JP2004315558A - ポリエステルポリオールの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリエステルポリオールを製造する際、原料カルボン酸成分としてテレフタル酸を用いる場合の反応遅延の問題を解決し、硬質ポリウレタンフォームとした時に、優れた難燃性を発揮するポリエステルポリオールの工業的に有利な製造方法を提供する。
【解決手段】テレフタル酸を含有するポリカルボン酸成分とポリオール成分とを反応させてポリエステルポリオールを製造するに当たり、ポリオール成分としてエチレングリコールをポリオール成分全体の0.02〜30重量%使用することを特徴とする。
【効果】上記課題が解決される。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステルポリオールの製造方法に関する。さらに詳しくは、硬質ポリウレタンフォームの製造に好適に使用されるポリエステルポリオールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
硬質ポリウレタンフォームは、一般に優れた断熱特性を有することから、冷蔵室、冷蔵庫、冷凍室、冷凍庫、各種建造物などの断熱壁構築用部材として、広く使用されている。硬質ポリウレタンフォームは、一般に、ポリイソシアネート成分からなる液(以下、A液という)と、ポリエーテルポリオール成分、ポリエステルポリオール成分および発泡剤、さらに必要に応じて、触媒や整泡剤などを混合した混合液(以下、B液という)とを用意し、A液とB液とを混合して、短時間で発泡、硬化させる方法によって製造される。
【0003】
硬質ポリウレタンフォームを、各種建造物の断熱壁構築用部材として使用するには、硬質ポリウレタンフォームに難燃性を付与する必要がある。硬質ポリウレタンフォームに難燃性を付与する方法としては、硬質ポリウレタンフォーム製造用原料に、例えば、(1)有機リン酸エステル系などの難燃剤を添加する方法、(2)ポリオール成分の種類を選択する方法などがある。後者の(2)の方法によるときは、ポリオール成分としてポリエステルポリオールを使用し、特にそのポリエステルポリオール中に占める芳香族構造を有する成分の濃度を高くすると、難燃性が向上することが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
ポリエステルポリオールに芳香族構造を有する成分を導入するためには、製造原料のポリカルボン酸成分として、芳香族ポリカルボン酸を用いる。例えば、無水フタル酸を用いた場合には、難燃性の高いポリエステルポリオールが得られる。さらにその一部または全部を、テレフタル酸で置換すると、さらに難燃性が向上することが知られている。
【0005】
ところで、ポリエステルポリオールを製造する際に、ポリカルボン酸成分としてテレフタル酸を用いると、無水フタル酸などを用いた場合に比べて、反応が遅延し時間がかかることが問題となる。テレフタル酸の比率が多くなればなるほど、この反応遅延の傾向が顕著に表れる。具体的には、原料ポリカルボン酸のうち約30重量%程度のテレフタル酸を用いると、反応時間はこれを用いない場合に比べて20%以上余分にかかり、テレフタル酸が100%の場合には2倍以上の反応時間を必要とする。
【0006】
テレフタル酸を使用しても、反応遅延が起こらないようにできれば、テレフタル酸の割合をより多くして、硬質ポリウレタンフォームの難燃性を一層向上させることができ、また製造コストを低減することができる。一般的に、化学反応を加速するためには、触媒を増量したり、反応温度を高めたりすることが広く行われているが、ポリエステルポリオールを製造する場合には、その効果は、コストおよび反応後の製品に与える悪影響を考えた場合、満足できるものではない。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−60918号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、上記のテレフタル酸を原料ポリカルボン酸成分に用いた場合の反応遅延化の問題を解決し、硬質ポリウレタンフォームの製造で使用されるポリエステルポリオールの工業的に有利な製造方法を提供することを目的として、鋭意、検討を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の目的は、次のとおりである。
1.ポリエステルポリオールを製造方法する際、原料ポリカルボン酸成分としてテレフタル酸を用いる場合に生じる反応遅延の問題を解消した方法を提供すること。
2.硬質ポリウレタンフォームとした時に、優れた難燃性を発揮するポリエステルポリオールの工業的有利な製造方法を提供すること。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では、テレフタル酸を含有するポリカルボン酸成分とポリオール成分とを反応させてポリエステルポリオールを製造するに当たり、ポリオール成分としてエチレングリコールをポリオール成分全体の0.02〜30重量%使用することを特徴とするポリエステルポリオールの製造方法を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明方法によって得られるポリエステルポリオールは、ポリカルボン酸成分とポリオール成分との反応によって得られるポリエステルポリオールであり、好適には、硬質ポリウレタンフォームの製造に使用されるポリエステルポリオールである。
【0011】
本発明方法によるときは、上記ポリエステルポリオールの製造原料であるポリカルボン酸成分として、少なくともテレフタル酸を使用する。さらに、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸、または、芳香族トリカルボン酸を使用することができる。好適な芳香族ポリカルボン酸成分としては、フタル酸、トリメリット酸、およびこれらの酸無水物が挙げられる。さらに、これら芳香族ポリカルボン酸に、若干量のコハク酸、マレイン酸、アジピン酸などの脂肪族ポリカルボン酸を混合したものでもよい。これらテレフタル酸以外のポリカルボン酸成分のうち、特に好ましいのは、フタル酸、無水フタル酸である。
【0012】
本発明方法によるときは、上記ポリエステルポリオールの製造原料であるポリオール成分として、少なくともエチレングリコールを使用する。エチレングリコールの使用量は、ポリオール成分全体の0.02〜30重量%である。エチレングリコールの量がポリオール成分全体の0.02重量%未満では、反応を加速させる効果がほとんど認められず、他方、30重量%を越えると、ポリエステルポリオールの粘度が著しく増加するなどの悪影響が生じる恐れがある。エチレングリコールの好ましい量は、0.1〜15重量%である。
【0013】
上記ポリエステルポリオールの製造原料であるポリオール成分のうち、エチレングリコール以外のポリオール成分を併用することができる。エチレングリコール以外のポリオール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのジオールおよびトリオールが挙げられる。中でも好ましいのは、ジエチレングリコール、1,2−ブタンジオールおよび1,4−ブタンジオールなどである。
【0014】
目的とするポリエステルポリオールは、上記ポリカルボン酸成分およびポリオール成分を、触媒の存在下に通常150〜230℃で反応させることによって、製造することができる。上記に成分を反応させる際の圧力は、常圧でもよいが、副生する水を系外に除去し、反応を速やかに完結させるために、反応の進行に伴って徐々に減圧するのが好ましい。また、特に反応開始時には、生成するポリエステルポリオールの着色を防ぐために、反応容器の空間部を窒素ガスで置換し、さらに反応液中の溶存酸素も除去することが好ましい。触媒としては、一般に酸触媒が用いられる。例えば、ルイス酸であるテトライソプロピルチタネートが好適であるが、パラトルエンスルホン酸などのブレンステッド酸であってもよい。
【0015】
本発明に係る製造方法によって得られるポリエステルポリオールは、硬質ポリウレタンフォームの製造用として好適である。硬質ポリウレタンフォームは、ポリイソシアネート成分、ポリエーテルポリオール成分、ポリエステルポリオール成分および発泡剤、さらに必要に応じて、触媒や整泡剤などを混合して、短時間で発泡、硬化させる方法によって製造することができる。
【0016】
上記ポリイソシアネート成分としては、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する有機化合物であればよく、特に限定されない。例えば、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシアネート、および芳香族系ポリイソシアネート、またはこれらの変性物が挙げられる。好ましくは、芳香族系ポリイソシアネート、またはこれらの変性物が挙げられ、その例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、およびこれらのカルボジイミド変性物などが挙げられる。
【0017】
上記ポリエーテルポリオール成分としては、アルキレンオキシド重合物、糖重合物、およびこれらのアミン変性物、ポリアミンとアルキレンオキシドとの反応物などが挙げられる。ポリエーテルポリオール成分は、多品種市販されているので入手が容易であり、これら市販品を単独でまたは混合して使用することができる。
【0018】
上記ポリエステルポリオール成分としては、上記の方法によって製造されるポリエステルポリオールを用いる。この場合、発泡剤として、例えば、HCFC−141b、HFC−245fa、HFC―365mfcなどのフロン系発泡剤を使用することができる。これらの発泡剤は、単独でまたは混合して使用することができる。
【0019】
硬質ポリウレタンフオームの製造時に使用できる触媒としては、通常のウレタンフォームの製造に使用される公知の触媒が制限なく使用できる。例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミンなどのアミン系触媒が挙げられる。硬質ポリウレタンフォームの製造時に使用できる整泡剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、またはカチオン系界面活性剤を用いることができる。中でも、ノニオン系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤が好適である。
【0020】
【実施例】
以下、本発明に係る製造方法の具体的例を、実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の記載に限定されるものではない。
【0021】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却機、温度計、圧力計、加熱装置などを装備した、容積が1リットルのガラス製反応器に、テレフタル酸256g、ジエチレングリコール261g、エチレングリコール38gを仕込み、反応器の空間部を窒素ガス置換した後、反応器内用物の加熱を開始した。反応器内温が180℃に達した時点で、触媒としてテトライソプロピルチタネート0.3gを反応器内に添加し、反応を開始した。その後、2時間かけて内温を200℃に昇温し、反応終了時までこの温度を保持した。一方、反応器内の圧力は、内温が180℃の時点から内温が200℃に達するまでは、常圧に対する減圧度で−13.3kPaに維持した。その後、4時間かけて徐々に減圧して、常圧に対する減圧度で−81.3kPaとし、反応が終了するまでこの圧力を保持した。反応の進行に伴い、反応混合物は均一な溶液になることが、目視観察された。反応進行中に、反応混合物の一部を反応器から抜き出して、抜き出した試料につき、酸価を測定して反応の進行状況確認の指標とした。なお、酸価はJIS K15571970に準拠して測定した。反応の終了は、酸価が3以下となり、かつ、反応混合物が均一な溶液をなった時点とし、反応容器に触媒を添加した時点から反応終了までの所用時間を、反応時間とした。反応終了後、加熱を停止して100℃付近まで冷却し、反応生成物を抜き出し、抜き出した試料につき粘度を測定した。粘度は、回転粘度計(B型粘度計)を使用し、25℃で測定し、結果を表―1に記載した。
【0022】
[実施例2]
実施例1に記載の例において、仕込み成分を、テレフタル酸249g、ジエチレングリコール286gおよびエチレングリコール19gと変えた外は、同例におけると同様の手順で反応させた。反応混合物が均一化したことを目視観察によって確認し、同時に反応生成物につき酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。反応時間、反応生成物についての酸価の測定結果を、表−1に示した。
【0023】
[実施例3]
実施例1に記載の例において、仕込み成分を、テレフタル酸246g、ジエチレングリコール298gおよびエチレングリコール9gと変えた外は、同例におけると同様の手順で反応させた。反応混合物が均一化したことを目視観察によって確認し、同時に反応生成物につき酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。反応時間、反応生成物についての酸価の測定結果を、表−1に示した。
【0024】
[実施例4]
実施例1に記載の例において、仕込み成分を、テレフタル酸243g、ジエチレングリコール308gおよびエチレングリコール2gと変えた外は、同例におけると同様の手順で反応させた。反応混合物が均一化したことを目視観察によって確認し、同時に反応生成物につき酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。反応時間、反応生成物についての酸価の測定結果を、表−1に示した。
【0025】
[実施例5]
実施例1に記載の例において、仕込み成分を、テレフタル酸243g、ジエチレングリコール309gおよびエチレングリコール1gと変えた外は、同例におけると同様の手順で反応させた。反応混合物が均一化したことを目視観察によって確認し、同時に反応生成物につき酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。反応時間、反応生成物についての酸価の測定結果を、表−1に示した。
【0026】
[比較例1]
実施例1に記載の例において、仕込み成分を、テレフタル酸243g、ジエチレングリコール310gと変えた外は、同例におけると同様の手順で反応させた。反応混合物が均一化したことを目視観察によって確認し、同時に反応生成物につき酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。反応時間、反応生成物についての酸価の測定結果を、表−1に示した。
【0027】
[実施例6]
実施例1に記載の例において、仕込み成分を、テレフタル酸125g、無水フタル酸111g、ジエチレングリコール286gおよびエチレングリコール19gと変えた外は、同例におけると同様の手順で反応させた。反応混合物が均一化したことを目視観察によって確認し、同時に反応生成物につき酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。反応時間、反応生成物についての酸価の測定結果を、表−1に示した。
【0028】
[比較例2]
実施例1に記載の例において、仕込み成分を、テレフタル酸121g、無水フタル酸108g、ジエチレングリコール310gと変えた外は、同例におけると同様の手順で反応させた。反応混合物が均一化したことを目視観察によって確認し、同時に反応生成物につき酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。反応時間、反応生成物についての酸価の測定結果を、表−1に示した。
【0029】
[比較例3]
実施例1に記載の例において、仕込み成分を、テレフタル酸290g、ジエチレングリコール176g、エチレングリコール97gと変えた外は、同例におけると同様の手順で反応させた。反応混合物が均一化したことを目視観察によって確認し、同時に反応生成物につき酸価を測定することによって反応完結を確認し、反応を終了した。反応時間、反応生成物についての酸価および粘度を測定した。測定結果を、表−1に示した。
【表1】
Figure 2004315558
【0030】
表―1より、次のことが明らかである。
(1)テレフタル酸を含有するポリカルボン酸成分とポリオール成分とを反応させて、ポリエステルポリオールを製造するに際し、エチレングリコールをポリオール成分全体の0.02〜30重量%の範囲で使用した実施例1〜実施例6においては、何れも迅速に反応が完結している。
(2)これに対し、エチレングリコールを使用しなかった比較例1および比較例2においては、それぞれ原料組成の対応している実施例5および実施例6と比較して、大幅な反応遅延が観測される。
(3)また、エチレングリコールを30重量%より多くした比較例3においては、実施例1〜実施例3並に迅速に反応が完結しているが、生成物の粘度が大幅に上昇し、硬質ポリウレタンフォームの製造には不適当である。
【0031】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明した通りであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係るポリエステルポリオールの製造方法によれば、テレフタル酸を含有するポリカルボン酸成分とポリオール成分とを反応させてポリエステルポリオールを製造する際に、エチレングリコールをポリオール成分全体の0.02〜30重量%の量で使用することにより、テレフタル酸を原料ポリカルボン酸成分に用いた場合の反応遅延化、それに伴うコスト高の問題が解決される。
2.本発明に係るポリエステルポリオールの製造方法によれば、難燃性付与効果の大きいテレフタル酸の割合をより多くして生成物の難燃性をより高めることができる。
3.本発明に係る製造方法によれば、硬質ポリウレタンフォームの製造に好適に使用されるポリエステルポリオールを、工業的に有利に製造することができる。

Claims (3)

  1. テレフタル酸を含有するポリカルボン酸成分とポリオール成分とを反応させてポリエステルポリオールを製造するにあたり、ポリオール成分としてエチレングリコールをポリオール成分全体の0.02〜30重量%使用することを特徴とする、ポリエステルポリオールの製造方法。
  2. エチレングリコール以外のポリオール成分が、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジオール、グリセリン、およびトリメチロールプロパンからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールである、請求項1に記載のポリエステルポリオールの製造方法。
  3. ポリエステルポリオールが、硬質ポリウレタンフォームの製造に使用されるものである、請求項1または請求項2に記載のポリエステルポリオールの製造方法。
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