JP2004307890A - 真空成膜装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、シート状のフレキシブル基材を真空中で繰返し成膜し、成膜中に成膜面がローラもしくはシートに触れることがなく、かつ膜厚及び膜組成が均一な成膜面の品質に優れる、生産性を向上した真空成膜装置を提供することを目的とする。
【解決手段】シート状のフレキシブル基材の両端を貼り合わせて真空中で繰返し成膜し、成膜中に成膜面がローラもしくはシートに触れることがない真空成膜装置であって、1個以上の成膜室を周囲に持つ少なくとも1個の成膜ドラムと、少なくとも1個のローラ軸が移動可能な1個以上のテンションローラを具備することを特徴とする真空成膜装置である。
【選択図】図1
【解決手段】シート状のフレキシブル基材の両端を貼り合わせて真空中で繰返し成膜し、成膜中に成膜面がローラもしくはシートに触れることがない真空成膜装置であって、1個以上の成膜室を周囲に持つ少なくとも1個の成膜ドラムと、少なくとも1個のローラ軸が移動可能な1個以上のテンションローラを具備することを特徴とする真空成膜装置である。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空成膜装置に係わり、さらに詳細には、シート状のフレキシブル基材を真空中で繰返し成膜し、成膜中に成膜面がローラもしくはシートに触れることがなく、かつ膜厚及び膜組成が均一な成膜面の品質及び生産性に優れる真空成膜装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の真空成膜装置について、図4〜7に基づいて説明する。
図4は、従来の真空成膜装置の一例で、インライン式真空成膜装置である。シート状の基材を供給部10で基材搬送台18に固定する。その時真空遮断弁13は閉じられている。基材固定後、供給部10の大気圧雰囲気が排気され成膜室2と同じ圧力になると、真空遮断弁13が開き基材搬送台18が成膜室2に移動する。その後真空遮断弁13が閉じ成膜が行なわれる。その後同様に各成膜室2〜4に搬送し成膜する。前進と後進を繰り返すことにより多層の成膜が可能である。このように従来のインライン式真空成膜装置は、隣り合った成膜室とその間を仕切る真空遮断弁、成膜室間を移動する基板搬送台18から成り立っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、図5は、従来の真空成膜装置の他の例で、マルチチャンバ式真空成膜装置である。シート状の基材を供給部10で基材搬送台18に固定する。その時真空遮断弁13は閉じられている。基材固定後、供給部10の大気圧雰囲気が排気され中央の部屋と同じ圧力になると、真空遮断弁13が開き基材搬送台18がロボットハンド15によって中央の部屋を通り成膜室2〜4のいずれかに搬送され、基材搬送台18上の基材が成膜される。ロボットハンド15による各成膜室2〜4への基材の出し入れを繰り返すことにより多層の成膜が可能である。このように従来のマルチチャンバ式真空成膜装置は、複数の成膜室とその成膜室に囲まれた部屋とその間を仕切る真空遮断弁と成膜室に基板を移動する基板搬送装置から成り立っている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、図6は、従来の真空成膜装置のさらに別の例で、巻取り式真空成膜装置である。ロール状の長尺フレキシブル基材を真空中で成膜ドラム1に巻き付けて成膜室2〜4を通し、連続して成膜を行なってから巻き取る。逆転して成膜することにより多層の成膜も可能である。このように従来の巻取り式真空成膜装置は、巻き出し部と成膜部と巻取り部から成り立っていて、連続して成膜が行なわれる(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
図7は、巻取り式真空成膜装置(図6)の成膜ドラム1にシート状のフレキシブル基材12をテープで貼りつけた状態である。成膜ドラム1を回転させながら繰返し成膜することにより多層の成膜が可能である。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−295551号公報
【特許文献2】
特開平10−303276号公報
【特許文献3】
特開2000−17437号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記図4、5に示した多層成膜に用いられる従来の真空成膜装置の場合、複数の成膜方法で繰返し成膜し、成膜面にローラが触れることがなく大気中に取り出すことは可能であるが、下記の問題点がある。
(1)シートを成膜室に出し入れする際、真空遮断弁を開く。そのため、圧力,温度等の成膜条件が変動し、最適条件になるまで時間がかかる。それにより生産性が問題となる。
(2)シートの温度を制御するシート固定板が平面状であると、固定板からシートが浮く場所が発生する。そのため温度ムラが生じ、それにより膜厚及び膜組成にムラができるため品質上の問題が生じる。
【0008】
また、上記図6に示した多層成膜に用いられる従来の真空成膜装置の場合、ロール状の長尺フレキシブル基材を供給して、複数の成膜方法で繰返し成膜することは可能である。成膜ドラム1に巻き付けて成膜するため、成膜ドラム1を均一に温度制御するとシートが密着しているためシート表面の温度も均一となる。また、連続して成膜できるため生産性も良い。しかし、下記の問題点がある。
(1)成膜面にローラが触れるため、成膜面の品質上に問題がある。
(2)多層成膜を行なうためには、巻取り式であるために各成膜方法の成膜時間を合わせる必要があり、成膜方法の組合せ、または膜厚の組合せが制限される。
(3)長尺フレキシブル基材を搬送するため高い張力が必要となり、フィルム伸縮による膜への悪影響が生じる。
【0009】
上記の欠点を回避するため、上記図7に示した多層成膜に用いられる従来の方法として、上記図6に示した従来の真空成膜装置を使用して、シート状のフレキシブル基材12を成膜ドラム1に貼り付けて、回転しながら成膜することにより繰り返し成膜する方法もある。
しかし、下記の問題点がある。
(1)成膜時に発生する熱によりフレキシブル基材が膨張し、そのためフレキシブル基材にたるみが生じる。そのことにより、フレキシブル基材の温度分布が不均一になり、その結果、膜の厚さ、組成等が不均一になる。
(2)膜厚をコントロールする場合、膜厚計が必要である。しかし、フレキシブル基材が成膜ドラム1に巻き付いた状態では、成膜ドラム表面の影響で正確に測定することができない。
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点を鑑みてなされたもので、シート状のフレキシブル基材を真空中で繰返し成膜し、成膜中に成膜面がローラもしくはシートに触れることがなく、かつ膜厚及び膜組成が均一な成膜面の品質に優れる、生産性を向上した真空成膜装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決しようとする手段】
上記目的を達成するために、すなわち請求項1に係る発明は、
シート状のフレキシブル基材の両端を貼り合わせて真空中で繰返し成膜し、成膜中に成膜面がローラもしくはシートに触れることがない真空成膜装置であって、1個以上の成膜室を周囲に持つ少なくとも1個の成膜ドラムと、少なくとも1個のローラ軸が移動可能な1個以上のテンションローラを具備することを特徴とする真空成膜装置である。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、
前記成膜ドラム1個と、前記テンションローラ2個とを具備し、該成膜ドラムとテンションローラにフレキシブル基材を巻き付け、少なくとも1個のテンションローラ軸が移動することにより、成膜中のフレキシブル基材に張力がかかることを特徴とする請求項1記載の真空成膜装置である。
【0013】
また、請求項3に係る発明は、
前記成膜ドラム2個と、前記テンションローラ1個とを具備し、該成膜ドラムとテンションローラにフレキシブル基材を巻き付け、少なくとも1つのドラム軸またはローラ軸が移動することにより、成膜中のフレキシブル基材に張力がかかることを特徴とする請求項1記載の真空成膜装置である。
【0014】
また、請求項4に係る発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空成膜装置において、前記フレキシブル基材を供給及び交換する部屋を備え、該部屋には巻出しロールと巻取りロール具備し、さらに該部屋と前記成膜室との境に真空遮断弁を具備し、フレキシブル基材を供給及び交換する時に成膜室の真空を保持することを特徴とする真空成膜装置である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい一実施態様について図面を参照して説明する。
図1〜図3は、本発明の一実施例としての真空成膜装置の概略断面図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の一例を示す真空成膜装置は、2個のガイドローラ8と2個のテンションローラ9を備えている。フレキシブル基材12の両端がテープ等でつながった状態で成膜を行なう。フレキシブル基材12の脱着は2個のガイドローラ8の間で行なう。フレキシブル基材12のつなぎ目を2個のガイドローラ8の間にして停止し、テンションローラ9を移動してフレキシブル基材12の張力を緩める。シール7の内部に大気を入れ膨らまして脱着室と成膜室を雰囲気的に遮断する。脱着室を真空雰囲気から大気圧雰囲気にする。大気雰囲気になったら扉(図示せず)を開き、フレキシブル基材12のつなぎ目を外す。フレキシブル基材12の一端を巻き出しロール16の一端とつなぎ、他端を巻取りロール17の一端とつなぐ。扉を閉めて脱着室を大気圧雰囲気から真空雰囲気にする。真空雰囲気になったらシール7の内部を真空にして、フレキシブル基材12を所定の長さだけ巻き取る。再びシール7の内部に大気を入れ膨らまして脱着室と成膜室を雰囲気的に遮断する。脱着室を真空雰囲気から大気圧雰囲気にする。大気雰囲気になったら扉(図示せず)を開き、フレキシブル基材12を2個のガイドローラ8上部付近で切断し、ガイドローラ8を巻き込むようにつなぎ合わせる。扉を閉めて脱着室を大気圧雰囲気から真空雰囲気にする。真空雰囲気になったらシール7の内部を真空にしてフレキシブル基材12を搬送可能な状態にする。テンションローラ9を移動してフレキシブル基材12の張力を持たせる。成膜を開始する。
【0017】
また、本発明の一例を示す真空成膜装置は、図2に示すように、テンションローラ9が1個だけの場合である。フレキシブル基材12の両端がテープ等でつながった状態で成膜を行なう。フレキシブル基材12の脱着はテンションローラ9の上で行なう。フレキシブル基材12のつなぎ目をテンションローラ9の上にして停止し、テンションローラ9を移動してフレキシブル基材12の張力を緩める。シール7の内部に大気を入れ膨らまして脱着室と成膜室を雰囲気的に遮断する。脱着室を真空雰囲気から大気圧雰囲気にする。大気雰囲気になったら扉(図示せず)を開き、フレキシブル基材12のつなぎ目を外す。フレキシブル基材12の一端を巻き出しロール16の一端とつなぎ、他端を巻取りロール17の一端とつなぐ。扉を閉めて脱着室を大気圧雰囲気から真空雰囲気にする。真空雰囲気になったらシール7の内部を真空にして、フレキシブル基材12を所定の長さだけ巻き取る。再びシール7の内部に大気を入れ膨らまして脱着室と成膜室を雰囲気的に遮断する。脱着室を真空雰囲気から大気圧雰囲気にする。大気雰囲気になったら扉(図示せず)を開き、フレキシブル基材12をテンションローラ9上部付近で切断し、テンションローラ9を巻き込むようにつなぎ合わせる。扉を閉めて脱着室を大気圧雰囲気から真空雰囲気にする。真空雰囲気になったらシール7の内部を真空にしてフレキシブル基材12を搬送可能な状態にする。テンションローラ9を移動してフレキシブル基材12の張力を持たせる。成膜を開始する。
【0018】
さらに、本発明の一例を示す真空成膜装置は、図3に示すように、成膜ドラム1が2個、テンションローラ9が1個の場合である。成膜室2〜6が全方向にある。そのため、成膜室で発生するコンタミが成膜面に付着しない様、フレキシブル基材12が床面と垂直である方が好ましい。フレキシブル基材12の両端がテープ等でつながった状態で成膜を行なう。フレキシブル基材12の脱着はテンションローラ9の横で行なう。フレキシブル基材12のつなぎ目をテンションローラ9の横にして停止し、テンションローラ9を移動してフレキシブル基材12の張力を緩める。シール7の内部に大気を入れ膨らまして脱着室と成膜室を雰囲気的に遮断する。脱着室を真空雰囲気から大気圧雰囲気にする。大気雰囲気になったら扉(図示せず)を開き、フレキシブル基材12のつなぎ目を外す。フレキシブル基材12の一端を巻き出しロール16の一端とつなぎ、他端を巻取りロール17の一端とつなぐ。扉を閉めて脱着室を大気圧雰囲気から真空雰囲気にする。真空雰囲気になったらシール7の内部を真空にして、フレキシブル基材12を所定の長さだけ巻き取る。再びシール7の内部に大気を入れ膨らまして脱着室と成膜室を雰囲気的に遮断する。脱着室を真空雰囲気から大気圧雰囲気にする。大気雰囲気になったら扉(図示せず)を開き、フレキシブル基材12をテンションローラ9横付近で切断し、テンションローラ9を巻き込むようにつなぎ合わせる。扉を閉めて脱着室を大気圧雰囲気から真空雰囲気にする。真空雰囲気になったらシール7の内部を真空にしてフレキシブル基材12を搬送可能な状態にする。テンションローラ9を移動してフレキシブル基材12の張力を持たせる。成膜を開始する。
【0019】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係る発明により、成膜中に成膜面にローラが触れることがないことから、本発明の真空成膜装置は、下記の効果を奏するものである。
(1)膜がローラに付着してはがれることが無い。
(2)フレキシブル基材とローラ間のズレおよび圧縮力により膜に亀裂が生じることが無い。
(3)コンタミが挟みこまれて成膜面に埋め込まれたりすることが無い。
(4)ローラの傷が成膜面に転写されることが無い。
【0020】
また、本発明の請求項2に係る発明により、成膜中にフレキシブル基材に張力をかけ、複数の成膜方法で複数回成膜することができることから、本発明の真空成膜装置は、下記の効果を奏するものである。
(1)成膜による熱でフレキシブル基材が膨張しても、ローラ軸が移動することにより、成膜中にフレキシブル基材に張力をかけられることでたるみを防ぎ、均一な膜を成膜することができる。
(2)成膜時発生する熱によるフレキシブル基材の伸縮を吸収できるため、複数の成膜方法で複数回成膜することができる。成膜方法及び膜厚の組合せが自由にでき、多品種でなおかつ高品質の多層成膜フレキシブル基材の生産が可能となる。
(2)巻取り式真空成膜装置の場合と異なり、成膜ドラムの回転速度を変えることにより成膜時間の異なる成膜方法の組合せが可能となる。
(3)巻取り式真空成膜装置と比較して低い張力で成膜ができるため、フレキシブル基材伸縮による膜への悪影響が少ない。
【0021】
また、本発明の請求項3に係る発明により、フレキシブル基材を1個以上の成膜室を周囲に持つ成膜ドラム2個以上に巻き付け、少なくとも1つ軸が移動することにより、成膜中のフレキシブル基材に張力をかけることが可能となることから、本発明の真空成膜装置は、下記の効果を奏するものである。
(1)成膜ドラム2個以上で成膜を行なうため、多種類の多層成膜が可能となる。
【0022】
また、本発明の請求項4に係る発明により、フレキシブル基材を交換する部屋には巻き出しロールと巻取りロールを備え、成膜室との境に真空遮断弁を備え、該フレキシブル基材を交換する時に成膜室の真空を保つことができることから、本発明の真空成膜装置は、下記の効果を奏するものである。
(1)成膜室を大気圧雰囲気に戻す時間と排気する時間が無くなり、生産性が向上する。
(2)大気圧雰囲気に戻すことによるコンタミの舞い上がりが無くなり、品質が向上する。
(3)大気圧雰囲気に戻すことによる成膜条件の変動が無くなり、品質が安定する。
【0023】
さらに、本発明によれば、成膜中フレキシブル基材はテンションローラによって成膜ドラムから離されることから、本発明の真空成膜装置は、下記の効果を奏するものである。
(1)膜厚をコントロールする場合、膜厚計が必要である。フレキシブル基材が成膜ドラムに巻き付いた状態では、成膜ドラム表面の影響で正確に測定することができない。しかし、成膜中フレキシブル基材はテンションローラによって成膜ドラムから離されることにより、透過で膜厚を正確に測定することができる。
【0024】
以上のことから、本発明の真空成膜装置は、高品質の多層成膜フレキシブル基材を高能率で生産することが可能となる。フレキシブル基材は合成樹脂フィルムあるいはガラスが適している。多層成膜フレキシブル基材の用途としてはバリア性、反射防止性、静電防止性等の機能を有する機能性フレキシブル基材として、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、電子ペーパー等に使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例を示す真空成膜装置の概略断面図である。
【図2】本発明の一例を示す真空成膜装置の概略断面図である。
【図3】本発明の一例を示す真空成膜装置の概略断面図である。
【図4】従来のインライン式真空成膜装置の一例を示す概略断面図である。
【図5】従来のマルチチャンバ式真空成膜装置の一例を示す概略断面図である。
【図6】従来の巻取り式真空成膜装置の一例を示す概略断面図である。
【図7】従来の方法で、巻取り式真空成膜装置の成膜ドラムにシート状のフレキシブル基材をテープで貼り付けた状態を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
1・・・成膜ドラム
2・・・成膜室
3・・・成膜室
4・・・成膜室
5・・・成膜室
6・・・成膜室
7・・・シール
8・・・ガイドローラ
9・・・テンシションローラ
10・・・供給部
11・・・排出部
12・・・フレキシブル基材
13・・・真空遮断弁
14・・・真空遮断弁
15・・・ロボットハンド
16・・・巻き出しロール
17・・・巻取りロール
18・・・基材搬送台
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空成膜装置に係わり、さらに詳細には、シート状のフレキシブル基材を真空中で繰返し成膜し、成膜中に成膜面がローラもしくはシートに触れることがなく、かつ膜厚及び膜組成が均一な成膜面の品質及び生産性に優れる真空成膜装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の真空成膜装置について、図4〜7に基づいて説明する。
図4は、従来の真空成膜装置の一例で、インライン式真空成膜装置である。シート状の基材を供給部10で基材搬送台18に固定する。その時真空遮断弁13は閉じられている。基材固定後、供給部10の大気圧雰囲気が排気され成膜室2と同じ圧力になると、真空遮断弁13が開き基材搬送台18が成膜室2に移動する。その後真空遮断弁13が閉じ成膜が行なわれる。その後同様に各成膜室2〜4に搬送し成膜する。前進と後進を繰り返すことにより多層の成膜が可能である。このように従来のインライン式真空成膜装置は、隣り合った成膜室とその間を仕切る真空遮断弁、成膜室間を移動する基板搬送台18から成り立っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、図5は、従来の真空成膜装置の他の例で、マルチチャンバ式真空成膜装置である。シート状の基材を供給部10で基材搬送台18に固定する。その時真空遮断弁13は閉じられている。基材固定後、供給部10の大気圧雰囲気が排気され中央の部屋と同じ圧力になると、真空遮断弁13が開き基材搬送台18がロボットハンド15によって中央の部屋を通り成膜室2〜4のいずれかに搬送され、基材搬送台18上の基材が成膜される。ロボットハンド15による各成膜室2〜4への基材の出し入れを繰り返すことにより多層の成膜が可能である。このように従来のマルチチャンバ式真空成膜装置は、複数の成膜室とその成膜室に囲まれた部屋とその間を仕切る真空遮断弁と成膜室に基板を移動する基板搬送装置から成り立っている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、図6は、従来の真空成膜装置のさらに別の例で、巻取り式真空成膜装置である。ロール状の長尺フレキシブル基材を真空中で成膜ドラム1に巻き付けて成膜室2〜4を通し、連続して成膜を行なってから巻き取る。逆転して成膜することにより多層の成膜も可能である。このように従来の巻取り式真空成膜装置は、巻き出し部と成膜部と巻取り部から成り立っていて、連続して成膜が行なわれる(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
図7は、巻取り式真空成膜装置(図6)の成膜ドラム1にシート状のフレキシブル基材12をテープで貼りつけた状態である。成膜ドラム1を回転させながら繰返し成膜することにより多層の成膜が可能である。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−295551号公報
【特許文献2】
特開平10−303276号公報
【特許文献3】
特開2000−17437号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記図4、5に示した多層成膜に用いられる従来の真空成膜装置の場合、複数の成膜方法で繰返し成膜し、成膜面にローラが触れることがなく大気中に取り出すことは可能であるが、下記の問題点がある。
(1)シートを成膜室に出し入れする際、真空遮断弁を開く。そのため、圧力,温度等の成膜条件が変動し、最適条件になるまで時間がかかる。それにより生産性が問題となる。
(2)シートの温度を制御するシート固定板が平面状であると、固定板からシートが浮く場所が発生する。そのため温度ムラが生じ、それにより膜厚及び膜組成にムラができるため品質上の問題が生じる。
【0008】
また、上記図6に示した多層成膜に用いられる従来の真空成膜装置の場合、ロール状の長尺フレキシブル基材を供給して、複数の成膜方法で繰返し成膜することは可能である。成膜ドラム1に巻き付けて成膜するため、成膜ドラム1を均一に温度制御するとシートが密着しているためシート表面の温度も均一となる。また、連続して成膜できるため生産性も良い。しかし、下記の問題点がある。
(1)成膜面にローラが触れるため、成膜面の品質上に問題がある。
(2)多層成膜を行なうためには、巻取り式であるために各成膜方法の成膜時間を合わせる必要があり、成膜方法の組合せ、または膜厚の組合せが制限される。
(3)長尺フレキシブル基材を搬送するため高い張力が必要となり、フィルム伸縮による膜への悪影響が生じる。
【0009】
上記の欠点を回避するため、上記図7に示した多層成膜に用いられる従来の方法として、上記図6に示した従来の真空成膜装置を使用して、シート状のフレキシブル基材12を成膜ドラム1に貼り付けて、回転しながら成膜することにより繰り返し成膜する方法もある。
しかし、下記の問題点がある。
(1)成膜時に発生する熱によりフレキシブル基材が膨張し、そのためフレキシブル基材にたるみが生じる。そのことにより、フレキシブル基材の温度分布が不均一になり、その結果、膜の厚さ、組成等が不均一になる。
(2)膜厚をコントロールする場合、膜厚計が必要である。しかし、フレキシブル基材が成膜ドラム1に巻き付いた状態では、成膜ドラム表面の影響で正確に測定することができない。
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点を鑑みてなされたもので、シート状のフレキシブル基材を真空中で繰返し成膜し、成膜中に成膜面がローラもしくはシートに触れることがなく、かつ膜厚及び膜組成が均一な成膜面の品質に優れる、生産性を向上した真空成膜装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決しようとする手段】
上記目的を達成するために、すなわち請求項1に係る発明は、
シート状のフレキシブル基材の両端を貼り合わせて真空中で繰返し成膜し、成膜中に成膜面がローラもしくはシートに触れることがない真空成膜装置であって、1個以上の成膜室を周囲に持つ少なくとも1個の成膜ドラムと、少なくとも1個のローラ軸が移動可能な1個以上のテンションローラを具備することを特徴とする真空成膜装置である。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、
前記成膜ドラム1個と、前記テンションローラ2個とを具備し、該成膜ドラムとテンションローラにフレキシブル基材を巻き付け、少なくとも1個のテンションローラ軸が移動することにより、成膜中のフレキシブル基材に張力がかかることを特徴とする請求項1記載の真空成膜装置である。
【0013】
また、請求項3に係る発明は、
前記成膜ドラム2個と、前記テンションローラ1個とを具備し、該成膜ドラムとテンションローラにフレキシブル基材を巻き付け、少なくとも1つのドラム軸またはローラ軸が移動することにより、成膜中のフレキシブル基材に張力がかかることを特徴とする請求項1記載の真空成膜装置である。
【0014】
また、請求項4に係る発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空成膜装置において、前記フレキシブル基材を供給及び交換する部屋を備え、該部屋には巻出しロールと巻取りロール具備し、さらに該部屋と前記成膜室との境に真空遮断弁を具備し、フレキシブル基材を供給及び交換する時に成膜室の真空を保持することを特徴とする真空成膜装置である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい一実施態様について図面を参照して説明する。
図1〜図3は、本発明の一実施例としての真空成膜装置の概略断面図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の一例を示す真空成膜装置は、2個のガイドローラ8と2個のテンションローラ9を備えている。フレキシブル基材12の両端がテープ等でつながった状態で成膜を行なう。フレキシブル基材12の脱着は2個のガイドローラ8の間で行なう。フレキシブル基材12のつなぎ目を2個のガイドローラ8の間にして停止し、テンションローラ9を移動してフレキシブル基材12の張力を緩める。シール7の内部に大気を入れ膨らまして脱着室と成膜室を雰囲気的に遮断する。脱着室を真空雰囲気から大気圧雰囲気にする。大気雰囲気になったら扉(図示せず)を開き、フレキシブル基材12のつなぎ目を外す。フレキシブル基材12の一端を巻き出しロール16の一端とつなぎ、他端を巻取りロール17の一端とつなぐ。扉を閉めて脱着室を大気圧雰囲気から真空雰囲気にする。真空雰囲気になったらシール7の内部を真空にして、フレキシブル基材12を所定の長さだけ巻き取る。再びシール7の内部に大気を入れ膨らまして脱着室と成膜室を雰囲気的に遮断する。脱着室を真空雰囲気から大気圧雰囲気にする。大気雰囲気になったら扉(図示せず)を開き、フレキシブル基材12を2個のガイドローラ8上部付近で切断し、ガイドローラ8を巻き込むようにつなぎ合わせる。扉を閉めて脱着室を大気圧雰囲気から真空雰囲気にする。真空雰囲気になったらシール7の内部を真空にしてフレキシブル基材12を搬送可能な状態にする。テンションローラ9を移動してフレキシブル基材12の張力を持たせる。成膜を開始する。
【0017】
また、本発明の一例を示す真空成膜装置は、図2に示すように、テンションローラ9が1個だけの場合である。フレキシブル基材12の両端がテープ等でつながった状態で成膜を行なう。フレキシブル基材12の脱着はテンションローラ9の上で行なう。フレキシブル基材12のつなぎ目をテンションローラ9の上にして停止し、テンションローラ9を移動してフレキシブル基材12の張力を緩める。シール7の内部に大気を入れ膨らまして脱着室と成膜室を雰囲気的に遮断する。脱着室を真空雰囲気から大気圧雰囲気にする。大気雰囲気になったら扉(図示せず)を開き、フレキシブル基材12のつなぎ目を外す。フレキシブル基材12の一端を巻き出しロール16の一端とつなぎ、他端を巻取りロール17の一端とつなぐ。扉を閉めて脱着室を大気圧雰囲気から真空雰囲気にする。真空雰囲気になったらシール7の内部を真空にして、フレキシブル基材12を所定の長さだけ巻き取る。再びシール7の内部に大気を入れ膨らまして脱着室と成膜室を雰囲気的に遮断する。脱着室を真空雰囲気から大気圧雰囲気にする。大気雰囲気になったら扉(図示せず)を開き、フレキシブル基材12をテンションローラ9上部付近で切断し、テンションローラ9を巻き込むようにつなぎ合わせる。扉を閉めて脱着室を大気圧雰囲気から真空雰囲気にする。真空雰囲気になったらシール7の内部を真空にしてフレキシブル基材12を搬送可能な状態にする。テンションローラ9を移動してフレキシブル基材12の張力を持たせる。成膜を開始する。
【0018】
さらに、本発明の一例を示す真空成膜装置は、図3に示すように、成膜ドラム1が2個、テンションローラ9が1個の場合である。成膜室2〜6が全方向にある。そのため、成膜室で発生するコンタミが成膜面に付着しない様、フレキシブル基材12が床面と垂直である方が好ましい。フレキシブル基材12の両端がテープ等でつながった状態で成膜を行なう。フレキシブル基材12の脱着はテンションローラ9の横で行なう。フレキシブル基材12のつなぎ目をテンションローラ9の横にして停止し、テンションローラ9を移動してフレキシブル基材12の張力を緩める。シール7の内部に大気を入れ膨らまして脱着室と成膜室を雰囲気的に遮断する。脱着室を真空雰囲気から大気圧雰囲気にする。大気雰囲気になったら扉(図示せず)を開き、フレキシブル基材12のつなぎ目を外す。フレキシブル基材12の一端を巻き出しロール16の一端とつなぎ、他端を巻取りロール17の一端とつなぐ。扉を閉めて脱着室を大気圧雰囲気から真空雰囲気にする。真空雰囲気になったらシール7の内部を真空にして、フレキシブル基材12を所定の長さだけ巻き取る。再びシール7の内部に大気を入れ膨らまして脱着室と成膜室を雰囲気的に遮断する。脱着室を真空雰囲気から大気圧雰囲気にする。大気雰囲気になったら扉(図示せず)を開き、フレキシブル基材12をテンションローラ9横付近で切断し、テンションローラ9を巻き込むようにつなぎ合わせる。扉を閉めて脱着室を大気圧雰囲気から真空雰囲気にする。真空雰囲気になったらシール7の内部を真空にしてフレキシブル基材12を搬送可能な状態にする。テンションローラ9を移動してフレキシブル基材12の張力を持たせる。成膜を開始する。
【0019】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係る発明により、成膜中に成膜面にローラが触れることがないことから、本発明の真空成膜装置は、下記の効果を奏するものである。
(1)膜がローラに付着してはがれることが無い。
(2)フレキシブル基材とローラ間のズレおよび圧縮力により膜に亀裂が生じることが無い。
(3)コンタミが挟みこまれて成膜面に埋め込まれたりすることが無い。
(4)ローラの傷が成膜面に転写されることが無い。
【0020】
また、本発明の請求項2に係る発明により、成膜中にフレキシブル基材に張力をかけ、複数の成膜方法で複数回成膜することができることから、本発明の真空成膜装置は、下記の効果を奏するものである。
(1)成膜による熱でフレキシブル基材が膨張しても、ローラ軸が移動することにより、成膜中にフレキシブル基材に張力をかけられることでたるみを防ぎ、均一な膜を成膜することができる。
(2)成膜時発生する熱によるフレキシブル基材の伸縮を吸収できるため、複数の成膜方法で複数回成膜することができる。成膜方法及び膜厚の組合せが自由にでき、多品種でなおかつ高品質の多層成膜フレキシブル基材の生産が可能となる。
(2)巻取り式真空成膜装置の場合と異なり、成膜ドラムの回転速度を変えることにより成膜時間の異なる成膜方法の組合せが可能となる。
(3)巻取り式真空成膜装置と比較して低い張力で成膜ができるため、フレキシブル基材伸縮による膜への悪影響が少ない。
【0021】
また、本発明の請求項3に係る発明により、フレキシブル基材を1個以上の成膜室を周囲に持つ成膜ドラム2個以上に巻き付け、少なくとも1つ軸が移動することにより、成膜中のフレキシブル基材に張力をかけることが可能となることから、本発明の真空成膜装置は、下記の効果を奏するものである。
(1)成膜ドラム2個以上で成膜を行なうため、多種類の多層成膜が可能となる。
【0022】
また、本発明の請求項4に係る発明により、フレキシブル基材を交換する部屋には巻き出しロールと巻取りロールを備え、成膜室との境に真空遮断弁を備え、該フレキシブル基材を交換する時に成膜室の真空を保つことができることから、本発明の真空成膜装置は、下記の効果を奏するものである。
(1)成膜室を大気圧雰囲気に戻す時間と排気する時間が無くなり、生産性が向上する。
(2)大気圧雰囲気に戻すことによるコンタミの舞い上がりが無くなり、品質が向上する。
(3)大気圧雰囲気に戻すことによる成膜条件の変動が無くなり、品質が安定する。
【0023】
さらに、本発明によれば、成膜中フレキシブル基材はテンションローラによって成膜ドラムから離されることから、本発明の真空成膜装置は、下記の効果を奏するものである。
(1)膜厚をコントロールする場合、膜厚計が必要である。フレキシブル基材が成膜ドラムに巻き付いた状態では、成膜ドラム表面の影響で正確に測定することができない。しかし、成膜中フレキシブル基材はテンションローラによって成膜ドラムから離されることにより、透過で膜厚を正確に測定することができる。
【0024】
以上のことから、本発明の真空成膜装置は、高品質の多層成膜フレキシブル基材を高能率で生産することが可能となる。フレキシブル基材は合成樹脂フィルムあるいはガラスが適している。多層成膜フレキシブル基材の用途としてはバリア性、反射防止性、静電防止性等の機能を有する機能性フレキシブル基材として、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、電子ペーパー等に使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例を示す真空成膜装置の概略断面図である。
【図2】本発明の一例を示す真空成膜装置の概略断面図である。
【図3】本発明の一例を示す真空成膜装置の概略断面図である。
【図4】従来のインライン式真空成膜装置の一例を示す概略断面図である。
【図5】従来のマルチチャンバ式真空成膜装置の一例を示す概略断面図である。
【図6】従来の巻取り式真空成膜装置の一例を示す概略断面図である。
【図7】従来の方法で、巻取り式真空成膜装置の成膜ドラムにシート状のフレキシブル基材をテープで貼り付けた状態を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
1・・・成膜ドラム
2・・・成膜室
3・・・成膜室
4・・・成膜室
5・・・成膜室
6・・・成膜室
7・・・シール
8・・・ガイドローラ
9・・・テンシションローラ
10・・・供給部
11・・・排出部
12・・・フレキシブル基材
13・・・真空遮断弁
14・・・真空遮断弁
15・・・ロボットハンド
16・・・巻き出しロール
17・・・巻取りロール
18・・・基材搬送台
Claims (4)
- シート状のフレキシブル基材の両端を貼り合わせて真空中で繰返し成膜し、成膜中に成膜面がローラもしくはシートに触れることがない真空成膜装置であって、1個以上の成膜室を周囲に持つ少なくとも1個の成膜ドラムと、少なくとも1個のローラ軸が移動可能な1個以上のテンションローラを具備することを特徴とする真空成膜装置。
- 前記成膜ドラム1個と、前記テンションローラ2個とを具備し、該成膜ドラムとテンションローラにフレキシブル基材を巻き付け、少なくとも1個のテンションローラ軸が移動することにより、成膜中のフレキシブル基材に張力がかかることを特徴とする請求項1記載の真空成膜装置。
- 前記成膜ドラム2個と、前記テンションローラ1個とを具備し、該成膜ドラムとテンションローラにフレキシブル基材を巻き付け、少なくとも1つのドラム軸またはローラ軸が移動することにより、成膜中のフレキシブル基材に張力がかかることを特徴とする請求項1記載の真空成膜装置。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空成膜装置において、前記フレキシブル基材を供給及び交換する部屋を備え、該部屋には巻出しロールと巻取りロール具備し、さらに該部屋と前記成膜室との境に真空遮断弁を具備し、フレキシブル基材を供給及び交換する時に成膜室の真空を保持することを特徴とする真空成膜装置。
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Applications Claiming Priority (1)
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-
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- 2003-04-03 JP JP2003100106A patent/JP2004307890A/ja not_active Withdrawn
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