JP2004307610A - ゴム変性スチレン系樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】流動性、アイゾット衝撃強度(IZOD)、落錘衝撃強度および曲げ弾性率等の物性に優れると共に、良好な成形加工性を有するゴム変性スチレン系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】特定三種の(共)重合体からなるゴム分と特定の粒径分布を有するスチレン系重合体粒子(b’)とを含むゴム状粒子(a)を分散相とし、スチレン系重合体(b1)(b)を連続相とするゴム変性スチレン系樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】特定三種の(共)重合体からなるゴム分と特定の粒径分布を有するスチレン系重合体粒子(b’)とを含むゴム状粒子(a)を分散相とし、スチレン系重合体(b1)(b)を連続相とするゴム変性スチレン系樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のゴム変性スチレン系樹脂組成物に関する。更に詳しくは、流動性、アイゾット衝撃強度(IZOD)、落錘衝撃強度および曲げ弾性率等の物性に優れると共に良好な成形加工性を有するゴム変性スチレン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴム状重合体とスチレン系単量体からなるゴム変性スチレン樹脂は優れた成形加工性を有し、且つその製造方法はABSと比べて安価であるため、幅広く各種の電気製品、OA機器、包装容器および雑貨用品の原料として使用されている。
【0003】
一般にゴム変性スチレン樹脂は耐衝撃性の要求される分野に用いられるが、その場合、高いアイゾット衝撃強度が要求されるとともに実用衝撃強度と言われる成型品の落錘衝撃強度も非常に重要となる。
【0004】
上記の二種類の物性を同時に改善するためにスチレン系樹脂を各種のゴムで変性し、耐衝撃性を付与することが試みられ、これまでに特定の結合状態分布を有するポリブタジエンの存在下でスチレンを重合させる方法(特許文献1参照)、B−A型又はA−B−A型スチレン−ブタジエンブロック共重合ゴムの存在下でスチレンを塊状重合又は塊状−懸濁重合させる方法(特許文献2、特許文献3参照)等が提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの方法により得られたゴム変性スチレン系樹脂のうち、ポリブタジエンゴムで変性したものは良好なアイゾット衝撃強度を示すが落錘衝撃強度が不十分になり、またスチレン‐ブタジエンのブロック共重合ゴムで変性したものは落錘衝撃強度は良好であるがアイゾット衝撃強度は低くなる傾向があり、何れにしてもアイゾット衝撃強度および落錘衝撃強度との二つの物性を同時に満足することが困難であった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭61−50488号公報
【特許文献2】
特開昭42−17492号公報
【特許文献3】
特開昭61−143425号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、流動性、アイゾット衝撃強度、落錘衝撃強度および曲げ弾性率等の物性に優れると共に良好な成形加工性を有するゴム変性スチレン系樹脂組成物を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ゴム状粒子(a)を分散相とし、スチレン系重合体(b)を連続相とするゴム変性スチレン系樹脂組成物において、
前記ゴム状粒子(a)が、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)5〜30重量%、シス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)10〜50重量%及びシス−1,4結合含量が25〜50モル%のブタジエン重合体(a3)30〜75重量%からなるゴム分と、該粒子中に内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)とを含有し、
前記スチレン系重合体粒子(b’)は、その粒子数の80%以上が粒径0.05〜0.4μmで、5%以下が粒径0.6μm以上である、
ゴム変性スチレン系樹脂組成物に関する。
【0009】
本発明では、上記のように特定のゴム状粒子(a)を分散相としてスチレン系重合体(b)を連続相とし、ゴム状粒子(a)中に内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒径分布を調整することによって、流動性、アイゾット衝撃強度(IZOD)、落錘衝撃強度および曲げ弾性率等の物性に優れると共に、良好な成形加工性を有するゴム変性スチレン系樹脂組成物が得られる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられるビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)としては、(A−B)n、(A−B)n−A等種々の型(線状、分岐状、星状等)のブロック共重合体が使用できる。この(A−B)n型のブロック共重合体は公知の方法(例えば特公昭36−19286号)にしたがい、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物を、有機リチウム化合物を触媒に用いて重合して得ることができる。
【0011】
ビニル芳香族化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン(vinyl toluene)、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレンなどを挙げることができるが、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンであり、さらに好ましくはスチレンである。
また共役ジエン系化合物としては、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエンなどのほか、炭素数4〜7の各種分枝状共役ジエン化合物が挙げられるが、好ましくは1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、特に好ましくは1,3−ブタジエンである。
【0012】
本発明において用いられるビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)は、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(該ブロックにおいてビニル芳香族化合物の含量は50重量%以上)と、少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(該ブロックにおいて共役ジエン化合物の含量は50重量%以上)とからなるブロック共重合体である。
【0013】
本発明において、このブロック共重合体(a1)は、ビニル芳香族化合物の含量が5〜50重量%であり、好ましくは10〜45重量%で、さらに好ましくは15〜40重量である。
本発明において、前記のブロック共重合体(a1)に対するビニル芳香族化合物の比率が5〜50重量%の領域であると、ゴム変性スチレン系樹脂組成物の剛性およびアイゾット衝撃強度が良好となる。
【0014】
本発明に用いるシス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)は、公知の製造法、例えば、ニッケルまたはコバルト化合物と有機アルミニウム化合物を有する触媒により、1,3−ブタジエンを主成分とする共役ジオレフィンを重合することにより得ることができる。そのミクロ構造としてはシス−1,4結合含量が90モル%以上を占め、トランス1,4結合および1,2−ビニル含量が10モル%以下を占める。
【0015】
本発明に用いるシス−1,4結合含量が25〜50モル%のブタジエン重合体(a3) は、公知の製造法、例えば、ブチルリチウム(butyl lithium)を触媒として1,3−ブタジエンを主成分とする共役ジオレフィンを重合することにより得ることができる。そのミクロ構造としてはシス−1,4結合含量が25〜50モル%を占め、トランス1,4結合および1,2−ビニル含量が75〜50モル%を占める。
【0016】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物において、ゴム状粒子(a)は、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)、シス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)、およびシス−1,4結合含量が25〜50%のブタジエン重合体(a3)からなるゴム分を含有する。これら(a1)〜(a3)の合計を100重量%とするとき、ブロック共重合体(a1)の比率は前記合計中、5〜30重量%で、好ましくは8〜28重量%で、さらに好ましくは10〜25重量%である。シス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)の比率は前記合計中、10〜50重量%で、好ましくは15〜48重量%で、さらに好ましくは20〜45重量%である。シス−1,4結合含量が25〜50モル%のブタジエン重合体(a3)の比率は前記合計中、30〜75重量%で、好ましくは32〜70重量%で、さらに好ましくは35〜65重量である。
【0017】
本発明において、ブロック共重合体(a1)の比率が前記合計中、5重量%以上であればゴム変性スチレン系樹脂組成物の曲げ弾性率が良好となる。一方30重量%以下であればゴム変性スチレン系樹脂組成物のアイゾット衝撃強度が良好となる。
【0018】
本発明において、シス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)の比率が前記合計中、10重量%以上であればゴム変性スチレン系樹脂組成物の流動性およびアイゾット衝撃強度が良好となる。一方50重量%以下であればゴム変性スチレン系樹脂組成物の曲げ弾性率および落錘衝撃強度が良好となる。
【0019】
本発明において、シス−1,4結合含量が25〜50モル%のブタジエン重合体(a3)の比率が前記合計中、30重量%以上であればゴム変性スチレン系樹脂組成物の落錘衝撃強度が良好となる。一方75重量%以下であればゴム変性スチレン系樹脂組成物の曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度が良好となる。
【0020】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、上記(a1)〜(a3)からなるゴム分とスチレン系重合体粒子(b’)とを含有するゴム状粒子(a)の分散相と、スチレン系重合体(b)より構成される連続相からなる。
【0021】
本発明においてスチレン系重合体(b)あるいはスチレン系重合体粒子(b’)を構成するために用いられるスチレン系単量体は、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレンなどであり、これらは単独で用いてもよいし、また2種以上の混合物として用いてもよい。
【0022】
また、このスチレン系重合体(b)あるいはスチレン系重合体粒子(b’)は、スチレン系単量体と他の共重合可能な不飽和化合物との共重合体でもよい。このような不飽和単量体には、例えば、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどが挙げられる。本発明で特に好ましいスチレン系単量体はスチレンであり、この単独使用、或いはこれと他の単量体の混合物であって混合物中のスチレンの含有比率が50重量%以上、更に70重量%以上、特に90重量%以上であることが好ましい。
【0023】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物において、ゴム分の含有量は2〜20重量%、更に3〜18重量%、特に4〜15重量%であることが好ましい。ゴム分の含有量が2〜20重量%であるとゴム変性スチレン系樹脂組成物の流動性、アイゾット衝撃強度、曲げ弾性率および落錘衝撃強度などの物性バランスが良くなる。このゴム分は、組成物中のゴム状粒子(a)からのゴム分である。
【0024】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、連続塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合に使用される反応装置により製造することができる。その中でも連続式塊状重合または溶液重合反応が好ましい。前記反応装置としては、プラグフロー反応装置(PFR)、完全混合式反応装置(CSTR)、及び静止型混合式反応装置などが挙げられる。反応装置の数量は1個、2個または3個以上の併用ができる。本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造方法は、上記ゴム状粒子分散相を構成するビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)、シス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)、およびシス−1,4結合含量が25〜50モル%のブタジエン重合体(a3)を、スチレン系単量体および溶媒またはスチレン系単量体と他の不飽和単量体および溶媒に溶解させ、その原料溶液を連続的に反応装置に仕込んで反応を行う。この場合、重合開始剤、連鎖移動剤を加えるのが好ましい。
【0025】
原料溶液に使用できる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、p−キシレン、o−キシレン、m−キシレン、ペンタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルブチルケトンなどが挙げられる。
本発明における溶媒の使用量は、ゴム状粒子(a)およびスチレン系重合体(b)を構成する単量体の合計量を100重量部とするとき、0〜150重量部、好ましくは0〜60重量部、さらに好ましくは0〜25重量部である。溶媒は重合が進み比較的高粘度となってから添加してもよい。重合前に2〜15重量部添加しておく方が、品質の均一性、重合温度制御の点で好ましい。
【0026】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物を製造する時に通常、重合開始剤を添加するが、その使用量は、ゴム状粒子(a)およびスチレン系重合体(b)を構成する単量体の合計量100重量部に対して 0.0005〜0.5重量部、好ましくは0.001〜0.1重量部である。重合開始剤には単官能性開始剤または多官能性開始剤がある。
単官能性開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド(benzoyl peroxide)、ジクミルパーオキサイド(dicumyl peroxide)、t−ブチルパーオキサイド(t−butyl peroxide)、t−アミルパーオキサイド(t−amyl peroxide)、t−ブチルハイドロパーオキサイド(t−butyl hydroperoxide)、クメンハイドロパーオキサイド(cumene hydroperoxide)、t−ブチルパーオキシベンゾエート、(t−butyl−peroxy benzoate)、ビス−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(di−2−ethylhexyl peroxy dicarbonate)、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(tert−butyl peroxy isopropyl carbonate、以下BPICと略称する)、シクロヘキサノンパーオキサイド(cycolhexanone peroxide)、2,2’−アゾ−ビスイソブチロニトリル(2,2’−azo−bis−isobutyronitrile)、1,1’−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル(1,1’−azo−bis−1−cyclohexane carbonitrile)、2,2’−アゾ−ビス−2−メチルブチロニトリル(2,2’−azo−bis−2−methyl butyronitrile)などが挙げられる。これらの中でベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
【0027】
多官能性開始剤としては、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(1,1−bis−t−butyl peroxy cyclohexane、以下TX−22と略称する)、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(1,1−bis−t−butyl peroxy−3,3,5−trimethyl cyclohexane、以下TX−29Aと略称する)、2,5−ジメチル−2,5−ビス−(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン[2,5−dimethyl−2,5−bis−(2−ethylhexanoyl peroxy)hexane]、4−(t−ブチルパーオキシカルボニル)−3−ヘキシル−6−[7−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ヘプチル]シクロヘキサン{4−(t−butyl peroxy carbonyl)−3−hexyl−6−[7−(t−butyl peroxy carbonyl)heptyl ]cyclohexane}、ジ−t−ブチル−ジパーオキシアゼレート(di−t−butyl−diperoxyazelate)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン[2,5−dimethyl−2,5−bis−(benzoyl peroxy)hexane]、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロ−テレフタレート(di−t−butyl peroxy−hexahydro−terephthalate、以下BPHTHと略称する)、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシルプロパン[2,2−bis−(4,4−di−t−butyl peroxy)cyclohexyl propane]、多官能モノパーオキシカーボネート(例えば米国ATOFINA社の商品名Luperox JWE)などが挙げられる。これらの中でTX−29A、BPHTHが好ましい。
【0028】
上記反応装置を用いる場合の反応温度は30〜250℃に制御するが、好ましくは50〜230℃で、更に好ましくは80〜200℃に制御する。反応装置を用いる場合の反応圧力は1〜5kg/cm2に制御する。原料溶液の反応器に於ける滞留時間は一般的に1.0〜15時間で、好ましくは2〜10時間である。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物を製造する時に重合体の分子量をコントロールするために連鎖移動剤を使用することができる。この連鎖移動剤の使用量は、ゴム状粒子(a)およびスチレン系重合体(b)を構成する単量体の合計量を100重量部とするとき、0〜0.1重量部で、好ましくは0.01〜0.07重量部である。本発明に使用される連鎖移動剤としては単官能性連鎖移動剤及び多官能性連鎖移動剤があり、単官能性連鎖移動剤としては以下のものが挙げられる。
【0029】
1) メルカプタン(mercaptan)類:メチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、(stearyl mercaptan)、t−ドデシルメルカプタン(t−dodecyl mercaptan、以下TDMと略称する)、n−プロピルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、t−ノニルメルカプタンなど。
【0030】
2) アルキルアミン(alkyl amines)類:モノエチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミンなど。
【0031】
3) その他:ペンタフェニルエタン(pentaphenylethane)、α−メチルスチレンダイマー(α−methyl styrene dimer)、テルピノレン(terpinolene)がある。
【0032】
これらの中でn−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンが好ましい。
【0033】
また、多官能性連鎖移動剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)[pentaerythritol tetrakis(3−mercapto propionate)]、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)[pentaerythritol tetrakis(2−mercapto acetate)]、、トリメチロールプロパントリス−(2−メルカプトアセテート)[trimethylolpropane tris(2−mercaptoacetate)]、トリメチロールプロパントリス−(3−メルカプトプロピオネート)[trimethylolpropane tris(3−mercapto propionate)、以下TMPTと略称する]、トリメチロールプロパントリス(6−メルカプトヘキサネート)[trimethylolpropane tris(6−mercapto hexanate)]などが挙げられ、これらの中でTMPTが好ましい。
【0034】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、上記原料溶液を連続的に反応装置に仕込んで反応を行い、原料溶液に含まれる全単量体の転換率が所定の値に達した後、反応装置からこの重合体溶液を連続的に取り出し、揮発装置に導入して未反応の単量体及び揮発成分を除去し、その後、造粒して得られる。揮発装置としては減圧脱揮装置または押出脱揮装置を使用することができ、そしてコンデンサーで未反応の単量体及び揮発成分を回収し、必要に応じて回収液中の水分を除いてから原料溶液として再び使うことができる。
【0035】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物において、分散相のゴム状粒子(a)中にはスチレン系重合体が粒子状〔粒子(b’)〕に内蔵されており、このゴム状粒子中に内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子数の80%以上が粒径0.05〜0.4μmであり、5%以下が粒径0.6μm以上である。この粒径の測定法は、後述の実施例に記載した方法による。
【0036】
ゴム状粒子(a)の分散相における内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒径分布は、重合開始剤、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)、連鎖移動剤及び溶剤の種類や量を調整することにより、また反応器、攪拌機および反応条件などを調整することによってコントロールすることができる。例えば適度な量の重合開始剤を添加すると内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子数を増加することができ、且つ内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子径を減少することができる。また、適量のビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)、シス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)、およびシス−1,4結合含量が25〜50モル%のブタジエン重合体(a3)を併用した場合、特にこの三者の合計100重量%中、(a1)が5〜30重量%を占め、(a2)が10〜50重量%を占め、(a3)が30〜75重量%を占めるときに、内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子数を増加でき、且つ内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子径を減少でき、本発明の内蔵されたスチレン系重合子(b’)の粒径分布を達成することができる。
【0037】
上記ゴム状粒子(a)中に内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)は、その粒子数の80%以上、好ましくは82%以上が粒径0.05〜0.4μmである。内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)は、その粒子数の80%以上が粒径0.05〜0.4μmであるとゴム変性スチレン系樹脂組成物のアイゾット衝撃強度、曲げ弾性率および落錘衝撃強度が良くなる。一方、内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子数の5%以下、好ましくは3%以下が粒径0.6μm以上である。内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子数の5%以下が粒径0.6μm以上であるとゴム変性スチレン系樹脂組成物のアイゾット衝撃強度、曲げ弾性率および落錘衝撃強度が良くなる。
【0038】
本発明のゴム状粒子(a)からなる分散相はサラミ(salami)構造やコアシェル構造を持つ粒子より構成される。サラミ構造とは、一個のゴム状粒子内に複数の内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)が点在する構造を指し、好ましくは5個以上が点在するものである。また、コアシェル構造とは、一個のゴム状粒子内に一個の内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)が存在する構造を指す。本発明においては、このサラミ構造を含むゴム状粒子は全部のゴム状粒子(a)の50重量%以上を占めることが望ましい。このサラミ構造を含むゴム状粒子の割合(重量%)は電子顕微鏡を用いて切片の写真を撮ってゴム粒径を基に分析計算することでも確認できる。
【0039】
本発明のゴム状粒子(a)からなる分散相の粒子径は、電子顕微鏡で撮った切片の写真を基に測定する。この分散相の重量平均粒径は1.5〜3.5μmが好ましく、更に1.8〜3.2μmで、特に2.0〜3.0μmであることが好ましい。
【0040】
また、本発明のゴム変性スチレン系樹脂の重合においては、必要に応じて酸化防止剤及び/又は滑剤を添加することもでき、これによって更に良好な物性を得ることが出来る。酸化防止剤は樹脂の酸化劣化を防止する目的で用いるが、代表的なものとしては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、トリス(ノニルフェニルホスファイト)(以下TNPPと略称する)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシフェニル)プロピオネート(以下IX−1076と略称する)、チオジエチレンビス(3,5−ジ−t−4−ハイドロキシハイドロシンナメート)、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−4−ハイドロキシハイドロシンナメート)]メタン、2,4−ビス[(オクチルチオ)ホスファイト]、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、トリエチレングリコールビス−3−(3−t−ブチル−4−ハイドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,1−ビス(2−メチル−4−ハイドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン等が挙げられる。
【0041】
また、滑剤としてはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸、エチレンビスステアリルアマイド、メチレンビスステアリルアマイド、パルミチルアマイド、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸パルミチル、ポリプロピレングリコールモノステアレート、ベヘン酸、ステアリン酸等の化合物、ポリエチレンワックス、モンタンワックス等が挙げられる。
【0042】
更に、本発明のゴム変性スチレン系樹脂には、シリコーンオイル、紫外線吸収剤、染料、顔料、充填剤、可塑剤、離型剤、帯電防止剤等の添加剤を必要に応じて加えることができる。
【0043】
【実施例】
<評価方法>
以下の実施例及び比較例で行った分析方法及び評価方法を示す。
1.溶融指数(MI,melt index)
ASTM D−1238法で測定した。
測定の温度:200℃
荷重さ:5kg
◯:8.0g/10 min以上
△:4.0g/10 min以上8.0g/10 min未満
×:4.0g/10 min未満
【0044】
2.アイゾット衝撃強度(IZOD)
ASTM D−256法で測定した。
試験片規格:厚さ1/4”(約6.35mm),ノッチ付き。
◯:8.0kg・cm/cm以上
×:8.0kg・cm/cm未満
【0045】
3.落錘衝撃強度(FDI)
TOYOSEIKI社製の落錘衝撃強度試験機を用いて、荷重さ2kgの落錘を用いて試験片が破裂するまでの最大高さを測定した。
試験片規格:厚さ1/8”(約3.18mm)、直径55mmの射出成型円盤
◯:500 mm以上
×:500 mm未満
【0046】
4.曲げ弾性率(FM)
ASTM D−790法で測定する。
試験片規格:厚さ1/4” (約6.35mm)
◯:19000 kg/cm2以上
×:19000 kg/cm2未満
【0047】
5.ゴム状粒子の重量平均粒径
ゴム状粒子の重量平均粒径は、樹脂組成物からミクロトーム(microtome)により作った薄膜を染色して倍率10,000倍の透過型電子顕微鏡により撮った写真中の約 200〜1000個のゴム状粒子(分散相)の各粒径を測定し、次式により重量平均粒径を求める。
【0048】
【数1】
【0049】
6.ゴム状粒子に内蔵されたスチレン系重合体粒子の粒径分布
ゴム変性スチレン系樹脂を透過型電子顕微鏡を用いて10,000倍の写真を撮り、写真上の12cm×9.5cm区域内において分散相のゴム状粒子内に内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子径を0.05μmまで測定する。楕円形をしている場合は、長径aと短径bとの平均値、即ち(a+b)/2を以って粒子径とする。内蔵されたスチレン系重合体(b’)の粒子径が0.05〜0.4μmおよび0.6μm以上の粒子の粒子総数を計算し、これらと内蔵された全体のスチレン系重合体粒子の粒子総数との比率を求める。内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)が不規則であればその相対的円形面積の直径を用いて計算する。
【0050】
<実施例1>
ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)として、スチレン‐ブタジエンのブロック共重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名はKIBITON PB−511、スチレンの含有量は30重量%である) 1.5重量部、シス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)として、シス−1,4結合含量が98モル%のブタジエン重合体(宇部興産株式会社製、商品名UBE−POL BR−015H) 3.0重量部、シス−1,4結合含量が25〜50モル%のブタジエン重合体(a3)として、シス−1,4結合含量が35モル%のブタジエン重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名KIBIPOL PR−255) 3.0重量部、スチレン単量体92.5重量部(これらの合計は100重量部)、溶媒としてエチルベンゼン6重量部、重合開始剤としてTX−29A 0.015重量部、連鎖移動剤としてTDM 0.025重量部、酸化防止剤としてIX−1076 0.2重量部とTNPP 0.1重量部、および滑剤としてステアリン酸亜鉛(以下Zn−Stと略称する) 0.2重量部の原料混合液を完全に溶解させる。上記の原料混合液を三槽直列且つ容量が100リットルであるプラグフロー反応槽ヘ連続的に仕込む。反応入口の温度をそれぞれ110℃、130℃および160℃に保持し、反応槽の圧力をすべて3kg/cm2にし、反応槽内での原料滞留時間を6.5時間にすることにより、反応槽の転換率をそれぞれ20重量%、50重量%および81重量%とした。
【0051】
上記第3反応槽から混合液を連続的に取り出して揮発装置に導入し、減圧脱揮装置に導入して未反応の単量体及び揮発成分を除去させ、この後、造粒して本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物を得た。得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.1重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は1.8μmである。このゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。また上記のゴム変性スチレン系樹脂組成物を透過型電子顕微鏡で撮った写真を図1に示す。写真の倍率は10,000倍である。図1には、サラミ(salami)構造を有するゴム状粒子(a)からなる分散相が連続相であるスチレン系樹脂に分散している様子が示されており、且つゴム状粒子内に内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)が点在する構造が示されている。該組成物では、スチレン系重合体粒子(b’)の粒子数の85%が粒径0.05〜0.4μmで、3.2%が粒径0.6μm以上である。
【0052】
<実施例2>
(a2)成分として、シス−1,4結合含量が96モル%のブタジエン重合体(宇部興産株式会社製、商品名UBE−POL BR−23H) 2.5重量部、(a3)成分として、シス−1,4結合含量が35モル%のブタジエン重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名KIBIPOL PR−245) 3.5重量部を使用した以外は、実施例1と同様な操作方法にて製造した。最終反応槽の転換率は80重量%とし、得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.2重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は2.5μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。
【0053】
<実施例3>
(a1)成分のスチレン−ブタジエンのブロック共重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名KIBITON PB−511) を1.0重量部とし、(a2)成分として、シス−1,4結合含量が96モル%のブタジエン重合体(宇部興産株式会社製、商品名UBE−POL BR−23H) 2.0重量部を使用し、(a3)成分として、シス−1,4結合含量が35モル%のブタジエン重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名KIBIPOL PR−245) 4.5重量部を使用した以外は、実施例1と同様な操作方法にて製造した。最終反応槽の転換率は80重量%とし、得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.2重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は2.8μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。
【0054】
<実施例4>
スチレン単量体を90重量部とし、アクリル酸n−ブチルを2.5重量部使用した以外は、実施例1と同様な操作方法にて製造した。最終反応槽の転換率は81重量%とし、得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.1重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は2.1μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。
【0055】
<比較例1>
(a1)成分を使用せず、(a2)成分のシス−1,4結合含量が98モル%のブタジエン重合体(宇部興産株式会社製、商品名UBE−POL BR−015H) を3.5重量部とし、(a3)成分のシス−1,4結合含量が35モル%のブタジエン重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名KIBIPOL PR−255) を4.0重量部とし、連鎖移動剤TDMを添加しない以外は、実施例1と同様な操作方法にて製造した。最終反応槽の転換率は81重量%とし、得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.1重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は2.6μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。またこのゴム変性スチレン系樹脂組成物を透過型電子顕微鏡で撮った写真を図2に示す。写真の倍率は10,000倍である。図2に示されるように、該組成物も分散相であるゴム状粒子(a)はサラミ(salami)構造を有するが、スチレン系重合体粒子(b’)の粒子数の70%が粒径0.05〜0.4μm、12%が粒径0.6μm以上であり、本発明の範囲を外れている。
【0056】
<比較例2>
(a2)成分を使用せず、(a3)成分のシス−1,4結合含量が35モル%のブタジエン重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名KIBIPOL PR−255)を6.0重量部にした以外は、実施例1と同様な操作方法にて製造した。最終反応槽の転換率は80重量%とし、得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.2重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は1.9μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。
【0057】
<比較例3>
(a1)成分のスチレン−ブタジエンのブロック共重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名KIBITON PB−511) を2.0重量部とし、(a2)成分のシス−1,4結合含量が98モル%のブタジエン重合体(宇部興産株式会社製、商品名UBE−POL BR−015H)を5.5重量部とした以外は、実施例1と同様な操作方法にて製造した。最終反応槽の転換率は81重量%とし、得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.1重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は1.8μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。
【0058】
<比較例4>
重合開始剤TX−29Aを添加せず、溶媒としてエチルベンゼンを3重量部使用した以外は、実施例1と同様な操作方法にて製造した。最終反応槽の転換率は72重量%とし、得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.4重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は3.1μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。
【0059】
<比較例5>
ゴム状粒子(a)の製造に(a1)成分のスチレン−ブタジエンのブロック共重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名KIBITON PB−511)のみを7.5重量部使用した以外は、実施例1と同様な操作方法にて製造した。最終反応槽の転換率は80重量%とし、得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.2重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は0.8μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。
【0060】
<比較例6>
ゴム状粒子(a)の製造に(a3)成分のシス−1,4結合含量が35モル%のブタジエン重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名KIBIPOL PR−255)のみを7.5重量部使用した以外は、実施例1と同様な操作方法にて製造した。最終反応槽の転換率は81重量%とし、得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.1重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は3.9μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。
【0061】
<比較例7>
エチルベンゼンを7重量部、TX−29Aを0.011重量部とした以外は実施例2と同様な操作方法にて製造した。各反応槽の転換率は、それぞれ18重量%、48重量%及び79重量%であった。得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.3重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は2.8μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
(注)表中の記号は以下のものである。
・PB−511:スチレン−ブタジエンのブロック共重合体ゴム、奇美実業股分有限公司製、商品名KIBITON PB−511。スチレンの含量は30重量%
・BR−015H:シス−1,4結合含量が98モル%のブタジエン重合体、宇部興産株式会社製、商品名UBE−POL BR−015H
・BR−23H:シス−1,4結合含量が96モル%のブタジエン重合体、宇部興産株式会社製、商品名UBE−POL BR−23H
・PR−255:シス−1,4結合含量が35モル%のブタジエン重合体、奇美実業股分有限公司製、商品名KIBIPOL PR−255
・PR−245:シス−1,4結合含量が35モル%のブタジエン重合体,奇美実業股分有限公司製,商品名KIBIPOL PR−245
・SM:スチレン単量体(styrene monomer)
・n−BA:アクリル酸n−ブチル単量体(n−butyl acrylate)
・EB:エチルベンゼン(ethyl benzene)
・TX−29A:1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ−3,3,5)−トリメチルシクロヘキサン(1,1−bis−t−butylperoxy−3,3,5−trimethyl cyclohexane)
・TDM:t−ドデシルメルカプタン(t−dodecyl mercaptan)
・IX−1076:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイロキシフェニル)プロピオネート[octadecyl−3−(3,5−di−t−butyl−4−hydroxy−phenyl)propionate]
・TNPP:トリス(ノニルフェニルフォスファイト)(trisnonyl phenyl phosphite)
・Zn−St:ステアリン酸亜鉛(zinc stearate)
【0064】
【発明の効果】
本発明は、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)、シス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)、およびシス−1,4結合含量が25〜50モル%のブダジエン重合体(a3)の混合比率をコントロールし、好ましくは適切な重合開始剤を添加することによりゴム状粒子中に内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子数の80%以上が粒径0.05〜0.4μmであり、内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子数の5%以下が粒径0.6μm以上となるように制御できる。上記のようにゴム状粒子(a)中に内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒径分布を制御すると、流動性、アイゾット衝撃強度(IZOD)、落錘衝撃強度および曲げ弾性率等の物性に優れると共に、良好な成形加工性を有するゴム変性スチレン系樹脂組成物を得ることができる。即ち、本発明は、産業上の利用価値が大きいゴム変性スチレン系樹脂組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた樹脂組成物の拡大写真。
【図2】比較例1で得られた樹脂組成物の拡大写真。
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のゴム変性スチレン系樹脂組成物に関する。更に詳しくは、流動性、アイゾット衝撃強度(IZOD)、落錘衝撃強度および曲げ弾性率等の物性に優れると共に良好な成形加工性を有するゴム変性スチレン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴム状重合体とスチレン系単量体からなるゴム変性スチレン樹脂は優れた成形加工性を有し、且つその製造方法はABSと比べて安価であるため、幅広く各種の電気製品、OA機器、包装容器および雑貨用品の原料として使用されている。
【0003】
一般にゴム変性スチレン樹脂は耐衝撃性の要求される分野に用いられるが、その場合、高いアイゾット衝撃強度が要求されるとともに実用衝撃強度と言われる成型品の落錘衝撃強度も非常に重要となる。
【0004】
上記の二種類の物性を同時に改善するためにスチレン系樹脂を各種のゴムで変性し、耐衝撃性を付与することが試みられ、これまでに特定の結合状態分布を有するポリブタジエンの存在下でスチレンを重合させる方法(特許文献1参照)、B−A型又はA−B−A型スチレン−ブタジエンブロック共重合ゴムの存在下でスチレンを塊状重合又は塊状−懸濁重合させる方法(特許文献2、特許文献3参照)等が提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの方法により得られたゴム変性スチレン系樹脂のうち、ポリブタジエンゴムで変性したものは良好なアイゾット衝撃強度を示すが落錘衝撃強度が不十分になり、またスチレン‐ブタジエンのブロック共重合ゴムで変性したものは落錘衝撃強度は良好であるがアイゾット衝撃強度は低くなる傾向があり、何れにしてもアイゾット衝撃強度および落錘衝撃強度との二つの物性を同時に満足することが困難であった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭61−50488号公報
【特許文献2】
特開昭42−17492号公報
【特許文献3】
特開昭61−143425号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、流動性、アイゾット衝撃強度、落錘衝撃強度および曲げ弾性率等の物性に優れると共に良好な成形加工性を有するゴム変性スチレン系樹脂組成物を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ゴム状粒子(a)を分散相とし、スチレン系重合体(b)を連続相とするゴム変性スチレン系樹脂組成物において、
前記ゴム状粒子(a)が、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)5〜30重量%、シス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)10〜50重量%及びシス−1,4結合含量が25〜50モル%のブタジエン重合体(a3)30〜75重量%からなるゴム分と、該粒子中に内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)とを含有し、
前記スチレン系重合体粒子(b’)は、その粒子数の80%以上が粒径0.05〜0.4μmで、5%以下が粒径0.6μm以上である、
ゴム変性スチレン系樹脂組成物に関する。
【0009】
本発明では、上記のように特定のゴム状粒子(a)を分散相としてスチレン系重合体(b)を連続相とし、ゴム状粒子(a)中に内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒径分布を調整することによって、流動性、アイゾット衝撃強度(IZOD)、落錘衝撃強度および曲げ弾性率等の物性に優れると共に、良好な成形加工性を有するゴム変性スチレン系樹脂組成物が得られる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられるビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)としては、(A−B)n、(A−B)n−A等種々の型(線状、分岐状、星状等)のブロック共重合体が使用できる。この(A−B)n型のブロック共重合体は公知の方法(例えば特公昭36−19286号)にしたがい、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物を、有機リチウム化合物を触媒に用いて重合して得ることができる。
【0011】
ビニル芳香族化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン(vinyl toluene)、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレンなどを挙げることができるが、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンであり、さらに好ましくはスチレンである。
また共役ジエン系化合物としては、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエンなどのほか、炭素数4〜7の各種分枝状共役ジエン化合物が挙げられるが、好ましくは1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、特に好ましくは1,3−ブタジエンである。
【0012】
本発明において用いられるビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)は、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(該ブロックにおいてビニル芳香族化合物の含量は50重量%以上)と、少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(該ブロックにおいて共役ジエン化合物の含量は50重量%以上)とからなるブロック共重合体である。
【0013】
本発明において、このブロック共重合体(a1)は、ビニル芳香族化合物の含量が5〜50重量%であり、好ましくは10〜45重量%で、さらに好ましくは15〜40重量である。
本発明において、前記のブロック共重合体(a1)に対するビニル芳香族化合物の比率が5〜50重量%の領域であると、ゴム変性スチレン系樹脂組成物の剛性およびアイゾット衝撃強度が良好となる。
【0014】
本発明に用いるシス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)は、公知の製造法、例えば、ニッケルまたはコバルト化合物と有機アルミニウム化合物を有する触媒により、1,3−ブタジエンを主成分とする共役ジオレフィンを重合することにより得ることができる。そのミクロ構造としてはシス−1,4結合含量が90モル%以上を占め、トランス1,4結合および1,2−ビニル含量が10モル%以下を占める。
【0015】
本発明に用いるシス−1,4結合含量が25〜50モル%のブタジエン重合体(a3) は、公知の製造法、例えば、ブチルリチウム(butyl lithium)を触媒として1,3−ブタジエンを主成分とする共役ジオレフィンを重合することにより得ることができる。そのミクロ構造としてはシス−1,4結合含量が25〜50モル%を占め、トランス1,4結合および1,2−ビニル含量が75〜50モル%を占める。
【0016】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物において、ゴム状粒子(a)は、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)、シス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)、およびシス−1,4結合含量が25〜50%のブタジエン重合体(a3)からなるゴム分を含有する。これら(a1)〜(a3)の合計を100重量%とするとき、ブロック共重合体(a1)の比率は前記合計中、5〜30重量%で、好ましくは8〜28重量%で、さらに好ましくは10〜25重量%である。シス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)の比率は前記合計中、10〜50重量%で、好ましくは15〜48重量%で、さらに好ましくは20〜45重量%である。シス−1,4結合含量が25〜50モル%のブタジエン重合体(a3)の比率は前記合計中、30〜75重量%で、好ましくは32〜70重量%で、さらに好ましくは35〜65重量である。
【0017】
本発明において、ブロック共重合体(a1)の比率が前記合計中、5重量%以上であればゴム変性スチレン系樹脂組成物の曲げ弾性率が良好となる。一方30重量%以下であればゴム変性スチレン系樹脂組成物のアイゾット衝撃強度が良好となる。
【0018】
本発明において、シス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)の比率が前記合計中、10重量%以上であればゴム変性スチレン系樹脂組成物の流動性およびアイゾット衝撃強度が良好となる。一方50重量%以下であればゴム変性スチレン系樹脂組成物の曲げ弾性率および落錘衝撃強度が良好となる。
【0019】
本発明において、シス−1,4結合含量が25〜50モル%のブタジエン重合体(a3)の比率が前記合計中、30重量%以上であればゴム変性スチレン系樹脂組成物の落錘衝撃強度が良好となる。一方75重量%以下であればゴム変性スチレン系樹脂組成物の曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度が良好となる。
【0020】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、上記(a1)〜(a3)からなるゴム分とスチレン系重合体粒子(b’)とを含有するゴム状粒子(a)の分散相と、スチレン系重合体(b)より構成される連続相からなる。
【0021】
本発明においてスチレン系重合体(b)あるいはスチレン系重合体粒子(b’)を構成するために用いられるスチレン系単量体は、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレンなどであり、これらは単独で用いてもよいし、また2種以上の混合物として用いてもよい。
【0022】
また、このスチレン系重合体(b)あるいはスチレン系重合体粒子(b’)は、スチレン系単量体と他の共重合可能な不飽和化合物との共重合体でもよい。このような不飽和単量体には、例えば、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどが挙げられる。本発明で特に好ましいスチレン系単量体はスチレンであり、この単独使用、或いはこれと他の単量体の混合物であって混合物中のスチレンの含有比率が50重量%以上、更に70重量%以上、特に90重量%以上であることが好ましい。
【0023】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物において、ゴム分の含有量は2〜20重量%、更に3〜18重量%、特に4〜15重量%であることが好ましい。ゴム分の含有量が2〜20重量%であるとゴム変性スチレン系樹脂組成物の流動性、アイゾット衝撃強度、曲げ弾性率および落錘衝撃強度などの物性バランスが良くなる。このゴム分は、組成物中のゴム状粒子(a)からのゴム分である。
【0024】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、連続塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合に使用される反応装置により製造することができる。その中でも連続式塊状重合または溶液重合反応が好ましい。前記反応装置としては、プラグフロー反応装置(PFR)、完全混合式反応装置(CSTR)、及び静止型混合式反応装置などが挙げられる。反応装置の数量は1個、2個または3個以上の併用ができる。本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造方法は、上記ゴム状粒子分散相を構成するビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)、シス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)、およびシス−1,4結合含量が25〜50モル%のブタジエン重合体(a3)を、スチレン系単量体および溶媒またはスチレン系単量体と他の不飽和単量体および溶媒に溶解させ、その原料溶液を連続的に反応装置に仕込んで反応を行う。この場合、重合開始剤、連鎖移動剤を加えるのが好ましい。
【0025】
原料溶液に使用できる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、p−キシレン、o−キシレン、m−キシレン、ペンタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルブチルケトンなどが挙げられる。
本発明における溶媒の使用量は、ゴム状粒子(a)およびスチレン系重合体(b)を構成する単量体の合計量を100重量部とするとき、0〜150重量部、好ましくは0〜60重量部、さらに好ましくは0〜25重量部である。溶媒は重合が進み比較的高粘度となってから添加してもよい。重合前に2〜15重量部添加しておく方が、品質の均一性、重合温度制御の点で好ましい。
【0026】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物を製造する時に通常、重合開始剤を添加するが、その使用量は、ゴム状粒子(a)およびスチレン系重合体(b)を構成する単量体の合計量100重量部に対して 0.0005〜0.5重量部、好ましくは0.001〜0.1重量部である。重合開始剤には単官能性開始剤または多官能性開始剤がある。
単官能性開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド(benzoyl peroxide)、ジクミルパーオキサイド(dicumyl peroxide)、t−ブチルパーオキサイド(t−butyl peroxide)、t−アミルパーオキサイド(t−amyl peroxide)、t−ブチルハイドロパーオキサイド(t−butyl hydroperoxide)、クメンハイドロパーオキサイド(cumene hydroperoxide)、t−ブチルパーオキシベンゾエート、(t−butyl−peroxy benzoate)、ビス−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(di−2−ethylhexyl peroxy dicarbonate)、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(tert−butyl peroxy isopropyl carbonate、以下BPICと略称する)、シクロヘキサノンパーオキサイド(cycolhexanone peroxide)、2,2’−アゾ−ビスイソブチロニトリル(2,2’−azo−bis−isobutyronitrile)、1,1’−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル(1,1’−azo−bis−1−cyclohexane carbonitrile)、2,2’−アゾ−ビス−2−メチルブチロニトリル(2,2’−azo−bis−2−methyl butyronitrile)などが挙げられる。これらの中でベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
【0027】
多官能性開始剤としては、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(1,1−bis−t−butyl peroxy cyclohexane、以下TX−22と略称する)、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(1,1−bis−t−butyl peroxy−3,3,5−trimethyl cyclohexane、以下TX−29Aと略称する)、2,5−ジメチル−2,5−ビス−(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン[2,5−dimethyl−2,5−bis−(2−ethylhexanoyl peroxy)hexane]、4−(t−ブチルパーオキシカルボニル)−3−ヘキシル−6−[7−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ヘプチル]シクロヘキサン{4−(t−butyl peroxy carbonyl)−3−hexyl−6−[7−(t−butyl peroxy carbonyl)heptyl ]cyclohexane}、ジ−t−ブチル−ジパーオキシアゼレート(di−t−butyl−diperoxyazelate)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン[2,5−dimethyl−2,5−bis−(benzoyl peroxy)hexane]、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロ−テレフタレート(di−t−butyl peroxy−hexahydro−terephthalate、以下BPHTHと略称する)、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシルプロパン[2,2−bis−(4,4−di−t−butyl peroxy)cyclohexyl propane]、多官能モノパーオキシカーボネート(例えば米国ATOFINA社の商品名Luperox JWE)などが挙げられる。これらの中でTX−29A、BPHTHが好ましい。
【0028】
上記反応装置を用いる場合の反応温度は30〜250℃に制御するが、好ましくは50〜230℃で、更に好ましくは80〜200℃に制御する。反応装置を用いる場合の反応圧力は1〜5kg/cm2に制御する。原料溶液の反応器に於ける滞留時間は一般的に1.0〜15時間で、好ましくは2〜10時間である。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物を製造する時に重合体の分子量をコントロールするために連鎖移動剤を使用することができる。この連鎖移動剤の使用量は、ゴム状粒子(a)およびスチレン系重合体(b)を構成する単量体の合計量を100重量部とするとき、0〜0.1重量部で、好ましくは0.01〜0.07重量部である。本発明に使用される連鎖移動剤としては単官能性連鎖移動剤及び多官能性連鎖移動剤があり、単官能性連鎖移動剤としては以下のものが挙げられる。
【0029】
1) メルカプタン(mercaptan)類:メチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、(stearyl mercaptan)、t−ドデシルメルカプタン(t−dodecyl mercaptan、以下TDMと略称する)、n−プロピルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、t−ノニルメルカプタンなど。
【0030】
2) アルキルアミン(alkyl amines)類:モノエチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミンなど。
【0031】
3) その他:ペンタフェニルエタン(pentaphenylethane)、α−メチルスチレンダイマー(α−methyl styrene dimer)、テルピノレン(terpinolene)がある。
【0032】
これらの中でn−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンが好ましい。
【0033】
また、多官能性連鎖移動剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)[pentaerythritol tetrakis(3−mercapto propionate)]、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)[pentaerythritol tetrakis(2−mercapto acetate)]、、トリメチロールプロパントリス−(2−メルカプトアセテート)[trimethylolpropane tris(2−mercaptoacetate)]、トリメチロールプロパントリス−(3−メルカプトプロピオネート)[trimethylolpropane tris(3−mercapto propionate)、以下TMPTと略称する]、トリメチロールプロパントリス(6−メルカプトヘキサネート)[trimethylolpropane tris(6−mercapto hexanate)]などが挙げられ、これらの中でTMPTが好ましい。
【0034】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、上記原料溶液を連続的に反応装置に仕込んで反応を行い、原料溶液に含まれる全単量体の転換率が所定の値に達した後、反応装置からこの重合体溶液を連続的に取り出し、揮発装置に導入して未反応の単量体及び揮発成分を除去し、その後、造粒して得られる。揮発装置としては減圧脱揮装置または押出脱揮装置を使用することができ、そしてコンデンサーで未反応の単量体及び揮発成分を回収し、必要に応じて回収液中の水分を除いてから原料溶液として再び使うことができる。
【0035】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物において、分散相のゴム状粒子(a)中にはスチレン系重合体が粒子状〔粒子(b’)〕に内蔵されており、このゴム状粒子中に内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子数の80%以上が粒径0.05〜0.4μmであり、5%以下が粒径0.6μm以上である。この粒径の測定法は、後述の実施例に記載した方法による。
【0036】
ゴム状粒子(a)の分散相における内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒径分布は、重合開始剤、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)、連鎖移動剤及び溶剤の種類や量を調整することにより、また反応器、攪拌機および反応条件などを調整することによってコントロールすることができる。例えば適度な量の重合開始剤を添加すると内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子数を増加することができ、且つ内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子径を減少することができる。また、適量のビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)、シス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)、およびシス−1,4結合含量が25〜50モル%のブタジエン重合体(a3)を併用した場合、特にこの三者の合計100重量%中、(a1)が5〜30重量%を占め、(a2)が10〜50重量%を占め、(a3)が30〜75重量%を占めるときに、内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子数を増加でき、且つ内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子径を減少でき、本発明の内蔵されたスチレン系重合子(b’)の粒径分布を達成することができる。
【0037】
上記ゴム状粒子(a)中に内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)は、その粒子数の80%以上、好ましくは82%以上が粒径0.05〜0.4μmである。内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)は、その粒子数の80%以上が粒径0.05〜0.4μmであるとゴム変性スチレン系樹脂組成物のアイゾット衝撃強度、曲げ弾性率および落錘衝撃強度が良くなる。一方、内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子数の5%以下、好ましくは3%以下が粒径0.6μm以上である。内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子数の5%以下が粒径0.6μm以上であるとゴム変性スチレン系樹脂組成物のアイゾット衝撃強度、曲げ弾性率および落錘衝撃強度が良くなる。
【0038】
本発明のゴム状粒子(a)からなる分散相はサラミ(salami)構造やコアシェル構造を持つ粒子より構成される。サラミ構造とは、一個のゴム状粒子内に複数の内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)が点在する構造を指し、好ましくは5個以上が点在するものである。また、コアシェル構造とは、一個のゴム状粒子内に一個の内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)が存在する構造を指す。本発明においては、このサラミ構造を含むゴム状粒子は全部のゴム状粒子(a)の50重量%以上を占めることが望ましい。このサラミ構造を含むゴム状粒子の割合(重量%)は電子顕微鏡を用いて切片の写真を撮ってゴム粒径を基に分析計算することでも確認できる。
【0039】
本発明のゴム状粒子(a)からなる分散相の粒子径は、電子顕微鏡で撮った切片の写真を基に測定する。この分散相の重量平均粒径は1.5〜3.5μmが好ましく、更に1.8〜3.2μmで、特に2.0〜3.0μmであることが好ましい。
【0040】
また、本発明のゴム変性スチレン系樹脂の重合においては、必要に応じて酸化防止剤及び/又は滑剤を添加することもでき、これによって更に良好な物性を得ることが出来る。酸化防止剤は樹脂の酸化劣化を防止する目的で用いるが、代表的なものとしては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、トリス(ノニルフェニルホスファイト)(以下TNPPと略称する)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシフェニル)プロピオネート(以下IX−1076と略称する)、チオジエチレンビス(3,5−ジ−t−4−ハイドロキシハイドロシンナメート)、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−4−ハイドロキシハイドロシンナメート)]メタン、2,4−ビス[(オクチルチオ)ホスファイト]、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、トリエチレングリコールビス−3−(3−t−ブチル−4−ハイドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,1−ビス(2−メチル−4−ハイドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン等が挙げられる。
【0041】
また、滑剤としてはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸、エチレンビスステアリルアマイド、メチレンビスステアリルアマイド、パルミチルアマイド、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸パルミチル、ポリプロピレングリコールモノステアレート、ベヘン酸、ステアリン酸等の化合物、ポリエチレンワックス、モンタンワックス等が挙げられる。
【0042】
更に、本発明のゴム変性スチレン系樹脂には、シリコーンオイル、紫外線吸収剤、染料、顔料、充填剤、可塑剤、離型剤、帯電防止剤等の添加剤を必要に応じて加えることができる。
【0043】
【実施例】
<評価方法>
以下の実施例及び比較例で行った分析方法及び評価方法を示す。
1.溶融指数(MI,melt index)
ASTM D−1238法で測定した。
測定の温度:200℃
荷重さ:5kg
◯:8.0g/10 min以上
△:4.0g/10 min以上8.0g/10 min未満
×:4.0g/10 min未満
【0044】
2.アイゾット衝撃強度(IZOD)
ASTM D−256法で測定した。
試験片規格:厚さ1/4”(約6.35mm),ノッチ付き。
◯:8.0kg・cm/cm以上
×:8.0kg・cm/cm未満
【0045】
3.落錘衝撃強度(FDI)
TOYOSEIKI社製の落錘衝撃強度試験機を用いて、荷重さ2kgの落錘を用いて試験片が破裂するまでの最大高さを測定した。
試験片規格:厚さ1/8”(約3.18mm)、直径55mmの射出成型円盤
◯:500 mm以上
×:500 mm未満
【0046】
4.曲げ弾性率(FM)
ASTM D−790法で測定する。
試験片規格:厚さ1/4” (約6.35mm)
◯:19000 kg/cm2以上
×:19000 kg/cm2未満
【0047】
5.ゴム状粒子の重量平均粒径
ゴム状粒子の重量平均粒径は、樹脂組成物からミクロトーム(microtome)により作った薄膜を染色して倍率10,000倍の透過型電子顕微鏡により撮った写真中の約 200〜1000個のゴム状粒子(分散相)の各粒径を測定し、次式により重量平均粒径を求める。
【0048】
【数1】
【0049】
6.ゴム状粒子に内蔵されたスチレン系重合体粒子の粒径分布
ゴム変性スチレン系樹脂を透過型電子顕微鏡を用いて10,000倍の写真を撮り、写真上の12cm×9.5cm区域内において分散相のゴム状粒子内に内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子径を0.05μmまで測定する。楕円形をしている場合は、長径aと短径bとの平均値、即ち(a+b)/2を以って粒子径とする。内蔵されたスチレン系重合体(b’)の粒子径が0.05〜0.4μmおよび0.6μm以上の粒子の粒子総数を計算し、これらと内蔵された全体のスチレン系重合体粒子の粒子総数との比率を求める。内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)が不規則であればその相対的円形面積の直径を用いて計算する。
【0050】
<実施例1>
ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)として、スチレン‐ブタジエンのブロック共重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名はKIBITON PB−511、スチレンの含有量は30重量%である) 1.5重量部、シス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)として、シス−1,4結合含量が98モル%のブタジエン重合体(宇部興産株式会社製、商品名UBE−POL BR−015H) 3.0重量部、シス−1,4結合含量が25〜50モル%のブタジエン重合体(a3)として、シス−1,4結合含量が35モル%のブタジエン重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名KIBIPOL PR−255) 3.0重量部、スチレン単量体92.5重量部(これらの合計は100重量部)、溶媒としてエチルベンゼン6重量部、重合開始剤としてTX−29A 0.015重量部、連鎖移動剤としてTDM 0.025重量部、酸化防止剤としてIX−1076 0.2重量部とTNPP 0.1重量部、および滑剤としてステアリン酸亜鉛(以下Zn−Stと略称する) 0.2重量部の原料混合液を完全に溶解させる。上記の原料混合液を三槽直列且つ容量が100リットルであるプラグフロー反応槽ヘ連続的に仕込む。反応入口の温度をそれぞれ110℃、130℃および160℃に保持し、反応槽の圧力をすべて3kg/cm2にし、反応槽内での原料滞留時間を6.5時間にすることにより、反応槽の転換率をそれぞれ20重量%、50重量%および81重量%とした。
【0051】
上記第3反応槽から混合液を連続的に取り出して揮発装置に導入し、減圧脱揮装置に導入して未反応の単量体及び揮発成分を除去させ、この後、造粒して本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物を得た。得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.1重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は1.8μmである。このゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。また上記のゴム変性スチレン系樹脂組成物を透過型電子顕微鏡で撮った写真を図1に示す。写真の倍率は10,000倍である。図1には、サラミ(salami)構造を有するゴム状粒子(a)からなる分散相が連続相であるスチレン系樹脂に分散している様子が示されており、且つゴム状粒子内に内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)が点在する構造が示されている。該組成物では、スチレン系重合体粒子(b’)の粒子数の85%が粒径0.05〜0.4μmで、3.2%が粒径0.6μm以上である。
【0052】
<実施例2>
(a2)成分として、シス−1,4結合含量が96モル%のブタジエン重合体(宇部興産株式会社製、商品名UBE−POL BR−23H) 2.5重量部、(a3)成分として、シス−1,4結合含量が35モル%のブタジエン重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名KIBIPOL PR−245) 3.5重量部を使用した以外は、実施例1と同様な操作方法にて製造した。最終反応槽の転換率は80重量%とし、得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.2重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は2.5μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。
【0053】
<実施例3>
(a1)成分のスチレン−ブタジエンのブロック共重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名KIBITON PB−511) を1.0重量部とし、(a2)成分として、シス−1,4結合含量が96モル%のブタジエン重合体(宇部興産株式会社製、商品名UBE−POL BR−23H) 2.0重量部を使用し、(a3)成分として、シス−1,4結合含量が35モル%のブタジエン重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名KIBIPOL PR−245) 4.5重量部を使用した以外は、実施例1と同様な操作方法にて製造した。最終反応槽の転換率は80重量%とし、得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.2重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は2.8μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。
【0054】
<実施例4>
スチレン単量体を90重量部とし、アクリル酸n−ブチルを2.5重量部使用した以外は、実施例1と同様な操作方法にて製造した。最終反応槽の転換率は81重量%とし、得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.1重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は2.1μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。
【0055】
<比較例1>
(a1)成分を使用せず、(a2)成分のシス−1,4結合含量が98モル%のブタジエン重合体(宇部興産株式会社製、商品名UBE−POL BR−015H) を3.5重量部とし、(a3)成分のシス−1,4結合含量が35モル%のブタジエン重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名KIBIPOL PR−255) を4.0重量部とし、連鎖移動剤TDMを添加しない以外は、実施例1と同様な操作方法にて製造した。最終反応槽の転換率は81重量%とし、得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.1重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は2.6μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。またこのゴム変性スチレン系樹脂組成物を透過型電子顕微鏡で撮った写真を図2に示す。写真の倍率は10,000倍である。図2に示されるように、該組成物も分散相であるゴム状粒子(a)はサラミ(salami)構造を有するが、スチレン系重合体粒子(b’)の粒子数の70%が粒径0.05〜0.4μm、12%が粒径0.6μm以上であり、本発明の範囲を外れている。
【0056】
<比較例2>
(a2)成分を使用せず、(a3)成分のシス−1,4結合含量が35モル%のブタジエン重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名KIBIPOL PR−255)を6.0重量部にした以外は、実施例1と同様な操作方法にて製造した。最終反応槽の転換率は80重量%とし、得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.2重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は1.9μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。
【0057】
<比較例3>
(a1)成分のスチレン−ブタジエンのブロック共重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名KIBITON PB−511) を2.0重量部とし、(a2)成分のシス−1,4結合含量が98モル%のブタジエン重合体(宇部興産株式会社製、商品名UBE−POL BR−015H)を5.5重量部とした以外は、実施例1と同様な操作方法にて製造した。最終反応槽の転換率は81重量%とし、得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.1重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は1.8μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。
【0058】
<比較例4>
重合開始剤TX−29Aを添加せず、溶媒としてエチルベンゼンを3重量部使用した以外は、実施例1と同様な操作方法にて製造した。最終反応槽の転換率は72重量%とし、得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.4重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は3.1μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。
【0059】
<比較例5>
ゴム状粒子(a)の製造に(a1)成分のスチレン−ブタジエンのブロック共重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名KIBITON PB−511)のみを7.5重量部使用した以外は、実施例1と同様な操作方法にて製造した。最終反応槽の転換率は80重量%とし、得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.2重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は0.8μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。
【0060】
<比較例6>
ゴム状粒子(a)の製造に(a3)成分のシス−1,4結合含量が35モル%のブタジエン重合体(奇美実業股分有限公司製、商品名KIBIPOL PR−255)のみを7.5重量部使用した以外は、実施例1と同様な操作方法にて製造した。最終反応槽の転換率は81重量%とし、得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.1重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は3.9μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。
【0061】
<比較例7>
エチルベンゼンを7重量部、TX−29Aを0.011重量部とした以外は実施例2と同様な操作方法にて製造した。各反応槽の転換率は、それぞれ18重量%、48重量%及び79重量%であった。得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム分量は9.3重量%で、ゴム状粒子の重量平均粒径は2.8μmである。そのゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造に際しての各成分の配合割合およびその物性測定結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
(注)表中の記号は以下のものである。
・PB−511:スチレン−ブタジエンのブロック共重合体ゴム、奇美実業股分有限公司製、商品名KIBITON PB−511。スチレンの含量は30重量%
・BR−015H:シス−1,4結合含量が98モル%のブタジエン重合体、宇部興産株式会社製、商品名UBE−POL BR−015H
・BR−23H:シス−1,4結合含量が96モル%のブタジエン重合体、宇部興産株式会社製、商品名UBE−POL BR−23H
・PR−255:シス−1,4結合含量が35モル%のブタジエン重合体、奇美実業股分有限公司製、商品名KIBIPOL PR−255
・PR−245:シス−1,4結合含量が35モル%のブタジエン重合体,奇美実業股分有限公司製,商品名KIBIPOL PR−245
・SM:スチレン単量体(styrene monomer)
・n−BA:アクリル酸n−ブチル単量体(n−butyl acrylate)
・EB:エチルベンゼン(ethyl benzene)
・TX−29A:1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ−3,3,5)−トリメチルシクロヘキサン(1,1−bis−t−butylperoxy−3,3,5−trimethyl cyclohexane)
・TDM:t−ドデシルメルカプタン(t−dodecyl mercaptan)
・IX−1076:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイロキシフェニル)プロピオネート[octadecyl−3−(3,5−di−t−butyl−4−hydroxy−phenyl)propionate]
・TNPP:トリス(ノニルフェニルフォスファイト)(trisnonyl phenyl phosphite)
・Zn−St:ステアリン酸亜鉛(zinc stearate)
【0064】
【発明の効果】
本発明は、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)、シス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)、およびシス−1,4結合含量が25〜50モル%のブダジエン重合体(a3)の混合比率をコントロールし、好ましくは適切な重合開始剤を添加することによりゴム状粒子中に内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子数の80%以上が粒径0.05〜0.4μmであり、内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒子数の5%以下が粒径0.6μm以上となるように制御できる。上記のようにゴム状粒子(a)中に内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)の粒径分布を制御すると、流動性、アイゾット衝撃強度(IZOD)、落錘衝撃強度および曲げ弾性率等の物性に優れると共に、良好な成形加工性を有するゴム変性スチレン系樹脂組成物を得ることができる。即ち、本発明は、産業上の利用価値が大きいゴム変性スチレン系樹脂組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた樹脂組成物の拡大写真。
【図2】比較例1で得られた樹脂組成物の拡大写真。
Claims (2)
- ゴム状粒子を分散相とし、スチレン系重合体(b)を連続相とするゴム変性スチレン系樹脂組成物において、
前記ゴム状粒子(a)が、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)5〜30重量%、シス−1,4結合含量が90モル%以上のブタジエン重合体(a2)10〜50重量%及びシス−1,4結合含量が25〜50モル%のブタジエン重合体(a3)30〜75重量%からなるゴム分と、該粒子中に内蔵されたスチレン系重合体粒子(b’)とを含有し、
前記スチレン系重合体粒子(b’)は、その粒子数の80%以上が粒径0.05〜0.4μmで、5%以下が粒径0.6μm以上である、
ゴム変性スチレン系樹脂組成物。 - ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体(a1)中のビニル芳香族化合物の比率が5〜50重量%である請求項1記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物。
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