JP2004319838A - 強磁性金属粉末の凝集体及びそれを用いた磁気記録媒体 - Google Patents

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Masashi Aonuma
政志 青沼
Hiroaki Doshita
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Abstract

【課題】短波長領域におけるノイズ低減に寄与する、高分散性の強磁性金属粉末の凝集体及びそれを用いたMRヘッドに適した高記録密度用磁気記録媒体を提供すること。
【解決手段】平均長軸長が25nm以上50nm未満の強磁性金属粉末の凝集体であって、該凝集体の平均粒子径が300〜850μmであり、かつ飽和磁化量(σs)が80〜130A・m/kgであることを特徴とする強磁性金属粉末の凝集体。上記強磁性金属粉末の凝集体を結合剤中に分散してなる磁性層を有する磁気記録媒体。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は強磁性金属粉末の凝集体及びそれを用いた塗布型磁気記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録技術は、媒体の繰り返し使用が可能であること、信号の電子化が容易であって周辺機器との組み合わせによるシステムの構築が可能であること、信号の修正も簡単にできることなど、他の記録方式にはない特徴を有することから、ビデオ、オーディオ、コンピューター用途などを始めとして様々な分野で幅広く利用されてきた。
【0003】
そして、機器の小型化、記録再生信号の質の向上、記録の長時間化、記録容量の増大などの要求に対応するために、記録媒体に関しては、記録密度、信頼性、耐久性をより一層向上させることが常に望まれてきた。
【0004】
近年、オフィスコンピュータの普及に伴って、外部記憶媒体としてコンピュータデータを記録するための磁気テープ(所謂、バックアップテープ)の研究が盛んに行われている。このような用途の磁気テープの実用化に際しては、特にコンピュータの小型化、情報処理能力の増大と相まって、記録の大容量化、小型化を達成するために記録容量の向上が強く要求される。また磁気テープの使用環境の広がりによる幅広い環境条件下(特に、変動の激しい温湿度条件下など)での使用、データ保存に対する信頼性、更に高速での繰り返し使用による多数回走行におけるデータの安定した記録、読み出し等の性能に対する信頼性なども従来に増して要求される。
【0005】
従来から、デジタル信号記録システムにおいて使用される磁気テープは、システム毎に決められており、所謂DLT型、3480、3490、3590、QIC、D8型、LT0、あるいはDDS型対応の磁気テープが知られている。そしてどのシステムにおいても、用いられる磁気テープは、非磁性支持体上の一方の側に、膜厚が0.2〜3.0μmと比較的厚い重層構成もしくは単層構造の強磁性粉末、結合剤、及び研磨剤を含む磁性層が設けられており、また他方の側には、巻き乱れの防止や良好な走行耐久性を保つために、バックコート層が設けられている。しかし一般に上記のように比較的厚い単層構造の磁性層においては、出力が低下するという厚み損失の問題がある。
【0006】
近年、コンピュータデータを記録再生するための磁気記録再生システムにおいて、薄膜磁気ヘッドを組み込んだシステムが実用化されている。薄膜磁気ヘッドは、小型化やマルチトラックヘッドに加工し易いために、特に磁気テープを記録媒体としたシステムでは、薄膜磁気ヘッドのマルチトラック固定ヘッドが多く利用されている。薄膜磁気ヘッドの利用によって、小型化によるトラック密度の向上や記録効率の向上が可能となり、高密度の記録を実現できると共に、マルチトラック化によりデータの転送速度の向上も可能になる。薄膜磁気ヘッドは、磁束の時間変化に応答する誘導型ヘッドと、磁束の大きさに応答する磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)に大別できる。電磁誘導を動作原理とする磁気ヘッド(誘導型磁気ヘッド)が用いられ普及している。だが更に高密度記録再生領域で使用するには限界が見え始めている。すなわち、大きな再生出力を得るためには再生ヘッドのコイル巻数を多くする必要があるがインダクタンスが増加し高周波での抵抗が増加し結果として再生出力が低下する問題があった。近年MR(磁気抵抗)を動作原理とする再生ヘッドが提案され、ハードデイスク等で使用されている。MRヘッドは誘導型磁気ヘッドに比較して数倍の再生出力が得られ、かつ誘導コイルを用いないため、インピーダンスノイズ等の機器ノイズが大幅に低下し、磁気記録媒体のノイズを下げることで大きなSN比を得ることが可能になってきた。誘導型ヘッドは平面構造のためにヘッドコイルの巻き数が少なく、起磁力を大きくすることが困難となり、従って再生出力が十分得られないと云う問題がある。このため、再生用には高い再生出力が得られ易いMRヘッドが用いられ、一方、記録用には誘導型のヘッドが用いられている。これらの磁気ヘッドは、通常一体型としてシステム中に組み込まれている。このような磁気記録システムでは、より速いデータ転送速度を実現できるリニア記録方式が採用されている。
【0007】
一方、小型カセットを用いた大容量の磁気情報の高転送速度のテープ記録を実現するため、ヘリカルスキャン方式のテープ記録装置に適用する回転ドラム搭載型MRヘッドの開発が進められている。また、オーディオ、ビデオ用途にあっては、音質及び画質の向上を実現するディジタル記録方式の実用化、ハイビジョンTVに対応した録画方式の開発に対応するために、従来のシステムよりも一層、短波長信号の記録再生ができ、かつヘッドと媒体の相対速度が大きくなっても信頼性、耐久性が確保された磁気記録媒体が要求されるようになっている。
【0008】
塗布型の磁気記録媒体の高密度記録化のために、従来より使用されていた磁性酸化鉄粉末に代わる鉄又は鉄を主体とする合金磁性粉末の使用及び磁性粉末の微細化などの磁性体の改良あるいはその充填性や配向性の改良などによって磁性層の磁気特性を向上させること、強磁性粉末の分散性を向上させること、さらには磁性層の表面性を高めることなどの観点から種々の方法が検討され提案されてきた。
【0009】
例えば、特許文献1には、一次粒子の平均長軸径が0.05〜0.25μmの金属磁性粒子からなる二次凝集体であり、当該二次凝集体の平均粒径が300〜800μm、粒径の上限値が2000μmであって、安息角が38〜45度である磁気記録用金属磁性粒子の二次凝集体が開示され、この二次凝集体は各種結合剤樹脂及び有機溶媒との混練特性並びに有機溶媒を追加しての希釈分散特性に優れるため、得られた磁性塗膜の表面平滑性及び角型比を一層向上させることができ、更に、貯蔵効率及び輸送効率が高く、しかも良好な流動性を兼備するためにハンドリング性能に優れるとしている。
【0010】
一方、磁気記録媒体の高記録密度を達成するために、使用する信号の短波長化が強力に進められている。しかし、信号を記録する領域の長さが使用されている磁性体の大きさと比較できる大きさになると明瞭な磁化遷移状態を作り出すことができないので、実質的に記録不可能となる。このため使用する最短波長に対し充分小さな粒子サイズの磁性体を開発する必要があり、磁性体の微粒子化が長年にわたり指向されている。
【0011】
磁気記録用金属粉末では、粒子形状を針状にして形状異方性を付与し、目的とする抗磁力を得ている。高密度記録のためには、強磁性金属粉末を微細化して得られる媒体の表面粗さを小さくする必要があることは当業者によく知られたことである。しかしながら磁気記録用金属粉末を微細化すると、それにともなって針状比が低下して所望の抗磁力が得られなくなる。最近、ビデオ信号をデジタル化して記録するDVCシステムが提案されており、その用途に高性能なメタル蒸着テープ(MEテープ)およびメタル粉末(塗布)テープ(MPテープ)が使用される。DVCに使用されるMPテープは、抗磁力が大きく微細かつ粒度分布がすぐれた強磁性金属粉末が必要である。また実用形態の多くは、磁気信号を上書きする記録法なのでオーバーライト特性が良好であることが望まれている。
【0012】
本出願人は先にDVCシステムに好適な強磁性金属粉末およびそれを用いた磁気記録媒体を提案している(特許文献2)。この発明は磁性層を、抗磁力2000〜3000エルステッド、厚さ0.05〜0.3μm、表面粗さ1〜3nmに制御し、かつ特定の反転磁化成分率を規定した磁気記録媒体を提供するものである。
【0013】
更に、薄膜磁気ヘッドが組み込まれた磁気記録システムに用いられる磁気記録媒体として、非磁性支持体上に無機質非磁性粉末を結合剤に分散してなる下層非磁性層と、該非磁性層の上に強磁性金属粉末を結合剤に分散してなる上層磁性層を設けた磁気記録媒体が提案されている(特許文献3)。上記のように上層の磁性層を薄くすることで厚み損失による出力低下が抑制され、また高い記録密度が達成できるため、単層構造の磁性層を有する磁気記録媒体に比べてより大きな容量のデータの保存が可能となる。そしてここには、上層磁性層の厚みは、0.05〜1.0μm、好ましくは、0.05〜0.8μmであるとの記載があり、また具体的には、厚さ10μmのポリエチレンテレフタレート製支持体の一方の側に、厚さ2.7μmの非磁性層及び保磁力Hcが1800エルステッドである強磁性金属粉末を含有する厚さ0.3μmの磁性層が順に設けられたコンピュータデータ記録用の磁気記録媒体が記載されている。
【0014】
本出願人は、MRヘッドが組み込まれた磁気記録システムにおいて、該MRヘッドとこのシステムに用いられる磁気記録媒体との適応性について検討した。磁気記録媒体して、比較的厚い(0.3μm)磁性層を有するものを使用した場合には、磁性層の磁束が高くなるために、再生出力が出過ぎてMRヘッドが飽和し、再生波形が歪み、その結果、十分高いS/N値が得られず、エラーレートが増大し易くなったり、また一般に、高い記録密度を達成するためには記録再生波形(孤立再生反転波形)はよりシャープ(波形の半値幅が小さい)であることが望ましいが、磁性層が比較的厚い磁気記録媒体では、記録再生波形の半値幅が大きくなり、十分高い記録密度が得られないことが判明した。一方、非常に薄い(0.03μm)磁性層を有するものを使用した場合には、記録再生波形に歪みが生じ、その結果、同様に高いS/N値が得られず、また再生出力自体も低下し易くなることが判明した。磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)の特性に適合し、更に良好な電磁変換特性と耐久性および優れた保存安定性(耐候性)を示す磁気記録媒体の開発が望まれている。また、速いデータ転送速度でかつ高い密度の記録が可能なMR磁気ヘッドを組み込んだ磁気記録再生システムに好適に用いられる磁気記録媒体が要求されている。このため、出力、ノイズ、耐久性及び耐候性の改良、特に低ノイズ化が必要となってきた。低ノイズ化のためには磁性体粒子の微粒子化とσsを低減させること、及び磁性体粒子の分散性が重要である。
【0015】
【特許文献1】
特開2002−53903号公報
【特許文献2】
特開平7−326035号公報
【特許文献3】
特開平8−227517号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、短波長領域におけるノイズ低減に寄与する、高分散性の強磁性金属粉末の凝集体及びそれを用いたMRヘッドに適した高記録密度用磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、平均長軸長が25nm以上50nm未満の強磁性金属粉末の凝集体であって、該凝集体の平均粒子径が300〜850μmであり、かつ飽和磁化量(σs)が80〜130A・m/kgであることを特徴とする強磁性金属粉末の凝集体、及び
上記強磁性金属粉末の凝集体を結合剤中に分散してなる磁性層を有することを特徴とする磁気記録媒体により達成できる。
【0017】
本発明の好ましい態様は以下の通りである
(1)前記平均長軸長の変動係数が25%以下である、上記強磁性金属粉末の凝集体およびそれを用いた磁気記録媒体。
(2)上限粒子径が2000μmである、上記強磁性金属粉末の凝集体およびそれを用いた磁気記録媒体。
(3)鉄とコバルトを主成分とし、Co/Feが20原子%以上である、上記強磁性金属粉末の凝集体およびそれを用いた磁気記録媒体。
(4)鉄とコバルトを主成分とし、Co/Feが30原子%以上である、上記強磁性金属粉末の凝集体およびそれを用いた磁気記録媒体。
(5)結晶子サイズが80〜120Åである、上記強磁性金属粉末の凝集体およびそれを用いた磁気記録媒体。
(6)前記磁性層の平均厚みが0.02〜0.18μmであり、該磁性層の抗磁力が127.3kA/m以上である上記磁気記録媒体。
(7)支持体と磁性層の間に非磁性粉末と結合剤樹脂を主体とする非磁性層を設けてなり、且つ前記磁性層の表面粗さが中心面平均表面粗さで、3.0nm以下である上記磁気記録媒体。
(8)前記磁性層に含まれる上記強磁性金属粉末の凝集体(分散された強磁性金属粉末)の体積含有率が35%以上である上記磁気記録媒体。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の強磁性金属粉末の凝集体は、特定の平均長軸長を有した強磁性金属粉末の凝集体であって、特定の平均粒子径及び特定のσsを有したものであり、結合剤吸着量が多く、磁性層内で高分散性であり、かつ磁気的クラスター値が小さいのでノイズの低減に有効である。
上記強磁性金属粉末の平均長軸長、更には平均短軸長は、凝集体を解いた一次粒子の高分解能透過型電子顕微鏡写真から求められる値である。
上記強磁性金属粉末の凝集体の平均粒子径は、標準篩を用いて測定される値である。測定規格はJIS Z8801である。具体的には、網径が53〜2000μmの範囲である22種の篩から適宜6ケ位選択し、その網径の大きなものから順に用いて強磁性金属粉末の凝集体を落下させてその質量を求めて得られる分布で質量累積が50%となる網径を平均粒子径とする。
以下、本発明の強磁性金属粉末の凝集体を強磁性凝集体ともいう。
【0019】
強磁性凝集体の強磁性金属粉末はX線回折により、α−Feに相当するピークが存在するものである。強磁性金属粉末の平均長軸長は25nm以上50nm未満、好ましくは30〜45nmである。強磁性金属粉末の平均針状比{(長軸長/短軸長)の平均}は3.5〜6が好ましい。平均針状比が3.5より小さいときには、形状異方性に立脚した抗磁力Hcが小さくなり、角型比(SQ:Br/Bm)は低くなり、高密度記録に不利になる。強磁性金属粉末の平均針状比が3.5〜6のとき、平均針状比が大きいほど抗磁力Hcが大きくなる。強磁性金属粉末の平均短軸長は5〜12nmの範囲が好ましく、かつ結晶子サイズより小さいことが好ましい。また、短軸長の変動係数が30%以下及び/又は長軸長の変動係数が25%以下で小さいほうが好ましい。ここで、変動係数は、標準偏差/平均サイズをパーセント表示したものである。短軸長及び/又は長軸長の変動係数が小さいと、Hc分布が小さく、SFDの増加を抑える効果があり、特に50nm未満の超微粒子で顕著である。平均短軸長が5nm未満では、Hcの低下、減磁(△σs)の増加、が顕著であり、高密度記録媒体には適さない。平均短軸長が12nmを超えるとノイズが増加するため適さない。結晶子サイズより短軸長を小さくすることにより、Hcの低下、減磁(△σs)の増加、およびノイズの増加を抑えるのに効果が認められる。
【0020】
強磁性金属粉末の結晶子サイズ(X線回折によるα−Fe(110面と220面)のそれぞれのピーク(半値幅)より求めた値の平均値)は80〜120Åが好ましく、90〜110Åが更に好ましく、90〜105Åが特に好ましい。結晶子サイズが80Åより小さいとHcが小さくなり、また、耐候性が劣ってしまい好ましくない。120Åより大きいとノイズが大きくなるため不適当である。このようにノイズを下げるためには磁性層Br/Hcをコントロールすることと、磁性層に含まれる強磁性金属粉末の長軸長を小さくすることおよび結晶子サイズをコントロールすることが有効である。この傾向は特に高感度なヘッド例えば磁気抵抗型(MR)ヘッドを使用する系で顕著である。
【0021】
強磁性金属粉末、ひいては強磁性凝集体のσsは80〜130A・m/kg、好ましくは90〜120A・m/kg、更に好ましくは100〜110A・m/kgである。σsが80A・m/kgより低いと、SFDの劣化が著しく大きくなるとともに、Hcも大幅に小さくなり、高密度記録および熱揺らぎで不利となる。一方σsが130A・m/kgを超えると、Br(残留磁束密度)が高くなり、磁性層厚みを薄くしても、媒体の残留磁束(Φr)が高くなってしまい、MRヘッドを飽和して、波形歪みやパルスの非対称性が発生する等の悪影響を及ぼす。σsは高い程磁性層の耐久性が弱くなり、σsは低い程耐久性が良くなる。また、充填度を下げて残留磁束密度を低くすると、磁性層厚みを薄くすることにより、単位面積当たりの強磁性金属粉末の粒子の存在量が少なくなり、必要なS/Nを得ることができなくなってしまう。徐酸化を強化して酸化膜を厚くしてσsを低くするとSFDが大きくなるため、徐酸化条件を制御して、表面の酸化物層(酸化膜)を緻密にし、かつ極力薄くすることが有効である。平均長軸長が50nm未満でSFDの増加が顕著であるのは、粒子は長軸長、短軸長、軸比および酸化膜厚に分布をもっており、特に平均短軸長が小さくなると超常磁性成分が含まれてくるためと考えられる。更に、徐酸化してσsを下げることにより、超常磁性成分が更に増加するためと思われる。酸化膜を薄く均一化を保つには、Coの含有量が多いことが効果的であり、Co/Feで20原子%以上、好ましくは30原子%以上、更に好ましくは35〜100原子%の範囲内に保つことが良好であることが判った。特に好ましくは40〜80原子%、最も好ましくは45〜80原子%である。Coは粒子のコア部および表層部の双方に存在させることが好ましい。20原子%以下では、本発明の長軸長の範囲ではSFD、Hcおよび減磁(△σs)の改良効果が不十分である。100原子%を超えると粒子の形状保持が難しく、またSFD、Hcの改良効果がなくなるとともにσsの低下があり適さない。
強磁性金属粉末は微粒子になるほどCo添加量を多くすることが、本発明の効果を得るために有効な方法である。
【0022】
強磁性凝集体、ひいては強磁性金属粉末の抗磁力Hcは120〜250kA/mであることが好ましく、125〜240kA/mであることが更に好ましく、130〜230kA/mであるであることが特に好ましい。先に述べたように強磁性金属粉粒子の平均長軸長、平均軸比、結晶子サイズ、σsおよび組成を規定することで、Hcの確保、酸化安定性(△σsの低減)、かつHc分布を小さくでき、本発明の強磁性凝集体を用いて磁性層厚みを薄くすることによりHc分布の少ない、すなわち、SFDの増加を抑えた磁気記録媒体が得られる。なお、σsが小さいほど媒体にした時のHcは粉体のHcに対し大きい値となる傾向にある。
【0023】
本発明の強磁性凝集体は平均粒子径が300〜850μmである。平均粒子径が上記範囲から小さすぎても大きすぎても分散特性が低下し、例えば、磁性塗布液における強磁性金属粉末の結合剤吸着量が低下し、ひいては、磁性層における磁気的クラスターが大きくなり、ノイズ低減を図ることができ難い。一方、平均粒子径が上記範囲とすると分散特性が改善され、磁性層における磁気的クラスターが小さくなり、ノイズ低減を図ることができる。
【0024】
該強磁性凝集体の上限粒子径は、2000μmであることが好ましい。これを超えると良好な分散特性が得られ難い。
【0025】
本発明の強磁性凝集体の形状は、円柱状等の造粒物を解砕して得られるので、通常、不定形である。造粒物の大きさは、円柱状の場合、直径は1〜10mmが好ましく、長さは2〜25mmが好ましい。
本発明の強磁性凝集体のタップ密度は0.1g/ml以上が好ましく、より好ましくは0.3g/ml以上である。タップ密度の上限値は1.5g/ml程度であり、これを超える場合は、磁性塗料中での分散性が劣る傾向がある。
【0026】
次に、本発明の強磁性凝集体の製造法について述べる。
本発明の強磁性凝集体は、ヘマタイト粒子を転動造粒、圧縮造粒、解砕造粒、押し出し造粒等の各種方法によって造粒して得られた造粒物を還元し強磁性金属粒子の造粒物とした後に、前記強磁性金属粒子の造粒物を解砕して得ることができる。解砕は、ローターやスクリーン等で行うことができる。具体的には、対向回転する2軸のローターで解砕し、次いで、孔径1.0mm〜2.0mmのスクリーンを通過させる手段が挙げられる。使用する処理装置の運転条件としては、ローター回転数が100〜400rpm、造粒物の投入速度が1〜10kg/minとすることが挙げられる。スクリーンとしては、金属板を打ち抜いたパンチングタイプ、又は金属の針金を織り込んだメッシュタイプが挙げられる。
【0027】
本発明の強磁性凝集体において、上記強磁性金属粉末の制御方法は特に制限されず、任意の方法を用いることができるが、好ましくは以下の方法が例示される。長軸長と針状比(軸比)がよくそろい且つ粒度がよくそろった出発原料に焼結防止処理を行い、その造粒物を調製後、これを還元するときに金属酸化物(例、FeOx:1≦x≦1.5、例えばFe、Fe)から金属(例、Fe)の軸比を制御することができる。出発原料は、粒子に枝分かれのない粒度分布の揃った単分散ゲータイトあるいは単分散ヘマタイトが挙げられる。
【0028】
出発原料においては、平均長軸長が30〜80nm、軸比が5〜12であることが好ましい。出発原料の形状、長軸長、短軸長と軸比をよくそろえることが重要である。
平均長軸長が30nmより小さい原料を使用した時、Hc、Bmを所望の範囲とすることができない。平均長軸長が80nmより大きい原料を使用すると、磁気記録媒体の表面粗さが大きくなり、ノイズが大きくなり、優れたS/Nが得られない。針状比が12より大きいと、安定した製造が困難となるとともに、磁気記録媒体の充填度にムラが生じ易くなる。また高抗磁力成分が増加し、オーバーライト特性が劣る。針状比が5より小さいと強磁性金属粉末とした時の抗磁力が小さく、SFDが増加し、高密度記録用の媒体には使用することは難しくなる。
【0029】
更に、強磁性金属粉末を制御する手段としては、以下の方法▲1▼および▲2▼が挙げられる。
▲1▼ 主として強磁性金属粉末内部の元素組成を特定すること。特に金属部分がFe−Coを主体とする強磁性金属粉末は、相互作用する微量元素を特定する。該微量元素としては、Ca、Mn、Ni、Cr、Mg等が好ましい。この微量元素はゲータイトやヘマタイト作成時に添加する事および/または作成後、表面処理により添加することが好ましい。また、焼結を防止するための焼結防止剤をドープ及び/又は被着させることは重要な要素である。焼結防止剤としては、Al、Y、及びランタノイド等が特に有効である。
Alの含有量はAl/(Fe+Co)で2〜20原子%であることが重要であり、Co量との関係で含有量を適宜コントロールすることが好ましい。Yおよび/またはランタノイドの総和は(Fe+Co)に対して、好ましくは8〜30原子%の範囲である。Yおよび/またはランタノイドの総和はAlより表層部に存在させるようにすることは有効な方法である。ランタノイドは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luであるが、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd等が特に好ましい。
▲2▼ 強磁性金属元素の酸化物の造粒物を還元により強磁性金属粉末の造粒物とする手法において、還元前の前処理、例えば、ゲータイト等の脱水条件、アニール条件(例えば、温度、雰囲気、処理時間、初期と後半で温度差をつける等)及び該還元条件、例えば、温度、還元ガス、還元処理時間等を選定することが好ましい。特に、強磁性金属粉末の長軸長、短軸長のサイズを均一に且つ針状比(軸比)を3.5〜6の範囲に保持する為に、還元処理と徐酸化処理を段階的に、くり返し処理を行って形状制御、結晶性制御、及び酸化物層の厚み制御、酸化物層の結晶性を制御することが非常に重要である。
【0030】
具体的には上記▲1▼で得られた微量元素含有ゲータイトの造粒物を処理する場合の各条件の一例は以下の通りである。脱水条件としては、静置式または回転式の電気炉で窒素雰囲気下、通常、250〜400℃、好ましくは300〜400℃で0.5〜2時間、好ましくは0.5〜1時間行うことが挙げられる。アニール条件としては、静置式の還元炉で窒素雰囲気下、通常、500〜800℃、好ましくは550〜700℃で1〜5時間、好ましくは2〜3時間行うことが挙げられる。脱水処理後、アニール処理前に脱水処理により得られたヘマタイトを水洗し、可溶性のアルカリ金属を除去する工程を設けてもよい。脱水及びアニール処理と徐酸化処理を例えば、低温から徐々に高温へ、好ましくは脱水処理の初めは250〜300℃、次いで300〜350℃、更に350〜400℃およびアニール条件を初めに500〜550℃、次いで550〜650℃、更に600〜800℃で処理する、段階的な昇温、及び、くり返し処理を行って形状制御、結晶性制御、及び酸化物層の厚みや酸化物層の結晶性を制御することが有効である。
【0031】
還元条件としては、静置式の還元炉で水素雰囲気下、通常、350〜600℃、好ましくは425〜530℃、通常、0.25〜1時間、好ましくは0.25〜0.5時間還元処理し、次いで、雰囲気を窒素に置換して後、通常、450〜650℃、好ましくは500〜600℃、通常、0.5〜3時間、好ましくは1〜2時間加熱し、次いで純水素に切り換え前記温度にて3〜5時間還元処理することが挙げられる。還元処理を例えば、低温から徐々に高温へ、好ましくは還元初期を350〜470℃、次いで370〜620℃、更に450〜620℃(且つ各段階で10℃以上温度を上げて)等、段階的に、及び、くり返し処理を行って形状制御、結晶性を高めることは、非常に有効である。
【0032】
還元の終了は、排水系ガス中の水分を露点計で測定して決定する。上記強磁性金属粉末の造粒物の製法においては、公知の方法、例えば、特開平7−109122号公報および特開平6−340426号公報に記載の方法を適用することができる。強磁性金属粉末の金属部分の強磁性金属元素としては、前記したようにFe−Coを主成分とすることが好ましい。Coは均一で緻密で薄い酸化膜を形成することができるので特に好ましい。
Coは一部を原料中にドープし次に残量を表面に被着し、還元により合金化することが好ましい。Co含有量が少ないと均一で緻密で薄い酸化膜を得ることは困難であり、また、本発明の媒体構成で60℃90%RHに1週間保存後の減磁(△Φm)を10%以内に抑えるのは困難となる。また、Co/Feが100原子%を超えると、粒度分布を揃えることが困難となり、平均軸比を3.5以上に保持することが困難となる。また、還元速度の制御が難しくなり、粒子の破壊や粒子間で焼結を生じてしまう。
【0033】
還元処理された造粒物は、通常、徐酸化処理、次いで解砕処理が施され強磁性凝集体を得るが、徐酸化処理処理と同時もしくは徐酸化処理処理の前に解砕処理が施されてもよい。後者の場合、非酸化雰囲気で行うことが好ましい。
徐酸化処理は、酸素を含んだ不活性ガス雰囲気で表面酸化処理を行うことが好ましい。不活性ガス雰囲気としては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が好ましく、殊に窒素ガスが好適である。酸素の含有量は0.1〜5vol%が好ましく、所定量まで徐々に酸素量を増加させることが好ましい。また、不活性ガス雰囲気としては水蒸気を含有させてもよい。水蒸気を含有させた場合は、高い保磁力を有する紡錘状合金磁性粒子が得られやすい。徐酸化温度は、40〜200℃が好ましく、より好ましくは、40〜180℃である。40℃未満の場合には、十分な厚さを有する表面酸化層を形成することが困難となり、水洗による磁気特性の低下が顕著となる。200℃を超える場合には、粒子の形骸変化、特に酸化物が多量に生成されるため短軸が極端に膨張し、場合によっては、形骸破壊が起こりやすいため好ましくない。
加熱還元と表面酸化を繰り返し行ってもよい。加熱還元と表面酸化を繰り返し行うことによってより緻密な強磁性金属粒子を容易に得ることができる。
また、強磁性凝集体とした後に水洗することは、強磁性凝集体の表面に存在する水溶性の塩を除去することができるため必要により処理される。
また、徐酸化処理を行い薄層で緻密で均一な酸化物層を設けたのち、CVD処理によりポリマーを造粒物または強磁性凝集体に被覆させることも有効な方法である。具体的には特公平1−54380号、特開平3−161904号、特開平3−175603号、特開平3−286502号及び特開平7−94310号等に記載された公知な方法を用いることができる。
【0034】
強磁性凝集体の強磁性金属粉末の表面酸化物層を構成する酸化物としては、磁性酸化物でも非磁性酸化物でもよい。また少量の金属元素、例えば、Al、Mg、Si、Y、ランタノイド、Ca,Ba,Sr,Niなどの金属が固溶していてもよい。磁性酸化物としては、好ましくは飽和磁化が50〜90A・m/kgであるものが挙げられる。例えば、磁性を有する鉄酸化物としては、CoFe(1−x)、(例えばCoFe、CoFeなど)、FeO(但しxは1.33≦x≦2で、例えばγFe、Fe、ベルドライド化合物)が挙げられる。また非磁性酸化物としては、結晶性及び非晶質の金属酸化物や、オキシ水酸化物、水酸化物、水和酸化物を含めた単独または複合物が包含される。この非磁性酸化物は、主として焼結防止剤として添加した元素、及び強磁性金属粉末原料の生成時に添加した元素に由来する。
【0035】
また、表面酸化物層は例えば、磁性酸化物単独、非磁性酸化物単独、またはそれら両者の組合せから構成されるが、その構造は特に制限されない。表面酸化物層が両者の組合せから構成される場合、磁性酸化物と非磁性酸化物は互いに混在したものであっても、互いに独立した層を形成したものでもよい。
強磁性金属粒子表面部分に互いに独立した酸化物層を設けた場合、各層間の界面における金属相と磁性酸化物相、磁性酸化物相と非磁性酸化物相とは混在していてもよい。金属部分の周りに順次、粒子表面方向へ磁性酸化物層、非磁性酸化物層を形成してもよい。
【0036】
本発明の強磁性凝集体には後述する分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行うこともできる。具体的には、特公昭44−14090号公報、特公昭45−18372号公報、特公昭47−22062号公報、特公昭47−22513号公報、特公昭46−28466号公報、特公昭46−38755号公報、特公昭47−4286号公報、特公昭47−12422号公報、特公昭47−17284号公報、特公昭47−18509号公報、特公昭47−18573号公報、特公昭39−10307号公報、特公昭48−39639号公報、及び米国特許3026215号、同3031341号、同3100194号、同3242005号、同3389014号などの各公報に記載されている。
【0037】
強磁性凝集体の含水率は0.01〜3質量%とするのが望ましい。ただし、後述する結合剤の種類によって上記の範囲の間で含水率を最適化するのが望ましい。
【0038】
本発明の磁気記録媒体は、本発明の強磁性凝集体を結合剤中に分散してなる磁性層を有する構造である。本発明の強磁性凝集体は、後述の磁性層用塗布液を調製したときに凝集が解かれて個々独立した強磁性金属粉末として結合剤中に良好に分散されるため、強磁性金属粉末は、磁性層に良好に分散されている。
磁性層に含まれる強磁性凝集体(分散された強磁性金属粉末)の体積含有率は、高分散性のため35%以上であることが好ましく、36〜60%であることが更に好ましい。
本発明の磁気記録媒体の層構成は、基本的に支持体の上に少なくとも本発明の強磁性凝集体を含む磁性層を設けてなり、該磁性層を支持体面の一方側又は両側に設けたものであれば、特に制限されない。また、磁性層は単層であっても2層以上から構成してもよく、後者の場合、それら層同士の位置関係は目的により隣接して設けても間に磁性層以外の層を介在させて設けてもよく、公知の層構成が採用できる。尚、本発明において、磁性層の厚みとは、複層の場合は最上層の磁性層の乾燥厚みを言う。
磁性層の厚みは、好ましくは、0.02〜0.18μm、更に好ましくは0.03〜0.15μm、特に好ましくは0.04〜0.09μmである。0.02μm未満では強磁性金属粉末は2層前後しか存在しないため、厚み変動が大きくなる。また、単位面積当たりの粒子数が少なくなり,高密度記録には適しなくなる。
【0039】
本発明において、磁性層のHcは127.3kA/m以上が好ましく、140〜270kA/mであることが更に好ましく、150〜260kA/mであることがより好ましく、160〜240kA/mであることが特に好ましい。Hcが127.3kA/m未満では出力が不足し、270kA/mを超えるとオーバーライト特性上好ましくない。また、ヘッドの性能により記録電流の不足、ヘッドの飽和による歪の発生等の悪影響を及ぼす。一方、低σs化により低Hc成分の存在量が多くなり、熱揺らぎの問題が発生してくる。磁性層のBr/Hc(mT/(kA/m))は0.5以上1.5未満であることが好ましく、0.65〜1.30であることが更に好ましく、0.70〜1.2であることが特に好ましい。0.5未満では出力が低下するとともに、記録面積当たりの粒子数が不足し、S/Nが低下してしまう。1.5以上では出力は上昇するが、ノイズがそれ以上に上昇し、S/Nが低下してしまう。更には、ヘッドの飽和により歪を生じる懸念がある。
【0040】
本発明の磁性層の残留磁束(Φr){残留磁束密度(Br)×磁性層の平均厚み(δ)}は、5〜75mT・μmであることが好ましく、10〜70mT・μmであることが更に好ましく、15〜60mT・μmであるであることが特に好ましい。磁性層の残留磁束(Φr)はMRヘッドの性能により最適値を設定することが望ましく、MRヘッドが飽和しない範囲で高めに選ぶことが好ましい。Hc、Br、Φrが下限値より小さいと短波長出力を十分に得ることができず、また、それらが上限値より大きいと記録に使用するヘッドが飽和してしまうので出力を確保することができない場合がある。
【0041】
本発明の磁気記録媒体は、好ましくは支持体と磁性層との間に非磁性粉末と結合剤を主体とする非磁性層が設けられる。この場合、磁性層の表面粗さは、中心面平均表面粗さ(Ra)で、好ましくは3.0nm以下、更に好ましくは0.6〜2.8nmである。磁性層の分散性はノイズに影響を与えるため重要である。磁気的クラスターサイズを測定して磁性層の分散性をみることができるが、前記したように本発明は磁気的クラスターサイズを小さくできる。
磁性層を複層で構成することも可能である。例としては、強磁性酸化鉄、強磁性コバルト変性酸化鉄、CrO粉末、六方晶系フェライト粉末及び各種強磁性金属粉末などから選択した強磁性粉末を結合剤中に分散した磁性層を組み合わせたものが挙げられる。尚、この場合、同種の強磁性粉末であっても元素組成、粉体サイズなどの異なる強磁性粉末を含む磁性層を組み合わせることもできる。
【0042】
本発明においては、強磁性金属粉末を含む磁性層と支持体との間に非磁性層を設けた磁気記録媒体が好ましい。このような層構成の層の位置関係において、磁性層を上層、非磁性層を下層ともいう。
次に下層に関する詳細な内容について説明する。下層は、実質的に非磁性であり、非磁性粉末と結合剤を含む構成であることが好ましいが、特に制限されるべきものではない。下層は実質的に非磁性である範囲で磁性粉末も使用され得るものである。下層が実質的に非磁性であるとは、上層の電磁変換特性を実質的に低下させない範囲で下層が磁性を有することを許容するということである。
【0043】
非磁性粉末としては、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属窒化物、金属炭化物などの無機化合物から選択することができる。無機化合物としては例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ゲータイト、窒化珪素、二酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、などが単独または組合せで使用される。特に好ましいのは、粒度分布の小さいこと、機能付与の手段が多いことなどから、二酸化チタン、酸化亜鉛、α−酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいのは二酸化チタン、α−酸化鉄である。α−酸化鉄は、粒子サイズがそろった磁性酸化鉄や金属粉末作製用の酸化鉄原料を加熱脱水、アニ−ル処理し空孔を少なくし、必要により表面処理をしたものが好ましい。通常、二酸化チタンは光触媒性を持っているので、光があたるとラジカルが発生しバインダー、潤滑剤と反応する懸念がある。そのため、本発明に使用する二酸化チタンは、Al、Feなどを1〜10%固溶させ、光触媒特性を低下させることが必要である。さらに表面をAl、Si化合物で処理して触媒作用を低下させることも好ましい。これら非磁性粉末の粒子サイズは0.005〜1μmが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。
【0044】
とりわけ好ましい非磁性粉末の粒子サイズは、0.01μm〜0.5μmである。特に、非磁性粉末が粒状金属酸化物である場合は、平均円相当径が0.08μm以下であることが好ましく、針状金属酸化物である場合は、平均長軸長が0.3μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。タップ密度は通常、0.3〜1.5g/ml、好ましくは0.4〜1.3g/mlである。非磁性粉末の含水率は通常、0.2〜5質量%、好ましくは0.3〜3質量%、更に好ましくは0.3〜1.5質量%である。非磁性粉末のpHは通常、2〜12であるが、5.5〜11の間であることが特に好ましい。非磁性粉末のBET法による比表面積(SBET)は通常、1〜100m/g、好ましくは5〜80m/g、更に好ましくは10〜80m/gである。非磁性粉末の結晶子サイズは40〜1000Åが好ましく、40〜800Åが更に好ましい。DBP(ジブチルフタレート)を用いた吸油量は通常、5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gである。比重は通常、1.5〜7、好ましくは3〜6である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでも良い。非磁性粉末のSA(ステアリン酸)吸着量は1〜20μmol/m、好ましくは2〜15μmol/m、さらに好ましくは3〜8μmol/mである。ステアリン酸吸着量が多い非磁性粉末を使用する時、表面に強く吸着する有機物で表面修飾して磁気記録媒体を作成することが好ましい。
【0045】
これらの非磁性粉末の表面にはAl、Mg、Si、Ti、Zr、Sn、Sb、Zn、Yなどの元素を含む化合物で表面処理することが好ましい。この表面処理によりその表面に形成される酸化物として、特に分散性に好ましいのはAl、SiO、TiO、ZrO、MgOおよびこれらの含水酸化物であるが、更に好ましいのはAl、SiO、ZrOおよびこれらの含水酸化物である。これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いても良いし、先ずアルミナを形成した後にその表層にシリカを形成する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0046】
下層に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100、HIT−82、戸田工業製α−酸化鉄DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPN−550BX、DPN−550RX、DPN−0110RX、DBN−650RX、DAN−855RX、DAN−890RX、石原産業製酸化チタンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、チタン工業製酸化チタンSTT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、α−酸化鉄α−40、テイカ製酸化チタンMT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−100F、MT−500HD、堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−M、同和鉱業製酸化鉄DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25、宇部興産製100A、500A、及びそれを焼成したものが挙げられる。
【0047】
下層にカ−ボンブラックを混合させることによって、よく知られているように表面電気抵抗Rsを下げること、光透過率を小さくすること、所望のマイクロビッカース硬度を得ることができる。尚、本発明において、下層に使用するカーボンブラックは上記非磁性粉末として含んでも良い。また、下層にカーボンブラックを含ませることで潤滑剤貯蔵の効果をもたらすことも可能である。好適なカーボンブラックの種類としては、ゴム用の各種ファーネスブラック、ゴム用の各種サーマルブラック、カラー用カーボンブラック、導電性カーボンブラック、アセチレンブラックなどを用いることができる。下層のカーボンブラックは所望する効果によって、以下のような特性を最適化すべきであり、併用することでより効果が得られることがある。
【0048】
下層のカーボンブラックのBET法により測定した比表面積は通常、50〜500m/g、好ましくは70〜400m/g、DBP吸油量は通常、20〜400ml/100g、好ましくは30〜400ml/100gである。カ−ボンブラックの平均粒子径は通常、5〜80nm、好ましくは10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10質量%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、880、700、VULCAN社製XC−72、三菱化学製#3050B、#3150B、#3750B、#3950B、#950、#650B、#970B、#850B、MA−600、MA−230、#4000、#4010、コロンビアンカ−ボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN 8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックECなどがあげられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは上記非磁性粉末に対して50質量%を越えない範囲、下層総質量の40質量%を越えない範囲で使用できる。これらのカーボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。本発明で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
【0049】
また下層には、目的に応じて有機質粉末を添加することもできる。好ましい有機質粉末としては、例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は、例えば特開昭62−18564号、特開昭60−255827号などの各公報に記されているものが使用できる。
【0050】
下層の結合剤(種類と量)、潤滑剤・分散剤・添加剤の量、種類、溶剤、分散方法に関しては上層に関する公知技術が適用できる。
【0051】
本発明の磁気記録媒体における磁性層、あるいは更に非磁性層に用いられる結合剤は、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用できる。熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1000〜200000、好ましくは10000〜100000、重合度が約50〜1000程度のものが好ましく用いられる。
【0052】
このような結合剤としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル、などを構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。
【0053】
また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物などが挙げられる。
【0054】
前記の結合剤に、より優れた強磁性金属粉末の分散効果と磁性層の耐久性を得るためには、必要に応じて−COOM、−SOM、−OSOM、−P=O(OM)、−O−P=O(OM)、(上記各基のMは水素原子、またはアルカリ金属)、−OH、−NR、−N(Rは炭化水素基)、エポキシ基、SH、CN、などから選ばれる少なくともひとつ以上の極性基を共重合または付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は、結合剤の量に対して10−1〜10−8モル/gであり、好ましくは10−2〜10 モル/gである。
【0055】
本発明の磁気記録媒体に用いられる結合剤は、強磁性粉末に対し、5〜50質量%の範囲、好ましくは10〜30質量%の範囲で用いられる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は5〜100質量%、ポリウレタン樹脂を用いる場合は0〜100質量%、ポリイソシアネートは2〜100質量%の範囲でこれらを組み合わせて用いるのが好ましい。また,結合剤としてポリウレタン樹脂を単独で用いることが可能である。
【0056】
上記ポリウレタン樹脂としては、ジオールと有機ジイソシアネートを主要原料とした反応生成物であるポリウレタン樹脂からなり、ジオール成分としては、環状構造を有する短鎖ジオール単位とエーテル基を含む長鎖ジオール単位とを含むことが好ましい。そして、このポリウレタン樹脂は、環状構造を有する短鎖ジオール単位をポリウレタン樹脂中に17〜40質量%含み、かつポリウレタン樹脂全体に対して、エーテル基を1.0〜5.0mmol/gを含む長鎖ジオール単位をポリウレタン樹脂中に10〜50質量%含む結合剤であることが好ましい。
【0057】
環状構造を有する短鎖ジオールとは、飽和又は不飽和の環状構造を有し、かつ分子量が500未満のジオールを意味する。
【0058】
環状構造を有する短鎖ジオールは、通常、分子量が50以上500未満のものから選ばれる。また、前記環状構造を有する短鎖ジオールと共に、通常、分子量500未満の他のジオールを併用することができる。具体的には、エチレングリコール、1,3−プロピレンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、N−ジエタノールアミンのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物等の直鎖又は分枝のジオールを挙げることができる。
【0059】
これらを用いることによって、環状構造により高強度、高Tgであって、高耐久性の塗布膜が得られる。さらに分岐CHの導入により溶剤への溶解性に優れるため高分散性が得られる。ポリウレタン樹脂中の短鎖ジオール単位の含有量は、17〜40質量%が好ましく、さらに好ましくは20〜30質量%である。
【0060】
また、長鎖ジオールとは、分子量が500以上のジオールを意味し、具体的には、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールS又はビスフェノールPにエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はこれらの両者を付加させたもの、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。
【0061】
長鎖ジオールの質量平均分子量(Mw)は、通常、500〜5000であり、好ましくは700〜3000の範囲から選ばれることが適当である。エーテル基を含む長鎖ジオール単位の含有量は、ポリウレタン樹脂中10〜50質量%であることが好ましく、さらに好ましくは30〜40質量%であることが適当である。該長鎖ジオール単位のエーテル基の含有量は、ポリウレタン樹脂中に1.0〜5.0mmol/gであることが好ましく、より好ましくは2.0〜4.0mmol/gであることが適当である。
【0062】
ポリウレタン樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは、18000〜56000、更に好ましくは23000〜34000であり、質量平均分子量(Mw)は、好ましくは、30000〜100000、更に好ましくは40000〜60000であることが適当である。
【0063】
上述したポリウレタン樹脂は、塩化ビニル系樹脂等の合成樹脂を併用しても良いが、ウレタン樹脂の比率の高いほど、磁性液の表面張力を下げられるため、塗布、乾燥における磁性層厚みムラや厚み変動を抑制することが出来る。
尚、上記ポリウレタン樹脂は、非磁性層にも配合することが好ましい。
【0064】
本発明において、ポリウレタンを用いる場合はガラス転移温度が−50〜100℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は通常、0.05〜10Kg/mm(≒0.49〜98MPa)、降伏点は0.05〜10Kg/mm(≒0.49〜98MPa)が好ましい。
【0065】
本発明に用いるポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネートなどを使用することができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製、コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートMTL、武田薬品社製、タケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエル社製、デスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHLなどがありこれらを単独または硬化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組合せで用いることができる。
【0066】
本発明の磁気記録媒体の磁性層及び/又は非磁性層中には、通常、潤滑剤、研磨剤、分散剤、帯電防止剤、可塑剤、防黴剤などなどを始めとする種々の機能を有する素材をその目的に応じて含有させることができる。
【0067】
潤滑剤としては、ジアルキルポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5個)、ジアルコキシポリシロキサン(アルコキシは炭素数1〜4個)、モノアルキルモノアルコキシポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5個、アルコキシは炭素数1〜4個)、フェニルポリシロキサン、フロロアルキルポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5個)などのシリコンオイル;グラファイトなどの導電性微粉末;二硫化モリブデン、二硫化タングステンなどの無機粉末;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン塩化ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレンなどのプラスチック微粉末;α−オレフィン重合物;常温で固体の飽和脂肪酸(炭素数10から22);常温で液状の不飽和脂肪族炭化水素(n−オレフィン二重結合が末端の炭素に結合した化合物、炭素数約20);炭素数12〜20個の一塩基性脂肪酸と炭素数3〜12個の一価のアルコールから成る脂肪酸エステル類、フルオロカーボン類などが使用できる。
【0068】
上記の中でも飽和脂肪酸と脂肪酸エステルが好ましく、両者を併用することがより好ましい。飽和脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、アラキン酸が挙げられる。脂肪酸エステルの原料となるアルコールとしては、エタノール、ブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、2−メチルブチルアルコール、2−ヘキシルデシルアルコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、s−ブチルアルコールなどのモノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ソルビタン誘導体などの多価アルコールが挙げられる。同じくエステルの原料となる脂肪酸としては、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、アラキン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、パルミトレイン酸などの脂肪族カルボン酸またはこれらの混合物が挙げられる。
【0069】
脂肪酸エステルとしての具体例は、ブチルステアレート、s−ブチルステアレート、イソプロピルステアレート、ブチルオレエート、アミルステアレート、3−メチルブチルステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、2−ヘキシルデシルステアレート、ブチルパルミテート、2−エチルヘキシルミリステート、ブチルステアレートとブチルパルミテートの混合物、ブトキシエチルステアレート、2−ブトキシ−1−プロピルステアレート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルをステアリン酸でエステル化したもの、ジエチレングリコールジパルミテート、ヘキサメチレンジオールをミリスチン酸でエステル化してジエステル化としたもの、グリセリンのオレエートなどの種々のエステル化合物を挙げることができる。
【0070】
さらに、磁気記録媒体を高湿度下で使用するときしばしば生ずる脂肪酸エステルの加水分解を軽減するために、原料の脂肪酸及びアルコールの分岐/直鎖、シス/トランスなどの異性構造、分岐位置を選択することも好ましい。これらの潤滑剤は結合剤100質量部に対して0.2〜20質量部の範囲で添加される。
【0071】
潤滑剤としては、更に以下の化合物を使用することもできる。即ち、シリコンオイル、グラファイト、二硫化モリブデン、窒化ほう素、弗化黒鉛、フッ素アルコール、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステル、二硫化タングステンなどである。
【0072】
本発明の磁性層に用いられる研磨剤としては、一般に使用される材料でαアルミナ、γアルミナ、溶融アルミナ、コランダム、人造コランダム、炭化珪素、酸化クロム(Cr)、ダイアモンド、人造ダイアモンド、ザクロ石、エメリー(主成分:コランダムと磁鉄鉱)、αFeなどが使用される。これらの研磨剤はモース硬度が6以上である。具体的な例としては住友化学社製、AKP−10、AKPー12、AKP−15、AKP−20、AKP−30、AKP−50、AKP−1520、AKP−1500、HIT−50、HIT60A、HIT70、HIT80、HIT−100、日本化学工業社製、G5、G7、S−1、酸化クロムK、上村工業社製UB40B、不二見研磨剤社製WA8000、WA10000、戸田工業社製TF100、TF140、TF180などが上げられる。平均粉体サイズが0.05〜3μmの大きさのものが効果があり、好ましくは0.05〜1.0μmである。
【0073】
これら研磨剤の合計量は、磁性体100質量部に対して1〜20質量部、望ましくは1〜15質量部の範囲で添加される。1質量部より少ないと十分な耐久性が得られない傾向にあり、20質量部より多すぎると表面性、充填度が劣化する傾向にある。これら研磨剤は、あらかじめ結合剤で分散処理したのち磁性塗料中に添加してもよい。
【0074】
本発明の磁気記録媒体の磁性層中には、前記非磁性粉末の他に帯電防止剤として導電性粒子を含有させることもできる。支持体と磁性層の間に非磁性層を設けた磁気記録媒体は、上層の飽和磁束密度を最大限に増加させるためにはできるだけ上層への添加は少なくし、上層以外の塗布層に添加するのが好ましい。帯電防止剤としては、特に、カーボンブラックを添加することは、媒体全体の表面電気抵抗を下げる点で好ましい。本発明に使用できるカーボンブラックはゴム用の各種ファーネスブラック、ゴム用の各種サーマルブラック、カラー用カーボンブラック、導電性カーボンブラック、アセチレンブラックなどを用いることができる。SBETは5〜500m/g、DBP吸油量は、10〜1500ml/100g、平均粒子径は5〜300nm、pHは2〜10、含水率は0.1〜10質量%、タップ密度は0.1〜1g/cc、が好ましい。本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製、BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、700、VULCAN XC−72、旭カーボン社製、#80、#60、#55、#50、#35、三菱化学社製、#3950B、#2700、#2650、#2600、#2400B、#2300、#900、#1000、#95、#30、#40、#10B、MA230、MA220、MA77、コロンビアカーボン社製、CONDUCTEX SC、RAVEN150、50、40、15、ライオンアグゾ社製ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックECDJ−500、ケッチェンブラックECDJ−600などが挙げられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、カーボンブラックを酸化処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。磁性層にカーボンブラックを使用する場合は磁性体に対する量は0.1〜30質量%で用いることが好ましい。非磁性層には無機質非磁性粉末(ただし、非磁性粉末にはカーボンブラックは含まれない)に対し3〜20質量%含有させることが好ましい。
【0075】
一般的にカーボンブラックは、帯電防止剤としてだけでなく、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは、それぞれ適した性質を持つカーボンブラックが選択される。従って本発明に使用されるこれらのカーボンブラックは、その種類、量、組合せを変え、粉体サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能である。使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編を参考にすることができる。
【0076】
本発明の磁気記録媒体として、支持体上に2層以上の塗布層を形成させてなる場合には、その形成手段としては、逐次塗布方式(ウェット・オン・ドライ方式)及び同時塗布方式(ウェット・オン・ウェット方式)が挙げられる。その同時塗布方式、即ちウェット・オン・ウェット方式の具体的な方法としては、
【0077】
(1)
磁性塗料で一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置によりまず下層を塗布し、その層がまだ湿潤状態にあるうちに、例えば、特公平1−46186号公報、特開昭60−238179号公報及び特開平2−265672号公報に開示されている支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により上層を塗布する方法、
【0078】
(2)
特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報及び特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを二つ内蔵した塗布ヘッドにより、下層の塗布液及び上層の塗布液をほぼ同時に塗布する方法、
【0079】
(3)
特開平2−174965号公報に開示されているバックアップロール付きエクストルージョン塗布装置により、上層及び下層をほぼ同時に塗布する方法、などが挙げられる。
【0080】
ウェット・オン・ウェット方式で塗布する場合、磁性層用塗布液と非磁性層用塗布液の流動特性はできるだけ近い方が、塗布された磁性層と非磁性層の界面の乱れがなく厚さが均一な厚み変動の少ない磁性層を得ることができる。塗布液の流動特性は、塗布液中の粉体と結合剤の組み合わせに強く依存するので、特に、非磁性層に使用する非磁性粉末の選択に留意することが重要である。
【0081】
本磁気記録媒体の支持体の厚みは、通常、1〜100μm、テープ状で使用するときは、望ましくは3〜20μm、フレキシブルディスクとして使用する場合は、40〜80μmが好ましく、支持体に設ける非磁性層は通常、0.5〜10μm、好ましくは0.5〜3μmである。
【0082】
また、前記磁性層及び前記非磁性層以外の他の層を目的に応じて形成することができる。例えば、支持体と下層の間に密着性向上のための下塗り層を設けてもかまわない。この厚みは通常、0.01〜2μm、好ましくは0.05〜0.5μmである。また、支持体の磁性層側と反対側にバック層を設けてもかまわない。この厚みは通常、0.1〜2μm、好ましくは0.3〜1.0μmである。これらの下塗り層、バック層は公知のものが使用できるが、本発明においては特に針状の非磁性粉末と結合剤とを含むバック層が好ましい。円盤状磁気記録媒体の場合、片面もしくは両面に上記構成の層を設けることができる。
【0083】
本発明で使用される支持体には特に制限はなく、通常使用されているものを用いることができる。支持体を形成する素材の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホンなどの各種合成樹脂のフィルム、およびアルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を挙げることができる。
【0084】
本発明の目的を有効に達成するには、支持体の表面粗さは、中心面平均表面粗さ(Ra)(カットオフ値0.25mm)で0.03μm以下、望ましく0.02μm以下、さらに望ましく0.01μm以下である。また、これらの支持体は単に前記中心面平均表面粗さが小さいだけではなく、1μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由にコントロールされるものである。これらのフィラーの一例としては、Ca、Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機樹脂微粉末があげられる。本発明に用いられる支持体のウエブ走行方向のF−5値は好ましくは5〜50Kg/mm(≒49〜490MPa)、ウエブ幅方向のF−5値は好ましくは3〜30Kg/mm(≒29.4〜294MPa)であり、ウエブ長手方向のF−5値がウエブ幅方向のF−5値より高いのが一般的であるが、特に幅方向の強度を高くする必要があるときはその限りでない。
【0085】
また、支持体のウエブ走行方向および幅方向の100℃で30分間の熱収縮率は、好ましくは3%以下、さらに望ましくは1.5%以下、また、80℃で30分間の熱収縮率は、好ましくは1%以下、さらに望ましくは0.5%以下である。破断強度は5〜100Kg/mm(≒49〜980MPa)、弾性率は100〜2000Kg/mm(≒0.98〜19.6GPa)が望ましい。
【0086】
本発明で用いられる有機溶媒は任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフランなどのケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコールなどのエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼンなどの塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサンなどを混合して、あるいは単独の溶剤として使用できる。これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分などの不純分が含まれていてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。本発明で用いる有機溶媒は必要ならば磁性層と非磁性層でその種類、量を変えてもかまわない。例えば、非磁性層に揮発性の高い溶媒を用いて表面性を向上させる、非磁性層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性をあげる、あるいは磁性層に溶解性パラメータの高い溶媒を用いて充填度を上げる、などがその例としてあげられるが、これらの例に限られたものではないことは無論である。
【0087】
本発明の磁気記録媒体は、非磁性粉末又は強磁性凝集体と結合剤、及び必要ならば他の添加剤と共に有機溶媒を用いて混練分散し、非磁性塗料及び磁性塗料を支持体上に塗布し、必要に応じて配向、乾燥して得られる。
【0088】
本発明の磁気記録媒体の磁性塗料を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていてもかまわない。本発明に使用する非磁性粉末、強磁性凝集体、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。
【0089】
非磁性塗料、磁性塗料の混練分散に当たっては各種の混練機が使用される。例えば、二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ペブルミル、トロンミル、サンドグラインダー、ゼグバリ(Szegvari)、アトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速衝撃ミル、ディスパー、ニーダ、高速ミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機などを用いることができる。
【0090】
本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができることはもちろんであるが、混練工程では連続ニーダや加圧ニーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。連続ニーダまたは加圧ニーダを用いる場合は、強磁性凝集体と結合剤のすべてまたはその一部(ただし全結合剤の30質量%以上が好ましい)および強磁性凝集体100質量部に対し15〜500質量部の範囲の溶剤やその他の添加成分で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開昭64−79274号公報に記載されている。本発明では、特開昭62−212933に示されるような同時重層塗布方式をもちいることによりより効率的に生産することが出来る。
【0091】
本発明の磁気記録媒体の磁性層中に含まれる残留溶媒は、好ましくは100mg/m以下、さらに好ましくは10mg/m以下であり、磁性層に含まれる残留溶媒が非磁性層に含まれる残留溶媒より少ない方が好ましい。
【0092】
空隙率は下層、上層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは10容量%以下である。非磁性層の空隙率が磁性層の空隙率より大きいほうが好ましいが、非磁性層の空隙率が5容量%以上であれば小さくてもかまわない。
【0093】
本発明の磁気記録媒体は、下層と上層を有することができるが、目的に応じ下層と上層でこれらの物理特性を変えることができる。例えば、上層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に下層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りを良くするなどが考えられる。
【0094】
このような方法により、支持体上に塗布された磁性層は必要により層中の強磁性金属粉末を配向させる処理を施したのち、形成された磁性層を乾燥する。又必要により表面平滑化加工を施したり、所望の形状に裁断したりして、本発明の磁気記録媒体を製造する。
【0095】
磁性層の0.5%伸びでの弾性率はウエブ塗布方向、幅方向とも望ましくは100〜2000Kg/mm(≒980〜19600N/mm)、破断強度は好ましくは10〜70Kg/mm(≒98〜686N/mm)、磁気記録媒体の弾性率は面内各方向で好ましくは100〜1500Kg/mm(≒980〜14700N/mm)、残留のびは好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、もっとも好ましくは0.1%以下である。
【0096】
本発明の磁気記録媒体は、ビデオ用途、オーディオ用途などのテープであってもデータ記録用途のフロッピーディスクや磁気ディスクであってもよいが、ドロップアウトの発生による信号の欠落が致命的となるデジタル記録用途の媒体に対しては特に有効である。更に、下層を非磁性層とし、下層上の磁性層の厚さを0.25μm以下とすることにより、電磁変換特性が高く、オーバーライト特性も優れ、かつ高密度で大容量の磁気記録媒体を得ることができる。
【0097】
【実施例】
以下、新規な特長を以下の実施例で具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるべきものではない。なお、以下の「部」とは「質量部」のことである。
強磁性凝集体の製造
(サンプル1)
サンプルA(ゲータイト)の製造工程
撹拌機つきの150リットルタンクに1.7mol/lの炭酸アンモニウム35リットルと2.0mol/lのアンモニア水15リットルの混合溶液を窒素でバブリングしつつ液温を20℃とし、別のタンクで窒素をバブリングさせながら溶解した液温22℃の硫酸第一鉄、硫酸コバルト及び硫酸アルミニウムを含有する水溶液(Fe2+濃度が1.35mol/l、Co濃度が0.35mol/l、Al濃度が0.06mol/l)45リットルを添加し混合した。10分間撹拌した後、懸濁液の温度を28℃とし第一鉄を主成分とする沈殿物を生成した。窒素をバブリングし、90分沈殿を熟成した。窒素にかえて空気を導入し沈殿物を酸化しゲータイト核晶を生成させた。懸濁液中のFe2+濃度が0.75mol/lとなったとき空気酸化を中断し窒素にきりかえ、懸濁液の温度を40℃に加熱し2時間保持したのち、窒素を空気に切り換え酸化反応を進めAlを固溶させた紡錘状を呈したゲータイト(サンプルAとする)を生成させた。得られた粒子を瀘過、水洗した。一部を乾燥し透過型電子顕微鏡写真をとり粉体サイズを求めたところ、平均長軸長が60nm、平均針状比が6であった。また窒素中で120℃で30分加熱脱水後比表面積を測定すると165m/gであった。
【0098】
焼結防止処理されたサンプルBの製造工程
得られたゲータイト(サンプルA)を水中で2%スラリーとし撹拌しつつ硫酸コバルト水溶液(Co換算20部:ゲータイト中の鉄のモル数を100部とした時のモル数を部で表示)、硝酸マンガン水溶液(Mn換算0.5部:ゲータイト中の鉄のモル数を100部とした時のモル数を部で表示)を添加し、アンモニア水で中和しコバルト化合物とマンガン化合物を粒子表面に沈着させた。スラリーを濾過水洗後再度2%水スラリーとし、硫酸アルミニウム水溶液(Al換算8.0部:ゲータイト中の鉄のモル数を100部とした時のモル数を部で表示)と硫酸第2鉄水溶液(Fe3+換算3.2部:ゲータイト中の鉄のモル数合計を100部とした時のモル数を部で表示)を添加した。20分撹拌した後、希釈したアンモニア水を添加しスラリーを中和した。瀘過水洗した後2%スラリーとし硝酸イットリウム水溶液(Y換算12.0部:ゲータイト中の鉄のモル数を100部とした時のモル数を部で表示)を添加し、アンモニア水でpHを8.5とした。濾過水洗し5%水スラリーとし150℃で1時間加熱した。その後、濾過水洗し得られたケーキは圧縮成型機を用いて孔径4mmの成型板で押し出し成型して120℃で乾燥して紡錘状ゲータイト粒子の造粒物(サンプルB)を得た。得られた造粒物は、平均直径3.3mm、平均長さ10mmの円柱状であった。
【0099】
還元処理工程
得られたサンプルBを静置式焼成炉にいれ、窒素中で300℃で60分加熱し360℃に昇温し更に30分加熱し脱水処理し次に温度を550℃で1時間加熱し650℃で2時間加熱しヘマタイトの結晶性を高めた。温度を400℃としガスを窒素から水素:窒素=20:80のガスに切り換え0.5時間還元した。窒素に置換したのち純水素に切り替え更に5時間還元した。水素を流しつつ冷却し、250℃で窒素に切り換え室温に冷却した。
【0100】
徐酸化処理工程
上記還元処理されたサンプルBを徐酸化装置に移し、空気と窒素の混合比率をかえ酸素濃度を0.2%、ガスの露点は−45℃としメタル粉の温度をモニターしつつ40℃以下で3時間徐酸化し、発熱がおさまると酸素濃度を1%とし10時間徐酸化した。この時徐酸化装置の温度を45℃に維持し、強磁性金属粉の温度が45℃を越えないように徐酸化した。強磁性金属粉末に対し水分が1%となるように蒸留水を気化させつつ空気と搬送し、調湿するとともに安定化して強磁性金属粉末の造粒物を得た。
得られた強磁性金属粉末の円柱状造粒物の平均長さは3mm、上限長さは5mm、平均直径は2.8mmであり、嵩密度は0.57g/mlであった。
【0101】
強磁性凝集体の製造
次いで、前記強磁性金属粉末の円柱状造粒物を300rpm/で対向回転する2軸のローターに5kg/minの速度で投入し、該装置下面にある孔径1.5mmのパンチングタイプのスクリーンを通過させ解砕し、紡錘状強磁性金属粉末の凝集体である強磁性凝集体(サンプル1)を得た。
得られた強磁性凝集体の平均粒子径は650μm、上限粒子径が約1500μm(1680μmのメッシュに残らない)であった。また、嵩密度は0.59g/ml、タップ密度は0.68g/ml、であった。なお、解砕前の造粒物と比較して、嵩密度の変化幅は、ほとんど変化していない。53μm以下の質量割合は2.5%以下であった。
【0102】
(サンプル2〜12)
サンプル1の製法において強磁性凝集体の製造工程における条件を変更してサンプル2〜6の強磁性金属粉末を得た。但し、サンプル6は解砕処理を行なわなかった。
また、サンプルBの製法までの各工程における条件を変更し、それ以降の工程はサンプル1の製法と同様にしてサンプル7〜9を得た。更にサンプル1の製法において各工程の条件を変更してサンプル10〜12を作成した。
【0103】
得られた強磁性凝集体の強磁性金属粉末の高分解能透過型電子顕微鏡写真をとり強磁性金属粉末の平均長軸長を求めた。
X線回折装置により以下の方法により結晶子サイズを求めた。
粉末X線回折法(50kV−300mA:CuKβ線使用)によりα−Feに相当する(110)面と(220)面の回折線の半値幅の広がりから求めた。
磁気特性(Hc、σs)の測定は振動試料型磁束計VSM−5(東英工業性)を用い、タイムコンスタント0.1秒、スイ−プ速度3分/10kOe(800kA/m)、測定磁場10kOe(800kA/m)で測定した。
Co含有量はICPにより求めた。
強磁性凝集体の平均粒子径は、標準篩を用いて前記の通り測定した。
結合剤吸着量は、塗布液を遠心分離して上澄液に残っていたバインダー量を求めて、加えたバインダー量との差分が吸着したものとして評価した。実施例−1のバインダー吸着量を100として相対値で示す。
サンプル1〜12の粉体特性を表1に示す。
【0104】
【表1】
Figure 2004319838
【0105】
磁気記録媒体の製造
「ポリウレタン樹脂Aの合成」
還流式冷却器、攪拌機を具備し、予め窒素置換した容器に水添ビスフェノールA、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物(分子量700)、ポリプロピレングリコール(分子量400)及びビス(2−ヒドロキシエチル)スルホイソフタレートのナトリウム塩を各々モル比で24:14:10:2でシクロヘキサノンとジメチルアセトアミドを50:50の質量比で含む混合溶媒に溶解し、窒素気流下で60℃で溶解した。触媒として、ジ−n−ジブチルスズジラウレートを、使用した原料の総量に対して60ppm加えた。次に、MDI(4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート)をジオールの総和と等モル加え、90℃にて6時間加熱反応し、エーテル基を4.0nmol/g含有し、かつ−SONa基が8×10−5/g導入されたMw45000でMn25000のポリウレタン樹脂Aを得た。
【0106】
〔実施例1〜3、6〜9,比較例1〜6〕
上記強磁性凝集体を使用した重層構成の磁気テープを作成するため以下の磁性層の組成物、下層用非磁性層の組成物及びバック層の組成物を作成した。
Figure 2004319838
【0107】
Figure 2004319838
【0108】
Figure 2004319838
【0109】
上記の磁性(上層用)及び非磁性(下層用)塗料のそれぞれについて、顔料、ポリウレタン樹脂A、フェニルホスホン酸と処方量の50%の各溶剤をニ−ダで混練したのち、残りの成分を加えてサンドミルで分散して磁性層用または非磁性層用の分散液を作成した。得られた各々の分散液にシクロヘキサノン30部を加え、仕上げ分散をした後,1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ調製した。また、バック層は顔料、ニトロセルロース樹脂と処方量の50%の各溶剤をニ−ダで混練したのち、ポリウレタン樹脂と残りの成分を加えて、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液を1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、バック層形成用塗布液を調製した。
厚さ3.7μmで中心面平均表面粗さが2nmのアラミド支持体(商品名:ミクトロン)上に非磁性層形成用塗布液(下層用)を、乾燥後の下層の厚さが1.05〜1.29μmになるように塗布をおこない、その上に磁性層の厚さが、所定の厚みとなるように、磁性層形成用塗布液の塗布をし、湿潤状態にあるうちに477.5kA/mの磁力を持つコバルト磁石と477.5kA/mの磁力を持つソレノイドにより配向し、乾燥により塗膜をセットした。乾燥後の非磁性層と磁性層の厚みを合せて所望の厚みとなるように調整した。
【0110】
乾燥後、金属ロ−ルとプラスチックロールとから構成される7段のカレンダ−で温度85℃にて速度200m/min、線圧2940N/cmで処理を行い、その後、バック層形成用塗布液を用いて厚み0.5μmのバック層を塗布した。所望の幅(8mm、1/4吋、1/2吋または3.8mm)にスリットし、スリット品の送り出し、巻き取り装置を持った装置に不織布と研磨テ−プが磁性面に押し当たるように取り付け、テ−プクリ−ニング装置で磁性層の表面のクリ−ニングを行い、テープ試料を得た。
【0111】
得られたサンプルについて磁気特性(Hc)、磁性層厚み、△Mおよび磁気的クラスターを測定し、結果を表2に示した。
磁気特性の測定は、振動試料型磁束計VSM−5(東英工業性)を用い、タイムコンスタント0.1秒、スイ−プ速度3分/10kOe(800kA/m)、外部磁場800kA/mで配向方向に平行に測定した。
磁性層厚みの測定は、磁気記録媒体の長手方向に渡ってダイアモンドカッターで約0.1μmの厚みに切り出し、透過型電子顕微鏡で倍率3万倍で観察し、その写真撮影を行った。写真のプリントサイズはA4版である。その後、磁性層、非磁性層の強磁性粉末や非磁性粉末の形状差に着目して界面を目視判断して黒く縁どり、かつ磁性層表面も同様に黒く縁どりした後、画像解析装置(カールツァイス社製:KS4000)にて縁どりした線の間隔を測定した。試料写真の長さが21cmの範囲にわたり、測定点を500点取って測定した。その際の測定値の単純加算平均を倍率で除して磁性層の厚みとした。
【0112】
ΔMの測定は以下によった。
東英工業製の振動試料型磁力計に磁気記録媒体の測定サンプルの配向方向が磁場と同一方向になるようにセットし、AC消磁し残留磁化を0.0005A・m/kg以下とし、7.96kA/mの磁界を印加したのち磁界をゼロのもどし残留磁化Mrを測定し、7.96kA/mずつ印加磁界を変化し、残留磁化を測定することを繰り返し、レマネンス曲線Ir(H)を測定した。−796kA/m印加しDC飽和させた後に、磁場をゼロに戻し残留磁化(−Mrmax)を測定する。逆方向に7.96kA/mの磁界を印加したのち磁界をゼロのもどし残留磁化Mrを測定し、7.96kA/mずつ印加磁界を変化し、残留磁化を測定することを繰り返し、レマネンス曲線Id(H)を測定した。測定したレマネンス曲線Ir(H)とDC消磁し測定したレマネンス曲線Id(H)より,各測定磁界に対し,ΔM=Id(H)−(1−2Ir(H))で算出される。実施例−1の△M値を−1として相対値で示す。なお、測定値は全てのサンプルとも△M値であったので絶対値比較で相対値を示す。
【0113】
磁気的クラスターサイズ測定は、試料を、振動試料型磁束計(東英工業社製)を用いて10kOe(800kA/m)の磁場を印可した後、取り出すことによってDCイレースをおこなった。イレース後の試料をデジタルインスツルメンツ社製ナノスコープIIIの磁気力顕微鏡モードを用いて、5×5μmの範囲をリフトハイト40nmで測定し、磁気力像を得た。磁気力分布の標準偏差(rms)値の70%をしきい値に設定し、画像を2値化して70%以上の磁気力を有する部分のみを表示させた。この画像を画像解析装置(KS400)に導入し、ノイズ除去、穴埋め処理を行った後、平均面積(nm)を算出した。実施例−1の値を100として相対値で示す。
【0114】
【表2】
Figure 2004319838
【0115】
表1、本発明の強磁性凝集体は、比較例に比べて結合剤の吸着量が多いことが分かる。また、表2から本発明の強磁性凝集体を用いた磁気記録媒体は、強磁性金属粉末の分散性が向上し△M及び磁気クラスターサイズも比較例に比べて小さいことがわかる。
【発明の効果】
本発明の強磁性凝集体は、塗布液の結合剤の吸着量が増加し、磁性層において、分散性が向上し△M及び磁気クラスターサイズも小さくできるので粒子間相互作用の影響を抑えることでき、低ノイズの磁気記録媒体が期待できる。

Claims (2)

  1. 平均長軸長が25nm以上50nm未満の強磁性金属粉末の凝集体であって、該凝集体の平均粒子径が300〜850μmであり、かつ飽和磁化量(σs)が80〜130A・m/kgであることを特徴とする強磁性金属粉末の凝集体。
  2. 請求項1記載の強磁性金属粉末の凝集体を結合剤中に分散してなる磁性層を有することを特徴とする磁気記録媒体。
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