JP2004311324A - 車両用燃料電池の冷却装置 - Google Patents
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Abstract
【目的】本発明は、燃料電池スタックの過剰な温度上昇を防止することを目的としている。
【構成】このため、車両用燃料電池の冷却装置において、冷却水ポンプからの冷却水が燃料電池、第1の熱交換器を通り再び冷却水ポンプへと戻る第1の冷却水通路を設け、第1の冷却水通路から分岐し、第2の熱交換器を通り第1の熱交換器に接続する第2の冷却水通路を設け、冷却水を流す流路を、第1の冷却水通路のみか、あるいは第1と第2の両方の冷却水通路に流すかを切り替える流路切替手段を設け、流路切替手段は、少なくとも車速が設定された値より低いときには、第1と第2の両冷却水通路に流すように選択している。また、流路切替手段は、燃料電池スタック温度が設定された値より高いときには、第1と第2の両冷却水通路に流すように選択している。
【選択図】 図1
【構成】このため、車両用燃料電池の冷却装置において、冷却水ポンプからの冷却水が燃料電池、第1の熱交換器を通り再び冷却水ポンプへと戻る第1の冷却水通路を設け、第1の冷却水通路から分岐し、第2の熱交換器を通り第1の熱交換器に接続する第2の冷却水通路を設け、冷却水を流す流路を、第1の冷却水通路のみか、あるいは第1と第2の両方の冷却水通路に流すかを切り替える流路切替手段を設け、流路切替手段は、少なくとも車速が設定された値より低いときには、第1と第2の両冷却水通路に流すように選択している。また、流路切替手段は、燃料電池スタック温度が設定された値より高いときには、第1と第2の両冷却水通路に流すように選択している。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は車両用燃料電池の冷却装置に係り、特に燃料電池スタックの過剰な温度上昇を防止する車両用燃料電池の冷却装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両に搭載される燃料電池、例えば固体高分子電解質膜型燃料電池は、水素を主成分とする燃料ガスと酸素を含有する酸化剤ガスを用いて電気化学反応により発電するものである。前記電気化学反応の結果、排出される物質は水のみであり、クリーンな発電装置として注目されている。
【0003】
そして、前記燃料電池は、電解質である高分子イオン交換膜からなる電解質膜をアノード電極とカソード電極との2つの電極とからなる電極ユニットと、この電極ユニットに、燃料ガス及び酸化剤ガスを供給するための流体通路を形成するセパレータとから構成された単セルを積層して構成されている。
【0004】
また、前記燃料電池において、電極のアノード電極側に供給された燃料ガスは、触媒に接することにより水素イオン化され、適度に加湿された電解質膜を介してカソード電極側へと移動し、カソード電極には酸化剤ガスが供給されているため、このカソード電極において、水素イオンと酸素とが反応して水が生成され、一方、その間に生じた電子が、外部回路に取り出され、直流の電気エネルギとして利用されるものである。このとき、上記の反応は、発熱反応である。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−229947号公報 (第2−4頁、図1)
【特許文献2】
特開2002−42846号公報 (第2−3頁、図1)
【特許文献3】
特開2002−271914号公報 (第2−6頁、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の車両用燃料電池の冷却装置において、燃料電池を搭載する車両(「FCV」ともいう)では、通常、低速(「低負荷」とも換言できる)から高速(「高負荷」とも換言できる)になるに従い、スタックの運転温度は高くなる。つまり、スタックへの要求負荷と運転温度との間には、図6のような関係がある。
【0007】
例えば、60km/hでの走行から一旦停止し、その後に再始動するような場合、60km/hでの走行時においては、スタックは80度程度の高温で作動し、一旦停止した後の再始動時には、60〜70度程度の比較的低温での作動が要求されている。
【0008】
このため、再始動時には、スタック温度、すなわち冷却水温度を下げておく必要がある。
【0009】
しかし、一般に、スタックは発電により自己発熱するため、昇温性には優れているが、降温性には課題が残されている、つまり、スタック温度を急速に低下させる方策が必要とされていた。
【0010】
図6は車速とスタック温度との関係を示したものであるが、アイドリング時(「低負荷時」とも換言できる)におけるスタック最適温度は、走行時の温度よりも低温となる。
【0011】
よって、従来型の冷却方式では、図7に実線で示す如く、スタックへの冷却が遅れてしまい、一時的ではあるもののアイドリング時の最適温度よりも高い温度で作動することになる。
【0012】
これは、燃料電池のセル内部のイオン交換膜等のドライアップ(膜周辺が高温環境となって乾燥すること)を引き起こし、スタックの寿命を縮める要因となる。
【0013】
なお、通常、高温であってもある程度の負荷で発電(運転)を行えば、膜内部で水が生成されるため、この水分で膜は潤うこととなる。
【0014】
しかし、アイドリングのような低負荷では、生成水量自体が少ないため、ドライアップの進行が速いという不都合がある。
【0015】
このため、この発明は、スタックの冷却速度を上げ、スタックの耐久性をもたらす車両用燃料電池の冷却装置を提案するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、燃料電池を冷却する冷却水を循環させる冷却水ポンプと、この冷却水ポンプにより循環される冷却水の温度を低下させる第1の熱交換器とを備えた車両用燃料電池の冷却装置において、前記冷却水ポンプから送り出された冷却水が燃料電池、第1の熱交換器を通り再び冷却水ポンプへと戻る第1の冷却水通路を設け、この第1の冷却水通路から分岐し、第2の熱交換器を通り第1の熱交換器に接続する第2の冷却水通路を設け、冷却水を流す流路を、前記第1の冷却水通路のみか、あるいは第1と第2の両方の冷却水通路に流すかを切り替える流路切替手段を設け、この流路切替手段は、少なくとも車速が設定された値より低いときには、第1と第2の両冷却水通路に流すように選択していることを特徴とする。
【0017】
また、燃料電池を冷却する冷却水を循環させる冷却水ポンプと、この冷却水ポンプにより循環される冷却水の温度を低下させる第1の熱交換器とを備えた車両用燃料電池の冷却装置において、前記冷却水ポンプから送り出された冷却水が燃料電池、第1の熱交換器を通り再び冷却水ポンプへと戻る第1の冷却水通路を設け、この第1の冷却水通路から分岐し、第2の熱交換器を通り第1の熱交換器に接続する第2の冷却水通路を設け、冷却水を流す流路を、前記第1の冷却水通路のみか、あるいは第1と第2の両方の冷却水通路に流すかを切り替える流路切替手段を設け、この流路切替手段は、燃料電池スタック温度が設定された値より高いときには、第1と第2の両冷却水通路に流すように選択していることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
上述の如く発明したことにより、少なくとも車速が設定された値より低いときには、流路切替手段によって、第1と第2の両冷却水通路に流すように選択し、車速によって冷却水を流す流路を、第1の冷却水通路のみ、あるいは第1と第2の両冷却水通路に切り替え、車両が完全に停止する前の減速状態から、燃料電池スタックの温度を低下させることが可能となり、減速停止から再加速までの時間が短い場合でも、冷却効果を発揮させている。
【0019】
また、燃料電池スタック温度が設定された値より高いときには、流路切替手段によって、第1と第2の両冷却水通路に流すように選択し、常に熱交換量を増加させ、オーバヒートするのを確実に防止している。
【0020】
【実施例】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【0021】
図1〜図5はこの発明の実施例を示すものである。図1において、2は車両である。
【0022】
この車両2には、図1に示す如く、燃料電池4と、この燃料電池4を冷却する冷却水を循環させる冷却水ポンプ6と、この冷却水ポンプ6により循環される冷却水の温度を低下させる第1の熱交換器(「メインラジエータ」ともいう)8とを備える。
【0023】
このとき、前記冷却水ポンプ6は、図1に示す如く、燃料電池4よりも車両前面側(図1において右側)に配設される。
【0024】
また、前記第1の熱交換器8は、図1に示す如く、冷却水ポンプ6よりも車両前面側(図1において右側)且つ車両左側(図1において上側)に搭載されるとともに、この第1の熱交換器8よりも車両前面側には、第1のファン10が配設される。
【0025】
そして、前記冷却水ポンプ6から送り出された冷却水が燃料電池4、第1の熱交換器8を通り再び冷却水ポンプ6へと戻る第1の冷却水通路12を設ける。
【0026】
更に、この第1の冷却水通路12から分岐し、第2の熱交換器14を通り第1の熱交換器8に接続する第2の冷却水通路16を設け、冷却水を流す流路を、前記第1の冷却水通路12のみか、あるいは第1と第2の両方の冷却水通路12、16に流すかを切り替える流路切替手段18を設け、この流路切替手段18は、少なくとも車速が設定された値より低いときには、第1と第2の両冷却水通路12、16に流すように選択する構成とする。
【0027】
詳述すれば、前記第2の熱交換器14は、図1に示す如く、車両前部である車両前面側(図1において右側)、つまり前記第1の熱交換器8と同一となる位置、且つ車両右側(図1において下側)に搭載されるとともに、この第2の熱交換器14よりも車両前面側には、第2のファン20が配設される。
【0028】
また、前記第2の冷却水通路16は、第1の冷却水通路12の燃料電池4と第1の熱交換器8との間、つまり燃料電池4よりも下流側部位と第1の熱交換器8よりも上流側部位との間をバイパスすべく設けられる。
【0029】
前記流路切替手段18は、第1の冷却水通路12からの第2の冷却水通路16の分岐部位に設けられる第1切替バルブ22と、第1の冷却水通路12への第2の冷却水通路16の合流部位に設けられる第2切替バルブ24とからなる。
【0030】
更に、前記流路切替手段18は、前記車両2に搭載される制御手段26によって切替制御され、この制御手段26には、車速を検出する車速センサ28や燃料電池スタック温度を検出するスタック温度センサ30、その他のセンサ群が接続して設けられている。
【0031】
そして、前記制御手段26は、少なくとも車速、例えば車速と燃料電池スタック温度とを判定項目として有し、車速が予め設定された値である閾値より低いとき、且つ燃料電池スタック温度が予め設定された値であるアイドリング時の上限温度T1より高いときには、冷却水を第1と第2の両冷却水通路12、16に流すように、つまり図1に破線矢印で示す如く、アイドリングルートとなるように、前記流路切替手段18を切替制御する。
【0032】
このとき、車速が予め設定された値である閾値より高いとき、且つ燃料電池スタック温度が予め設定された値であるアイドリング時の上限温度T1より低いときには、前記制御手段26によって前記流路切替手段18が切替制御されることはなく、冷却水を前記第1の冷却水通路12のみに流すように、つまり図1に実線矢印で示す如く、メインループである走行時ルートを維持することとなる。
【0033】
すなわち、通常走行している場合には、冷却水を流す流路はメインループである走行時ルートを循環することとなり、走行中に減速、停止して再始動後のアイドリング状態となった際に、冷却水を流す流路がアイドリングルートに切り替えられる。
【0034】
更に、前記制御手段26における車速と燃料電池スタック温度との判定項目に関して追記すると、車速が予め設定された値である閾値より低いとき、且つ燃料電池スタック温度が予め設定された値であるアイドリング時の上限温度T1より高いときが基準時間を超えた場合に、これを「停止寸前状態」と判定し、冷却水を流す流路である循環ループを走行時ルートからアイドリングルートに切り替えるものである。
【0035】
なお、上述したルートの切替に際しては、電気的に応答させるため、車速センサ28からの検出信号やスタック温度センサ30からの検出信号等を前記制御手段26に取り込み、この制御手段26によって常時監視することで、前記流路切替手段18である第1、第2切替バルブ22、24の切替制御を行う。
【0036】
そして、通常の走行時には、車速が予め設定された値である閾値より高く、且つ燃料電池スタック温度が予め設定された値であるアイドリング時の上限温度T1より低いため、前記制御手段26によって前記流路切替手段18が切替制御されることはなく、冷却水を前記第1の冷却水通路12のみに流すように、つまり図1に実線矢印で示す如く、メインループである走行時ルートが維持され、図2に示す如く、前記流路切替手段18によって、第2の熱交換器14への第2の冷却水通路16が第1の冷却水通路12から遮断され、第2の熱交換器14が密閉空間となって冷却中状態となり、第2の熱交換器14の冷却水温度Tsと第1の熱交換器8の冷却水温度Tmとの関係が、
Ts<Tm
となる。
【0037】
また、走行中に減速、停止して再始動後のアイドリング時には、車速が予め設定された値である閾値より低く、且つ燃料電池スタック温度が予め設定された値であるアイドリング時の上限温度T1より高いため、前記制御手段26によって前記流路切替手段18が切替制御され、第1と第2の両冷却水通路12、16に流すように、つまり図1に破線矢印で示す如く、アイドリングルートに切り替えられ、図3に示す如く、第2の冷却水通路16が第1の冷却水通路12に連通され、第2の熱交換器14側で冷やされた冷却水との混合によって急速に水温が低下することとなる。
【0038】
次に、図4の切替作動時のフローチャートに沿って、作用を説明する。
【0039】
先ず、車速が予め設定された値である閾値より低いか、例えば車速が閾値以下であるか否かの判定と、燃料電池スタック温度が予め設定された値であるアイドリング時の上限温度T1より高いか、例えば燃料電池スタック温度がアイドリング時の上限温度T1以上であるか否かの判定を行い(102)、この判定処理(102)において、いずれか一方の判定がNOの場合には、両方の判定がYESとなるまで繰り返し判定処理(102)を行い、判定処理(102)において、両方の判定がYESの場合には、時間経過の判定処理(104)に移行する。
【0040】
この時間経過の判定処理(104)においては、車速閾値以下での時間経過が基準時間を超えているか否かの判定を行い、判定処理(104)において、判定がNOの場合には、判定がYESとなるまで繰り返し判定処理(104)を行い、判定処理(104)において、判定がYESの場合には、バルブ切替処理(106)に移行する。
【0041】
そして、バルブ切替処理(106)に至った場合には、前記制御手段26によって前記流路切替手段18を切替制御し、第1と第2の両冷却水通路12、16に流すように、つまり図1に破線矢印で示す如く、走行時ルートからアイドリングルートに切り替えられる。
【0042】
また、燃料電池スタック温度がアイドリング時の最適温度T2に到達(108)した際には、バルブ切替処理(110)に移行する。
【0043】
このバルブ切替処理(110)に至った場合には、前記制御手段26による前記流路切替手段18の切替制御を停止し、第1の冷却水通路12のみに流すように、つまり図1に実線矢印で示す如く、アイドリングルートから走行時ルートに切り替えられ、上述した判定処理(102)に戻る。
【0044】
追記すれば、アイドリングルートにおいては、燃料電池スタックの電力若しくは2次電池(ハイブリッド方式の場合)の電力を使用し、第2のファン20を駆動させ、冷却水が第2の熱交換器14を通過すべく切替制御し、ラジエータ追加による冷却効果と車両停止前から冷却水を流す流路である循環ループを切り替えることで、冷却水(「循環水」とも言える)の急速冷却が可能となる。よって、直ちに再加速するような場合(信号待ちのような場合)にも、燃料電池スタックを低温から始動させることが可能となる。
【0045】
また、アイドリングルートにおける最適温度に達した際には、再び冷却水を流す流路である循環ループを、アイドリングルートから走行時ルートに切り替える。走行時はメインループである走行時ルートのみであるため、第2の熱交換器14側の第2の冷却水通路16は閉じた空間となり、この空間内に溜まった冷却水は、外気(「通過風」ともいう)へ放熱されていく。
【0046】
前記第2の熱交換器14を、図1に示す如く、車両前面側に配置したため、車速風により強制空冷され、第2の熱交換器14に残存する冷却水の温度は低下していくこととなる(なお、外気温度が高い場合には、第2のファン20を駆動させても良い)。
【0047】
よって、走行状態から再停止する過程では、走行時ルートからアイドリングルートへの切替により第2の熱交換器14内の冷やされた冷却水が第1と第2の両冷却水通路12、16の合流部位で混合され、第2の熱交換器14自身が冷却水のバッファとして機能し、冷却水温度の急速冷却を補助するメリットが付加される。
【0048】
ここで、アイドリング時及び走行時の許容温度に関して説明すると、図5に示す如く、アイドリング時の最適温度T2は、上限温度T1よりも下限温度T3側に設定され、最適温度T2は、燃料電池スタックの持つ運転マップ(「ロードマップ」ともいう)に基づき、制御対象として扱われる。
【0049】
つまり、走行時においても、この最適温度T2を目標として各冷却コンポーネントの制御を行うものである。
【0050】
従って、夏場の高速運転のように通常走行中であっても、上限温度T1を超えてしまうような場合には、第2の熱交換器14を併用するようにバルブ切替を行い、冷却量を補うこととする。
【0051】
これにより、車速によって冷却水を流す流路を、第1の冷却水通路12のみ、あるいは第1と第2の両冷却水通路12、16に切り替えるため、車両が完全に停止する前の減速状態から、燃料電池スタックの温度を低下させることが可能となり、減速停止から再加速までの時間が短い場合でも、冷却効果を発揮させることができ、実用上有利である。
【0052】
また、前記燃料電池4のスタック温度が高いときは、常に熱交換量を増加させることができるので、オーバヒートするのを確実に防止することが可能である。
【0053】
更に、車両前部に第2の熱交換器14を搭載したことにより、第2の熱交換器14に冷却水が循環されていない場合でも、第2の熱交換器14に溜められた冷却水は走行風により冷却されているため、前記流路切替手段18の第1、第2切替バルブ22、24により第2の熱交換器14が燃料電池4と連通したときに、予めよく冷却された第2の熱交換器14に溜められた冷却水によって、冷却水の温度を急速に下げることが可能となるものである。
【0054】
なお、この発明は上述実施例に限定されるものではなく、種々の応用改変が可能である。
【0055】
例えば、この発明の実施例においては、車速と燃料電池スタック温度とを判定項目として、冷却水を流す流路を、走行ルートあるいはアイドリングルートに切り替える構成としたが、現在の熱交換状態に応じて冷却水を流す流路を、走行ルートあるいはアイドリングルートに切り替える構成を追加することも可能である。
【0056】
すなわち、サブラジエータである第2の熱交換器は減速時やアイドリング中に機能して、冷却機能を高める役割を担っているが、高速道路での高速巡航や夏場等の外気温度が高い場合には、メインラジエータである第1の熱交換器のみでは熱交換が不足して燃料電池スタックがオーバヒートする可能性が考えられる。
【0057】
このため、このような場合には、通常走行時においても、サブラジエータである第2の熱交換器を通すように、つまり、冷却水を流す流路を、走行ルートからアイドリングルートに切り替えることにより、全体の熱交換量をアップさせてオーバヒートの防止を可能とするものである。
【0058】
また、この発明の実施例においては、燃料電池スタックの応答性や耐久性を改善するために、燃料電池スタックの過剰な温度上昇を防止する構成としたが、燃料電池スタック以外にも、インバータ等の電気部品に対しても、過剰な温度上昇の防止に応用可能である。
【0059】
更に、この発明の実施例においては、メインラジエータである第1の熱交換器を主として駆動させ、サブラジエータである第2の熱交換器を所定の条件成立時に追加駆動する構成としたが、メインラジエータである第1の熱交換器と、この第1の熱交換器よりも小なる熱交換機能を有するサブラジエータである第2の熱交換器とを選択的に駆動する特別構成とすることも可能である。
【0060】
すなわち、選択的な駆動としては、
(1)第1の熱交換器と第2の熱交換器とを交互に選択して、例えば1対1の駆動時間割合や任意の駆動時間割合で駆動する場合
(2)第1の熱交換器のみ、あるいは第2の熱交換器のみ、または第1、第2の熱交換器の両方を選択して駆動する場合
等が考えられ、冷却水の流路の接続状態を変更し、走行状態に合致させるべく上述の駆動形態を切替制御するものである。
【0061】
追記すれば、走行状態においては、小なる熱交換機能を有するサブラジエータである第2の熱交換器のみを使用する程度で対応できる場合を下限とするとともに、第1、第2の熱交換器の両方を使用する必要のある場合を上限とする範囲内で種々状況が生ずるものであり、これらの状況に合致させるべく、第1、第2の熱交換器の駆動形態を切替制御する。
【0062】
さすれば、走行状態に合致させるべく第1、第2の熱交換器の両方を効果的に駆動させることができ、冷却水温度を適正な状態に維持することが可能となる。
【0063】
また、車両に搭載されるナビゲーションからの入力情報を入手することができる場合には、走行距離や現在位置等から車両の停止時期を把握することが可能であり、例えば車両の停止時期と推測される1時間前に、第1、第2の熱交換器の内、いずれか一方の熱交換器が非駆動状態となるように、つまり燃料電池スタックを冷却する冷却水の流路から遮断される状態に制御し、車両停止後の再始動に備える特別構成とすることも可能である。
【0064】
つまり、車両の停止時期と推測される1時間前には、第1、第2の熱交換器の内、いずれか一方の熱交換器が非駆動状態となるように、つまり燃料電池スタックを冷却する冷却水の流路から遮断される状態に制御されることとなり、遮断された方の熱交換器が走行風によって冷却水を冷却し、車両停止後の再始動のアイドリング時に遮断されていた方の熱交換器を燃料電池スタックを冷却する冷却水の流路に連通させて駆動状態とする。これにより、燃料電池スタックの温度を低下させることが可能となるものである。
【0065】
【発明の効果】
以上詳細に説明した如くこの本発明によれば、燃料電池を冷却する冷却水を循環させる冷却水ポンプと、冷却水ポンプにより循環される冷却水の温度を低下させる第1の熱交換器とを備えた車両用燃料電池の冷却装置において、冷却水ポンプから送り出された冷却水が燃料電池、第1の熱交換器を通り再び冷却水ポンプへと戻る第1の冷却水通路を設け、第1の冷却水通路から分岐し、第2の熱交換器を通り第1の熱交換器に接続する第2の冷却水通路を設け、冷却水を流す流路を、第1の冷却水通路のみか、あるいは第1と第2の両方の冷却水通路に流すかを切り替える流路切替手段を設け、流路切替手段は、少なくとも車速が設定された値より低いときには、第1と第2の両冷却水通路に流すように選択していることにより、車速によって冷却水を流す流路を、第1の冷却水通路のみ、あるいは第1と第2の両冷却水通路に切り替えるため、車両が完全に停止する前の減速状態から、燃料電池スタックの温度を低下させることが可能となり、減速停止から再加速までの時間が短い場合でも、冷却効果を発揮させることができる。
【0066】
また、燃料電池を冷却する冷却水を循環させる冷却水ポンプと、冷却水ポンプにより循環される冷却水の温度を低下させる第1の熱交換器とを備えた車両用燃料電池の冷却装置において、冷却水ポンプから送り出された冷却水が燃料電池、第1の熱交換器を通り再び冷却水ポンプへと戻る第1の冷却水通路を設け、第1の冷却水通路から分岐し、第2の熱交換器を通り第1の熱交換器に接続する第2の冷却水通路を設け、冷却水を流す流路を、第1の冷却水通路のみか、あるいは第1と第2の両方の冷却水通路に流すかを切り替える流路切替手段を設け、流路切替手段は、燃料電池スタック温度が設定された値より高いときには、第1と第2の両冷却水通路に流すように選択していることにより、前記燃料電池のスタック温度が高いときは、常に熱交換量を増加させることができ、オーバヒートするのを確実に防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例を示す車両用燃料電池の冷却装置の概略構成図である。
【図2】通常走行時の冷却水の流れを示す要部拡大図である。
【図3】アイドリング時の冷却水の流れを示す要部拡大図である。
【図4】車速の時間判定によるバルブ切替を説明するフローチャートである。
【図5】アイドリング時(走行時)の許容温度を示す図である。
【図6】この発明の従来技術を示すスタックへの要求負荷と運転温度との関係図である。
【図7】アイドリング時におけるスタック冷却の遅れを示す図である。
【符号の説明】
2 車両
4 燃料電池
6 冷却水ポンプ
8 第1の熱交換器(「メインラジエータ」ともいう)
10 第1のファン
12 第1の冷却水通路
14 第2の熱交換器
16 第2の冷却水通路
18 流路切替手段
20 第2のファン
22 第1切替バルブ
24 第2切替バルブ
26 制御手段
28 車速センサ
30 スタック温度センサ
【発明の属する技術分野】
この発明は車両用燃料電池の冷却装置に係り、特に燃料電池スタックの過剰な温度上昇を防止する車両用燃料電池の冷却装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両に搭載される燃料電池、例えば固体高分子電解質膜型燃料電池は、水素を主成分とする燃料ガスと酸素を含有する酸化剤ガスを用いて電気化学反応により発電するものである。前記電気化学反応の結果、排出される物質は水のみであり、クリーンな発電装置として注目されている。
【0003】
そして、前記燃料電池は、電解質である高分子イオン交換膜からなる電解質膜をアノード電極とカソード電極との2つの電極とからなる電極ユニットと、この電極ユニットに、燃料ガス及び酸化剤ガスを供給するための流体通路を形成するセパレータとから構成された単セルを積層して構成されている。
【0004】
また、前記燃料電池において、電極のアノード電極側に供給された燃料ガスは、触媒に接することにより水素イオン化され、適度に加湿された電解質膜を介してカソード電極側へと移動し、カソード電極には酸化剤ガスが供給されているため、このカソード電極において、水素イオンと酸素とが反応して水が生成され、一方、その間に生じた電子が、外部回路に取り出され、直流の電気エネルギとして利用されるものである。このとき、上記の反応は、発熱反応である。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−229947号公報 (第2−4頁、図1)
【特許文献2】
特開2002−42846号公報 (第2−3頁、図1)
【特許文献3】
特開2002−271914号公報 (第2−6頁、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の車両用燃料電池の冷却装置において、燃料電池を搭載する車両(「FCV」ともいう)では、通常、低速(「低負荷」とも換言できる)から高速(「高負荷」とも換言できる)になるに従い、スタックの運転温度は高くなる。つまり、スタックへの要求負荷と運転温度との間には、図6のような関係がある。
【0007】
例えば、60km/hでの走行から一旦停止し、その後に再始動するような場合、60km/hでの走行時においては、スタックは80度程度の高温で作動し、一旦停止した後の再始動時には、60〜70度程度の比較的低温での作動が要求されている。
【0008】
このため、再始動時には、スタック温度、すなわち冷却水温度を下げておく必要がある。
【0009】
しかし、一般に、スタックは発電により自己発熱するため、昇温性には優れているが、降温性には課題が残されている、つまり、スタック温度を急速に低下させる方策が必要とされていた。
【0010】
図6は車速とスタック温度との関係を示したものであるが、アイドリング時(「低負荷時」とも換言できる)におけるスタック最適温度は、走行時の温度よりも低温となる。
【0011】
よって、従来型の冷却方式では、図7に実線で示す如く、スタックへの冷却が遅れてしまい、一時的ではあるもののアイドリング時の最適温度よりも高い温度で作動することになる。
【0012】
これは、燃料電池のセル内部のイオン交換膜等のドライアップ(膜周辺が高温環境となって乾燥すること)を引き起こし、スタックの寿命を縮める要因となる。
【0013】
なお、通常、高温であってもある程度の負荷で発電(運転)を行えば、膜内部で水が生成されるため、この水分で膜は潤うこととなる。
【0014】
しかし、アイドリングのような低負荷では、生成水量自体が少ないため、ドライアップの進行が速いという不都合がある。
【0015】
このため、この発明は、スタックの冷却速度を上げ、スタックの耐久性をもたらす車両用燃料電池の冷却装置を提案するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、燃料電池を冷却する冷却水を循環させる冷却水ポンプと、この冷却水ポンプにより循環される冷却水の温度を低下させる第1の熱交換器とを備えた車両用燃料電池の冷却装置において、前記冷却水ポンプから送り出された冷却水が燃料電池、第1の熱交換器を通り再び冷却水ポンプへと戻る第1の冷却水通路を設け、この第1の冷却水通路から分岐し、第2の熱交換器を通り第1の熱交換器に接続する第2の冷却水通路を設け、冷却水を流す流路を、前記第1の冷却水通路のみか、あるいは第1と第2の両方の冷却水通路に流すかを切り替える流路切替手段を設け、この流路切替手段は、少なくとも車速が設定された値より低いときには、第1と第2の両冷却水通路に流すように選択していることを特徴とする。
【0017】
また、燃料電池を冷却する冷却水を循環させる冷却水ポンプと、この冷却水ポンプにより循環される冷却水の温度を低下させる第1の熱交換器とを備えた車両用燃料電池の冷却装置において、前記冷却水ポンプから送り出された冷却水が燃料電池、第1の熱交換器を通り再び冷却水ポンプへと戻る第1の冷却水通路を設け、この第1の冷却水通路から分岐し、第2の熱交換器を通り第1の熱交換器に接続する第2の冷却水通路を設け、冷却水を流す流路を、前記第1の冷却水通路のみか、あるいは第1と第2の両方の冷却水通路に流すかを切り替える流路切替手段を設け、この流路切替手段は、燃料電池スタック温度が設定された値より高いときには、第1と第2の両冷却水通路に流すように選択していることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
上述の如く発明したことにより、少なくとも車速が設定された値より低いときには、流路切替手段によって、第1と第2の両冷却水通路に流すように選択し、車速によって冷却水を流す流路を、第1の冷却水通路のみ、あるいは第1と第2の両冷却水通路に切り替え、車両が完全に停止する前の減速状態から、燃料電池スタックの温度を低下させることが可能となり、減速停止から再加速までの時間が短い場合でも、冷却効果を発揮させている。
【0019】
また、燃料電池スタック温度が設定された値より高いときには、流路切替手段によって、第1と第2の両冷却水通路に流すように選択し、常に熱交換量を増加させ、オーバヒートするのを確実に防止している。
【0020】
【実施例】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【0021】
図1〜図5はこの発明の実施例を示すものである。図1において、2は車両である。
【0022】
この車両2には、図1に示す如く、燃料電池4と、この燃料電池4を冷却する冷却水を循環させる冷却水ポンプ6と、この冷却水ポンプ6により循環される冷却水の温度を低下させる第1の熱交換器(「メインラジエータ」ともいう)8とを備える。
【0023】
このとき、前記冷却水ポンプ6は、図1に示す如く、燃料電池4よりも車両前面側(図1において右側)に配設される。
【0024】
また、前記第1の熱交換器8は、図1に示す如く、冷却水ポンプ6よりも車両前面側(図1において右側)且つ車両左側(図1において上側)に搭載されるとともに、この第1の熱交換器8よりも車両前面側には、第1のファン10が配設される。
【0025】
そして、前記冷却水ポンプ6から送り出された冷却水が燃料電池4、第1の熱交換器8を通り再び冷却水ポンプ6へと戻る第1の冷却水通路12を設ける。
【0026】
更に、この第1の冷却水通路12から分岐し、第2の熱交換器14を通り第1の熱交換器8に接続する第2の冷却水通路16を設け、冷却水を流す流路を、前記第1の冷却水通路12のみか、あるいは第1と第2の両方の冷却水通路12、16に流すかを切り替える流路切替手段18を設け、この流路切替手段18は、少なくとも車速が設定された値より低いときには、第1と第2の両冷却水通路12、16に流すように選択する構成とする。
【0027】
詳述すれば、前記第2の熱交換器14は、図1に示す如く、車両前部である車両前面側(図1において右側)、つまり前記第1の熱交換器8と同一となる位置、且つ車両右側(図1において下側)に搭載されるとともに、この第2の熱交換器14よりも車両前面側には、第2のファン20が配設される。
【0028】
また、前記第2の冷却水通路16は、第1の冷却水通路12の燃料電池4と第1の熱交換器8との間、つまり燃料電池4よりも下流側部位と第1の熱交換器8よりも上流側部位との間をバイパスすべく設けられる。
【0029】
前記流路切替手段18は、第1の冷却水通路12からの第2の冷却水通路16の分岐部位に設けられる第1切替バルブ22と、第1の冷却水通路12への第2の冷却水通路16の合流部位に設けられる第2切替バルブ24とからなる。
【0030】
更に、前記流路切替手段18は、前記車両2に搭載される制御手段26によって切替制御され、この制御手段26には、車速を検出する車速センサ28や燃料電池スタック温度を検出するスタック温度センサ30、その他のセンサ群が接続して設けられている。
【0031】
そして、前記制御手段26は、少なくとも車速、例えば車速と燃料電池スタック温度とを判定項目として有し、車速が予め設定された値である閾値より低いとき、且つ燃料電池スタック温度が予め設定された値であるアイドリング時の上限温度T1より高いときには、冷却水を第1と第2の両冷却水通路12、16に流すように、つまり図1に破線矢印で示す如く、アイドリングルートとなるように、前記流路切替手段18を切替制御する。
【0032】
このとき、車速が予め設定された値である閾値より高いとき、且つ燃料電池スタック温度が予め設定された値であるアイドリング時の上限温度T1より低いときには、前記制御手段26によって前記流路切替手段18が切替制御されることはなく、冷却水を前記第1の冷却水通路12のみに流すように、つまり図1に実線矢印で示す如く、メインループである走行時ルートを維持することとなる。
【0033】
すなわち、通常走行している場合には、冷却水を流す流路はメインループである走行時ルートを循環することとなり、走行中に減速、停止して再始動後のアイドリング状態となった際に、冷却水を流す流路がアイドリングルートに切り替えられる。
【0034】
更に、前記制御手段26における車速と燃料電池スタック温度との判定項目に関して追記すると、車速が予め設定された値である閾値より低いとき、且つ燃料電池スタック温度が予め設定された値であるアイドリング時の上限温度T1より高いときが基準時間を超えた場合に、これを「停止寸前状態」と判定し、冷却水を流す流路である循環ループを走行時ルートからアイドリングルートに切り替えるものである。
【0035】
なお、上述したルートの切替に際しては、電気的に応答させるため、車速センサ28からの検出信号やスタック温度センサ30からの検出信号等を前記制御手段26に取り込み、この制御手段26によって常時監視することで、前記流路切替手段18である第1、第2切替バルブ22、24の切替制御を行う。
【0036】
そして、通常の走行時には、車速が予め設定された値である閾値より高く、且つ燃料電池スタック温度が予め設定された値であるアイドリング時の上限温度T1より低いため、前記制御手段26によって前記流路切替手段18が切替制御されることはなく、冷却水を前記第1の冷却水通路12のみに流すように、つまり図1に実線矢印で示す如く、メインループである走行時ルートが維持され、図2に示す如く、前記流路切替手段18によって、第2の熱交換器14への第2の冷却水通路16が第1の冷却水通路12から遮断され、第2の熱交換器14が密閉空間となって冷却中状態となり、第2の熱交換器14の冷却水温度Tsと第1の熱交換器8の冷却水温度Tmとの関係が、
Ts<Tm
となる。
【0037】
また、走行中に減速、停止して再始動後のアイドリング時には、車速が予め設定された値である閾値より低く、且つ燃料電池スタック温度が予め設定された値であるアイドリング時の上限温度T1より高いため、前記制御手段26によって前記流路切替手段18が切替制御され、第1と第2の両冷却水通路12、16に流すように、つまり図1に破線矢印で示す如く、アイドリングルートに切り替えられ、図3に示す如く、第2の冷却水通路16が第1の冷却水通路12に連通され、第2の熱交換器14側で冷やされた冷却水との混合によって急速に水温が低下することとなる。
【0038】
次に、図4の切替作動時のフローチャートに沿って、作用を説明する。
【0039】
先ず、車速が予め設定された値である閾値より低いか、例えば車速が閾値以下であるか否かの判定と、燃料電池スタック温度が予め設定された値であるアイドリング時の上限温度T1より高いか、例えば燃料電池スタック温度がアイドリング時の上限温度T1以上であるか否かの判定を行い(102)、この判定処理(102)において、いずれか一方の判定がNOの場合には、両方の判定がYESとなるまで繰り返し判定処理(102)を行い、判定処理(102)において、両方の判定がYESの場合には、時間経過の判定処理(104)に移行する。
【0040】
この時間経過の判定処理(104)においては、車速閾値以下での時間経過が基準時間を超えているか否かの判定を行い、判定処理(104)において、判定がNOの場合には、判定がYESとなるまで繰り返し判定処理(104)を行い、判定処理(104)において、判定がYESの場合には、バルブ切替処理(106)に移行する。
【0041】
そして、バルブ切替処理(106)に至った場合には、前記制御手段26によって前記流路切替手段18を切替制御し、第1と第2の両冷却水通路12、16に流すように、つまり図1に破線矢印で示す如く、走行時ルートからアイドリングルートに切り替えられる。
【0042】
また、燃料電池スタック温度がアイドリング時の最適温度T2に到達(108)した際には、バルブ切替処理(110)に移行する。
【0043】
このバルブ切替処理(110)に至った場合には、前記制御手段26による前記流路切替手段18の切替制御を停止し、第1の冷却水通路12のみに流すように、つまり図1に実線矢印で示す如く、アイドリングルートから走行時ルートに切り替えられ、上述した判定処理(102)に戻る。
【0044】
追記すれば、アイドリングルートにおいては、燃料電池スタックの電力若しくは2次電池(ハイブリッド方式の場合)の電力を使用し、第2のファン20を駆動させ、冷却水が第2の熱交換器14を通過すべく切替制御し、ラジエータ追加による冷却効果と車両停止前から冷却水を流す流路である循環ループを切り替えることで、冷却水(「循環水」とも言える)の急速冷却が可能となる。よって、直ちに再加速するような場合(信号待ちのような場合)にも、燃料電池スタックを低温から始動させることが可能となる。
【0045】
また、アイドリングルートにおける最適温度に達した際には、再び冷却水を流す流路である循環ループを、アイドリングルートから走行時ルートに切り替える。走行時はメインループである走行時ルートのみであるため、第2の熱交換器14側の第2の冷却水通路16は閉じた空間となり、この空間内に溜まった冷却水は、外気(「通過風」ともいう)へ放熱されていく。
【0046】
前記第2の熱交換器14を、図1に示す如く、車両前面側に配置したため、車速風により強制空冷され、第2の熱交換器14に残存する冷却水の温度は低下していくこととなる(なお、外気温度が高い場合には、第2のファン20を駆動させても良い)。
【0047】
よって、走行状態から再停止する過程では、走行時ルートからアイドリングルートへの切替により第2の熱交換器14内の冷やされた冷却水が第1と第2の両冷却水通路12、16の合流部位で混合され、第2の熱交換器14自身が冷却水のバッファとして機能し、冷却水温度の急速冷却を補助するメリットが付加される。
【0048】
ここで、アイドリング時及び走行時の許容温度に関して説明すると、図5に示す如く、アイドリング時の最適温度T2は、上限温度T1よりも下限温度T3側に設定され、最適温度T2は、燃料電池スタックの持つ運転マップ(「ロードマップ」ともいう)に基づき、制御対象として扱われる。
【0049】
つまり、走行時においても、この最適温度T2を目標として各冷却コンポーネントの制御を行うものである。
【0050】
従って、夏場の高速運転のように通常走行中であっても、上限温度T1を超えてしまうような場合には、第2の熱交換器14を併用するようにバルブ切替を行い、冷却量を補うこととする。
【0051】
これにより、車速によって冷却水を流す流路を、第1の冷却水通路12のみ、あるいは第1と第2の両冷却水通路12、16に切り替えるため、車両が完全に停止する前の減速状態から、燃料電池スタックの温度を低下させることが可能となり、減速停止から再加速までの時間が短い場合でも、冷却効果を発揮させることができ、実用上有利である。
【0052】
また、前記燃料電池4のスタック温度が高いときは、常に熱交換量を増加させることができるので、オーバヒートするのを確実に防止することが可能である。
【0053】
更に、車両前部に第2の熱交換器14を搭載したことにより、第2の熱交換器14に冷却水が循環されていない場合でも、第2の熱交換器14に溜められた冷却水は走行風により冷却されているため、前記流路切替手段18の第1、第2切替バルブ22、24により第2の熱交換器14が燃料電池4と連通したときに、予めよく冷却された第2の熱交換器14に溜められた冷却水によって、冷却水の温度を急速に下げることが可能となるものである。
【0054】
なお、この発明は上述実施例に限定されるものではなく、種々の応用改変が可能である。
【0055】
例えば、この発明の実施例においては、車速と燃料電池スタック温度とを判定項目として、冷却水を流す流路を、走行ルートあるいはアイドリングルートに切り替える構成としたが、現在の熱交換状態に応じて冷却水を流す流路を、走行ルートあるいはアイドリングルートに切り替える構成を追加することも可能である。
【0056】
すなわち、サブラジエータである第2の熱交換器は減速時やアイドリング中に機能して、冷却機能を高める役割を担っているが、高速道路での高速巡航や夏場等の外気温度が高い場合には、メインラジエータである第1の熱交換器のみでは熱交換が不足して燃料電池スタックがオーバヒートする可能性が考えられる。
【0057】
このため、このような場合には、通常走行時においても、サブラジエータである第2の熱交換器を通すように、つまり、冷却水を流す流路を、走行ルートからアイドリングルートに切り替えることにより、全体の熱交換量をアップさせてオーバヒートの防止を可能とするものである。
【0058】
また、この発明の実施例においては、燃料電池スタックの応答性や耐久性を改善するために、燃料電池スタックの過剰な温度上昇を防止する構成としたが、燃料電池スタック以外にも、インバータ等の電気部品に対しても、過剰な温度上昇の防止に応用可能である。
【0059】
更に、この発明の実施例においては、メインラジエータである第1の熱交換器を主として駆動させ、サブラジエータである第2の熱交換器を所定の条件成立時に追加駆動する構成としたが、メインラジエータである第1の熱交換器と、この第1の熱交換器よりも小なる熱交換機能を有するサブラジエータである第2の熱交換器とを選択的に駆動する特別構成とすることも可能である。
【0060】
すなわち、選択的な駆動としては、
(1)第1の熱交換器と第2の熱交換器とを交互に選択して、例えば1対1の駆動時間割合や任意の駆動時間割合で駆動する場合
(2)第1の熱交換器のみ、あるいは第2の熱交換器のみ、または第1、第2の熱交換器の両方を選択して駆動する場合
等が考えられ、冷却水の流路の接続状態を変更し、走行状態に合致させるべく上述の駆動形態を切替制御するものである。
【0061】
追記すれば、走行状態においては、小なる熱交換機能を有するサブラジエータである第2の熱交換器のみを使用する程度で対応できる場合を下限とするとともに、第1、第2の熱交換器の両方を使用する必要のある場合を上限とする範囲内で種々状況が生ずるものであり、これらの状況に合致させるべく、第1、第2の熱交換器の駆動形態を切替制御する。
【0062】
さすれば、走行状態に合致させるべく第1、第2の熱交換器の両方を効果的に駆動させることができ、冷却水温度を適正な状態に維持することが可能となる。
【0063】
また、車両に搭載されるナビゲーションからの入力情報を入手することができる場合には、走行距離や現在位置等から車両の停止時期を把握することが可能であり、例えば車両の停止時期と推測される1時間前に、第1、第2の熱交換器の内、いずれか一方の熱交換器が非駆動状態となるように、つまり燃料電池スタックを冷却する冷却水の流路から遮断される状態に制御し、車両停止後の再始動に備える特別構成とすることも可能である。
【0064】
つまり、車両の停止時期と推測される1時間前には、第1、第2の熱交換器の内、いずれか一方の熱交換器が非駆動状態となるように、つまり燃料電池スタックを冷却する冷却水の流路から遮断される状態に制御されることとなり、遮断された方の熱交換器が走行風によって冷却水を冷却し、車両停止後の再始動のアイドリング時に遮断されていた方の熱交換器を燃料電池スタックを冷却する冷却水の流路に連通させて駆動状態とする。これにより、燃料電池スタックの温度を低下させることが可能となるものである。
【0065】
【発明の効果】
以上詳細に説明した如くこの本発明によれば、燃料電池を冷却する冷却水を循環させる冷却水ポンプと、冷却水ポンプにより循環される冷却水の温度を低下させる第1の熱交換器とを備えた車両用燃料電池の冷却装置において、冷却水ポンプから送り出された冷却水が燃料電池、第1の熱交換器を通り再び冷却水ポンプへと戻る第1の冷却水通路を設け、第1の冷却水通路から分岐し、第2の熱交換器を通り第1の熱交換器に接続する第2の冷却水通路を設け、冷却水を流す流路を、第1の冷却水通路のみか、あるいは第1と第2の両方の冷却水通路に流すかを切り替える流路切替手段を設け、流路切替手段は、少なくとも車速が設定された値より低いときには、第1と第2の両冷却水通路に流すように選択していることにより、車速によって冷却水を流す流路を、第1の冷却水通路のみ、あるいは第1と第2の両冷却水通路に切り替えるため、車両が完全に停止する前の減速状態から、燃料電池スタックの温度を低下させることが可能となり、減速停止から再加速までの時間が短い場合でも、冷却効果を発揮させることができる。
【0066】
また、燃料電池を冷却する冷却水を循環させる冷却水ポンプと、冷却水ポンプにより循環される冷却水の温度を低下させる第1の熱交換器とを備えた車両用燃料電池の冷却装置において、冷却水ポンプから送り出された冷却水が燃料電池、第1の熱交換器を通り再び冷却水ポンプへと戻る第1の冷却水通路を設け、第1の冷却水通路から分岐し、第2の熱交換器を通り第1の熱交換器に接続する第2の冷却水通路を設け、冷却水を流す流路を、第1の冷却水通路のみか、あるいは第1と第2の両方の冷却水通路に流すかを切り替える流路切替手段を設け、流路切替手段は、燃料電池スタック温度が設定された値より高いときには、第1と第2の両冷却水通路に流すように選択していることにより、前記燃料電池のスタック温度が高いときは、常に熱交換量を増加させることができ、オーバヒートするのを確実に防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例を示す車両用燃料電池の冷却装置の概略構成図である。
【図2】通常走行時の冷却水の流れを示す要部拡大図である。
【図3】アイドリング時の冷却水の流れを示す要部拡大図である。
【図4】車速の時間判定によるバルブ切替を説明するフローチャートである。
【図5】アイドリング時(走行時)の許容温度を示す図である。
【図6】この発明の従来技術を示すスタックへの要求負荷と運転温度との関係図である。
【図7】アイドリング時におけるスタック冷却の遅れを示す図である。
【符号の説明】
2 車両
4 燃料電池
6 冷却水ポンプ
8 第1の熱交換器(「メインラジエータ」ともいう)
10 第1のファン
12 第1の冷却水通路
14 第2の熱交換器
16 第2の冷却水通路
18 流路切替手段
20 第2のファン
22 第1切替バルブ
24 第2切替バルブ
26 制御手段
28 車速センサ
30 スタック温度センサ
Claims (3)
- 燃料電池を冷却する冷却水を循環させる冷却水ポンプと、この冷却水ポンプにより循環される冷却水の温度を低下させる第1の熱交換器とを備えた車両用燃料電池の冷却装置において、前記冷却水ポンプから送り出された冷却水が燃料電池、第1の熱交換器を通り再び冷却水ポンプへと戻る第1の冷却水通路を設け、この第1の冷却水通路から分岐し、第2の熱交換器を通り第1の熱交換器に接続する第2の冷却水通路を設け、冷却水を流す流路を、前記第1の冷却水通路のみか、あるいは第1と第2の両方の冷却水通路に流すかを切り替える流路切替手段を設け、この流路切替手段は、少なくとも車速が設定された値より低いときには、第1と第2の両冷却水通路に流すように選択していることを特徴とする車両用燃料電池の冷却装置。
- 前記第2の熱交換器は、車両前部に搭載されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用燃料電池の冷却装置。
- 燃料電池を冷却する冷却水を循環させる冷却水ポンプと、この冷却水ポンプにより循環される冷却水の温度を低下させる第1の熱交換器とを備えた車両用燃料電池の冷却装置において、前記冷却水ポンプから送り出された冷却水が燃料電池、第1の熱交換器を通り再び冷却水ポンプへと戻る第1の冷却水通路を設け、この第1の冷却水通路から分岐し、第2の熱交換器を通り第1の熱交換器に接続する第2の冷却水通路を設け、冷却水を流す流路を、前記第1の冷却水通路のみか、あるいは第1と第2の両方の冷却水通路に流すかを切り替える流路切替手段を設け、この流路切替手段は、燃料電池スタック温度が設定された値より高いときには、第1と第2の両冷却水通路に流すように選択していることを特徴とする車両用燃料電池の冷却装置。
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