JP2004317926A - 光コネクタ及びその組立方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高速に組立てることができ、かつ、優れた接着耐久性及び高い信頼性を有する光コネクタ及びその組立て方法を提供する。
【解決手段】端部を被覆除去し、硬化剤を塗布した光ファイバテープ1を、ブーツ部5を貫通し、フェルール4のファイバ穴9に挿入して、先端部1aを端面4aから突き出るようにして、空洞部7bへ配置し、α−シアノアクリレート100重量部に対し、両端末に−OH基を有する直鎖状ポリマー1分子と重合性の炭素−炭素不飽和結合とイソシアネート基を分子内に持つ化合物2分子との反応物を1〜30重量部含有し、α−シアノアクリレートに不溶の有機高分子粒子を5〜40重量部含有したα−シアノアクリレート系接着剤を、フェルール窓7aから空洞部7bに充填し、高速硬化させることで、光ファイバテープ1をフェルール4に接着固定した光コネクタ及びその組立方法。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、単心及び多心の光ファイバが接続される光コネクタ及びその組立方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光通信システムには種々の光コネクタが用いられている。これまで、多心の光ファイバテープを簡単に着脱するために、MT形光コネクタやプッシュ・プル操作で簡単に着脱できるMPO形光コネクタなどが実用化されている。どちらの光コネクタも接続にはMTフェルールが用いられている。
【0003】
MTフェルールを用いた光コネクタは、接続する光ファイバ同士をガイドピンにより簡単に位置合わせする構造をとっており、その簡易性、大きさ、重量、コストなどの面で光ファイバネットワークを構築するためには大変有用な技術である。
【0004】
図7に従来のMT形光コネクタを構成するMTコネクタプラグの長手方向の断面図を示す。
MT形光コネクタの構成を簡単に説明すると、多心の光ファイバテープ1を有するMTコネクタプラグ2と、2つのMTコネクタプラグ2同士を締結するクランプスプリング(図7では図示せず)とにより主に構成される。
MTコネクタプラグ2は、光ファイバテープ1と、光ファイバテープ1が接着固定されるフェルール4と、MTコネクタプラグ2同士が対面しない端部にて光ファイバテープ1を保持するブーツ部5とによりなり、MTコネクタプラグ2同士が対面する端部において、一方のMTコネクタプラグ2のフェルール端面4aにはガイドピン(図7では図示せず)が設けられ、他方のMTコネクタプラグ2のフェルール端面4aにはガイドピンに嵌合するガイドピン穴(図7では図示せず)が設けられている。又、フェルール端面4aに光ファイバテープ1のカット面1dが配置されるように、光ファイバテープ1はフェルール4の長手方向に貫通して設けられている。上記構造により、MTコネクタプラグ2同士がガイドピン及びガイドピン穴によって正しく配列され、クランプスプリングにより締結されて、多心の光ファイバテープ1同士を同時に接続することが可能となる。
【0005】
次に、MTコネクタプラグ2において、最も一般的に行われている従来の組立方法の概略を、図7を用いて説明する。
まず、光ファイバ熱硬化性接着剤の主剤と硬化剤を十分に攪拌して熱硬化型接着剤18をつくり、その熱硬化型接着剤18を少量フェルール窓7aから滴下する。次に、フェルール4のファイバ穴9に、先端部の被覆を除去した多心の光ファイバテープ1を挿入する。このファイバ穴9は、その端面4a側に光ファイバテープ1の心線数に応じた微細孔部9aが形成され、その内部側に光ファイバテープ1の心線数に応じた溝状のファイバ設置部9bが形成されたものである。光ファイバテープ1挿入後に、フェルール4と光ファイバテープ1の接着固定のために、熱硬化型接着剤18をフェルール窓7aから再び滴下して空洞部7bへ充填する。そして、これを加熱装置にセットし、フェルール4内に充填された熱硬化型接着剤18を10分以上加熱して硬化させる。熱硬化型接着剤18の加熱硬化後、フェルール4の端面4aより突き出ている光ファイバテープ1の先端部1aを端面4aと同一の平面内で切断し、更に、端面4aを光ファイバテープ1のカット面1dと共に研磨することにより光コネクタが完成する。完成したMT形光コネクタの上面図を図8に示す。このように、従来の光コネクタの組立方法では、その組立工程において、加熱が必要であり、組立時間が長くなるという欠点があった。
【0006】
一方、接着剤として、種々の種類が開発、実用化されている。この中で、α−シアノアクリレート系接着剤は被接着物表面や空気中の水分等のアニオン種により容易にアニオン重合を起こし、短時間で重合硬化することが知られており、この性質により幅広い材料を接着する瞬間接着剤として用いられている。更に、光学系器材に含まれるレンズ等のガラスとエンジニアリングプラスチックの接着を短時間で行うことのできる接着剤としても期待されている。
【0007】
しかしながら、従来のα−シアノアクリレート系接着剤は、ガラス系材料の接着に関して長期的な信頼性が得られず、経時的に剥がれを生じる問題点を有していた。これは、上記MT形光コネクタに使用した場合でも、同様に剥離の問題が生じる。例えば、従来のα−シアノアクリレート系接着剤をMTコネクタプラグ2のフェルール窓7aから滴下して空洞部7bに充填した例を図9に示す。図9に示すように、従来の高速硬化型接着剤19(例えば、従来のα−シアノアクリレート系接着剤)においては、硬化時や環境温度変化によって発生する接着剤の収縮ひずみ(図9中矢印B)による内部応力の発生が、被接着物との接着力(図9中矢印A)より大きくなるため、あるいは接着面に水分が侵入して接着強度を低下させるため、接着面に剥離が生じていた。
【0008】
このような強度の低下や経時的な剥離が生ずる問題を解決するために、α−シアノアクリレート系接着剤を用いて接着する際に、有機シラン化合物で被接着面を処理する方法が開示されている(特許文献1参照)。又、特定組成の有機チタンをα−シアノアクリレートに添加・混合することによりガラスに対して接着性を改良する方法が開示されている(特許文献2参照)。更に、α−シアノアクリレートに可塑剤とシランとを添加し、ガラスに対する接着性を改良した接着剤組成物について開示されている(特許文献3参照)。
【0009】
しかしながら、これらの手法を使用した場合でも、接着前に被接着面の特殊処理を必要としたり、更には、経時的な保存安定性が無かったり、保存中に硬化速度が著しく低下したりという欠点を有していた。
【0010】
【特許文献1】
特開昭52−76344号公報(第1−6頁)
【特許文献2】
特開昭58−45140号公報(第1−2頁)
【特許文献3】
特表2001−505235号公報(第2−7頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、従来のMT形光コネクタの組立では、加熱工程が必要であり、組立時間が長くなるという欠点を有していた。又、高速硬化が可能な接着剤を用いることで、MT形光コネクタの組立時のこれまでの欠点は改良されるが、前述したようにガラスなどに対する接着耐久性に欠点があるため、外部環境等の変化に対して、組立てられた光コネクタの信頼性を確保することが難しかった。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、高速に組立てることができ、かつ、優れた接着耐久性及び高い信頼性を有する光コネクタ及びその組立て方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明に係る光コネクタは、端部の被覆が除去され、接着剤を硬化させる硬化剤が塗布された単心又は多心の光ファイバと、光ファイバが配置される空洞部を有する光ファイバ固定手段(フェルール)とを有し、
α−シアノアクリレート100重量部に対し、両端末に−OH基を有する直鎖状ポリマー1分子と、重合性の炭素−炭素不飽和結合及びイソシアネート基を分子内に持つ化合物2分子との反応物を1〜30重量部含有し、α−シアノアクリレートに不溶の有機高分子粒子を5〜40重量部含有したα−シアノアクリレート系接着剤を空洞部に充填して、非加熱で高速に硬化させることで、光ファイバを光ファイバ固定手段に接着固定したことを特徴とする。なお、上記硬化剤は上記α−シアノアクリレート系接着剤を硬化させるものである。
【0014】
上記課題を解決する本発明に係る光コネクタは、光ファイバ固定手段の端面から突き出るように配置されて接着固定され、光ファイバ固定手段の端面と同一平面上にて切断された光ファイバの先端部が、光ファイバ固定手段の端面と共に研磨されたことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する本発明に係る光コネクタは、予め高精度に切断された光ファイバの端面が、予め研磨された光ファイバ固定手段の端面と同一平面上に揃えて配置されて、光ファイバが接着固定されたことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決する本発明に係る光コネクタは、α−シアノアクリレート系接着剤に、シリカ等の無機又はエストラマー等の有機のフィラーを混入したことを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決する本発明に係る光コネクタは、硬化剤にシランカップリング剤を混入して、高速に硬化させたことを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決する本発明に係る光コネクタの組立方法は、端部の被覆が除去された単心又は多心の光ファイバを、光ファイバ固定手段の空洞部へ配置し、
α−シアノアクリレート100重量部に対し、両端末に−OH基を有する直鎖状ポリマー1分子と、重合性の炭素−炭素不飽和結合及びイソシアネート基を分子内に持つ化合物2分子との反応物を1〜30重量部含有し、α−シアノアクリレートに不溶の有機高分子粒子を5〜40重量部含有したα−シアノアクリレート系接着剤を空洞部に充填して、非加熱で高速に硬化させて、
光ファイバを光ファイバ固定手段に接着固定することを特徴とする。なお、上記硬化剤は上記α−シアノアクリレート系接着剤を硬化させるものである。
【0019】
上記課題を解決する本発明に係る光コネクタの組立方法は、光ファイバを光ファイバ固定手段の端面から突き出るように配置して接着固定し、光ファイバの先端部を光ファイバ固定手段の端面と同一平面上にて切断し、切断された光ファイバの先端部を光ファイバ固定手段の端面と共に研磨することを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決する本発明に係る光コネクタの組立方法は、光ファイバの端面を予め高精度に切断し、光ファイバ固定手段の端面を予め研磨し、光ファイバの端面と光ファイバ固定手段の端面とを同一平面上に揃えて配置して接着固定することを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決する本発明に係る光コネクタの組立方法は、α−シアノアクリレート系接着剤として、シリカ等の無機又はエストラマー等の有機のフィラーが混入されたものを用いることを特徴とする。
【0022】
上記課題を解決する本発明に係る光コネクタの組立方法は、硬化剤として、シランカップリング剤が混入されたものを用い、高速に硬化させたことを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明は、MT形等の光コネクタを短時間で組立てるために、非加熱で高速硬化の性質を有する接着剤を用いて、従来は必要であった加熱工程を省略すると共に高速で硬化させ、更に、信頼性の高い光コネクタを実現するものである。このような特徴を有する本発明に係る光コネクタ及びその組立方法の実施の形態例を、以下に図を用いて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る実施形態の一例を示す光コネクタの斜視図である。なお、ここでは、一例としてMT形の光コネクタを用いて説明するが、本発明は同等の構造を有する他の光コネクタにも適用可能である。又、光ファイバテープ等の多心の光ファイバだけではなく、単心の光ファイバにも適用可能である。
【0025】
図1に示すように、本発明に係る光コネクタは、多心の光ファイバテープ1を有する2つのMTコネクタプラグ2と、2つのMTコネクタプラグ2同士を締結するクランプスプリング3とにより主に構成される。
【0026】
MTコネクタプラグ2は、光ファイバテープ1と、光ファイバテープ1が接着固定されるフェルール4と、MTコネクタプラグ2同士が対面しない端部にて光ファイバテープ1を保持するブーツ部5とによりなり、MTコネクタプラグ2同士が対面する端部において、一方のMTコネクタプラグ2のフェルール端面4aにはガイドピン6aが設けられ、他方のMTコネクタプラグ2のフェルール端面4aにはガイドピン6aに嵌合するガイドピン穴6b(図1では図示していないため、図2を参照のこと。)が設けられている。
【0027】
又、フェルール端面4aに光ファイバテープ1の先端部1aが配置されるように、光ファイバテープ1はフェルール4の長手方向に後述の空洞部を貫通して設けられている。従って、上記構造により、MTコネクタプラグ2同士は、フェルール4にもうけられたガイドピン穴6b及びガイドピン穴6bに挿入されたガイドピン6aによって正しく配列され、クランプスプリング3により締結されて、多心の光ファイバテープ1同士を同時に接続することが可能となる。
【0028】
本発明に係る光コネクタにおいても、光ファイバテープ1、フェルール4及びブーツ部3は接着剤により固定されているが、本発明では接着剤として非加熱高速硬化型接着剤7を用いることが特徴であり、具体的には、以下に示す組成のα−シアノアクリレート系接着剤を用いることが従来とは大きく異なる点である。
【0029】
本発明では、非加熱高速硬化型接着剤7として、エチル−α−シアノアクリレートに対して、アニオン重合禁止剤としてS050ppmとラジカル重合禁止剤としてハイドロキノン500ppmを添加したものをベースモノマーとし、両端末にOH基を有する直鎖状ポリマーとしてポリエステル1分子と重合性の炭素−炭素不飽和結合とイソシアネート基を分子内に持つ化合物2分子として2−イソシアネートアクリレートとの反応物を10重量部と、α−シアノアクリレートに不溶の有機高分子粒子として、ポリエチレン粉末(平均粒径50μm)を20重量部含有したα−シアノアクリレート系接着剤を用いた。このα−シアノアクリレート系接着剤を用いて光コネクタを組立てることで、加熱処理を不要とすると共に硬化時間を短縮して作業効率を向上させている。
【0030】
なお、上記実施例では、α−シアノアクリレートとしてエチル−α−シアノアクリレートを用いているが、本発明はこれのみに限定するものではなく、例えば、メチルエ−α−シアノアクリレート等の同等のものを用いてもよい。同様に、両端末にOH基を有する直鎖状ポリマーも、ポリエステルだけではなく、変性エキポシ樹脂やポリウレタン等の同等のものを、又、重合性の炭素−炭素不飽和結合とイソシアネート基を分子内に持つ化合物としても、2−イソシアネートアクリレートだけではなく、アリルイソシアネート等の同等のものを、更に、α−シアノアクリレートに不溶の有機高分子粒子としても、ポリエチレン粉末だけではなく、ポリエチレン等の同等のものを用いてもよい。
【0031】
次に、前記α−シアノアクリレート系接着剤を用いた本発明に係る光コネクタの組立方法を、図2を用いて説明する。
図2は、本発明に係る実施形態の一例であり、光コネクタの組立方法を示す概略図である。
まず、単心又は多心の光ファイバの端部の被覆を除去する。図2では、光ファイバテープ1の端部の被覆が除去され、心線部1bが剥き出しなった状態を図示した。次に、端部の被覆が除去された光ファイバテープ1を、ブーツ部5を貫通し、更に、フェルール4のファイバ穴9に挿入して、その先端部1aを端面4aから突き出るようにして、光ファイバ固定手段であるフェルール4の空洞部7bへ配置する。空洞部7bにはフェルール窓7aが設けてあり、フェルール窓7aから前記α−シアノアクリレート系接着剤を空洞部7bに充填する。光ファイバテープ1には、前記α−シアノアクリレート系接着剤を硬化させる硬化剤が予め塗布されており、これにより高速に硬化させて、光ファイバテープをフェルール4の空洞部7bに接着固定する。硬化後、端面4aより突き出ている光ファイバテープ1の先端部1aを、端面4aと同一平面内で切断し、更に、端面4aを研磨して光コネクタが完成する。
【0032】
本発明の実施例におけるα−シアノアクリレート系接着剤の経時的な強度変化と、前記α−シアノアクリレート系接着剤を用いて作製したMT形光コネクタの耐環境特性とを図3、図4及び図5に示す。
【0033】
まず、MT形光コネクタとほぼ同等の構成材料である耐熱ガラス板とPPS(ポリフェニレンサルファイド)板を、接着面積4.2cmで張り合わせたサンプルを作製し、それを温度60℃、湿度95%RHの状態に放置したときのせん断接着強度の経時的変化を測定した。それぞれの板には硬化剤が塗布され、その後、前記α−シアノアクリレート系接着剤を塗布、硬化させて作製した。なお、接着剤の硬化時間は30秒程度以下であり、測定時に加えたせん断速度は5mm/分である。又、硬化剤としては、アミン系硬化剤であるジメチルパラトルイジンを用い、溶媒としてアセトンを用いた。溶媒としては、アセトンのほかに、エタノール等を用いることも可能である。この測定結果を図3に示す。測定は1回につき5サンプル測定した。
【0034】
又、比較のために、従来の接着剤として、市販のシアノアクリレート系接着剤でも同様の測定を行い、その結果を図3に併せて示した。図3から明らかなように、市販のシアノアクリレート系接着剤は、温度60℃、湿度95%RHに1週間放置すると、接着強度がほぼ零になってしまうのに対し、前記α−シアノアクリレート系接着剤では、初期に比べて若干強度は低下するものの4週間後も接着強度が維持されている。これより、前記α−シアノアクリレート系接着剤が高い信頼性を有していることが確認された。
【0035】
次に、前記α−シアノアクリレート系接着剤をMT形光コネクタに適用したときの光コネクタの特性を確認するため、前記α−シアノアクリレート系接着剤を用いて4心MT形光コネクタのサンプルを作製した。サンプルの作製は、図2において説明した組立方法を用いた。フェルールとしては、図1、図2に示したようなフェルール窓を有するタイプと、フェルール窓のないタイプの2種類を用いた。なお、フェルール窓のないタイプの場合、前記α−シアノアクリレート系接着剤をブーツ部からフェルール内部へ充填した。接着剤の硬化時間は30秒程度以下である。又、硬化剤としてせん断接着強度を測定したときと同じもの(ジメチルパラトルイジン)を使用し、温度−40℃〜85℃、湿度0〜95%RHで、1サイクル6時間で20サイクル実施した。測定は4心MT形光コネクタを各3サンプルですべて光ファイバを測定した。
【0036】
測定結果を図4、図5及び表1に示す。図4、図5は各サイクルでの光損失変化を示し、表1は測定中の損失変化の最大値を示している。又、比較のために、従来MT形光コネクタに用いていた熱硬化型接着剤についても同様の測定を行った。
【0037】
【表1】
Figure 2004317926
【0038】
図4、図5及び表1から明らかなように、特性はこれまでの接着剤を用いた場合と同等あり、設計規格に対して十分小さい損失であり、安定した特性であることが確認できた。以上の結果から、本発明によれば、短時間でMT形光コネクタの組立てを行うことができ、かつ、外部環境等の変化に対して高い信頼性を有するMT形光コネクタを提供できることが確認できた。
【0039】
図6は、本発明に係る実施形態の他の一例であり、光コネクタの他の組立方法を示す概略図である。
これは、より一層組立時間が短縮できる高速の組立方法として、MT形光コネクタに適用可能なものである。すなわち、図6に示すように、フェルール端面4aが予め研磨してあるフェルール4と、端部の被覆が除去されると共に端面(カット面1d)が予め高精度に切断されている光ファイバテープ1とを用い、フェルール4のファイバ穴9に光ファイバテープ1の先端部1aを挿入した後、ダミーフェルール10を用いて、光ファイバテープ1のカット面1aをフェルール端面4aと同一平面上に揃えて配置する。
【0040】
そして、非加熱高速硬化型接着剤8をフェルール窓7aから滴下して、空洞部7bに充填、硬化させることにより、フェルール4と光ファイバテープ1及びブーツ5を接着固定する方法である。この組立て方法により、組立時に研磨工程を省略することができ、更に組立時間の短縮化を図ることができる。
【0041】
上記MT形光コネクタの組立方法にも、前記α−シアノアクリレート系接着剤を適用することができ、接着時間の短縮化と研磨工程の省略により、より一層のMT形光コネクタの組立時間の高速化を図るとともに、外部環境等の変化に対して高い信頼性を有するMT形光コネクタを提供することができる。
【0042】
なお、上述した実施の形態において、前記α−シアノアクリレート系接着剤に、更にシリカ等の無機フィラーを混入させることで、接着剤の硬化時や温度変化により発生する内部応力を小さくさせて、MT形光コネクタの信頼性をより一層高めることができる。この時、混入するフィラー等はMT形光コネクタを組立ての作業性を考慮して、接着剤の粘度を低くすることが必要であるため、フィラー等の粒径は大きなもの、例えば、1〜数μm(1〜200μm)の粒径のものを選択するのが好ましい。粒径を1〜200μmとした理由は、1μm以下では粘度がアップし、又、200μm以上では充填不良となるためである。
【0043】
又、接着剤の硬化時や温度変化により発生する内部応力を小さくするため、フィラーとして、弾性率の比較的小さい(10〜10dyn/cm)のものを選択する。例えば、柔らかいゴム状粒子(エチレン系エラストマ等)等の有機系のフィラーを使用する。ここで、弾性率として10〜10dyn/cmとする理由は、これより小さいと強度が小さくなり、又、これより大きいと応力発生が大となるためである。このような基準で選択されたフィラー等が混入された前記α−シアノアクリレート系接着剤を用いて作製されたMT形光コネクタは、外部の温度・湿度変化等の環境変化に対して高い信頼性を確保することができる。
【0044】
又、シランカップリング剤を用いることで、接着力の強度劣化を抑えることができる。一般的に、シランカップリング剤は、珪素(Si)原子が1分子中にアミノ基、ビニル基等の有機官能基と、メトキシ基、エトキシ基等の加水分解基を有するものであり、これにより無機物と有機樹脂とを結びつけることができ、材料の物理強度や接着性を向上させることができるものである。したがって、このシランカップリング剤を硬化剤内に混入させて使用することで、組立作業性を低下させることなく、短時間でMT形光コネクタの組立てを行うことができ、かつ、外部環境等の変化に対してより一層高い信頼性を有するMT形光コネクタの提供が可能となる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、ガラスなどに対し優れた接着耐久性を有し、保存性安定性にも優れたα−シアノアクリレート系接着剤を用いたので、短時間で光コネクタの組立てを行うことができ、かつ、外部環境等の変化に対して高い信頼性を有する光コネクタを実現できる。更に、硬化時間の短くできることで、短時間で光コネクタの組立てを行うことができ、光コネクタの低コスト化も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施形態の一例を示すMT形光コネクタの斜視図である。
【図2】本発明に係る実施形態の一例を示すMT形光コネクタの組立方法の概略図である。
【図3】本発明に係るα−シアノアクリレート系接着剤の経時的な強度変化を示すグラフである。
【図4】本発明に係るα−シアノアクリレート系接着剤を用いて作製したMT形光コネクタ(フェルール窓あり)の耐環境特性を示すグラフである。
【図5】本発明に係るα−シアノアクリレート系接着剤を用いて作製したMT形光コネクタ(フェルール窓なし)の耐環境特性を示すグラフである。
【図6】本発明に係る実施形態の他の一例を示すMT形光コネクタの組立方法の概略図である。
【図7】従来のMT形光コネクタの側面からの断面図である。
【図8】従来のMT形光コネクタの上面図である。
【図9】従来のMT形光コネクタのフェルール窓における接着剤に働く力を示す図である。
【符号の説明】
1 光ファイバテープ
1a 先端部
1b 心線部
1c テープ部
1d カット面
2 MTコネクタプラグ
3 クランプスプリング
4 フェルール
4a 端面
5 ブーツ部
6a ガイドピン
6b ガイドピン穴
7a フェルール窓
7b 空洞部
8 非加熱高速硬化型接着剤
9 ファイバ穴
10 ダミーフェルール

Claims (10)

  1. 端部の被覆が除去され、接着剤を硬化させる硬化剤が塗布された単心又は多心の光ファイバと、前記光ファイバが配置される空洞部を有する光ファイバ固定手段とを有する光コネクタにおいて、
    α−シアノアクリレート100重量部に対し、両端末に−OH基を有する直鎖状ポリマー1分子と重合性の炭素−炭素不飽和結合及びイソシアネート基を分子内に持つ化合物2分子との反応物を1〜30重量部含有し、α−シアノアクリレートに不溶の有機高分子粒子を5〜40重量部含有したα−シアノアクリレート系接着剤を前記空洞部に充填して硬化させることで、
    前記光ファイバを前記光ファイバ固定手段に接着固定したことを特徴とする光コネクタ。
  2. 請求項1記載の光コネクタにおいて、
    前記光ファイバ固定手段の端面から突き出るように配置されて接着固定され、前記光ファイバ固定手段の端面と同一平面上にて切断された前記光ファイバの先端部が、前記光ファイバ固定手段の端面と共に研磨されたことを特徴とする光コネクタ。
  3. 請求項1記載の光コネクタにおいて、
    予め高精度に切断された前記光ファイバの端面が、予め研磨された前記光ファイバ固定手段の端面と同一平面上に揃えて配置されて、前記光ファイバが接着固定されたことを特徴とする光コネクタ。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光コネクタにおいて、
    前記α−シアノアクリレート系接着剤にフィラーを混入したことを特徴とする光コネクタ。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光コネクタにおいて、
    前記硬化剤にシランカップリング剤を混入したことを特徴とする光コネクタ。
  6. 端部の被覆が除去され、接着剤を硬化させる硬化剤が塗布された単心又は多心の光ファイバを、光ファイバ固定手段の空洞部へ配置し、
    α−シアノアクリレート100重量部に対し、両端末に−OH基を有する直鎖状ポリマー1分子と、重合性の炭素−炭素不飽和結合及びイソシアネート基を分子内に持つ化合物2分子との反応物を1〜30重量部含有し、α−シアノアクリレートに不溶の有機高分子粒子を5〜40重量部含有したα−シアノアクリレート系接着剤を前記空洞部に充填して硬化させて、
    前記光ファイバを前記光ファイバ固定手段に接着固定することを特徴とする光コネクタの組立方法。
  7. 請求項6記載の光コネクタの組立方法において、
    前記光ファイバを前記光ファイバ固定手段の端面から突き出るように配置して接着固定し、
    前記光ファイバの先端部を前記光ファイバ固定手段の端面と同一平面上にて切断し、
    切断された前記光ファイバの先端部を前記光ファイバ固定手段の端面と共に研磨することを特徴とする光コネクタの組立方法。
  8. 請求項6記載の光コネクタの組立方法において、
    前記光ファイバの端面を予め高精度に切断し、
    前記光ファイバ固定手段の端面を予め研磨し、
    前記光ファイバの端面と前記光ファイバ固定手段の端面とを同一平面上に揃えて配置して接着固定することを特徴とする光コネクタの組立方法。
  9. 請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の光コネクタの組立方法において、
    前記α−シアノアクリレート系接着剤として、フィラーが混入されたものを用いることを特徴とする光コネクタの組立方法。
  10. 請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の光コネクタの組立方法において、
    前記硬化剤として、シランカップリング剤が混入されたものを用いることを特徴とする光コネクタの組立方法。
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