JP2004316287A - 大深度、大口径の地盤改良装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上段の掘削攪拌手段は、放射方向に配置された複数本の立翼と、立翼の下端部に水平に設けられた薄肉厚のリング、及び複数本の攪拌翼とで構成されている。リングは大口径掘削孔と略同径とされており、少なくともその下端縁に下向きの掘削ビットが設けられている。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、地盤を掘削し、その掘削土壌中に安定材を注入し攪拌混合して地盤を改良する地盤改良装置の技術分野に属し、更に云うと、大深度まで、大口径の地盤改良が可能な地盤改良装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
地盤改良装置は、地盤を掘削し、その掘削土壌中に安定材を注入し攪拌混合して地盤を改良する構成であり、各種各様の装置が提案されている。例えば、
【0003】
(i)下記の特許文献1に開示された地盤改良装置は、掘削土壌と安定材とをムラなく攪拌混合することができるように、掘削攪拌手段が上下2段の構成とされている。下段の小径の掘削攪拌手段は内軸の下端部に取り付けられ、上段の大径の掘削攪拌手段は外軸の下端部に取り付けられ、両者は相反する方向に回転して地盤を掘削し攪拌混合する構成とされている。掘削軸は互いに反転する内軸と外軸との二重軸構造とされている。異径に構成された上下2段の掘削攪拌手段はそれぞれ、倒立コ字形状の立翼を放射方向に複数本設けた構成である。
【0004】
(ii)下記の特許文献2に開示された地盤改良装置は、高い鉛直精度を維持して掘削を進めることができるように、その掘削攪拌手段は、円筒形状のケーシングの上縁に上向きの、下縁には下向きの掘削刃(掘削ビット)を取り付けた掘削翼を用いた構成を特徴としている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−81297号公報
【特許文献2】
特開平10−195864号公報
【0006】
【本発明が解決しようとする課題】
上記(i)の地盤改良装置は、下段の小径の掘削攪拌手段が先行して地盤を比較的小さな抵抗で小径の掘削を行い、続いて上段の大径掘削攪拌手段が残りの部分の大径掘削を行うから、掘削能力及び掘削効率に優れる。そして、上下2段の掘削攪拌手段が互いに相反する方向へ回転しながら掘削土壌と安定材を攪拌混合するので、ミキシング能力と効果に優れ、質の高い地盤改良ができる。
【0007】
しかし、上下2段の掘削攪拌手段はそれぞれ、倒立コ字形状の立翼を放射方向に複数本設けた構成であるため、地盤中に局部的に硬い部分、例えば先に施工した改良土柱などが存在すると、倒立コ字形状の立翼は掘削抵抗が大きい硬い部位を避けるように逃げ、地上の改良機本体で吊り支持しているだけの掘削軸に曲がりを生じさせてしまい、掘削の鉛直精度を確保しがたい。その結果、設計上重要視される改良土柱相互間の設計ラップ量を確保しがたい。改良土柱相互間の設計ラップ量は、改良土柱相互間の一体性及び止水性の確保に重要な施工条件であるが、掘削深度が深くなるほどに前記の悪い傾向が増大し、設計、施工の条件を満たし得ないので、大深度の地盤改良は到底不可能と考えられている。
【0008】
その点、上記(ii)の地盤改良装置は、円筒形状のケーシングから成る掘削翼を使用しているので、地盤中に局部的に硬い部分、例えば先に施工した改良土柱などが存在しても、それを鉛直下向きに鋸引きする如くに回転掘削するので、逃げる傾向は発生せず、掘削の鉛直精度を確保しやすい。
【0009】
しかしながら、この掘削翼は、円筒形状のケーシングを放射方向に配置した複数本のほぼ水平なアームによって攪拌掘削軸へ取り付けた構成なので、アームの下縁にも掘削刃が取り付けられているとはいえ、そもそも地盤の掘削能力に劣るので、深い位置までの地盤改良には適さない。また、掘削土壌と安定材を攪拌混合する作用に劣り、ミキシング効果が悪いので、質の高い地盤改良を期待できないと考えられている。
【0010】
以上要するに、現状の上記の如き従来技術では、深さ50m以上の大深度まで、口径が1600mm以上の大口径地盤改良は到底、不可能と考えられている。
【0011】
本発明の目的は、高い鉛直精度を維持して掘削、攪拌を能率良く進めることができ、設計されたラップ量を確保しながら、大深度まで、大口径の地盤改良が可能な地盤改良装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る大深度、大口径の地盤改良装置は、
掘削軸は互いに反転する内軸と外軸との二重軸構造とされ、内軸の下端部へ下段の掘削攪拌手段が設けられ、外軸の下端部へ上段の掘削攪拌手段が設けられており、前記上下の掘削攪拌手段を互いに反転させながら地盤を掘削し、その掘削土壌中に安定材を注入し攪拌混合して地盤を改良する地盤改良装置において、
上段の掘削攪拌手段は、放射方向に配置された複数本の立翼と、前記立翼の下端部に水平に設けられた薄肉厚のリング、及び複数本の攪拌翼とで構成されていること、
前記リングは大口径掘削孔と略同径とされており、少なくともその下端縁に下向きの掘削ビットが設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載した大深度、大口径の地盤改良装置において、
二重軸構造に組み合わされた内軸と外軸はそれぞれ外周面にスクリュー部を備えており、外軸外周面の前記スクリュー部の外径は、外軸のジョイント部外径及び振れ止め部の内径と略等しく形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載した大深度、大口径の地盤改良装置において、
地盤改良装置の掘進駆動部には、外軸を引き揚げるジャッキング機構が設けられていることを特徴とする。
【0015】
【本発明の実施形態、及び実施例】
以下に、請求項1〜3に記載した発明に係る大深度、大口径の地盤改良装置の実施形態を、図1〜図6に基づいて説明する。
【0016】
本発明の地盤改良装置も、図1に示すように、改良機本体2のリーダー3のガイド3aに沿って鉛直下向きに推進される掘進駆動部4によって掘削軸1を回転駆動し、掘削軸1の下端部に取り付けた上下2段の掘削攪拌手段7、6により地盤を掘削し、その掘削土壌中に安定材を注入し攪拌混合して地盤を改良する構成である。掘削軸1は、リーダー3の下部に設けた振れ止め部5で掘削、貫入を案内される。掘削軸1は単軸を基本とする。
【0017】
図2〜図5に、上下2段の掘削攪拌手段7、6の構造の詳細を示した。
図2に示したように、掘削軸1は、相反する方向へ回転させる(互いに反転する)内軸8と外軸9との二重軸構造とされ、前記外軸9の下端から少し長く突き出された内軸8の下端の雄ジョイント8aへ下段の小径掘削攪拌手段6がその回転軸8’の上端の雌ジョイント8b(図5を参照)を嵌め込んで接続した構成で設けられ、外軸9の下端部へ上段の大径掘削攪拌手段7がフランジ継手10により接続して設けられている。
【0018】
上段の大径掘削攪拌手段7は、外軸9と図2のように軸継手10で接続された外軸管9に基端を発し、円周を3等分した120°(2.09rad)の間隔で放射方向に突き出る配置とされた3本(但し、この配置、本数の限りではない。)の立翼11‥が冠形状に設けられいる。各立翼11の下端部は、薄肉円筒形状で垂直なリング12と共通に一体的に接合されている。そして、図5に示すように前記回転軸8’の外周へ回転自在な関係に嵌めた第1のボス13(図5を参照)に基端を発して約120°(2.09rad)の放射状配置でほぼ水平に設けた3本のアーム14の外端とリング12とが一体的に接合されている。
【0019】
リング12は、外径が約1600mmで、縦幅が約200mmの帯板円筒構造であり、その上縁に上向きの、下縁には下向きの掘削ビット15がそれぞれ一定のピッチで複数設けられている。各掘削ビット15は、リング12の外周面よりも少し外方へせり出す形状と配置で設けられており、約1600mmの大口径掘削を容易に可能な構成とされている。各アーム14の下面に下向きの掘削ビット15が複数設けられている。各立翼11、11の外面にも横向き及び上向きの掘削ビット15が複数設けられている。したがって、鉛直下向きの地盤掘削能力を充分に有するほか、大深度掘削を終了した後の引き揚げ時には、各立翼11及びリング12の上向きの掘削ビット15により、安定材の効果で少し硬くなりかけた改良土を掘削するが如くに排除して引き揚げ抵抗を可及的に低減する作用も奏する。
【0020】
更に、上段の大径掘削攪拌手段7には、回転軸8’からは外向きに、立翼11からは内向きにそれぞれ略水平な攪拌翼16が複数本設けられ、互いに相反する方向に回転する。そして、回転軸8’から外向きに設けられた1本の攪拌翼16には、引き揚げ時の安定材吐出口17が設けられている(図2を参照)。
【0021】
次に、下段の小径掘削攪拌手段6について説明する。図2と図5が分かりやすいように、上記第1のボス13の外周へ回転自在な関係に嵌めた第2のボス18(図5を参照)に基端を発して180°(3.14rad)対称な放射方向に突き出る配置とされた2本の立翼19、19が下向きのコ字形状とされ、その両下端部は、回転軸8’の下端部に基端を発してほぼ水平に設けたアーム20の外端と接合されている。各アーム20の下面には下向きの掘削ビット15が複数設けられている。前記アーム20の外半径は約500mmで、この小径掘削攪拌手段6によって直径1000mmの小径掘削が行われる。前記回転軸8’の最下端部に、下向きの先端カッター21がジョイント部22(図5を参照)で連結して設けられており、先端部に安定材の先端吐出口23が設けられている(図3を参照)。要するに内軸8と接続された回転軸8’も図5のとおり安定材が流通する内管24を有する中空管として構成されている。また、図2で明らかなように、下段の掘削攪拌手段6にも、上段の大径掘削攪拌手段7に属する第1のボス13からは外向きに、立翼19からは内向きにそれぞれ略水平な攪拌翼25が複数本設けられ、互いに相反する方向に回転する。
【0022】
従って、本発明の地盤改良装置は、先ず下段の小径掘削攪拌手段6が先行して直径が1000mm程度の小径掘削をそれなりに小さな掘削抵抗で先導掘削する。続いて、上段の大径掘削攪拌手段7が残る直径約1600mm程度の大径掘削を、いわば2段階に分けて比較的小さな掘削抵抗で行うから、全体としての掘削能力に優れ、掘削効率が良く、大深度の掘削に適するし、工期の短縮にも寄与する。
【0023】
また、上下の掘削攪拌手段7、6は、上述したように互いに相反する方向へ回転されるから、立翼11、19とアーム14、20、並びに攪拌翼16、25の相反する回転による攪拌作用で必要充分な攪拌効果が得られ、品質良好な地盤改良を行える。
【0024】
その上に、上段の大径掘削攪拌手段7は、最終掘削径に等しい外径で上下縁に掘削ビット15を設けた円筒形状のリング12を垂直な向きに備えているので、たとえ地盤中に硬い部分、例えば先に施工した改良土柱が存在しても、これを下向きに鋸引きするが如くに鋭く掘削して行き、逃げるような傾向は発生しない。そのため、地上の改良機本体2のリーダー3で与えられる鉛直精度に従った高い掘削精度で地盤の掘削攪拌を行い改良するので、いわゆる50m以深の大深度まで、いわゆる設計ラップ量を確保することが容易に可能である。つまり、直径が1500mm〜2000mm程度の大口径で、50m以深の大深度までの地盤改良を容易に実現できるのである。
【0025】
次に、互いに反転する内軸8と外軸9とで二重軸構造に構成された掘削軸1の具体的構成と、内軸8及び外軸9の回転駆動手段、並びに大深度の施工に伴って継ぎ足される掘削軸1の接続手段について、主に、図2と図6に基づいて説明する。
【0026】
図2から明らかなように、内軸8は掘削深度に応じて単位軸をジョイント部26で連結して継ぎ足されるものであり、その外周面にはスクリュー部27が備えられている(請求項2記載の発明)。内軸8の外周面と外軸9の内周面との隙間に入り込んだ安定材をスクリュー部27によって下方へ運搬させ、詳細な図示は省略した外軸9下端の排出口から排出させるためである。従って、安定材の侵入による掘削軸1の回転抵抗を軽減することができ、掘進駆動部4の小型化に寄与する。
【0027】
同様に外軸9も単位軸をジョイント部28で連結して継ぎ足すもので、該ジョイント部28は剛性を確保するために外軸9の外径より太く構成されている。そして、外軸9の外周面にもスクリュー部29が備えられ、該スクリュー部29の外径Dは、前記ジョイント部28の外径d及び振れ止め部5の内径と略等しく形成されている(請求項2記載の発明)。そのため、振れ止め部5の内周面とスクリュー部27を備えた外軸9の外周面との間に隙間(ガタ)が発生せず、掘進時の掘削軸1の鉛直精度は良好に確保される。よって、高い鉛直精度を維持して掘削を進めることができ、更に精度の高い設計ラップ量の確保が可能となる。
【0028】
次に、内軸8と外軸9の回転駆動手段である掘進駆動部4は、図6に示すように、内軸8を回転駆動させるモータ30と、外軸9を回転駆動させるモータ31、及び外軸9の上端部と連結された基台32とで構成され、前記モータ30と基台32とがジャッキ33でピン連結されている。つまり、改良機本体2のワイヤーによって吊り下げ支持されたモータ30に反力をとってジャッキ33を伸縮させると、基台32ごと外軸9が引き揚げられ、または押し下げられるジャッキング機構が構成されている(請求項3記載の発明)。
【0029】
本発明の地盤改良装置は、以下の手順で内軸8及び外軸9の継ぎ足し作業を行う。先ず、外軸9の最上位のジョイント部28を切り離し、上記ジャッキ33を収縮させると、内軸8のジョイント部26が露出するので、これを切り離す。次に、改良機本体2で掘進駆動部4とこれに連結されている上位の内軸8及び外軸9を十分に高い位置まで上昇させる。次に予め二重軸構造に組み合わされた内軸8と外軸9の単位軸を別のクレーンで吊り込み、内軸8同士を連結する。その後、上記ジャッキ33を伸長させて外軸9同士を突き合わせて連結すると、継ぎ足し作業は完了する。したがって、比較的容易に内軸8と外軸9の継ぎ足し作業を行うことができ、工期の短縮に寄与する。
【0030】
【本発明の奏する効果】
請求項1〜3に記載した発明に係る大深度、大口径の地盤改良装置は、上段の大径掘削攪拌手段にリングを備えているので、たとえ地盤中に硬い部分、例えば先に施工した改良土柱が存在しても、これを下向きに鋸引きするが如くに切削して行き、逃げるような傾向は発生しない。そのため、地上の改良機本体のリーダーで与えられる鉛直精度に従った高い掘削精度で地盤の掘削攪拌を行い改良できるので、いわゆる50m以深の大深度まで、いわゆる設計ラップ量を確保することが容易に可能である。つまり、直径が1500mm〜2000mm程度の大口径で、50m以深の大深度までの地盤改良を容易に実現できるのである。
【0031】
掘削軸の外軸の外周面には、外径がジョイント部外径及び振れ止め部の内径と略等しいスクリュー部を備えているので、掘進時に高い鉛直精度を維持して掘削を進めることができる。よって、精度の高い設計ラップ量を確保しながら、大深度まで、大口径の地盤改良を行える。
【0032】
掘進駆動部に外軸を引き揚げるジャッキング機構が設けられているので、大深度に及ぶ内軸及び外軸の継ぎ足し、または切り離しを容易に能率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る大深度、大口径の地盤改良装置の全体構成の概念図である。
【図2】掘削軸の下部と掘削攪拌手段を示した拡大図である。
【図3】図2のA−A矢視図である。
【図4】上下の掘削攪拌手段を概略的に示した斜視図である。
【図5】掘削軸先端部の断面構造図である。
【図6】掘進駆動部の拡大図である。
【符号の説明】
6 下段の掘削攪拌手段
7 上段の掘削攪拌手段
8 掘削軸の内軸
9 掘削軸の外軸
11、19 立翼
12 リング
16、25 攪拌翼
14、20 アーム
13 第1のボス
18 第2のボス
15 掘削ビット
27、29 スクリュー部
28 外軸相互のジョイント部
Claims (3)
- 掘削軸は互いに反転する内軸と外軸との二重軸構造とされ、内軸の下端部へ下段の掘削攪拌手段が設けられ、外軸の下端部へ上段の掘削攪拌手段が設けられており、前記上下の掘削攪拌手段を互いに反転させながら地盤を掘削し、その掘削土壌中に安定材を注入し攪拌混合して地盤を改良する地盤改良装置において、
上段の掘削攪拌手段は、放射方向に配置された複数本の立翼と、前記立翼の下端部に水平に設けられた薄肉厚のリング、及び複数本の攪拌翼とで構成されていること、
前記リングは大口径掘削孔と略同径とされており、少なくともその下端縁に下向きの掘削ビットが設けられていることを特徴とする、大深度、大口径の地盤改良装置。 - 二重軸構造に組み合わされた内軸と外軸はそれぞれ外周面にスクリュー部を備えており、外軸外周面の前記スクリュー部の外径は、外軸のジョイント部外径及び振れ止め部の内径と略等しく形成されていることを特徴とする、請求項1に記載した大深度、大口径の地盤改良装置。
- 地盤改良装置の掘進駆動部には、外軸を引き揚げるジャッキング機構が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載した大深度、大口径の地盤改良装置。
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