JP2004223999A - 表面保護工法、表面保護構造、及び表面保護用シート - Google Patents
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Abstract
【課題】例えば既設の内装建材の補修、各種の水路や貯水槽の内壁、建築物屋上の防水・防食構造の施工などに用いられ、各用途における被保護物を容易に且つ確実に保護することができる表面保護工法及び表面保護構造を提供する。
【解決手段】本発明の表面保護工法及び表面保護構造は、熱可塑性樹脂シート1の少なくとも一面側に、不織布シート2又は織布シート又はガラス繊維の一部を埋設して一体化させた表面保護用シートAの他面側を、被保護物5の表面に定着させた後、該表面保護用シートAの一面側の不織布シート2又は織布シート又はガラス繊維を含浸させるように樹脂コート7を施すようにした。
【選択図】 図2
【解決手段】本発明の表面保護工法及び表面保護構造は、熱可塑性樹脂シート1の少なくとも一面側に、不織布シート2又は織布シート又はガラス繊維の一部を埋設して一体化させた表面保護用シートAの他面側を、被保護物5の表面に定着させた後、該表面保護用シートAの一面側の不織布シート2又は織布シート又はガラス繊維を含浸させるように樹脂コート7を施すようにした。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば既設の内装建材の補修、各種の水路や貯水槽の内壁、建築物屋上の防水・防食構造の施工などに用いられ、各用途における被保護物を容易に且つ確実に保護することができる表面保護工法、表面保護構造、及び表面保護用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、アトピー性皮膚炎等に代表される化学物質過敏性症は、既設の内装建材に貼着された壁紙用接着剤や木材の腐敗防止に用いられた揮発性有機化合物が原因であることが報告されている。一方、内装建材は、全体にわたって腐敗が生じていれば撤去する他はないが、居住空間である室内側から湿気や水分が入り込んで表面が部分的に破損したり欠損が生じているものの、内部組織は損なわれていない場合もある。このようなケースにおいては、各種仕上げ材を塗布することも行われているが、空気(湿気)や水分を遮断できる仕上げ材でなければ、経年の後には、上述の問題点が再び表面化することになり、根本的な解決には至っていない。
【0003】
また、金属材料は、材質にもよるが、特に海辺などでは塩素や酸素による腐食が内部にまで進行することがあり、屈曲や寸断等の事故につながる虞がある。このようなケースにおいては、各種の防錆塗料が有効であるが、その効果は長続きしないため、一定期間経過後に再び防錆塗料を塗布する作業を繰り返す必要があった。
【0004】
さらに、コンクリートも、主として酸化を原因とする脆化が表面から進行し、内部の鉄筋が腐食したり、洩水することがある。このようなケースにおいては、防食モルタル等を塗着する方法が有効であるが、その効果は長続きしないため、一定期間経過後に再び防食モルタル等を塗布する作業を繰り返す必要があった。
【0005】
また、被保護物の劣化の原因となるのは空気(湿気)や水分ばかりでない。例えば下水や汚泥から発生した硫化水素に起因した腐食が問題になることもある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記各種仕上げ材や防錆塗料、防食モルタルなどを塗り付ける方法は、ライニング工法として知られているが、その被覆層を厚塗りした場合、多少の効果は長期化する。しかし、一般的に仕上げ材や防錆塗料、防食モルタルは高価であるため、厚塗りするどころか、より薄く塗着することが求められている。
【0007】
一方、樹脂シートで被保護物の表面を覆うシートライニング工法も知られているが、被保護物の表面を一枚のシートで覆うことは困難であり、シートとシートの隙間や重なり部分から湿気や水分が浸入することがあり、さらに最表面にシートが露出すると、不慮の接触によりシートが裂け、保護効果が損なわれたり、或いは美観を損ねることがあった。
【0008】
そこで、本発明は、各種被保護物を容易に且つ確実に保護することができる表面保護工法を提案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記に鑑み提案されたもので、熱可塑性樹脂シートの少なくとも一面側に、不織布シート又は織布シート又はガラス繊維の一部を埋設して一体化させた表面保護用シートの他面側を、被保護物の表面に定着させた後、該表面保護用シートの一面側の不織布シート又は織布シート又はガラス繊維を含浸させるように樹脂コートを施すようにしたことを特徴とする表面保護工法に関するものである。
【0010】
また、本発明は、熱可塑性樹脂シートの少なくとも一面側に不織布シート又は織布シート又はガラス繊維を一体化させた表面保護用シートの他面側を、被保護物の表面に定着させた後、該表面保護用シートの一面側の不織布シート又は織布シート又はガラス繊維を含浸させるように樹脂コートを施したことを特徴とする表面保護構造をも提案するものである。
【0011】
さらに、本発明は、ポリオレフィン系シートの少なくとも一面側に不織布シート又は織布シート又はガラス繊維をの一部を埋設して一体化させたことを特徴とする表面保護用シートをも提案するものである。
【0012】
前記本発明の表面保護工法では、例えば被保護物が既設の表面が劣化した建材(内装建材又は外装建材)であれば建築物の補修工法となり、被保護物が金属材料であれば防錆工法となり、被保護物がコンクリート材料であればコンクリート構造物の防食工法となり、被保護物及び劣化原因(劣化環境)に応じて熱可塑性樹脂シートや樹脂コートを適宜に選択すれば良い。
【0013】
【作用】
前記本発明では、熱可塑性樹脂シートが従来のシートライニング工法と同様に外部からの湿気や水分などを遮断すると共に、その表面に施す樹脂コートが従来のライニング工法と同様に外部からの湿気や水分などを遮断するので、二重の遮断層が形成されることになり、保護効果が極めて高い。また、熱可塑性樹脂シートには不織布シートなどの一部が埋設されて一体化されているので、熱可塑性樹脂シートと樹脂コート層とは、不織布シートなどのアンカー効果により強固に一体化され、しかも高価な樹脂コートを薄く塗着して美麗な表面状態を得ることができる。
尚、例えば、不織布シートなどを、熱可塑性樹脂シートの表面に両面テープなどで貼着した構成とすると、不織布シートによるアンカー効果が得られず、その後に不織布シートを含浸するように樹脂コートを行った場合に、樹脂コートと熱可塑性樹脂シートとが十分に密着しない場合もある。また、両面テープを用いた構成では、樹脂コート中の溶剤により両面テープ部分が侵食される場合もあるが、本発明の表面保護用シートでは、熱可塑性樹脂シートに不織布シートなどの一部が埋設して一体化されているので、樹脂コート中に有機溶剤などが含有されていても何等影響を受けることがない。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる表面保護用シートを構成する熱可塑性樹脂シート(ベースシート)は、後述する樹脂コートと共に、被保護物の材質や劣化原因(劣化環境)に応じて選択されるものであり、例えば空気(湿気)や水分、或いは硫化水素が劣化原因である場合には、特に限定するものではないが、それらの通過(浸透)を阻止するポリエチレン(HDPE,LDPE等)やポリプロピレンなどの気密性の高いポリオレフィン系樹脂シートが好適に用いられる。
【0015】
前記表面保護用シートの外面側(熱可塑性樹脂シートの一面側)には、不織布シート又は織布シート又はガラス繊維の一部を埋設して一体化されるが、その一体化方法としては、熱可塑性樹脂シートが熱溶融する温度でのラミネート(熱ラミ)などを挙げることができる。不織布シートや織布シートを用いる場合には、均一な厚みで平滑状に成形された市販品があるため、ラミネートによる埋設部分の厚み(非埋設部分の厚み)も均一とすることができ、その後に樹脂コートした場合にも平滑なコート面を形成することができる。ガラス繊維を用いる場合には公知の手段を用いて植毛しても良く、特に限定するものではないが、その場合の片面当たり20〜150g/m2の植毛とすることが望ましい。
【0016】
この不織布シートなどを用いることにより、後述する樹脂コートの塗工が容易となり、少量の塗布量で美麗な仕上げ面を得ることができるが、より均一な厚み管理を行う方法として、不織布シートなどの色と樹脂コートの色を変える方法がある。例えば不織布シートを黒色とし、白色の樹脂コートを塗布すると、黒色が消えるまで塗布すれば良く、容易に均一な厚みの管理を行うことができる。
【0017】
本発明に用いる樹脂コートは、前記熱可塑性樹脂シート(ベースシート)と共に、被保護物の材質や劣化原因(劣化環境)に応じて選択されるものであり、前記熱可塑性樹脂シートと同質の樹脂を選択しても良いし、敢えて異質の樹脂を選択、使用するようにしても良い。
例えば前記熱可塑性樹脂シートとしてポリオレフィン系シートを選択し、樹脂コートとしてポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂を選択した場合、同質であるため親和性が高く、一体化強度(接着強度)が高いものとなる。また、前述のようにポリオレフィン系シートは、湿気や水分、或いは硫化水素の通過(浸透)を阻止する効果が高いが、同様な効果はポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂コートによっても得られ、この場合、二重の遮断層が形成され、湿気や水分、或いは硫化水素の通過(浸透)を阻止する効果は極めて高いものとなる。尚、近年ポリオレフィン系樹脂を主成分とする水性エマルジョン塗料が開発され、有機溶剤を含まず、作業者の安全性にも配慮したものが市販されているので、これを用いることが望ましい。
【0018】
コンクリート構造物の防食という目的には、熱可塑性樹脂シートとして、不織布シート又は織布シート又はガラス繊維が一体化したポリオレフィン系シート等を用い、樹脂コートとして、『ナルコートCP』(成瀬化学社製ポリオレフィン系樹脂エマルジョン)等を用いるようにすると、硫化水素の影響によるコンクリートの侵食を防ぐことができ、健全なコンクリートを長期的に維持することができる。
【0019】
コンクリート構造物の防水という目的にも、熱可塑性樹脂シートとして、不織布シート又は織布シート又はガラス繊維が一体化したポリオレフィン系シート等を用い、樹脂コートとして、『ナルコートCP』(成瀬化学社製ポリオレフィン系樹脂エマルジョン)等を用いるようにすると、空気中の炭酸ガスの影響によるコンクリートの中性化(炭酸化)を防ぐことができ、コンクリート構造物を長期的に維持することができる。
【0020】
また、金属材料の防錆という目的にも、熱可塑性樹脂シートとして、不織布シート又は織布シート又はガラス繊維が一体化したポリオレフィン系シート等を用い、樹脂コートとして、『ナルコートCP』(成瀬化学社製ポリオレフィン系樹脂エマルジョン)等を用いるようにすると、金属材料(一部を除く)の酸化の影響による発錆、腐食を防ぐことができ、また金属材料の膨張収縮に対しても樹脂シート及び樹脂コートに伸び特性により長期的に一体化することができる。
【0021】
さらに、内装建材の補修という目的にも、熱可塑性樹脂シートとして、不織布シート又は織布シート又はガラス繊維が一体化したポリオレフィン系シート等を用い、樹脂コートとして、『ナルコートCP』(成瀬化学社製ポリオレフィン系樹脂エマルジョン)等を用いるようにすると、壁紙の接着剤などに含まれる揮発性有機化合物の放出を阻止することができ、さらに外側(室内空間側)から水分が浸入して木材を腐敗させることを防止することができ、木質内装建材の劣化を長期的に抑制することができる。
【0022】
このように表面保護用シートを構成する熱可塑性樹脂シートをポリオレフィン系シートとし、樹脂コートとしてポリオレフィン系樹脂を主成分とするものを用いることにより、極めて多種の目的に好適に利用することができる。
【0023】
また、表面保護用シートの内面側(熱可塑性樹脂シートの他面側)は、被保護物の表面に定着させる面であるため、例えば被保護物の表面に接着剤を塗布し、一面側に不織布シート等を一体化させた熱可塑性樹脂シートの他面側をそのまま被着して接着(定着)するようにしても良いが、必要に応じてその定着性を向上するアンカー効果を有する構成を付与するようにしても良い。例えば熱可塑性樹脂シートの一面側に一体化させる不織布シート等を、他面側にも同様に一体化させるようにしても良い。
このように例えば熱可塑性樹脂シートの両面に不織布シートを一体化させるようにすると、その施工において表裏を間違えて敷設することがなくなり、製品管理も容易となる。さらに、被保護物の表面に接着剤としての樹脂コートを行って定着させる際に、不織布シートに接着剤としての樹脂コートが含浸して高い接着強度を得ることができる。
【0024】
熱可塑性樹脂シートの一面側に不織布シート又は織布シートを一体化し、表裏両面に凹凸が表出するエンボス加工を施した場合、表面の不織布シート又は織布シートも凹凸となって、より表面積が大きくなるため、樹脂コートとの接着強度が向上する。
また、熱可塑性樹脂シートの表裏両面に不織布シート又は織布シートを一体化し、上述のエンボス加工を施した場合、一面側は勿論、他面側の表面の不織布シート又は織布シートも凹凸となって、より表面積が大きくなるため、内面側の接着剤との接着強度も向上する。
【0025】
尚、被保護物の表面に熱可塑性樹脂シートを定着させる接着剤として、前述のように樹脂コートを行うようにしても良いが、各種の業界で用いられている接着剤、下塗り材、上塗り材、仕上げ材などを適宜に用いるようにしても良く、例えば各種モルタル、漆喰、石膏などを例示することができる。その場合には、熱可塑性樹脂シートの他面側に熱可塑性樹脂繊維を植毛するようにしても良い。
【0026】
被保護物の表面に熱可塑性樹脂シートを定着させる接着剤としてのモルタルとしては、モルタルの配合中に、水よりも比重が大きなポリマーであるクロロプレンラテックスをセメントに対する有効固形分比で5〜30wt%添加してなるセメント組成物を用いることが望ましい。
また、クロロプレンの有効固形分に対し、1〜20wt%のメチルセルロースを添加することが望ましい。
さらに、クロロプレンラテックスは、カチオン系又はアニオン系ラテックスであることが望ましい。
この場合、海水等の水中へ打設した場合には海水等の浸透を防止し、水/セメント比の増大を抑制して強度低下を防止でき、材料分離も抑制できる。また、耐摩耗性も向上し、波や水流による砂や小石による摩耗が小さくなり、耐久性が増す。
また、硬化後はクロロプレンとセメント中の金属酸化物との架橋反応により耐水性及び凝集力が高くなり、さらにクロロプレンの粘弾性付与により耐衝撃性が高くなり、加えて耐薬品性も向上する。また、クロロプレンとセメントの架橋反応によってモルタル又はコンクリート中からのアルカリの流失を抑制することにより、コンクリート躯体の中性化を抑え、鉄筋が錆びることによるコンクリートの爆裂を防止し、躯体の耐久性を向上することができる。さらに、アルカリ流失を減少させることにより自然環境に与える影響も小さい。
そのため、海水や温泉水等の影響が少なく、水や化学的浸食に対する耐久性が高く、さらには強度が高く、衝撃等の物理的応力に対する耐久性も高い層とすることができる。
【0027】
【実施例】
図1はポリオレフィン系シート(50μmポリエチレンフィルム)1の一面側に不織布シート(黒色)2の一部を埋設して一体化させ、他面側に熱可塑性樹脂繊維(ポリエチレン繊維)3を植毛して一体化させ、表面保護用シート4を得る様子を模式的に示した。不織布シート2に代えて織布シート又はガラス繊維を用いても良い。
【0028】
こうして得られた表面保護用シートAを、コンクリート構造物(被保護物)4の防食に用いる態様を図2に示した。
まずコンクリート構造物4の表面に、表1の組成のモルタル(接着材)5を塗布し、表面保護用シートAの植毛側を内面にして定着させた。表面保護用シートAのつなぎ目にはテープ6を貼った。
その後、樹脂コート7として『ナルコートCP』(成瀬化学社製ポリオレフィン系樹脂エマルジョン,白色)を塗布して仕上げた。不織布シート2の存在により施工は極めて容易に実施できた。樹脂コート7の塗布量は1kg/m2であった。
【表1】
【0029】
得られた表面保護構造は、樹脂コート7の厚みを薄くすることができ、極めて精度の高い平滑面(鏡面)仕上げが可能であった。そして、表面保護用シートAと樹脂コート7とは極めて高い接着強度で接着されており、極めて耐久性の高い保護構造となる。また、この場合、樹脂コート7も表面保護用シートAもポリオレフィン系(ポリエチレン系)であるため、それぞれ高い遮水効果、気密効果を備え、これらの効果が二重に作用することにより硫化水素の影響によるコンクリートの侵食を防ぐことができ、空気中の炭酸ガスの影響によるコンクリートの中性化(炭酸化)も防ぐことができ、総じてコンクリート構造物4を長期的に維持することができる。
さらに、特に水よりも比重が大きなポリマーであるクロロプレンラテックスをセメントに対する有効固形分比で10〜30wt%添加してなるモルタル5を用いたので、水や化学的浸食に対する耐久性が高く、さらには強度が高く、衝撃等の物理的応力に対する耐久性も高い層となるため、前述の表面保護用シートAと樹脂コート7と併せて三重の遮水保護層が形成されるものとなる。
【0030】
比較として前記表面保護用シートAを敢えて表裏逆に用いた以外は同様に施工したところ、同じ塗布量の樹脂コートでは表面から植毛の毛先が露出してしまい、美麗に仕上げるためには約2kg/m2の塗布量が必要であった。
【0031】
図3及び図4は、被保護物(4’,4”)及び接着材(5’,5”)が変わった以外は前記図2と全く同様であり、図3は比較的平滑な表面を有し、図4は凹凸が形成された表面状態を有するが、建材でも金属材料でもコンクリート材料でも全く同様である。
【0032】
図5はポリオレフィン系シート(50μmポリエチレンフィルム)1の両面側に不織布シート(黒色)2の一部を埋設して一体化させ、表面保護用シートA’を得る様子を模式的に示した。不織布シート2に代えて織布シート又はガラス繊維を用いても良い。
【0033】
こうして得られた表面保護用シートA’を、金属材料よりなる構築物8の発錆、腐食を防ぐ防錆処理に用いる態様を図6に示した。
まず金属材料よりなる構築物8の表面に、接着材9として『ナルコートCP』(成瀬化学社製ポリオレフィン系樹脂エマルジョン,白色)を塗布し、表面保護用シートA’を定着させた。
その後、樹脂コート7として『ナルコートCP』(成瀬化学社製ポリオレフィン系樹脂エマルジョン,白色)を塗布して仕上げた。
【0034】
得られた表面保護構造は、樹脂コート7の厚みを薄くすることができ、極めて精度の高い平滑面(鏡面)仕上げが可能であった。そして、表面保護用シートAと樹脂コート7とは極めて高い接着強度で接着されており、極めて耐久性の高い保護構造となった。また、この場合、樹脂コート7も表面保護用シートAもポリオレフィン系(ポリエチレン系)であるため、それぞれ高い遮水効果、気密効果を備え、水分や酸素の影響による金属材料の発錆、腐食を防止することができ、金属材料からなる構築物8を長期的に維持することができる。
【0035】
さらに、既に錆が生じた金属材料は、表面が平滑でないため、接着剤を厚塗りする場合には、図5の表面保護用シートA’にエンボス加工を施した表面保護用シートを用いることが有効であった。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の表面保護工法及び表面保護構造は、表面保護用シートが従来のシートライニング工法と同様に外部からの湿気や水分などを遮断すると共に、その表面に施す樹脂コートが従来のライニング工法と同様に外部からの湿気や水分などを遮断するので、二重の遮断層が形成されることになり、保護効果が極めて高いものとなる。
また、熱可塑性樹脂シートには不織布シートなどの一部が埋設されて一体化されているので、熱可塑性樹脂シートと樹脂コート層とは、不織布シートなどのアンカー効果により強固に一体化され、しかも高価な樹脂コートを薄く塗着して美麗な表面状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表面保護用シートの一構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の表面保護用シートを用いた表面保護構造を模式的に示す断面図である。
【図3】図1の表面保護用シートを用いた表面保護構造を模式的に示す断面図である。
【図4】図1の表面保護用シートを用いた表面保護構造を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の表面保護用シートの他の一構成を模式的に示す断面図である。
【図6】図5の表面保護用シートを用いた表面保護構造を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 熱可塑性樹脂シート
2 不織布シート
4 被保護物
7 樹脂コート
A 表面保護用シート
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば既設の内装建材の補修、各種の水路や貯水槽の内壁、建築物屋上の防水・防食構造の施工などに用いられ、各用途における被保護物を容易に且つ確実に保護することができる表面保護工法、表面保護構造、及び表面保護用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、アトピー性皮膚炎等に代表される化学物質過敏性症は、既設の内装建材に貼着された壁紙用接着剤や木材の腐敗防止に用いられた揮発性有機化合物が原因であることが報告されている。一方、内装建材は、全体にわたって腐敗が生じていれば撤去する他はないが、居住空間である室内側から湿気や水分が入り込んで表面が部分的に破損したり欠損が生じているものの、内部組織は損なわれていない場合もある。このようなケースにおいては、各種仕上げ材を塗布することも行われているが、空気(湿気)や水分を遮断できる仕上げ材でなければ、経年の後には、上述の問題点が再び表面化することになり、根本的な解決には至っていない。
【0003】
また、金属材料は、材質にもよるが、特に海辺などでは塩素や酸素による腐食が内部にまで進行することがあり、屈曲や寸断等の事故につながる虞がある。このようなケースにおいては、各種の防錆塗料が有効であるが、その効果は長続きしないため、一定期間経過後に再び防錆塗料を塗布する作業を繰り返す必要があった。
【0004】
さらに、コンクリートも、主として酸化を原因とする脆化が表面から進行し、内部の鉄筋が腐食したり、洩水することがある。このようなケースにおいては、防食モルタル等を塗着する方法が有効であるが、その効果は長続きしないため、一定期間経過後に再び防食モルタル等を塗布する作業を繰り返す必要があった。
【0005】
また、被保護物の劣化の原因となるのは空気(湿気)や水分ばかりでない。例えば下水や汚泥から発生した硫化水素に起因した腐食が問題になることもある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記各種仕上げ材や防錆塗料、防食モルタルなどを塗り付ける方法は、ライニング工法として知られているが、その被覆層を厚塗りした場合、多少の効果は長期化する。しかし、一般的に仕上げ材や防錆塗料、防食モルタルは高価であるため、厚塗りするどころか、より薄く塗着することが求められている。
【0007】
一方、樹脂シートで被保護物の表面を覆うシートライニング工法も知られているが、被保護物の表面を一枚のシートで覆うことは困難であり、シートとシートの隙間や重なり部分から湿気や水分が浸入することがあり、さらに最表面にシートが露出すると、不慮の接触によりシートが裂け、保護効果が損なわれたり、或いは美観を損ねることがあった。
【0008】
そこで、本発明は、各種被保護物を容易に且つ確実に保護することができる表面保護工法を提案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記に鑑み提案されたもので、熱可塑性樹脂シートの少なくとも一面側に、不織布シート又は織布シート又はガラス繊維の一部を埋設して一体化させた表面保護用シートの他面側を、被保護物の表面に定着させた後、該表面保護用シートの一面側の不織布シート又は織布シート又はガラス繊維を含浸させるように樹脂コートを施すようにしたことを特徴とする表面保護工法に関するものである。
【0010】
また、本発明は、熱可塑性樹脂シートの少なくとも一面側に不織布シート又は織布シート又はガラス繊維を一体化させた表面保護用シートの他面側を、被保護物の表面に定着させた後、該表面保護用シートの一面側の不織布シート又は織布シート又はガラス繊維を含浸させるように樹脂コートを施したことを特徴とする表面保護構造をも提案するものである。
【0011】
さらに、本発明は、ポリオレフィン系シートの少なくとも一面側に不織布シート又は織布シート又はガラス繊維をの一部を埋設して一体化させたことを特徴とする表面保護用シートをも提案するものである。
【0012】
前記本発明の表面保護工法では、例えば被保護物が既設の表面が劣化した建材(内装建材又は外装建材)であれば建築物の補修工法となり、被保護物が金属材料であれば防錆工法となり、被保護物がコンクリート材料であればコンクリート構造物の防食工法となり、被保護物及び劣化原因(劣化環境)に応じて熱可塑性樹脂シートや樹脂コートを適宜に選択すれば良い。
【0013】
【作用】
前記本発明では、熱可塑性樹脂シートが従来のシートライニング工法と同様に外部からの湿気や水分などを遮断すると共に、その表面に施す樹脂コートが従来のライニング工法と同様に外部からの湿気や水分などを遮断するので、二重の遮断層が形成されることになり、保護効果が極めて高い。また、熱可塑性樹脂シートには不織布シートなどの一部が埋設されて一体化されているので、熱可塑性樹脂シートと樹脂コート層とは、不織布シートなどのアンカー効果により強固に一体化され、しかも高価な樹脂コートを薄く塗着して美麗な表面状態を得ることができる。
尚、例えば、不織布シートなどを、熱可塑性樹脂シートの表面に両面テープなどで貼着した構成とすると、不織布シートによるアンカー効果が得られず、その後に不織布シートを含浸するように樹脂コートを行った場合に、樹脂コートと熱可塑性樹脂シートとが十分に密着しない場合もある。また、両面テープを用いた構成では、樹脂コート中の溶剤により両面テープ部分が侵食される場合もあるが、本発明の表面保護用シートでは、熱可塑性樹脂シートに不織布シートなどの一部が埋設して一体化されているので、樹脂コート中に有機溶剤などが含有されていても何等影響を受けることがない。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる表面保護用シートを構成する熱可塑性樹脂シート(ベースシート)は、後述する樹脂コートと共に、被保護物の材質や劣化原因(劣化環境)に応じて選択されるものであり、例えば空気(湿気)や水分、或いは硫化水素が劣化原因である場合には、特に限定するものではないが、それらの通過(浸透)を阻止するポリエチレン(HDPE,LDPE等)やポリプロピレンなどの気密性の高いポリオレフィン系樹脂シートが好適に用いられる。
【0015】
前記表面保護用シートの外面側(熱可塑性樹脂シートの一面側)には、不織布シート又は織布シート又はガラス繊維の一部を埋設して一体化されるが、その一体化方法としては、熱可塑性樹脂シートが熱溶融する温度でのラミネート(熱ラミ)などを挙げることができる。不織布シートや織布シートを用いる場合には、均一な厚みで平滑状に成形された市販品があるため、ラミネートによる埋設部分の厚み(非埋設部分の厚み)も均一とすることができ、その後に樹脂コートした場合にも平滑なコート面を形成することができる。ガラス繊維を用いる場合には公知の手段を用いて植毛しても良く、特に限定するものではないが、その場合の片面当たり20〜150g/m2の植毛とすることが望ましい。
【0016】
この不織布シートなどを用いることにより、後述する樹脂コートの塗工が容易となり、少量の塗布量で美麗な仕上げ面を得ることができるが、より均一な厚み管理を行う方法として、不織布シートなどの色と樹脂コートの色を変える方法がある。例えば不織布シートを黒色とし、白色の樹脂コートを塗布すると、黒色が消えるまで塗布すれば良く、容易に均一な厚みの管理を行うことができる。
【0017】
本発明に用いる樹脂コートは、前記熱可塑性樹脂シート(ベースシート)と共に、被保護物の材質や劣化原因(劣化環境)に応じて選択されるものであり、前記熱可塑性樹脂シートと同質の樹脂を選択しても良いし、敢えて異質の樹脂を選択、使用するようにしても良い。
例えば前記熱可塑性樹脂シートとしてポリオレフィン系シートを選択し、樹脂コートとしてポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂を選択した場合、同質であるため親和性が高く、一体化強度(接着強度)が高いものとなる。また、前述のようにポリオレフィン系シートは、湿気や水分、或いは硫化水素の通過(浸透)を阻止する効果が高いが、同様な効果はポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂コートによっても得られ、この場合、二重の遮断層が形成され、湿気や水分、或いは硫化水素の通過(浸透)を阻止する効果は極めて高いものとなる。尚、近年ポリオレフィン系樹脂を主成分とする水性エマルジョン塗料が開発され、有機溶剤を含まず、作業者の安全性にも配慮したものが市販されているので、これを用いることが望ましい。
【0018】
コンクリート構造物の防食という目的には、熱可塑性樹脂シートとして、不織布シート又は織布シート又はガラス繊維が一体化したポリオレフィン系シート等を用い、樹脂コートとして、『ナルコートCP』(成瀬化学社製ポリオレフィン系樹脂エマルジョン)等を用いるようにすると、硫化水素の影響によるコンクリートの侵食を防ぐことができ、健全なコンクリートを長期的に維持することができる。
【0019】
コンクリート構造物の防水という目的にも、熱可塑性樹脂シートとして、不織布シート又は織布シート又はガラス繊維が一体化したポリオレフィン系シート等を用い、樹脂コートとして、『ナルコートCP』(成瀬化学社製ポリオレフィン系樹脂エマルジョン)等を用いるようにすると、空気中の炭酸ガスの影響によるコンクリートの中性化(炭酸化)を防ぐことができ、コンクリート構造物を長期的に維持することができる。
【0020】
また、金属材料の防錆という目的にも、熱可塑性樹脂シートとして、不織布シート又は織布シート又はガラス繊維が一体化したポリオレフィン系シート等を用い、樹脂コートとして、『ナルコートCP』(成瀬化学社製ポリオレフィン系樹脂エマルジョン)等を用いるようにすると、金属材料(一部を除く)の酸化の影響による発錆、腐食を防ぐことができ、また金属材料の膨張収縮に対しても樹脂シート及び樹脂コートに伸び特性により長期的に一体化することができる。
【0021】
さらに、内装建材の補修という目的にも、熱可塑性樹脂シートとして、不織布シート又は織布シート又はガラス繊維が一体化したポリオレフィン系シート等を用い、樹脂コートとして、『ナルコートCP』(成瀬化学社製ポリオレフィン系樹脂エマルジョン)等を用いるようにすると、壁紙の接着剤などに含まれる揮発性有機化合物の放出を阻止することができ、さらに外側(室内空間側)から水分が浸入して木材を腐敗させることを防止することができ、木質内装建材の劣化を長期的に抑制することができる。
【0022】
このように表面保護用シートを構成する熱可塑性樹脂シートをポリオレフィン系シートとし、樹脂コートとしてポリオレフィン系樹脂を主成分とするものを用いることにより、極めて多種の目的に好適に利用することができる。
【0023】
また、表面保護用シートの内面側(熱可塑性樹脂シートの他面側)は、被保護物の表面に定着させる面であるため、例えば被保護物の表面に接着剤を塗布し、一面側に不織布シート等を一体化させた熱可塑性樹脂シートの他面側をそのまま被着して接着(定着)するようにしても良いが、必要に応じてその定着性を向上するアンカー効果を有する構成を付与するようにしても良い。例えば熱可塑性樹脂シートの一面側に一体化させる不織布シート等を、他面側にも同様に一体化させるようにしても良い。
このように例えば熱可塑性樹脂シートの両面に不織布シートを一体化させるようにすると、その施工において表裏を間違えて敷設することがなくなり、製品管理も容易となる。さらに、被保護物の表面に接着剤としての樹脂コートを行って定着させる際に、不織布シートに接着剤としての樹脂コートが含浸して高い接着強度を得ることができる。
【0024】
熱可塑性樹脂シートの一面側に不織布シート又は織布シートを一体化し、表裏両面に凹凸が表出するエンボス加工を施した場合、表面の不織布シート又は織布シートも凹凸となって、より表面積が大きくなるため、樹脂コートとの接着強度が向上する。
また、熱可塑性樹脂シートの表裏両面に不織布シート又は織布シートを一体化し、上述のエンボス加工を施した場合、一面側は勿論、他面側の表面の不織布シート又は織布シートも凹凸となって、より表面積が大きくなるため、内面側の接着剤との接着強度も向上する。
【0025】
尚、被保護物の表面に熱可塑性樹脂シートを定着させる接着剤として、前述のように樹脂コートを行うようにしても良いが、各種の業界で用いられている接着剤、下塗り材、上塗り材、仕上げ材などを適宜に用いるようにしても良く、例えば各種モルタル、漆喰、石膏などを例示することができる。その場合には、熱可塑性樹脂シートの他面側に熱可塑性樹脂繊維を植毛するようにしても良い。
【0026】
被保護物の表面に熱可塑性樹脂シートを定着させる接着剤としてのモルタルとしては、モルタルの配合中に、水よりも比重が大きなポリマーであるクロロプレンラテックスをセメントに対する有効固形分比で5〜30wt%添加してなるセメント組成物を用いることが望ましい。
また、クロロプレンの有効固形分に対し、1〜20wt%のメチルセルロースを添加することが望ましい。
さらに、クロロプレンラテックスは、カチオン系又はアニオン系ラテックスであることが望ましい。
この場合、海水等の水中へ打設した場合には海水等の浸透を防止し、水/セメント比の増大を抑制して強度低下を防止でき、材料分離も抑制できる。また、耐摩耗性も向上し、波や水流による砂や小石による摩耗が小さくなり、耐久性が増す。
また、硬化後はクロロプレンとセメント中の金属酸化物との架橋反応により耐水性及び凝集力が高くなり、さらにクロロプレンの粘弾性付与により耐衝撃性が高くなり、加えて耐薬品性も向上する。また、クロロプレンとセメントの架橋反応によってモルタル又はコンクリート中からのアルカリの流失を抑制することにより、コンクリート躯体の中性化を抑え、鉄筋が錆びることによるコンクリートの爆裂を防止し、躯体の耐久性を向上することができる。さらに、アルカリ流失を減少させることにより自然環境に与える影響も小さい。
そのため、海水や温泉水等の影響が少なく、水や化学的浸食に対する耐久性が高く、さらには強度が高く、衝撃等の物理的応力に対する耐久性も高い層とすることができる。
【0027】
【実施例】
図1はポリオレフィン系シート(50μmポリエチレンフィルム)1の一面側に不織布シート(黒色)2の一部を埋設して一体化させ、他面側に熱可塑性樹脂繊維(ポリエチレン繊維)3を植毛して一体化させ、表面保護用シート4を得る様子を模式的に示した。不織布シート2に代えて織布シート又はガラス繊維を用いても良い。
【0028】
こうして得られた表面保護用シートAを、コンクリート構造物(被保護物)4の防食に用いる態様を図2に示した。
まずコンクリート構造物4の表面に、表1の組成のモルタル(接着材)5を塗布し、表面保護用シートAの植毛側を内面にして定着させた。表面保護用シートAのつなぎ目にはテープ6を貼った。
その後、樹脂コート7として『ナルコートCP』(成瀬化学社製ポリオレフィン系樹脂エマルジョン,白色)を塗布して仕上げた。不織布シート2の存在により施工は極めて容易に実施できた。樹脂コート7の塗布量は1kg/m2であった。
【表1】
【0029】
得られた表面保護構造は、樹脂コート7の厚みを薄くすることができ、極めて精度の高い平滑面(鏡面)仕上げが可能であった。そして、表面保護用シートAと樹脂コート7とは極めて高い接着強度で接着されており、極めて耐久性の高い保護構造となる。また、この場合、樹脂コート7も表面保護用シートAもポリオレフィン系(ポリエチレン系)であるため、それぞれ高い遮水効果、気密効果を備え、これらの効果が二重に作用することにより硫化水素の影響によるコンクリートの侵食を防ぐことができ、空気中の炭酸ガスの影響によるコンクリートの中性化(炭酸化)も防ぐことができ、総じてコンクリート構造物4を長期的に維持することができる。
さらに、特に水よりも比重が大きなポリマーであるクロロプレンラテックスをセメントに対する有効固形分比で10〜30wt%添加してなるモルタル5を用いたので、水や化学的浸食に対する耐久性が高く、さらには強度が高く、衝撃等の物理的応力に対する耐久性も高い層となるため、前述の表面保護用シートAと樹脂コート7と併せて三重の遮水保護層が形成されるものとなる。
【0030】
比較として前記表面保護用シートAを敢えて表裏逆に用いた以外は同様に施工したところ、同じ塗布量の樹脂コートでは表面から植毛の毛先が露出してしまい、美麗に仕上げるためには約2kg/m2の塗布量が必要であった。
【0031】
図3及び図4は、被保護物(4’,4”)及び接着材(5’,5”)が変わった以外は前記図2と全く同様であり、図3は比較的平滑な表面を有し、図4は凹凸が形成された表面状態を有するが、建材でも金属材料でもコンクリート材料でも全く同様である。
【0032】
図5はポリオレフィン系シート(50μmポリエチレンフィルム)1の両面側に不織布シート(黒色)2の一部を埋設して一体化させ、表面保護用シートA’を得る様子を模式的に示した。不織布シート2に代えて織布シート又はガラス繊維を用いても良い。
【0033】
こうして得られた表面保護用シートA’を、金属材料よりなる構築物8の発錆、腐食を防ぐ防錆処理に用いる態様を図6に示した。
まず金属材料よりなる構築物8の表面に、接着材9として『ナルコートCP』(成瀬化学社製ポリオレフィン系樹脂エマルジョン,白色)を塗布し、表面保護用シートA’を定着させた。
その後、樹脂コート7として『ナルコートCP』(成瀬化学社製ポリオレフィン系樹脂エマルジョン,白色)を塗布して仕上げた。
【0034】
得られた表面保護構造は、樹脂コート7の厚みを薄くすることができ、極めて精度の高い平滑面(鏡面)仕上げが可能であった。そして、表面保護用シートAと樹脂コート7とは極めて高い接着強度で接着されており、極めて耐久性の高い保護構造となった。また、この場合、樹脂コート7も表面保護用シートAもポリオレフィン系(ポリエチレン系)であるため、それぞれ高い遮水効果、気密効果を備え、水分や酸素の影響による金属材料の発錆、腐食を防止することができ、金属材料からなる構築物8を長期的に維持することができる。
【0035】
さらに、既に錆が生じた金属材料は、表面が平滑でないため、接着剤を厚塗りする場合には、図5の表面保護用シートA’にエンボス加工を施した表面保護用シートを用いることが有効であった。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の表面保護工法及び表面保護構造は、表面保護用シートが従来のシートライニング工法と同様に外部からの湿気や水分などを遮断すると共に、その表面に施す樹脂コートが従来のライニング工法と同様に外部からの湿気や水分などを遮断するので、二重の遮断層が形成されることになり、保護効果が極めて高いものとなる。
また、熱可塑性樹脂シートには不織布シートなどの一部が埋設されて一体化されているので、熱可塑性樹脂シートと樹脂コート層とは、不織布シートなどのアンカー効果により強固に一体化され、しかも高価な樹脂コートを薄く塗着して美麗な表面状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表面保護用シートの一構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の表面保護用シートを用いた表面保護構造を模式的に示す断面図である。
【図3】図1の表面保護用シートを用いた表面保護構造を模式的に示す断面図である。
【図4】図1の表面保護用シートを用いた表面保護構造を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の表面保護用シートの他の一構成を模式的に示す断面図である。
【図6】図5の表面保護用シートを用いた表面保護構造を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 熱可塑性樹脂シート
2 不織布シート
4 被保護物
7 樹脂コート
A 表面保護用シート
Claims (5)
- 熱可塑性樹脂シートの少なくとも一面側に、不織布シート又は織布シート又はガラス繊維の一部を埋設して一体化させた表面保護用シートの他面側を、被保護物の表面に定着させた後、該表面保護用シートの一面側の不織布シート又は織布シート又はガラス繊維を含浸させるように樹脂コートを施すようにしたことを特徴とする表面保護工法。
- 表面保護用シートを構成する熱可塑性樹脂シートをポリオレフィン系シートとし、樹脂コートをポリオレフィン系樹脂を主成分とするものを用いることを特徴とする請求項1に記載の表面保護工法。
- 表面保護用シートは熱可塑性樹脂シートの少なくとも一面側に不織布シート又は織布シートを埋設して一体化させ、表裏両面に凹凸が表出するエンボス加工が施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面保護工法。
- 熱可塑性樹脂シートの少なくとも一面側に不織布シート又は織布シート又はガラス繊維の一部を埋設して一体化させた表面保護用シートの他面側を、被保護物の表面に定着させた後、該表面保護用シートの一面側の不織布シート又は織布シート又はガラス繊維を含浸させるように樹脂コートを施したことを特徴とする表面保護構造。
- ポリオレフィン系シートの少なくとも一面側に不織布シート又は織布シート又はガラス繊維をの一部を埋設して一体化させたことを特徴とする表面保護用シート。
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