JP2004308152A - コンクリート構造物の防食・防水被覆構造および工法 - Google Patents
コンクリート構造物の防食・防水被覆構造および工法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】コンクリート構造物の表面に形成した被覆構造であって、コンクリート側から順に、[1] セメント系材料,[2] 耐酸性に優れた非透水性樹脂フィルムの両面に高分子樹脂繊維の植毛を施した植毛シート22であって、少なくともセメント系材料側の面には直径10〜40μm,長さ10〜100mmの高分子樹脂短繊維が絡み合ったウエブを植毛してなる植毛シート,[3] ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン)の水性エマルジョンが固化した耐硫酸性に優れたエマルジョン固化皮膜、の3つの材料が植毛シートの短繊維をアンカーにして接合したコンクリート構造物の防食・防水被覆構造。
【選択図】 図6
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、下水道施設,厨房除害施設,汚水槽などの硫化水素雰囲気に曝されるコンクリート構造物の保護に適した被覆構造および被覆工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート構造物は一般的に長期間の耐久性を有するが、曝される環境によっては早期に腐食が進行することがある。例えば、下水道施設を構成するコンクリート構造物では、下水や汚泥から発生する硫化水素に起因した腐食が問題になる。これは、コンクリート壁面の凝結水中に再溶解した硫化水素が硫黄酸化細菌などにより酸化されて硫酸を生じ、この硫酸が次第に濃縮されpHが1〜2に低下するとコンクリートの主成分である水酸化カルシウムと反応し、コンクリートは腐食、ひいては崩壊に至るというものである。
【0003】
従来、下水道施設のコンクリート防食として、コンクリート躯体を耐酸性の樹脂塗膜で保護する方法が一般的に採用されている。これは、エポキシ,ビニルエステル,ポリエステルなど、通常は液状で、硬化剤を混ぜることによって硬化する樹脂を用いるものである。
しかし、この方法は有機溶剤を使用するため、換気が不十分となりやすい下水道施設や汚水槽では施工時の作業環境が極めて悪化する。
また、この塗膜は、下地コンクリートの経時劣化によるひび割れ等により損傷を受けやすい。この場合、硫化水素や硫酸が塗膜の損傷箇所からひび割れ内部に侵入するため、コンクリートは内部まで急速に腐食される。内部まで腐食が進行したコンクリート構造物を補修するには、腐食箇所のコンクリートを破壊・除去したのちセメント系補修材で埋め戻し、素地調整したうえで再度防食施工を施さねばならず、多大な労力と費用を要する。
【0004】
別の防食方法としてシートライニング工法と呼ばれるものがある。これは、硬質塩化ビニルや高密度ポリエチレン等の防食シートでコンクリート表面を覆うものである。これらのシートをコンクリート躯体に後貼りで固定するには、接着剤,釘やアンカーボルト,コンクリート壁面に設けた突起金具等を使用する。
しかし、接着剤の使用は上記と同様に作業環境の悪化を招く。釘やアンカーボルトを用いる場合はそれらがシートを貫通する箇所に水密・気密を保つためのシーリング処理を施す必要がある。また、シートが硬質であれば、コンクリート側の取り付け面を平滑化処理しておく必要がある。さらに、シートの端面同士の境界部分(ジョイント部)も入念にシーリングしなければならない。したがってこの方法も繁雑な作業を避けることができない。
【0005】
最近では、コンクリート躯体表面に「抗菌性モルタル+植毛シート+抗菌性モルタル」の3層構造のライニングを施す防食工法が提案されている(下記特許文献1)。この抗菌性モルタルは硫黄酸化細菌に対して抗菌力のある抗菌剤を含有するものであり、当該モルタル層表面等において硫黄酸化細菌による硫酸の生成が抑えられるという。また、中間に挟んだ植毛シートによってモルタル層間の亀裂伝播が阻止され、防水性も維持されるという。
しかし、モルタル層には経時劣化による亀裂が生じやすく、たとえ植毛シートによってモルタル層間の亀裂伝播が防止できたとしても、植毛シートは気体の透過を許すためコンクリート表面への硫化水素の進入を完全に防止できるとは限らない。また、表面に亀裂が露出した状態は通常の検査法で「良好」と判定することが難しく、現場への普及が図りにくい。
【0006】
他方、耐酸性に優れ、人体に有害な有機物質が気化しない水性塗料として、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン系樹脂が分散したエマルジョンが知られている。例えば、下記特許文献2には有機溶剤を含まないポリエチレンエマルジョンの組成物およびその製法が開示されている。このエマルジョンはコンクリートに対しても良好な接着性を有するという。
しかし、既存のコンクリート構造物にあとから被覆する場合、コンクリート躯体表面の凹凸になじむように「パテ材」としての効果をもたせる必要があり、そのためにはセメント質の骨材を配合するなどの工夫が必要となる。ところが、セメント質の骨材は耐硫酸性を劣化させるので、そのままで仕上処理とすることはできない。これを下地処理とし、その上に骨材を含まないポリオレフィン系樹脂の水性エマルジョンを上塗りして仕上げる必要がある。この場合、下地のエマルジョンが乾燥するのを待ってから上塗りしなければならず、施工時間の増大を招く。また、固化後のエマルジョン塗膜はある程度柔軟性を有するが、コンクリートに1mm以上の「幅」のある亀裂が生じた場合にまで皮膜が耐えうる保証はない。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−240187号公報
【特許文献2】
特公昭57−23702号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来のコンクリート防食技術は、有機溶剤による作業性の悪化や、繁雑な補修作業による労力・費用の増大、あるいは通常の保守検査法の適用が困難である点などにおいて、下水道処理施設や汚水槽等の防食方法としては問題が多く、合理的なものではなかった。本発明はこれらの問題を解消することにより、長大な総延長を有する既存の下水道処理施設をあとから防食するのに適した技術を提供するものである。また、コンクリート躯体あるいはその表面に形成したセメント系材料に幅約1〜2mmといった大きな亀裂が生じた場合でも、その亀裂が防食被覆の最表面に伝播することを阻止する機能をもったコンクリート防食・防水技術を提供するものである。
【0009】
なお、上記のような「幅(開口部)」のあるコンクリートの亀裂は、下水道施設や地下の汚水槽をはじめ、土壌に接するように打設されたコンクリート躯体において時々経験されるものである。これは、土壌からの大きな圧力や地盤変動などにより、コンクリート躯体が厚さ方向に変位することによって生じることが多く、通常、コンクリート躯体の「膨れ」が生じた箇所に発見される。このような欠陥は本来修復すべきものである。しかし、修復までの期間に著しい腐食進行によるコンクリートの崩壊や汚染物質の土壌への流出を未然に防止するうえで、このような大きな亀裂に対しても耐えうる防食・防水被覆を提供することは極めて意義が大きい。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、ポリオレフィン系樹脂の水性エマルジョンが高分子樹脂繊維の植毛を施した植毛シートと非常に良好な接着性を有することを発見した。また、セメント系材料を特定構造の植毛シートに接合したとき、セメント系材料に1〜2mm程度の「幅」のある大きな亀裂が生じても植毛シートの反対側に接合した材料への亀裂伝播が防止できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0011】
すなわち、上記目的は、コンクリート構造物の表面に形成した被覆構造であって、コンクリート側から順に、
[1] セメント系材料
[2] 耐酸性に優れた非透水性樹脂フィルムの両面に高分子樹脂繊維の植毛を施した植毛シートであって、少なくともセメント系材料側の面には直径10〜40μm,長さ10〜100mmの高分子樹脂短繊維が絡み合ったウエブを植毛してなる植毛シート
[3] ポリオレフィン系樹脂の水性エマルジョンが固化した耐硫酸性に優れたエマルジョン固化皮膜
の3つの材料が植毛シートの短繊維をアンカーにして接合したコンクリート構造物の防食・防水被覆構造によって達成される。
ここで、「短繊維をアンカーにして」とは、短繊維が部分的にセメント系材料あるいはエマルジョン固化皮膜の中に拘束されている状態をいう。
【0012】
上記[1]のセメント系材料としては、特に、コンクリート躯体の表面に塗布されたものであって、ポルトランドセメントと硅砂を主成分とし、メチルセルロースおよびアクリル樹脂を含有するものが採用できる。
上記[2]の植毛シートとしては、特に、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に直径10〜40μm,長さ10〜100mmのポリプロピレン短繊維を1m2あたり250万〜500万本の割合でニードルパンチ法により植え付けたウエブシートを、非透水性の高密度ポリエチレンフィルムの両面に熱接着してなるものが採用できる。
上記[3]のエマルジョン固化皮膜を構成するポリオレフィン系樹脂としては、特にポリエチレンが採用できる。
【0013】
また、植毛シートとセメント系材料の接合形態として、特に、これらの界面に、植毛シートの短繊維がセメント系材料に拘束されず、かつ、引張応力を受けたときに動ける状態で存在している「非アンカー層」が介在するものを提供する。
【0014】
このようなコンクリート構造物の防食・防水被覆構造を形成する方法として、ポルトランドセメント系材料からなるボンド材をコンクリート躯体表面に塗布し、そのボンド材が固まらないうちに、直径10〜40μm,長さ10〜100mmの高分子樹脂短繊維が絡み合ったウエブを耐酸性に優れた非透水性樹脂フィルムの両面に植毛してなる植毛シートを前記ボンド材の表面に貼設し、次いで、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン)の水性エマルジョン塗料であって乾燥後に耐硫酸性に優れた皮膜を形成するものを前記植毛シートの表面に塗布し、その塗膜面を外気に触れる状態に保持して乾燥させるコンクリート構造物の防食・防水被覆工法を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明では、コンクリート躯体の表面に「セメント系材料+植毛シート+ポリオレフィン系樹脂水性エマルジョン固化皮膜」という、3材料が接合した被覆を形成する。
このうち、植毛シートは、防水防食層として機能するとともに、セメント系材料およびエマルジョン固化皮膜との間で植毛繊維が「アンカー」となって良好な接着性を確保するという機能を担う。さらに、セメント系材料との界面に「非アンカー層」が形成されると、セメント系材料に「幅」のある大きな亀裂が生じた際、その亀裂による材料の変位を吸収し、植毛シートを隔てた反対側のエマルジョン固化皮膜への亀裂伝播を防止する機能を発揮するようになる。
【0016】
使用する短繊維は、細すぎると繊維強度が不十分となり、セメント系材料やエマルジョン固化皮膜との接合強度を十分に保てない恐れがあるが、太すぎても強度的メリットはほとんどなく、樹脂の使用量が増えて不経済となる。また、長さが短すぎると「非アンカー層」を形成することが難しくなる。また、植毛される短繊維の本数は、少なすぎるとアンカー効果が薄れ、多すぎると不経済となる。発明者らが種々検討した結果、セメント系材料と接合する側では、短繊維の太さは直径10〜40μmが適当であり、15〜30μmが特に好ましい。長さは10〜100mmの範囲が適当であり、20〜80mmがより好ましく、30〜70mmが一層好ましい。本数は、1m2あたり250万〜500万本の割合で植毛されていることが望ましい。エマルジョン固化皮膜側では、基本的にアンカー効果により十分な接合強度が得られる限り種々の短繊維を使用できるが、上記セメント系材料側と同様の条件において良好な結果が得られることが確認された。したがって、作業性を考慮すると両面とも同仕様の植毛を有する植毛シートを使用することが望ましい。
【0017】
短繊維およびスパンボンドの材質はポリプロピレン、樹脂フィルムの材質は非透水性に優れている高密度ポリエチレンであることが望ましい。ウエブシートと樹脂フィルムをラミネートするとき、ポリプロピレンより融点の低い高密度ポリエチレンのフィルムを可塑的状態まで加熱しておき、その両面にポリプロピレンのウエブシートを連続的に圧着すれば、より融点の高いポリプロピレンの短繊維はほとんど変形せずに熱接着によるラミネートが達成される。樹脂フィルムの厚さは、植毛シートの施工性(柔軟性)と強度の両面から、高密度ポリエチレンの場合で0.1mm前後が望ましいが、概ね0.05〜0.3mm程度のものが使用できる。
【0018】
図1に、本発明に使用可能な植毛シートの表面を見た電子顕微鏡写真(SEM像)の一例を示す。このシートは、ポリプロピレン長繊維を使用したスパンボンド不織布(約15g/m2)に、直径約18μm,長さ50mmのポリプロピレン短繊維を1m2あたり約315万本の割合でニードルパンチ法により植え付けたウエブシートを用意し、これを非透水性の高密度ポリエチレンフィルム(厚さ0.1mm)の表面(両面)に熱接着した植毛シートである。ウエブシートとフィルムの接合は、ホッパー内で240〜250℃に加熱された高密度ポリエチレンをインペラー押出機で0.1mm厚に押し出してフィルムを形成し、これが冷えて硬化しないうちにその両面に前記ウエブシートをラミネーターを用いて連続的に転圧することにより行った。その際、ウエブシートのスパンボンド側(スパンボンドの長繊維がより多く存在している側)をフィルムと接合させた。
図1から、短繊維は互いに絡み合っており、短繊維の間には空隙があることがわかる。セメントあるいは水性エマルジョンがこの空隙を埋めることにより、短繊維は拘束され、当該短繊維をアンカーとした「セメント系材料+植毛シート+エマルジョン固化皮膜」の接合が実現される。
【0019】
図2は、図1と同じ植毛シートの断面を見た電子顕微鏡写真(SEM像)である。写真の下には当該シートの断面構造について各部のおおよその範囲を示してある。樹脂フィルムに由来する「芯材部」の両側にはウエブシートのスパンボンド側の一部が熱接着した領域「熱接着部」が見られる。「芯材部」と「熱接着部」からなる部分は樹脂がほぼ隙間なく高密度に存在し、植毛シートの防水性を担う。本明細書ではこれを「植毛シート基部」と呼ぶ。「植毛シート基部」の外側にはスパンボンドを構成する長繊維の束がその形を残しながら存在している領域がある。この長繊維束の間には、短繊維の全長の一部が埋もれているので、この領域を「長繊維束+短繊維部」と呼ぶ。
【0020】
「植毛シート基部」は「セメント系材料+植毛シート+エマルジョン固化皮膜」の接合被覆においてセメント系材料に亀裂が生じた場合でも優れた防水性を維持するように働く。
「長繊維束+短繊維部」には樹脂繊維がかなり高密度に存在するので、セメント粒子が進入しにくく、進入してもその量は少ない。このため、「長繊維束+短繊維部」の中では短繊維がセメント硬化マトリクスに取り囲まれずに存在する状態が実現される。しかも、短繊維は周囲の長繊維束の間に埋まっているが、固着されているわけではないので、引張応力を受けたときには動くことができる。つまり、植毛シートの「長繊維束+短繊維部」は、植毛シートとセメント系材料の界面において「非アンカー層」を形成することになる。
「長繊維束+短繊維部」の外側には短繊維が空隙を有しながら存在し、この部分で短繊維をアンカーにした接合が実現される。
【0021】
図3は、図1と同じ植毛シートの表面を部分的に拡大して見た電子顕微鏡写真(SEM像)である。これは、ラミネート加工時の圧着によって可塑的状態になった樹脂フィルムの一部がスパンボンドの間に進入し、短繊維の一部に接着した箇所を見たものである。短繊維は可塑的状態となった樹脂との接触点においても変形しておらず、その接触面積も小さいことから、接着力は弱いと考えられる。つまり、短繊維は引張応力を受けたときスパンボンドの内部から破断せずに大部分が抜け出せる状態になっている。
【0022】
ポリオレフィン系樹脂水性エマルジョンが固化した皮膜はある程度の弾力性を有しているので、内側のセメント系材料と植毛シートの界面に「非アンカー層」が形成されなくても、セメント系材料に生じた亀裂が幅の狭いものである限り外側のエマルジョン固化皮膜に損傷が及ばずにすむ。しかし、その亀裂が例えば1mm以上といった大きな「幅」を有するものである場合、「非アンカー層」の存在が極めて重要になる。
【0023】
図4には、「非アンカー層」を形成する植毛シートとセメント系材料の接合構造において、セメント系材料に「幅」のある大きな亀裂が生じたときの状態を模式的に表した断面図を示す。植毛シート基部3とセメント系材料2の間には、短繊維1の一部が植え込まれた長繊維束+短繊維部4が介在し、この部分が「非アンカー層」を形成している。短繊維1の残部はセメント系材料2を構成するセメント硬化マトリクスに取り囲まれて拘束され「アンカー層」を形成している。なお、この図では短繊維1の一端が長繊維束+短繊維部4の中に存在し、他端がセメント系材料2の中に存在するように模式的に示されているが、実際には短繊維1は10〜100mmと長いものであるため、1本の短繊維は全長のうち途中の何箇所かの部分が長繊維束+短繊維部4の中に埋もれた状態となり、残部がセメント系材料2に拘束された状態となって存在する。
【0024】
セメント系材料2に亀裂5が生じ、その亀裂が拡大して「幅」を有する大きな亀裂に進展するとき、亀裂5の両側のセメント系材料2は図4に矢印で示した方向に変位する。このとき短繊維1は、アンカー層において亀裂5の部分で破断する。しかし、非アンカー層においては、短繊維1はセメント系材料2に拘束されておらず、しかも、長繊維束の間に埋もれる形で存在しており引張応力を受けたときに動ける状態になっている。このため、セメント系材料2が矢印方向に変位すると、非アンカー層中の短繊維1はセメント系材料2の変位方向に引っ張られ、その変位に追随して動く。その際、短繊維1は、その破断応力に比べ小さい引張応力で動くことができるので、植毛シート基部3とセメント系材料2の間に生じる応力は緩和される。つまり、非アンカー層の介在によって、亀裂5が例えば1mm以上といった「幅」を形成するに至った場合でもセメント系材料2の大きな変位量は非アンカー層によって吸収され、植毛シート基部3は破れずに耐えることができる。したがって、植毛シート反対側の材料への亀裂伝播が防止され、かつ、防水性も維持されるのである。
【0025】
比較のため、図5には、毛足の短い短繊維を例えば接着剤を用いて樹脂フィルムに植毛した植毛シートとセメント系材料からなる接合構造において、セメント系材料に亀裂が生じたときの短繊維の状態を模式的に表した断面図を示す。この場合、非アンカー層は存在しない。短繊維1は、植毛シート基部3に固着しており、かつ、セメント系材料2にも拘束されている。このため、セメント系材料2に亀裂5が生じ、図5に白抜き矢印で示した方向に変位が起こったとき、樹脂/セメント界面6において短繊維1には大きな引張応力がかかる。この応力に起因して、植毛シート基部3には図5に黒の矢印で示した方向に局所的に大きな張力が生じる。セメント系材料2の変位量は界面6における短繊維1の伸び量と、植毛シート基部3の弾性によってある程度吸収される。しかし、亀裂5の幅が大きくなると、植毛シート基部3は歪みが弾性限度を超え、破れるに至る。
【0026】
なお、界面6において短繊維1が早期に破断すれば植毛シート基部3とアンカー層の間の応力は急速に緩和される。そのためには、短繊維1を破断強度の低い繊維で構成すればよい。しかし、そのような植毛シートでは接合強度そのものが弱くなるため、耐久性に優れた防食・防水被覆を構築することが困難になる。
【0027】
本発明の被覆構造に適用されるセメント系材料としては、コンクリート躯体を構成するコンクリートそのものや、コンクリートの上に塗布されたモルタルなど、種々のものが対象となる。ただし、当該被覆構造を形成するにはセメント系材料がまだ固まっていないうちに植毛シートを貼り付ける必要がある。
【0028】
既に固まったコンクリート構造物等の表面にあとから防食・防水被覆を形成するいわゆる「後防食・防水工法」を採用する場合は、そのコンクリート構造物等の表面にボンド材となるセメント系材料を塗布し、そのボンド材が固まらないうちにその上に本発明で規定する植毛シートを貼設すればよい。ボンド材としては、ポルトランドセメントと硅砂を主成分とし、メチルセルロースおよびアクリル樹脂を含有するものが好適に使用できる。
【0029】
ポリオレフィン系樹脂の水性エマルジョンは有機化合物の気化による人体への悪影響が生じないものであるが、本発明では、さらに以下の条件を兼ね備えたものを使用する。
i) 乾燥後に耐硫酸性に優れた皮膜になること、ii) 高分子樹脂の短繊維を植毛した植毛シートになじみやすく、アンカー効果によりコンクリート構造物の保護被覆として十分な接着力が得られること。
このような水性エマルジョンとして、ポリエチレン・エマルジョンやポリプロピレン・エマルジョンの塗料が市販されている。これらのエマルジョンには主成分のポリオレフィン系樹脂に加えて、分散性を維持するための乳化剤等が添加されている。例えば、アクリル樹脂と乳化剤を含有する高密度ポリエチレン水性エマルジョン塗料は、本発明で規定する植毛シートへの塗装性が非常に良好である。また、ある程度の弾力性を有するので外部からの衝撃にも強い。さらに、表面は平滑であるため、施工後に行う表面検査でピンホールやひび割れが検出されない。
ポリオレフィン系樹脂の水性エマルジョン塗料は基本的に耐硫酸性に優れるが、本発明に適用する場合、例えば膜厚約1mmにおいて、pH1の硫酸水溶液に30日間浸漬しても皮膜のふくれ,割れ,溶出が生じない性能を有するものを使用することが望ましい。また、膜厚約1〜2mmにおいて、10%の硫酸水溶液に60日間浸漬しても皮膜のふくれ,割れ,溶出が生じない性能を有するものを使用することが一層望ましい。
【0030】
コンクリート構造物の表面を後防食・防水工法により本発明の被覆構造で保護するには、具体的には以下のようにすればよい。
(1) コンクリート躯体表面にボンド材となるセメント系材料を金ゴテなどを用いてできるだけ平滑に塗布する。塗布する厚さは、例えばポルトランドセメントと硅砂を主成分とし、メチルセルロースおよびアクリル樹脂を含有するボンド材を使用する場合、通常、約2〜5mm程度とすればよい。
(2) このボンド材が固まらないうちに、両面に植毛を施した前記の植毛シートをボンド材表面に貼設する。植毛シートをボンド材表面に軽く押し当て、シワを伸ばすような要領で貼り付ければよい。有機溶剤を含む接着剤等は一切不要である。
(3) 次いで、その植毛シートの表面に前記のポリオレフィン系樹脂水性エマルジョン塗料を塗布する。ゴムコテなどで塗布すれば植毛シート表面との良好な接着性が容易に得られる。必要に応じて重ね塗りすることができる。塗膜厚みは、例えばアクリル樹脂と乳化剤を含有するポリエチレン水性エマルジョン塗料の場合、乾燥後に約1〜3mmとなるようにすればよい。ただし、本発明で使用する水性エマルジョンは、塗膜面を外気に触れる状態にして乾燥させなければ固化しない点に留意すべきである。
図6には、このような工程で形成される本発明の被覆構造の断面を模式的に示す。
【0031】
図7には、植毛シートのジョイント部の処理例を模式的に示す。例えば(a)のように、植毛シート22Aと22Bの端部付近を一部重ね合わせ、その部分をボンド材21’で接着させたのち、全体をポリオレフィン系樹脂水性エマルジョン塗膜23で覆う方法や、(b)のように、植毛シート22Aと22Bの端部を突き合わせるようにして貼設したのち、その境界付近がカバーされるように植毛シートの帯状パッチ材24をボンド材21’を介して貼り付け、次いで全体をポリオレフィン系樹脂水性エマルジョン塗膜23で覆う方法等により、簡単かつ確実にジョイント処理することができる。
なお、図6および図7は概念図であるため、植毛シート厚さ,植毛シート間のボンド材厚さ,水性エマルジョン塗膜厚さ,植毛シートの重ね代等の寸法比は実際とは異なる。
【0032】
【実施例】
〔実施例1〕
本発明の被覆構造における植毛シートとセメント系材料の界面に「アンカー層」と「非アンカー層」が存在することを確かめる簡単な実験を行った。
下記の組成を有するボンド材を水/セメント比36.7%で混練し、これを100×300×40(mm)のコンクリートブロックの広面に約2.5mm厚に塗布した。
<ボンド材組成>
ポルトランドセメント1号:13.63kg
石灰石 : 0.28kg
硅砂4号 : 3.50kg
硅砂5号 : 7.50kg
メチルセルロース : 0.05kg
アクリル樹脂 : 0.05kg
このボンド材がまだ固まらないうちに、図1で示したのと同じ植毛シートをボンド材表面に軽く押し当て、シワを伸ばす要領で貼付した。
【0033】
このまま4週間放置してボンド材が完全に固まった状態において、貼付した植毛シートを強い力で機械的にボンド材の層から剥ぎ取った。その結果、剥ぎ取った植毛シート側のほとんどの領域にはボンド材を構成するセメント系材料は全く付いていなかった。これに対し、ボンド材側の表面は植毛シートからむしり取られた短繊維で覆われていた。このことは、短繊維がボンド材のセメント硬化マトリクスに拘束された「アンカー層」が存在し、かつ、「アンカー層」と前記「植毛シート基部」の間に、植毛シートの短繊維がセメント系材料に拘束されず、かつ、引張応力を受けたときに動ける状態で存在している層、すなわち「非アンカー層」が存在していたことを意味する。なお、剥ぎ取った植毛シート側のごく一部に粉状のセメント系材料が付いていたが、これは、アンカー層部分のセメント系材料が剥ぎ取り時に部分的に崩壊し、植毛シート側に付いたものと考えられる。
【0034】
〔実施例2〕
本発明の被覆構造において、植毛シートとポリオレフィン系樹脂水性エマルジョン固化皮膜が、植毛シートの短繊維をアンカーにして接合していることを確かめる簡単な実験を行った。
図1と同じ植毛シート(両面とも同条件で植毛されている)の表面に、ポリオレフィン系樹脂水性エマルジョン塗料を塗布した。使用した塗料は、揮発性有機化合物を含まないポリエチレン水性エマルジョン塗料であり、アクリル樹脂と乳化剤を含んだもの(成瀬化学株式会社製)である。塗膜厚さは乾燥後に約2mmになるようにした。
塗布後のサンプルを4週間放置してエマルジョン塗膜が完全に乾燥・固化した状態において、エマルジョン固化皮膜と植毛シートを強い力で機械的に剥がして分離させた。その結果、剥がしたエマルジョン固化皮膜の表面は植毛シートからむしり取られた短繊維で覆われていた。このことは、植毛シートの短繊維がエマルジョン固化皮膜に拘束されてアンカーとなっていたことを意味する。
なお、植毛シートとエマルジョン固化皮膜の界面にも「非アンカー層」が形成されていたと言える。
【0035】
〔実施例3〕
本発明の被覆構造においてセメント系材料に約2mmの幅を有する大きな亀裂が生じたときに、植毛シートを介して反対側のエマルジョン固化皮膜に亀裂損傷が生じないかどうかを調べた(亀裂伝播試験)。
図8(a)に示すように、厚さ40mm,幅100mmのコンクリートブロック25Aと25Bをそれぞれの端面同士が当たるように突き合わせて保持し、これらのコンクリートブロックの広面に実施例1と同様のセメント系材料からなるボンド材21を厚さ約2.5mmに塗布し、このボンド材がまだ固まらないうちに、図1で示したのと同じ植毛シート22をボンド材表面に軽く押し当て、シワを伸ばす要領で貼付した。さらにその上に実施例2と同じ水性エマルジョン塗料を用いて塗膜23を形成した。塗膜厚さは乾燥後に約2mmとなるようにした。
【0036】
この状態で4週間保持した後、ボンド材21が完全に硬化し、かつ水性エマルジョン塗膜23が完全に固化した状態において、図6(b)に示す矢印方向にコンクリートブロック25Aおよび25Bを引っ張り、その間隔を2mmにした。このとき、コンクリートブロック25Aと25Bの間の亀裂がボンド材21に伝播し、ボンド材21にも幅約2mmの亀裂27が生じた。しかしながら、植毛シート22を挟んで反対側のエマルジョン固化皮膜23’には亀裂が生じていなかった。このことは、本発明の被覆構造は、内側のセメント系材料(ボンド材)に「幅」のある大きな亀裂が生じた場合に外側のエマルジョン固化皮膜への亀裂伝播を防ぐ能力が極めて高いことを意味する。
なお、図8は概念図であるため、コンクリートブロック厚さ,ボンド材厚さ,植毛シート厚さ,水性エマルジョン塗膜厚さ等の寸法比は実際とは異なる。
【0037】
〔実施例4〕
寸法100×100×200mmのコンクリートブロック(水/セメント比59.5%,細骨材率46.5%のポルトランドセメントコンクリート)を9ピース用意し、その表面(全面)に防食被覆を施して下記A〜Cの3種類のサンプルを各3ピースずつ作製した。
A(本発明例):コンクリート表面に「セメント系材料(ボンド材)+植毛シート+ポリエチレン水性エマルジョン固化皮膜」を形成したもの。ボンド材は実施例1と同じものを厚さ約2.5mmに金ゴテで塗布した。植毛シートは図1と同じもの(両面に同条件で植毛したもの)を用い、前記ボンド材が固まらないうちにその表面に軽く押し当てシワを伸ばす要領で貼付した。植毛シートのジョイント処理は図7(a)のタイプとした。次いで植毛シートの上に実施例2と同じポリエチレン水性エマルジョン塗料を乾燥後の膜厚が約2mmになるようにゴムコテで塗布した。底面については他の面が概ね乾燥してから塗布した。
B(比較例):コンクリート表面に従来一般に行われているエポキシ系樹脂皮膜を形成したもの。コンクリート表面を素地調整した後、エポキシ系樹脂塗料を乾燥後の厚さが約1.5mmになるように塗布した。
C(比較例):コンクリート表面に抗菌性モルタル層を厚さ15mmで形成したもの。モルタルに配合した抗菌剤は銅イオンおよび銀イオンをゼオライト中に担持させた平均粒径17μmの灰白色粉末からなるもの(嵩密度約0.7g/cm3)であり、硫黄酸化細菌に対する抗菌性を有する。この抗菌剤を水/セメント比55%のモルタルに添加し混練して抗菌性モルタルを作った。抗菌剤の配合量はモルタルを構成する粉体材料(セメントおよびその他の粉体材料を含み、水を除く)100質量部に対し、抗菌剤1質量部とした。この抗菌性モルタルを素地調整したコンクリート表面に金ゴテで厚さ約15mmに塗布した。
【0038】
各サンプルは上記被覆を形成後2週間常温大気下に放置して被覆を構成する材料が完全に乾燥・固化した後、ビルの厨房排水が流れ込む厨房除害排水槽の内部(気相部)に60日間放置した。なお、この気相部にはその臭気から硫化水素が存在していることが明らかであった。
【0039】
60日間の腐食試験後のサンプルについて、表面の亀裂発生状態およびコンクリートの腐食状態を調べた。
本発明の被覆構造で保護したサンプルAは、3ピースとも表面の汚れを洗い流した外観は試験前と変化なく、エマルジョン固化皮膜に膨れや亀裂等の欠陥は見られなかった。被覆を機械的に除去してコンクリート表面を観察したところ、腐食の発生は認められなかった。なお、現時点では3ピースともコンクリートに経時劣化による亀裂は生じていなかった。
エポキシ系樹脂で被覆したサンプルBも、表面の汚れを洗い流した外観は試験前と変化なく、コンクリート表面にも亀裂や腐食の発生は認められなかった。今回の実験では試験期間が60日と短かったため本発明例のサンプルAと差は見られなかったが、さらに長期間放置してコンクリートの経時劣化が進んだ場合には皮膜が損傷されやすいサンプルBで早期にコンクリートの腐食が進行するものと考えられる。なお、Bに使用したエポキシ系樹脂は揮発性の有機溶剤を含むため、施工時の作業性は明らかにAに劣る。
抗菌性モルタルで被覆したサンプルCは、3ピースともモルタルに軽微なひび割れが発見された。モルタル層を除去してコンクリート表面を観察したところ、モルタルのひび割れに接していた付近で白化の生じている箇所があった。この白化は硫酸による初期の腐食形態であると考えられ、成長過程にあるものと判断された。モルタル自体が抗菌性を有していても、ひび割れを通してコンクリートに到達した硫化水素がコンクリート表層付近に生息していた硫黄酸化細菌に酸化され、硫酸を生じたものと推測される。
【0040】
【発明の効果】
本発明は以下のような有益な効果を生じるものである。
(1) 被覆の施工時において有害な有機物質が気化することによる作業環境の悪化がない。
(2) コンクリートとのなじみが良好なボンド材が使用でき、かつ薄く柔軟な植毛シートが使用できるので、入念な素地調整をすることなく種々の形状のコンクリート躯体に容易に適用できる。
(3) 表層のポリオレフィン系樹脂水性エマルジョン固化皮膜は優れた耐硫酸性を示すとともに、ある程度の弾力性を有するので外部からの衝撃にも強い。
(4) 表層のエマルジョン固化皮膜は内部から生じたセメント系材料の亀裂に対して極めて損傷を受けにくいので、コンクリートが経時変化や地盤変動により劣化した場合でも著しい腐食進行によるコンクリートの崩壊や土壌への汚染物質の流出が未然に防止できる。
(5) エマルジョン固化皮膜の表面は平滑であるため、施工後に行う表面検査でピンホールやひび割れが検出されず、品質面での信頼性も高い。
したがって、施工の容易な本発明は、長大な延長を有する既存の下水道施設など、硫化水素に曝されるコンクリート構造物にあとから防食・防水処理を施す手法として非常に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用可能な植毛シートの表面を見た電子顕微鏡写真(SEM像)。
【図2】図1と同じ植毛シートの断面を見た電子顕微鏡写真(SEM像)。
【図3】図1と同じ植毛シートの表面を部分的に拡大して見た電子顕微鏡写真(SEM像)。
【図4】本発明の例である被覆構造においてセメント系材料に「幅」のある大きな亀裂が生じたときの状態を模式的に表した断面図。
【図5】毛足の短い植毛シートとセメント系材料からなる接合構造においてセメント系材料に亀裂が生じたときの状態を模式的に表した断面図。
【図6】本発明の被覆構造を模式的に示した断面図。
【図7】本発明の被覆構造における植毛シートのジョイント部の処理例を模式的に示した断面図。
【図8】亀裂伝播試験の試料を模式的に示した断面図。(a)は亀裂形成前、(b)は亀裂形成後。
【符号の説明】
1 短繊維
2 セメント系材料
3 植毛シート基部
4 長繊維束+短繊維部
5 亀裂
6 樹脂/セメント界面
21,21’ ボンド材
22,22A,22B 植毛シート
23 ポリオレフィン系樹脂水性エマルジョン塗膜
23’ ポリオレフィン系樹脂水性エマルジョン固化皮膜
24 植毛シートの帯状パッチ材
25A,25B コンクリートブロック
26 コンクリートブロックの端面突き合わせ部
27 「幅」のある亀裂
Claims (7)
- コンクリート構造物の表面に形成した被覆構造であって、コンクリート側から順に、
[1] セメント系材料
[2] 耐酸性に優れた非透水性樹脂フィルムの両面に高分子樹脂繊維の植毛を施した植毛シートであって、少なくともセメント系材料側の面には直径10〜40μm,長さ10〜100mmの高分子樹脂短繊維が絡み合ったウエブを植毛してなる植毛シート
[3] ポリオレフィン系樹脂の水性エマルジョンが固化した耐硫酸性に優れたエマルジョン固化皮膜
の3つの材料が植毛シートの短繊維をアンカーにして接合したコンクリート構造物の防食・防水被覆構造。 - セメント系材料が、コンクリート躯体の表面に塗布されたものであって、ポルトランドセメントと硅砂を主成分とし、メチルセルロースおよびアクリル樹脂を含有するものである請求項1に記載のコンクリート構造物の防食・防水被覆構造。
- 植毛シートが、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に直径10〜40μm,長さ10〜100mmのポリプロピレン短繊維を1m2あたり250万〜500万本の割合でニードルパンチ法により植え付けたウエブシートを、非透水性の高密度ポリエチレンフィルムの両面に熱接着してなるものである、請求項1または2に記載のコンクリート構造物の防食・防水被覆構造。
- エマルジョン固化皮膜のポリオレフィン系樹脂がポリエチレンである請求項1〜3に記載のコンクリート構造物の防食・防水被覆構造。
- 植毛シートとセメント系材料の界面に、植毛シートの短繊維がセメント系材料に拘束されず、かつ、引張応力を受けたときに動ける状態で存在している「非アンカー層」が介在する請求項1〜4に記載のコンクリート構造物の防食・防水被覆構造。
- ポルトランドセメント系材料からなるボンド材をコンクリート躯体表面に塗布し、そのボンド材が固まらないうちに、直径10〜40μm,長さ10〜100mmの高分子樹脂短繊維が絡み合ったウエブを耐酸性に優れた非透水性樹脂フィルムの両面に植毛してなる植毛シートを前記ボンド材の表面に貼設し、次いで、ポリオレフィン系樹脂の水性エマルジョン塗料であって乾燥後に耐硫酸性に優れた皮膜を形成する塗料を前記植毛シートの表面に塗布し、その塗膜面を外気に触れる状態に保持して乾燥させるコンクリート構造物の防食・防水被覆工法。
- ボンド材が、ポルトランドセメントと硅砂を主成分とし、メチルセルロースおよびアクリル樹脂を含有するものであり、植毛シートが、ポリプロピレンからなるスパンボンド不織布に直径10〜40μm,長さ10〜100mmのポリプロピレン短繊維を1m2あたり250万〜500万本の割合でニードルパンチ法により植え付けたウエブシートを、非透水性の高密度ポリエチレンフィルムの両面に熱接着してなるものであり、水性エマルジョン塗料が、ポリエチレンの水性エマルジョン塗料である請求項6に記載の工法。
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