JP2004319715A - 研磨用スラリーおよびそれを用いる半導体ウェハの研磨方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】水を主成分とし、有機粒子と、酸化剤として過酸化水素と、金属と錯体を形成しうる水溶性化合物を含んだ研磨用スラリーであって、無機粒子を砥粒とする場合に問題であったスクラッチ、ディッシングやエロージョンの発生を著しく抑制する研磨用スラリーを提供する。
【解決手段】研磨用スラリーは、主成分の水と、有機粒子、研磨条件下で金属と錯体を生成し得る水溶性化合物および酸化剤として過酸化水素を含有し、過酸化水素の濃度が0.1〜15質量%であることを特徴とする。半導体ウェハの研磨方法は、前記研磨用スラリーを用いて半導体ウェハ上に膜形成された銅を研磨することからなる。
【選択図】 なし
【解決手段】研磨用スラリーは、主成分の水と、有機粒子、研磨条件下で金属と錯体を生成し得る水溶性化合物および酸化剤として過酸化水素を含有し、過酸化水素の濃度が0.1〜15質量%であることを特徴とする。半導体ウェハの研磨方法は、前記研磨用スラリーを用いて半導体ウェハ上に膜形成された銅を研磨することからなる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置の製造に用いられる研磨用スラリーおよびそれを用いる半導体ウェハの研磨方法に関する。さらに詳しくは、半導体の銅配線形成のために半導体ウェハ上に膜形成された銅を研磨し平坦化するための研磨用スラリーおよび研磨方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体装置製造の配線工程において、絶縁膜上に配線形成用の溝形成を行い、配線用の金属膜をめっき法などにより埋め込み、過剰な金属膜を、取り除き、金属配線を含んだ絶縁膜を平坦化する技術として、CMP(Chemical and Mechanical Polishing)が用いられている。これは、砥粒を分散させたスラリーにより機械的に研磨する方法である。
【0003】
CMP技術においては、従来からセリア、アルミナなどの金属酸化物あるいはシリカなどの無機砥粒を含むスラリーが用いられている。しかし、これらの無機砥粒は硬度が高く、銅などの硬度が低い金属膜を研磨する場合、スクラッチと呼ばれる金属表面の研磨傷や、ディッシングと呼ばれ、配線部分の金属膜が中心部でより深く研磨されることによって断面凹形状となる現象、およびエロージョンと呼ばれ、配線パターンが密な部分の中央部で、下地層である絶縁膜も含めてより深く研磨されることにより断面凹形状となる現象が、大きな問題となっている。
【0004】
現在、半導体の性能向上のため、絶縁膜上の1/2配線幅は130nmから90nm、さらに65nmへと、より微細化が進んでおり、その研磨対象の絶縁膜表面は、より複雑な構造になっている。配線幅がより微細化されると、スクラッチによる金属表面の研磨傷は断線を引き起こし、また、ディッシングやエロージョンは配線抵抗の上昇やばらつき、さらには上層に形成される配線とのショートを引き起こし、半導体デバイスの信頼性を著しく低下させ、歩留まりを大幅に低下させる原因となっている。
【0005】
このスクラッチは、砥粒の硬さや、砥粒の凝集体が存在することにより起こる部分的な過剰研磨が原因である。ディッシングは、硬い砥粒による過剰な研磨や、研磨速度を上げるために行う金属表面の溶出を促進させるためのpH調整や添加剤等の添加が原因である。また、エロージョンは、硬い砥粒による過剰な研磨や、絶縁膜や金属の拡散を防ぐバリア層などの下地層との研磨選択性が低いことが原因である。
【0006】
これらの問題を解決するために、無機砥粒の場合は、砥粒をアルミナよりも柔らかいシリカにし、液のpHを金属の溶出しない中性からアルカリ性側にして研磨する研磨液が開発される試みがなされている。しかしながら、シリカを砥粒にした場合、アルミナよりもスクラッチが減少するが、無機砥粒を用いるかぎりスクラッチ、ディッシングやエロージョンの発生は防ぐことはできず根本的な解決とはなっていない。
【0007】
また、特許第3172008号では有機高分子化合物の粒子を研磨砥粒とする方法が記載されている。ここで用いられている有機高分子は、メタクリル樹脂、ポリスチレン樹脂等の金属と反応し得る官能基を持たない成分を砥粒としているため、また、金属の表面を酸化させる酸化剤を含んでいないため、被研磨体である金属膜との化学作用が全く働かず、半導体装置製造の配線工程において必要となる十分な金属の研磨速度が得られていない。さらに、研磨粒子である有機高分子が官能基を持たないため、主成分として使用する溶媒への分散性が悪く、部分的に粒子の凝集体が生成することに由来する研磨むらの発生、および研磨速度のばらつきが問題となる。さらに、保管が1週間以上の長期に渡る場合、沈殿が生じる等の問題もある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、水を主成分とし、有機粒子と、酸化剤として過酸化水素と、金属と錯体を形成しうる水溶性化合物を含んだ研磨用スラリーであって、無機粒子を砥粒とする場合に問題であったスクラッチ、ディッシングやエロージョンの発生を著しく抑制する研磨用スラリーを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の研磨用スラリーは、主成分の水と、有機粒子、研磨条件下で金属と錯体を生成し得る水溶性化合物、および酸化剤として過酸化水素を含有し、過酸化水素の濃度が0.1〜15質量%であることを特徴とする。
【0010】
前記の有機粒子が、研磨条件下で金属と錯体を形成し得る官能基を有する樹脂からなることは、本発明の研磨用スラリーの好ましい態様である。
【0011】
前記の有機粒子が、全単量体の100質量部に対して、不飽和カルボン酸系単量体が1〜50質量部およびビニル系単量体が99〜50質量部を含有する単量体組成物を重合して得られる共重合体から構成されてなるものであることは、本発明の研磨用スラリーの好ましい態様である。
【0012】
前記金属と錯体を形成し得る水溶性化合物が、カルボン酸類、アミン類、アミノ酸類およびアンモニアのうちから選ばれる少なくとも1種類であることは、本発明の研磨用スラリーの好ましい態様である。
【0013】
本発明により、前記研磨用スラリーを用いて半導体ウェハ上に膜形成された銅を研磨する半導体ウェハの研磨方法が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
(有機粒子)
有機粒子は、研磨条件下で金属と錯体を形成し得る官能基を有する樹脂からなるものあることが好ましい。金属と錯体を形成しうる官能基としては、カルボン酸基、水酸基、アミン基、ケトン基、グリシジル基が挙げられる。これらの中では、特にカルボン酸基が好ましい。
【0015】
有機粒子は、例えば、前記官能基含有単量体として、不飽和カルボン酸系単量体とこれと共重合可能なビニル系単量体とを乳化重合することにより製造することができる。乳化重合することにより、有機粒子が水溶媒中に分散したエマルション樹脂を得ることができ、微粒子化できるので好ましい。好ましい有機粒子の平均粒径は0.01〜5μmである。
【0016】
そして、得られたエマルション共重合体の不飽和カルボン酸に対して0.3モル等量以上のアルカリ性物質を添加することにより、カルボン酸基を解離させて、金属と錯体を形成しやすい状態にすることができる。
【0017】
本発明において好ましい不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和一塩基酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などの不飽和二塩基酸又はこれらのモノエステル類から選択された1種又は2種以上があげられ、特にアクリル酸、メタクリル酸があげられる。
【0018】
これらの不飽和カルボン酸系単量体の使用量は、共重合体を構成した全単量体成分100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは3〜20質量部、さらに好ましくは5〜15質量部である。この範囲の単量体の使用量であると、目的とする研磨速度が得られ、耐水性、耐アルカリ性にも優れる。
【0019】
上記の不飽和カルボン酸系単量体と共重合可能なビニル系単量体の好ましい例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、(メタ)アクリロニトリル等のビニルシアン化合物、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル化合物があげられる。
【0020】
また、有機粒子を構成する共重合体の製造に用いられる官能基含有単量体として、さらに(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等を必要に応じて使用することができる。
【0021】
ビニル系単量体の使用量は、共重合体を構成した全単量体成分100質量部に対して、好ましくは99〜50質量部、より好ましくは97〜80質量部、さらに好ましくは95〜85重量部である。
【0022】
この様な有機粒子は、アルカリ性物質を添加することにより、全体が膨潤するものであっても、膨潤しないものであってもよい。ここで膨潤とは、その一次粒子の平均粒子径が、分解や凝集によらず、水やその他の水溶性物質を粒子内に含むことにより大きくなることをいう。
【0023】
アルカリ性物質の添加による有機粒子の膨潤度調整のため、さらに必要に応じて架橋性単量体を共重合することができる。この例としては、重合性不飽和結合を一分子中に2個以上含有する単量体であって、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクレート、トリメチロールアロバントリメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ジアクリレート等が挙げられる。これらの架橋性単量体の使用量は、共重合体を構成した全単量体成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下であり、不飽和カルボン酸系単量体の種類、使用量、ビニル系単量体の種類などによって適宜調整される。
なお、これらの有機粒子は、1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
この有微粒子の研磨用スラリー中の含有量としては、用いる有機微粒子の種類によって異なるが、好ましくは0.1〜20質量%、さらには0.5〜15質量%が好ましい。この範囲であると、有機粒子の効果が充分に発揮でき、目的とする研磨速度が達成できる。また、研磨スラリーの粘度が適当であるため、研磨時の研磨用スラリーの定速供給が容易となる。
【0025】
有機粒子は、粒子中に含有されるカルボン酸基を部分的、或いは、完全に解離させた状態で使用することが好ましい。解離した状態にするために、アルカリ性物質を使用するが、その例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、珪酸ソーダ等の無機アルカリ性物質や、アンモニア等の揮発性アルカリ性物質や、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリ性物質を用いることができる。
【0026】
その使用量としては、有機粒子を構成する共重合体に含まれる不飽和カルボン酸系単量体単位1当量に対して、0.1当量以上10当量以下が好ましい。アルカリ性物質の使用量がこの範囲であれば、解離したカルボン酸基の量が充分で、被研磨金属との錯体形成反応が速く、目的とする研磨能力が得られる。
【0027】
(水溶性化合物)
金属と錯体を形成しうる水溶性化合物としては、カルボン酸類、アミン類、アミノ酸類、アルコール類、ケトン類、アルデヒド類のうちから選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。具体的には、アンモニア、酢酸、シュウ酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸等のカルボン酸類、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン等のアミノ酸類、アセチルアセトン等のケトン類、イミダゾール等のN含有環状化合物等が挙げられる。これらのなかでもアンモニア、シュウ酸、リンゴ酸、エチルアミンが好ましい。特に、アンモニアおよび/または蓚酸であることが好ましい。
【0028】
その含有量としては、水溶性化合物によって異なるが、研磨スラリー中0.1〜10質量%の範囲が好ましい。この範囲であれば、その効果が充分に発揮され、目的とする研磨速度が達成できる。また、被研磨金属と錯体形成が適度に進み、研磨対象外の被研磨金属が溶出するディッシングが抑制できる。
被研磨物の金属が、有機粒子に含まれる官能基と錯体を形成するとともに、上記の水溶性化合物と金属錯体を形成することにより、良好な金属研磨が行われる。
【0029】
(酸化剤)
酸化剤としては、過酸化水素を使用することが好ましい。この過酸化水素の含有率としては、研磨用スラリー中0.1〜15質量%の範囲が好ましく、0.5〜5.0質量%の範囲が特に好ましい。この範囲であれば、金属と有機粒子の化学反応が進行しやすく、しかも、金属表面に生成する酸化膜が不動態化することがなく、目的とする研磨速度が達成できる。
【0030】
(研磨用スラリーのpH)
本発明で示す研磨用スラリーのpHは、好ましくは5〜11、更には7〜10の範囲が好ましい。pHがこの範囲であると、金属の溶出が抑制でき、ディッシングが発生し難い。また、金属膜研磨の最終点となる半導体絶縁膜と金属配線が同一面上に存在する時点において、絶縁膜を溶解させたり、金属膜を部分的に分解させたりすることがない。
【0031】
この研磨剤のpH調整に使用する物質は、特には限定されないが、アルカリ性物質としては、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアミン、メチルアミン等のアミン類、NaOH、KOH等の無機化合物等が挙げられる。また、酸性物質としては、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸等の有機酸等が挙げられる。これらのpH調整剤は、上記した金属錯体の配位子となりうる水溶性化合物を兼ねていてもよい。また、これらの物質は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
(研磨用スラリーの調製方法)
有機粒子、水溶性化合物及び水を混合し、pH調整して、研磨用スラリーを調製する。この調製方法は特に限定されないが、pH調整したエマルション樹脂に、pH調整した前記水溶性化合物の水溶液を加え、よく攪拌混合するのが好ましい。その後、徐々に、酸化剤を加えて、さらに攪拌混合する。
そして、最終的なpHと濃度に調整後、ろ紙濾過により、有機粒子に比べて大きな不溶解物と凝集体を取り除き、研磨用スラリーとする。
【0033】
(その他の添加剤)
本発明の研磨用スラリーには、研磨促進剤として、塩素、フッ素、沃素を含むハロゲン化物や、研磨や腐食を避けたい部分のCu配線の保護膜としてベンゾトリアゾール、キナルジン酸等の窒素含有複素環化合物、及び、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、グルコース等の水溶性高分子、界面活性剤等の物質を、単独又は2種類以上組み合わせて添加してもよい。その添加量、種類については、本発明の目的を達成することができる限り、特に限定されない。
【0034】
【実施例】
以下、実施例によって、本発明を詳細に説明する。なお、本実施例において、部および%は、特に限定しない限り、質量部および質量%を表す。
【0035】
研磨用組成物中の有機粒子の粒径及び粒度分布は、以下の方法で測定した。
有機粒子粒度分布測定
レーザー動的光散乱法原理を用いた粒度分布測定法
測定装置:MICROTRAC UPA・MODEL:9230(Leeds&Northrup社製)
濃度条件:試料原液
測定時間:900秒
【0036】
また、研磨用スラリーの評価は下記の方法により行った。
1.研磨速度
研磨スラリー:本発明の研磨用組成物
被研磨物:基板上に熱酸化膜5000Å/スパッタ法により形成したTa膜300Å/CVD法で形成しためっき用シード銅膜1500Å/メッキ法で形成した銅膜15000Åが積層された8インチシリコンウェハー
研磨装置:エコメット3、オートメット2(BUEHLER製)
研磨パッド:8インチIC−1000/suba400格子
研磨荷重:750g/cm2
研磨時間:10min
スラリー供給量:13cc/min
定盤回転数:50rpm
基板側回転数:60rpm
以上の条件で研磨を行い、被研磨物を超純水洗浄および超音波洗浄した後、乾燥させ、4端子プローブを用いたシート抵抗測定により研磨前後での膜厚を測定した。膜厚の変化量と研磨時間から平均研磨速度を算出した。
【0037】
2.表面欠陥
研磨後の被研磨物を、超純水により洗浄、乾燥させた後、微分干渉顕微鏡を用いて倍率×2500倍にて表面を観察した。なお、0.1μm以上の長さを持つ表面上の傷を、スクラッチと判断した。表1中、
○:傷、スクラッチが5個以下、
×:傷、スクラッチが5個を超える。
【0038】
3.ディッシング量測定
シリコンウェハー上の酸化膜にドライエッチングで厚さ5000Å、幅100μmの溝を形成した。この溝にメッキ法で銅を埋め込み被研磨物とした。本発明の研磨用スラリーを用いて上記の研磨条件で研磨した後、溝中心部の凹部の窪みを断面SEM写真により測定した。研磨は溝が形成されていない部分の銅研磨が完了した時点で終了した。
【0039】
4.エロージョン量測定
シリコンウェハー上の酸化膜にドライエッチングで厚さ5000Å、幅0.5μmの溝を0.5μm間隔で数本形成した。この溝にメッキ法で銅を埋め込み被研磨物とする。本発明の研磨要組成物および上記の研磨条件で研磨した後、中心部の溝と両側の溝の段差を断面SEM写真により測定する。研磨は、溝の両側で溝が形成されていない部分の銅研磨が完了した時点で終了した。
【0040】
5.保存安定性評価
大気圧、室温下にて、研磨用スラリーを6時間静置した後、スラリーの状態を目視により観察した。表1中、
○:上澄み、沈殿の生成がない、
×:上澄み、沈殿の生成ある。
【0041】
(実施例1)
(A)有機粒子の製造
攪拌機、温度計、還流コンデンサー付きのセパラフラスコに、第1段階として水100部、ラウリル硫酸ナトリウム0.05部を仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃迄昇温する。内温を70℃に保ち重合開始剤として過硫酸カリウム0.8部添加し、溶解したことを確認してメタクリル酸メチル4部、アクリル酸ブチル4部、メタクリル酸2部の混合単量体を仕込み2時間反応させた。
【0042】
得られたエマルションは、固形分約9%であり、電子顕微鏡により、粒子径を測定したところ約0.05μmであった。
さらにこの共重合体エマルションを、アンモニアを使用してpH8.8(室温25〜30℃)に調整した。その時、固形分濃度8.0%であり、粒径は平均粒径として0.5μmであった。
【0043】
(B)研磨用スラリーの製造
シュウ酸の10%水溶液を、アンモニアを使用してpH8.6に調整した。この溶液と、(A)のpH調整したエマルション、純水、及び35%過酸化水素をよく混合し、有機粒子の固形分濃度3.0wt%、過酸化水素濃度2.0wt%、シュウ酸濃度1.0wt%、pH8.8になるように調整した。
【0044】
前記方法により研磨性能を評価した結果、一定の速度にて研磨が可能であり、研磨時間が長くなっても表面欠陥もないことから、この研磨用スラリーは研磨時の物理的な負荷に対して安定であり、被研磨物にスクラッチを生じさせないことを確認した。結果を表1に示す。
【0045】
(実施例2)
実施例1の過酸化水素濃度を1.0wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1のpHを7.6に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
【0046】
(実施例4)
実施例1のpHを7.6、過酸化水素濃度を0.5wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1のpHを7.6、過酸化水素濃度を3.0wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
【0047】
(実施例6)
実施例1のpHを6.5、過酸化水素濃度を2.0wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例1のpHを6.5、過酸化水素濃度を1.0wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
【0048】
(実施例8)
実施例1のpHを6.5、過酸化水素濃度を3.0wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
(実施例9)
実施例1のpHを5.1、過酸化水素濃度を2.0wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
(実施例10)
実施例1のpHを5.1、過酸化水素濃度を0.5wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
【0049】
(比較例1)
実施例1の有機粒子を市販のコロイダルシリカ(扶桑化学社製、PL−1)に変えた以外は、同様の操作を行った、研磨評価結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1において過酸化水素を用いず、濃度を0%とした以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
【0050】
(比較例3)
実施例1の過酸化水素濃度を16wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例1のpHを7.6、過酸化水素を用いず、濃度を0wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
【0051】
(比較例5)
実施例1のpHを7.6、過酸化水素濃度を15wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
(比較例6)
実施例1のpHを6.5、過酸化水素を用いず、濃度を0wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
(比較例7)
実施例1のpHを5.1、過酸化水素を用いず、濃度を0wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【発明の効果】
本発明の研磨用スラリーを用いることにより、配線加工された絶縁膜上の過剰な金属膜を早い速度で研磨することができる。さらに、被研磨対象物表面に、研磨過剰による傷やスクラッチを発生することなく研磨することができ、ディッシングやエロージョンなどの凹凸がなく平坦性の高い研磨が可能となる。
【0054】
また、本発明の研磨用スラリーは、経時的な相分離(上澄み、沈殿の生成)、凝集体生成が起こらず、常に安定した研磨速度を得ることが出来る。
また、本発明の研磨用スラリーを用いる研磨方法においては、有機粒子の分解温度が半導体絶縁膜よりも十分に低いため、熱処理、プラズマ処理などで、残存した砥粒を容易に除去できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置の製造に用いられる研磨用スラリーおよびそれを用いる半導体ウェハの研磨方法に関する。さらに詳しくは、半導体の銅配線形成のために半導体ウェハ上に膜形成された銅を研磨し平坦化するための研磨用スラリーおよび研磨方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体装置製造の配線工程において、絶縁膜上に配線形成用の溝形成を行い、配線用の金属膜をめっき法などにより埋め込み、過剰な金属膜を、取り除き、金属配線を含んだ絶縁膜を平坦化する技術として、CMP(Chemical and Mechanical Polishing)が用いられている。これは、砥粒を分散させたスラリーにより機械的に研磨する方法である。
【0003】
CMP技術においては、従来からセリア、アルミナなどの金属酸化物あるいはシリカなどの無機砥粒を含むスラリーが用いられている。しかし、これらの無機砥粒は硬度が高く、銅などの硬度が低い金属膜を研磨する場合、スクラッチと呼ばれる金属表面の研磨傷や、ディッシングと呼ばれ、配線部分の金属膜が中心部でより深く研磨されることによって断面凹形状となる現象、およびエロージョンと呼ばれ、配線パターンが密な部分の中央部で、下地層である絶縁膜も含めてより深く研磨されることにより断面凹形状となる現象が、大きな問題となっている。
【0004】
現在、半導体の性能向上のため、絶縁膜上の1/2配線幅は130nmから90nm、さらに65nmへと、より微細化が進んでおり、その研磨対象の絶縁膜表面は、より複雑な構造になっている。配線幅がより微細化されると、スクラッチによる金属表面の研磨傷は断線を引き起こし、また、ディッシングやエロージョンは配線抵抗の上昇やばらつき、さらには上層に形成される配線とのショートを引き起こし、半導体デバイスの信頼性を著しく低下させ、歩留まりを大幅に低下させる原因となっている。
【0005】
このスクラッチは、砥粒の硬さや、砥粒の凝集体が存在することにより起こる部分的な過剰研磨が原因である。ディッシングは、硬い砥粒による過剰な研磨や、研磨速度を上げるために行う金属表面の溶出を促進させるためのpH調整や添加剤等の添加が原因である。また、エロージョンは、硬い砥粒による過剰な研磨や、絶縁膜や金属の拡散を防ぐバリア層などの下地層との研磨選択性が低いことが原因である。
【0006】
これらの問題を解決するために、無機砥粒の場合は、砥粒をアルミナよりも柔らかいシリカにし、液のpHを金属の溶出しない中性からアルカリ性側にして研磨する研磨液が開発される試みがなされている。しかしながら、シリカを砥粒にした場合、アルミナよりもスクラッチが減少するが、無機砥粒を用いるかぎりスクラッチ、ディッシングやエロージョンの発生は防ぐことはできず根本的な解決とはなっていない。
【0007】
また、特許第3172008号では有機高分子化合物の粒子を研磨砥粒とする方法が記載されている。ここで用いられている有機高分子は、メタクリル樹脂、ポリスチレン樹脂等の金属と反応し得る官能基を持たない成分を砥粒としているため、また、金属の表面を酸化させる酸化剤を含んでいないため、被研磨体である金属膜との化学作用が全く働かず、半導体装置製造の配線工程において必要となる十分な金属の研磨速度が得られていない。さらに、研磨粒子である有機高分子が官能基を持たないため、主成分として使用する溶媒への分散性が悪く、部分的に粒子の凝集体が生成することに由来する研磨むらの発生、および研磨速度のばらつきが問題となる。さらに、保管が1週間以上の長期に渡る場合、沈殿が生じる等の問題もある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、水を主成分とし、有機粒子と、酸化剤として過酸化水素と、金属と錯体を形成しうる水溶性化合物を含んだ研磨用スラリーであって、無機粒子を砥粒とする場合に問題であったスクラッチ、ディッシングやエロージョンの発生を著しく抑制する研磨用スラリーを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の研磨用スラリーは、主成分の水と、有機粒子、研磨条件下で金属と錯体を生成し得る水溶性化合物、および酸化剤として過酸化水素を含有し、過酸化水素の濃度が0.1〜15質量%であることを特徴とする。
【0010】
前記の有機粒子が、研磨条件下で金属と錯体を形成し得る官能基を有する樹脂からなることは、本発明の研磨用スラリーの好ましい態様である。
【0011】
前記の有機粒子が、全単量体の100質量部に対して、不飽和カルボン酸系単量体が1〜50質量部およびビニル系単量体が99〜50質量部を含有する単量体組成物を重合して得られる共重合体から構成されてなるものであることは、本発明の研磨用スラリーの好ましい態様である。
【0012】
前記金属と錯体を形成し得る水溶性化合物が、カルボン酸類、アミン類、アミノ酸類およびアンモニアのうちから選ばれる少なくとも1種類であることは、本発明の研磨用スラリーの好ましい態様である。
【0013】
本発明により、前記研磨用スラリーを用いて半導体ウェハ上に膜形成された銅を研磨する半導体ウェハの研磨方法が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
(有機粒子)
有機粒子は、研磨条件下で金属と錯体を形成し得る官能基を有する樹脂からなるものあることが好ましい。金属と錯体を形成しうる官能基としては、カルボン酸基、水酸基、アミン基、ケトン基、グリシジル基が挙げられる。これらの中では、特にカルボン酸基が好ましい。
【0015】
有機粒子は、例えば、前記官能基含有単量体として、不飽和カルボン酸系単量体とこれと共重合可能なビニル系単量体とを乳化重合することにより製造することができる。乳化重合することにより、有機粒子が水溶媒中に分散したエマルション樹脂を得ることができ、微粒子化できるので好ましい。好ましい有機粒子の平均粒径は0.01〜5μmである。
【0016】
そして、得られたエマルション共重合体の不飽和カルボン酸に対して0.3モル等量以上のアルカリ性物質を添加することにより、カルボン酸基を解離させて、金属と錯体を形成しやすい状態にすることができる。
【0017】
本発明において好ましい不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和一塩基酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などの不飽和二塩基酸又はこれらのモノエステル類から選択された1種又は2種以上があげられ、特にアクリル酸、メタクリル酸があげられる。
【0018】
これらの不飽和カルボン酸系単量体の使用量は、共重合体を構成した全単量体成分100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは3〜20質量部、さらに好ましくは5〜15質量部である。この範囲の単量体の使用量であると、目的とする研磨速度が得られ、耐水性、耐アルカリ性にも優れる。
【0019】
上記の不飽和カルボン酸系単量体と共重合可能なビニル系単量体の好ましい例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、(メタ)アクリロニトリル等のビニルシアン化合物、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル化合物があげられる。
【0020】
また、有機粒子を構成する共重合体の製造に用いられる官能基含有単量体として、さらに(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等を必要に応じて使用することができる。
【0021】
ビニル系単量体の使用量は、共重合体を構成した全単量体成分100質量部に対して、好ましくは99〜50質量部、より好ましくは97〜80質量部、さらに好ましくは95〜85重量部である。
【0022】
この様な有機粒子は、アルカリ性物質を添加することにより、全体が膨潤するものであっても、膨潤しないものであってもよい。ここで膨潤とは、その一次粒子の平均粒子径が、分解や凝集によらず、水やその他の水溶性物質を粒子内に含むことにより大きくなることをいう。
【0023】
アルカリ性物質の添加による有機粒子の膨潤度調整のため、さらに必要に応じて架橋性単量体を共重合することができる。この例としては、重合性不飽和結合を一分子中に2個以上含有する単量体であって、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクレート、トリメチロールアロバントリメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ジアクリレート等が挙げられる。これらの架橋性単量体の使用量は、共重合体を構成した全単量体成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下であり、不飽和カルボン酸系単量体の種類、使用量、ビニル系単量体の種類などによって適宜調整される。
なお、これらの有機粒子は、1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
この有微粒子の研磨用スラリー中の含有量としては、用いる有機微粒子の種類によって異なるが、好ましくは0.1〜20質量%、さらには0.5〜15質量%が好ましい。この範囲であると、有機粒子の効果が充分に発揮でき、目的とする研磨速度が達成できる。また、研磨スラリーの粘度が適当であるため、研磨時の研磨用スラリーの定速供給が容易となる。
【0025】
有機粒子は、粒子中に含有されるカルボン酸基を部分的、或いは、完全に解離させた状態で使用することが好ましい。解離した状態にするために、アルカリ性物質を使用するが、その例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、珪酸ソーダ等の無機アルカリ性物質や、アンモニア等の揮発性アルカリ性物質や、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリ性物質を用いることができる。
【0026】
その使用量としては、有機粒子を構成する共重合体に含まれる不飽和カルボン酸系単量体単位1当量に対して、0.1当量以上10当量以下が好ましい。アルカリ性物質の使用量がこの範囲であれば、解離したカルボン酸基の量が充分で、被研磨金属との錯体形成反応が速く、目的とする研磨能力が得られる。
【0027】
(水溶性化合物)
金属と錯体を形成しうる水溶性化合物としては、カルボン酸類、アミン類、アミノ酸類、アルコール類、ケトン類、アルデヒド類のうちから選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。具体的には、アンモニア、酢酸、シュウ酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸等のカルボン酸類、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン等のアミノ酸類、アセチルアセトン等のケトン類、イミダゾール等のN含有環状化合物等が挙げられる。これらのなかでもアンモニア、シュウ酸、リンゴ酸、エチルアミンが好ましい。特に、アンモニアおよび/または蓚酸であることが好ましい。
【0028】
その含有量としては、水溶性化合物によって異なるが、研磨スラリー中0.1〜10質量%の範囲が好ましい。この範囲であれば、その効果が充分に発揮され、目的とする研磨速度が達成できる。また、被研磨金属と錯体形成が適度に進み、研磨対象外の被研磨金属が溶出するディッシングが抑制できる。
被研磨物の金属が、有機粒子に含まれる官能基と錯体を形成するとともに、上記の水溶性化合物と金属錯体を形成することにより、良好な金属研磨が行われる。
【0029】
(酸化剤)
酸化剤としては、過酸化水素を使用することが好ましい。この過酸化水素の含有率としては、研磨用スラリー中0.1〜15質量%の範囲が好ましく、0.5〜5.0質量%の範囲が特に好ましい。この範囲であれば、金属と有機粒子の化学反応が進行しやすく、しかも、金属表面に生成する酸化膜が不動態化することがなく、目的とする研磨速度が達成できる。
【0030】
(研磨用スラリーのpH)
本発明で示す研磨用スラリーのpHは、好ましくは5〜11、更には7〜10の範囲が好ましい。pHがこの範囲であると、金属の溶出が抑制でき、ディッシングが発生し難い。また、金属膜研磨の最終点となる半導体絶縁膜と金属配線が同一面上に存在する時点において、絶縁膜を溶解させたり、金属膜を部分的に分解させたりすることがない。
【0031】
この研磨剤のpH調整に使用する物質は、特には限定されないが、アルカリ性物質としては、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアミン、メチルアミン等のアミン類、NaOH、KOH等の無機化合物等が挙げられる。また、酸性物質としては、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸等の有機酸等が挙げられる。これらのpH調整剤は、上記した金属錯体の配位子となりうる水溶性化合物を兼ねていてもよい。また、これらの物質は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
(研磨用スラリーの調製方法)
有機粒子、水溶性化合物及び水を混合し、pH調整して、研磨用スラリーを調製する。この調製方法は特に限定されないが、pH調整したエマルション樹脂に、pH調整した前記水溶性化合物の水溶液を加え、よく攪拌混合するのが好ましい。その後、徐々に、酸化剤を加えて、さらに攪拌混合する。
そして、最終的なpHと濃度に調整後、ろ紙濾過により、有機粒子に比べて大きな不溶解物と凝集体を取り除き、研磨用スラリーとする。
【0033】
(その他の添加剤)
本発明の研磨用スラリーには、研磨促進剤として、塩素、フッ素、沃素を含むハロゲン化物や、研磨や腐食を避けたい部分のCu配線の保護膜としてベンゾトリアゾール、キナルジン酸等の窒素含有複素環化合物、及び、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、グルコース等の水溶性高分子、界面活性剤等の物質を、単独又は2種類以上組み合わせて添加してもよい。その添加量、種類については、本発明の目的を達成することができる限り、特に限定されない。
【0034】
【実施例】
以下、実施例によって、本発明を詳細に説明する。なお、本実施例において、部および%は、特に限定しない限り、質量部および質量%を表す。
【0035】
研磨用組成物中の有機粒子の粒径及び粒度分布は、以下の方法で測定した。
有機粒子粒度分布測定
レーザー動的光散乱法原理を用いた粒度分布測定法
測定装置:MICROTRAC UPA・MODEL:9230(Leeds&Northrup社製)
濃度条件:試料原液
測定時間:900秒
【0036】
また、研磨用スラリーの評価は下記の方法により行った。
1.研磨速度
研磨スラリー:本発明の研磨用組成物
被研磨物:基板上に熱酸化膜5000Å/スパッタ法により形成したTa膜300Å/CVD法で形成しためっき用シード銅膜1500Å/メッキ法で形成した銅膜15000Åが積層された8インチシリコンウェハー
研磨装置:エコメット3、オートメット2(BUEHLER製)
研磨パッド:8インチIC−1000/suba400格子
研磨荷重:750g/cm2
研磨時間:10min
スラリー供給量:13cc/min
定盤回転数:50rpm
基板側回転数:60rpm
以上の条件で研磨を行い、被研磨物を超純水洗浄および超音波洗浄した後、乾燥させ、4端子プローブを用いたシート抵抗測定により研磨前後での膜厚を測定した。膜厚の変化量と研磨時間から平均研磨速度を算出した。
【0037】
2.表面欠陥
研磨後の被研磨物を、超純水により洗浄、乾燥させた後、微分干渉顕微鏡を用いて倍率×2500倍にて表面を観察した。なお、0.1μm以上の長さを持つ表面上の傷を、スクラッチと判断した。表1中、
○:傷、スクラッチが5個以下、
×:傷、スクラッチが5個を超える。
【0038】
3.ディッシング量測定
シリコンウェハー上の酸化膜にドライエッチングで厚さ5000Å、幅100μmの溝を形成した。この溝にメッキ法で銅を埋め込み被研磨物とした。本発明の研磨用スラリーを用いて上記の研磨条件で研磨した後、溝中心部の凹部の窪みを断面SEM写真により測定した。研磨は溝が形成されていない部分の銅研磨が完了した時点で終了した。
【0039】
4.エロージョン量測定
シリコンウェハー上の酸化膜にドライエッチングで厚さ5000Å、幅0.5μmの溝を0.5μm間隔で数本形成した。この溝にメッキ法で銅を埋め込み被研磨物とする。本発明の研磨要組成物および上記の研磨条件で研磨した後、中心部の溝と両側の溝の段差を断面SEM写真により測定する。研磨は、溝の両側で溝が形成されていない部分の銅研磨が完了した時点で終了した。
【0040】
5.保存安定性評価
大気圧、室温下にて、研磨用スラリーを6時間静置した後、スラリーの状態を目視により観察した。表1中、
○:上澄み、沈殿の生成がない、
×:上澄み、沈殿の生成ある。
【0041】
(実施例1)
(A)有機粒子の製造
攪拌機、温度計、還流コンデンサー付きのセパラフラスコに、第1段階として水100部、ラウリル硫酸ナトリウム0.05部を仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃迄昇温する。内温を70℃に保ち重合開始剤として過硫酸カリウム0.8部添加し、溶解したことを確認してメタクリル酸メチル4部、アクリル酸ブチル4部、メタクリル酸2部の混合単量体を仕込み2時間反応させた。
【0042】
得られたエマルションは、固形分約9%であり、電子顕微鏡により、粒子径を測定したところ約0.05μmであった。
さらにこの共重合体エマルションを、アンモニアを使用してpH8.8(室温25〜30℃)に調整した。その時、固形分濃度8.0%であり、粒径は平均粒径として0.5μmであった。
【0043】
(B)研磨用スラリーの製造
シュウ酸の10%水溶液を、アンモニアを使用してpH8.6に調整した。この溶液と、(A)のpH調整したエマルション、純水、及び35%過酸化水素をよく混合し、有機粒子の固形分濃度3.0wt%、過酸化水素濃度2.0wt%、シュウ酸濃度1.0wt%、pH8.8になるように調整した。
【0044】
前記方法により研磨性能を評価した結果、一定の速度にて研磨が可能であり、研磨時間が長くなっても表面欠陥もないことから、この研磨用スラリーは研磨時の物理的な負荷に対して安定であり、被研磨物にスクラッチを生じさせないことを確認した。結果を表1に示す。
【0045】
(実施例2)
実施例1の過酸化水素濃度を1.0wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1のpHを7.6に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
【0046】
(実施例4)
実施例1のpHを7.6、過酸化水素濃度を0.5wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1のpHを7.6、過酸化水素濃度を3.0wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
【0047】
(実施例6)
実施例1のpHを6.5、過酸化水素濃度を2.0wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例1のpHを6.5、過酸化水素濃度を1.0wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
【0048】
(実施例8)
実施例1のpHを6.5、過酸化水素濃度を3.0wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
(実施例9)
実施例1のpHを5.1、過酸化水素濃度を2.0wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
(実施例10)
実施例1のpHを5.1、過酸化水素濃度を0.5wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
【0049】
(比較例1)
実施例1の有機粒子を市販のコロイダルシリカ(扶桑化学社製、PL−1)に変えた以外は、同様の操作を行った、研磨評価結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1において過酸化水素を用いず、濃度を0%とした以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
【0050】
(比較例3)
実施例1の過酸化水素濃度を16wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例1のpHを7.6、過酸化水素を用いず、濃度を0wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
【0051】
(比較例5)
実施例1のpHを7.6、過酸化水素濃度を15wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
(比較例6)
実施例1のpHを6.5、過酸化水素を用いず、濃度を0wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
(比較例7)
実施例1のpHを5.1、過酸化水素を用いず、濃度を0wt%に変えた以外は、同様の操作を行った。研磨評価結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【発明の効果】
本発明の研磨用スラリーを用いることにより、配線加工された絶縁膜上の過剰な金属膜を早い速度で研磨することができる。さらに、被研磨対象物表面に、研磨過剰による傷やスクラッチを発生することなく研磨することができ、ディッシングやエロージョンなどの凹凸がなく平坦性の高い研磨が可能となる。
【0054】
また、本発明の研磨用スラリーは、経時的な相分離(上澄み、沈殿の生成)、凝集体生成が起こらず、常に安定した研磨速度を得ることが出来る。
また、本発明の研磨用スラリーを用いる研磨方法においては、有機粒子の分解温度が半導体絶縁膜よりも十分に低いため、熱処理、プラズマ処理などで、残存した砥粒を容易に除去できる。
Claims (6)
- 主成分の水と、有機粒子、研磨条件下で金属と錯体を生成し得る水溶性化合物、および酸化剤として過酸化水素を含有し、過酸化水素の濃度が0.1〜15質量%であることを特徴とする研磨用スラリー。
- 有機粒子が、研磨条件下で金属と錯体を形成し得る官能基を有する樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の研磨用スラリー。
- 有機粒子が、全単量体の100質量部に対して、不飽和カルボン酸系単量体が1〜50質量部およびビニル系単量体が99〜50質量部を含有する単量体組成物を重合して得られる共重合体から構成されてなるものであることを特徴とする請求項2に記載の研磨用スラリー。
- 有機粒子が、水溶媒中に分散したエマルション樹脂である請求項2または3に記載の研磨用スラリー。
- 金属と錯体を生成し得る水溶性化合物が、カルボン酸類、アミン類、アミノ酸類、アルコール類、ケトン類、アルデヒド類のうちから選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の研磨用スラリー。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の研磨用スラリーを用いて半導体ウェハ上に膜形成された銅を研磨することを特徴とする半導体ウェハの研磨方法。
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JP2019087660A (ja) * | 2017-11-08 | 2019-06-06 | Agc株式会社 | 研磨剤と研磨方法、および研磨用添加液 |
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2003
- 2003-04-15 JP JP2003110780A patent/JP2004319715A/ja active Pending
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