JP2004316349A - 木造建築物の接合装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】通柱と、梁や胴差し、桁としての横架材とを確実且つ容易に接合可能とし、しかも木造建築物の耐震性を向上させ得る接合装置を提供する。
【解決手段】通柱2と、梁、胴差し、桁としての横架材とを接合する接合装置であり、通柱2にボルト固定される接合部材10と、横架材3の端部と通柱2とを相対的に接近させる移動部材12とを具える。接合部材10は、通柱2を挿通させて通柱2にボルト固定される筒状固定部5の外側面6に、横架材3の端部分を嵌め入れて下方から支持する上端開放のコ字状支持部9を突設してなる。移動部材12は、下方への移動によって、横架材3の端部分7に設けた挿通孔51を挿通し且つコ字状支持部9の左右の側板29,29の横挿通孔50,50を挿通したボルト52を、筒状固定部5に向けて相対的に移動させる。
【選択図】 図6
【解決手段】通柱2と、梁、胴差し、桁としての横架材とを接合する接合装置であり、通柱2にボルト固定される接合部材10と、横架材3の端部と通柱2とを相対的に接近させる移動部材12とを具える。接合部材10は、通柱2を挿通させて通柱2にボルト固定される筒状固定部5の外側面6に、横架材3の端部分を嵌め入れて下方から支持する上端開放のコ字状支持部9を突設してなる。移動部材12は、下方への移動によって、横架材3の端部分7に設けた挿通孔51を挿通し且つコ字状支持部9の左右の側板29,29の横挿通孔50,50を挿通したボルト52を、筒状固定部5に向けて相対的に移動させる。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、木造建築物において、通柱と、胴差し、梁、桁等としての横架材とを接合するために用いられる接合装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の木造建築物において、通柱と、梁、胴差し、桁としての横架材とを接合するに際しては、図30に示すように、通柱aにほぞ穴bを設けると共に、横架材cの端部にはほぞdを設け、該ほぞdをほぞ穴bに差し込むのが一般的であった。
【0003】
しかしながら、通柱aにほぞ穴bを設けると、その部分の断面積が大きく減少するため、通柱の強度が低下することになる。その結果、大きな地震力が作用した場合に、両者の接合部分で通柱aが折損しやすい問題があった。特に三階建ての木造建築物に用いる通柱にあっては、該通柱に横架材を連結するためのほぞ孔を、通柱の中間部分と上端側の2箇所で設けることになるが、断面積が大きく減少した部分が上下2箇所に生ずることから、通柱の折損の問題が一層深刻となる問題があったのである。
【0004】
そこで、両者の接合部分を補強する手段の一つとして、例えば図30に示すように、羽子板ボルトeの羽子板fを前記横架材cの端部の上下面g,hに固定すると共にその引張りボルトjを、前記通柱aの前記ほぞ穴bの上下に設けたボルト挿通孔k,kに挿通せしめ、該引張りボルトjの端部mに、座金nを介してナットpを螺合し締め付けることが行われていた。
【0005】
しかしながら、このように羽子板ボルトeを用いて補強したとしても、前記引張りボルトjを挿通させるためのボルト挿通孔k,kを、各横架材cについて2個づつ設けるために、通柱aに数多くのボルト挿通孔kが設けられることとなり、ほぞ穴の加工によって強度低下を来した通柱が一層弱体化されてしまう問題があった。
【0006】
そこで、かかる従来の問題点を改善せんとして、特開平9−268655号公報が開示する軸組構造が提案されている。
【0007】
該軸組構造は、図31〜32に示すように、通柱aと横架材cとを軸組固定具qを介して接合する構成のものであり、該軸組固定具qは、通柱aを挿通させ且つ該通柱aにボルト固定される筒状延設部rに、横架材cの端部分sを嵌め入れるためのコ字状延設部tを水平方向に突設してなり、該筒状延設部rにボルト孔u1が貫設されると共に、該コ字状延設部tの対向する側面部v,vにはボルト孔u2が貫設されていた。そして図33に示すように、該筒状延設部rを通柱aの所定高さ位置に配置すると共に、通柱aに貫設された挿通孔wを挿通するボルトxを前記ボルト孔u1に挿通せしめナットyで締め付けることにより、該筒状延設部rを通柱aに固定する一方、図34に示すように、前記横架材cの端部分sを、前記コ字状延設部t内に嵌め入れ、該端部分sに貫設した挿通孔Aを、前記コ字状延設部tの対向する側面部v,vに設けられた前記ボルト孔u2,u2に位置合わせし、該位置合わせされた孔にボルトBを挿通せしめナットDで締め付けることにより、横架材の端部分sをコ字状延設部tにボルト固定する構成のものであった。
【0008】
しかしながら、かかる軸組固定具qを用いる接合手段によるときは、通柱aが若干でも傾いている等の施工誤差が生じたり、横架材cの長さに切断誤差が生じていたり、或いは、挿通孔Aを横架材cに貫設する際の加工誤差等によって、横架材cの端部分sを前記コ字状延設部t内に嵌め入れた際に、横架材cに設けられている挿通孔Aとコ字状延設部tに設けられているボルト孔u2の位置が合わず、ボルトBを挿通できない場合が生じやすかった。特に、前記筒状延設部rに複数のコ字状延設部tが設けられているときは、一部の横架材については、挿通孔Aとボルト孔u2とを位置合わせできても、横架材の全てについて、挿通孔Aとボルト孔u2とを正しく位置合わせすることは容易でなかった。そのため、横架材cに別個の挿通孔を設ける必要も生じ、施工手間の増大や施工の複雑化を招く原因となった他、新たに設けた挿通孔と元の挿通孔とが一部分で重なったときは、横架材cの挿通孔が横長の長孔状になってしまうためにボルトの挿通状態に遊びが生じ、軸組固定具を介しての通柱と横架材との接合強度を不安定化させる原因になった。
【0009】
又、前記軸組固定具を用いる接合手段によるときは、位置合わせされた挿通孔とボルト孔にボルトを挿通できたとしても、横架材に設けられている挿通孔にボルトが密接状態で挿通されるとは限らず、通常は、挿通孔がボルト径よりも大きいために、通柱と横架材とを緊張状態で接合し難く、従って、通柱と横架材との一体性が弱くなり、地震時において、通柱と横架材との接合部分が不安定化しやすい問題があった。
【0010】
【特許文献1】特開平9−268655号公報(第3頁、図4)
【特許文献2】特開2002−21200号公報(第2頁、図2−3)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みて開発されたものであり、通柱と横架材との接合強度を向上させて木造建築物の耐震性を向上させ得ると共に、通柱と横架材との接合作業を確実且つ容易に行うことを可能とする木造建築物の接合装置の提供を課題とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用する。
即ち本発明に係る木造建築物の接合装置(以下接合装置という)は、木造建築物において、通柱と横架材とを接合するために用いられる接合装置であり、前記通柱を挿通させ且つ該通柱にボルト固定される四角筒状をなす筒状固定部の四つの外側面の少なくとも一つに、前記横架材の端部分を嵌入させて下方から支持する、上端開放の断面コ字状をなすコ字状支持部が突設されてなる接合部材と、前記横架材の端部と前記通柱とを相対的に接近させる移動部材とを具える。前記横架材の端部分には、左右方向で貫設された挿通孔が上下に複数設けられると共に、前記コ字状支持部の左右の側板には、前記の各挿通孔を挿通するボルトに対応させて、該ボルトを挿通させるための横挿通孔が、前記コ字状支持部の延長方向に長く設けられており、又、該左右の側板の外面には、前記横挿通孔よりも先側位置において、下端が上端よりも前記筒状固定部に接近するように傾斜した案内面を有する案内突部が配置されている。又、前記移動部材は、前記ボルトを挿通させることができ且つ下端開放で上下に長い縦挿通孔が設けられると共に、前記案内面と平行する傾斜面を有しており、前記の各挿通孔を挿通するボルトの端部分を前記横挿通孔と前記縦挿通孔に挿通させると共に、前記移動部材の傾斜面を前記案内突部の案内面に当接させた状態で該移動部材を下方向に移動させることにより、該移動部材が、その傾斜面が前記案内面に案内されて下方向に移動し、これにより、前記縦挿通孔の前記傾斜面側の面が前記ボルトを前記筒状固定部に向けて相対的に移動させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
前記接合装置において、前記接合部材は次のように構成するのがよい。即ち、上下に長い縦片の上下方向所要部の対向側縁に、横方向に突出する横片が逆向きに突出され、該横片と前記縦片との接続部分において、上下端の何れかが開放したスリットが設けられてなる4枚の枠板を、上下のスリットを互いに嵌め合わせることによって井桁状に組み合わせて、前記縦片の4枚によって、上下に連続する四角筒状をなす前記筒状固定部を形成し、該筒状固定部が形成する角形挿通孔の四つの入隅を直角面に形成し、又前記筒状固定部の四つの外側面の少なくとも一つにおいて平行状態に突設された左右の横片間の下端を底板で覆い、該横片の内面と該底板の上面は直角に交わったものとし、該左右の横片と前記と底板とにより、上端開放の断面コ字状なす前記コ字状支持部を形成するのがよい。
【0014】
該接合装置において、前記底板の下面と前記筒状固定部の外側面に、補強板の、直角を挟む二辺部を当接状態に固定し、該補強板に、筋交の上端部分を連結するためのビス孔を設けるのがよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜6、図7〜8、図9〜10において本発明に係る接合装置1は、木造建築物において、通柱2と、梁、胴差し、桁としての横架材3とを接合するために用いられるものであり、前記通柱2を略密接に挿通させるための四角筒状をなす筒状固定部5の外側面6の少なくとも一つに、前記横架材3の端部分7を下方から支持する上端開放の断面コ字状なすコ字状支持部9が突設されてなる接合部材10と、前記横架材3の端部11と前記通柱2とを相対的に接近させる移動部材12とを具えるものである。
【0016】
図1〜2に示す接合装置1は、全ての外側面6,6,6,6にコ字状支持部9を放射状に突設してなり、図8に示す接合装置1は、三つの外側面6,6,6にコ字状支持部9を突設してなり、又図10は、隣り合う外側面6,6にコ字状支持部9を突設してなるものである。
【0017】
かかる構成を有する接合装置1の内、先ず、全ての外側面6,6,6,6にコ字状支持部9を突設してなる接合部材10を具えた図1〜2に示す装置1について、その具体的な構成を説明する。
【0018】
該接合装置1を構成する接合部材10は、本実施の形態においては、図11に示すような4枚の枠板13,13,13,13を井桁状に組み合わせ且つ適宜溶接することによって形成された図12に示す主体15を用いて構成されている。該枠板13は、例えば、肉厚が3.2mm程度の鋼板を用いて形成されており、上下に長い縦片16の上端側の対向側縁に、横方向に同長さで突出する横片17,17が逆向きに突出されてなるT字状を呈する。そして、下に位置する2枚の枠板13a,13aは、平行状態を呈して向き合っており、且つ、上に位置する2枚の枠板13b,13bは、その横片17,17が、前記下に位置する2枚の枠板13a,13aの横片17,17の延長方向と直角に交差する如く、平行状態を呈して向き合っている。
【0019】
そして、下に位置する2枚の枠板13a,13aの夫々について、前記縦片16と前記横片17との接続部分に、上端が開放し且つ該横片17の上下長さの略半分に相当する深さを有したスリット19,19が形成されている。又、上に位置する前記2枚の枠板13b,13bの夫々について、前記縦片16と前記横片17との接合部分に、下端が開放し且つ該横片17の上下長さの略半分の深さを有するスリット19,19が形成されている。
【0020】
然して、下に位置する2枚の枠板13a,13aに設けられているスリット19と、上に位置する2枚の枠板13b,13bに設けられているスリット19とを上下位置合わせして互いに嵌め合わせると、4枚の枠板13a,13a,13b,13bが井桁状に組み合わされ、図12〜13に示すように、上に位置する枠板13b,13bの対向する縦片16,16が、下に位置する枠板13a,13aの対向する縦片16,16の端部20,20間で挟まれた状態となる。そして、直角に交わる縦片16,16の縁部相互の当接部の図12に示す外面側21が溶接されると共に、直角に交わる横片17,17の図12に示す外面側22が溶接されることにより、前記主体15が形成され、上下方向に連続する四角筒状をなす前記筒状固定部5(その角形挿通孔23の内法は、例えば約120mm)が形成されている。該筒状固定部5の角形挿通孔23の4つの入隅25,25,25,25は、図13に示すように、溶接部が存在せずに直角の面をなすため、該筒状固定部5に前記通柱2(対向面間の距離は、例えば118mm)を支障なく略密接に挿通させることができるのである。
【0021】
そして該筒状固定部5の4つの外側面6,6,6,6の夫々において、平行する横片17,17、17,17、17,17、17,17が突設されている。かかる構成の主体15において、図3に示すように、対向する横片17,17間の下端24(図12)を底板26で覆うと共に、該底板26の縁部と横片17の下縁部との当接部の図3に示す外面側27を溶接する。これにより、対向する横片17,17としての側板29,29と底板26とにより、上端開放の断面コ字状をなす前記コ字状支持部9が形成され、側板29の内面30と底板26の上面31とは直角に交わり、ここには溶接部は存在しない。
【0022】
そして該筒状固定部5は、本実施の形態においては、その上端32が前記コ字状支持部9の上端33と面一となされ、該コ字状支持部9の下方に稍突出している。
【0023】
又、図5に示すように直角をなす、底板下面35と前記外側面6とに、その長手中央線に沿って当接する如く、例えば直角三角形板状をなす補強板36の直角を挟む2辺部37,37が当接せしめられ、その当接部分が溶接されている。なお本実施の形態においては、該補強板36の先端側で、該補強板の側面39と底板下面35とに当接する矩形状片41が当接状態に溶接されている。
【0024】
そして、前記筒状固定部5を構成する対向した縦片16,16に、前記補強板36の両側に位置させて、図3、図13に示すように、通柱2に貫設されたボルト孔34を挿通するボルト42を挿通させるボルト孔43,43が同心に設けられている。又、対向した他の縦片16,16にも、前記補強板36の両側に位置させて、且つ前記ボルト孔43,43の上に位置させて、通柱2に貫設され且つ前記挿通孔34とは接しないボルト孔38を挿通するボルト42を挿通させるボルト孔44,44を同心に設けている。
【0025】
又、前記各補強板36,36,36,36には、該補強板36を筋違45(図25〜26)の上端部分46にビス47で連結するためのビス孔48が分散状態に設けられると共に、前記矩形状片41には、図5に示すように、吊孔49が設けられている。該吊孔49は、接合部材10を通柱2に装着する際等に該接合部材10を吊下するのに用いる。
【0026】
又図6に示すように、前記コ字状支持部9の左右の側板29,29に、同心に、該コ字状支持部の延長方向に長い横挿通孔(その寸法は、例えば、長さが約31mmで上下幅が約16mm)50,50が上下に2個設けられており、該横挿通孔50,50には、コ字状支持部9に嵌め入れられた横架材3の端部分7に左右方向に貫設された挿通孔(直径は、例えば約15mm)51を挿通するボルト(直径は、例えば約12mm)52が挿通可能となされている。そして前記左右の側板29,29の外面には、前記横挿通孔50よりも稍先側に位置させて、下端53が上端55よりも前記筒状固定部5に接近するように傾斜した案内面56を有する矩形板状の案内突部57が設けられ、該側板29に溶接されている。該案内面56の垂直線に対する傾斜角度θ(図16)は、前記移動部材12を後述のように下方向に移動させやすく、しかも、下方向に移動した移動部材12が浮き上がりにくくするために、例えば15度に設定するのがよい。
【0027】
前記移動部材12は、前記ボルト52の軸部59を挿通させ且つ下端開放で上下に長い縦挿通孔(幅は、例えば約16mm)60が設けられると共に、前記案内面56と平行する傾斜面61を有している。
【0028】
三つの外側面6,6,6にコ字状支持部9を突設してなる、図7〜9に示す前記接合装置1や、隣り合う外側面6,6にコ字状支持部9を突設してなる、図9〜10に示す前記接合装置1の構成は、基本的には、全ての外側面6,6,6,6にコ字状支持部9を突設してなる前記接合装置1と同様である。そして、コ字状支持部9が設けられない外側面6aにおいては、その両側縁で、前記横片17からなる補強リブ62,62が突設されている。この補強リブ62は、接合部材10を補強するものであり、例えば20mm程度の突出長さを有する。
【0029】
かかる構成を有する接合装置1を用いて、隣り合う通柱2,2相互を、梁としての横架材3で連結する施工工程を図14〜26に基づいて説明すれば次のようである。
【0030】
先ず、通柱2を立設するに先立って、図4、図13に示すように、該通柱2を前記筒状固定部5の角形挿通孔23に挿通せしめ、通柱2の所定高さ位置において、位置合わせされた、前記通柱2の挿通孔34と前記筒状固定部のボルト孔43とに、その一端側からボルト42を挿通せしめ、且つ、位置合わせされた、前記通柱の挿通孔38と前記筒状固定部のボルト孔44とに、その一端側からボルト42を挿通せしめ、それらの他端側に突出したボルト先端部63にナット65を螺合し締め付けることによって、前記接合部材10を通柱2に固定する。その後、接合部材10が固定された通柱2を、図15に示すように、布基礎58に固定された土台64上に立設する。隣り合う通柱2,2に固定された接合部材10は、図15に示すように同高さに位置する。
【0031】
その後、図15〜16に示すように、対向状態にあるコ字状支持部9,9に、横架材3の両端部分7,7を嵌め入れる。この状態で、横架材3の端面66と筒状固定部5の外側面6との間に、通常、図16に示すように2〜3mm程度の隙間Gが生ずる。
【0032】
前記横架材3の端部分7の上下に、図6に示すように、円形の挿通孔51,51が左右方向で貫設されているが、前記コ字状支持部9の左右の側板29,29には、コ字状支持部の延長方向に長い前記横挿通孔50が該挿通孔51と略同高さに設けられているため、挿通孔51が横挿通孔50に確実に連通せしめられる。
【0033】
次に図17〜18に示すように、連通状態にある挿通孔51と横挿通孔50とに、一方の側板29a側からボルト52を挿通させる。その後、図19に示すように、他方の側板29b側において、ボルト先端部67にナット69を緩く螺合する。この状態でボルト52は、横挿通孔50の長さの範囲で横移動でき、この移動に伴い、横架材3が横移動可能である。
【0034】
このように上下のボルト52,52を挿通状態とした後、図20〜21に示すように、前記移動部材12を、その傾斜面61を前記案内突部57の案内面56に当接させながら、例えば手動で下方向に押し込むと、この下方向への移動に伴い、上下のボルト52,52の両端部分(ボルト頭70と側板29との間の部分、ナット69と側板29との間の部分)71,72、71,72が縦挿通孔60内に挿入せしめられ、上下のボルト52,52が、図22に示すように、横架材3に設けられた前記挿通孔51の、通柱側の面部73に当接し且つ、縦挿通孔60の、前記案内面56に近い面75に当接状態となる。
【0035】
その後、前記移動部材12の上端76を、ハンマーで打撃すると、該移動部材12が、図23に示すように、その傾斜面61が前記案内面56に案内されて下方向に更に移動することになる。これにより、縦挿通孔60の前記面75が、前記上下のボルト52,52を、前記筒状固定部5に向けて相対的に移動させる。この移動の後、図24に示すように前記ナット69を締め付ける。これにより横架材3を、隣り合う通柱2,2間に、接合装置1,1を介して緊張状態に架け渡すことができるため、図14、図25〜26に示すように、横架材3による通柱2,2相互の連結を安定的に行うことができる。そして横架材3の荷重が、筒状固定部5を通柱2に固定する前記ボルト42によって下方から支持されることになる。
【0036】
このように相対的に移動した状態でも、横架材3の端面66と筒状固定部5の外面21との間に間隙が生じている場合があるが、横架材3と通柱2とが直接的に接合されるのでなく、横架材3を緊張させた状態で、接合部材10を介して該横架材3と通柱2とを接合できるため、横架材3による通柱2,2相互の連結を安定的に行うことができる。
【0037】
この相対的な移動には、筒状固定部5に向けての横架材3の移動と、横架材3に向けての筒状固定部5の移動があるが、これらの移動は通常、1〜3mm程度と極僅かである。例えば、通柱2が垂直状態で固定されているときは、横架材3が筒状固定部5に向けて移動できる。又、対向する通柱2,2の一方が垂直でない状態で立設され、その立設状態が固定されていず、他方の通柱が垂直状態で固定されており、且つ横架材3の他端側がコ字状支持部9に固定状態にあるときは、移動部材12の下方向への移動に伴って、筒状固定部5を横架材3の一端側に向けて移動させることができ、これにより、前記一方の通柱を垂直状態に修正できる場合もある。
【0038】
前記筒状固定部5は、通柱2を完全に取り囲む角筒状を呈するため、コ字状支持部9の何れに関して横架材3を接合する場合であっても、前記移動部材12の下方向への移動に伴う前記相対的な移動を確実に行わせることができる。
【0039】
図27は、前記構成を有する接合装置1を、3階建ての木造建築物に応用した場合を示すものであり、通柱2の上下高さの中央部分と上端寄り部位に接合部材10,10を固定し、各コ字状支持部9で横架材3を支持した状態を示すものである。
【0040】
〔その他の実施の形態〕
本発明は、前記実施の形態で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
【0041】
(1) 前記接合部材10は、所定の強度を確保できるものであるならば、鋼板を用いて構成することの他、樹脂製や木材製とされることもある。樹脂製とする場合は、例えば炭素繊維等の補強線材で補強された樹脂を用いるのがよい。
【0042】
(2) 前記コ字状支持部9を構成する側板29,29に対向状態に設ける前記横挿通孔50は、前記実施の形態においては上下に2個設けられているが、上下に例えば3個設けられることもある。図28は、各横挿通孔50にボルト52が挿通された状態を示すものである。
【0043】
(3) 前記接合部材10は、前記実施の形態においては4枚の枠板13,13,13,13を井桁状に組み合わせることによって構成しているが、四角筒状をなす筒状固定部材を構成した後、別体に形成されたコ字状支持部9をその外側面に溶接することにより形成してもよい。
【0044】
(4) 図29は接合部材10のその他の態様を示すものであり、コ字状支持部9の上方にも筒状固定部5が突設されている。
【0045】
【発明の効果】
本発明は以下の如き優れた効果を奏する。
(1) 本発明に係る接合装置は、通柱を挿通させ且つ該通柱にボルト固定される筒状固定部に、横架材の端部分を嵌入させてこれを下方から支持するコ字状支持部を突設してなる接合部材を用い、該コ字状支持部を構成する左右の側板に、横架材に設けた挿通孔と位置合わせ可能な横挿通孔を設ける構成を採用している。
【0046】
従って本発明によるときは、筒状固定部を通柱に固定するために該通柱に施す加工は、ボルトを挿通させるための小さな挿通孔を設けるだけで済むため、大きなほぞ孔を通柱に設ける従来工法に比し、通柱の断面欠損を最低限度に止めることができる。しかも、挿通孔を設けた部分の周辺が筒状固定部でカバーされ、通柱が補強された状態となし得る。これらによって、通柱の強度を極力低下させずに通柱と横架材とを確実に接合できる。
【0047】
かかることから、本発明の接合装置によるときは、ほぞ孔にほぞを差し込む従来工法とは異なり、大きな地震力の作用や大きな風圧の作用によって両者の接合部分で通柱が折損する恐れを回避でき、木造建築物の耐震性向上に寄与できる。
【0048】
かかることから本発明の接合装置は、二階建ての木造建築物に応用して好適であることの他、最近普及が進んでいる三階建ての木造建築物に応用して特に好都合である。三階建ての木造建築物に用いる通柱にあっては、該通柱に横架材を連結するためのほぞ孔を、通柱の中間部分と上端側に設けることになるが、断面積が大きく減少した部分が上下二箇所に生ずることから、通柱の折損の問題が一層深刻となり、三階建ての木造建築物の耐震性が、二階建ての木造建築物に比してより弱くなる問題があった。本発明は、このような問題を極力解消し得る利点を有する。
【0049】
(2) 又本発明によるときは、コ字状支持部の左右の側板に設ける横挿通孔が、該コ字状支持部の延長方向に長く形成されているため、通柱が傾いていたり、横架材の長さに切断誤差が生じていたり、或いは横架材に設ける挿通孔の穿孔位置に加工誤差が生じていたとしても、この誤差を吸収して、横架材の挿通孔を挿通するボルトを、前記横挿通孔の中央部分や端部分等の何処かにおいて確実に挿通させ得る。
【0050】
従って、筒状固定部に対して複数本の横架材を連結する場合であっても、各横架材に設けられた挿通孔をコ字状支持部に設けられている横挿通孔と位置合わせできる。かかることから、前記した特開平9−268655号公報が開示する軸組固定具を用いる場合のように、施工現場で挿通孔を明け直さなければならないといった面倒さがなく、施工手間の増大や施工の複雑化を招いたり、通柱と横架材との接合強度を不安定化させる等の問題を発生させる恐れがない。
【0051】
しかも本発明においては、横架材の端部分に上下複数の挿通孔を設けることとし、該挿通孔とこれに対応し得る横挿通孔とに挿通せしめられたボルトを、移動部材を用いて前記筒状固定部に向けて相対的に移動させることができるため、この移動に伴い、横架材を確実に移動させることができる。又、該複数本のボルトによって、横架材をコ字状支持部に強固にボルト固定できる。
【0052】
そして、かかる相対的移動によって、通柱と横架材とを、該横架材を緊張させた状態で接合できるため、横架材による通柱相互の連結を安定的に行うことができる。
【0053】
前記特開平9−268655号公報が開示する軸組構造によるときは、横架材に設けられている挿通孔にボルトが密接状態で挿入されるとは限らないため、通柱と横架材とを該横架材を緊張させた状態で接合させ難く、通柱相互の連結が不安定化し易かったのであるが、本発明によるときは、通柱相互の連結を安定的に行い得るのである。
【0054】
そしてこのように、移動部材を下方向に移動させることによって前記のような相対移動を生じさせ得ることから、筒状固定部を横架材側に向けて移動させることも可能であり、これによって、通柱の垂直性を確保できることともなり、施工精度の向上に寄与できる。
【0055】
(3) 本発明を構成する接合部材を、4枚の枠板を井桁状に組み合わせて構成する場合は、支柱を挿通させる筒状固定部の外側面から、コ字状支持部を構成する左右の側板が精度良く且つ強度的に安定して突出した状態の主体を、簡易且つ能率的に構成できる。
【0056】
もしも、四角筒状をなす筒状固定部に対して、左右の側板を個別的に溶接する場合は、多大の手間を要するばかりでなく、寸法誤差も生じ易すいため、強度的に安定した接合部材を能率よく製造するのが難しいが、4枚の枠板を井桁状に組み合わせて接合部材を構成することにより、かかる問題点を解消できる利点がある。
【0057】
(4) コ字状支持部と筒状固定部相互を連結する補強板を設けることにより、接合部材の強度向上を達成できると共に、筋違の上端部分を補強板にビス固定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る接合装置を使用状態で示す斜視図である。
【図2】その使用状態を示す平面図である。
【図3】本発明を構成する接合部材を通柱と共に示す斜視図である。
【図4】接合部材を通柱に装着した状態を上から見た斜視図である。
【図5】接合部材を通柱に装着した状態を下から見た斜視図である。
【図6】本発明を構成する接合部材と移動部材を、横架材及び通柱と共に示す斜視図である。
【図7】接合部材の他の態様を通柱と共に示す斜視図である。
【図8】その接合部材を通柱に装着した状態を示す平面図である。
【図9】接合部材のその他の態様を通柱と共に示す斜視図である。
【図10】その接合部材を通柱に装着した状態を示す平面図である。
【図11】接合部材を構成する4枚の枠板を示す斜視図である。
【図12】4枚の枠板を井桁状に組み合わせて形成した主体を示す斜視図である。
【図13】接合部材を通柱に固定した状態を示す断面図である。
【図14】本発明に係る接合装置を用いて通柱相互を横架材で接合した状態を示す木造建築物の断面図である。
【図15】隣り合う通柱相互を接合装置を介して横架材で連結した状態を示す正面図である。
【図16】接合部材を構成するコ字状支持部に横架材の端部分を嵌め入れた状態を示す正面図である。
【図17】横架材の挿通孔とコ字状支持部の横挿通孔にボルトを挿通した状態を示す断面図である。
【図18】その正面図である。
【図19】挿通したボルトの先端部にナットを緩く螺合した状態を示す断面図である。
【図20】上下のボルトの両端部分を縦挿通孔に挿入せしめて移動部材を装着した状態を示す正面図である。
【図21】移動部材を装着した状態を示す断面図である。
【図22】その部分拡大正面図である。
【図23】移動部材を下方向に移動させた状態を示す正面図である。
【図24】この下方向に移動させた状態でナットを締め付けた状態を示す断面図である。
【図25】隣り合う通柱相互を本発明に係る接合装置を介して横架材で連結した状態を示す正面図である。
【図26】本発明に係る接合装置を介して通柱と横架材とを接合し、且つ、筋違を接合部材に固定した状態を示す正面図である。
【図27】本発明に係る接合装置を3階建ての木造建築物に応用した状態を示す斜視図である。
【図28】コ字状支持部に横挿通孔を上下3個設けた態様を示す正面図である。
【図29】本発明に係る接合装置を構成する接合部材のその他の態様を、通柱に装着した状態で示す斜視図である。
【図30】通柱に設けられたほぞ孔を横架材に接合する従来の接合構造を説明する分解斜視図である。
【図31】従来の軸組固定具を通柱及び横架材と共に示す斜視図である。
【図32】その軸組固定具を用いて通柱と横架材とを接合した状態を示す斜視図である。
【図33】通柱に軸組固定具の筒状延設部を固定した状態を示す断面図である。
【図34】コ字状延設部に横架材を嵌め入れて該横架材をコ字状延設部に固定した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 接合装置
2 通柱
3 横架材
5 筒状固定部
6 外側面
10 接合部材
12 移動部材
13 枠板
16 縦片
17 横片
19 スリット
23 角形挿通孔
26 底版
50 横挿通孔
52 挿通孔
56 案内面
57 案内突部
60 縦挿通孔
61 傾斜面
62 補強リブ
【発明の属する技術分野】
本発明は、木造建築物において、通柱と、胴差し、梁、桁等としての横架材とを接合するために用いられる接合装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の木造建築物において、通柱と、梁、胴差し、桁としての横架材とを接合するに際しては、図30に示すように、通柱aにほぞ穴bを設けると共に、横架材cの端部にはほぞdを設け、該ほぞdをほぞ穴bに差し込むのが一般的であった。
【0003】
しかしながら、通柱aにほぞ穴bを設けると、その部分の断面積が大きく減少するため、通柱の強度が低下することになる。その結果、大きな地震力が作用した場合に、両者の接合部分で通柱aが折損しやすい問題があった。特に三階建ての木造建築物に用いる通柱にあっては、該通柱に横架材を連結するためのほぞ孔を、通柱の中間部分と上端側の2箇所で設けることになるが、断面積が大きく減少した部分が上下2箇所に生ずることから、通柱の折損の問題が一層深刻となる問題があったのである。
【0004】
そこで、両者の接合部分を補強する手段の一つとして、例えば図30に示すように、羽子板ボルトeの羽子板fを前記横架材cの端部の上下面g,hに固定すると共にその引張りボルトjを、前記通柱aの前記ほぞ穴bの上下に設けたボルト挿通孔k,kに挿通せしめ、該引張りボルトjの端部mに、座金nを介してナットpを螺合し締め付けることが行われていた。
【0005】
しかしながら、このように羽子板ボルトeを用いて補強したとしても、前記引張りボルトjを挿通させるためのボルト挿通孔k,kを、各横架材cについて2個づつ設けるために、通柱aに数多くのボルト挿通孔kが設けられることとなり、ほぞ穴の加工によって強度低下を来した通柱が一層弱体化されてしまう問題があった。
【0006】
そこで、かかる従来の問題点を改善せんとして、特開平9−268655号公報が開示する軸組構造が提案されている。
【0007】
該軸組構造は、図31〜32に示すように、通柱aと横架材cとを軸組固定具qを介して接合する構成のものであり、該軸組固定具qは、通柱aを挿通させ且つ該通柱aにボルト固定される筒状延設部rに、横架材cの端部分sを嵌め入れるためのコ字状延設部tを水平方向に突設してなり、該筒状延設部rにボルト孔u1が貫設されると共に、該コ字状延設部tの対向する側面部v,vにはボルト孔u2が貫設されていた。そして図33に示すように、該筒状延設部rを通柱aの所定高さ位置に配置すると共に、通柱aに貫設された挿通孔wを挿通するボルトxを前記ボルト孔u1に挿通せしめナットyで締め付けることにより、該筒状延設部rを通柱aに固定する一方、図34に示すように、前記横架材cの端部分sを、前記コ字状延設部t内に嵌め入れ、該端部分sに貫設した挿通孔Aを、前記コ字状延設部tの対向する側面部v,vに設けられた前記ボルト孔u2,u2に位置合わせし、該位置合わせされた孔にボルトBを挿通せしめナットDで締め付けることにより、横架材の端部分sをコ字状延設部tにボルト固定する構成のものであった。
【0008】
しかしながら、かかる軸組固定具qを用いる接合手段によるときは、通柱aが若干でも傾いている等の施工誤差が生じたり、横架材cの長さに切断誤差が生じていたり、或いは、挿通孔Aを横架材cに貫設する際の加工誤差等によって、横架材cの端部分sを前記コ字状延設部t内に嵌め入れた際に、横架材cに設けられている挿通孔Aとコ字状延設部tに設けられているボルト孔u2の位置が合わず、ボルトBを挿通できない場合が生じやすかった。特に、前記筒状延設部rに複数のコ字状延設部tが設けられているときは、一部の横架材については、挿通孔Aとボルト孔u2とを位置合わせできても、横架材の全てについて、挿通孔Aとボルト孔u2とを正しく位置合わせすることは容易でなかった。そのため、横架材cに別個の挿通孔を設ける必要も生じ、施工手間の増大や施工の複雑化を招く原因となった他、新たに設けた挿通孔と元の挿通孔とが一部分で重なったときは、横架材cの挿通孔が横長の長孔状になってしまうためにボルトの挿通状態に遊びが生じ、軸組固定具を介しての通柱と横架材との接合強度を不安定化させる原因になった。
【0009】
又、前記軸組固定具を用いる接合手段によるときは、位置合わせされた挿通孔とボルト孔にボルトを挿通できたとしても、横架材に設けられている挿通孔にボルトが密接状態で挿通されるとは限らず、通常は、挿通孔がボルト径よりも大きいために、通柱と横架材とを緊張状態で接合し難く、従って、通柱と横架材との一体性が弱くなり、地震時において、通柱と横架材との接合部分が不安定化しやすい問題があった。
【0010】
【特許文献1】特開平9−268655号公報(第3頁、図4)
【特許文献2】特開2002−21200号公報(第2頁、図2−3)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みて開発されたものであり、通柱と横架材との接合強度を向上させて木造建築物の耐震性を向上させ得ると共に、通柱と横架材との接合作業を確実且つ容易に行うことを可能とする木造建築物の接合装置の提供を課題とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用する。
即ち本発明に係る木造建築物の接合装置(以下接合装置という)は、木造建築物において、通柱と横架材とを接合するために用いられる接合装置であり、前記通柱を挿通させ且つ該通柱にボルト固定される四角筒状をなす筒状固定部の四つの外側面の少なくとも一つに、前記横架材の端部分を嵌入させて下方から支持する、上端開放の断面コ字状をなすコ字状支持部が突設されてなる接合部材と、前記横架材の端部と前記通柱とを相対的に接近させる移動部材とを具える。前記横架材の端部分には、左右方向で貫設された挿通孔が上下に複数設けられると共に、前記コ字状支持部の左右の側板には、前記の各挿通孔を挿通するボルトに対応させて、該ボルトを挿通させるための横挿通孔が、前記コ字状支持部の延長方向に長く設けられており、又、該左右の側板の外面には、前記横挿通孔よりも先側位置において、下端が上端よりも前記筒状固定部に接近するように傾斜した案内面を有する案内突部が配置されている。又、前記移動部材は、前記ボルトを挿通させることができ且つ下端開放で上下に長い縦挿通孔が設けられると共に、前記案内面と平行する傾斜面を有しており、前記の各挿通孔を挿通するボルトの端部分を前記横挿通孔と前記縦挿通孔に挿通させると共に、前記移動部材の傾斜面を前記案内突部の案内面に当接させた状態で該移動部材を下方向に移動させることにより、該移動部材が、その傾斜面が前記案内面に案内されて下方向に移動し、これにより、前記縦挿通孔の前記傾斜面側の面が前記ボルトを前記筒状固定部に向けて相対的に移動させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
前記接合装置において、前記接合部材は次のように構成するのがよい。即ち、上下に長い縦片の上下方向所要部の対向側縁に、横方向に突出する横片が逆向きに突出され、該横片と前記縦片との接続部分において、上下端の何れかが開放したスリットが設けられてなる4枚の枠板を、上下のスリットを互いに嵌め合わせることによって井桁状に組み合わせて、前記縦片の4枚によって、上下に連続する四角筒状をなす前記筒状固定部を形成し、該筒状固定部が形成する角形挿通孔の四つの入隅を直角面に形成し、又前記筒状固定部の四つの外側面の少なくとも一つにおいて平行状態に突設された左右の横片間の下端を底板で覆い、該横片の内面と該底板の上面は直角に交わったものとし、該左右の横片と前記と底板とにより、上端開放の断面コ字状なす前記コ字状支持部を形成するのがよい。
【0014】
該接合装置において、前記底板の下面と前記筒状固定部の外側面に、補強板の、直角を挟む二辺部を当接状態に固定し、該補強板に、筋交の上端部分を連結するためのビス孔を設けるのがよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜6、図7〜8、図9〜10において本発明に係る接合装置1は、木造建築物において、通柱2と、梁、胴差し、桁としての横架材3とを接合するために用いられるものであり、前記通柱2を略密接に挿通させるための四角筒状をなす筒状固定部5の外側面6の少なくとも一つに、前記横架材3の端部分7を下方から支持する上端開放の断面コ字状なすコ字状支持部9が突設されてなる接合部材10と、前記横架材3の端部11と前記通柱2とを相対的に接近させる移動部材12とを具えるものである。
【0016】
図1〜2に示す接合装置1は、全ての外側面6,6,6,6にコ字状支持部9を放射状に突設してなり、図8に示す接合装置1は、三つの外側面6,6,6にコ字状支持部9を突設してなり、又図10は、隣り合う外側面6,6にコ字状支持部9を突設してなるものである。
【0017】
かかる構成を有する接合装置1の内、先ず、全ての外側面6,6,6,6にコ字状支持部9を突設してなる接合部材10を具えた図1〜2に示す装置1について、その具体的な構成を説明する。
【0018】
該接合装置1を構成する接合部材10は、本実施の形態においては、図11に示すような4枚の枠板13,13,13,13を井桁状に組み合わせ且つ適宜溶接することによって形成された図12に示す主体15を用いて構成されている。該枠板13は、例えば、肉厚が3.2mm程度の鋼板を用いて形成されており、上下に長い縦片16の上端側の対向側縁に、横方向に同長さで突出する横片17,17が逆向きに突出されてなるT字状を呈する。そして、下に位置する2枚の枠板13a,13aは、平行状態を呈して向き合っており、且つ、上に位置する2枚の枠板13b,13bは、その横片17,17が、前記下に位置する2枚の枠板13a,13aの横片17,17の延長方向と直角に交差する如く、平行状態を呈して向き合っている。
【0019】
そして、下に位置する2枚の枠板13a,13aの夫々について、前記縦片16と前記横片17との接続部分に、上端が開放し且つ該横片17の上下長さの略半分に相当する深さを有したスリット19,19が形成されている。又、上に位置する前記2枚の枠板13b,13bの夫々について、前記縦片16と前記横片17との接合部分に、下端が開放し且つ該横片17の上下長さの略半分の深さを有するスリット19,19が形成されている。
【0020】
然して、下に位置する2枚の枠板13a,13aに設けられているスリット19と、上に位置する2枚の枠板13b,13bに設けられているスリット19とを上下位置合わせして互いに嵌め合わせると、4枚の枠板13a,13a,13b,13bが井桁状に組み合わされ、図12〜13に示すように、上に位置する枠板13b,13bの対向する縦片16,16が、下に位置する枠板13a,13aの対向する縦片16,16の端部20,20間で挟まれた状態となる。そして、直角に交わる縦片16,16の縁部相互の当接部の図12に示す外面側21が溶接されると共に、直角に交わる横片17,17の図12に示す外面側22が溶接されることにより、前記主体15が形成され、上下方向に連続する四角筒状をなす前記筒状固定部5(その角形挿通孔23の内法は、例えば約120mm)が形成されている。該筒状固定部5の角形挿通孔23の4つの入隅25,25,25,25は、図13に示すように、溶接部が存在せずに直角の面をなすため、該筒状固定部5に前記通柱2(対向面間の距離は、例えば118mm)を支障なく略密接に挿通させることができるのである。
【0021】
そして該筒状固定部5の4つの外側面6,6,6,6の夫々において、平行する横片17,17、17,17、17,17、17,17が突設されている。かかる構成の主体15において、図3に示すように、対向する横片17,17間の下端24(図12)を底板26で覆うと共に、該底板26の縁部と横片17の下縁部との当接部の図3に示す外面側27を溶接する。これにより、対向する横片17,17としての側板29,29と底板26とにより、上端開放の断面コ字状をなす前記コ字状支持部9が形成され、側板29の内面30と底板26の上面31とは直角に交わり、ここには溶接部は存在しない。
【0022】
そして該筒状固定部5は、本実施の形態においては、その上端32が前記コ字状支持部9の上端33と面一となされ、該コ字状支持部9の下方に稍突出している。
【0023】
又、図5に示すように直角をなす、底板下面35と前記外側面6とに、その長手中央線に沿って当接する如く、例えば直角三角形板状をなす補強板36の直角を挟む2辺部37,37が当接せしめられ、その当接部分が溶接されている。なお本実施の形態においては、該補強板36の先端側で、該補強板の側面39と底板下面35とに当接する矩形状片41が当接状態に溶接されている。
【0024】
そして、前記筒状固定部5を構成する対向した縦片16,16に、前記補強板36の両側に位置させて、図3、図13に示すように、通柱2に貫設されたボルト孔34を挿通するボルト42を挿通させるボルト孔43,43が同心に設けられている。又、対向した他の縦片16,16にも、前記補強板36の両側に位置させて、且つ前記ボルト孔43,43の上に位置させて、通柱2に貫設され且つ前記挿通孔34とは接しないボルト孔38を挿通するボルト42を挿通させるボルト孔44,44を同心に設けている。
【0025】
又、前記各補強板36,36,36,36には、該補強板36を筋違45(図25〜26)の上端部分46にビス47で連結するためのビス孔48が分散状態に設けられると共に、前記矩形状片41には、図5に示すように、吊孔49が設けられている。該吊孔49は、接合部材10を通柱2に装着する際等に該接合部材10を吊下するのに用いる。
【0026】
又図6に示すように、前記コ字状支持部9の左右の側板29,29に、同心に、該コ字状支持部の延長方向に長い横挿通孔(その寸法は、例えば、長さが約31mmで上下幅が約16mm)50,50が上下に2個設けられており、該横挿通孔50,50には、コ字状支持部9に嵌め入れられた横架材3の端部分7に左右方向に貫設された挿通孔(直径は、例えば約15mm)51を挿通するボルト(直径は、例えば約12mm)52が挿通可能となされている。そして前記左右の側板29,29の外面には、前記横挿通孔50よりも稍先側に位置させて、下端53が上端55よりも前記筒状固定部5に接近するように傾斜した案内面56を有する矩形板状の案内突部57が設けられ、該側板29に溶接されている。該案内面56の垂直線に対する傾斜角度θ(図16)は、前記移動部材12を後述のように下方向に移動させやすく、しかも、下方向に移動した移動部材12が浮き上がりにくくするために、例えば15度に設定するのがよい。
【0027】
前記移動部材12は、前記ボルト52の軸部59を挿通させ且つ下端開放で上下に長い縦挿通孔(幅は、例えば約16mm)60が設けられると共に、前記案内面56と平行する傾斜面61を有している。
【0028】
三つの外側面6,6,6にコ字状支持部9を突設してなる、図7〜9に示す前記接合装置1や、隣り合う外側面6,6にコ字状支持部9を突設してなる、図9〜10に示す前記接合装置1の構成は、基本的には、全ての外側面6,6,6,6にコ字状支持部9を突設してなる前記接合装置1と同様である。そして、コ字状支持部9が設けられない外側面6aにおいては、その両側縁で、前記横片17からなる補強リブ62,62が突設されている。この補強リブ62は、接合部材10を補強するものであり、例えば20mm程度の突出長さを有する。
【0029】
かかる構成を有する接合装置1を用いて、隣り合う通柱2,2相互を、梁としての横架材3で連結する施工工程を図14〜26に基づいて説明すれば次のようである。
【0030】
先ず、通柱2を立設するに先立って、図4、図13に示すように、該通柱2を前記筒状固定部5の角形挿通孔23に挿通せしめ、通柱2の所定高さ位置において、位置合わせされた、前記通柱2の挿通孔34と前記筒状固定部のボルト孔43とに、その一端側からボルト42を挿通せしめ、且つ、位置合わせされた、前記通柱の挿通孔38と前記筒状固定部のボルト孔44とに、その一端側からボルト42を挿通せしめ、それらの他端側に突出したボルト先端部63にナット65を螺合し締め付けることによって、前記接合部材10を通柱2に固定する。その後、接合部材10が固定された通柱2を、図15に示すように、布基礎58に固定された土台64上に立設する。隣り合う通柱2,2に固定された接合部材10は、図15に示すように同高さに位置する。
【0031】
その後、図15〜16に示すように、対向状態にあるコ字状支持部9,9に、横架材3の両端部分7,7を嵌め入れる。この状態で、横架材3の端面66と筒状固定部5の外側面6との間に、通常、図16に示すように2〜3mm程度の隙間Gが生ずる。
【0032】
前記横架材3の端部分7の上下に、図6に示すように、円形の挿通孔51,51が左右方向で貫設されているが、前記コ字状支持部9の左右の側板29,29には、コ字状支持部の延長方向に長い前記横挿通孔50が該挿通孔51と略同高さに設けられているため、挿通孔51が横挿通孔50に確実に連通せしめられる。
【0033】
次に図17〜18に示すように、連通状態にある挿通孔51と横挿通孔50とに、一方の側板29a側からボルト52を挿通させる。その後、図19に示すように、他方の側板29b側において、ボルト先端部67にナット69を緩く螺合する。この状態でボルト52は、横挿通孔50の長さの範囲で横移動でき、この移動に伴い、横架材3が横移動可能である。
【0034】
このように上下のボルト52,52を挿通状態とした後、図20〜21に示すように、前記移動部材12を、その傾斜面61を前記案内突部57の案内面56に当接させながら、例えば手動で下方向に押し込むと、この下方向への移動に伴い、上下のボルト52,52の両端部分(ボルト頭70と側板29との間の部分、ナット69と側板29との間の部分)71,72、71,72が縦挿通孔60内に挿入せしめられ、上下のボルト52,52が、図22に示すように、横架材3に設けられた前記挿通孔51の、通柱側の面部73に当接し且つ、縦挿通孔60の、前記案内面56に近い面75に当接状態となる。
【0035】
その後、前記移動部材12の上端76を、ハンマーで打撃すると、該移動部材12が、図23に示すように、その傾斜面61が前記案内面56に案内されて下方向に更に移動することになる。これにより、縦挿通孔60の前記面75が、前記上下のボルト52,52を、前記筒状固定部5に向けて相対的に移動させる。この移動の後、図24に示すように前記ナット69を締め付ける。これにより横架材3を、隣り合う通柱2,2間に、接合装置1,1を介して緊張状態に架け渡すことができるため、図14、図25〜26に示すように、横架材3による通柱2,2相互の連結を安定的に行うことができる。そして横架材3の荷重が、筒状固定部5を通柱2に固定する前記ボルト42によって下方から支持されることになる。
【0036】
このように相対的に移動した状態でも、横架材3の端面66と筒状固定部5の外面21との間に間隙が生じている場合があるが、横架材3と通柱2とが直接的に接合されるのでなく、横架材3を緊張させた状態で、接合部材10を介して該横架材3と通柱2とを接合できるため、横架材3による通柱2,2相互の連結を安定的に行うことができる。
【0037】
この相対的な移動には、筒状固定部5に向けての横架材3の移動と、横架材3に向けての筒状固定部5の移動があるが、これらの移動は通常、1〜3mm程度と極僅かである。例えば、通柱2が垂直状態で固定されているときは、横架材3が筒状固定部5に向けて移動できる。又、対向する通柱2,2の一方が垂直でない状態で立設され、その立設状態が固定されていず、他方の通柱が垂直状態で固定されており、且つ横架材3の他端側がコ字状支持部9に固定状態にあるときは、移動部材12の下方向への移動に伴って、筒状固定部5を横架材3の一端側に向けて移動させることができ、これにより、前記一方の通柱を垂直状態に修正できる場合もある。
【0038】
前記筒状固定部5は、通柱2を完全に取り囲む角筒状を呈するため、コ字状支持部9の何れに関して横架材3を接合する場合であっても、前記移動部材12の下方向への移動に伴う前記相対的な移動を確実に行わせることができる。
【0039】
図27は、前記構成を有する接合装置1を、3階建ての木造建築物に応用した場合を示すものであり、通柱2の上下高さの中央部分と上端寄り部位に接合部材10,10を固定し、各コ字状支持部9で横架材3を支持した状態を示すものである。
【0040】
〔その他の実施の形態〕
本発明は、前記実施の形態で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
【0041】
(1) 前記接合部材10は、所定の強度を確保できるものであるならば、鋼板を用いて構成することの他、樹脂製や木材製とされることもある。樹脂製とする場合は、例えば炭素繊維等の補強線材で補強された樹脂を用いるのがよい。
【0042】
(2) 前記コ字状支持部9を構成する側板29,29に対向状態に設ける前記横挿通孔50は、前記実施の形態においては上下に2個設けられているが、上下に例えば3個設けられることもある。図28は、各横挿通孔50にボルト52が挿通された状態を示すものである。
【0043】
(3) 前記接合部材10は、前記実施の形態においては4枚の枠板13,13,13,13を井桁状に組み合わせることによって構成しているが、四角筒状をなす筒状固定部材を構成した後、別体に形成されたコ字状支持部9をその外側面に溶接することにより形成してもよい。
【0044】
(4) 図29は接合部材10のその他の態様を示すものであり、コ字状支持部9の上方にも筒状固定部5が突設されている。
【0045】
【発明の効果】
本発明は以下の如き優れた効果を奏する。
(1) 本発明に係る接合装置は、通柱を挿通させ且つ該通柱にボルト固定される筒状固定部に、横架材の端部分を嵌入させてこれを下方から支持するコ字状支持部を突設してなる接合部材を用い、該コ字状支持部を構成する左右の側板に、横架材に設けた挿通孔と位置合わせ可能な横挿通孔を設ける構成を採用している。
【0046】
従って本発明によるときは、筒状固定部を通柱に固定するために該通柱に施す加工は、ボルトを挿通させるための小さな挿通孔を設けるだけで済むため、大きなほぞ孔を通柱に設ける従来工法に比し、通柱の断面欠損を最低限度に止めることができる。しかも、挿通孔を設けた部分の周辺が筒状固定部でカバーされ、通柱が補強された状態となし得る。これらによって、通柱の強度を極力低下させずに通柱と横架材とを確実に接合できる。
【0047】
かかることから、本発明の接合装置によるときは、ほぞ孔にほぞを差し込む従来工法とは異なり、大きな地震力の作用や大きな風圧の作用によって両者の接合部分で通柱が折損する恐れを回避でき、木造建築物の耐震性向上に寄与できる。
【0048】
かかることから本発明の接合装置は、二階建ての木造建築物に応用して好適であることの他、最近普及が進んでいる三階建ての木造建築物に応用して特に好都合である。三階建ての木造建築物に用いる通柱にあっては、該通柱に横架材を連結するためのほぞ孔を、通柱の中間部分と上端側に設けることになるが、断面積が大きく減少した部分が上下二箇所に生ずることから、通柱の折損の問題が一層深刻となり、三階建ての木造建築物の耐震性が、二階建ての木造建築物に比してより弱くなる問題があった。本発明は、このような問題を極力解消し得る利点を有する。
【0049】
(2) 又本発明によるときは、コ字状支持部の左右の側板に設ける横挿通孔が、該コ字状支持部の延長方向に長く形成されているため、通柱が傾いていたり、横架材の長さに切断誤差が生じていたり、或いは横架材に設ける挿通孔の穿孔位置に加工誤差が生じていたとしても、この誤差を吸収して、横架材の挿通孔を挿通するボルトを、前記横挿通孔の中央部分や端部分等の何処かにおいて確実に挿通させ得る。
【0050】
従って、筒状固定部に対して複数本の横架材を連結する場合であっても、各横架材に設けられた挿通孔をコ字状支持部に設けられている横挿通孔と位置合わせできる。かかることから、前記した特開平9−268655号公報が開示する軸組固定具を用いる場合のように、施工現場で挿通孔を明け直さなければならないといった面倒さがなく、施工手間の増大や施工の複雑化を招いたり、通柱と横架材との接合強度を不安定化させる等の問題を発生させる恐れがない。
【0051】
しかも本発明においては、横架材の端部分に上下複数の挿通孔を設けることとし、該挿通孔とこれに対応し得る横挿通孔とに挿通せしめられたボルトを、移動部材を用いて前記筒状固定部に向けて相対的に移動させることができるため、この移動に伴い、横架材を確実に移動させることができる。又、該複数本のボルトによって、横架材をコ字状支持部に強固にボルト固定できる。
【0052】
そして、かかる相対的移動によって、通柱と横架材とを、該横架材を緊張させた状態で接合できるため、横架材による通柱相互の連結を安定的に行うことができる。
【0053】
前記特開平9−268655号公報が開示する軸組構造によるときは、横架材に設けられている挿通孔にボルトが密接状態で挿入されるとは限らないため、通柱と横架材とを該横架材を緊張させた状態で接合させ難く、通柱相互の連結が不安定化し易かったのであるが、本発明によるときは、通柱相互の連結を安定的に行い得るのである。
【0054】
そしてこのように、移動部材を下方向に移動させることによって前記のような相対移動を生じさせ得ることから、筒状固定部を横架材側に向けて移動させることも可能であり、これによって、通柱の垂直性を確保できることともなり、施工精度の向上に寄与できる。
【0055】
(3) 本発明を構成する接合部材を、4枚の枠板を井桁状に組み合わせて構成する場合は、支柱を挿通させる筒状固定部の外側面から、コ字状支持部を構成する左右の側板が精度良く且つ強度的に安定して突出した状態の主体を、簡易且つ能率的に構成できる。
【0056】
もしも、四角筒状をなす筒状固定部に対して、左右の側板を個別的に溶接する場合は、多大の手間を要するばかりでなく、寸法誤差も生じ易すいため、強度的に安定した接合部材を能率よく製造するのが難しいが、4枚の枠板を井桁状に組み合わせて接合部材を構成することにより、かかる問題点を解消できる利点がある。
【0057】
(4) コ字状支持部と筒状固定部相互を連結する補強板を設けることにより、接合部材の強度向上を達成できると共に、筋違の上端部分を補強板にビス固定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る接合装置を使用状態で示す斜視図である。
【図2】その使用状態を示す平面図である。
【図3】本発明を構成する接合部材を通柱と共に示す斜視図である。
【図4】接合部材を通柱に装着した状態を上から見た斜視図である。
【図5】接合部材を通柱に装着した状態を下から見た斜視図である。
【図6】本発明を構成する接合部材と移動部材を、横架材及び通柱と共に示す斜視図である。
【図7】接合部材の他の態様を通柱と共に示す斜視図である。
【図8】その接合部材を通柱に装着した状態を示す平面図である。
【図9】接合部材のその他の態様を通柱と共に示す斜視図である。
【図10】その接合部材を通柱に装着した状態を示す平面図である。
【図11】接合部材を構成する4枚の枠板を示す斜視図である。
【図12】4枚の枠板を井桁状に組み合わせて形成した主体を示す斜視図である。
【図13】接合部材を通柱に固定した状態を示す断面図である。
【図14】本発明に係る接合装置を用いて通柱相互を横架材で接合した状態を示す木造建築物の断面図である。
【図15】隣り合う通柱相互を接合装置を介して横架材で連結した状態を示す正面図である。
【図16】接合部材を構成するコ字状支持部に横架材の端部分を嵌め入れた状態を示す正面図である。
【図17】横架材の挿通孔とコ字状支持部の横挿通孔にボルトを挿通した状態を示す断面図である。
【図18】その正面図である。
【図19】挿通したボルトの先端部にナットを緩く螺合した状態を示す断面図である。
【図20】上下のボルトの両端部分を縦挿通孔に挿入せしめて移動部材を装着した状態を示す正面図である。
【図21】移動部材を装着した状態を示す断面図である。
【図22】その部分拡大正面図である。
【図23】移動部材を下方向に移動させた状態を示す正面図である。
【図24】この下方向に移動させた状態でナットを締め付けた状態を示す断面図である。
【図25】隣り合う通柱相互を本発明に係る接合装置を介して横架材で連結した状態を示す正面図である。
【図26】本発明に係る接合装置を介して通柱と横架材とを接合し、且つ、筋違を接合部材に固定した状態を示す正面図である。
【図27】本発明に係る接合装置を3階建ての木造建築物に応用した状態を示す斜視図である。
【図28】コ字状支持部に横挿通孔を上下3個設けた態様を示す正面図である。
【図29】本発明に係る接合装置を構成する接合部材のその他の態様を、通柱に装着した状態で示す斜視図である。
【図30】通柱に設けられたほぞ孔を横架材に接合する従来の接合構造を説明する分解斜視図である。
【図31】従来の軸組固定具を通柱及び横架材と共に示す斜視図である。
【図32】その軸組固定具を用いて通柱と横架材とを接合した状態を示す斜視図である。
【図33】通柱に軸組固定具の筒状延設部を固定した状態を示す断面図である。
【図34】コ字状延設部に横架材を嵌め入れて該横架材をコ字状延設部に固定した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 接合装置
2 通柱
3 横架材
5 筒状固定部
6 外側面
10 接合部材
12 移動部材
13 枠板
16 縦片
17 横片
19 スリット
23 角形挿通孔
26 底版
50 横挿通孔
52 挿通孔
56 案内面
57 案内突部
60 縦挿通孔
61 傾斜面
62 補強リブ
Claims (3)
- 木造建築物において、通柱と横架材とを接合するために用いられる接合装置であり、
前記通柱を挿通させ且つ該通柱にボルト固定される四角筒状をなす筒状固定部の四つの外側面の少なくとも一つに、前記横架材の端部分を嵌入させて下方から支持する、上端開放の断面コ字状をなすコ字状支持部が突設されてなる接合部材と、前記横架材の端部と前記通柱とを相対的に接近させる移動部材とを具え、
前記横架材の端部分には、左右方向で貫設された挿通孔が上下に複数設けられると共に、前記コ字状支持部の左右の側板には、前記の各挿通孔を挿通するボルトに対応させて、該ボルトを挿通させるための横挿通孔が、前記コ字状支持部の延長方向に長く設けられており、又、該左右の側板の外面には、前記横挿通孔よりも先側位置において、下端が上端よりも前記筒状固定部に接近するように傾斜した案内面を有する案内突部が配置され、
又、前記移動部材は、前記ボルトを挿通させることができ且つ下端開放で上下に長い縦挿通孔が設けられると共に、前記案内面と平行する傾斜面を有しており、
前記の各挿通孔を挿通するボルトの端部分を前記横挿通孔と前記縦挿通孔に挿通させると共に、前記移動部材の傾斜面を前記案内突部の案内面に当接させた状態で該移動部材を下方向に移動させることにより、該移動部材が、その傾斜面が前記案内面に案内されて下方向に移動し、これにより、前記縦挿通孔の前記傾斜面側の面が前記ボルトを前記筒状固定部に向けて相対的に移動させるように構成されていることを特徴とする木造建築物の接合装置。 - 上下に長い縦片の上下方向所要部の対向側縁に、横方向に突出する横片が逆向きに突出され、該横片と前記縦片との接続部分において、上下端の何れかが開放したスリットが設けられてなる4枚の枠板が、上下のスリットを互いに嵌め合わせることによって井桁状に組み合わされ、前記縦片の4枚によって、上下に連続する四角筒状をなす前記筒状固定部が形成されており、該筒状固定部が形成する角形挿通孔の四つの入隅は直角面に形成され、又前記筒状固定部の四つの外側面の少なくとも一つにおいて平行状態に突設された左右の横片間の下端が底板で覆われ、該横片の内面と該底板の上面は直角に交わっており、該左右の横片と前記と底板とにより、上端開放の断面コ字状なす前記コ字状支持部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の木造建築物の接合装置。
- 前記底板の下面と前記筒状固定部の外側面に、補強板の、直角を挟む二辺部が当接状態に固定されており、該補強板に、筋交の上端部分を連結するためのビス孔が設けられていることを特徴とする請求項2記載の木造建築物の接合装置。
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