JP2004317551A - 画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】離型剤の島間の最近接壁間距離の平均値、及び該最近接壁間距離が1300nm以上の島が特定比率以下の海島構造を有するトナーを用い、超音波振動手段を用いた転写工程を経てトナー画像を形成する画像形成方法。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数色のカラートナーにより形成されたトナー画像を超音波振動を利用して転写を行う画像形成方法に関し、特に、トナー粒子中の離型剤の分散状態を特定条件下に制御してなるトナーを使用する画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式による画像形成はいまやデジタル方式が主流となっており、当該技術の動向の一つとしてフルカラーの画像形成技術が挙げられる。トナー画像のカラー化を促進させる技術の一つとして、トナー粒子中に離型剤を多量に含有したオイルレストナーにより、フルカラーのトナー画像形成技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
デジタルの画像形成では、例えば1200dpi(1インチあたりのドット数、1インチは2.54cm)レベルの小さなドット画像を顕像化するため、数ミクロンオーダーの小粒径トナーが要求される。
【0004】
ところで、小粒径トナーによる画像形成は、感光体表面に形成されたトナー画像を紙やOHPフィルムなどの転写材上に転写する際に転写性が悪くなる傾向を有していた。特に、Y,M,Cのカラートナーを重ね合せてトナー画像を形成するフルカラーの画像形成では、その傾向が顕著に現われ感光体表面、あるいは中間転写体からのトナー画像の転写が安定かつ確実に行われず、転写材上に形成されたカラー画像が良好なカラーバランスや濃度を発現することが難しかった。
【0005】
そこで、感光体に物理的な作用を付与してトナー画像を確実に記録媒体上に転写させる技術が検討され、その1つの手段として転写材上にトナー画像を転写する時にトナー画像を担持する担持体に超音波を照射し、その振動により担持体表面から転写材上にトナー画像を効率よく転写させる技術がある。(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−214821号公報(段落0049参照)
【0007】
【特許文献2】
特開2001−100546号公報(段落0052〜61参照)
【0008】
【特許文献3】
特開2001−117381号公報(段落0035、62等参照)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2や特許文献3に開示された超音波を用いてのトナー画像転写は、定着時に転写材上にオイル塗布を行うトナー用に開発されたものだった。そして、オイルレストナーを用いてこの転写方法で画像形成を試みたところ全くうまく行かなかった。オイルレストナーを使用して超音波による転写を行うと、超音波からの振動の影響によりトナー粒子から離型剤が脱離して、定着工程で定着ローラに転写材が巻き付いたりオフセットを発生させた。
【0010】
また、離型剤が脱離したオイルレストナーは、離型剤とともに外添剤も脱離し感光体との付着力が増大する結果、転写率が低下するトナー粒子が発生し、その結果、超音波による振動でトナー画像が乱れ易くなりフルカラー画像上で異なる色のトナー画像が正確に重ならなくなる問題を発生させた。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、超音波による転写工程を経る画像形成方法において、トナー粒子より離型剤が脱離しないトナーを用いて画像形成を行うことにより、転写材が定着ローラに巻き付いたりオフセットを発生させない画像形成方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、超音波からの振動を受けてもトナー画像が乱れることなく、各色のトナー画像がお互いに正確に重なり合ってフルカラー画像を形成することの可能な画像形成方法の提供を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、トナー粒子に超音波振動を付与した時に離型剤相がトナー粒子中で振動を優先的かつ選択的に吸収する傾向を有するので、トナー粒子中で超音波による振動の影響を離型剤相が局所的に集中して受ける結果、離型剤がトナー粒子より脱離するものと推測した。
【0014】
そこで、本発明者等は超音波振動の影響が離型剤に集中しない様にするために、トナー粒子内の離型剤相が振動の影響を局所的に受けない様に離型剤相の分布状態を制御することを検討した。その結果、離型剤相の分布状態が下記に記載の条件を満足するトナーを用いて超音波振動による転写工程を有する画像形成を行っても、トナー画像形成された転写材が定着ローラに巻き付いたり、オフセットを発生させず、しかも、各色のトナー画像が正確に重ね合わさった画像乱れのない良好なフルカラーのトナー画像が得られることを見出した。
【0015】
〔1〕転写材上に複数種のカラートナーを重ね合わせてなるトナー画像を転写する時に超音波振動を使用する画像形成方法において、該トナー画像を形成するトナー粒子が、少なくとも2個以上の離型剤からなる島を有する海島構造を有し、該トナー粒子中の該島間の最近接壁間距離の平均値が100〜1060nmで、該最近接壁間距離が1300nm以上である島が全トナー粒子中の島の10個数%以下であることを特徴とする画像形成方法。
【0016】
本発明では、上記〔1〕に記載の構成により、離型剤を含有し海島構造を有するオイルレストナーを用いて、超音波振動による転写工程を有する画像形成を行った時に良好な定着性が発現されるとともに、画像乱れが発生しない画像形成を発現することを見出した。
【0017】
〔2〕前記トナー粒子が、離型剤を含有する樹脂粒子と着色剤粒子とを水系媒体中で凝集させる工程を経て得られるものであり、かつ、個数平均粒径が2〜7μmであることを特徴とする前記〔1〕に記載の画像形成方法。
【0018】
また、上記〔2〕に記載の構成によれば、特に2〜7μmという範囲のトナーを用いて超音波を用いる転写工程を経る画像形成を行うことにより、1200dpiレベルのドット画像を顕像化が可能であることが確認され、デジタル画像のより高精度な画像形成が可能になることを見出した。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明に係る画像形成方法に使用されるトナーでは、トナー粒子内に存在する島部における最近接壁間距離の平均値が100〜1060nmであり、かつ前記最近接壁間距離が1300nm以上となる島が、トナー粒子中の全島の10個数%以下であることを特徴とする。
【0021】
本発明では、上記条件で規定される離型剤領域の島が、トナー粒子中で適度な距離間隔で均一に微分散した状態にあるので、トナー粒子は超音波を用いた転写工程時に離型剤成分に振動の影響が集中しない構造となり、トナー粒子からの離型剤脱離の問題を解消したものと推測される。
【0022】
したがって、離型剤成分が上記条件を満足する状態で分散してなるトナーにより、超音波による転写工程を経る画像形成でも転写紙が定着ローラに巻き付いたり、オフセットを発生させない良好な画像形成を可能にしたものと推測される。
【0023】
また、本発明では、振動の影響でトナー粒子より離型剤が脱離する問題を解消したので、転写媒体上でトナー画像に画像乱れを発生させることなく、各色のトナー画像が正確に重ね合わさった高画質のフルカラー画像形成を可能にした。
【0024】
なお、本発明で使用されるトナーがトナー粒子中で離型剤の島が上記構成で特定される条件で均一に微分散していることは、透過型電子顕微鏡写真から確認される。
【0025】
本発明で使用されるトナーが、最近接壁間距離の平均値が100〜1060nmであり、かつ、前記最近接壁間距離が1300nm以上となる島がトナー粒子中の全島の10個数%以下であることは、前述の様にトナー粒子中における離型剤の島が従来よりも短い周期をもって存在することを意味する。換言するとトナー粒子中で離型剤の島がやたらに密に存在する領域と殆ど存在しない領域が混在するものではなく、トナー粒子中で離型剤の島がムラなく均一に微小な間隔を保ちながら分散している。
【0026】
図1は、本発明で用いられる海島構造を有するトナー粒子を説明する模式図である。図中では、本発明で用いられるトナー粒子中の離型剤の島間の最近接壁間距離を矢印(←→)で示してある。
【0027】
なお、本発明に係る画像形成方法に使用されるトナーでいう島の最近接壁間距離とは、図1の模式図で矢印で示す様に、トナー粒子中における隣接し合う離型剤の島の界面間距離をいう。
【0028】
また、本発明では画像形成に使用するトナー粒子中の最近接壁間距離の平均値が260〜820nmで、かつ、前記最近接壁間距離が1300nm以上となる島の数がトナー中の全島の4個数%以下となると、トナー粒子中で離型剤相がより微細に分散した状態になることにより、振動の影響が樹脂領域と離型剤領域の両方に等方的に付与される傾向が強まり、トナー粒子は振動に対しより安定な状態になる。
【0029】
また、最近接壁間距離が1300nm以上となる島の割合がトナー粒子中の全島の10個数%近傍になると、転写時におけるトナー画像の安定性と定着時のオフセット性に変動が見られるが、画像形成に影響を与えるものではなかった。
【0030】
また、本発明で使用されるトナー粒子は、最近接壁間距離が1300nm以上となるの島の個数が0個数%であってもよい。最近接壁間距離が1300nm以上となる島の数が0個数%の状態とはトナー粒子中の離型剤の島が適度な距離間隔で分散しており、粒子中での離型剤の分布に全くムラがない状態で微分散していることを意味する。
【0031】
また、本発明に係る画像形成方法に使用されるトナーは前述した様に、離型剤の島の他に輝度の異なることで電子顕微鏡写真より識別できる着色剤成分の島を有するものであるが、着色剤成分の島は、図1の模式図で島Bにより示されるものである。この模式図から明らかな様に本発明の海島構造を有するトナー粒子中には離型剤の島と着色剤成分の島という複数種類のトナー構成要素の島が存在していてもよいものであって、これらの種類の異なる島は、相互に輝度が異なるので、電子顕微鏡写真において容易に識別できるものである。
(トナーの粒径の説明)
本発明で使用されるトナー粒子は、個数平均粒径が2〜7μmのものが使用され、好ましくは3〜6μmである。トナー粒子の個数平均粒径は、製造工程における凝集剤(塩析剤)濃度や投入のタイミング、あるいは温度により制御可能である。
【0032】
本発明では、特に個数平均粒径の範囲が3.5〜4.0μmとなる小径トナーの時に、前述の課題に加え細線再現性やドット画像を大幅に向上し、1200dpiレベルのデジタルの画像形成に使用可能である。
【0033】
トナーの個数平均粒径の具体的な測定手段としては、例えばコールターカウンターTA−II、コールターマルチサイザー(いずれもコールター社製)、SLAD1100(島津製作所社製レーザ回折式粒径測定装置)等が挙げられる。本発明では、コールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェース(日科機社製)、パーソナルコンピュータを接続し測定、算出した。
【0034】
なお、本発明に用いられるトナーの製造方法については後述する。
次に、本発明で用いられる画像形成装置について説明する。本発明では、像担持体上に形成されたトナー画像を用紙等の転写材上に転写する時、あるいは、像担持体上に形成されたトナー画像を中間転写体に重ね合わせて転写する時、さらには中間転写体上の重ねトナー画像を転写材に転写する時に、トナー画像に超音波振動を付与しながら転写を行ってフルカラーの画像形成を行う。
【0035】
図2は、本発明で好ましく使用される画像形成装置の一例を示す概略構成図である。この画像形成装置は、装置を示す概略構成図である。この画像形成装置は、矢印A方向に回転するドラム状の感光体ドラム11を備えており、感光体ドラム11を有するカラー画像形成装置本体1の上部には、原稿4の画像を読み取る画像読取部2が配備されている。この画像読取部2には、プラテンガラス3、光源5、2つの走査ミラー6,7、結像レンズ8、カラー用のCCDセンサ9等が備えられている。
【0036】
また、カラー画像形成装置本体1の内部には、画像形成ユニット30と、中間転写体ユニット31とが配備されている。画像形成ユニット30には、感光体ドラム11の周囲に、感光体ドラム11をほぼ一様に帯電する帯電器12と、感光体ドラム11にレーザービームを照射して静電潜像を書き込むレーザービーム走査部13と、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色のトナーを収容する現像器14a、14b、14c、14dとが備えられている。
【0037】
中間転写体ユニット31には、駆動ロール17、アイドラーロール18,20、及び二次転写用バックアップロール19によって張架された中間転写体ベルト16が備えられており、中間転写体ベルト16は駆動ロール17によって駆動され、矢印B方向に回転するようになっている。
【0038】
画像形成装置本体1の下部には、転写材である用紙23を収容する給紙カセット21と、この用紙カセット21から用紙23を一枚ずつ取り出して搬送する給送ロール22と、用紙23を中間転写体ベルト16との対向位置にタイミングを合わせて搬送するレジストロール28が配置される。
【0039】
そして、中間転写体ベルト16と転写材とが対向する転写位置に、中間転写体ベルト16の裏面側に超音波発生素子42及びホーン41が配置されている。
【0040】
さらに、用紙上に転写されたトナー像を定着する定着器26と、定着後の用紙が搬出されるトレイ27とが配置されている。
【0041】
本発明に使用される超音波装置について説明する。図5は、本発明で用いられる代表的な超音波装置40の模式図である。図5の超音波装置40は、超音波を発生する超音波発生素子42、発生した超音波を超音波放射面44aに導くホーン41、および超音波発生素子42を駆動する高周波電源45よりなる。なお、本発明に使用される超音波装置はこれに限定されるものではない。
【0042】
図5に示される超音波発生素子42は、強力な超音波を発生するために例えばセラミック系の圧電素子が使用される。超音波発生素子42は、それぞれの長さL1が超音波発生素子42の共振周波数と材料中の音速とで定まる音波長λ1の1/2の整数倍である直管部41a及びホーン部41bよりなるホーン41の直管部41aに有機接着剤で強固に接合される。
【0043】
ホーン部41bは、超音波発生素子42と接合する直管部41aからホーン部41bの先端に向かって断面積が次第に小さく絞られたラッパ状の形状を有している。ホーン41を構成する材料は、SUSが代表的でその他にアルミニウム青銅、りん青銅、チタン合金、ジュラルミン等が挙げられる。
【0044】
ホーン41により、超音波発生素子42の振動振幅を直管部41aの放射端面41cの面積とホーン部41bの先端面41dの面積との面積比に応じて増幅することが可能で、より強力な超音波の放射が可能である。また、超音波発生素子42の振動振幅を小さくすることで、振動応力による疲れ疲労や振動特性の劣化を防止することが可能である。
【0045】
本発明では、ホーン41の放射端面41cの面積に対する先端面41dの面積比を5:1としてあるが、この位の面積比の時にホーン41の振動特性が最も効果的に発現されることが確認されている。
【0046】
さらに、この超音波装置40は、ホーン41の先端に超音波放射板44が取り付けられている。図5では超音波放射板44は直径25mmの円盤状の形状を有している。超音波放射板44の被放射体に対向する面には超音波放射面44aが形成される。
【0047】
この様に、超音波装置40では超音波発生素子42で超音波を発生させ、ホーン41を使用して超音波の振動振幅を増幅し、それを広い面積を有する超音波放射面44aから放射させて、被放射体上の広い領域にわたり強いエネルギ振動を起こすことが可能である。
【0048】
本発明では、この様に構成した超音波装置40を例えば中間転写体ベルト16の幅方向に一列もしくは千鳥状に配列して超音波振動手段を構成した。
【0049】
本発明で用いられる超音波振動における周波数は40kHz〜2MHzが適当であることが確認されている。超音波振動における周波数を高くすると超音波発生素子42の厚みが薄くなり超音波の出力を大きくすることが難しくなるので、上記範囲の周波数が好ましい。
【0050】
本発明では、転写位置で高い転写率を安定して得るために、ホーン41が接触する中間転写体ベルト16あるいは搬送ベルト47の間に、超音波伝播部材として、例えば図5及び図6に示す様にシート状のジェル部材46を設けることが好ましい。ジェル部材46は、シート状のものの他に、例えば、チューブより出したジェル部材46をホーン41の先端に設けられている超音波放射板44に塗布し、フォーム状(成形体)としたものでもよい。
【0051】
本発明では、転写位置に超音波伝播部材を設けることにより、中間転写体ベルト16に確実に超音波を伝播させて転写位置における転写率を向上させることが可能であるとともに、超音波装置40の先端部と中間転写体ベルト16あるいは搬送ベルト47とが摺擦しない様に装置を構成する部材の保護が可能になる。
【0052】
前述の様に、ジェル部材46は、例えば、100%シリコーンを用い、転写時に超音波伝播部材として作用させる。本発明で最も好ましく使用されるジェル部材46は、シート状シリコーン系ジェルである。シート状シリコーン系ジェルは、ジェルそのものが圧力の影響を殆ど受けずに超音波を対向面44bに効率よく伝播するので好ましい。また、シリコーン系ジェルは、耐熱性や耐薬品性が優れ、しかも経時にともなう変動が殆どないので、長期にわたり安定した超音波の伝播特性を発現することが可能であり、かつ、設置環境を汚染することがないので衛生面及び環境特性からも優れていることが確認されている。
【0053】
具体的なシート状シリコーン系ジェルとしては、例えば、シリコーンゴム層の上にシリコーンジェル層を積層させてなるシリコーンジェルシート(特開平2−196453号公報参照)、ガラスクロス等の網目状補強材にシリコーンゴムを被覆硬化させたシリコーンゴムシートにシリコーンジェルを積層してなるもの(特開平6−155517号公報参照)、及び片面に金属箔を設けてなるシリコーンジェルシート(特開平6−291226号公報参照)等が挙げられるが、本発明ではいずれの形態のシート状シリコーン系ジェルを用いてもよいことが確認されている。
【0054】
図2〜図4に示す画像形成装置では、転写位置において、超音波装置40の超音波放射面44aが、トナー像を間に挟んで中間転写体ベルト16あるいは感光体ベルト11及び転写材23とが平行に対向している。ここで超音波放射面44aと対向する中間転写体ベルト16等の部位を対向面44bとすると、超音波放射面44aと対向面44bとの間の距離L2は、超音波放射面44aから放射される超音波の波長λ2の1/2の整数倍に相当する位置に配置される。この超音波放射面44aと対向面44bとの間の距離L2は、波長λ2の1/2である時に最大の感度が得られるので好ましい。
【0055】
これは、超音波装置40の超音波放射面44aから放射された超音波と対向面44bで反射された超音波の位相が一致して、超音波装置40の超音波放射面44aと対向面44bとの間に超音波の定在波が形成されるためと推測される。
【0056】
この定在波が形成されると定在波振動の“腹”の部位に位置する対向面44bに、単純な超音波の放射による作用力よりも大きな力が作用する。例えば、共振周波数が40kHzの超音波発生素子42を使用した場合、放射される超音波の波長λ2は空気中の音速を共振周波数で割った値であるので、λ2は周囲温度によって多少影響を受けるが約17mmとなる。
【0057】
プラテンガラス3上に載置され、光源5によって照らされた原稿4からの反射光像は、2つの走査ミラー6,7、及び結像レンズ8を介してCCDセンサ9によってRGB(レッド、グリーン、ブルー)の画像信号として読み取られる。読み取られたRGBの画像信号は画像信号処理部10に入力され、ここでYMCK(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の画像信号に変換されると共に、必要に応じて画像信号処理部10の内部に設けられたメモリに一時記憶される。
【0058】
感光体ドラム11は、帯電器12によって所定の負電位に一様に帯電された後、レーザービーム走査部13によって静電潜像の形成が行われる。レーザービーム走査部13は、画像信号処理部10から順次出力されるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色の画像データに応じたレーザービームを像担持体ドラム11上に走査することにより、画像露光を行い、これにより像担持体ドラム11上に静電潜像が形成される。
【0059】
感光体ドラム11上に形成された静電潜像は、現像器14a、14b、14c、14dで現像され、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色のトナー像が形成される。各色のトナーは負に帯電しており、像担持体ドラム11上のレーザービームが照射された領域に付着する。なお、像担持体ドラム11が1回転する毎に1色分のトナー像が形成され、4回転で4色分のトナー像が形成される。
【0060】
感光体ドラム11が1回転する毎に形成された1色分のトナー像は、その都度、中間転写体ベルト16上に転写され、これを4回繰り返すことにより中間転写体ベルト16上に4色分のトナー画像が重ね合わされる。
【0061】
中間転写体ベルト16上に4色分のトナー像が転写された後、中間転写体ベルト16がさらに回転してその4色分のトナー像が転写材との転写位置に達するのと同期して、給紙カセット21内に収容されている用紙23が給送ロール22によって給送され、レジストロール28によって中間転写体ベルト16と転写材との転写位置に搬送される。
【0062】
中間転写体ベルト16と転写材との転写位置では、超音波発生素子42及びホーン41により中間転写体ベルト16上のトナー画像が転写材上に転写される。
【0063】
図6は、中間転写体ベルト16と転写材23との転写位置を示す模式図である。中間転写体ベルト16と転写材(用紙)23とが対向する転写位置には、用紙23の裏面側に超音波発生素子42及びホーン41が備えられている。図6に示す様に、ホーン41の先端部は矢印の向きに同位相振動(ピストン振動)し、ホーン周辺部では中間転写体ベルト16と用紙23との間に超音波の定在波が形成される。
【0064】
超音波発生素子42の駆動により発生した超音波を転写に効率よく寄与させるためには、発生した超音波振動が用紙23の表面で発現する様に、用紙23を十分な張力で張ることが好ましい。
【0065】
用紙23に張力を印加させるため、転写位置の上流側と下流側にローラ48をそれぞれ対向配置させ、これらのローラ48間に搬送ベルト47を設ける。
【0066】
また、ローラ48及び搬送ベルト47には、図示していないがトナー粒子が付着しない向きへの電圧を印加する電源などを設けてもよい。
【0067】
この様に、中間転写体ベルト16上で重ね合わされたトナー像を転写位置で超音波により用紙23上に転写する。
【0068】
また、トナー粒子Rのリバウンドや、自発形成される鏡像力が小さい用紙23を使用した時の画像乱れを防止するために、静電気力あるいは熱を用いてトナー像の保持力を増大する手段を設けてもよい。
【0069】
具体的には、ホーン41に電源61を接続し、トナー粒子Rを保持するための電圧を印加するものや、電圧を印加可能な転写保持ロールを用紙23の裏面側に接触させたものが挙げられる。これらにより、用紙23に電荷が付与され、転写されたトナー粒子Rは用紙23上に保持される。なお、用紙23のたわみ振動を防止するために、ホーン41を挟んで転写保持ロール62の反対側にテンションロール64を配置してもよい。
【0070】
トナー像が転写された用紙23は、定着器26において熱及び圧力による定着処理を受けた後、トレイ27上に搬出され、一連のカラー画像形成サイクルが終了する。
【0071】
一方、中間転写体ベルト16へのトナー画像の転写を終了した感光体ドラム11は、クリーニング装置32により感光体ドラム11表面の残留物が除去され、次の画像形成サイクルに移行する。また、転写材(用紙23)への転写を終了した中間転写体ベルト16は、クリーニング装置33により中間転写体ベルト16表面の残留物が除去され、次の画像形成サイクルに移行する。
【0072】
この様に、本発明に用いられる画像形成装置では、中間転写体ベルト上のトナー像を転写材(用紙23)に転写する際に超音波の定在波による音響放射力を用いることによりトナー粒子を飛翔させて転写することが可能であり、前述したトナー粒子中における離型剤相の分散状態が特定されたトナーを使用することにより、超音波の影響で離型剤粒子が脱離してトナー粒子が破壊せずに、転写の際にトナー像の乱れが発生することを防止することが可能である。
【0073】
なお、本発明は、前述した様な中間転写体ベルト16上のトナー画像を転写材に転写する他に、感光体ドラム11上に形成したトナー画像を中間転写体ベルト16上に転写する時に超音波振動を使用するものでもよい。図3は、超音波転写により感光体ドラム11上のトナー画像を中間転写体ベルト16上に転写する画像形成装置の一例を表す概略構成図である。なお、図示してはいないが、図3においても中間転写体ベルト16と超音波装置40の間に超音波伝播部材としてジェル部材46を用いることが好ましい。
【0074】
また、図4は、本発明の画像形成方法に使用可能な他のフルカラー画像形成装置の概略構成図である。図4に示す画像形成装置では、感光体11上に形成したフルカラーのトナー画像を転写材上に転写するものである。
【0075】
図4の画像形成装置は、感光体11の周囲にイエロー(Y)、マゼンタ(M)図4の画像形成装置では、最初にベルト状の感光体11上にイエローの単位画像を形成する。方法は単色の画像形成装置と同様であり、まず、一様帯電器により感光体面を一様に帯電し、その感光体面を像露光器で像様に露光し、イエローのカラートナーにより現像してイエロー画像を形成する。
【0076】
感光体11の回転移動によりこれとタイミングを合わせた画像形成をマゼンタ、シアン、ブラックについても感光体の同一領域に行い、各単位色画像が重ね合わさったフルカラートナー画像が形成される。
【0077】
感光体11が回転移動を続け、前述の対向面44bに相当する超音波装置40の地点に至ると、タイミングを合わせて搬送されてきた転写材23の上にフルカラートナー画像が転写され、フルカラートナー画像を担持した転写材23は、定着器26の方へ搬送されてカラー画像が転写材23上に定着される。また、図4においても対向面44bと超音波装置40の間に超音波伝播部材としてジェル部材46を設けることが好ましい。
【0078】
トナー画像の転写を行った感光体11はさらに回転移動を続けて、ブレードを有するクリーニング装置33により感光体面の転写残トナー、紙粉等を除去された後、再び画像形成に使用される。
【0079】
次に本発明で使用されるトナーの製造方法について説明する。
本発明で使用されるトナーは、トナー粒子中に樹脂と着色剤及び離型剤を含有しており、具体的には重合性単量体を重合して樹脂粒子を生成し、水系媒体中で該樹脂粒子に着色剤粒子及び離型剤粒子を会合、凝集させる工程を経てトナー粒子を生成する。
【0080】
この様に、本発明に使用されるトナーは、樹脂粒子を凝集させてトナー粒子を生成するものであり、樹脂粒子はある程度の接着性を有することが好ましい。
【0081】
樹脂粒子の接着性を向上させる方法としては、樹脂粒子を単一構成の粒子とせず、表面に粒子間の接着性が向上できる様に、表面に低分子量成分を積層した構造の複合樹脂粒子(詳細は後述する)とすることで粒子間の接着性を向上させることが可能である。
【0082】
さらに、凝集時点で着色剤を樹脂粒子と同等以下の粒径に分散させることで、粒子間の会合段階で樹脂粒子間に着色剤を存在させることが可能である。
【0083】
この方法では、樹脂粒子と着色剤粒子の会合時点で、過剰の塩析剤を添加することで、会合型トナー内部に多量の金属塩を含有させることができ、粒子の耐久性も上げることができる。
〈乳化重合法〉
本発明のトナーを製造する方法として樹脂粒子を水系媒体中で塩析/融着させて調製する方法も挙げることができる。ここで「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいう。この方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特開平5−265252号公報や特開平6−329947号公報、特開平9−15904号公報に示す方法を挙げることができる。すなわち、樹脂粒子と着色剤などの構成材料の分散粒子、あるいは樹脂および着色剤等より構成される微粒子を複数以上塩析、凝集、融着させる方法、特に水中にてこれらを乳化剤を用いて分散した後に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え塩析させると同時に、形成された重合体自体のガラス転移点温度以上で加熱融着させて融着粒子を形成しつつ徐々に粒径を成長させ、目的の粒径となったところで水を多量に加えて粒径成長を停止し、さらに加熱、攪拌しながら粒子表面を平滑にして形状を制御し、その粒子を含水状態のまま流動状態で加熱乾燥することにより、本発明のトナーを形成することができる。なお、ここにおいて凝集剤と同時にアルコールなど水に対して無限溶解する溶媒を加えてもよい。
【0084】
本発明のトナーの製造方法においては、少なくとも重合性単量体に離型剤を溶かした後、重合性単量体を重合せしめる工程を経て形成した複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させて得られるものである。本発明のトナーは、重合性単量体に離型剤を溶かすものであるが、これは溶解させて溶かすものでも、溶融して溶かすものであってもよい。
【0085】
また、本発明のトナーの製造方法は、多段重合法によって得られる複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させるものが好ましいが、多段重合法について以下に説明する。
〈多段重合法により得られる複合樹脂粒子の製造方法〉
〔多段重合工程〕
多段重合工程とは、1つの樹脂粒子において異なる分子量分布を有する相を形成するために重合反応を多段階に分けて行うものであって、得られた樹脂粒子がその粒子の中心より表層に向かって分子量の異なる層を形成する様に意図して行うものである。例えば、はじめに高分子量の樹脂粒子分散液を得た後、新たに重合性単量体と連鎖移動剤を加えることによって低分子量の表層を形成する方法が採られている。
【0086】
以下に、多段重合法の代表例である二段重合法および三段重合法について説明する。この様な多段階重合反応によって得られたトナーでは破砕強度の観点から表層程低分子量のものが好ましい。
【0087】
〈二段重合法〉
二段重合法は、高分子量樹脂から形成される中心部(核)と、低分子量樹脂から形成される外層(殻)とで構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。
【0088】
この方法を具体的に説明すると、先ず、単量体溶液を水系媒体(例えば、界面活性剤水溶液)中に油滴分散させた後、この系を重合処理(第一段重合)することにより、高分子量の樹脂粒子の分散液を調製するものである。
【0089】
次いで、この樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と低分子量樹脂を得るための単量体とを添加し、樹脂粒子の存在下で単量体を重合処理(第二段重合)を行うことにより、樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層を形成する方法である。
【0090】
〈三段重合法〉
三段重合法は、例えば高分子量樹脂から形成される中心部(核)、中間層及び低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。
【0091】
この方法を具体的に説明すると、先ず、常法に従った重合処理(第一段重合)により得られた樹脂粒子の分散液を、水系媒体(例えば、界面活性剤水溶液)に添加するとともに、上記水系媒体中に、単量体溶液を油滴分散させた後、この系を重合処理(第二段重合)することにより、樹脂粒子(核粒子)の表面に、樹脂からなる被覆層(中間層)を形成して、複合樹脂粒子(高分子量樹脂−中間分子量樹脂)の分散液を調製する。あるいは、単量体に離型剤を溶解させた状態で水系媒体中に油滴分散させ、一段重合の分散液を加えて油滴を内包させる工程を経て重合処理してもよい。
【0092】
次いで、得られた複合樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と低分子量樹脂を得るための単量体とを添加し、複合樹脂粒子の存在下で単量体を重合処理(第三段重合)することにより、複合樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層を形成する。
【0093】
本発明でいう水系媒体とは、水50〜100質量%と水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等を例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0094】
なお、離型剤を含有する樹脂粒子または被覆層を形成するために好適な重合法としては、臨界ミセル濃度以下の濃度の界面活性剤を溶解してなる水系媒体中に、離型剤を単量体に溶解した単量体溶液を、機械的エネルギーを利用して油滴分散させて分散液を調製し、得られた分散液に水溶性重合開始剤を添加して、油滴内でラジカル重合させる方法(以下、本発明では「ミニエマルジョン法」という。)を挙げることができ、本発明の効果をより発揮することができ好ましい。なお、上記方法において、水溶性重合開始剤に代えて、あるいは水溶性重合開始剤と共に、油溶性重合開始剤を用いても良い。
【0095】
機械的に油滴を形成するミニエマルジョン法は、通常の乳化重合法と異なり、油相に溶解させた離型剤の脱離が少なく、形成される樹脂粒子または被覆層内に十分な量の離型剤を導入させることが可能である。あるいは故意に機械的分散エネルギーを制御して離型剤の脱離を適度に発生させて、離型剤の最近接壁間距離を本発明で特定する範囲の値に制御することが可能である。
【0096】
ここで、機械的エネルギーによる油滴分散を行う分散機としては、特に限定されるものではなく、例えば、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリンおよび圧力式ホモジナイザーなどを挙げることができる。また、分散粒子径としては、10nm〜1μmとされ、好ましくは30〜1000nm、更に好ましくは50〜300nmである。
【0097】
この重合工程で得られる複合樹脂粒子の粒子径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定される質量平均粒径で10nm〜1μmの範囲にあることが好ましい。
【0098】
また、樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は44〜74℃の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは46〜64℃である。
【0099】
また、樹脂粒子の軟化点は95〜140℃の範囲にあることが好ましい。
本発明のトナーは、樹脂および着色粒子の表面に、塩析/融着法によって樹脂粒子を融着させてなる樹脂層を形成させて得られるものであるが、このことについて以下に説明する。
〔着色剤粒子〕
本発明のトナーを得るために使用する着色剤粒子は、界面活性剤を含有する水系媒体中で着色剤粒子を微分散させるための分散装置を用いて形成される。
【0100】
ここで着色剤粒子を分散させる水系媒体中に含有される界面活性剤は臨界ミセル濃度(CMC)以上の濃度で溶解しているものであり、使用される界面活性剤は、前記重合工程で使用するものと同一のものを使用することができる。
【0101】
着色剤粒子の分散処理に使用する分散機は、特に限定されないが、好ましくは、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、ゲッツマンミル、ダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。
〔塩析/融着工程〕
この塩析/融着工程は、樹脂粒子と前記の様に分散して得られた着色剤粒子とを塩析/融着させる(塩析と融着とを同時に起こさせる)ことによって、不定形(非球形)のトナー粒子を得る工程である。
【0102】
本発明でいう塩析/融着とは、塩析(粒子の凝集)と融着(粒子間の界面消失)とが同時に起こること、または、塩析と融着とを併行して進行させる行為をいう。塩析と融着とを併行して進行させるには、樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度条件下で粒子(樹脂粒子、着色剤粒子)を凝集させる必要がある。
【0103】
この塩析/融着工程では、樹脂粒子および着色剤粒子とともに、荷電制御剤などの内添剤粒子(数平均一次粒子径が10nm〜1μm程度の微粒子)を塩析/融着させてもよい。
【0104】
樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させるには、樹脂粒子及び着色剤粒子が分散している分散液中に、臨界凝集濃度以上の塩析剤(凝集剤)を添加するとともに、この分散液を、樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以上に加熱することが必要である。塩析/融着させるために好適な温度範囲としては、(Tg+10)〜(Tg+50℃)であり、特に好ましくは(Tg+15)〜(Tg+40℃)である。
【0105】
〔熟成工程〕
熟成工程は、塩析/融着工程に後続する工程であり、樹脂粒子の融着後も温度を樹脂Tg+15〜Tg+40℃に保ち、一定の強度で攪拌を継続することにより、樹脂粒子と着色剤粒子を融着させてトナー粒子中の離型剤の島と島の最近接壁間距離の制御が可能である。
【0106】
〔濾過・洗浄工程〕
濾過・洗浄工程は、上記の工程で得られたトナー粒子の分散系から当該トナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とを施す工程である。濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
【0107】
〔乾燥工程〕
この工程は、洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程である。
【0108】
この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0109】
乾燥処理されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。
【0110】
次に、トナー製造工程で用いられる各構成因子について、詳細に説明する。
(重合性単量体)
本発明に用いられる樹脂(バインダー)を造るための重合性単量体としては、疎水性単量体を必須の構成成分とし、必要に応じて架橋性単量体が用いられる。また、下記の様に構造中に酸性極性基を有する単量体又は塩基性極性基を有する単量体を少なくとも1種類含有するのが望ましい。
(1)疎水性単量体
単量体成分を構成する疎水性単量体としては、特に限定されるものではなく従来公知の単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
【0111】
具体的には、モノビニル芳香族系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等を用いることができる。
【0112】
ビニル芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体およびその誘導体が挙げられる。
【0113】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0114】
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられ、ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0115】
又、モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
(2)架橋性単量体
樹脂粒子の特性を改良するために架橋性単量体を添加しても良い。架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
(3)酸性極性基を有する単量体
酸性極性基を有する単量体としては、(a)カルボキシル基(−COOH)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物、及び、(b)スルホン基(−SO3H)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。
【0116】
(a)のカルボキシル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル、およびこれらのNa、Zn等の金属塩類等を挙げることができる。
【0117】
(b)のスルホン基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としては、スルホン化スチレン、及びそのNa塩、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチル、及びこれらのNa塩等を挙げることができる。
【0118】
(重合開始剤)
本発明に用いられるラジカル重合開始剤は、水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば、過硫酸塩(例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(例えば、4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、パーオキシド化合物等が挙げられる。更に、上記ラジカル重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合せレドックス系開始剤とする事が可能である。レドックス系開始剤を用いることにより、重合活性を上昇させ、重合温度の低下が図れ、更に、重合時間の短縮が達成できる等好ましい面を有している。
【0119】
重合温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であれば、特に限定されるものではないが例えば50℃から90℃の範囲である。但し、過酸化水素−還元剤(アスコルビン酸等)を組み合わせた常温開始の重合開始剤を用いることで、室温またはそれ以上の温度で重合することも可能である。
【0120】
(連鎖移動剤)
分子量を調整することを目的として、公知の連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのメルカプト基を有する化合物、を挙げることができる。このうち、トナー加熱定着時の臭気を抑制する観点で、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、n−オクチルメルカプタンが、特に好ましい。
【0121】
(界面活性剤)
前述の重合性単量体を使用して、特にミニエマルジョン重合を行うためには、界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行うことが好ましい。この際に使用することのできる界面活性剤としては、特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適な化合物の例として挙げることができる。
【0122】
イオン性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
【0123】
また、下記一般式(1)、(2)の界面活性剤を併用することが好ましい。
一般式(1) R1(OR2)nOSO3M
一般式(2) R1(OR2)nSO3M
一般式(1)、(2)において、R1は炭素数6〜22のアルキル基またはアリールアルキル基を表すが、好ましくは炭素数8〜20のアルキル基またはアリールアルキル基であり、更に好ましくは炭素数9〜16のアルキル基またはアリールアルキル基である。
【0124】
一般式(1)、(2)において、R2は炭素数2〜6のアルキレン基を表すが、好ましくは炭素数2〜3のアルキレン基である。R2で表される炭素数2〜6のアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基等が挙げられる。
【0125】
一般式(1)、(2)において、nは1〜11の整数であるが、好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜5であり、特に好ましくは2〜3である。
【0126】
一般式(1)、(2)において、Mで表される1価の金属元素としてはナトリウム、リチウムが挙げられる。中でも、ナトリウムが好ましく用いられる。
【0127】
以下に、一般式(1)、(2)で表される界面活性剤の具体例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0128】
化合物(101):C10H21(OCH2CH2)2OSO3Na
化合物(102):C10H21(OCH2CH2)3OSO3Na
化合物(103):C10H21(OCH2CH2)2SO3Na
化合物(104):C10H21(OCH2CH2)3SO3Na
化合物(105):C8H17(OCH2CH(CH3))2OSO3Na
化合物(106):C18H37(OCH2CH2)2OSO3Na
(樹脂粒子、トナーの分子量分布)
本発明のトナーは、その分子量分布のピーク又は肩が、100,000〜1,000,000、及び1,000〜50,000に存在することが好ましく、更に分子量分布のピーク又は肩が、100,000〜1,000,000、25,000〜150,000及び1,000〜50,000に存在するものであることが好ましい。
【0129】
樹脂粒子の分子量は、100,000〜1,000,000の領域にピークもしくは肩を有する高分子量成分と、1,000から50,000未満の領域にピークもしくは肩を有する低分子量成分の両成分を少なくとも含有する樹脂が好ましく、更に好ましくは、15,000〜100,000の部分にピーク又は肩を有する中間分子量体の樹脂を使用することが好ましい。
【0130】
前述のトナーあるいは樹脂の分子量測定方法は、THF(テトラヒドロフラン)を溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定がよい。すなわち、測定試料0.5〜5mg、より具体的には1mgに対してTHFを1.0ml加え、室温にてマグネチックスターラーなどを用いて撹拌を行い、充分に溶解させる。次いで、ポアサイズ0.45〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPCへ注入する。
【0131】
GPCの測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THFを毎分1.0mlの流速で流し、1mg/mlの濃度の試料を約100μl注入して測定する。カラムは、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、TSK guard columnの組合せなどを挙げることができる。又、検出器としては、屈折率検出器(IR検出器)、あるいはUV検出器を用いるとよい。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いるとよい。
【0132】
(凝集剤)
本発明では、水系媒体中で調製した樹脂粒子の分散液から、樹脂粒子を塩析/融着させる工程で、凝集剤として金属塩が好ましく用られるが、2価または3価の金属塩を凝集剤として用いることが更に好ましい。その理由は、1価の金属塩よりも2価、3価の金属塩の方が臨界凝集濃度(凝析値あるいは凝析点)が小さいので好ましい。
【0133】
本発明で用いられる凝集剤の具体的な例を以下に示す。1価の金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、2価の金属塩としては、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられ、3価の金属塩としては、塩化アルミニウム、塩化鉄等が挙げられる。
【0134】
本発明でいう臨界凝集濃度とは、水性分散液中の分散物の安定性に関する指標であり、凝集剤を添加し、凝集が起こるときの凝集剤の添加濃度を示すものである。この臨界凝集濃度は、ラテックス自身及び分散剤により大きく変化する。例えば、岡村誠三他著 高分子化学17,601(1960)等に記述されており、これらの記載に従えば、その値を知ることが出来る。
【0135】
また、別の方法として、目的とする粒子分散液に所望の塩を濃度を変えて添加し、その分散液のζ電位を測定し、ζ電位が変化し出す点の塩濃度を臨界凝集濃度とすることも可能である。
【0136】
本発明では、金属塩を用いて臨界凝集濃度以上の濃度になるように重合体微粒子分散液を処理する。
【0137】
本発明では、金属塩の濃度を臨界凝集濃度の1.5倍以上、さらに好ましくは2.0倍以上添加するとよい。
【0138】
(着色剤)
本発明のトナーは、上記の複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着して得られるものである。本発明のトナーを構成する着色剤(複合樹脂粒子との塩析/融着に供される着色剤粒子)としては、各種の無機顔料、有機顔料、染料を挙げることができる。無機顔料としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な無機顔料を以下に例示する。
【0139】
黒色の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0140】
これらの無機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0141】
磁性トナーとして使用する際には、前述のマグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、トナー中に20〜60質量%添加することが好ましい。
【0142】
有機顔料及び染料も従来公知のものを用いることができ、具体的な有機顔料及び染料を以下に例示する。
【0143】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0144】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156等が挙げられる。
【0145】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0146】
また、染料としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いることができ、またこれらの混合物も用いることができる。
【0147】
これらの有機顔料及び染料は、単独または複数を選択併用することが可能である。また、顔料の添加量は、重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%である。
【0148】
(離型剤)
本発明に使用されるトナーは、離型剤を含有した樹脂粒子を水系媒体中で融着させ、引き続き熟成工程により離型剤を含有した樹脂粒子を凝集させて得られる。この様に樹脂粒子中に離型剤を含有させた樹脂粒子を着色剤粒子と水系媒体中で塩析/融着させて、微細に離型剤を分散させたトナーを得ることができる。
【0149】
ここで、熟成工程とは、樹脂粒子の融着後も温度を離型剤の融点〜融点+20℃の範囲で攪拌を継続する工程をいうもので、本発明では融点〜融点+20℃の範囲であれば最近接壁間距離を好適な範囲にし易い。
【0150】
本発明のトナーでは、離型剤として、低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=1500〜9000)や低分子量ポリエチレン等が好ましく、特に好ましくは、下記式で表されるエステル系化合物である。
【0151】
R1−(OCO−R2)n
式中、nは1〜4の整数で、好ましくは2〜4、更に好ましくは3〜4、特に好ましくは4である。R1、R2は、各々置換基を有しても良い炭化水素基を示す。R1は、炭素数1〜40、好ましくは1〜20、更に好ましくは2〜5がよい。R2は、炭素数1〜40、好ましくは16〜30、更に好ましくは18〜26がよい。
【0152】
次に代表的な化合物の例を以下に示す。
【0153】
【化1】
【0154】
【化2】
【0155】
離型剤をトナー中に添加する方法としては特に限定されるものではないが、例えば着色剤粒子と同様に樹脂粒子と塩析/融着させる方法や、樹脂粒子を調整するためのモノマー中に定着性改良剤を溶解させ、その後に重合し樹脂粒子を調整する方法もある。
【0156】
本発明に用いられるトナーは、種々の荷電制御剤を使用することができる。荷電制御剤としては、水中に分散することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体等が挙げられる。
【0157】
なお、これら荷電制御剤の粒子は、分散した状態で数平均一次粒子径が10〜500nm程度とすることが好ましい。
【0158】
また、本発明に用いられるトナーでは、形成したトナー粒子に外添剤を添加して、高速撹拌等の方法で外添剤をトナー表面に付着させて用いることができる。外添剤をトナー表面に付着させることにより、より良好な画像が得られる。
【0159】
この外添剤としては、例えば、無機微粒子や有機微粒子等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0160】
無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナ等の無機微粒子が好ましく、具体的には、シリカ微粒子として、例えば日本アエロジル社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
【0161】
チタン微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
【0162】
アルミナ微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0163】
これらの無機微粒子は、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等によって疎水化処理されていることがより好ましい。疎水化処理の程度としては特に限定されるものではないが、メタノールウェッタビリティーとして40〜95のものが好ましい。
【0164】
メタノールウェッタビリティーとは、メタノールに対する濡れ性を評価するものである。この方法は、内容量200mlのビーカー中に入れた蒸留水50mlに、測定対象の無機微粒子を0.2g秤量し添加する。メタノールを先端が液体中に浸漬されているビュレットから、ゆっくり撹拌した状態で無機微粒子の全体が濡れるまでゆっくり滴下する。この無機微粒子を完全に濡らすために必要なメタノールの量をa(ml)とした場合に、下記式により疎水化度が算出される。
【0165】
疎水化度(%)=〔a/(a+50)〕×100
また、有機微粒子としては、数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレン樹脂微粒子、スチレンアクリル樹脂微粒子、ポリエステル樹脂微粒子、ウレタン樹脂微粒子等が好ましく用いられる。
【0166】
外添剤の添加量は、トナー中に対し0.1〜5.0質量%が好ましく、0.5〜4.0質量%がより好ましい。また、複数種類の外添剤を組み合わせて使用してもよい。
【0167】
外添剤の添加方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシエルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置が挙げられる。
【0168】
(現像剤)
本発明のトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよく、一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させた磁性一成分現像剤が挙げられいずれも使用できる。
【0169】
また、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることもでき、この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0170】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0171】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0172】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0173】
トナー用樹脂粒子の製造例
〔ラテックス1HML〕
(1)核粒子の調製(第一段重合):
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000mlのセパラブルフラスコにアニオン系界面活性剤
(101) C10H21(OCH2CH2)2OSO3Na
7.08gをイオン交換水3010gに溶解させた界面活性剤溶液(水系媒体)を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、フラスコ内の温度を80℃に昇温させた。
【0174】
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)9.2gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン70.1g、n−ブチルアクリレート19.9g、メタクリル酸10.9gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、攪拌することにより重合(第一段重合)を行い、ラテックス(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の分散液)を調製した。これを「ラテックス(1H)」とする。
(2)中間層の形成(第二段重合);
攪拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン105.6g、n−ブチルアクリレート30.0g、メタクリル酸6.2g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル5.6gからなる単量体混合液に、離型剤として、上記式19)で表される化合物(以下、「例示化合物(19)」という。)98.0gを添加し、90℃に加温し溶解させて単量体溶液を調製した。
【0175】
一方、アニオン系界面活性剤(上記式(101))1.6gをイオン交換水2700mlに溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、核粒子の分散液である前記ラテックス(1H)を固形分換算で28g添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により、前記例示化合物(19)の単量体溶液を8時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調製した。
【0176】
次いで、この分散液(乳化液)に、重合開始剤(KPS)5.1gをイオン交換水240mlに溶解させた開始剤溶液と、イオン交換水750mlとを添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第二段重合)を行い、ラテックス(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の表面が中間分子量樹脂により被覆された構造の複合樹脂粒子の分散液)を得た。これを「ラテックス(1HM)」とする。
【0177】
前記ラテックス(1HM)を乾燥し、走査型電子顕微鏡で観察したところ、ラテックスに取り囲まれなかった例示化合物(19)を主成分とする粒子(400〜1000nm)が観察された。
(3)外層の形成(第三段重合):
上記の様にして得られたラテックス(1HM)に、重合開始剤(KPS)7.4gをイオン交換水200mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン300g、n−ブチルアクリレート95g、メタクリル酸15.3g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル10.4gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第三段重合)を行った後、28℃まで冷却しラテックス(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有し、前記中間層に例示化合物(19)が含有されている複合樹脂粒子の分散液)を得た。このラテックスを「ラテックス(1HML)」とする。
【0178】
このラテックス(1HML)を構成する複合樹脂粒子は、138,000、80,000および13,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は122nmであった。
〔ラテックス2HML〕
界面活性剤(101)に代えて、アニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:SDS)7.08gを使用したこと以外は、ラテックス1HMLと同様にして、ラテックス(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有する複合樹脂粒子の分散液)を得た。このラテックスを「ラテックス(2HML)」とする。
【0179】
このラテックス(2HML)を構成する複合樹脂粒子は、138,000、80,000および12,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は110nmであった。
【0180】
着色粒子の製造例
〔着色粒子1Bk〜8Bk及び比較用着色粒子1Bk〜3Bkの製造〕
アニオン系界面活性剤(101)59.0gをイオン交換水1600mlに攪拌溶解し、この溶液を攪拌しながら、カーボンブラック「リーガル330」(キャボット社製)420.0gを徐々に添加し、次いで「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の分散液(以下「着色剤分散液Bk」という。)を調製した。この着色剤分散液における着色剤粒子の粒子径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、重量平均粒径で89nmであった。
【0181】
次に、着色剤分散液Bk、ラテックス1HML及びラテックス2HMLを用い、以下の手順により樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集させた。
【0182】
ラテックス1HML420.7g(固形分換算)と、イオン交換水900gと、着色剤分散液Bk166gとを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置を取り付けた反応容器(四つ口フラスコ)に入れ攪拌した。容器内の温度を30℃に調整した後、この溶液に5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8〜10.0に調整した。
【0183】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物12.1gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を、攪拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を6〜60分間かけて90℃まで昇温し、会合粒子の生成を行った(凝集工程)。その状態で、「コールターカウンター TA−II」にて会合粒子の粒径を測定し、個数平均粒径が3〜7μmになった時点で、塩化ナトリウム40.2gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、更に熟成処理として液温度98℃にて6時間にわたり加熱攪拌することにより、粒子の融着及び離型剤の相分離を継続させた(熟成工程)。
【0184】
さらに、ラテックス2HML(樹脂粒子の分散液)96gを添加し、3時間にわたり加熱攪拌を継続し、ラテックス(1HML)の凝集粒子表面にラテックス2HMLを融着させた。ここで、塩化ナトリウム40.2gを加え、8℃/分の条件で30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを2.0に調整し、攪拌を停止した。生成した会合粒子を濾過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄を行い、その後、40℃の温風で乾燥することにより、着色粒子1Bk〜8Bk及び比較用着色粒子1Bk〜3Bkを得た。
〔着色粒子9Bk及び比較用着色粒子4Bkの製造〕
着色粒子1Bk〜8Bk及び比較用着色粒子1Bk〜3Bkの製造において、ラテックス2HMLを添加しなかった以外は同様にして、着色粒子9Bk及び比較用着色粒子4Bkを得た。
〔着色粒子1Y〜8Y及び比較用着色粒子1Y〜3Yの製造〕
アニオン系界面活性剤(101)90gをイオン交換水1600mlに攪拌溶解した。この溶液を攪拌しながら、染料(C.I.ソルベントイエロー93)420gを徐々に添加し、次いで、前述の攪拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の分散液(以下、「着色剤分散液(Y)」という。)を調製した。この着色剤分散液(Y)における着色剤粒子の粒子径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、重量平均粒子径で250nmであった。
【0185】
前述の着色剤分散液(Bk)166gに代えて着色剤分散液(Y)168gを使用したこと以外は着色粒子1Bk〜8Bk及び比較用着色粒子1Bk〜3Bkの製造例と同様にして着色粒子1Y〜8Y及び比較用着色粒子1Y〜3Yを得た。
〔着色粒子9Y及び比較用着色粒子4Yの製造〕
上記着色粒子1Y〜8Y及び比較用着色粒子1Y〜3Yの製造において、ラテックス2HMLを添加しなかった以外は同様にして、着色粒子9Y及び比較用着色粒子4Yを得た。
〔着色粒子1M〜8M及び比較用着色粒子1M〜3M〕
アニオン系界面活性剤(101)90gをイオン交換水1600mlに攪拌溶解した。この溶液を攪拌しながら、顔料(C.I.ピグメントレッド122)420gを徐々に添加し、次いで、前述の攪拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の分散液(以下、「着色剤分散液(M)」という。)を調製した。この着色剤分散液(M)における着色剤粒子の粒子径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、重量平均粒子径で250nmであった。
【0186】
前述の着色剤分散液(Bk)166gに代えて着色剤分散液(M)166gを使用したこと以外は着色粒子1Bk〜8Bk及び比較用着色粒子1Bk〜3Bkと同様にして、着色粒子1M〜8M及び比較用着色粒子1M〜3Mを得た。
〔着色粒子9M及び比較用着色粒子4Mの製造〕
着色粒子1M〜8M及び比較用着色粒子1M〜3Mの製造において、ラテックス2HMLを添加しなかった以外は同様にして、着色粒子9M及び比較用着色粒子4Mを得た。
〔着色粒子1C〜8C及び比較用着色粒子1C〜3C〕
アニオン系界面活性剤(101)90gをイオン交換水1600mlに攪拌溶解した。この溶液を攪拌しながら、顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)400gを徐々に添加し、次いで、「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の分散液(以下、「着色剤分散液(C)」という。)を調製した。この着色剤分散液(C)における着色剤粒子の粒子径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、重量平均粒子径で250nmであった。
【0187】
着色剤分散液(Bk)166gに代えて着色剤分散液(C)98.7gを使用したこと以外は着色粒子1Bk〜8Bk及び比較用着色粒子1Bk〜3Bkと同様にして着色粒子1C〜8C及び比較用着色粒子1C〜3Cを得た。
〔着色粒子9C及び比較用着色粒子4Cの製造〕
着色粒子1C〜8C及び比較用着色粒子1C〜3Cの製造において、ラテックス2HMLを添加しなかった以外は同様にして、着色粒子9C及び比較用着色粒子4Cを得た。
【0188】
以上の様にして得られた着色粒子の個数平均粒径、離型剤の島間の最近接壁間距離等の結果を表1及び表2に示す。
【0189】
【表1】
【0190】
【表2】
【0191】
〔外部添加剤の添加〕
以上の様にして得られた各着色粒子(Bk、Y、M、C)1〜9及び各比較用着色粒子(Bk、Y、M、C)1〜4の各々に、疎水性シリカ0.8質量部、疎水性酸化チタン1.0質量部を添加し、10Lのヘンシェルミキサーの回転翼の周速を30m/sに設定し25分間混合した。なお、これらの着色粒子について、外部添加剤の添加によってその形状や粒径は変化しないものである。
【0192】
キャリアの製造
〔フェライト芯材の製造〕
MnOを18mol%、MgOを4mol%、Fe2O3を78mol%を湿式ボールミルで2時間粉砕、混合し乾燥させた後に、900℃で2時間保持することにより仮焼成し、これをボールミルで3時間粉砕しスラリー化した。分散剤およびバインダーを添加し、スプレードライヤーにより造粒、乾燥し、その後1200℃で3時間本焼成を行い、抵抗値4.3×108Ω・cmのフェライト芯材粒子を得た。
〔被覆用樹脂の製造〕
先ず、界面活性剤として炭素数12のアルキル基を有するベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いた水溶液媒体中の濃度を0.3質量%とした乳化重合法により、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体を合成し、体積平均一次粒径0.1μm、重量平均分子量(Mw)200,000、数平均分子量(Mn)91,000、Mw/Mn=2.2、軟化点温度(Tsp)230℃およびガラス転移温度(Tg)110℃の樹脂微粒子を得た。なお、前記樹脂微粒子は、乳化状態において、水と共沸し、残存モノマー量を510ppmとした。
【0193】
次に、フェライト芯材粒子100質量部と前記樹脂微粒子2質量部とを攪拌羽根付き高速攪拌混合機に投入し、120℃で30分間攪拌混合して機械的衝撃力の作用を利用して体積平均粒径61μmの樹脂被覆キャリアを得た。
【0194】
現像剤の製造
外部添加剤が添加された各着色粒子(Bk、Y、M、C)1〜9及び各比較用着色粒子(Bk、Y、M、C)1〜4を上記キャリアと混合して、各々トナー濃度が6質量%の各色の現像剤を調製した。各色の現像剤を表3に示す様に組み合わせて現像剤セット1〜9及び比較現像剤セット1〜4とした。
【0195】
【表3】
【0196】
実験その1
上記現像剤を用いて、図2に示すフルカラー画像形成装置を用いて画像形成実験を行った。
【0197】
なお、転写工程時に感光体及び被転写媒体に付与される超音波は、以下の条件で発生するものを使用した。
【0198】
超音波振動装置の条件
超音波放射面と対向面の距離L2:4.25mm
超音波発生素子の
共振周波数 40kHz
出力電力 5W
また、定着条件は165℃に温度設定した熱ローラを用い、ラインスピードを420mm/secに設定した加熱ローラを用いた定着方式とした。
【0199】
上記条件にて、10万枚の画像形成を行った。画像形成は特に変動が大きくなる低温低湿環境(10℃/20%RH:以下LLと表記する)及び高温高湿環境(30℃/85%RH:以下HHと表記する)にて同様の評価を行った。
【0200】
具体的な評価項目は以下のとおりである。
転写性の評価
<転写効率>
転写効率の変動を評価する尺度として1枚目に形成された画像と10万枚目の画像についての色差を評価した。色差は下記手法で評価を行った。
【0201】
色再現性の具体的な評価方法は、両環境における1枚目の形成画像及び10万枚目の形成画像各々における2次色(レッド、グリーン、ブルー)のソリッド画像部の色を「Macbeth Color−Eye7000」により測定し、CMC(2:1)色差式を用いて色差を測定した。
【0202】
CMC(2:1)色差式で求められた色差が5以下であれば、形成画像の色味の変化が許容できる範囲内にあり、良好な転写効率が維持されると判断される。
<画像乱れ>
画像乱れの評価として、転写及び定着時の画像乱れを評価するために、4色のトナーを各ドットで構成させた線画の解像度(細線再現性)を評価した。線画は画像形成装置の現像方向に対して横方向に形成するもので、解像度は「本/mm」で10倍のルーペで線の識別を評価した。
【0203】
上記解像度評価では、線近傍におけるちりの発生状況も合わせて評価し、以下の4ランクに分類して判定した。
【0204】
A;ルーペでもライン周辺のちりが観察されない
B;目視ではわからないが、ルーペではライン周辺のちりが観察される
C;目視でライン周辺のちりが観察される
D;ライン間の判別が困難なほど激しくちりが発生
定着性の評価
<耐オフセット性>
10万枚目の画像形成を行った後、白紙を印字してオフセットによる白紙への汚れの発生状況とヒートローラー表面のトナー汚れを目視にて評価した。なお、評価に使用する転写紙としては上質紙200g/m2の厚紙を使用し、紙進行方向(熱ローラー周方向)に平行な、幅0.3mm、長さ150mmの線画像を形成した。
【0205】
◎:白紙上の画像オフセット、ヒートローラー上のトナー汚れ共に全く見られない
○:白紙上の画像オフセット発生は確認されないが、ヒートローラー上にトナー汚れが認められる。
【0206】
×:白紙上に画像オフセットが確認される。
評価ランクは、◎、○は合格、×は不合格である。
<巻付きジャムの発生>
10万枚目の画像形成を行った後、熱ローラの温度設定を165℃としたままラインスピードの設定を420mm/secから840mm/secに変化させ、ベタ画像の形成を行い巻き付き性を評価した。
【0207】
○:定着分離不良による紙詰まり発生がなく、定着分離爪痕も観察されない
△:定着分離不良による紙詰まり発生はないが、定着分離爪痕が若干認められた(実用上問題なし)
×:定着分離不良による紙詰まり発生(実用上問題有り)
<感光体フィルミング>
前述の連続50万コピー後の感光体表面を目視観察により、フィルミングの有無を判定した。
<ハーフトーンの均一性>
感光体フィルミング等の転写性変動に伴うハーフトーン画像の均一性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0208】
ランクA:ムラのない均一な画像。
ランクB:スジ状の薄いムラが存在するが実用上問題なし。
【0209】
ランクC:スジ状のムラが数本確認されるが実用上問題なし。
ランクD:スジ状のはっきりしたムラが5本以上存在することが確認され、実用上問題有り。
【0210】
結果を表4及び表5に示す。
【0211】
【表4】
【0212】
【表5】
【0213】
実験その2
さらに上記現像剤を用いて、図4に示すフルカラー画像形成装置を用いて画像形成実験を行った。
【0214】
転写条件及び定着条件、評価項目は実験1と同じものとした。
結果を表6と表7に示す。
【0215】
【表6】
【0216】
【表7】
【0217】
【発明の効果】
本発明では、トナー粒子中の離型剤領域の最近接壁間距離が特定範囲内となる様に離型剤相の分散状態が制御されたトナーを用いることにより、超音波振動を用いた転写工程を有する画像形成を行っても、振動の影響でトナー粒子から離型剤が脱離せずにトナーが破壊されることがなくなり、トナーの破壊に起因して発生した転写材の定着ローラへの巻き付きによるジャム発生やオフセット発生がなくなり、安定した定着性能を発現する画像形成の実施が可能になった。
【0218】
また、転写工程で超音波振動により、トナーから離型剤が脱離することがなくなったので、振動による画像乱れがなくなり、振動下でも各色のトナー画像が正確に重なり合ったフルカラー画像を安定して形成できることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられる海島構造を有するトナー粒子を説明する模式図である。
【図2】本発明で好ましく使用される画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】超音波転写により感光体ドラム上のトナー画像を中間転写体ベルト上に転写する画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明に使用可能な他の画像形成装置の概略構成図である。
【図5】本発明に用いられる超音波装置の模式図である。
【図6】中間転写体ベルトと転写材との転写位置を示す模式図である。
【符号の説明】
1 カラー画像形成装置本体
11 感光体(ドラム、ベルト)
16 中間転写体ベルト
23 転写材(用紙)
40 超音波装置
41 ホーン
42 超音波発生素子
46 ジェル部材
Claims (2)
- 転写材上に複数種のカラートナーを重ね合わせてなるトナー画像を転写する時に超音波振動を使用する画像形成方法において、
該トナー画像を形成するトナー粒子が、
少なくとも2個以上の離型剤からなる島を有する海島構造を有し、
該トナー粒子中の該島間の最近接壁間距離の平均値が100〜1060nmで、該最近接壁間距離が1300nm以上である島が全トナー粒子中の島の10個数%以下であることを特徴とする画像形成方法。 - 前記トナー粒子が、離型剤を含有する樹脂粒子と着色剤粒子とを水系媒体中で凝集させる工程を経て得られるものであり、
かつ、個数平均粒径が2〜7μmであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
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