JP2004307753A - ガス透過性に優れた包装用フィルム及びその製造方法 - Google Patents

ガス透過性に優れた包装用フィルム及びその製造方法 Download PDF

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崎 宏 宮
Masaki Inaoka
岡 雅 樹 稲
Teruaki Nakano
野 輝 明 中
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Abstract

【課題】生鮮食品の鮮度を長期間保持できるガス透過性に優れた包装用フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】下記の成分(A)及び成分(B)を配合し溶融混練して得られた樹脂組成物より構成されていることを特徴とする、ガス透過性に優れた包装用フィルム、並びに、包装用フィルムの製造方法。
Figure 2004307753

【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス透過性に優れた包装用フィルム及びその製造方法に関するものである。更に詳細には、野菜や果物等の生鮮食料品を包装した際に、野菜や果物等の青果物を余り活発な状態で生かさず、且つ、青果物を殺さない程度の適量の酸素(空気)供給量に制限することによって、青果物の鮮度を長期間保持するためのガス透過性に優れた包装用フィルム及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
野菜や果物等の収穫された青果物は、収穫された後においてもしばらくの間活発に生き続けている。この様に活発に生き続けている青果物は、微生物に対しても抵抗力があるので、容易に腐敗し難くなっている。
しかし、収穫された後の青果物は、時間の経過と共に次第に弱くなって、徐々に活力を失ってくると微生物に対する抵抗力が低下して、微生物によって細胞や組織が破壊され易くなり、徐々に微生物によって細胞や組織が破壊されて、やがては細胞や組織が崩壊する腐敗にまで進行してしまう。
具体的には、例えば、密閉された状態の包装袋内で青果物を保存すると、青果物は包装袋内の酸素を消費してしまうと酸素の無い環境下になってしまって、呼吸ができなくなる為に、青果物の生理作用が異常な状態となり、青果物にとって有害な物質であるアルコールやアルデヒドが生産されるようになる。
それ故、この様な青果物に有害なアルコールやアルデヒドが青果物自体の中に蓄積されると、異味、異臭、変色等を発生しながら、急速に細胞が死滅して、腐敗が進行するようになる。
【0003】
一方、野菜や果物等の収穫された後の青果物は、生きているが故に、呼吸をしており、それによって青果物中の人体に有益な成分である糖類や有機酸類が消費されてしまう。
しかし、この様な青果物中の糖類や有機酸類の消費は、青果物が畑に植えられている間は、上記呼吸によって養分が消費されたとしても光合成により新たな養分が製造されて、より多くの糖類や有機酸類が生産されるが、収穫後においてはこの様な新たな養分が製造されることはないことから、青果物の体内に蓄積されている糖類や有機酸類が消費されてしまって、その結果として青果物としての品質低下が生じる。
また、上記の如く包装袋内の酸素が大量に存在して青果物の呼吸が盛んであると、それに関連して水分等の他の成分も消費されてしまうことから、これらの点からも青果物の急速な品質低下の原因の一つとなっている。
【0004】
従って、近年においては、野菜や果物等の生鮮食料品が消費されるまでは、これら青果物を殺さない程度の適量の空気(酸素)を供給して、青果物を余り活発な状態で生かさない様に空気(酸素)の供給量を制限することによって、青果物の呼吸を適度に抑えて保存しようとする青果物保存法が、野菜や果物等の生鮮食料品を高品質で保持することができる青果物保存方法として広まっており、この様な青果物保存方法に使用される包装がMA(Modified Atmosphere)包装法として知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
この様なMA包装法に用いられる包装材料としては、以下の[1]〜[3]に示すMA包装用フィルムが知られている。
[1] 平均直径100μm以下、1000個/mの貫通孔を形成して、水蒸気透過量800g/m・24h、酸素透過量200,000cc/m・24hとしたフィルムが「P−プラス」として住友ベークライト(株)にて販売されている(例えば、非特許文献2参照)。
[2] 有機系フイルムに多数の微細な未貫通孔を500個/cm2以上の密度で一様に穿孔した多孔質有機系フイルムを青果物鮮度保持フィルムとして用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
そして、開口幅0.5〜300μm、500〜200,000個/cmの未貫通孔を形成して、未貫通孔の残存厚さ10μm以下として、酸素透過量6,000〜20,000cc/m・24hとしたフィルムが「GFフィルム」として東洋紡績(株)にて販売されている。
[3] ポリメチルペンテンフィルムに無孔のポリエチレン樹脂層を積層してフイルム全体の酸素及び二酸化炭素透過性を調整したガス透過性調製方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
そして、ポリメチルペンテン樹脂層50μm/接着性ポリマー層/ポリオレフィン樹脂層からなる共押出三層Tダイフィルムが、酸素透過量42,000cc/m・24h及び二酸化炭素透過量120,000cc/m・24hを備えているフィルムとして「OTフィルム」の名称で大塚テクノ(株)より販売されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来のMA包装用フィルムは、貫通孔や未貫通孔を形成したり、積層したりしているので、これらの成形加工費が必要とされたり、ポリメチルペンテン樹脂の如き高価な樹脂を使用しなければならないために、得られるMA包装用フィルムは高価なものであった。
従って、上記の如き高価な包装用フィルムであると、経済的な制約が大であることから、広範囲に用途を広げることができなかった。
また、一般に、ポリエチレンの密度や重合方法を変更することによりガス透過度を調整することも知られているし、そのフィルム厚みによってガス透過度を調整することも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−47559号公開公報、
【特許文献2】
特開平6−209701号公開公報、
【特許文献3】
特開平6−165636号公開公報、
【非特許文献1】
長谷川美典、他著、「野菜の鮮度保持マニュアル」、発行所:(株)流通システム研究センター、1998年3月27日発行、
【非特許文献2】
住友ベークライト(株)、鮮度保持フィルム「p−プラスフィルム」カタログ、「微孔フィルムによるMA包装」、1996年10月30日発行、
【0008】
しかし、ポリエチレンフィルムを用いて実用可能な厚みの上記MA包装に適する8,000cc/m・24h以上の酸素透過性、及び、20,000cc/m・24h以上の二酸化炭素透過性を備えた、ガス透過性に優れたフィルムを得ることは困難であるのが現状である。
また、異種の樹脂を混練してフィルム化すれば、結晶系の違いやラメラ晶の違いがあることから、ガス透過性に優れたフィルムが得られるものとして試みられたが、異種の樹脂を混練した後に冷却されて結晶化が開始されると、異種の樹脂の結晶化速度の違いにより、最初に結晶化される樹脂が異物として形成されてしまうために、異物の混入したフィルムを成形すると、透明性が低下したり、引き裂き性が低下する等のフィルムとしての性能が著しく低下して、透明な実用性のあるフィルムとして形成することは不可能なことであった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、オレフィン系重合体樹脂に、高酢酸ビニル含量のエチレン・酢酸ビニル共重合体の鹸化物よりなる、低融点のエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂を溶融混練して得られた樹脂組成物のフィルムは、フィルムを構成する両結晶性樹脂の分子鎖が直鎖状のオレフィン系重合体樹脂と、側鎖に水酸基を多量に含むエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂との違いがあることから、両フィルムの重合体の間には十分な相溶性が無く、結晶形成阻害によりラメラ晶の発生に変化を与え、フィルム中の非晶領域にガスが透過できるような微細な隙間を形成して、ガス透過性を顕著に向上させることができるのではないかとの知見に基づき本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明のガス透過性に優れた包装用フィルムは、下記の成分(A)及び成分(B)からなる樹脂組成物より構成されていること、を特徴とするものである。
Figure 2004307753
また、本発明のもう一つの発明であるガス透過性に優れた包装用フィルムの製造方法は、オレフィン系重合体樹脂100重量部に対して、融点が180℃以下のエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂0.5〜15重量部を配合し溶融混練して得られた樹脂組成物をフィルム状に成形すること、を特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
[I] ガス透過性に優れた包装用フィルム
(1) 樹脂組成物
(A) 構成成分
本発明のガス透過性に優れた包装用フィルムは、下記の成分(A)及び(B)からなる樹脂組成物から構成されていることが重要である。
【0012】
(a) オレフィン系重合体樹脂(成分(A))
本発明のガス透過性に優れた包装用フィルムを構成するオレフィン系重合体樹脂(成分(A))としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン・プロピレン共重合体樹脂等のエチレン系重合体樹脂、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体樹脂、プロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体樹脂等のプロピレン系重合体樹脂、4−メチル−ペンテン−1重合体樹脂等の炭素数2〜6のα−オレフィンを単独重合又は共重合することにより得られるオレフィン系重合体樹脂を挙げることができる。
これらオレフィン系重合体樹脂は一般に融点が100〜170℃、好ましくは110〜130℃の樹脂を使用するのが良い。
これらオレフィン系重合体樹脂の中でも、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のエチレン系重合体樹脂を、特に直鎖状低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
これらオレフィン系重合体樹脂は、二種以上の樹脂を混合して使用することができる。
中でも、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)70〜90重量%と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)30〜10重量%との割合で配合した、好ましくは直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)75〜85重量%と、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)25〜15重量%との割合で配合した混合樹脂を基材樹脂として用いることが成形安定性の点が改良されることから好ましい。
【0013】
(b) エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂 ( 成分(B))
本発明のガス透過性に優れた包装用フィルムを構成する成分(B)のエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂(成分(B))としては、融点が180℃以下、好ましくは155〜175℃、特に好ましくは160〜170℃のエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂(以下、単に「EVOH」と略記することがある。)を用いることが重要である。
上記融点のエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂は、一般にエチレン含量が80重量%未満、水酸基含量が20重量%超過のもの、好ましくはエチレン含量が30〜50重量%、水酸基含量が70〜50重量%のもの、特に好ましくはエチレン含量が35〜45重量%、水酸基含量が65〜55重量%のものである。
融点が上記温度範囲を超過する様な高融点のビニルアルコール単位が高含量のエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂を使用すると、フィルム成形をした後でフィルム表面が冷却されてくると、成分(A)のオレフィン系重合体樹脂の融点と成分(B)のエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂の融点との温度差が大き過ぎることから、成分(B)のエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂の固化が先に始まって、成分(A)のオレフィン系重合体樹脂と分離してしまうことから、良好な性状のフィルムを得ることができなくなる。
従って、前記成分(A)のオレフィン系重合体樹脂の融点の温度となるべく大きな温度差のない融点を示すことができる融点が180℃以下のエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂を用いれば上記の現象が生じ難くなり、良好な結果が得られるので、一般には前記成分(A)のオレフィン系重合体樹脂の融点との温度差が50℃以内のエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂であることが望ましい。
【0014】
製造法
上記エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂は、一般にエチレンと酢酸を反応させて酢酸ビニルエステル単量体を合成した後、この酢酸ビニルエステル単量体をエチレンと共重合させてエチレン・酢酸ビニル共重合体を得る。
そして、このエチレン・酢酸ビニル共重合体を苛性ソーダ等のアルカリや酸の存在下に側鎖として存在するアセトキシ基部分を十分に加水分解させて、該共重合体中に水酸基を実質的に100%導入させることによりエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂を製造することができる。
【0015】
(B) 配合割合
上記成分(A)のオレフィン系重合体樹脂100重量部に対して、成分(B)の融点が180℃以下のエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂を0.5〜15重量部、好ましくは1〜13重量部、特に好ましくは3〜8重量部の範囲内で用いられる。
成分(B)の融点が180℃以下のエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂が上記範囲未満であるとガス透過性が向上しないとの問題が生じる。また、上記範囲を超過すると透明性、フィルム強度が極端に低下するとの問題が生じる。
【0016】
(C) 付加的成分(任意成分)
本発明のガス透過性に優れた包装用フィルムに用いられる樹脂組成物は、上記の成分(A)及び成分(B)を必須の構成成分として含んでなるものであるが、この様な樹脂組成物に本発明の効果を大きく損なわない範囲で、必要に応じて、更に酸化防止剤、安定剤、分散剤、滑剤、アンチブロッキング剤、顔料、防曇剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤等の付加的成分を配合することができる。
これら付加的成分の具体例としては、例えば、トリス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系及びチオエーテル系等の酸化防止剤、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルシン酸アミド、エチレンビスステアロアミド等のアミド類、シリコンオイル等の滑剤、脂肪酸のグリセリンエステル、ジエタノールアミン系等の帯電防止剤、、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ホルムアミジン系等の紫外線吸収剤ヒンダードアミン系等の光安定剤等を挙げることができる。
【0017】
(2) 形 状
(A) フィルムの肉厚
本発明のガス透過性に優れた包装用フィルムは、上記樹脂組成物により形成されたフィルムであることから、フィルムの肉厚が一般に3〜200μm、好ましくは10〜100μm、特に好ましくは30〜50μmである。
包装用フィルムのガス透過性はフィルムの肉厚によって異なり、フィルムの肉厚を薄くすることによりガス透過性を向上させることができる。
これら包装用フィルムは、使用される野菜や果物等の収穫された青果物の種類により呼吸速度の大きな青果物と呼吸速度の小さな青果物とが異なることから、これら青果物の種類によって適宜好適な酸素透過性及び二酸化炭素透過性の肉厚の包装用フィルムが選択される。
従って、一般的には、呼吸量の大きな豆類、つまもの類、菌茸類では肉厚を薄くし、呼吸量の少ない根茎類、果物では肉厚を厚く、呼吸量が普通の葉物類がその中間の肉厚で、呼吸量が多めの果菜類ではやや厚めの肉厚とするので、根茎類が30〜50μm、豆類が20〜30μm、果菜類が20〜40μm、つまもの類が20〜30μm、菌茸類が20〜30μm、葉物類が30〜40μm、リンゴ、梨、蜜柑、サクランボ、バナナ、プリンスメロン、葡萄、西瓜、栗、柿、白桃、ソルダム、ネクタリン、プラム等の果物が30〜50μmの肉厚にしたものを使用するのが好ましい。
【0018】
(B) 物 性
(a) 結晶構造
上記成分(A)のオレフィン系重合体樹脂と成分(B)の融点が180℃以下のエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂との配合物からなる樹脂組成物は、分子構造的には以下に示す様な明らかに異なる結晶構造のものが混在している状態のものとなっているとものと推定している。
すなわち、オレフィン系重合体樹脂は、一般に分子構造学的にはポリエチレンの様な分子鎖が平面ジグザグ構造をとり、その結晶構造であるラメラ晶の集合体による球晶は斜方晶となるのが普通である。
これに対して、もう一方の成分であるエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)は、その分子鎖中にエチレン単位とビニルアルコールのビニル基単位がポリマーの主鎖中に導入されていることから、このエチレン単位とビニル基単位の構造がオレフィン系重合体樹脂のオレフィン単位の構造と類似しているので、適度な相溶性を備えているが、側鎖に水酸基を有しており、しかも、高融点であるので、オレフィン系重合体樹脂の斜方晶からなる結晶構造中にそれとは若干異なる結晶構造を示すエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂が微細に分散されている状態のものとなり、これら両成分の樹脂の結晶形の違いから、両結晶の境界面に隙間が生じて、その隙間がガス透過性を向上させているのではないかと推定している。
【0019】
(b) ガス透過性
本発明のガス透過性に優れた包装用フィルムは、上記樹脂組成物により形成されたフィルムで、上記肉厚のフィルムとすることにより、酸素透過性が6,500〜20,000cc/m・24h、好ましくは6,500〜15,000cc/m・24h、特に好ましくは7,000〜10,000cc/m・24hで、呼吸量の多い青果物においては酸素透過度が20,000cc/m・24h程度のものを用い、呼吸量の少ない青果物においては7,000cc/m・24h程度のものを用いる。
また、二酸化炭素透過度が15,000〜80,000cc/m・24h、好ましくは20,000〜60,000cc/m・24h、特に好ましくは25,000〜50,000cc/m・24hで、呼吸量の多い青果物においては二酸化炭素透過度が60,000〜80,000cc/m・24h程度のものを用い、呼吸量の少ない青果物においては20,000〜30,000cc/m・24h程度のものを用いる。
【0020】
(c) 透明性
本発明のガス透過性に優れた包装用フィルムは、ガス透過性に優れているにも拘わらず透明性が良好でヘイズが、一般に8〜15、好ましくは8〜13、特に好ましくは8〜12の値を示すものである。
【0021】
(d) 機械的強度
本発明のガス透過性に優れた包装用フィルムは、ガス透過性に優れているにも拘わらず機械的強度が良好で、引張強度が一般にMD方向で20〜50MPa、好ましくは25〜45MPa、特に好ましくは30〜45MPaの、引裂強度が一般にMD方向で300〜600N/cm、好ましくは350〜570N/cm、特に好ましくは400〜550N/cmの、引張伸度が一般にMD方向で350〜600%、好ましくは380〜550%、特に好ましくは400〜500%の、引張弾性率が一般にMD方向で200〜350MPa、好ましくは200〜330MPa、特に好ましくは200〜300MPaの、値を示すものである。
【0022】
[II] 包装用フィルムの製造方法
(1) 原材料
本発明のガス透過性に優れた包装用フィルムに用いられる原材料としては、下記の成分(A)及び(B)を用いることが重要である。
【0023】
(A) オレフィン系重合体樹脂(成分(A))
本発明のガス透過性に優れた包装用フィルムを構成するオレフィン系重合体樹脂(成分(A))としては、前記「[I] ガス透過性に優れた包装用フィルム」の「(1) 樹脂組成物」の「(a) オレフィン系重合体樹脂(成分(A)」に記載のものと同一のものを挙げることができる。
【0024】
(B) エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂( 成分(B))
本発明のガス透過性に優れた包装用フィルムを構成するエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂( 成分(B))としては、前記「[I] ガス透過性に優れた包装用フィルム」の「(1) 樹脂組成物」の「(b) エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂( 成分(B))」に記載のものと同一のものを挙げることができる。
【0025】
(C) 付加的成分(任意成分)
上記必須成分以外に、付加的成分(任意成分)として、前記「[I] ガス透過性に優れた包装用フィルム」の「(1) 樹脂組成物」の「(C) 付加的成分(任意成分)」に記載のものと同一のものを使用することもできる。
【0026】
(2) 溶融混練
上記成分(A)のオレフィン系重合体樹脂と成分(B)のエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂との配合物を溶融混練することにより樹脂組成物を製造する。
溶融混練は一般に一軸又は二軸押出機、或いは、混練機を用いて、一般に180〜220℃、好ましくは185〜210℃、特に好ましくは190〜200℃の温度で混練することにより行われる。
溶融混練は上記オレフィン系重合体樹脂と融点が180℃以下のエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂とが十分に溶融した状態で混練する必要性から上記温度範囲で溶融されることが望ましい。
【0027】
(3) フィルム成形
上記樹脂組成物を、公知のフィルム成形であるTダイ成形、インフレーション成形等によりフィルム状に成形する。
【0028】
[III] 用 途
この様な本発明のガス透過性に優れた包装用フィルムは、その用途としてジャガイモ、タマネギ、人参、大根、蕪、サツマイモ、里芋等の根茎類、インゲン、空豆、枝豆、エンドウ豆等の豆類、キュウリ、トマト、茄子、ピーマン、ブロッコリー、トウモロコシなどの果菜類、もやし、カイワレ大根、大葉等のつまもの類、生椎茸、ホンシメジ、エノキ、ナメコ、ヒラタケ等の菌茸類、キャベツ、白菜、ほうれん草、小松菜、チンゲンサイ、春菊、レタス、サラダ菜、長ネギ、白ネギ、ニラ、ワケギ等の葉物類等の野菜や、リンゴ、梨、蜜柑、サクランボ、バナナ、プリンスメロン、葡萄、西瓜、栗、柿、白桃、ソルダム、ネクタリン、プラム等の果物等の収穫された青果物を包装して保存するための袋として使用されるのが一般的で、これら野菜や果物等の収穫された青果物を袋内に充填した後、ヒートシールして密閉して包装するのが普通である。
【0029】
【実施例】
以下に示す実施例及び比較例によって、本発明を更に具体的に説明する。
[I] 評価方法
(1) ガス透過性
(A) 酸素透過性(cc/m・24h)
酸素透過性の測定は、ジーエルサイエンス(株)製混合ガス透過率測定装置GPM−250を使用して測定した。
測定環境条件は、温度23℃、相対湿度0%、サンプル面積50cmにて実施した。
【0030】
(B) 二酸化炭素透過性(g/m・24h)
二酸化炭素透過性の測定は、ジーエルサイエンス(株)製混合ガス透過率測定装置GPM−250を使用して測定した。
測定環境条件は、温度23℃、相対湿度0%、サンプル面積50cmにて実施した。
【0031】
(2) 機械的性質
フィルムの縦方向(MD)及び横方向(TD)における機械的性質を測定した。
(A) 引張強度
引張強度(MPa)は、(株)オリエンテック製、定速伸張型引張試験機「テンシロン」RTC−1210Aによって測定した。
(B) 引裂強度
引裂強度(N/cm)は、テスター産業(株)製、エルメンドルフ引張試験器によって測定した。
(C) 引張伸度
引張伸度(%)は、(株)オリエンテック製、定速伸張型引張試験機「テンシロン」RTC−1210Aによって測定した。
(D) 引張弾性率
引張弾性率(MPa)は、(株)オリエンテック製、定速伸張型引張試験機「テンシロン」RTC−1210Aによって測定した。
【0032】
(3) その他の物性
(A) 融 点
融点(℃)は、セイコー電子工業(株)製、示差走査熱量計(DSC)によって測定した。
(B) ヘイズ
ヘイズ(%)は、日本電色工業(株)製、濁度計によって測定した。
【0033】
(4) カットキャベツの保存性についての評価
実際にカットキャベツを包装して、カットキャベツの10日間保存した後の「見た目」「臭い」を評価した。
(A) 測定方法
フィルムを表2に示す厚みに成形し、表2に示す袋のサイズに加工して、生鮮野菜としてカットキャベツを用い、カットキャベツを洗浄、乾燥後、計量し、熱シールにて密封した。その後、5℃の温度下でカットキャベツを保存し、10日間保存後の「見た目」「臭い」を評価した。
【0034】
(B) 評価方法
カットキャベツの評価は、下記の見た目と臭いの基準により評価した。
見た目
見た目は目視によって評価した。
○:変化なし
△:緑〜黄緑色
×:黄色〜茶褐色
臭 い
臭いは5人による袋内の臭気確認によって評価した。
○:無臭
△:1人以上臭気を感じた。
×:悪臭(発酵臭)
効 果
効果は「見た目」と「臭い」の総合判断によって評価した。
効果あり:×のないもの。
効果なし:×のあるもの。
【0035】
[II] 実施例及び比較例
実施例1
密度が0.915の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)80重量部と密度が0.927の高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)20重量部とを混ぜ合わせた樹脂100重量部に対して、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂(日本合成化学工業(株)製エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂「ソアノール AT4403」、エチレン含有量44モル%、密度1.14、融点164℃、結晶化温度144℃、ガラス転移温度55℃)5重量部を添加し、インフレーションフィルム成形機を用いて、195℃の成形温度でインフレーション成形によって肉厚30μmのフイルムを得た。
得られたフィルムのガス透過性、機械的強度等についての評価を行った。その結果を表1に示す。
また、このフィルムを実際に生鮮野菜の包装に適用して評価を行った。その結果を表2に示す。
【0036】
実施例2〜7及び比較例1〜4
表1に示すLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン樹脂)と、LDPE(高圧法低密度ポリエチレン樹脂)よりなる基材樹脂に、表1に示すEVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂)よりなる配合樹脂を配合し、溶融混練した後で実施例1と同様にして表1に示す如きフィルムを成形した。
得られたフィルムのガス透過性、機械的強度等についての評価を行った。その結果を表1に示す。
また、これらのフィルムを実際に生鮮野菜の包装に適用して評価を行った。その結果を表2に示す。
【0037】
【表1】
Figure 2004307753
【0038】
【表2】
Figure 2004307753
【0039】
【発明の効果】
このような本発明のガス透過性に優れた包装用フィルムは、通常のオレフィン系重合体樹脂のフィルムに比較して、酸素、二酸化炭素等のガス透過性に優れ、特に酸素透過性が6,500〜20,000cc/m・24hのものであることから、青果物を余り活発な状態で生かさず、且つ、青果物を殺さない程度の適量の酸素(空気)供給量に制限することによって、青果物の呼吸を適度に抑えて鮮度を長時間保存することができるMA(Modified Atmosphere)包装法に適用することができるので、野菜や果物等の収穫された青果物等の生鮮食料品の鮮度保持用の包装用フィルムとして使用することができるし、透明性や機械的強度においても優れたフィルムである為に、工業的に極めて有用なものである。

Claims (9)

  1. 下記の成分(A)及び成分(B)からなる樹脂組成物より構成されていることを特徴とする、ガス透過性に優れた包装用フィルム。
    Figure 2004307753
  2. 成分(A)のオレフィン系重合体樹脂の融点とエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂の融点との温度差が50℃以内である、請求項1に記載のガス透過性に優れた包装用フィルム。
  3. ガス透過性が、酸素透過量6,500〜20,000cc/m・24h及び二酸化炭素透過量15,000〜80,000cc/m・24hである、請求項1又は2に記載のガス透過性に優れた包装用フィルム。
  4. フィルムの肉厚が10〜100μmである、請求項1〜3のいずれかに記載のガス透過性に優れた包装用フィルム。
  5. 成分(A)のオレフィン系重合体樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂70〜90重量%及び高圧法低密度ポリエチレン樹脂30〜10重量%の混合物である、請求項1〜4のいずれかに記載のガス透過性に優れた包装用フィルム。
  6. オレフィン系重合体樹脂100重量部に対して、融点が180℃以下のエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂0.5〜15重量部を配合し溶融混練して得られた樹脂組成物をフィルム状に成形することを特徴とする、ガス透過性に優れた包装用フィルムの製造方法。
  7. 成分(A)のオレフィン系重合体樹脂の融点とエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂の融点との温度差が50℃以内である、請求項6に記載のガス透過性に優れた包装用フィルムの製造方法。
  8. オレフィン系重合体樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂70〜90重量%及び高圧法低密度ポリエチレン樹脂30〜10重量%の混合物である、請求項6又は7に記載のガス透過性に優れた包装用フィルムの製造方法。
  9. 溶融混練が180〜220℃の温度範囲内で行われたものである、請求項6〜8のいずれかに記載のガス透過性に優れた包装用フィルムの製造方法。
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