップ波長を得る材料系とが異なるように集積化することも容易に可能になる。これにより、より幅の広い多波長の信号光を光電変換できる。
【0022】
また、実施態様として、前記光電変換部は、前記第2の光吸収層に入射された光を該入射方向に帰還するように反射する高反射膜をさらに有してもよい。この帰還により第2の光吸収層で光電変換効率をより高めることができる。
【0023】
また、実施態様としての受光素子は、前記反射面と前記光電変換部との間に、該反射面により反射された光が入射する波長選択性のある反射層をさらに具備してもよい。これにより、波長選択性により反射される光について、光ガイド層を有する光電変換部での光電変換効率を高めることができる。
【0024】
また、実施態様として、前記光ガイド層は、半導体基板の表面側主面上に形成され、前記反射面により反射される光の方向は、前記半導体基板側であり、前記光電変換部は、前記半導体基板の裏面側主面上に設けられている。第2の光吸収層を有する光電変換部は、このように基板の裏面側に設けることもできる。
【0025】
また、本発明のさらに別の態様に係る受光素子によれば、面型(面入射型)の光電変換部で光を光電変換し、さらに、この入射光の方向と異なる方向に光を伝播させる反射面を設けて反射後の光についても導波路型の光電変換部により光電変換する。よって、反射面を挟んで多波長の信号光を分離的に光電変換することが可能な受光素子が提供できる。また、光のもともとの入射部が層の端面ではなく主面となるので光結合が容易になる。
【0026】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る受光素子を模式的に示す構造図である。この受光素子は、1.3μm(λ1)と1.55μm(λ2)の2波長の混合光が入射し、これらの波長ごとに分離的に電気信号として検出するものである。
【0027】
構成を述べるに、半絶縁性InP基板1上にn−InPバッファ層2が、このn−InPバッファ層2上にn−InGaAsPクラッド層3(バンドギャップ波長1.1μm)が、このn−InGaAsPクラッド層3上にn−InGaAsPコア層4(バンドギャップ波長1.2μm)が、それぞれ形成されている。コア層4の図で左側端面から光が入射し右方向に伝播する。n−InGaAsPクラッド層3を含んでこれより上の層は、n−InPバッファ層2上一部では積層がない。n−InPバッファ層2上でn−InGaAsPクラッド層3等の積層のない部位には、N電極12が位置する。
【0028】
n−InGaAsPコア層4には、DBR層9a、9b、10a、10bが形成されている。DBR層9a、9bは、波長1.3μmの光に対する反射面であり対向して対をなすように、光の伝播方向とほぼ垂直に設けられる。DBR層9aの反射率をDBR層9bのそれより小さくし、これらの間に波長1.3μmの光が多重反射するようにする。さらに、DBR層9a、9bは、波長1.55μmの光を透過する性質のものとする。
【0029】
DBR層10a、10bは、波長1.55μmの光に対する反射面であり対向して対をなすように、DBR層9bを透過した光の伝播方向とほぼ垂直に設けられる。DBR層10aの反射率をDBR層10bのそれより小さくし、これらの間に波長1.55μmの光が多重反射するようにする。
【0030】
n−InGaAsPコア層4上には、n−InGaAsPクラッド層5(バンドギャップ波長1.1μm)が形成される。n−InGaAsPクラッド層5には、上記のDBR層9aおよび同9bに対応して、またDBR層10aおよび同10bに対応して部分的に凹部が形成される。この凹部を含むようにn−InGaAsPクラッド層5上には、n−InGaAs光吸収層6が形成される。これにより、n−InGaAs光吸収層6は、DBR層9a、同9b間に対応して、およびDBR層10a、同10b間に対応して層厚が厚くなり、光吸収効率が向上される。
【0031】
さらにn−InGaAs光吸収層6上には、n−InPウィンドウ層7が形成され、n−InPウィンドウ層7には、上記のDBR層9a、同9b間に対応して、またDBR層10a、同10b間に対応してZnが拡散されたp+領域8が形成されている。これらのp+領域8上には、それぞれP電極11a、11bが形成されている。N電極12、P電極11a、11bを除くそれらを囲む表面は、例えばSiNxからなる絶縁体(誘電体)の膜13によって覆われる。さらに、光の入射面に相当する面には反射防止膜14が被覆される。N電極12は2つの光電変換部に共通であり、P電極11a、11bはそれぞれに個別に設けられ、それぞれの波長の光に対応する電流の取り出しを行なう。
【0032】
次に、図1に示す受光素子の製造手順について概略的に説明する。まず、半絶縁性InP基板1を用意し、用意された半絶縁性InP基板1上に、n−InPバッファ層2、n−InGaAsPクラッド層3、n−InGaAsPコア層4を、順次MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法等の成膜技術を用いて結晶成長させる。
【0033】
次に、検出する波長に対応したDBR層9a、9b、および同10a、10bを、n−InGaAsPコア層4に例えば電子線露光の技術を用いて形成する。ここで、DBR層9a、同9bの間が短波長の光検出・光電変換の素子部分に対応し、DBR層10a、同10bの間が長波長の光検出・光電変換の素子部分に対応する。DBR層9a、同9bのうち入射側のDBR層9aの反射率は、その対向側のDBR層9bの反射率より小さく設定して形成する。また、同様に、DBR層10a、同10bのうち入射側のDBR層10aの反射率は、その対向側のDBR層10bの反射率より小さく設定して形成する。
【0034】
次に、DBR層9a、9b、10a、10bが形成されたn−InGaAsPコア層4上にn−InGaAsPクラッド層5を形成する。そして、形成されたn−InGaAsPクラッド層5に、受光部に相当する部分とするために凹部を、DBR層9a、同9bの間、および同10a、同10bの間に対応して加工・形成する。
【0035】
さらに、この加工・形成された凹部を埋め込むようにn−InGaAsPクラッド層5上に、n−InGaAs光吸収層6を形成する。これにより、n−InGaAs光吸収層6は、DBR層9a、同9bの間、および同10a、同10bの間に対応して部分的に層厚(吸収層厚)が厚く形成される。続いて、n−InGaAs光吸収層6上にn−InPウインドウ層7をMOCVD法等の成膜技術を用いて結晶成長させる。
【0036】
次に、n−InPバッファ層2に達するように、上記形成された積層構造の一部領域をエッチング除去する。この一部領域は、DBR層9a、9b、10a、10b、n−InGaAsPクラッド層5の凹部が含まれないよう選ばれる。そして、上面およびエッチングの側面、底面に例えばSiNxからなる膜13を形成する。
【0037】
次に、DBR層9a、同9bの間、および同10a、同10bの間に対応して膜13を除去し、n−InPウインドウ層7にZnを拡散してp+領域8を形成する。形成されたp+領域8上には、電極として、P電極11a、11bを形成する。また、エッチング底面上の膜13の一部を除去し、その部分にN電極12を形成する。さらに、光の入射面に反射防止膜14を形成する。以上により図1に示す受光素子が製造される。
【0038】
このような構造の受光素子は、DBR層9bが、導波路層(導波路層はコア層4、クラッド層3、5からなる)を通過する光をその波長に依存して反射または透過する反射層となる。DBR層10bは、DBR層9bを透過した光を反射する第2の反射層である。また、DBR層9aがDBR層9bに反射された光をDBR層9bに帰還するよう反射する再反射層である。さらに、DBR層10aがDBR層10bに反射された光をDBR層10bに帰還するよう反射する再反射層である。
【0039】
本実施形態の受光素子によれば、導波路層に設けられた反射層としてのDBR層9bを介して複数の光電変換部を配置することができる。この反射層は波長依存性を有しており光の波長により反射または透過する。したがって、反射層を挟んで異なる波長に相当する導波路層とすることができ、さらに導波路層近傍に設けられる光吸収層6によりそれらの波長に対応してそれぞれ光電変換を行なうことができる。
【0040】
また、導波路層に入射した波長1.3μmの光(短波長側の光)はDBR層9a、9bにより繰り返し反射し、これにより、n−InGaAsPクラッド層5に凹部を形成したことによって厚く形成された光吸収層6の部分で効率よく吸収され光電変換される。また、波長1.55μmの光(長波長側の光)は、DBR層9a、9bの奥に形成されたDBR層10a、10bと、光吸収層6とにより同様に効率よく光電変換される。
【0041】
実際に製造して試験したところでは、1.3μmと1.55μmとの混合光を入射させ、それぞれ50%、60%の変換効率で光電変換が可能であった。なお、以上の説明は、PD(photo diode)タイプの受光素子を例に挙げているが、同様にAPD(avalanche photo diode)タイプの受光素子にも適用可能である。波長に関しても2波長に限らず適用可能である。すなわち、DBR層10bの奥にさらにDBR層を設ける構成とすることもできる。また、反射層にはDBR層ではないものを用いてもよい。材料系に関しても、InP系やGaAs系の化合物半導体に限らず、SiやGaN系の半導体、化合物半導体でも適用可能である。
【0042】
次に、本発明の別の実施形態に係る受光素子について図2ないし図4を参照して説明する。図2は、本発明の別の実施形態に係る受光素子を模式的に示す構造図である。この受光素子は、波長850nmと波長1300nm(1.3μm)の混合光が入射し、これらの波長ごとに分離的に電気信号として検出するものである。
【0043】
構成を説明するに、半絶縁性のGaAs基板15上にn−GaAsバッファ層16が、n−GaAsバッファ層16上にバンドギャップ波長が入射光波長より短い光ガイド層としてのn−AlGaAsガイド層17a、17b(バンドギャップとしてはガイド層17aがガイド層17bより大)が、n−AlGaAsガイド層17b上にバンドギャップ波長が入射光波長より長いi−(Al)GaAs光吸収層18が、i−(Al)GaAs光吸収層18上にバンドギャップ波長が入射光波長より短いp−AlGaAsクラッド層19が、それぞれ形成されている。n−AlGaAsガイド層17b、i−(Al)GaAs光吸収層18、p−AlGaAsクラッド層19は、いわゆるpin構造である。
【0044】
これらのn−GaAsバッファ層16、n−AlGaAsガイド層17a、17b、i−(Al)GaAs光吸収層18、およびp−AlGaAsクラッド層19には形成領域の違いがあり、この違いにより、GaAs基板15が上面側となる部位(図2では図示せず)、n−GaAsバッファ層16が上面側となる部位(同)、n−AlGaAsガイド層17bが上面側となる部位(図で左部)とが存在する。p−AlGaAsクラッド層19まで形成された部位に対応して短波長の光の検出・光電変換の領域となる。
【0045】
光の入射は、ガイド層17a、17bの図で左側端面からなされ右方向に伝播する。n−GaAsバッファ層16、n−AlGaAsガイド層17a、17b、i−(Al)GaAs光吸収層18、およびp−AlGaAsクラッド層19の各右端面には、この入射した光を上方向に反射する反射面30が傾斜して連続的に形成されている。
【0046】
また、この上方向に反射された光が到達する位置であってp−AlGaAsクラッド層19の上には、さらにInGaAsP接着層20が、InGaAsP接着層20上にはInGaAsP/InPからなる波長選択用のDBR層21が、DBR層21上にはn−InPクラッド層22が、n−InPクラッド層22上にはi−InGaAs光吸収層23が、i−InGaAs光吸収層23上にはp−InPクラッド層24が、それぞれ形成されている。
【0047】
i−InGaAs光吸収層23、p−InPクラッド層24は、InGaAsP接着層20、DBR層21、n−InPクラッド層22と形成領域が異なり、図示するようにn−InPクラッド層22が上面側となる部位が存在する。n−InPクラッド層22、i−InGaAs光吸収層23、p−InPクラッド層24はいわゆるpin構造である。
【0048】
また、上記反射面30の後ろ側には、n−InPクラッド層22の上面と同じ高さになるまでにポリイミド膜31が充填・形成されている。さらに、p−AlGaAsクラッド層19が上面となっている部位にはP電極25が、n−GaAsバッファ層16が上面となっている部位にはN電極(図2では図示せず)が、それぞれ形成される。これらの電極は、i−(Al)GaAs光吸収層18で発生するキャリアによる電流の取り出し電極である。
【0049】
また、p−InPクラッド層24の上面にはP電極26が、n−InPクラッド層22が上面となっている部位にはN電極27が、それぞれ形成される。これらの電極は、i−InGaAs光吸収層23で発生するキャリアによる電流の取り出し電極である。さらに、P電極25、26、N電極27等を除くそれらを囲む表面は、例えばSiNxからなるパッシベーション膜29によって覆われている。
【0050】
次に、図2に示す受光素子の製造手順について概略的に説明する。まず、半絶縁性GaAs基板15を用意し、用意された半絶縁性GaAs基板15上にn−GaAsバッファ層16、n−AlGaAsガイド層17a、同17b、i−(Al)GaAs光吸収層18、p−AlGaAsクラッド層19を、順次MOCVD法等の成膜技術を用いて結晶成長させる。
【0051】
また、並行して、図3に示すような、基板上に形成された積層構造を用意する。図3は、図2に示す受光素子を製造するのに必要な別基板による積層構造を模式的に示す構成図である。すなわち、p−InP基板33上にp−InPクラッド層24、i−InGaAs光吸収層23、n−InPクラッド層22、波長選択用DBR層21、InGaAsP接着層20を、順次MOCVD法等の成膜技術を用いて結晶成長させる。
【0052】
そして次に、半絶縁性GaAs基板15上の上記積層構造と図3に示す積層構造とを、両基板15、33が外側になるようにして対向接触させこれらを接着させる。この接着には、例えばPを含む雰囲気中で約730℃のアニールを行なう。接着後にp−InP基板33は除去する。
【0053】
次に、接着形成された、基板15上のn−GaAsバッファ層16からp−InPクラッド層24までの構造に対して複数回の深さの異なる例えばRIE(reactive ion etching)などのエッチングを行ないメサ構造を形成する。すなわち、このエッチングで、最初にn−InPクラッド層22の露出部位(図示の通り)を形成し、次にp−AlGaAsクラッド層19の露出部位(図示の通り)を形成する。次に、n−GaAsバッファ層16からp−AlGaAsクラッド層19までの層を図示するように逆メサが形成されるようにエッチング、除去する。これには、Br系のエッチャントを用いこれらの層の<011>方向にエッチングを行なう。この<011>方向のエッチングは他の公知の方法を用いてもよい。
【0054】
さらに、n−AlGaAsガイド層17bの露出部位(図示の通り)を形成し、次にn−GaAsバッファ層16の露出部位(図示せず)を形成し、最後に半絶縁性GaAs基板15の露出部位(図示せず)を形成する。n−GaAsバッファ層16からp−AlGaAsクラッド層19の積層部分であって、逆メサ形状にエッチングされた端面は反射面30となる。反射面30の後ろ側には、クラッド層22の上面と同じ高さになるまでにポリイミド膜31を充填・形成する。
【0055】
以上の工程により残存した光吸収層18が短波長側の光検出・光電変換部位になる。ガイド層17bが露出した領域は光検出・光電変換部位に光を導波する受動導波部になる。接着部分の残存した領域は、長波長側の光検出・光電変換部位、およびN電極27を形成するためのn−InPクラッド層22の露出した領域になる。なお、以上のメサ構造形成後にエッチングの側面、底面を含めて表面に例えばSiNxからなるパッシベーション膜29を形成する。
【0056】
次に、電極形成のため、パッシベーション膜29の一部をエッチング除去して、p−AlGaAsクラッド層19上にP電極25を、p−InPクラッド層24上にP電極26を、それぞれ形成する。P電極25、26には、AuZnアロイを用いることができる。また、同様にパッシベーション膜29の一部をエッチング除去して、n−InPクラッド層22上にN電極27を、n−GaAsバッファ層16上にN電極(図2では図示せず)を、それぞれ形成する。これらのN電極には、AuGeアロイ/Ni/Auの積層構造を用いることができる。
【0057】
図4は、以上のようにして製造された受光素子を上方向から見た状態として概略的に示す図である。図4において、すでに説明した部位と同一のものには同一符号を付してある。図4では、n−GaAsバッファ層16上に形成されたN電極32が示されている。また、P電極25、26、N電極27、32は、Ti/Pt/Auの積層構造のパターンが接続され、全体として図4に示すように形状にされている。なお、基板15上に形成された積層構造をへきかいして分離し複数の受光素子とした後には、その露出面に例えばSiNxからなる反射防止膜28を被覆しておく。以上により図2に示す受光素子が製造される。
【0058】
この実施形態の受光素子では、光吸収層18を有する導波路型の光電変換部で光を光電変換し、さらに、導波路への光の入射方向と異なる方向に光を伝播させる反射面30を設けて反射後の光についても光吸収層23で別の光電変換をする。よって、複数の波長の信号光を分離して光電変換することができる。
【0059】
より具体的には、端面から入射した短波長側の光(850nm)はガイド層17bに沿って伝播して光吸収層18で光電変換される。長波長側の光(1300nm)は、光吸収層18では吸収を受けずに反射面30に伝播する。反射面30では基板15から離れる方向に反射され、さらに波長選択用のDBR層21に達してこれを透過したあと光吸収層i−InGaAs光吸収層23で光電変換される。
【0060】
このような原理に加えて、P電極26を高反射膜、反射防止膜28を波長1300nmに対する反射率が適当なのもであるとした場合には、これらの膜の間で波長1300nmの光が多重反射し光吸収層23の領域を往復することになる。これにより光電変換効率はなお向上する。このような効率の向上は、短波長側の光(850nm)においても、DBR層21と反射防止膜28との間で多重反射を生じしめることで達成される。
【0061】
また、この実施形態では、異なる材料系を用いなければ検出できないような波長の差の大きい混合光の場合でも受光素子が容易に単一的に集積化できる。すなわち、基板張り合わせ技術を使うことで、結晶成長が不可能な異なる材料の組み合わせによる集積化を容易に信頼性高く行なうことができる。
【0062】
この実施形態もPDタイプの受光素子のみならず、APDタイプの受光素子にも適用可能である。波長に関しても2波長に限らず適用可能である。すなわち、例えばi−InGaAs光吸収層23をより短波長のバンドギャップを有するi−InGaAsP層としておいて、より長波長のバンドギャップを有するi−InGaAsP層光吸収層、p−InPクラッド層24のような積層構造をこの上にさらに積み重ねるように形成すればよい。なお、DBR層21は波長選択性を有するものであれば他のものを用いてもよい。材料系に関しても、InP系やGaAs系の化合物半導体に限らず、SiやGaN系の半導体、化合物半導体でも適用可能である。
【0063】
次に、本発明のさらに別の実施形態に係る受光素子について図5を参照して説明する。図5は、本発明のさらに別の実施形態に係る受光素子を模式的に示す構造図である。同図において、すでに説明した構成要素と同一のものには同一符号を付してある。この受光素子の図2に示した受光素子との違いは、入射光の反射後になされる光吸収・光電変換を基板34の裏面側に設けられた構造により行なうようにしたことである。
【0064】
すなわち、この場合には、基板として半絶縁性GaP基板34を用い、半絶縁性GaP基板34とガイド層17aとの接合はInGaP接着層36を介してなされる。また、半絶縁性GaP基板34の裏面側でのDBR層21との接合はInGaAlP接着層35を介してなされる。
【0065】
この受光素子でも、例えば波長850nmと波長1300nmの混合光が入射し、これらの波長ごとに分離的に電気信号として検出することができる。電気信号として取り出される電極も、波長850nmに対応してP電極25、N電極32、波長1300nmに対応してP電極26、N電極27と、図2に示した実施形態の場合と同様である。
【0066】
図5に示す受光素子では、検出する光が基板34を厚さ方向に通過する構成となるが、この通過する光の波長に対してGaP基板34がより短波長側までほとんど透明であり光電変換の効率を劣化させることはない。
【0067】
次に、本発明のさらに別の実施形態に係る受光素子について図6、図7を参照して説明する。図6は、本発明のさらに別の実施形態に係る受光素子を模式的に示す構造図である。同図において、すでに説明した構成要素と同一相当のものには同一符号を付してある。この受光素子の図2に示した受光素子との違いは、図示するように、光の入射を端面ではなく層の主面に対して垂直方向に行なうようにしたことである。
【0068】
このため、短波長側の光検出・光電変換が面型タイプの素子部分で、長波長側の光検出・光電変換が導波路型タイプの素子部分で、それぞれなされ、図2に示したものとは反対になる(材料系も同様に反対になる)。構造的には、p−InPクラッド層24とn−AlGaAsガイド層17aとの接合がInGaP接着層36を介してなされる。また、半絶縁性InP基板1と波長選択用のDBR層21との接合は、DBR層21上に形成された高反射膜39を介してInGaAlP接着層35によりなされる。
【0069】
さらに、P電極26aは環状になっており環内側が光の入射部となる。この環内側には例えばSiNxからなる反射防止膜26が形成される。また、光吸収層18を通過し反射面30により反射される光が散乱しやすいので、P電極38を高反射のものとし、同様に接着層35上にも高反射膜39を設け、端面を被覆する膜37にも高反射のものを用いている。これらの高反射膜により、散乱した光による光吸収層23での光検出・光電変換を行ない変換効率の改善を図っている。
【0070】
図7は、図6に示す受光素子を上方向から見た状態として概略的に示す図である。図7において、すでに説明した部位と同一のものには同一符号を付してある。図7では、n−InPクラッド層22上に形成されたN電極32が示されている。
【0071】
図6、図7に示す受光素子では、面型(面入射型)の光電変換部で光を光電変換し、さらに、この入射光の方向と異なる方向に光を伝播させる反射面30を設けて反射後の光についても導波路型の光電変換部により別の光電変換をする。よって、多波長の信号光を高効率で分離して光電変換することが可能になる。また、光のもともとの入射部が層の端面ではなく主面となるので光結合が容易になる。
【0072】
以上説明したように、各実施形態の受光素子は、複数の波長の混合光を波長ごとに電気信号として検出し取り出すことができる。また、集積型の半導体装置として製作容易に構成できかつ変換効率を確保することができる。
【0073】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、多波長の信号光を分離的に光電変換することが可能な受光素子が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る受光素子を模式的に示す構造図。
【図2】本発明の別の実施形態に係る受光素子を模式的に示す構造図。
【図3】図2に示す受光素子を製造するのに必要な別基板による積層構造を模式的に示す構成図。
【図4】図2に示す受光素子を上方向から見た状態として概略的に示す図。
【図5】本発明のさらに別の実施形態に係る受光素子を模式的に示す構造図。
【図6】本発明のさらに別の実施形態に係る受光素子を模式的に示す構造図。
【図7】図6に示す受光素子を上方向から見た状態として概略的に示す図。
【図8】一般的な導波路型受光素子の構成を模式的に示す斜視図。
【符号の説明】
1…半絶縁性InP基板 2…n−InPバッファ層 3…n−InGaAsPクラッド層 4…n−InGaAsPコア層 5…n−InGaAsPクラッド層 6…n−InGaAs光吸収層 7…n−InPウィンドウ層 8…p+領域 9a、9b、10a、10b…DBR層 11a、11b…P電極 12…N電極 13…膜(SiNx膜) 14…反射防止膜 15…半絶縁性GaAs基板 16…n−GaAsバッファ層 17a、17b…AlGaAsガイド層 18…i−(Al)GaAs光吸収層 19…p−AlGaAsクラッド層20…InGaAsP接着層 21…InGaAsP/InP波長選択用DBR層 22…n−InPクラッド層 23…i−InGaAs光吸収層 24…p−InPクラッド層 25、26、26a…P電極 27、32…N電極 28…反射防止膜 29…パッシベーション膜 30…反射面 31…ポリイミド膜 33…p−InP基板 34…半絶縁性GaP基板 35…InGaAlP接着層 36…InGaP接着層 37…膜(高反射膜) 38…高反射のP電極 39…高反射膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、光信号を電気信号に変換する受光素子に係り、特に、導波路を有する受光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インターネットの普及、発展に伴い大容量通信の需要が増加し、大容量通信に向く、光による通信網の構築が急速に進んでいる。このような光通信網の構築に必要不可欠な光電変換部品のひとつである受光素子には、主として面型と導波路型の2つがある。
【0003】
面型受光素子は、層面と垂直方向に光が入射する。層の厚さ方向にはバイアスがかけられており、入射光の吸収(光吸収)により生成したキャリアが光電流として取り出される。一方、導波路型受光素子は、層の端面から信号光が入射するもので、入射後に吸収層で光吸収され減衰しながら導波路を伝搬する。吸収層には逆バイアスが加えられており、光の吸収で生成された光励起キャリアが光電流となって電気信号に変換される。
【0004】
このように、導波路型受光素子では、光の入射方向が光励起キャリアの走行方向と垂直の関係となるため、光電変換効率を決める光の入射方向の素子長と高速性を決める吸収層の厚さとを独立に設定する事が可能であり、高速・高効率な受光素子として適している。また、半導体基板、セラミックス基板等のプラットフォーム上に半導体レーザやいくつかの導波路型光デバイスを集積し、表面実装型の光機能デバイスを実現することにも適している。
【0005】
従来の一般的な導波路型受光素子について信号波長1.55μmの場合を例に挙げ、図8を参照して説明する。図8は、一般的な導波路型受光素子の構成を模式的に示す斜視図である。図8に示すように、この導波路型受光素子は、n+−InP基板100、このn+−InP基板100上に形成されたIn0.65Ga0.35As0.79P0.21低キャリア濃度層101、この低キャリア濃度層101上に形成されたp+−InP層102、このp+−InP層102上に形成されたP電極104、n+−InP基板100の裏面側に形成されたN電極103で構成される。
【0006】
信号光は、図示するように、低キャリア濃度層101の端面に入射される。導波路構造としては、屈折率の高いIn0.65Ga0.35As0.79P0.21低キャリア濃度層101がコア層であり、屈折率の低いn+−InP基板100とp+−InP層102とがそれぞれ下部クラッド、上部クラッド層となる。コア層とクラッド層との屈折率差によって導波光をコア層近傍に閉じ込めることができる。コア層であるIn0.65Ga0.35As0.79P0.21低キャリア濃度層101は、1.55μmの信号光を吸収できる材料であり、これによりこの導波路型受光素子は波長1.55μmの信号光を受光し、光電変換できる。
【0007】
なお、下記特許文献1には、光を分波、合波するための集積型光制御素子が開示されている。この集積型光制御素子には、多層反射膜が用いられている。また、特許文献2には、導波路型光フィルタ装置が開示されている。いずれも光電変換を行なう受光素子ではないが、本願の説明の上で登場する構成要素に一部参考となる場合があるのでここで挙げておく。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−234033号公報
【特許文献2】
特開平9−68681号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
図8に示すような素子は、多波長の混合光を個別の波長ごとに光検出・光電変換することができない。また、導波路に対し平行に、バンドギャップ波長が入射光波長より長い光吸収層を設ける構成となっており、ここで導波路の端面サイズがμmオーダーと小さいので光結合効率が確保しにくく、一般的に効率よく光電変換することが難しい。また、850nmなどの短波長と1.3μmの長波長のように比較的離れた波長の混合光からそれぞれを光検出しようとすると、そもそも吸収感度を持つ材料系がそれらの光で異なるため、光をフイルターで分離後に個別のそれそれに対する受光素子を設ける必要がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、多波長の信号光を分離的に光電変換することが可能な受光素子を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様に係る受光素子は、第1のバンドギャップ波長を有する導波路層と、前記導波路層に設けられ、前記導波路層を通過する光を導波方向に該光の波長に依存して反射または透過する反射層と、前記導波路層近傍に設けられ、前記第1のバンドギャップ波長より長い第2のバンドギャップ波長を有する光吸収層とを具備することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の別の態様に係る受光素子は、第1のバンドギャップ波長を有する光ガイド層と、前記光ガイド層近傍に設けられ、前記第1のバンドギャップ波長より長い第2のバンドギャップ波長を有する第1の光吸収層と、前記光ガイド層の端部に設けられ、前記光ガイド層を通過する光を導波方向と交わる方向に反射する反射面と、前記反射面により反射された光が入射される第2の光吸収層を有する光電変換部とを具備することを特徴とする。
【0013】
また、本発明のさらに別の態様に係る受光素子は、第1の光吸収層と、前記第1の光吸収層に交わるように入射される光が到達する位置に設けられ、該到達した光を前記第1の光吸収層が広がる方向とほぼ平行の方向に反射する反射面と、前記反射された光を通過させかつ第1のバンドギャップ波長を有する光ガイド層と、前記光ガイド層近傍に設けられ、前記第1のバンドギャップ波長より長い第2のバンドギャップ波長を有する第2の光吸収層とを具備することを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の一態様に係る受光素子によれば、導波路層に設けられた反射層を介して複数の光電変換部を配置することができる。反射層は波長依存性を有しており光の波長により反射または透過する。したがって、反射層を挟んで異なる波長に相当する導波路層とすることができ、さらに導波路層近傍に設けられる光吸収層によりそれらの波長に対応してそれぞれ光電変換を行なうことができる。よって、多波長の信号光を分離的に光電変換することが可能な受光素子が提供できる。
【0015】
ここで、実施態様としての受光素子は、前記導波路層に設けられ、前記反射層を透過した光を前記導波路層の広がる方向に反射する第2の反射層をさらに具備してもよい。これにより、第2の反射層により反射されて光が導波路層内に留まるので効率的に光電変換することができる。
【0016】
また、ここで、前記導波路層に設けられ、前記第2の反射層に反射された光を該第2の反射層に帰還するように反射する再反射層をさらに具備してもよい。これにより、第2の反射層と再反射層とで多重反射光が得られさらに効率的に光電変換することができる。
【0017】
また、実施態様としての受光素子は、前記導波路層に設けられ、前記反射層に反射された光を該反射層に帰還するように反射する再反射層をさらに具備してもよい。これにより、反射層と再反射層とで多重反射光が得られ効率的に光電変換することができる。
【0018】
また、実施態様として、前記反射層は、DBR(distributed Bragg reflector)構造である。DBR構造により、光の反射、透過の波長依存性を所望に制御するよう構成できる。
【0019】
また、実施態様として、前記光吸収層は、厚く形成された部位と薄く形成された部位とを有する。複数の光電変換部に対応して光吸収層を厚く形成すればさらに効率的に光電変換することができる。
【0020】
また、本発明の別の態様に係る受光素子によれば、導波路型の光電変換部で光を光電変換し、さらに、導波路への光の入射方向と異なる方向に光を伝播させる反射面を設けて反射後の光についても光電変換する。よって、反射面を挟んで多波長の信号光を分離して光電変換することが可能な受光素子が提供できる。また、反射面を挟む光電変換部の構成(例えば材料系)の自由度が上記一態様の場合より高い。
【0021】
ここで、実施態様としては、前記第1の光吸収層のバンドギャップ波長は、前記第2の光吸収層のバンドギャップ波長より短い。このような場合には、第1の光吸収層におけるバンドギャップ波長を得る材料系と、第2の光吸収層におけるバンドギャップ波長を得る材料系とが異なるように集積化することも容易に可能になる。これにより、より幅の広い多波長の信号光を光電変換できる。
【0022】
また、実施態様として、前記光電変換部は、前記第2の光吸収層に入射された光を該入射方向に帰還するように反射する高反射膜をさらに有してもよい。この帰還により第2の光吸収層で光電変換効率をより高めることができる。
【0023】
また、実施態様としての受光素子は、前記反射面と前記光電変換部との間に、該反射面により反射された光が入射する波長選択性のある反射層をさらに具備してもよい。これにより、波長選択性により反射される光について、光ガイド層を有する光電変換部での光電変換効率を高めることができる。
【0024】
また、実施態様として、前記光ガイド層は、半導体基板の表面側主面上に形成され、前記反射面により反射される光の方向は、前記半導体基板側であり、前記光電変換部は、前記半導体基板の裏面側主面上に設けられている。第2の光吸収層を有する光電変換部は、このように基板の裏面側に設けることもできる。
【0025】
また、本発明のさらに別の態様に係る受光素子によれば、面型(面入射型)の光電変換部で光を光電変換し、さらに、この入射光の方向と異なる方向に光を伝播させる反射面を設けて反射後の光についても導波路型の光電変換部により光電変換する。よって、反射面を挟んで多波長の信号光を分離的に光電変換することが可能な受光素子が提供できる。また、光のもともとの入射部が層の端面ではなく主面となるので光結合が容易になる。
【0026】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る受光素子を模式的に示す構造図である。この受光素子は、1.3μm(λ1)と1.55μm(λ2)の2波長の混合光が入射し、これらの波長ごとに分離的に電気信号として検出するものである。
【0027】
構成を述べるに、半絶縁性InP基板1上にn−InPバッファ層2が、このn−InPバッファ層2上にn−InGaAsPクラッド層3(バンドギャップ波長1.1μm)が、このn−InGaAsPクラッド層3上にn−InGaAsPコア層4(バンドギャップ波長1.2μm)が、それぞれ形成されている。コア層4の図で左側端面から光が入射し右方向に伝播する。n−InGaAsPクラッド層3を含んでこれより上の層は、n−InPバッファ層2上一部では積層がない。n−InPバッファ層2上でn−InGaAsPクラッド層3等の積層のない部位には、N電極12が位置する。
【0028】
n−InGaAsPコア層4には、DBR層9a、9b、10a、10bが形成されている。DBR層9a、9bは、波長1.3μmの光に対する反射面であり対向して対をなすように、光の伝播方向とほぼ垂直に設けられる。DBR層9aの反射率をDBR層9bのそれより小さくし、これらの間に波長1.3μmの光が多重反射するようにする。さらに、DBR層9a、9bは、波長1.55μmの光を透過する性質のものとする。
【0029】
DBR層10a、10bは、波長1.55μmの光に対する反射面であり対向して対をなすように、DBR層9bを透過した光の伝播方向とほぼ垂直に設けられる。DBR層10aの反射率をDBR層10bのそれより小さくし、これらの間に波長1.55μmの光が多重反射するようにする。
【0030】
n−InGaAsPコア層4上には、n−InGaAsPクラッド層5(バンドギャップ波長1.1μm)が形成される。n−InGaAsPクラッド層5には、上記のDBR層9aおよび同9bに対応して、またDBR層10aおよび同10bに対応して部分的に凹部が形成される。この凹部を含むようにn−InGaAsPクラッド層5上には、n−InGaAs光吸収層6が形成される。これにより、n−InGaAs光吸収層6は、DBR層9a、同9b間に対応して、およびDBR層10a、同10b間に対応して層厚が厚くなり、光吸収効率が向上される。
【0031】
さらにn−InGaAs光吸収層6上には、n−InPウィンドウ層7が形成され、n−InPウィンドウ層7には、上記のDBR層9a、同9b間に対応して、またDBR層10a、同10b間に対応してZnが拡散されたp+領域8が形成されている。これらのp+領域8上には、それぞれP電極11a、11bが形成されている。N電極12、P電極11a、11bを除くそれらを囲む表面は、例えばSiNxからなる絶縁体(誘電体)の膜13によって覆われる。さらに、光の入射面に相当する面には反射防止膜14が被覆される。N電極12は2つの光電変換部に共通であり、P電極11a、11bはそれぞれに個別に設けられ、それぞれの波長の光に対応する電流の取り出しを行なう。
【0032】
次に、図1に示す受光素子の製造手順について概略的に説明する。まず、半絶縁性InP基板1を用意し、用意された半絶縁性InP基板1上に、n−InPバッファ層2、n−InGaAsPクラッド層3、n−InGaAsPコア層4を、順次MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法等の成膜技術を用いて結晶成長させる。
【0033】
次に、検出する波長に対応したDBR層9a、9b、および同10a、10bを、n−InGaAsPコア層4に例えば電子線露光の技術を用いて形成する。ここで、DBR層9a、同9bの間が短波長の光検出・光電変換の素子部分に対応し、DBR層10a、同10bの間が長波長の光検出・光電変換の素子部分に対応する。DBR層9a、同9bのうち入射側のDBR層9aの反射率は、その対向側のDBR層9bの反射率より小さく設定して形成する。また、同様に、DBR層10a、同10bのうち入射側のDBR層10aの反射率は、その対向側のDBR層10bの反射率より小さく設定して形成する。
【0034】
次に、DBR層9a、9b、10a、10bが形成されたn−InGaAsPコア層4上にn−InGaAsPクラッド層5を形成する。そして、形成されたn−InGaAsPクラッド層5に、受光部に相当する部分とするために凹部を、DBR層9a、同9bの間、および同10a、同10bの間に対応して加工・形成する。
【0035】
さらに、この加工・形成された凹部を埋め込むようにn−InGaAsPクラッド層5上に、n−InGaAs光吸収層6を形成する。これにより、n−InGaAs光吸収層6は、DBR層9a、同9bの間、および同10a、同10bの間に対応して部分的に層厚(吸収層厚)が厚く形成される。続いて、n−InGaAs光吸収層6上にn−InPウインドウ層7をMOCVD法等の成膜技術を用いて結晶成長させる。
【0036】
次に、n−InPバッファ層2に達するように、上記形成された積層構造の一部領域をエッチング除去する。この一部領域は、DBR層9a、9b、10a、10b、n−InGaAsPクラッド層5の凹部が含まれないよう選ばれる。そして、上面およびエッチングの側面、底面に例えばSiNxからなる膜13を形成する。
【0037】
次に、DBR層9a、同9bの間、および同10a、同10bの間に対応して膜13を除去し、n−InPウインドウ層7にZnを拡散してp+領域8を形成する。形成されたp+領域8上には、電極として、P電極11a、11bを形成する。また、エッチング底面上の膜13の一部を除去し、その部分にN電極12を形成する。さらに、光の入射面に反射防止膜14を形成する。以上により図1に示す受光素子が製造される。
【0038】
このような構造の受光素子は、DBR層9bが、導波路層(導波路層はコア層4、クラッド層3、5からなる)を通過する光をその波長に依存して反射または透過する反射層となる。DBR層10bは、DBR層9bを透過した光を反射する第2の反射層である。また、DBR層9aがDBR層9bに反射された光をDBR層9bに帰還するよう反射する再反射層である。さらに、DBR層10aがDBR層10bに反射された光をDBR層10bに帰還するよう反射する再反射層である。
【0039】
本実施形態の受光素子によれば、導波路層に設けられた反射層としてのDBR層9bを介して複数の光電変換部を配置することができる。この反射層は波長依存性を有しており光の波長により反射または透過する。したがって、反射層を挟んで異なる波長に相当する導波路層とすることができ、さらに導波路層近傍に設けられる光吸収層6によりそれらの波長に対応してそれぞれ光電変換を行なうことができる。
【0040】
また、導波路層に入射した波長1.3μmの光(短波長側の光)はDBR層9a、9bにより繰り返し反射し、これにより、n−InGaAsPクラッド層5に凹部を形成したことによって厚く形成された光吸収層6の部分で効率よく吸収され光電変換される。また、波長1.55μmの光(長波長側の光)は、DBR層9a、9bの奥に形成されたDBR層10a、10bと、光吸収層6とにより同様に効率よく光電変換される。
【0041】
実際に製造して試験したところでは、1.3μmと1.55μmとの混合光を入射させ、それぞれ50%、60%の変換効率で光電変換が可能であった。なお、以上の説明は、PD(photo diode)タイプの受光素子を例に挙げているが、同様にAPD(avalanche photo diode)タイプの受光素子にも適用可能である。波長に関しても2波長に限らず適用可能である。すなわち、DBR層10bの奥にさらにDBR層を設ける構成とすることもできる。また、反射層にはDBR層ではないものを用いてもよい。材料系に関しても、InP系やGaAs系の化合物半導体に限らず、SiやGaN系の半導体、化合物半導体でも適用可能である。
【0042】
次に、本発明の別の実施形態に係る受光素子について図2ないし図4を参照して説明する。図2は、本発明の別の実施形態に係る受光素子を模式的に示す構造図である。この受光素子は、波長850nmと波長1300nm(1.3μm)の混合光が入射し、これらの波長ごとに分離的に電気信号として検出するものである。
【0043】
構成を説明するに、半絶縁性のGaAs基板15上にn−GaAsバッファ層16が、n−GaAsバッファ層16上にバンドギャップ波長が入射光波長より短い光ガイド層としてのn−AlGaAsガイド層17a、17b(バンドギャップとしてはガイド層17aがガイド層17bより大)が、n−AlGaAsガイド層17b上にバンドギャップ波長が入射光波長より長いi−(Al)GaAs光吸収層18が、i−(Al)GaAs光吸収層18上にバンドギャップ波長が入射光波長より短いp−AlGaAsクラッド層19が、それぞれ形成されている。n−AlGaAsガイド層17b、i−(Al)GaAs光吸収層18、p−AlGaAsクラッド層19は、いわゆるpin構造である。
【0044】
これらのn−GaAsバッファ層16、n−AlGaAsガイド層17a、17b、i−(Al)GaAs光吸収層18、およびp−AlGaAsクラッド層19には形成領域の違いがあり、この違いにより、GaAs基板15が上面側となる部位(図2では図示せず)、n−GaAsバッファ層16が上面側となる部位(同)、n−AlGaAsガイド層17bが上面側となる部位(図で左部)とが存在する。p−AlGaAsクラッド層19まで形成された部位に対応して短波長の光の検出・光電変換の領域となる。
【0045】
光の入射は、ガイド層17a、17bの図で左側端面からなされ右方向に伝播する。n−GaAsバッファ層16、n−AlGaAsガイド層17a、17b、i−(Al)GaAs光吸収層18、およびp−AlGaAsクラッド層19の各右端面には、この入射した光を上方向に反射する反射面30が傾斜して連続的に形成されている。
【0046】
また、この上方向に反射された光が到達する位置であってp−AlGaAsクラッド層19の上には、さらにInGaAsP接着層20が、InGaAsP接着層20上にはInGaAsP/InPからなる波長選択用のDBR層21が、DBR層21上にはn−InPクラッド層22が、n−InPクラッド層22上にはi−InGaAs光吸収層23が、i−InGaAs光吸収層23上にはp−InPクラッド層24が、それぞれ形成されている。
【0047】
i−InGaAs光吸収層23、p−InPクラッド層24は、InGaAsP接着層20、DBR層21、n−InPクラッド層22と形成領域が異なり、図示するようにn−InPクラッド層22が上面側となる部位が存在する。n−InPクラッド層22、i−InGaAs光吸収層23、p−InPクラッド層24はいわゆるpin構造である。
【0048】
また、上記反射面30の後ろ側には、n−InPクラッド層22の上面と同じ高さになるまでにポリイミド膜31が充填・形成されている。さらに、p−AlGaAsクラッド層19が上面となっている部位にはP電極25が、n−GaAsバッファ層16が上面となっている部位にはN電極(図2では図示せず)が、それぞれ形成される。これらの電極は、i−(Al)GaAs光吸収層18で発生するキャリアによる電流の取り出し電極である。
【0049】
また、p−InPクラッド層24の上面にはP電極26が、n−InPクラッド層22が上面となっている部位にはN電極27が、それぞれ形成される。これらの電極は、i−InGaAs光吸収層23で発生するキャリアによる電流の取り出し電極である。さらに、P電極25、26、N電極27等を除くそれらを囲む表面は、例えばSiNxからなるパッシベーション膜29によって覆われている。
【0050】
次に、図2に示す受光素子の製造手順について概略的に説明する。まず、半絶縁性GaAs基板15を用意し、用意された半絶縁性GaAs基板15上にn−GaAsバッファ層16、n−AlGaAsガイド層17a、同17b、i−(Al)GaAs光吸収層18、p−AlGaAsクラッド層19を、順次MOCVD法等の成膜技術を用いて結晶成長させる。
【0051】
また、並行して、図3に示すような、基板上に形成された積層構造を用意する。図3は、図2に示す受光素子を製造するのに必要な別基板による積層構造を模式的に示す構成図である。すなわち、p−InP基板33上にp−InPクラッド層24、i−InGaAs光吸収層23、n−InPクラッド層22、波長選択用DBR層21、InGaAsP接着層20を、順次MOCVD法等の成膜技術を用いて結晶成長させる。
【0052】
そして次に、半絶縁性GaAs基板15上の上記積層構造と図3に示す積層構造とを、両基板15、33が外側になるようにして対向接触させこれらを接着させる。この接着には、例えばPを含む雰囲気中で約730℃のアニールを行なう。接着後にp−InP基板33は除去する。
【0053】
次に、接着形成された、基板15上のn−GaAsバッファ層16からp−InPクラッド層24までの構造に対して複数回の深さの異なる例えばRIE(reactive ion etching)などのエッチングを行ないメサ構造を形成する。すなわち、このエッチングで、最初にn−InPクラッド層22の露出部位(図示の通り)を形成し、次にp−AlGaAsクラッド層19の露出部位(図示の通り)を形成する。次に、n−GaAsバッファ層16からp−AlGaAsクラッド層19までの層を図示するように逆メサが形成されるようにエッチング、除去する。これには、Br系のエッチャントを用いこれらの層の<011>方向にエッチングを行なう。この<011>方向のエッチングは他の公知の方法を用いてもよい。
【0054】
さらに、n−AlGaAsガイド層17bの露出部位(図示の通り)を形成し、次にn−GaAsバッファ層16の露出部位(図示せず)を形成し、最後に半絶縁性GaAs基板15の露出部位(図示せず)を形成する。n−GaAsバッファ層16からp−AlGaAsクラッド層19の積層部分であって、逆メサ形状にエッチングされた端面は反射面30となる。反射面30の後ろ側には、クラッド層22の上面と同じ高さになるまでにポリイミド膜31を充填・形成する。
【0055】
以上の工程により残存した光吸収層18が短波長側の光検出・光電変換部位になる。ガイド層17bが露出した領域は光検出・光電変換部位に光を導波する受動導波部になる。接着部分の残存した領域は、長波長側の光検出・光電変換部位、およびN電極27を形成するためのn−InPクラッド層22の露出した領域になる。なお、以上のメサ構造形成後にエッチングの側面、底面を含めて表面に例えばSiNxからなるパッシベーション膜29を形成する。
【0056】
次に、電極形成のため、パッシベーション膜29の一部をエッチング除去して、p−AlGaAsクラッド層19上にP電極25を、p−InPクラッド層24上にP電極26を、それぞれ形成する。P電極25、26には、AuZnアロイを用いることができる。また、同様にパッシベーション膜29の一部をエッチング除去して、n−InPクラッド層22上にN電極27を、n−GaAsバッファ層16上にN電極(図2では図示せず)を、それぞれ形成する。これらのN電極には、AuGeアロイ/Ni/Auの積層構造を用いることができる。
【0057】
図4は、以上のようにして製造された受光素子を上方向から見た状態として概略的に示す図である。図4において、すでに説明した部位と同一のものには同一符号を付してある。図4では、n−GaAsバッファ層16上に形成されたN電極32が示されている。また、P電極25、26、N電極27、32は、Ti/Pt/Auの積層構造のパターンが接続され、全体として図4に示すように形状にされている。なお、基板15上に形成された積層構造をへきかいして分離し複数の受光素子とした後には、その露出面に例えばSiNxからなる反射防止膜28を被覆しておく。以上により図2に示す受光素子が製造される。
【0058】
この実施形態の受光素子では、光吸収層18を有する導波路型の光電変換部で光を光電変換し、さらに、導波路への光の入射方向と異なる方向に光を伝播させる反射面30を設けて反射後の光についても光吸収層23で別の光電変換をする。よって、複数の波長の信号光を分離して光電変換することができる。
【0059】
より具体的には、端面から入射した短波長側の光(850nm)はガイド層17bに沿って伝播して光吸収層18で光電変換される。長波長側の光(1300nm)は、光吸収層18では吸収を受けずに反射面30に伝播する。反射面30では基板15から離れる方向に反射され、さらに波長選択用のDBR層21に達してこれを透過したあと光吸収層i−InGaAs光吸収層23で光電変換される。
【0060】
このような原理に加えて、P電極26を高反射膜、反射防止膜28を波長1300nmに対する反射率が適当なのもであるとした場合には、これらの膜の間で波長1300nmの光が多重反射し光吸収層23の領域を往復することになる。これにより光電変換効率はなお向上する。このような効率の向上は、短波長側の光(850nm)においても、DBR層21と反射防止膜28との間で多重反射を生じしめることで達成される。
【0061】
また、この実施形態では、異なる材料系を用いなければ検出できないような波長の差の大きい混合光の場合でも受光素子が容易に単一的に集積化できる。すなわち、基板張り合わせ技術を使うことで、結晶成長が不可能な異なる材料の組み合わせによる集積化を容易に信頼性高く行なうことができる。
【0062】
この実施形態もPDタイプの受光素子のみならず、APDタイプの受光素子にも適用可能である。波長に関しても2波長に限らず適用可能である。すなわち、例えばi−InGaAs光吸収層23をより短波長のバンドギャップを有するi−InGaAsP層としておいて、より長波長のバンドギャップを有するi−InGaAsP層光吸収層、p−InPクラッド層24のような積層構造をこの上にさらに積み重ねるように形成すればよい。なお、DBR層21は波長選択性を有するものであれば他のものを用いてもよい。材料系に関しても、InP系やGaAs系の化合物半導体に限らず、SiやGaN系の半導体、化合物半導体でも適用可能である。
【0063】
次に、本発明のさらに別の実施形態に係る受光素子について図5を参照して説明する。図5は、本発明のさらに別の実施形態に係る受光素子を模式的に示す構造図である。同図において、すでに説明した構成要素と同一のものには同一符号を付してある。この受光素子の図2に示した受光素子との違いは、入射光の反射後になされる光吸収・光電変換を基板34の裏面側に設けられた構造により行なうようにしたことである。
【0064】
すなわち、この場合には、基板として半絶縁性GaP基板34を用い、半絶縁性GaP基板34とガイド層17aとの接合はInGaP接着層36を介してなされる。また、半絶縁性GaP基板34の裏面側でのDBR層21との接合はInGaAlP接着層35を介してなされる。
【0065】
この受光素子でも、例えば波長850nmと波長1300nmの混合光が入射し、これらの波長ごとに分離的に電気信号として検出することができる。電気信号として取り出される電極も、波長850nmに対応してP電極25、N電極32、波長1300nmに対応してP電極26、N電極27と、図2に示した実施形態の場合と同様である。
【0066】
図5に示す受光素子では、検出する光が基板34を厚さ方向に通過する構成となるが、この通過する光の波長に対してGaP基板34がより短波長側までほとんど透明であり光電変換の効率を劣化させることはない。
【0067】
次に、本発明のさらに別の実施形態に係る受光素子について図6、図7を参照して説明する。図6は、本発明のさらに別の実施形態に係る受光素子を模式的に示す構造図である。同図において、すでに説明した構成要素と同一相当のものには同一符号を付してある。この受光素子の図2に示した受光素子との違いは、図示するように、光の入射を端面ではなく層の主面に対して垂直方向に行なうようにしたことである。
【0068】
このため、短波長側の光検出・光電変換が面型タイプの素子部分で、長波長側の光検出・光電変換が導波路型タイプの素子部分で、それぞれなされ、図2に示したものとは反対になる(材料系も同様に反対になる)。構造的には、p−InPクラッド層24とn−AlGaAsガイド層17aとの接合がInGaP接着層36を介してなされる。また、半絶縁性InP基板1と波長選択用のDBR層21との接合は、DBR層21上に形成された高反射膜39を介してInGaAlP接着層35によりなされる。
【0069】
さらに、P電極26aは環状になっており環内側が光の入射部となる。この環内側には例えばSiNxからなる反射防止膜26が形成される。また、光吸収層18を通過し反射面30により反射される光が散乱しやすいので、P電極38を高反射のものとし、同様に接着層35上にも高反射膜39を設け、端面を被覆する膜37にも高反射のものを用いている。これらの高反射膜により、散乱した光による光吸収層23での光検出・光電変換を行ない変換効率の改善を図っている。
【0070】
図7は、図6に示す受光素子を上方向から見た状態として概略的に示す図である。図7において、すでに説明した部位と同一のものには同一符号を付してある。図7では、n−InPクラッド層22上に形成されたN電極32が示されている。
【0071】
図6、図7に示す受光素子では、面型(面入射型)の光電変換部で光を光電変換し、さらに、この入射光の方向と異なる方向に光を伝播させる反射面30を設けて反射後の光についても導波路型の光電変換部により別の光電変換をする。よって、多波長の信号光を高効率で分離して光電変換することが可能になる。また、光のもともとの入射部が層の端面ではなく主面となるので光結合が容易になる。
【0072】
以上説明したように、各実施形態の受光素子は、複数の波長の混合光を波長ごとに電気信号として検出し取り出すことができる。また、集積型の半導体装置として製作容易に構成できかつ変換効率を確保することができる。
【0073】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、多波長の信号光を分離的に光電変換することが可能な受光素子が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る受光素子を模式的に示す構造図。
【図2】本発明の別の実施形態に係る受光素子を模式的に示す構造図。
【図3】図2に示す受光素子を製造するのに必要な別基板による積層構造を模式的に示す構成図。
【図4】図2に示す受光素子を上方向から見た状態として概略的に示す図。
【図5】本発明のさらに別の実施形態に係る受光素子を模式的に示す構造図。
【図6】本発明のさらに別の実施形態に係る受光素子を模式的に示す構造図。
【図7】図6に示す受光素子を上方向から見た状態として概略的に示す図。
【図8】一般的な導波路型受光素子の構成を模式的に示す斜視図。
【符号の説明】
1…半絶縁性InP基板 2…n−InPバッファ層 3…n−InGaAsPクラッド層 4…n−InGaAsPコア層 5…n−InGaAsPクラッド層 6…n−InGaAs光吸収層 7…n−InPウィンドウ層 8…p+領域 9a、9b、10a、10b…DBR層 11a、11b…P電極 12…N電極 13…膜(SiNx膜) 14…反射防止膜 15…半絶縁性GaAs基板 16…n−GaAsバッファ層 17a、17b…AlGaAsガイド層 18…i−(Al)GaAs光吸収層 19…p−AlGaAsクラッド層20…InGaAsP接着層 21…InGaAsP/InP波長選択用DBR層 22…n−InPクラッド層 23…i−InGaAs光吸収層 24…p−InPクラッド層 25、26、26a…P電極 27、32…N電極 28…反射防止膜 29…パッシベーション膜 30…反射面 31…ポリイミド膜 33…p−InP基板 34…半絶縁性GaP基板 35…InGaAlP接着層 36…InGaP接着層 37…膜(高反射膜) 38…高反射のP電極 39…高反射膜
Claims (12)
- 第1のバンドギャップ波長を有する導波路層と、
前記導波路層に設けられ、前記導波路層を通過する光を導波方向に該光の波長に依存して反射または透過する反射層と、
前記導波路層近傍に設けられ、前記第1のバンドギャップ波長より長い第2のバンドギャップ波長を有する光吸収層と
を具備することを特徴とする受光素子。 - 前記導波路層に設けられ、前記反射層を透過した光を前記導波路層の広がる方向に反射する第2の反射層をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の受光素子。
- 前記導波路層に設けられ、前記第2の反射層に反射された光を該第2の反射層に帰還するように反射する再反射層をさらに具備することを特徴とする請求項2記載の受光素子。
- 前記導波路層に設けられ、前記反射層に反射された光を該反射層に帰還するように反射する再反射層をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の受光素子。
- 前記反射層は、DBR構造であることを特徴とする請求項1記載の受光素子。
- 前記光吸収層は、厚く形成された部位と薄く形成された部位とを有することを特徴とする請求項1記載の受光素子。
- 第1のバンドギャップ波長を有する光ガイド層と、
前記光ガイド層近傍に設けられ、前記第1のバンドギャップ波長より長い第2のバンドギャップ波長を有する第1の光吸収層と、
前記光ガイド層の端部に設けられ、前記光ガイド層を通過する光を導波方向と交わる方向に反射する反射面と、
前記反射面により反射された光が入射される第2の光吸収層を有する光電変換部と
を具備することを特徴とする受光素子。 - 前記第1の光吸収層のバンドギャップ波長は、前記第2の光吸収層のバンドギャップ波長より短いことを特徴とする請求項7記載の受光素子。
- 前記光電変換部は、前記第2の光吸収層に入射された光を該入射方向に帰還するように反射する高反射膜をさらに有することを特徴とする請求項7記載の受光素子。
- 前記反射面と前記光電変換部との間に、該反射面により反射された光が入射する波長選択性のある反射層をさらに具備することを特徴とする請求項7記載の受光素子。
- 前記光ガイド層は、半導体基板の表面側主面上に形成され、
前記反射面により反射される光の方向は、前記半導体基板側であり、
前記光電変換部は、前記半導体基板の裏面側主面上に設けられている
ことを特徴とする請求項7記載の受光素子。 - 第1の光吸収層と、
前記第1の光吸収層に交わるように入射される光が到達する位置に設けられ、該到達した光を前記第1の光吸収層が広がる方向とほぼ平行の方向に反射する反射面と、
前記反射された光を通過させかつ第1のバンドギャップ波長を有する光ガイド層と、
前記光ガイド層近傍に設けられ、前記第1のバンドギャップ波長より長い第2のバンドギャップ波長を有する第2の光吸収層と
を具備することを特徴とする受光素子。
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JP6829923B1 (ja) * | 2020-08-03 | 2021-02-17 | 株式会社京都セミコンダクター | 受光素子ユニット |
-
2003
- 2003-04-18 JP JP2003114898A patent/JP2004319916A/ja not_active Withdrawn
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