JP2004315310A - 水素供給装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】水素の供給を高効率で実施できる水素供給装置を提供する。
【解決手段】芳香族化合物の水素化誘導体30の脱水素化反応を実施することにより、水素36の供給を行うことのできる水素供給装置1である。水素供給装置1は、芳香族化合物の水素化誘導体30を貯蔵する原料貯蔵タンク2、反応装置3、気液分離装置4、コンプレッサ7、水素貯蔵タンク8を具備している。コンプレッサ7は、反応装置3の下流側に配置されており、反応装置3から発生した水素36の水素ガス利用機器60に対する供給動作を実施すると共に、この供給動作によって反応装置3内の圧力P3を低下できるように構成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】芳香族化合物の水素化誘導体30の脱水素化反応を実施することにより、水素36の供給を行うことのできる水素供給装置1である。水素供給装置1は、芳香族化合物の水素化誘導体30を貯蔵する原料貯蔵タンク2、反応装置3、気液分離装置4、コンプレッサ7、水素貯蔵タンク8を具備している。コンプレッサ7は、反応装置3の下流側に配置されており、反応装置3から発生した水素36の水素ガス利用機器60に対する供給動作を実施すると共に、この供給動作によって反応装置3内の圧力P3を低下できるように構成されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素供給装置に関し、特に、燃焼電池に好適な水素供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、世界のエネルギー消費は一貫して増加しており、エネルギー利用に伴って排出される有害物質が、地球規模での環境破壊の一因となっている。このような背景から、燃料電池への関心が高まっている。燃料電池は、水素と酸素を電気化学的に反応させて水と共に電気エネルギーを発生することから、地球温暖化や大気汚染の防止に貢献できるものと考えられている。
【0003】
燃料電池において必要とされる水素の供給技術について種々の検討がなされており、例えば、(i)液化水素タンク等に水素を貯蔵し、必要に応じて液化水素を気化させて水素を供給する方法、(ii)メタノール,液化天然ガス,ガソリン等の液体燃料を水素前駆体として貯蔵し、改質によって水素ガスを供給する方法が知られている。
上記(i),(ii)の方法によれば、水素又は水素前駆体が液体で貯蔵されることから、気体で貯蔵される場合と比較して、貯蔵容量に対する水素ガスの供給量が大きいという利点を有する。
しかし、上記(i)の方法では、水素を冷却・圧縮して液化水素とするために、さらには、低温状態を維持するために、多大なエネルギーが必要である。
一方、上記(ii)の液体燃料を改質して水素を得る方法では、本質的に、水素発生に炭酸ガス(二酸化炭素)の発生を伴うとともに、燃料電池の電極に悪影響を及ぼす一酸化炭素ガスを副生成物として含有している。
【0004】
上記問題を解決するために、芳香族化合物の水素化誘導体水の脱水素化を利用した水素貯蔵・供給システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。このシステムは、芳香族化合物に水素付加することにより水素化誘導体として貯蔵し、そして、必要時に、この水素化誘導体の脱水素化反応を行い、水素を取り出すようにしたものである。
【0005】
このシステムによれば、芳香族化合物及びその水素化誘導体は、常温で液体であることから、貯蔵・輸送に要するエネルギーが非常に少なく、また、脱水素反応生成物中に含まれる“芳香族化合物及びその水素化誘導体”と“水素”との分離を確実にかつ容易に実施することができ、しかも、水素ガスの発生に際して、本質的に二酸化炭素の発生を伴なわないとともに、一酸化炭素も原理的には発生しない、という利点を有している。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−274801公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記水素貯蔵・供給システムにおいて、芳香族化合物の水素化誘導体の脱水素化反応は、芳香族化合物の水素化誘導体を、反応装置内に設けられた加熱状態の触媒と接触させることによってなされる。
より具体的には、特許文献1には、原料貯蔵手段と反応装置との間にポンプ等の原料供給手段を配置し、原料貯蔵手段に貯蔵された原料(芳香族化合物の水素化誘導体)を原料供給手段により反応装置へ圧送して触媒と接触させる技術が記載されている。
【0008】
ここでは、反応装置内の圧力が低いほど、芳香族化合物の水素化誘導体の脱水素化反応の反応率は高く、単位量当たりの原料からより多量の水素を発生させることができる。しかしながら、特許文献1に開示されている水素貯蔵・供給システムにおいては、反応装置への原料の供給は、原料貯蔵手段と反応装置との間に配置された原料供給手段によって、原料貯蔵手段から原料を圧送することにより行われるため、脱水素化反応が行われている反応装置の圧力は、原料供給手段の作動に伴って高くなる傾向となる。
【0009】
反応装置の圧力を低下させて脱水素化反応を活発に行わせるために、反応装置の下流側を大気に開放したとしても、反応装置の圧力が充分に低くならないせいか、水素発生効率は不十分なものとなっていた。
【0010】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、水素の供給を高効率で実施できる水素供給装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る水素供給装置は、芳香族化合物の水素化誘導体の脱水素化反応を実施することにより、水素の供給を行うことのできる水素供給装置であって、芳香族化合物の水素化誘導体の脱水素化反応を行う反応装置と、“反応装置から発生したガスの水素ガス利用機器及び/又は水素貯蔵タンクに対する供給動作を実施すると共に、供給動作によって反応装置内の圧力を低下できる供給手段”とを備えている。
【0012】
このような構成によれば、芳香族化合物の水素化誘導体の脱水素化反応を行う反応装置と、“反応装置から発生したガスの水素ガス利用機器及び/又は水素貯蔵タンクに対する供給動作を実施すると共に、供給動作によって反応装置内の圧力を低下できる供給手段”とを備えたので、反応装置内の圧力を低下させながら、反応装置で発生したガスを水素ガス利用機器及び/又は水素貯蔵タンクへ供給できる。これにより、前記供給手段を有さない場合と比較して、単位量当たりの原料からより多量の水素を発生させることができるので、水素の供給を高効率で実施できる。
【0013】
請求項2に係る水素供給装置は、前記水素供給装置において、芳香族化合物の水素化誘導体を貯蔵する原料貯蔵手段を具備するとともに、供給手段の供給動作により、反応装置の圧力が原料貯蔵手段の圧力よりも低くなって、原料貯蔵手段に貯蔵された芳香族化合物の水素化誘導体が反応装置に入り込むように構成されている。
【0014】
このような構成によれば、反応装置で発生したガスの供給手段による供給動作により、反応装置の圧力が原料貯蔵手段の圧力よりも低くなるように構成したので、供給手段による供給動作に伴って反応装置と原料貯蔵手段との間に圧力差が生じる。従って、該圧力差を利用して原料貯蔵手段に貯蔵されている芳香族化合物の水素化誘導体を反応装置に供給することができる。
【0015】
よって、芳香族化合物の水素化誘導体を反応装置に供給するための特別の供給手段を設けることなく、単に反応装置で発生したガスを水素ガス利用機器又は水素貯蔵タンクに供給する供給動作を行うだけで原料である芳香族化合物の水素化誘導体を原料貯蔵手段から反応装置へ連続して供給することができ、水素供給装置の構造を簡単にすることができる。またこれによって、水素供給装置の製造費用を低減できるとともに、故障発生率を低減させ、メンテナンスが容易となる。
【0016】
請求項3に係る水素供給装置は、前記反応装置の内部と他の部位及び外部との圧力差を制御できる圧力調整手段を具備している。このような構成によれば、“芳香族化合物の水素化誘導体の反応装置への供給速度”及び/又は“反応装置からの水素の排出速度”を所望の値に精度良く調整できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下本発明に係る水素供給装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態である水素供給装置の模式図である。
図1に示すように、水素供給装置1は、原料貯蔵手段の一例である原料貯蔵タンク2、反応装置3、気液分離装置4、廃液回収タンク5、原料供給ポンプ6、供給手段の一例であるコンプレッサ7、及び、水素貯蔵タンク8とを有している。
【0018】
また、原料貯蔵タンク2は、原料である芳香族化合物の水素化誘導体30(以下、単に“水素化誘導体”ともいう)を貯蔵するためのものであって、原料供給ポンプ6と配管21によって接続されている。原料供給ポンプ6は、配管22によって開閉バルブ9に接続され、更に配管23によって反応装置3内に配置されたノズル31に接続されている。そして、開閉バルブ9を開き、原料供給ポンプ6を作動させることにより、原料貯蔵タンク2に貯蔵されている水素化誘導体30をノズル31に供給できるように構成されている。
【0019】
原料貯蔵タンク2は、配管24を介して開閉バルブ10に接続されており、開閉バルブ10を開くことによって原料貯蔵タンク2を外部と連通させて大気に開放できるようになっている。更に原料貯蔵タンク2には、圧力計11が設けられ、原料貯蔵タンク2内の圧力P1を計測することができる。また、開閉バルブ9と反応装置3とを接続する配管23には、圧力計12が設けられ、原料供給ポンプ6によって反応装置3に供給される芳香族化合物の水素化誘導体30の圧力P2を計測できるようになっている。
【0020】
反応装置3には、金属が担持体に担持されてなる触媒(金属担持触媒)(図示せず)、該触媒を加熱するための誘導加熱装置(図示せず)、及びノズル31が設けられている。前記触媒金属としては、脱水素化反応を達成できるものであればどのようなものでもよく、例えば、金属成分として、ニッケル,パラジウム,白金,ロジウム,イリジウム,ルテニウム,モリブデン,レニウム,タングステン,バナジウム,オスミニウム,クロム,コバルト,鉄等を用いることができる。また、これらを2種類以上合金化したものが、中でも、脱水素化反応に対する活性の高さから、白金族の金属(白金,パラジウム,ロジウム,ルテニウム)を用いることがより好ましい。
【0021】
担持体は、電磁誘導方式による高周波誘導加熱がなされるよう、導電体を含有している。導電体を含有する担持体としては、活性炭,カーボンナノチューブ,ステンレス等の金属多孔体やハニカム状金属等の導電体からなるものや、モレキュラシーブ,ゼオライト,シリカゲル,アルミナ等の非導電体と一般的な導電体(ステンレス等)とのブレンド物などを挙げることができる。
【0022】
誘導加熱装置は、誘導加熱コイルと、これと電気的に接続して誘導加熱コイルに高周波電流を流すことのできる高周波電流発生装置とから構成されており、電磁誘導方式によって金属担持触媒を高周波誘導加熱するようになっている。
【0023】
ノズル31は、金属担持触媒に対向して配置されており、原料供給ポンプ6によって反応装置3に供給された水素化誘導体30をノズル31から噴射させて金属担持触媒に吹き付けることにより、脱水素化反応させて水素36を含む生成物35を生成するように構成されている。
【0024】
また、反応装置3には配管32が接続されており、配管32の他端には気液分離装置4が接続されている。さらに、反応装置3には、圧力計33が配置されており、反応装置3内の圧力P3を測定できるようになっている。
【0025】
気液分離装置4は、脱水素化反応による生成物35を冷却して生成物35を水素36と液体成分38とに分離するためのものであり、その方式は特に限定されないが、水冷循環式,空冷式,流水による冷却(循環させない)等、公知の冷却手段を用いることができる。冷却手段に使用される冷媒としては、水,エチレングリコール,ジエチレングリコール等を用いることができる。
【0026】
気液分離装置4には、開閉バルブ51との間に配管41が接続され、更に開閉バルブ51は配管52を介して廃液回収タンク5と接続しており、気液分離装置4で生成物35から分離された液体成分38を廃液回収タンク5に回収し、貯蔵するように構成されている。また、廃液回収タンク5には、配管53を介して開閉バルブ54が接続されており、開閉バルブ54を開くことにより廃液回収タンク5を外部に連通させて大気に開放できるようになっている。
【0027】
また、気液分離装置4は、配管42によってコンプレッサ7に接続しており、コンプレッサ7は配管81を介して水素貯蔵タンク8に接続されている。これにより、気液分離装置4で分離された水素36をコンプレッサ7で水素貯蔵タンク8に圧送して貯蔵できるように構成されている。水素貯蔵タンク8には、圧力計85が配置されており、水素貯蔵タンク8内の圧力P4を測定できるようになっている。
【0028】
水素貯蔵タンク8には、配管82を介して開閉バルブ83が接続されており、該開閉バルブ83は、更に配管84によって水素ガス利用機器60(例えば燃料電池)に接続されて水素ガス36が供給されるようになっている。また、配管84に配置された圧力計86により、水素ガス利用機器60に供給される水素ガス36の圧力P5を測定できるようになっている。
【0029】
なお、開閉バルブ9,10,51,54,83は、反応装置の内部と他の部位及び外部との圧力差を制御できる圧力調整手段としての機能を有しており、開閉バルブ9,10,51,54,83の開閉度合い、及び、コンプレッサー7,ポンプの作動条件を調整することによって、“芳香族化合物の水素化誘導体の反応装置への供給速度”及び/又は“反応装置からの水素の排出速度”を所望の値に精度良く調整できる。
【0030】
次に、水素供給装置1を用いた水素供給方法について、前記した図1に基づいて説明する。
原料貯蔵タンク2に、水素化誘導体30を入れる。水素化誘導体30としては、デカリン,1メチルデカリン、シクロヘキサン,メチルシクロヘキサン,ジメチルシクロヘキサン,トリメチルシクロヘキサン,テトラリン等を挙げることができ、単独物あるいは2種類以上の混合物として使用できる。単独物及び混合物は、常温で液状であるのが好ましい。
1メチルデカリンとデカリンの混合液の比率として、1:0.2〜20、好ましくは1:0.3〜3が例示される。この範囲であると、反応液の1メチルナフタレンとナフタレンが常温で液状を保つことができ、取り扱いやすい。
尚、以下の説明においては、水素化誘導体30として1メチルデカリンを用いた例について説明する。
【0031】
次いで、開閉バルブ9,10,51を開いた後、原料供給ポンプ6を作動させることによって、1メチルデカリン(水素化誘導体)30を反応装置3に導入し、ノズル31から金属担持触媒に向けて噴射させる。例えば、ステンレスに白金を担持させて形成された金属担持触媒は、誘導加熱装置によって200℃〜500℃から選択された所定の温度、例えば350℃に加熱されている。反応装置3では、1メチルデカリン30と金属担持触媒とが接触して、1メチルデカリン30が水素36と1メチルナフタレンとに分解する“水素化誘導体の脱水素化反応”が進行し、水素36、未反応により残った1メチルデカリン30及び1メチルナフタレンとが混合した脱水素化反応後の生成物35が生成される。
【0032】
次に、コンプレッサ7を作動させると、反応装置3で生成された脱水素化反応後の生成物35は、配管32を経て、気液分離装置4に導入されて冷却され、水素36と液体成分38(1メチルナフタレンと1メチルデカリン30との混合物)とに分離する。気液分離装置4にて分離された液体成分38は、配管41、開閉バルブ51を介して廃液回収タンク5に回収される。一方、水素36は、コンプレッサ7に吸引されて配管42,81を介して水素貯蔵タンク8に圧送されて貯蔵される。
【0033】
以上のようにして取り出され、水素貯蔵タンク8に貯蔵された水素36は、必要時に開閉バルブ83を開くことにより、配管82,84を介して燃料電池等の水素ガス利用機器60へ供給される。
【0034】
水素供給装置1の運転時には、水素化誘導体の一例である1メチルデカリン30は、原料供給ポンプ6によって原料貯蔵タンク2から反応装置3に圧送され、また脱水素化反応後の生成物35は、コンプレッサ7によって反応装置3から吸引されるので、定常運転時における各部の圧力関係は、P2≧P1,かつP4>P3となっている。なお、圧力計85と圧力計86との間にコンプレッサ(図示せず)が存在していてもよい。
【0035】
水素ガス利用機器60の一例として燃料電池自動車の水素タンク(図示せず)に水素36を供給する場合について説明する。燃料電池自動車の水素タンクへの充填圧を、例えば35MPaとすると、燃料電池自動車の水素タンクへ水素36を供給する水素貯蔵タンク8の圧力P4は、これより高圧とする必要があり、コンプレッサ7によって、例えば40MPaまで圧縮されて貯蔵されている。
【0036】
コンプレッサ7が作動して水素36の水素ガス利用機器60への供給動作が行われると、コンプレッサ7より上流側の圧力は低下し、例えば0.05MPa程度の低圧となる。即ち、反応装置3の圧力P3は、0.05MPa程度の低圧となるので、脱水素化反応はこの低圧の下で行われる。水素供給装置1にコンプレッサ7が配置されずに常圧もしくは加圧状態で脱水素化反応が行われる場合と比較して、脱水素化反応は、より効率的に行われ、単位量当たりの原料(水素化誘導体30)から、多量の水素36を発生させることができるので、水素36の供給を高効率で実施できる。
【0037】
なお、水素貯蔵タンク8の圧力P4によって反応装置3の圧力P3も影響される虞がある。この場合、圧力調整弁や定圧弁等を反応装置3とコンプレッサ7との間のいずれかに設置して、反応装置3の圧力P3を一定圧力に制御し、該一定圧下で脱水素化反応を行わせることにより、安定した脱水素化反応を行わせるようにすることもできる。
【0038】
また、水素36を水素供給装置1から直接、水素ガス利用機器60に供給する場合には、開閉バルブ83を開いた状態のまま、前述した水素化誘導体30の脱水素化反応を行わせることによって、水素36を一時的に水素貯蔵タンク8に貯蔵することなく、直接使用することができる。尚、この場合には水素貯蔵タンク8を設けず、コンプレッサ7に接続された配管81を水素ガス利用機器60への配管として構成するようにしてもよい。
【0039】
(第2実施形態)
次に、水素供給装置の第2実施形態を図2を参照して説明する。図2は水素供給装置の模式図である。
第2実施形態の水素供給装置50は、第1実施形態の水素供給装置1から原料供給ポンプ6が削除されるとともに、配管21が原料貯蔵タンク2に貯蔵された水素化誘導体の中まで延びた構成となっており、それ以外は水素供給装置1の構成と同一である。
その他の部分については、本発明の第1実施形態の水素供給装置1と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0040】
次に、水素供給装置50を用いた水素供給方法について、図2に基づいて説明する。原料貯蔵タンク2に、水素化誘導体の一例である1メチルデカリン30を入れる。次いで、開閉バルブ10を開いて原料貯蔵タンク2を外部に連通させ、原料貯蔵タンク2の圧力P1を一定圧となるようにする。開閉バルブ9,51を開いた後、コンプレッサ7を作動させると、コンプレッサ7の上流側(反応装置3を含む)の圧力は大気圧未満に低下し、原料貯蔵タンク2の圧力P1と反応装置3の圧力P3との間に圧力差が生じ、P1>P3となる。
【0041】
原料貯蔵タンク2に貯蔵されている1メチルデカリン30は、該圧力差によって反応装置3に供給され、ノズル31から金属担持触媒に向かって噴射する。そして、1メチルデカリン30と金属担持触媒とが接触して“水素化誘導体の脱水素化反応”が進行し、水素36、1メチルデカリン30及び1メチルナフタレンとが混合した脱水素化反応後の生成物35が生成される。
【0042】
反応装置3で生成された脱水素化反応後の生成物35は、配管32を経て、気液分離装置4に導入されて冷却され、水素36と液体成分38(1メチルナフタレンと1メチルデカリン30との混合物)とに分離する。気液分離装置4にて分離された液体成分38は、配管41、開閉バルブ51を介して廃液回収タンク5に回収される。一方、水素36は、気液分離装置4からコンプレッサ7によって吸引され、配管42,81を介して水素貯蔵タンク8に圧送されて貯蔵される。
【0043】
以上のようにして取り出され、水素貯蔵タンク8に貯蔵された水素36は、必要時に開閉バルブ83を開いて、配管82,84を介して燃料電池等の水素ガス利用機器60へ供給し、使用することが可能となる。
【0044】
水素供給装置50の定常運転時における各部の圧力関係は、P1≧P2>P3,かつP4>P1,かつP4>P5となっている。すなわち、反応装置3の圧力P3は、原料貯蔵タンク2の圧力P1より低圧となっているので、原料貯蔵タンク2に貯蔵されている水素化誘導体30は圧力差により反応装置3へ送り出されて供給される。よって、水素供給装置50においては、水素化誘導体30を反応装置3へ供給するための原料供給ポンプ6を設ける必要がない。従って、水素供給装置50の構造を簡単にすることができ、またこれによって水素供給装置50の故障の発生率を低下させると共に、メンテナンスが容易になる。
【0045】
更に、“水素化誘導体の脱水素化反応”は、充分に低下した圧力P3の下で行われるので、反応装置3内の圧力を低下させない場合と比較して、脱水素化反応はより効率的に行われ、単位量当たりの原料(水素化誘導体30)から、多量の水素36を発生させることができるので、水素36の供給を高効率で実施できる。
【0046】
水素ガス利用機器60への水素36の供給は、前記第1実施形態と同様に行われるので、説明を省略する。
【0047】
なお、反応装置3、コンプレッサ7間の配管に圧力調整弁を設けて反応装置3の圧力P3を制御するようにすれば、原料貯蔵タンク2から反応装置3へ供給される1メチルデカリン30の流量(供給量)や、水素36の発生量を任意に制御することもできる。
【0048】
本発明の水素供給装置は、前述した実施形態に限定されるものではなく、原料貯蔵タンク,反応装置,気液分離装置、廃液回収タンク,原料供給ポンプ,コンプレッサ、水素貯蔵タンク等の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を実施できるものであれば、適宜な変形、改良が可能であり、限定されない。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、水素の供給を高効率で実施できる水素供給装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る水素供給装置を示す模式図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る水素供給装置を示す模式図である。
【符号の説明】
1,50 水素供給装置
2 原料貯蔵タンク(原料貯蔵手段)
3 反応装置
7 コンプレッサ(供給手段)
8 水素貯蔵タンク
9,10,51,54,83 開閉バルブ(圧力調整手段)
30 1メチルデカリン(芳香族化合物の水素化誘導体)
36 水素
60 水素ガス利用機器
P3 反応装置内の圧力
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素供給装置に関し、特に、燃焼電池に好適な水素供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、世界のエネルギー消費は一貫して増加しており、エネルギー利用に伴って排出される有害物質が、地球規模での環境破壊の一因となっている。このような背景から、燃料電池への関心が高まっている。燃料電池は、水素と酸素を電気化学的に反応させて水と共に電気エネルギーを発生することから、地球温暖化や大気汚染の防止に貢献できるものと考えられている。
【0003】
燃料電池において必要とされる水素の供給技術について種々の検討がなされており、例えば、(i)液化水素タンク等に水素を貯蔵し、必要に応じて液化水素を気化させて水素を供給する方法、(ii)メタノール,液化天然ガス,ガソリン等の液体燃料を水素前駆体として貯蔵し、改質によって水素ガスを供給する方法が知られている。
上記(i),(ii)の方法によれば、水素又は水素前駆体が液体で貯蔵されることから、気体で貯蔵される場合と比較して、貯蔵容量に対する水素ガスの供給量が大きいという利点を有する。
しかし、上記(i)の方法では、水素を冷却・圧縮して液化水素とするために、さらには、低温状態を維持するために、多大なエネルギーが必要である。
一方、上記(ii)の液体燃料を改質して水素を得る方法では、本質的に、水素発生に炭酸ガス(二酸化炭素)の発生を伴うとともに、燃料電池の電極に悪影響を及ぼす一酸化炭素ガスを副生成物として含有している。
【0004】
上記問題を解決するために、芳香族化合物の水素化誘導体水の脱水素化を利用した水素貯蔵・供給システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。このシステムは、芳香族化合物に水素付加することにより水素化誘導体として貯蔵し、そして、必要時に、この水素化誘導体の脱水素化反応を行い、水素を取り出すようにしたものである。
【0005】
このシステムによれば、芳香族化合物及びその水素化誘導体は、常温で液体であることから、貯蔵・輸送に要するエネルギーが非常に少なく、また、脱水素反応生成物中に含まれる“芳香族化合物及びその水素化誘導体”と“水素”との分離を確実にかつ容易に実施することができ、しかも、水素ガスの発生に際して、本質的に二酸化炭素の発生を伴なわないとともに、一酸化炭素も原理的には発生しない、という利点を有している。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−274801公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記水素貯蔵・供給システムにおいて、芳香族化合物の水素化誘導体の脱水素化反応は、芳香族化合物の水素化誘導体を、反応装置内に設けられた加熱状態の触媒と接触させることによってなされる。
より具体的には、特許文献1には、原料貯蔵手段と反応装置との間にポンプ等の原料供給手段を配置し、原料貯蔵手段に貯蔵された原料(芳香族化合物の水素化誘導体)を原料供給手段により反応装置へ圧送して触媒と接触させる技術が記載されている。
【0008】
ここでは、反応装置内の圧力が低いほど、芳香族化合物の水素化誘導体の脱水素化反応の反応率は高く、単位量当たりの原料からより多量の水素を発生させることができる。しかしながら、特許文献1に開示されている水素貯蔵・供給システムにおいては、反応装置への原料の供給は、原料貯蔵手段と反応装置との間に配置された原料供給手段によって、原料貯蔵手段から原料を圧送することにより行われるため、脱水素化反応が行われている反応装置の圧力は、原料供給手段の作動に伴って高くなる傾向となる。
【0009】
反応装置の圧力を低下させて脱水素化反応を活発に行わせるために、反応装置の下流側を大気に開放したとしても、反応装置の圧力が充分に低くならないせいか、水素発生効率は不十分なものとなっていた。
【0010】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、水素の供給を高効率で実施できる水素供給装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る水素供給装置は、芳香族化合物の水素化誘導体の脱水素化反応を実施することにより、水素の供給を行うことのできる水素供給装置であって、芳香族化合物の水素化誘導体の脱水素化反応を行う反応装置と、“反応装置から発生したガスの水素ガス利用機器及び/又は水素貯蔵タンクに対する供給動作を実施すると共に、供給動作によって反応装置内の圧力を低下できる供給手段”とを備えている。
【0012】
このような構成によれば、芳香族化合物の水素化誘導体の脱水素化反応を行う反応装置と、“反応装置から発生したガスの水素ガス利用機器及び/又は水素貯蔵タンクに対する供給動作を実施すると共に、供給動作によって反応装置内の圧力を低下できる供給手段”とを備えたので、反応装置内の圧力を低下させながら、反応装置で発生したガスを水素ガス利用機器及び/又は水素貯蔵タンクへ供給できる。これにより、前記供給手段を有さない場合と比較して、単位量当たりの原料からより多量の水素を発生させることができるので、水素の供給を高効率で実施できる。
【0013】
請求項2に係る水素供給装置は、前記水素供給装置において、芳香族化合物の水素化誘導体を貯蔵する原料貯蔵手段を具備するとともに、供給手段の供給動作により、反応装置の圧力が原料貯蔵手段の圧力よりも低くなって、原料貯蔵手段に貯蔵された芳香族化合物の水素化誘導体が反応装置に入り込むように構成されている。
【0014】
このような構成によれば、反応装置で発生したガスの供給手段による供給動作により、反応装置の圧力が原料貯蔵手段の圧力よりも低くなるように構成したので、供給手段による供給動作に伴って反応装置と原料貯蔵手段との間に圧力差が生じる。従って、該圧力差を利用して原料貯蔵手段に貯蔵されている芳香族化合物の水素化誘導体を反応装置に供給することができる。
【0015】
よって、芳香族化合物の水素化誘導体を反応装置に供給するための特別の供給手段を設けることなく、単に反応装置で発生したガスを水素ガス利用機器又は水素貯蔵タンクに供給する供給動作を行うだけで原料である芳香族化合物の水素化誘導体を原料貯蔵手段から反応装置へ連続して供給することができ、水素供給装置の構造を簡単にすることができる。またこれによって、水素供給装置の製造費用を低減できるとともに、故障発生率を低減させ、メンテナンスが容易となる。
【0016】
請求項3に係る水素供給装置は、前記反応装置の内部と他の部位及び外部との圧力差を制御できる圧力調整手段を具備している。このような構成によれば、“芳香族化合物の水素化誘導体の反応装置への供給速度”及び/又は“反応装置からの水素の排出速度”を所望の値に精度良く調整できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下本発明に係る水素供給装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態である水素供給装置の模式図である。
図1に示すように、水素供給装置1は、原料貯蔵手段の一例である原料貯蔵タンク2、反応装置3、気液分離装置4、廃液回収タンク5、原料供給ポンプ6、供給手段の一例であるコンプレッサ7、及び、水素貯蔵タンク8とを有している。
【0018】
また、原料貯蔵タンク2は、原料である芳香族化合物の水素化誘導体30(以下、単に“水素化誘導体”ともいう)を貯蔵するためのものであって、原料供給ポンプ6と配管21によって接続されている。原料供給ポンプ6は、配管22によって開閉バルブ9に接続され、更に配管23によって反応装置3内に配置されたノズル31に接続されている。そして、開閉バルブ9を開き、原料供給ポンプ6を作動させることにより、原料貯蔵タンク2に貯蔵されている水素化誘導体30をノズル31に供給できるように構成されている。
【0019】
原料貯蔵タンク2は、配管24を介して開閉バルブ10に接続されており、開閉バルブ10を開くことによって原料貯蔵タンク2を外部と連通させて大気に開放できるようになっている。更に原料貯蔵タンク2には、圧力計11が設けられ、原料貯蔵タンク2内の圧力P1を計測することができる。また、開閉バルブ9と反応装置3とを接続する配管23には、圧力計12が設けられ、原料供給ポンプ6によって反応装置3に供給される芳香族化合物の水素化誘導体30の圧力P2を計測できるようになっている。
【0020】
反応装置3には、金属が担持体に担持されてなる触媒(金属担持触媒)(図示せず)、該触媒を加熱するための誘導加熱装置(図示せず)、及びノズル31が設けられている。前記触媒金属としては、脱水素化反応を達成できるものであればどのようなものでもよく、例えば、金属成分として、ニッケル,パラジウム,白金,ロジウム,イリジウム,ルテニウム,モリブデン,レニウム,タングステン,バナジウム,オスミニウム,クロム,コバルト,鉄等を用いることができる。また、これらを2種類以上合金化したものが、中でも、脱水素化反応に対する活性の高さから、白金族の金属(白金,パラジウム,ロジウム,ルテニウム)を用いることがより好ましい。
【0021】
担持体は、電磁誘導方式による高周波誘導加熱がなされるよう、導電体を含有している。導電体を含有する担持体としては、活性炭,カーボンナノチューブ,ステンレス等の金属多孔体やハニカム状金属等の導電体からなるものや、モレキュラシーブ,ゼオライト,シリカゲル,アルミナ等の非導電体と一般的な導電体(ステンレス等)とのブレンド物などを挙げることができる。
【0022】
誘導加熱装置は、誘導加熱コイルと、これと電気的に接続して誘導加熱コイルに高周波電流を流すことのできる高周波電流発生装置とから構成されており、電磁誘導方式によって金属担持触媒を高周波誘導加熱するようになっている。
【0023】
ノズル31は、金属担持触媒に対向して配置されており、原料供給ポンプ6によって反応装置3に供給された水素化誘導体30をノズル31から噴射させて金属担持触媒に吹き付けることにより、脱水素化反応させて水素36を含む生成物35を生成するように構成されている。
【0024】
また、反応装置3には配管32が接続されており、配管32の他端には気液分離装置4が接続されている。さらに、反応装置3には、圧力計33が配置されており、反応装置3内の圧力P3を測定できるようになっている。
【0025】
気液分離装置4は、脱水素化反応による生成物35を冷却して生成物35を水素36と液体成分38とに分離するためのものであり、その方式は特に限定されないが、水冷循環式,空冷式,流水による冷却(循環させない)等、公知の冷却手段を用いることができる。冷却手段に使用される冷媒としては、水,エチレングリコール,ジエチレングリコール等を用いることができる。
【0026】
気液分離装置4には、開閉バルブ51との間に配管41が接続され、更に開閉バルブ51は配管52を介して廃液回収タンク5と接続しており、気液分離装置4で生成物35から分離された液体成分38を廃液回収タンク5に回収し、貯蔵するように構成されている。また、廃液回収タンク5には、配管53を介して開閉バルブ54が接続されており、開閉バルブ54を開くことにより廃液回収タンク5を外部に連通させて大気に開放できるようになっている。
【0027】
また、気液分離装置4は、配管42によってコンプレッサ7に接続しており、コンプレッサ7は配管81を介して水素貯蔵タンク8に接続されている。これにより、気液分離装置4で分離された水素36をコンプレッサ7で水素貯蔵タンク8に圧送して貯蔵できるように構成されている。水素貯蔵タンク8には、圧力計85が配置されており、水素貯蔵タンク8内の圧力P4を測定できるようになっている。
【0028】
水素貯蔵タンク8には、配管82を介して開閉バルブ83が接続されており、該開閉バルブ83は、更に配管84によって水素ガス利用機器60(例えば燃料電池)に接続されて水素ガス36が供給されるようになっている。また、配管84に配置された圧力計86により、水素ガス利用機器60に供給される水素ガス36の圧力P5を測定できるようになっている。
【0029】
なお、開閉バルブ9,10,51,54,83は、反応装置の内部と他の部位及び外部との圧力差を制御できる圧力調整手段としての機能を有しており、開閉バルブ9,10,51,54,83の開閉度合い、及び、コンプレッサー7,ポンプの作動条件を調整することによって、“芳香族化合物の水素化誘導体の反応装置への供給速度”及び/又は“反応装置からの水素の排出速度”を所望の値に精度良く調整できる。
【0030】
次に、水素供給装置1を用いた水素供給方法について、前記した図1に基づいて説明する。
原料貯蔵タンク2に、水素化誘導体30を入れる。水素化誘導体30としては、デカリン,1メチルデカリン、シクロヘキサン,メチルシクロヘキサン,ジメチルシクロヘキサン,トリメチルシクロヘキサン,テトラリン等を挙げることができ、単独物あるいは2種類以上の混合物として使用できる。単独物及び混合物は、常温で液状であるのが好ましい。
1メチルデカリンとデカリンの混合液の比率として、1:0.2〜20、好ましくは1:0.3〜3が例示される。この範囲であると、反応液の1メチルナフタレンとナフタレンが常温で液状を保つことができ、取り扱いやすい。
尚、以下の説明においては、水素化誘導体30として1メチルデカリンを用いた例について説明する。
【0031】
次いで、開閉バルブ9,10,51を開いた後、原料供給ポンプ6を作動させることによって、1メチルデカリン(水素化誘導体)30を反応装置3に導入し、ノズル31から金属担持触媒に向けて噴射させる。例えば、ステンレスに白金を担持させて形成された金属担持触媒は、誘導加熱装置によって200℃〜500℃から選択された所定の温度、例えば350℃に加熱されている。反応装置3では、1メチルデカリン30と金属担持触媒とが接触して、1メチルデカリン30が水素36と1メチルナフタレンとに分解する“水素化誘導体の脱水素化反応”が進行し、水素36、未反応により残った1メチルデカリン30及び1メチルナフタレンとが混合した脱水素化反応後の生成物35が生成される。
【0032】
次に、コンプレッサ7を作動させると、反応装置3で生成された脱水素化反応後の生成物35は、配管32を経て、気液分離装置4に導入されて冷却され、水素36と液体成分38(1メチルナフタレンと1メチルデカリン30との混合物)とに分離する。気液分離装置4にて分離された液体成分38は、配管41、開閉バルブ51を介して廃液回収タンク5に回収される。一方、水素36は、コンプレッサ7に吸引されて配管42,81を介して水素貯蔵タンク8に圧送されて貯蔵される。
【0033】
以上のようにして取り出され、水素貯蔵タンク8に貯蔵された水素36は、必要時に開閉バルブ83を開くことにより、配管82,84を介して燃料電池等の水素ガス利用機器60へ供給される。
【0034】
水素供給装置1の運転時には、水素化誘導体の一例である1メチルデカリン30は、原料供給ポンプ6によって原料貯蔵タンク2から反応装置3に圧送され、また脱水素化反応後の生成物35は、コンプレッサ7によって反応装置3から吸引されるので、定常運転時における各部の圧力関係は、P2≧P1,かつP4>P3となっている。なお、圧力計85と圧力計86との間にコンプレッサ(図示せず)が存在していてもよい。
【0035】
水素ガス利用機器60の一例として燃料電池自動車の水素タンク(図示せず)に水素36を供給する場合について説明する。燃料電池自動車の水素タンクへの充填圧を、例えば35MPaとすると、燃料電池自動車の水素タンクへ水素36を供給する水素貯蔵タンク8の圧力P4は、これより高圧とする必要があり、コンプレッサ7によって、例えば40MPaまで圧縮されて貯蔵されている。
【0036】
コンプレッサ7が作動して水素36の水素ガス利用機器60への供給動作が行われると、コンプレッサ7より上流側の圧力は低下し、例えば0.05MPa程度の低圧となる。即ち、反応装置3の圧力P3は、0.05MPa程度の低圧となるので、脱水素化反応はこの低圧の下で行われる。水素供給装置1にコンプレッサ7が配置されずに常圧もしくは加圧状態で脱水素化反応が行われる場合と比較して、脱水素化反応は、より効率的に行われ、単位量当たりの原料(水素化誘導体30)から、多量の水素36を発生させることができるので、水素36の供給を高効率で実施できる。
【0037】
なお、水素貯蔵タンク8の圧力P4によって反応装置3の圧力P3も影響される虞がある。この場合、圧力調整弁や定圧弁等を反応装置3とコンプレッサ7との間のいずれかに設置して、反応装置3の圧力P3を一定圧力に制御し、該一定圧下で脱水素化反応を行わせることにより、安定した脱水素化反応を行わせるようにすることもできる。
【0038】
また、水素36を水素供給装置1から直接、水素ガス利用機器60に供給する場合には、開閉バルブ83を開いた状態のまま、前述した水素化誘導体30の脱水素化反応を行わせることによって、水素36を一時的に水素貯蔵タンク8に貯蔵することなく、直接使用することができる。尚、この場合には水素貯蔵タンク8を設けず、コンプレッサ7に接続された配管81を水素ガス利用機器60への配管として構成するようにしてもよい。
【0039】
(第2実施形態)
次に、水素供給装置の第2実施形態を図2を参照して説明する。図2は水素供給装置の模式図である。
第2実施形態の水素供給装置50は、第1実施形態の水素供給装置1から原料供給ポンプ6が削除されるとともに、配管21が原料貯蔵タンク2に貯蔵された水素化誘導体の中まで延びた構成となっており、それ以外は水素供給装置1の構成と同一である。
その他の部分については、本発明の第1実施形態の水素供給装置1と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0040】
次に、水素供給装置50を用いた水素供給方法について、図2に基づいて説明する。原料貯蔵タンク2に、水素化誘導体の一例である1メチルデカリン30を入れる。次いで、開閉バルブ10を開いて原料貯蔵タンク2を外部に連通させ、原料貯蔵タンク2の圧力P1を一定圧となるようにする。開閉バルブ9,51を開いた後、コンプレッサ7を作動させると、コンプレッサ7の上流側(反応装置3を含む)の圧力は大気圧未満に低下し、原料貯蔵タンク2の圧力P1と反応装置3の圧力P3との間に圧力差が生じ、P1>P3となる。
【0041】
原料貯蔵タンク2に貯蔵されている1メチルデカリン30は、該圧力差によって反応装置3に供給され、ノズル31から金属担持触媒に向かって噴射する。そして、1メチルデカリン30と金属担持触媒とが接触して“水素化誘導体の脱水素化反応”が進行し、水素36、1メチルデカリン30及び1メチルナフタレンとが混合した脱水素化反応後の生成物35が生成される。
【0042】
反応装置3で生成された脱水素化反応後の生成物35は、配管32を経て、気液分離装置4に導入されて冷却され、水素36と液体成分38(1メチルナフタレンと1メチルデカリン30との混合物)とに分離する。気液分離装置4にて分離された液体成分38は、配管41、開閉バルブ51を介して廃液回収タンク5に回収される。一方、水素36は、気液分離装置4からコンプレッサ7によって吸引され、配管42,81を介して水素貯蔵タンク8に圧送されて貯蔵される。
【0043】
以上のようにして取り出され、水素貯蔵タンク8に貯蔵された水素36は、必要時に開閉バルブ83を開いて、配管82,84を介して燃料電池等の水素ガス利用機器60へ供給し、使用することが可能となる。
【0044】
水素供給装置50の定常運転時における各部の圧力関係は、P1≧P2>P3,かつP4>P1,かつP4>P5となっている。すなわち、反応装置3の圧力P3は、原料貯蔵タンク2の圧力P1より低圧となっているので、原料貯蔵タンク2に貯蔵されている水素化誘導体30は圧力差により反応装置3へ送り出されて供給される。よって、水素供給装置50においては、水素化誘導体30を反応装置3へ供給するための原料供給ポンプ6を設ける必要がない。従って、水素供給装置50の構造を簡単にすることができ、またこれによって水素供給装置50の故障の発生率を低下させると共に、メンテナンスが容易になる。
【0045】
更に、“水素化誘導体の脱水素化反応”は、充分に低下した圧力P3の下で行われるので、反応装置3内の圧力を低下させない場合と比較して、脱水素化反応はより効率的に行われ、単位量当たりの原料(水素化誘導体30)から、多量の水素36を発生させることができるので、水素36の供給を高効率で実施できる。
【0046】
水素ガス利用機器60への水素36の供給は、前記第1実施形態と同様に行われるので、説明を省略する。
【0047】
なお、反応装置3、コンプレッサ7間の配管に圧力調整弁を設けて反応装置3の圧力P3を制御するようにすれば、原料貯蔵タンク2から反応装置3へ供給される1メチルデカリン30の流量(供給量)や、水素36の発生量を任意に制御することもできる。
【0048】
本発明の水素供給装置は、前述した実施形態に限定されるものではなく、原料貯蔵タンク,反応装置,気液分離装置、廃液回収タンク,原料供給ポンプ,コンプレッサ、水素貯蔵タンク等の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を実施できるものであれば、適宜な変形、改良が可能であり、限定されない。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、水素の供給を高効率で実施できる水素供給装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る水素供給装置を示す模式図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る水素供給装置を示す模式図である。
【符号の説明】
1,50 水素供給装置
2 原料貯蔵タンク(原料貯蔵手段)
3 反応装置
7 コンプレッサ(供給手段)
8 水素貯蔵タンク
9,10,51,54,83 開閉バルブ(圧力調整手段)
30 1メチルデカリン(芳香族化合物の水素化誘導体)
36 水素
60 水素ガス利用機器
P3 反応装置内の圧力
Claims (3)
- 芳香族化合物の水素化誘導体の脱水素化反応を実施することにより、水素の供給を行うことのできる水素供給装置であって、
前記芳香族化合物の水素化誘導体の脱水素化反応を行う反応装置と、“前記反応装置から発生したガスの水素ガス利用機器及び/又は水素貯蔵タンクに対する供給動作を実施すると共に、前記供給動作によって前記反応装置内の圧力を低下できる供給手段”とを備える水素供給装置。 - 前記芳香族化合物の水素化誘導体を貯蔵する原料貯蔵手段を具備するとともに、前記供給手段の前記供給動作により、前記反応装置の圧力が前記原料貯蔵手段の圧力よりも低くなって、前記原料貯蔵手段に貯蔵された前記芳香族化合物の水素化誘導体が前記反応装置に入り込むように構成された請求項1に記載の水素供給装置。
- 前記反応装置の内部と他の部位及び外部との圧力差を制御できる圧力調整手段を具備する請求項1または2に記載の水素供給装置。
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JP2019149313A (ja) * | 2018-02-27 | 2019-09-05 | ヤマト・H2Energy Japan株式会社 | 燃料電池システム |
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2003
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