JP2004313365A - テーパー用毛およびこれを用いた歯ブラシ - Google Patents

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Abstract

【課題】刷毛としての自然なたわみを実現し、毛先の当たり心地を向上するとともに、隙間進入性、刷掃実感、刷毛耐久性(復元力)、毛腰強度などを任意に調整可能なテーパー用毛と、これを用いた歯ブラシを提供すること。
【解決手段】同心状をした2層以上の樹脂層12,13からなる多層構造とし、該樹脂層のうち少なくとも1層13は複数の樹脂(PBT、PET)を混合したブレンド樹脂とするとともに、両端部または一方の端部をテーパー状とした。ブレンド樹脂は隣接する層12の樹脂(PBT)を含ませる。また、内側の層12は外側の層13よりも復元力の高い樹脂とした。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブレンド樹脂を用いた多層構造型のテーパー用毛と、これを用いた歯ブラシに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
▲1▼特許文献1には、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)を含むフィラメントを有する歯ブラシが示されている。フィラメントは、PTT単一樹脂か、他の樹脂との共押出し物である。このPTTを含むフィラメントは、用毛の復元力が高く、刷毛耐久性に非常に優れる。しかし、同じ用毛径ならPBT(ポリブチレンテレフタレート)やPET(ポリエチレンテレフタレート)からなる用毛よりも軟らかい刷毛となり、刷掃実感が低い。これを向上させるためには、用毛径を大きくするか、毛束径を大きくするしかなく、毛先の歯間進入性を悪化させる方向になる。さらに、特許文献1のフィラメントは、毛先がテーパー形状ではなく、毛先進入性に劣る。
【0003】
▲2▼特許文献2には、両端がテーパー形状とされ、先端部から1mm、3mm、5mm、8mmの各部位における刷毛径が、基部径に対し、25〜35%、55〜70%、80〜90%、90〜100%からなるテーパー用毛を用いた歯ブラシが示されている。用毛材質は、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどの合成樹脂からなる。このテーパー用毛を用いた歯ブラシは、隙間進入性が高く、当たり心地も上質で、歯茎のマッサージにも有用であるが、毛先が超極細テーパーのため、刷掃実感がもの足りなく感じる場合がある。
【0004】
▲3▼特許文献3には、先端分岐毛(分岐数2〜5本)を用いた歯ブラシが示されている。この先端分岐毛は、ポリエステル樹脂の海部にポリアミド樹脂製の島繊維を散在させることにより構成されており、海部と島繊維を構成する樹脂同士はそれぞれ独立に存在しているため、毛先部分の微妙な毛腰をコントロールすることができない。また、ポリエステル海部に比べてポリアミド島繊維は用毛剛性が低いため、この境目で毛先が折れやすく、毛先の歯間進入性が低下することがある。
【0005】
▲4▼特願2001−372975
本件は、本出願人が先に出願した特許出願(未公開)あって、テーパー形状になる毛先の一部に1ヶ所以上の段差を有する用毛と、これを用いた歯ブラシに関する発明である。この発明では、毛先に段差を形成する目的で、薬品溶解スピードの異なる樹脂を2層以上の多重芯構造に配置したが、各層は単一樹脂で構成されており、刷毛の耐久性(復元力)を考慮した設計としては検討の余地があった。また、単一樹脂によって各層を構成しているため、例えばPBTとPETのように樹脂硬さの差が大きい場合、樹脂の変わり目における物性の変化が大きく、毛先のしなり感や毛先の自然な当たり心地といった繊細な感触の部分においてさらに改良の余地があった。
【0006】
▲5▼特願2002−319888
本件も、本出願人が先に出願した特許出願(未公開)あって、複数の樹脂を混合したブレンド樹脂からなるテーパー用毛に関する発明である。この発明のテーパー用毛は多層構造を有しておらず、用毛全体を1つのブレンド樹脂で形成したもので、用毛径を太くすることなく刷掃実感を高めることができるようにしたものである。このテーパー用毛によれば、高い歯間清掃力、刷掃実感、さらには優れた毛先の当たり心地を獲得することができる。用毛の硬さについても、PBTとPETの中間のように微妙な毛腰でも、樹脂のブレンド比を変えることによって容易に実現できる。また、用毛の製造も従来から使用されている押出し成形機を用いて簡単に行なうことができ、コスト的なメリットも有している。しかし、刷毛としての耐久性(復元力)がやや犠牲となり、例えばPBTとPETのブレンド樹脂からなる用毛とした場合、PBT単一樹脂の用毛よりも耐久性(復元力)が低下してしまう。このため、耐久性について改良の余地があった。
【0007】
【特許文献1】
特表2001−511379号公報(全頁、全図)
【特許文献2】
特開平6−141923号公報(全頁、全図)
【特許文献3】
特開平9−322821号公報(全頁、全図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の用毛の場合、次のような問題があった。
(1)テーパーの形成されていない用毛の場合、隙間進入性が十分ではなく、小窩裂溝などの極めて狭い隙間の清掃が困難である。
(2)テーパー用毛の場合、刷掃実感はやや不足気味と感じる場合がある。
(3)全体がブレンド樹脂からなるテーパー用毛の場合、隙間清掃力、刷掃実感、当たり心地に優れるが、復元力の点で問題があり、刷毛の耐久性が低下する。
(4)各層に単一樹脂を用いた多層構造のテーパー用毛の場合、刷掃実感と刷毛耐久性(復元力)を大幅に向上させることができるが、層間の物性の差が大きく、毛先の当たり心地にやや不自然さがある。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、ブレンド樹脂を用いた多層構造型のテーパー用毛と、これを用いた歯ブラシを提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明のテーパー用毛は、同心状をした2層以上の樹脂層からなる多層構造とし、該樹脂層のうち少なくとも1層は複数の樹脂を混合したブレンド樹脂とするとともに、両端部または一方の端部をテーパー状としたものである。なお、前記ブレンド樹脂は隣接する層の樹脂を含むことが望ましい。また、内側の層は外側の層よりも復元力の高い樹脂とすることが望ましい。さらに、本発明の歯ブラシは、刷毛の全部または一部に、前記テーパー用毛を用いたことを特徴とするものである。
【0011】
上記構成とすることにより、多層構造になるテーパー用毛の層間の樹脂物性差を緩やかにすることができ、刷毛としての自然なたわみを実現し、毛先の当たり心地を向上することができる。また、層の数や樹脂の組み合わせ、ブレンド比率などを変えることにより、隙間進入性、刷掃実感、刷毛耐久性(復元力)、毛腰強度などを任意に調整することができる。
【0012】
1.用毛の外観と形状
本発明のテーパー用毛は、用毛の両端部または一方の端部が基本的に毛先にいくほどその径が小さくなるテーパー用毛である。テーパーの尖り具合は一様でなくてもよいが、最先端径は1〜100μmの範囲とすることが望ましく、さらに望ましくは5〜50μmの範囲である。テーパー形状は連続的になだらかにつながる形状の方が、使用感、耐久性(復元力)ともに優れている。テーパーの始まる位置は、毛先から3mm程度の位置でよいが、しなやかで隙間により進入しやすくするためには、8〜10mm程度から始まる方が好ましい。
【0013】
歯ブラシに用いる場合、テーパーの付いていない基部の用毛径は100〜250μm程度がよく、より好ましくは150〜200μmの範囲である。また、歯ブラシに植設する前のテーパー加工毛のカットピース長は20〜34mm程度とすることが望ましく、詳細な設定は目的に応じて決定すればよい。
【0014】
用毛の断面形状は、自然な使用感を求めるなら円形が望ましいが、目的に応じて星形断面、三角形断面、四角形断面などでもよく、特に断面形状に制限はない。用毛の色は単色でもよいが、多層構造からなる用毛の各層の色を変えることで、根元部から毛先までの色を層の数だけ変えることができる。
【0015】
2.用毛の構造
本発明のテーパー用毛は、複数の共押出し物からなる同心状の多層構造になる。層数は何層構造でもよいが、製造コストと使用感向上の効果とのバランスを考慮した場合、二層構造か、複雑でも三層構造程度が好ましい。刷毛としての耐久性(復元力)確保の点から内層の物性を基本とし、外層の付加によって毛腰の向上を図ることが望ましい。したがって、基本的に外層よりも内層の厚みを厚くする方が望ましい。ただし、外層があまりに薄すぎると改質効果が期待できなくなるため、外層の厚みは内層厚みの1%程度以上とすることが望ましい。
【0016】
3.用毛の材料
本発明のテーパー用毛は、多層構造の各層が異なる共押出し材料によって構成されている。共押出し物に特に制限はないが、薬品による化学的テーパー加工を考慮するなら、少なくとも一部は薬品溶解性の高いPET(ポリエチレンテレフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)のようなポリエステル系樹脂からなることが望ましい。
【0017】
このテーパー用毛は、毛先ほど内層が露出する状態となるが、各層を単一素材で構成した場合、樹脂間の剛性差が大きいために各層の境目でしなり感がややクセのあるものになりやすい。したがって、一方の層の樹脂構成が単一素材でも、それに隣接する層の樹脂は複数の樹脂を混練してブレンドした樹脂とすることが望ましい。さらに、このブレンド樹脂には隣接する層、特に内側の層に含まれる樹脂をブレンドすることが望ましい。これによって、隣接する層間の物性差を緩やかなものとすることができる。このブレンド比率は、20〜80%程度が望ましく、あまりブレンド比が高くても低くてもブレンド本来の目的をなさなくなる。
【0018】
樹脂の組み合わせ例としては、例えば2層構造の場合を例に採ると、内層=PBT、外層=PBT+PETブレンド樹脂の構造が代表的であり、その他に、内層=PTT、外層=PTT+PBTブレンド樹脂の構造、内層=PTT+PBTブレンド樹脂、外層=PTT+PBTブレンド樹脂の構造なども採用される。
【0019】
上記のように少なくとも多層構造になる1層にブレンド樹脂を用いることで、層間の物性差が緩やかになり、結果として自然なしなり感を有するテーパー用毛を得ることができる。なお、すべての層がブレンド樹脂で構成されていてもよいが、いずれの層をブレンド樹脂とするかは目標とする使用感やコストとのバランスを考慮して選定すればよい。こうすることによって、しなやかな芯を持った複合樹脂フィラメントを得ることができ、結果として高い刷掃実感と刷掃耐久性((復元力)を実現することができる。
【0020】
4.用毛の製造
多層構造の少なくとも一層をブレンド樹脂による共押出し成形したものを原糸として製造し、この原糸を所定本数束ねた後、定寸にカットする。ブレンド樹脂は、各樹脂ペレットを成形機内で混練して均一に混合したものとする。このカットピースの両端部または一端部を溶解薬品(例えば、水酸化ナトリウム溶液、加水分解溶液など)に浸漬して溶解処理し、その両端または一端部にテーパー形状を形成した後、中和・洗浄し、本発明のテーパー用毛を得る。なお、毛先のテーパー加工は上記したように歯ブラシヘッド部への植毛前に行なってもよいが、ブラシヘッド部への植毛後、用毛全体を薬品処理して形成することもできる。
【0021】
5.用毛のブラシへの植毛と毛先加工
本発明のテーパー用毛の歯ブラシヘッド部への植毛は、通常の植毛機で可能である。毛束を正確に植設することにより、トリミングすることなくそのまま毛先を活かした刷毛としてもよい。また、植毛後に必要に応じて刷毛のトリミングや毛先丸め加工を行なってもよい。歯ブラシヘッド部への植毛後にテーパーを形成する場合は、植毛後の刷毛に任意にトリミングや研磨加工を施した後、テーパー加工すればよい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に、本発明に係るテーパー用毛の第1の実施の形態を示す。
この第1の実施の形態に係るテーパー用毛11は、内層12と外層13からなる2層構造としたもので、内層12としてPBT(ポリブチレンテレフタレート)を用いるとともに、外層13としてPBTとPET(ポリエチレンテレフタレート)を混合したブレンド樹脂(混合比PBT:PET=3:7)を用い、その先端を尖らせてテーパー状としたものである。テーパーを付されていない基部分の用毛径(基部径)を190μm、内層12と外層13の厚み比を4:1、すなわち内層12の半径を76μm、外層13の厚みを19μmとした。
【0023】
この第1の実施の形態に係るテーパー用毛11は、外層13として、内層12と同じPBTをPETに混合したブレンド樹脂を用いているため、内層12と外層13間の物性の差が緩やかになり、自然なしなり感を与えることができる。また、外層13にPETを含んでいるため、用毛全体がPBT単一樹脂からなるテーパー用毛に比べて刷掃実感の高いものとなる。したがって、この第1の実施の形態に係るテーパー用毛11を用いて歯ブラシを製造すれば、PBT単一樹脂を用いた従来の歯ブラシに比べ、しなり感が自然で刷掃実感に優れた歯ブラシを得ることができる。
【0024】
なお、毛先に付与するテーパー形状としては、図1(b)に示したような尖り具合がほどほどの通常のテーパー形状だけに限らず、例えば図5(a)に示すように、毛先が長く鋭く尖ったいわゆるスーパーテーパー用毛や、図5(b),(c)に示すように、段差によって毛先をより細くしたいわゆる段付きテーパー用毛とすることもできる。また、テーパーは用毛の両端部に付与してもよいし、一方の端部だけに付与してもよい。両端部に付与するか、一方の端部だけに付与するかは、歯ブラシの仕様や刷毛の植毛方法などに応じて適宜選択すればよい。両端部に付与する場合、左右の端部で異なるテーパー形状としてもよいものである。これらの点については、以下に述べる他の実施の形態でも同様である。
【0025】
図2に、本発明に係るテーパー用毛の第2の実施の形態を示す。
この第2の実施の形態に係るテーパー用毛21は、第1の実施の形態と同じく、内層22と外層23からなる2層構造としたもので、内層22としてPTT(ポリトリメチレンテレフタレート)を用いるとともに、外層23としてPTTとPBTを混合したブレンド樹脂(混合比PTT:PBT=3:7)を用い、その先端を尖らせてテーパー状としたものである。基部径を190μm、内層22と外層23の厚み比を7:3、すなわち内層22の半径を66.5μm、外層23の厚みを28.5μmとした。
【0026】
この第2の実施の形態に係るテーパー用毛21は、外層23として、内層22と同じPTTをPBTに混合したブレンド樹脂を用いているため、内層22と外層23間の物性の差が緩やかになり、自然なしなり感を与えることができる。また、芯部となる内層22にPTTを用いているため、内層12にPBTを用いた第1の実施の形態よりもしなやかで当たり心地がよく、耐久性(復元力)、毛腰に優れた用毛となる。一方、内層22にPTTを用いたため、刷掃実感については内層12がPBTからなる第1の実施の形態よりもやや低くなる。したがって、この第2の実施の形態に係るテーパー用毛21を用いて歯ブラシを製造すれば、PBT単一樹脂を用いた従来の歯ブラシに比べ、しなやかで当たり心地がよく、耐久性(復元力)、毛腰に優れた歯ブラシを得ることができる。
【0027】
図3に、本発明に係るテーパー用毛の第3の実施の形態を示す。
この第3の実施の形態に係るテーパー用毛31は、第1および第2の実施の形態と同じく、内層32と外層33からなる2層構造としたもので、内層32としてPTTとPBTを混合したブレンド樹脂(混合比PTT:PBT=7:3)を用いるとともに、外層32として同じくPTTとPBTを混合したブレンド樹脂(混合比PTT:PBT=3:7)を用い、その先端を尖らせてテーパー状としたものである。基部径を220μm、内層32と外層33の厚み比を7:3、すなわち内層32の半径を77μm、外層33の厚みを33μmとした。
【0028】
この第3の実施の形態に係るテーパー用毛31は、内外層ともにPTTとPBTのブレンド樹脂を用いており、内外層でその混合比が異なるだけであるため、内層32と外層33間の物性の差が極めて緩やかになり、まったく違和感のない自然なしなり感を与えることができる。また、内層32にPBTをブレンドしているため、内層22をPTTだけで構成した前記第2の実施の形態よりも刷掃実感の優れた用毛となる。したがって、この第3の実施の形態に係るテーパー用毛31を用いて歯ブラシを製造すれば、第2の実施の形態のものよりも刷掃実感のよい歯ブラシを得ることができる。
【0029】
図4に、本発明に係るテーパー用毛の第4の実施の形態を示す。
この第4の実施の形態に係るテーパー用毛41は、内層42、第1中間層43、第2中間層44、外層45からなる4層構造としたもので、内層42としてPTT、第1中間層43としてPTTとPBTを混合したブレンド樹脂(混合比PTT:PBT=1:1)、第2中間層44としてPBT、外層45としてPBTとPETを混合したブレンド樹脂(混合比PBT:PET=2:1)を用い、その先端を尖らせてテーパー状としたものである。基部径を180μm、内層42、第1中間層43、第2中間層44、外層45の厚み比を3:1:1:1、すなわち内層42の半径を45μm、第1中間層43の厚みを15μm、第2中間層44の厚みを15μm、外層45の厚みを15μmとした。
【0030】
この第4の実施の形態に係るテーパー用毛41は、4層構造とするとともに、各層にPTT、PBT、PETという3種類の樹脂を単一あるいはブレンドして用いているため、しなやかさ、当たり心地、刷掃実感、耐久性(復元力)、毛腰のそれぞれについて最適な仕様を実現することができる。しかし、その反面、構造が4層と複雑なため、他の実施の形態のものよりも製造コストが高くなる。
【0031】
【実施例】
本発明の第1の実施の形態に係るテーパー用毛(図1参照)を用いた歯ブラシ(以下、「本発明品」と呼称)と、先願あるいは従来のテーパー用毛を用いた4種類の歯ブラシ(以下、「先願品」、「従来品」と呼称)を作製し、使用テストを行った。それぞれの歯ブラシで用いたテーパー用毛の仕様を表1に示す。
【0032】
【表1】
Figure 2004313365
【0033】
表1の各歯ブラシを用いて使用感の評価テストを行った。その結果を表2に示す。この評価テストは、被験者50名のそれぞれが各歯ブラシを一週間使用した後、各項目について評価したものである。表1から明らかなように、ブレンド樹脂を用いている本発明品と先願品2は、ともに隙間進入性、刷掃実感、毛先の当たり心地のバランスがよいことが確認された。
【0034】
【表2】
Figure 2004313365
【0035】
表1の各歯ブラシで用いたテーパー用毛の毛腰強度を測定した。その結果を図6に示す。測定に際しては、各テーパー用毛を7mmの長さにカットし、7mmカット毛についてその毛腰強度を測定した。図6の測定結果から明らかなように、本発明品は、先願品1(各層が単一樹脂からなる2層構造のテーパー用毛)に次いで高い毛腰強度を発揮することが確認された。
【0036】
次に、表1の各歯ブラシについて刷毛の耐久性(復元力)テストを行なった。その結果を図7に示す。耐久性(復元力)テストはモデル実験によった。歯ブラシヘッド部に400gの荷重をかけながら刷毛先端を刷掃モデル面に押し当て、ストローク40mm、往復動速度150回/秒で刷掃しながら、毛先の開き率の推移を測定した。なお、毛先の開き率は次式によった。
【0037】
【式1】
Figure 2004313365
【0038】
図7の測定結果から明らかなように、本発明品は、ブレンド樹脂を用いた2層構造でありながら、高い刷毛耐久性(復元力)を実現できることが確認された。
【0039】
以上の試験結果をまとめると、表3のような結果が得られた。本発明品は、使用感、毛腰強度、刷毛耐久性(復元力)の総合評価において、最もよい評価を得た。
【0040】
【表3】
Figure 2004313365
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、次のような優れた効果を奏することができる。
(1)従来のテーパー用毛の隙間清掃能力を維持・向上しつつ、刷掃実感を大幅に向上させることができる。
(2)自然なしなやかさと、歯茎への優れた毛先の当たり心地を有する歯ブラシを実現することができる。
(3)刷毛毛腰を過度に強くすることなしに、刷毛耐久性(復元力)を大幅に向上させることができる。
(4)用毛原糸は、通常の共押出し成形機で製造することができ、しかも従来のテーパー用毛と同様の工程で薬品処理して製造することができるため、安定した品質のテーパー用毛を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係るテーパー用毛を示すもので、(a)はテーパー用毛の先端付近の側面図、(b)は(a)中のA−A線拡大断面図である。
【図2】第2の実施の形態に係るテーパー用毛を示すもので、(a)はテーパー用毛の先端付近の側面図、(b)は(a)中のB−B線拡大断面図である。
【図3】第3の実施の形態に係るテーパー用毛を示すもので、(a)はテーパー用毛の先端付近の側面図、(b)は(a)中のC−C線拡大断面図である。
【図4】第4の実施の形態に係るテーパー用毛を示すもので、(a)はテーパー用毛の先端付近の側面図、(b)は(a)中のD−D線拡大断面図である。
【図5】テーパー形状の他の例を示すもので、(a)はスーパーテーパー用毛の例、(b)および(c)は段付きテーパー用毛の例である。
【図6】毛腰強度の測定結果を示す図である。
【図7】刷毛耐久性(復元力)の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
11 テーパー用毛
12 内層
13 外層
21 テーパー用毛
22 内層
23 外層
31 テーパー用毛
32 内層
33 外層
41 テーパー用毛
42 内層
43 第1中間層
44 第2中間層
45 外層

Claims (4)

  1. 同心状をした2層以上の樹脂層からなる多層構造とされ、該樹脂層のうち少なくとも1層は複数の樹脂を混合したブレンド樹脂からなるとともに、両端部または一方の端部がテーパー状とされていることを特徴とするテーパー用毛。
  2. 前記ブレンド樹脂が隣接する層の樹脂を含むことを特徴とする請求項1記載のテーパー用毛。
  3. 内側の層が外側の層よりも復元力の高い樹脂からなることを特徴とする請求項1または2記載のテーパー用毛。
  4. 刷毛の全部または一部に、請求項1〜3のいずれかに記載のテーパー用毛を用いたことを特徴とする歯ブラシ。
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