JP2004309455A - 擬似腋臭組成物及びこれを用いる評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 実際の腋臭の臭いを正確に再現することができ、腋臭のマスキング又は消臭効果等の評価に用い得る擬似腋臭組成物、及び、それを用いる評価方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸を含む擬似腋臭組成物であって、さらに(B)酢酸及び/又はプロピオン酸、及び(C)イソ吉草酸、(D)酪酸及び/又はイソ酪酸を含む擬似腋臭組成物である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、人の腋臭をかなり正確に再現することができ、腋臭のマスキング又は消臭効果等の評価に用い得る擬似腋臭組成物に関する。
近年、清潔志向の高まりに伴い、体臭を気にする人が増えている。体臭は全身の各部から発生するにおいの総称であり、主要な発生部位としては頭部、口腔、腋窩部、陰部、足の裏等がある。その中でも腋臭(腋窩部のニオイ)は本人又はそばに居る人に感知され易いため、その程度、例えば腋臭の有無、強さ、質的な相違等の諸要素が、全身的な体臭の程度を支配することが多い。さらに、本人又はそばに居る人にとって、体臭と言うよりは腋臭そのものが気にかかる場合も多い。
人の腋窩部から発生する腋臭は、エクリン汗が皮膚常在菌によって代謝されて発生する酸臭(汗臭とも呼ばれる)とアポクリン汗が皮膚常在菌によって代謝されて発生するアポクリン臭(わきがとも呼ばれる)とに大別される。
エクリン汗は、99%以上が水分であるが、それ以外に、微量の尿素、乳酸、アミノ酸等の有機成分、ナトリウム、クロール、カリウム、カルシウム等の無機成分を含んでいる。一方、アポクリン汗は、たんぱく質やコレステロール、ステロイド、色素等を豊富に含んでいる。
酸臭は、酸っぱくて蒸れたニオイであり、アポクリン臭は、スパイシーで、動物的で、生臭く、腋窩部に特有のニオイである。アポクリン臭(わきが)が極端に強い場合は、医学的には腋臭症(えきしゅうしょう)とも呼ばれる。
酸臭は、一般に炭素数2〜6の低級脂肪酸に起因する臭いであり、アポクリン臭は、動物様の臭いを有する3−メチル−2−ヘキセン酸、7−オクテン酸に起因する臭いであることが報告されている(特許文献1)。
最近では新たに、人体の汗中に含まれる鉄により不飽和脂肪酸が酸化開裂を受けてできる、きのこ様金属臭を有する1−オクテン−3−オン、カビ様金属臭を有する、シス−1,5−オクタジエン−3−オンなどのビニルケトン類(非特許文献1)も腋臭の原因であることが知られている。
腋臭には個人差があり、(1)酸臭よりもアポクリン臭の方が強い人(以下、アポクリン臭タイプと称する)、(2)アポクリン臭よりも酸臭の方が強い人(以下、酸臭タイプと称する)、(3)アポクリン臭と酸臭の強さが同じ程度である人(以下、混合臭タイプと称する)が存在する。
腋窩部におけるアポクリン臭の有無、または、その程度は、その人の腋臭の質(タイプ)や強さに大きく影響している。
人体から発生する臭いをマスキングしたり、消臭を考えた製品開発がこれまでにも数多く検討されてきた。このようなマスキング又は消臭は、製品開発上、製品の魅力を引き上げるために重要な役割を果たしている。斯かる臭いのマスキングや消臭効果等の評価の多くは、マスキング剤や消臭剤を直接人間に適用することにより行われている。また、衣類用洗剤等の洗浄剤のにおい汚れに対する洗浄効果の評価の多くは、実際に人間が着用した衣類に対して行われている。しかしながら、評価試験が長時間にわたる場合等では、被験者にストレスを与え、疲労の原因の一つにもなる。また、それが原因で、通常とは異なる生理的な現象が起こることや、パネルのその日の体調によって評価の誤差が生じるなどの問題点があり、正しい評価の妨げになる。さらに、簡単に実施できる方法ではなかった。
マスキングや消臭効果を簡易に評価できる手段として、実際の人間の腋臭をより正確に再現できる評価用擬似腋臭があれば、直接人間に適用する試験を行なう前に、当該評価用擬似腋臭を使ってマスキング又は消臭の評価ができ、試験の負担軽減にもなる。
特許文献2には、3位にヒドロキシル基を有するβ−ヒドロキシ酸化合物が動物系の合成香料素材として用い得ることが記載されている。しかしながら、前記の3位にヒドロキシル基を有するβ−ヒドロキシ酸化合物とヒトの腋臭との関係、特にアポクリン臭の主要原因物質としては認知されていなかった。また、他の腋臭原因物質と混合した際の臭気特性(ニオイの質や強さ)等も知られていなかった。そのため、ヒトの体臭、特に腋臭のマスキング又は消臭試験を行うために好適な評価用擬似腋臭を調製することができなかった。
特開平3−294400号公報 特開平10−25265号公報 第51回SCCJ研究討論会講演要旨集 2002.11.19
本発明の目的は、人体を使用することなく腋臭のマスキング及び消臭評価を的確・簡便に行うことを可能とする擬似腋臭組成物、及びこれを用いた腋臭のマスキング又は消臭効果の評価方法を提供することにある。
本発明者らは、強くて、スパイシー、クミン様で、甘く、脂っぽいニオイを有する、3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸もアポクリン臭の原因物質であることを初めて発見した。
また、3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸はβ位に不斉炭素原子を有するため、2種類の鏡像異性体が存在するが、右旋性の鏡像異性体(以下、(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸、又は単に(+)体とも称す)は、強くて、スパイシー、クミン様のニオイを有しており、3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸の左旋性の鏡像異性体(以下、(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸、又は単に(−)体とも称す)は、甘く、脂っぽいニオイを有していることも明らかにした。
さらに、人の汗中では、(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸の両鏡像異性体が混在しており、両鏡像異性体の構成比率は(+)体が72質量%に対して(−)体が28質量%であることも解明した。
上記の知見に基づき、本発明者らは、3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸、特に(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸60〜80質量%と(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸20〜40質量%からなる光学活性な3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸に、従来の腋臭原因物質を組み合わせることにより、腋臭、特にアポクリン臭タイプ及び混合臭タイプの腋臭をより正確に再現できる擬似腋臭組成物を得ることができた。
すなわち、本発明に係る(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸、さらに必要に応じて(B)酢酸及び/又はプロピオン酸、(C)イソ吉草酸、(D)酪酸及び/又はイソ酪酸等を含む擬似腋臭組成物を使うことによって、腋臭、特にアポクリン臭タイプ及び混合臭タイプの腋臭を正確に再現できる。その結果、腋臭、特にアポクリン臭タイプ及び混合臭タイプの腋臭のマスキング又は消臭効果を、的確かつ簡易に評価でき、前記マスキング又は消臭効果を有する物質を効率よくスクリーニングできる。
また、本発明に係る擬似腋臭組成物には、(E)3−メチル−2−ヘキセン酸(2種類の幾何異性体が存在するが、特に(E)−3−メチル−2−ヘキセン酸)及び/又は7−オクテン酸をさらに含めることができ、(F)1−オクテン−3−オン及び/又はシス−1,5−オクタジエン−3−オンをさらに含むこともできる。さらに(G)アンドロステノン(5α−Androst―16−en―3―one、または、単に、5α−アンドロステノンとも言う)及び/又はアンドロステノール(5α−Androst―16−en―3α―ol、または、単に、3α−アンドロステノールとも言う)を含むこともできる。これらの成分を配合することで、様々なタイプの腋臭をより正確に調製することができる。
本発明は、製品開発のターゲットのバリエーションに応じて、腋臭を再現することができるため、これを用いることによって、人体による評価を経ずに、デオドランド剤・消臭剤等の配合量の検討、効果の確認をより迅速、簡便、かつ、低コストにすることが可能になる。従って、体臭・腋臭防止関連製品の開発に多大な貢献をもたらす。
成分(A)の3−ヒドロキシ−3−メチルへキサン酸は、下記式(1)で表される化合物であり、以下のような特徴がある。
Figure 2004309455
(3−ヒドロキシ−3−メチルへキサン酸の特徴)
(1)腋窩部の汗から3−ヒドロキシ−3−メチルへキサン酸が検出される人はアポクリン臭を持っている。すなわち、3−ヒドロキシ−3−メチルへキサン酸は、アポクリン臭のある人に特異的に存在するものである。
(2)腋窩部の汗に含まれる3−ヒドロキシ−3−メチルへキサン酸の量が多い人ほど、アポクリン臭が強い。
(3)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸は、β位に不斉炭素原子を有するため、2種類の鏡像異性体が存在するが、(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸は、強くて、スパイシー、クミン様のニオイを有している。これに対して、(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸は、甘く、脂っぽいニオイを有している。
(4)アポクリン臭のある人の腋窩部の汗には、(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸が混在しており、両鏡像異性体の存在比率は、(+)体が72質量%、(−)体が28質量%である。
従って、3−ヒドロキシ−3−メチルへキサン酸は、腋窩部の汗に存在するアポクリン臭の主要な原因成分である。また、腋窩部における当該化合物の存在量と存在状態が、腋臭の程度(強さ)及び個人差(タイプ)を形成するものとなっている。
3−ヒドロキシ−3−メチルへキサン酸は公知の化合物であり、特許文献2には動物系の合成香料素材として用い得ることが記載されているが、アポクリン臭の主要な原因成分であることは今まで報告されたことがなく、3−ヒドロキシ−3−メチルへキサン酸がアポクリン臭の主要な原因成分であるという事実は本発明者らが初めて発見した。
また、本発明者らは、(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸が、強くて、スパイシー、クミン様のニオイを有しており、(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸が、甘く、脂っぽいニオイを有していることも明らかとした。
さらに、本発明者らは、腋窩部の汗に含まれる、3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸は、(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸72質量%と(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸28質量%とからなる光学活性物質であることも解明した。
つまり、スパイシーで、動物的で、生臭く、腋窩部に特有のニオイであるアポクリン臭の主要な原因成分は、強くて、スパイシー、クミン様のニオイを有する(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸72質量%と、甘く、脂っぽいニオイを有する(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸28質量%からなる光学活性な3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸である。
上記知見に基づき、本発明者らは、3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸、特に右旋性の鏡像異性体60〜80質量%と左旋性の鏡像異性体20〜40質量%からなる光学活性な3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸に、従来の腋臭原因物質を組み合わせることにより、アポクリン臭をより正確に再現できる擬似腋臭組成物を得ることができた。
3−ヒドロキシ−3−メチルへキサン酸(1)は、合成が可能であり、例えば、下記反応式(1)に従って、レフォルマツキー反応〔Reformatsky Reaction; Ber. 20, 1210(1887), J. Russ. Phys. Chem. Soc., 22, 44(1890)〕によりβ位に水酸基を持つエステルを合成し、そのエステルを加水分解することにより、ラセミ混合物として合成できる(反応式(1))。
Figure 2004309455
(式中、Xはハロゲン原子である。)
3−ヒドロキシ−3−メチルへキサン酸の光学分割物を得る方法としては、前記レフォルマツキー反応によって得られたβ位に水酸基を持つエステルをラクトースやセルロース誘導体、ポリアクリルアミド誘導体等のキラルな固定相を用いた分取用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等に供して、エステルの光学分割物を得た後、それぞれを加水分解する方法が挙げられる。また、ブルシンやアミノボルネオールエフェドリン等のキラルな塩基と3−ヒドロキシ−3−メチルへキサン酸とのジアステレオマー塩をつくり、結晶化により3−ヒドロキシ−3−メチルへキサン酸の光学分割物を得る方法や不斉合成等により3−ヒドロキシ−3−メチルへキサン酸の鏡像異性体を直接合成する方法も挙げられる。
成分(A)の3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸は、本発明の擬似腋臭組成物の全組成中に1〜80質量%を含有することができ、好ましくは、5〜70質量%であり、特に、10〜60質量%の範囲で配合することが好ましい。
また、成分(A)の3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸はラセミ混合物であってもよいが、(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸60〜80質量%と(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸20〜40質量%とを含有する光学活性3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸が好ましい。さらに好ましくは(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸を65〜75質量%、(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸を25〜35質量%であり、特に、(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸を72質量%、(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸を28質量%の範囲で配合することが好ましい。
成分(B)の酢酸又はプロピオン酸は、擬似腋臭組成物の全組成中にそれぞれ、1〜80質量%を含有することができ、好ましくは5〜80質量%であり、特に30〜70質量%の範囲で配合することが好ましい。
成分(C)のイソ吉草酸は、擬似腋臭組成物の全組成中に1〜20質量%を含有することができ、好ましくは、1〜10質量%の範囲であり、特に5〜10質量%で配合することが好ましい。
成分(D)酪酸又はイソ酪酸は、擬似腋臭組成物の全組成中にそれぞれ、1〜50質量%を配合することができ、好ましくは、5〜40質量%であり、特に5〜20質量%で配合することが好ましい。
成分(E)の3−メチル−2−ヘキセン酸又は7−オクテン酸は、腋臭中のアポクリン臭成分の一つであり、擬似腋臭組成物の全組成中にそれぞれ、1〜80質量%、好ましくは5〜70質量%を配合することができ、特に20〜40質量%で配合することが好ましい。
成分(F)の1−オクテン−3−オン又はシス−1,5−オクタジエン−3−オンは、擬似腋臭組成物の全組成中にそれぞれ、1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%配合することができ、特に5〜10質量%配合しても良い。
成分(G)のアンドロステノン又はアンドロステノールは、腋臭中のアポクリン臭成分の一つであり、擬似腋臭組成物の全組成中にそれぞれ、1〜80質量%、好ましくは5〜70質量%配合することができ、特に5〜50質量%の範囲で配合することが好ましい。
さらに、本発明の擬似腋臭組成物には、腋臭組成物の濃度を調整する目的で、溶剤を配合することができる。斯かる溶剤としては、腋臭に影響を与えないものであれば特に限定しないが、エタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピルミリステート、トリエチルシトレート、及びジエチルフタレート等が好ましく、擬似腋臭組成物の粘度の調整しやすさや可溶化の観点を考慮すれば、エタノール、ジエチルフタレート、3−メトキシ−3−メチルブタノール、トリエチルシトレートが特に好ましく、無臭に近いという点ではジプロピレングリコール及びジエチルフタレートが好ましい。また、ミネラルオイル、流動パラフィン等でも良い。これらの溶剤を用いたときの腋臭組成物の濃度は0.001質量%から0.1質量%の範囲で調整すると実際の腋臭に近いニオイの強さが得られる。
溶剤を用いた時の擬似腋臭組成物中の成分(A)〜(F)の濃度は、具体的には、次の通りである。
成分(A)の3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸は、本発明の擬似腋臭組成物の全組成中に0.00001〜0.08質量%を含有することができ、好ましくは、0.00005〜0.07質量%であり、特に、0.0001〜0.06質量%で配合することが好ましい。
成分(B)として示される酢酸又はプロピオン酸は、擬似腋臭組成物の全組成中にそれぞれ、0.00001〜0.08質量%を含有することができ、好ましくは0.00005〜0.08質量%であり、特に0.0003〜0.07質量%の範囲で配合することが好ましい。
成分(C)のイソ吉草酸は、擬似腋臭組成物の全組成中に0.00001〜0.02質量%含有することができ、好ましくは、0.00001〜0.01質量%であり、特に0.00005〜0.01質量%の範囲で配合することが好ましい。
成分(D)酪酸又はイソ酪酸は、擬似腋臭組成物の全組成中にそれぞれ、0.00001〜0.05質量%を配合することができ、好ましくは、0.00005〜0.04質量%であり、特に0.00005〜0.02質量%の範囲で配合することが好ましい。
成分(E)の3−メチル−2−ヘキセン酸又は7−オクテン酸は、腋臭中のアポクリン臭成分の一つであり、擬似腋臭組成物の全組成中にそれぞれ、0.00001〜0.08質量%、好ましくは0.00005〜0.07質量%を配合することができ、特に0.0002〜0.0質量%の範囲で配合することが好ましい。
成分(F)の1−オクテン−3−オン又はシス−1,5−オクタジエン−3−オンは、擬似腋臭組成物の全組成中にそれぞれ、0.00001〜0.02質量%、好ましくは0.00005〜0.015質量%を配合することができ、特に0.00005〜0.01質量%配合しても良い。
成分(G)のアンドロステノン又はアンドロステノールは、腋臭中のアポクリン臭成分の一つであり、擬似腋臭組成物の全組成中にそれぞれ、0.00001〜0.1質量%、好ましくは0.00005〜0.08質量%配合することができ、特に0.00005〜0.05質量%の範囲で配合することが好ましい。
上記成分(A)はアポクリン臭への寄与が大きく、成分(B)、(C)、(D)は酸臭への寄与が大きいことから、これらの成分を、配合比を適宜変えて混合し、さらに必要に応じて成分(E)、(F)、(G)等のその他の腋臭成分を、その配合比を適宜変えて混合し、溶剤で濃度を調節することによって、腋臭、特に、アポクリン臭タイプの腋臭、混合臭タイプの腋臭を作り出すことができる。
調製された腋臭組成物は、実際に存在する様々な腋臭をより正確に再現することができるから、腋臭のマスキング又は消臭効果を的確且つ簡易に評価でき、腋臭に対してその臭いのマスキング作用又は消臭作用を有する物質を効率良くスクリーニングすることができる。
本発明の擬似腋臭組成物を用いた、腋臭のマスキング又は消臭効果の評価は、例えば、本発明の擬似腋臭組成物に、マスキング又は消臭効果が期待される被検体を加えるか、或いは、擬似腋臭組成物と被検体とを接触させて臭いを嗅ぎ、被検体を作用させる前の擬似腋臭組成物の臭いと比較することにより行うことができる。具体的な方法としては、カップ等を用いればよく、臭いの評価にあたっては、1〜20人の専門パネラーにより行うのが好ましく、3〜10段階で評価するのが好ましい。
また、上記のような官能試験によらず、擬似腋臭組成物に被検体を作用させた後に、擬似腋臭組成物中の各臭い成分をGC−MS等の化学的及び/又は物理的手法により分析し、被検体を作用させる前の擬似腋臭組成物の分析結果と比較することにより、腋臭のマスキング又は消臭効果を評価してもよい。
実験例1(3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸の合成、分析、匂い評価)
(1)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸の合成
窒素気流下、冷却管を取り付けた3口フラスコに亜鉛粉末13.08g(和光純薬工業)、脱水テトラヒドロフラン(和光純薬工業)50mL、2−ペンタノン21.25mL(東京化成工業)を加えた。攪拌しながらブロモ酢酸ベンジル31.60mL(東京化成工業)を添加した。フラスコを50℃の水浴中に入れて、攪拌しながら8時間反応させた。
反応液を1Lの三角フラスコに移した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液20mLを加えて良くかき混ぜた。無水硫酸ナトリウムを加えて水分を吸収させた後、ろ紙でろ過し、エバポレーターで溶媒を留去することで、3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸ベンジルエステルを得た(収量41.12g,収率87.0%)。次にキラルカラムを装着した高速液体クロマトグラフィーを用いて、3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸ベンジルエステルの光学分割物を得た。
光学的に純粋な3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸ベンジルエステル1.4gにエタノール1.4g、1N−水酸化ナトリウム水溶液5.94gを加えて2時間攪拌した。ジクロロメタンでベンジルアルコールを抽出(20mL×5回)した後、1N−塩酸水溶液を加えて、水層を酸性化した。ジクロロメタンで遊離してきた3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸を抽出(20mL×3回)した。溶媒を留去して、3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸の両鏡像異性体を得た(右旋光物質:収量0.813g,収率94.0%、左旋光物質:収量0.757g,収率87.5%)。
(2)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸の分析及び評価
次に3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸の2つの鏡像異性体について、
1.ニオイの官能評価
2.旋光性の測定
3.キラルカラムを装着したガスクロマトグラフィーによる分析
を行った。
(ニオイの官能評価)
専門パネラー5名によって、ニオイの質感、強度について評価した。
サンプル:濃度100ppmのミネラルオイル(ナカライテスク製)溶液
方法:ろ紙(5mm×10cm)の先に少量染み込ませたサンプルを直接嗅いで評価。
(旋光性の測定)
装置:(株)アタゴ製 POLAX−D
セル:光路長10cm,容量1.0cm3
光源:ナトリウムD線
測定温度:25℃
測定溶媒:エチルアルコール
サンプル濃度:42.4g/100cm3
(ガスクロマトグラフィー(GC)による分析)
分析装置:HP6890(Agilent社製)
カラム:CHIRALDEX D−DM(0.25mmID×30m×0.25μm,ASTEC社製)
キャリアガス:He(2.2ml/min)
注入方法(注入量):スプリットレス(1μL)
サンプル:0.05%ジエチルエーテル溶液
オーブン温度:40℃(1分)→6℃/分→60℃→2℃/分→120℃(60分)
結果は、表1に示すが如く、左旋性の鏡像異性体は、甘く、脂っぽく、重たいニオイを有していることがわかった。これに対して、右旋性の鏡像異性体はスパイシーでクミン様のニオイを有しており、3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸のβ位の不斉炭素原子に由来する2つの鏡像異性体間でニオイの質が大きく異なることがわかった。また、右旋性の鏡像異性体は、左旋性の鏡像異性体よりもニオイが強く、3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸のβ位の不斉炭素原子に由来する2つの鏡像異性体間でニオイの強さが異なっていることもわかった。
すなわち、(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸とは、β位の不斉炭素原子に由来する立体構造が異なることによって、人間の嗅覚の受容体への結合態様に差が生じていると考えられる。
さらに、左旋性の鏡像異性体は、前記条件におけるガスクロマトグラフィー分析において、右旋性の鏡像異性体よりも保持時間が短いことがわかった。
Figure 2004309455
実験例2(人の汗に含まれる3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸の分析)
1.被験者の選出
健康な日本人男性65名を無作為に被験者として選んだ。Tシャツの腋窩部に当る部分について7人の専門パネラーによって官能評価を行った。その結果、被験者のうち、アポクリン臭の強い人が10名、酸臭とアポクリン臭が両方同じ程度感じられる人(混合臭)が3名、酸臭の強い人が52名であった。
2.汗に含まれる3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸の分析
強いアポクリン臭が認められた人の中から無作為に選んだ3名に腋窩部に当たる部分に綿パッドを縫い付けたTシャツを24時間着用してもらった。3枚のTシャツから6枚の綿パッドを取り外し、1N−水酸化ナトリウム水溶液30mLに浸漬した。1度パッドを絞った後、新たにイオン交換水30mLを加えて浸漬し、もう一度、パッドを絞った。1N−水酸化ナトリウム水溶液30mLとイオン交換水30mLを合わせて、単蒸留ジエチルエーテルで洗浄(30mL×2回)した後、1N−塩酸水溶液約30mLを加えて中和した。水層から遊離してきた汗中の酸性物質は単蒸留ジエチルエーテルによって抽出した(30mL×2回)。エバポレーターを使って、エーテル抽出物を約50μLに濃縮した。キラルカラムが装着されたガスクロマトグラフィー−質量分析計(GC−MS)によって分析した。
対照として、化学合成によって得られた、3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸のラセミ混合物についても同条件で分析した。
得られたトータルイオンクロマトグラムから3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸に特徴的なフラグメントイオン(m/z=103)のみを書き出したイオンクロマトグラムを作成し、そのピーク面積から各鏡像異性体の存在比率を算出した。
(ガスクロマトグラフィー−質量分析計(GC−MS)による分析)
分析装置:HP6890MSD(Agilent社製)
カラム:CHIRALDEX D−DM(0.25mmID×30m×0.25μm,ASTEC社製)
キャリアガス:He(2.2ml/min)
注入方法:1μL/スプリットレス
オーブン温度:40℃(1分)→6℃/分→60℃→2℃/分→120℃(60分)
イオン化電圧:70eV
人の汗に含まれる3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸のイオンクロマトグラム(m/z=103)を図1に示す。また、人工的に調製した3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸のラセミ混合物のイオンクロマトグラム(m/z=103)を図2に示す。
各鏡像異性体の存在比率を算出した結果(表2)、ラセミ混合物の3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸は、右旋性の鏡像異性体50質量%と左旋性の鏡像異性体50質量%とから構成されていることが確認できた。これに対して、腋窩部の汗に含まれる3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸は、右旋性の鏡像異性体72質量%と左旋性の鏡像異性体28質量%とから構成されていることが明らかとなった。つまり、人の腋窩部には、極めて強くて、スパイシー、クミン様のニオイを持つ(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸が、甘くて脂っぽくて、甘く、重いニオイを持つ(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸の約2.6倍多く含まれていることを解明した。
Figure 2004309455
実施例1〜7及び比較例1、2
表3に示す擬似腋臭組成物を調製し、下記の評価方法に基づいて評価した。その結果を表3に示す。(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸は、ラセミ混合物((+)体:(−)体=50質量%:50質量%)を用いた。表3中の%は質量%を示す。
<評価方法>
温度(25℃)、湿度65%の環境に保たれた室内にて、専門パネラー10人(男女各5人)でカップ(下部円直径4.5cm、上部円直径6.5cm、高さ9cm、内容量約216cm)を用いて、これに0.015質量%に希釈した表3の擬似腋臭組成物を1回噴霧した状態で、その時の腋臭らしさについて、以下の基準で評価した。希釈にはミネラルオイル(ナカライテスク社製)を用いた。噴霧には手動式スプレー容器(1回の噴霧量=約0.2g)を用いた。10人の評価者の平均スコアから最終的な評価値(6段階評価)を求めた。
<臭いの強さの評価基準>
0:(臭いを)感じない
1:弱い
2:やや弱い
3:やや強い
4:強い
5:かなり強い
<平均スコア(ニオイの強さ)と最終評価>
10人の評価の平均スコア=0.0〜0.4 → 最終評価 0
〃 0.5〜1.4 → 〃 1
〃 1.5〜2.4 → 〃 2
〃 2.5〜3.4 → 〃 3
〃 3.5〜4.4 → 〃 4
〃 4.5〜5.0 → 〃 5
Figure 2004309455
表3に示したとおり、実施例1及び2の組成物は、アポクリン臭の人の臭いに近い臭いが再現された組成物であり、これはアポクリン臭をターゲットとするデオドランド剤の開発に応用可能な組成物である。
実施例3の組成物には、(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と、(B)酢酸及びプロピオン酸と、(C)イソ吉草酸がバランスよく配合され、混合臭の人に近い臭いを再現することができた。
実施例4の組成物には、(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と、(B)酢酸と、(C)イソ吉草酸と、(D)酪酸及びイソ酪酸がバランスよく配合され、混合臭の人に近い臭いを再現することができた。
実施例3及び4の組成物は、混合臭をターゲットとするデオドランド剤、介護臭の消臭用、室内消臭、公共施設内の消臭等の消臭剤などの開発に応用することが可能な組成物である。
実施例5〜7の組成物には、(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と、(B)プロピオン酸と、(C)イソ吉草酸と、(D)酪酸及びイソ酪酸が配合され、酸臭の強い混合臭の人の臭いに近い臭いを再現することができた。この組成物は酸臭が強い混合臭をターゲットとするデオドランド剤等の開発に応用することが可能な組成物である。
これに対し、比較例1及び2は、(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸が配合されておらず、酸臭(酸っぱい臭い、又は、足臭的な臭い)しか再現できないという結果を得た。
実施例8〜17及び比較例3〜7
表4に示す擬似腋臭組成物を調製し、下記の評価方法に基づいて評価した。その結果を表4に示す。(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸は、ラセミ混合物((+)体:(−)体=50質量%:50質量%)を用いた。
<評価方法>
温度(25℃)、湿度65%の環境に保たれた室内にて、専門パネラー10人(男女各5人)でカップ(下部円直径4.5cm、上部円直径6.5cm、高さ9cm、内容量約216cm)を用いて、これに表4に示す擬似腋臭組成物を1回噴霧した状態で、その時の腋臭らしさについて、前述の基準で評価した。噴霧には手動式スプレー容器(1回の噴霧量=約0.2g)を用いた。
Figure 2004309455
実施例8及び9の組成物は、アポクリン臭の人の臭いに近い臭いを再現した組成物である。
実施例10及び11の組成物には、(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と(B)酢酸或いはプロピオン酸がバランスよく配合され、混合臭の人に近い臭いを再現することができた。
実施例12の組成物には、(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と(C)イソ吉草酸がバランスよく配合され、混合臭の人に近い臭いを再現することができた。
実施例13の組成物には、(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と(D)酪酸がバランスよく配合され、混合臭の人に近い臭いを再現することができた。
実施例14及び15の組成物には、(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と、(B)酢酸と、(C)イソ吉草酸或いは(D)酪酸が配合され、酸臭が強い混合臭の人に近い臭いを再現することができた。
実施例16の組成物には、(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と、(C)イソ吉草酸と、(D)酪酸が配合され、酸臭が強い混合臭の人に近い臭いを再現することができた。
実施例17の組成物には、(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と、(B)酢酸と、(C)イソ吉草酸と、(D)イソ酪酸が配合され、酸臭が強い混合臭の人に近い臭いを再現することができた。
これに対し、比較例3〜7は、(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸が配合されておらず、酸臭(酸っぱい臭い、または、足臭様の臭い)しか再現できないという結果を得た。
実施例18〜27及び比較例8
表5に示す擬似腋臭組成物を調製し、下記の評価方法に基づいて評価した。その結果を表5に示す。表5中の%は質量%を示す。
Figure 2004309455
<評価方法>
室温(25℃)、湿度65%の環境に保たれた室内にて、専門パネラー10人(男女各5人)で、カップ(下部円直径4.5cm、上部円直径6.5cm、高さ9cm、内容量約216cm)を用いて、これに0.015%に希釈した擬似腋臭組成物を1回噴霧した状態で評価した。希釈にはミネラルオイル(ナカライテスク社製)を用いた。噴霧には手動式スプレー容器(1回の噴霧量=約0.2g)を用いた。ニオイの強さは、10人の評価者が、下記の5段階評価基準によって評価し、10人の平均スコアから下記の基準により最終的な評価(5段階)を求めた。
<ニオイの強さの評価基準>
1:弱い
2:やや弱い
3:やや強い
4:強い
5:かなり強い
<平均スコア(ニオイの強さ)と最終評価>
10人の評価の平均スコア=0.0〜1.4 → 最終評価 1
〃 1.5〜2.4 → 〃 2
〃 2.5〜3.4 → 〃 3
〃 3.5〜4.4 → 〃 4
〃 4.5〜5.0 → 〃 5
また、それぞれの組成物に対して、下記の評価基準によって、アポクリン臭タイプの擬似腋臭としての評価、混合臭タイプの擬似腋臭としての評価、酸臭タイプの擬似腋臭としての評価を行なった。評価は10人で行い、もっとも人数の多かったものを最終的な評価値とした。
<擬似腋臭としての評価基準>
×:腋臭(アポクリン臭、混合臭、酸臭)とはイメージが異なる。
△:やや腋臭(アポクリン臭、混合臭、酸臭)に近いイメージがある。
〇:腋臭(アポクリン臭、混合臭、酸臭)を再現できている。
◎:腋臭(アポクリン臭、混合臭、酸臭)を正確に再現できている。
表5に示したとおり、実施例18〜21の組成物は、(A)(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸 60〜80質量%と(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸 20〜40質量%からなる3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸に、(B)酢酸及びプロピオン酸と(C)イソ吉草酸がバランスよく配合されており、アポクリン臭タイプの腋臭に良く似たニオイを再現することができ、アポクリン臭タイプの腋臭をターゲットとするデオドランド剤の開発に応用することが可能な組成物である。
特に、実施例18及び19の組成物は、(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸72質量%と(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸28質量%からなる光学活性な3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸が配合されており、アポクリン臭タイプの腋臭を極めて正確に再現することができた。
実施例22の組成物には、(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と、(B)酢酸及びプロピオン酸と、(C)イソ吉草酸がバランスよく配合され、混合臭タイプの腋臭に良く似たニオイを再現することができた。
実施例23の組成物には、(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と、(B)酢酸と、(C)イソ吉草酸と、(D)酪酸及びイソ酪酸がバランスよく配合され、混合臭タイプの腋臭に良く似たニオイを再現することができた。
実施例22及び23の組成物は、混合臭の消臭をターゲットとするデオドランド剤、介護臭の消臭用、室内消臭、公共施設内の消臭等の消臭剤などの開発に応用することが可能な組成物である。
実施例24の組成物には、(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と、(B)プロピオン酸と、(C)イソ吉草酸と、(D)酪酸及びイソ酪酸が配合され、酸臭が強い混合臭の人に良く似たニオイを再現することができた。この組成物は酸臭が強い混合臭タイプをターゲットとするデオドランド剤等の開発に応用することが可能な組成物である。
実施例25の組成物は、(A)(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸 100質量%からなる3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸に、(B)酢酸及びプロピオン酸と(C)イソ吉草酸がバランスよく配合されており、アポクリン臭の人の臭いに近い臭いを再現することができた。
実施例26の組成物は、(A)(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸 50質量%と(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸 50質量%からなる3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸に、(B)酢酸及びプロピオン酸と(C)イソ吉草酸がバランスよく配合されており、アポクリン臭の人の臭いに近い臭いを再現することができた。
実施例27の組成物は、(A)(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸 100質量%からなる3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸に、(B)酢酸及びプロピオン酸と(C)イソ吉草酸がバランスよく配合されており、アポクリン臭の人の臭いに近い臭いを再現することができた。
これに対して、(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸を含有しない比較例8の組成物は、酸臭(酸っぱい臭い、又は、足臭様の臭い)しか再現できず、アポクリン臭及び混合臭を再現できないという結果を得た。
実施例28〜42及び比較例9〜13
表6示す擬似腋臭組成物を調製し、下記の評価方法に基づいて評価した。その結果を表6に示す。
Figure 2004309455
<評価方法>
室温(25℃)、湿度65%の環境に保たれた室内にて、専門パネラー10人(男女各5人)で、カップ(下部円直径4.5cm、上部円直径6.5cm、高さ9cm、内容量約216cm)を用いて、これに表に示した擬似腋臭組成物を1回噴霧した後、下記の5段階評価基準で評価した。噴霧には手動式スプレー容器(1回の噴霧量=約0.2g)を用いた。ニオイの強さは、10人の評価者が下記の5段階評価基準によって評価し、10人の平均スコアから下記の基準により最終的な評価(5段階)を求めた。
<ニオイの強さの評価基準>
1:弱い
2:やや弱い
3:やや強い
4:強い
5:かなり強い
<平均スコア(ニオイの強さ)と最終評価>
10人の評価の平均スコア=0.0〜1.4 → 最終評価 1
〃 1.5〜2.4 → 〃 2
〃 2.5〜3.4 → 〃 3
〃 3.5〜4.4 → 〃 4
〃 4.5〜5.0 → 〃 5
また、それぞれの組成物に対して、下記の基準によって、アポクリン臭タイプの擬似腋臭としての評価、混合臭タイプの擬似腋臭としての評価、酸臭タイプの擬似腋臭としての評価を行なった。評価は10人で行い、もっとも人数の多かったものを最終的な評価値とした。
<擬似腋臭としての評価基準>
×:腋臭(アポクリン臭、混合臭、酸臭)とはイメージが異なる。
△:やや腋臭(アポクリン臭、混合臭、酸臭)に近いイメージがある。
〇:腋臭(アポクリン臭、混合臭、酸臭)を再現できている。
◎:腋臭(アポクリン臭、混合臭、酸臭)を正確に再現できている。
実施例28〜31は、(A)(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸 60〜80質量%と(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸 20〜40質量%からなる3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸が配合されており、アポクリン臭タイプの腋臭に良く似たニオイを再現することができた。
特に、実施例28及び29の組成物は、(A)(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸72質量%と(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸28質量%からなる光学活性な3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸が配合されており、アポクリン臭タイプの腋臭を極めて正確に再現することができた。実施例30〜33の組成物は、アポクリン臭タイプの腋臭をターゲットとするデオドランド剤の開発に応用することが可能な組成物である。
実施例32の組成物は、(A)(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸 100質量%からなる3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸が配合されており、アポクリン臭の人の臭いに近い臭いを再現することができた。
実施例33の組成物は、(A)(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸 50質量%と(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸 50質量%からなる3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸が配合されており、アポクリン臭の人の臭いに似た臭いを再現することができた。
実施例34の組成物は、(A)(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸 100質量%からなる3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸が配合されており、アポクリン臭の人の臭いに似た臭いを再現することができた。
実施例35及び36は、(A)(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸72質量%と(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸28質量%からなる光学活性な3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸に、(B)酢酸或いはプロピオン酸が配合され、混合臭タイプの腋臭に良く似たニオイを再現することができた。
実施例37及び38は、(A)(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸72質量%と(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸28質量%からなる光学活性な3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸に、(C)イソ吉草酸或いは(D)酪酸が配合され、混合臭タイプの腋臭に良く似たニオイを再現することができた。
実施例39は、(A)(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸72質量%と(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸28質量%からなる光学活性な3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と、(B)酢酸と、(C)イソ吉草酸が配合され、酸臭が強い混合臭の人に良く似たニオイを再現することができた。
実施例40は、(A)(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸72質量%と(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸28質量%からなる光学活性な3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と、(B)プロピオン酸と、(D)酪酸が配合され、酸臭が強い混合臭の人に良く似たニオイを再現することができた。
実施例41は、(A)(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸72質量%と(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸28質量%からなる光学活性な3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と、(C)イソ吉草酸と、(D)酪酸が配合され、酸臭が強い混合臭の人に良く似たニオイを再現することができた。
実施例42は、(A)(+)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸72質量%と(−)−3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸28質量%からなる光学活性な3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸と、(B)酢酸と、(C)イソ吉草酸と、(D)酪酸及びイソ酪酸が配合され、酸臭が強い混合臭の人に良く似たニオイを再現することができた。
これに対して、(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸を含有しない比較例9〜13の組成物は、酸臭(酸っぱい臭い、または、足臭様の臭い)しか再現できないという結果を得た。
人の汗に含まれる3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸のイオンクロマトグラム(m/z=103)である。 人工的に調製した3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸のラセミ混合物のイオンクロマトグラム(m/z=103)である。

Claims (9)

  1. 成分(A)3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸を含む擬似腋臭組成物。
  2. 成分(B)酢酸及び/又はプロピオン酸をさらに含む請求項1に記載の擬似腋臭組成物。
  3. 成分(C)イソ吉草酸をさらに含む請求項1又は2に記載の擬似腋臭組成物。
  4. 成分(D)酪酸及び/又はイソ酪酸をさらに含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の擬似腋臭組成物。
  5. 成分(E)3−メチル−2−ヘキセン酸及び/又は7−オクテン酸をさらに含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の擬似腋臭組成物。
  6. 成分(F)1−オクテン−3−オン及び/又はシス−1,5−オクタジエン−3−オンをさらに含む請求項1乃至5のいずれか1項に記載の擬似腋臭組成物。
  7. 成分(G)アンドロステノン及び/又はアンドロステノールをさらに含む請求項1乃至6のいずれか1項に記載の擬似腋臭組成物。
  8. 前記成分(A)が、右旋性の鏡像異性体60〜80質量%と左旋性の鏡像異性体20〜40質量%からなる3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサン酸である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の擬似腋臭組成物。
  9. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の擬似腋臭組成物を用いて、腋臭のマスキング又は消臭効果の評価をする方法。
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