JP2004315844A - 高炉用圧入材およびそれを圧入する高炉炉体管理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温における空隙への浸入性に優れた、熱硬化性樹脂使用の高炉炉壁用圧入材、およびそれを用いた高炉の炉体管理方法の提供。
【解決手段】(1)粒状耐火骨材に、レゾール型フェノール樹脂に対して5〜50質量%の油分を配合してなるバインダーを配合する高炉用圧入材。粒状耐火骨材として、炭化珪素、人造黒鉛、鱗状黒鉛、無煙炭または土壌黒鉛の単体またはこれらの混合物であることが好ましい。(2)前記の高炉用圧入材を圧入する高炉の炉体管理方法。
【選択図】 なし
【解決手段】(1)粒状耐火骨材に、レゾール型フェノール樹脂に対して5〜50質量%の油分を配合してなるバインダーを配合する高炉用圧入材。粒状耐火骨材として、炭化珪素、人造黒鉛、鱗状黒鉛、無煙炭または土壌黒鉛の単体またはこれらの混合物であることが好ましい。(2)前記の高炉用圧入材を圧入する高炉の炉体管理方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉炉底部の内張りれんがと鉄皮との間に施工されるスタンプ材の近傍に存在する空隙を充填し、鉄皮からの冷却効果を回復させる圧入材およびそれを圧入する高炉の炉体管理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高炉の炉壁は、内側から内張りれんが、ステーブまたは冷却盤、そして鉄皮の順に構成されており、れんがと鉄皮との間にはスタンプ材が施工されている。高炉炉底部には、1500℃程度の溶銑や溶滓が存在するため、炉底部の内張りれんがが損耗した場合には、操業中にれんがを交換するなどの直接的な補修を行うことは極めて困難である。近年の高炉では、炉底部の内張りれんがには熱伝導率の高いカーボンれんがが用いられており、鉄皮外面に散水したり、ステーブを使った冷却を行うなどして、れんがを間接的に冷却することにより、その損耗を抑制している。
【0003】
しかし、内張りれんがとスタンプ材との間、あるいは鉄皮とスタンプ材との間に空隙が生じて、この鉄皮冷却の効果が損なわれることがある。この空隙は、高炉の操業中に内張りれんがや鉄皮が熱膨張してスタンプ材を圧縮し、その後、冷却によってれんがや鉄皮が収縮した時に、スタンプ材が完全には元の厚さに復元しないために生じるものである。
【0004】
通常、この空隙の厚みは数mm程度であるが、空気の熱伝導率が極めて低いため、空隙が断熱層として作用し、鉄皮からの冷却が不充分となってれんがは侵食を受けるようになる。また、長期間稼働した高炉では、操業諸元の変化に伴って、鉄皮や内張りれんがが繰り返し膨張および収縮しており、この動きに従ってスタンプ材も圧縮および復元を繰り返して次第に劣化し、スタンプ層自体の内部に空隙を生じる場合もある。
【0005】
このようにしてスタンプ層内部に生じた空隙も、前記の内張りれんがとスタンプ材との間または鉄皮とスタンプ材との間に生じた空隙と同様に、断熱層として作用するため、鉄皮冷却の効果は損なわれる。このため、これらの空隙を放置しておくと、内張りれんがは急速に損耗する。そして、炉内からの熱によって鉄皮が赤熱したり、鉄皮に亀裂が生じたりして、最悪の場合には炉底部からの漏銑事故を発生する場合もある。
【0006】
これを防止するため、発生した空隙に高熱伝導性のカーボン系不定形耐火物を充填して、鉄皮冷却の効果を回復させる方法が実施されている。この方法は、鉄皮から内張りれんがまで達する孔を設け、その孔から、前記のカーボン系不定形耐火物をスタンプ層に加圧圧入するもので、この不定形耐火物は「圧入補修材」あるいは単に「圧入材」と呼ばれている。前記のカーボン系不定形耐火物は、熱硬化性樹脂にカーボン粉末を混合してなるペースト状の材料である。
【0007】
初期の圧入材は、アルミナ質、マグネシア質、クロム質などの粉状耐火性骨材を珪酸ソーダやアルミナセメントをバインダーとして液体媒質に水を使用した水系圧入材であり、上記のような鉄皮冷却の効果を狙ったものではなく、損耗した炉底内張り耐火物の補修を目的としたものであった。この圧入材は取り扱いが簡便であるが、圧入箇所が高温であると水が急激に気化し、固化した圧入材の組織が多孔質になるという欠点があった。この水系圧入材が使用されていた時代は、高炉炉底には粘土質れんがを使用することが一般的であったが、以後、炉底部にカーボンれんがを使用し、前記のような鉄皮散水やステープを使った冷却を行ってれんがの損耗を抑制することが主流となった。
【0008】
このような変遷に伴って、圧入材も補修材としてでは無く、鉄皮とスタンプ材との間に生じた空隙を充填し、鉄皮の冷却効果を回復させる充填材としての役割に変化してきた。このため、現在の圧入材の材料構成は、骨材に熱伝導率の高いカーボン粉末を使用し、このバインダーとして熱硬化性樹脂を使用している。
【0009】
熱硬化性樹脂には、フェノール樹脂やフラン樹脂などの液状樹脂が単独または混合して使われており、この熱硬化性樹脂は、加圧圧入時の圧力媒体としての役割とカーボン粉末を固化させるためのバインダーとしての役割を有している。フェノール樹脂やフラン樹脂が圧入材に使用されるのは、これらの樹脂は炭化時の残炭率が高く、圧入後に形成された組織の熱伝導率が他の材料を使用した場合よりも高くなるためとされている。そして、特に、フェノール樹脂は取り扱い易く、加えて安価であることから、広く使用されている。
【0010】
しかし、これらの熱硬化性樹脂は、比較的粘性が高い材料であるため、空隙への浸入に関しては良い材料とは言えず、浸入性を改善するために種々の検討がなされている。
【0011】
特許文献1には、粒径1mm以下の炭化珪素、黒鉛または石油系コークスの群から選ばれる1種以上を主材とした耐火骨材にバインダーとして、液状ノボラック型フェノール樹脂および粉末フェノール樹脂を添加して製造される高炉炉壁間隙充填用圧入材が開示されている。同文献では、その効果を以下のように説明している。すなわち、熱硬化性樹脂を使った圧入材を温度の高い間隙に圧入した場合には、樹脂が煮沸をともなって発泡し、硬化してしまうために、圧入材の組織が多孔質化して熱伝導率が低下する。これに対して、熱可塑性である液状ノボラック型フェノール樹脂を使用することにより、上記のような硬化による熱伝導率の低下を抑制できるというのである。
【0012】
しかし、後述のように、ノボラック型フェノール樹脂は、加熱され続けると体積収縮を生じるため、空隙を充填するという圧入材が本来具備しなければならない基本的特性を満足しない。
【0013】
特許文献2には、粉状耐火物を主成分とする骨材100部と、結合材である軟化点200℃以上の瀝青物4〜40部と、流動性付与材である液状油10〜35部とからなる高炉の高熱部補修用耐火材料が開示されている。この補修用耐火材料は、水系圧入材を高温域における局部的損傷部位に圧入した時に、圧入材の水分が急激に気化して固化した圧入材の組織が多孔質となることを防止するために、耐火性骨材に非水系の瀝青物を結合材として加え、さらにこれらを流動させるために液状油を加えたものである。
同文献に開示された補修用耐火材料は、同文献中に記載された目的に見られるとおり、本発明者らが対象とする充填材に求められる鉄皮冷却効果の回復機能を有するものではない。また、前記補修用耐火材料に使用されている瀝青物は軟化点が200℃以上であるため、200℃未満の温度域では軟化せず、したがって、空隙中への耐火材料の浸入性の点からも適切な材料とはいえない。
【特許文献1】
特開2000−233977号公報(特許請求の範囲および段落[0010]〜[0013])
【特許文献2】
特公昭55−35355号公報(特許請求の範囲および第2欄35行〜第3欄3行)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、熱硬化性樹脂を使用した高炉炉壁用圧入材において、空隙への浸入性に優れた材料を提供することにあり、特に100℃以上の加熱された空隙内においても優れた浸入性を有する高炉炉壁用圧入材、およびそれを用いた高炉の炉体管理方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の課題を解決するために、熱硬化性樹脂を使用した高炉炉壁圧入材の浸入性について調査および検討を行い、下記の(a)〜(e)の知見を得た。
(a)圧入材が圧入される空隙部に隣接するスタンプ材は、高炉内部からの熱により、100℃以上に加熱されており、その環境下では、レゾール型フェノール樹脂が熱硬化するときに発生する水分は水蒸気となりやすい。
(b)前記(a)で発生した水蒸気は、圧入材の流れを分断し、空隙部への前記樹脂の浸入を阻害する。また、樹脂は高温下で急速に固化するため、空隙部への浸入はさらに困難となる。
(c)樹脂に油分を配合すると、油分で置換された量だけ水蒸気の発生が低減し、しかも、圧入材の粘性が低下して空隙部への浸入性が良好となる。ここで、油分の配合割合には適正範囲が存在する。
(d)圧入材に油分が配合されると圧入材の浸入性が良好になる理由は、油分は100℃以上においても蒸気圧が低く、かつレゾール型フェノール樹脂との反応性が低く、さらに粘性も低いからである。
(e)炭化珪素、人造黒鉛、鱗状黒鉛、無煙炭、土壌黒鉛などの炭素含有粒子に、前記(c)の油分が適正量配合されたレゾール型フェノール樹脂を配合すると、良好な熱伝導性を有する圧入材が得られるので、好ましい。
【0016】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記の(1)〜(3)に示す高炉用圧入材、および(4)に示す高炉の炉体管理方法にある。
【0017】
(1)粒状耐火骨材に、レゾール型フェノール樹脂に対して5〜50質量%の油分を配合してなるバインダーを加える配合する高炉用圧入材。
【0018】
(2)前記(1)に記載の高炉用圧入材において、粒状耐火骨材として炭素または炭化物含有粒子を使用することが好ましい。
【0019】
(3)前記(2)に記載の高炉用圧入材において、炭素または炭化物含有粒子が炭化珪素、人造黒鉛、鱗状黒鉛、無煙炭または土壌黒鉛の単体またはこれらの混合物であることが好ましい。
【0020】
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の高炉用圧入材を圧入する高炉の炉体管理方法。
本発明において、「粒状耐火骨材」とは、炭素もしくは炭化物、またはアルミナ、シリカ、マグネシアもしくはクロムの1種以上を含有する粒子群からなる骨材をいう。
【0021】
「レゾール型フェノール樹脂」とは、フェノールとホルムアルデヒドをアルカリ性触媒の存在下で反応させて得られるフェノール樹脂をいう。
「油分」とは、油の純分を意味し、油が溶媒などにより希釈されている場合、混合物の場合、不純物などが共存する場合などにおいては、その中の油純分をいう。
【0022】
また、「内掛けの質量%」とは、フェノール樹脂量と油分量の総量に対して油分量の占める質量%をいう。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、液状フェノール樹脂を使用した高炉炉底用圧入材についてその浸入性改善を図るため、複数種の材料についてその浸入性を調査した。
【0024】
(A)浸入性阻害の原因
この調査において、圧入材が圧入されるスタンプ材は、炉内からの熱により100℃程度に加熱されているとの知見から、特に100℃以上における空隙への浸入性およびこの温度における圧入材の硬化状況を調査した。
【0025】
ところで、フェノール樹脂にはレゾール型とノボラック型の2つのタイプが存在し、前者は脱水反応を伴って熱硬化するが、後者はヘキサミンなどの硬化剤を添加することで熱硬化し、この時にアンモニアを発生する。浸入性の調査では、100℃以上の加熱された空隙を作るため、背面にシート状の電気ヒーターを設置した鉄板の表面に耐熱ガラスを被せた試験装置を使用した。
【0026】
図1は、高炉圧入材の圧入試験装置の概略を示す図であり、同図(a)は平面図を、同図(b)は側面図をそれぞれ表す。本試験装置は、圧入材が圧入される本体および圧入材の供給系統により構成されている。前記本体は、鉄板11と耐熱ガラス6との間にスペーサー9およびOリング8を介在させて押さえ板7により固定することにより外部と区画された縦600mm、横600mm、厚さ0.5mmの空隙部12を有し、シート状電気ヒーター10によって鉄板11の内表面を加熱し、上記の空隙を200℃程度に昇温することができる。
また、圧入材の供給系統は、圧入材タンク2内の材料圧入材51を圧搾空気タンク1中の圧搾空気により配管中に押し出し、途中のバルブ4により圧入材の流量を調整し、その圧力を圧力計3により計測しながら試験装置本体の空隙部12に供給できる構成となっている。なお、圧入材は最大0.5MPaの圧力で空隙部に圧入することができる。浸入性の調査は、鉄板表面を150℃に加熱しておき、圧入材を0.1MPaの圧力で空隙部に圧入し、圧入された圧入材5が空隙部に浸入する様子を、ガラス面を通して観察することにより行った。
【0027】
観察の結果、レゾール型フェノール樹脂を使用した圧入材では、樹脂が熱硬化したときに水分が発生し、これが急速に気化することが分かった。そして、この発生した水蒸気が圧入材の流れを分断して空隙への浸入を阻害したり、突沸した水蒸気が圧入材の流れを押し、一時的に浸入速度を増加させたりしていた。また、これと同時に鉄板の表面で圧入材が急速に硬化し、後続の圧入材が空隙に浸入できなくなる現象も見られた。
【0028】
これに対して、ノボラック型フェノール樹脂を配合した圧入材では、溶剤成分の気化およびアンモニアの発生が見られた。しかし、発生した蒸気はレゾール型フェノール樹脂の場合に比べて少量であり、レゾール型フェノール樹脂において観察された浸入性への悪影響はあまり見られなかった。
【0029】
次に、硬化した圧入材(以後、「圧入体」と称する)の調査を行った。この調査では、金属溶解用の多孔質アルミナ坩堝に各圧入材を入れ、それぞれ80℃、100℃、および120℃で加熱し、硬化させて圧入体試料を作製した。そして、その試料について、組織観察および熱伝導率の測定を行った。なお、加熱には乾燥機を使用し、予め坩堝をそれぞれの温度に加熱しておき、これに圧入材を注入し、その後、さらに各温度で24時間加熱して圧入体とした。
【0030】
レゾール型フェノール樹脂を使用した圧入材では、坩堝に圧入材を入れるとすぐに圧入材の液面が泡立ち、水蒸気が発生する現象が見られた。そして、温度が高くなるほど、この水蒸気の発生は顕著となった。作製した圧入体を切断してその組織を観察したところ、これらは非常に多くの気泡を含む組織であり、硬化温度が高いほど、この気泡径が大きくなることが判明した。このため、100℃および120℃で硬化した圧入体の熱伝導率は、80℃の圧入体に比較して著しく低下した。
【0031】
次に、ノボラック型フェノール樹脂を使った圧入材についても同様の調査を行った。ノボラック型フェノール樹脂を配合した圧入材においてもレゾール型樹脂の場合と同様に液面の泡立ちが見られたが、その程度は、レゾール型に比較して軽微だった。また、この圧入体も気泡を含む組織であったが、この気泡径はレゾール型に比べると小さなものばかりであった。そして、硬化温度が高い圧入体ほど、この気泡の数は増加しており、そのため熱伝導率は低下したが、レゾール型樹脂を使った圧入体と比べると、同じ温度の圧入体の熱伝導率は、ノボラック型樹脂の圧入体の方が高い値を示した。
【0032】
これらの結果から、レゾール型フェノール樹脂を圧入材に配合すると、硬化反応で発生する水分の影響により圧入体の特性が損なわれること、および、この現象は、特に水分の気化が急激に起こる100℃以上において著しいことが判明した。
【0033】
前記のように、ノボラック型フェノール樹脂では硬化時にアンモニアが発生するが、これは気体であるため100℃以上の温度でもレゾール型のように水分が気化して急激に体積膨張を生じることはなく、したがって、特性の劣化は少ない。しかし、ノボラック型フェノール樹脂を使った圧入体を上記の調査後、それぞれ硬化した温度で加熱し続けると、次第に体積が収縮することが分かった。レゾール型フェノール樹脂を使った圧入体では、このような体積収縮は見られなかった。
【0034】
圧入材に必要とされる基本的機能は空隙の充填機能であり、ノボラック型フェノール樹脂のように加熱により体積収縮を生じるという性質は、圧入材の基本的機能に沿わない。
【0035】
そこで、本発明者らは、これらの結果から、レゾール型フェノール樹脂の硬化時に発生する水分の影響を抑制することにより、レゾール型フェノール樹脂を配合した圧入材の特性を改善できると判断し、さらに、調査および検討を進めた。
【0036】
(B)圧入材の適正条件
圧入材におけるフェノール樹脂の役割は、加圧圧入時の圧力媒体としての役割、および圧入後に粒状耐火骨材を固化させるためのバインダーとしての役割である。本発明者らは、骨材を固化させるためにレゾール型フェノール樹脂は必要であるが、その配合量は固化のために必要な最低限度の量とし、圧力媒体として他の物質を使用することにより、樹脂から発生する水分の悪影響を抑制する方法を検討した。
【0037】
1)浸入性の向上
加圧圧入時の効果的な圧力媒体として、油分の配合を検討した。その理由は、油分は沸点が低く、100℃以上の温度域においても気化しにくいこと、フェノール樹脂と反応しにくいこと、そして、種類が多く、粘性の低いものを選択することにより、空隙への圧入材の浸入性を確保しやすいためである。
【0038】
そして、レゾール型フェノール樹脂を配合した圧入材を対象として、樹脂量を低減し、樹脂の低減量と同量の油分を加えた圧入材を作製してその浸入性、および圧入体の特性を調査した。また、比較のため、フェノール樹脂を配合せずに、油分のみを粒状黒鉛に混合した材料についても調査した。
【0039】
浸入性の調査では、油分の配合率が増加するにつれて、水蒸気の発生量は減少し、蒸気の噴き出しによって圧入材の流れが阻害されたり、浸入速度が変動したりする現象は観察されなかった。この結果から、油分を配合することにより、硬化反応で生じた水分の影響を抑制できることが判明した。
【0040】
しかし、油分の配合率がレゾール型フェノール樹脂に対して内掛けで70質量%以上となると、空隙への圧入材の浸入が進むにつれて次第に粒状黒鉛と液体媒質とが分離する様子が観察された。これは、油分の配合率が多すぎると、液体媒質全体の粘性が低下して、液体媒質のみが先に空隙へ浸入し、粒状黒鉛が分離したものと推察された。また、油分の配合率が内掛けで5質量%未満では、水分の急激な気化を抑制する効果は見られなかった。このため、浸入性に関しては、油分の配合率は、5〜70質量%の範囲が適切であるとの知見を得た。
【0041】
次に、アルミナ坩堝内で圧入材を硬化させて作製した圧入体について、油分の影響を調査した。加熱したアルミナ坩堝に油分を配合した圧入材を装入すると、坩堝の壁から油分が染み出しながら硬化を始め、そして圧入材の液面の泡立ちは油分の配合率が増加するにつれて減少した。この現象は、加熱温度に関係なく、全ての圧入材に共通する現象であった。
【0042】
また、同一温度で硬化した圧入体においては、油分の配合率が増加するにつれて圧入体内部の気泡の量は減少した。そして、油分の配合率が同一の圧入体では、温度が上昇するにつれて気泡の発生量は増加したものの、油分を配合しない場合に比べると、その発生量は著しく減少していた。上述の結果から、フェノール樹脂から発生する水分の影響を抑制するには、油分の配合率は多いほど効果的であることを知見した。
【0043】
2)圧縮強度の確保
圧入体の圧縮強度を測定した結果、80℃、100℃および120℃のいずれの場合においても、油分の配合率が増加するにつれて、圧縮強度は低下し、配合率がレゾール型フェノール樹脂に対して内掛けで50質量%では、油分を配合しない場合の約1/2まで低下した。これは、圧入体の強度を発現させるバインダーとしての樹脂の量が減少したためである。
【0044】
しかし、油分の配合率が50質量%における圧縮強度は、スタンプ材の施工時の圧縮強度とほぼ同程度の値であり、使用上の問題は無いと判断される。そこで、圧縮強度を確保するために、油分の配合率は50質量%以下とした。
【0045】
3)熱伝導率の確保
圧入体の熱伝導率を測定した結果、下記の結果を得た。すなわち、油分の配合率がフェノール樹脂に対して内掛けで50質量%以下では、配合率が増加するにつれて熱伝導率は緩やか低下した。さらに、配合率が50質量%を超えて増加すると、熱伝導率は急速に低下し、配合率が100%では油分を配合しない場合の約1/3にまで低下した。
【0046】
この理由は、以下のように推察される。油分の配合率の増加は、気泡量を減少させ、熱伝導率を上昇させる方向に作用するが、他方では、バインダーとしての樹脂量を減少させ、黒鉛粒子同士の結合度を低下させて、熱伝導率を低下させる方向に作用する。油分の配合率が50質量%以下であれば、前者と後者の効果は相殺し合うことから、熱伝導率の低下はわずかであるが、油分の配合率が50質量%を超えて増加すると、後者の効果が優り、熱伝導率は急速に低下したことによると推察される。
【0047】
上記の結果から、圧入体の熱伝導率を確保するためにも、油分の配合率は、50質量%以下とすることが必要である。
【0048】
以上、1)〜3)に述べた結果から、油分の配合率をレゾール型フェノール樹脂に対して内掛けで5〜50質量%とすることにより、圧入体の強度および熱伝導率を確保しながら、前記樹脂から発生する水分の影響を抑制し、100℃以上の温度領域においても圧入材の浸入性を向上することが可能と判断された。
【0049】
なお、油分のさらに好ましい配合率の範囲は、10〜30質量%である。
4)好ましい圧入材の態様
なお、高炉炉壁において、例えば炉底部のように、特に高い熱伝導性を要求される部位の圧入材としては、炭化珪素、人造黒鉛、鱗状黒鉛、無煙炭、土壌黒鉛などの炭素または炭化物含有粒子群の単体または混合物に、上記のように油分を配合したレゾール型フェノール樹脂からなるバインダーを配合することが好ましい。
【0050】
バインダーの配合率は、炭素もしくは炭化物、またはアルミナ、シリカ、マグネシアもしくはクロムの1種以上を含有する粒子群からなる耐火骨材の100質量部に対して、外掛けで80〜150質量部とすることが好ましい。バインダーの配合率が80質量部未満では、バインダーによる骨材の結合強度が十分に得られないからであり、他方、配合率が150質量部を超えて多くなると、耐火骨材量が不足して圧入体の熱伝導率が低下するため、鉄皮冷却の効果が不足し、好ましくないからである。
また、耐火骨材粒子の粒径は、0.1mm以下の占める比率が20質量%以上であることが好ましい。前記比率が20質量%未満では、1mm以下の微細な空隙に浸入できる耐火骨材の粒子数が減少し、空隙を充填した圧入体の熱伝導率が低下し、好ましくないからである。
【0051】
本発明の圧入材を圧入する炉体管理方法によれば、操業中の高温の炉壁部に良好な作業性のもとに、高能率で安全に圧入材を圧入し、炉壁の空隙部を確実に圧入材により充填することができる。したがって、高炉炉壁れんがの溶損などによる炉壁部の損傷を予防できるとともに、炉体熱損失の適正化を含めた高炉の炉体管理に多大な貢献をもたらす。
【0052】
【実施例】
本発明の効果を確認するため、液状のレゾール型フェノール樹脂を用いたバインダーを人造黒鉛(平均粒径0.1mm以下)に配合した圧入材を作製し、その浸入性および圧入体の特性を調査した。なお、圧入材の作製に当たっては、上記の人造黒鉛100質量部に対してバインダー100質量部を配合した。また、バインダー中の樹脂の配合率を段階的に減じ、減じた樹脂の配合率と同率の食用油を配合して種々の組成のバインダーを作製した。
【0053】
表1に試験に使用した圧入材の組成を示した。
【0054】
【表1】
【0055】
圧入材の浸入性は、前記の図1に示した試験装置を使用し、同図についての説明中で述べたのと同様の方法により調査した。本調査では、空隙幅1mmの空隙部への圧入材の浸入および流動状況をガラス面を通して観察しながら浸入速度を測定するとともに、水蒸気の発生状況、および水蒸気の発生が圧入材の流動状況に及ぼす影響についても観察した。なお、空隙部の温度は150℃とし、圧入材の加圧力は0.1MPaとした。
【0056】
また、各圧入材をアルミナ坩堝に装入して加熱および硬化させて圧入体を作製し、その圧縮強度および熱伝導率を測定した。さらに、各圧入材を使用して作製した圧入体から、一辺が30mmの立方体を切り出し、油圧式材料試験機を使ってその圧縮強度を測定した。なお、圧縮強度の測定は、JIS R 2206に規定された方法に準拠して行った。
【0057】
熱伝導率は、各圧入体から縦50mm、横50mm、高さ10mmの直方体を採取し、JIS R 2618に規定された方法に準拠して熱線法により測定した。なお、測定温度は150℃とした。
【0058】
前記の表1に、併せて試験結果を示した。同表において、試験番号3、4および5は、本発明で規定する条件を満足する本発明例の試験であり、試験番号1、2、6、7および8は、比較例の試験である。
【0059】
試験番号1は、レゾール型フェノール樹脂を使用した市販の圧入材であり、空隙部への浸入試験では多量の水蒸気が発生して空隙内へ安定して浸入できず、また硬化も速いため、空隙内への浸入速度も遅かった。試験番号2は、油分の配合率が本発明で規定する範囲よりも低い試験であり、試験番号1に比較して浸入速度はわずかに増加しているものの、水蒸気の発生量は多く、圧入材の改善効果は少ない。
【0060】
試験番号3、4および5は、油分の配合率がそれぞれレゾール型フェノール樹脂に対して内掛けで7質量%、30質量%、および48質量%であり、本発明で規定する油分の配合率の適正範囲を満たす試験である。これらの試験では、いずれの場合も、水蒸気の発生量が低減しており、したがって、空隙内への圧入材の浸入時に圧入材の流動に変動は見られず、浸入速度も上昇し、円滑な浸入が可能であった。また、試験番号3、4および5の圧入体の圧縮強度は、施工直後のスタンプ材の圧縮強度である約16.0MPaを超える値であり、十分に使用可能な特性を有していた。
【0061】
試験番号6、7および8は、油分の配合率が本発明で規定する範囲よりも高い試験である。本発明例である試験番号3、4および5の試験よりも、さらに水蒸気の発生量が低減し、空隙内への圧入材の浸入速度も向上する。しかし、試験番号6では、圧入体の圧縮強度は、上記のスタンプ材の圧縮強度よりも低い13.0MPaに低下し、圧入材として不適切であった。また、試験番号4および5では、油分の配合率が高すぎるため、空隙内への圧入材の浸入時に黒鉛粒子が樹脂および油分の混合物から分離し、圧入材として機能しなかった。圧縮強度も甚だ低い値となった。
【0062】
なお、本実施例では、油分として食用油を配合した試験につき説明したが、油分としてはその他、エンジン油、切削油、圧延油などの耐熱性および低粘性を有する油分を使用した場合においても同様の効果が得られる。
【0063】
【発明の効果】
本発明の高炉用圧入材は、熱硬化性樹脂を使用した高温条件下での空隙内への浸入性に優れた高炉炉壁用圧入材であり、本圧入材を使用することにより、炉壁れんがと鉄皮との空隙を完全に充填して炉壁の冷却効果を高めることができるため、れんがの溶損などによる損耗を防止できる。また、本発明の炉体管理方法によれば、前記圧入材を用いることにより、稼働中の高炉炉壁に能率よく圧入作業ができるから、高炉の炉体管理に多大な貢献をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【図1】高炉圧入材の圧入試験装置の概略を示す図であり、同図(a)は平面図を、同図(b)は側面図を示す。
【符号の説明】
1:圧搾空気タンク、
2:圧入材タンク、
3:圧力計、
4:バルブ、
5:圧入された圧入材、
51:材料圧入材、
6:耐圧ガラス、
7:押さえ板、
8:Oリング、
9:スペーサー、
10:シート状電気ヒーター、
12:空隙部
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉炉底部の内張りれんがと鉄皮との間に施工されるスタンプ材の近傍に存在する空隙を充填し、鉄皮からの冷却効果を回復させる圧入材およびそれを圧入する高炉の炉体管理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高炉の炉壁は、内側から内張りれんが、ステーブまたは冷却盤、そして鉄皮の順に構成されており、れんがと鉄皮との間にはスタンプ材が施工されている。高炉炉底部には、1500℃程度の溶銑や溶滓が存在するため、炉底部の内張りれんがが損耗した場合には、操業中にれんがを交換するなどの直接的な補修を行うことは極めて困難である。近年の高炉では、炉底部の内張りれんがには熱伝導率の高いカーボンれんがが用いられており、鉄皮外面に散水したり、ステーブを使った冷却を行うなどして、れんがを間接的に冷却することにより、その損耗を抑制している。
【0003】
しかし、内張りれんがとスタンプ材との間、あるいは鉄皮とスタンプ材との間に空隙が生じて、この鉄皮冷却の効果が損なわれることがある。この空隙は、高炉の操業中に内張りれんがや鉄皮が熱膨張してスタンプ材を圧縮し、その後、冷却によってれんがや鉄皮が収縮した時に、スタンプ材が完全には元の厚さに復元しないために生じるものである。
【0004】
通常、この空隙の厚みは数mm程度であるが、空気の熱伝導率が極めて低いため、空隙が断熱層として作用し、鉄皮からの冷却が不充分となってれんがは侵食を受けるようになる。また、長期間稼働した高炉では、操業諸元の変化に伴って、鉄皮や内張りれんがが繰り返し膨張および収縮しており、この動きに従ってスタンプ材も圧縮および復元を繰り返して次第に劣化し、スタンプ層自体の内部に空隙を生じる場合もある。
【0005】
このようにしてスタンプ層内部に生じた空隙も、前記の内張りれんがとスタンプ材との間または鉄皮とスタンプ材との間に生じた空隙と同様に、断熱層として作用するため、鉄皮冷却の効果は損なわれる。このため、これらの空隙を放置しておくと、内張りれんがは急速に損耗する。そして、炉内からの熱によって鉄皮が赤熱したり、鉄皮に亀裂が生じたりして、最悪の場合には炉底部からの漏銑事故を発生する場合もある。
【0006】
これを防止するため、発生した空隙に高熱伝導性のカーボン系不定形耐火物を充填して、鉄皮冷却の効果を回復させる方法が実施されている。この方法は、鉄皮から内張りれんがまで達する孔を設け、その孔から、前記のカーボン系不定形耐火物をスタンプ層に加圧圧入するもので、この不定形耐火物は「圧入補修材」あるいは単に「圧入材」と呼ばれている。前記のカーボン系不定形耐火物は、熱硬化性樹脂にカーボン粉末を混合してなるペースト状の材料である。
【0007】
初期の圧入材は、アルミナ質、マグネシア質、クロム質などの粉状耐火性骨材を珪酸ソーダやアルミナセメントをバインダーとして液体媒質に水を使用した水系圧入材であり、上記のような鉄皮冷却の効果を狙ったものではなく、損耗した炉底内張り耐火物の補修を目的としたものであった。この圧入材は取り扱いが簡便であるが、圧入箇所が高温であると水が急激に気化し、固化した圧入材の組織が多孔質になるという欠点があった。この水系圧入材が使用されていた時代は、高炉炉底には粘土質れんがを使用することが一般的であったが、以後、炉底部にカーボンれんがを使用し、前記のような鉄皮散水やステープを使った冷却を行ってれんがの損耗を抑制することが主流となった。
【0008】
このような変遷に伴って、圧入材も補修材としてでは無く、鉄皮とスタンプ材との間に生じた空隙を充填し、鉄皮の冷却効果を回復させる充填材としての役割に変化してきた。このため、現在の圧入材の材料構成は、骨材に熱伝導率の高いカーボン粉末を使用し、このバインダーとして熱硬化性樹脂を使用している。
【0009】
熱硬化性樹脂には、フェノール樹脂やフラン樹脂などの液状樹脂が単独または混合して使われており、この熱硬化性樹脂は、加圧圧入時の圧力媒体としての役割とカーボン粉末を固化させるためのバインダーとしての役割を有している。フェノール樹脂やフラン樹脂が圧入材に使用されるのは、これらの樹脂は炭化時の残炭率が高く、圧入後に形成された組織の熱伝導率が他の材料を使用した場合よりも高くなるためとされている。そして、特に、フェノール樹脂は取り扱い易く、加えて安価であることから、広く使用されている。
【0010】
しかし、これらの熱硬化性樹脂は、比較的粘性が高い材料であるため、空隙への浸入に関しては良い材料とは言えず、浸入性を改善するために種々の検討がなされている。
【0011】
特許文献1には、粒径1mm以下の炭化珪素、黒鉛または石油系コークスの群から選ばれる1種以上を主材とした耐火骨材にバインダーとして、液状ノボラック型フェノール樹脂および粉末フェノール樹脂を添加して製造される高炉炉壁間隙充填用圧入材が開示されている。同文献では、その効果を以下のように説明している。すなわち、熱硬化性樹脂を使った圧入材を温度の高い間隙に圧入した場合には、樹脂が煮沸をともなって発泡し、硬化してしまうために、圧入材の組織が多孔質化して熱伝導率が低下する。これに対して、熱可塑性である液状ノボラック型フェノール樹脂を使用することにより、上記のような硬化による熱伝導率の低下を抑制できるというのである。
【0012】
しかし、後述のように、ノボラック型フェノール樹脂は、加熱され続けると体積収縮を生じるため、空隙を充填するという圧入材が本来具備しなければならない基本的特性を満足しない。
【0013】
特許文献2には、粉状耐火物を主成分とする骨材100部と、結合材である軟化点200℃以上の瀝青物4〜40部と、流動性付与材である液状油10〜35部とからなる高炉の高熱部補修用耐火材料が開示されている。この補修用耐火材料は、水系圧入材を高温域における局部的損傷部位に圧入した時に、圧入材の水分が急激に気化して固化した圧入材の組織が多孔質となることを防止するために、耐火性骨材に非水系の瀝青物を結合材として加え、さらにこれらを流動させるために液状油を加えたものである。
同文献に開示された補修用耐火材料は、同文献中に記載された目的に見られるとおり、本発明者らが対象とする充填材に求められる鉄皮冷却効果の回復機能を有するものではない。また、前記補修用耐火材料に使用されている瀝青物は軟化点が200℃以上であるため、200℃未満の温度域では軟化せず、したがって、空隙中への耐火材料の浸入性の点からも適切な材料とはいえない。
【特許文献1】
特開2000−233977号公報(特許請求の範囲および段落[0010]〜[0013])
【特許文献2】
特公昭55−35355号公報(特許請求の範囲および第2欄35行〜第3欄3行)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、熱硬化性樹脂を使用した高炉炉壁用圧入材において、空隙への浸入性に優れた材料を提供することにあり、特に100℃以上の加熱された空隙内においても優れた浸入性を有する高炉炉壁用圧入材、およびそれを用いた高炉の炉体管理方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の課題を解決するために、熱硬化性樹脂を使用した高炉炉壁圧入材の浸入性について調査および検討を行い、下記の(a)〜(e)の知見を得た。
(a)圧入材が圧入される空隙部に隣接するスタンプ材は、高炉内部からの熱により、100℃以上に加熱されており、その環境下では、レゾール型フェノール樹脂が熱硬化するときに発生する水分は水蒸気となりやすい。
(b)前記(a)で発生した水蒸気は、圧入材の流れを分断し、空隙部への前記樹脂の浸入を阻害する。また、樹脂は高温下で急速に固化するため、空隙部への浸入はさらに困難となる。
(c)樹脂に油分を配合すると、油分で置換された量だけ水蒸気の発生が低減し、しかも、圧入材の粘性が低下して空隙部への浸入性が良好となる。ここで、油分の配合割合には適正範囲が存在する。
(d)圧入材に油分が配合されると圧入材の浸入性が良好になる理由は、油分は100℃以上においても蒸気圧が低く、かつレゾール型フェノール樹脂との反応性が低く、さらに粘性も低いからである。
(e)炭化珪素、人造黒鉛、鱗状黒鉛、無煙炭、土壌黒鉛などの炭素含有粒子に、前記(c)の油分が適正量配合されたレゾール型フェノール樹脂を配合すると、良好な熱伝導性を有する圧入材が得られるので、好ましい。
【0016】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記の(1)〜(3)に示す高炉用圧入材、および(4)に示す高炉の炉体管理方法にある。
【0017】
(1)粒状耐火骨材に、レゾール型フェノール樹脂に対して5〜50質量%の油分を配合してなるバインダーを加える配合する高炉用圧入材。
【0018】
(2)前記(1)に記載の高炉用圧入材において、粒状耐火骨材として炭素または炭化物含有粒子を使用することが好ましい。
【0019】
(3)前記(2)に記載の高炉用圧入材において、炭素または炭化物含有粒子が炭化珪素、人造黒鉛、鱗状黒鉛、無煙炭または土壌黒鉛の単体またはこれらの混合物であることが好ましい。
【0020】
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の高炉用圧入材を圧入する高炉の炉体管理方法。
本発明において、「粒状耐火骨材」とは、炭素もしくは炭化物、またはアルミナ、シリカ、マグネシアもしくはクロムの1種以上を含有する粒子群からなる骨材をいう。
【0021】
「レゾール型フェノール樹脂」とは、フェノールとホルムアルデヒドをアルカリ性触媒の存在下で反応させて得られるフェノール樹脂をいう。
「油分」とは、油の純分を意味し、油が溶媒などにより希釈されている場合、混合物の場合、不純物などが共存する場合などにおいては、その中の油純分をいう。
【0022】
また、「内掛けの質量%」とは、フェノール樹脂量と油分量の総量に対して油分量の占める質量%をいう。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、液状フェノール樹脂を使用した高炉炉底用圧入材についてその浸入性改善を図るため、複数種の材料についてその浸入性を調査した。
【0024】
(A)浸入性阻害の原因
この調査において、圧入材が圧入されるスタンプ材は、炉内からの熱により100℃程度に加熱されているとの知見から、特に100℃以上における空隙への浸入性およびこの温度における圧入材の硬化状況を調査した。
【0025】
ところで、フェノール樹脂にはレゾール型とノボラック型の2つのタイプが存在し、前者は脱水反応を伴って熱硬化するが、後者はヘキサミンなどの硬化剤を添加することで熱硬化し、この時にアンモニアを発生する。浸入性の調査では、100℃以上の加熱された空隙を作るため、背面にシート状の電気ヒーターを設置した鉄板の表面に耐熱ガラスを被せた試験装置を使用した。
【0026】
図1は、高炉圧入材の圧入試験装置の概略を示す図であり、同図(a)は平面図を、同図(b)は側面図をそれぞれ表す。本試験装置は、圧入材が圧入される本体および圧入材の供給系統により構成されている。前記本体は、鉄板11と耐熱ガラス6との間にスペーサー9およびOリング8を介在させて押さえ板7により固定することにより外部と区画された縦600mm、横600mm、厚さ0.5mmの空隙部12を有し、シート状電気ヒーター10によって鉄板11の内表面を加熱し、上記の空隙を200℃程度に昇温することができる。
また、圧入材の供給系統は、圧入材タンク2内の材料圧入材51を圧搾空気タンク1中の圧搾空気により配管中に押し出し、途中のバルブ4により圧入材の流量を調整し、その圧力を圧力計3により計測しながら試験装置本体の空隙部12に供給できる構成となっている。なお、圧入材は最大0.5MPaの圧力で空隙部に圧入することができる。浸入性の調査は、鉄板表面を150℃に加熱しておき、圧入材を0.1MPaの圧力で空隙部に圧入し、圧入された圧入材5が空隙部に浸入する様子を、ガラス面を通して観察することにより行った。
【0027】
観察の結果、レゾール型フェノール樹脂を使用した圧入材では、樹脂が熱硬化したときに水分が発生し、これが急速に気化することが分かった。そして、この発生した水蒸気が圧入材の流れを分断して空隙への浸入を阻害したり、突沸した水蒸気が圧入材の流れを押し、一時的に浸入速度を増加させたりしていた。また、これと同時に鉄板の表面で圧入材が急速に硬化し、後続の圧入材が空隙に浸入できなくなる現象も見られた。
【0028】
これに対して、ノボラック型フェノール樹脂を配合した圧入材では、溶剤成分の気化およびアンモニアの発生が見られた。しかし、発生した蒸気はレゾール型フェノール樹脂の場合に比べて少量であり、レゾール型フェノール樹脂において観察された浸入性への悪影響はあまり見られなかった。
【0029】
次に、硬化した圧入材(以後、「圧入体」と称する)の調査を行った。この調査では、金属溶解用の多孔質アルミナ坩堝に各圧入材を入れ、それぞれ80℃、100℃、および120℃で加熱し、硬化させて圧入体試料を作製した。そして、その試料について、組織観察および熱伝導率の測定を行った。なお、加熱には乾燥機を使用し、予め坩堝をそれぞれの温度に加熱しておき、これに圧入材を注入し、その後、さらに各温度で24時間加熱して圧入体とした。
【0030】
レゾール型フェノール樹脂を使用した圧入材では、坩堝に圧入材を入れるとすぐに圧入材の液面が泡立ち、水蒸気が発生する現象が見られた。そして、温度が高くなるほど、この水蒸気の発生は顕著となった。作製した圧入体を切断してその組織を観察したところ、これらは非常に多くの気泡を含む組織であり、硬化温度が高いほど、この気泡径が大きくなることが判明した。このため、100℃および120℃で硬化した圧入体の熱伝導率は、80℃の圧入体に比較して著しく低下した。
【0031】
次に、ノボラック型フェノール樹脂を使った圧入材についても同様の調査を行った。ノボラック型フェノール樹脂を配合した圧入材においてもレゾール型樹脂の場合と同様に液面の泡立ちが見られたが、その程度は、レゾール型に比較して軽微だった。また、この圧入体も気泡を含む組織であったが、この気泡径はレゾール型に比べると小さなものばかりであった。そして、硬化温度が高い圧入体ほど、この気泡の数は増加しており、そのため熱伝導率は低下したが、レゾール型樹脂を使った圧入体と比べると、同じ温度の圧入体の熱伝導率は、ノボラック型樹脂の圧入体の方が高い値を示した。
【0032】
これらの結果から、レゾール型フェノール樹脂を圧入材に配合すると、硬化反応で発生する水分の影響により圧入体の特性が損なわれること、および、この現象は、特に水分の気化が急激に起こる100℃以上において著しいことが判明した。
【0033】
前記のように、ノボラック型フェノール樹脂では硬化時にアンモニアが発生するが、これは気体であるため100℃以上の温度でもレゾール型のように水分が気化して急激に体積膨張を生じることはなく、したがって、特性の劣化は少ない。しかし、ノボラック型フェノール樹脂を使った圧入体を上記の調査後、それぞれ硬化した温度で加熱し続けると、次第に体積が収縮することが分かった。レゾール型フェノール樹脂を使った圧入体では、このような体積収縮は見られなかった。
【0034】
圧入材に必要とされる基本的機能は空隙の充填機能であり、ノボラック型フェノール樹脂のように加熱により体積収縮を生じるという性質は、圧入材の基本的機能に沿わない。
【0035】
そこで、本発明者らは、これらの結果から、レゾール型フェノール樹脂の硬化時に発生する水分の影響を抑制することにより、レゾール型フェノール樹脂を配合した圧入材の特性を改善できると判断し、さらに、調査および検討を進めた。
【0036】
(B)圧入材の適正条件
圧入材におけるフェノール樹脂の役割は、加圧圧入時の圧力媒体としての役割、および圧入後に粒状耐火骨材を固化させるためのバインダーとしての役割である。本発明者らは、骨材を固化させるためにレゾール型フェノール樹脂は必要であるが、その配合量は固化のために必要な最低限度の量とし、圧力媒体として他の物質を使用することにより、樹脂から発生する水分の悪影響を抑制する方法を検討した。
【0037】
1)浸入性の向上
加圧圧入時の効果的な圧力媒体として、油分の配合を検討した。その理由は、油分は沸点が低く、100℃以上の温度域においても気化しにくいこと、フェノール樹脂と反応しにくいこと、そして、種類が多く、粘性の低いものを選択することにより、空隙への圧入材の浸入性を確保しやすいためである。
【0038】
そして、レゾール型フェノール樹脂を配合した圧入材を対象として、樹脂量を低減し、樹脂の低減量と同量の油分を加えた圧入材を作製してその浸入性、および圧入体の特性を調査した。また、比較のため、フェノール樹脂を配合せずに、油分のみを粒状黒鉛に混合した材料についても調査した。
【0039】
浸入性の調査では、油分の配合率が増加するにつれて、水蒸気の発生量は減少し、蒸気の噴き出しによって圧入材の流れが阻害されたり、浸入速度が変動したりする現象は観察されなかった。この結果から、油分を配合することにより、硬化反応で生じた水分の影響を抑制できることが判明した。
【0040】
しかし、油分の配合率がレゾール型フェノール樹脂に対して内掛けで70質量%以上となると、空隙への圧入材の浸入が進むにつれて次第に粒状黒鉛と液体媒質とが分離する様子が観察された。これは、油分の配合率が多すぎると、液体媒質全体の粘性が低下して、液体媒質のみが先に空隙へ浸入し、粒状黒鉛が分離したものと推察された。また、油分の配合率が内掛けで5質量%未満では、水分の急激な気化を抑制する効果は見られなかった。このため、浸入性に関しては、油分の配合率は、5〜70質量%の範囲が適切であるとの知見を得た。
【0041】
次に、アルミナ坩堝内で圧入材を硬化させて作製した圧入体について、油分の影響を調査した。加熱したアルミナ坩堝に油分を配合した圧入材を装入すると、坩堝の壁から油分が染み出しながら硬化を始め、そして圧入材の液面の泡立ちは油分の配合率が増加するにつれて減少した。この現象は、加熱温度に関係なく、全ての圧入材に共通する現象であった。
【0042】
また、同一温度で硬化した圧入体においては、油分の配合率が増加するにつれて圧入体内部の気泡の量は減少した。そして、油分の配合率が同一の圧入体では、温度が上昇するにつれて気泡の発生量は増加したものの、油分を配合しない場合に比べると、その発生量は著しく減少していた。上述の結果から、フェノール樹脂から発生する水分の影響を抑制するには、油分の配合率は多いほど効果的であることを知見した。
【0043】
2)圧縮強度の確保
圧入体の圧縮強度を測定した結果、80℃、100℃および120℃のいずれの場合においても、油分の配合率が増加するにつれて、圧縮強度は低下し、配合率がレゾール型フェノール樹脂に対して内掛けで50質量%では、油分を配合しない場合の約1/2まで低下した。これは、圧入体の強度を発現させるバインダーとしての樹脂の量が減少したためである。
【0044】
しかし、油分の配合率が50質量%における圧縮強度は、スタンプ材の施工時の圧縮強度とほぼ同程度の値であり、使用上の問題は無いと判断される。そこで、圧縮強度を確保するために、油分の配合率は50質量%以下とした。
【0045】
3)熱伝導率の確保
圧入体の熱伝導率を測定した結果、下記の結果を得た。すなわち、油分の配合率がフェノール樹脂に対して内掛けで50質量%以下では、配合率が増加するにつれて熱伝導率は緩やか低下した。さらに、配合率が50質量%を超えて増加すると、熱伝導率は急速に低下し、配合率が100%では油分を配合しない場合の約1/3にまで低下した。
【0046】
この理由は、以下のように推察される。油分の配合率の増加は、気泡量を減少させ、熱伝導率を上昇させる方向に作用するが、他方では、バインダーとしての樹脂量を減少させ、黒鉛粒子同士の結合度を低下させて、熱伝導率を低下させる方向に作用する。油分の配合率が50質量%以下であれば、前者と後者の効果は相殺し合うことから、熱伝導率の低下はわずかであるが、油分の配合率が50質量%を超えて増加すると、後者の効果が優り、熱伝導率は急速に低下したことによると推察される。
【0047】
上記の結果から、圧入体の熱伝導率を確保するためにも、油分の配合率は、50質量%以下とすることが必要である。
【0048】
以上、1)〜3)に述べた結果から、油分の配合率をレゾール型フェノール樹脂に対して内掛けで5〜50質量%とすることにより、圧入体の強度および熱伝導率を確保しながら、前記樹脂から発生する水分の影響を抑制し、100℃以上の温度領域においても圧入材の浸入性を向上することが可能と判断された。
【0049】
なお、油分のさらに好ましい配合率の範囲は、10〜30質量%である。
4)好ましい圧入材の態様
なお、高炉炉壁において、例えば炉底部のように、特に高い熱伝導性を要求される部位の圧入材としては、炭化珪素、人造黒鉛、鱗状黒鉛、無煙炭、土壌黒鉛などの炭素または炭化物含有粒子群の単体または混合物に、上記のように油分を配合したレゾール型フェノール樹脂からなるバインダーを配合することが好ましい。
【0050】
バインダーの配合率は、炭素もしくは炭化物、またはアルミナ、シリカ、マグネシアもしくはクロムの1種以上を含有する粒子群からなる耐火骨材の100質量部に対して、外掛けで80〜150質量部とすることが好ましい。バインダーの配合率が80質量部未満では、バインダーによる骨材の結合強度が十分に得られないからであり、他方、配合率が150質量部を超えて多くなると、耐火骨材量が不足して圧入体の熱伝導率が低下するため、鉄皮冷却の効果が不足し、好ましくないからである。
また、耐火骨材粒子の粒径は、0.1mm以下の占める比率が20質量%以上であることが好ましい。前記比率が20質量%未満では、1mm以下の微細な空隙に浸入できる耐火骨材の粒子数が減少し、空隙を充填した圧入体の熱伝導率が低下し、好ましくないからである。
【0051】
本発明の圧入材を圧入する炉体管理方法によれば、操業中の高温の炉壁部に良好な作業性のもとに、高能率で安全に圧入材を圧入し、炉壁の空隙部を確実に圧入材により充填することができる。したがって、高炉炉壁れんがの溶損などによる炉壁部の損傷を予防できるとともに、炉体熱損失の適正化を含めた高炉の炉体管理に多大な貢献をもたらす。
【0052】
【実施例】
本発明の効果を確認するため、液状のレゾール型フェノール樹脂を用いたバインダーを人造黒鉛(平均粒径0.1mm以下)に配合した圧入材を作製し、その浸入性および圧入体の特性を調査した。なお、圧入材の作製に当たっては、上記の人造黒鉛100質量部に対してバインダー100質量部を配合した。また、バインダー中の樹脂の配合率を段階的に減じ、減じた樹脂の配合率と同率の食用油を配合して種々の組成のバインダーを作製した。
【0053】
表1に試験に使用した圧入材の組成を示した。
【0054】
【表1】
【0055】
圧入材の浸入性は、前記の図1に示した試験装置を使用し、同図についての説明中で述べたのと同様の方法により調査した。本調査では、空隙幅1mmの空隙部への圧入材の浸入および流動状況をガラス面を通して観察しながら浸入速度を測定するとともに、水蒸気の発生状況、および水蒸気の発生が圧入材の流動状況に及ぼす影響についても観察した。なお、空隙部の温度は150℃とし、圧入材の加圧力は0.1MPaとした。
【0056】
また、各圧入材をアルミナ坩堝に装入して加熱および硬化させて圧入体を作製し、その圧縮強度および熱伝導率を測定した。さらに、各圧入材を使用して作製した圧入体から、一辺が30mmの立方体を切り出し、油圧式材料試験機を使ってその圧縮強度を測定した。なお、圧縮強度の測定は、JIS R 2206に規定された方法に準拠して行った。
【0057】
熱伝導率は、各圧入体から縦50mm、横50mm、高さ10mmの直方体を採取し、JIS R 2618に規定された方法に準拠して熱線法により測定した。なお、測定温度は150℃とした。
【0058】
前記の表1に、併せて試験結果を示した。同表において、試験番号3、4および5は、本発明で規定する条件を満足する本発明例の試験であり、試験番号1、2、6、7および8は、比較例の試験である。
【0059】
試験番号1は、レゾール型フェノール樹脂を使用した市販の圧入材であり、空隙部への浸入試験では多量の水蒸気が発生して空隙内へ安定して浸入できず、また硬化も速いため、空隙内への浸入速度も遅かった。試験番号2は、油分の配合率が本発明で規定する範囲よりも低い試験であり、試験番号1に比較して浸入速度はわずかに増加しているものの、水蒸気の発生量は多く、圧入材の改善効果は少ない。
【0060】
試験番号3、4および5は、油分の配合率がそれぞれレゾール型フェノール樹脂に対して内掛けで7質量%、30質量%、および48質量%であり、本発明で規定する油分の配合率の適正範囲を満たす試験である。これらの試験では、いずれの場合も、水蒸気の発生量が低減しており、したがって、空隙内への圧入材の浸入時に圧入材の流動に変動は見られず、浸入速度も上昇し、円滑な浸入が可能であった。また、試験番号3、4および5の圧入体の圧縮強度は、施工直後のスタンプ材の圧縮強度である約16.0MPaを超える値であり、十分に使用可能な特性を有していた。
【0061】
試験番号6、7および8は、油分の配合率が本発明で規定する範囲よりも高い試験である。本発明例である試験番号3、4および5の試験よりも、さらに水蒸気の発生量が低減し、空隙内への圧入材の浸入速度も向上する。しかし、試験番号6では、圧入体の圧縮強度は、上記のスタンプ材の圧縮強度よりも低い13.0MPaに低下し、圧入材として不適切であった。また、試験番号4および5では、油分の配合率が高すぎるため、空隙内への圧入材の浸入時に黒鉛粒子が樹脂および油分の混合物から分離し、圧入材として機能しなかった。圧縮強度も甚だ低い値となった。
【0062】
なお、本実施例では、油分として食用油を配合した試験につき説明したが、油分としてはその他、エンジン油、切削油、圧延油などの耐熱性および低粘性を有する油分を使用した場合においても同様の効果が得られる。
【0063】
【発明の効果】
本発明の高炉用圧入材は、熱硬化性樹脂を使用した高温条件下での空隙内への浸入性に優れた高炉炉壁用圧入材であり、本圧入材を使用することにより、炉壁れんがと鉄皮との空隙を完全に充填して炉壁の冷却効果を高めることができるため、れんがの溶損などによる損耗を防止できる。また、本発明の炉体管理方法によれば、前記圧入材を用いることにより、稼働中の高炉炉壁に能率よく圧入作業ができるから、高炉の炉体管理に多大な貢献をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【図1】高炉圧入材の圧入試験装置の概略を示す図であり、同図(a)は平面図を、同図(b)は側面図を示す。
【符号の説明】
1:圧搾空気タンク、
2:圧入材タンク、
3:圧力計、
4:バルブ、
5:圧入された圧入材、
51:材料圧入材、
6:耐圧ガラス、
7:押さえ板、
8:Oリング、
9:スペーサー、
10:シート状電気ヒーター、
12:空隙部
Claims (4)
- 粒状耐火骨材に、レゾール型フェノール樹脂に対して内掛けで5〜50質量%の油分を配合してなるバインダーを加えることを特徴とする高炉用圧入材。
- 前記粒状耐火骨材として炭素または炭化物含有粒子を使用することを特徴とする請求項1に記載の高炉用圧入材。
- 前記の炭素または炭化物含有粒子が炭化珪素、人造黒鉛、鱗状黒鉛、無煙炭または土壌黒鉛の単体またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項2に記載の高炉用圧入材。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の高炉用圧入材を圧入することを特徴とする高炉の炉体管理方法。
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---|---|---|---|
JP2003107540A JP2004315844A (ja) | 2003-04-11 | 2003-04-11 | 高炉用圧入材およびそれを圧入する高炉炉体管理方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003107540A JP2004315844A (ja) | 2003-04-11 | 2003-04-11 | 高炉用圧入材およびそれを圧入する高炉炉体管理方法 |
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JP2003107540A Pending JP2004315844A (ja) | 2003-04-11 | 2003-04-11 | 高炉用圧入材およびそれを圧入する高炉炉体管理方法 |
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Country | Link |
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2003
- 2003-04-11 JP JP2003107540A patent/JP2004315844A/ja active Pending
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