JP2004315891A - 希土類金属を含むマグネシウム合金の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】所望の特性を発現させることを狙って、所定量の希土類金属を含有するマグネシウム合金を低コストで容易に製造する方法を提供する。
【解決手段】塩化マグネシウムを含む溶融塩浴に所定量の希土類金属塩化物を添加し、前記溶融塩浴中に陰極と陽極とを浸漬し、前記溶融塩浴の周囲を不活性ガス雰囲気とし、前記陰極と陽極とに所定電位差で給電量を制御しながら電気分解を行うことにより希土類金属を0.05質量%以上、2質量%以下含有するマグネシウム合金を前記陰極に電解析出させる。
【選択図】 図2
【解決手段】塩化マグネシウムを含む溶融塩浴に所定量の希土類金属塩化物を添加し、前記溶融塩浴中に陰極と陽極とを浸漬し、前記溶融塩浴の周囲を不活性ガス雰囲気とし、前記陰極と陽極とに所定電位差で給電量を制御しながら電気分解を行うことにより希土類金属を0.05質量%以上、2質量%以下含有するマグネシウム合金を前記陰極に電解析出させる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融塩電解法を用いた希土類金属を含むマグネシウム合金の製造方法に係り、とくに車両のトランスミッション等に用いられる耐食性及び耐高温クリープ性に優れるマグネシウム合金の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム金属およびマグネシウム合金は、軽量で、高比強度な材料であり、構造用金属材料の中では最も密度が低いものと認識されているため、外国では航空機や自動車のトランスミッション等の構造材あるいは各種デバイスに使用されている。しかし、マグネシウム合金は非常に高価であるために特定の分野に用途が限られ、広く用いられるには至っていない。このため、マグネシウム合金を低コストで製造する技術の開発が要望されている。
【0003】
一般に、マグネシウム金属はマグネシウム金属原料の溶融塩を電気分解することにより製造される。例えば、特許文献1にはマグネシウム金属の収率を上げるために、希土類フッ化物電解質中に酸化マグネシウムを溶解し、この溶融塩を電解して希土類金属元素を含有するマグネシウム合金を製造し、これを精製することによりマグネシウム金属を回収する方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−316866号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1の方法では収率を上げるために結果として希土類金属を含有するマグネシウム合金は得られるが、特性の向上を狙って希土類金属の含有量を意図的に所望の範囲に制御することはしていない。このため、従来法では所望の特性、特に耐食性を備えるマグネシウム合金を得ることは困難であり、希土類金属を所望量だけ含有するマグネシウム合金とするためには、後工程でさらに希土類金属を分離する工程が必要となる。このため、希土類金属を含有するマグネシウム合金の製造方法としては効率的な方法とは言えず、製造コストを押し上げる要因となっていた。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、所望の特性を発現させることを狙って、所定量の希土類金属を含有するマグネシウム合金を低コストで容易に製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
希土類金属を0.1%〜数%含むマグネシウム合金は、耐食性および耐高温クリープ性(高温強度)に優れていることが注目されている。例えば、アルミニウムを4質量%、希土類金属を2質量%含むAE42は、特に、耐クリープ特性に優れたマグネシウム合金として知られている。
【0008】
本発明者らは、従来からマグネシウム金属の電解製造に用いられてきた溶融塩電解浴に、希土類金属の塩化物を少量添加するだけで希土類金属を含むマグネシウム合金を電解製造できること、また、電解条件の制御により得られるマグネシウム合金に含有される希土類金属の量が制御可能であることを見出した。本発明はこの知見に基づいてなされたものである。
【0009】
本発明の希土類金属を含むマグネシウム合金の製造方法は、塩化マグネシウムを含む溶融塩浴に所定量の希土類金属塩化物を添加し、前記溶融塩浴中に陰極と陽極とを浸漬し、前記溶融塩浴の周囲を不活性ガス雰囲気とし、前記陰極と陽極とに所定電位差で給電量を制御しながら電気分解を行うことにより希土類金属を0.05質量%以上、2質量%以下含有するマグネシウム合金を前記陰極に電解析出させることを特徴とする。
【0010】
前記陰極電位は、マグネシウム電極電位基準でマイナス1Vからマイナス0.3Vまでの範囲にあることが好ましい。ここで、「陰極電位(または陽極電位)がマグネシウム電極(Mg/Mg2+)電位基準でマイナス1V」とは、マグネシウム電極電位を基準電位、すなわち、ゼロ電位としたときの対極としての陰極(または陽極)の電位がマイナス1Vであることを意味する。
【0011】
また、前記希土類金属塩化物の添加量を前記浴中の溶融塩全量に対して0.2モル%以上、5モル%以下とすることが好ましい。
【0012】
さらに、前記希土類金属塩化物は、複数種の希土類金属を含有する複合化合物であることが好ましい。前記複合化合物にはミッシュメタルの原料となる希土類鉱石中の希土類金属酸化物を塩化物に転換したものを含む。
【0013】
また、前記溶融塩浴の湯面近傍に位置する前記陰極を囲い部材により周囲の湯面から囲うことが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、マグネシウム金属の代表的な製造方法の一つである塩化マグネシウムの溶融塩電解プロセスにおいて、電解浴として用いる溶融塩浴中に少量の希土類金属の塩化物を加えることにより、低コストで容易に所望量の希土類金属を含むマグネシウム合金を直接的に製造することを可能とする。
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付の図面を参照して説明する。
【0016】
本発明に従う希土類金属を含むマグネシウム合金の製造方法を、図1に示す簡易電気分解装置10を用いて説明する。簡易電気分解装置10は、電解用直流電源11に接続された電析極部12と対極部13、および参照電極14を具備する。
【0017】
簡易電気分解装置10の電解炉1の中にはマグネシア質耐火レンガで周囲を囲われた電解槽2が装入されている。電解槽2は、例えばステンレス鋼のような耐熱鋳鋼からなり、密閉可能であり、不活性ガス等を導入する導入口3および排ガス等を排出する排出口4を有する。
【0018】
さらに、電解槽2の中には溶融塩浴槽5が装入されている。溶融塩浴槽5は、その中に所定成分の複数種の金属塩化物が収容されている。溶融塩浴槽5には図示しない加熱装置が取付けられ、これにより溶融塩浴槽5内に収容されている金属塩化物を融点以上の温度範囲にまで加熱して溶融塩浴6とする。
【0019】
電析極部12の下端には電析極12aが設けられ、電析極12aの下半部は電解塩浴6中に浸漬されている。また、電析極12aの近傍には囲い部材12cが取り付けられ、囲い部材12cにより電析極12aが溶融塩浴6の周囲の湯面から仕切られている。この囲い部材12cは、電析極12aへの析出収率を向上させるためのものである。対極部13の下端には対極13aが設けられ、対極13aの下半部は電解塩浴6中に浸漬されている。
【0020】
電析極12aは、陰極(カソード)として働き、例えば、鉄、鋼、黒鉛等を用いることができる。対極13aは、陽極(アノード)として働き、例えば、炭素、黒鉛等を用いることができる。特に、実操業においてバイポーラ型電解炉を使用する際には、陰極および陽極ともに黒鉛を用いることができる。電析極12aおよび対極13aは、それぞれ耐熱性のリード線で電解用直流電源11に接続されている。耐熱性のリード線には例えば、銅線、鉄線、ニッケル線、モリブデン線を挙げることができる。
【0021】
電析極部12および対極部13はともに、電解槽2内の気密性が保持されるようにそれぞれカバー12b,13bで保護された状態で蓋を貫通して電解槽2のなかに挿入されている。図1に示す簡易電気分解装置10では、電析極部12用のカバー12bと囲い部材12cとはマグネシア耐火物からなる一体成形品である。ここでは、電析極12a上に析出するマグネシウム合金と対極13a上で発生する塩素ガスとを隔離するために隔壁として囲い部材12cを設けたが、他の隔離手段を用いて無隔壁とすることも可能である。
【0022】
さらに、参照電極14および温度計としての熱電対15も電解槽2内の気密性が保持されるように保護管で保護された状態で蓋を貫通して電解槽2のなかに挿入されている。参照電極14および熱電対15の下端部は電解塩浴6中に浸漬されている。
【0023】
次に、上記の簡易電気分解装置10を用いて希土類金属を含むマグネシウム合金を製造する場合について説明する。
【0024】
例えば、塩化マグネシウムを含む塩化ナトリウム−塩化カリウム(NaCl−KCl)系、塩化ナトリウム−塩化カルシウム(NaCl−CaCl2)系または塩化ナトリウム−塩化カリウム−塩化カルシウム(NaCl−KCl−CaCl2)系の適当な組成の混合塩を用意する。この混合塩を溶融塩浴槽5に投入し、これに希土類金属塩化物を所定量添加する。
【0025】
一方、導入口3よりアルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)等の不活性ガスを導入し、電解槽2内を不活性ガス雰囲気とする。塩化マグネシウムおよび希土類金属塩化物を含む混合塩を溶融塩浴槽5内で660℃〜700℃の温度範囲に加熱して溶融塩浴6とする。なお、溶融塩はNaCl−KCl系、NaCl−CaCl2系またはNaCl−KCl−CaCl2系だけでなく、マグネシウム金属の溶融塩電解採取プロセスに用いられる溶融塩系であればいかなるものを用いてもよい。
【0026】
この溶融塩浴6に、不活性ガス雰囲気下、電解用直流電源11により所定の電解電位で電気分解を行う。電気分解により電析極12a上では、以下の反応式(1)および反応式(2)で示される反応が進行する。
Mg2++2e−→Mg … (1)
Rx+ +xe−→R … (2)
ここで、Rは希土類金属元素を示す。
【0027】
上式(1)、(2)の反応に従って電析極12a上に希土類金属を含むマグネシウム合金が析出し、囲い部材12cの内側の溶融塩浴6の湯面に浮上し、図2に示すように電析極12aの周りに集まって塊となる。電解析出反応が進行するにつれてマグネシウム合金の塊は大きく成長して容易に回収可能となる。このマグネシウム合金塊を浴から引き上げて回収し、鋳型に流し、インゴットとして希土類金属含有マグネシウム合金材料とする。実操業では、電析極12a上に析出したマグネシウム合金を液状のまま吸引または汲み上げ、一般的なマグネシウム金属の生産と同じように連続操業とすることも可能である。
【0028】
一般的に希土類金属元素は、マグネシウム(Mg)よりも電気化学的に卑であり、両元素の間には反応電位差が存在する。例えばランタン(La)では、電解反応が起こる電位がMgよりも0.3V程度低いと考えられる。このため、電析極12a上では上式(1)の反応が優先的に進行し、この反応に伴い上式(2)の反応が多少進行して、希土類金属を含むマグネシウム合金が得られる。
【0029】
このとき、対極13a上では下式(3)の反応が進行して純度の高い塩素ガスが発生する。
2Cl−→Cl2↑+2e− … (3)
この塩素ガスは排出口4より装置外に排出され、例えば、図示しない吸収装置等により吸収除去される。
【0030】
希土類金属には、例えば、ミッシュメタル、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)等を挙げることができるが、これよりも高い原子番号で、より高価な任意の稀土類金属も使用することが可能である。入手が容易であり、安価な点からミッシュメタルを用いることが最も好ましい。ミッシュメタルは複数の希土類元素が複合化した混合物からなり、例えば、希土類金属を98%、Feを1.0%、Mgを0.5%およびAl,Si等を0.5%含み、希土類金属中の各希土類元素の成分比でCeを45〜50%、Ndを14〜18%、Prを4〜6%、Smを0.5%、Laを22〜30%およびその他の希土類元素を3〜5%含む商業用ミッシュメタルを用いることができる。ミッシュメタルの原料となる希土類鉱石の具体的な例としては、オーストラリア産のモナザイト(全希土中の各希土の成分比で、La2O3;23%、CeO2;46.5%、Pr6O11;5.1%、Nd2O3;18.4%、Sm2O3;2.3%、Eu2O3;0.07%、Gd2O3;1.7%、Tb2O3;0.16%、Dy2O3;0.52%、Ho2O3;0.09%、Er2O3;0.13%、Tm2O3;0.013%、Yb2O3;0.061%、Lu2O3;0.006%、Y2O3;2%を含有する)や中国産のバストネサイト(全希土中の各希土の成分比で、La2O3;23.0%、CeO2;50.7%、Pr6O11;6.2%、Nd2O3;19.5%、Sm2O3;1.20%、Eu2O3;0.20%、Gd2O3;0.50%、Tb2O3;0.10%、Dy2O3;0.10%、Y2O3;0.30%を含有する)を挙げることができる(金属時評・編集部編「新金属データブック」隈元豊編集兼発行、1985年12月12日発行、p.203の表5,p.213の表18を参照のこと)。希土類金属塩化物の出発原料としてミッシュメタルの原料となる希土類鉱石を用いる場合には、主に希土類金属酸化物からなる鉱石を直接塩化物に転換したものを使用することができ、経済的である。ミッシュメタルと同等の性質を有することから、ミッシュメタルの代わりにLaを用いることも好ましい例として挙げることができる。
【0031】
なお、例えばLaの場合では、反応式(2)は以下の反応式(2)’で示される。
La3++3e−→La … (2)’
塩化マグネシウム(MgCl2)にはいかなるものも用いることができるが、一般的に塩化マグネシウムの原料となるマグネサイトから得られるマグネシア(酸化マグネシウム)を原料として、通例の方法により製造した塩化マグネシウムを用いることができる。この場合、マグネシアの塩素化工程において、塩素ガスが使用されるため、本発明の希土類金属を含むマグネシウム合金の製造において対極13a上で発生する塩素ガスをフィードバックし、有効利用することも可能である。また、海水から得られる塩化マグネシウムや、市販されている塩化マグネシウムを用いることも可能である。
【0032】
得られるマグネシウム合金中の希土類金属の含有量は0.05質量%〜2質量%の範囲とする。マグネシウム合金中の希土類金属の含有量を2質量%とすれば、実用Mg−Al合金のAE42に遜色のない耐クリープ強度を有し、車両のトランスミッションのケース等に使用することが可能なマグネシウム合金とすることができる。なお、得られる希土類金属を含むマグネシウム合金は、AE42等の他の希土類金属含有マグネシウム合金を製造するための地金としても利用可能である。
【0033】
マグネシウム合金中の希土類金属の含有量を上記範囲内とするのは、希土類金属含有量が0.05質量%未満であっても、2質量%を超えても、マグネシウム合金の耐食性がむしろ劣化するためである。特に、希土類金属が1質量%を超えて過剰に含有されると、マグネシウム合金中に金属間化合物と思われる析出相が現れるために、耐食性が低下するものと考えられる。このため、マグネシウム合金中の希土類金属の含有量は、0.1質量%〜1質量%とすることが好ましく、さらに優れた耐食性を有するためには、0.2質量%〜0.6質量%の範囲とすることがより好ましい。
【0034】
融点や生産性の観点から溶融塩浴6中の塩化マグネシウムの含有量は、溶融塩をNaCl−CaCl2−MgCl2系とした場合には約20質量%とし、NaCl−KCl−MgCl2系とした場合には約50質量%とするのが一般的であるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
溶融塩浴6中の希土類金属塩化物の添加量は、0.2モル%〜5モル%の範囲とすることが好ましい。これは、希土類金属塩化物の添加量が0.2モル%未満であると析出するマグネシウム合金中の希土類金属の含有量が著しく低下し、所望の特性を有する希土類金属を含むマグネシウム合金が得られにくくなるからである。一方、5モル%を超えると、析出するマグネシウム合金中の希土類金属の含有量が著しく増加し、同様に所望の特性を有する希土類金属を含むマグネシウム合金が得られにくくなるからである。電解電位を変化させることによりマグネシウム合金中の希土類金属の含有量をより制御しやすくなるため、希土類金属塩化物の添加量は0.3モル%〜1.5モル%の範囲とすることがより好ましく、0.6モル%〜1.2モル%の範囲とすることがさらに好ましい。
【0036】
ここでは本発明に従う希土類金属を含むマグネシウム合金の製造装置として簡易電気分解装置10を例示したが、これに限られるものではなく、工業的に一般に使用されているIG電解炉(日本金属学会編「非鉄金属製錬」日本金属学会発行、昭和63年12月5日第4刷発行、p.303,304参照のこと)やALCAN電解炉(軽金属協会編「マグネシウム便覧」軽金属協会発行、1975年、p.6参照のこと)を用いることも可能であり、また、これらの電解炉のバイポーラ型やこれらの電解炉の原理を利用した他の溶融塩電解装置を用いることも可能である。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
(例1〜例5)
(例1)
マグネシウム金属(純度99.95質量%を超える;不可避不純物としてAlを80ppm、Siを50ppm、Mnを160ppm、Feを400ppm、Znを10ppm、その他Cu、Ni、Ca、Na、Kを含有する)にランタン金属(純度99.94質量%を超える;不可避不純物としてCe、Pr、Nd、Fe、Ca、Mgをそれぞれ0.01%未満含有する)を0.3質量%添加し、簡易電気分解装置10の溶融塩浴槽5に入れた。これを、アルゴンガス雰囲気下、約700℃に加熱して溶融し、その後、室温まで徐冷することによりLa含有マグネシウム合金を製造した。
【0039】
得られたLa含有マグネシウム合金に対して腐食試験を以下のように行った。模擬海水として室温の3%食塩水を用意した。この食塩水に得られたマグネシウム合金からなる縦2cm、横1.5cm、厚さ1cmの合金片の2cm×1.5cmの一面を浸漬し、時間の経過とともにこの合金板の質量を測定した。この測定結果を用いた合金片の浸漬した面の面積で除すことにより、1cm2当たりの合金板の質量変化量(mg/cm2)を算出した。
【0040】
(例2)
La金属の添加量を0.6質量%とした以外は例1と同様にLa含有マグネシウム合金を製造し、腐食試験を行った。
【0041】
(例3)
La金属の添加量を6質量%とした以外は例1と同様にLa含有マグネシウム合金を製造し、腐食試験を行った。
【0042】
(例4)
例1で用いたマグネシウム金属と同種のマグネシウム金属をLaを添加せずに用いた以外は、例1と同様に腐食試験を行った。
【0043】
(例5)
マグネシウム合金AZ31(大阪富士工業(株)より販売;Alを2.5質量%〜3.5質量%、Znを0.6質量%〜1.4質量%、Mnを0.2質量%〜1.0質量%、Feを0.005質量%未満、Siを0.1質量%未満、Cuを0.05質量%未満、Niを0.005質量%未満、Caを0.04質量%未満含有する)をLaを添加せずに用いた以外は、例1と同様に腐食試験を行った。
【0044】
例1〜例5の腐食試験の結果を図3に示す。なお、50時間後の質量変化量がゼロからマイナス50mg/cm2までの範囲のものを優れた耐食性を有するものとして評価した。
【0045】
図3より、La含有量が0.3質量%である例1およびLa含有量が0.6質量%である例2のLa含有マグネシウム合金は、50時間経過しても質量変化量がマイナス30mg/cm2未満と低く、対海水の耐食性に優れていた。また、例5のAZ31と比較して、同等の耐食性を有していた。
【0046】
一方、La含有量が6質量%である例3のLa含有マグネシウム合金は、10時間後の質量変化量は例1および例2のLa含有マグネシウム合金と同等であるものの、20時間が経過すると変化量が大きくなり始め、50時間後にはマイナス70mg/cm2を超えていた。すなわち、例1または例2のLa含有マグネシウム合金、あるいは例5のAZ31に比較して対海水の耐食性が劣っていた。
【0047】
Laを含有しない例4のマグネシウム金属は、10時間後の質量変化量は例1および例2のLa含有マグネシウム合金と同等であるものの、20時間が経過すると変化量が大きくなり始め、50時間後にはマイナス130mg/cm2にまで至った。すなわち、例1または例2のLa含有マグネシウム合金、あるいは例5のAZ31に比較して対海水の耐食性が劣っていた。
【0048】
(例6〜例8)
(例6)
図1に示す簡易電気分解装置10を用いてLa含有マグネシウム合金を製造した。塩化マグネシウム(MgCl2)を51質量%、塩化カリウム(KCl)を33質量%、塩化ナトリウム(NaCl)を16質量%含有するMgCl2−KCl−NaCl系混合塩を用意し、この混合塩に塩化ランタン(LaCl3)を0.1モル%加えた。アルゴンガス雰囲気下、前述の塩化ランタンを含む混合塩を溶融塩浴槽5に入れ、約700℃に加熱して融解し、溶融塩浴6とした。溶融塩浴6を定電位となるように制御しながら電気分解し、電析極12a上に析出したLa含有マグネシウム合金を回収した。
【0049】
電析極12aには鋼板を用い、対極13aには炭素棒を用い、囲い部材12cにはマグネシア(MgO)を用いた。また、電析極12aおよび対極13aを電解用直流電源11に接続する耐熱性のリード線にはニッケル製またはモリブデン製のワイヤを用い、参照電極14には、銀−銀イオン電極を用いた。対極13aで発生した塩素ガスは装置外に排出し、吸収装置によって吸収除去した。
【0050】
このとき、陰極電位をマグネシウム電極電位基準でマイナス0.3V、マイナス0.6V、マイナス0.8V、マイナス1.0V、マイナス1.2V、マイナス1.5Vとし、各陰極電位で電気分解を行った。なお、陰極電位がマグネシウム電極電位基準でマイナス1.2Vのときの定常状態での陰極電流密度は0.25〜0.5A/cm2であり、陽極電位はマグネシウム電極電位基準で約3〜4Vであった。陰極電流密度は、15mmφの内径を有する囲い部材12cの内面積が約2cm2として換算した。
【0051】
(例7)
MgCl2−KCl−NaCl系混合塩にLaCl3を0.2モル%加えた以外、例6と同様にLa含有マグネシウム合金を製造した。なお、陰極電位がマグネシウム電極電位基準でマイナス1.2Vのときの定常状態での陰極電流密度は0.5A/cm2であった。
【0052】
(例8)
MgCl2−CaCl2−NaCl系混合塩にLaCl3を1.0モル%加えた以外、例6と同様にLa含有マグネシウム合金を製造した。このときの各陰極電位での陰極電流密度を表1に示す。なお、陰極電位を一定としても陰極電流密度は時間の経過とともに変化したため、表1においては陰極電流密度が最も安定した定常状態での値を示した。
【0053】
例6〜8の製造方法において得られたLa含有マグネシウム合金の外観写真図を図2に示す。
【0054】
電気分解を行うことにより、電析極12a上にLa含有マグネシウム合金が析出し、その後、囲い部材12cの内側の溶融塩浴6の湯面に浮上し集まった。電気分解中、溶融塩浴6は約700℃に保っていたため、浮上したLa含有マグネシウム合金は液状であったが、電気分解終了後、溶融塩浴6を徐冷することにより、図2に示すように電析極12a上にLa含有マグネシウム合金の塊が形成された。
【0055】
また、例6〜8のそれぞれの陰極電位で得られたLa含有マグネシウム合金の成分を日本ジャーレルアッシュ(株)社製ICP発光分析装置POEMSIIを用いてICP発光分析法により分析し、マグネシウム合金中に含まれるLa含有量を測定した。
【0056】
【表1】
【0057】
このようにして得られた希土類金属を含むマグネシウム合金を分析したところ、電解浴中の希土類金属塩化物の濃度と、電解電位と、得られるマグネシウム合金中の希土類金属の含有量との間に相関性があることが見出された。
【0058】
すなわち、電析極12aの電位、つまり陽極(対極)13aに対する陰極(電析極)12aの電位をマグネシウム電極電位基準でマイナス1Vからマイナス0.3Vまでの範囲として電気分解を行うと、溶融塩浴中の希土類金属塩化物の添加量を0.2モル%〜5モル%の範囲内とすれば、耐食性の優れたマグネシウム合金、すなわち希土類金属の含有量が0.05質量%〜2質量%の範囲にあるマグネシウム合金を得ることができる。陰極電位をマグネシウム電極電位基準でマイナス1V未満とすると、電解浴中の希土類金属塩化物の濃度を適正値としても、得られるマグネシウム合金中の希土類金属の含有量が0.05質量%に満たないことがある。一方、陰極電位がマグネシウム電極電位基準でマイナス0.3Vを超えると、電解浴中の希土類金属塩化物の濃度を適正値としても、得られるマグネシウム合金中の希土類金属含有量が2質量%を超えることがある。なお、電析極12aの陰極電流密度は0.1A/cm2〜1A/cm2とすることができる。
【0059】
例6〜例8の製造方法において、陰極電位と得られたマグネシウム合金中のLa含有量と溶融塩浴(電解浴)中のLaCl3量との相関図を図4および図5に示す。図4において、横軸はマグネシウム電極電位基準での陰極電位(V)を示し、縦軸はマグネシウム合金中のLa含有量(質量%)を示し、図5において、横軸は電解浴中のLaCl3量(mol%)を示し、縦軸はマグネシウム合金中のLa含有量(質量%)を示す。
【0060】
図4および図5より、電解浴中のLaCl3量を1.0モル%とした例8の製造方法では、陰極電位がマグネシウム電極電位基準でマイナス1.5Vからマイナス0.3Vまでの範囲で、La含有量が0.05質量%〜2質量%の範囲にある、すなわち耐食性に優れたLa含有マグネシウム合金が得られた。なお、陰極電位がマイナス0.3Vのときに、マグネシウム合金中に含まれるLa含有量が特に大きくなったのは、LaとMgの反応電位差が原因であると考えられる。
【0061】
また、電解浴中のLaCl3量を0.2モル%とした例7の製造方法では、陰極電位がマグネシウム電極電位基準でマイナス1.2Vからマイナス0.3V未満までの範囲で、La含有量が0.05質量%〜2質量%の範囲にある、すなわち耐食性に優れたLa含有マグネシウム合金を得られた。
【0062】
一方、電解浴中のLaCl3量を0.1モル%とした例6の製造方法では、陰極電位がマグネシウム電極電位基準でマイナス1.5Vからマイナス0.3Vまでのいずれの範囲にあっても、得られたLa含有マグネシウム合金中のLa含有量は0.05質量%未満と少なかった。
【0063】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、既存のマグネシウム金属の電解製造装置を利用して、付加価値の高い希土類金属を含むマグネシウム金属を低コストで製造することができる。さらに、所望量の希土類金属を含み、耐食性および耐高温クリープ特性に優れたマグネシウム合金を直接製造することができるため、製造プロセスを簡便にすることができ、低コストで所望量の希土類金属を含むマグネシウム合金を製造することができる。また、希土類金属塩化物の出発原料としてミッシュメタルの原料となる希土類鉱石を用いれば、希土類金属を含むマグネシウム合金をさらに低コストで製造することができる。さらに、得られた希土類金属を含むマグネシウム合金は、AE42等の他の希土類金属含有マグネシウム合金を製造するための地金としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に用いられる簡易電気分解装置の概略断面図。
【図2】電析極に析出したLa含有マグネシウム合金の外観写真。
【図3】La含有マグネシウム合金、マグネシウム金属およびAZ31の腐食試験結果を示すグラフ図。
【図4】電気分解の陰極電位とマグネシウム合金中のLa含有量との関係を示すグラフ図。
【図5】電解浴中のLaCl3量とマグネシウム合金中のLa含有量との関係を示すグラフ図。
【符号の説明】
1…電解炉、2…電解槽、3…導入口、4…排出口、
5…溶融塩浴槽、6…溶融塩浴(電解浴)、
10…簡易電気分解製造装置、11…電解用直流電源、12…電析極部、
12a…電析極、12b,13b…カバー、12c…囲い部材、
13…対極部、13a…対極、
14…参照電極、15…熱電対、
16…希土類金属を含むマグネシウム合金。
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融塩電解法を用いた希土類金属を含むマグネシウム合金の製造方法に係り、とくに車両のトランスミッション等に用いられる耐食性及び耐高温クリープ性に優れるマグネシウム合金の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム金属およびマグネシウム合金は、軽量で、高比強度な材料であり、構造用金属材料の中では最も密度が低いものと認識されているため、外国では航空機や自動車のトランスミッション等の構造材あるいは各種デバイスに使用されている。しかし、マグネシウム合金は非常に高価であるために特定の分野に用途が限られ、広く用いられるには至っていない。このため、マグネシウム合金を低コストで製造する技術の開発が要望されている。
【0003】
一般に、マグネシウム金属はマグネシウム金属原料の溶融塩を電気分解することにより製造される。例えば、特許文献1にはマグネシウム金属の収率を上げるために、希土類フッ化物電解質中に酸化マグネシウムを溶解し、この溶融塩を電解して希土類金属元素を含有するマグネシウム合金を製造し、これを精製することによりマグネシウム金属を回収する方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−316866号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1の方法では収率を上げるために結果として希土類金属を含有するマグネシウム合金は得られるが、特性の向上を狙って希土類金属の含有量を意図的に所望の範囲に制御することはしていない。このため、従来法では所望の特性、特に耐食性を備えるマグネシウム合金を得ることは困難であり、希土類金属を所望量だけ含有するマグネシウム合金とするためには、後工程でさらに希土類金属を分離する工程が必要となる。このため、希土類金属を含有するマグネシウム合金の製造方法としては効率的な方法とは言えず、製造コストを押し上げる要因となっていた。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、所望の特性を発現させることを狙って、所定量の希土類金属を含有するマグネシウム合金を低コストで容易に製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
希土類金属を0.1%〜数%含むマグネシウム合金は、耐食性および耐高温クリープ性(高温強度)に優れていることが注目されている。例えば、アルミニウムを4質量%、希土類金属を2質量%含むAE42は、特に、耐クリープ特性に優れたマグネシウム合金として知られている。
【0008】
本発明者らは、従来からマグネシウム金属の電解製造に用いられてきた溶融塩電解浴に、希土類金属の塩化物を少量添加するだけで希土類金属を含むマグネシウム合金を電解製造できること、また、電解条件の制御により得られるマグネシウム合金に含有される希土類金属の量が制御可能であることを見出した。本発明はこの知見に基づいてなされたものである。
【0009】
本発明の希土類金属を含むマグネシウム合金の製造方法は、塩化マグネシウムを含む溶融塩浴に所定量の希土類金属塩化物を添加し、前記溶融塩浴中に陰極と陽極とを浸漬し、前記溶融塩浴の周囲を不活性ガス雰囲気とし、前記陰極と陽極とに所定電位差で給電量を制御しながら電気分解を行うことにより希土類金属を0.05質量%以上、2質量%以下含有するマグネシウム合金を前記陰極に電解析出させることを特徴とする。
【0010】
前記陰極電位は、マグネシウム電極電位基準でマイナス1Vからマイナス0.3Vまでの範囲にあることが好ましい。ここで、「陰極電位(または陽極電位)がマグネシウム電極(Mg/Mg2+)電位基準でマイナス1V」とは、マグネシウム電極電位を基準電位、すなわち、ゼロ電位としたときの対極としての陰極(または陽極)の電位がマイナス1Vであることを意味する。
【0011】
また、前記希土類金属塩化物の添加量を前記浴中の溶融塩全量に対して0.2モル%以上、5モル%以下とすることが好ましい。
【0012】
さらに、前記希土類金属塩化物は、複数種の希土類金属を含有する複合化合物であることが好ましい。前記複合化合物にはミッシュメタルの原料となる希土類鉱石中の希土類金属酸化物を塩化物に転換したものを含む。
【0013】
また、前記溶融塩浴の湯面近傍に位置する前記陰極を囲い部材により周囲の湯面から囲うことが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、マグネシウム金属の代表的な製造方法の一つである塩化マグネシウムの溶融塩電解プロセスにおいて、電解浴として用いる溶融塩浴中に少量の希土類金属の塩化物を加えることにより、低コストで容易に所望量の希土類金属を含むマグネシウム合金を直接的に製造することを可能とする。
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付の図面を参照して説明する。
【0016】
本発明に従う希土類金属を含むマグネシウム合金の製造方法を、図1に示す簡易電気分解装置10を用いて説明する。簡易電気分解装置10は、電解用直流電源11に接続された電析極部12と対極部13、および参照電極14を具備する。
【0017】
簡易電気分解装置10の電解炉1の中にはマグネシア質耐火レンガで周囲を囲われた電解槽2が装入されている。電解槽2は、例えばステンレス鋼のような耐熱鋳鋼からなり、密閉可能であり、不活性ガス等を導入する導入口3および排ガス等を排出する排出口4を有する。
【0018】
さらに、電解槽2の中には溶融塩浴槽5が装入されている。溶融塩浴槽5は、その中に所定成分の複数種の金属塩化物が収容されている。溶融塩浴槽5には図示しない加熱装置が取付けられ、これにより溶融塩浴槽5内に収容されている金属塩化物を融点以上の温度範囲にまで加熱して溶融塩浴6とする。
【0019】
電析極部12の下端には電析極12aが設けられ、電析極12aの下半部は電解塩浴6中に浸漬されている。また、電析極12aの近傍には囲い部材12cが取り付けられ、囲い部材12cにより電析極12aが溶融塩浴6の周囲の湯面から仕切られている。この囲い部材12cは、電析極12aへの析出収率を向上させるためのものである。対極部13の下端には対極13aが設けられ、対極13aの下半部は電解塩浴6中に浸漬されている。
【0020】
電析極12aは、陰極(カソード)として働き、例えば、鉄、鋼、黒鉛等を用いることができる。対極13aは、陽極(アノード)として働き、例えば、炭素、黒鉛等を用いることができる。特に、実操業においてバイポーラ型電解炉を使用する際には、陰極および陽極ともに黒鉛を用いることができる。電析極12aおよび対極13aは、それぞれ耐熱性のリード線で電解用直流電源11に接続されている。耐熱性のリード線には例えば、銅線、鉄線、ニッケル線、モリブデン線を挙げることができる。
【0021】
電析極部12および対極部13はともに、電解槽2内の気密性が保持されるようにそれぞれカバー12b,13bで保護された状態で蓋を貫通して電解槽2のなかに挿入されている。図1に示す簡易電気分解装置10では、電析極部12用のカバー12bと囲い部材12cとはマグネシア耐火物からなる一体成形品である。ここでは、電析極12a上に析出するマグネシウム合金と対極13a上で発生する塩素ガスとを隔離するために隔壁として囲い部材12cを設けたが、他の隔離手段を用いて無隔壁とすることも可能である。
【0022】
さらに、参照電極14および温度計としての熱電対15も電解槽2内の気密性が保持されるように保護管で保護された状態で蓋を貫通して電解槽2のなかに挿入されている。参照電極14および熱電対15の下端部は電解塩浴6中に浸漬されている。
【0023】
次に、上記の簡易電気分解装置10を用いて希土類金属を含むマグネシウム合金を製造する場合について説明する。
【0024】
例えば、塩化マグネシウムを含む塩化ナトリウム−塩化カリウム(NaCl−KCl)系、塩化ナトリウム−塩化カルシウム(NaCl−CaCl2)系または塩化ナトリウム−塩化カリウム−塩化カルシウム(NaCl−KCl−CaCl2)系の適当な組成の混合塩を用意する。この混合塩を溶融塩浴槽5に投入し、これに希土類金属塩化物を所定量添加する。
【0025】
一方、導入口3よりアルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)等の不活性ガスを導入し、電解槽2内を不活性ガス雰囲気とする。塩化マグネシウムおよび希土類金属塩化物を含む混合塩を溶融塩浴槽5内で660℃〜700℃の温度範囲に加熱して溶融塩浴6とする。なお、溶融塩はNaCl−KCl系、NaCl−CaCl2系またはNaCl−KCl−CaCl2系だけでなく、マグネシウム金属の溶融塩電解採取プロセスに用いられる溶融塩系であればいかなるものを用いてもよい。
【0026】
この溶融塩浴6に、不活性ガス雰囲気下、電解用直流電源11により所定の電解電位で電気分解を行う。電気分解により電析極12a上では、以下の反応式(1)および反応式(2)で示される反応が進行する。
Mg2++2e−→Mg … (1)
Rx+ +xe−→R … (2)
ここで、Rは希土類金属元素を示す。
【0027】
上式(1)、(2)の反応に従って電析極12a上に希土類金属を含むマグネシウム合金が析出し、囲い部材12cの内側の溶融塩浴6の湯面に浮上し、図2に示すように電析極12aの周りに集まって塊となる。電解析出反応が進行するにつれてマグネシウム合金の塊は大きく成長して容易に回収可能となる。このマグネシウム合金塊を浴から引き上げて回収し、鋳型に流し、インゴットとして希土類金属含有マグネシウム合金材料とする。実操業では、電析極12a上に析出したマグネシウム合金を液状のまま吸引または汲み上げ、一般的なマグネシウム金属の生産と同じように連続操業とすることも可能である。
【0028】
一般的に希土類金属元素は、マグネシウム(Mg)よりも電気化学的に卑であり、両元素の間には反応電位差が存在する。例えばランタン(La)では、電解反応が起こる電位がMgよりも0.3V程度低いと考えられる。このため、電析極12a上では上式(1)の反応が優先的に進行し、この反応に伴い上式(2)の反応が多少進行して、希土類金属を含むマグネシウム合金が得られる。
【0029】
このとき、対極13a上では下式(3)の反応が進行して純度の高い塩素ガスが発生する。
2Cl−→Cl2↑+2e− … (3)
この塩素ガスは排出口4より装置外に排出され、例えば、図示しない吸収装置等により吸収除去される。
【0030】
希土類金属には、例えば、ミッシュメタル、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)等を挙げることができるが、これよりも高い原子番号で、より高価な任意の稀土類金属も使用することが可能である。入手が容易であり、安価な点からミッシュメタルを用いることが最も好ましい。ミッシュメタルは複数の希土類元素が複合化した混合物からなり、例えば、希土類金属を98%、Feを1.0%、Mgを0.5%およびAl,Si等を0.5%含み、希土類金属中の各希土類元素の成分比でCeを45〜50%、Ndを14〜18%、Prを4〜6%、Smを0.5%、Laを22〜30%およびその他の希土類元素を3〜5%含む商業用ミッシュメタルを用いることができる。ミッシュメタルの原料となる希土類鉱石の具体的な例としては、オーストラリア産のモナザイト(全希土中の各希土の成分比で、La2O3;23%、CeO2;46.5%、Pr6O11;5.1%、Nd2O3;18.4%、Sm2O3;2.3%、Eu2O3;0.07%、Gd2O3;1.7%、Tb2O3;0.16%、Dy2O3;0.52%、Ho2O3;0.09%、Er2O3;0.13%、Tm2O3;0.013%、Yb2O3;0.061%、Lu2O3;0.006%、Y2O3;2%を含有する)や中国産のバストネサイト(全希土中の各希土の成分比で、La2O3;23.0%、CeO2;50.7%、Pr6O11;6.2%、Nd2O3;19.5%、Sm2O3;1.20%、Eu2O3;0.20%、Gd2O3;0.50%、Tb2O3;0.10%、Dy2O3;0.10%、Y2O3;0.30%を含有する)を挙げることができる(金属時評・編集部編「新金属データブック」隈元豊編集兼発行、1985年12月12日発行、p.203の表5,p.213の表18を参照のこと)。希土類金属塩化物の出発原料としてミッシュメタルの原料となる希土類鉱石を用いる場合には、主に希土類金属酸化物からなる鉱石を直接塩化物に転換したものを使用することができ、経済的である。ミッシュメタルと同等の性質を有することから、ミッシュメタルの代わりにLaを用いることも好ましい例として挙げることができる。
【0031】
なお、例えばLaの場合では、反応式(2)は以下の反応式(2)’で示される。
La3++3e−→La … (2)’
塩化マグネシウム(MgCl2)にはいかなるものも用いることができるが、一般的に塩化マグネシウムの原料となるマグネサイトから得られるマグネシア(酸化マグネシウム)を原料として、通例の方法により製造した塩化マグネシウムを用いることができる。この場合、マグネシアの塩素化工程において、塩素ガスが使用されるため、本発明の希土類金属を含むマグネシウム合金の製造において対極13a上で発生する塩素ガスをフィードバックし、有効利用することも可能である。また、海水から得られる塩化マグネシウムや、市販されている塩化マグネシウムを用いることも可能である。
【0032】
得られるマグネシウム合金中の希土類金属の含有量は0.05質量%〜2質量%の範囲とする。マグネシウム合金中の希土類金属の含有量を2質量%とすれば、実用Mg−Al合金のAE42に遜色のない耐クリープ強度を有し、車両のトランスミッションのケース等に使用することが可能なマグネシウム合金とすることができる。なお、得られる希土類金属を含むマグネシウム合金は、AE42等の他の希土類金属含有マグネシウム合金を製造するための地金としても利用可能である。
【0033】
マグネシウム合金中の希土類金属の含有量を上記範囲内とするのは、希土類金属含有量が0.05質量%未満であっても、2質量%を超えても、マグネシウム合金の耐食性がむしろ劣化するためである。特に、希土類金属が1質量%を超えて過剰に含有されると、マグネシウム合金中に金属間化合物と思われる析出相が現れるために、耐食性が低下するものと考えられる。このため、マグネシウム合金中の希土類金属の含有量は、0.1質量%〜1質量%とすることが好ましく、さらに優れた耐食性を有するためには、0.2質量%〜0.6質量%の範囲とすることがより好ましい。
【0034】
融点や生産性の観点から溶融塩浴6中の塩化マグネシウムの含有量は、溶融塩をNaCl−CaCl2−MgCl2系とした場合には約20質量%とし、NaCl−KCl−MgCl2系とした場合には約50質量%とするのが一般的であるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
溶融塩浴6中の希土類金属塩化物の添加量は、0.2モル%〜5モル%の範囲とすることが好ましい。これは、希土類金属塩化物の添加量が0.2モル%未満であると析出するマグネシウム合金中の希土類金属の含有量が著しく低下し、所望の特性を有する希土類金属を含むマグネシウム合金が得られにくくなるからである。一方、5モル%を超えると、析出するマグネシウム合金中の希土類金属の含有量が著しく増加し、同様に所望の特性を有する希土類金属を含むマグネシウム合金が得られにくくなるからである。電解電位を変化させることによりマグネシウム合金中の希土類金属の含有量をより制御しやすくなるため、希土類金属塩化物の添加量は0.3モル%〜1.5モル%の範囲とすることがより好ましく、0.6モル%〜1.2モル%の範囲とすることがさらに好ましい。
【0036】
ここでは本発明に従う希土類金属を含むマグネシウム合金の製造装置として簡易電気分解装置10を例示したが、これに限られるものではなく、工業的に一般に使用されているIG電解炉(日本金属学会編「非鉄金属製錬」日本金属学会発行、昭和63年12月5日第4刷発行、p.303,304参照のこと)やALCAN電解炉(軽金属協会編「マグネシウム便覧」軽金属協会発行、1975年、p.6参照のこと)を用いることも可能であり、また、これらの電解炉のバイポーラ型やこれらの電解炉の原理を利用した他の溶融塩電解装置を用いることも可能である。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
(例1〜例5)
(例1)
マグネシウム金属(純度99.95質量%を超える;不可避不純物としてAlを80ppm、Siを50ppm、Mnを160ppm、Feを400ppm、Znを10ppm、その他Cu、Ni、Ca、Na、Kを含有する)にランタン金属(純度99.94質量%を超える;不可避不純物としてCe、Pr、Nd、Fe、Ca、Mgをそれぞれ0.01%未満含有する)を0.3質量%添加し、簡易電気分解装置10の溶融塩浴槽5に入れた。これを、アルゴンガス雰囲気下、約700℃に加熱して溶融し、その後、室温まで徐冷することによりLa含有マグネシウム合金を製造した。
【0039】
得られたLa含有マグネシウム合金に対して腐食試験を以下のように行った。模擬海水として室温の3%食塩水を用意した。この食塩水に得られたマグネシウム合金からなる縦2cm、横1.5cm、厚さ1cmの合金片の2cm×1.5cmの一面を浸漬し、時間の経過とともにこの合金板の質量を測定した。この測定結果を用いた合金片の浸漬した面の面積で除すことにより、1cm2当たりの合金板の質量変化量(mg/cm2)を算出した。
【0040】
(例2)
La金属の添加量を0.6質量%とした以外は例1と同様にLa含有マグネシウム合金を製造し、腐食試験を行った。
【0041】
(例3)
La金属の添加量を6質量%とした以外は例1と同様にLa含有マグネシウム合金を製造し、腐食試験を行った。
【0042】
(例4)
例1で用いたマグネシウム金属と同種のマグネシウム金属をLaを添加せずに用いた以外は、例1と同様に腐食試験を行った。
【0043】
(例5)
マグネシウム合金AZ31(大阪富士工業(株)より販売;Alを2.5質量%〜3.5質量%、Znを0.6質量%〜1.4質量%、Mnを0.2質量%〜1.0質量%、Feを0.005質量%未満、Siを0.1質量%未満、Cuを0.05質量%未満、Niを0.005質量%未満、Caを0.04質量%未満含有する)をLaを添加せずに用いた以外は、例1と同様に腐食試験を行った。
【0044】
例1〜例5の腐食試験の結果を図3に示す。なお、50時間後の質量変化量がゼロからマイナス50mg/cm2までの範囲のものを優れた耐食性を有するものとして評価した。
【0045】
図3より、La含有量が0.3質量%である例1およびLa含有量が0.6質量%である例2のLa含有マグネシウム合金は、50時間経過しても質量変化量がマイナス30mg/cm2未満と低く、対海水の耐食性に優れていた。また、例5のAZ31と比較して、同等の耐食性を有していた。
【0046】
一方、La含有量が6質量%である例3のLa含有マグネシウム合金は、10時間後の質量変化量は例1および例2のLa含有マグネシウム合金と同等であるものの、20時間が経過すると変化量が大きくなり始め、50時間後にはマイナス70mg/cm2を超えていた。すなわち、例1または例2のLa含有マグネシウム合金、あるいは例5のAZ31に比較して対海水の耐食性が劣っていた。
【0047】
Laを含有しない例4のマグネシウム金属は、10時間後の質量変化量は例1および例2のLa含有マグネシウム合金と同等であるものの、20時間が経過すると変化量が大きくなり始め、50時間後にはマイナス130mg/cm2にまで至った。すなわち、例1または例2のLa含有マグネシウム合金、あるいは例5のAZ31に比較して対海水の耐食性が劣っていた。
【0048】
(例6〜例8)
(例6)
図1に示す簡易電気分解装置10を用いてLa含有マグネシウム合金を製造した。塩化マグネシウム(MgCl2)を51質量%、塩化カリウム(KCl)を33質量%、塩化ナトリウム(NaCl)を16質量%含有するMgCl2−KCl−NaCl系混合塩を用意し、この混合塩に塩化ランタン(LaCl3)を0.1モル%加えた。アルゴンガス雰囲気下、前述の塩化ランタンを含む混合塩を溶融塩浴槽5に入れ、約700℃に加熱して融解し、溶融塩浴6とした。溶融塩浴6を定電位となるように制御しながら電気分解し、電析極12a上に析出したLa含有マグネシウム合金を回収した。
【0049】
電析極12aには鋼板を用い、対極13aには炭素棒を用い、囲い部材12cにはマグネシア(MgO)を用いた。また、電析極12aおよび対極13aを電解用直流電源11に接続する耐熱性のリード線にはニッケル製またはモリブデン製のワイヤを用い、参照電極14には、銀−銀イオン電極を用いた。対極13aで発生した塩素ガスは装置外に排出し、吸収装置によって吸収除去した。
【0050】
このとき、陰極電位をマグネシウム電極電位基準でマイナス0.3V、マイナス0.6V、マイナス0.8V、マイナス1.0V、マイナス1.2V、マイナス1.5Vとし、各陰極電位で電気分解を行った。なお、陰極電位がマグネシウム電極電位基準でマイナス1.2Vのときの定常状態での陰極電流密度は0.25〜0.5A/cm2であり、陽極電位はマグネシウム電極電位基準で約3〜4Vであった。陰極電流密度は、15mmφの内径を有する囲い部材12cの内面積が約2cm2として換算した。
【0051】
(例7)
MgCl2−KCl−NaCl系混合塩にLaCl3を0.2モル%加えた以外、例6と同様にLa含有マグネシウム合金を製造した。なお、陰極電位がマグネシウム電極電位基準でマイナス1.2Vのときの定常状態での陰極電流密度は0.5A/cm2であった。
【0052】
(例8)
MgCl2−CaCl2−NaCl系混合塩にLaCl3を1.0モル%加えた以外、例6と同様にLa含有マグネシウム合金を製造した。このときの各陰極電位での陰極電流密度を表1に示す。なお、陰極電位を一定としても陰極電流密度は時間の経過とともに変化したため、表1においては陰極電流密度が最も安定した定常状態での値を示した。
【0053】
例6〜8の製造方法において得られたLa含有マグネシウム合金の外観写真図を図2に示す。
【0054】
電気分解を行うことにより、電析極12a上にLa含有マグネシウム合金が析出し、その後、囲い部材12cの内側の溶融塩浴6の湯面に浮上し集まった。電気分解中、溶融塩浴6は約700℃に保っていたため、浮上したLa含有マグネシウム合金は液状であったが、電気分解終了後、溶融塩浴6を徐冷することにより、図2に示すように電析極12a上にLa含有マグネシウム合金の塊が形成された。
【0055】
また、例6〜8のそれぞれの陰極電位で得られたLa含有マグネシウム合金の成分を日本ジャーレルアッシュ(株)社製ICP発光分析装置POEMSIIを用いてICP発光分析法により分析し、マグネシウム合金中に含まれるLa含有量を測定した。
【0056】
【表1】
【0057】
このようにして得られた希土類金属を含むマグネシウム合金を分析したところ、電解浴中の希土類金属塩化物の濃度と、電解電位と、得られるマグネシウム合金中の希土類金属の含有量との間に相関性があることが見出された。
【0058】
すなわち、電析極12aの電位、つまり陽極(対極)13aに対する陰極(電析極)12aの電位をマグネシウム電極電位基準でマイナス1Vからマイナス0.3Vまでの範囲として電気分解を行うと、溶融塩浴中の希土類金属塩化物の添加量を0.2モル%〜5モル%の範囲内とすれば、耐食性の優れたマグネシウム合金、すなわち希土類金属の含有量が0.05質量%〜2質量%の範囲にあるマグネシウム合金を得ることができる。陰極電位をマグネシウム電極電位基準でマイナス1V未満とすると、電解浴中の希土類金属塩化物の濃度を適正値としても、得られるマグネシウム合金中の希土類金属の含有量が0.05質量%に満たないことがある。一方、陰極電位がマグネシウム電極電位基準でマイナス0.3Vを超えると、電解浴中の希土類金属塩化物の濃度を適正値としても、得られるマグネシウム合金中の希土類金属含有量が2質量%を超えることがある。なお、電析極12aの陰極電流密度は0.1A/cm2〜1A/cm2とすることができる。
【0059】
例6〜例8の製造方法において、陰極電位と得られたマグネシウム合金中のLa含有量と溶融塩浴(電解浴)中のLaCl3量との相関図を図4および図5に示す。図4において、横軸はマグネシウム電極電位基準での陰極電位(V)を示し、縦軸はマグネシウム合金中のLa含有量(質量%)を示し、図5において、横軸は電解浴中のLaCl3量(mol%)を示し、縦軸はマグネシウム合金中のLa含有量(質量%)を示す。
【0060】
図4および図5より、電解浴中のLaCl3量を1.0モル%とした例8の製造方法では、陰極電位がマグネシウム電極電位基準でマイナス1.5Vからマイナス0.3Vまでの範囲で、La含有量が0.05質量%〜2質量%の範囲にある、すなわち耐食性に優れたLa含有マグネシウム合金が得られた。なお、陰極電位がマイナス0.3Vのときに、マグネシウム合金中に含まれるLa含有量が特に大きくなったのは、LaとMgの反応電位差が原因であると考えられる。
【0061】
また、電解浴中のLaCl3量を0.2モル%とした例7の製造方法では、陰極電位がマグネシウム電極電位基準でマイナス1.2Vからマイナス0.3V未満までの範囲で、La含有量が0.05質量%〜2質量%の範囲にある、すなわち耐食性に優れたLa含有マグネシウム合金を得られた。
【0062】
一方、電解浴中のLaCl3量を0.1モル%とした例6の製造方法では、陰極電位がマグネシウム電極電位基準でマイナス1.5Vからマイナス0.3Vまでのいずれの範囲にあっても、得られたLa含有マグネシウム合金中のLa含有量は0.05質量%未満と少なかった。
【0063】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、既存のマグネシウム金属の電解製造装置を利用して、付加価値の高い希土類金属を含むマグネシウム金属を低コストで製造することができる。さらに、所望量の希土類金属を含み、耐食性および耐高温クリープ特性に優れたマグネシウム合金を直接製造することができるため、製造プロセスを簡便にすることができ、低コストで所望量の希土類金属を含むマグネシウム合金を製造することができる。また、希土類金属塩化物の出発原料としてミッシュメタルの原料となる希土類鉱石を用いれば、希土類金属を含むマグネシウム合金をさらに低コストで製造することができる。さらに、得られた希土類金属を含むマグネシウム合金は、AE42等の他の希土類金属含有マグネシウム合金を製造するための地金としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に用いられる簡易電気分解装置の概略断面図。
【図2】電析極に析出したLa含有マグネシウム合金の外観写真。
【図3】La含有マグネシウム合金、マグネシウム金属およびAZ31の腐食試験結果を示すグラフ図。
【図4】電気分解の陰極電位とマグネシウム合金中のLa含有量との関係を示すグラフ図。
【図5】電解浴中のLaCl3量とマグネシウム合金中のLa含有量との関係を示すグラフ図。
【符号の説明】
1…電解炉、2…電解槽、3…導入口、4…排出口、
5…溶融塩浴槽、6…溶融塩浴(電解浴)、
10…簡易電気分解製造装置、11…電解用直流電源、12…電析極部、
12a…電析極、12b,13b…カバー、12c…囲い部材、
13…対極部、13a…対極、
14…参照電極、15…熱電対、
16…希土類金属を含むマグネシウム合金。
Claims (5)
- 塩化マグネシウムを含む溶融塩浴に所定量の希土類金属塩化物を添加し、前記溶融塩浴中に陰極と陽極とを浸漬し、前記溶融塩浴の周囲を不活性ガス雰囲気とし、前記陰極と陽極とに所定電位差で給電量を制御しながら電気分解を行うことにより希土類金属を0.05質量%以上、2質量%以下含有するマグネシウム合金を前記陰極に電解析出させることを特徴とする希土類金属を含むマグネシウム合金の製造方法。
- 前記陰極電位は、マグネシウム電極電位基準でマイナス1Vからマイナス0.3Vまでの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 前記希土類金属塩化物の添加量を前記浴中の溶融塩全量に対して0.2モル%以上、5モル%以下とすることを特徴とする請求項1または2のいずれか一方に記載の製造方法。
- 前記希土類金属塩化物は、複数種の希土類金属を含有する複合化合物であることを特徴とする請求項1ないし3のうちのいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記溶融塩浴の湯面近傍に位置する前記陰極を囲い部材により周囲の湯面から囲うことを特徴とする請求項1ないし4のうちのいずれか1項に記載の製造方法。
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- 2003-04-16 JP JP2003111642A patent/JP2004315891A/ja active Pending
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