JP2004054256A - 静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法、画像形成方法、及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂の分子量制御性に優れ、現像定着時の臭気上の問題点が改良され、低カブリな画像が得られ、オフセット性も良好な静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法、画像形成方法、及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】ヘッドスペース測定におけるn−ヘキサンのピーク検出時間a〜n−ヘキサデカンのピーク検出時間bとの間に検出され、トルエン検量線法に基づき算出される、揮発性物質の含有量が350ppm以下、重合性単量体の含有量が50ppm以下であり、且つ、トナー粒子が、下記一般式(1)で表されるチオール化合物の存在下に作製されたことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
一般式(1)
R−SH
【選択図】 なし
【解決手段】ヘッドスペース測定におけるn−ヘキサンのピーク検出時間a〜n−ヘキサデカンのピーク検出時間bとの間に検出され、トルエン検量線法に基づき算出される、揮発性物質の含有量が350ppm以下、重合性単量体の含有量が50ppm以下であり、且つ、トナー粒子が、下記一般式(1)で表されるチオール化合物の存在下に作製されたことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
一般式(1)
R−SH
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法、画像形成方法、及び画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高画質で高速な画像形成には、電子写真、プリンタ等の静電荷像現像用トナー(以下、トナーともいう)を用いた静電画像形成方法が知られている。これらの方法ではトナー像が形成されている記録材にトナー像を定着する方式として、加熱ローラと加圧ローラの間にトナーで形成された画像を通過させて定着するいわゆる熱圧定着方式が、その装置構成が簡便であると同時に記録材への定着性が良好となる点で広く利用されている。この方式では、トナーに対する熱の伝達は加熱ローラとの接触によるものであり、その熱によりトナーが溶融されるものである。
【0003】
溶融状態となったトナーは記録材のみならず加熱ローラに対しても接着するため、加熱ローラから記録材を剥離する際、溶融したトナーが加熱ローラ面にも残り、記録材上にトナー量が少ない箇所が出来る現象が発生する。又、低温の加熱ローラで定着される場合、加熱ローラへのトナーの接着力が記録材よりも強いため加熱ローラから記録材を剥離する際、加熱ローラ面にトナーが残り、記録材上にはトナーが存在しない箇所が出来る現象が発生する。これらの現象をオフセット現象と称し、画質の品質上生じてはならない現象である。
【0004】
一般的に、このオフセット現象は、定着の際に溶融されたトナーの内部凝集力よりも、トナーと加熱ローラとの接着力が大きい場合に発生すると説明されている。このことからオフセット現象を抑制するためにトナーの加熱時の粘弾性率を向上することが必要であり、このためにはトナーを構成している樹脂の分子量分布を制御することが必要とされている。
【0005】
一方、最近の高速及び低温度で定着するための対応、及び近年の高画質化に伴い、トナーに対して小粒径であること、粒度分布が狭いこと、帯電制御剤が均一に分散さていることなどが要求されている。小粒径化トナーの一般的な製造方法としては粉砕法と重合法とが知られている。粉砕法とは樹脂、染顔料、帯電制御剤を溶融混練し、機械式あるいは空気衝突式の粉砕機にて粉砕、分級を行なう方法である。この粉砕法で作られたトナーにおいては、狭い粒度分布のものを得ようとした場合、生産能力や収率が著しく低下し、コスト高になるのはもちろん、粒径を小さくするほど、帯電制御剤、離型剤、不均一に存在したりすることにより定着性の均一化をはかることが困難になり、バラツキが発生しやすい問題がある。このため、粉砕工程を必要としないで小粒径ができ、粒度分布が制御でき、帯電制御剤が均一に小粒子上に分散でき、オフセット対策としてトナーを構成している樹脂の分子量分布を制御できる小粒径トナーを製造する方法として近年、重合法による製造方法が提案されてきた。
【0006】
これら重合法としては、懸濁重合方法、乳化重合方法が知られている(例えば、特許文献1〜6参照。)。
【0007】
重合方法において分子量分布を制御するためには一般的に連鎖移動剤を使用することが知られている。これら連鎖移動剤としては例えば、メタンチオール、エタンチオール、ペンタンチオール、ドデカンチオール、四塩化炭素、クロロホルム(例えば、特許文献7参照。)、チオグリコール酸オクチル、α−メチルスチレン、トルエン(例えば、特許文献8参照。)、チオグリセリン、チオグリコール酸、チオグリコール酸エステル(例えば、特許文献9参照。)、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等(例えば、特許文献10参照。)が知られている。これら、連鎖移動剤は小粒径化粒子トナーを調製する上で無くてはならない物であるが、以下のような問題点がある。
【0008】
チオール系化合物(メルカプタン系化合物ともいう)、チオグリセリン、チオグリコール酸、チオグリコール酸エステルの場合、定着時の加熱により樹脂粒子中に微量に存在する化合物が気化することによる臭気が挙げられる。α−メチルスチレン、トルエン、四塩化炭素、クロロホルム等の場合は、定着時の加熱により樹脂粒子中に微量に存在する芳香族系物質、塩素系物質が気化しやすくなるという問題点があった。
【0009】
また、チオール系化合物を連鎖移動剤として使用し、得られたトナーは、上記臭気上の面だけではなく、分子量の制御性、帯電量の制御性の面でも、更なる改良が求められている。
【0010】
一方、重合で用いられる重合性単量体や、溶媒、添加剤等の種々の揮発性物質は、トナー製造時に、トナー粒子中に取り込れそのまま残存しやすい。
【0011】
揮発性物質や重合性単量体を多量に含有するトナーは、トナー保存中にトナーの凝集が発生しやすく、凝集したトナーを用いた現像剤では画像形成時に画質が低下し、良質の画像が得られなくなったり、熱定着時にトナー中に残存する揮発物質や重合性単量体等に起因する臭気が発生したり、高速両面プリント時に転写体(例えば転写紙)のプリント面がタッキング(貼り付き)しやすくなるという問題がある。
【0012】
尚、上記の重合性単量体や揮発性物質をトナー中に含有することに起因する問題は、樹脂と着色剤とを溶融混練、粉砕してなるいわゆる粉砕トナーでは特に問題視されていなかった。その理由としては、粉砕トナーに使用される樹脂は既に乾燥されている場合が多く、若し未反応の重合性単量体や揮発性物質を含んでいたとしても、トナーを製造する際の加熱練肉工程での加熱により除去されると判断される。
【0013】
しかし、トナー粒子を構成する結着樹脂を重合性単量体の重合反応により作製する重合トナーにおいては、製造時に加熱練肉工程が無いため、トナー中の未反応の重合性単量体や揮発性物質を除去しきれず、トナー中に大量に残存しやすいという問題点があった。
【0014】
【特許文献1】
特開昭63−186253号公報
【0015】
【特許文献2】
特開昭63−232749号公報
【0016】
【特許文献3】
特開平4−51251号公報
【0017】
【特許文献4】
特開平6−329947号公報
【0018】
【特許文献5】
特開平9−50149号公報
【0019】
【特許文献6】
特開平9−146295号公報
【0020】
【特許文献7】
特開平10−123751号公報
【0021】
【特許文献8】
特開平5−134459号公報
【0022】
【特許文献9】
特開平6−19203号公報
【0023】
【特許文献10】
特開平11−223962号公報
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、トナーを構成する樹脂の分子量の制御性に優れ、現像定着時の臭気上の問題点が改良され、低カブリな画像が得られ、オフセット性も良好な静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法、画像形成方法、及び画像形成装置を提供することである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成1〜11によって達成された。
【0026】
1.結着樹脂と着色剤を含有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーにおいて、ヘッドスペース測定におけるn−ヘキサンのピーク検出時間a〜n−ヘキサデカンのピーク検出時間bとの間に検出される揮発性物質、重合性単量体を含み、該揮発性物質のトルエン検量線法に基づき算出される含有量が350ppm以下、該重合性単量体の測定用に作成された検量線に基づき算出される前記重合性単量体の含有量が50ppm以下であり、且つ、該トナー粒子が、前記一般式(1)で表されるチオール化合物の存在下に作製されたことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0027】
2.GPC測定において、分子量5,000〜30,000の範囲にピークを有し、且つ、分子量分布(Mw/Mn)が2〜10であることを特徴とする前記1に記載の静電荷像現像用トナー。
【0028】
3.前記一般式(1)で表されるチオール化合物のアルキル基の炭素数Aと重合性単量体の炭素数B(ここで、重合性単量体が混合物の場合には、前記重合性単量体中、最も長鎖を形成する基の炭素数をBとする)との比(A/B)が1を超え2.5以下であることを特徴とする前記1または2に記載の静電荷像現像用トナー。
【0029】
4.水系媒体中で重合性単量体と、該重合性単量体全体のモル数に対して、前記一般式(1)で表されるチオール化合物が0.05モル%〜2.0モル%添加された条件下で重合反応を行ない、結着樹脂粒子の分散液を調製する工程、次いで、該結着樹脂粒子を塩析、融着する工程を経て製造されたことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0030】
5.重合反応が、乳化重合反応または懸濁重合反応であることを特徴とする前記4に記載の静電荷像現像用トナー。
【0031】
6.前記1〜5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを製造するに当たり、水系媒体中で重合性単量体と、該重合性単量体全体のモル数に対して、前記一般式(1)で表されるチオール化合物が0.05モル%〜2.0モル%添加された条件下で重合反応を行ない、結着樹脂粒子の分散液を調製する工程、次いで、該結着樹脂粒子を塩析、融着する工程を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0032】
7.前記一般式(1)で表されるチオール化合物のアルキル基の炭素数Aと重合性単量体の炭素数B(ここで、重合性単量体が混合物の場合には、前記重合性単量体中、最も長鎖を形成する基の炭素数をBとする)との比(A/B)が1を超え2.5以下であることを特徴とする前記6に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0033】
8.水系媒体中で、2工程以上の重合反応工程を経て、結着樹脂の分散液を調製する工程を有することを特徴とする前記6または7に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0034】
9.水系媒体中で、2工程以上の重合反応工程を有し、且つ、第1回目の重合反応工程以降に、前記一般式(1)で表されるチオール化合物を該水系媒体中に添加することを特徴とする前記6または7に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0035】
10.静電荷像担持体上に静電荷像を形成する工程、前記1〜5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む現像剤で該静電荷像を現像してトナー画像を形成する工程、該トナー画像を記録材上に転写する工程、及び、該記録材上に転写されたトナー画像を熱定着する工程を有することを特徴とする画像形成方法。
【0036】
11.静電荷像担持体上に静電荷像を形成する手段、前記1〜5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む現像剤で該静電荷像を現像してトナー画像を形成する手段、該トナー画像を記録材上に転写する手段、及び、該記録材上に転写されたトナー画像を熱定着する手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【0037】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者等は、上記記載の問題点を種々検討した結果、請求項1に記載のように、結着樹脂と着色剤を含有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーにおいて、ヘッドスペース測定におけるn−ヘキサンのピーク検出時間a〜n−ヘキサデカンのピーク検出時間bとの間に検出される揮発性物質、重合性単量体を含み、該揮発性物質のトルエン検量線法に基づき算出される含有量が350ppm以下、該重合性単量体の測定用に作成された検量線に基づき算出される前記重合性単量体の含有量が50ppm以下であり、且つ、前記一般式(1)で表されるチオール化合物を含有させることにより、本発明に記載の効果、即ち、良好な帯電性を示し、且つ、現像定着時において臭気上の問題のない静電荷像現像用トナーが得られた。
【0038】
通常、揮発性物質や重合性単量体のトナー中への残留は、トナーの帯電性能や現像、定着時への悪影響ばかりと考えられていたが、本発明者等は、上記記載の特定の含有量になるようにトナーを調整した結果、驚くべきことに、微量の重合性単量体や揮発性物質の存在が、むしろ、本発明に記載の効果を付与するのに+の効果を示すことを見出した。
【0039】
また、請求項5に示したように、前記一般式(1)で表されるチオール化合物を添加した条件下で重合反応を行うことにより、トナー粒子を構成する結着樹脂として好ましい分子量特性を示す樹脂が得られることも併せて見出した。
【0040】
《静電荷像現像用トナー》
本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤をその構成成分として有するが、本発明に記載の効果を得るためには、下記に記載の揮発性物質、及び重合性単量体の存在が必須要件であり、更に本発明の静電荷像現像用トナーを得るためには、後述するチオール化合物の存在下において、トナー粒子が作製されることが必要である。
【0041】
《揮発性物質》
本発明に係る揮発性物質について説明する。
【0042】
本発明に係る揮発性物質とは、具体的には、ヘッドスペース測定におけるn−ヘキサンのピーク検出時間a〜n−ヘキサデカンのピーク検出時間bとの間に検出可能な化合物を表す。また、重合性単量体も同様に前記ヘッドスペース法により検出されるが、詳細は別途、後述する。
【0043】
本発明に記載の効果を得る観点から、トナー中の揮発性物質の量は、350ppm以下であることが必要であるが、好ましくは100ppm〜300ppmである。
【0044】
(アルコール類)
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、n−デシルアルコール、n−ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。
【0045】
(多価アルコール誘導体)
エチレングリコールジアセタート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ヘキシレングリコール等が挙げられる。
【0046】
(炭化水素類)
アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジフェニルメタン、エチルベンゼン、オクタン、ガソリン、キシレン類、ジエチルベンゼン類、シクロヘキサン、シクロペンタン、時ペンテン、石油エーテル、石油ベンジン、トルエン、ブタン、プロパン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、ペンタン、メシチレン、リグロイン等が挙げられる。
【0047】
(ハロゲン化炭化水素類)
アリルクロリド、塩化イソプロピル、塩化エチル、塩化ブチル、o−クロロトルエン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。
【0048】
(アルデヒド類)
ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、キシロアルデヒド等が挙げられる。
【0049】
(エーテル、アセタール類)
エチル−t−ブチルエーテル、エチルベンジルエーテル、エピクロルヒドリン、ジイロプロピルエーテル、ジエチルアセタール、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、トリオキサン等が挙げられる。
【0050】
(ケトン、アルデヒド類)
アクロレイン、アセチルアセトン、アセトアルデヒド、アセトン、イソホロン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−n−プロピルケトン等が挙げられる。
【0051】
(エステル類)
ギ酸イソアミル、ギ酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ギ酸プロピル、ギ酸ヘキシル、酢酸アミル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸メチル、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、酪酸イソアミル、酪酸エチル、酪酸ブチル等が挙げられる。
【0052】
《重合性単量体》
本発明に係る重合性単量体について説明する。
【0053】
本発明に記載の効果を得る観点から、本発明に係る重合性単量体の量は、50ppm以下であることが必要であるが、好ましくは1ppm〜20ppmであり、更に好ましくは、2ppm〜10ppmの範囲に調整することである。
【0054】
本発明に係る重合性単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの様なスチレンあるいはスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等の、アクリル酸エステル誘導体、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン系ビニル類、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体がある。
【0055】
(揮発性物質、重合性単量体等の定量方法)
本発明の静電荷像現像用トナー中の、揮発性物質、重合性単量体の定量方法(ヘッドスペース法)について説明する。
【0056】
本発明に係るヘッドスペース法とは、トナーを開閉容器中に封入し、複写機等の熱定着時程度に加温し、容器中に揮発成分が充満した状態で速やかに容器中のガスをガスクロマトグラフに注入し、質量分析を行って化合物の同定を行いながら、揮発成分量を測定するというものである。バインダー樹脂由来の不純物や微量の添加物量を測定する方法としては、溶媒によりバインダー樹脂またはトナーを溶解して、ガスクロマトグラフに注入する方法も良く知られているが、この方法では溶媒のピークに不純物や測定しようとする微量の添加物成分のピークが隠れてしまうことがあり、トータルの揮発性成分量を測定するには、上記のヘッドスペース法を適用することが好ましい。また、ヘッドスペース法ではガスクロマトグラフにより、揮発成分の全ピークを観測することを可能にするとともに、電磁気的相互作用を利用した分析方法を用いることによって、高精度で揮発性物質や重合性単量体等の定量化をも併せて実施することが出来る。
【0057】
《ヘッドスペース法による測定条件》
以下に、ヘッドスペース法による測定を詳細に説明する。
【0058】
(測定方法)
1.試料の採取
20mlヘッドスペース用バイアルに0.8gの試料を採取する。試料量は、0.01gまで秤量する(単位質量あたりの面積を算出するのに必要)。専用クリンパーを用いてバイアルをセプタムを用いてシールする。
【0059】
2.試料の加温
170℃の恒温槽に試料を立てた状態で入れ、30分間加温する。
【0060】
3.ガスクロマトグラフィ分離条件の設定
質量比で15%になるようにシリコンオイルSE−30でコーティングした担体を内径3mm、長さ3mのカラムに充填したものを分離カラムとして用いる。該分離カラムをガスクロマトグラフに装着し、Heをキャリアーとして、50ml/分で流す。分離カラムの温度を40℃にして3分間保持し、その後、10℃/分で200℃まで昇温させ、200℃到達後5分間保持し測定する。
【0061】
4.試料の導入
バイアルビンを恒温槽から取り出し、直ちにガスタイトシリンジで1mlを注入する。
【0062】
5.計算
(揮発性物質の測定方法)
基準サンプルとして、n−ヘキサンとn−ヘキサデカンを予め測定し、各々のピークの検出時間を確認する。その後、サンプルの測定を実施し、n−ヘキサンのピーク検出時間からn−ヘキサデカンのピーク検出時間までに検出されるピークの総面積を、トルエン検量線にて換算し、算出された値を揮発性物質の全量と定義する。
【0063】
但し、算出に使用するピークは、1ピークあたりトルエン換算量で0.1ppm以上のピークとする。
【0064】
(重合性単量体の測定方法)
重合性単量体の測定は、各重合性単量体物質について予め作成した検量線を用いて、各々の定量値を算出する。
【0065】
6.装置構成としては、下記に記載の装置構成が好ましく用いられる。
(a)ヘッドスペース条件
ヘッドスペース装置:
HP7694 Head Space Sampler
(ヒューレットパッカード社製)
温度条件:
トランスファーライン:200℃
ループ温度 :200℃
サンプル量 :0.8g/20mlバイアル
(b)GC/MS条件
GC:HP5890(ヒューレットパッカード社製)
MS:HP5971(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−624(30m×0.25mm)
オーブン温度:
初期温度:40℃(保持時間3分)
昇温速度:10℃/分
到達温度:200℃(保持時間5分)
測定モード:SIM(セレクトイオンモニター)モード
《静電荷像現像用トナーの製造方法》
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法について説明する。
【0066】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法の特徴は、請求項5に記載のように、水系媒体中で上記記載の重合性単量体と、該重合性単量体全体のモル数に対して、前記一般式(1)で表されるチオール化合物が0.05モル%〜2.0モル%添加された条件下で重合反応を行ない、結着樹脂粒子の分散液を調製する工程、次いで、該結着樹脂粒子を塩析、融着する工程を有することである。
【0067】
本発明においては、結着樹脂粒子を得る重合反応の実施に当たっては、1工程のみの重合反応工程で結着樹脂を得ても良いが、本発明では、後述するように、少なくとも2段階の重合反応工程を経て、複合結着樹脂を作製する、いわゆる、多段階重合反応を用いて、最終的に得られたトナーが好ましく用いられる。
【0068】
《チオール化合物》
本発明に係るチオール化合物について説明する。
【0069】
上記記載の問題点を解決するために、本発明者等は従来公知の連鎖移動剤として用いられているチオール化合物の構造、特に、メルカプト基と結合する置換基に着目し検討した結果、好ましいチオール化合物の構造を見出し、また、前記連鎖移動剤の炭素数と重合性単量体の炭素数とに下記のような相関があることがわかった。
【0070】
(チオール化合物の構造)
チオール化合物の構造としては、従来公知のアルキル基を有するチオール化合物の中で、分岐構造を有するものよりも、直鎖のアルキル基を有するものが好ましいことが判った。また、本発明に記載の効果、即ち、結着樹脂の分子量制御、得られたトナーに良好な帯電性を付与し、且つ、現像定着時の臭気問題を解決するためには、前記一般式(1)で表される、炭素数5〜10の直鎖アルキル基を有するチオール化合物の製造時の使用、並びに、得られたトナー中に前記チオール化合物が存在していることが必須要件である。
【0071】
本発明に係る、炭素数5〜10の直鎖アルキル基を有するチオール化合物とは、具体的には、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオールである。
【0072】
本発明に係る、一般式(1)で表されるチオール化合物のアルキル基の炭素数Aと、重合性単量体中の炭素数B(ここで、重合性単量体が混合物の場合には、前記重合性単量体の最も長鎖を形成する基の炭素数をBとする)と定義すると、前記炭素数Aと前記炭素数Bの比(A/B)は1を超え2.5以下であることが好ましく、更に好ましくは、2〜2.5の範囲である。
【0073】
上記の範囲が好ましい理由は明らかではないが、連鎖移動した後、重合性単量体の反応時において、生成した重合体の末端に前記チオール化合物に由来する原子群が存在するときに、重合性単量体由来の原子群との炭素数との差がない方が、最終的に得られたトナーの帯電量の安定性が向上するためと推定している。
【0074】
(チオール化合物の添加量)
本発明の静電荷像現像用トナーを重合性単量体の重合反応により作製する際に用いられるチオール化合物の添加量としては、重合性単量体全モル数に対して0.05モル%〜2.0モル%であることが好ましく、更に好ましくは、0.1モル%〜1.0モル%の範囲である。
【0075】
(チオール化合物の添加方法)
前記一般式(1)で表されるチオール化合物は、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法においては、具体的には、連鎖移動剤として用いられる。
【0076】
(a)本発明に係る結着樹脂を1段階の重合反応工程で作製する場合には、前記チオール化合物の添加方法は、重合性単量体と反応前に添加した混合液の状態で用いてもよく、重合反応が始まってから添加してもよく、また、水系媒体中に添加するなど、特に添加方法は限定されない。
【0077】
(b)本発明に係る結着樹脂を、後述する多段階重合反応工程で作製する場合には、請求項6に記載のように、本発明に係るチオール化合物は水系媒体中に添加することが好ましく、更には、請求項7に記載のように、第1回目の重合反応工程以降に、水系媒体中に添加することが好ましい。
【0078】
また、添加方法としては、一括添加、滴下、分割方法があるが、好ましくは滴下もしくは分割方法が良い。
【0079】
(多段階重合反応工程による複合結着樹脂の作製)
本発明のトナーは、着色剤の不存在下において複合樹脂粒子を形成し、当該複合樹脂粒子の分散液に着色剤粒子の分散液を加え、当該複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析、凝集、融着させることにより調製されることが好ましい。
【0080】
このように、複合樹脂粒子の調製を着色剤の存在しない系で行うことにより、複合樹脂粒子を得るための重合反応が阻害されることない。このため、本発明のトナーによれば、優れた耐オフセット性が損なわれることはなく、トナーの蓄積による定着装置の汚染や画像汚れを発生させることはない。
【0081】
また、複合樹脂粒子を得るための重合反応が確実に行われる結果、得られるトナー粒子中に単量体やオリゴマーが残留するようなことはなく、当該トナーを使用する画像形成方法の熱定着工程において、異臭を発生させることはない。
【0082】
さらに、得られるトナー粒子の表面特性は均質であり、帯電量分布もシャープとなるため、鮮鋭性に優れた画像を長期にわたり形成することができる。
【0083】
本発明のトナーを構成する「複合樹脂粒子」とは、樹脂からなる核粒子の表面を覆うように、当該核粒子を形成する樹脂とは分子量および/または組成の異なる樹脂からなる1または2以上の被覆層が形成されている多層構造の樹脂粒子をいうものとする。
【0084】
また、複合樹脂粒子の「中心部(核)」とは、複合樹脂粒子を構成する「核粒子」をいう。
【0085】
また、複合樹脂粒子の「外層(殻)」とは、複合樹脂粒子を構成する「1または2以上の被覆層」のうち最外層をいう。
【0086】
また、複合樹脂粒子の「中間層」とは、中心部(核)と外層(殻)の間に形成される被覆層をいうものとする。
【0087】
複合樹脂粒子の分子量分布は単分散ではなく、また、複合樹脂粒子は、通常、その中心部(核)から外層(殻)にかけて分子量勾配を有している。
【0088】
本発明において、複合樹脂粒子を得るために「多段重合法」を用いることが、分子量分布制御の観点から、すなわち定着強度、耐オフセット性を確保する観点から好ましい。本発明において、複合樹脂粒子を得るための「多段重合法」とは、単量体(n)を重合処理(第n段)して得られた樹脂粒子(n)の存在下に、単量体(n+1)を重合処理(第n+1段)して、当該樹脂粒子(n)の表面に、単量体(n+1)の重合体(樹脂粒子(n)の構成樹脂とは分散および/または組成の異なる樹脂)からなる被覆層(n+1)を形成する方法を示す。
【0089】
ここに、樹脂粒子(n)が核粒子である場合(n=1)には、「二段重合法」となり、樹脂粒子(n)が複合樹脂粒子である場合(n≧2)には、三段以上の多段重合法となる。
【0090】
多段重合法によって得られる複合樹脂粒子中には、組成および/または分子量が異なる複数の樹脂が存在することになる。従って、当該複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析、凝集、融着させることにより得られるトナーは、トナー粒子間において、組成・分子量・表面特性のバラツキがきわめて小さい。
【0091】
このようなトナー粒子間における組成・分子量・表面特性が均質であるトナーによれば、接触加熱方式による定着工程を含む画像形成方法において、画像支持体に対する良好な接着性(高い定着強度)を維持しながら、耐オフセット性および巻き付き防止特性の向上を図ることができ、適度の光沢を有する画像を得ることができる。
【0092】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法の一例を具体的に示すと、
(1)離型剤及び/又は結晶性ポリエステルが、最外層以外の領域(中心部または中間層)に含有されるように調製された複合樹脂粒子を得るための多段重合工程(I)、
(2)複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析、凝集、融着させてトナー粒子を得る塩析、凝集、融着する工程(II)、
(3)トナー粒子の分散系からトナー粒子を濾別し、トナー粒子から界面活性剤などを除去する濾過、洗浄工程、
(4)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程、
(5)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程から構成される。
【0093】
以下、各工程について説明する。
《多段重合工程(I)》
多段重合工程(I)は、樹脂粒子(n)の表面に、単量体(n+1)の重合体からなる被覆層(n+1)を形成する多段重合法により、複合樹脂粒子を製造する工程である。ここで、製造の安定性、および得られるトナーの破砕強度の観点から三段重合以上の多段重合法を採用することが好ましい。
【0094】
以下に、多段重合法の代表例である二段重合法および三段重合法について説明する。
【0095】
《二段重合法の説明》
二段重合法は、離型剤を含有する高分子量樹脂から形成される中心部(核)と、低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。すなわち、二段重合法で得られる複合樹脂粒子は核と一層の被覆層から構成される。
【0096】
この方法を具体的に説明すると、先ず、離型剤を単量体(H)に溶解させて得られた単量体溶液を水系媒体(界面活性剤の水溶液)中に油滴分散させた後、この系を重合処理(第1段重合)することにより、離型剤を含有する高分子量の樹脂粒子(H)の分散液を調製する。
【0097】
次いで、この樹脂粒子(H)の分散液に、重合開始剤と、低分子量樹脂を得るための単量体(L)とを添加し、当該樹脂粒子(H)の存在下に単量体(L)を重合処理(第二段重合)することにより、当該樹脂粒子(H)の表面に、低分子量の樹脂(単量体(L)の重合体)からなる被覆層(L)を形成する。
【0098】
《三段重合法の説明》
三段重合法は、高分子量樹脂から形成される中心部(核)と、離型剤を含有する中間層と、低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。すなわち、三段重合法で得られる複合樹脂粒子は核と2層の被覆層から構成される。
【0099】
この方法を具体的に説明すると、先ず、常法に従った重合処理(第1段重合)により得られた樹脂粒子(H)の分散液を、水系媒体(界面活性剤の水溶液)に添加するとともに、当該水系媒体中に、離型剤を単量体(M)に溶解させてなる単量体溶液を油滴分散させた後、この系を重合処理(第二段重合)することにより、当該樹脂粒子(H)(核粒子)の表面に、離型剤を含有する樹脂(単量体(M)の重合体)からなる被覆層(M)(中間層)を形成してなる複合樹脂粒子〔高分子量樹脂(H)−中間分子量樹脂(M)〕の分散液を調製する。
【0100】
次いで、得られた複合樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と、低分子量樹脂を得るための単量体(L)とを添加し、当該複合樹脂粒子の存在下に単量体(L)を重合処理(第三段重合)することにより、当該複合樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体(L)の重合体)からなる被覆層(L)を形成する。
【0101】
この三段重合法において、樹脂粒子(H)の表面に被覆層(M)を形成する際に、当該樹脂粒子(H)の分散液を水系媒体(界面活性剤の水溶液)に添加するとともに、当該水系媒体中に、離型剤を単量体(M)に溶解させてなる単量体溶液を油滴分散させた後、この系を重合処理(第二段重合)する方法を採用することにより、離型剤を微細かつ均一に分散させることができる。
【0102】
尚、樹脂粒子(H)の分散液の添加処理および、単量体溶液の油滴分散処理については、下記に記載のように何れを先行して実施してもよいし、同時に行ってもよい。
【0103】
(a)複合樹脂粒子を構成する中間層を形成する際に、複合樹脂粒子の中心部(核)となる樹脂粒子を界面活性剤の水溶液中に添加した後、当該水溶液中に、離型剤/結晶性ポリエステルを含有する単量体組成物を分散させ、この系を重合処理する態様、
(b)複合樹脂粒子を構成する中間層を形成する際に、離型剤/結晶性ポリエステルを含有する単量体組成物を界面活性剤の水溶液中に分散させた後、当該水溶液中に、複合樹脂粒子の中心部(核)となる樹脂粒子を添加し、この系を重合処理する態様、
(c)複合樹脂粒子を構成する中間層を形成する際に、複合樹脂粒子の中心部(核)となる樹脂粒子を界面活性剤の水溶液中に添加すると同時に、当該水溶液中に、離型剤/結晶性ポリエステルを含有する単量体組成物を分散させ、この系を重合処理する態様が含まれる。
【0104】
離型剤を含有する樹脂粒子(核粒子)または被覆層(中間層)を形成する方法としては、離型剤を単量体に溶解させ、得られる単量体溶液を水系媒体中に油滴分散させ、この系を重合処理することにより、ラテックス粒子として得る方法を採用することができる。
【0105】
ここで、「水系媒体」とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0106】
離型剤を含有する樹脂粒子または被覆層を形成するために好適な重合法としては、臨界ミセル濃度以下の濃度の界面活性剤を溶解してなる水系媒体中に、離型剤を単量体に溶解してなる単量体溶液を、機械的エネルギーを利用して油滴分散させて分散液を調製し、得られた分散液に水溶性重合開始剤を添加して、油滴内でラジカル重合させる方法(以下、「ミニエマルジョン法」という)を挙げることができる。なお、水溶性重合開始剤を添加することに代えて、または、当該水溶性重合開始剤を添加するとともに、油溶性の重合開始剤を前記単量体溶液中に添加してもよい。
【0107】
機械的に油滴を形成するミニエマルジョン法によれば、通常の乳化重合法とは異なり、油相に溶解させた離型剤が脱離することがなく、形成される樹脂粒子または被覆層内に十分な量の離型剤を導入することができる。
【0108】
ここに、機械的エネルギーによる油滴分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリンおよび圧力式ホモジナイザーなどを挙げることができる。また、分散粒子径としては、10〜1000nmとされ、好ましくは50〜1000nm、更に好ましくは30〜300nmとされる。
【0109】
尚、離型剤を含有する樹脂粒子または被覆層を形成するための重合法として、乳化重合法、懸濁重合法、シード重合法などの公知の方法を採用することもできる。また、これらの重合法は、複合樹脂粒子を構成する樹脂粒子(核粒子)または被覆層であって、離型剤及び結晶性ポリエステルを含有しないものを得るためにも採用することができる。
【0110】
この重合工程(I)で得られる複合樹脂粒子の粒子径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定される重量平均粒径で10〜1000nmの範囲にあることが好ましい。
【0111】
また、複合樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は48〜74℃の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは52〜64℃である。複合樹脂粒子の軟化点は95〜140℃の範囲にあることが好ましい。
【0112】
《塩析、凝集、融着する工程(II)》
この塩析、凝集、融着する工程(II)は、多段重合工程(I)によって得られた複合樹脂粒子と、着色剤粒子とを塩析、凝集、融着させる(塩析と融着とを同時に起こさせる)ことによって、不定形(非球形)のトナー粒子を得る工程である。
【0113】
この塩析、凝集、融着する工程(II)においては、複合樹脂粒子および着色剤粒子とともに、荷電制御剤などの内添剤粒子(数平均一次粒子径が10〜1000nm程度の微粒子)を塩析、凝集、融着させてもよい。
【0114】
着色剤粒子は、表面改質されていてもよい。ここに、表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができる。
【0115】
着色剤粒子は、水性媒体中に分散された状態で塩析、凝集、融着処理に供される。着色剤粒子が分散される水性媒体は、臨界ミセル濃度(CMC)以上の濃度で界面活性剤が溶解されている水溶液を挙げることができる。
【0116】
ここに界面活性剤としては、多段重合工程(I)で使用した界面活性剤と同一のものを使用することができる。
【0117】
着色剤粒子の分散処理に使用する分散機は特に限定されないが、好ましくは、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、ゲッツマンミル、ダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。
【0118】
複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析、凝集、融着させるためには、複合樹脂粒子および着色剤粒子が分散している分散液中に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を添加するとともに、この分散液を、複合樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以上に加熱することが好ましい。
【0119】
更に好ましくは、凝集剤により複合樹脂粒子が所望の粒径に達した段階で凝集停止剤が用いられる。その凝集停止剤としては、1価の金属塩、中でも塩化ナトリウムが好ましく用いられる。
【0120】
塩析、凝集、融着させるために好適な温度範囲としては、(Tg+10)〜(Tg+50℃)とされ、特に好ましくは(Tg+15)〜(Tg+40℃)とされる。また、融着を効果的に行なわせるために、水に無限溶解する有機溶媒を添加してもよい。
【0121】
ここに、塩析、凝集、融着の際に使用する「凝集剤」としては、前述のようなアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩を挙げることができる。
【0122】
本発明に係る塩析、凝集について説明する。
本発明において、「塩析、凝集、融着」するとは、塩析(粒子の凝集)と融着(粒子間の界面消失)とが同時に起こること、または、塩析と融着とを同時に起こさせる行為をいう。
【0123】
塩析と融着とを同時に行わせるためには、複合樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度条件下において粒子(複合樹脂粒子、着色剤粒子)を凝集させることが好ましい。
【0124】
本発明の静電荷像現像用トナーは、着色剤の不存在下において複合樹脂粒子を形成し、当該複合樹脂粒子の分散液に着色剤粒子の分散液を加え、当該複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析、凝集、融着させることにより調製されることが好ましい。
【0125】
このように、複合樹脂粒子の調製を着色剤の存在しない系で行うことにより、複合樹脂粒子を得るための重合反応が阻害されることない。このため、本発明のトナーによれば、優れた耐オフセット性が損なわれることはなく、トナーの蓄積による定着装置の汚染や画像汚れを発生させることはない。
【0126】
また、複合樹脂粒子を得るための重合反応が確実に行われる結果、得られるトナー粒子中に単量体やオリゴマーが残留するようなことはなく、当該トナーを使用する画像形成方法の熱定着工程において、異臭を発生させることはない。
【0127】
さらに、得られるトナー粒子の表面特性は均質であり、帯電量分布もシャープとなるため、鮮鋭性に優れた画像を長期にわたり形成することができる。このようなトナー粒子間における組成・分子量・表面特性が均質であるトナーによれば、接触加熱方式による定着工程を含む画像形成方法において、画像支持体に対する良好な接着性(高い定着強度)を維持しながら、耐オフセット性および巻き付き防止特性の向上を図ることができ、適度の光沢を有する画像を得ることができる。
【0128】
本発明の静電荷像現像用トナーは下記のような連鎖移動剤の存在下に作製されてもよい。
【0129】
(連鎖移動剤)
例えば、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのメルカプト基を有する化合物、ネオペンチルグリコールのメルカプト基を有する化合物、ペンタエリストールのメルカプト基を有する化合物等が挙げられる。
【0130】
本発明のトナーに用いられる離型剤について説明する。
本発明の静電荷像現像用トナーを構成する離型剤の含有割合としては、通常1〜30質量%とされ、好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは3〜15質量%とされる。
【0131】
離型剤は低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=1500〜9000)や低分子量ポリエチレン等を添加してもよく、好ましい離型剤は下記一般式で表されるエステル系化合物が好ましい。
【0132】
一般式
R1−(OCO−R2)n
式中、nは1〜4の整数を表し、好ましくは2〜4、更に好ましくは3〜4であり、特に好ましくは4である。
【0133】
R1、R2は置換基を有しても良い炭化水素基を示す。
R1:炭素数=1〜40、好ましくは1〜20、更に好ましくは2〜5
R2:炭素数=1〜40、好ましくは16〜30、更に好ましくは18〜26
以下に、上記一般式で表されるエステル化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0134】
【化1】
【0135】
【化2】
【0136】
上記記載の離型剤、一般式で表される定着改良剤の添加量としては、静電荷像現像用トナー全体に1質量%〜30質量%、好ましくは2質量5〜20質量%、さらに好ましくは3質量%〜15質量%である。
【0137】
本発明の静電荷像現像用トナーを構成する樹脂成分の好ましい分子量、分子量範囲、ピーク分子量等について説明する。
【0138】
本発明のトナーは、GPC測定において、分子量5,000〜30,000の範囲にピークを有し、且つ、分子量分布(Mw/Mn)が2〜10であることが好ましい。また、分子量分布としては更に好ましくは、2〜5である。
【0139】
本発明では、GPC測定における前記ピークは、IR検出器を用いた測定チャートのピークトップ値(MOL)で表される。また、分子量分布(Mw/Mn)は、IR検出器を用いて得られる測定チャートのピークの中でトナー成分のピーク全体(但し、カラム溶媒は除く)のMw/Mnで表される。
【0140】
上記の分子量の測定は、THF(テトラヒドロフラン)をカラム溶媒として用いるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて分子量測定を行う。
【0141】
具体的には、測定試料を1mgに対してTHFを1ml加え、室温下にてマグネチックスターラーを用いて撹拌を行い、充分に溶解させる。ついで、ポアサイズ0.45〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPCへ注入する。GPCの測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THFを毎分1mlの流速で流し、1mg/mlの濃度の試料を約100μl注入して測定する。カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、TSK guard columnの組合せなどをあげることができる。
【0142】
検出器としては、屈折率検出器(IR検出器)、あるいはUV検出器が好ましく用いられる。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いることが好ましい。
【0143】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造に係る、濾過・洗浄工程について説明する。
【0144】
この濾過・洗浄工程では、上記の工程で得られたトナー粒子の分散系からトナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や凝集剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。
【0145】
ここに、濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
【0146】
《乾燥工程》
この工程は、洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程である。
【0147】
この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0148】
乾燥処理されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。
【0149】
尚、乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
【0150】
本発明に係る重合性単量体について説明する。
(1)疎水性単量体
単量体成分を構成する疎水性単量体としては、特に限定されるものではなく従来公知の単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
【0151】
具体的には、モノビニル芳香族系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等を用いることができる。
【0152】
ビニル芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体およびその誘導体が挙げられる。
【0153】
アクリル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0154】
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
【0155】
ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0156】
モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
【0157】
ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0158】
(2)架橋性単量体
樹脂粒子の特性を改良するために架橋性単量体を添加しても良い。架橋性単量体としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
【0159】
(3)酸性極性基を有する単量体
酸性極性基を有する単量体としては、(a)カルボキシル基(−COOH)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物及び(b)スルホン基(−SO3H)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。
【0160】
(a)の−COO基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル、およびこれらのNa、Zn等の金属塩類等を挙げることができる。
【0161】
(b)スルホ基(−SO3H基)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としてはスルホン化スチレン、そのNa塩、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチル、そのNa塩等を挙げることができる。
【0162】
本発明に係る重合性単量体の重合に用いられる開始剤(重合開始剤ともいう)について説明する。
【0163】
本発明に用いられる重合開始剤は水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物等が挙げられる。
【0164】
更に上記重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合わせレドックス系開始剤とする事が可能である。レドックス系開始剤を用いる事で、重合活性が上昇し重合温度の低下が図れ、更に重合時間の短縮が期待できる。
【0165】
重合温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であればどの温度を選択しても良いが、例えば50℃から80℃の範囲が用いられる。又、常温開始の重合開始剤、例えば過酸化水素−還元剤(アスコルビン酸等)の組み合わせを用いる事で室温またはそれに近い温度で重合する事も可能である。
【0166】
本発明に用いられる連鎖移動剤について説明する。
本発明においては、重合性単量体が重合して生成する樹脂粒子の分子量を調整することを目的として、従来公知の一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることが可能である。
【0167】
連鎖移動剤としては、上記記載の、本発明に係るチオール化合物を用いることが好ましい。
【0168】
また、チオール化合物の他には、例えば、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのチオグリコール酸エステル、ネオペンチルグリコールのチオグリコール酸エステル、ペンタエリスリトールのチオグリコール酸エステル等を必要に応じて併用してもよい。
【0169】
中でも、トナー加熱定着時の臭気を抑制する観点から、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステルが好ましく用いられる。
【0170】
本発明に係る着色剤について説明する。
本発明の静電荷像現像用トナーに係る着色剤は、トナーの帯電の均一性向上の観点から、トナー製造時、上記記載の複合樹脂粒子の塩析、凝集、融着時に樹脂粒子と共に塩析、凝集、融着され、トナー粒子中に含有されることが好ましい。
【0171】
本発明のトナーを構成する着色剤(複合樹脂粒子との塩析、凝集、融着に供される着色剤粒子)としては、各種の無機顔料、有機顔料、染料を挙げることができる。無機顔料としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な無機顔料を以下に例示する。
【0172】
黒色の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0173】
これらの無機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0174】
磁性トナーとして使用する際には、前述のマグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、トナー中に20〜120質量%添加することが好ましい。
【0175】
有機顔料及び染料としても従来公知のものを用いることができる。具体的な有機顔料及び染料を以下に例示する。
【0176】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0177】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156等が挙げられる。
【0178】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0179】
また、染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いる事ができ、またこれらの混合物も用いる事ができる。
【0180】
これらの有機顔料及び染料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0181】
本発明の静電荷像現像用トナーを構成する着色剤(着色剤粒子)は、表面改質されていてもよい。ここに、表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を好ましく用いることができる。
【0182】
シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のアルコキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等のシロキサン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0183】
チタンカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクト」と称する商品名で市販されているTTS、9S、38S、41B、46B、55、138S、238S等、日本曹達社製の市販品A−1、B−1、TOT、TST、TAA、TAT、TLA、TOG、TBSTA、A−10、TBT、B−2、B−4、B−7、B−10、TBSTA−400、TTS、TOA−30、TSDMA、TTAB、TTOP等が挙げられる。
【0184】
アルミニウムカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクトAL−M」等が挙げられる。
【0185】
これらの表面改質剤の添加量は、着色剤に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%〜5質量%とされる。
【0186】
着色剤粒子の表面改質法としては、着色剤粒子の分散液中に表面改質剤を添加し、この系を加熱して反応させる方法を挙げることができる。
【0187】
表面改質された着色剤粒子は、濾過により採取され、同一の溶媒による洗浄処理と濾過処理が繰り返された後、乾燥処理される。
【0188】
本発明のトナーを構成するトナー粒子には、荷電制御剤など、離型剤以外の内添剤が含有されていてもよい。
【0189】
トナー粒子中に含有される荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩またはその金属錯体等が挙げられる。
【0190】
本発明のトナーに用いられる外添剤について説明する。
外添剤として使用できる無機微粒子としては、従来公知のものを挙げることができる。具体的には、シリカ微粒子、チタン微粒子、アルミナ微粒子等を好ましく用いることができる。これら無機微粒子は疎水性であることが好ましい。
【0191】
シリカ微粒子の具体例としては、日本アエロジル(株)製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト(株)製のHVK−2150、H−200、キャボット(株)製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
【0192】
チタン微粒子の具体例としては、例えば、日本アエロジル(株)製の市販品T−805、T−604、テイカ(株)製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン(株)製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産(株)製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
【0193】
アルミナ微粒子の具体例としては、例えば、日本アエロジル(株)製の市販品RFY−C、C−604、石原産業(株)製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0194】
外添剤として使用できる有機微粒子としては、数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の微粒子を挙げることができる。かかる有機微粒子の構成材料としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体などのを挙げることができる。
【0195】
外添剤として使用できる滑剤としては、高級脂肪酸の金属塩を挙げることができる。かかる高級脂肪酸の金属塩の具体例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸銅、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩;オレイン酸亜鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸鉄、オレイン酸銅、オレイン酸マグネシウム等のオレイン酸金属塩;パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム等のパルミチン酸金属塩;リノール酸亜鉛、リノール酸カルシウム等のリノール酸金属塩;リシノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウムなどのリシノール酸金属塩等が挙げられる。
【0196】
外添剤の添加量としては、トナーに対して0.1〜5質量%程度であることが好ましい。
【0197】
外添剤の添加工程に着いて説明する。
この工程は、乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程である。
【0198】
外添剤を添加するために使用される装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシエルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を挙げることができる。
【0199】
本発明の静電荷像現像用トナーの粒径について説明する。
本発明のトナーの粒径は、個数平均粒径で3μm〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは3μm〜8μmの範囲である。この粒径は、後に詳述するトナーの製造方法において、凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成によって制御することができる。
【0200】
個数平均粒径が3μm〜10μmであることにより、定着工程において、飛翔して加熱部材に付着しオフセットを発生させる付着力の大きいトナー微粒子が少なくなり、また、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
【0201】
トナーの個数平均粒径は、コールターカウンターTA−II、コールターマルチサイザー、SLAD1100(島津製作所社製レーザ回折式粒径測定装置)等を用いて測定することができる。
【0202】
本発明においては、コールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェース(日科機製)、パーソナルコンピューターを接続して使用した。前記コールターマルチサイザーにおけるアパーチャーとしては100μmのものを用いて、2μm以上(例えば2μm〜40μm)のトナーの体積分布を測定して粒度分布および平均粒径を算出した。
【0203】
また、粒度分布の分散度としては、10〜25の範囲が好ましい。
(CV値:粒度分布の分散度)
ここで、粒度分布について、CV値とは粒度分布の分散度を表した値であり、以下の式によって定義される数値であり、この値が小さい程、粒度分布がシャープである事を示す。
【0204】
また、ここで議論している粒度分布測定には、レーザ回折式粒子径測定装置SALD−1100(株式会社島津製作所製)により測定を行ったものである。
【0205】
CV=σ50/d50
d50:粒度分布の50%径(体積基準)
σ50:d50を基準としたときの標準偏差
(トナー粒子の形状係数)
本発明のトナー粒子の形状係数について説明する。
【0206】
本発明のトナーの形状係数は、下記式により示されるものであり、トナー粒子の丸さの度合いを示す。
【0207】
形状係数=((最大径/2)2×π)/投影面積
ここに、最大径とは、トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。また、投影面積とは、トナー粒子の平面上への投影像の面積をいう。
【0208】
本発明では、この形状係数は、走査型電子顕微鏡により2000倍にトナー粒子を拡大した写真を撮影し、ついでこの写真に基づいて「SCANNING IMAGE ANALYZER」(日本電子社製)を使用して写真画像の解析を行うことにより測定した。この際、100個のトナー粒子を使用して本発明の形状係数を上記算出式にて測定したものである。
【0209】
前記構成の(1)および(9)においては、この形状係数が1.0〜1.6の範囲にあるトナー粒子が65個数%以上とすることが好ましく、より好ましくは、70個数%以上である。さらに好ましくは、この形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子が65個数%以上とすることであり、より好ましくは、70個数%以上である。
【0210】
この形状係数が1.0〜1.6の範囲にあるトナー粒子が65個数%以上であることにより、現像剤搬送部材などでの摩擦帯電性がより均一となり、過度に帯電したトナーの蓄積が無く、現像剤搬送部材表面よりトナーがより交換しやすくなるために、現像ゴースト等の問題も発生しにくくなる。さらに、トナー粒子が破砕しにくくなって帯電付与部材の汚染が減少し、トナーの帯電性が安定する。
【0211】
また、前記構成の(16)においては、この形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子が65個数%以上とすることが必要であり、好ましくは、70個数%以上である。
【0212】
この形状係数を制御する方法は特に限定されるものではない。例えばトナー粒子を熱気流中に噴霧する方法、またはトナー粒子を気相中において衝撃力による機械的エネルギーを繰り返して付与する方法、あるいはトナーを溶解しない溶媒中に添加し旋回流を付与する方法等により、形状係数を1.0〜1.6、または1.2〜1.6にしたトナーを調製し、これを通常のトナー中へ本発明の範囲内になるように添加して調整する方法がある。また、いわゆる重合法トナーを調整する段階で全体の形状を制御し、形状係数を1.0〜1.6、または1.2〜1.6に調整したトナーを同様に通常のトナーへ添加して調整する方法がある。
【0213】
本発明のトナーとしては、トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおいて、最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であるトナーであることが好ましい。
【0214】
相対度数(m1)と相対度数(m2)との和(M)が70%以上であることにより、トナー粒子の粒度分布の分散が狭くなるので、当該トナーを画像形成工程に用いることにより選択現像の発生を確実に抑制することができる。
【0215】
本発明において、前記の個数基準の粒度分布を示すヒストグラムは、自然対数lnD(D:個々のトナー粒子の粒径)を0.23間隔で複数の階級(0〜0.23:0.23〜0.46:0.46〜0.69:0.69〜0.92:0.92〜1.15:1.15〜1.38:1.38〜1.61:1.61〜1.84:1.84〜2.07:2.07〜2.30:2.30〜2.53:2.53〜2.76・・・)に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムであり、このヒストグラムは、下記の条件に従って、コールターマルチサイザーにより測定されたサンプルの粒径データを、I/Oユニットを介してコンピュータに転送し、当該コンピュータにおいて、粒度分布分析プログラムにより作成されたものである。
【0216】
《測定条件》
(1)アパーチャー:100μm
(2)サンプル調製法:電解液〔ISOTON R−11(コールターサイエンティフィックジャパン社製)〕50〜100mlに界面活性剤(中性洗剤)を適量加えて攪拌し、これに測定試料10〜20mgを加える。この系を超音波分散機にて1分間分散処理することにより調製する。
【0217】
本発明に係る『角のないトナー粒子』について図1を用いて説明する。
本発明に係るトナーにおいては、トナーを構成するトナー粒子中、角がないトナー粒子の割合は50個数%以上であることが好ましく、更に好ましくは、70個数%以上である。
【0218】
角がないトナー粒子の割合が50個数%以上であることにより、転写されたトナー層(粉体層)の空隙が減少して定着性が向上し、オフセットが発生しにくくなる。また、摩耗、破断しやすいトナー粒子および電荷の集中する部分を有するトナー粒子が減少することとなり、帯電量分布がシャープとなって、帯電性も安定し、良好な画質を長期にわたって形成できる。
【0219】
ここに、「角がないトナー粒子」とは、電荷の集中するような突部またはストレスにより摩耗しやすいような突部を実質的に有しないトナー粒子を言い、具体的には以下のトナー粒子を角がないトナー粒子という。すなわち、図1(a)に示すように、トナー粒子Tの長径をLとするときに、半径(L/10)の円Cで、トナー粒子Tの周囲線に対し1点で内側に接しつつ内側をころがした場合に、当該円CがトナーTの外側に実質的にはみださない場合を「角がないトナー粒子」という。「実質的にはみ出さない場合」とは、はみ出す円が存在する突起が1箇所以下である場合をいう。また、「トナー粒子の長径」とは、当該トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。なお、図1(b)および(c)は、それぞれ角のあるトナー粒子の投影像を示している。
【0220】
角がないトナー粒子の割合の測定は次のようにして行った。先ず、走査型電子顕微鏡によりトナー粒子を拡大した写真を撮影し、さらに拡大して15,000倍の写真像を得る。次いでこの写真像について前記の角の有無を測定する。この測定を100個のトナー粒子について行った。
【0221】
角がないトナーを得る方法は特に限定されるものではない。例えば、形状係数を制御する方法として前述したように、トナー粒子を熱気流中に噴霧する方法、またはトナー粒子を気相中において衝撃力による機械的エネルギーを繰り返して付与する方法、あるいはトナーを溶解しない溶媒中に添加し、旋回流を付与することによって得ることができる。
【0222】
本発明に用いられる現像剤について説明する。
本発明のトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよい。
【0223】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものがあげられ、いずれも使用することができる。
【0224】
また、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0225】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0226】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0227】
本発明の画像形成方法について説明する。
本発明のトナーは、トナー像が形成された画像形成支持体を、定着装置を構成する加熱ローラと加圧ローラとの間に通過させて熱定着する工程を含む画像形成方法(本発明の画像形成方法)に好適に使用される。
【0228】
図2は、本発明の画像形成方法において使用する定着装置の一例を示す断面図であり、図2に示す定着装置は、加熱ローラ100と、これに当接する加圧ローラ200とを備えている。なお、図2において、Tは転写紙(画像形成支持体)上に形成されたトナー像である。
【0229】
加熱ローラ100は、フッ素樹脂または弾性体からなる被覆層120が芯金110の表面に形成されてなり、線状ヒーターよりなる加熱部材13を内包している。
【0230】
芯金110は、金属から構成され、その内径は10mm〜70mmとされる。芯金110を構成する金属としては特に限定されるものではないが、例えば鉄、アルミニウム、銅等の金属あるいはこれらの合金を挙げることができる。
【0231】
芯金110の肉厚は0.1mm〜15mmとされ、省エネルギーの要請(薄肉化)と、強度(構成材料に依存)とのバランスを考慮して決定される。例えば、0.57mmの鉄よりなる芯金と同等の強度を、アルミニウムよりなる芯金で保持するためには、その肉厚を0.8mmとする必要がある。
【0232】
被覆層120を構成するフッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)およびPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などを例示することができる。
【0233】
フッ素樹脂からなる被覆層120の厚みは10μm〜500μmとされ、好ましくは20μm〜400μmとされる。
【0234】
フッ素樹脂からなる被覆層120の厚みが10μm未満であると、被覆層としての機能を十分に発揮することができず、定着装置としての耐久性を確保することができない。一方、500μmを超える被覆層の表面には紙粉によるキズがつきやすく、当該キズ部にトナーなどが付着し、これに起因する画像汚れを発生する問題がある。
【0235】
また、被覆層120を構成する弾性体としては、LTV、RTV、HTVなどの耐熱性の良好なシリコーンゴムおよびシリコーンスポンジゴムなどを用いることが好ましい。
【0236】
被覆層120を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満とされ、好ましくは60°未満とされる。
【0237】
また、弾性体からなる被覆層120の厚みは0.1〜30mmとされ、好ましくは0.1〜20mmとされる。
【0238】
被覆層120を構成する弾性体のアスカーC硬度が80°を超える場合、および当該被覆層120の厚みが0.1mm未満である場合には、定着のニップを大きくすることができず、ソフト定着の効果(例えば、平滑化された界面のトナー層による色再現性の向上効果)を発揮することができない。
【0239】
加熱部材130としては、ハロゲンヒーターを好適に使用することができる。
加圧ローラ200は、弾性体からなる被覆層22が芯金21の表面に形成されてなる。被覆層220を構成する弾性体としては特に限定されるものではなく、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどの各種軟質ゴムおよびスポンジゴムを挙げることができ、被覆層120を構成するものとして例示したシリコーンゴムおよびシリコーンスポンジゴムを用いることが好ましい。
【0240】
被覆層220を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満とされ、好ましくは70°未満、更に好ましくは60°未満とされる。
【0241】
また、被覆層220の厚みは0.1〜30mmとされ、好ましくは0.1〜20mmとされる。
【0242】
被覆層220を構成する弾性体のアスカーC硬度が80°を超える場合、および被覆層220の厚みが0.1mm未満である場合には、定着のニップを大きくすることができず、ソフト定着の効果を発揮することができない。
【0243】
芯金210を構成する材料としては特に限定されるものではないが、アルミニウム、鉄、銅などの金属またはそれらの合金を挙げることができる。
【0244】
加熱ローラ100と加圧ローラ200との当接荷重(総荷重)としては、通常40N〜350Nとされ、好ましくは50N〜300N、さらに好ましくは50N〜250Nとされる。この当接荷重は、加熱ローラ100の強度(芯金110の肉厚)を考慮して規定され、例えば0.3mmの鉄よりなる芯金を有する加熱ローラにあっては、250N以下とすることが好ましい。
【0245】
また、耐オフセット性および定着性の観点から、ニップ幅としては4mm〜10mmであることが好ましく、当該ニップの面圧は0.6×105Pa〜1.5×105Paであることが好ましい。
【0246】
図2に示した定着装置による定着条件の一例を示せば、定着温度(加熱ローラ100の表面温度)が150℃〜210℃の範囲が好ましく、定着線速が80mm/秒〜640mm/秒の範囲が好ましい。
【0247】
本発明において使用する定着装置には、必要に応じてクリーニング機構を付与してもよい。この場合には、シリコーンオイルを定着部の上ローラ(加熱ローラ)に供給する方式として、シリコーンオイルを含浸したパッド、ローラ、ウェッブ等で供給し、クリーニングする方法が使用できる。
【0248】
シリコーンオイルとしては耐熱性の高いものが使用され、ポリジメチルシリコーン、ポリフェニルメチルシリコーン、ポリジフェニルシリコーン等が使用される。粘度の低いものは使用時に流出量が大きくなることから、20℃における粘度が1Pa・s〜100Pa・sのものが好適に使用される。
【0249】
但し、本発明による効果は、シリコーンオイルを供給しない、または、シリコーンオイルの供給量がきわめて低い定着装置により、画像を形成する工程を含む場合に特に顕著に発揮される。従って、シリコーンオイルを供給する場合であっても、その供給量は2mg/A4以下とすることが好ましい。
【0250】
シリコーンオイルの供給量を2mg/A4以下とすることにより、定着後の転写紙(画像支持体)に対するシリコーンオイルの付着量が少なくなり、転写紙へ付着したシリコーンオイルによるボールペン等の油性ペンの記入しずらさがなく、加筆性が損なわれることはない。
【0251】
また、シリコーンオイルの変質による耐オフセット性の経時的な低下、シリコーンオイルによる光学系や帯電極の汚染などの問題を回避することができる。
【0252】
ここに、シリコーンオイルの供給量は、所定温度に加熱した定着装置(ローラ間)に転写紙(A4サイズの白紙)を連続して100枚通過させ、通紙前後における定着装置の質量変化(Δw)を測定して算出される(Δw/100)。
【0253】
図3は、中間転写体(転写ベルト)を用いた、本発明の画像形成装置の一例を示す断面図である。
【0254】
図3において、カラー画像を得るため画像形成装置は、複数個の画像形成ユニットを備え、各画像形成ユニットにてそれぞれ色の異なる可視画像(トナー画像)を形成し、該トナー画像を同一中間転写体に順次重ねて転写するような画像形成方法である。
【0255】
ここでは、第1、第2、第3及び第4の画像形成ユニットPa、Pb、Pc及びPdが並設されており、該画像形成部はそれぞれ静電潜像形成体である感光体1a、1b、1c及び1dを具備している。感光体1a、1b、1c及び1dはその外周側に潜像形成部2a、2b、2c及び2d、現像部3a、3b、3c及び3d、転写放電部4a、4b、4c及び4d、クリーニング部材及びゴムブレードを有するクリーニング器5a、5b、5c及び5d、帯電器6a、6b、6c及び6dが配置するものである。
【0256】
この様な構成にて、先ず、第1画像形成ユニットPaの感光体1a上に潜像形成部2aによって原稿画像における、例えばイエロー成分色の潜像が形成される。該潜像は現像部3aのイエロートナーを含有する現像剤で可視画像とされ、転写放電部4aにて、転写ベルト21に転写される。
【0257】
一方、上記の様にイエロートナー画像が転写ベルト21に転写されている間に、第2画像形成ユニットPbではマゼンタ成分色の潜像が感光体1b上に形成され、続いて現像部3bでマゼンタトナーを含有する現像剤で可視画像とされる。この可視画像(マゼンタトナー画像)は、上記の第1画像形成ユニットPaでの転写が終了した転写ベルトが転写放電部4bに搬入されたときに、該転写ベルト21の所定位置に重ねて転写される。
【0258】
以下、上記と同様な方法により第3、第4の画像形成ユニットPc、Pdによりシアン成分色、ブラック成分色の画像形成が行われ、上記同一の転写ベルト上に、シアントナー画像、ブラックトナー画像が重ねて転写される。この様な画像形成プロセスが終了した時点で、転写ベルト21上に多色重ね合せ画像が得られる。一方、転写が終了した各感光体1a、1b、1c及び1dはクリーニング器5a、5b、5c及び5dにより残留トナーが除去され、引き続き行われる次の潜像形成のために供せられる。
【0259】
なお、前記画像形成装置では、転写ベルト21が用いられており、図7において、転写ベルト21は右側から左側へと搬送され、その搬送過程で、各画像形成ユニットPa、Pb、Pc及びPdにおける各転写放電部4a、4b、4c及び4dを通過し各色転写画像が転写される。
【0260】
転写ベルト21が第4画像形成ユニットPdを通過すると、AC電圧が分離除電放電器22dに加えられ、転写ベルト21は除電され、転写材Pにトナー像が一括転写される。その後転写材Pは定着装置23に入り、定着され、排出口25から排出され、カラー画像が得られる。
【0261】
なお、図中の22a、22b、22c及び22dは分離除電放電器であり、トナー像の転写を終えた転写ベルト21は、ブラシ状クリーニング部材とゴムブレードを併用したクリーニング器24により、転写残トナーがクリーニングされて、次の画像形成に備えられる。
【0262】
なお、前記の様に、搬送ベルトの如き長尺の転写ベルト21を用いて、その上に多色重ね合せ像を作り、それを転写材に一括転写する構成にしても、その画像形成ユニットにそれぞれ独立した転写ベルトを具備させ、それから転写材へ、順次各転写ベルトから転写する構成にしてもよい。
【0263】
尚、前記転写ベルトとしては、例えばポリイミド、ポリエーテル、ポリアミドあるいはテトラフルオロエチレン・パーフルオロビニルエーテル共重合体等の表面抵抗が1014Ω以上で、厚さ20μm程度の高抵抗フィルムの上に、フッ素系またはシリコン系樹脂に導電剤を添加して表面抵抗を105〜108Ωとした5〜15μm厚の離型層を設けてなるエンドレスフィルムが用いられる。
【0264】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0265】
実施例1
《第一段重合で調製したラテックス(1H)と着色粒子の作製例》
(ラテックス(1H)の調製):核粒子の形成:第一段重合
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000mlのセパラブルフラスコに、下記(101)で表されるアニオン系界面活性剤
(101):C10H21(OCH2CH2)2OSO3Na
4gをイオン交換水3040gに溶解させた界面活性剤溶液(水系媒体)を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
【0266】
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)10gをイオン交換水400gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン560g、n−ブチルアクリレート200g、メタクリル酸40gからなる単量体混合液及び、連鎖移動剤としてペンタンチオールを前記単量体の全モル数の0.05モル%量を1時間かけて滴下し、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、攪拌することにより重合を行い、ラテックス(1H)を調製した。
【0267】
《着色粒子の作製例》:第一段重合のみのラテックス(1H)使用
下記のようにして、着色粒子1〜4、比較の着色粒子1〜3を各々作製した。
【0268】
(着色粒子1の作製)
(1)着色剤分散液1の調製
前記(101)で表される、アニオン性界面活性剤90gをイオン交換水1600mlに攪拌溶解した。この溶液を攪拌しながら、400.0gのC.I.ピグメントブルー15:3を徐々に添加し、次いで、攪拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理して、着色剤粒子の分散液(以下、「着色剤分散液1」という。)を調製した。
【0269】
この着色剤分散液1における着色剤粒子の粒子径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、110nmであった。
【0270】
(2)(凝集・融着)会合粒子の調製
ラテックス(1H)420.7g(固形分換算)と、イオン交換水900gと「着色剤分散液1」200gとを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置を取り付けた反応容器(四つ口フラスコ)に入れ攪拌した。容器内の温度を30℃に調整した後、この溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8〜11.0に調整した。
【0271】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物12.1gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を、攪拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて90℃まで昇温した。
【0272】
その状態で、「コールターカウンターTA−II」にて会合粒子の粒径を測定し、個数平均粒径が4μm〜7μmになった時点で、塩化ナトリウム40.2gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、更に、熟成処理として液温度98℃にて6時間にわたり加熱攪拌することにより融着を継続させた。
【0273】
(着色粒子2の作製)
着色粒子1の作製に用いたラテックス(1H)の調製において、ペンタンチオールの代わりにヘキサンチオール2.0モル%量に変更し、ラテックス(2H)を調製した以外は同様にして、着色粒子2を作製した。
【0274】
(着色粒子3の作製)
着色粒子1の作製に用いたラテックス(1H)の調製において、ペンタンチオールの代わりにオクタンチオール0.2モル%量に変更し、且つ、添加方法を重合開始剤を添加した後、単量体混合液を滴下する前に、水系媒体中へ添加するという添加順序に変更し、ラテックス(3H)を調製した以外は同様にして、着色粒子3を作製した。
【0275】
(着色粒子4の作製)
着色粒子3の作製において、オクタンチオールの代わりにデカンチオールの0.8モル%量に変更し、ラテックス(4H)を調製した以外は同様にして、着色粒子4を作製した。
【0276】
(比較の着色粒子1の作製)
着色粒子1の作製に用いたラテックス(1H)の調製において、ペンタンチオールの代わりにブタンチオール1.0モル%量に変更し、比較ラテックス(1H)を調製した以外は同様にして、比較の着色粒子1を調製した。
【0277】
(比較の着色粒子2の作製例)
着色粒子1の作製に用いたラテックス(1H)の調製において、ペンタンチオールの代わりにドデカンチオール1.0モル%量に変更し、比較ラテックス(2H)を調製した以外は同様にして、比較の着色粒子2を調製した。
【0278】
(比較の着色粒子3の作製例)
着色粒子1の作製に用いたラテックス(1H)の調製において、ペンタンチオールの代わりにtert−ドデカンチオール1.0モル%量に変更し比較ラテックス3とした他は同様にして、比較の着色粒子3を調製した。
【0279】
《ラテックス(5H)の調製と着色粒子5の作製》
下記のようにして第一段、第二段の重合過程を経て、複合樹脂粒子を有するラテックス(5H)を調製し、次いで、着色粒子5を作製した。
【0280】
(ラテックス(5H)の調製):中間層の形成:第二段重合
攪拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン95g、n−ブチルアクリレート36g、メタクリル酸9gからなる単量体混合液に、結晶性物質として、上記19)で表される化合物(以下、「例示化合物(19)」という。)77gを添加し、90℃に加温し溶解させて単量体溶液を調製した。
【0281】
一方、アニオン系界面活性剤(上記(101))1gをイオン交換水1560mlに溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、前記ラテックス(3H)を固形分換算で28g添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により、例示化合物(19)の単量体溶液を8時間混合分散させ、分散粒子径(284nm)を有する乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調製した。
【0282】
次いで、この分散液(乳化液)に、重合開始剤(KPS)5gをイオン交換水200mlに溶解させた開始剤溶液を添加した後、オクタンチオール0.2モル%量(上記の第二段重合用に調製した単量体モル数を100モル%とする)量を30分かけて滴下した。
【0283】
その後、この系を98℃にて12時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第二段重合)を行い、ラテックス(5H)を得た。
【0284】
(着色粒子5の作製)
着色粒子1の作製において、ラテックス(1H)の代わりにラテックス(5H)を用いた以外は同様にして、着色粒子5を作製した
《ラテックス(6H)の調製と着色粒子6の作製》
下記のようにして第一段〜第三段の重合過程を経て、複合樹脂粒子を有するラテックス(6H)を調製し、ラテックス(6H)と着色剤分散液1とを用いて、着色粒子1の作製時と同様に、(凝集・融着)会合粒子を調製後、更に、下記に示すラテックス(2L)を用いてシェリング(融着ともいう)を行い、着色粒子6を作製した。
【0285】
(ラテックス(6H)の調製):外層の形成:第三段重合
上記記載のラテックス(5H)に、オクタンチオール0.2モル%量(下記の第三段重合用に調製した単量体モル数を100モル%とする)の1/2量を添加し、次いで、重合開始剤(KPS)6.8gをイオン交換水265mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン249g、n−ブチルアクリレート88.2g、メタクリル酸19.4gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。単量体混合液の滴下終了の30分後に、オクタンチオールの残りの1/2量を添加した。
【0286】
単量体混合液滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第三段重合)を行った後、28℃まで冷却しラテックス(6H)を得た。
【0287】
(着色粒子6の作製)
着色粒子1の作製において、ラテックス(1H)の代わりにラテックス(6H)を用いた以外は同様にして、(凝集・融着)会合粒子の作製を行った後、下記のラテックス(2L)(樹脂粒子の分散液)96gを添加し、3時間にわたり加熱攪拌を継続し、(凝集・融着)会合粒子表面にラテックス(2L)を融着させた。ここで、塩化ナトリウム40.2gを加え、8℃/分の条件で30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを2.0に調整し、攪拌を停止した。生成した塩析、凝集、融着粒子を濾過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄し、その後、40℃の温風で乾燥することにより、着色粒子6を得た。
【0288】
(ラテックス2L(シェル剤)の調製)
攪拌装置を取り付けたフラスコ内に、重合開始剤(KPS)14.8gをイオン交換水400mlに溶解させた開始剤溶液を仕込み、80℃の温度条件下に、スチレン600g、n−ブチルアクリレート190g、メタクリル酸30.0g、オクタンチオール0.2モル%量(上記のシェリング用単量体の全モル数に対して)からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。
【0289】
滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合を行った後、27℃まで冷却しラテックス(低分子量樹脂からなる樹脂粒子の分散液)を得た。このラテックスを「ラテックス(2L)」とする。
【0290】
このラテックス(2L)を構成する樹脂粒子は11,000にピーク分子量を有するものであり、また、この樹脂粒子の重量平均粒径は128nmであった。
【0291】
《静電荷像現像用トナー1〜6、比較用トナー1〜3の作製》
上記で作製した、着色粒子1〜6、比較用着色粒子1〜3に、各々疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)を1質量%及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、静電荷像現像用トナー1〜6、比較用トナー1〜3をを各々得た。尚、形状及び粒径等の物性に関しては着色粒子及び、前記着色粒子を用いて作製したトナーのいずれも差異は無い。
【0292】
表1に、トナー作製に用いた重合性単量体、連鎖移動剤の種類、樹脂粒子調製の重合方法(第一段重合〜第三段重合)、得られたトナーの分子量、分子量分布等を示す。ここで、分子量、分子量分布は、市販のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置を用いて行った。
【0293】
【表1】
【0294】
《現像剤の作製》
静電荷像現像用トナー1〜6、比較用トナー1〜3の各々に対してシリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアを混合し、トナー濃度が6%になるように現像剤を調製した。これらを、現像剤1〜6、比較用現像剤1〜3とする。
【0295】
得られた現像剤の各々について下記のように特性評価を行った。
《実写条件》
市販のデジタル複写機コニカSitios7075を評価機として使用し、下記のようにライン幅評価、文字潰れの評価を行った。
【0296】
《臭気評価》
臭気の有無を官能評価にて実施した。臭気の有無についてはランダムに集めた10名の評価員により、臭気を感じた人数をカウント評価した。臭気を感じた人数が3人未満の場合、臭気は実質無しと判断した。
【0297】
《カブリの発生状況》
高温高湿環境下(温度33℃、相対湿度80%)において、画像を連続して5000枚印字した後、電源をオフにして72時間放置後に再度印字し、形成画像を逐次観察して、画像汚れ(カブリ)の個数を目視により数え、0〜10個未満であれば、良好と判断した。
【0298】
◎:0〜3個
○:4〜10個未満
×:10個以上
《オフセット性》
評価は、転写紙の先端部に5mmの余白を設けて30mm幅のベタ黒画像を形成した未定着画像を、定着ローラ(上ローラ)の表面温度を110〜230℃まで10℃刻みで可変させた状態で定着させ、定着巻き付きの発生しない下限温度と、定着オフセットの発生しない上限温度を調べた。尚、定着器にはクリーニング機構を付与していない。
【0299】
定着可能温度の下限温度と上限温度の差を定着可能温度領域とし、下記の評価を行った。
【0300】
◎(優良):定着可能温度領域が100℃以上ある場合
○(良好):100℃未満、70℃以上(実用可能)
×(不良):70℃未満(実用不可)
得られた結果を表2に示す。
【0301】
【表2】
【0302】
表2から、比較と比べて、本発明の静電荷像現像用トナーを用いた試料は、臭気上のトラブルが軽減され、低カブリであり、且つ、オフセット性も良好であることが明らかである。
【0303】
【発明の効果】
本発明により、トナーを構成する樹脂の分子量の制御性に優れ、現像定着時の臭気上の問題点が改良され、低カブリな画像が得られ、オフセット性も良好な静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法、画像形成方法、及び画像形成装置を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、角のないトナー粒子の投影像を示す説明図であり、(b)および(c)は、それぞれ角のあるトナー粒子の投影像を示す説明図である。
【図2】本発明において使用する定着装置の一例を示す断面図を表す。
【図3】中間転写体(転写ベルト)を用いた、本発明の画像形成装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
8 記録材
100 加熱ローラ
110 芯金
120 被覆層
130 加熱部材
200 加圧ロール
210 芯金
220 被覆層
T 記録材上に形成されたトナー像
P 転写材
Pa、Pb、Pc、Pd 画像形成ユニット
1a、1b、1c、1d 感光体
2a、2b、2c、2d 潜像形成部
3a、3b、3c、3d 現像部
4a、4b、4c、4d 転写放電部
5a、5b、5c、5d クリーニング器
6a、6b、6c、6d 帯電器
22a、22b、22c、22d 分離除電放電器
21 転写ベルト
23 定着装置
24 クリーニング器
25 排出口
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法、画像形成方法、及び画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高画質で高速な画像形成には、電子写真、プリンタ等の静電荷像現像用トナー(以下、トナーともいう)を用いた静電画像形成方法が知られている。これらの方法ではトナー像が形成されている記録材にトナー像を定着する方式として、加熱ローラと加圧ローラの間にトナーで形成された画像を通過させて定着するいわゆる熱圧定着方式が、その装置構成が簡便であると同時に記録材への定着性が良好となる点で広く利用されている。この方式では、トナーに対する熱の伝達は加熱ローラとの接触によるものであり、その熱によりトナーが溶融されるものである。
【0003】
溶融状態となったトナーは記録材のみならず加熱ローラに対しても接着するため、加熱ローラから記録材を剥離する際、溶融したトナーが加熱ローラ面にも残り、記録材上にトナー量が少ない箇所が出来る現象が発生する。又、低温の加熱ローラで定着される場合、加熱ローラへのトナーの接着力が記録材よりも強いため加熱ローラから記録材を剥離する際、加熱ローラ面にトナーが残り、記録材上にはトナーが存在しない箇所が出来る現象が発生する。これらの現象をオフセット現象と称し、画質の品質上生じてはならない現象である。
【0004】
一般的に、このオフセット現象は、定着の際に溶融されたトナーの内部凝集力よりも、トナーと加熱ローラとの接着力が大きい場合に発生すると説明されている。このことからオフセット現象を抑制するためにトナーの加熱時の粘弾性率を向上することが必要であり、このためにはトナーを構成している樹脂の分子量分布を制御することが必要とされている。
【0005】
一方、最近の高速及び低温度で定着するための対応、及び近年の高画質化に伴い、トナーに対して小粒径であること、粒度分布が狭いこと、帯電制御剤が均一に分散さていることなどが要求されている。小粒径化トナーの一般的な製造方法としては粉砕法と重合法とが知られている。粉砕法とは樹脂、染顔料、帯電制御剤を溶融混練し、機械式あるいは空気衝突式の粉砕機にて粉砕、分級を行なう方法である。この粉砕法で作られたトナーにおいては、狭い粒度分布のものを得ようとした場合、生産能力や収率が著しく低下し、コスト高になるのはもちろん、粒径を小さくするほど、帯電制御剤、離型剤、不均一に存在したりすることにより定着性の均一化をはかることが困難になり、バラツキが発生しやすい問題がある。このため、粉砕工程を必要としないで小粒径ができ、粒度分布が制御でき、帯電制御剤が均一に小粒子上に分散でき、オフセット対策としてトナーを構成している樹脂の分子量分布を制御できる小粒径トナーを製造する方法として近年、重合法による製造方法が提案されてきた。
【0006】
これら重合法としては、懸濁重合方法、乳化重合方法が知られている(例えば、特許文献1〜6参照。)。
【0007】
重合方法において分子量分布を制御するためには一般的に連鎖移動剤を使用することが知られている。これら連鎖移動剤としては例えば、メタンチオール、エタンチオール、ペンタンチオール、ドデカンチオール、四塩化炭素、クロロホルム(例えば、特許文献7参照。)、チオグリコール酸オクチル、α−メチルスチレン、トルエン(例えば、特許文献8参照。)、チオグリセリン、チオグリコール酸、チオグリコール酸エステル(例えば、特許文献9参照。)、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等(例えば、特許文献10参照。)が知られている。これら、連鎖移動剤は小粒径化粒子トナーを調製する上で無くてはならない物であるが、以下のような問題点がある。
【0008】
チオール系化合物(メルカプタン系化合物ともいう)、チオグリセリン、チオグリコール酸、チオグリコール酸エステルの場合、定着時の加熱により樹脂粒子中に微量に存在する化合物が気化することによる臭気が挙げられる。α−メチルスチレン、トルエン、四塩化炭素、クロロホルム等の場合は、定着時の加熱により樹脂粒子中に微量に存在する芳香族系物質、塩素系物質が気化しやすくなるという問題点があった。
【0009】
また、チオール系化合物を連鎖移動剤として使用し、得られたトナーは、上記臭気上の面だけではなく、分子量の制御性、帯電量の制御性の面でも、更なる改良が求められている。
【0010】
一方、重合で用いられる重合性単量体や、溶媒、添加剤等の種々の揮発性物質は、トナー製造時に、トナー粒子中に取り込れそのまま残存しやすい。
【0011】
揮発性物質や重合性単量体を多量に含有するトナーは、トナー保存中にトナーの凝集が発生しやすく、凝集したトナーを用いた現像剤では画像形成時に画質が低下し、良質の画像が得られなくなったり、熱定着時にトナー中に残存する揮発物質や重合性単量体等に起因する臭気が発生したり、高速両面プリント時に転写体(例えば転写紙)のプリント面がタッキング(貼り付き)しやすくなるという問題がある。
【0012】
尚、上記の重合性単量体や揮発性物質をトナー中に含有することに起因する問題は、樹脂と着色剤とを溶融混練、粉砕してなるいわゆる粉砕トナーでは特に問題視されていなかった。その理由としては、粉砕トナーに使用される樹脂は既に乾燥されている場合が多く、若し未反応の重合性単量体や揮発性物質を含んでいたとしても、トナーを製造する際の加熱練肉工程での加熱により除去されると判断される。
【0013】
しかし、トナー粒子を構成する結着樹脂を重合性単量体の重合反応により作製する重合トナーにおいては、製造時に加熱練肉工程が無いため、トナー中の未反応の重合性単量体や揮発性物質を除去しきれず、トナー中に大量に残存しやすいという問題点があった。
【0014】
【特許文献1】
特開昭63−186253号公報
【0015】
【特許文献2】
特開昭63−232749号公報
【0016】
【特許文献3】
特開平4−51251号公報
【0017】
【特許文献4】
特開平6−329947号公報
【0018】
【特許文献5】
特開平9−50149号公報
【0019】
【特許文献6】
特開平9−146295号公報
【0020】
【特許文献7】
特開平10−123751号公報
【0021】
【特許文献8】
特開平5−134459号公報
【0022】
【特許文献9】
特開平6−19203号公報
【0023】
【特許文献10】
特開平11−223962号公報
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、トナーを構成する樹脂の分子量の制御性に優れ、現像定着時の臭気上の問題点が改良され、低カブリな画像が得られ、オフセット性も良好な静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法、画像形成方法、及び画像形成装置を提供することである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成1〜11によって達成された。
【0026】
1.結着樹脂と着色剤を含有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーにおいて、ヘッドスペース測定におけるn−ヘキサンのピーク検出時間a〜n−ヘキサデカンのピーク検出時間bとの間に検出される揮発性物質、重合性単量体を含み、該揮発性物質のトルエン検量線法に基づき算出される含有量が350ppm以下、該重合性単量体の測定用に作成された検量線に基づき算出される前記重合性単量体の含有量が50ppm以下であり、且つ、該トナー粒子が、前記一般式(1)で表されるチオール化合物の存在下に作製されたことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0027】
2.GPC測定において、分子量5,000〜30,000の範囲にピークを有し、且つ、分子量分布(Mw/Mn)が2〜10であることを特徴とする前記1に記載の静電荷像現像用トナー。
【0028】
3.前記一般式(1)で表されるチオール化合物のアルキル基の炭素数Aと重合性単量体の炭素数B(ここで、重合性単量体が混合物の場合には、前記重合性単量体中、最も長鎖を形成する基の炭素数をBとする)との比(A/B)が1を超え2.5以下であることを特徴とする前記1または2に記載の静電荷像現像用トナー。
【0029】
4.水系媒体中で重合性単量体と、該重合性単量体全体のモル数に対して、前記一般式(1)で表されるチオール化合物が0.05モル%〜2.0モル%添加された条件下で重合反応を行ない、結着樹脂粒子の分散液を調製する工程、次いで、該結着樹脂粒子を塩析、融着する工程を経て製造されたことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0030】
5.重合反応が、乳化重合反応または懸濁重合反応であることを特徴とする前記4に記載の静電荷像現像用トナー。
【0031】
6.前記1〜5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを製造するに当たり、水系媒体中で重合性単量体と、該重合性単量体全体のモル数に対して、前記一般式(1)で表されるチオール化合物が0.05モル%〜2.0モル%添加された条件下で重合反応を行ない、結着樹脂粒子の分散液を調製する工程、次いで、該結着樹脂粒子を塩析、融着する工程を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0032】
7.前記一般式(1)で表されるチオール化合物のアルキル基の炭素数Aと重合性単量体の炭素数B(ここで、重合性単量体が混合物の場合には、前記重合性単量体中、最も長鎖を形成する基の炭素数をBとする)との比(A/B)が1を超え2.5以下であることを特徴とする前記6に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0033】
8.水系媒体中で、2工程以上の重合反応工程を経て、結着樹脂の分散液を調製する工程を有することを特徴とする前記6または7に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0034】
9.水系媒体中で、2工程以上の重合反応工程を有し、且つ、第1回目の重合反応工程以降に、前記一般式(1)で表されるチオール化合物を該水系媒体中に添加することを特徴とする前記6または7に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0035】
10.静電荷像担持体上に静電荷像を形成する工程、前記1〜5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む現像剤で該静電荷像を現像してトナー画像を形成する工程、該トナー画像を記録材上に転写する工程、及び、該記録材上に転写されたトナー画像を熱定着する工程を有することを特徴とする画像形成方法。
【0036】
11.静電荷像担持体上に静電荷像を形成する手段、前記1〜5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む現像剤で該静電荷像を現像してトナー画像を形成する手段、該トナー画像を記録材上に転写する手段、及び、該記録材上に転写されたトナー画像を熱定着する手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【0037】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者等は、上記記載の問題点を種々検討した結果、請求項1に記載のように、結着樹脂と着色剤を含有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーにおいて、ヘッドスペース測定におけるn−ヘキサンのピーク検出時間a〜n−ヘキサデカンのピーク検出時間bとの間に検出される揮発性物質、重合性単量体を含み、該揮発性物質のトルエン検量線法に基づき算出される含有量が350ppm以下、該重合性単量体の測定用に作成された検量線に基づき算出される前記重合性単量体の含有量が50ppm以下であり、且つ、前記一般式(1)で表されるチオール化合物を含有させることにより、本発明に記載の効果、即ち、良好な帯電性を示し、且つ、現像定着時において臭気上の問題のない静電荷像現像用トナーが得られた。
【0038】
通常、揮発性物質や重合性単量体のトナー中への残留は、トナーの帯電性能や現像、定着時への悪影響ばかりと考えられていたが、本発明者等は、上記記載の特定の含有量になるようにトナーを調整した結果、驚くべきことに、微量の重合性単量体や揮発性物質の存在が、むしろ、本発明に記載の効果を付与するのに+の効果を示すことを見出した。
【0039】
また、請求項5に示したように、前記一般式(1)で表されるチオール化合物を添加した条件下で重合反応を行うことにより、トナー粒子を構成する結着樹脂として好ましい分子量特性を示す樹脂が得られることも併せて見出した。
【0040】
《静電荷像現像用トナー》
本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤をその構成成分として有するが、本発明に記載の効果を得るためには、下記に記載の揮発性物質、及び重合性単量体の存在が必須要件であり、更に本発明の静電荷像現像用トナーを得るためには、後述するチオール化合物の存在下において、トナー粒子が作製されることが必要である。
【0041】
《揮発性物質》
本発明に係る揮発性物質について説明する。
【0042】
本発明に係る揮発性物質とは、具体的には、ヘッドスペース測定におけるn−ヘキサンのピーク検出時間a〜n−ヘキサデカンのピーク検出時間bとの間に検出可能な化合物を表す。また、重合性単量体も同様に前記ヘッドスペース法により検出されるが、詳細は別途、後述する。
【0043】
本発明に記載の効果を得る観点から、トナー中の揮発性物質の量は、350ppm以下であることが必要であるが、好ましくは100ppm〜300ppmである。
【0044】
(アルコール類)
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、n−デシルアルコール、n−ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。
【0045】
(多価アルコール誘導体)
エチレングリコールジアセタート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ヘキシレングリコール等が挙げられる。
【0046】
(炭化水素類)
アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジフェニルメタン、エチルベンゼン、オクタン、ガソリン、キシレン類、ジエチルベンゼン類、シクロヘキサン、シクロペンタン、時ペンテン、石油エーテル、石油ベンジン、トルエン、ブタン、プロパン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、ペンタン、メシチレン、リグロイン等が挙げられる。
【0047】
(ハロゲン化炭化水素類)
アリルクロリド、塩化イソプロピル、塩化エチル、塩化ブチル、o−クロロトルエン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。
【0048】
(アルデヒド類)
ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、キシロアルデヒド等が挙げられる。
【0049】
(エーテル、アセタール類)
エチル−t−ブチルエーテル、エチルベンジルエーテル、エピクロルヒドリン、ジイロプロピルエーテル、ジエチルアセタール、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、トリオキサン等が挙げられる。
【0050】
(ケトン、アルデヒド類)
アクロレイン、アセチルアセトン、アセトアルデヒド、アセトン、イソホロン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−n−プロピルケトン等が挙げられる。
【0051】
(エステル類)
ギ酸イソアミル、ギ酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ギ酸プロピル、ギ酸ヘキシル、酢酸アミル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸メチル、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、酪酸イソアミル、酪酸エチル、酪酸ブチル等が挙げられる。
【0052】
《重合性単量体》
本発明に係る重合性単量体について説明する。
【0053】
本発明に記載の効果を得る観点から、本発明に係る重合性単量体の量は、50ppm以下であることが必要であるが、好ましくは1ppm〜20ppmであり、更に好ましくは、2ppm〜10ppmの範囲に調整することである。
【0054】
本発明に係る重合性単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの様なスチレンあるいはスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等の、アクリル酸エステル誘導体、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン系ビニル類、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体がある。
【0055】
(揮発性物質、重合性単量体等の定量方法)
本発明の静電荷像現像用トナー中の、揮発性物質、重合性単量体の定量方法(ヘッドスペース法)について説明する。
【0056】
本発明に係るヘッドスペース法とは、トナーを開閉容器中に封入し、複写機等の熱定着時程度に加温し、容器中に揮発成分が充満した状態で速やかに容器中のガスをガスクロマトグラフに注入し、質量分析を行って化合物の同定を行いながら、揮発成分量を測定するというものである。バインダー樹脂由来の不純物や微量の添加物量を測定する方法としては、溶媒によりバインダー樹脂またはトナーを溶解して、ガスクロマトグラフに注入する方法も良く知られているが、この方法では溶媒のピークに不純物や測定しようとする微量の添加物成分のピークが隠れてしまうことがあり、トータルの揮発性成分量を測定するには、上記のヘッドスペース法を適用することが好ましい。また、ヘッドスペース法ではガスクロマトグラフにより、揮発成分の全ピークを観測することを可能にするとともに、電磁気的相互作用を利用した分析方法を用いることによって、高精度で揮発性物質や重合性単量体等の定量化をも併せて実施することが出来る。
【0057】
《ヘッドスペース法による測定条件》
以下に、ヘッドスペース法による測定を詳細に説明する。
【0058】
(測定方法)
1.試料の採取
20mlヘッドスペース用バイアルに0.8gの試料を採取する。試料量は、0.01gまで秤量する(単位質量あたりの面積を算出するのに必要)。専用クリンパーを用いてバイアルをセプタムを用いてシールする。
【0059】
2.試料の加温
170℃の恒温槽に試料を立てた状態で入れ、30分間加温する。
【0060】
3.ガスクロマトグラフィ分離条件の設定
質量比で15%になるようにシリコンオイルSE−30でコーティングした担体を内径3mm、長さ3mのカラムに充填したものを分離カラムとして用いる。該分離カラムをガスクロマトグラフに装着し、Heをキャリアーとして、50ml/分で流す。分離カラムの温度を40℃にして3分間保持し、その後、10℃/分で200℃まで昇温させ、200℃到達後5分間保持し測定する。
【0061】
4.試料の導入
バイアルビンを恒温槽から取り出し、直ちにガスタイトシリンジで1mlを注入する。
【0062】
5.計算
(揮発性物質の測定方法)
基準サンプルとして、n−ヘキサンとn−ヘキサデカンを予め測定し、各々のピークの検出時間を確認する。その後、サンプルの測定を実施し、n−ヘキサンのピーク検出時間からn−ヘキサデカンのピーク検出時間までに検出されるピークの総面積を、トルエン検量線にて換算し、算出された値を揮発性物質の全量と定義する。
【0063】
但し、算出に使用するピークは、1ピークあたりトルエン換算量で0.1ppm以上のピークとする。
【0064】
(重合性単量体の測定方法)
重合性単量体の測定は、各重合性単量体物質について予め作成した検量線を用いて、各々の定量値を算出する。
【0065】
6.装置構成としては、下記に記載の装置構成が好ましく用いられる。
(a)ヘッドスペース条件
ヘッドスペース装置:
HP7694 Head Space Sampler
(ヒューレットパッカード社製)
温度条件:
トランスファーライン:200℃
ループ温度 :200℃
サンプル量 :0.8g/20mlバイアル
(b)GC/MS条件
GC:HP5890(ヒューレットパッカード社製)
MS:HP5971(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−624(30m×0.25mm)
オーブン温度:
初期温度:40℃(保持時間3分)
昇温速度:10℃/分
到達温度:200℃(保持時間5分)
測定モード:SIM(セレクトイオンモニター)モード
《静電荷像現像用トナーの製造方法》
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法について説明する。
【0066】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法の特徴は、請求項5に記載のように、水系媒体中で上記記載の重合性単量体と、該重合性単量体全体のモル数に対して、前記一般式(1)で表されるチオール化合物が0.05モル%〜2.0モル%添加された条件下で重合反応を行ない、結着樹脂粒子の分散液を調製する工程、次いで、該結着樹脂粒子を塩析、融着する工程を有することである。
【0067】
本発明においては、結着樹脂粒子を得る重合反応の実施に当たっては、1工程のみの重合反応工程で結着樹脂を得ても良いが、本発明では、後述するように、少なくとも2段階の重合反応工程を経て、複合結着樹脂を作製する、いわゆる、多段階重合反応を用いて、最終的に得られたトナーが好ましく用いられる。
【0068】
《チオール化合物》
本発明に係るチオール化合物について説明する。
【0069】
上記記載の問題点を解決するために、本発明者等は従来公知の連鎖移動剤として用いられているチオール化合物の構造、特に、メルカプト基と結合する置換基に着目し検討した結果、好ましいチオール化合物の構造を見出し、また、前記連鎖移動剤の炭素数と重合性単量体の炭素数とに下記のような相関があることがわかった。
【0070】
(チオール化合物の構造)
チオール化合物の構造としては、従来公知のアルキル基を有するチオール化合物の中で、分岐構造を有するものよりも、直鎖のアルキル基を有するものが好ましいことが判った。また、本発明に記載の効果、即ち、結着樹脂の分子量制御、得られたトナーに良好な帯電性を付与し、且つ、現像定着時の臭気問題を解決するためには、前記一般式(1)で表される、炭素数5〜10の直鎖アルキル基を有するチオール化合物の製造時の使用、並びに、得られたトナー中に前記チオール化合物が存在していることが必須要件である。
【0071】
本発明に係る、炭素数5〜10の直鎖アルキル基を有するチオール化合物とは、具体的には、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオールである。
【0072】
本発明に係る、一般式(1)で表されるチオール化合物のアルキル基の炭素数Aと、重合性単量体中の炭素数B(ここで、重合性単量体が混合物の場合には、前記重合性単量体の最も長鎖を形成する基の炭素数をBとする)と定義すると、前記炭素数Aと前記炭素数Bの比(A/B)は1を超え2.5以下であることが好ましく、更に好ましくは、2〜2.5の範囲である。
【0073】
上記の範囲が好ましい理由は明らかではないが、連鎖移動した後、重合性単量体の反応時において、生成した重合体の末端に前記チオール化合物に由来する原子群が存在するときに、重合性単量体由来の原子群との炭素数との差がない方が、最終的に得られたトナーの帯電量の安定性が向上するためと推定している。
【0074】
(チオール化合物の添加量)
本発明の静電荷像現像用トナーを重合性単量体の重合反応により作製する際に用いられるチオール化合物の添加量としては、重合性単量体全モル数に対して0.05モル%〜2.0モル%であることが好ましく、更に好ましくは、0.1モル%〜1.0モル%の範囲である。
【0075】
(チオール化合物の添加方法)
前記一般式(1)で表されるチオール化合物は、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法においては、具体的には、連鎖移動剤として用いられる。
【0076】
(a)本発明に係る結着樹脂を1段階の重合反応工程で作製する場合には、前記チオール化合物の添加方法は、重合性単量体と反応前に添加した混合液の状態で用いてもよく、重合反応が始まってから添加してもよく、また、水系媒体中に添加するなど、特に添加方法は限定されない。
【0077】
(b)本発明に係る結着樹脂を、後述する多段階重合反応工程で作製する場合には、請求項6に記載のように、本発明に係るチオール化合物は水系媒体中に添加することが好ましく、更には、請求項7に記載のように、第1回目の重合反応工程以降に、水系媒体中に添加することが好ましい。
【0078】
また、添加方法としては、一括添加、滴下、分割方法があるが、好ましくは滴下もしくは分割方法が良い。
【0079】
(多段階重合反応工程による複合結着樹脂の作製)
本発明のトナーは、着色剤の不存在下において複合樹脂粒子を形成し、当該複合樹脂粒子の分散液に着色剤粒子の分散液を加え、当該複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析、凝集、融着させることにより調製されることが好ましい。
【0080】
このように、複合樹脂粒子の調製を着色剤の存在しない系で行うことにより、複合樹脂粒子を得るための重合反応が阻害されることない。このため、本発明のトナーによれば、優れた耐オフセット性が損なわれることはなく、トナーの蓄積による定着装置の汚染や画像汚れを発生させることはない。
【0081】
また、複合樹脂粒子を得るための重合反応が確実に行われる結果、得られるトナー粒子中に単量体やオリゴマーが残留するようなことはなく、当該トナーを使用する画像形成方法の熱定着工程において、異臭を発生させることはない。
【0082】
さらに、得られるトナー粒子の表面特性は均質であり、帯電量分布もシャープとなるため、鮮鋭性に優れた画像を長期にわたり形成することができる。
【0083】
本発明のトナーを構成する「複合樹脂粒子」とは、樹脂からなる核粒子の表面を覆うように、当該核粒子を形成する樹脂とは分子量および/または組成の異なる樹脂からなる1または2以上の被覆層が形成されている多層構造の樹脂粒子をいうものとする。
【0084】
また、複合樹脂粒子の「中心部(核)」とは、複合樹脂粒子を構成する「核粒子」をいう。
【0085】
また、複合樹脂粒子の「外層(殻)」とは、複合樹脂粒子を構成する「1または2以上の被覆層」のうち最外層をいう。
【0086】
また、複合樹脂粒子の「中間層」とは、中心部(核)と外層(殻)の間に形成される被覆層をいうものとする。
【0087】
複合樹脂粒子の分子量分布は単分散ではなく、また、複合樹脂粒子は、通常、その中心部(核)から外層(殻)にかけて分子量勾配を有している。
【0088】
本発明において、複合樹脂粒子を得るために「多段重合法」を用いることが、分子量分布制御の観点から、すなわち定着強度、耐オフセット性を確保する観点から好ましい。本発明において、複合樹脂粒子を得るための「多段重合法」とは、単量体(n)を重合処理(第n段)して得られた樹脂粒子(n)の存在下に、単量体(n+1)を重合処理(第n+1段)して、当該樹脂粒子(n)の表面に、単量体(n+1)の重合体(樹脂粒子(n)の構成樹脂とは分散および/または組成の異なる樹脂)からなる被覆層(n+1)を形成する方法を示す。
【0089】
ここに、樹脂粒子(n)が核粒子である場合(n=1)には、「二段重合法」となり、樹脂粒子(n)が複合樹脂粒子である場合(n≧2)には、三段以上の多段重合法となる。
【0090】
多段重合法によって得られる複合樹脂粒子中には、組成および/または分子量が異なる複数の樹脂が存在することになる。従って、当該複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析、凝集、融着させることにより得られるトナーは、トナー粒子間において、組成・分子量・表面特性のバラツキがきわめて小さい。
【0091】
このようなトナー粒子間における組成・分子量・表面特性が均質であるトナーによれば、接触加熱方式による定着工程を含む画像形成方法において、画像支持体に対する良好な接着性(高い定着強度)を維持しながら、耐オフセット性および巻き付き防止特性の向上を図ることができ、適度の光沢を有する画像を得ることができる。
【0092】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法の一例を具体的に示すと、
(1)離型剤及び/又は結晶性ポリエステルが、最外層以外の領域(中心部または中間層)に含有されるように調製された複合樹脂粒子を得るための多段重合工程(I)、
(2)複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析、凝集、融着させてトナー粒子を得る塩析、凝集、融着する工程(II)、
(3)トナー粒子の分散系からトナー粒子を濾別し、トナー粒子から界面活性剤などを除去する濾過、洗浄工程、
(4)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程、
(5)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程から構成される。
【0093】
以下、各工程について説明する。
《多段重合工程(I)》
多段重合工程(I)は、樹脂粒子(n)の表面に、単量体(n+1)の重合体からなる被覆層(n+1)を形成する多段重合法により、複合樹脂粒子を製造する工程である。ここで、製造の安定性、および得られるトナーの破砕強度の観点から三段重合以上の多段重合法を採用することが好ましい。
【0094】
以下に、多段重合法の代表例である二段重合法および三段重合法について説明する。
【0095】
《二段重合法の説明》
二段重合法は、離型剤を含有する高分子量樹脂から形成される中心部(核)と、低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。すなわち、二段重合法で得られる複合樹脂粒子は核と一層の被覆層から構成される。
【0096】
この方法を具体的に説明すると、先ず、離型剤を単量体(H)に溶解させて得られた単量体溶液を水系媒体(界面活性剤の水溶液)中に油滴分散させた後、この系を重合処理(第1段重合)することにより、離型剤を含有する高分子量の樹脂粒子(H)の分散液を調製する。
【0097】
次いで、この樹脂粒子(H)の分散液に、重合開始剤と、低分子量樹脂を得るための単量体(L)とを添加し、当該樹脂粒子(H)の存在下に単量体(L)を重合処理(第二段重合)することにより、当該樹脂粒子(H)の表面に、低分子量の樹脂(単量体(L)の重合体)からなる被覆層(L)を形成する。
【0098】
《三段重合法の説明》
三段重合法は、高分子量樹脂から形成される中心部(核)と、離型剤を含有する中間層と、低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。すなわち、三段重合法で得られる複合樹脂粒子は核と2層の被覆層から構成される。
【0099】
この方法を具体的に説明すると、先ず、常法に従った重合処理(第1段重合)により得られた樹脂粒子(H)の分散液を、水系媒体(界面活性剤の水溶液)に添加するとともに、当該水系媒体中に、離型剤を単量体(M)に溶解させてなる単量体溶液を油滴分散させた後、この系を重合処理(第二段重合)することにより、当該樹脂粒子(H)(核粒子)の表面に、離型剤を含有する樹脂(単量体(M)の重合体)からなる被覆層(M)(中間層)を形成してなる複合樹脂粒子〔高分子量樹脂(H)−中間分子量樹脂(M)〕の分散液を調製する。
【0100】
次いで、得られた複合樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と、低分子量樹脂を得るための単量体(L)とを添加し、当該複合樹脂粒子の存在下に単量体(L)を重合処理(第三段重合)することにより、当該複合樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体(L)の重合体)からなる被覆層(L)を形成する。
【0101】
この三段重合法において、樹脂粒子(H)の表面に被覆層(M)を形成する際に、当該樹脂粒子(H)の分散液を水系媒体(界面活性剤の水溶液)に添加するとともに、当該水系媒体中に、離型剤を単量体(M)に溶解させてなる単量体溶液を油滴分散させた後、この系を重合処理(第二段重合)する方法を採用することにより、離型剤を微細かつ均一に分散させることができる。
【0102】
尚、樹脂粒子(H)の分散液の添加処理および、単量体溶液の油滴分散処理については、下記に記載のように何れを先行して実施してもよいし、同時に行ってもよい。
【0103】
(a)複合樹脂粒子を構成する中間層を形成する際に、複合樹脂粒子の中心部(核)となる樹脂粒子を界面活性剤の水溶液中に添加した後、当該水溶液中に、離型剤/結晶性ポリエステルを含有する単量体組成物を分散させ、この系を重合処理する態様、
(b)複合樹脂粒子を構成する中間層を形成する際に、離型剤/結晶性ポリエステルを含有する単量体組成物を界面活性剤の水溶液中に分散させた後、当該水溶液中に、複合樹脂粒子の中心部(核)となる樹脂粒子を添加し、この系を重合処理する態様、
(c)複合樹脂粒子を構成する中間層を形成する際に、複合樹脂粒子の中心部(核)となる樹脂粒子を界面活性剤の水溶液中に添加すると同時に、当該水溶液中に、離型剤/結晶性ポリエステルを含有する単量体組成物を分散させ、この系を重合処理する態様が含まれる。
【0104】
離型剤を含有する樹脂粒子(核粒子)または被覆層(中間層)を形成する方法としては、離型剤を単量体に溶解させ、得られる単量体溶液を水系媒体中に油滴分散させ、この系を重合処理することにより、ラテックス粒子として得る方法を採用することができる。
【0105】
ここで、「水系媒体」とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0106】
離型剤を含有する樹脂粒子または被覆層を形成するために好適な重合法としては、臨界ミセル濃度以下の濃度の界面活性剤を溶解してなる水系媒体中に、離型剤を単量体に溶解してなる単量体溶液を、機械的エネルギーを利用して油滴分散させて分散液を調製し、得られた分散液に水溶性重合開始剤を添加して、油滴内でラジカル重合させる方法(以下、「ミニエマルジョン法」という)を挙げることができる。なお、水溶性重合開始剤を添加することに代えて、または、当該水溶性重合開始剤を添加するとともに、油溶性の重合開始剤を前記単量体溶液中に添加してもよい。
【0107】
機械的に油滴を形成するミニエマルジョン法によれば、通常の乳化重合法とは異なり、油相に溶解させた離型剤が脱離することがなく、形成される樹脂粒子または被覆層内に十分な量の離型剤を導入することができる。
【0108】
ここに、機械的エネルギーによる油滴分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリンおよび圧力式ホモジナイザーなどを挙げることができる。また、分散粒子径としては、10〜1000nmとされ、好ましくは50〜1000nm、更に好ましくは30〜300nmとされる。
【0109】
尚、離型剤を含有する樹脂粒子または被覆層を形成するための重合法として、乳化重合法、懸濁重合法、シード重合法などの公知の方法を採用することもできる。また、これらの重合法は、複合樹脂粒子を構成する樹脂粒子(核粒子)または被覆層であって、離型剤及び結晶性ポリエステルを含有しないものを得るためにも採用することができる。
【0110】
この重合工程(I)で得られる複合樹脂粒子の粒子径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定される重量平均粒径で10〜1000nmの範囲にあることが好ましい。
【0111】
また、複合樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は48〜74℃の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは52〜64℃である。複合樹脂粒子の軟化点は95〜140℃の範囲にあることが好ましい。
【0112】
《塩析、凝集、融着する工程(II)》
この塩析、凝集、融着する工程(II)は、多段重合工程(I)によって得られた複合樹脂粒子と、着色剤粒子とを塩析、凝集、融着させる(塩析と融着とを同時に起こさせる)ことによって、不定形(非球形)のトナー粒子を得る工程である。
【0113】
この塩析、凝集、融着する工程(II)においては、複合樹脂粒子および着色剤粒子とともに、荷電制御剤などの内添剤粒子(数平均一次粒子径が10〜1000nm程度の微粒子)を塩析、凝集、融着させてもよい。
【0114】
着色剤粒子は、表面改質されていてもよい。ここに、表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができる。
【0115】
着色剤粒子は、水性媒体中に分散された状態で塩析、凝集、融着処理に供される。着色剤粒子が分散される水性媒体は、臨界ミセル濃度(CMC)以上の濃度で界面活性剤が溶解されている水溶液を挙げることができる。
【0116】
ここに界面活性剤としては、多段重合工程(I)で使用した界面活性剤と同一のものを使用することができる。
【0117】
着色剤粒子の分散処理に使用する分散機は特に限定されないが、好ましくは、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、ゲッツマンミル、ダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。
【0118】
複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析、凝集、融着させるためには、複合樹脂粒子および着色剤粒子が分散している分散液中に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を添加するとともに、この分散液を、複合樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以上に加熱することが好ましい。
【0119】
更に好ましくは、凝集剤により複合樹脂粒子が所望の粒径に達した段階で凝集停止剤が用いられる。その凝集停止剤としては、1価の金属塩、中でも塩化ナトリウムが好ましく用いられる。
【0120】
塩析、凝集、融着させるために好適な温度範囲としては、(Tg+10)〜(Tg+50℃)とされ、特に好ましくは(Tg+15)〜(Tg+40℃)とされる。また、融着を効果的に行なわせるために、水に無限溶解する有機溶媒を添加してもよい。
【0121】
ここに、塩析、凝集、融着の際に使用する「凝集剤」としては、前述のようなアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩を挙げることができる。
【0122】
本発明に係る塩析、凝集について説明する。
本発明において、「塩析、凝集、融着」するとは、塩析(粒子の凝集)と融着(粒子間の界面消失)とが同時に起こること、または、塩析と融着とを同時に起こさせる行為をいう。
【0123】
塩析と融着とを同時に行わせるためには、複合樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度条件下において粒子(複合樹脂粒子、着色剤粒子)を凝集させることが好ましい。
【0124】
本発明の静電荷像現像用トナーは、着色剤の不存在下において複合樹脂粒子を形成し、当該複合樹脂粒子の分散液に着色剤粒子の分散液を加え、当該複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析、凝集、融着させることにより調製されることが好ましい。
【0125】
このように、複合樹脂粒子の調製を着色剤の存在しない系で行うことにより、複合樹脂粒子を得るための重合反応が阻害されることない。このため、本発明のトナーによれば、優れた耐オフセット性が損なわれることはなく、トナーの蓄積による定着装置の汚染や画像汚れを発生させることはない。
【0126】
また、複合樹脂粒子を得るための重合反応が確実に行われる結果、得られるトナー粒子中に単量体やオリゴマーが残留するようなことはなく、当該トナーを使用する画像形成方法の熱定着工程において、異臭を発生させることはない。
【0127】
さらに、得られるトナー粒子の表面特性は均質であり、帯電量分布もシャープとなるため、鮮鋭性に優れた画像を長期にわたり形成することができる。このようなトナー粒子間における組成・分子量・表面特性が均質であるトナーによれば、接触加熱方式による定着工程を含む画像形成方法において、画像支持体に対する良好な接着性(高い定着強度)を維持しながら、耐オフセット性および巻き付き防止特性の向上を図ることができ、適度の光沢を有する画像を得ることができる。
【0128】
本発明の静電荷像現像用トナーは下記のような連鎖移動剤の存在下に作製されてもよい。
【0129】
(連鎖移動剤)
例えば、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのメルカプト基を有する化合物、ネオペンチルグリコールのメルカプト基を有する化合物、ペンタエリストールのメルカプト基を有する化合物等が挙げられる。
【0130】
本発明のトナーに用いられる離型剤について説明する。
本発明の静電荷像現像用トナーを構成する離型剤の含有割合としては、通常1〜30質量%とされ、好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは3〜15質量%とされる。
【0131】
離型剤は低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=1500〜9000)や低分子量ポリエチレン等を添加してもよく、好ましい離型剤は下記一般式で表されるエステル系化合物が好ましい。
【0132】
一般式
R1−(OCO−R2)n
式中、nは1〜4の整数を表し、好ましくは2〜4、更に好ましくは3〜4であり、特に好ましくは4である。
【0133】
R1、R2は置換基を有しても良い炭化水素基を示す。
R1:炭素数=1〜40、好ましくは1〜20、更に好ましくは2〜5
R2:炭素数=1〜40、好ましくは16〜30、更に好ましくは18〜26
以下に、上記一般式で表されるエステル化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0134】
【化1】
【0135】
【化2】
【0136】
上記記載の離型剤、一般式で表される定着改良剤の添加量としては、静電荷像現像用トナー全体に1質量%〜30質量%、好ましくは2質量5〜20質量%、さらに好ましくは3質量%〜15質量%である。
【0137】
本発明の静電荷像現像用トナーを構成する樹脂成分の好ましい分子量、分子量範囲、ピーク分子量等について説明する。
【0138】
本発明のトナーは、GPC測定において、分子量5,000〜30,000の範囲にピークを有し、且つ、分子量分布(Mw/Mn)が2〜10であることが好ましい。また、分子量分布としては更に好ましくは、2〜5である。
【0139】
本発明では、GPC測定における前記ピークは、IR検出器を用いた測定チャートのピークトップ値(MOL)で表される。また、分子量分布(Mw/Mn)は、IR検出器を用いて得られる測定チャートのピークの中でトナー成分のピーク全体(但し、カラム溶媒は除く)のMw/Mnで表される。
【0140】
上記の分子量の測定は、THF(テトラヒドロフラン)をカラム溶媒として用いるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて分子量測定を行う。
【0141】
具体的には、測定試料を1mgに対してTHFを1ml加え、室温下にてマグネチックスターラーを用いて撹拌を行い、充分に溶解させる。ついで、ポアサイズ0.45〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPCへ注入する。GPCの測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THFを毎分1mlの流速で流し、1mg/mlの濃度の試料を約100μl注入して測定する。カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、TSK guard columnの組合せなどをあげることができる。
【0142】
検出器としては、屈折率検出器(IR検出器)、あるいはUV検出器が好ましく用いられる。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いることが好ましい。
【0143】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造に係る、濾過・洗浄工程について説明する。
【0144】
この濾過・洗浄工程では、上記の工程で得られたトナー粒子の分散系からトナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や凝集剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。
【0145】
ここに、濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
【0146】
《乾燥工程》
この工程は、洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程である。
【0147】
この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0148】
乾燥処理されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。
【0149】
尚、乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
【0150】
本発明に係る重合性単量体について説明する。
(1)疎水性単量体
単量体成分を構成する疎水性単量体としては、特に限定されるものではなく従来公知の単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
【0151】
具体的には、モノビニル芳香族系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等を用いることができる。
【0152】
ビニル芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体およびその誘導体が挙げられる。
【0153】
アクリル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0154】
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
【0155】
ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0156】
モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
【0157】
ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0158】
(2)架橋性単量体
樹脂粒子の特性を改良するために架橋性単量体を添加しても良い。架橋性単量体としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
【0159】
(3)酸性極性基を有する単量体
酸性極性基を有する単量体としては、(a)カルボキシル基(−COOH)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物及び(b)スルホン基(−SO3H)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。
【0160】
(a)の−COO基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル、およびこれらのNa、Zn等の金属塩類等を挙げることができる。
【0161】
(b)スルホ基(−SO3H基)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としてはスルホン化スチレン、そのNa塩、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチル、そのNa塩等を挙げることができる。
【0162】
本発明に係る重合性単量体の重合に用いられる開始剤(重合開始剤ともいう)について説明する。
【0163】
本発明に用いられる重合開始剤は水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物等が挙げられる。
【0164】
更に上記重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合わせレドックス系開始剤とする事が可能である。レドックス系開始剤を用いる事で、重合活性が上昇し重合温度の低下が図れ、更に重合時間の短縮が期待できる。
【0165】
重合温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であればどの温度を選択しても良いが、例えば50℃から80℃の範囲が用いられる。又、常温開始の重合開始剤、例えば過酸化水素−還元剤(アスコルビン酸等)の組み合わせを用いる事で室温またはそれに近い温度で重合する事も可能である。
【0166】
本発明に用いられる連鎖移動剤について説明する。
本発明においては、重合性単量体が重合して生成する樹脂粒子の分子量を調整することを目的として、従来公知の一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることが可能である。
【0167】
連鎖移動剤としては、上記記載の、本発明に係るチオール化合物を用いることが好ましい。
【0168】
また、チオール化合物の他には、例えば、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのチオグリコール酸エステル、ネオペンチルグリコールのチオグリコール酸エステル、ペンタエリスリトールのチオグリコール酸エステル等を必要に応じて併用してもよい。
【0169】
中でも、トナー加熱定着時の臭気を抑制する観点から、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステルが好ましく用いられる。
【0170】
本発明に係る着色剤について説明する。
本発明の静電荷像現像用トナーに係る着色剤は、トナーの帯電の均一性向上の観点から、トナー製造時、上記記載の複合樹脂粒子の塩析、凝集、融着時に樹脂粒子と共に塩析、凝集、融着され、トナー粒子中に含有されることが好ましい。
【0171】
本発明のトナーを構成する着色剤(複合樹脂粒子との塩析、凝集、融着に供される着色剤粒子)としては、各種の無機顔料、有機顔料、染料を挙げることができる。無機顔料としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な無機顔料を以下に例示する。
【0172】
黒色の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0173】
これらの無機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0174】
磁性トナーとして使用する際には、前述のマグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、トナー中に20〜120質量%添加することが好ましい。
【0175】
有機顔料及び染料としても従来公知のものを用いることができる。具体的な有機顔料及び染料を以下に例示する。
【0176】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0177】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156等が挙げられる。
【0178】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0179】
また、染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いる事ができ、またこれらの混合物も用いる事ができる。
【0180】
これらの有機顔料及び染料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0181】
本発明の静電荷像現像用トナーを構成する着色剤(着色剤粒子)は、表面改質されていてもよい。ここに、表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を好ましく用いることができる。
【0182】
シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のアルコキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等のシロキサン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0183】
チタンカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクト」と称する商品名で市販されているTTS、9S、38S、41B、46B、55、138S、238S等、日本曹達社製の市販品A−1、B−1、TOT、TST、TAA、TAT、TLA、TOG、TBSTA、A−10、TBT、B−2、B−4、B−7、B−10、TBSTA−400、TTS、TOA−30、TSDMA、TTAB、TTOP等が挙げられる。
【0184】
アルミニウムカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクトAL−M」等が挙げられる。
【0185】
これらの表面改質剤の添加量は、着色剤に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%〜5質量%とされる。
【0186】
着色剤粒子の表面改質法としては、着色剤粒子の分散液中に表面改質剤を添加し、この系を加熱して反応させる方法を挙げることができる。
【0187】
表面改質された着色剤粒子は、濾過により採取され、同一の溶媒による洗浄処理と濾過処理が繰り返された後、乾燥処理される。
【0188】
本発明のトナーを構成するトナー粒子には、荷電制御剤など、離型剤以外の内添剤が含有されていてもよい。
【0189】
トナー粒子中に含有される荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩またはその金属錯体等が挙げられる。
【0190】
本発明のトナーに用いられる外添剤について説明する。
外添剤として使用できる無機微粒子としては、従来公知のものを挙げることができる。具体的には、シリカ微粒子、チタン微粒子、アルミナ微粒子等を好ましく用いることができる。これら無機微粒子は疎水性であることが好ましい。
【0191】
シリカ微粒子の具体例としては、日本アエロジル(株)製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト(株)製のHVK−2150、H−200、キャボット(株)製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
【0192】
チタン微粒子の具体例としては、例えば、日本アエロジル(株)製の市販品T−805、T−604、テイカ(株)製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン(株)製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産(株)製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
【0193】
アルミナ微粒子の具体例としては、例えば、日本アエロジル(株)製の市販品RFY−C、C−604、石原産業(株)製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0194】
外添剤として使用できる有機微粒子としては、数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の微粒子を挙げることができる。かかる有機微粒子の構成材料としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体などのを挙げることができる。
【0195】
外添剤として使用できる滑剤としては、高級脂肪酸の金属塩を挙げることができる。かかる高級脂肪酸の金属塩の具体例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸銅、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩;オレイン酸亜鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸鉄、オレイン酸銅、オレイン酸マグネシウム等のオレイン酸金属塩;パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム等のパルミチン酸金属塩;リノール酸亜鉛、リノール酸カルシウム等のリノール酸金属塩;リシノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウムなどのリシノール酸金属塩等が挙げられる。
【0196】
外添剤の添加量としては、トナーに対して0.1〜5質量%程度であることが好ましい。
【0197】
外添剤の添加工程に着いて説明する。
この工程は、乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程である。
【0198】
外添剤を添加するために使用される装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシエルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を挙げることができる。
【0199】
本発明の静電荷像現像用トナーの粒径について説明する。
本発明のトナーの粒径は、個数平均粒径で3μm〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは3μm〜8μmの範囲である。この粒径は、後に詳述するトナーの製造方法において、凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成によって制御することができる。
【0200】
個数平均粒径が3μm〜10μmであることにより、定着工程において、飛翔して加熱部材に付着しオフセットを発生させる付着力の大きいトナー微粒子が少なくなり、また、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
【0201】
トナーの個数平均粒径は、コールターカウンターTA−II、コールターマルチサイザー、SLAD1100(島津製作所社製レーザ回折式粒径測定装置)等を用いて測定することができる。
【0202】
本発明においては、コールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェース(日科機製)、パーソナルコンピューターを接続して使用した。前記コールターマルチサイザーにおけるアパーチャーとしては100μmのものを用いて、2μm以上(例えば2μm〜40μm)のトナーの体積分布を測定して粒度分布および平均粒径を算出した。
【0203】
また、粒度分布の分散度としては、10〜25の範囲が好ましい。
(CV値:粒度分布の分散度)
ここで、粒度分布について、CV値とは粒度分布の分散度を表した値であり、以下の式によって定義される数値であり、この値が小さい程、粒度分布がシャープである事を示す。
【0204】
また、ここで議論している粒度分布測定には、レーザ回折式粒子径測定装置SALD−1100(株式会社島津製作所製)により測定を行ったものである。
【0205】
CV=σ50/d50
d50:粒度分布の50%径(体積基準)
σ50:d50を基準としたときの標準偏差
(トナー粒子の形状係数)
本発明のトナー粒子の形状係数について説明する。
【0206】
本発明のトナーの形状係数は、下記式により示されるものであり、トナー粒子の丸さの度合いを示す。
【0207】
形状係数=((最大径/2)2×π)/投影面積
ここに、最大径とは、トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。また、投影面積とは、トナー粒子の平面上への投影像の面積をいう。
【0208】
本発明では、この形状係数は、走査型電子顕微鏡により2000倍にトナー粒子を拡大した写真を撮影し、ついでこの写真に基づいて「SCANNING IMAGE ANALYZER」(日本電子社製)を使用して写真画像の解析を行うことにより測定した。この際、100個のトナー粒子を使用して本発明の形状係数を上記算出式にて測定したものである。
【0209】
前記構成の(1)および(9)においては、この形状係数が1.0〜1.6の範囲にあるトナー粒子が65個数%以上とすることが好ましく、より好ましくは、70個数%以上である。さらに好ましくは、この形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子が65個数%以上とすることであり、より好ましくは、70個数%以上である。
【0210】
この形状係数が1.0〜1.6の範囲にあるトナー粒子が65個数%以上であることにより、現像剤搬送部材などでの摩擦帯電性がより均一となり、過度に帯電したトナーの蓄積が無く、現像剤搬送部材表面よりトナーがより交換しやすくなるために、現像ゴースト等の問題も発生しにくくなる。さらに、トナー粒子が破砕しにくくなって帯電付与部材の汚染が減少し、トナーの帯電性が安定する。
【0211】
また、前記構成の(16)においては、この形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子が65個数%以上とすることが必要であり、好ましくは、70個数%以上である。
【0212】
この形状係数を制御する方法は特に限定されるものではない。例えばトナー粒子を熱気流中に噴霧する方法、またはトナー粒子を気相中において衝撃力による機械的エネルギーを繰り返して付与する方法、あるいはトナーを溶解しない溶媒中に添加し旋回流を付与する方法等により、形状係数を1.0〜1.6、または1.2〜1.6にしたトナーを調製し、これを通常のトナー中へ本発明の範囲内になるように添加して調整する方法がある。また、いわゆる重合法トナーを調整する段階で全体の形状を制御し、形状係数を1.0〜1.6、または1.2〜1.6に調整したトナーを同様に通常のトナーへ添加して調整する方法がある。
【0213】
本発明のトナーとしては、トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおいて、最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であるトナーであることが好ましい。
【0214】
相対度数(m1)と相対度数(m2)との和(M)が70%以上であることにより、トナー粒子の粒度分布の分散が狭くなるので、当該トナーを画像形成工程に用いることにより選択現像の発生を確実に抑制することができる。
【0215】
本発明において、前記の個数基準の粒度分布を示すヒストグラムは、自然対数lnD(D:個々のトナー粒子の粒径)を0.23間隔で複数の階級(0〜0.23:0.23〜0.46:0.46〜0.69:0.69〜0.92:0.92〜1.15:1.15〜1.38:1.38〜1.61:1.61〜1.84:1.84〜2.07:2.07〜2.30:2.30〜2.53:2.53〜2.76・・・)に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムであり、このヒストグラムは、下記の条件に従って、コールターマルチサイザーにより測定されたサンプルの粒径データを、I/Oユニットを介してコンピュータに転送し、当該コンピュータにおいて、粒度分布分析プログラムにより作成されたものである。
【0216】
《測定条件》
(1)アパーチャー:100μm
(2)サンプル調製法:電解液〔ISOTON R−11(コールターサイエンティフィックジャパン社製)〕50〜100mlに界面活性剤(中性洗剤)を適量加えて攪拌し、これに測定試料10〜20mgを加える。この系を超音波分散機にて1分間分散処理することにより調製する。
【0217】
本発明に係る『角のないトナー粒子』について図1を用いて説明する。
本発明に係るトナーにおいては、トナーを構成するトナー粒子中、角がないトナー粒子の割合は50個数%以上であることが好ましく、更に好ましくは、70個数%以上である。
【0218】
角がないトナー粒子の割合が50個数%以上であることにより、転写されたトナー層(粉体層)の空隙が減少して定着性が向上し、オフセットが発生しにくくなる。また、摩耗、破断しやすいトナー粒子および電荷の集中する部分を有するトナー粒子が減少することとなり、帯電量分布がシャープとなって、帯電性も安定し、良好な画質を長期にわたって形成できる。
【0219】
ここに、「角がないトナー粒子」とは、電荷の集中するような突部またはストレスにより摩耗しやすいような突部を実質的に有しないトナー粒子を言い、具体的には以下のトナー粒子を角がないトナー粒子という。すなわち、図1(a)に示すように、トナー粒子Tの長径をLとするときに、半径(L/10)の円Cで、トナー粒子Tの周囲線に対し1点で内側に接しつつ内側をころがした場合に、当該円CがトナーTの外側に実質的にはみださない場合を「角がないトナー粒子」という。「実質的にはみ出さない場合」とは、はみ出す円が存在する突起が1箇所以下である場合をいう。また、「トナー粒子の長径」とは、当該トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。なお、図1(b)および(c)は、それぞれ角のあるトナー粒子の投影像を示している。
【0220】
角がないトナー粒子の割合の測定は次のようにして行った。先ず、走査型電子顕微鏡によりトナー粒子を拡大した写真を撮影し、さらに拡大して15,000倍の写真像を得る。次いでこの写真像について前記の角の有無を測定する。この測定を100個のトナー粒子について行った。
【0221】
角がないトナーを得る方法は特に限定されるものではない。例えば、形状係数を制御する方法として前述したように、トナー粒子を熱気流中に噴霧する方法、またはトナー粒子を気相中において衝撃力による機械的エネルギーを繰り返して付与する方法、あるいはトナーを溶解しない溶媒中に添加し、旋回流を付与することによって得ることができる。
【0222】
本発明に用いられる現像剤について説明する。
本発明のトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよい。
【0223】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものがあげられ、いずれも使用することができる。
【0224】
また、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0225】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0226】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0227】
本発明の画像形成方法について説明する。
本発明のトナーは、トナー像が形成された画像形成支持体を、定着装置を構成する加熱ローラと加圧ローラとの間に通過させて熱定着する工程を含む画像形成方法(本発明の画像形成方法)に好適に使用される。
【0228】
図2は、本発明の画像形成方法において使用する定着装置の一例を示す断面図であり、図2に示す定着装置は、加熱ローラ100と、これに当接する加圧ローラ200とを備えている。なお、図2において、Tは転写紙(画像形成支持体)上に形成されたトナー像である。
【0229】
加熱ローラ100は、フッ素樹脂または弾性体からなる被覆層120が芯金110の表面に形成されてなり、線状ヒーターよりなる加熱部材13を内包している。
【0230】
芯金110は、金属から構成され、その内径は10mm〜70mmとされる。芯金110を構成する金属としては特に限定されるものではないが、例えば鉄、アルミニウム、銅等の金属あるいはこれらの合金を挙げることができる。
【0231】
芯金110の肉厚は0.1mm〜15mmとされ、省エネルギーの要請(薄肉化)と、強度(構成材料に依存)とのバランスを考慮して決定される。例えば、0.57mmの鉄よりなる芯金と同等の強度を、アルミニウムよりなる芯金で保持するためには、その肉厚を0.8mmとする必要がある。
【0232】
被覆層120を構成するフッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)およびPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などを例示することができる。
【0233】
フッ素樹脂からなる被覆層120の厚みは10μm〜500μmとされ、好ましくは20μm〜400μmとされる。
【0234】
フッ素樹脂からなる被覆層120の厚みが10μm未満であると、被覆層としての機能を十分に発揮することができず、定着装置としての耐久性を確保することができない。一方、500μmを超える被覆層の表面には紙粉によるキズがつきやすく、当該キズ部にトナーなどが付着し、これに起因する画像汚れを発生する問題がある。
【0235】
また、被覆層120を構成する弾性体としては、LTV、RTV、HTVなどの耐熱性の良好なシリコーンゴムおよびシリコーンスポンジゴムなどを用いることが好ましい。
【0236】
被覆層120を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満とされ、好ましくは60°未満とされる。
【0237】
また、弾性体からなる被覆層120の厚みは0.1〜30mmとされ、好ましくは0.1〜20mmとされる。
【0238】
被覆層120を構成する弾性体のアスカーC硬度が80°を超える場合、および当該被覆層120の厚みが0.1mm未満である場合には、定着のニップを大きくすることができず、ソフト定着の効果(例えば、平滑化された界面のトナー層による色再現性の向上効果)を発揮することができない。
【0239】
加熱部材130としては、ハロゲンヒーターを好適に使用することができる。
加圧ローラ200は、弾性体からなる被覆層22が芯金21の表面に形成されてなる。被覆層220を構成する弾性体としては特に限定されるものではなく、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどの各種軟質ゴムおよびスポンジゴムを挙げることができ、被覆層120を構成するものとして例示したシリコーンゴムおよびシリコーンスポンジゴムを用いることが好ましい。
【0240】
被覆層220を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満とされ、好ましくは70°未満、更に好ましくは60°未満とされる。
【0241】
また、被覆層220の厚みは0.1〜30mmとされ、好ましくは0.1〜20mmとされる。
【0242】
被覆層220を構成する弾性体のアスカーC硬度が80°を超える場合、および被覆層220の厚みが0.1mm未満である場合には、定着のニップを大きくすることができず、ソフト定着の効果を発揮することができない。
【0243】
芯金210を構成する材料としては特に限定されるものではないが、アルミニウム、鉄、銅などの金属またはそれらの合金を挙げることができる。
【0244】
加熱ローラ100と加圧ローラ200との当接荷重(総荷重)としては、通常40N〜350Nとされ、好ましくは50N〜300N、さらに好ましくは50N〜250Nとされる。この当接荷重は、加熱ローラ100の強度(芯金110の肉厚)を考慮して規定され、例えば0.3mmの鉄よりなる芯金を有する加熱ローラにあっては、250N以下とすることが好ましい。
【0245】
また、耐オフセット性および定着性の観点から、ニップ幅としては4mm〜10mmであることが好ましく、当該ニップの面圧は0.6×105Pa〜1.5×105Paであることが好ましい。
【0246】
図2に示した定着装置による定着条件の一例を示せば、定着温度(加熱ローラ100の表面温度)が150℃〜210℃の範囲が好ましく、定着線速が80mm/秒〜640mm/秒の範囲が好ましい。
【0247】
本発明において使用する定着装置には、必要に応じてクリーニング機構を付与してもよい。この場合には、シリコーンオイルを定着部の上ローラ(加熱ローラ)に供給する方式として、シリコーンオイルを含浸したパッド、ローラ、ウェッブ等で供給し、クリーニングする方法が使用できる。
【0248】
シリコーンオイルとしては耐熱性の高いものが使用され、ポリジメチルシリコーン、ポリフェニルメチルシリコーン、ポリジフェニルシリコーン等が使用される。粘度の低いものは使用時に流出量が大きくなることから、20℃における粘度が1Pa・s〜100Pa・sのものが好適に使用される。
【0249】
但し、本発明による効果は、シリコーンオイルを供給しない、または、シリコーンオイルの供給量がきわめて低い定着装置により、画像を形成する工程を含む場合に特に顕著に発揮される。従って、シリコーンオイルを供給する場合であっても、その供給量は2mg/A4以下とすることが好ましい。
【0250】
シリコーンオイルの供給量を2mg/A4以下とすることにより、定着後の転写紙(画像支持体)に対するシリコーンオイルの付着量が少なくなり、転写紙へ付着したシリコーンオイルによるボールペン等の油性ペンの記入しずらさがなく、加筆性が損なわれることはない。
【0251】
また、シリコーンオイルの変質による耐オフセット性の経時的な低下、シリコーンオイルによる光学系や帯電極の汚染などの問題を回避することができる。
【0252】
ここに、シリコーンオイルの供給量は、所定温度に加熱した定着装置(ローラ間)に転写紙(A4サイズの白紙)を連続して100枚通過させ、通紙前後における定着装置の質量変化(Δw)を測定して算出される(Δw/100)。
【0253】
図3は、中間転写体(転写ベルト)を用いた、本発明の画像形成装置の一例を示す断面図である。
【0254】
図3において、カラー画像を得るため画像形成装置は、複数個の画像形成ユニットを備え、各画像形成ユニットにてそれぞれ色の異なる可視画像(トナー画像)を形成し、該トナー画像を同一中間転写体に順次重ねて転写するような画像形成方法である。
【0255】
ここでは、第1、第2、第3及び第4の画像形成ユニットPa、Pb、Pc及びPdが並設されており、該画像形成部はそれぞれ静電潜像形成体である感光体1a、1b、1c及び1dを具備している。感光体1a、1b、1c及び1dはその外周側に潜像形成部2a、2b、2c及び2d、現像部3a、3b、3c及び3d、転写放電部4a、4b、4c及び4d、クリーニング部材及びゴムブレードを有するクリーニング器5a、5b、5c及び5d、帯電器6a、6b、6c及び6dが配置するものである。
【0256】
この様な構成にて、先ず、第1画像形成ユニットPaの感光体1a上に潜像形成部2aによって原稿画像における、例えばイエロー成分色の潜像が形成される。該潜像は現像部3aのイエロートナーを含有する現像剤で可視画像とされ、転写放電部4aにて、転写ベルト21に転写される。
【0257】
一方、上記の様にイエロートナー画像が転写ベルト21に転写されている間に、第2画像形成ユニットPbではマゼンタ成分色の潜像が感光体1b上に形成され、続いて現像部3bでマゼンタトナーを含有する現像剤で可視画像とされる。この可視画像(マゼンタトナー画像)は、上記の第1画像形成ユニットPaでの転写が終了した転写ベルトが転写放電部4bに搬入されたときに、該転写ベルト21の所定位置に重ねて転写される。
【0258】
以下、上記と同様な方法により第3、第4の画像形成ユニットPc、Pdによりシアン成分色、ブラック成分色の画像形成が行われ、上記同一の転写ベルト上に、シアントナー画像、ブラックトナー画像が重ねて転写される。この様な画像形成プロセスが終了した時点で、転写ベルト21上に多色重ね合せ画像が得られる。一方、転写が終了した各感光体1a、1b、1c及び1dはクリーニング器5a、5b、5c及び5dにより残留トナーが除去され、引き続き行われる次の潜像形成のために供せられる。
【0259】
なお、前記画像形成装置では、転写ベルト21が用いられており、図7において、転写ベルト21は右側から左側へと搬送され、その搬送過程で、各画像形成ユニットPa、Pb、Pc及びPdにおける各転写放電部4a、4b、4c及び4dを通過し各色転写画像が転写される。
【0260】
転写ベルト21が第4画像形成ユニットPdを通過すると、AC電圧が分離除電放電器22dに加えられ、転写ベルト21は除電され、転写材Pにトナー像が一括転写される。その後転写材Pは定着装置23に入り、定着され、排出口25から排出され、カラー画像が得られる。
【0261】
なお、図中の22a、22b、22c及び22dは分離除電放電器であり、トナー像の転写を終えた転写ベルト21は、ブラシ状クリーニング部材とゴムブレードを併用したクリーニング器24により、転写残トナーがクリーニングされて、次の画像形成に備えられる。
【0262】
なお、前記の様に、搬送ベルトの如き長尺の転写ベルト21を用いて、その上に多色重ね合せ像を作り、それを転写材に一括転写する構成にしても、その画像形成ユニットにそれぞれ独立した転写ベルトを具備させ、それから転写材へ、順次各転写ベルトから転写する構成にしてもよい。
【0263】
尚、前記転写ベルトとしては、例えばポリイミド、ポリエーテル、ポリアミドあるいはテトラフルオロエチレン・パーフルオロビニルエーテル共重合体等の表面抵抗が1014Ω以上で、厚さ20μm程度の高抵抗フィルムの上に、フッ素系またはシリコン系樹脂に導電剤を添加して表面抵抗を105〜108Ωとした5〜15μm厚の離型層を設けてなるエンドレスフィルムが用いられる。
【0264】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0265】
実施例1
《第一段重合で調製したラテックス(1H)と着色粒子の作製例》
(ラテックス(1H)の調製):核粒子の形成:第一段重合
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000mlのセパラブルフラスコに、下記(101)で表されるアニオン系界面活性剤
(101):C10H21(OCH2CH2)2OSO3Na
4gをイオン交換水3040gに溶解させた界面活性剤溶液(水系媒体)を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
【0266】
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)10gをイオン交換水400gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン560g、n−ブチルアクリレート200g、メタクリル酸40gからなる単量体混合液及び、連鎖移動剤としてペンタンチオールを前記単量体の全モル数の0.05モル%量を1時間かけて滴下し、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、攪拌することにより重合を行い、ラテックス(1H)を調製した。
【0267】
《着色粒子の作製例》:第一段重合のみのラテックス(1H)使用
下記のようにして、着色粒子1〜4、比較の着色粒子1〜3を各々作製した。
【0268】
(着色粒子1の作製)
(1)着色剤分散液1の調製
前記(101)で表される、アニオン性界面活性剤90gをイオン交換水1600mlに攪拌溶解した。この溶液を攪拌しながら、400.0gのC.I.ピグメントブルー15:3を徐々に添加し、次いで、攪拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理して、着色剤粒子の分散液(以下、「着色剤分散液1」という。)を調製した。
【0269】
この着色剤分散液1における着色剤粒子の粒子径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、110nmであった。
【0270】
(2)(凝集・融着)会合粒子の調製
ラテックス(1H)420.7g(固形分換算)と、イオン交換水900gと「着色剤分散液1」200gとを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置を取り付けた反応容器(四つ口フラスコ)に入れ攪拌した。容器内の温度を30℃に調整した後、この溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8〜11.0に調整した。
【0271】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物12.1gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を、攪拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて90℃まで昇温した。
【0272】
その状態で、「コールターカウンターTA−II」にて会合粒子の粒径を測定し、個数平均粒径が4μm〜7μmになった時点で、塩化ナトリウム40.2gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、更に、熟成処理として液温度98℃にて6時間にわたり加熱攪拌することにより融着を継続させた。
【0273】
(着色粒子2の作製)
着色粒子1の作製に用いたラテックス(1H)の調製において、ペンタンチオールの代わりにヘキサンチオール2.0モル%量に変更し、ラテックス(2H)を調製した以外は同様にして、着色粒子2を作製した。
【0274】
(着色粒子3の作製)
着色粒子1の作製に用いたラテックス(1H)の調製において、ペンタンチオールの代わりにオクタンチオール0.2モル%量に変更し、且つ、添加方法を重合開始剤を添加した後、単量体混合液を滴下する前に、水系媒体中へ添加するという添加順序に変更し、ラテックス(3H)を調製した以外は同様にして、着色粒子3を作製した。
【0275】
(着色粒子4の作製)
着色粒子3の作製において、オクタンチオールの代わりにデカンチオールの0.8モル%量に変更し、ラテックス(4H)を調製した以外は同様にして、着色粒子4を作製した。
【0276】
(比較の着色粒子1の作製)
着色粒子1の作製に用いたラテックス(1H)の調製において、ペンタンチオールの代わりにブタンチオール1.0モル%量に変更し、比較ラテックス(1H)を調製した以外は同様にして、比較の着色粒子1を調製した。
【0277】
(比較の着色粒子2の作製例)
着色粒子1の作製に用いたラテックス(1H)の調製において、ペンタンチオールの代わりにドデカンチオール1.0モル%量に変更し、比較ラテックス(2H)を調製した以外は同様にして、比較の着色粒子2を調製した。
【0278】
(比較の着色粒子3の作製例)
着色粒子1の作製に用いたラテックス(1H)の調製において、ペンタンチオールの代わりにtert−ドデカンチオール1.0モル%量に変更し比較ラテックス3とした他は同様にして、比較の着色粒子3を調製した。
【0279】
《ラテックス(5H)の調製と着色粒子5の作製》
下記のようにして第一段、第二段の重合過程を経て、複合樹脂粒子を有するラテックス(5H)を調製し、次いで、着色粒子5を作製した。
【0280】
(ラテックス(5H)の調製):中間層の形成:第二段重合
攪拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン95g、n−ブチルアクリレート36g、メタクリル酸9gからなる単量体混合液に、結晶性物質として、上記19)で表される化合物(以下、「例示化合物(19)」という。)77gを添加し、90℃に加温し溶解させて単量体溶液を調製した。
【0281】
一方、アニオン系界面活性剤(上記(101))1gをイオン交換水1560mlに溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、前記ラテックス(3H)を固形分換算で28g添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により、例示化合物(19)の単量体溶液を8時間混合分散させ、分散粒子径(284nm)を有する乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調製した。
【0282】
次いで、この分散液(乳化液)に、重合開始剤(KPS)5gをイオン交換水200mlに溶解させた開始剤溶液を添加した後、オクタンチオール0.2モル%量(上記の第二段重合用に調製した単量体モル数を100モル%とする)量を30分かけて滴下した。
【0283】
その後、この系を98℃にて12時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第二段重合)を行い、ラテックス(5H)を得た。
【0284】
(着色粒子5の作製)
着色粒子1の作製において、ラテックス(1H)の代わりにラテックス(5H)を用いた以外は同様にして、着色粒子5を作製した
《ラテックス(6H)の調製と着色粒子6の作製》
下記のようにして第一段〜第三段の重合過程を経て、複合樹脂粒子を有するラテックス(6H)を調製し、ラテックス(6H)と着色剤分散液1とを用いて、着色粒子1の作製時と同様に、(凝集・融着)会合粒子を調製後、更に、下記に示すラテックス(2L)を用いてシェリング(融着ともいう)を行い、着色粒子6を作製した。
【0285】
(ラテックス(6H)の調製):外層の形成:第三段重合
上記記載のラテックス(5H)に、オクタンチオール0.2モル%量(下記の第三段重合用に調製した単量体モル数を100モル%とする)の1/2量を添加し、次いで、重合開始剤(KPS)6.8gをイオン交換水265mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン249g、n−ブチルアクリレート88.2g、メタクリル酸19.4gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。単量体混合液の滴下終了の30分後に、オクタンチオールの残りの1/2量を添加した。
【0286】
単量体混合液滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第三段重合)を行った後、28℃まで冷却しラテックス(6H)を得た。
【0287】
(着色粒子6の作製)
着色粒子1の作製において、ラテックス(1H)の代わりにラテックス(6H)を用いた以外は同様にして、(凝集・融着)会合粒子の作製を行った後、下記のラテックス(2L)(樹脂粒子の分散液)96gを添加し、3時間にわたり加熱攪拌を継続し、(凝集・融着)会合粒子表面にラテックス(2L)を融着させた。ここで、塩化ナトリウム40.2gを加え、8℃/分の条件で30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを2.0に調整し、攪拌を停止した。生成した塩析、凝集、融着粒子を濾過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄し、その後、40℃の温風で乾燥することにより、着色粒子6を得た。
【0288】
(ラテックス2L(シェル剤)の調製)
攪拌装置を取り付けたフラスコ内に、重合開始剤(KPS)14.8gをイオン交換水400mlに溶解させた開始剤溶液を仕込み、80℃の温度条件下に、スチレン600g、n−ブチルアクリレート190g、メタクリル酸30.0g、オクタンチオール0.2モル%量(上記のシェリング用単量体の全モル数に対して)からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。
【0289】
滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合を行った後、27℃まで冷却しラテックス(低分子量樹脂からなる樹脂粒子の分散液)を得た。このラテックスを「ラテックス(2L)」とする。
【0290】
このラテックス(2L)を構成する樹脂粒子は11,000にピーク分子量を有するものであり、また、この樹脂粒子の重量平均粒径は128nmであった。
【0291】
《静電荷像現像用トナー1〜6、比較用トナー1〜3の作製》
上記で作製した、着色粒子1〜6、比較用着色粒子1〜3に、各々疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)を1質量%及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、静電荷像現像用トナー1〜6、比較用トナー1〜3をを各々得た。尚、形状及び粒径等の物性に関しては着色粒子及び、前記着色粒子を用いて作製したトナーのいずれも差異は無い。
【0292】
表1に、トナー作製に用いた重合性単量体、連鎖移動剤の種類、樹脂粒子調製の重合方法(第一段重合〜第三段重合)、得られたトナーの分子量、分子量分布等を示す。ここで、分子量、分子量分布は、市販のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置を用いて行った。
【0293】
【表1】
【0294】
《現像剤の作製》
静電荷像現像用トナー1〜6、比較用トナー1〜3の各々に対してシリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアを混合し、トナー濃度が6%になるように現像剤を調製した。これらを、現像剤1〜6、比較用現像剤1〜3とする。
【0295】
得られた現像剤の各々について下記のように特性評価を行った。
《実写条件》
市販のデジタル複写機コニカSitios7075を評価機として使用し、下記のようにライン幅評価、文字潰れの評価を行った。
【0296】
《臭気評価》
臭気の有無を官能評価にて実施した。臭気の有無についてはランダムに集めた10名の評価員により、臭気を感じた人数をカウント評価した。臭気を感じた人数が3人未満の場合、臭気は実質無しと判断した。
【0297】
《カブリの発生状況》
高温高湿環境下(温度33℃、相対湿度80%)において、画像を連続して5000枚印字した後、電源をオフにして72時間放置後に再度印字し、形成画像を逐次観察して、画像汚れ(カブリ)の個数を目視により数え、0〜10個未満であれば、良好と判断した。
【0298】
◎:0〜3個
○:4〜10個未満
×:10個以上
《オフセット性》
評価は、転写紙の先端部に5mmの余白を設けて30mm幅のベタ黒画像を形成した未定着画像を、定着ローラ(上ローラ)の表面温度を110〜230℃まで10℃刻みで可変させた状態で定着させ、定着巻き付きの発生しない下限温度と、定着オフセットの発生しない上限温度を調べた。尚、定着器にはクリーニング機構を付与していない。
【0299】
定着可能温度の下限温度と上限温度の差を定着可能温度領域とし、下記の評価を行った。
【0300】
◎(優良):定着可能温度領域が100℃以上ある場合
○(良好):100℃未満、70℃以上(実用可能)
×(不良):70℃未満(実用不可)
得られた結果を表2に示す。
【0301】
【表2】
【0302】
表2から、比較と比べて、本発明の静電荷像現像用トナーを用いた試料は、臭気上のトラブルが軽減され、低カブリであり、且つ、オフセット性も良好であることが明らかである。
【0303】
【発明の効果】
本発明により、トナーを構成する樹脂の分子量の制御性に優れ、現像定着時の臭気上の問題点が改良され、低カブリな画像が得られ、オフセット性も良好な静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法、画像形成方法、及び画像形成装置を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、角のないトナー粒子の投影像を示す説明図であり、(b)および(c)は、それぞれ角のあるトナー粒子の投影像を示す説明図である。
【図2】本発明において使用する定着装置の一例を示す断面図を表す。
【図3】中間転写体(転写ベルト)を用いた、本発明の画像形成装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
8 記録材
100 加熱ローラ
110 芯金
120 被覆層
130 加熱部材
200 加圧ロール
210 芯金
220 被覆層
T 記録材上に形成されたトナー像
P 転写材
Pa、Pb、Pc、Pd 画像形成ユニット
1a、1b、1c、1d 感光体
2a、2b、2c、2d 潜像形成部
3a、3b、3c、3d 現像部
4a、4b、4c、4d 転写放電部
5a、5b、5c、5d クリーニング器
6a、6b、6c、6d 帯電器
22a、22b、22c、22d 分離除電放電器
21 転写ベルト
23 定着装置
24 クリーニング器
25 排出口
Claims (11)
- 結着樹脂と着色剤を含有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーにおいて、
ヘッドスペース測定におけるn−ヘキサンのピーク検出時間a〜n−ヘキサデカンのピーク検出時間bとの間に検出される揮発性物質、重合性単量体を含み、該揮発性物質のトルエン検量線法に基づき算出される含有量が350ppm以下、該重合性単量体の測定用に作成された検量線に基づき算出される前記重合性単量体の含有量が50ppm以下であり、且つ、該トナー粒子が、下記一般式(1)で表されるチオール化合物の存在下に作製されたことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
一般式(1)
R−SH
〔式中、Rは炭素数5〜10の直鎖のアルキル基を表す。〕 - GPC測定において、分子量5,000〜30,000の範囲にピークを有し、且つ、分子量分布(Mw/Mn)が2〜10であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記一般式(1)で表されるチオール化合物のアルキル基の炭素数Aと重合性単量体の炭素数B(ここで、重合性単量体が混合物の場合には、前記重合性単量体中、最も長鎖を形成する基の炭素数をBとする)との比(A/B)が1を超え2.5以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナー。
- 水系媒体中で重合性単量体と、該重合性単量体全体のモル数に対して、前記一般式(1)で表されるチオール化合物が0.05モル%〜2.0モル%添加された条件下で重合反応を行ない、結着樹脂粒子の分散液を調製する工程、次いで、該結着樹脂粒子を塩析、融着する工程を経て製造されたことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
- 重合反応が、乳化重合反応または懸濁重合反応であることを特徴とする請求項4に記載の静電荷像現像用トナー。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを製造するに当たり、水系媒体中で重合性単量体と、該重合性単量体全体のモル数に対して、前記一般式(1)で表されるチオール化合物が0.05モル%〜2.0モル%添加された条件下で重合反応を行ない、結着樹脂粒子の分散液を調製する工程、次いで、該結着樹脂粒子を塩析、融着する工程を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 前記一般式(1)で表されるチオール化合物のアルキル基の炭素数Aと重合性単量体の炭素数B(ここで、重合性単量体が混合物の場合には、前記重合性単量体中、最も長鎖を形成する基の炭素数をBとする)との比(A/B)が1を超え2.5以下であることを特徴とする請求項6に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 水系媒体中で、2工程以上の重合反応工程を経て、結着樹脂の分散液を調製する工程を有することを特徴とする請求項6または7に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 水系媒体中で、2工程以上の重合反応工程を有し、且つ、第1回目の重合反応工程以降に、前記一般式(1)で表されるチオール化合物を該水系媒体中に添加することを特徴とする請求項6または7に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 静電荷像担持体上に静電荷像を形成する工程、請求項1〜5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む現像剤で該静電荷像を現像してトナー画像を形成する工程、該トナー画像を記録材上に転写する工程、及び、該記録材上に転写されたトナー画像を熱定着する工程を有することを特徴とする画像形成方法。
- 静電荷像担持体上に静電荷像を形成する手段、請求項1〜5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む現像剤で該静電荷像を現像してトナー画像を形成する手段、該トナー画像を記録材上に転写する手段、及び、該記録材上に転写されたトナー画像を熱定着する手段を有することを特徴とする画像形成装置。
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