JP2004307652A - メタロセン触媒の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】メタロセン触媒の製造の際に、炭化水素溶媒中の不純物を制御して、チーグラー・ナッタ触媒の触媒製造後、及びその触媒によるオレフィン重合後の各回収溶媒を使用しても、高い触媒活性のメタロセン触媒を得て、それにより、メタロセン触媒によるオレフィン重合の大規模で効率的かつ経済的な工業化を具現化する。
【解決手段】メタロセン触媒の製造の際に、炭化水素溶媒中の不純物の有機ハロゲン化合物と酸素含有化合物の存在量を制御して、それらのモル数とメタロセン錯体の中心金属のモル数との比を0.1以下とする。
【解決手段】メタロセン触媒の製造の際に、炭化水素溶媒中の不純物の有機ハロゲン化合物と酸素含有化合物の存在量を制御して、それらのモル数とメタロセン錯体の中心金属のモル数との比を0.1以下とする。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、メタロセン触媒を製造する方法に関するものである。より詳しくは、メタロセン錯体金属に対する被毒物質となる化合物を制御する、メタロセン触媒の製造方法に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
近来においては、ポリオレフィンとりわけポリプロピレンが、その簡易な成形性や優れた機械的かつ化学的性質あるいは顕著な経済性などにより、高分子工業分野で重要な役割を果たしている。特に、チーグラー・ナッタ触媒の実現により結晶構造における高い立体規則性や触媒における高活性とその持続性などが具現化され、その後の触媒担持体や電子供与体あるいは珪素化合物などの併用により、その機能がいっそう高められ(例えば、特許文献1を参照)、さらに立体規則性や触媒活性などにおいてチーグラー・ナッタ触媒は改良が続けられている。
【0003】
さらに、最近においては、チーグラー・ナッタ触媒を超えるものとして、共役五員環などを少なくとも一つ以上有する遷移金属化合物を使用した、いわゆるメタロセン触媒が開発され、オレフィンの触媒重合において、触媒活性が非常に高く特異な立体規則性が得られること、有機溶媒への可溶性あるいは狭い分子量分布の実現などの観点から、高分子工業界において注目され、その工業化や活発な改良研究がなされ続けられている。
しかしながら、オレフィン重合分野においては現時点において、その経済性などの総合的な理由により依然としてチーグラー触媒を利用したオレフィンの重合方法が主として採用され、メタロセン触媒は未だに開発のいわゆる過渡期にあるといえる状況である。
【0004】
すなわち、メタロセン触媒の優れた特性を工業的に利用すべく、スラリー重合などの不均一系の反応への適用や高価なアルモキサンの代替物の採用あるいは純度の高い触媒を簡易に製造する技術の開発などが求められ、それに応じて配位子や遷移金属あるいは助触媒や第三成分などの改良について多くの提案がなされている。
特に、メタロセン触媒は、チーグラー・ナッタ触媒に比して重合反応系における不純物により敏感であり、そのためにモノマーや触媒などの原料及び重合反応系における不純物に対する制御や管理が厳しく要求され、メタロセン系触媒によるオレフィン重合の大規模で効率的な工業化への隘路となっている。
【0005】
したがって、不純物を除去して重合効率を高めるために、原料系の改良手段は最近に数多く提案されており、例えば、触媒成分から不純物を除去するためには、不純物のエーテル系化合物を含有するメタロセン化合物をハロゲン化炭化水素溶媒などで洗浄して精製し重合活性を高める方法(特許文献2を参照)、不純物を含む遷移金属・芳香族系化合物を多孔性カーボン充填液体クロマトにより分画して精製する方法(特許文献3を参照)、有機溶媒を使用して金属ハロゲン化物などの無機不純物を分離し、粒状吸着性物質により有機不純物を除去する方法(特許文献4を参照)などが開示されている。
さらに、不純物を除去して重合効率を高めるために、具体的な不純物の例示は特にないものの、不純物を除去する除去剤(スカベンジャー)として有機アルミニウム化合物を使用することも開示されている(例えば、特許文献5を参照)。この技術では、触媒の解毒剤である除去剤の有機アルミニウムとしては、トリエチルアルミニウムやトリイソブチルアルミニウムなどが主として使用されている。
なお、この場合において、従来は、上記有機アルミニウム化合物で掃去できない触媒毒はないと考えられていた。しかし、それにもかかわらず、後述するように本発明者らの詳細な検討により、意外にも、ハロゲン含有化合物及び酸素含有化合物がメタロセン触媒にとって大きな触媒毒となることが見出された。
【0006】
一方、メタロセン触媒の工業的な活用に対するもうひとつの隘路ともいえる経済性の改良のために、メタロセン触媒の製造における経費を下げることも重要であり、そのために、触媒製造後や重合反応後の回収溶媒や未反応ガスを触媒製造や重合反応に再使用することも必要であって、これは廃溶媒や廃ガスによる環境汚染の防止のための観点からもなされるべきことである。
そのために、例えば、水洗除去工程と蒸留工程及び吸着工程さらに水添工程を経て精製する重合使用溶媒の精製方法(特許文献6を参照)、再使用すべき溶媒を吸着剤と接触させてメタロセン化合物由来成分を吸着除去する方法(特許文献7を参照)、再使用される原料ガスの精製のために重合反応後の未反応ガスを固定層式吸着塔に通して不純物の除去を行うことで、メタロセン触媒の活性低下を防ぐ方法(特許文献8を参照)などが開示されている。
【0007】
そして、以上のいずれの方法においても、不純物は十分には解毒ないしは除去されないようで、触媒活性や重合効率は十分に完全なものとはなっていない。また、メタロセン触媒の触媒毒物質を特定して、それに対して有効な手段を採用する方法も未だ実現化されていない。
【0008】
【前記した従来技術における各特許文献の一括表示】
特許文献1:特開平6−206924号公報(特許請求の範囲の請求項1、段落0013、段落0063)
特許文献2:特開平7−97388号公報(要約、特許請求の範囲の請求項1)
特許文献3:特開平9−47602号公報(要約、特許請求の範囲の請求項1)
特許文献4:特表平11−510545号公報(要約、特許請求の範囲の請求項1)
特許文献5:特開平5−140227号公報(段落0061)
特許文献6:特開平3−31304号公報(特許請求の範囲の請求項1、第1頁右下欄)
特許文献7:特開2001−62202号公報(特許請求の範囲の請求項1)
特許文献8:特開平8−3226号公報(要約、特許請求の範囲の請求項1)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、メタロセン触媒は、チーグラー・ナッタ触媒に比して重合反応系における不純物により敏感であり、それゆえモノマーや触媒などの原料及び重合反応系における不純物に対する制御や管理が厳しく要求され、メタロセン系触媒によるオレフィン重合の大規模で効率的な工業化への隘路となっており、そのために、メタロセン触媒の製造における不純物に対する制御や管理を充分に効率的に行って、触媒活性や重合効率を高く保持することが、本発明の解決すべき課題であり、また、一方で、メタロセン触媒の工業的な活用に対するもうひとつの隘路ともいえる経済性の改良のために、メタロセン触媒の製造における経費を下げることも重要であり、そのために、触媒製造後や重合反応後の回収溶媒や未反応ガスを触媒製造や重合反応に再使用することも必要であって、その際に、触媒毒となる不純物を充分に除去し管理して触媒活性や重合効率を高く保持することも、本発明の解決すべき課題である。
【0010】
すなわち、重ねて言えば、メタロセン系触媒における上述のような状況において、触媒や溶媒などの原料における不純物に対する的確な制御により、触媒活性や重合効率を高めて、メタロセン触媒の性能を充分に発揮させ、安定な重合反応を維持せしめ、また、回収溶媒などの原料の再使用をする触媒の製造に際して触媒活性や重合効率を高く保持することにより、メタロセン系触媒によるオレフィン重合の大規模で効率的かつ経済的な工業化を具現化することが、新しい重要な課題であると考えられる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述の課題は、メタロセン触媒の改良における現状を俯瞰すれば、メタロセン触媒によるオレフィンの重合において重要なもののひとつであると理解されるが、従来においては、前述した特許文献2〜8に見られるように、触媒や溶媒などの個々の原料における、特定されることの少ない不純物の除去による精製に着目されていただけであり、触媒の製造に際して、高い触媒活性の保持と触媒製造時の回収溶媒の再使用における不純物管理の両面を把握して、メタロセン触媒の製造における不純物に対する総合的で的確な制御を行うことは想定されていなかった。
本発明は、上述したところの、触媒製造における不純物に対する管理を充分に効率的に行って、触媒活性や重合効率を高く保持する課題と、また、触媒製造後や重合反応後の回収溶媒などを再使用する際に、触媒毒となる不純物を充分に除去し管理して触媒活性や重合効率を高く保持する課題を踏まえて、メタロセン触媒の性能を充分に発揮させ安定な重合反応を維持せしめ、それにより、メタロセン系触媒によるオレフィン重合の大規模で効率的かつ経済的な工業化を具現化することを目指すものである。
【0012】
なお、本発明の完成に先立ち同様な観点から、触媒における不純物に対する管理を充分に効率的に行って、触媒活性や重合効率を高く保持し、また、触媒製造後や重合反応後の回収溶媒や未反応ガスなどを再使用する際に、触媒毒となる不純物を充分に除去し管理して触媒活性や重合効率を高く保持する課題を解決して、メタロセン触媒の性能を充分に発揮させ安定な重合反応を維持せしめるために、本発明におけるメタロセン触媒製造時の不純物管理ではなく、メタロセン触媒によるオレフィン重合時の不純物管理を行う発明を、本発明者は先に創作して既に出願している(特願2002−338580号)。
【0013】
本発明者は、商業的な規模におけるメタロセン触媒の製造に際して、製造した触媒の触媒活性の保持と触媒製造時の回収溶媒の再使用における不純物管理の両面の観点から、メタロセン触媒の製造における不純物に対する総合的で的確な制御を行う手段を求める過程において、前記した従来の触媒や溶媒などについての個々の不純物に対する除去技術を踏まえて、回収溶媒の新たな精製法やメタロセン触媒の触媒活性を損ねる触媒毒となる化合物あるいはその制御法などについて思考し検討を巡らし、回収溶媒における不純物の分析を重ね、触媒毒となると考えられる個々の化合物についての触媒への影響やその制御と管理などを求めて、実験による検索と考察を重ねた。
その過程の結果として、メタロセン触媒の製造においては、特に回収溶媒を使用する場合には、不純物としてハロゲン含有化合物と酸素含有化合物が存在して、それらがメタロセン触媒の触媒活性の低下をもたらすことを知見し確認するに到った。
【0014】
なお、メタロセン触媒においては、不純物として酸素含有化合物やハロゲン含有化合物として、エーテル系化合物や金属ハロゲン化物が存在して、それらがメタロセン触媒の触媒活性の低下をもたらすことは、従来において知られていたが(前記の特許文献2及び4を参照)、これらの先行技術においては、メタロセン触媒におけるエーテル系化合物や金属ハロゲン化物など個々の不純物を、ハロゲン化炭化水素溶媒で洗浄して除去する、あるいは、有機溶媒を使用して金属ハロゲン化物などの無機不純物を分離除去するだけの技術であって、本発明のように、メタロセン触媒の製造に際して、製造した触媒の触媒活性の保持と触媒製造時の回収溶媒の再使用における不純物管理の両面の観点から、メタロセン触媒の製造時における不純物に対する総合的で的確な制御を行う手段を示唆するものではない。
また、前記した従来の文献(特許文献6の第3頁右上欄を参照)において、チーグラー・ナッタ触媒による重合における重合溶媒を再使用のために精製する際に、有機塩素化合物の除去の記載が見られるが、単に他の不純物と共に溶媒から除去するという記載だけで、その量の記載もなくメタロセン触媒製造時における制御についても何の記載もないから、本発明の先行技術となるものではない。
そして、回収溶媒中のメタロセン錯体金属に対する不純物濃度は、重合時のそれに比べてはるかに高く、より被毒の影響を受けやすいと考えられるが、その具体的な解決方法は上記のいずれの文献にも示唆もされていない。
【0015】
ここで驚くべきことに、メタロセン触媒のメタロセン錯体自体に含有されるハロゲンは、このような悪影響をもたらさず、むしろ触媒活性や重合効率を高める作用をなすことも判明した。もっとも、従来においてハロゲン含有化合物は重合系によい効果を与えることがあり、ハロゲン化アルキルアルミニウム化合物を含有する系で重合を行うと活性が向上するということが知られている(特開平11−49812号公報の段落0051を参照)。しかし、ハロゲン含有化合物のこの作用は、特定のメタロセン化合物と特殊なイオン交換性層状化合物との併用の条件下に使用される場合に限られ、例外的なものと考えられる。
【0016】
前述したように、本発明者は、メタロセン触媒の製造において、使用する回収溶媒すなわちチーグラー・ナッタ触媒の製造やその触媒を使用したオレフィン重合から回収した炭化水素溶媒中に存在する、不純物に対する総合的で的確な制御を行って、高い触媒活性を発揮できるための触媒合成条件を実験的に詳細に吟味検討することにより、不純物としてハロゲン含有化合物と酸素含有化合物が存在して、それらがメタロセン触媒の触媒活性の低下をもたらすことを知見し確認するに到り、また、触媒活性には有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の量が深く関与し、その量は重合反応に導入されるメタロセン触媒の中心金属の量に密接に関連することを推認して、幾度の実験により具体的に有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の量を規定するに到り、本発明の中心構成を形成することができた。
【0017】
そして、具体的には、メタロセン触媒製造の合成反応槽に存在する有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の混入をできるだけ抑制すること、より具体的には、合成反応槽に導入されるメタロセン錯体の中心金属に対して、ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物を特定量以下とすることにより、得られる触媒の性能を充分に発揮させ、安定なポリオレフィンの生産が維持できることが実現できた。
本発明の本質は、特に、商業的規模の製造プラントにおいて行われているメタロセン触媒合成のための溶媒の再使用の際に混在してくる、ハロゲン不純物及び/又は酸素含有化合物が、メタロセン触媒の触媒活性に悪影響を及ぼすことを見出した点にあり、かかる見地から、触媒の活性と重合効率を高める試みは画期的なものであるといえる。
【0018】
本発明は、次の発明単位群から構成されるものであって、第一の発明を基本発明単位とし、第二以下の発明は、基本発明を具体化ないしは実施態様化するものである。(なお、これらの全発明群をまとめて総称して、「本発明」ということがある。)
[1] 炭化水素溶媒を用いてメタロセン触媒を製造するに際し、当該溶媒中に含まれる有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の存在量を、下記式(I)を満たすように制御することを特徴とする、メタロセン触媒の製造方法。
式(I): [H]*[O]/[M] ≦ 0.1
(ここで、[H]*[O]は、有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物のモル数を表わし、[M]は、メタロセン錯体の中心金属のモル数を表わす。)
[2] 式(I): [H]*[O]/[M] ≦ 0.01 を満たすように制御することを特徴とする、[1]におけるメタロセン触媒の製造方法。
[3] 制御されるべき有機ハロゲン化合物及び酸素含有化合物が、触媒成分に由来する以外の化合物であることを特徴とする、[1]又は[2]におけるメタロセン触媒の製造方法。
[4] 制御されるべき有機ハロゲン化合物が、炭素数1〜10のハロゲン化炭化水素であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかにおけるメタロセン触媒の製造方法。
[5] 制御されるべき酸素含有化合物が、エーテル化合物であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかにおけるメタロセン触媒の製造方法。
[6] 炭化水素溶媒がチーグラー・ナッタ触媒の製造に、あるいは当触媒を用いたオレフィンの重合に使用された回収溶媒であることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかにおけるメタロセン触媒の製造方法。
[7] メタロセン触媒が、下記成分(A)と成分(B)、及び必要に応じて成分(C)からなるものであることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかにおけるメタロセン触媒の製造方法。
成分(A): 共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期律表4〜6族の遷移金属化合物
成分(B): 助触媒
成分(C): 有機アルミニウム化合物
[8] 成分(B)が、アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性化合物並びにルイス酸、固体酸、及びイオン交換性層状珪酸塩のいずれかであることを特徴とする、[7]におけるメタロセン触媒の製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下においては、本発明群の実施の形態を、すなわち本発明群の詳細を、メタロセン触媒の合成における有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の制御を中心に、具体的に詳しく説明する。
【0020】
(1)メタロセン触媒の製造(合成)について
1.メタロセン触媒の製造方法
本発明は、前述のように、炭化水素溶媒を用いてメタロセン触媒を製造するに際し、当該溶媒中に含まれる有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の存在量を制御することを特徴とする、メタロセン触媒の製造方法であるが、メタロセン触媒の製造方法としては、従来から周知で汎用されている方法を適宜に採用する。従来法としては、例えば、反応容器中のトルエンなどの炭化水素溶媒中にて、予め化学処理した助触媒としてのイオン交換性層状珪酸塩などと、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドを、さらに必要により有機アルミニウム化合物などを反応処理させればよく、さらに詳しくは、後述する本発明の各実施例に記載されている。
【0021】
2.炭化水素溶媒
炭化水素溶媒としては、具体的には、汎用されているヘキサンやヘプタンなどの飽和脂肪族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素が使用される。
【0022】
好ましくは、炭化水素溶媒としては、前述したように、メタロセン触媒の工業的な活用に対する経済性の改良のために、すなわちメタロセン触媒の製造における経費を下げるために、主として、チーグラー・ナッタ触媒の触媒製造後や、チーグラー・ナッタ触媒による重合反応後の回収溶媒を本発明の触媒製造に再使用する。これは廃溶媒による環境汚染の防止のための観点からも必要なことである。
【0023】
すなわち、ポリオレフィンの商業的生産においては、経済的利点から同じ石油化学コンビナート敷地内に、オレフィンの重合用触媒の製造設備およびポリオレフィンの製造設備を保有している場合が多い。さらに、経済的観点および環境保護の観点から、これらの設備において炭化水素溶媒を使用する場合には、使用後の溶媒を廃棄せず、回収・精製して再使用することが通常である。
ところで、チーグラー・ナッタ触媒はハロゲン含有化合物や電子供与体化合物を必須成分とするため、回収溶媒には有機ハロゲン化物や酸素含有化合物が含まれるが、当該化合物を含有する回収・精製溶媒がメタロセン触媒の製造や重合に使用された場合にどのような不都合があるかは、本発明者が知る限り、これまで報告されていない。
【0024】
3.不純物
溶媒中に含まれる不純物及びその量的制御については詳しくは後述するが、溶媒中に含まれるとは、回収溶媒に溶解されて含有されてきたものと共に、触媒製造の原料に由来するものや触媒製造装置の汚れから来るものなどを包括する。
【0025】
(2)有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の制御について
1.モル比による規定
本発明は、前述のように、炭化水素溶媒を用いてメタロセン触媒を製造するに際し、当該溶媒中に含まれる有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の存在量を、下記式(I)を満たすように制御することを特徴とする、メタロセン触媒の製造方法であり、
式(I): [H]*[O]/[M] ≦ 0.1
すなわち、溶媒中に混入される有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物のモル数を、導入されるメタロセン錯体の遷移金属のモル数に対して、0.1以下となるように、これらの化合物の混入量を制御することを特徴とするメタロセン触媒の製造の改良方法を基本構成とするものであって、その構成の採用により、回収溶媒の再使用による触媒製造の経費削減と共に、製造した触媒の活性を高く保持し、それにより触媒系の性能を充分に発揮させ、ポリオレフィンの安定な生産が実現できる。
【0026】
前述したように、本発明者は、メタロセン触媒の製造において、使用する回収溶媒すなわちチーグラー・ナッタ触媒の製造やその触媒を使用したオレフィン重合から回収した炭化水素溶媒中に存在する、不純物に対する総合的で的確な制御を行って、高い触媒活性を発揮できるための触媒合成条件を実験的に詳細に吟味検討することにより、触媒活性には有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の量が深く関与し、その量は重合反応に導入されるメタロセン触媒の中心金属の量に密接に関連することを推認して、幾度の実験により具体的に有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の量を式(I)で表記されるモル比の規定に特定したのである。
そして、この規定は、後述する実施例と比較例の対比検討により実証され確認されている。
【0027】
本発明は、さらに、メタロセン触媒の種類によっては、好ましくは、式(I): [H]*[O]/[M] ≦ 0.05 を満たすように、より好ましくは、≦0.01を満たすように、制御することによる、メタロセン触媒の製造方法であり、この規定により、実施例4にて実証されているように、より高い触媒活性が得られる。
【0028】
なお、制御される各化合物における、「及び/又は」とは不純物として両方が存在する場合はその合計量を意味し、どちらか一方のみが存在する場合は各量を意味する。また、有機ハロゲン含有化合物とは、触媒毒となるハロゲン、特に、塩素、臭素、ヨウ素を含有する有機ハロゲン化合物を指し、酸素含有化合物とは当該化合物の構造式の中に酸素原子が存在することを意味し、化合物が分子状酸素を物理的に包含していることを意味するものではない。
【0029】
また、制御されるべき化合物において重要なことであるが、前述のとおりに、メタロセン触媒のメタロセン錯体自体に含有されるハロゲンや酸素は、このような悪影響をもたらさず、むしろ触媒活性や重合効率を高める作用をなすことも判明し、そしてまた、触媒成分に由来する有機ハロゲン化合物と酸素含有化合物については、ホウ素化合物のような助触媒、あるいは触媒を担持する担体などのなかに、その構成成分としてハロゲンや酸素を含有するものがあるが、助触媒あるいは担体などは、触媒においてそれ自体の有効性が評価されて使用されるものであるから、ハロゲンや酸素を含有するものであっても使用することができ、本発明においては、このような成分によって供給されるハロゲンや酸素を含有する化合物は、その制御の対象から外すほうが好ましい。
もっとも、触媒各成分に付随している不純物としての有機ハロゲン化合物や酸素含有化合物は、予め精製除去しておくことが好ましい。
本発明においては、触媒毒となるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が対象であるが、通常は塩素が想定される。
ところで、フッ素を含有するものは重合系に対してよい結果を与える場合がある。かかる意味において、本発明は、選択された反応系において、その機能を充分に発揮させるための技術であると理解することができる。
【0030】
2.有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の混入阻止
原料系と触媒合成反応系の両系において、制御の対象となる不純物すなわち有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物に対する総合的で的確な制御を行えば、オレフィン重合時の触媒活性や重合効率を有効に高めることができるので、できるだけ合成反応槽に有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物が混入し存在することを阻止することが重要である。
前述したように、有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物は、溶媒特に回収溶媒や触媒の原料に由来するもの、触媒合成反応中に副反応生成物として生じるもの、触媒合成装置からの汚れとしてもたらされるものなどがあり、その存在量も原料の不純度や重合反応の条件などにより決まってくる。それらをできるだけ減らすために、溶媒特に回収溶媒や触媒の原料などを予め十分に精製し、合成反応における副反応を制御し、合成装置からの汚れを生じないように処置しておくことなどが必要となる。
【0031】
回収溶媒や触媒原料の精製法としては、通常の手段が使用され、例えば、化学反応による方法あるいは蒸留や吸着などの物理的な方法又はこれらの組み合わせによる方法を用いることができる。触媒の合成反応における副反応の制御は、温度や圧力などの諸条件を検討して生成するハロゲン副生成物及び/又は酸素含有化合物の量を制限する。合成装置からの汚れ防止には、シール剤にはできるだけハロゲンや酸素を含まないものを使用し、又あらかじめ装置内を清浄に保持しておくことが必要である。
【0032】
3.有機ハロゲン化合物の由来(主たる出所の例示)
メタロセン触媒の重合活性を低下させる触媒毒である有機ハロゲン化合物の出所となる化合物としては、次のようなものが例示される。
a.アルミニウム原子含有化合物として
アルミニウム原子含有有機ハロゲン化合物の主な混入経路としては、チーグラー・ナッタ触媒によるオレフィン重合で用いた溶媒に、触媒原料の有機アルミニウムに付随した不純物として混入し、メタロセン触媒の製造反応にその溶媒を転用する場合が挙げられる。
【0033】
具体的な化合物の例としては、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどのハロゲン化アルキルアルミニウムが挙げられる。
有機アルミニウムの場合、精製により不純物として含まれる塩素のようなハロゲン成分を除去することは極めて困難であるので、混入経路の遮断、特に配管や反応槽内の洗浄などによりハロゲン成分を混入させないことが重要となる。
【0034】
b.ハロゲン化炭化水素として
ハロゲン化炭化水素は、触媒製造の溶媒やそれの希釈に使用される有機溶媒中に混入されることが多い。特に、チーグラー・ナッタ触媒を製造した際に使用した溶媒を回収再利用している場合には、三塩化チタンや四塩化チタンなどに含まれる塩素原子などと溶媒(廃液)などが何らかの反応を起こした場合に生成してしまい、そのまま混入してしまう恐れがある。
主として制御されるべき有機ハロゲン化合物は、炭素数1〜10のハロゲン化炭化水素である。
また、触媒合成反応における反応槽や配管のガスケットに使用されるシール剤成分にも含まれていることがあり、これも混入の原因となる。
【0035】
具体的な化合物の例示としては、クロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロプロパン、ジクロロプロパン、トリクロロプロパン、クロロブタン、ジクロロブタン、クロロペンタン、ジクロロペンタン、クロロヘキサン、ジクロロヘキサン、クロロヘプタン、ジクロロヘプタン、ポリクロロトリフルオロエタンなどの脂肪族系のものが挙げられる。
なお、有機ハロゲン化合物として、芳香族化合物やヘテロ原子を含む化合物の混入もありうる。
【0036】
4.酸素含有化合物の由来(主たる出所の例示)
チーグラー・ナッタ触媒の合成やそれによる重合時に発生する有機アルミニウム成分や触媒成分を含有した溶媒を失活させるために、通常、水もしくはアルコールが使用される。このアルコール成分や新たに生成したアルコール成分などが回収溶媒の蒸留塔で加熱脱水され、又、吸着塔での脱水反応によりエーテルが生成して、メタロセン触媒製造用の回収溶媒にエーテル化合物として混入する場合がある。あるいは、触媒成分として使用していたエーテルドナーそのものが除去されずに混入する場合がある。
【0037】
具体的な化合物の例示としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジビニルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシプロパン、ジメトキシブタン、ジメトキシベンゼンなどが挙げられる。
【0038】
5.有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物による重合反応の阻害についての考察
有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物は、遷移金属化合物に配位し、活性点を変質させてしまうことで、正常なオレフィン重合を阻害すると考えることができる。
一般的には、有機アルミニウムを用いることにより、極性化合物により活性点が変質してしまうことを抑制する作用が知られているが、有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物は極性化合物であるにも関わらず、掃去剤の有機アルミニウムによる活性点の変質の抑制ができない特異的な挙動を示す。
この理由としては、ハロゲン原子及び/又は酸素含有化合物が持っているルイス塩基性、すなわち、カチオン種と相互作用しやすい性質が有機アルミニウムでは失われていないことによるものと考えている。
【0039】
6.ハロゲン原子及び/又は酸素含有化合物の分析方法
メタロセン触媒合成反応中にハロゲンを分析して合成反応中にハロゲン量を制御するために使用される、ハロゲン化合物、例えば、塩素化合物の分析方法としては、ハロゲン(塩素)原子の定量が可能な測定手法が適用される。原子吸光法、ガス又は液体クロマトグラフを用いた方法、予め過剰な硝酸銀により塩化銀を沈殿させた後、余分の硝酸銀を硫酸第二鉄アンモニウム指示薬によりチオシアン酸アンモニウム溶液で滴定または吸光度測定により定量する分析方法などが使用される。
また、酸素含有化合物の定量方法としてはガスクロマトグラフが例示できる。
【0040】
(3)メタロセン触媒について
本発明で使用するメタロセン触媒は、公知のものであれば特に制限無く利用できる。メタロセン触媒は一般に、(A)共役五員環配位子を有する周期律表第4族などの遷移金属化合物からなるメタロセン錯体と、それを活性化させる(B)助触媒を必須成分とし、及び、必要に応じて使用される(C)有機アルミニウム化合物から構成される。
オレフィン重合プロセスの特性によっては、粒子化が必須とされるため、さらに(D)担体を構成要素とする場合がある。(なお、本明細書の記載においては、元素の周期律表として短周期型のものを使用している。)
【0041】
1.メタロセン錯体
本発明において用いられるメタロセン錯体としては、代表的なものとして共役五員環配位子を有する周期律表第4〜6族の遷移金属化合物のメタロセン錯体が挙げられ、これらのうち、下記一般式のどちらかで表されるものが好ましい。
【0042】
【化1】
【0043】
式中、AおよびA’は置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基である。この置換基の例としては炭素数1〜30の炭化水素基である。この炭化水素基は一価の基としてシクロペンタジエニル基と結合していても、またこれが複数存在するときにその内の2個がそれぞれ他端(ω−端)で結合してシクロペンタジエニルの一部と共に環を形成していてもよい。その他の例としては、インデニル基、フルオレニル基、またはアズレニル基などが挙げられる。これらの基はさらに副環上に置換基を有していてもよい。これらの中で好ましいものは、インデニル基またはアズレニル基である。
Qは、二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基を表し、具体的にはアルキレン基、シリレン基あるいはゲルミレン基であることが好ましい。
Mは、周期律表第4〜6族から選ばれる遷移金属の金属原子、好ましくは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどである。特に、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
XおよびYは補助配位子であり、成分(B)と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限りX及びYは配位子の種類が制限されるものではなく、各々水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、あるいはヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基が例示できる。これらのうち好ましいものは、炭素数1〜10の炭化水素基、あるいはハロゲン原子である。
【0044】
2.助触媒(活性化剤成分)
助触媒は、メタロセン錯体を活性化する成分で、メタロセン錯体の補助配位子と反応して当該錯体を、オレフィン重合能を有する活性種に変換させうる化合物であり、具体的には下記(B−1)〜(B−4)が挙げられる。
(B−1)アルミニウムオキシ化合物
(B−2)成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸
(B−3)固体酸
(B−4)イオン交換性層状珪酸塩
【0045】
(B−1)アルミニウムオキシ化合物においては、アルミニウムオキシ化合物がメタロセン錯体を活性化できることは周知であり、そのような化合物としては、具体的には次の各一般式で表される化合物が挙げられる。
【0046】
【化2】
【0047】
上記各一般式中、R1は水素原子または炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。また、複数のR1はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、pは0〜40、好ましくは2〜30の整数を示す。
一般式のうち、一番目及び二番目の式で表される化合物は、アルミノキサンとも称される化合物であって、これらの中では、メチルアルミノキサン又はメチルイソブチルアルミノキサンが好ましい。上記のアルミノキサンは、各群内および各群間で複数種併用することも可能である。そして、上記のアルミノキサンは、公知の様々な条件下に調製することができる。
一般式の三番目で表される化合物は、一種類のトリアルキルアルミニウム又は二種類以上のトリアルキルアルミニウムと、一般式R2B(OH)2で表されるアルキルボロン酸との10:1〜1:1(モル比)の反応により得ることができる。
一般式中、R1およびR2は、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。
また、(B−1)は、無機酸化物などの担体に担持されたものであってもよい。
【0048】
(B−2)の化合物は、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸であり、このようなイオン性化合物としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどの陽イオンと、トリフェニルホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などの有機ホウ素化合物との錯化物などが挙げられる。
なお、上記のルイス酸のある種のものは、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物としてみなすこともできる。
また、(B−2)は、無機酸化物などの担体に担持されたものであってもよい。
【0049】
(B−3)の固体酸としては、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシアなどが挙げられる。
【0050】
(B−4)のイオン交換性層状化合物は、粘土鉱物の大部分を占めるものであり、好ましくはイオン交換性層状珪酸塩である。
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に「珪酸塩」と略記する場合がある。)は、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、且つ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライトなど)が含まれることが多いが、それらを含んでいてもよい。珪酸塩は各種公知のものが使用できる。具体的には、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
2:1型鉱物類
モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどのスメクタイト族; バーミキュライトなどのバーミキュライト族; 雲母、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母族; パイロフィライト、タルクなどのパイロフィライト−タルク族; Mg緑泥石などの緑泥石族など。
2:1リボン型鉱物類
セピオライト、パリゴルスカイトなど。
【0051】
本発明で原料として使用する珪酸塩は、上記の混合層を形成した層状珪酸塩であってもよい。本発明においては、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることが更に好ましく、モンモリロナイトが特に好ましい。
本発明で使用する珪酸塩は、天然品または工業原料として入手したものは、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を施すことが好ましい。具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。これらの処理を互いに組み合わせて用いてもよい。本願発明において、これらの処理条件には特に制限はなく、公知の条件が使用できる。
また、これらイオン交換性層状珪酸塩には、通常吸着水および層間水が含まれるため、不活性ガス流通下で加熱脱水処理するなどして、水分を除去してから使用するのが好ましい。
【0052】
3.有機アルミニウム化合物
メタロセン触媒系に、必用に応じて使用される有機アルミニウム化合物としては、本発明においては、ハロゲンを含有しないものが使用され、具体的には
一般式: AlR3−iXi
(式中、RはC1〜C20の炭化水素基、Xは水素、アルコキシ基、iは0≦i≦3の数を示す。但し、Xが水素の場合は、iは0<i<3とする。)で示される化合物が使用される。
【0053】
具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム又はジエチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルコキシ含有アルキルアルミニウム又はジエチルアルミニウムハライドなどのハライド含有アルキルアルミニウムである。
これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。さらに好ましくは、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムである。
【0054】
4.触媒成分の使用量その他
成分(A)と成分(B)の使用量は、それぞれの組み合わせの中で最適な量比で用いられる。
成分(B)が、アルミニウムオキシ化合物の場合はAl/遷移金属のモル比は通常10以上100000以下、さらに100以上20000以下、特に100以上10000以下の範囲が適する。
一方、成分(B)としてイオン性化合物あるいはルイス酸を用いる場合は、対遷移金属のモル比は0.1〜1000、好ましくは0.5〜100、更に好ましくは1〜50の範囲である。
成分(B)として、固体酸あるいはイオン交換性層状珪酸塩を用いる場合は、成分(B)1gにつき、遷移金属錯体0.001〜10ミリモル、好ましくは0.001〜1ミリモルの範囲である。
これらの使用比率は、通常の割合例を示すものであって、触媒がその目的に沿ったものであれば、上に述べた使用比率の範囲によって、本発明が限定されることにはならないことは当然である。
【0055】
遷移金属錯体と助触媒からなるポリオレフィン製造用触媒をオレフィン重合用(本重合)の触媒として使用する前に必要に応じて、担体に担持させた後、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどのオレフィンを予備的に少量重合する予備重合処理を施してもよい。予備重合方法は公知の方法が使用できる。
これらのオレフィンにおいても、本発明で制御する有機ハロゲン化合物と酸素含有化合物の混入を防ぐことが好ましい。
【0056】
(4)重合に使用するオレフィン及び重合反応について
本発明の製造方法により得られたメタロセン触媒は、もちろん通常のオレフィン重合に使用できる。使用できるオレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ビニルシクロアルカンなどが挙げられ、さらにブタジエンなどの共役ジエン、1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン、スチレンあるいはこれらの誘導体などが挙げられる。特に、プロピレンが好適に使用される。
また、重合は単独重合の他にランダム共重合やブロック共重合にも好適に適用できる。共重合の際のコモノマーとしては、上記のオレフィンの他に、エチレンも挙げることができる。
【0057】
重合反応は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサンなどの不活性炭化水素や液化α−オレフィンなどの溶媒の存在下に、あるいは実質的に溶媒や単量体の液相が存在しない状態で気相重合により行うのが好ましい。気相重合は、例えば流動床、撹拌床、撹拌・混合機を備えた撹拌流動床などの重合反応装置を用いて行うことができる。重合温度、重合圧力などの条件は特に限定されないが、重合温度は、一般に−50〜350℃、好ましくは0〜300℃であり、また、重合圧力は通常、常圧〜約2000kgf/cm2、好ましくは常圧〜1500kgf/cm2、更に好ましくは常圧〜1300kgf/cm2の範囲である。また、重合系内に分子量調節剤として水素を存在させてもよい。
【0058】
【実施例】
以下において、実施例により本発明を詳細に具体的に示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下においては、本発明によるメタロセン触媒の製造を各製造例に記載し、それらを使用した重合を各実施例として記載している。
なお、触媒成分の取り扱いは、全て窒素雰囲気下で行った。また、実施例、比較例及び参考例に使用した溶媒は以下の2種類を基本とした。
[回収ヘプタンA]
チーグラー・ナッタ触媒製造プラントにて、水洗、蒸留、吸着工程を経て回収されたヘプタンを分析したところ、9wtppmのn−BuCl、15wtppmの(n−Bu)2Oが検出された。
[回収ヘプタンB]
上記回収ヘプタンAをさらに吸着処理したところ、n−BuClは1wtppm、(n−Bu)2Oは1wtppmとなった。
【0059】
[ハロゲン原子などの分析]
1.ガス中の塩素原子含有化合物の捕集と分析
これは、発明の効果を確認するために、実施例と比較例の対比の検証などに必要である。
エチレン、プロピレン、水素、窒素中の塩素原子含有化合物を以下の方法で捕集した。
NaOH水溶液(0.1mmol/L)を2本の吸収管にそれぞれ70ml添加し、それを直列に接続し吸収管を氷冷した。測定したいガス30〜60Lを約0.5〜1.0L/分で吸収管内を流通させながら塩素原子含有化合物を吸収させた。次いで、それぞれの吸収管のNaOH水溶液を回収し、イオンクロマトグラフにより分析を行った。
装置:DIONEX DX−500
カラム:AG11+AS11
恒温層温度:35℃
溶離液流量:2ml/分
溶離液:NaOH水溶液(0.1mmol/L)
検出器:電気伝導度
その結果、実験に使用したモノマーなどの原料、溶媒および窒素ガスなどの溶液中に含まれる塩素原子の量はいずれも検出限界である20ppb以下であった。
【0060】
2.溶液中の有機ハロゲン化合物の分析
炭化水素溶媒中の有機ハロゲン化合物を以下のガスクロマトグラフにて分析した。
装置:島津GC14B
カラム:HP−1 30m*0.25mmID*1.0μm
Inj Temp:200℃
Det Temp:200℃
キャリヤガスHe:1.0ml/min 11.6psi
スプリット:1/10
試料:1μl
検出器:FID
カラム温度:40℃(5min)〜300℃、5℃/min
【0061】
3.溶液中の酸素含有化合物の分析
炭化水素溶媒中のエーテル化合物を以下のガスクロマトグラフ/AEDにて分析した。
装置:島津GC14B
カラム:HP−1701 60m*0.25mmID*1.0μm
Inj Temp:250℃
カラム温度:50℃(5min)〜200℃、5℃/min
AED:GCBlock/XferLine:280℃
CovityBLock:280℃
キャリヤガスHe:25psi
Total flow:22ml/min
試料:1.0ml
【0062】
4.有機アルミニウム希釈液中の塩素原子含有化合物の捕集と分析
分液ロートに分析したい有機アルミニウム化合物として0.5g相当となるようにヘプタン希釈液を分取し、溶液の全量を200mlとなるように調整した。これに、NaOH水溶液(0.1mmol/L)40mlを加え、振とう機にセットし1時間振とさせた。その後、NaOH水溶液相から15ml分取し、6Nの硝酸水溶液にて中和した。中和試料に硫酸第二鉄アンモニウム溶液(硫酸第二鉄アンモニウム、60gを6Nの硝酸に溶解させたもの)10mlを加えた。次にチオシアン酸第二水銀溶液(チオシアン酸第二水銀3.0gをエタノール(95vol%)1Lに溶解させたもの)5mlを加え、水で全量50mlとし、振とう発色させた。発色10分後に460nmの吸光度を測定した(日立分光光度計:U−3200)。
別途実施したブランク測定と既知の塩素含有量の試料を用いて作成した検量線との比較により、測定サンプル中の塩素含有量の定量を行った。その結果、今回用いた有機アルミニウム化合物中の塩素濃度は、検出限界の10wtppm以下であった。
【0063】
[ポリマーの物性値]
メルトフローレート(MFR)
JIS−K−6758ポリプロピレン試験方法(条件:230℃、荷重2.16Kgf)により測定した。
【0064】
[触媒製造例1]
以下の操作は、不活性ガス下、脱酸素、脱水処理された溶媒、モノマーを使用して実施した。
1.触媒の調製
3Lの撹拌翼の付いたガラス製フラスコに、蒸留水1130g、続いて濃硫酸750gをゆっくりと添加し、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=25μm 粒度分布=10μm〜60μm)を300g分散させ、90℃まで1時間かけ昇温し、5時間その温度を維持した後、1時間で50℃まで冷却した。このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を4リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を4回繰り返した。最終の洗浄液(濾液)のpHは、3.42であった。
回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は227gであった。この化学処理したモンモリロナイトの組成は、Alが5.0%、Mgが0.8%、Feが1.6%、Siが37.7%含まれていた。
化学処理したモンモリロナイトを減圧下、200℃で、2時間加熱処理を実施した。また、内容積1Lの撹拌翼のついたガラス製反応器に上記で得た乾燥モンモリロナイト20gを導入し、回収ヘプタンBを73ml添加した。さらにトリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液(50mmol)を加え、室温で撹拌した。1時間後、回収ヘプタンBにて洗浄(残液率1%未満)し、スラリーを200mlに調製した。
次に、予め(r)−ジメチルシリレンビス[2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル]ジルコニウムジクロリド0.3mmolに回収ヘプタンBを87ml加えてスラリー化し、引き続きトリイソブチルアルミニウム(3mmol)のヘプタン溶液4.2mlを添加し、室温にて1時間反応させておいた混合液を、モンモリロナイトスラリーに加え、室温で1時間撹拌した。
続いて、窒素で十分置換を行った内容積1Lの撹拌式オートクレーブに回収ヘプタンBを200ml導入し、40℃に保持した。
そこに先に調製したモンモリロナイト/錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを10g/時間の速度で供給し、温度を40℃に維持した。4時間後、プロピレンの供給を停止し、さらにそのまま1時間維持した。回収した予備重合触媒スラリーから、上澄みを約300ml除き、トリイソブチルアルミニウム(12mmol)のヘプタン溶液を17ml添加し、10分間撹拌した後に、40℃にて減圧下熱処理した。この操作により触媒1g当たりポリプロピレンを2.06g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(BuCl+Bu2O)のモル比は0.02となる。
【0065】
[触媒製造例2]
触媒製造例1で使用した回収ヘプタンBに試薬特級のBuClを添加し、ヘプタン中のBuCl濃度を7wtppmとした以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.12g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(BuCl+Bu2O)のモル比は0.10となる。
【0066】
[触媒製造例3]
触媒製造例1で使用した回収ヘプタンBに試薬特級のBuClを添加し、ヘプタン中のBuCl濃度を11wtppmとした以外は同様に触媒合成を行った。
触媒1g当たりポリプロピレンを2.20g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(BuCl+Bu2O)のモル比は0.15となる。
【0067】
[触媒製造例4]
触媒製造例1で使用した回収ヘプタンBの代わりに回収ヘプタンAを使用した以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.16g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(BuCl+Bu2O)のモル比は0.25となる。
【0068】
[触媒製造例5]
触媒製造例2で添加したBuClの代わりに試薬特級のペンチルクロリドを添加し、ヘプタン中の有機Cl(BuCl+PeCl)濃度を12wtppmとした以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.09g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(有機Cl+Bu2O)のモル比は0.14となる。
【0069】
[触媒製造例6]
触媒製造例2で添加したBuClの代わりに試薬特級のペンチルクロリドを添加し、ヘプタン中の有機Cl(BuCl+PeCl)濃度を30wtppmとした以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.08g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(有機Cl+Bu2O)のモル比は0.34となる。
【0070】
[触媒製造例7]
触媒製造例2で添加したBuClの代わりにジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)を添加し、ヘプタン中の有機Cl(BuCl+DEAC)濃度を13wtppmとした以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.28g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(有機Cl+Bu2O)のモル比は0.12となる。
【0071】
[触媒製造例8]
触媒製造例2で添加したBuClの代わりにジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)を添加し、ヘプタン中の有機Cl(BuCl+DEAC)濃度を30wtppmとした以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.25g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(有機Cl+Bu2O)のモル比は0.27となる。
【0072】
[触媒製造例9]
触媒製造例2で添加したBuClの代わりにBu2Oを添加し、ヘプタン中のBu2O濃度を9wtppmとした以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.26g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(BuCl+Bu2O)のモル比は0.09となる。
【0073】
[触媒製造例10]
触媒製造例2で添加したBuClの代わりにBu2Oを添加し、ヘプタン中のBu2O濃度を25wtppmとした以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.15g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(BuCl+Bu2O)のモル比は0.24となる。
【0074】
[触媒製造例11]
触媒製造例2で添加したBuClの代わりにi−Pr2Oを添加し、ヘプタン中のエーテル濃度を20wtppmとした以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.25g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(BuCl+i−Pr2O)のモル比は0.19となる。
【0075】
[触媒製造例12]
内容積500mlの撹拌翼のついたガラス製反応器に、Crompton社製MAO ON SiO2 2.4g(20.7mmol−Al)を添加し、回収ヘプタンBを50ml添加し、予め試薬特級トルエンで希釈した(r)−ジメチルシリレンビス[2−メチル−ベンゾインデニル]ジルコニウムジクロリド溶液20ml(0.0637mmol)を加え、続いてトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液を4.14ml(3.03mmol)加えた。その後、室温にて2時間反応させ、更にプロピレンを供給し、予備重合を行った。さらに室温にて減圧乾燥し、触媒1g当たりポリプロピレンを2.15g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(BuCl+Bu2O)のモル比は0.01である。
【0076】
[触媒製造例13]
触媒製造例12で使用した回収ヘプタンBの代わりに、回収ヘプタンAを使用した以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.10g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(BuCl+Bu2O)のモル比は0.12となる。
【0077】
[触媒製造例14]
充分に窒素置換したフラスコに、脱水および脱酸素した回収ヘプタンA200mlを導入し、次いでMgCl2を0.4mol、Ti(O−n−C4H9)4 を0.8mol導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)を48ml導入し、3時間反応させた。生成した固体成分を回収ヘプタンAで洗浄した。次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製した回収ヘプタンAを50ml導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で0.06mol導入した。次いで回収ヘプタンA125mlに、SiCl40.1molを混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、回収ヘプタンAで洗浄した。次いで回収ヘプタンA25mlにフタル酸クロライド0.006molを混合して、70℃、30分間でフラスコへ導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、回収ヘプタンAで洗浄した。次いで、TiCl425mlを追加し、95℃で3時間反応した。反応終了後回収ヘプタンAで洗浄し、固体成分を得た。引き続き上記固体成分4gを300mlフラスコに小分けし,回収ヘプタンA100ml、ビニルトリメチルシラン1ml(8mmol)、t−ブチルメチルジメトキシシランを0.8ml(3.9mmol)、トリエチルアルミニウムを25ml(15mmol)導入し、30℃で2時間反応した。反応終了後、回収ヘプタンAで洗浄し固体成分を得た。この固体成分中にはチタンが2.44重量%、t−ブチルメチルジメトキシシランが4.2重量%、フタル酸ジブチルが0.98重量%含まれていた。
【0078】
[触媒製造例15]
触媒製造例14において、回収ヘプタンAに代えて回収ヘプタンBを使用する以外、同様に触媒合成を行った。この固体成分中にはチタンが2.49重量%、t−ブチルメチルジメトキシシランが4.0重量%、フタル酸ジブチルが、0.97重量%含まれていた。触媒製造例14と差が見られなかった。
【0079】
実施例−1: プロピレン−エチレンランダム共重合体の製造
内容積3Lの撹拌式オートクレーブ内を窒素で十分乾燥し、プロピレンで置換した後に、トリイソブチルアルミニウム(2.0mmol)のヘプタン溶液を加え、エチレン15g、水素34ml、続いて液体プロピレン750gを導入し、70℃に昇温しその温度を維持した。
触媒製造例1で製造した予備重合触媒をヘプタンにスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)15mgを圧入し重合を開始した。槽内温度を70℃に維持した。1時間後、エタノール5mlを加え、残ガスをパージして得られたポリマーを乾燥した。その結果、260gのポリマーが得られた。触媒活性は17300g−PP/g−触媒・時であった。MFRは2.4(dg/分)、エチレン含量は1.5重量%であった。
【0080】
実施例−2
触媒製造例2で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、252gのポリマーが得られた。触媒活性は16800g−PP/g−触媒・時であった。MFRは2.7(dg/分)、エチレン含量は1.7重量%であった。
【0081】
比較例−1
触媒製造例3で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、210gのポリマーが得られた。触媒活性は14000g−PP/g−触媒・時であった。MFRは2.8(dg/分)、エチレン含量は1.6重量%であった。
【0082】
比較例−2
触媒製造例4で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、188gのポリマーが得られた。触媒活性は12500g−PP/g−触媒・時であった。MFRは3.3(dg/分)、エチレン含量は1.6重量%であった。
【0083】
比較例−3
触媒製造例5で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、217gのポリマーが得られた。触媒活性は14500g−PP/g−触媒・時であった。MFRは3.1(dg/分)、エチレン含量は1.8重量%であった。
【0084】
比較例−4
触媒製造例6で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、175gのポリマーが得られた。触媒活性は11700g−PP/g−触媒・時であった。MFRは3.5(dg/分)、エチレン含量は1.7重量%であった。
【0085】
比較例−5
触媒製造例7で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、213gのポリマーが得られた。触媒活性は14200g−PP/g−触媒・時であった。MFRは3.0(dg/分)、エチレン含量は1.8重量%であった。
【0086】
比較例−6
触媒製造例8で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、165gのポリマーが得られた。触媒活性は11000g−PP/g−触媒・時であった。MFRは4.1(dg/分)、エチレン含量は1.8重量%であった。
【0087】
実施例−3
触媒製造例9で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、255gのポリマーが得られた。触媒活性は17000g−PP/g−触媒・時であった。MFRは3.1(dg/分)、エチレン含量は1.8重量%であった。
【0088】
比較例−7
触媒製造例10で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、195gのポリマーが得られた。触媒活性は13000g−PP/g−触媒・時であった。MFRは2.9(dg/分)、エチレン含量は1.9重量%であった。
【0089】
比較例−8
触媒製造例11で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、202gのポリマーが得られた。触媒活性は13500g−PP/g−触媒・時であった。MFRは2.8(dg/分)、エチレン含量は1.7重量%であった。
【0090】
実施例−4
200Lのオートクレーブに0.5mol/Lのトリエチルアルミニウムヘプタン溶液2g、プロピレン45kg、水素1.30gを加え、40℃に維持した。次いで触媒製造例12で製造した予備重合触媒をヘプタンにスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)0.8gを圧入し、65℃に昇温して重合を開始した。3時間重合を行った。その後、エタノール100mlを添加し、重合を停止した。残ガスをパージ後、乾燥し、MFRが40.4(dg/分)、12.8kgのポリプロピレンを得た。触媒活性は16000g−PP/g−触媒であった。
【0091】
比較例−9
触媒製造例13で製造した触媒を1.6g用いる以外、実施例4と同様に重合を行った。MFRが41.5(dg/分)、14.8kgのポリプロピレンを得た。触媒活性は9250g−PP/g−触媒であった。
【0092】
参考例−1
撹拌および温度制御装置を有する内容積1.5Lのステンレス鋼製オートクレーブに、充分に脱水および脱酸素したn−ヘプタンを500ml、TEAを125mgおよび触媒製造例14で製造した触媒固体成分を10mg、次いで水素を390ml導入し、昇温昇圧し、重合圧力を5kg/cm2G、重合温度を75℃、重合時間を2時間の条件でプロピレンを重合させた。重合終了後、得られたポリマースラリーを濾過により分離し、ポリマーを乾燥させた。その結果、195.0gのポリマーが得られた。触媒活性は19500(g−PP/g−触媒)である。濾過液中に溶解していた低立体規則性のアタックポリマーは、0.35重量%であった。沸騰ヘプタン抽出試験より、全製品I.Iは98.4重量%であった。また、得られたポリマーは、MFRが22.9(dg/分)、ポリマー嵩密度が0.45(g/cc)であった。
【0093】
参考例−2
参考例1において触媒製造例15を使用する以外全く同じに重合を行った。その結果、190gのポリマーが得られた。触媒活性は19000(g−PP/g−触媒)である。濾過液中に溶解していた低立体規則性のアタックポリマーは、0.38重量%であった。沸騰ヘプタン抽出試験より、全製品I.Iは98.5重量%であった。また、得られたポリマーは、MFRが23.5(dg/分)、ポリマー嵩密度が0.46(g/cc)であり、参考例1と差が見られなかった。
【0094】
以上の、各実施例、各比較例及び各参考例の全ての結果を、まとめて表1及び2に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
[実施例と比較例の結果の考察]
以上の各実施例と各比較例を対照することにより、本発明では触媒活性が優れ重合効率が高いオレフィン重合を実現できることが明らかとなっている。
各実施例においては、有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物のモル数と、メタロセン錯体の中心金属のモル数の比が0.1以下で、好ましくは0.05以下で、本発明の式(I)を満たして、高い触媒活性が得られ、各比較例においては式(I)を満たしていないから、触媒活性が低く損なわれている。
特に、実施例4と対応する比較例9では触媒活性の差異が著しく、本発明の式(I)が0.01以下の場合に特に優れた結果が得られている。
なお、チーグラー・ナッタ触媒を使用する各参考例では、回収ヘプタンの種類によって触媒活性には差が無く、時間当たりの活性効率では、概して、メタロセン触媒を使用した各実施例より活性が低くなっている。
【0098】
【発明の効果】
本発明のメタロセン触媒の製造方法においては、溶媒中の不純物を制御して、特にチーグラー・ナッタ触媒などの触媒製造後の回収溶媒及びその触媒を使用したオレフィン重合後の回収溶媒を再使用しても、高い触媒活性のメタロセン触媒が得られる。
メタロセン触媒は、チーグラー・ナッタ触媒に比して重合反応系における不純物により敏感であり、それゆえモノマーや触媒などの原料及び重合反応系における不純物に対する制御や管理が厳しく要求されメタロセン系触媒によるオレフィン重合の大規模で効率的な工業化への隘路となっているのに、本発明において、回収溶媒を使用しても高い触媒活性のメタロセン触媒が得られること、及び、一方で、メタロセン触媒の工業的な活用に対するもうひとつの隘路ともいえる経済性の改良のために、本発明において、触媒製造後や重合反応後の回収溶媒を再使用してメタロセン触媒の製造における経費を下げうることは、メタロセン触媒技術に重要な寄与をなす。
【発明の属する技術分野】
本発明は、メタロセン触媒を製造する方法に関するものである。より詳しくは、メタロセン錯体金属に対する被毒物質となる化合物を制御する、メタロセン触媒の製造方法に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
近来においては、ポリオレフィンとりわけポリプロピレンが、その簡易な成形性や優れた機械的かつ化学的性質あるいは顕著な経済性などにより、高分子工業分野で重要な役割を果たしている。特に、チーグラー・ナッタ触媒の実現により結晶構造における高い立体規則性や触媒における高活性とその持続性などが具現化され、その後の触媒担持体や電子供与体あるいは珪素化合物などの併用により、その機能がいっそう高められ(例えば、特許文献1を参照)、さらに立体規則性や触媒活性などにおいてチーグラー・ナッタ触媒は改良が続けられている。
【0003】
さらに、最近においては、チーグラー・ナッタ触媒を超えるものとして、共役五員環などを少なくとも一つ以上有する遷移金属化合物を使用した、いわゆるメタロセン触媒が開発され、オレフィンの触媒重合において、触媒活性が非常に高く特異な立体規則性が得られること、有機溶媒への可溶性あるいは狭い分子量分布の実現などの観点から、高分子工業界において注目され、その工業化や活発な改良研究がなされ続けられている。
しかしながら、オレフィン重合分野においては現時点において、その経済性などの総合的な理由により依然としてチーグラー触媒を利用したオレフィンの重合方法が主として採用され、メタロセン触媒は未だに開発のいわゆる過渡期にあるといえる状況である。
【0004】
すなわち、メタロセン触媒の優れた特性を工業的に利用すべく、スラリー重合などの不均一系の反応への適用や高価なアルモキサンの代替物の採用あるいは純度の高い触媒を簡易に製造する技術の開発などが求められ、それに応じて配位子や遷移金属あるいは助触媒や第三成分などの改良について多くの提案がなされている。
特に、メタロセン触媒は、チーグラー・ナッタ触媒に比して重合反応系における不純物により敏感であり、そのためにモノマーや触媒などの原料及び重合反応系における不純物に対する制御や管理が厳しく要求され、メタロセン系触媒によるオレフィン重合の大規模で効率的な工業化への隘路となっている。
【0005】
したがって、不純物を除去して重合効率を高めるために、原料系の改良手段は最近に数多く提案されており、例えば、触媒成分から不純物を除去するためには、不純物のエーテル系化合物を含有するメタロセン化合物をハロゲン化炭化水素溶媒などで洗浄して精製し重合活性を高める方法(特許文献2を参照)、不純物を含む遷移金属・芳香族系化合物を多孔性カーボン充填液体クロマトにより分画して精製する方法(特許文献3を参照)、有機溶媒を使用して金属ハロゲン化物などの無機不純物を分離し、粒状吸着性物質により有機不純物を除去する方法(特許文献4を参照)などが開示されている。
さらに、不純物を除去して重合効率を高めるために、具体的な不純物の例示は特にないものの、不純物を除去する除去剤(スカベンジャー)として有機アルミニウム化合物を使用することも開示されている(例えば、特許文献5を参照)。この技術では、触媒の解毒剤である除去剤の有機アルミニウムとしては、トリエチルアルミニウムやトリイソブチルアルミニウムなどが主として使用されている。
なお、この場合において、従来は、上記有機アルミニウム化合物で掃去できない触媒毒はないと考えられていた。しかし、それにもかかわらず、後述するように本発明者らの詳細な検討により、意外にも、ハロゲン含有化合物及び酸素含有化合物がメタロセン触媒にとって大きな触媒毒となることが見出された。
【0006】
一方、メタロセン触媒の工業的な活用に対するもうひとつの隘路ともいえる経済性の改良のために、メタロセン触媒の製造における経費を下げることも重要であり、そのために、触媒製造後や重合反応後の回収溶媒や未反応ガスを触媒製造や重合反応に再使用することも必要であって、これは廃溶媒や廃ガスによる環境汚染の防止のための観点からもなされるべきことである。
そのために、例えば、水洗除去工程と蒸留工程及び吸着工程さらに水添工程を経て精製する重合使用溶媒の精製方法(特許文献6を参照)、再使用すべき溶媒を吸着剤と接触させてメタロセン化合物由来成分を吸着除去する方法(特許文献7を参照)、再使用される原料ガスの精製のために重合反応後の未反応ガスを固定層式吸着塔に通して不純物の除去を行うことで、メタロセン触媒の活性低下を防ぐ方法(特許文献8を参照)などが開示されている。
【0007】
そして、以上のいずれの方法においても、不純物は十分には解毒ないしは除去されないようで、触媒活性や重合効率は十分に完全なものとはなっていない。また、メタロセン触媒の触媒毒物質を特定して、それに対して有効な手段を採用する方法も未だ実現化されていない。
【0008】
【前記した従来技術における各特許文献の一括表示】
特許文献1:特開平6−206924号公報(特許請求の範囲の請求項1、段落0013、段落0063)
特許文献2:特開平7−97388号公報(要約、特許請求の範囲の請求項1)
特許文献3:特開平9−47602号公報(要約、特許請求の範囲の請求項1)
特許文献4:特表平11−510545号公報(要約、特許請求の範囲の請求項1)
特許文献5:特開平5−140227号公報(段落0061)
特許文献6:特開平3−31304号公報(特許請求の範囲の請求項1、第1頁右下欄)
特許文献7:特開2001−62202号公報(特許請求の範囲の請求項1)
特許文献8:特開平8−3226号公報(要約、特許請求の範囲の請求項1)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、メタロセン触媒は、チーグラー・ナッタ触媒に比して重合反応系における不純物により敏感であり、それゆえモノマーや触媒などの原料及び重合反応系における不純物に対する制御や管理が厳しく要求され、メタロセン系触媒によるオレフィン重合の大規模で効率的な工業化への隘路となっており、そのために、メタロセン触媒の製造における不純物に対する制御や管理を充分に効率的に行って、触媒活性や重合効率を高く保持することが、本発明の解決すべき課題であり、また、一方で、メタロセン触媒の工業的な活用に対するもうひとつの隘路ともいえる経済性の改良のために、メタロセン触媒の製造における経費を下げることも重要であり、そのために、触媒製造後や重合反応後の回収溶媒や未反応ガスを触媒製造や重合反応に再使用することも必要であって、その際に、触媒毒となる不純物を充分に除去し管理して触媒活性や重合効率を高く保持することも、本発明の解決すべき課題である。
【0010】
すなわち、重ねて言えば、メタロセン系触媒における上述のような状況において、触媒や溶媒などの原料における不純物に対する的確な制御により、触媒活性や重合効率を高めて、メタロセン触媒の性能を充分に発揮させ、安定な重合反応を維持せしめ、また、回収溶媒などの原料の再使用をする触媒の製造に際して触媒活性や重合効率を高く保持することにより、メタロセン系触媒によるオレフィン重合の大規模で効率的かつ経済的な工業化を具現化することが、新しい重要な課題であると考えられる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述の課題は、メタロセン触媒の改良における現状を俯瞰すれば、メタロセン触媒によるオレフィンの重合において重要なもののひとつであると理解されるが、従来においては、前述した特許文献2〜8に見られるように、触媒や溶媒などの個々の原料における、特定されることの少ない不純物の除去による精製に着目されていただけであり、触媒の製造に際して、高い触媒活性の保持と触媒製造時の回収溶媒の再使用における不純物管理の両面を把握して、メタロセン触媒の製造における不純物に対する総合的で的確な制御を行うことは想定されていなかった。
本発明は、上述したところの、触媒製造における不純物に対する管理を充分に効率的に行って、触媒活性や重合効率を高く保持する課題と、また、触媒製造後や重合反応後の回収溶媒などを再使用する際に、触媒毒となる不純物を充分に除去し管理して触媒活性や重合効率を高く保持する課題を踏まえて、メタロセン触媒の性能を充分に発揮させ安定な重合反応を維持せしめ、それにより、メタロセン系触媒によるオレフィン重合の大規模で効率的かつ経済的な工業化を具現化することを目指すものである。
【0012】
なお、本発明の完成に先立ち同様な観点から、触媒における不純物に対する管理を充分に効率的に行って、触媒活性や重合効率を高く保持し、また、触媒製造後や重合反応後の回収溶媒や未反応ガスなどを再使用する際に、触媒毒となる不純物を充分に除去し管理して触媒活性や重合効率を高く保持する課題を解決して、メタロセン触媒の性能を充分に発揮させ安定な重合反応を維持せしめるために、本発明におけるメタロセン触媒製造時の不純物管理ではなく、メタロセン触媒によるオレフィン重合時の不純物管理を行う発明を、本発明者は先に創作して既に出願している(特願2002−338580号)。
【0013】
本発明者は、商業的な規模におけるメタロセン触媒の製造に際して、製造した触媒の触媒活性の保持と触媒製造時の回収溶媒の再使用における不純物管理の両面の観点から、メタロセン触媒の製造における不純物に対する総合的で的確な制御を行う手段を求める過程において、前記した従来の触媒や溶媒などについての個々の不純物に対する除去技術を踏まえて、回収溶媒の新たな精製法やメタロセン触媒の触媒活性を損ねる触媒毒となる化合物あるいはその制御法などについて思考し検討を巡らし、回収溶媒における不純物の分析を重ね、触媒毒となると考えられる個々の化合物についての触媒への影響やその制御と管理などを求めて、実験による検索と考察を重ねた。
その過程の結果として、メタロセン触媒の製造においては、特に回収溶媒を使用する場合には、不純物としてハロゲン含有化合物と酸素含有化合物が存在して、それらがメタロセン触媒の触媒活性の低下をもたらすことを知見し確認するに到った。
【0014】
なお、メタロセン触媒においては、不純物として酸素含有化合物やハロゲン含有化合物として、エーテル系化合物や金属ハロゲン化物が存在して、それらがメタロセン触媒の触媒活性の低下をもたらすことは、従来において知られていたが(前記の特許文献2及び4を参照)、これらの先行技術においては、メタロセン触媒におけるエーテル系化合物や金属ハロゲン化物など個々の不純物を、ハロゲン化炭化水素溶媒で洗浄して除去する、あるいは、有機溶媒を使用して金属ハロゲン化物などの無機不純物を分離除去するだけの技術であって、本発明のように、メタロセン触媒の製造に際して、製造した触媒の触媒活性の保持と触媒製造時の回収溶媒の再使用における不純物管理の両面の観点から、メタロセン触媒の製造時における不純物に対する総合的で的確な制御を行う手段を示唆するものではない。
また、前記した従来の文献(特許文献6の第3頁右上欄を参照)において、チーグラー・ナッタ触媒による重合における重合溶媒を再使用のために精製する際に、有機塩素化合物の除去の記載が見られるが、単に他の不純物と共に溶媒から除去するという記載だけで、その量の記載もなくメタロセン触媒製造時における制御についても何の記載もないから、本発明の先行技術となるものではない。
そして、回収溶媒中のメタロセン錯体金属に対する不純物濃度は、重合時のそれに比べてはるかに高く、より被毒の影響を受けやすいと考えられるが、その具体的な解決方法は上記のいずれの文献にも示唆もされていない。
【0015】
ここで驚くべきことに、メタロセン触媒のメタロセン錯体自体に含有されるハロゲンは、このような悪影響をもたらさず、むしろ触媒活性や重合効率を高める作用をなすことも判明した。もっとも、従来においてハロゲン含有化合物は重合系によい効果を与えることがあり、ハロゲン化アルキルアルミニウム化合物を含有する系で重合を行うと活性が向上するということが知られている(特開平11−49812号公報の段落0051を参照)。しかし、ハロゲン含有化合物のこの作用は、特定のメタロセン化合物と特殊なイオン交換性層状化合物との併用の条件下に使用される場合に限られ、例外的なものと考えられる。
【0016】
前述したように、本発明者は、メタロセン触媒の製造において、使用する回収溶媒すなわちチーグラー・ナッタ触媒の製造やその触媒を使用したオレフィン重合から回収した炭化水素溶媒中に存在する、不純物に対する総合的で的確な制御を行って、高い触媒活性を発揮できるための触媒合成条件を実験的に詳細に吟味検討することにより、不純物としてハロゲン含有化合物と酸素含有化合物が存在して、それらがメタロセン触媒の触媒活性の低下をもたらすことを知見し確認するに到り、また、触媒活性には有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の量が深く関与し、その量は重合反応に導入されるメタロセン触媒の中心金属の量に密接に関連することを推認して、幾度の実験により具体的に有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の量を規定するに到り、本発明の中心構成を形成することができた。
【0017】
そして、具体的には、メタロセン触媒製造の合成反応槽に存在する有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の混入をできるだけ抑制すること、より具体的には、合成反応槽に導入されるメタロセン錯体の中心金属に対して、ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物を特定量以下とすることにより、得られる触媒の性能を充分に発揮させ、安定なポリオレフィンの生産が維持できることが実現できた。
本発明の本質は、特に、商業的規模の製造プラントにおいて行われているメタロセン触媒合成のための溶媒の再使用の際に混在してくる、ハロゲン不純物及び/又は酸素含有化合物が、メタロセン触媒の触媒活性に悪影響を及ぼすことを見出した点にあり、かかる見地から、触媒の活性と重合効率を高める試みは画期的なものであるといえる。
【0018】
本発明は、次の発明単位群から構成されるものであって、第一の発明を基本発明単位とし、第二以下の発明は、基本発明を具体化ないしは実施態様化するものである。(なお、これらの全発明群をまとめて総称して、「本発明」ということがある。)
[1] 炭化水素溶媒を用いてメタロセン触媒を製造するに際し、当該溶媒中に含まれる有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の存在量を、下記式(I)を満たすように制御することを特徴とする、メタロセン触媒の製造方法。
式(I): [H]*[O]/[M] ≦ 0.1
(ここで、[H]*[O]は、有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物のモル数を表わし、[M]は、メタロセン錯体の中心金属のモル数を表わす。)
[2] 式(I): [H]*[O]/[M] ≦ 0.01 を満たすように制御することを特徴とする、[1]におけるメタロセン触媒の製造方法。
[3] 制御されるべき有機ハロゲン化合物及び酸素含有化合物が、触媒成分に由来する以外の化合物であることを特徴とする、[1]又は[2]におけるメタロセン触媒の製造方法。
[4] 制御されるべき有機ハロゲン化合物が、炭素数1〜10のハロゲン化炭化水素であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかにおけるメタロセン触媒の製造方法。
[5] 制御されるべき酸素含有化合物が、エーテル化合物であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかにおけるメタロセン触媒の製造方法。
[6] 炭化水素溶媒がチーグラー・ナッタ触媒の製造に、あるいは当触媒を用いたオレフィンの重合に使用された回収溶媒であることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかにおけるメタロセン触媒の製造方法。
[7] メタロセン触媒が、下記成分(A)と成分(B)、及び必要に応じて成分(C)からなるものであることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかにおけるメタロセン触媒の製造方法。
成分(A): 共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期律表4〜6族の遷移金属化合物
成分(B): 助触媒
成分(C): 有機アルミニウム化合物
[8] 成分(B)が、アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性化合物並びにルイス酸、固体酸、及びイオン交換性層状珪酸塩のいずれかであることを特徴とする、[7]におけるメタロセン触媒の製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下においては、本発明群の実施の形態を、すなわち本発明群の詳細を、メタロセン触媒の合成における有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の制御を中心に、具体的に詳しく説明する。
【0020】
(1)メタロセン触媒の製造(合成)について
1.メタロセン触媒の製造方法
本発明は、前述のように、炭化水素溶媒を用いてメタロセン触媒を製造するに際し、当該溶媒中に含まれる有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の存在量を制御することを特徴とする、メタロセン触媒の製造方法であるが、メタロセン触媒の製造方法としては、従来から周知で汎用されている方法を適宜に採用する。従来法としては、例えば、反応容器中のトルエンなどの炭化水素溶媒中にて、予め化学処理した助触媒としてのイオン交換性層状珪酸塩などと、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドを、さらに必要により有機アルミニウム化合物などを反応処理させればよく、さらに詳しくは、後述する本発明の各実施例に記載されている。
【0021】
2.炭化水素溶媒
炭化水素溶媒としては、具体的には、汎用されているヘキサンやヘプタンなどの飽和脂肪族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素が使用される。
【0022】
好ましくは、炭化水素溶媒としては、前述したように、メタロセン触媒の工業的な活用に対する経済性の改良のために、すなわちメタロセン触媒の製造における経費を下げるために、主として、チーグラー・ナッタ触媒の触媒製造後や、チーグラー・ナッタ触媒による重合反応後の回収溶媒を本発明の触媒製造に再使用する。これは廃溶媒による環境汚染の防止のための観点からも必要なことである。
【0023】
すなわち、ポリオレフィンの商業的生産においては、経済的利点から同じ石油化学コンビナート敷地内に、オレフィンの重合用触媒の製造設備およびポリオレフィンの製造設備を保有している場合が多い。さらに、経済的観点および環境保護の観点から、これらの設備において炭化水素溶媒を使用する場合には、使用後の溶媒を廃棄せず、回収・精製して再使用することが通常である。
ところで、チーグラー・ナッタ触媒はハロゲン含有化合物や電子供与体化合物を必須成分とするため、回収溶媒には有機ハロゲン化物や酸素含有化合物が含まれるが、当該化合物を含有する回収・精製溶媒がメタロセン触媒の製造や重合に使用された場合にどのような不都合があるかは、本発明者が知る限り、これまで報告されていない。
【0024】
3.不純物
溶媒中に含まれる不純物及びその量的制御については詳しくは後述するが、溶媒中に含まれるとは、回収溶媒に溶解されて含有されてきたものと共に、触媒製造の原料に由来するものや触媒製造装置の汚れから来るものなどを包括する。
【0025】
(2)有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の制御について
1.モル比による規定
本発明は、前述のように、炭化水素溶媒を用いてメタロセン触媒を製造するに際し、当該溶媒中に含まれる有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の存在量を、下記式(I)を満たすように制御することを特徴とする、メタロセン触媒の製造方法であり、
式(I): [H]*[O]/[M] ≦ 0.1
すなわち、溶媒中に混入される有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物のモル数を、導入されるメタロセン錯体の遷移金属のモル数に対して、0.1以下となるように、これらの化合物の混入量を制御することを特徴とするメタロセン触媒の製造の改良方法を基本構成とするものであって、その構成の採用により、回収溶媒の再使用による触媒製造の経費削減と共に、製造した触媒の活性を高く保持し、それにより触媒系の性能を充分に発揮させ、ポリオレフィンの安定な生産が実現できる。
【0026】
前述したように、本発明者は、メタロセン触媒の製造において、使用する回収溶媒すなわちチーグラー・ナッタ触媒の製造やその触媒を使用したオレフィン重合から回収した炭化水素溶媒中に存在する、不純物に対する総合的で的確な制御を行って、高い触媒活性を発揮できるための触媒合成条件を実験的に詳細に吟味検討することにより、触媒活性には有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の量が深く関与し、その量は重合反応に導入されるメタロセン触媒の中心金属の量に密接に関連することを推認して、幾度の実験により具体的に有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の量を式(I)で表記されるモル比の規定に特定したのである。
そして、この規定は、後述する実施例と比較例の対比検討により実証され確認されている。
【0027】
本発明は、さらに、メタロセン触媒の種類によっては、好ましくは、式(I): [H]*[O]/[M] ≦ 0.05 を満たすように、より好ましくは、≦0.01を満たすように、制御することによる、メタロセン触媒の製造方法であり、この規定により、実施例4にて実証されているように、より高い触媒活性が得られる。
【0028】
なお、制御される各化合物における、「及び/又は」とは不純物として両方が存在する場合はその合計量を意味し、どちらか一方のみが存在する場合は各量を意味する。また、有機ハロゲン含有化合物とは、触媒毒となるハロゲン、特に、塩素、臭素、ヨウ素を含有する有機ハロゲン化合物を指し、酸素含有化合物とは当該化合物の構造式の中に酸素原子が存在することを意味し、化合物が分子状酸素を物理的に包含していることを意味するものではない。
【0029】
また、制御されるべき化合物において重要なことであるが、前述のとおりに、メタロセン触媒のメタロセン錯体自体に含有されるハロゲンや酸素は、このような悪影響をもたらさず、むしろ触媒活性や重合効率を高める作用をなすことも判明し、そしてまた、触媒成分に由来する有機ハロゲン化合物と酸素含有化合物については、ホウ素化合物のような助触媒、あるいは触媒を担持する担体などのなかに、その構成成分としてハロゲンや酸素を含有するものがあるが、助触媒あるいは担体などは、触媒においてそれ自体の有効性が評価されて使用されるものであるから、ハロゲンや酸素を含有するものであっても使用することができ、本発明においては、このような成分によって供給されるハロゲンや酸素を含有する化合物は、その制御の対象から外すほうが好ましい。
もっとも、触媒各成分に付随している不純物としての有機ハロゲン化合物や酸素含有化合物は、予め精製除去しておくことが好ましい。
本発明においては、触媒毒となるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が対象であるが、通常は塩素が想定される。
ところで、フッ素を含有するものは重合系に対してよい結果を与える場合がある。かかる意味において、本発明は、選択された反応系において、その機能を充分に発揮させるための技術であると理解することができる。
【0030】
2.有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の混入阻止
原料系と触媒合成反応系の両系において、制御の対象となる不純物すなわち有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物に対する総合的で的確な制御を行えば、オレフィン重合時の触媒活性や重合効率を有効に高めることができるので、できるだけ合成反応槽に有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物が混入し存在することを阻止することが重要である。
前述したように、有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物は、溶媒特に回収溶媒や触媒の原料に由来するもの、触媒合成反応中に副反応生成物として生じるもの、触媒合成装置からの汚れとしてもたらされるものなどがあり、その存在量も原料の不純度や重合反応の条件などにより決まってくる。それらをできるだけ減らすために、溶媒特に回収溶媒や触媒の原料などを予め十分に精製し、合成反応における副反応を制御し、合成装置からの汚れを生じないように処置しておくことなどが必要となる。
【0031】
回収溶媒や触媒原料の精製法としては、通常の手段が使用され、例えば、化学反応による方法あるいは蒸留や吸着などの物理的な方法又はこれらの組み合わせによる方法を用いることができる。触媒の合成反応における副反応の制御は、温度や圧力などの諸条件を検討して生成するハロゲン副生成物及び/又は酸素含有化合物の量を制限する。合成装置からの汚れ防止には、シール剤にはできるだけハロゲンや酸素を含まないものを使用し、又あらかじめ装置内を清浄に保持しておくことが必要である。
【0032】
3.有機ハロゲン化合物の由来(主たる出所の例示)
メタロセン触媒の重合活性を低下させる触媒毒である有機ハロゲン化合物の出所となる化合物としては、次のようなものが例示される。
a.アルミニウム原子含有化合物として
アルミニウム原子含有有機ハロゲン化合物の主な混入経路としては、チーグラー・ナッタ触媒によるオレフィン重合で用いた溶媒に、触媒原料の有機アルミニウムに付随した不純物として混入し、メタロセン触媒の製造反応にその溶媒を転用する場合が挙げられる。
【0033】
具体的な化合物の例としては、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどのハロゲン化アルキルアルミニウムが挙げられる。
有機アルミニウムの場合、精製により不純物として含まれる塩素のようなハロゲン成分を除去することは極めて困難であるので、混入経路の遮断、特に配管や反応槽内の洗浄などによりハロゲン成分を混入させないことが重要となる。
【0034】
b.ハロゲン化炭化水素として
ハロゲン化炭化水素は、触媒製造の溶媒やそれの希釈に使用される有機溶媒中に混入されることが多い。特に、チーグラー・ナッタ触媒を製造した際に使用した溶媒を回収再利用している場合には、三塩化チタンや四塩化チタンなどに含まれる塩素原子などと溶媒(廃液)などが何らかの反応を起こした場合に生成してしまい、そのまま混入してしまう恐れがある。
主として制御されるべき有機ハロゲン化合物は、炭素数1〜10のハロゲン化炭化水素である。
また、触媒合成反応における反応槽や配管のガスケットに使用されるシール剤成分にも含まれていることがあり、これも混入の原因となる。
【0035】
具体的な化合物の例示としては、クロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロプロパン、ジクロロプロパン、トリクロロプロパン、クロロブタン、ジクロロブタン、クロロペンタン、ジクロロペンタン、クロロヘキサン、ジクロロヘキサン、クロロヘプタン、ジクロロヘプタン、ポリクロロトリフルオロエタンなどの脂肪族系のものが挙げられる。
なお、有機ハロゲン化合物として、芳香族化合物やヘテロ原子を含む化合物の混入もありうる。
【0036】
4.酸素含有化合物の由来(主たる出所の例示)
チーグラー・ナッタ触媒の合成やそれによる重合時に発生する有機アルミニウム成分や触媒成分を含有した溶媒を失活させるために、通常、水もしくはアルコールが使用される。このアルコール成分や新たに生成したアルコール成分などが回収溶媒の蒸留塔で加熱脱水され、又、吸着塔での脱水反応によりエーテルが生成して、メタロセン触媒製造用の回収溶媒にエーテル化合物として混入する場合がある。あるいは、触媒成分として使用していたエーテルドナーそのものが除去されずに混入する場合がある。
【0037】
具体的な化合物の例示としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジビニルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシプロパン、ジメトキシブタン、ジメトキシベンゼンなどが挙げられる。
【0038】
5.有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物による重合反応の阻害についての考察
有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物は、遷移金属化合物に配位し、活性点を変質させてしまうことで、正常なオレフィン重合を阻害すると考えることができる。
一般的には、有機アルミニウムを用いることにより、極性化合物により活性点が変質してしまうことを抑制する作用が知られているが、有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物は極性化合物であるにも関わらず、掃去剤の有機アルミニウムによる活性点の変質の抑制ができない特異的な挙動を示す。
この理由としては、ハロゲン原子及び/又は酸素含有化合物が持っているルイス塩基性、すなわち、カチオン種と相互作用しやすい性質が有機アルミニウムでは失われていないことによるものと考えている。
【0039】
6.ハロゲン原子及び/又は酸素含有化合物の分析方法
メタロセン触媒合成反応中にハロゲンを分析して合成反応中にハロゲン量を制御するために使用される、ハロゲン化合物、例えば、塩素化合物の分析方法としては、ハロゲン(塩素)原子の定量が可能な測定手法が適用される。原子吸光法、ガス又は液体クロマトグラフを用いた方法、予め過剰な硝酸銀により塩化銀を沈殿させた後、余分の硝酸銀を硫酸第二鉄アンモニウム指示薬によりチオシアン酸アンモニウム溶液で滴定または吸光度測定により定量する分析方法などが使用される。
また、酸素含有化合物の定量方法としてはガスクロマトグラフが例示できる。
【0040】
(3)メタロセン触媒について
本発明で使用するメタロセン触媒は、公知のものであれば特に制限無く利用できる。メタロセン触媒は一般に、(A)共役五員環配位子を有する周期律表第4族などの遷移金属化合物からなるメタロセン錯体と、それを活性化させる(B)助触媒を必須成分とし、及び、必要に応じて使用される(C)有機アルミニウム化合物から構成される。
オレフィン重合プロセスの特性によっては、粒子化が必須とされるため、さらに(D)担体を構成要素とする場合がある。(なお、本明細書の記載においては、元素の周期律表として短周期型のものを使用している。)
【0041】
1.メタロセン錯体
本発明において用いられるメタロセン錯体としては、代表的なものとして共役五員環配位子を有する周期律表第4〜6族の遷移金属化合物のメタロセン錯体が挙げられ、これらのうち、下記一般式のどちらかで表されるものが好ましい。
【0042】
【化1】
【0043】
式中、AおよびA’は置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基である。この置換基の例としては炭素数1〜30の炭化水素基である。この炭化水素基は一価の基としてシクロペンタジエニル基と結合していても、またこれが複数存在するときにその内の2個がそれぞれ他端(ω−端)で結合してシクロペンタジエニルの一部と共に環を形成していてもよい。その他の例としては、インデニル基、フルオレニル基、またはアズレニル基などが挙げられる。これらの基はさらに副環上に置換基を有していてもよい。これらの中で好ましいものは、インデニル基またはアズレニル基である。
Qは、二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基を表し、具体的にはアルキレン基、シリレン基あるいはゲルミレン基であることが好ましい。
Mは、周期律表第4〜6族から選ばれる遷移金属の金属原子、好ましくは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどである。特に、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
XおよびYは補助配位子であり、成分(B)と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限りX及びYは配位子の種類が制限されるものではなく、各々水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、あるいはヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基が例示できる。これらのうち好ましいものは、炭素数1〜10の炭化水素基、あるいはハロゲン原子である。
【0044】
2.助触媒(活性化剤成分)
助触媒は、メタロセン錯体を活性化する成分で、メタロセン錯体の補助配位子と反応して当該錯体を、オレフィン重合能を有する活性種に変換させうる化合物であり、具体的には下記(B−1)〜(B−4)が挙げられる。
(B−1)アルミニウムオキシ化合物
(B−2)成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸
(B−3)固体酸
(B−4)イオン交換性層状珪酸塩
【0045】
(B−1)アルミニウムオキシ化合物においては、アルミニウムオキシ化合物がメタロセン錯体を活性化できることは周知であり、そのような化合物としては、具体的には次の各一般式で表される化合物が挙げられる。
【0046】
【化2】
【0047】
上記各一般式中、R1は水素原子または炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。また、複数のR1はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、pは0〜40、好ましくは2〜30の整数を示す。
一般式のうち、一番目及び二番目の式で表される化合物は、アルミノキサンとも称される化合物であって、これらの中では、メチルアルミノキサン又はメチルイソブチルアルミノキサンが好ましい。上記のアルミノキサンは、各群内および各群間で複数種併用することも可能である。そして、上記のアルミノキサンは、公知の様々な条件下に調製することができる。
一般式の三番目で表される化合物は、一種類のトリアルキルアルミニウム又は二種類以上のトリアルキルアルミニウムと、一般式R2B(OH)2で表されるアルキルボロン酸との10:1〜1:1(モル比)の反応により得ることができる。
一般式中、R1およびR2は、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。
また、(B−1)は、無機酸化物などの担体に担持されたものであってもよい。
【0048】
(B−2)の化合物は、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸であり、このようなイオン性化合物としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどの陽イオンと、トリフェニルホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などの有機ホウ素化合物との錯化物などが挙げられる。
なお、上記のルイス酸のある種のものは、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物としてみなすこともできる。
また、(B−2)は、無機酸化物などの担体に担持されたものであってもよい。
【0049】
(B−3)の固体酸としては、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシアなどが挙げられる。
【0050】
(B−4)のイオン交換性層状化合物は、粘土鉱物の大部分を占めるものであり、好ましくはイオン交換性層状珪酸塩である。
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に「珪酸塩」と略記する場合がある。)は、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、且つ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライトなど)が含まれることが多いが、それらを含んでいてもよい。珪酸塩は各種公知のものが使用できる。具体的には、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
2:1型鉱物類
モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどのスメクタイト族; バーミキュライトなどのバーミキュライト族; 雲母、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母族; パイロフィライト、タルクなどのパイロフィライト−タルク族; Mg緑泥石などの緑泥石族など。
2:1リボン型鉱物類
セピオライト、パリゴルスカイトなど。
【0051】
本発明で原料として使用する珪酸塩は、上記の混合層を形成した層状珪酸塩であってもよい。本発明においては、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることが更に好ましく、モンモリロナイトが特に好ましい。
本発明で使用する珪酸塩は、天然品または工業原料として入手したものは、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を施すことが好ましい。具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。これらの処理を互いに組み合わせて用いてもよい。本願発明において、これらの処理条件には特に制限はなく、公知の条件が使用できる。
また、これらイオン交換性層状珪酸塩には、通常吸着水および層間水が含まれるため、不活性ガス流通下で加熱脱水処理するなどして、水分を除去してから使用するのが好ましい。
【0052】
3.有機アルミニウム化合物
メタロセン触媒系に、必用に応じて使用される有機アルミニウム化合物としては、本発明においては、ハロゲンを含有しないものが使用され、具体的には
一般式: AlR3−iXi
(式中、RはC1〜C20の炭化水素基、Xは水素、アルコキシ基、iは0≦i≦3の数を示す。但し、Xが水素の場合は、iは0<i<3とする。)で示される化合物が使用される。
【0053】
具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム又はジエチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルコキシ含有アルキルアルミニウム又はジエチルアルミニウムハライドなどのハライド含有アルキルアルミニウムである。
これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。さらに好ましくは、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムである。
【0054】
4.触媒成分の使用量その他
成分(A)と成分(B)の使用量は、それぞれの組み合わせの中で最適な量比で用いられる。
成分(B)が、アルミニウムオキシ化合物の場合はAl/遷移金属のモル比は通常10以上100000以下、さらに100以上20000以下、特に100以上10000以下の範囲が適する。
一方、成分(B)としてイオン性化合物あるいはルイス酸を用いる場合は、対遷移金属のモル比は0.1〜1000、好ましくは0.5〜100、更に好ましくは1〜50の範囲である。
成分(B)として、固体酸あるいはイオン交換性層状珪酸塩を用いる場合は、成分(B)1gにつき、遷移金属錯体0.001〜10ミリモル、好ましくは0.001〜1ミリモルの範囲である。
これらの使用比率は、通常の割合例を示すものであって、触媒がその目的に沿ったものであれば、上に述べた使用比率の範囲によって、本発明が限定されることにはならないことは当然である。
【0055】
遷移金属錯体と助触媒からなるポリオレフィン製造用触媒をオレフィン重合用(本重合)の触媒として使用する前に必要に応じて、担体に担持させた後、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどのオレフィンを予備的に少量重合する予備重合処理を施してもよい。予備重合方法は公知の方法が使用できる。
これらのオレフィンにおいても、本発明で制御する有機ハロゲン化合物と酸素含有化合物の混入を防ぐことが好ましい。
【0056】
(4)重合に使用するオレフィン及び重合反応について
本発明の製造方法により得られたメタロセン触媒は、もちろん通常のオレフィン重合に使用できる。使用できるオレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ビニルシクロアルカンなどが挙げられ、さらにブタジエンなどの共役ジエン、1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン、スチレンあるいはこれらの誘導体などが挙げられる。特に、プロピレンが好適に使用される。
また、重合は単独重合の他にランダム共重合やブロック共重合にも好適に適用できる。共重合の際のコモノマーとしては、上記のオレフィンの他に、エチレンも挙げることができる。
【0057】
重合反応は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサンなどの不活性炭化水素や液化α−オレフィンなどの溶媒の存在下に、あるいは実質的に溶媒や単量体の液相が存在しない状態で気相重合により行うのが好ましい。気相重合は、例えば流動床、撹拌床、撹拌・混合機を備えた撹拌流動床などの重合反応装置を用いて行うことができる。重合温度、重合圧力などの条件は特に限定されないが、重合温度は、一般に−50〜350℃、好ましくは0〜300℃であり、また、重合圧力は通常、常圧〜約2000kgf/cm2、好ましくは常圧〜1500kgf/cm2、更に好ましくは常圧〜1300kgf/cm2の範囲である。また、重合系内に分子量調節剤として水素を存在させてもよい。
【0058】
【実施例】
以下において、実施例により本発明を詳細に具体的に示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下においては、本発明によるメタロセン触媒の製造を各製造例に記載し、それらを使用した重合を各実施例として記載している。
なお、触媒成分の取り扱いは、全て窒素雰囲気下で行った。また、実施例、比較例及び参考例に使用した溶媒は以下の2種類を基本とした。
[回収ヘプタンA]
チーグラー・ナッタ触媒製造プラントにて、水洗、蒸留、吸着工程を経て回収されたヘプタンを分析したところ、9wtppmのn−BuCl、15wtppmの(n−Bu)2Oが検出された。
[回収ヘプタンB]
上記回収ヘプタンAをさらに吸着処理したところ、n−BuClは1wtppm、(n−Bu)2Oは1wtppmとなった。
【0059】
[ハロゲン原子などの分析]
1.ガス中の塩素原子含有化合物の捕集と分析
これは、発明の効果を確認するために、実施例と比較例の対比の検証などに必要である。
エチレン、プロピレン、水素、窒素中の塩素原子含有化合物を以下の方法で捕集した。
NaOH水溶液(0.1mmol/L)を2本の吸収管にそれぞれ70ml添加し、それを直列に接続し吸収管を氷冷した。測定したいガス30〜60Lを約0.5〜1.0L/分で吸収管内を流通させながら塩素原子含有化合物を吸収させた。次いで、それぞれの吸収管のNaOH水溶液を回収し、イオンクロマトグラフにより分析を行った。
装置:DIONEX DX−500
カラム:AG11+AS11
恒温層温度:35℃
溶離液流量:2ml/分
溶離液:NaOH水溶液(0.1mmol/L)
検出器:電気伝導度
その結果、実験に使用したモノマーなどの原料、溶媒および窒素ガスなどの溶液中に含まれる塩素原子の量はいずれも検出限界である20ppb以下であった。
【0060】
2.溶液中の有機ハロゲン化合物の分析
炭化水素溶媒中の有機ハロゲン化合物を以下のガスクロマトグラフにて分析した。
装置:島津GC14B
カラム:HP−1 30m*0.25mmID*1.0μm
Inj Temp:200℃
Det Temp:200℃
キャリヤガスHe:1.0ml/min 11.6psi
スプリット:1/10
試料:1μl
検出器:FID
カラム温度:40℃(5min)〜300℃、5℃/min
【0061】
3.溶液中の酸素含有化合物の分析
炭化水素溶媒中のエーテル化合物を以下のガスクロマトグラフ/AEDにて分析した。
装置:島津GC14B
カラム:HP−1701 60m*0.25mmID*1.0μm
Inj Temp:250℃
カラム温度:50℃(5min)〜200℃、5℃/min
AED:GCBlock/XferLine:280℃
CovityBLock:280℃
キャリヤガスHe:25psi
Total flow:22ml/min
試料:1.0ml
【0062】
4.有機アルミニウム希釈液中の塩素原子含有化合物の捕集と分析
分液ロートに分析したい有機アルミニウム化合物として0.5g相当となるようにヘプタン希釈液を分取し、溶液の全量を200mlとなるように調整した。これに、NaOH水溶液(0.1mmol/L)40mlを加え、振とう機にセットし1時間振とさせた。その後、NaOH水溶液相から15ml分取し、6Nの硝酸水溶液にて中和した。中和試料に硫酸第二鉄アンモニウム溶液(硫酸第二鉄アンモニウム、60gを6Nの硝酸に溶解させたもの)10mlを加えた。次にチオシアン酸第二水銀溶液(チオシアン酸第二水銀3.0gをエタノール(95vol%)1Lに溶解させたもの)5mlを加え、水で全量50mlとし、振とう発色させた。発色10分後に460nmの吸光度を測定した(日立分光光度計:U−3200)。
別途実施したブランク測定と既知の塩素含有量の試料を用いて作成した検量線との比較により、測定サンプル中の塩素含有量の定量を行った。その結果、今回用いた有機アルミニウム化合物中の塩素濃度は、検出限界の10wtppm以下であった。
【0063】
[ポリマーの物性値]
メルトフローレート(MFR)
JIS−K−6758ポリプロピレン試験方法(条件:230℃、荷重2.16Kgf)により測定した。
【0064】
[触媒製造例1]
以下の操作は、不活性ガス下、脱酸素、脱水処理された溶媒、モノマーを使用して実施した。
1.触媒の調製
3Lの撹拌翼の付いたガラス製フラスコに、蒸留水1130g、続いて濃硫酸750gをゆっくりと添加し、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=25μm 粒度分布=10μm〜60μm)を300g分散させ、90℃まで1時間かけ昇温し、5時間その温度を維持した後、1時間で50℃まで冷却した。このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を4リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を4回繰り返した。最終の洗浄液(濾液)のpHは、3.42であった。
回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は227gであった。この化学処理したモンモリロナイトの組成は、Alが5.0%、Mgが0.8%、Feが1.6%、Siが37.7%含まれていた。
化学処理したモンモリロナイトを減圧下、200℃で、2時間加熱処理を実施した。また、内容積1Lの撹拌翼のついたガラス製反応器に上記で得た乾燥モンモリロナイト20gを導入し、回収ヘプタンBを73ml添加した。さらにトリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液(50mmol)を加え、室温で撹拌した。1時間後、回収ヘプタンBにて洗浄(残液率1%未満)し、スラリーを200mlに調製した。
次に、予め(r)−ジメチルシリレンビス[2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル]ジルコニウムジクロリド0.3mmolに回収ヘプタンBを87ml加えてスラリー化し、引き続きトリイソブチルアルミニウム(3mmol)のヘプタン溶液4.2mlを添加し、室温にて1時間反応させておいた混合液を、モンモリロナイトスラリーに加え、室温で1時間撹拌した。
続いて、窒素で十分置換を行った内容積1Lの撹拌式オートクレーブに回収ヘプタンBを200ml導入し、40℃に保持した。
そこに先に調製したモンモリロナイト/錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを10g/時間の速度で供給し、温度を40℃に維持した。4時間後、プロピレンの供給を停止し、さらにそのまま1時間維持した。回収した予備重合触媒スラリーから、上澄みを約300ml除き、トリイソブチルアルミニウム(12mmol)のヘプタン溶液を17ml添加し、10分間撹拌した後に、40℃にて減圧下熱処理した。この操作により触媒1g当たりポリプロピレンを2.06g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(BuCl+Bu2O)のモル比は0.02となる。
【0065】
[触媒製造例2]
触媒製造例1で使用した回収ヘプタンBに試薬特級のBuClを添加し、ヘプタン中のBuCl濃度を7wtppmとした以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.12g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(BuCl+Bu2O)のモル比は0.10となる。
【0066】
[触媒製造例3]
触媒製造例1で使用した回収ヘプタンBに試薬特級のBuClを添加し、ヘプタン中のBuCl濃度を11wtppmとした以外は同様に触媒合成を行った。
触媒1g当たりポリプロピレンを2.20g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(BuCl+Bu2O)のモル比は0.15となる。
【0067】
[触媒製造例4]
触媒製造例1で使用した回収ヘプタンBの代わりに回収ヘプタンAを使用した以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.16g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(BuCl+Bu2O)のモル比は0.25となる。
【0068】
[触媒製造例5]
触媒製造例2で添加したBuClの代わりに試薬特級のペンチルクロリドを添加し、ヘプタン中の有機Cl(BuCl+PeCl)濃度を12wtppmとした以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.09g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(有機Cl+Bu2O)のモル比は0.14となる。
【0069】
[触媒製造例6]
触媒製造例2で添加したBuClの代わりに試薬特級のペンチルクロリドを添加し、ヘプタン中の有機Cl(BuCl+PeCl)濃度を30wtppmとした以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.08g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(有機Cl+Bu2O)のモル比は0.34となる。
【0070】
[触媒製造例7]
触媒製造例2で添加したBuClの代わりにジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)を添加し、ヘプタン中の有機Cl(BuCl+DEAC)濃度を13wtppmとした以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.28g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(有機Cl+Bu2O)のモル比は0.12となる。
【0071】
[触媒製造例8]
触媒製造例2で添加したBuClの代わりにジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)を添加し、ヘプタン中の有機Cl(BuCl+DEAC)濃度を30wtppmとした以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.25g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(有機Cl+Bu2O)のモル比は0.27となる。
【0072】
[触媒製造例9]
触媒製造例2で添加したBuClの代わりにBu2Oを添加し、ヘプタン中のBu2O濃度を9wtppmとした以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.26g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(BuCl+Bu2O)のモル比は0.09となる。
【0073】
[触媒製造例10]
触媒製造例2で添加したBuClの代わりにBu2Oを添加し、ヘプタン中のBu2O濃度を25wtppmとした以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.15g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(BuCl+Bu2O)のモル比は0.24となる。
【0074】
[触媒製造例11]
触媒製造例2で添加したBuClの代わりにi−Pr2Oを添加し、ヘプタン中のエーテル濃度を20wtppmとした以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.25g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(BuCl+i−Pr2O)のモル比は0.19となる。
【0075】
[触媒製造例12]
内容積500mlの撹拌翼のついたガラス製反応器に、Crompton社製MAO ON SiO2 2.4g(20.7mmol−Al)を添加し、回収ヘプタンBを50ml添加し、予め試薬特級トルエンで希釈した(r)−ジメチルシリレンビス[2−メチル−ベンゾインデニル]ジルコニウムジクロリド溶液20ml(0.0637mmol)を加え、続いてトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液を4.14ml(3.03mmol)加えた。その後、室温にて2時間反応させ、更にプロピレンを供給し、予備重合を行った。さらに室温にて減圧乾燥し、触媒1g当たりポリプロピレンを2.15g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(BuCl+Bu2O)のモル比は0.01である。
【0076】
[触媒製造例13]
触媒製造例12で使用した回収ヘプタンBの代わりに、回収ヘプタンAを使用した以外は同様に触媒合成を行った。触媒1g当たりポリプロピレンを2.10g含む予備重合触媒が得られた。触媒合成時の錯体金属に対する(BuCl+Bu2O)のモル比は0.12となる。
【0077】
[触媒製造例14]
充分に窒素置換したフラスコに、脱水および脱酸素した回収ヘプタンA200mlを導入し、次いでMgCl2を0.4mol、Ti(O−n−C4H9)4 を0.8mol導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)を48ml導入し、3時間反応させた。生成した固体成分を回収ヘプタンAで洗浄した。次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製した回収ヘプタンAを50ml導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で0.06mol導入した。次いで回収ヘプタンA125mlに、SiCl40.1molを混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、回収ヘプタンAで洗浄した。次いで回収ヘプタンA25mlにフタル酸クロライド0.006molを混合して、70℃、30分間でフラスコへ導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、回収ヘプタンAで洗浄した。次いで、TiCl425mlを追加し、95℃で3時間反応した。反応終了後回収ヘプタンAで洗浄し、固体成分を得た。引き続き上記固体成分4gを300mlフラスコに小分けし,回収ヘプタンA100ml、ビニルトリメチルシラン1ml(8mmol)、t−ブチルメチルジメトキシシランを0.8ml(3.9mmol)、トリエチルアルミニウムを25ml(15mmol)導入し、30℃で2時間反応した。反応終了後、回収ヘプタンAで洗浄し固体成分を得た。この固体成分中にはチタンが2.44重量%、t−ブチルメチルジメトキシシランが4.2重量%、フタル酸ジブチルが0.98重量%含まれていた。
【0078】
[触媒製造例15]
触媒製造例14において、回収ヘプタンAに代えて回収ヘプタンBを使用する以外、同様に触媒合成を行った。この固体成分中にはチタンが2.49重量%、t−ブチルメチルジメトキシシランが4.0重量%、フタル酸ジブチルが、0.97重量%含まれていた。触媒製造例14と差が見られなかった。
【0079】
実施例−1: プロピレン−エチレンランダム共重合体の製造
内容積3Lの撹拌式オートクレーブ内を窒素で十分乾燥し、プロピレンで置換した後に、トリイソブチルアルミニウム(2.0mmol)のヘプタン溶液を加え、エチレン15g、水素34ml、続いて液体プロピレン750gを導入し、70℃に昇温しその温度を維持した。
触媒製造例1で製造した予備重合触媒をヘプタンにスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)15mgを圧入し重合を開始した。槽内温度を70℃に維持した。1時間後、エタノール5mlを加え、残ガスをパージして得られたポリマーを乾燥した。その結果、260gのポリマーが得られた。触媒活性は17300g−PP/g−触媒・時であった。MFRは2.4(dg/分)、エチレン含量は1.5重量%であった。
【0080】
実施例−2
触媒製造例2で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、252gのポリマーが得られた。触媒活性は16800g−PP/g−触媒・時であった。MFRは2.7(dg/分)、エチレン含量は1.7重量%であった。
【0081】
比較例−1
触媒製造例3で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、210gのポリマーが得られた。触媒活性は14000g−PP/g−触媒・時であった。MFRは2.8(dg/分)、エチレン含量は1.6重量%であった。
【0082】
比較例−2
触媒製造例4で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、188gのポリマーが得られた。触媒活性は12500g−PP/g−触媒・時であった。MFRは3.3(dg/分)、エチレン含量は1.6重量%であった。
【0083】
比較例−3
触媒製造例5で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、217gのポリマーが得られた。触媒活性は14500g−PP/g−触媒・時であった。MFRは3.1(dg/分)、エチレン含量は1.8重量%であった。
【0084】
比較例−4
触媒製造例6で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、175gのポリマーが得られた。触媒活性は11700g−PP/g−触媒・時であった。MFRは3.5(dg/分)、エチレン含量は1.7重量%であった。
【0085】
比較例−5
触媒製造例7で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、213gのポリマーが得られた。触媒活性は14200g−PP/g−触媒・時であった。MFRは3.0(dg/分)、エチレン含量は1.8重量%であった。
【0086】
比較例−6
触媒製造例8で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、165gのポリマーが得られた。触媒活性は11000g−PP/g−触媒・時であった。MFRは4.1(dg/分)、エチレン含量は1.8重量%であった。
【0087】
実施例−3
触媒製造例9で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、255gのポリマーが得られた。触媒活性は17000g−PP/g−触媒・時であった。MFRは3.1(dg/分)、エチレン含量は1.8重量%であった。
【0088】
比較例−7
触媒製造例10で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、195gのポリマーが得られた。触媒活性は13000g−PP/g−触媒・時であった。MFRは2.9(dg/分)、エチレン含量は1.9重量%であった。
【0089】
比較例−8
触媒製造例11で製造した触媒を用いる以外、実施例1と同様に重合を行った結果、202gのポリマーが得られた。触媒活性は13500g−PP/g−触媒・時であった。MFRは2.8(dg/分)、エチレン含量は1.7重量%であった。
【0090】
実施例−4
200Lのオートクレーブに0.5mol/Lのトリエチルアルミニウムヘプタン溶液2g、プロピレン45kg、水素1.30gを加え、40℃に維持した。次いで触媒製造例12で製造した予備重合触媒をヘプタンにスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)0.8gを圧入し、65℃に昇温して重合を開始した。3時間重合を行った。その後、エタノール100mlを添加し、重合を停止した。残ガスをパージ後、乾燥し、MFRが40.4(dg/分)、12.8kgのポリプロピレンを得た。触媒活性は16000g−PP/g−触媒であった。
【0091】
比較例−9
触媒製造例13で製造した触媒を1.6g用いる以外、実施例4と同様に重合を行った。MFRが41.5(dg/分)、14.8kgのポリプロピレンを得た。触媒活性は9250g−PP/g−触媒であった。
【0092】
参考例−1
撹拌および温度制御装置を有する内容積1.5Lのステンレス鋼製オートクレーブに、充分に脱水および脱酸素したn−ヘプタンを500ml、TEAを125mgおよび触媒製造例14で製造した触媒固体成分を10mg、次いで水素を390ml導入し、昇温昇圧し、重合圧力を5kg/cm2G、重合温度を75℃、重合時間を2時間の条件でプロピレンを重合させた。重合終了後、得られたポリマースラリーを濾過により分離し、ポリマーを乾燥させた。その結果、195.0gのポリマーが得られた。触媒活性は19500(g−PP/g−触媒)である。濾過液中に溶解していた低立体規則性のアタックポリマーは、0.35重量%であった。沸騰ヘプタン抽出試験より、全製品I.Iは98.4重量%であった。また、得られたポリマーは、MFRが22.9(dg/分)、ポリマー嵩密度が0.45(g/cc)であった。
【0093】
参考例−2
参考例1において触媒製造例15を使用する以外全く同じに重合を行った。その結果、190gのポリマーが得られた。触媒活性は19000(g−PP/g−触媒)である。濾過液中に溶解していた低立体規則性のアタックポリマーは、0.38重量%であった。沸騰ヘプタン抽出試験より、全製品I.Iは98.5重量%であった。また、得られたポリマーは、MFRが23.5(dg/分)、ポリマー嵩密度が0.46(g/cc)であり、参考例1と差が見られなかった。
【0094】
以上の、各実施例、各比較例及び各参考例の全ての結果を、まとめて表1及び2に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
[実施例と比較例の結果の考察]
以上の各実施例と各比較例を対照することにより、本発明では触媒活性が優れ重合効率が高いオレフィン重合を実現できることが明らかとなっている。
各実施例においては、有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物のモル数と、メタロセン錯体の中心金属のモル数の比が0.1以下で、好ましくは0.05以下で、本発明の式(I)を満たして、高い触媒活性が得られ、各比較例においては式(I)を満たしていないから、触媒活性が低く損なわれている。
特に、実施例4と対応する比較例9では触媒活性の差異が著しく、本発明の式(I)が0.01以下の場合に特に優れた結果が得られている。
なお、チーグラー・ナッタ触媒を使用する各参考例では、回収ヘプタンの種類によって触媒活性には差が無く、時間当たりの活性効率では、概して、メタロセン触媒を使用した各実施例より活性が低くなっている。
【0098】
【発明の効果】
本発明のメタロセン触媒の製造方法においては、溶媒中の不純物を制御して、特にチーグラー・ナッタ触媒などの触媒製造後の回収溶媒及びその触媒を使用したオレフィン重合後の回収溶媒を再使用しても、高い触媒活性のメタロセン触媒が得られる。
メタロセン触媒は、チーグラー・ナッタ触媒に比して重合反応系における不純物により敏感であり、それゆえモノマーや触媒などの原料及び重合反応系における不純物に対する制御や管理が厳しく要求されメタロセン系触媒によるオレフィン重合の大規模で効率的な工業化への隘路となっているのに、本発明において、回収溶媒を使用しても高い触媒活性のメタロセン触媒が得られること、及び、一方で、メタロセン触媒の工業的な活用に対するもうひとつの隘路ともいえる経済性の改良のために、本発明において、触媒製造後や重合反応後の回収溶媒を再使用してメタロセン触媒の製造における経費を下げうることは、メタロセン触媒技術に重要な寄与をなす。
Claims (8)
- 炭化水素溶媒を用いてメタロセン触媒を製造するに際し、当該溶媒中に含まれる有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物の存在量を、下記式(I)を満たすように制御することを特徴とする、メタロセン触媒の製造方法。
式(I): [H]*[O]/[M] ≦ 0.1
(ここで、[H]*[O]は、有機ハロゲン化合物及び/又は酸素含有化合物のモル数を表わし、[M]は、メタロセン錯体の中心金属のモル数を表わす。) - 式(I): [H]*[O]/[M] ≦ 0.01 を満たすように制御することを特徴とする、請求項1に記載されたメタロセン触媒の製造方法。
- 制御されるべき有機ハロゲン化合物及び酸素含有化合物が、触媒成分に由来する以外の化合物であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載されたメタロセン触媒の製造方法。
- 制御されるべき有機ハロゲン化合物が、炭素数1〜10のハロゲン化炭化水素であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載されたメタロセン触媒の製造方法。
- 制御されるべき酸素含有化合物が、エーテル化合物であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載されたメタロセン触媒の製造方法。
- 炭化水素溶媒がチーグラー・ナッタ触媒の製造に、あるいは当触媒を用いたオレフィンの重合に使用された回収溶媒であることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載されたメタロセン触媒の製造方法。
- メタロセン触媒が、下記成分(A)と成分(B)、及び必要に応じて成分(C)からなるものであることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載されたメタロセン触媒の製造方法。
成分(A): 共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期律表4〜6族の遷移金属化合物
成分(B): 助触媒
成分(C): 有機アルミニウム化合物 - 成分(B)が、アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性化合物並びにルイス酸、固体酸、及びイオン交換性層状珪酸塩のいずれかであることを特徴とする、請求項7に記載されたメタロセン触媒の製造方法。
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2003
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