JP2004309189A - 回転振動磁場を用いた反応促進方法とそのための装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁性微粒子による磁気凝集がなく、特定成分の検出やその濃度等の測定に活用でき、しかも反応時間を大幅に短縮することのできる新しい回転振動磁場を用いた反応促進方法とそのための装置を提供する。
【解決手段】磁性微粒子を利用した試料媒質中の特定成分における反応促進方法であって、この特定成分と特異的に反応する活性成分を固定化した磁性微粒子に磁場を加えて、磁性微粒子クラスタを形成させ、振動磁場の印加によって媒質中で磁性微粒子クラスタを回転および/または泳動させ、特定成分と活性成分との反応を促進させることを特徴とする反応促進方法とする。
【選択図】 なし
【解決手段】磁性微粒子を利用した試料媒質中の特定成分における反応促進方法であって、この特定成分と特異的に反応する活性成分を固定化した磁性微粒子に磁場を加えて、磁性微粒子クラスタを形成させ、振動磁場の印加によって媒質中で磁性微粒子クラスタを回転および/または泳動させ、特定成分と活性成分との反応を促進させることを特徴とする反応促進方法とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、回転振動磁場を用いた反応促進方法とそのための装置に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、磁性微粒子を担体として用い、磁場を加えることによって磁性粒子クラスタを形成させて、この磁性粒子クラスタを利用することを特徴としている回転振動磁場を用いた反応促進方法とそのための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、バイオテクノロジーや環境分析等のように微量分析が重要、かつ、迅速に行われることが求められており、そのため携帯が可能な小型分析機器の中枢部としてとしてマイクロ分析チップの研究、開発が進められている。また、微細加工技術によって作製された、マイクロリアクターによる合成反応に関する研究も進められている。
【0003】
従来より、液体中の微量成分を分析する場合は、光や電気信号を検出する素子の反応は迅速で、実用性が高いと期待されているが、分析の対象成分が分散媒中を拡散して、触媒や抗体、酵素等と分子レベルで衝突して反応する過程進行は遅いため、分析時間が長くなる原因となっていた。たとえば、狂牛病の検査には、ELISA(酵素標識免疫法)が利用されるが、この方法では、抗体−抗原反応の反応時間に数時間以上を要するため、結果の判明にも長時間を要することとなり、大きな問題となっていた。
【0004】
また、従来の生化学的分析方法では、マイクロウェルと呼ばれるミリメートル単位の半径および深さを有するウェルを複数具備された、マイクロウェルプレート等が利用されており、このウェル内に100μlオーダーの液体サンプルを入れ、あらかじめウェルの壁面に固定化された抗体等と結合反応させる。だが、サンプル溶液中の結合分子が、ウェル壁面に固定化された抗体と結合反応をほぼ完了するには、数時間前後の長い時間を要するといった問題があった。
【0005】
そこで、磁性微粒子の表面に抗体等を固定化し、この抗体固定化済磁性微粒子と反応物を含有するサンプルとを反応させる、反応時間の短縮の方法(特許文献1)が提案されている。この方法では、所定の測定容器内にあらかじめ被測定物質を固定化させ、そして被測定物質と結合する抗体を磁性ビーズに固定させた抗体固定化マーカー磁性ビーズを反応させる。そして、磁石を作用させ、抗体固定化マーカー磁性ビーズの沈降速度を増大させることによって短時間で反応が完了する。試料中の被測定物質が抗体と反応する場合は、抗体−抗原反応により、抗体固定化マーカー磁性ビーズと被測定物質とが結合し、被測定物質は所定容器内の全体に固定化されているため、一様に広がった沈降パターンを形成し、サンプル中に存在する被測定物質を高感度に判定することができるとしている。しかしながら、この方法は、サンプル中に目的とする被測定物質の存在の有無を判定することを主たる目的とし被測定物質の量の測定、また磁性による磁気凝集等が解消されていなかった。磁気凝集の発生は、磁性微粒子と被測定物質との衝突確率に影響を与え、反応時間の短縮にも影響する。
【0006】
また、別の磁性微粒子を利用した反応促進方法(特許文献2)も提案されている。つまり、この提案では、被測定物質と特異的に結合反応する抗体等を固定化した磁気微粒子に蛍光物質をラベルし、このラベル済抗体固定化磁気微粒子を被測定物質を含有するサンプル溶液に分散させて、ラベル済抗体固定化磁気微粒子と被測定物質とを結合反応させ、生じた凝集物を磁石等によって磁気的に分離し、発光量を測定する。これによって、サンプル溶液中に存在する被測定物質の量を迅速、かつ、高感度に測定することができるとしている。しかしながら、この方法においても、磁性微粒子による磁気凝集等が解決されておらず、反応時間のさらなる短縮に障害となっていた。
【0007】
【特許文献1】
特許第2614997号
【特許文献2】
特開平5−322894号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこでこの出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、従来の問題点を解消し、磁性微粒子による磁気凝集がなく、試料媒質中の特定成分の検出やその濃度等の測定に活用でき、しかも反応時間を大幅に短縮することのできる新しい回転振動磁場を用いた反応促進方法とそのための装置を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決する手段として、第1には、磁性微粒子を利用した試料媒質中の特定成分における反応促進方法であって、この特定成分と特異的に反応する活性成分を固定化した磁性微粒子に磁場を加えて、磁性微粒子クラスタを形成させ、振動磁場の印加によって媒質中で磁性微粒子クラスタを回転および/または泳動させ、特定成分と活性成分との反応を促進させることを特徴とする反応促進方法を提供する。第2には、前記の反応促進方法において、磁場勾配が利用されていることを特徴とする反応促進方法を、第3には、振動磁場が、1から1000Hzの範囲であることを特徴とする反応促進方法を提供する。
【0010】
また、この出願の発明は、第4には、磁性微粒子の内部には、超常磁性粒子が含まれていることを特徴とする反応促進方法を提供し、第5には、磁性微粒子の表面には、生体分子と親和性を有するポリマー成分が被覆されていることを特徴とする反応促進方法を、第6には、活性成分が固定化された磁性微粒子を、特定成分の量より過剰添加されることを特徴とする反応促進方法を提供する。
【0011】
そして、この出願の発明は、第7には前記の発明のいずれかの反応促進方法のための反応促進装置であって:
(1)1個以上の磁石;
(2)(1)の磁石が配設保持された磁石保持体;および
(3)磁石保持体を回転させるためのモーター;
とを備え、磁石保持体の中に設置された試料の周囲で、磁石が配設された磁石保持体が回転し、試料中の磁性微粒子に振動磁場を与えることを特徴とする反応促進装置を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について詳しく説明する。
【0013】
この出願の発明は、試料媒質中の特定成分における反応を促進させる方法であって、この特定成分と特異的に反応する活性成分を固定化した磁性微粒子に磁場を加えて、磁性微粒子クラスタを形成させ、振動磁場の印加によって媒質中で磁性微粒子クラスタを回転および/または泳動させ、攪拌効果を得て、反応時間を短縮させることを特徴としている。また、この出願の反応促進方法は、磁場勾配の効果に基づいて、個々の磁性微粒子または/および磁性微粒子クラスタの泳動効果を利用することを特徴としてもよく、「磁場勾配」とは、磁石や電流が周囲の他の磁石や電流に影響をおよぼす強度の傾きを意味する。
【0014】
この出願の発明における「特定成分」とは、試料媒質中における各種反応の目的の対象となる物質のことであり、たとえば、アルブミン、プロスタグランジン、ステロイドホルモンや各種免疫抗体(IgG、IgA、IgM、IgE等)等の生体物質、また各種のアミノ酸(グルタミン酸、ロイシンやフェニルアラニン、バリン、アラニン、γ―アミノ酪酸等)や各種の化学物質等が挙げられる。また、この出願の方法において、促進効果が得られるとする「特定成分における反応」とは、試料媒質中の目的とする物質の抗体−抗原反応等を利用した濃度測定反応や物質検出反応、触媒反応を利用した化学合成反応、また磁性微粒子の磁性を利用した特定成分の分離反応等の各種反応のことを意味する。「活性成分」とは、前記の特定成分と特異的に反応する物質である。たとえば、生体反応や化学反応の促進効果を有する触媒物質(たとえば、プロテインキナーゼ、チロシンキナーゼやMAPキナーゼ等の各種酵素等)、各種抗体(抗アルブミン抗体、抗プロスタグランジン抗体、抗ステロイドホルモン抗体や抗IgG抗体、抗IgA抗体、抗IgM抗体、抗IgE抗体等)等の生体物質や各種の化学物質等が挙げられる。この活性成分が固定化された磁性微粒子は、特定成分の量より過剰添加されることによって、反応がより大きく促進することができるため好ましい。
【0015】
「磁性微粒子」は、水溶液中で不溶性であり、かつ、磁性を示すものであれば特に限定されることはない。従来より用いられている強磁性微粒子でもよいが、超常磁性の微粒子は、外部磁場がゼロになると磁気双極子もゼロになり、磁性による磁気凝集が生じないため、より好ましい。そして、この超常磁性微粒子に磁場を加えることによって、磁性微粒子クラスタが形成され、この磁性微粒子クラスタに振動磁場を印加して、磁性微粒子クラスタを回転・泳動して、上記の特定成分と磁性微粒子に固定化された活性成分との衝突頻度が上がり、その結果、各種の反応促進が実現される。この磁性微粒子の粒径は、特に限定はされるものではないが、10μm以上の粒径では、水溶液中で重力沈降が生じ、実用性が低くなる。そのため、磁性微粒子の粒径は、9μmから1μmの範囲が好ましく、さらにはこの磁性微粒子の粒径は、nmオーダーのものであってもよい。
【0016】
また、前記の特定成分が生体分子の場合には、特定成分との結合がより促進させるため、磁性微粒子の表面に、生体分子と親和性を有するポリマー成分が被覆されていてもよく、分析対象や目的、条件等に合わせて適宜に選択することができる。「ポリマー成分」としては、たとえば、ビオチンと特異的に結合するアビジン等の各種タンパク質、DNAやRNA等の核酸、またタンパク質と高い結合性を有するエポキシ基、トシル基、アミノ基、カルボキシル基等の各種活性基を有する成分等が挙げられる。
【0017】
そして、この磁性微粒子に上記の各活性成分の固定化方法としては、物理的吸着、化学的共有結合の形成等のいずれの方法を適宜に採択できる。抗体や高分子量タンパク質等のような物理的吸着能が高い活性成分には、物理的吸着による固定化が好ましく、ホルモン類等のような物理的吸着能が低い活性成分には、化学的共有結合による固定化が好ましい。固定化の方法は、すでに多くの方法が提案されており、固定化する活性成分の種類や特性に応じて、公知の方法から固定化方法を採択してもよい。
【0018】
この出願の発明において、活性成分または磁性微粒子に標識物質を結合させ、この標識物質を分析することによって、試料媒質中の特定成分の濃度やその存在の検出等を実施することもできる。「標識物質」としては、各種の蛍光物質や化学発光物質、酵素等が利用できる。たとえば、蛍光物質としては、緑色蛍光タンパク質や赤色蛍光タンパク質、クロロフィル、レセルピン、葉酸等、およびこれらの誘導体等が使用でき、また化学発光物質としては、ルミノール、インドール、ロフィン等、酵素としては、β−Dガラクトシターゼ、アルカリフォスファターゼ等が使用できる。
【0019】
この出願の反応促進方法を実施するには、前記のとおりに形成された磁性微粒子クラスタに振動磁場を印加するが、この「振動磁場」は、1から1000Hzの範囲であることが好ましく、3から10Hzの範囲がさらに好ましい。振動磁場の印加方法は、たとえば、反応容器の外側に電磁石を設置する方法、磁石がN極・S極が対向するよう、かつ、反応容器を挟持するよう設置して、この2つの磁石が同一周期で回転させる方法等が利用でき、特に限定されるものではない。
【0020】
また、この出願の発明は、振動磁場と共に電場を印加することや電磁場を作用させることももちろん可能であり、有効な反応促進効果が得られると期待することもできる。
【0021】
「磁石」は、電磁石や永久磁石であることが好ましい。「電磁石」とは、軟鉄製の鉄心周囲にコイルを巻き、この鉄心の先端には目的等に応じた適当な形状の磁極が設置され、電流を通じると磁化し、電流を切ると磁化が消える磁石のことであり、残留磁束がある。なお、この電磁石における発生磁場の強度は、コイルの巻き数と電流との積に比例し、また鉄心や磁極の形状、大きさにも影響される。一方、「永久磁石」とは、磁場をゼロにしても50から80%程の磁化が残る残留磁束があり、保磁力のある強磁性体である。「残留磁束」の密度としては、特に限定されるものではないが、この出願の発明においては、磁束密度0.01から0.3テスラの範囲であることが好ましい。なお、この磁束密度が大きいほど、この出願の発明の効果も大きくなると考慮されるが、そのための磁場発生装置等の設備費用が大きくなり現実的ではない。磁石の設置場所は、左右一対だけでなく、上下一対や上下左右の四極等に設置してもよく、また磁石が相互に反発する向きに設置することによって、特別な制御を施さなくとも交互にサンプル容器であるバイアルに接近・乖離を繰り返し、磁性ビーズに回転および振動を与えることができる。回転軸とバイアル間の距離aは、特に限定されないが、5.0mmから15mmの範囲にすることが好ましい。また、磁石とバイアル間の距離は、バイアルに対して磁石からの最も近い距離dを数mm以下にすることが好ましく、より具体的には基板やバイアルへの磁性微粒子の衝突等を回避する観点から2.0mmから3.0mmの範囲にすることがさらに好ましい。
【0022】
「モーター」は、電気等をエネルギー源として動力を発生させることができ、その動力によって磁石を保持する磁石保持体等の部材を回転させること等ができるものであれば、そのサイズ等は限定されるものではない。たとえば、小型モーター(マブチ社製:回転速度7800rpm、130回転/秒)等が使用できる。もちろん、このモーターは、より大きな動力を得るため、1つ以上のモーターを設置することもできる。
【0023】
図1は、この出願の発明における反応促進装置を模式的に例示した平面図A、側面図B、および要部拡大図Cである。図1に例示したとおり、この出願の発明における反応促進方法のための反応促進装置は、磁石(1)、この磁石(1)が配設保持された磁石保持体(2)、この磁石保持体(2)を回転させるための動力源となるモーター(3)等を備えている。この図1の例では、試料中の磁性微粒子に回転振動を与えるため、一対の磁石(1)が向かい合わせで磁石保持体(2)に配設保持され、磁石保持体(2)中で、この一対の磁石(1)の間に試料溶液である磁性微粒子含有溶液(4)の入ったバイアル(5)を設置する。次に、モーター(3)を電気等で稼動させることによって動力を発生させ、この発生した動力は磁石保持体(2)に伝導される。そして、磁石保持体(2)に配設保持されている磁石(1)をバイアル(5)の周囲で回転(矢印)させることによって、磁性微粒子が試料溶液中で回転振動され、試料溶液中の解析目的とする特性成分と磁性微粒子に固定化された活性成分との反応が促進される。
【0024】
なお、この出願の発明の促進方法および促進装置は、μlオーダーにおいても実施することができる、高い省試薬効果があることも特徴としている。
【0025】
以下、図1に例示した反応促進装置を用いた実施例を示して、さらに詳細、かつ、具体的に説明する。もちろん、この出願の発明は以下の例によって限定されるものではない。
【0026】
【実施例】
(実施例1)磁性微粒子クラスタの形状
図2は、振動数(f) 5Hzの振動磁場を印加した磁性微粒子クラスタの形状を示した図である。また、図3は、振動数(f) 40Hzの振動磁場を印加した磁性微粒子クラスタの形状を示した図であり、振動数(f) 90Hzの振動磁場を印加した磁性微粒子クラスタの形状を示した図である。図2から図4に示したとおり、磁性微粒子クラスタは、低振動数では細長く、振動数が増すと短く、かつ、太くなる。なお、後述のとおり、磁性微粒子クラスタの攪拌効果は、磁性微粒子クラスタの形状が短くなると減少し、高い回転数によって増加することが確認された。
(実施例2)磁性微粒子クラスタの攪拌効果
図5に例示したとおり、攪拌効果を表すストレステンソル(τ)は、振動数が1Hzから急増し、5Hzで最大値となり、40Hz前後に達するまで減少する。だが、40Hzを越えた時点から、回転数の増加が現れるため再びストレステンソル(τ)は増加に転じる。
【0027】
この攪拌効果の磁場振動数への依存性は、磁性微粒子の粒子径、帯磁率、磁場強度等によって変化するが、1から1000Hzの範囲で大きな攪拌効果が実現できると期待できる。なお、攪拌効果を示したストレステンソル(τ)は、次式(1)で定義される。
τ=Σri×Fi/V (1)
(ただし、riは粒子(i)の位置ベクトル、Fiは周囲の粒子が粒子(i)におよぼす力、Vは系の体積をそれぞれ表す)
(実施例3)磁性微粒子クラスタの攪拌による反応促進
サンドイッチ型酵素免疫標識分析方法(sandwich−type ELISA)において、磁性微粒子クラスタを形成し、この磁性微粒子クラスタを利用した攪拌を行った。具体的な方法としては、対象比較として18mmφ×40mmのバイアル中に1次抗体を固定化した粒子径2.8μmの磁性ビーズ(Dynal社製:Dynabeads M−270amin)を緩衝溶液中に添加し、磁気攪拌子(長さ:10mm、外径:6mm)を用いた場合と、130Hzの振動磁場を加えて、磁性微粒子クラスタによる攪拌を行った場合との抗原−抗体反応の反応速度の比較を行った。
【0028】
結果を図6に例示した。図6に例示したとおり、磁性微粒子クラスタによる攪拌を行った場合のほうが、反応速度が促進され、また10minの場合においては、より顕著に反応が促進されることが確認された。
(実施例4)過剰量の磁性ビーズによる反応促進
この実施例4で用いた磁性ビーズ(Dynal社製:Dynabeads M−280 Streptavidin)は、表面にアビジン層を有し、ビーズ1mg当たり700 pmolの遊離ビオチンと結合することができる。アビジンのビオチン化化合物に対する飽和結合量は、ビオチン化化合物の分子量が増すと減少する。また、ビオチン−一本鎖オリゴヌクレオチド複合体の場合は、ビーズ1mg当たりの結合量は200 pmolまで減少する。
【0029】
この磁性ビーズを0.5mgを添加した場合と、1.0mgを添加した場合とでの蛍光体標識ビオチン(Biotin−4−fluorescein)を300 pmol(100 nmol/l溶液を3ml)を含んだ溶液においての比較実験を以下のとおり行った。
【0030】
磁性ビーズを0.5mg分または1.0mg分を採取し、この磁性ビーズを緩衝液PBSと界面活性剤tweenとの混合溶液で3回洗浄を行い、3mlの蛍光体含有溶液に滴下した。その後、18℃の暗所にて静置、または磁気攪拌を行い吸着反応させ、静置の場合は10分間隔で、磁気攪拌の場合は1分間隔で、それぞれ上澄液を採取して蛍光強度を測定した。
【0031】
結果は、図7および図8に示したとおりである。図7は、磁性ビーズ0.5mgを滴下した場合の結果を示したグラフ図であり、図8は磁性ビーズ1.0mgを滴下した場合の結果を示したグラフ図である。
【0032】
磁性ビーズを滴下後、静置した場合では、磁性ビーズ0.5mgおよび磁性ビーズ1.0mgともに蛍光強度は、緩やかに減少しており、また磁性ビーズ1.0mgの方が、比較的短時間で蛍光強度が減少している。しかし、磁気攪拌した場合は、磁性ビーズ0.5mgおよび磁性ビーズ1.0mgともに静置した場合と比較して、著しく短時間で蛍光強度が減少しており、特に磁性ビーズ1.0mgでは、僅か数分で蛍光強度値は、ほぼ0になることが確認された。すなわち、蛍光強度が減少することは、ビオチン−アビジン結合が進行しており、活性成分としての磁性ビーズのアビジンと、特定成分としての蛍光体のビオチンが結合反応していることを示す。
【0033】
このことから、媒質中に存在する検出や測定等の対象となる特定成分よりも、磁性ビーズに固定化される活性成分を過剰に添加することによって、反応が大きく促進されることが確認することができた。
【0034】
もちろん、この出願の発明は以上の例によって限定されるものではなく、その細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【0035】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、特定成分の検出やその濃度等の測定に活用でき、しかも特定成分と活性成分との反応時間を大幅に短縮することのできる新しい回転振動磁場を用いた反応促進方法とそのための装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明における反応促進装置を模式的に例示した模式図であり、Aは平面図、Bは側面図、Cは要部拡大図である。
【図2】振動数(f)5Hzの振動磁場を与えた場合の磁性粒子クラスタの形状を例示した図である。
【図3】振動数(f)40Hzの振動磁場を与えた場合の磁性粒子クラスタの形状を例示した図である。
【図4】振動数(f)90Hzの振動磁場を与えた場合の磁性粒子クラスタの形状を例示した図である。
【図5】攪拌効果と振動数の関係を例示したグラフ図である。
【図6】磁性粒子クラスタの攪拌が反応を促進する効果が得られることが確認された実験結果を示したグラフ図である。
【図7】磁性ビーズ0.5mgを滴下した場合の結果を示したグラフ図である。
【図8】磁性ビーズ1.0mgを滴下した場合の結果を示したグラフ図である。
【符号の説明】
1 磁石
2 磁石保持体
3 モーター
4 磁性微粒子含有溶液
5 バイアル
a 磁石−回転軸間距離
d 磁石−バイアル間距離
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、回転振動磁場を用いた反応促進方法とそのための装置に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、磁性微粒子を担体として用い、磁場を加えることによって磁性粒子クラスタを形成させて、この磁性粒子クラスタを利用することを特徴としている回転振動磁場を用いた反応促進方法とそのための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、バイオテクノロジーや環境分析等のように微量分析が重要、かつ、迅速に行われることが求められており、そのため携帯が可能な小型分析機器の中枢部としてとしてマイクロ分析チップの研究、開発が進められている。また、微細加工技術によって作製された、マイクロリアクターによる合成反応に関する研究も進められている。
【0003】
従来より、液体中の微量成分を分析する場合は、光や電気信号を検出する素子の反応は迅速で、実用性が高いと期待されているが、分析の対象成分が分散媒中を拡散して、触媒や抗体、酵素等と分子レベルで衝突して反応する過程進行は遅いため、分析時間が長くなる原因となっていた。たとえば、狂牛病の検査には、ELISA(酵素標識免疫法)が利用されるが、この方法では、抗体−抗原反応の反応時間に数時間以上を要するため、結果の判明にも長時間を要することとなり、大きな問題となっていた。
【0004】
また、従来の生化学的分析方法では、マイクロウェルと呼ばれるミリメートル単位の半径および深さを有するウェルを複数具備された、マイクロウェルプレート等が利用されており、このウェル内に100μlオーダーの液体サンプルを入れ、あらかじめウェルの壁面に固定化された抗体等と結合反応させる。だが、サンプル溶液中の結合分子が、ウェル壁面に固定化された抗体と結合反応をほぼ完了するには、数時間前後の長い時間を要するといった問題があった。
【0005】
そこで、磁性微粒子の表面に抗体等を固定化し、この抗体固定化済磁性微粒子と反応物を含有するサンプルとを反応させる、反応時間の短縮の方法(特許文献1)が提案されている。この方法では、所定の測定容器内にあらかじめ被測定物質を固定化させ、そして被測定物質と結合する抗体を磁性ビーズに固定させた抗体固定化マーカー磁性ビーズを反応させる。そして、磁石を作用させ、抗体固定化マーカー磁性ビーズの沈降速度を増大させることによって短時間で反応が完了する。試料中の被測定物質が抗体と反応する場合は、抗体−抗原反応により、抗体固定化マーカー磁性ビーズと被測定物質とが結合し、被測定物質は所定容器内の全体に固定化されているため、一様に広がった沈降パターンを形成し、サンプル中に存在する被測定物質を高感度に判定することができるとしている。しかしながら、この方法は、サンプル中に目的とする被測定物質の存在の有無を判定することを主たる目的とし被測定物質の量の測定、また磁性による磁気凝集等が解消されていなかった。磁気凝集の発生は、磁性微粒子と被測定物質との衝突確率に影響を与え、反応時間の短縮にも影響する。
【0006】
また、別の磁性微粒子を利用した反応促進方法(特許文献2)も提案されている。つまり、この提案では、被測定物質と特異的に結合反応する抗体等を固定化した磁気微粒子に蛍光物質をラベルし、このラベル済抗体固定化磁気微粒子を被測定物質を含有するサンプル溶液に分散させて、ラベル済抗体固定化磁気微粒子と被測定物質とを結合反応させ、生じた凝集物を磁石等によって磁気的に分離し、発光量を測定する。これによって、サンプル溶液中に存在する被測定物質の量を迅速、かつ、高感度に測定することができるとしている。しかしながら、この方法においても、磁性微粒子による磁気凝集等が解決されておらず、反応時間のさらなる短縮に障害となっていた。
【0007】
【特許文献1】
特許第2614997号
【特許文献2】
特開平5−322894号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこでこの出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、従来の問題点を解消し、磁性微粒子による磁気凝集がなく、試料媒質中の特定成分の検出やその濃度等の測定に活用でき、しかも反応時間を大幅に短縮することのできる新しい回転振動磁場を用いた反応促進方法とそのための装置を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決する手段として、第1には、磁性微粒子を利用した試料媒質中の特定成分における反応促進方法であって、この特定成分と特異的に反応する活性成分を固定化した磁性微粒子に磁場を加えて、磁性微粒子クラスタを形成させ、振動磁場の印加によって媒質中で磁性微粒子クラスタを回転および/または泳動させ、特定成分と活性成分との反応を促進させることを特徴とする反応促進方法を提供する。第2には、前記の反応促進方法において、磁場勾配が利用されていることを特徴とする反応促進方法を、第3には、振動磁場が、1から1000Hzの範囲であることを特徴とする反応促進方法を提供する。
【0010】
また、この出願の発明は、第4には、磁性微粒子の内部には、超常磁性粒子が含まれていることを特徴とする反応促進方法を提供し、第5には、磁性微粒子の表面には、生体分子と親和性を有するポリマー成分が被覆されていることを特徴とする反応促進方法を、第6には、活性成分が固定化された磁性微粒子を、特定成分の量より過剰添加されることを特徴とする反応促進方法を提供する。
【0011】
そして、この出願の発明は、第7には前記の発明のいずれかの反応促進方法のための反応促進装置であって:
(1)1個以上の磁石;
(2)(1)の磁石が配設保持された磁石保持体;および
(3)磁石保持体を回転させるためのモーター;
とを備え、磁石保持体の中に設置された試料の周囲で、磁石が配設された磁石保持体が回転し、試料中の磁性微粒子に振動磁場を与えることを特徴とする反応促進装置を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について詳しく説明する。
【0013】
この出願の発明は、試料媒質中の特定成分における反応を促進させる方法であって、この特定成分と特異的に反応する活性成分を固定化した磁性微粒子に磁場を加えて、磁性微粒子クラスタを形成させ、振動磁場の印加によって媒質中で磁性微粒子クラスタを回転および/または泳動させ、攪拌効果を得て、反応時間を短縮させることを特徴としている。また、この出願の反応促進方法は、磁場勾配の効果に基づいて、個々の磁性微粒子または/および磁性微粒子クラスタの泳動効果を利用することを特徴としてもよく、「磁場勾配」とは、磁石や電流が周囲の他の磁石や電流に影響をおよぼす強度の傾きを意味する。
【0014】
この出願の発明における「特定成分」とは、試料媒質中における各種反応の目的の対象となる物質のことであり、たとえば、アルブミン、プロスタグランジン、ステロイドホルモンや各種免疫抗体(IgG、IgA、IgM、IgE等)等の生体物質、また各種のアミノ酸(グルタミン酸、ロイシンやフェニルアラニン、バリン、アラニン、γ―アミノ酪酸等)や各種の化学物質等が挙げられる。また、この出願の方法において、促進効果が得られるとする「特定成分における反応」とは、試料媒質中の目的とする物質の抗体−抗原反応等を利用した濃度測定反応や物質検出反応、触媒反応を利用した化学合成反応、また磁性微粒子の磁性を利用した特定成分の分離反応等の各種反応のことを意味する。「活性成分」とは、前記の特定成分と特異的に反応する物質である。たとえば、生体反応や化学反応の促進効果を有する触媒物質(たとえば、プロテインキナーゼ、チロシンキナーゼやMAPキナーゼ等の各種酵素等)、各種抗体(抗アルブミン抗体、抗プロスタグランジン抗体、抗ステロイドホルモン抗体や抗IgG抗体、抗IgA抗体、抗IgM抗体、抗IgE抗体等)等の生体物質や各種の化学物質等が挙げられる。この活性成分が固定化された磁性微粒子は、特定成分の量より過剰添加されることによって、反応がより大きく促進することができるため好ましい。
【0015】
「磁性微粒子」は、水溶液中で不溶性であり、かつ、磁性を示すものであれば特に限定されることはない。従来より用いられている強磁性微粒子でもよいが、超常磁性の微粒子は、外部磁場がゼロになると磁気双極子もゼロになり、磁性による磁気凝集が生じないため、より好ましい。そして、この超常磁性微粒子に磁場を加えることによって、磁性微粒子クラスタが形成され、この磁性微粒子クラスタに振動磁場を印加して、磁性微粒子クラスタを回転・泳動して、上記の特定成分と磁性微粒子に固定化された活性成分との衝突頻度が上がり、その結果、各種の反応促進が実現される。この磁性微粒子の粒径は、特に限定はされるものではないが、10μm以上の粒径では、水溶液中で重力沈降が生じ、実用性が低くなる。そのため、磁性微粒子の粒径は、9μmから1μmの範囲が好ましく、さらにはこの磁性微粒子の粒径は、nmオーダーのものであってもよい。
【0016】
また、前記の特定成分が生体分子の場合には、特定成分との結合がより促進させるため、磁性微粒子の表面に、生体分子と親和性を有するポリマー成分が被覆されていてもよく、分析対象や目的、条件等に合わせて適宜に選択することができる。「ポリマー成分」としては、たとえば、ビオチンと特異的に結合するアビジン等の各種タンパク質、DNAやRNA等の核酸、またタンパク質と高い結合性を有するエポキシ基、トシル基、アミノ基、カルボキシル基等の各種活性基を有する成分等が挙げられる。
【0017】
そして、この磁性微粒子に上記の各活性成分の固定化方法としては、物理的吸着、化学的共有結合の形成等のいずれの方法を適宜に採択できる。抗体や高分子量タンパク質等のような物理的吸着能が高い活性成分には、物理的吸着による固定化が好ましく、ホルモン類等のような物理的吸着能が低い活性成分には、化学的共有結合による固定化が好ましい。固定化の方法は、すでに多くの方法が提案されており、固定化する活性成分の種類や特性に応じて、公知の方法から固定化方法を採択してもよい。
【0018】
この出願の発明において、活性成分または磁性微粒子に標識物質を結合させ、この標識物質を分析することによって、試料媒質中の特定成分の濃度やその存在の検出等を実施することもできる。「標識物質」としては、各種の蛍光物質や化学発光物質、酵素等が利用できる。たとえば、蛍光物質としては、緑色蛍光タンパク質や赤色蛍光タンパク質、クロロフィル、レセルピン、葉酸等、およびこれらの誘導体等が使用でき、また化学発光物質としては、ルミノール、インドール、ロフィン等、酵素としては、β−Dガラクトシターゼ、アルカリフォスファターゼ等が使用できる。
【0019】
この出願の反応促進方法を実施するには、前記のとおりに形成された磁性微粒子クラスタに振動磁場を印加するが、この「振動磁場」は、1から1000Hzの範囲であることが好ましく、3から10Hzの範囲がさらに好ましい。振動磁場の印加方法は、たとえば、反応容器の外側に電磁石を設置する方法、磁石がN極・S極が対向するよう、かつ、反応容器を挟持するよう設置して、この2つの磁石が同一周期で回転させる方法等が利用でき、特に限定されるものではない。
【0020】
また、この出願の発明は、振動磁場と共に電場を印加することや電磁場を作用させることももちろん可能であり、有効な反応促進効果が得られると期待することもできる。
【0021】
「磁石」は、電磁石や永久磁石であることが好ましい。「電磁石」とは、軟鉄製の鉄心周囲にコイルを巻き、この鉄心の先端には目的等に応じた適当な形状の磁極が設置され、電流を通じると磁化し、電流を切ると磁化が消える磁石のことであり、残留磁束がある。なお、この電磁石における発生磁場の強度は、コイルの巻き数と電流との積に比例し、また鉄心や磁極の形状、大きさにも影響される。一方、「永久磁石」とは、磁場をゼロにしても50から80%程の磁化が残る残留磁束があり、保磁力のある強磁性体である。「残留磁束」の密度としては、特に限定されるものではないが、この出願の発明においては、磁束密度0.01から0.3テスラの範囲であることが好ましい。なお、この磁束密度が大きいほど、この出願の発明の効果も大きくなると考慮されるが、そのための磁場発生装置等の設備費用が大きくなり現実的ではない。磁石の設置場所は、左右一対だけでなく、上下一対や上下左右の四極等に設置してもよく、また磁石が相互に反発する向きに設置することによって、特別な制御を施さなくとも交互にサンプル容器であるバイアルに接近・乖離を繰り返し、磁性ビーズに回転および振動を与えることができる。回転軸とバイアル間の距離aは、特に限定されないが、5.0mmから15mmの範囲にすることが好ましい。また、磁石とバイアル間の距離は、バイアルに対して磁石からの最も近い距離dを数mm以下にすることが好ましく、より具体的には基板やバイアルへの磁性微粒子の衝突等を回避する観点から2.0mmから3.0mmの範囲にすることがさらに好ましい。
【0022】
「モーター」は、電気等をエネルギー源として動力を発生させることができ、その動力によって磁石を保持する磁石保持体等の部材を回転させること等ができるものであれば、そのサイズ等は限定されるものではない。たとえば、小型モーター(マブチ社製:回転速度7800rpm、130回転/秒)等が使用できる。もちろん、このモーターは、より大きな動力を得るため、1つ以上のモーターを設置することもできる。
【0023】
図1は、この出願の発明における反応促進装置を模式的に例示した平面図A、側面図B、および要部拡大図Cである。図1に例示したとおり、この出願の発明における反応促進方法のための反応促進装置は、磁石(1)、この磁石(1)が配設保持された磁石保持体(2)、この磁石保持体(2)を回転させるための動力源となるモーター(3)等を備えている。この図1の例では、試料中の磁性微粒子に回転振動を与えるため、一対の磁石(1)が向かい合わせで磁石保持体(2)に配設保持され、磁石保持体(2)中で、この一対の磁石(1)の間に試料溶液である磁性微粒子含有溶液(4)の入ったバイアル(5)を設置する。次に、モーター(3)を電気等で稼動させることによって動力を発生させ、この発生した動力は磁石保持体(2)に伝導される。そして、磁石保持体(2)に配設保持されている磁石(1)をバイアル(5)の周囲で回転(矢印)させることによって、磁性微粒子が試料溶液中で回転振動され、試料溶液中の解析目的とする特性成分と磁性微粒子に固定化された活性成分との反応が促進される。
【0024】
なお、この出願の発明の促進方法および促進装置は、μlオーダーにおいても実施することができる、高い省試薬効果があることも特徴としている。
【0025】
以下、図1に例示した反応促進装置を用いた実施例を示して、さらに詳細、かつ、具体的に説明する。もちろん、この出願の発明は以下の例によって限定されるものではない。
【0026】
【実施例】
(実施例1)磁性微粒子クラスタの形状
図2は、振動数(f) 5Hzの振動磁場を印加した磁性微粒子クラスタの形状を示した図である。また、図3は、振動数(f) 40Hzの振動磁場を印加した磁性微粒子クラスタの形状を示した図であり、振動数(f) 90Hzの振動磁場を印加した磁性微粒子クラスタの形状を示した図である。図2から図4に示したとおり、磁性微粒子クラスタは、低振動数では細長く、振動数が増すと短く、かつ、太くなる。なお、後述のとおり、磁性微粒子クラスタの攪拌効果は、磁性微粒子クラスタの形状が短くなると減少し、高い回転数によって増加することが確認された。
(実施例2)磁性微粒子クラスタの攪拌効果
図5に例示したとおり、攪拌効果を表すストレステンソル(τ)は、振動数が1Hzから急増し、5Hzで最大値となり、40Hz前後に達するまで減少する。だが、40Hzを越えた時点から、回転数の増加が現れるため再びストレステンソル(τ)は増加に転じる。
【0027】
この攪拌効果の磁場振動数への依存性は、磁性微粒子の粒子径、帯磁率、磁場強度等によって変化するが、1から1000Hzの範囲で大きな攪拌効果が実現できると期待できる。なお、攪拌効果を示したストレステンソル(τ)は、次式(1)で定義される。
τ=Σri×Fi/V (1)
(ただし、riは粒子(i)の位置ベクトル、Fiは周囲の粒子が粒子(i)におよぼす力、Vは系の体積をそれぞれ表す)
(実施例3)磁性微粒子クラスタの攪拌による反応促進
サンドイッチ型酵素免疫標識分析方法(sandwich−type ELISA)において、磁性微粒子クラスタを形成し、この磁性微粒子クラスタを利用した攪拌を行った。具体的な方法としては、対象比較として18mmφ×40mmのバイアル中に1次抗体を固定化した粒子径2.8μmの磁性ビーズ(Dynal社製:Dynabeads M−270amin)を緩衝溶液中に添加し、磁気攪拌子(長さ:10mm、外径:6mm)を用いた場合と、130Hzの振動磁場を加えて、磁性微粒子クラスタによる攪拌を行った場合との抗原−抗体反応の反応速度の比較を行った。
【0028】
結果を図6に例示した。図6に例示したとおり、磁性微粒子クラスタによる攪拌を行った場合のほうが、反応速度が促進され、また10minの場合においては、より顕著に反応が促進されることが確認された。
(実施例4)過剰量の磁性ビーズによる反応促進
この実施例4で用いた磁性ビーズ(Dynal社製:Dynabeads M−280 Streptavidin)は、表面にアビジン層を有し、ビーズ1mg当たり700 pmolの遊離ビオチンと結合することができる。アビジンのビオチン化化合物に対する飽和結合量は、ビオチン化化合物の分子量が増すと減少する。また、ビオチン−一本鎖オリゴヌクレオチド複合体の場合は、ビーズ1mg当たりの結合量は200 pmolまで減少する。
【0029】
この磁性ビーズを0.5mgを添加した場合と、1.0mgを添加した場合とでの蛍光体標識ビオチン(Biotin−4−fluorescein)を300 pmol(100 nmol/l溶液を3ml)を含んだ溶液においての比較実験を以下のとおり行った。
【0030】
磁性ビーズを0.5mg分または1.0mg分を採取し、この磁性ビーズを緩衝液PBSと界面活性剤tweenとの混合溶液で3回洗浄を行い、3mlの蛍光体含有溶液に滴下した。その後、18℃の暗所にて静置、または磁気攪拌を行い吸着反応させ、静置の場合は10分間隔で、磁気攪拌の場合は1分間隔で、それぞれ上澄液を採取して蛍光強度を測定した。
【0031】
結果は、図7および図8に示したとおりである。図7は、磁性ビーズ0.5mgを滴下した場合の結果を示したグラフ図であり、図8は磁性ビーズ1.0mgを滴下した場合の結果を示したグラフ図である。
【0032】
磁性ビーズを滴下後、静置した場合では、磁性ビーズ0.5mgおよび磁性ビーズ1.0mgともに蛍光強度は、緩やかに減少しており、また磁性ビーズ1.0mgの方が、比較的短時間で蛍光強度が減少している。しかし、磁気攪拌した場合は、磁性ビーズ0.5mgおよび磁性ビーズ1.0mgともに静置した場合と比較して、著しく短時間で蛍光強度が減少しており、特に磁性ビーズ1.0mgでは、僅か数分で蛍光強度値は、ほぼ0になることが確認された。すなわち、蛍光強度が減少することは、ビオチン−アビジン結合が進行しており、活性成分としての磁性ビーズのアビジンと、特定成分としての蛍光体のビオチンが結合反応していることを示す。
【0033】
このことから、媒質中に存在する検出や測定等の対象となる特定成分よりも、磁性ビーズに固定化される活性成分を過剰に添加することによって、反応が大きく促進されることが確認することができた。
【0034】
もちろん、この出願の発明は以上の例によって限定されるものではなく、その細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【0035】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、特定成分の検出やその濃度等の測定に活用でき、しかも特定成分と活性成分との反応時間を大幅に短縮することのできる新しい回転振動磁場を用いた反応促進方法とそのための装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明における反応促進装置を模式的に例示した模式図であり、Aは平面図、Bは側面図、Cは要部拡大図である。
【図2】振動数(f)5Hzの振動磁場を与えた場合の磁性粒子クラスタの形状を例示した図である。
【図3】振動数(f)40Hzの振動磁場を与えた場合の磁性粒子クラスタの形状を例示した図である。
【図4】振動数(f)90Hzの振動磁場を与えた場合の磁性粒子クラスタの形状を例示した図である。
【図5】攪拌効果と振動数の関係を例示したグラフ図である。
【図6】磁性粒子クラスタの攪拌が反応を促進する効果が得られることが確認された実験結果を示したグラフ図である。
【図7】磁性ビーズ0.5mgを滴下した場合の結果を示したグラフ図である。
【図8】磁性ビーズ1.0mgを滴下した場合の結果を示したグラフ図である。
【符号の説明】
1 磁石
2 磁石保持体
3 モーター
4 磁性微粒子含有溶液
5 バイアル
a 磁石−回転軸間距離
d 磁石−バイアル間距離
Claims (7)
- 磁性微粒子を利用した試料媒質中の特定成分における反応促進方法であって、この特定成分と特異的に反応する活性成分を固定化した磁性微粒子に磁場を加えて、磁性微粒子クラスタを形成させ、振動磁場の印加によって媒質中で磁性微粒子クラスタを回転および/または泳動させ、特定成分と活性成分との反応を促進させることを特徴とする反応促進方法。
- 請求項1の反応促進方法において、磁場勾配が利用されていることを特徴とする反応促進方法。
- 振動磁場が、1から1000Hzの範囲であることを特徴とする請求項1または2の反応促進方法。
- 磁性微粒子の内部には、超常磁性粒子が含まれていることを特徴とする請求項1から3のいずれかの反応促進方法。
- 磁性微粒子の表面には、生体分子と親和性を有するポリマー成分が被覆されていることを特徴とする請求項1からの4のいずれかの反応促進方法。
- 活性成分が固定化された磁性微粒子を、特定成分の量より過剰添加されることを特徴とする請求項1から5のいずれかの反応促進方法。
- 請求項1から6のいずれかの反応促進方法のための反応促進装置であって:
(1)1個以上の磁石;
(2)(1)の磁石が配設保持された磁石保持体;および
(3)磁石保持体を回転させるためのモーター;
とを備え、磁石保持体の中に設置された試料の周囲で、磁石保持体が回転し、試料中の磁性微粒子に振動磁場を与えることを特徴とする反応促進装置。
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JP2006226887A (ja) * | 2005-02-18 | 2006-08-31 | Casio Comput Co Ltd | 生体高分子分析チップ、分析支援装置及び生体高分子分析方法 |
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