JP2004309477A - 抗体測定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 外来性抗原を起因とする疾患の検査をより正確に実施する方法を提供する。
【解決手段】 外来性抗原に対して出現する免疫グロブリンについて、IgMからIgGにクラススイッチするのに要する時間が1年以上要する場合に、該外来性抗原に対するIgM抗体単独、又はIgM抗体及びIgG抗体を同時に測定することにより達成される。このような測定方法を適用しうる疾患の起因となる外来性抗原の例として、神経性疾患に関連する微生物、ウイルス及び/又は蛋白性物質やヒト及びヒトを除く哺乳動物のいずれかに対する疾患の起因となりうる微生物、ウイルス及び/又は蛋白性物質等が挙げられる。具体的にはボルナ病ウイルス(BDV)に抗体測定に本発明の測定方法を適用することができる。

Description

本発明は、外来性抗原を起因とする疾患の検査を行う方法に関し、特に微量の外来性抗原を起因とする疾患に関連する抗体測定方法に関する。
免疫グロブリンは、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEなどの各クラスが存在する。抗原刺激に対応して、最初にIgM抗体が出現し、その半減期が短いために早く消失し、次第にIgGに置きかわる。同種赤血球凝集素、リウマトイド因子、異好抗体、寒冷凝集素は主にこのIgMに属する(臨床検査法提要、金原出版株式会社、第31版、1998年、p.820)。
感染症の場合には、感染初期の血清と回復期血清の特異抗体価をペアで測定することが診断上有用である(臨床検査法提要、金原出版株式会社、第31版、1998年、p.808)。例えば、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染の測定を目的として、IgMの測定方法が報告されている(特許文献1)。
しかしながら、IgG及びIgMを同時に測定する方法は開示されていない。
上述したように、免疫グロブリンのIgGからIgMへのクラススイッチは、IgMの出現から通常1ヶ月程度で行われることが一般的に知られている。しかしながら、抗原となりうる物質の性状は未知のものも多く、また免疫グロブリンのクラススイッチに要する時間、その他の性質についてもいまだ解明されていないことは多い。
例えば、ボルナ病ウイルス(Borna Disease Virus,以下「BDV」という。)を原因ウイルスとする免疫関与神経症候群であるボルナ病についてはいまだ解明されていないことも多い。ボルナ病は、ドイツ及びその周辺諸国で、四季を通じて馬に発生するウイルス脳脊髄縁である。脳性麻痺や情動傷害等の症状を呈し、急性経過をたどると致死的である脳性麻痺や情動傷害等の症状を呈し、急性経過をたどると致死的である。ラットに実験的に感染させると、多動、常同行動、運動障害及び失調症を特徴とする多相性症候群を発症する(O. Narayanら,Science, 220:1401-1403(1983))。
BDVは、自然宿主であるウマに対する病原性が知られており、1985年に精神疾患患者の血清中にBDVと反応する抗体が存在することが指摘され、ヒトに対しても病原性をもつ可能性が示唆されてきた。BDVの感染疫学的研究は、精神疾患の理解に多大な貢献をすることになる。最近、BDV遺伝子が精神疾患遺伝子群の血球にある頻度で認められている。
BDVは低い力価でしか増殖しないので、分析のために精製することは困難である。BDVの配列及び診断方法は既にいくつか報告されている(特許文献2〜4)。しかしながら、これらの測定方法は全てBDVに対するIgG抗体を検出するための測定方法に関する。これらの測定方法が、ボルナ病の発症を十分に反映しうるか否かはいまだ十分ではなかった。
特表平10−502253号公報 特開2002−190288号公報 特表2002−500363号公報 特開平11−180998号公報
本発明の目的は、外来性抗原を起因とする疾患の検査をより正確に実施する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、外来性抗原に対して出現する免疫グロブリンが、IgMからIgGにクラススイッチするのに要する時間が2ヶ月以上、具体的には1年以上要するものがあることに着目し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、
1.外来性抗原を起因とする疾患の検査を行う方法において、該外来性抗原が、該抗原に対して出現する免疫グロブリン抗体のIgM抗体からIgG抗体へのクラススイッチがIgM抗体の出現から2ヶ月以上になされる性質を有する抗原であり、該外来性抗原に対するIgM抗体を測定することを特徴とする抗体測定方法、
2.上記外来性抗原に対する抗体測定が、IgM抗体単独、又はIgM抗体及びIgG抗体を同時に測定することを特徴とする前項1に記載の抗体測定方法、
3.上記外来性抗原が、神経性疾患に関連する微生物、ウイルス及び/又は蛋白性物質であることを特徴とする前項1又は2に記載の抗体測定方法、
4.上記外来性抗原が、ヒト及びヒトを除く哺乳動物のいずれかに対する疾患の起因となりうる微生物、ウイルス及び/又は蛋白性物質であることを特徴とする前項1〜3のいずれか1に記載の抗体測定方法、
5.上記外来性抗原が、ボルナ病ウイルス(BDV)である前項1〜4のいずれか1に記載の抗体測定方法、
6.ボルナ病ウイルス(BDV)を起因とする疾患の検査を行う方法において、該ウイルスに対するIgM抗体単独、又はIgM抗体及びIgG抗体を同時に測定することを特徴とするの抗体測定方法。
7.抗体測定方法が免疫凝集反応法である前項1〜6のいずれか1に記載の抗体測定方法、
8.前項1〜7のいずれか1に記載の抗体測定方法に使用する免疫測定用試薬又は該免疫測定用試薬を含む免疫測定キット、からなる。
本発明の測定方法により、免疫グロブリンのIgMからIgGへのクラススイッチに要する時間の長い外来性抗原であって、抗原量が微量等のために抗原そのものを検出することができないような場合であっても、IgM抗体の出現を見逃すことなく検出することができ、感染の有無を判定することが可能となる。
外来性抗原であるウイルス等に感染するとまずIgMが出現し、徐々にその量が減少しながら次にIgG抗体が出現する。通常、IgGが出現するのは感染後2〜4週間後なので、一般的にはウイルス等の感染の検査はIgGをターゲットとして行う。ところが、IgMからIgGへのクラススイッチに要する時間は、抗原の性質により異なることは従来ほとんど報告されていなかった。本発明者らは、ある種のウイルス、特に微量なウイルスについて検討した結果、IgMからIgGへのクラススイッチに1年以上要する知見を見出した。このような場合には、IgGのみを測定していたのでは、ウイルス感染の初期の段階を見逃すおそれが生じる。そこで本発明者らは、IgMが検出される感染初期の段階についても抗体測定を可能とし、外来性抗原を起因とする疾患の検査をより正確に実施する方法を検討した。
(外来性抗原)
本発明において、外来性抗原とは、自己の生体成分でない物質であって、生体外から侵入する抗原をいい、自己免疫疾患等のように自己の生体組織に起因して生じる内在性抗原と区別する。このような抗原の例としては、生体外から侵入してある種の疾患の起因となりうる物質であれば良く、特に限定されないが、例えば細菌、真菌等の微生物、ウイルス及び蛋白質等の抗原性物質が挙げられる。
本発明の抗体測定方法が適用される外来性抗原の具体例として、ある種のウイルスが挙げられる。たとえば、感染したウイルスの量が微量であって、ウイルスを生体から分離することが非常に困難な場合には、該ウイルス成分を直接測定することも困難であるため、該ウイルスに対する抗体が出現するのを測定すること以外には該ウイルスの感染を検査することが困難である。このようなウイルスの例として神経細胞に感染し、IgMからIgGへのクラススイッチに長時間を要するモノネガウイルス(Mononegavirales)目に属するBDVが挙げられる。
一方、神経細胞に感染し、ウイルスそのものは神経細胞に埋没してしまうが、短時間でIgMからIgGへのクラススイッチが起こるウイルスとしては、例えばヘルペスウイルス科、パポバウイルス科、レトロウイルス科に属するウイルスや麻疹ウイルスなどが例示される。ヘルペスウイルス科に属するウイルスは、アルファヘルペスウイルス亜科、ベータヘルペスウイルス亜科、ガンマヘルペスウイルス亜科などに分類される。具体的には、次に示すウイルスが挙げられる。
ヘルペスウイルス科(Family Herpesviridae)
アルファヘルペスウイルス亜科(Subfamily Alphaherpesvirinae)
シンプレックスウイルス属(Genus Simplexvirus)
Bウイルス=サルヘルペスウイルス、
ウシ乳頭炎ウイルス=ウシヘルペスウイルス、
単純ヘルペスウイルス1,2=ヒトヘルペスウイルス1,2
バリセロウイルス属(Genus Varicellovirus)
オーエスキーウイルス=ブタヘルペスウイルス1
ウシ伝染性鼻気管炎ウイルス(IBRウイルス)=ウシヘルペスウイルス1
ウマ流産ヘルペスウイルス=ウマヘルペスウイルス1
帯状疱疹ウイルス=ヒトヘルペスウイルス3
その他
ネコウイルス性鼻気管炎ウイルス=ネコヘルペスウイルス1
イヌ気管気管支炎ウイルス=イヌヘルペスウイルス
伝染性喉頭気管炎ウイルス=ニワトリヘルペスウイルス1
アヒルペストウイルス=アヒルヘルペスウイルス1
ウシ脳炎ヘルペスウイルス=ウシヘルペスウイルス5
媾疹ウイルス=ウマヘルペスウイルス3
ベータヘルペスウイルス亜科(Subfamily Betaherpesvirinae)
サイトメガロウイルス属(Genus Cytomegalovirus)
ヒトサイトメガロウイルス=ヒトヘルペスウイルス5
ロゼオロウイルス属(Genus Roseolovirus)
ヒトヘルペスウイルス6
その他
ブタヘルペスウイルス2
ウマヘルペスウイルス2
ウマヘルペスウイルス5
ウマヘルペスウイルス7
ガンマヘルペスウイルス亜科(Subfamily Gammaherpesvirinae)
リンフォクリプトウイルス属(Genus Lymphocryptovirus)
エプスタイン・バーウイルス=ヒトヘルペスウイルス4
チンパンジーヘルペスウイルス
ヒヒヘルペスウイルス
パポバウイルス科(Family Papovaviridae)
ポリオーマウイルス属(Genus Polyomavirus)
サル腎細胞空胞化ウイルス
マウスポリオーマウイルス
ウシポリオーマウイルス
パピローマウイルス属(Genus Papillomavirus)
ウシパピローマウイルス1〜6
イヌ口腔乳頭腫ウイルス
レトロウイルス科(Family Retroviridae)
Genus "Mammalian type C retroviruses"
哺乳類C型ウイルス群
ネコ白血病ウイルス
ブタC型ウイルス
Genus "BLV-HTLV retroviruses"
ウシ白血病ウイルス=BLV
ヒトTリンパ向性ウイルス1=HTLV-1
ヒトTリンパ向性ウイルス2=HTLV-2
サルTリンパ向性ウイルス
Genus Lentivirus
ウマ伝染性貧血ウイルス
ウシ免疫不全ウイルス
ネコ免疫不全ウイルス
ヤギ関節炎脳炎ウイルス
ヒト免疫不全ウイルス1=HIV-1
ヒト免疫不全ウイルス2=HIV-2
サル免疫不全ウイルス=SIV
また、本発明の測定方法は、ヒト及びヒトを除く哺乳動物のいずれかに対する疾患の起因となりうる外来性抗原に適用することができる。例えば、人蓄に対して共通に感染しうる微生物、具体的には、ウマ、ウシ、ヒツジ、ネコ、サル、ネズミ、ダチョウなどが挙げられる。
さらには、本発明の測定方法は、IgMからIgGへのクラススイッチに要する時間が長い性質を有する外来性抗原に対して、好適に適用することができる。クラススイッチに要する時間は特に限定されるものではないが、例えば2ヶ月以上、好ましくは3ヶ月以上、より好ましくは1年以上を要し、また10年以内、好ましくは7年以内、より好ましくは4年以内にクラススイッチがなされる抗原に対して好適に適用される。BDV感染に関して約1年以上の期間をかけてIgMからIgGにクラススイッチした免疫グロブリンが出現したことを、本発明者らは確認した。このようにクラススイッチに長時間を要する抗原は、BDV以外には現在殆ど確認されていないが、このような性質を有する抗原が新たに確認された場合には、そのような物質に対しても本発明の測定方法を適用することができるのはいうまでもない。
(抗原ポリペプチド)
BDVの感染の診断を行うために用いる抗原ポリペプチドとして、BDV蛋白質のp10領域から選択された抗原ポリペプチド、p24領域から選択された抗原ポリペプチド、p40領域から選択された抗原ポリペプチドを挙げることができる。また、複数の抗原ポリペプチドを組み合わせて用いることが好ましい。
(抗体測定用試料)
本発明の抗体測定用試料は、生体内の抗体が測定することができれば良く、特に限定されないが、全血、血漿、血清、骨髄、バフィーコート、尿、体液、唾液、鼻汁、涙液、糞便由来物等が例示される。
(抗体測定方法)
本発明の抗体測定方法は、IgMクラスの免疫グロブリンとIgGクラスの免疫グロブリンを同時に測定しうる方法であれば特に限定されず、適用することができる。この方法としては、例えば酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法、凝集法、ウエスタンブロット法、化学発光免疫測定法など常用されている方法のいずれも適用することができ、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法、ウエスタンブロット法、化学発光免疫測定法などに用いる標識抗体は抗IgM抗体を用いるのが好ましい。また、特に好ましい測定方法として、免疫凝集法が挙げられる。
例えば、凝集法の一種であるカウンティングイムノアッセイ法(Counting Immunoassay法:以下「CIA法」という。)による測定は、Sysmex Journal Vol.20 No.1, 77-86(1997)に記載の方法により行うことができる。
抗原ペプチド感作用担体の例として、有機高分子粉末、無機物質粉末、微生物、血球及び細胞膜片などが挙げられる。有機高分子粉末としては、不溶性アガロース、セルロース、不溶性デキストランなどが例示でき、好ましくはラテックス微粒子が広く利用される。ラテックスとしては、例えばポリスチレン、ポリスチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、アクリルニトリル−ブタジエンスチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニルアクリレート等が挙げられる。
用するラテックス粒子の素材及び粒子径は、免疫グロブリンの抗原抗体反応によりラテックス粒子が凝集塊を形成しうるものであれば良く、特に限定されない。ラテックスの平均粒径は、測定対象物の検出濃度あるいは測定機器により0.05〜1.0μm、好ましくは0.3〜0.85μmのものが適宜選択される。無機物質粉末としては、シリカ、アルミナ、あるいは金、チタン、鉄、ニッケル等の金属片などが例示される。
抗原ペプチド感作用担体、具体的に抗原(抗体)結合ラテックス粒子と試料に含まれる抗体(抗原)が反応すると、抗体の量に応じてラテックス粒子が凝集する。カウンティングイムノアッセイでは凝集した粒子ひとつひとつの大きさの違いを弁別してカウントして測定を行う。例えば、凝集していない単独のラテックス粒子のカウント数をM(Monomer)、2個以上のラテックス粒子が凝集したもののカウント数をP(Polymer)、MとPの和をT(Total)としたとき、P/Tを凝集度として算出することができる。
担体への抗原感作は、抗原を直接ラテックス粒子に感作させても良く、例えば血清アルブミン等のようなリガンドを目的抗原に結合させて、ラテックス粒子に感作させるなど効率の良い方法を選択することができる。抗原感作量は、担体1mgあたり100μgまでの範囲で必要に応じて自由に設定することができる。好ましくは、上記抗原ペプチド及び/又はコンジュゲートBDV抗原ペプチドと非特異反応抑制のためのブロッキング剤として使用する蛋白質とあわせて合計100μgまでの範囲で設定することができる。ブロッキング剤は、抗原を感作した後又は抗原と同時に担体に固定することができる。
CIA法をはじめとする凝集法によると、ラテックス粒子に固定した抗原に対し、検体試料中の抗体が反応することにより、ラテックス粒子とラテックス粒子が抗体により架橋され、凝集を形成することになる。この場合に、IgMクラスの抗体であっても、IgGクラスの抗体であっても、ラテックスと反応すれば架橋を形成しうるので、IgM及びIgGが混入している検体試料において、IgM及びIgGを同時に測定することが可能となるのである。
測定方法は、公知の方法に従い、用いられる不溶性担体の大きさもしくは濃度、反応時間を設定することにより、散乱光強度、吸光度又は透過光強度の増加もしくは減少を測定することにより行うことができ、これらの方法を2種以上併用してもよい。
本発明は、上記免疫測定方法に使用する免疫測定用試薬キットにも及ぶ。
以下、本発明の内容を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
(実施例1)BDVの検出
本実施例は、宮崎県都井岬で管理されているウマ17頭について、BDVの感染の有無を調べた。測定は、1998年に採取した血清について行った。
(ウマ血しょうの処理方法)
ヘパリン採血による採血後、氷冷し、当日中に処理し、血しょうサンプルを得た。
(抗原ペプチド)
抗原ペプチドとして、以下のものを使用した。各配列の最左部に示す1又は2のグリシンは、スペーサーを示す。
p24(A) GG-QPVDQLLKDLRKNPS (配列番号1)
p40(C) GG-PKRRLVDDADAMEDQDLY (配列番号2)
p40(D) GG-RYRRREISRGEDGAELSGE (配列番号3)
p10(G) G-GNATIESGRLPGGRRRSPD (配列番号4)
p10(H) G-GVTKTTEDPKECTDP (配列番号5)
(抗原ペプチドの感作)
1)抗原ペプチドp24(A):5mg/mLウシ血清アルブミン24μL(120μg相当)にペプチド300μgとグルタールアルデヒド120μgを加え、30℃で30分間静置し、コンジュゲートさせたもの、
2)抗原ペプチドp40(C):5mg/mLウシ血清アルブミン24μL(120μg相当)にペプチド300μgとグルタールアルデヒド120μgを加え、30℃で30分間静置し、コンジュゲートさせたもの、
3)抗原ペプチドp40(D):5mg/mLウシ血清アルブミン24μL(120μg相当)にペプチド300μgとグルタールアルデヒド120μgを加え、30℃で30分間静置し、コンジュゲートさせたもの、
4)抗原ペプチドp10(G):5mg/mLウシ血清アルブミン24μL(120μg相当)にペプチド300μgとグルタールアルデヒド120μgを加え、30℃で30分間静置し、コンジュゲートさせたもの、
5)抗原ペプチドp10(H):5mg/mLウシ血清アルブミン24μL(120μg相当)にペプチド300μgとグルタールアルデヒド120μgを加え、30℃で30分間静置し、コンジュゲートさせたもの、
上記1)〜5)のBDV抗原コンジュゲート全量を、粒径0.8μmのラテックス粒子懸濁液(5mgのラテックス担体を含む)1mLに加え、37℃で1時間静置した。その後、ラテックス粒子を洗浄し、各抗原の感作ラテックス液を調製した。また同様にウシ血清アルブミン(BSA)120μgを粒径粒径0.8μmのラテックス粒子懸濁液(5mgのラテックス担体を含む)1mLに加え、37℃で1時間静置した。その後、ラテックス粒子を洗浄し、未感作ラテックス液を調製した。
(測定)
BDV抗体の測定をシスメックス社製測定装置(PAMIA−50)を用いて行った。
反応プレートのウェルに、ラテックス凝集反応用緩衝液を80μL、各ウマ血清試料を10μL及び上記調製したラテックス粒子を含む溶液を10μLを添加し、45℃で反応させた。
反応を開始して約15分後に19μLの反応混合物を装置のチャンバ内の950μLのシース液に加えて51倍に稀釈した。稀釈により、凝集反応を停止させ、その後、凝集度を光学検出部で検出した。
予め測定しておいた検量線(陰性コントロールP/T%及びカットオフコントロールP/T%)より数1に従い、検体のカットオフインデックス(COI)値を求めた。検体のCOI値により、以下のとおり判定した。
陽性:COI≧1
陰性:COI<1
Figure 2004309477
(測定結果)
上記の測定結果を表1に示した。その結果、全てのウマ血清についてBDV陽性を示した。
(比較例1)
実施例1に記載のウマ17頭について、従来法により1998年〜2001年にかけて採取した血清について測定を行った。ウマ血清の処理方法は実施例1と同様に行った。
1.測定原理:
ECLIA法は、BDV抗原を結合したマイクロビーズを固相とし、電気化学変化で発光するRu錯体を標識した抗ヒトIgGモノクロナール抗体を用いたサンドイッチ法を原理としている。
各反応について以下に説明する。
・第一反応
抗原結合ビーズと検体を反応させると、検体中の抗体がビーズ上の抗原と結合する。
・第二反応
ビーズに結合した抗体にルチニウム標識抗ヒトIgGモノクロナール抗体を反応させ、サンドイッチ状に結合する。
・第三反応
電極上にビーズを集めて電気エネルギーを加えると、抗体を介してビーズに結合したルチニウム標識抗IgGモノクロナール抗体量に応じてRu錯体が発光する。この発光量を計測することにより、検体中の抗体を検出する。
2.測定方法:
以下の手順で測定を実施した。
(1)反応管に反応液200μL、被検検体20μL、抗原結合ビーズ液を25μL注入し、30℃で9分間の反応を行った。(第一反応)
(2)反応管に磁石を接近させ、反応管壁にビーズを集めた後、反応管の液を吸引除去し、さらに洗浄液を注入し、振盪攪拌した。
(3)反応管に磁石を接近させ、反応管壁にビーズを集めた後、反応管の液を除去した。
(4)反応管にルチニウム標識抗IgGモノクロナール抗体液を200μL注入し、30℃で9分間の反応を行った。(第二反応)
(5)反応管に磁石を接近させ、反応管壁にビーズを集めた後、反応管の液を除去し、さらに洗浄液を注入し、振盪攪拌した。
(6)反応管に磁石を接近させ、反応管壁にビーズを集めた後、反応管の液を除去し、発光電解液300μL注入し、ビーズをフローセル電極に導き、発光量を測定した。(第三反応)
(結果)
その結果、検体No.1〜9については、1998年の結果を比較すると従来法では陰性であったが、本発明の測定方法では陽性であった(表1)。しかし、従来法で1998年の測定結果が陰性と認められたものであっても1999〜2001年の測定結果については、陽性が認められた。
一方、検体No.10〜17については従来法と本発明の測定結果ともに陽性であり、一致した(表2)。また、検体No.18〜28ついては従来法と本発明の測定結果ともに陰性であり、一致した(表3)。
不一致の検体については、従来法で陰性であったにもかかわらず、本発明の抗原ペプチドを用いて測定を行った系では陽性と判断され、感度よくBDV抗体の検出が可能となった。なお、表1〜3中の「ND」は、ウマを捕獲することができず、測定できなかったことを示す。
Figure 2004309477
Figure 2004309477
Figure 2004309477
(実験例1)
従来法及び本発明の方法による測定結果が不一致であった検体No.5及び6と測定結果が一致した検体No.11及び12について、検出された抗体のうちのIgM及びIgGの割合を求めた。
吸収用試薬として、抗ウマIgMヤギ血清(コスモバイオ)及び抗ウマIgGヤギ血清(コスモバイオ)原液を使用した。緩衝液及び抗ウマIgM血清を9:1で混合したものをIgM吸収緩衝液とし、同様に、緩衝液及び抗ウマIgG血清を9:1で混合したものをIgG吸収緩衝液とした。
IgM吸収緩衝液及びIgG吸収緩衝液についてPAMIA−50にて実施例1と同様の手法によりP/T%の測定を行った。数2により、IgM吸収率及びIgG吸収率を求めた。
Figure 2004309477
検体No.5の1998年、1999年及び2001年に採取した血清の測定結果を各々図1〜3に、検体No.6の1998年〜2001年の各年に採取した血清の測定結果を各々図4〜7に、及び検体No.11の1998年に採取した血清の測定結果を各々図8に、検体No.12の1998年に採取した血清の測定結果を図9に示した。
その結果、従来法及び本発明の測定方法の測定結果に差を認めた検体No.5及びNo.6については、1998年度及び1999年度に採取した血清試料ではIgGの出現よりはIgMの出現が多く認められたのに対し、2001年度に採取した血清試料では、IgGの出現が認められた。一方、従来法及び本発明の測定方法の測定結果に差を認めなかった検体No.11及びNo.12については、1998年に採取した血清試料について、IgGのほうがIgMに比べて高く出現していた。
(実施例2)
宮崎県都井岬で管理されている82頭のウマについて、1998年に採取した血清について、凝集法(本発明の方法)及び従来法で測定した結果、各測定法によりBDV抗体陽性及び陰性と判断された群について5年間の生存率を調べた。その結果、表2に示すように、本発明の方法で測定した場合には抗体陽性の場合の死亡率が66.7%であり、抗体陰性の場合には死亡率が28.3%であった。一方、従来法による場合には抗体が陽性の場合の死亡率は52.4%であったが、抗体が陰性の場合でも死亡率は42.6%であった。この結果より、本発明の方法で測定したほうが抗体陽性の死亡率が高くあらわれ、測定結果が死亡率に反映しより正確なBDV感染の検査を行うことが可能となったことが確認された。
Figure 2004309477
以上説明したように本発明の測定方法により、免疫グロブリンのIgMからIgGへのクラススイッチに要する時間の長い外来性抗原であって、抗原量が微量等のために抗原そのものを検出することができないような場合であっても、IgM抗体の出現を見逃すことなく検出することにより、感染の有無を判定することが可能となる。具体的にはボルナウイルス(BDV)などについてIgM及びIgGを同時に測定すると、従来法で測定した際に検出できなかった試料中のBDV抗体についても陽性と判定することができ、BDV感染について正確な臨床検査結果を得ることができる。
検体No.5の1998年採取試料の測定結果を示す図である。(実験例1) 検体No.5の1999年採取試料の測定結果を示す図である。(実験例1) 検体No.5の2001年採取試料の測定結果を示す図である。(実験例1) 検体No.6の1998年採取試料の測定結果を示す図である。(実験例1) 検体No.6の1999年採取試料の測定結果を示す図である。(実験例1) 検体No.6の2000年採取試料の測定結果を示す図である。(実験例1) 検体No.6の2001年採取試料の測定結果を示す図である。(実験例1) 検体No.11の1998年採取試料の測定結果を示す図である。(実験例1) 検体No.12の1998年採取試料の測定結果を示す図である。(実験例1)
符号の説明
■ IgM
□ IgG

Claims (8)

  1. 外来性抗原を起因とする疾患の検査を行う方法において、該外来性抗原が、該抗原に対して出現する免疫グロブリン抗体のIgM抗体からIgG抗体へのクラススイッチがIgM抗体の出現から2ヶ月以上になされる性質を有する抗原であり、該外来性抗原に対するIgM抗体を測定することを特徴とする抗体測定方法。
  2. 上記外来性抗原に対する抗体測定が、IgM抗体単独、又はIgM抗体及びIgG抗体を同時に測定することを特徴とする請求項1に記載の抗体測定方法。
  3. 上記外来性抗原が、神経性疾患に関連する微生物、ウイルス及び/又は蛋白性物質であることを特徴とする請求項1又は2に記載の抗体測定方法。
  4. 上記外来性抗原が、ヒト及びヒトを除く哺乳動物のいずれかに対する疾患の起因となりうる微生物、ウイルス及び/又は蛋白性物質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の抗体測定方法。
  5. 上記外来性抗原が、ボルナ病ウイルス(BDV)である請求項1〜4のいずれか1に記載の抗体測定方法。
  6. ボルナ病ウイルス(BDV)を起因とする疾患の検査を行う方法において、該ウイルスに対するIgM抗体単独、又はIgM抗体及びIgG抗体を同時に測定することを特徴とするの抗体測定方法。
  7. 抗体測定方法が免疫凝集反応法である請求項1〜6のいずれか1に記載の抗体測定方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1に記載の抗体測定方法に使用する免疫測定用試薬又は該免疫測定用試薬を含む免疫測定キット。
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