JP2004317421A - 生物学的活性物質を固定化した素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コア粒子と、コア粒子に化学結合により固定化された、2又それ以上の親水性基を有する有機化合物からなる母粒子と、前記有機化合物を介して母粒子に結合した生物学的活性物質からなる、生物学的活性物質を固定化した素子を用いて、前記生物学的活性物質に特異的に結合する物質を検出又は測定する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生物学的活性物質の検出もしくは測定用、又は治療用の素子に関する。本発明の素子は、診断、治療、生化学分野等に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ハイブリダイゼーションによる核酸の分析や、イムノアッセイ等においては、核酸やタンパク質を粒子、膜、平板などの固体支持体上に固定化する技術が利用されている。このような生体分子の固定化法として、核酸では、以下のものが知られている。
【0003】
(1)5’末端にチオール基を有する核酸と、チオール基を含むビーズ状基材間のジスルフィド結合による固定(非特許文献1)等のような、修飾基を導入した核酸を基材に化学結合させる方法。
【0004】
(2)核酸を、紫外線(UV)照射又は加熱処理により、ニトロセルロース、ナイロンメンブレン、又はポリ−L−リジン等のカチオンポリマーで被覆されたガラス等の担体等に、吸着固定させる方法(特許文献1、非特許文献2)。
【0005】
(3)ポリリジン溶液で処理されたマイクロプレートのウェル中に核酸を注入し、37℃に加熱して、核酸をウェルに物理吸着させる方法(非特許文献3)。
【0006】
(4)基材上に結合させたヌクレオチドを用い、基材上でDNAを合成する方法(WO97/10365)。
【0007】
(5)5’末端にビオチン基を有する核酸とストレプトアビジン皮膜で覆われたマグネティックビーズ担体間による固定(特許文献2)等のような、修飾基を導入した核酸を化学結合させる方法。
【0008】
(6)ポリカルボジイミド(カルボジイミド基)で皮膜したポリスチレンビーズに核酸を固定する方法(特許文献3)。
しかしながら、上記の(1)の方法は、極めて特殊な機械と試薬を必要とする。また、(2)及び(3)の方法においては、ハイブリダイゼーションを行った場合、特に操作過程で支持体から核酸が剥がれ落ち、結果として検出感度が下がったり、再現性が得られないことがある。また、この方法では、長い核酸は固定できるが、オリゴマー等約50マー以下の短い核酸になると、効率よく固定化できない。さらに、(4)の方法は、基材上でDNAを合成するために、極めて特殊な機械と試薬を必要とし、さらに、合成できる核酸も25マー程度までに限られるという欠点がある。また、(5)の方法は、基材の材料が限られ、保存安定性に乏しいという欠点がある。また、(6)の方法では、核酸をカルボジイミド基と反応させるため、ハイブリダイゼーション中にポリカルボジイミドから核酸が剥がれ落ちることはないが、ポリスチレンとポリカルボジイミドが化学的結合していないため、ハイブリダイゼーション中にポリスチレンビーズからポリカルボジイミドが剥がれ落ちる傾向がある。
【0009】
一方、特許文献4のように、モノカルボジイミドを活性化しアミノ酸などからアミド結合により母体となる粒子と固定化を試み、分散性を向上させる検討がなされているが、縮合反応によって尿素誘導体等の不要生成物を生じる為、洗浄工程において時間を費やすといった問題が生じる。さらにアミド結合を形成する特定の活性物質に限られてしまうことや、母体となる粒子とアミノ酸中のアミノ基やカルボキシル基等との結合部位(位置)によって、検査、診断素子としての性能が発揮できないという問題が生じる。
【0010】
【特許文献1】
特表平10−503841号公報
【特許文献2】
特表2000−507806号公報
【特許文献3】
特開平8−23975号公報
【特許文献4】
特許第2629909号公報
【非特許文献1】
P. J. R. Dayら, 「Biochem. J.」1991年, 第278巻, p.735−740
【非特許文献2】
J. Sambrookら,「Molecular Cloning」 Cold Spring Harbor Laboratory Press, 第2版, p.2.109−2.113, p.9.34−9.46
【非特許文献3】
G. C. N. Parryら,「Biochem. Soc. Trans.」, 1989年, 第17巻, p.230−231
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、分散媒体中において良好な安定性を有する生物学的活性物質の検出もしくは測定用、又は治療用の素子及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記問題点を克服するため、鋭意検討を行った結果、2又それ以上の親水性基を有する有機化合物を用いて生物学的活性物質を粒子に固定化することにより、溶液分散安定性を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
【0013】
(1)コア粒子と、コア粒子に化学結合により固定化された、2又それ以上の親水性基を有する有機化合物からなる母粒子と、前記有機化合物を介して母粒子に結合した生物学的活性物質からなる、生物学的活性物質を固定化した素子。
(2)水系溶媒中に用いられることを特徴とする(1)に記載の素子。
(3)母粒子の平均粒子径が0.01〜100μmである(1)又は(2)に記載の素子。
(4)母粒子が球状又は略球状である(1)〜(3)のいずれかに記載の素子。
(5)下記式で表されるCVb比及びCVc比の少なくともいずれかが0.6〜3.0であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の素子。
【0014】
【数2】
CVb比=CV1/CV3
CVc比=CV2/CV3
CV1=(コア粒子径の標準偏差/コア粒子径の平均粒子径)×100
CV2=(母粒子径の標準偏差/母粒子の平均粒子径)×100
CV3=(素子径の標準偏差/素子の平均粒子径)×100
【0015】
(6)前記コア粒子及び生物学的活性物質は、カルボジイミド基、エステル基、カーボネート基、エポキシ基、及びオキサゾリン基から選ばれる官能基との反応により結合していることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の素子。
(7)前記有機化合物は、下記式で表される化合物である(1)〜(6)のいずれかに記載の素子。
【化2】
Ax−(R−X)n−R−Ay ・・・(I)
(Ax、Ayは、独立して親水性を示す官能基を有するセグメントを示し、同一であってもよく、異なっていても良い。Rは独立して2価以上の有機基を示し、Xは独立してカルボジイミド基、エポキシ基又はオキサゾリン基を示し、nは2〜80、好ましくは2〜40の整数を示す。)
(8)前記生物学的活性物質が、核酸、タンパク質、ハプテン、糖から選ばれる(1)〜(7)のいずれかに記載の素子。
(9)前記素子は、前記生物学的活性物質と、試料中に含まれる第二の生物学的活性物質との特異的な結合によって、試料中の第二の生物学的活性物質を検出又は測定するためのものである、(1)〜(8)のいずれかに記載の素子。
(10)前記生物学的活性物質は疾患の治療用の薬剤である、(1)〜(8)のいずれかに記載の素子。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
<1>本発明の素子
本発明の素子は、コア粒子と、コア粒子に化学結合により固定化された、2又それ以上の親水性基を有する有機化合物(以下、「有機化合物A」という)からなる母粒子と、前記有機化合物Aを介して母粒子に結合した生物学的活性物質からなる。
以下、本発明の素子について説明する。
【0018】
(1)コア粒子
コア粒子は、生物学的活性物質を固定化するための支持体としての役割を果たすものである。本発明の素子の一態様(アフィニティー粒子)においては、「生物学的活性物質」は、同物質と、第二の生物学的活性物質との特異的な結合によって、試料中の第二の生物学的活性物質を捕捉するためのものである。試料としては、血液、血漿、血清等の体液や、動植物細胞、細菌等の細胞等が挙げられる。
また、本発明の素子の他の態様においては、生物学的活性物質は、治療に用いる薬剤(有効成分)として、あるいは同薬剤を結合させるリガンドとして作用する。生物学的活性物質としては、DNA、RNA等の核酸、抗原、抗体、酵素等のタンパク質(ペプチドを含む)、ペプチド核酸、ハプテン、糖、糖ペプチド等が挙げられる。これらの中では核酸が好ましい。生物学的活性物質については、後述する。
【0019】
前記コア粒子は、水系溶媒には不溶であり、かつ、水系溶媒中で分散性のよいものが好ましい。コア粒子として具体的には、例えば、プラスチック、金属、カーボン、天然高分子、セラミック(無機固体含む)などから形成される、有機粒子もしくは無機粒子、又は有機−無機複合粒子が挙げられる。
【0020】
前記プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ弗化ビニリデン、ポリ弗化エチレン、ポリイミド及びアクリル樹脂等が、
無機高分子としては、ガラス、水晶、カーボン、シリカゲル及びグラファイト等が、
金属としては、金、白金、銀、銅、鉄、アルミニウム、磁石、パラマグネット及びアパタイト等の常温固体金属が、
天然高分子としては、セルロース、セルロース誘導体、キチン、キトサン及びアルギン酸等が、
セラミックとしては、アルミナ、シリカ、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素及び炭化ホウ素等が、各々例示される。
【0021】
上記素材は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用した複合粒子としてもよい。
コア粒子は、市販品があればそれを用いてもよいし、公知の種々の方法を用いて製造してもよい。例えば、目的の粒子が有機粒子や有機−無機複合粒子であれば、以下の方法が挙げられるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
【0022】
(i)一般的な塊状重合、溶液重合により得られた溶液樹脂を粉砕、分級して粒子を得る方法、
(ii)上記と同様の重合法により得られた溶液樹脂を滴下して粒子(球状粒子含む)を得る方法、
(iii)水溶液中で行う乳化もしくは懸濁重合により粒子(球状を含む)を得る方 法、
(iv)上記(iii)とシード法等を組み合わせて粒子を得る方法、
(v)非水溶媒中又は水との混合溶媒中での分散重合法によって粒子(主に球 状)を得る方法、
(vi)上記(v)とシード法等を組み合わせて粒子を得る方法、
(vii)押し出し成形機などによりペレット状にした粒子を得る方法。
【0023】
また、上記重合法により得られた粒子は、予め架橋構造を有している粒子であっても特に差し支えなく、本発明の製造に用いることができる。
好ましくは、コア粒子の表層部、又は内部及び表層部には、後述する有機化合物Aと結合可能な官能基を有する化合物(以下、「化合物B」ということがある)を、共重合又は混合によって含有させることが望ましい。例えば、母粒子を作製するにあたり、コア粒子と、有機化合物Aとを結合させるためには、必要に応じてコア粒子をあらかじめ修飾しておいてもよい。また、コア粒子に有機化合物Aを含有させておいてもよい。尚、前記コア粒子の「修飾」とは、コア粒子を形成する基材に後から官能基を導入する場合、及び、予め官能基を有する化合物を用いて官能基を有する基材を製造する場合、の両者を含む。化合物Bについては、後述する。
【0024】
コア粒子に上記のような化合物Bを含有させる方法としては、公知の種々の方法を採用できる。例えば、コア粒子が不飽和モノマー由来のポリマー粒子の場合は、ポリマー重合時に有機化合物Aと結合可能な官能基を有する不飽和モノマーを共重合させて粒子を製造する方法等が挙げられる。
【0025】
より具体的には、例えば、コアとなる粒子が金属類または酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機粒子の場合は、粒子の表面を有機化合物Aと結合可能な官能基を有するシランカップリング剤で表面処理してコア粒子とする方法等が挙げられる。
【0026】
また、例えば、コアとなる粒子が有機−無機材料からなる複合粒子(磁性体を含有するポリマー粒子等)の場合にも、有機−無機材料の成分量に応じて上記した方法を複合することにより、コア粒子を作製することが可能である。
【0027】
本発明の素子及びその支持体となるコア粒子は、素子の用途に応じて異形でも球形でも特に差し支えはないが、近年、医療用の素子は精度の高いものが望まれており、表面積が均一な粒子が望まれていることから、粒子径が揃った粒子や形状が球状又は略球状の粒子であることが好ましい。
【0028】
(2)有機化合物A
有機化合物Aは、コア粒子に結合可能な少なくとも一の官能基A1と、生物学的活性物質に化学結合可能な一の官能基A2を有し、かつ、2又はそれ以上の親水性基を有する化合物である。コア粒子に結合可能な官能基A1と、生物学的活性物質に結合可能な官能基A2は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0029】
前記官能基A1及びA2としては、カルボジイミド基、エステル基、カーボネート基、エポキシ基、及びオキサゾリン基が挙げられる。
前記親水性基としては、水に膨潤するか、溶解するような官能基であればよいが、具体的には水酸基、カルボキシル基、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、リン酸基、スルホン酸基、窒素を含むヘテロ環の親水性官能基等が挙げられる。親水性基は、有機化合物Aの分子内に2以上、好ましくは8以上、より好ましくは12以上、含まれていることが好ましい。また、親水性基の上限としては、通常60以下、好ましくは60以下、より好ましくは40以下であることが好ましい。尚、前記親水性基は、それを有する有機化合物Aが水溶性となるようなものであることが好ましい。
【0030】
上記官能基の中ではカルボジイミド基、特に水溶性のカルボジイミド化合物が好ましい。以下、カルボジイミド基を有する有機化合物Aについて例示する。カルボジイミド基を有する有機化合物Aは、好ましくは下記式で表される化合物である。
【0031】
【化3】
Ax−(R−X)n−R−Ay ・・・(I)
(Ax、Ayは、独立して親水性を示す官能基を有するセグメントを示し、同一であってもよく、異なっていても良い。Rは独立して2価以上の有機基を示し、Xは独立してカルボジイミド基、エポキシ基又はオキサゾリン基を示し、nは2〜80、好ましくは2〜40の整数を示す。)
【0032】
上記2価以上の有機基としては、炭化水素基や窒素原子又は酸素原子を含む有機基等が挙げられるが、好ましくは2価の炭化水素基であり、C1〜C12のアルキレン基、C3〜C10のシクロアルキレン基、環状及び非環状構造を有するC4〜C16のアルキレン基、2価のC6〜C16の芳香環及び芳香環を含むC7〜C18のアルキレン基等が挙げられる。
【0033】
上記式(I)で表されるカルボジイミド基を有する有機化合物A(以下、単に「カルボジイミド化合物」ということがある)としては、例えば、特開昭51−61599号公報に開示されている方法や、L. M. Alberinoらの方法(J. Appl. Polym. Sci., 21, 190 (1990))或いは特開平2−292316号公報に開示されている方法等によって製造することができるポリカルボジイミドを挙げることができる。即ち、有機ポリイソシアネート化合物からイソシアネートのカルボジイミド化を促進する触媒の存在下に製造することができるものである。
【0034】
ポリカルボジイミドの製造に用いる上記有機ポリイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物、粗トリレンジイソシアネート、粗メチレンジフェニルジイソシアネート、4,4’,4’’−トリフェニルメチレントリイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添メチレンジフェニルジイソシアネート、m−フェニルジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートやこれらの任意の混合物を挙げることができる。
【0035】
上記ポリイソシアネート化合物又はそれらの混合物のイソシアネート基をカルボジイミド化することによって重縮合が起こる。この反応は、通常、イソシアネートをカルボジイミド化触媒の存在下で加熱することことによって行われる。その際、適当な段階でイソシアネート基と反応性を有する官能基、例えば水酸基、1級又は2級アミノ基、カルボキシル基、チオール基等を有し、かつ分子中に親水性官能基を有する化合物を末端封止剤として投入し、カルボジイミド化合物の末端を封止することにより、分子量(重合度)を調整することができる。また、重合度は、ポリイソシアネート化合物等の濃度や反応時間によっても調整することができる。
【0036】
上記有機イソシアネートのカルボジイミド化を促進する触媒としては、種々のものを例示することができるが、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシドやこれらの3−ホスホレン異性体などが収率その他の面で好適である。
【0037】
前記の化学式(I)で示されるカルボジイミド化合物は、平均分子量が、通常200〜100,000であり、好ましくは、500〜50,000である。
前記したように、本発明に係るカルボジイミド化合物を製造するには、先ず、上記のイソシアネートをカルボジイミド化触媒の存在下で加熱することにより製造する。その場合には、無溶媒下で合成を行なってもよいし、溶媒下で行ってもよい。また、反応途中で溶媒を添加してもよい。その場合は使用用途に応じて適宜選択すればよい。
【0038】
その具体的な溶媒としては、代表的なものを例示すると、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、デカン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の脂肪族又は芳香族炭化水素類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル、ジメチルエーテル、トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ニトロプロペン、ニトロベンゼン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の硫黄、窒素含有有機化合物類等が挙げられる。合成時にイソシアネート基及びカルボジイミド基に支障を与えないものであれば特に制限されることはなく、重合方法の用途に合った溶媒を適宜選択すればよい。また、これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
さらに、合成終了後、カルボジイミド樹脂末端を、次に記述する水性化セグメント等で封止していれば、稀釈剤として上記溶媒のほか、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類等も使用可能である。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。但し、稀釈の際はカルボジイミド基の反応性が高いため、比較的低温であることが好ましい。
【0040】
これらのカルボジイミド化合物のような有機化合物Aの分子量又は組成、あるいは親水性となるセグメントを変更することによって、母粒子の分散性を自由に調整することができ、素子自身の凝集度や分散度を自由にコントロールすることが可能である。
【0041】
親水性となるセグメント(上記式中、Ax、Ay)としては、例えば親水基を有する水溶化可能なセグメントであれば何でも良いが、好ましくは、ヒドロキシエタンスルホン酸ナトリウムやヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム等の反応性ヒドロキシル基を少なくとも一つ有するアルキルスルホン酸塩の残基、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、3−ジエチルアミノ−1−プロパノール、3−ジエチルアミノ−2−プロパノール、5−ジエチルアミノ−2−プロパノールや、2−(ジ−n−ブチルアミノ)エタノール等のジアルキルアミノアルコールの残基の四級塩、3−ジメチルアミノ−n−プロピルアミン、3−ジエチルアミノ−n−プロピルアミン、2(ジエチルアミノ)エチルアミン等のジアルキルアミノアルキルアミンの残基の四級塩、ポリ(エチレンオキサイド)モノメチルエーテル、ポリ(エチレンオキサイド)モノエチルエーテル、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)モノメチルエーテル、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)モノエチルエーテル等の反応性ヒドロキシル基を少なくとも1つ有するポリ(アルキレンオキサイド)の残基が挙げられる。尚、これらの親水性となるセグメント(Ax、Ay)は単独でも良いし、二種以上併用しても良いし、共重合させた混合化合物として使用しても差し支えない。
【0042】
特に、医療用の検査、診断又は治療用の素子は、水を含めた水溶性の媒体を使用することが多いため、母粒子の分散性が素子の精度に大きく左右する。
【0043】
尚、母粒子の製造に際し、上記有機化合物Aは単独でもよいし、二種以上併用してもよいし、共重合させた混合化合物として使用しても差し支えない。
【0044】
(3)母粒子
母粒子は、前記コア粒子に、有機化合物Aが化学結合により結合したものである。本発明において、「化学結合」とは、共有結合、配位結合、イオン結合等の結合を意味する。
【0045】
母粒子の作製方法としては、例えば、有機化合物Aと反応し得る官能基を有する化合物Bを含有するコア粒子を作製し、コア粒子が溶解せず、かつ、有機化合物Aが溶解する溶媒下で、有機化合物Aを添加し、化学的に反応させることによって、粒子の形状を変形させることなく母粒子を得ることができる。この場合、母粒子は、コア粒子と有機化合物Aとが化学的に結合していないと、後の工程において不純物または不用物が溶液中に溶融又は析出したり、粒子が凝集してしまう場合が多くなり、結果的に得られる素子は、検査、診断又は治療用素子として必要な高い精度が保てなくなってしまう。
【0046】
以下、コア粒子と有機化合物Aが結合した母粒子の作製法を、コア粒子としてポリマー粒子を用いた場合を一例として、説明する。
【0047】
コア粒子となり得るポリマー粒子としては、例えば、スチレン系重合体、(メタ)アクリル系重合体、他のビニル系重合体の付加重合による共重合体、水素移動重合による重合体、ポリ縮合による重合体、付加縮合による重合体などが挙げられる。
【0048】
その主成分となる共重合可能な原料単量体としては、代表的なものを例示すると、(i)スチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2、4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3、4−ジクロルスチレンなどのスチレン類、(ii)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチルアクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリルのような(メタ)アクリル酸エステル類、(iii)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類、(iv)アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの(メタ)アクリル酸誘導体、(v)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類、(vi)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類、(vii)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物、(viii)ふっ化ビニル、ふっ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、又はアクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸テトラフルオロプロピレルなどのフッ素アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、また、2種類以上を併用してもよい。
【0049】
本発明に係る母粒子中のコア粒子は、表層部、又は内部及び表層部には、有機化合物Aと結合可能な官能基B1を有する化合物Bを含有すればよい。前記官能基B1としては、例えば、炭素−炭素不飽和結合(二重結合、三重結合)を有する基、α,β−不飽和カルボニル基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、水酸基、アミド基、チオール基、シアノ基、アミノ基、クロロメチル基、グリシジルエーテル基、エステル基、ホルミル基、ニトリル基、ニトロノ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基等を有する化合物が挙げられる。これらは単独でもよいし、2種以上併用してもよい。好ましくは、カルボキシル基、水酸基、1級又は2級アミノ基、チオール基がよい。
【0050】
更に、化合物Bとして具体的には、カルボキシル基を有するラジカル重合性単量体及び化合物が挙げられる。代表的なものを例示すると、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノブチルなど各種の不飽和モノないしジカルボン酸類又は不飽和二塩基酸類等が挙げられ、これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0051】
また、化合物Bとして水酸基を有するラジカル重合性単量体及び化合物が挙げられる。代表的なものを例示すると、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系単量体、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリル系化合物類、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等の各種ヒドロキシアルキルビニルエーテル類、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等の各種アリル化合物等が挙げられ、これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0052】
さらに、化合物Bとして水酸基を有するポリマーが挙げられる。代表的なものを例示すると、ポリビニルアルコール(PVA)等の完全けん化、および部分けん化樹脂、酢酸ビニルとその他のビニル単量体との共重合体とからなる酢酸エステル含有ポリマーのけん化樹脂等の水酸基含有熱可塑性樹脂が挙げられ、これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0053】
また、化合物Bとして、アミノ基を有するラジカル重合性単量体及び化合物が挙げられる。具体的に代表的なものを例示すると、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸−N−プロピルアミノエチル、メタクリル酸−N−エチルアミノプロピル、メタクリル酸−N−フェニルアミノエチル、メタクリル酸−N−シクロヘキシルアミノエチル等のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル系誘導体;アリルアミン、N−メチルアリルアミン等のアリルアミン系誘導体;p−アミノスチレン等のスチレン系誘導体;2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン等のトリアジン誘導体等が挙げられ、好ましくは一級もしくは二級のアミノ基を有する化合物である。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0054】
さらに、化合物Bとしてチオール(メルカプト)基を有するラジカル重合性単量体又は化合物が挙げられる。具体的に代表的なものを例示すると、2−プロペン−1−チオール、3−ブテン−1−チオール、4−ペンテン−1−チオール、(メタ)アクリル酸2−メルカプトエチル、(メタ)アクリル酸2−メルカプト−1−カルボキシエチル、N−(2−メルカプトエチル)アクリルアミド、N−(2−メルカプト−1−カルボキシエチル)アクリルアミド、N−(2−メルカプトエチル)メタクリルアミド、N−(4−メルカプトフェニル)アクリルアミド、N−(7−メルカプトナフチル)アクリルアミド、マイレン酸モノ2−メルカプトエチルアミド等の不飽和二重結合を有するメルカプト(チオール)基含有単量体又は化合物等が挙げられるが、これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、チオール(メルカプト)基を有するポリビニルアルコール変性体等のチオール(メルカプト)基を含有した熱可塑性樹脂等も挙げられる。
【0055】
また、コア粒子を形成する共重合体に、カルボキシル基、水酸基、アミノ基又はチオール(メルカプト)基などの複合基を導入したい場合は、前記した各種の反応基を含有する単量体を複数併用することによって、多官能共重合体にすればよい。
【0056】
上記官能基量と有機化合物Aの添加量や反応温度や条件を調整することで、コア粒子と有機化合物Aを反応させたときに、多官能を有する母粒子ができる。
一方、コア粒子の作製において、ラジカル重合性単量体を重合させる際に使用する重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を使用できる。具体的に代表的なものを例示すると、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスメチルブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0057】
また、コア粒子を作製する場合、前記したような様々な合成方法、重合方法が用いられるが、塊状重合等のように無溶媒化での合成はもちろん、溶液重合等のような溶媒下での合成を挙げることができる。その具体的な重合溶媒として代表的なものを例示すると、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレンブリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、デカン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ジシクロヘキシル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の脂肪族又は芳香族炭化水素類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル、ジメチルエーテル、トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸類;ニトロプロペン、ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の硫黄、窒素含有有機化合物類等が挙げられる。重合溶媒は、特に制限されることはなく、重合方法の用途に合った溶媒を、適宜選択すればよい。また、これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0058】
さらに、コア粒子の作製においては、使用可能な重合方法に応じて、分散剤、安定剤、乳化剤(又は界面活性剤)、酸化防止剤又は触媒(又は反応促進剤)等を適宜選択し使用してもよい。
【0059】
それらについて、具体的に代表的なものを例示すると、分散剤及び安定剤としては、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレンスルホン酸、ビニルフェノール−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルフェノール−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリスチレン誘導体;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリル酸誘導体;ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、ポリブチルビニルエーテル、ポリイソブチルビニルエーテル等のポリビニルアルキルエーテル誘導体;セルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリ酢酸ビニル等のポリ酢酸ビニル誘導体;ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリ−2−メチル−2−オキサゾリン等の含窒素ポリマー誘導体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリハロゲン化ビニル誘導体;ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン誘導体等の各種疎水性又は親水性の分散剤、安定剤が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0060】
また、乳化剤(界面活性剤)としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン系乳化剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アミンオキサイド等のカチオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のノニオン系乳化剤等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0061】
また、コア粒子の作製においては、使用する用途に応じて少量の架橋剤を使用しても、特に差し支えない。具体的に代表的なものを例示すると、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセロールアクロキシジメタクリレート、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルフォン等の化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい
【0062】
コア粒子が有機物を含有する熱可塑性の粒子の場合は、粒子の表面(表層部)のみ、又は内部と表層部を、架橋させてもよい。
【0063】
また、酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ヒドロキノン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0064】
また、触媒(反応促進剤)としては、反応を促進させる触媒であれば、特に限定されず、公知のものを使用すればよく、粒子物性に悪影響を及ぼさない範囲で適宜選択して、適量を添加すればよい。例えば、コア粒子の官能基と有機化合物Aの官能基の少なくともどちらかにエポキシ基が含有されている場合は、具体的には、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、トリフェニルアミン等の三級アミン類;トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム化合物類;トリフェニルホスフィン、トリシクロホスフィン等のホスフィン類;ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド、等のホスホニウム化合物類;2−メチルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール等のイミダゾール化合物類;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物類;炭酸ナトリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属炭酸塩類;有機酸のアルカリ金属塩類;三塩化硼素、三弗化硼素、四塩化錫、四塩化チタン等のルイス酸性を示すハロゲン化物類またはその錯塩類等の触媒を添加することが可能である。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0065】
上記のコア粒子が有機含有粒子であれば、その重量平均分子量は、1000〜3,000,000程度であり、コア粒子が球状粒子であれば、3000〜1,000,000程度程度である。
【0066】
母粒子を作製するために用いる、有機化合物Aが反応可能な官能基を有するコア粒子は、コア粒子がポリマー微粒子であれば、官能基の含有量は当量で30〜2000を満たすものがよく、好ましくは当量で50〜1000、さらに好ましくは80〜900を満たすものがよく、特に好ましくは100〜500である。当量が2000超であると、官能基が少なすぎるためにコア粒子との結合にかなり時間を要するので、好ましくない場合がある。一方、30未満であると、結合密度が上がりすぎて母粒子の表面及び表層部に生物学的活性物質に結合可能な官能基を残存させることができない場合がある。但し、時間的余裕や極少量の官能基が必要な場合は、その限りでない。すなわち、2000超/官能基又は30未満/官能基でもよい。
【0067】
またコア粒子が無機粒子や有機−無機複合粒子等からなる場合も同様である。
尚、前記「当量」とは、化学反応における物質の量的関係に基づいて化合物ごとに割り当てた一定量を示すものであり、例えば本発明におけるコア粒子では、有機化合物Aと反応可能な官能基1mol当たりのコア粒子の化学式量を表す。
【0068】
母粒子を作製するために、必要な有機化合物Aの官能基の含有量は、当量で50〜1,500であり、好ましくは80〜1,000、更に好ましくは100〜800、特に好ましくは200〜700である。有機化合物Aの官能基当量が1,500超であると、官能基が少なすぎるためにコア粒子との結合にかなり時間を要するので、好ましくない場合がある。一方、50未満であると、生物学的活性物質に結合可能な官能基を多く残存させることになり、悪影響を及ぼす場合がある。 但し、時間的余裕や極少量の官能基が必要な場合は、その限りでない。すなわち、1,500超/官能基でもよい。
【0069】
母粒子の作製において、コア粒子への有機化合物Aの添加量は、硬化又は結合後の必要な有機化合物の残量に左右されるが、コア粒子の官能基に対して、当量比で0.1〜20を目安に添加すれば良く、好ましくは0.5〜8、更に好ましくは1〜5がよい。尚、コアとなる粒子が有機−無機複合粒子や無機粒子から形成されるコア粒子の場合でも同様である。また、有機化合物Aの添加量は、当量比で20超であってもよいが、媒体中の残存有機化合物が多くなるのでコスト的にも好ましくない。また、添加量が、当量比で0.1未満であると、生物学的活性物質に結合可能な官能基を残せなくなる場合がある。但し、時間的余裕や極少量の官能基が必要な場合は、その限りでない。
【0070】
また、母粒子の平均粒子径は0.01〜100μmが良く、好ましくは0.05〜50μm、更に好ましくは0.08〜30μm、特に好ましくは0.1〜10μmがよい。平均粒子径が100μm超であると、粒子の沈殿速度が速くなり、生物、医療用の素子としては好ましくない。一方、平均粒子径が0.01μm未満であると、粒子径が小さすぎるために凝集度が大きくなり、単分散化した粒子が得られない場合がある。尚、母粒子の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上が、上記範囲に含まれることが好ましい。
【0071】
母粒子を得るために、反応させる反応温度は、溶媒の種類に左右されるが、10〜200℃の範囲が良く、好ましくは15〜150℃、更に好ましくは20〜130℃の範囲がよい。
【0072】
また、反応に要する時間は、コア粒子と有機化合物Aの官能基同士の結合反応がほぼ完結するのに要する時間であればよく、使用する有機化合物及び添加量、粒子内官能基の種類、溶液の粘度、及び濃度等に大きく左右されるが、例えば50℃で1〜24時間、好ましくは2〜15時間程度である。尚、前記要因を変更し、反応時間を長くした(24時間超)場合においても、母粒子は得られるが、製造方法上、時間を要すことは好ましくないことがある。好適な反応時間は、予備実験において、種々の反応時間で反応を行うことによって、容易に決定することができる。
【0073】
コア粒子が溶解せず、有機化合物Aが溶解する溶媒は、水又は有機溶媒から選ばれる少なくとも一種の溶媒であり、使用する有機化合物及び添加量、母粒子の成分となる樹脂の種類及び含有する官能基の種類、使用用途等を考慮して、適宜選択すればよい。
【0074】
その具体的な溶媒としては、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレンブリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、デカン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ジシクロヘキシル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の脂肪族又は芳香族炭化水素類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル、ジメチルエーテル、トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸類;ニトロプロペン、ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の硫黄、窒素含有有機化合物類等が挙げられる。好ましくは、水、メタノールやエタノールなどの低級アルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのエーテルアルコール、水と低級アルコールの混合物、水とエーテルアルコールの混合物のような水溶性及び親水性の媒体、トルエン、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジクロロメタン、テトラクロロエチレンなどが挙げられ、さらに好ましくは、水、メタノールやエタノールなどの低級アルコール、水とメタノールやエタノールなどの低級アルコールとの混合物、水とメタノールやエタノールなどの低級アルコールとの混合物、水とエーテルアルコールとの混合物のような水溶性及び親水性の媒体である。これらは、特に制限されることはなく、使用用途に合った溶媒を、適宜選択すればよい。また、これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0075】
なお、母粒子の作製においては、所望に応じて、前述した分散剤、酸化防止剤、安定剤、乳化剤(界面活性剤)、触媒(反応促進剤)などを適宜選択し、添加することもできる。
【0076】
母粒子を作製するにあたり、コア粒子と有機化合物Aとの反応時の溶液濃度は、次の計算式で算出すると、1〜60重量%であり、好ましくは5〜40重量%、更に好ましくは10〜30重量%である。
【0077】
【数3】
溶液濃度(重量%)=[(全溶液−溶媒)/全溶液]×100
【0078】
尚、上記溶液濃度が80重量%超であると、コア粒子または有機化合物Aの量が過剰となり、溶液内のバランスが崩れ、単分散化し安定した粒子を得ることが難しくなるため、好ましくない。また、上記溶液濃度が1重量%未満であると、母粒子の作製は可能であるが、目的の粒子を得るためには、長時間に亘り合成を行わなければならない。しかし、製造方法上、時間を要することは好ましくない。
【0079】
母粒子の形状は、前述したように、粒子径が揃っていることが好ましく、球状又は略球状の粒子であることが好ましい。本発明において「球状又は略球状」とは、球の投影二次元図において、「1≦長径/短径≦1.2」を満たす形状と定義する。長径及び短径の測定は、例えば、以下のようにして測定することができる。走査電子顕微鏡(以後「SEM」と称する)(例えば日立 S−2150)にて測定可能な倍率(100〜10,000倍)で粒子の写真を撮り、粒子1個に対して直径をランダムに15回測定し、長径及び短径を測定する。これをランダムに繰り返し(例えばn=100)測定する。
【0080】
また、平均粒子径は、SEMにて測定可能な倍率(100〜10,000倍)で写真を撮り、ランダムに測定し(例えばn1=500個)、直径の平均を平均粒子径とすることにより、測定することができる。
【0081】
また、コア粒子と母粒子の前記の粒子径測定結果から、下記の式で定義される粒子径分布CV値(バラツキ度)で表した場合のCV値を求め、コア粒子及び母粒子及び素子の各分布精度を確認することができる。
【0082】
【数4】
CV(%)=(粒子[素子]径の標準偏差/平均粒子[素子]径)×100
また、本発明の母粒子及び素子の分散性は、下記式で表されるCV比によって表すことができる。これらのCV比のうち、CVb比及びCVc比の少なくともいずれかが、0.6〜3.0、好ましくは0.8〜1.5、より好ましくは0.9〜1.1であることが好ましい。また、前記CVb比及びCVc比の両方が前記範囲であることが、より好ましい。さらに、CVb比及びCVc比に加えて、CVa比も前記範囲であることが特に好ましい。
【0083】
【数5】
CVa比=CV1/CV2
CVb比=CV1/CV3
CVc比=CV2/CV3
CV1=(コア粒子径の標準偏差/コア粒子径の平均粒子径)×100
CV2=(母粒子径の標準偏差/母粒子の平均粒子径)×100
CV3=(素子径の標準偏差/素子の平均粒子径)×100
【0084】
(4)生物学的活性物質
生物学的活性物質は、同物質と特異的に結合する第二の生物学的活性物質を捕捉するためのものである。検出対象の第二の生物学的活性物質としては、核酸、タンパク質(ペプチドを含む)、糖等が挙げられる。これらの中では核酸が好ましい。また、本発明の素子を治療用に用いる場合は、生物学的活性物質は、治療用薬剤の有効成分として機能する。
【0085】
生物学的活性物質として核酸を用いる場合は、通常の固相化核酸を用いた核酸同士のハイブリダイゼーションに用いられる核酸と特に変わるところはなく、ハイブリダイゼーションが可能な核酸であれば特に制限されず、例えば、天然又は合成のDNA(オリゴヌクレオチドを含む)もしくはRNA(オリゴヌクレオチドを含む)が挙げられる。また、上記核酸は1本鎖であっても、2本鎖であっても構わない。核酸の鎖長は、ハイブリダイゼーションが可能な長さであれば特に制限されないが、通常5〜50000塩基、好ましくは20〜10000塩基である。また、核酸の5’末端あるいは3’末端にチミン等、紫外線によって反応活性基を有する重合体を有してもよい。
【0086】
以下、生物学的活性物質として、核酸を母粒子に結合させる方法を例示するが、他の物質の場合も、有機化合物A中の、生物学的活性物質に共有結合可能な官能基A2の種類に応じて、生物学的活性物質と官能基Aが共有結合を形成するような反応が生ずるように、適宜溶媒、反応条件等を設定すればよい。
【0087】
核酸を溶解する溶媒も特に制限されず、蒸留水、又は通常核酸溶液の調製に用いられる緩衝液、例えばTE緩衝液(10mM Tris塩酸, pH8.0/1mM EDTA)等のTris緩衝液、食塩を含む水溶液、カルボン酸塩を含む水溶液(クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、酢酸ナトリウム等)、スルホン酸塩を含む水溶液(ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸アンモニウム等)、ホスホン酸塩を含む水溶液等(リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム等)等を挙げることができる。また、一般に市販されている溶媒、Micro Spotting Solution(TeleCHem International, Inc.社製)等も挙げることができる。また、核酸溶液の濃度も特に制限されないが、通常1mmol/ml〜1fmol/ml、好ましくは100pmol/ml〜100fmol/mlの濃度である。
【0088】
核酸溶液を母粒子上に接触させる方法としては、ピペットで核酸溶液を母粒子上に滴下する方法、市販のスポッタを用いる方法、核酸溶液に母粒子を懸濁する方法等が挙げられる。核酸溶液の量としては、特に制限されないが、10nl〜10mlが好ましい。核酸溶液は、1種類でも2種類又はそれ以上であってもよい。尚、母粒子に核酸が固定されたことを示す陽性コントロールとして、標識した核酸を母粒子に接触しておいてもよい。
【0089】
本発明の好ましい形態においては、核酸溶液を母粒子上に接触した後に、紫外線を照射する。また、前記核酸溶液を接触後、紫外線照射前に母粒子を乾燥させることができる。前記核酸溶液の乾燥方法としては、自然に乾燥させてもよく、加熱して乾燥させてもよい。加熱する場合の温度は、通常30〜100℃、好ましくは35〜45℃である。
【0090】
次に、母粒子に、紫外線を照射する。具体的には、波長280nmを含むブロードな波形を有する紫外線であってもよい。照射量は、累積照射量として通常100mJ/cm2以上、好ましくは200mJ/cm2以上である。また、核酸の任意の部分に光反応性基を導入した核酸を用いてもよい。
【0091】
上記のようにして、核酸を母粒子上に固定化することにより、本発明の素子が製造される。本発明の方法により得られる素子は、例えば、ハイブリダイゼーションによる核酸の分析に用いることができる。本発明の方法により母粒子に固定化された核酸は、分散性に優れるため、従来法に比べて検出感度が良好で、再現性もよい。ハイブリダイゼーション及びその検出は、通常の固相化核酸を用いたハイブリダイゼーションと同様にして行うことができる。
【0092】
また、生物学的活性物質としてタンパク質を用いる場合は、通常の固相免疫試薬等と同様に、抗体、抗原、酵素、ホルモン等のタンパク質を用いることができる。
【0093】
<2>本発明の素子の利用
本発明の素子は、好ましい形態においては、同素子上の生物学的活性物質に特異的に結合する第二の生物学的活性物質の検出又は測定に用いられる。この形態においては、素子上の生物学的活性物質と、第二の生物学的物質との結合を阻害する物質を検出又は測定することもできる。
【0094】
前記生物学的活性物質としては、核酸、タンパク質(ペプチドを含む)、糖等が挙げられる。核酸としてはDNA又はRNAが、タンパク質としては、抗原、抗体、酵素などが挙げられる。以下、生物学的活性物質として核酸を例として説明するが、核酸固有の検出法としてハイブリッドを形成させること以外は、他の物質でも通常検出に用いられている方法や条件を採用することができる。
【0095】
本発明の素子は、標識物質で標識した核酸を用いるハイブリダイゼーションによる核酸の検出法において、検出、精製あるいはPCR反応のテンプレートとして用いることができる。すなわち、母粒子に固定化核酸が固定された粒子(以下、「素子」)は、ハイブリダイゼーション用のプローブとして用いることができる。
【0096】
測定対象である核酸にプローブをハイブリダイズさせて、核酸−核酸ハイブリッドを形成させ、系から遊離のプローブを除去した後に、ハイブリッドに含まれる標識物質を検知することによって、測定対象の核酸を検出することができる。また、同様にして、目的とする核酸を精製することができる。あるいは、素子上の核酸に捕捉された核酸を、PCR反応のテンプレートとして使用することができる。
【0097】
本発明においては、母粒子は、蛍光分光光度計、96穴マイクロタイタープレート用蛍光分光光度計、蛍光顕微鏡等を用いて蛍光強度等を測定することにより直接的に検知することができる。
【0098】
本発明の素子を用いたハイブリダイゼーションは、通常の核酸のハイブリダイゼーションと特に変わるところはない。
【0099】
試料に用いる核酸の標識は、通常核酸の標識に用いられる方法によってポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを標識することによって行うことが好ましいが、標識されたヌクレオチドをポリメラーゼ反応によってポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドに取り込ませることによって行うこともできる。
【0100】
本発明の素子は、生物学的活性物質が、2又はそれ以上の親水性基を有する有機化合物を介して母粒子に結合しているため、水系溶媒中での分散安定性がよい。
例えば、疾患に関わるSNP(Single nucleotide polymorphism)の検出や、Gene expression analysisをハイブリダイゼーション法を用いて検出する場合、従来の素子では、素子同士がハイブリダイゼーション溶液中で凝集すると、素子同士が適切な距離を保つことができなくなり、その結果、素子又は遺伝子の立体障害によりハイブリダイゼーションが阻害されやすい。それに対し、本発明の素子は、水系溶媒中での分散性がよいため、前記のハイブリダイゼーションの阻害が起こりにくい。また、この水溶液中での優れた分散性のため、蛍光やラジオアイソトープ等を用いた検体の検出を再現性良く行なうことができる。その結果として、SNPやGene expression analysisを高効率、高感度で検出することができる。特に、生体試料の検出を行なう場合は、検体が極微量しか確保できないことが多く、高効率、高感度で検出する手法の確立が望まれており、本発明の素子を用いた検出方法はこれら極微量の検体の検出を再現性良く検出できることから、有効な検出手法である。
尚、本発明においては、水系溶媒とは、水、TEバッファー、SSCバッファー、リン酸バッファー、酢酸バッファー、ホウ酸バッファー、Tris−HClバッファー、UniHybriTM(Telechem International社製)、ExpressHybTM Hybridization Solution(Clontech社製)、SlideHybTM Survey Kit(Ambion社製)等の緩衝液、DMSO、DMF等の有機溶剤を混合した前記水系溶媒、SDS(ソディウムドデシル硫酸塩)等の界面活性剤を混合した前記水系溶媒、テトラメチルアンモニウム塩等のオニウム塩やホルムアミド等、ハイブリダイズする核酸のTmを変化させることができる各種試薬を混合した前記水系溶媒等を意味する。
【0101】
さらに、例えば、LUMINEXシステム(日立ソフトエンジニアリング社製)を用いたSNP検出、GeneAmp 2400(パーキンエルマー) 、TP3000(TAKARA)を用いたRT−PCR、MBS;Te−MagS(テカン社製)、mRNAアイソレーションキット(ロシュダイアグノスティック)、自動プラスミド抽出装置(TAKARA)を用いた検体分離等の機器にも、本発明の素子は、好適に利用できる。
【0102】
本発明の素子は、他の態様においては、疾患の治療用に用いられる。この態様においては、生物学的活性物質は、治療用薬剤の有効成分として機能する。
【0103】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において特に断りのない限り「部」は「重量部」を「水」は「蒸留水」の意味である。
【0104】
【実施例1】コア粒子の製造
<1>コア粒子製造例1
500mlフラスコに、下記に示した成分からなる混合物を一括して仕込み、窒素で溶存酸素を置換した後、撹拌機で撹拌しながら、窒素気流下、オイルバスを用いて、68℃で約15時間加熱をして、スチレン−メタクリル酸共重合粒子溶液を得た。
【0105】
スチレン 48.2部
メタクリル酸 20.6部
メタノール 179.8部
エタノール 29.9部
水 59.8部
アゾビス2−メチルブチロニトリル(ABNE) 3.0部
スチレン−メタクリル系共重合樹脂溶液 75.0部
(スチレン:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル=2:8 40wt%メタノール溶液)
【0106】
次に、この粒子溶液の一部を吸引ろ過設備を使って、水−メタノール混合溶液(3:7)で3〜5回程度、洗浄−ろ過を繰り返した後、真空乾燥し、コア粒子1を得た。この粒子をSEM(日立製 S−2150)にて形状を観察したところ、球状の粒子群であり、粒子径を測定したところ、平均粒子径が1.42μmであった。
【0107】
<2>コア粒子製造例2
500mlフラスコに下記に示した成分からなる混合物を一括して仕込み、窒素にて溶存酸素を置換した後、撹拌機で撹拌しながら、窒素気流下、オイルバスを用いて、70℃で約15時間加熱をして、スチレン−メタクリル酸共重合粒子溶液を得た。
【0108】
スチレン 34.4部
メタクリル酸 8.6部
メタノール 208.0部
水 52.0部
アゾビス2−メチルブチロニトリル(ABNE) 1.0部
ポリビニルピロリドン(K−90) 15.0部
【0109】
次に、この粒子溶液の一部を吸引ろ過設備を使って、水−メタノール混合溶液(3:7)で3〜5回程度洗浄−ろ過を繰り返した後、真空乾燥し、コア粒子2を得た。この粒子をSEM(日立製 S−2150)にて形状を観察したところ、球状の粒子群であり、粒子径を測定したところ、平均粒子径が0.78μmであった。
以上のコア粒子の製造結果を、まとめて表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
【実施例2】有機化合物Aの合成
<1>ポリカルボジイミド化合物合成例1
2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)500gと、重合度m=8のポリオキシエチレンモノメチルエーテル367.8gとを、50℃で1時間初期反応させた後、カルボジイミド化触媒5gを加え、85℃で6時間反応させ、末端封止したポリカルボジイミド化合物(重合度=5)を得た。これに蒸留水508.3gを徐々に加え、ポリカルボジイミド化合物1溶液(樹脂濃度60wt%)を得た。カルボジイミド当量は318/NCNであった。
【0112】
<2>ポリカルボジイミド化合物合成例2
テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)500gと、カルボジイミド化触媒10gを180℃で10時間反応させ、イソシアネート末端を有するポリm−テトラメチルキシリレンカルボジイミド(重合度=3)を得た。これに、重合度m=8のポリオキシエチレンモノメチルエーテルを393.5g加え、140℃で6時間反応させ、末端封止したポリカルボジイミド化合物2を得た。これに蒸留水550.6gを徐々に加え、ポリカルボジイミド化合物2溶液(樹脂濃度60wt%)を得た。カルボジイミド当量は537/NCNであった。
【0113】
<3>ポリカルボジイミド化合物合成例3
2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)500gと、エタノール44.1gとを、40℃で1時間初期反応させた後、カルボジイミド化触媒5gを加え75℃で7時間反応させ、末端封止したポリカルボジイミド樹脂(重合度=5)を得た。これにテトラヒドロフラン292.4gを徐々に加え、ポリカルボジイミド化合物3溶液(樹脂濃度60wt%)を得た。カルボジイミド当量は183/NCNであった。尚、得られたポリカルボジイミド化合物(重合度=5)の一部について、水との溶解性を確認したところ、殆ど溶解せず、このポリカルボジイミド化合物は疎水性であった。
以上で得られたポリカルボジイミド化合物の合成結果を、まとめて表2に示す。
【0114】
【表2】
【0115】
【実施例3】母粒子(A)の製造
<1>母粒子製造例1
300mlフラスコに、下記の成分からなる混合物を一括して仕込み、撹拌機で撹拌しながら、窒素気流下、オイルバスを用いて、45℃で約15時間加熱を行い、ポリカルボジイミド化合物を反応させて母粒子溶液を作製した。
【0116】
コア粒子1溶液 18.0部
ポリカルボジイミド化合物1溶液 16.6部
水 31.2部
メタノール 151.4部
【0117】
次に、母粒子を、吸引ろ過設備を使って、水−メタノール混合溶液(3:7)で3回、メタノール2回程度、洗浄−ろ過を繰り返した後、真空乾燥し、母粒子1を得た。この粒子をSEM(日立製 S−2150)にて形状を観察したところ、1.76μmであった。更に、この粒子をフーリエ変換赤外分光光度計(島津製 FT−IR8200PC)で測定したところ、波長2150(1/cm)前後でカルボジイミド基による吸収ピークが得られた。
【0118】
また、この粒子の一部を水媒体に分散させて、粒度分布(日機装 マイクロトラック9320HRA)で分散性の確認をしたところ、SEMで得た結果と同様の粒子径であり、単分散を示す粒度であった。
【0119】
<2>母粒子製造例2
300mlフラスコに、下記の成分からなる混合物を一括して仕込み、撹拌機で撹拌しながら、窒素気流下オイルバスを用いて、温度50℃で約15時間加熱を行い、ポリカルボジイミド化合物を反応させて母粒子溶液を作製した。
【0120】
コア粒子1溶液 11.1部
ポリカルボジイミド化合物2溶液 9.4部
水 28.2部
メタノール 74.6部
【0121】
次に、母粒子を、吸引ろ過設備を使って水−メタノール混合溶液(3:7)で3回、メタノール2回程度、洗浄−ろ過を繰り返した後、真空乾燥し、母粒子2を得た。この粒子をSEM(日立製 S−2150)にて形状を観察したところ、1.88μmであった。更に、この粒子をフーリエ変換赤外分光光度計(島津製 FT−IR8200PC)で測定したところ、波長2150(1/cm)前後でカルボジイミド基による吸収ピークが得られた。
【0122】
また、この粒子の一部を水媒体に分散させて、粒度分布(日機装 マイクロトラック9320HRA)で分散性の確認をしたところ、SEMで得た結果と同様の粒子径であり単分散を示す粒度であった。
【0123】
<3>母粒子製造例3
300mlフラスコに下記の成分からなる混合物を一括して仕込み、撹拌機で撹拌しながら、窒素気流下、オイルバスを用いて、45℃で約15時間加熱を行い、ポリカルボジイミド化合物を反応させて母粒子溶液を作製した。
【0124】
コア粒子2溶液 22.0部
ポリカルボジイミド化合物1溶液 11.1部
水 20.9部
メタノール 101.2部
【0125】
次に、母粒子を、吸引ろ過設備を使って水−メタノール混合溶液(3:7)で3回、メタノール2回程度洗浄−ろ過を繰り返した後、真空乾燥し、母粒子3を得た。この粒子をSEM(日立製 S−2150)にて形状を観察したところ、0.98μmであった。更に、この粒子をフーリエ変換赤外分光光度計(島津製FT−IR8200PC)で測定したところ、波長2150(1/cm)前後でカルボジイミド基による吸収ピークが得られた。
【0126】
また、この粒子の一部を水媒体に分散させて、粒度分布(日機装 マイクロトラック9320HRA)で分散性の確認をしたところ、SEMで得た結果と同様の粒子径であり単分散を示す粒度であった。
【0127】
<4>母粒子製造例4
300mlフラスコに下記の成分からなる混合物を一括して仕込み、撹拌機で撹拌しながら、窒素気流下オイルバスを用いて、50℃で約15時間加熱を行い、ポリカルボジイミド化合物を反応させて母粒子溶液を作製した。
【0128】
コア粒子2溶液 22.1部
ポリカルボジイミド化合物2溶液 12.5部
水 37.8部
メタノール 99.8部
【0129】
次に、母粒子を、吸引ろ過設備を使って水−メタノール混合溶液(3:7)で3回、メタノール2回程度洗浄−ろ過を繰り返した後、真空乾燥し、母粒子4を得た。この粒子をSEM(日立製 S−2150)にて形状を観察したところ、1.06μmであった。更に、この粒子をフーリエ変換赤外分光光度計(島津製FT−IR8200PC)で測定したところ、波長2150(1/cm)前後でカルボジイミド基による吸収ピークが得られた。
【0130】
また、この粒子の一部を水媒体に分散させて、粒度分布(日機装 マイクロトラック9320HRA)で分散性の確認をしたところ、SEMで得た結果と同様の粒子径であり単分散を示す粒度であった。
【0131】
<5>母粒子製造例5
特開平8−23975号公報の実施例6に記載された方法に準じて、300mlフラスコに下記に示した成分からなる混合物を一括して仕込み、撹拌機で攪拌しながら、30分程度浸漬した。
【0132】
架橋粒子(ジビニルベンゼン主成分)* 5.0部
ポリカルボジイミド化合物3溶液 16.7部
THF 83.3部
*:架橋粒子(積水ファインケミカル製SP−2095、平均粒子径9.5μm、CV値4.7%)
次に、前記混合物を、吸引ろ過設備を使ってろ過をした後、温度60℃の乾燥機にて約3時間乾燥して、ポリカルボジイミド化合物被覆粒子を得た。
【0133】
この粒子をフーリエ変換赤外分光光度計(島津製 FT−IR8200PC)で測定したところ、波長2150(1/cm)前後でカルボジイミド基による吸収ピークが得られた。
【0134】
しかし、この粒子の一部を水媒体に分散させて、粒度分布(日機装 マイクロトラック9320HRA)で分散性の確認をしたところ、製造例1〜4の母粒子の粒子径分布よりも広く、分布末端が長い一山の分布が得られた。そこでこの粒子をSEM(日立製 S−2150)にて形状を観察したところ、平均粒子径が17.06μmであり、凝集した粒子が散見された。尚、この平均粒子径の算出にあたり、凝集した粒子についてはそれを一つの粒子と見なして、SEMを用いて粒子の最長径と最短径の平均値を算出し、それを粒子径とした。
以上の母粒子の製造結果を、まとめて表3に示す。
【0135】
【表3】
○:単分散する母粒子である。
△:一部単分散するが、凝集した母粒子である。
×:殆ど凝集した母粒子である。
【0136】
【実施例4】コア粒子及び母粒子の評価
<1>評価試験1
実施例3で製造した母粒子1〜5及びそれらの製造に用いた各々のコア粒子を、SEMにて測定可能な倍率(100〜10,000倍)で写真を撮り、粒子1個に対してランダムに長径及び短径を15回測定し、これをランダムにn=100個繰り返し測定して、その平均値をとり、球状粒子指数平均(長径/短径)を求めた。結果を表4に示す。
【0137】
【表4】
○:沈降速度の均一化、粒子の表面積の均一化、生物学的に活性な物質
の付加量の均一化が可能な精度の高い粒子である。
×:沈降速度の均一化、粒子の表面積の均一化、生物学的に活性な物質
の付加量の均一化が難しい精度の低い粒子である。
【0138】
<2>評価試験2
実施例3で製造した母粒子及びそれらの製造に用いた各々のコア粒子の粒子径をSEM(100〜10,000倍)にて写真を撮り、その粒子径をランダムにn1=500個測定し、平均粒子径を測定した。そして下記の計算式からカルボジイミド化合物層の平均厚み径(L)を求めた。結果を表5に示す。
【0139】
【数6】
L=(L2−L1)/2
L1は試作したコア粒子(A1)の平均粒子径
L2は試作した母粒子(A)の平均粒子径
【0140】
【表5】
***:凝集粒子の為、数値化できず
【0141】
<3>評価試験3
前記の評価で測定した母粒子及びコア粒子の測定結果から、CV値、CV比を求めた。結果を表6に示す。
【0142】
【表6】
【0143】
上記の評価試験1〜3の結果より、本発明の実施例に用いた有機化合物Aを有する母粒子は、コア粒子の表層部に有機化合物A層を有する母粒子であり、比較的粒度の揃った球状の粒子であることが確認できた。
【0144】
また、上記製造例1〜4で得られた母粒子を、公知の分散設備を使用して水溶媒に分散させた後、1wt%粒子分散水溶液に調整し、母粒子1〜4溶液とした。この母粒子1〜4溶液を、粒度分布計(日機装 マイクロトラック9320HRA)で測定したところ、前記と同等の平均粒子径であり、分布もシャープな一山となる単分散した粒子群であった。
【0145】
【実施例5】
<1>素子の製造
常法に従い、オリゴヌクレオチド合成機(Perkin−elmer Applied biosystems)を用いて、配列番号1、2及び3に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(30マー)を合成した。尚、配列番号1に示すオリゴヌクレオチドは、5’末端をビオチン化した。また、配列番号2に示すオリゴヌクレオチドは、ビオチン化プローブ(配列番号4)と相補性を持っており、配列番号3に示すオリゴヌクレオチドは、配列番号2に示すオリゴヌクレオチドと1塩基配列が異なるため。相補性を持っていない。これらのオリゴヌクレオチドを100pmol/μlになるように3×SSCに溶解した。
【0146】
上記母粒子1溶液に、上記オリゴヌクレオチド溶液のそれぞれを、石英セル中で混合した。次にUvstratalinker 2400(STRATAGENE社製)を用い、紫外線を16cmの距離から1200mJ/cm2照射した。照射時間は480秒であった。その後、母粒子を水中で30分間振とうして洗浄した後、乾燥させて、素子を得た。
【0147】
<2>ハイブリダイゼーション
上記の素子と、3pmolビオチン化プローブ(配列番号4、262bp)を含むハイブリダイゼーション溶液(Arrayit UniHyb (TeleCHem International, Inc.)60μlを、エッペンドルフチューブ内で混合し、乾燥機を用いて45℃で2時間加熱した。配列番号2のオリゴヌクレオチドは、ビオチン化プローブ(配列番号4)と相補的な配列を含んでいる。
【0148】
上記ハイブリダイゼーションの後、以下の条件でポストハイブリダイゼーション洗浄を行い、素子に非特異的に吸着したビオチン化プローブを除去した。
【0149】
〔ポストハイブリダイゼーション洗浄の条件〕
1)2×SSC, 0.1%SDS; 室温、5分間、2回
2)0.2×SSC, 0.1%SDS; 40℃、5分間、2回
3)2×SSC; 室温1分間、3回
【0150】
素子に、乳タンパクを含むブロッキング溶液(ブロックエース 雪印乳業製)1.5mlをのせ、室温で30分間ブロッキングを行った。ブロッキング溶液を除いた後、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲート溶液(VECTOR社製)を1.5mlのせ、室温で30分間反応させた。つぎに、素子をTBST(50mM Tris−HCl(pH7.5), 0.15M NaCl, 0.05% Tween 20)溶液に浸し、5分間振とうして、反応しなかったコンジュゲートを除去した。最後に、素子に基質溶液(TMB)を1.5ml加えて、30分間放置し、発色反応を行った。
【0151】
その結果を、表7に示す。配列番号2のオリゴヌクレオチドを固定化した粒子のシグナルは、固定化されたオリゴヌクレオチドの量を、配列番号3のオリゴヌクレオチドを固定化した粒子のシグナルはハイブリダイゼーションの強度を、それぞれ示す。
【0152】
【比較例1】
<1>素子の製造
実施例3の母粒子製造例5で作製した母粒子(特開平8−23975の実施例6に記載された方法に準じて作製した母粒子)溶液と、実施例5のオリゴヌクレオチド溶液のそれぞれを、石英セル中で混合した。次に、Uvstratalinker 2400(STRATAGENE社製)を用い、紫外線を16cmの距離から1200mJ/cm2照射した。照射時間は480秒であった。その後、母粒子を水中で30分間振とうして洗浄した後、乾燥させ、素子を得た。
【0153】
<2>ハイブリダイゼーション
上記の素子と、3pmolビオチン化プローブ(配列番号4、262bp)を含むハイブリダイゼーション溶液(Arrayit UniHyb (TeleCHem International, Inc.)60μlを、エッペンドルフチューブ内で混合し、乾燥機を用いて45℃で2時間加熱した。
【0154】
上記ハイブリダイゼーションの後、実施例5と同様にして、ハイブリダイゼーションの検出を行った。結果を表7に示す。
【0155】
【表7】
◎:シグナルが非常に高感度かつ非常に明瞭に現れた。
〇:シグナルが高感度かつ明瞭に現れた。
△:シグナルが低感度または不明瞭に現れた。
×:シグナルが全く現れなかった。
【0156】
表7の結果から明らかなように、実施例5の素子は、オリゴヌクレオチドが確実に母粒子に固定化されていることがわかる。また、実施例5の素子は、ハイブリダイゼーションシグナルも明瞭に現れた。配列番号3にはシグナルはまったく現れなかった。一方、比較例1の素子は、固定したオリゴヌクレオチドからのシグナル及びハイブリダイゼーションシグナルが低感度かつ不明瞭に現れたことから、カルボジイミド化合物が母粒子から剥がれ落ちたと考えられる。したがって、実施例5の素子では、母粒子ととカルボジイミド化合物が共有結合を形成することにより、母粒子からカルボジイミド化合物が剥がれ落ちることを防ぎ、その結果、シグナルを高感度かつ明瞭に得ることができたと考えられる。
【0157】
尚、同様に母粒子2〜4溶液についても、同様な手順でオリゴヌクレオチドを母粒子に固定化して素子を作製し、ハイブリダイゼーション検出を行なったところ、実施例5と同様な結果が得られた。
【0158】
【実施例6】素子の分散性の評価
実施例5及び比較例1で得られた素子を水で希釈して、粒度分布計(日機装 マイクロトラック9320HRA)で分散性の確認を行なった。
【0159】
その結果、実施例5の素子は、母粒子1と類似した単分散分布を示す粒子群であり、異なった分布を示すような変化は現れなかったが、比較例1のオリゴヌクレオチドを固定化した素子では、使用したコア粒子の粒子径分布よりも広く、分布末端が長い一山の分布が得られた。
【0160】
また、SEM(100〜10,000倍)により確認したところ、実施例5の素子では、凝集した粒子及び変形した粒子(母粒子形状含む)は確認できなかったが、比較例1の素子では、凝集した粒子群が散見された。これらの結果を表8に、また素子径、CV値、CV比を表9に示す。
【0161】
【表8】
A:母粒子に類似する粒子径を有する単分散素子である
B:一部母粒子と類似する粒子径を有するが、分布幅が広い素子である
C:母粒子と類似の粒子径を有さず、分布幅が広い素子である
【0162】
【表9】
※:凝集した粒子についてはそれを一つの粒子と見なして、SEMを用いて
粒子の最長径と最短径の平均値を算出し、それを粒子径とした。
【0163】
このことから、本発明の素子は、溶液分散性がよく、高性能であることが確認できた。
同様に、母粒子2〜4を用いて製造した素子についても分散性の確認を行なったところ、粒度分布、SEMともに良好であり、溶液分散性がよいことが確認できた。
【0164】
【発明の効果】
本発明の素子は、溶液分散安定性がよく、生物学的活性物質の検出もしくは測定、又は治療用の素子として、好適に使用することができる。
【0165】
【配列表】
Claims (10)
- コア粒子と、コア粒子に化学結合により固定化された、2又それ以上の親水性基を有する有機化合物からなる母粒子と、前記有機化合物を介して母粒子に結合した生物学的活性物質からなる、生物学的活性物質を固定化した素子。
- 水系溶媒中に用いられることを特徴とする請求項1に記載の素子。
- 母粒子の平均粒子径が0.01〜100μmである請求項1又は2に記載の素子。
- 母粒子が球状又は略球状である請求項1〜3のいずれか一項に記載の素子。
- 前記コア粒子及び生物学的活性物質は、カルボジイミド基、エステル基、カーボネート基、エポキシ基、及びオキサゾリン基から選ばれる官能基との反応により結合していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の素子。
- 前記生物学的活性物質が、核酸、タンパク質、ハプテン、糖から選ばれる請求項1〜7のいずれか一項に記載の素子。
- 前記素子は、前記生物学的活性物質と、試料中に含まれる第二の生物学的活性物質との特異的な結合によって、試料中の第二の生物学的活性物質を検出又は測定するためのものである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の素子。
- 前記生物学的活性物質は疾患の治療用の薬剤である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の素子。
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