JP2004315069A - 酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体 - Google Patents

酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体 Download PDF

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康代 松村
Fumio Ikushima
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Abstract

【課題】レトルト容器に収納食品の保存性をもたらす酸素吸収性と遮蔽性を付与すると共に、レトルト処理時の密封性と開封時の蓋部材の易剥離性を同時に満たし、蓋部材の開口の際に容器開口部のフランジ面における、容器の内層中の酸素吸収剤による黒色の透けの顕現を阻止する。
【解決手段】熱可塑性樹脂から成る内外層と、外層側に位置する酸素遮蔽性熱可塑性樹脂から成る第1の中間層と、内層側に位置する酸素吸収剤配合熱可塑性樹脂から成る第2の中間層とを備えたレトルト多層容器において、容器開口部21のフランジ面22に幅狭ヒートシールにより蓋部材をヒートシールし、また、熱可塑性樹脂から成る内層の厚みがフランジ面において50〜400μmに規制され、フランジ面の幅狭ヒートシール部に烏口部25が設けられ、蓋部材に剥離用摘み代部26が設けられる易開封性包装体。
【選択図】図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体に関し、詳しくは、内容物を充填後、容器開口部のフランジ面に幅狭ヒートシール用部により、蓋部材をヒートシールし、レトルト殺菌されることを特徴とする、食品などの内容物保存性に優れた易開封性多層成形プラスチック容器に係わるものである。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック容器は、軽量性や経済性及び成形の容易性や耐衝撃性などにより、容器として日常生活で汎用されているが、唯一ともいえる欠点は、金属やガラスに比して、プラスチックが微量のガス透過性を有する点で、プラスチック容器の器壁を通しての酸素透過が無視し得ない量にて生じ、酸素が食品などの内容物を化学変化せしめて、あるいは、容器内において酸素が腐敗をもたらす微生物の発育を促進せしめて、食品などの保存性の点で問題となっている。
【0003】
そのために、プラスチック容器のガス透過性の欠点を補うための種々の工夫がなされ、最近では、プラスチック容器の器壁を通しての酸素透過を防止するために、容器壁を多層構造とし、その少なくとも一層に、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの耐酸素透過性を有する樹脂を用いることが行われて、また、容器内の酸素を除去するために、脱酸素剤の使用も行われ、容器壁中に存在する脱酸素剤により容器内の酸素を吸収せしめて容器内を高度の無酸素状態に保持することが行われている。
【0004】
これらの改良技術を容器壁に適用した代表的な例としては、酸素透過性を有する樹脂に還元性物質を主剤とする脱酸素剤を配合して成る層と、酸素ガス遮断性を有する層とを積層して、外部からの酸素の透過防止と内部の酸素の吸収を行う多層構造容器が知られている(特許文献1を参照)。
そして、このようなプラスチック容器は、外部からの器壁を通しての酸素透過を防ぎ、容器内部の酸素を吸収脱酸素して内容物の保存性を高める非常に優れた容器であるので、さらにその機能を高めるために、器壁の層構造や層を形成する樹脂材料あるいは酸素吸収剤などその他において、多くの改良がなされ続けられている。
【0005】
例えば、代表的なものとして、器壁の層構造の改良としては、脱酸素樹脂層中の脱酸素剤粒子が層面に突出してしまう問題を、ポリオレフィン系樹脂の平滑化層の採用により解決した多層容器(特許文献2を参照)、層を形成する樹脂材料の改良としては、容器形成のためのヒートシール性の欠乏及び酸素吸収樹脂層表面が酸素吸収剤粒子のために微細凹凸面となり接着不良を起こす両問題を、内層にヒートシール性樹脂を外層に耐熱性樹脂を使用し、熱可塑性樹脂クッション層を中間層として解決した多層容器(特許文献3を参照)、酸素吸収剤の改良としては、酸素吸収速度の遅延の問題を、鉄粉の表面に酸化促進剤を被覆した酸素吸収剤を配合して解決した多層容器(特許文献4参照)などが開示されている。
【0006】
一方、一般社会における最近の食生活の多様化に伴って、食品の形態も多種多様なものとなり、それにより食品の包装材や容器においても種々の展開がなされて、即席食品の容器や調理済み食品のレトルト容器などの需要が非常に高くなっている。
特に、レトルト容器食品は、調理済みの料理を収納して密封し高温で殺菌処理した簡易食品であり、消費者がそのまま、あるいは簡単に加熱などして直ぐに食することができるので、最近の簡易食品における主流となっており、プラスチック容器の分野において非常に重要な地位を占めつつある。
【0007】
このように、最近では、レトルト容器は注目され汎用されているが、一般にレトルト食品は容器内に調理済み食品を収納して蓋材をヒートシールなどにより密封接着した後に、レトルト殺菌(通常は、120〜130℃程度で、10〜20分の加熱殺菌処理)工程の処理を受けるので、その際に容器内部から高圧が発生しやすく、また、外部からの熱水の侵入の恐れがあり、それらに耐える高い接着強度が蓋部材の接着密封部分において必要であり、一方、消費者がレトルト食品を食すときには、簡単にできるだけ弱い力で指先だけで蓋部材を剥せる必要があって、蓋部材の接着密封部分においてなるべく弱い接着強度が求められる。
一般的に、レトルト殺菌処理においては2.5kg/15mm幅程度以上の接着強度が求められ、消費時の易開封には1.5kg/15mm幅程度以下の接着強度が求められている。
レトルト容器においては、蓋部材の接着密封部分における、この相反する厳しい要求があって解決は困難であり、簡単な解決法は望めない。
【0008】
食品容器として簡便で優れた機能を有し、需要も高いレトルト容器の、唯一ともいえるかかる欠点の解決のために種々の試みがなされ、多くの改良案が開示されてきた。蓋部材の接着手段としては、簡便性や接着強度の調節の簡易性あるいは衛生性などからヒートシール法が主として採用される。
改良提案の代表的なものとしては、容器開口部のフランジ面にヒートシール用凸部を形成し、そのシール面に微小はみ出し部を設けて、密着と剥離の応力部位を異ならしめて、高い接着強度と易開封性の両方を得る容器(特許文献5を参照)、容器開口部の広幅フランジ面の外側にレトルト殺菌用の接着強度の強いヒートシール部と、内側に易剥離用の接着強度の弱いヒートシール部を設けて、レトルト殺菌後に外側の接着強度の強いヒートシール部を切除する容器(特許文献6を参照)、容器開口部のフランジ面にレトルト殺菌用の接着強度の強いヒートシール部を設け、容器の内層と中間層との接着強度を弱くして、蓋部材の剥離時に容器の内層と中間層の間の端部から剥離して易剥離性とする容器(特許文献7を参照)などが開示され、かなり優れた有効な解決手段を提示しているが、製作の煩雑さなどの欠点を内包している。
そして、上記した、レトルト容器の蓋部材の接着密封部分における、相反する要求は解決が困難であり、未だ簡単な手段で充分にこの相反する要求に応答しうる開示はなされていないというべきである。
【0009】
【前記した従来の技術における各特許文献の一括表示】
特許文献1:特公昭62−1824号公報(特許請求の範囲の請求項1)
特許文献2:特開平9−234832号公報(特許請求の範囲の請求項1、段落0004)
特許文献3:特開平9−40024号公報(特許請求の範囲の請求項1、段落0005、段落0010)
特許文献4:特開平2−72851号公報(特許請求の範囲の請求項1、第2頁左下欄)
特許文献5:特開昭62−28355号公報(特許請求の範囲の請求項1、第4頁右上欄〜右下欄)
特許文献6:特開平6−219469号公報(要約、特許請求の範囲の請求項1)
特許文献7:特開2000−313480号公報(特許請求の範囲の請求項1、段落0007、段落0025)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、プラスチック容器の分野において、レトルト容器などは、重要な技術であると見なされるが、成形品の材質や機能などにおいては未だ改良途上にあるので、プラスチック容器の技術を高め、消費者の利便性にも寄与するために、レトルト容器などをさらに改良して、その蓋部材の接着機能などをなお高め、併せて収納食品の保存性などの新しい機能の付与をも目指すことが、本発明の解決すべき課題である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、プラスチック容器の技術を高め、消費者の利便性にも寄与するために、レトルト容器などをさらに改良して、その性能をなお高め、併せて新しい機能の付与をも目指して、前述したように、簡易食品の分野における需要度とプラスチック容器の分野における重要性が相まって非常に高まっている、レトルト容器をさらに改良して、その性能をいっそう高めるための思考を巡らし、新たな機能を探索する過程において、レトルト容器にも対酸素機能(酸素の吸収性と遮蔽性)を付加すれば、収納食品の鮮度及び味覚の保存性が飛躍的に向上して、食品収納におけるレトルト容器の価値がなお高まり、併せて消費者の利便性にも新たに寄与できることを思い至った。
【0012】
そこで、レトルト容器をさらに改良して、その性能をいっそう高めるために、レトルト容器の成形材料に酸素の吸収性と遮蔽性を有す多層シート材料を採用して、成形の検討と成形製品の性能試験を行った。
すなわち、レトルト容器にも対酸素機能(酸素の吸収性と遮蔽性)を付加すれば、収納食品の鮮度及び味覚の保存性などが飛躍的に向上する、新しい機能を付加できるので、対酸素機能性に優れたシートによりレトルト容器を形成すべく、対酸素機能に優れた成形用シート材料を求めて検討したところ、対酸素機能として酸素の吸収性と遮蔽性とを併せて有するシート材料である、熱可塑性樹脂から成る内層及び外層と、外層側に位置する酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂から成る第1の中間層と、内層側に位置する酸素吸収剤配合熱可塑性樹脂から成る第2の中間層を備えたシート材料が、対酸素性を付与するレトルト容器成形用シート材料に非常に好適であることを認識した。
かかる対酸素性の多層成形用シート材料は既に知られているものであるが、そのシート材料をレトルト多層容器成形用シート材料に採用して、それを深絞り成形して、レトルト容器を製造する試行を重ねた。
【0013】
一方、前述したように、レトルト容器において他の観点から重要な機能である、蓋部材の接着機能としてのヒートシール性及び易開封性を向上させるために、その機能をも併せて検討して、容器開口部のフランジ面に幅狭ヒートシール(略1.5mm幅程度)により蓋部材をヒートシールする方法を採用した。
さらには、容器の開口部のフランジ面にヒートシール用突条部(突起ないし凸部ともいう)を設けてその上面に蓋部材をヒートシールするほうが、シール強度の調節がしやすく、高い接着強度と易開封性が得られる。
なお、レトルト容器においては、前述のように、レトルト殺菌工程の処理を受けるので、それに耐える高い接着強度が蓋部材の接着密封部分において必要であり、一方、消費者がレトルト食品を食すときには、簡単にできるだけ弱い力で指先だけで蓋部材を剥せる必要があって、蓋部材の接着密封部分においてなるべく弱い接着強度が求められ、蓋部材の接着密封部分における、この相反する要求の解決は困難である。本発明では、上記のヒートシール用突条部あるいは後述するヒートシール部における烏口部や蓋部材の剥離用摘み代部などを設けることによって、この相反する要求をかなり解決している。
【0014】
本発明者は、新しい着想として、レトルト容器にも対酸素機能(酸素の吸収性と遮蔽性)を付加すべく、対酸素機能として酸素の吸収性と遮蔽性とを併せて有するシート材料である、熱可塑性樹脂から成る内層及び外層と、外層側に位置する酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂から成る第1の中間層と、内層側に位置する酸素吸収剤配合熱可塑性樹脂から成る第2の中間層とを備えたシート材料を、対酸素性を付与するレトルト容器成形用シート材料に採用し、それを深絞り成形してレトルト容器を製造し、さらに場合により、レトルト容器におけるヒートシール性をも向上させるために、レトルト容器の成形と同時に容器開口部のフランジ面にヒートシール用突条部を設け、その結果、酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性多層レトルト容器を完成させた。
【0015】
このレトルト容器には、調理済み食品を収納して、容器の開口部のフランジ面に幅狭に、別途通常の適宜な手段により製造した蓋部材をヒートシールして、通常は、120〜130℃程度で、10〜20分の加熱殺菌処理である、レトルト殺菌工程の処理を受け、その後に商品となる。
消費者はレトルト商品の内部に収納された調理済み食品を食するために、蓋部材を開口する際、指先で蓋部材の端部を引き上げ、ヒートシール部を剥離して蓋部材を除去する。
【0016】
ところが、その際に、重要な問題が認知された。すなわち、消費者が蓋部材を開口する際には、蓋部材の端部を引き上げ、ヒートシール部を剥離して蓋部材を除去するのであるが、その場合に、ヒートシール接着力によって、蓋部材のシール部分に、容器開口部のフランジ面におけるヒートシールの上面部分が接着したまま引き剥がされ、その上面部分の厚みが、特に突状部の場合に、薄くなってしまう。その結果、往々にして、酸素の吸収性と遮蔽性とを併せて有するシート材料における、酸素吸収剤配合熱可塑性樹脂から成る第2の中間層の酸素吸収剤による、黒色の透けが食品を収納した容器の開口部のフランジ面に部分的に透けて見えるようになる。
レトルト容器は食品のためのものであり、食品を収納した容器の開口部のフランジに突然に黒色の透けが顕れれば、衛生的に問題がなくても感性的に良くなく、まして最近の社会では、美的志向や清潔志向の傾向が強く、食品容器におけるかかる問題は商品にとって致命的となる。
【0017】
このようなレトルト食品商品における重大な問題に対処することが、本発明における追加的な解決すべき課題となった。
本発明者は、新たな解決すべき課題に対応すべく、解決手法を求めて、酸素の吸収性と遮蔽性とを併せて有する多層シート材料における層構成や各層の原料などについて、さらに思考と実験的な検討を重ねて、黒色の透けが透けて見えてくる問題を解消する手段を探索した。
【0018】
その結果として、後述する図4に示される実験データなどを基にして、新たな対応案を知見することができた。その対応手法は一見簡易であるが、酸素の吸収性と遮蔽性とを併せて有するシート材料における、熱可塑性樹脂から成る内層部の厚みを制御すれば、上記の問題を解消できる。
具体的には、フランジ部での内層部の厚みを予め特定の厚み、すなわち、50〜400μmに、好ましくは90〜300μm に規制すればよい。厚みが50μm 未満では異状な透視現象を防止しきれず、400μm を超えると、酸素吸収性の機能が損なわれてしまう。
【0019】
以上において、課題を解決するための手段として、本発明の基本的な構成に沿って、本発明を概観的に記述した。
ここで、本発明全体を俯瞰すると、本発明は、次の発明単位群から構成されるものであって、[1]の発明を基本発明とし、それ以下の発明は、基本発明を具体化ないしは実施態様化するものである。(なお、発明群全体をまとめて「本発明」という。)
[1] 熱可塑性樹脂から成る内層及び外層と、外層側に位置する酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂から成る第1の中間層と、内層側に位置する酸素吸収剤配合熱可塑性樹脂から成る第2の中間層とを備えた多層成形容器の開口部のフランジ面に、幅狭ヒートシールにより蓋部材をヒートシールしたことを特徴とする、酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体。
[2] 幅狭ヒートシールが、フランジ面に形成されたヒートシール用突条部に形成されていることを特徴とする、[1]の発明における酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体。
[3] 易開封性包装体がレトルト殺菌されることを特徴とする、[1]または[2]の発明における酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体。
[4] 熱可塑性樹脂から成る内層の厚みがフランジ部において50〜400μmであることを特徴とする、[1]〜[3]の発明における酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体。
[5] フランジ面の幅狭ヒートシール部に烏口部が設けられ、蓋部材に剥離用摘み代部が設けられていることを特徴とする、[1]〜[4]の発明における酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体。
[6] 第1の中間層の両側層に接着剤層が設けられることを特徴とする、[1]〜[5]の発明における酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体。
[7] 内層及び外層の熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂であり、第1の中間層の酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体であり、第2の中間層の熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする、[1]〜[6]の発明における酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体。
[8] 酸素吸収剤が鉄系脱酸素剤であることを特徴とする、[1]〜[7]の発明における酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体。
[9] 熱可塑性樹脂から成る内層及び外層と、外層側に位置する酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂から成る第1の中間層と、内層側に位置する酸素吸収剤配合熱可塑性樹脂から成る第2の中間層とを備えた、多層容器成形用シート材料を深絞り成形し、同時に容器開口部のフランジ面にヒートシール用突条部を設けることを特徴とする、酸素の吸収性と遮蔽性に優れた多層成形容器の製造方法。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明については、課題を解決するための手段として、本発明の基本的な構成に沿って前述したが、以下においては、前述した本発明群の発明の実施の形態を、図面を参照しながら、具体的に詳しく説明する。
本発明の包装体は、対酸素性機能を有すレトルト容器に関し、詳しくは、酸素の吸収性と遮蔽性により食品などの内容物保存性に優れた多層成形プラスチック容器としてのレトルト容器であって、蓋部材の開封時において、食品を収納した容器の開口部のフランジ面に黒色の透けが浮き上がって見えて顕現することが阻止されることを特徴とするものである。
【0021】
(1)酸素の吸収性と遮蔽性に優れた多層成形容器について
a.多層成形容器の層構造
多層容器においては、プラスチックが微量のガス透過性を有するために容器壁の外部から容器壁を透過して侵入する空気中の酸素、及び容器内に内容物を収納するときに装入される空気中の酸素が、食品などの内容品を化学変質せしめて、あるいは、容器内において腐敗をもたらす微生物の発育を促進せしめて、内容品の保存性の点で問題となっているので、従来から、容器壁を多層構造とし、その少なくとも一層に、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの耐酸素透過性を有する樹脂を用いることが行われて、また、容器内の酸素を除去するために、脱酸素剤の使用によって、特に、容器壁中に存在する脱酸素剤により容器内の酸素を吸収せしめて容器内を高度の無酸素状態に保持することが行われている。
【0022】
本発明においては、かかる多層容器において、対酸素機能として酸素の吸収性と遮蔽性とを併せて有するシート材料として、熱可塑性樹脂から成る内層及び外層と、外層側に位置する酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂から成る第1の中間層と、内層側に位置する酸素吸収剤配合熱可塑性樹脂から成る第2の中間層とを備えた層構成を採用し、その多層成形容器における層構造の断面図が、図1に例示されている。
図中において上側が容器の外部で、図中の下側が容器の内部側に相当する。熱可塑性樹脂から成る内層11及び外層15と、外層側に位置する酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂から成る第1の中間層14と、その両側の接着剤層13と、内層側に位置する酸素吸収剤配合熱可塑性樹脂から成る第2の中間層12が各々図示されている。
なお、本発明の多層容器は、上記の層構成に限定されるものではなく、例えば第2の中間層と内層との間に、追加のエチレン−ビニルアルコール共重合体から成る中間層を設けることもできるし、他の中間層を設けることも可能である。
【0023】
各層の厚みは、特に、内層の厚みは段落0018及び0038に記載したように、特定の厚み、すなわち、フランジ部において50〜400μmに規制される。
具体例を示すと、外層の厚みは50〜200μm 、第1の中間層の厚みは10〜30μm 、第2の中間層の厚みは30〜90μm、内層の厚みは90〜300μmが好ましい。さらに第1の中間層と第2の中間層との厚み比は、通常、1:10〜10:1の範囲に設定することが好ましい。
【0024】
b.接着剤層
酸素遮蔽性の第1の中間層の両側には、必要により、接着剤層が設けられる。接着剤は任意使用であり、第一の中間層と両側層との接合性が悪い場合に使用される。通常は、第1の中間層の酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂にエチレン−ビニルアルコール共重合体が使用され、両側層に汎用されるポリプロピレン系樹脂との接着性がよくないので、汎用接着剤であるエチレン−アクリル酸エステル共重合体などの熱可塑性樹脂接着剤が用いられる。
その他の接着剤の適当な例は、エチレン−アクリル酸共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、アクリル酸グラフトポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、共重合ポリエステル、共重合ポリアミドなどの1種又は2種以上の組み合わせである。これらの接着剤樹脂は、同時押出或いはサンドイッチラミネーションなどによる積層に有用である。
【0025】
c.内層及び外層
内層及び外層の熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂が好適である。ポリプロピレン系樹脂は、その耐衝撃性などの機械的物性や耐薬品性などの化学的物性に優れており、成形性や経済性も卓越で、酸素遮蔽性も備えているから、内層及び外層の熱可塑性樹脂として汎用される。ただ、内層は酸素吸収剤配合層の酸素吸収のためにある程度の酸素透過性が必要であるので、内層の熱可塑性樹脂として酸素透過性樹脂がより好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、具体的に、アイソタクティックポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、及びこれらのブレンド物が使用される。中でも、融点が155〜165℃、特に160〜165℃のプロピレン−エチレンブロック共重合体が好ましい。即ち、このブロック共重合体は、それ自体で耐衝撃性に優れ、また、軟化点が高いため、多層シートを用いて容器への成形を行う際に該共重合体層(内外層)に応力が集中して延伸されるので、耐衝撃性、特に低温での耐衝撃性に優れた容器を得ることができる。
【0026】
これらのポリプロピレン系樹脂は、通常、第2の中間層に配合されている鉄系脱酸素剤(酸素吸収剤)の黒色を隠蔽するために、酸化チタンなどの白色顔料を配合した組成物の形で使用に供される。
ポリプロピレン系樹脂から成る内層及び外層は、水分の透過を抑制し、エチレン−ビニルアルコール共重合体の吸湿による酸素遮蔽性の低下を抑制する。
なお、内層は酸素吸収剤配合層の酸素吸収のためにある程度の酸素透過性が必要であるので、内層の熱可塑性樹脂として酸素透過性樹脂がより好ましく、外層は外部からの酸素の侵入を防ぐために、外層の熱可塑性樹脂として酸素遮蔽性樹脂がより好ましい。
【0027】
d.第1の中間層
第1の中間層の酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体が、その優れた酸素遮蔽性により汎用され、エチレン−ビニルアルコール共重合体の具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用される。
【0028】
e.第2の中間層
第2の中間層の熱可塑性樹脂としては、容器内部の酸素吸収のためにある程度の酸素透過性を有するポリオレフィン系樹脂が汎用される。
脱酸素剤(酸素吸収剤)による容器内残留酸素の吸収は、器壁を通しての外部からの酸素の透過が第1の中間層で遮断された状態で、第2の中間層で行われるため、残留酸素の吸収は効率よく行われる。また、仮に第1の中間層を通しての僅かの酸素の透過があっても、この透過酸素は脱酸素剤により捕捉されるという利点もある。
【0029】
f.酸素吸収剤
酸素吸収剤(脱酸素剤)としては、酸素吸収性と経済性に優れた鉄系脱酸素剤が代表的に使用される。鉄系脱酸素剤は、その優れた還元性(周囲物質からの脱酸素性)により強力な酸素吸収作用をもたらす。
なお、鉄系脱酸素剤としては、従来この種の用途に使用されているものは全て使用することができ、例えば還元性鉄、酸化第一鉄、四三酸化鉄、炭化鉄、ケイ素鉄、鉄カルボニル、水酸化鉄などを例示できる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
粒径や密度も通常のものが好適である。あまり平均粒径が大きいものを使用すると、多層シートへの成形に際してフィッシュアイなどが発生し、容器の外観が損なわれることがある。
鉄系脱酸素剤は、一般に樹脂当り1〜200重量%、特に10〜100重量%の量とすることが好適である。鉄系脱酸素剤の量が上記範囲よりも低いと、容器内の酸素濃度を微生物の成育に適した濃度以下に抑制することが困難となり、一方上記範囲よりも多量に用いたとしても、酸素濃度低下の点で格別の効果がないばかりか、成形性や価格の点で不利となる傾向がある。
【0030】
酸素吸収剤には、アルカリ化合物やアルカリ土類化合物などの酸化促進剤(触媒)を併用して、鉄系脱酸素剤などの酸素吸収性を促進させることもできる。これらは、水分の吸収を介して、脱酸素剤の脱酸素効果を促進させるものである。
【0031】
(2)レトルト多層容器について
a.レトルト容器
レトルト容器食品は、調理済みの料理を収納して密封し高温で殺菌処理した簡易食品であり、消費者がそのまま、あるいは簡単に加熱などして直ぐに食することができるので、最近の簡易食品において需要が非常に高く、プラスチック容器の分野において非常に重要となっている。
前述したように、通常、レトルト食品は容器内に調理済み食品を収納して蓋部材をヒートシールなどにより密封接着した後に、レトルト殺菌(通常は、120〜130℃程度で、10〜20分の加熱殺菌処理)工程の処理を受けるので、その際に容器内部から高圧が発生しやすく、また、外部からの熱水の侵入の恐れがあり、それらに耐える高い接着強度が蓋部材の接着密封部分において必要であり、一方、消費者がレトルト食品を食すときには、簡単にできるだけ弱い力で指先だけで蓋部材を剥がせる必要があって、蓋部材の接着密封部分においてなるべく弱い接着強度が求められる。
一般的に、蓋部材と容器の開口部との接着強度に関しては、レトルト殺菌処理においては2.5kg/15mm幅程度以上の接着強度が求められ、消費時の易開封には1.5kg/15mm幅程度以下の接着強度が求められている。
レトルト容器においては、蓋部材の接着密封部分における、この相反する要求があって解決は困難であり、簡単な解決法は望めない。
【0032】
本発明においては、食品容器として簡便で優れた機能を有し、需要も高いレトルト容器の、唯一ともいえるかかる欠点の解決のために、蓋部材の接着手段としては、簡便性や接着強度の調節の簡易性あるいは衛生性などからヒートシール法を採用し、特に、図2(及び図3)に例示されるように、容器開口部21のフランジ面22にヒートシール用突条部(いわゆる凸部ないしは突起部)23を形成して、この突条部にヒートシール性蓋部材24をヒートシールして容器を密封する。突条部の大きさは適宜に設定しうるが、ヒートシール性の調節のしやすさなどから、高さと幅とも0.5〜5mm程度が好ましい。ヒートシール性蓋部材の材質や大きさも適宜に設定できる。
その容器内部に予め食品が収納され、蓋部材がヒートシールされた後に、レトルト殺菌される。ヒートシール手段は通常のものでよく、例えば200℃の熱板にて3kg/cm程度の圧力で、シール面を2秒間程加熱する。ヒートシール接着力は、熱板の温度や押圧力などの調節で適宜に設定しうる。
【0033】
また、上記の相反する接着強度の問題の解決のために、フランジ面の突条部には尖端形状のいわゆる烏口部25が設けられ、消費者が開口のために蓋材部の一端を摘み上げて蓋部材を剥がす際に、引き上げ応力が烏口部の尖端部に集中して、指先の小さい力で剥がれるように工夫されている。
さらに、蓋部材の一端に剥離用摘み代部26が設けられて、蓋部材の一端を引き上げて剥がすのを容易にしている。
前述したように、通常、レトルト食品は容器内に調理済み食品を収納して蓋部材をヒートシールなどにより密封接着した後に、レトルト殺菌工程の処理を受けるので、その際に容器内部から高圧が発生しやすく、また、外部からの熱水の侵入の恐れがあり、それらに耐える高い接着強度が蓋部材の接着密封部分において必要であり、一方、消費者がレトルト食品を食すときには、簡単にできるだけ弱い力で蓋部材を剥がせる必要があって、蓋部材の接着密封部分においてなるべく弱い接着強度が求められており、そのために一般的に、蓋部材と容器の開口部との接着強度として、レトルト殺菌処理においては2.5kg/15mm幅程度以上の接着強度が求められ、消費時の易開封には1.5kg/15mm幅程度以下の接着強度が求められている。そこで、本発明では、好ましくは、ヒートシールの接着強度をレトルト殺菌処理において必要な2.5kg/15mm幅程度に設定する。そして、本発明では、開封時の蓋部材の剥離の易容化のために、上記の烏口と摘み代部を設けているので、1.5kg/15mm幅程度の力で剥離できる。したがって、本発明においては、上記した、蓋部材の接着密封部分における、相反する要求を充分に満たすことができる。
【0034】
b.レトルト容器の多層化
本発明においては、前述したように、収容される食品の保存性を高めるために、レトルト容器に対酸素性を付与し、食品を無酸素状態に収容して食品を化学変化や微生物による変質から守り、鮮度や味覚の保持性を非常に向上させている。
この対酸素性の能力、すなわち外部からの酸素の侵入に対する遮蔽性及び容器内部に存在する酸素の吸収性を、レトルト容器に付与せしめて、食品が収容されたレトルト容器内部をできるだけ長期の間、無酸素状態になしておくために、レトルト容器を多層化して、レトルト容器に、上記の(1)a.〜f.において詳述した、酸素の吸収性と遮蔽性に優れた多層構造を採用している。
【0035】
その多層構造は、酸素の吸収性と遮蔽性とを併せて有するシート材料から形成され、熱可塑性樹脂から成る内層及び外層と、外層側に位置する酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂から成る第1の中間層と、内層側に位置する酸素吸収剤配合熱可塑性樹脂から成る第2の中間層とを備えた層構造であって、その多層構造の断面図が、図1に例示されている。
前述したとおりに、図中において上側が容器の外部で、図中の下側が容器の内部側に相当する。熱可塑性樹脂から成る内層11及び外層15と、外層側に位置する酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂から成る第1の中間層14と、その両側の接着剤層13と、内層側に位置する酸素吸収剤配合熱可塑性樹脂から成る第2の中間層12が各々図示されている。
なお、熱可塑性樹脂から成る内層11は、レトルト容器をヒートシールする際のフランジ部の上面になるために、ヒートシルール性が必要であり、ポリプロピレンが好ましく、酸素吸収性と遮蔽性の多層構造における樹脂と一致している。
このような酸素吸収性と遮蔽性の多層構造の採用によって、レトルト食品において、調理済み食材の鮮度と味覚の長期保持をもたらすことが可能となった。
【0036】
c.熱可塑性樹脂から成る内層の厚み規制
消費者が蓋部材を開口する際には、指先で蓋部材の端部を引き上げ、ヒートシール部を剥離して蓋部材を除去するのであるが、前述したように、その場合に、ヒートシール接着力によって、蓋部材のシール部分に、容器開口部のフランジ面におけるヒートシール部の上面部分が接着したまま引き剥がされ、その上面部分の厚みが薄くなってしまう。その結果、往々にして、酸素の吸収性と遮蔽性とを併せて有するシート材料における、酸素吸収剤配合熱可塑性樹脂から成る第2の中間層の内部に混在する酸素吸収剤による、黒色の透けが食品を収納した容器の開口部のフランジ面に部分的に透けて見えるようになる。
レトルト容器は食品のためのものであり、食品を収納した容器の開口部のフランジに突然に黒色の透けが顕れれば、衛生的に問題がなくても感性的に良くなく、まして最近の社会では、美的志向や清潔志向の傾向が強く、食品容器におけるかかる問題は商品にとって致命的となる。
【0037】
このようなレトルト食品商品における重大な問題に対処するために、本発明のレトルト多層容器においては、酸素の吸収性と遮蔽性とを併せて有するシート材料における、熱可塑性樹脂から成る内層部の厚みを制御することにより、上記の問題を解消している。
なお、内層のポリピロピレン系樹脂に多少の酸化チタンなどの隠蔽顔料をブレンドして、鉄系脱酸素剤の黒色の透過顕現をある程度抑制できるが、充分には抑制できず、多量の顔料をブレンドすると外観や成形性が損なわれてしまい不適当である。
【0038】
具体的には、その内層部の厚みを予め特定の厚み、すなわち、フランジ部において50〜400μmに、好ましくは90〜300μm に規制する。厚みが50μm 未満では黒色の透け現象を防止しきれず、400μm を超えると、酸素吸収性の機能が実質的に損なわれてしまう。
蓋部材のシール部分に、容器開口部のフランジ面におけるヒートシール部、特に、ヒートシール用突条部の上面部分が接着したまま引き剥がされると、その上面部分の厚みが薄くなってしまうが、予め50μm以上、特に90μm 以上の厚みにしておくと、その上面が引き剥がされ除去されても、残りの厚みにより、第2の中間層の内部に混在する酸素吸収剤による、黒色の透けが、食品を収納した容器の開口部のフランジ面に部分的に透けて見えるようにはならない。
容器内部の酸素は、熱可塑性樹脂から成る内層を通過して第2の中間層内に混在する酸素吸収剤により吸収されるのであるが、内層の厚みがフランジ部において400μmを超えると、おのずと内容物収納部の内層の厚みも厚くなり容器内部の酸素の内層の充分な通過が困難となって、第2の中間層内に混在する酸素吸収剤による吸収に支障が生じてしまう。特に、300μm以下では酸素吸収剤による吸収が充分に行われる。
したがって、本発明のレトルト容器においては、その内層の厚みは、フランジ部において50〜400μm、好ましくは90〜300μmに規制される。
【0039】
この規制は、特に90〜300μm における規制は、図4に示される酸素吸収能の実験データ、及び後記の黒色の透け顕現に対する観察の実施例にその根拠を置いている。
図4は、本発明のレトルト多層容器における、容器内部の酸素存在量の経時変化のデータを示すものであり、縦軸が容器内酸素量(単位:ml)を、横軸が経過時間(単位:月数)を示す。内層の厚みがフランジ部において300μmを超えると、容器内部に残存する酸素量が40ml(容器の容量は300ml)程度以下に低下せず、酸素による収納食品の化学変化や食品の変質をもたらす微生物の発育を抑止できなくなる場合が生じてくる。
また、内層の厚みがフランジ部において90μm 未満になると、容器のフランジ面における黒色の透けの顕現の量と頻度が商品の許容限界を超えてしまう場合が生じてくる。
【0040】
(3)レトルト多層成形容器の製造について
本発明における、酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体は、熱可塑性樹脂から成る内層及び外層と、外層側に位置する酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂から成る第1の中間層と、内層側に位置する酸素吸収剤配合熱可塑性樹脂から成る第2の中間層とを備えた、多層容器成形用シート材料を深絞り成形し、必要により、同時に容器開口部のフランジ面にヒートシール用突条部を設けることによって、製造することができる。
【0041】
多層シート材料の製造は、それ自体公知の方法で行うことができる。例えば、各樹脂層に対応する押出機で溶融混練した後、T−ダイ、サーキュラーダイなどの多層多重ダイスを通して所定の形状に同時溶融押出しすることによって得られる。また、各樹脂層に対応する射出機で溶融混練した後、射出金型中に共射出または逐次射出することによっても得ることができる。
多層シート材料を用いての容器への成形は、通常の真空成形、圧空成形などによって、より好ましくは深絞り成形にて行われる。この際の成形温度は、使用する樹脂の融点ないしは軟化点によっても異なるが、一般的には165〜170℃の範囲とすることが好ましい。
また、本発明の包装体においては、容器開口部のフランジ面へのヒートシール用突条部を設ける態様もとりえるが、その場合には、その突条形状を設けた金型を使用して形成される。
【0042】
【実施例】
以下において、各実施例によって、比較例を対照して図面を参照しながら、本発明をより詳細に具体的に示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[図面による実施例の説明]
本発明に係るレトルト多層容器における多層構造が、一実施例の断面図として図1に示されている。なお、前述のとおり、図中の上側が容器の外部で、図中の下側が容器の内部側に相当する。熱可塑性樹脂から成る内層11及び外層15と、外層側に位置する酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂から成る第1の中間層14と、その両側の接着剤層13と、内層側に位置する酸素吸収剤配合熱可塑性樹脂から成る第2の中間層12が各々図示されている。
本発明に係るレトルト容器において、容器の開口部のフランジ面におけるヒートシール部分が、一実施態様例の概略平面図として図2に示されている。容器開口部21のフランジ面22にヒートシール用突条部(いわゆる凸部ないしは突起部)23が形成され、この突条部にヒートシール性蓋部材24をヒートシールして容器を密封する。フランジ面の突条部には尖端形状のいわゆる烏口部25が設けられ、消費者が開口のために蓋材部の一端を摘み上げて蓋部材を剥がす際に、引き上げ応力が烏口部の尖端部に集中して、指先の小さい力で剥がれるように工夫されている。また、蓋部材の一端に剥離用摘み代部26が設けられて、蓋部材の一端を引き上げて剥がすのを容易にしている。
本発明に係るレトルト容器における、容器の開口部のフランジ部における部分説明図が、一実施態様例の概略断面図として図3に示されている。熱可塑性樹脂から成る内層31及び外層34と、外層側に位置する酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂から成る第1の中間層33と、内層側に位置する酸素吸収剤配合熱可塑性樹脂から成る第2の中間層32が、さらに突状部35が、各々図示されている。第1の中間層の両側の接着剤層は図示していない。
また、本発明では前述のように、幅狭ヒートシールをヒートシール用突起部に形成してもよいが、平らなフランジ面にシール幅が略1.5mm前後の線シールを形成してもよい。
本発明のレトルト多層容器における、容器内部の酸素存在量の経時変化のデータを示す実施例が、グラフ図として図4に示されている。縦軸が容器内酸素量(単位:ml、容器容量は300ml)を、横軸が経過時間(単位:月数)を示す。内層の厚みがフランジ部において300μmを超えると、おのずから内容物収納部分の厚みが厚くなりすぎるために、容器内部に残存する酸素量が40ml程度以下に低下せず、酸素による収納食品の化学変化や食品の変質をもたらす微生物の発育を抑止できなくなってくる。また、内層の厚みがフランジ部において90μm未満になると、容器のフランジ面における黒色の透けの顕現の量と頻度が商品の許容限界を超えてしまう場合が生じる。
【0043】
[多層シート材料の製造]
内層及び外層のポリプロピレン系樹脂として、プロピレン−エチレンブロック共重合体、第1の中間層として、エチレン−ビニルアルコール共重合体、第2の中間層のポリプロピレン系樹脂組成物として、プロピレン−エチレンランダム共重合体とその樹脂100重量部当たり30重量部の鉄系酸素吸収剤を含有する組成物をそれぞれ使用し、さらにエチレン−ビニルアルコール共重合体とこれに隣接する層との間には接着剤樹脂層が形成されるようにして多層同時共押出を行い、図1に示す層構成の4種6層の多層シートを成形した。なお、内層のポリピロピレン系樹脂には30重量%、及び外層のポリピロピレン系樹脂には10重量%の酸化チタンをブレンドし、鉄系酸素吸収剤の黒色をある程度隠蔽した。
【0044】
[多層容器の製造]
容器開口部のフランジ面にヒートシール用突条部を形成できる、通常の真空圧空成形機で、多数個取り金型を用いて、深絞り成形を行い、口外径150mm、フランジ幅10mm、高さ25mm、内容量300mlの多層深絞り容器を成形した。
この多層容器の酸素遮断性及び酸素の吸収性を測定し、収納された調理済み食品を、121℃30分間のレトルト殺菌処理を行い、ヒートシール性の蓋部材を175℃1.5秒で2回ヒートシールして、密封して保存性を測定した。
【0045】
上述の実施例に基づき、レトルト多層容器のフランジ部における内層の厚さ、ヒートシール形状について、実施例−1〜実施例−4及び比較例−1〜比較例−3を表1に記載された各条件で実施し、開封時のフランジ面における黒色の透けの顕現、レトルト時の密封性、蓋部材の開封性及び収納食品の鮮度と味覚の保存性を観察または判断して、それらの結果を表1にまとめて記載した。
表1中で、ヒートシール形状欄の突起は、幅2mm、高さ1.5mmのヒートシール用突状部を示し、線シールはフランジ面上に設けた幅1.5mmの幅狭ヒートシールを示す。また、幅広シールとは、ヒートシール幅7mmの幅広ヒートシールを示す。
なお、内層の厚さは、多層構造における熱可塑性樹脂の最内層の厚さであり、黒色の透けの顕現及びレトルト時の密封性は目視で観察し、蓋部材の開封性は指先だけの力で軽く開封できるかを判断し、収納食品の保存性は1月後の鮮度と味覚を調理直後のものと対比して判断した。
【0046】
【表1】
Figure 2004315069
【0047】
[実施例と比較例の結果の考察]
以上の各実施例及び各比較例を対照することにより、本発明のレトルト多層容器(易開封性包装体)においては、開封時のフランジ面における黒色の透けの顕現はなく、レトルト時の密封性、蓋部材の開封性及び収納食品の保存性が全てにおいて優れていることが明らかにされている。
具体的には、レトルト多層容器のフランジ部における内層の厚さが、50μm以上であれば、比較例1との対比に示されるように、黒色の透けの顕現はなく、ヒートシール接着力がレトルト処理条件で蓋部材の密封性の破損が生じない値の2.5kg/15mm幅でも、ヒートシール部に烏口と摘み代が設けられているので、指先だけの軽い力で開封できる易開封性がもたらされる。また、フランジ部における内層の厚さを400より厚い420μmにした比較例2では、黒色の透けの顕現はないが、容器内部の酸素が内層を通過し難く食品の保存性が不良となる。さらに、比較例3においてヒートシール幅を7mmの幅広シールとした場合には、レトルト時の密封性は充分に確保できるが、開封時の易開封性が損なわれてしまう。
【0048】
【発明の効果】
本発明に係る酸素吸収性と酸素遮蔽性に優れたレトルト多層容器の易開封性包装体においては、開封時の容器開口部フランジ面における酸素吸収剤による黒色の透けの顕現はなく、レトルト時の密封性と蓋部材の開封性が共に優れ、併せて、収納食品の保存性が良好で調理済み食品の鮮度と味覚が長く保持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の包装体に係るレトルト多層成形容器における、多層構造を示す断面図である。
【図2】本発明の包装体に係るレトルト多層成形容器における、開口部のヒ−トシール部分を示す平面図である。
【図3】本発明の包装体に係るレトルト容器における、容器の開口部のフランジ部での突状部についての部分説明をなす断面図である。
【図4】本発明のレトルト多層容器における、容器内部の酸素存在量の経時変化のデータを示すグラフ図である。
【符号の説明】
11:熱可塑性樹脂から成る内層
12:酸素吸収剤配合熱可塑性樹脂から成る第2の中間層
13:接着剤層
14:酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂から成る第1の中間層
15:熱可塑性樹脂から成る外層
21:容器開口部
22:フランジ面
23:ヒートシール用突条部
24:ヒートシール性蓋部材
25:烏口部
26:剥離用摘み代部
31:熱可塑性樹脂から成る内層
32:酸素吸収剤配合熱可塑性樹脂から成る第2の中間層
33:酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂から成る第1の中間層
34:熱可塑性樹脂から成る外層
35:ヒートシール用突条部

Claims (9)

  1. 熱可塑性樹脂から成る内層及び外層と、外層側に位置する酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂から成る第1の中間層と、内層側に位置する酸素吸収剤配合熱可塑性樹脂から成る第2の中間層とを備えた多層成形容器の開口部のフランジ面に、幅狭ヒートシールにより蓋部材をヒートシールしたことを特徴とする、酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体。
  2. 幅狭ヒートシールが、フランジ面に形成されたヒートシール用突条部に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載された酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体。
  3. 易開封性包装体がレトルト殺菌されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載された酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体。
  4. 熱可塑性樹脂から成る内層の厚みがフランジ部において50〜400μmであることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載された酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体。
  5. フランジ面の幅狭ヒートシール部に烏口部が設けられ、蓋部材に剥離用摘み代部が設けられていることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載された酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体。
  6. 第1の中間層の両側層に接着剤層が設けられることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載された酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体。
  7. 内層及び外層の熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂であり、第1の中間層の酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体であり、第2の中間層の熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載された酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体。
  8. 酸素吸収剤が鉄系脱酸素剤であることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれかに記載された酸素の吸収性と遮蔽性に優れた易開封性包装体。
  9. 熱可塑性樹脂から成る内層及び外層と、外層側に位置する酸素遮蔽性の熱可塑性樹脂から成る第1の中間層と、内層側に位置する酸素吸収剤配合熱可塑性樹脂から成る第2の中間層とを備えた、多層容器成形用シート材料を深絞り成形し、同時に容器開口部のフランジ面にヒートシール用突条部を設けることを特徴とする、酸素の吸収性と遮蔽性に優れた多層成形容器からなる易開封性包装体の製造方法。
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