JP2004315863A - レーザ焼入れ方法及び装置 - Google Patents

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寛久 小野目
Izuru Yamamoto
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Abstract

【課題】被加工材に比較的厚い(深い)硬化層を簡易な操作で形成可能なレーザ焼入れ方法を提供すること。
【解決手段】本発明によって提供されるレーザ焼入れ方法では、レーザ5が透過可能な冷却媒体(例えば水)7中に被加工材1を配置する。その冷却媒体7を透過させながら被加工材1にレーザ5を照射することにより、レーザ照射された部分1bを周囲の冷却媒体7により急冷することによって該レーザ照射部分1bに硬化層1cを形成する。このとき冷却媒体7は流動させておくことが好ましい。また、被加工材1を回転移動させつつ、その回転する被加工材1に対して所定の方向からレーザ5を照射することが好ましい。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄系被加工材(例えば鋼材)に硬化層を形成するレーザ焼入れ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鋼材等の鉄系被加工材を変態点以上の高温(例えば800〜1000℃)に加熱し、その後冷却して硬化層を形成する焼入れにおいて、部分的に硬化の必要な箇所を焼入れする手段として一般にレーザが用いられている。かかるレーザ焼入れ方法では、レーザを照射して目的の部位(表面部)を高温に加熱し、その後の自己冷却作用によって当該部位に硬化層を形成する。
【0003】
ところで、被加工材に部分的に硬化層を形成する(焼入れする)際、その硬化層の厚さ(焼入れ深さ)を比較的厚く(深く)したい場合がある。硬化層が深いと当該硬化部位の疲労強度を向上させることができる。
しかし、自己冷却作用に頼る従来の一般的なレーザ焼入れでは、形成できる硬化層の厚さ(深さ)に限界があった。即ち、焼入れにおいては、表面溶融を防止するために材料の溶融温度(Tm)以上の高温に加熱することができない一方、焼入れのために変態点(A)以上の温度(焼入れ温度)に加熱しなければならない。ここで、比較的厚い硬化層を得ようとすると、被加工材の表面のみならず所望する硬化層に対応する深さまで焼入れ温度に加熱する必要が生じ、レーザ照射時間を長くしたり或いはレーザ出力を上げざるを得なかった。しかし、そのような処置を施すと、被加工材の加熱したい部位の周囲までもが、かなり高い温度となってしまう。このことは、焼入れしたい部分とその周辺部分との間の温度勾配が小さくなることを意味し、もはや自己冷却作用では熱拡散が遅く、焼入れに要求される急冷(マルテンサイト変態)が実現され難い。即ち、深い焼入れは困難であった。
【0004】
このため、従来法として、被加工材の焼入れしたい部位に対してレーザの入射角を大きくし、レーザの反射を抑えて目的の部位(深さ)を急速加熱する方法が紹介されている。例えば、特許文献1には、焼入れしたい部位に対するレーザビームのオフセット(偏心)量の最大化を図ることで、深い硬化層を得ようとするレーザ焼入れ装置が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−291323号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特許文献1に記載のレーザ焼入れ装置のように、レーザビームの入射角を最適に調整する手段によって深い硬化層を得ようとすると、それに必要なレーザ焼入れ装置の構造が複雑となり、焼入れ部分に対するレーザビームの位置決めも煩雑であった。
そこで本発明は、被加工材に比較的厚い(深い)硬化層を簡便に形成し得るレーザ焼入れ方法及び該方法を実施するための装置ならびに該方法によって得られた鉄系部品を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】上記目的を達成すべく、本発明によって提供されるレーザ焼入れ方法は、被加工材の所定の部分にレーザを照射して該部分に硬化層を形成するレーザ焼入れ方法において、レーザが透過可能な冷却媒体中に前記被加工材を配置し、前記冷却媒体を透過したレーザを前記被加工材に照射し、該レーザ照射された部分を前記冷却媒体中で冷却して該レーザ照射部分に硬化層を形成することを特徴とする。
ここで被加工材とは、焼入れによって硬化層を形成し得る鉄系の被加工材をいい、種々の組成の鋼材、鋳鉄を包含する。本発明のレーザ焼入れ方法は、典型的には種々の鋼材から成る自動車部品等の加工(表面改質)に適用し得る。
【0008】
本発明のレーザ焼入れ方法によれば、冷却媒体中に配置された被加工材にレーザを照射する結果、レーザ照射直後から当該レーザ照射部位を照射部位に接する冷却媒体によって急速に冷却することができる。即ち、従来の自己冷却によるレーザ焼入れでは、レーザ照射後に被加工材の内部に熱を拡散することによって焼入れ部分を冷却していたところ、ここに開示される方法では熱の内部拡散と同時に被加工材の表面側からも強制的に熱を奪うことができる。従って、比較的厚い(深い)焼入れ部分であっても、その全体を急激に冷却することが可能となる。
このため、本発明のレーザ焼入れ方法によると、比較的深い硬化層(焼入れ)を有する鉄系部品(例えば種々の鋼材から成る歯車、ピストンのような自動車用部品)を得ることができる。本発明によれば、被加工材を冷却媒体中に配置するといった極めて簡易な構成によって硬化層を厚く(深く)するといった優れた効果を容易に実現することができる。
【0009】
好ましくは、前記被加工材の周囲の冷却媒体を流動させた状態で前記レーザ照射を行う。冷却媒体が流動することによって、レーザ照射された被加工材と接触する冷却媒体が、熱を受け取り温度上昇すると同時に流動し、他のより低温の冷却媒体と交換されるため、冷却効果を高めることができる。さらに、前記被加工材の周囲の冷却媒体を流動させた状態で前記レーザ照射後の冷却を行うとレーザ照射部分の冷却速度をより一層高めることができる。
【0010】
ここで開示されるレーザ焼入れ方法の好ましい一つの態様は、所定の方向から一定の時間継続して該被加工材にレーザを照射しつつ、前記被加工材を移動させて該被加工材のレーザ照射部分を異ならせていくことを特徴とする方法である。この方法によると、レーザ照射機構側の煩雑な調整を行うことなく被加工材の目的の部位に硬化層を容易に形成することができる。
【0011】
この態様の方法で特に好ましいものは、前記移動が被加工材の回転移動であることを特徴とする。被加工材を回転させることにより、より迅速に被加工材の目的の部位に硬化層を形成することができる。また、回転運動を等速で行うことによって、レーザを所定の部位に均一に照射し得、被加工材の外表面に均一な厚さの硬化層を容易に形成することができる。
【0012】
また、本発明は、ここで開示される方法を実施し得る装置を提供する。すなわち、レーザ発振器と、そのレーザ発振器で発生したレーザを被加工材の所定の部位に照射する光学系と、レーザが透過可能なケーシングであって、被加工材及び該被加工材の周囲に冷却媒体を収容し得るケーシングとを備える、被加工材の所定の部分にレーザを照射して該部分に硬化層を形成するレーザ焼入れ装置が提供される。この装置によって、被加工材の所定の部位に比較的深い硬化層を形成することができる。
【0013】
好ましくは、レーザ照射時に前記ケーシング内に冷却媒体を供給し得る冷却媒体供給手段を備えることを特徴とする。かかる手段を備えることにより、ケーシング内の被加工材の周囲の冷却媒体を流動させた状態で前記レーザ照射を行うことができる。
また、好ましくは、前記ケーシング内に収容した被加工材を回転移動させる回転駆動手段を備えることを特徴とする。かかる手段を備えることにより、ケーシング内の被加工材を回転移動させつつ迅速に被加工材の目的の部位に硬化層を形成することができる。また、回転運動を等速で行うことによって、レーザを所定の部位に均一に照射し得、被加工材の外表面に均一な厚さの硬化層を容易に形成することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において特に言及している内容以外の技術的事項であって本発明の実施に必要な事項は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。例えば、レーザ焼入れ方法に使用するレーザ発振器及びそれに付随する光学系の選択や操作方法は従来と同様でよい。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている技術内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0015】
本発明のレーザ焼入れ方法は、レーザが透過可能な冷却媒体中に被加工材を配置すること、その冷却媒体を透過させながら被加工材にレーザを照射すること、および、該レーザ照射された部分を冷却媒体中で冷却してレーザ照射部分に硬化層を形成することにより特徴付けられる方法であり、これらを実現する限りにおいて、使用する材料、機材、あるいはそれらの取扱い方法は特に制限されない。
【0016】
例えば、被加工材の種類は、レーザ焼入れが可能なものであれば特に限定されず、典型的には鋼材である。例えば炭素鋼や炭素鋼にNi、Cr、Mo、V、Mn又はSi等を加えた合金鋼であってもよい。また、被加工材の形状は、レーザ焼入れ可能であれば特に限定されず、いずれの形状にも適用可能である。例えば、丸棒(円筒)状、直方体、球状、円錐状、角錐状等の種々の形状に適用することができる。種々の形状の鉄系部品(典型的には鋼材から成る部品、例えば自動車に装備される歯車、ピストン、各種のビーム、シャフト、パネル等)に硬化層を形成するのに本発明のレーザ焼入れ方法は好適である。
【0017】
冷却媒体として用いる媒体は、使用するレーザが透過可能であって、被加工材の表面部から容易に熱を奪い得るものであればよく、その形態や種類に特に制限はない。液体又は気体(流体)あるいは固体のいずれの形態の媒体を適用してもよい。固体形状の冷却媒体としては、氷、ガラス、熱容量の高い粉末等が挙げられる。氷やガラスの形態としては、一体形状のものであってもよく、或いは粒状、ブロック状等であってもよい。液体形状の冷却媒体としては、水、油等が挙げられる。さらに、気体としては高圧ガス(窒素等の不活性なガス種が好ましい。)が挙げられる。高圧ガスは、被加工材に水分等の液体を付着することが適切でない場合に好適な冷却媒体である。なお、これらの冷却媒体を2種以上組み合わせて用いてもよい。
特に好ましい冷却媒体は、水である。水は、高比熱であり高い冷却効果を奏し得るとともに、安全で取扱いも容易である。また、安価で廃棄しても環境上の問題がなく、特に好適に使用することができる。
【0018】
本発明のレーザ焼入れ方法を実施するのに使用するレーザ種は、従来のレーザ焼入れで採用されているものと同様でよく、特に制限はない。例えば、炭酸ガス(CO)レーザ、YAGレーザのような赤外線レーザを好適に使用することができる。金属表面への吸収率が高いYAGレーザが好ましく、特に高出力タイプのYAGレーザ(例えば半導体レーザ(LD)励起型YAGレーザ)が好ましい。
【0019】
本発明のレーザ焼入れ方法では、被加工材を冷却媒体中に配置することを条件として、従来と同様の構成のレーザ焼入れ装置(レーザ照射装置)を利用することができる。
例えば、図1に示す構成の装置100を用いてレーザ焼入れを行うことができる。すなわち、図示するレーザ焼入れ装置100は、レーザ発振器102と、光学系104と、被加工材1及び該被加工材1の周囲に冷却媒体を収容し得るケーシング108とを備える。
レーザ発振器102は、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ等を発生させるものであればよく、その構造に特に制限はない。また、光学系104は、レーザ発振器102から発射されたレーザ5をケーシング108に収容された被加工材1の所定の部位に照射するための機構であり、典型的にはレーザ光5を所定の方向に向けるいくつかの反射鏡及び集光レンズを備える。かかるレーザ発振器102及び光学系104は、従来のレーザ焼入れ装置に装備されるものと同様の構成でよく、本発明を特徴付けるものでもないため詳細な説明は省略する。
【0020】
この装置100に装備されるケーシング108は、その少なくとも一部分(レーザ透過部分)が使用するレーザ光5を透過可能な材質(例えばシリカガラス)から成り、所定の被加工材1を収容するとともに、その周囲に冷却媒体を収容し得るスペースを有するものであれば、その外形について特に制限はない。好ましくは、図示しない被加工材出し入れ用扉の他、冷却媒体の供給口108a及び排出口108bを有する管(筒)形状である。これにより、レーザ照射時及びその後の冷却時においてケーシング108内において冷却媒体の流動を起こさせることができる。好ましくは、ケーシング108の冷却媒体供給口108aに接続する冷却媒体供給手段(コンプレッサー、冷却水ポンプ等)110を備える。冷却媒体供給手段110としては、図示されるように、ケーシング108の供給口108a及び排出口108bのそれぞれに連結して、ケーシング108内に所定の冷却媒体(例えば水)を循環供給するものが好ましい。水を媒体とするこの種の冷却媒体供給手段は、典型的には、水を貯留するタンク110と、該タンク中の水を冷却する冷却装置と、該タンク110からケーシング108内に送水するポンプとから構成され得る。
【0021】
好ましいレーザ焼入れ装置100は、図示するように、ケーシング108内に収容した被加工材1を回転移動させる回転駆動手段を更に備える。典型的には、該回転駆動手段は、回転軸106aを備えたモータ106と、ケーシング108内に配置され回転軸106aに連結する回転台107とを備える。この回転台107に被加工材1を載せ、モータ106を作動させることにより、所望する速度でケーシング108内の被加工材1を回転移動させることができる。
【0022】
以上のような構成のレーザ焼入れ装置100を用いることによって、所定の形状の被加工材(例えば、自動車用エンジンのピストン、歯車のような鉄系部品)の一部分に比較的深い硬化層(焼入れ層)を形成することができる。
なお、レーザ出力や照射時間或いは被加工材の回転速度等は、被加工材の材質やレーザ発振器の種類に応じて適宜異なり得る。これら条件の設定は、当業者の設計事項にすぎず、本発明を限定するものではない。例えばYAGレーザ発振器を使用する場合、その加工点出力は1〜7kW程度であり得る。
【0023】
【実施例】次に、上述したような構成のレーザ焼入れ装置100(図1参照)を用いて行い得るレーザ焼入れ方法の好適な実施形態を具体的な実施例に基づいて図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、単純な円筒形状の鉄系材料を被加工材としているが、被加工材をこの形状に限定することを意図したものではない。
【0024】
図2(a)に示すように、鋼材(S45)から成る直径45mm×長さ20mmの円筒形状の被加工材1を、内径60mm及び外径65mmのガラス管(ケーシング)3内の図示しない回転台に載置して固定した。このとき、被加工材1の中心軸が回転中心(軸)となるように配置した。また、ガラス管3の供給管3a及び排出管3bは外部の冷却媒体供給手段(送水ポンプ付き冷水タンク)に接続しており、ガラス管内には約10リットル/分の割合で冷水7が供給される。水の流動方向は図中に矢印で示している。なお、水の流動方向は、本実施例のように被加工材1の回転軸と水平方向であってもよいが、他の方向でもよい。例えば、被加工材1の軸方向と略垂直方向であってもよい。或いは、本実施例においては、外部から水を供給したが、ガラス管3内において水を循環させる形態であってもよい。ガラス管3内(即ち被加工材1の周囲)を水が循環することにより、レーザ5により加熱された被加工材1のレーザ照射部分1bから効率よく熱を奪う(冷却する)ことができる。また、流動によって、ガラス管3内の水が局部的に高温となることを防止することができる。また、水の温度が均一に拡散される(水温の上昇速度が遅くなる)ため、冷却効果をいっそう高めることができる。
【0025】
そして、外部モータ(図1参照)を作動し、図示しない回転台ごと被加工材1を約500rpmで回転させた。この状態で、図2(b)に示すように、外部より出力が約6kWのYAGレーザ5を照射し、被加工材1の目的の部位を周方向に加熱した。このときのビーム形状は長径16mm、短径8mmの楕円形状であった。レーザビームの形状は前記楕円形状に限定されず、いずれの形状であってもよい。例えば、円形、線状、又は点状等であり得る。なお、レーザ5の出力は、レーザ5の照射時間や所望の硬化層厚さにより適宜選択され得る。また、回転数は周方向に均一な加熱を行うという観点からは比較的高速回転であることが好ましい。かかるレーザ照射により、変態点(A3)以上に加熱された表面加熱層1bが形成された(図2(c))。
なお、本実施例では、周方向に均一な硬化層を形成するために被加工材1を回転させているが、冷却媒体が固体(例えばガラス)である場合は当該冷却媒体ごと被加工材1を回転させてもよい。或いは、被加工材1は静置させる一方、レーザ5の発射側の機構(即ちレーザ5の発射位置或いは光学系の設定)を異ならせてもよい。
【0026】
115秒の加熱後、レーザ照射をストップし、被加工材1の回転はそのまま継続した(図2(d))。なお、レーザ5の加熱時間は、レーザの出力や所望の硬化層厚さにより適宜選択され得る。ここで開示されるレーザ焼入れ方法によると、高出力YAGレーザ5を採用したことによって、比較的厚い(深い)表面加熱層1bを形成することができる。
【0027】
さらに図2(e)に示すように、そのまま被加工材1の回転を継続し、約20秒間、水7を流し続けた。これにより、被加工材1の表面加熱層1bは、自己冷却に加えて該加熱層1bに直接接触しつつ流動する水7によって熱が奪われることによりレーザ照射直後から急冷され、当該部分の焼入れが実現される。即ち、被加工材1の表面加熱層1bは、水7の流通によって冷却され、硬化層(焼入れ層)1cが形成された。なお、冷却時間は、レーザ出力及び加熱時間、表面加熱層1bの厚さ及び温度等によって適宜変更され得る。
【0028】
(第一比較例)
ガラス管3(ケーシング)を用いずに大気中に配置した回転台上に載置した円筒形状被加工材(すなわち冷却媒体中に配置されていない被加工材)に対し、前記実施例と同様の条件でレーザ焼入れを行った。
【0029】
(第二比較例)
ガラス管3(ケーシング)を用いずに大気中に配置した回転台上に載置した円筒形状被加工材(すなわち冷却媒体中に配置されていない被加工材)に対し、回転数:191rpm、YAGレーザの出力:約3.4kW、ビーム形状:長径17.5mm、短径6.5mmの楕円形状、照射(加熱)時間:6.5秒の条件(他の条件は前記実施例と同じ)で、レーザ焼入れを行った。
【0030】
(焼入れ組織の観察)
上述した実施例ならびに第一及び第二比較例でそれぞれ得た被加工材の硬化層の組織を電子顕微鏡にて観察した。その結果、第一比較例で得た硬化層は、被加工材の表面から深さ約0.6mmのところまでマルテンサイト組織が観察された。また、第二比較例で得た硬化層においては、被加工材の表面から深さ約0.1mmのところまでマルテンサイト組織が観察された。しかし、フェライトの残留も観察され、均一な焼入れ組織は得られなかった。
これに対して、上述した実施例で得た硬化層1c(図2)では、被加工材の表面から深さ約2.0mmのところまでマルテンサイト組織が観察された。すなわち、本実施例によって、各比較例と比べて約3倍又はそれ以上の厚い(深い)硬化層を形成することができた。このような深い硬化層は疲労強度の向上に寄与し得る。
【0031】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレーザ焼入れ装置の一例を模式的に示すブロック図である。
【図2】本発明のレーザ焼入れ方法の一実施形態を説明する図であり、(a)は冷却媒体を循環供給しつつ被加工材を回転移動させた状態を示し、(b)は回転する被加工材の所定の部位にレーザを照射した状態を示し、(c)は当該レーザ照射によって被加工材の表面に加熱層が形成された状態を示し、(d)は加熱層が形成された後にレーザ照射をストップした状態を示し、(e)は被加工材を回転させつつ周囲の冷却媒体によって急冷することによって硬化層が形成された状態を示す。
【符号の説明】
1:被加工材
1b:表面加熱層
1c:硬化層
3:ガラス管(ケーシング)
100:レーザ焼入れ装置
102:レーザ発振器
104:光学系
108:ケーシング

Claims (10)

  1. 被加工材の所定の部分にレーザを照射して該部分に硬化層を形成するレーザ焼入れ方法において、
    レーザが透過可能な冷却媒体中に前記被加工材を配置し、
    前記冷却媒体を透過したレーザを前記被加工材に照射し、
    該レーザ照射された部分を前記冷却媒体中で冷却して該レーザ照射部分に硬化層を形成することを特徴とするレーザ焼入れ方法。
  2. 前記被加工材の周囲の冷却媒体を流動させた状態で前記レーザ照射を行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記被加工材の周囲の冷却媒体を流動させた状態で前記レーザ照射後の冷却を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 所定の方向から一定の時間継続して該被加工材にレーザを照射しつつ、前記被加工材を移動させて該被加工材のレーザ照射部分を異ならせていくことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記移動は前記被加工材の回転移動である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記冷却媒体が水である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のレーザ焼入れ方法によって形成された硬化層を有する鉄系部品。
  8. 被加工材の所定の部分にレーザを照射して該部分に硬化層を形成するレーザ焼入れ装置であって、
    レーザ発振器と、
    そのレーザ発振器で発生したレーザを被加工材の所定の部位に照射する光学系と、
    レーザが透過可能なケーシングであって、被加工材及び該被加工材の周囲に冷却媒体を収容し得るケーシングと、
    を備えるレーザ焼入れ装置。
  9. レーザ照射時に前記ケーシング内に冷却媒体を供給し得る冷却媒体供給手段を備える、請求項8に記載の装置。
  10. 前記ケーシング内に収容した被加工材を回転移動させる回転駆動手段を備える、請求項8又は9に記載の装置。
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JP2007169761A (ja) * 2005-12-26 2007-07-05 Delta Kogyo Co Ltd リクライニング部品の製造方法

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