JP2004317423A - 石炭中のカオリン類の定量方法 - Google Patents

石炭中のカオリン類の定量方法 Download PDF

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Abstract

【課題】コークス源やエネルギー源として広く用いられている石炭中のカオリン類の定量を、精度良く行うことができる方法を提供すること。
【解決手段】石炭の27Al−固体核磁気共鳴スペクトルを測定し、該測定結果に基づいて、全てのAlピークの積分値に対するカオリン類に相当する6配位型Alピークの積分値の比を算出し、該算出値に基づいて前記石炭中のカオリン類含有量を求めることを特徴とする、石炭中のカオリン類の定量方法である。
【選択図】 図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、石炭中のカオリン類を定量する方法に関する。更に詳しくは、核磁気共鳴(以下、NMRと略称する)法を用いた、カオリン類のピーク積分強度比からカオリン類を定量する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カオリン類は、天然に産出される粘土鉱物の一種であり、基本となる化学式はAlSi(OH)で表される。カオリン類には、結晶系や格子定数などの結晶構造の違いにより、カオリナイト、ナクライト、ディッカイトが存在し、これらに過剰の水分を含有するハロイサイトを加えた4種類の鉱物が、一般にカオリン類と呼ばれている。
【0003】
カオリン類は、水と反応して水和物を形成すると粘性を帯びる性質を有しており、陶磁器や耐火原料、製紙原料等の工業プロセスへの利用が広くなされている。例えば、製鉄業では、高炉操業で鉄鋼を製造する際の原料である鉄鉱石に、副原料であるカルシウム、ケイ素、マグネシウム化合物等を添加し、さらに粉コークスを混合して、これらの混合物に水を付加してある程度の大きさの塊を形成するいわゆる造粒工程において、これらの化合物を密着させる働きをするのが、鉄鉱石中に含有されているカオリン類である。前記作用を有するカオリン類を用いて造粒工程で塊状とすることにより、鉄鉱石の強度や還元性が向上するため、カオリン類は重要な役割を担っているといえる。通常、カオリン類は、鉄鉱石中に3質量%程度含有されているが、鉄鉱石の銘柄によって含有量は大きく異なるため、最適な造粒を実施するためには、鉄鉱石中のカオリン類の含有量を正確に定量することが極めて重要である。
【0004】
また、鉄鉱石同様、鉄鋼製造の原料である石炭中にもカオリン類は存在している。石炭中の無機成分は一般に鉱物質と考えられており、事前処理による無機成分の除去を狙った石炭の有効利用促進や、コークス化における粘結性発現への関与、さらにはコークスの反応粉化での関与等、カオリン類を含めた無機成分の評価が重要視されてきている。また、近年、熱源として高炉への微粉炭吹き込みが盛んに行われているが、高炉安定操業の管理のためにも、石炭中の無機成分、特に主成分であるカオリン類の定量が非常に重要である。
【0005】
しかし、石炭中のカオリン類の含有量を正確に定量する有効な手法がないのが現状である。一般に、分析精度が高いとされている化学分析法では、湿式分析法を中心とした方法が提案されており、日本粘土学会編の粘土ハンドブック第二版には、化学分析法による粘土鉱物の化学組成の分析法が示されている。しかし、これらの化学分析法では、溶剤を用いて試料を溶解してSiOやAlとして定量を行うため、数種の粘土鉱物が混在している石炭中のカオリン類のみを分離し、定量することは非常に困難であり、十分な分析精度は得られない。
【0006】
そこで、製鉄現場においては、石炭中のアルミニウムやケイ素を化学分析法や蛍光X線分析法で定量し、石炭中のアルミニウム全量をカオリン類と見なし、ケイ素全量から、理想化学組成に基づいて算出したカオリン類相当のケイ素量を差し引いた値を、カオリン以外のケイ素化合物(SiO等)の量として評価している。
しかし、石炭中のアルミニウムの全量が実際にカオリン類としてのみ存在しているとは限らないため、異なる種類の石炭を用いて前記分析を行った場合、アルミニウムの化学分析値が同じである場合には、その中に存在しているカオリン類の量も同等であると判断されてしまうものの、実際には、アルミニウム含有量が同等の石炭であってもカオリン類含有量は大きく異なっている場合がある。このように、石炭中のアルミニウムは、全てカオリン類として存在しているのではなく、カオリン類に類似した他のアルミノケイ酸塩や、Al等の化合物として存在している場合もあるため、測定に大きな誤差を生む可能性がある。
【0007】
また、X線回折(以下、XRDと略称する)法も、石炭中のカオリン定量法として用いられており、カオリン類に相当する回折線の強度から、その定量を行うのが一般的な方法である。Energy and Fuels,15(2001)176には、XRD法によって数種の石炭中の無機鉱物成分の割合を求めた例が報告されている。
しかしながら、XRD法によって石炭中のカオリン類を定量する方法も、結晶格子からの回折像を測定するという性格上、粘土鉱物などの結晶性の低い化合物に対しては回折線が極端に広幅化し、評価は困難であるという問題がある。さらに、XRD法では、特定元素のみの情報を抽出することができないため、カオリン類の回折線が他の化合物に由来する回折線と重なり合い、同定が困難になる場合も多い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、製鉄業におけるコークス源や、発電等の工業プロセスにおけるエネルギー源として幅広く用いられている石炭に含有されているカオリン類の定量を精度良く行うことのできる方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、本発明者らは、特定元素の表層部・内部にわたる全体の化学構造や、その存在比を知ることのできる分析法として広く利用されている核磁気共鳴(NMR)法を用いて、カオリン類由来のピークの積分強度比を求めることによって、石炭からのカオリン類の分離等の煩雑な過程を経ることなく、非破壊でカオリン類を定量することが可能であることを見出した。
【0010】
カオリン類は、図1に示すような層状のアルミノケイ酸塩であり、アルミニウム原子を中心とした8面体とケイ素原子を中心とした4面体が1:1で層を形成した構造をとっている。カオリン類は、アルミニウム、ケイ素、酸素、水素の4種類の原子から成るが、NMR法を用いて無機成分であるカオリン類を同定し定量するためには、骨格の中心を担う無機元素であるアルミニウムあるいはケイ素のNMR測定を行うのが好ましいと考えられる。
【0011】
そこで、本発明者らは、アルミニウムのNMR測定(27Al−NMR)およびケイ素のNMR測定(29Si−NMR)を行った結果、29Si−NMRは、一般的に化学シフトの異方性が強いため、線幅が広幅化してしまうことから、測定対象となる石炭中にカオリン類とカオリン類に類似した化学構造を持つ化合物が共存する場合、これらのピークの分離が困難となり、十分な定量精度が得られない場合があることを確認した。また、カオリン類を定量するためには、29Si−マジック角回転(Magic Angle Spinning、以下、MASと略称する)法を用いるのが最適であるが、29Si核のスピン−格子緩和時間(以下、T1と略称する)は一般に非常に長く、カオリン類のT1は数1000秒にも達する場合もあり、長時間の測定時間を要する欠点もある。
【0012】
一方、27Al−NMRでは、27Al核の核スピンが5/2であることに起因する四極子緩和のため、T1も十分短い場合が多く(〜1秒)、29Si−NMRに比べて短時間での測定が可能であるという利点を有することを見出した。
27Al−NMR測定において、核四極子相互作用の大きさが1次の摂動で表される場合には、27Al−MAS法によってカオリン類を定量することが可能である。また、核四極子相互作用の大きさが2次の摂動で表される場合には、{1/2,−1/2}の中央遷移ピークが核四極子相互作用により広幅化及び分裂を引き起こされることから、27Al−MAS法では、高分解能スペクトルの取得がほとんど不可能であったが、近年開発された、MAS下で2次の核四極子相互作用を平均化することのできる多量子マジック角回転(Multiple Quantum Magic Angle Spinning、以下、MQMASと略称する)法を用いることによって、高分解能スペクトルを得ることができることを見出した。その結果、カオリン類に相当するピークを、他のアルミニウム化合物に相当するピークから分離することができることを見出した。
さらに、このMQMAS法によって得られた全アルミニウムのピークの積分値に対する、カオリン類に相当するピークの積分値の比から、石炭中のカオリン類含有量を求めることができることを見出した。
【0013】
本発明は、上記知見に基づいて完成させたものであり、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) 石炭の27Al−固体核磁気共鳴スペクトルを測定し、該測定結果に基づいて、全てのAlピークの積分値に対するカオリン類に相当する6配位型Alピークの積分値の比を算出し、該算出値に基づいて前記石炭中のカオリン類含有量を求めることを特徴とする、石炭中のカオリン類の定量方法。
(2) 前記石炭中のカオリン類の含有量を下式によって求めることを特徴とする、(1)記載の石炭中のカオリン類の定量方法。
石炭中のカオリン類の含有量(質量%)
=石炭中のAl濃度(質量%)×{カオリン由来6配位型Alピークの積分値/
全てのAlピークの積分値}×258.2/53.96
(3) 前記27Al−固体核磁気共鳴スペクトル測定方法が、27Al−マジック角回転法または27Al−多量子マジック角回転法であることを特徴とする、(1)又は(2)記載の石炭中のカオリン類の定量方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明法は、核磁気共鳴(NMR)法を用いて石炭中のカオリン類の測定を行うものであり、カオリン類の骨格の中心を担う無機元素であるアルミニウムのNMR測定(27Al−NMR)をMAS(マジック角回転)法、MQMAS(多量子マジック角回転)法によって行うものである。
本発明において定量分析対象とするカオリン類は、理想化学組成がAlSi(OH)で表されるものであり、具体的にはカオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトに相当するものである。また、測定対象とする石炭の化学組成や、品質、銘柄等には特に制限はない。
【0015】
上述のように、NMR法を用いて無機成分であるカオリン類を同定し定量するためには、骨格の中心を担う無機元素であるアルミニウムあるいはケイ素のNMR測定を行うのが好ましいと考えられるが、本発明法においては、十分な定量精度が得られ、かつ、測定時間が短時間である、アルミニウムのNMR測定(27Al−NMR)を行う。
27Al−NMR測定において、核四極子相互作用の大きさが1次の摂動で表される場合には、27Al−MAS法によってカオリン類を定量することが可能である。また、核四極子相互作用の大きさが2次の摂動で表される場合には、{1/2,−1/2}の中央遷移ピークが核四極子相互作用により広幅化及び分裂を引き起こされることから、MAS下で2次の核四極子相互作用を平均化することのできるMQMAS法を用いることによって、高分解能スペクトルを得ることができる。
【0016】
MQMASスペクトルは、MASスペクトルとは異なり、核四極子相互作用が平均化された線形を示す等方軸(F1軸)と、通常のMASスペクトルと同等の線形を示すMAS軸(F2軸)の2次元スペクトルとして表されるため、MASスペクトルの線形を示すF2軸上での見かけの化学シフト値(以後、MASシフト値と表記する)が同じ化合物でも、核四極子相互作用の大きさを表すパラメータである核四極子結合定数が異なれば、MQMASスペクトルのF1軸の等方シフト値が異なるため、2次元スペクトル上でこれらの化合物を区別することが可能となる。さらに、MQMASスペクトルで得られたクロスピークのMASシフト値と等方シフト値から、真の化学シフト値及び核四極子結合定数を算出することができる。
【0017】
27Al−MAS及びMQMAS法においては、試料回転速度の上昇に従い、化学シフト異方性および双極子−双極子相互作用に起因する線幅の広がりやスピニングサイドバンド(Spinning Side Bands、以下、SSBと略称する)強度が低減するため、できる限り試料回転速度を上げることが望ましいが、汎用されている直径4mmの固体試料用NMR試料管を用いた場合、現状では、18kHz程度の回転数が限界である。
また、より高精度のカオリン類の定量を行うためには、27Al核の核四極子相互作用を低減するために、9.4T(1H共鳴周波数:400MHz)以上の高磁場NMR装置で測定することが好ましい。
【0018】
MQMASパルスシーケンスは、現在までに数種のパルスシーケンスが提案されており、代表的なものとしては、2パルスシーケンス及びz−フィルター付3パルスシーケンス等がある。
2パルスシーケンスにおいては、コヒーレンスの非対称性に起因するアーティファクトが出現し、スペクトル解析を困難にする場合があるが、z−フィルター付3パルスシーケンスの場合は、コヒーレンス経路が対称となり、アーティファクトの影響のない良好なスペクトルを得ることが可能となるため、z−フィルター付3パルスシーケンスを使用することが望ましい。また、感度向上のために、FAM(Fast Amplitude Modulation、高速振幅変調)法を用いることも有効である。
【0019】
第1パルス及び第2パルスは、固体の90°パルス幅が4s以下、好ましくは2s以下になるような強いラジオ波を照射する必要がある。固体の90°パルス幅が4s超となる場合には、多量子遷移への励起が効率良く行われないため、核四極子相互作用が完全に消去されないという問題が生じる。第3パルス強度に関しては、強度の強いパルスを用いる必要はなく、固体の90°パルス幅が15s程度になるようなパルス強度を用いることが望ましい。各パルス幅については、得られるMQMASのシグナル強度が最大になるように順次調節すれば良い。また、得られたデータはシェアリング変換を行うことにより、クロスピークがF2軸に平行となり、等方シフト値の信頼性が向上する。
【0020】
本発明法により、石炭中のカオリン類の含有量(質量%)を求めるためには、まず石炭に含まれるカオリン類中のアルミニウムの含有量(質量%)を算出する必要がある。得られた27Al−MAS或いはMQMASスペクトルから、石炭中の全てのAlピークの積分値に対するカオリン類由来6配位型Alピークの積分値の比を求め、さらに、化学分析等で求めた石炭中のアルミニウム全量(質量%)を乗じることにより、石炭に含まれるカオリン類中のアルミニウムの含有量(質量%)を求めることができる。
【0021】
さらに、AlSi(OH)の化学式で表されるカオリン類1分子あたりには、2個のアルミニウム原子が含まれていることから、先に算出した石炭に含まれるカオリン類中のアルミニウムの含有量(質量%)に、カオリン類の分子量(258.2)をアルミニウムの原子量の2倍(26.98×2=53.96)で除したものを乗じることによって、下式(1)に従って、石炭中のカオリン類の含有量(質量%)を精度良く定量することができる。
石炭中のカオリン類の含有量(質量%)
=石炭中のAl濃度(質量%)×{カオリン由来6配位型Alピークの積分値/
全てのAlピークの積分値}×258.2/53.96 ・・・(1)
【0022】
【実施例】
以下に、本発明の内容を具体的に説明するための実施例を示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。
初めに、カオリン類のアルミニウムのピークを確認するため、試薬のカオリン類を使用し、この粉末試料を直径4mmのNMR固体用試料管に均一になるように充填し、16.4T固体専用NMR装置(1H共鳴周波数:700MHz)にセットし、外部磁場に対してマジック角(54.7°)で18kHzの高速で回転させた。このときの27Al共鳴周波数は、182.4MHzであった。27Al−NMRの化学シフト基準として、1mol/l AlCl水溶液のピークを−0.1ppmとした。MQMAS測定にはz−フィルター付3パルスシーケンスを用いた。
【0023】
上記条件下で27Al−MQMASスペクトルを測定したところ、MASシフト値が5.0ppm、等方シフト値が9.0ppmの位置に6配位型Alのクロスピークを示した。この結果は、図1に示したようなカオリン類の結晶構造において、アルミニウム原子がAlOの8面体の中心に位置していることに矛盾しないものである。
次に、実際の石炭の27Al−NMR測定を実施した。評価する石炭として、炭化度の異なる石炭11種類(A〜K炭)を用いた。各種石炭中の代表的元素の分析値を表1に示した。
【0024】
【表1】
Figure 2004317423
【0025】
前記の試薬のカオリン類を使用した27Al−MQMAS測定と同様の条件下で、各炭種の27Al−MQMASスペクトルを測定した。代表例として、B炭、E炭、I炭の27Al−MQMASスペクトルを図2、3、4にそれぞれ示す。また、27Al−MQMASスペクトルから算出した、石炭中の全てのAlピークの積分値に対するカオリン類由来6配位型Alピークの積分値の比を表2に示す。
【0026】
【表2】
Figure 2004317423
【0027】
図3に示したE炭においては、MASシフト値で71.1ppmに現れる4配位型アルミニウム領域に、若干の4配位型アルミニウムの存在が確認されるものの、6配位型アルミニウムが主成分であることがわかる。さらに、この6配位型のクロスピークは、試薬のカオリン類のピークと完全に一致していることから、E炭中のアルミニウム原子は、ほとんど全てがカオリン類として存在していることが確認できた。また、前記(1)式に従って、E炭中のカオリン類を算出したところ、9.24質量%であることがわかった。ここで、従来の元素分析から求めたアルミニウム及びケイ素量から、カオリン類の含有量を推定すると、9.33質量%であり、従来法との差は約1%であった。
なお、このような単一のAl化合物しか存在しない場合は、カオリン類と他のアルミニウム化合物のピークを分離する必要がないことから、27Al−MASスペクトルによっても精度の良いカオリン類の定量は可能である。
【0028】
一方、図2に示したB炭の27Al−MQMASスペクトルでは、E炭に比べて4配位型アルミニウムの割合が大きくなっていることが確認された。さらに、カオリン類以外に相当する6配位型アルミニウムが存在していることが明らかとなった。また、前記(1)式に従って、B炭中のカオリン類を算出したところ、6.29質量%であることがわかった。ここで、従来の元素分析から求めたアルミニウム及びケイ素量から、カオリン類の含有量を推定すると、8.61質量%であった。
【0029】
また、図4に示したI炭においても、カオリン類に相当する6配位型Alのピーク以外に、カオリン類以外の6配位型アルミニウム及び5配位アルミニウム領域にピークを示した。また、前記(1)式に従って、B炭中のカオリン類を算出したところ、1.82質量%であることがわかった。ここで、従来の元素分析から求めたアルミニウム及びケイ素量から、カオリン類の含有量を推定すると、2.06質量%であった。
他の炭種においても、27Al−MQMASスペクトル測定の結果に基づき、前記(1)式に従って、各石炭中のカオリン類を定量した。
【0030】
図5には、前記(1)式から算出した本発明法による各石炭中のカオリン類の含有量を横軸にとり、従来の元素分析から求めたAl及びSi量から推定したカオリン類の含有量を縦軸にとった場合の両者の相関を示す。図中の点線で示した直線は、1:1の関係を示すものである。
両者の相関が、図中の点線で示した傾きが1の直線よりも上方にずれていることから、各石炭中のAlは、全てカオリン類として存在しているわけではないことを示している。
【0031】
具体的には、1:1の関係を示す直線上に位置する石炭においては、石炭中のアルミニウムは全てカオリン類として存在しており、1:1の関係を示す直線から上方にずれるほど、カオリン類以外のアルミニウム化合物の存在比が増加し、全アルミニウム量に対するカオリン類の存在割合が低下していくことを意味している。
【0032】
なお、ここでは記載していないが、本発明法を用いて石炭中の無機成分の主成分であるカオリン類の定量を行い、この値に基づいて実際の高炉操業を実施したところ、従来法を用いてカオリン類の定量を行った場合よりも、より安定した操業が可能であった。石炭中のアルミニウムやケイ素を化学分析法や蛍光X線分析法で定量し、石炭中のアルミニウム全量をカオリン類と見なす従来の定量方法では、高炉操業上は問題ないものの、正確なカオリン類の定量は不可能であることから、本発明法よりも操業安定度が低くなる傾向が見られた。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、石炭の27Al−MAS或いは27Al−MQMAS NMRスペクトルを測定することにより、石炭中に含有されるカオリン類の存在量を精度良く、簡便に評価できるため、石炭を燃料として取り扱う電力業や製鉄業における石炭品質管理等に大きく寄与するものと考えられ、その産業上の価値は極めて高いといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】カオリン類の結晶構造を示す模式図である。
【図2】B炭の27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【図3】E炭の27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【図4】I炭の27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【図5】本発明法による各石炭中のカオリン類の含有量と、従来の元素分析から求めたAl及びSi量から推定したカオリン類の含有量との相関を示す図である。

Claims (3)

  1. 石炭の27Al−固体核磁気共鳴スペクトルを測定し、該測定結果に基づいて、全てのAlピークの積分値に対するカオリン類に相当する6配位型Alピークの積分値の比を算出し、該算出値に基づいて前記石炭中のカオリン類含有量を求めることを特徴とする、石炭中のカオリン類の定量方法。
  2. 前記石炭中のカオリン類の含有量を下式によって求めることを特徴とする、請求項1記載の石炭中のカオリン類の定量方法。
    石炭中のカオリン類の含有量(質量%)
    =石炭中のAl濃度(質量%)×{カオリン由来6配位型Alピークの積分値/
    全てのAlピークの積分値}×258.2/53.96
  3. 前記27Al−固体核磁気共鳴スペクトル測定方法が、27Al−マジック角回転法または27Al−多量子マジック角回転法であることを特徴とする、請求項1又は2記載の石炭中のカオリン類の定量方法。
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