JP2004315342A - 高密度柱状ZnO結晶膜体とその製造方法 - Google Patents

高密度柱状ZnO結晶膜体とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 基板表面に水溶液析出法によりZnO結晶を析出させようとすると、
高密度で配向性良く生成させることは困難で、一定の品質が求められるデバイス設計に用いることはコンであった。本発明は、デバイス設計に応じられるZnO結晶膜を、生成させようというものである。すなわち、基板の90%以上の面積に、c軸が垂直に均一に配向し、緻密な微細構造有する高密度柱状結晶膜を、亜鉛イオンを含む水性溶液から簡単に生成し、提供しようというものである。
【解決手段】 亜鉛イオンを含む水溶液中の亜鉛イオン濃度を、基板を浸漬したとき高密度柱状ZnO結晶膜体が得られる濃度範囲、0.07〜0.3mol/lの範囲に調製し、この水溶液に基板を浸漬し、高密度柱状結晶膜を生成させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、フォトニック結晶、透明導電膜、太陽電池、マイクロ紫外レーザー、圧電体、ガスセンサーなどに利用、応用が期待される、可視紫外域での高度な透明性し、基板に対して高被覆面密度、高い配向性を有してなる高密度柱状ZnO結晶膜体とその製造方法及び該高密度柱状ZnO結晶薄膜を基板状に高精度パターンに生成せしめて成るZnO結晶デバイスとその製造方法に関する。さらに詳細に述べると、本発明は、100℃以下の亜鉛イオン含有水溶液に基板を浸漬し、基板上に自己組織的にZnO結晶が成長することにより得られる高被覆面密度、高い配向性を有してなる高密度柱状ZnO結晶膜体とその製造方法、及び、この膜体とその製造方法を利用してなる、高精度パターンを有した高密度柱状ZnO結晶デバイスとその製造方法に関する。さらに要約して述べると、いわゆる液相法による新規なプロセスによる、コストのかからない極めて簡単なプロセスによる、高被覆面密度、高い配向性を有してなる可視紫外域で透明な高密度柱状ZnO結晶膜体とその製造方法、及び、同結晶薄膜が基板上に高精度にパターン化されて生成されてなる可視紫外域で透明な高密度柱状ZnO結晶デバイスとその製造方法に関する。
酸化亜鉛結晶膜の作製方法は、いわゆる液相法、気相法など多数知られている。一般に、酸化亜鉛薄膜を得る方法として、分子線エピタキシー(MBE)、有機金属気相成長法(MOCVD)などによる気相成長法、あるいは亜鉛化合物を加水分解して得られる酸化亜鉛ゾルないしは水酸化物ゾル液中に基板をディッピングあるいはスピンコートなどによって塗布する方法、あるいは、亜鉛化合物溶液に基板を浸漬し、引き上げて乾燥、加熱分解する等が知られている。
しかしながら、MBEや、MOCVDなどによる気相成長法では、膜厚の制御された高品位な薄膜が得られるが、高真空設備など高価で特殊な装置を必要とし、またその薄膜作製には長時間を要する等の点でコストや製作効率の点で問題のあるものであった。これに対して、ゾル液中にディッピングする方法は、比較的操作も簡単で、低コストで実施しうるという点では優れているが、膜厚のコントロールを始め、その生成される結晶に高い配向性を求めることは困難で、この方法により、配向性や膜厚において品質の高いものを得るには限界があり、高い品質が要求されるような場合、例えばデバイス設計等には応えることが出来なかった。
また、加熱分解法による場合も、大面積の基板に対して一度に一様に高面積密度に薄膜を形成することが出来ず、そのためには浸漬から、乾燥、加熱分解にいたる一連の操作を何回も繰り返す必要があり、作業性のみならず品質の点でも高いものを期待することは出来ず、そこには大きな問題があり、かかる手段によって精密な設計を要するデバイス設計に適用することは、事実上、困難なことと言わざるを得ない状況にあった。
一方、これらの方法とは全く異なる方法が、近年、提案、報告されている。すなわち、低濃度の酢酸亜鉛水溶液(亜鉛濃度;0.005mol/l、液温;90℃)に予めZnO結晶シードを形成させた基板を浸漬し、所定時間反応させることにより、基板上にZnO結晶の薄膜状被膜が生成されること(非特許文献1)、あるいは、前記濃度よりも2倍ほど濃度の高い硫酸亜鉛水溶液(亜鉛濃度;0.01mol/l、液温;60℃)を調製し、この水溶液に予めZnOシード結晶を形成させてなる基板を浸漬し、反応させることによって基板上にZnO結晶の被覆膜を形成することが出来る(非特許文献2)旨のことが報告されている。
さらに、硝酸亜鉛水溶液にガラス基板上を浸漬することによって、ガラス基板上にZnO結晶膜を生成させることについても報告されている(非特許文献3)。
さらにまた、これら溶液析出法を利用し、基板上にZnO結晶を適宜パターニング手段と組合せ、自己組織化的に析出させて微細デバイスを作製する試みも提案されている(非特許文献4)
D.S.Boyle et al,Chem.Comm,80〜81、(2002). S.Yamabi et al,J.Mater.Chem,12,3773−3778(2002). L.Vayssieres et al,J.Phys.chem,105,3350−3352,(2001). Noriko.Saito et al, Adv.Mater.2002,vol14,No.6,p.418〜421
これらの文献に記載された水溶液からZnO結晶膜が生成する機構については、該文献にも記載、言及されておらず、その生成機構の詳細な解明は現在、必ずしも定かではなく、今後の研究に待つところ大であるが、何れにしても、水溶液から、しかも、100℃以下という極めてソフトな生成環境の下で単結晶が生成し、成長することは極めて注目に値する。
しかしながら、現在のところ、これらの文献に記載された手段によって生成されてなるZnO結晶薄膜は、その何れの場合も基板に対して粗な微細構造を有し、充分に高密度に被覆された状態のものとは言えなかった。また、その生成、析出する結晶の配向性についても、結晶軸の揃ったものを入手することは困難であった。この点は、本発明者らの実験によっても同様の結果が裏付けられ、この文献に記載された条件とプロセスでは高密度ZnO結晶膜を得るには十分な技術とは言えず、すなわち、極めて不十分であり、到底完成された技術であるとは言えないものであった。
すなわち、これらの文献に開示された方法によって、低濃度亜鉛イオン水溶液から出発して高密度ZnO結晶からなる薄膜を生成、堆積させようとしても、その得られる薄膜被覆率はせいぜい基板の80%程度の被覆率しかなく、しかも結晶軸は不揃いで配向性の低いものしか得ることが出来ず、そのため、この水溶液から生成させる酸化亜鉛単結晶生成技術を以て、酸化亜鉛単結晶特有の光学的、電気的性質を十分に発現するよう期待することは、極めて困難であり、そこに、この技術を高度な物性が期待されるような技術、例えば、酸化亜鉛単結晶の持つ電気的、光学的に優れた特性を利用して各種デバイスを設計しようとする等に応用、展開しようとするにおいては問題のあるものであった。
本発明は、この問題を解消しようとするものである。すなわち、前記文献に記載された先行技術を前提従来技術として、この従来技術においては、基板上に生成するZnO結晶薄膜は、被覆面密度が低く、また結晶の配向性においても不揃いであり、デバイス設計に適用しても適合したものを得るという状況にはなかったことから、これらの問題のない高密度ZnO結晶膜体を得、あるいはデバイス設計を可能としようというものである。すなわち基板に対して高被覆面密度で、高い配向性を有する高密度柱状ZnO結晶膜体とその製造方法、及びこの技術を用いることによって、高精度パターンを有してなる高密度柱状ZnO結晶デバイスとその製造方法を提供しようと言うものである。
そのため、本発明者らにおいては上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、基板を浸漬する出発水溶液中の亜鉛イオン濃度により、生成、堆積して得られるZnO結晶の状態が大きく左右されること、特に、前示文献に開示された濃度よりも相当高い濃度に調製することにより、柱状ZnO結晶が基板の全面に均一に且つ高被覆面密度に生成し、しかもc軸が基板に対して垂直に配向した均一配向粒子をびっしりと隙間なく基板表面に被覆させることが出来ることを見いだし、この知見によるプロセスによって高被覆面密度、高い配向性を有してなるZnO柱状結晶薄膜体を安定に得ることに成功したものである。本発明は、これらの知見、成功に基づいてなされたものであり、その構成は、以下に記載するとおりの事項からなるものである。
(1) 亜鉛イオンを含有する水溶液に基板を浸漬することによって基板上に得られ、c軸が基板に対して垂直に配向し、緻密な微細構造を有して生成されてなることを特徴とする高密度柱状ZnO結晶膜体。
(2) 浸漬する基板に対して、基板面積の90%以上の高被覆面密度で膜状に生成されてなることを特徴とする前記(1)記載の高密度柱状ZnO結晶膜体。
(3) 該高密度柱状ZnO結晶膜体が可視紫外域で透明である前記(1)又は(2)記載の高密度柱状ZnO結晶膜体。
(4) 亜鉛イオンを含む出発水溶液に基板を浸漬することによって、基板上にZnO結晶薄膜を自己組織的に生成する方法において、浸漬する基板に対してc軸が垂直に配向し、緻密な微細構造の高密度柱状ZnO結晶膜体が得られるように該出発水溶液中の亜鉛イオン濃度を調製することを特徴とした、高密度柱状ZnO結晶膜体の製造方法。
(5) 該高密度柱状ZnO結晶膜体を生成させる基板として、予めシードを形成した基板を用いることを特徴とする、前記(4)記載の高密度柱状ZnO結晶膜体の製造方法。
(6) 予めシードを形成する基板として可視紫外域で透明な単結晶基板またはガラス基板、またはSi基板を選択した前記(5)記載の高密度柱状ZnO結晶膜体の製造方法。
(7) 該出発水溶液中の亜鉛イオン濃度が、浸漬する基板に対して、ZnO単結晶薄膜が十分に生成しうる濃度に調整されている、前記(4)記載の高密度柱状ZnO結晶膜体の製造方法。
(8) 該亜鉛イオン濃度として、0.07〜0.3mol/l、より好ましくは0.08〜0.15mol/lの範囲に調製することを特徴とする、前記(4)又は(7)記載の高密度柱状ZnO結晶膜体の製造方法。
(9) 出発水溶液と基板との接触反応による該ZnO結晶膜の育成、成長を、該水溶液温度を室温〜100℃、好ましくは50℃〜90℃の温度範囲に設定した温度条件下で行うことを特徴とする、前記(4)ないし(8)の何れか1項に記載の高密度柱状ZnO結晶膜体の製造方法。
(10) 該高密度柱状ZnO結晶膜体の製造方法における高密度柱状ZnO結晶が可視紫外域で透明である前記(4)乃至(9)の何れか1項記載の高密度柱状ZnO結晶膜体の製造方法。
(11) デバイス作製基板を亜鉛イオン含有水溶液に鋳型と共に浸漬することによって基板上にZnO結晶を、c軸を基板に垂直に、自己組織的且つ高密度に生成せしめたことを特徴とする高密度高配向性ZnO結晶デバイス。
(12) 該高密度高配向性ZnO結晶デバイスにおける高密度高配向性ZnO結晶が可視紫外域で透明である、前記(11)記載の高密度高配向性ZnO結晶デバイス。
(13) デバイス作製基板に所定パターンを有するレジスト鋳型を当接して亜鉛イオンを含有する水溶液に浸漬し、c軸が基板に対して垂直に配向し、緻密な微細構造を有して生成されてなる高密度柱状ZnO結晶を、該レジスト鋳型によるパターニング手段によって所定パターンに自己組織的に生成したことを特徴とする、パターニングが施されてなる高密度高配向性ZnO結晶デバイスの作製方法。
(14) 該結晶を所定パターンに形成する工程が、デバイス設計基板に鋳型が一体に形成された一体型レジスト鋳型を用い、これによってパターン形成された結晶を得ることを特徴とする、前記(13)記載の高密度柱状ZnO結晶デバイスの作製方法。
(15) 該結晶を所定パターンに形成する工程が、繰り返し使用可能な分離型鋳型を用い、これをデバイス作製基板に当接して亜鉛イオンを含有する水溶液に浸漬し、これによってパターン形成された結晶を得ることを特徴とする、前記(13)記載の高密度柱状ZnO結晶デバイスの作製方法。
(16) 該高密度柱状ZnO結晶パターンを形成する基板には、パターン形成前に予め亜鉛イオン含有水溶液を塗布してZnO多結晶からなるテンプレートを施しておくことを特徴とする、前記(13)ないし(15)の何れか1項に記載の高密度柱状ZnO結晶デバイスの作製方法。
(17) 該基板を浸漬し、パターン形成する際に使用される亜鉛イオン含有水溶液を、亜鉛イオン濃度0.07〜0.3mol/l、好ましくは0.08〜0.15mol/lの範囲に調製したことを特徴とする、前記(13)乃至(16)の何れか1項記載の高精度パターンを有してなる高密度柱状ZnO結晶デバイスの製造方法。
(18) 該高密度高配向性ZnO結晶デバイスの作製方法における高密度高配向性ZnO結晶が可視紫外域で透明である、前記(13)乃至(17)記載の何れか1項記載の高密度高配向性ZnO結晶デバイスの製造方法。
(19) 基体にレジストをスピンコートし、光、X線あるいは電子線をパターニング照射し、次いで現像して基体上に高精度パターンを有するレジスト鋳型を形成したことを特徴とした、水溶液析出法によるデバイス作製に使用するレジスト鋳型。
(20) 基体上に高精度パターンを有するレジスト鋳型を形成後、基体からレジスト鋳型を剥離して分離型鋳型とする、前記(19)記載のレジスト鋳型。
(21) 基体としてデバイス作製基板を使用し、基板と鋳型とが一体に形成された一体型鋳型とする、前記(19)記載のレジスト鋳型。
(22) 該レジスト鋳型へ高分子材料を流し込み、レジスト微細パターンを高分子材料に転写することによって得られる、水溶液析出法によるデバイス作製に使用する高分子鋳型。
(23) 無機材料、金属材料からなる固体材料を超微細加工してデバイス設計用原型鋳型を得、これに高分子キャスティング材料を流し込んで得ることを特徴とした、水溶液析出法によるデバイス作製に使用する高分子鋳型。
前記(1)に記載の要件事項は、従来法の水溶液から生成する粗な微細構造薄膜体に対して、本発明のものは高密度微細構造の柱状ZnO結晶薄膜体であることを規定しているものであり、これによって従来法によるものと区別するものである。その構成は、高密度、高配向に揃った微細構造を有していることから、粗な微細構造の従来法によるものでは奏することが出来なかったZnO結晶本来の性質を充分に発現することや、ZnO薄膜膜の精密な微細パターニングの達成を可能とするものであり、その利用、進展に大きく貢献し、寄与するものと期待される。
(2)、(3)に記載する要件事項は、前記(1)記載の膜体の態様を、基板面に対する被覆の程度およびその性質である光透過性に基づいて規定したものであり、従来法によるものに対して、(1)同様に区別するものである。
(4)は、(1)あるいは(3)に記載の膜体の製造方法を規定し、開示するものであり、これによって該膜体を再現性よく製造することが出来るものである。続く(5)ないし(10)に記載の各構成は、前記(4)記載の製造方法をさらに技術的に限定するものであり、すなわち該製造方法の実施態様を開示するものである。
また、(11)ないし(18)は、(1)〜(10)に係る高密度柱状ZnO結晶膜とその製造方法を各種デバイスとその作製に利用しようというものであり、この態様によって本発明は、これまでのデバイス作製技術からすると、高い温度にて処理することなく、また、高価な機器を使用することなく極めて低い温度にて簡単にデバイスを作製することができるプロセスを提供するものである。これまでは処理温度上の壁で基板材料として使用し得なかった材料も本発明によって使用することが可能となり、その技術的、経済的意義は極めて大きいし、今後、デバイス設計に大きな影響を与え、産業界の発展のみならず、社会一般にも大きく寄与するものと確信する。さらに、(19)ないし(23)はそのプロセスを実施するレジスト鋳型、高分子鋳型の構成を開示するものである。なお、(23)記載の原型を得る無機材料、又は金属材料から固体材料としては、SiO、シリコン等の無機、金属材料が挙げられ、超微細加工技術としては、機械的マイクロ切削加工、機械的マイクロ研磨加工、陽極切削−研磨加工、ドライエッチング加工、エッチング加工等、あるいはこれらの組み合わせが挙げられる。
本発明は、優れた結晶性と緻密な微細構造を有するZnO膜の100℃以下という結晶作成に係る温度としては超低温での簡便な合成方法を提供するものであり、それ自体画期的である。この方法から作製されたZnOの結晶性は、高額な真空系装置を必要とする気相合成法によって合成された膜に比較しても遜色ない。従って、この合成方法は、気相法に比し有利な合成手段を提供し、コストや環境負荷の面から幅広い工業的応用が期待される。ZnO膜は、透明電極膜として利用することが期待されているが、本発明は、配向性の良いZnO結晶を高密度に生成したことにより、透明ZnO膜を与えるものであり、その意義は大きい。また、本発明は、水溶液中、100℃以下というソフトな合成手段と、これまで報告されてきたリソグラフィー技術とを結びつけることによって、高い品質のZnO膜を極めてソフトな環境で自己組織的に高精度、高解像度でパターニングし得ること明らかにしたもので、その意義は極めて大きい。これによって、ZnO柱状単結晶のナノ周期構造体、フォトニック結晶、紫外レーザー発振デバイス、透明電子回路、微小圧電体、微小化学センサなどへの幅広い分野への応用が期待され、今後、各種技術分野の発展に大いに貢献し、寄与するものと期待される。
ここに、本発明プロセスに必要な反応溶液の調製に当たっては、極力純粋試薬を使用し、不純物のないものを使用することが好ましい。亜鉛イオン濃度の設定については、これは必ずしも一律に規定することはできず、浸漬する基板材料やその面積等によって最適範囲は必ずしも一様ではなく少し異にしているものである。すなわち、面積の小さなものを対象としてZnO結晶膜を生成させようとすると亜鉛イオン濃度は低めに設定しても差し支えないが、大きな面積の基板に対して生成させようとすると、濃度は高めに設定することが肝要である。勿論、使用する基板は特にその材質を制限する理由はないが、ZnO結晶が生成し易いものと、生成しづらいものとがあるので、予めこれらの要因については実験的に確認しておくこと好ましい。基板材料として好ましいものを挙げると、実施例に開示したSi基板を始め、ZnO、サファイヤ、GaNなどの格子マッチングしやすいものは良好であるといえる。予め極めて薄い高配向ZnO薄膜をシード層として用いる場合は、ガラスやプラスチックのような非晶質材料も基板として用いることができることは前示したとおりである。その中でも、この発明のZnO結晶膜が、可視紫外域(波長約380nm以上)で透明であることは、この材料が、例えば、透明導電体などへ応用できる。それだけではなく、サブミクロン周期の微細パターニングを施したZnO結晶膜は、一般的には、Siなどで研究されている赤外域で用いられるフォトニック結晶と比較し、可視域で光学応答を示す新しいフォトニック結晶としての応用が達成される。気相成長によるものに比してもその物性は遜色のないものであることを考えると、さらに各種デバイス、とりわけシリコン半導体基板上に他の素子と共に形成することによって、集積化度を上げ、モジュール化を図ることも、極めて重要な利用形態の一つと考えられ、従って、シリコン基板上に該ZnO膜を形成することは、単に膜生成手段としての意義を超えた重要な意義を有するものである。
後述する実施例においては、シリカガラス基板及びSi基板を選定使用しているが、その意義は如上のねらいを含んでおり、各種デバイス設計における集積化、モジュール化を考慮し、これに対応してなるものである。加えて、本発明は、ZnO結晶析出工程で高温処理を要しないことから、デバイス設計に際して、基板材料の選択条件からは、少なくとも高温度に耐えるものという従来の温度的制約条件から解放され、例えば、高分子フィルムを使用することも可能とするものである。これによって今後、デバイス設計に際し、高分子フィルムを始めこれまで使用し得なかった多様な材料をデバイス設計に用い、素子化することも可能とする副次的効果をもたらすものである。
本発明のZnO結晶を得るのに必要な亜鉛イオン含有する反応水溶液は、弱酸性領域に調整することで結晶生成反応が進行する。反応温度は、液温を50℃以上にすることで生成反応が良好に進行するが、その範囲は、室温から100℃以下の広い且つ低温領域で実施することができる。但し、反応速度は、濃度、温度に依存し、濃度が高い場合(例えば、0.01Mを超える濃度)、室温でも反応は進行する。溶液の濃度は、前示したとおり面積に応じて一律に規定できないが、これについて再度言及すると、大面積基板上にZnO単結晶を形成しようとする場合、高濃度の溶液、例えば0.1M以上が必要である。ただし、基板上の限定されたパターン上に生成させようとする場合、そのパターンの大きさと単結晶柱の直径とが合致すれば、濃度が低くても問題はない。
本発明の高密度柱状ZnO結晶膜体を得るためには、好ましい実施態様としては、出発水溶液は亜鉛濃度を適正な濃度範囲に調製することに加え、結晶成長制御剤を添加し、100℃以下、好ましくは50℃〜90℃に調整すること、使用する基板材料には予めシードを形成した基板材料を使用することが好ましい。これらの条件が相俟って、より品質の高い高密度柱状ZnO結晶膜体が生成する。その最適条件は、目的とする設計に応じて異なり、一様に規定することは困難であることから、実施の際にはこれら諸条件を適宜組み合わせた、最適な条件を把握しておくことが望ましい。
さらにまた、出発水溶液と基板との固液接触反応による結晶の育成、成長プロセスを実施する反応容器については、特に限定されず開放型反応容器でもよいし、密閉型反応容器(オートクレーブ)でも実施することができる。オートクレーブ容器を使用した場合、圧力は大気圧よりも高くなるが、結晶の成長自体には支障はなく、品質的にも問題はなかった。
以下、本発明を実施例あるいは比較例さらには図面に基づいて具体的に説明するが、これらはあくまでも本発明を当業者が容易に理解するための一助として開示するものであって、本発明をこの実施例に基づいて限定する趣旨ではない。
実施例1;
硝酸亜鉛水溶液(0.1mol/l)を調製し、結晶成長制御剤としてヘキサメチレンテトラミン(HMT;0.1mol/l)を添加した。調製した水溶液をオートクレーブに仕込み、液温を77℃に保持し、この溶液中に、予めZnOシード層を形成したSi基板を浸漬した。そのときの圧力は、大気圧を上回る1.1気圧程度の圧力であった。1.5時間そのまま保持してZnO膜を成長させた。
得られたZnO膜の表面と破断面をSEM像を図1(a)、(b)に示す。その結果、このSEM像から、ZnO柱状結晶の被覆面密度の高さがよく分かった。また、図2に、同じく作製されたZnO結晶膜のX線回折(XRD)パターンを示す。この図2からはZnOの002以外のピークは全くといって良いほど見られず、基板面に対する柱状単結晶の配向度は極めて高いことが分かった。
さらに、使用する亜鉛化合物や基板の種類を変えて、同様の実験を行ったが、得られたZnO膜は、全て、柱状単結晶は基板面に対してc軸が垂直に配向し、その結晶サイズは直径0.1〜1μm、高さ0.1〜5μmの範囲で制御可能であること、また、膜厚が1.5μmの範囲においては、柱状単結晶の基板被覆面密度は90〜99%に達すること等が確認された。また、高さ方向の成長速度は0.6μm/h程度であった。本実施例においては、亜鉛イオン濃度を特定の濃度0.1mol/lに設定、調製した場合を開示したが、この亜鉛イオン濃度については、膜を生成させる基板材料の面積によってもその最適な範囲は異にし、一律には規定できないが、本発明で狙いとする膜を生成させるためには、0.07〜0.3mol/lの濃度が実施可能な範囲であり、特に好ましくは0.08〜0.15mol/lである。
この濃度と基板面積との関係は、実施の際、さらに反復再現性に最適な範囲を事前に把握しておくが肝要である。
ここに、シード層は、以下のプロセスによって作製したものである。
先ず、酢酸亜鉛、2メトキシエタノール、モノエタノールアミンを用意し、これらをモル比1:10:1となるよう秤量した。室温でこれらの原料を混合し、前駆体液を得た。用いたシリカガラス及びSi基板の大きさは、2cm角、厚み0.3mmに設定した。前駆体液は、Si基板上に3000rpmでスピンコーティングし、500℃で熱処理して、ZnOシード膜を得た。このシード形成方法は、以下に示す実施例2以下においても同様適用した。
以上より、出発水溶液の亜鉛イオン濃度を、先行技術で開示した亜鉛イオン濃度よりもかなり高めに設定することにより、高品質の酸化亜鉛(ZnO)柱状結晶からなる膜を任意の基板上に100℃以下の温度の水溶液より容易に作製しうることが実証された。勿論、その条件は、亜鉛イオン濃度以外にも、結晶調整剤の種類とその有無、水溶液のpH、設定温度、浸漬時間、浸漬する基板材料の選択、シードの形成条件等いろいろな因子がかかわってくることは当然のことであるが、これらの因子を一様に設定した場合、亜鉛イオンの設定濃度が極めて重要なファクターであることが分かった。
本発明のZnO単結晶膜成長法は、リソグラフィー技術と併用することによりフォトニック結晶を始め、マイクロ紫外レーザー、太陽電池、圧電体、ガスセンサー等、種々のデバイス設計が可能であること、従来の水準を超える高機能製品化に対して簡素で有効な手段を提供するものである。以下の実施例では、本発明によって高精度のパターンを有した設計が可能であること、これによって、複雑なパターン設計が要求されるデバイスへの応用が可能であることを示すものである。
実施例2;
先ず、シリコン基板を用意し、この基板の上に酢酸亜鉛を含有してなるZnO前駆体溶液をスピンコートし、500℃で熱処理して、基板上に多孔質ZnO多結晶シードからなるテンプレートを生成させた。図3(a)は、SEMにより観察した図である。ポーラスな微細構造のZnO多結晶が厚さ約80nmに達し、基板表面を覆って析出している様子が観察された。次いで、該テンプレートが全面に一様に施されてなる基板に、所定濃度に調整されて市販されている電子線レジスト(日本ゼオン(株)製、ZEP520)を、スピンコートし、ZnO多結晶テンプレートを介して、厚さ1.2μmのレジスト塗膜を基板上に形成した。
この塗膜の上に電子線リソグラフィー装置(ELIONIX(株)製、型式名:ELS5700)を用いて電子線を所定パターンに超精密に照射した。すなわち、超微細エアホールが規則的に所定パターンに多数配列してなる構造のパターンを描画し、次いで現像した。その結果、ねらい通りの正確な微細パターンを有するレジスト鋳型が形成された。作製された鋳型の設計諸元を測定したところ、高さ1200nm、エアホール半径r=100nm、格子定数a、r/a=0.17〜0.25、a=400nm、600nmの2次元周期のエアホール構造を有しており、極めて精密な超微細エアホールパターンからなるレジスト鋳型が基板上に作製された。図3(b)は、得られたレジスト鋳型をSEM観察した図であり、ZnO多結晶テンプレート上に微細なエアホールが規則的に多数穿設されて配列したエアホール型鋳型が形成され、エアホールの底部は、テンプレートが露出されている様子が確認された。
次ぎに硝酸亜鉛を採取、秤量してこれを蒸留水に溶解し、硝酸亜鉛水溶液0.1mol/lを調製した。これに結晶成長制御剤としてヘキサメチレンテトラミン(HMT;0.1mol/l)を添加して、高密度高配向性ZnO結晶を得るための出発処理溶液を調製した。
上記調製した硝酸亜鉛水溶液を密閉型反応容器に仕込み、この反応容器内の溶液中に、前記電子線リソグラフィーによって基板上に一体に作製した、いわゆる一体型エアホール型レジスト鋳型を基板と共に浸漬した。室温から容器を昇温加熱し、内部の水溶液が所定の温度に到達後、その温度のまま所定時間維持した後、氷浴で反応容器を急冷して反応を停止させた。水溶液中よりレジスト鋳型を取り出し、電子線レジストを溶解し、ZnO周期構造体を得た。得られたZnO周期構造体試料の微細構造を、SEMにより観察、評価した。その結果、反応温度75℃、反応時間1時間、反応させた結果、図3(c)、(d)に示すように、レジスト鋳型のエアホールパターンを正確に転写、反映してなる2次元周期構造のパターンを有してなる酸化亜鉛が析出し、その各微細エアホール内には高さ最大で1μmのZnO結晶ピラーが作製された。その高さは、反応温度、時間を適宜制御することにより容易に調製しうることが実験を通じて明らかとなった。その間、この化学浴析出過程においてレジストが変質し、生成物に悪影響を及ぼすようなことはなかった。なお、図3(a)〜(d)において、黒表示の線は、500nmの長さを示す。
なお、以上の実施例に示した実験とは別の実験によれば、本実施例に供したテンプレートには、基板面に垂直方向に6角形のZnO結晶が成長することが確認されているが、上記円形エアホール鋳型を用いた場合、そのような特徴的な結晶の外形がほぼ消失し、円形の外形を有するZnO結晶が、析出した。すなわち、鋳型中で成長したZnO結晶は、エアホールの形状を完全に転写した微細構造を示していることがSEM観察から明らかとなった。この得られた配向ZnO周期構造体は、X線回折パターン(図4)からは顕著なc軸配向性を示した、図2で示したと殆ど同様の回折パターンが得られことが確認された。
実施例3;
次に、シリコン基板に代え、可視紫外域で透明なシリカガラスを用いこれを基板とした。このシリカガラス基板上に、多孔質テンプレートを上記実施例2と同様の方法で施し、その上に、0.1M濃度の反応溶液を用いて、ZnO結晶膜を作製した。77℃で反応させた場合、実施例1で示したSi基板上に形成したZnO結晶膜とほぼ同じ微細構造を有する高密度柱状ZnO結晶膜がシリカガラス基板上に厚さ1μmの薄膜で生成した。この薄膜の光学的性質を調べるため、基板面に対し垂直方向の透過率スペクトルを測定した。その結果、図5に示したスペクトルが得られた。この図によると、薄膜(実線)は、広い可視域で80%以上の高い透過率を示し、80nmの厚みのテンプレート薄膜と同じ程度の透過率を示している。透過率が立ち上がる3.3eVは、ZnOのバンドギャップにほぼ対応し、配向薄膜がZnOから構成され、高い透明性を有することが明らかとなった。
実施例4;
上記実施例で示したと同様の手法によって、格子定数:400、半径100nmの円柱状ピラーが格子状に配列してなるレジスト鋳型を基板に一体に形成し、これを実施例2と同様の条件でZnO結晶を析出させた。その結果得られたZnO結晶を図6に示す。得られてなるZnO結晶は、ZnO連続層で得られ、その連続層の中に、格子定数:400nm、半径100nmの黒い穴で示されたエアーホールが格子状に形成されてなるZnOフォトニック結晶が作製された。
実施例5;
実施例2記載した条件と同様の手法で、基板に図7に示した文字パターンが形成された一体型レジスト鋳型(a)を作製した。これを実施例と同様の条件でZnO結晶を析出させた。その結果、図中(b)〜(c)に示すc軸配向した、透明なZnO結晶パターンが得られた。これによって複雑な回路設計等のデバイス設計が十分可能であることが確認された。
実施例6;
上記実施例1〜4において得られたZnO結晶は、何れも緻密な組織のZnO結晶が析出形成された。本実施例では、テンプレート形成後、実施例2で示されたZnO結晶析出条件を、亜鉛イオン含有水溶液濃度、温度条件を変えて実施した。その結果は図8に示す結果が得られた。図中(a)は、亜鉛イオン含有溶液を0.1mol濃度、昇温速度1℃/min(室温から80℃まで)、(b)は、亜鉛イオン含有溶液を0.005mol濃度、昇温速度0.3℃/min(室温から80℃まで)に設定して、ZnO結晶を析出させた結果をSEMにより観察した各図を示すものである。これらの図によるとこの実験から、濃度が高くても、昇温速度が速いと、粗な組織になること、また、濃度が低いと、昇温速度が遅くとも、粗な組織になること、すなわち、適正な濃度、昇温速度が必要であることを示している。
実施例7;
以上実施例2から5における実験は、何れも使用したレジスト鋳型は、基板上に一体に形成された一体型レジスト鋳型によってパターン生成したが、本実施例では、繰り返し使用できる分離型レジスト鋳型を作製し、この鋳型を用いて基板上にZnO結晶をパターン生成した。図9は、この手順、態様を示している。
先ず、シリコン基板を用意し、この基板の上に酢酸亜鉛を含有してなるZnO前駆体溶液をスピンコートし、500℃で熱処理して、基板上に多孔質ZnO多結晶シードからテンプレートを生成させた。この結果は、すでに図3(a)に示したとおりである。次いで、該テンプレートが全面に一様に施されてなる基板に、所定濃度に調製された市販されている電子線レジスト(日本ゼオン(株)製、ZEP520)をスピンコートし、ZnO多結晶テンプレートを介して、厚さ1.2μmのレジスト塗膜を基板上に形成した。この塗膜の上に電子線リソグラフィ装置(ELIONIX(株)製、型式名:ELS5700)を用いて電子線を所定パターンに超精密に照射した。すなわち、超微細エアホールが規則的に所定パターンに多数配列してなる構造のパターンを描画し、次いで現像した。その結果、狙い通りの正確な微細パターンを有するレジスト鋳型が形成された。ここでは、線幅3μmのラインパターンを描画した。この3μm幅のラインパターンを有するレジスト鋳型中に、PDMS(ポリジメチルシロキサン)を流し込み、十分固化させた。その後、慎重にレジスト鋳型から、PDMSを取り外し、分離型高分子鋳型とした。
一方、Si基板上にZnO多結晶シードを施し、前記スタンプ鋳型を当接し、亜鉛イオン含有水溶液を入れた反応容器に浸漬した。鋳型空間内に溶液が拡散した状態で、所定時間加熱して基板上にZnO結晶を成長させた(図9(b)〜(c))。充分に結晶が成長したところで、鋳型を外し、基板上にシード層を介してパターン化されたZnO結晶が得られた(図9(d))。
加熱温度を75℃に設定して反応した結果、得られた配向ZnOのラインパターンをSEM観察した図を図10に示す。この結果、ZnO結晶が析出している領域と、非析出領域とは明確に区分され、高い解像度のパターンが形成されたことが明らかとなった。これによって、水溶液析出法において、分離型鋳型を用いることが可能なことが明らかとなった。これによって、パターン形成に際し、量産化への道が開かれたものと思料される。上記、デバイス作製に供した鋳型は、基板上にスピンコーティングしたレジストを直接パターニングして鋳型を得ている例を示したが、鋳型の作製は、このような手段のみによって限定されるものではない。すなわち、レジスト鋳型を原型としてとしてこれに高分子材料を流し込んで鋳型を作製する方法、あるいは、シリコン基板等加工性に富んだ固体材料を選択し、これを直接加工し、例えばドライエッチング等によって加工して原型を作製し、これにPDMS等の高分子材料を流し込んでスタンプ型鋳型を得る方法等種々の方法が考えられる。本発明で意図しているZnO結晶パターンはその何れの方法、手段も採用することができることはいうまでもない。
以上の実施例に記載された実験を通じ、基板上に高配向性酸化亜鉛結晶を極めて精密に任意のパターンに制御し、デバイス設計できることが明らかとなった。勿論、パターンニング手段は、この実施例で採用した電子線リソグラフィーに限定されるものではない。例えば、光を照射するフォトリソグラフィーを始め他のリソグラフィー、パターニング手段も適用することができる。
酸化亜鉛(ZnO)は、可視で透明で高い屈折率を有する材料として知られている。ZnO薄膜のパターニング例について、従前の技術水準を示すものとして非特許文献4による提案がある。図11(a)〜(d)は、この提案によって作製された微細デバイス(カソードルミネッセンス)である。これらの図には、線の太さが太いものから細いものまで異なる線によるパターンが形成されている。図10中、(a)に示すパターンは、酸化亜鉛パターンを電子顕微鏡写真によって撮影した図(写真)であり、白い部分に酸化亜鉛がパターン化され、析出されている。同図中(b)は、その中の最小細線のパターンが示されている。この後者の図によると、200nm程度の微細粒子が個々に分散し、決して高密度、高配向とは言えない、すなわち解像度の低い粗な析出粒子で構成されていることが示されている。図中(c)は、(a)と同じ部分の蛍光機能を示すカソードルミネッセンスパターンを示し、図中(d)は、(b)と同じ部分のカソードルミネッセンスパターンで(b)同様に解像度の低い粗な析出粒子が分散して蛍光を発していることが示されている。
これに対し、本発明によるものは、実施例1〜6からも明らかなように、高密度高配向ZnO結晶が高精度パターン、高解像度で形成されていることが示されており、前記従来技術よりも優れていることが理解される。
すなわち、本発明によって、低温水溶液(化学浴)浸漬法によって、簡単に基板に対して垂直に配向し、緻密な微細構造を有して高密度にZnO結晶が、高精度にパターニングされて、析出することが明らかとなった。すなわち、酸化亜鉛結晶を高品質、超精密、高精度パターニングし、二次元的周期構造を有するフォトニック結晶デバイス設計することが可能となり、成功したものである。
以上述べたように、本発明は、基板を水溶液に浸漬するという極めて簡単な操作により、しかも低温下で柱状ZnO結晶が基板面に高密度、高配向、自己組織化的に膜状に生成し得ることを明らかにした。また、これをさらに発展させ、本発明の低温化学浴析出法による製膜技術を、高精度パターンが要求されるデバイス設計に取り入れ、有効に機能することを明らかにした。これによってデバイス設計に新しい手法を提供するもので、今後デバイス設計技術に一石を投じ、新しい設計思想によるデバイスの開発がなされるものと期待され、その意義は極めて大きいと思料される。今後は、同様の高精度パターンが要求される各種デバイスへの適用、応用が増えていくものと考えられる。本発明によって得られるZnO結晶は、何れのパターンにおいても配向性に優れており、そのため従来の配向性に劣るものに比し、その有している電気的、光学的特性が最大限に発揮され、小さくても最大の性能、機能が奏せられるものと期待される。従って、フォトニックス結晶以外にも、具体的には、微小圧電体の設計を始め、微小デバイスへの応用、設計が考えられる。何れにしても、低温浸漬法によって容易に高精度パターンが得られることが、確認されたものであることから、デバイス設計においてそれ自体極めて大きな意義が認められることに加え、従来高温処理工程を伴うこと等から、使用することのできなかった材料についても使用することが可能となったことを意味し、今後新しいデバイス設計に結びつき、その意義は大きいと考えられる。
従来のデバイス設計は、一般的に極めて高価な機器を要し、高度で複雑な操作、工程によって設計、作製されており、いわゆる低温化学浴で簡単に析出するようなプロセスでは、高精度の品質とパターン設計を要するデバイス設計には、これを採用の限りではなかったことを考慮すると、本発明のもたらした意義は極めて大である。今後デバイス技術に画期的とも言える影響をもたらすものと期待される。
本発明は、高温操作によらない、100℃以下の極めて穏やかな条件下での反応によって、c軸が基板に対して垂直に配向し、緻密な微細構造を有して生成されてなる高密度柱状ZnO結晶膜体を提供するものであるので、透明電極を始め、電子技術分野を始め、亜鉛酸化物の電気的、光学的特性を利用する技術分野において、コスト面、品質面共に優れており、大いに利用されるものと予想される。
(a)実施例1によって得られたZnO結晶膜の表面SEM像 (b)実施例1によって得られたZnO結晶膜の断面SEM像 実施例1によって得られたZnO結晶膜のXRDパター (a)実施例2で作製した多孔質テンプレート表面SEM像 (b)実施例2で作製したレジスト鋳型を示すSEM像 (c)実施例2で作製したZnO結晶SEM像 (d)実施例2で作製したZnO結晶ピラーSEM像 実施例2で作製したZnO結晶のXRDパターン 実施例3でシリカガラス基板上に作製されたZnO結晶膜の透過スペクトル 実施例4で作製された微細な格子状エアホールを内在したZnO連続層による配向フォトニック結晶のSEM像 (a)実施例5で作製された文字パターン鋳型 (b)(a)の鋳型で得られたZnO結晶パターンSEM像 (c)(b)の断面方向SEM像 実施例6に記載された昇温速度と水溶液濃度と得られる組織との関係を示すSEM像 実施例7に示す分離型鋳型(PDMSスタンプ鋳型)によるパターン形成工程図 実施例7の分離型鋳型(PDMSスタンプ鋳型)で得られたZnO結晶パターンを示すSEM像 (a)従来法ZnO結晶デバイスパターンSEM像 (b)(a)の拡大SEM像 (c)(a)と同じ従来法蛍光機能カソードルミネッセンス(d)(c)の拡大SEM像。

Claims (23)

  1. 亜鉛イオンを含有する水溶液に基板を浸漬することによって基板上に得られ、c軸が基板に対して垂直に配向し、緻密な微細構造を有して生成されてなることを特徴とする高密度柱状ZnO結晶膜体。
  2. 浸漬する基板に対して、基板面積の90%以上の高被覆面密度で膜状に生成されてなることを特徴とする請求項1記載の高密度柱状ZnO結晶膜体。
  3. 該高密度柱状ZnO結晶膜体が可視紫外域で透明である請求項1または2記載の高密度柱状ZnO結晶膜体。
  4. 亜鉛イオンを含む出発水溶液に基板を浸漬することによって、基板上にZnO結晶薄膜を自己組織的に生成する方法において、浸漬する基板に対してc軸が垂直に配向し、緻密な微細構造の高密度柱状ZnO結晶膜体が得られるように該出発水溶液中の亜鉛イオン濃度を調製することを特徴とした、高密度柱状ZnO結晶膜体の製造方法。
  5. 該高密度柱状ZnO結晶膜体を生成させる基板として、予めシードを形成した基板を用いることを特徴とする、請求項4記載の高密度柱状ZnO結晶膜体の製造方法。
  6. 予めシードを形成する基板として可視紫外域で透明な単結晶基板またはガラス基板、またはSi基板を選択した請求項5記載の高密度柱状ZnO結晶膜体の製造方法。
  7. 該出発水溶液中の亜鉛イオン濃度が、浸漬する基板に対して、ZnO単結晶薄膜が十分に生成しうる濃度に調整されている、請求項4記載の高密度柱状ZnO結晶膜体の製造方法。
  8. 該亜鉛イオン濃度として、0.07〜0.3mol/l、より好ましくは0.08〜0.15mol/lの範囲に調製することを特徴とする、請求項4又は7記載の高密度柱状ZnO結晶膜体の製造方法。
  9. 出発水溶液と基板との接触反応による該ZnO結晶膜の育成、成長を、該水溶液温度を室温〜100℃、好ましくは50℃〜90℃の温度範囲に設定した温度条件下で行うことを特徴とする、請求項4乃至8の何れか1項に記載の高密度柱状ZnO結晶膜体の製造方法。
  10. 該高密度柱状ZnO結晶膜体の製造方法における高密度柱状ZnO結晶が可視紫外域で透明である請求項4乃至9記載の何れか1項記載の高密度柱状ZnO結晶膜体の製造方法。
  11. デバイス作製基板を亜鉛イオン含有水溶液に鋳型と共に浸漬することによって基板上にZnO結晶を、c軸を基板に垂直に、自己組織的且つ高密度に生成せしめたことを特徴とする高密度高配向性ZnO結晶デバイス。
  12. 該高密度高配向性ZnO結晶デバイスにおける高密度高配向性ZnO結晶が可視紫外域で透明である、請求項11記載の高密度高配向性ZnO結晶デバイス。
  13. デバイス作製基板に所定パターンを有するレジスト鋳型を当接して亜鉛イオンを含有する水溶液に浸漬し、c軸が基板に対して垂直に配向し、緻密な微細構造を有して生成されてなる高密度柱状ZnO結晶を、該レジスト鋳型によるパターニング手段によって所定パターンに自己組織的に生成したことを特徴とする、パターニングが施されてなる高密度高配向性ZnO結晶デバイスの作製方法。
  14. 該結晶を所定パターンに形成する工程が、デバイス作製基板に鋳型が一体に形成された一体型レジスト鋳型を用い、これによってパターン形成された結晶を得ることを特徴とする、請求項13記載の高密度柱状ZnO結晶デバイスの作製方法。
  15. 該結晶を所定パターンに形成する工程が、繰り返し使用可能な分離型鋳型を用い、これをデバイス作製基板に当接して亜鉛イオンを含有する水溶液に浸漬し、これによってパターン形成された結晶を得ることを特徴とする、請求項13記載の高密度柱状ZnO結晶デバイスの作製方法。
  16. 該高密度柱状ZnO結晶パターンを形成する基板には、パターン形成前に予め亜鉛イオン含有水溶液を塗布してZnO多結晶からなるテンプレートを施しておくことを特徴とする、請求項13ないし15記載の何れか1項に記載の高密度柱状ZnO結晶デバイスの作製方法。
  17. 該基板を浸漬し、パターン形成する際に使用される亜鉛イオン含有水溶液を、亜鉛イオン濃度0.07〜0.3mol/l、好ましくは0.08〜0.15mol/lの範囲に調製したことを特徴とする、請求項13乃至16記載の何れか1項記載の高精度パターンを有してなる高密度柱状ZnO結晶デバイスの製造方法。
  18. 該高密度高配向性ZnO結晶デバイスの作製方法における高密度高配向性ZnO結晶が可視紫外域で透明である、請求項13乃至17記載の何れか1項記載の高密度高配向性ZnO結晶デバイスの製造方法。
  19. 基体にレジストをスピンコートし、光、X線あるいは電子線をパターニング照射し、次いで現像して基体上に高精度パターンを有するレジスト鋳型を形成したことを特徴とした、水溶液析出法によるデバイス作製に使用するレジスト鋳型。
  20. 基体上に高精度パターンを有するレジスト鋳型を形成後、基体からレジスト鋳型を剥離して分離型鋳型としてなる請求項19記載のレジスト鋳型。
  21. 基体としてデバイス作製基板を使用し、基板と鋳型とが一体に形成された一体型鋳型とする、請求項19記載のレジスト鋳型。
  22. レジスト鋳型へ高分子材料を流し込み、レジスト微細パターンを高分子材料に転写することによって得ることを特徴とした、水溶液析出法によるデバイス作製に使用する高分子鋳型。
  23. 無機材料又は金属材料からなる固体材料を超微細加工してデバイス設計用原型鋳型を得、これに高分子材料をキャスティングして得られてなる、水溶液析出法によるデバイス作製に使用する高分子鋳型。
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