JP2004307408A - N6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】保護化デオキシヌクレオシドの製造中間体であるN6−アシル化−2’−デオキシアデノシン誘導体を工業的に製造する方法を提供する。
【解決手段】2’−デオキシアデノシン誘導体をピリジン存在下、酸クロライドを用いてN6,3’,5’−トリ−またはN6,N6,3’,5’−テトラ−アシル化−2’−デオキシアデノシン誘導体に変換したのち,単離することなく25%以上の重量濃度の水酸化ナトリウム水溶液により加水分解をおこない、選択的にN6−アシル化−2’−デオキシアデノシン誘導体を得る。
【効果】煩雑な中間体の単離精製操作がなくなり工程が簡略化され、中間体の抽出に用いていたハロゲン溶媒などが不要になり、工業的スケールでの製造が可能になった。
【選択図】 なし
【解決手段】2’−デオキシアデノシン誘導体をピリジン存在下、酸クロライドを用いてN6,3’,5’−トリ−またはN6,N6,3’,5’−テトラ−アシル化−2’−デオキシアデノシン誘導体に変換したのち,単離することなく25%以上の重量濃度の水酸化ナトリウム水溶液により加水分解をおこない、選択的にN6−アシル化−2’−デオキシアデノシン誘導体を得る。
【効果】煩雑な中間体の単離精製操作がなくなり工程が簡略化され、中間体の抽出に用いていたハロゲン溶媒などが不要になり、工業的スケールでの製造が可能になった。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、保護化デオキシヌクレオシドに関する。さらに詳しくは、本発明は保護化2’−デオキシヌクレオシドの製造方法に関する。保護化2’−デオキシヌクレオシド類は近年開発されつつあるアンチセンスDNAなどの原料として有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
近年、ゲノム創薬の進展に伴い、アンチセンスDNA医薬などが急速に開発されている。それに伴い、原料となるDNAオリゴマー、さらにオリゴマーの原料となる保護化デオキシヌクレオシド類の需要が増大している。その中で、N6−アシル化デオキシアデノシン誘導体は保護化デオキシヌクレオシド類製造の際の重要な中間体として用いられている。
【0003】
その製造方法においてはN6, 3’,5’−トリ−あるいは3’,5’,N6,N6−テトラアシル化デオキシアデノシン誘導体を経由し、その加水分解によりN6−アシル化デオキシアデノシンを得る方法が一般的に知られている。
【0004】
特開昭58−180500号公報、ヘルベチカ キミカ アクタ 第65巻 2232項(1982年)(Helv. Chim. Acta , 65, 2232(1982)).、ジャーナルオブ アメリカン ケミカル ソサエティ 第85巻 3821項(1963年)( J. Am. Chem. Soc., 85, 3821(1963).)などの例においては、中間体のN6,3’,5’−トリあるいはN6,N6,3’、5’−テトラベンゾイル−2’−デオキシアデノシンを得る際に大量のハロゲン化溶媒を用いて分液精製を行っているため、操作が煩雑であり実際に大量に製造を行う際には問題が多いことが明らかである。また、特開昭60−152495号公報においては、2’−デオキシアデノシンの100倍量もの炭酸水素ナトリウム水溶液を加えることで、沈殿化して中間体を単離しているため、非常に容積効率が悪い。
【0005】
得られた中間体の加水分解の工程においては2Nの水酸化ナトリウム水溶液をさらにエタノールで希釈して用いる例(特開昭60−152495号公報、ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティ 85巻、3821項(1963年) (J. Am. Chem. Soc., 85, 3821(1963)))、あるいは2Nの水酸化ナトリウム 水−メタノール 1:1混合溶液を用いる例(特開昭58−180500号公報)などが知られている。しかしながらいずれも非常に希薄な溶液を用いていることで大量製造における容積効率等に問題がある。また、ヘルベチカ キミカ アクタ 第65巻 2232項(1982年)(Helv. Chim. Acta , 65, 2232(1982)).においては、中間体をピリジンに溶解したのちに、冷却したエタノールを加え,中間体の結晶が析出する前にすぐに水酸化ナトリウムの冷水−冷エタノール溶液を装入する方法が知られているが、工業的な製造においては、短時間での操作は非常に難しい。
【0006】
【特許文献1】特開昭58−180500号公報
【0007】
【特許文献2】特開昭60−152495号公報
【0008】
【非特許文献1】Helv. Chim. Acta , 65, 2232(1982).
【0009】
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc., 85, 3821(1963)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように従来知られていたN6−アシル化−2’−デオキシアデノシン類の製造方法においては以下のような問題点があった。
【0011】
(1)中間体を一旦ハロゲン化溶媒により抽出、あるいは沈殿化により濾取する必要があった。
(2)希薄な水酸化ナトリウム水溶液を用いるため、可溶化剤として大量のアルコール、あるいは種々の溶媒を必要としていた。
これらの問題を解決し、工業的に有用なN6−アシル化−2’−デオキシアデノシン類の製造方法を開発することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、2’−デオキシアデノシン類を、ピリジン溶媒中アシル化剤によりアシル化したのち、過剰のアシル化剤を炭素数2〜3のアルコールにてエステル化を行い、さらにこの反応液を抽出操作等することなく高濃度の水酸化ナトリウム水溶液をもちいて加水分解反応を行うことにより、効率的にN6−アシル化−2’−デオキシアデノシン誘導体を得る方法を見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、
[1] 一般式(1)[化4]
【0013】
【化4】
【0014】
(式中、R1は水素原子、あるいは置換されている水酸基を表す)であらわされる化合物を原料として、ピリジン溶媒中、R2−COCl(式中、R2はフェニル基、置換されてもよいフェニル基、置換されてもよいフェニルアセチル基、又は置換されてもよいフェノキシアセチル基を表す)で表される酸クロライドを用いて、第一工程としてアシル化工程を行ない、続いて第二工程としてアルカリ水溶液を用いた加水分解工程からなる一般式(2)[化5]
【0015】
【化5】
【0016】
(式中、R1およびR2は前記に同じ)で表される化合物の製造法において、第一工程と第二工程を1ポットで、連続的に反応する事を特徴とするN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法であり、
[2] 一般式(1)であらわされる化合物と
1)ピリジン溶媒中R2−COCl(式中、R2はフェニル基、置換されてもよいフェニル基、置換されてもよいフェニルアセチル基、又は置換されてもよいフェノキシアセチル基を表す)を用いてアシル化反応を行い一般式(3)[化6]
【0017】
【化6】
【0018】
(式中、R1、R2は前記に同じ、R3、R4,R5基は水素原子またはR2CO基を表す(ただし、R3,R4,R5は同時に水素原子にはならない))を得る工程
2)1)で得られた反応液に、続けて炭素数2から3のアルコールを加え、未反応のR2−COClをエステルとして分解する工程
3)2)で得られた溶液に、続けて25%重量濃度以上のアルカリ水溶液を加えて加水分解反応させる工程
上記工程により一般式(2)で表される化合物を得ることを特徴とするN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法であり、
[3] 一般式(1)に示される化合物においてR1が水素原子であらわされ、R2がフェニル基で表されることを特徴とする[1]または[2]に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法であり、
[4] アルカリ水溶液による反応の温度が5℃以下であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法であり、
[5] アルカリ水溶液による反応工程におけるアルコールがエタノールであり、アルカリ水溶液滴下後のエタノールと水の重量がそれぞれピリジンの重量以下である[1]〜[4]のいずれか一項に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法であり、
[6] アルカリ水溶液滴下後のエタノールの重量がピリジン重量の1/2重量以下である[1]〜[5]のいずれか一項に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法であり、
[7] アルカリ水溶液滴下後のエタノールの重量がピリジン重量の1/2重量以下、水の重量がピリジン重量の1/2重量以下であ[1]〜[6]のいずれか一項に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法であり、
[8] アシル化工程におけるピリジンの量が、一般式(1)で表される化合物に対して10重量倍以下であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法であり、
[9] 使用されるアルカリ水溶液が水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムを含有する水溶液である事を特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
一般式(1)に示される化合物のR1における置換されている水酸基とは、水酸基の先にアルキル基、あるいは他の官能基によりさらに置換されているアルキル基を表す。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、ベンジルオキシメトキシ基、t−ブチルジメチルシリル基などがあげられる。
【0020】
R2における置換されてもよいフェニル基とは、置換基がフェニル基の芳香環2位、3位,4位いずれの位置にあってもよい。また、複数の位置に置換基があってもよい。置換基としてはたとえばメチル基、エチル基、2−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基などのアルキルオキシ基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基などのアルキルアミノ基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基などのアシル基、フェニル基ピリジニル基等が挙げられる。具体的にはフェニル基、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、4−ニトロフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジニトロフェニル基などが挙げられる。
【0021】
R2における置換されてもよいフェニルアセチル基とは、フェニル基あるいはアセチル基部分にそれぞれ置換基を有してもよいフェニルアセチル基を表す。具体的には、フェニルアセチル基、2−ニトロフェニルアセチル基、3−ニトロフェニルアセチル基、4−ニトロフェニルアセチル基、4−メトキシフェニルアセチル基などが挙げられる。
【0022】
R2における置換されてもよいフェノキシアセチル基とはフェニル基、あるいはアセチル基部分にそれぞれ置換基を有してもよいフェノキシアセチル基を表す。具体的にはフェノキシアセチル基、4−ニトロフェノキシアセチル基、4−メトキシフェノキシアセチル基などが挙げられる。
【0023】
炭素数2から3のアルコールとは、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリンがあげられ,さらに望ましいのはエタノールである。
【0024】
アルカリ水溶液とは、アシル基を加水分解できれば特に限定は無いが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩、アンモニア、メチルアミン、エチルアミンなどのアミン類が挙げられ、好適には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化物である。
【0025】
アシル化反応におけるピリジンの量は、R2−COClのアシル化により発生する塩酸をトラップし,かつ反応器内で十分撹拌できればいずれの量においてもかまわないが,一般式(1)で表される2’−デオキシアデノシン類に対しての3倍量から15倍量の間が望ましく、さらに望ましくは5倍量から10倍量である。アシル化反応におけるR2COClの当量は、2’−デオキシアデノシン誘導体中中に含まれる水分及びの交換性水素原子を置換するのに十分な量あればよいが、2’−デオキシアデノシン誘導体に対して5モル倍から8モル倍の間が望ましく、さらに望ましくは5.5モル倍から7モル倍である。アシル化反応における温度については、低温の場合は反応時間が長くかかってしまい,高温にすると副反応が起きることから5℃から40℃の範囲が望ましく、さらに望ましくは5℃〜25℃である。反応時間に関しては、アシル化反応が十分進行する時間であり,分解反応が起きない範囲であればいずれでもかまわないが,望ましくは0.5時間から24時間の範囲であり、さらに望ましくは1時間から12時間の範囲である。
【0026】
未反応のR2−COClをエステル化する工程においては、R20−COClをエステル化するのに十分なエタノールがあればよいが、2’−デオキシアデノシン誘導体に対して2モル倍からピリジンの重量の範囲が望ましく、さらに望ましくは2モル倍からピリジンの重量の半量である。エステル化の際の温度については、エステル化されるのに十分な温度があり、分解等が起きない条件であればよいが、0℃から25℃の範囲が望ましく、さらに望ましくは5℃〜20℃の範囲である。エステル化の反応時間については、反応が十分進行するのに必要な時間があればよいが、0.2時間から24時間の範囲が望ましく、さらに望ましくは0.5時間から12時間である。
【0027】
加水分解反応における水酸化ナトリウムの当量に関しては、反応系内に含まれる塩酸の中和、およびR3からR5の加水分解に必要な量であればいずれでもよいが,装入した酸クロリドのモル当量に加え,2’−デオキシアデノシン誘導体に対して4当量から20当量の範囲で加えるのが望ましく、さらに望ましくは酸クロリドのモル当量4.5当量から10当量の範囲が望ましい。加水分解反応の温度については、−10℃から10℃の範囲が望ましく、さらに望ましくは−10℃から5℃であり、さらに望ましくは−10℃から0℃である。加水分解反応の反応時間は、加水分解反応が十分進行する時間であればいずれでもよいが、0.5時間から24時間の間が望ましく、さらに望ましくは1時間から6時間である。加水分解における水酸化ナトリウム水溶液の濃度については、25%濃度以上、飽和溶液の範囲で撹拌に問題なければいずれでもかまわないが、25%から40%の範囲が望ましく、さらに望ましくは30から40%の範囲である。
【0028】
加水分解を行った反応マス(反応液)はさらに中和操作,濃縮操作、精製操作などを行いN6−アシル化デオキシアデノシン類を単離することができる。
【0029】
中和操作においては、種々の塩酸,硫酸,燐酸、などに代表される無機酸,蟻酸、酢酸などに代表される有機酸、陽イオン交換樹脂などが利用できるが、塩酸が望ましい。塩酸の濃度は1%から飽和濃度の間で任意に選ぶことができるが、1%から25%の範囲が望ましく、さらに望ましくは10%から20%重量濃度である。
中和後のpHについては、その後の操作に応じ,適宜選ばれるが、pH7.0から9.0の範囲が望ましい。
【0030】
精製操作においては、たとえば、分液操作によるエステル類の除去、結晶化による不純物の除去などが挙げられる。エステル類の除去においては、反応マス(反応液)と分離する有機溶媒を用いて、分液操作を行いエステル類を有機相に除去することができる。有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ジイソプロピルベンゼンなどの脂肪族および芳香族炭化水素、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル,酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられるが、トルエン、キシレン、ジイソプロピルベンゼンなどの芳香族炭化水素,シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類が望ましく、さらに望ましくは芳香族炭化水素である。結晶化による不純物の除去においては、不純物を除去可能な溶媒であればいずれでもかまわないが、水が特に望ましい。結晶化時におけるpHについては、生成物が分解しない範囲であればいずれでもかまわないが,pH7〜9が望ましく、さらに望ましくはpH8〜8.5である。結晶化の際の温度については結晶化に十分な温度であればいずれでもかまわないが、−2℃から5℃が望ましくさらに望ましくは−1℃から2℃である。
【0031】
以上、本発明により、高収率高純度のN6−アシル化−2’−デオキシアデノシン類を工業的に得ることができるようになった。
【0032】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0033】
実施例及び比較例のHPLC条件
カラム:Develosil TMS−UG−5
150mm×φ4.6
流速:0.6mL/min
カラム温度:35℃
検出波長:254nm
【0034】
〔A液〕
水(2940ml)にNaH2PO4・2水和物(1.92g)、Na2HPO4(2.43g)を溶解後、MeOH(60ml)を加え混和し、脱気する。
〔B液〕
水(300ml)にNaH2PO4・2水和物(196mg)、Na2HPO4(248mg)を溶解後、MeOH(2700ml)を加え混和し、脱気する。
【0035】
実施例1 N6−ベンゾイル−2’−デオシキアデノシン一水和物の製造
2’−デオシキアデノシン100gをピリジン700gに懸濁し、ベンゾイルクロライド287gを室温で滴下し、3時間反応した。反応終了後、反応液にエタノール220gを加え1時間攪拌後、0℃まで冷却し36%NaOH水溶液405gを加え、同温で3時間反応した。得られた反応液を35%塩酸水で中和後、トルエン900g、水950gを加えて分液し、更に有機層を同量の水を加え洗浄した。得られた水層を合わせて濃縮したのちに冷却し、析出した沈殿物をろ取、洗浄、乾燥し、目的物であるN6−ベンゾイル−2’−デオシキアデノシン一水和物117g(84.4%)を得た。
【0036】
実施例2
2’−デオシキアデノシン10gをピリジン70gに懸濁し、ベンゾイルクロライド28.7gを室温で滴下し、3時間反応した。反応終了後、反応液にエタノール22gを加え1時間攪拌後、0℃まで冷却した。この反応液に36%NaOH水溶液40.5gに相当する水酸化ナトリウムを含むそれぞれの濃度の水酸化ナトリウム水溶液を加え、0℃にて20時間反応させた。得られた反応液中のN6−ベンゾイルー2’−デオキシアデノシンの生成量について、HPLC法により分析を行った。結果を表1に示した。
【0037】
【表1】
【0038】
上記表のように、25%濃度以上の水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合,高い反応収率にて生成物が得られることが判明した。低濃度における加水分解の副生成物は、中間体のN6,N6,3’,5’−テトラベンゾイル−2’−デオキシアデノシンであった。
【0039】
実施例3
N6、N6,3’,5’−テトラベンゾイル−2’−デオキシアデノシン 1.0gにピリジン5gを加え,さらに種々のアルコール2gを加えた調整液に対して、40%水酸化ナトリウム水溶液0.6gを氷冷下滴下したのちに、氷冷下2時間撹拌した。反応で得られたN6−ベンゾイル−2’−デオキシアデノシンへの反応収率と、2’−デオキシアデノシン(N−無置換体)の生成量をHPLC分析により定量した。結果を表2に示す
【0040】
【表2】
【0041】
上記のように同様の条件においてはメタノールに比べてエタノール、イソプロピルアルコールの方が過剰分解しにくいことが判明した。
【0042】
実施例4
2’−デオキシアデノシン 1水和物 20gのピリジン150g懸濁液にベンゾイルクロリド60.56gを加え室温でアシル化を行った。エタノール8.2gを加え過剰の酸クロリドをエステル化したのちに、それぞれの温度まで冷却し、40%水酸化ナトリウム水溶液73gを滴下装入したのちにそれぞれの温度にて20時間撹拌した。20時間後の反応マス中のN6−ベンゾイル−2’−デオキシアデノシン量をHPLCにより定量した。結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
上記表のように、5℃以下の反応条件において、非常に高い反応収率でN6−ベンゾイルー2’−デオキシアデノシンを得ることができる。
【0045】
【発明の効果】
本発明により、中間体であるN6,3’,5’−トリ−またはN6,N6,3’,5’−テトラ−アシル化−2’−デオキシアデノシンを単離することなく、N6−アシル化―2’−デオキシアデノシン類を製造できるようになった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、保護化デオキシヌクレオシドに関する。さらに詳しくは、本発明は保護化2’−デオキシヌクレオシドの製造方法に関する。保護化2’−デオキシヌクレオシド類は近年開発されつつあるアンチセンスDNAなどの原料として有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
近年、ゲノム創薬の進展に伴い、アンチセンスDNA医薬などが急速に開発されている。それに伴い、原料となるDNAオリゴマー、さらにオリゴマーの原料となる保護化デオキシヌクレオシド類の需要が増大している。その中で、N6−アシル化デオキシアデノシン誘導体は保護化デオキシヌクレオシド類製造の際の重要な中間体として用いられている。
【0003】
その製造方法においてはN6, 3’,5’−トリ−あるいは3’,5’,N6,N6−テトラアシル化デオキシアデノシン誘導体を経由し、その加水分解によりN6−アシル化デオキシアデノシンを得る方法が一般的に知られている。
【0004】
特開昭58−180500号公報、ヘルベチカ キミカ アクタ 第65巻 2232項(1982年)(Helv. Chim. Acta , 65, 2232(1982)).、ジャーナルオブ アメリカン ケミカル ソサエティ 第85巻 3821項(1963年)( J. Am. Chem. Soc., 85, 3821(1963).)などの例においては、中間体のN6,3’,5’−トリあるいはN6,N6,3’、5’−テトラベンゾイル−2’−デオキシアデノシンを得る際に大量のハロゲン化溶媒を用いて分液精製を行っているため、操作が煩雑であり実際に大量に製造を行う際には問題が多いことが明らかである。また、特開昭60−152495号公報においては、2’−デオキシアデノシンの100倍量もの炭酸水素ナトリウム水溶液を加えることで、沈殿化して中間体を単離しているため、非常に容積効率が悪い。
【0005】
得られた中間体の加水分解の工程においては2Nの水酸化ナトリウム水溶液をさらにエタノールで希釈して用いる例(特開昭60−152495号公報、ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティ 85巻、3821項(1963年) (J. Am. Chem. Soc., 85, 3821(1963)))、あるいは2Nの水酸化ナトリウム 水−メタノール 1:1混合溶液を用いる例(特開昭58−180500号公報)などが知られている。しかしながらいずれも非常に希薄な溶液を用いていることで大量製造における容積効率等に問題がある。また、ヘルベチカ キミカ アクタ 第65巻 2232項(1982年)(Helv. Chim. Acta , 65, 2232(1982)).においては、中間体をピリジンに溶解したのちに、冷却したエタノールを加え,中間体の結晶が析出する前にすぐに水酸化ナトリウムの冷水−冷エタノール溶液を装入する方法が知られているが、工業的な製造においては、短時間での操作は非常に難しい。
【0006】
【特許文献1】特開昭58−180500号公報
【0007】
【特許文献2】特開昭60−152495号公報
【0008】
【非特許文献1】Helv. Chim. Acta , 65, 2232(1982).
【0009】
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc., 85, 3821(1963)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように従来知られていたN6−アシル化−2’−デオキシアデノシン類の製造方法においては以下のような問題点があった。
【0011】
(1)中間体を一旦ハロゲン化溶媒により抽出、あるいは沈殿化により濾取する必要があった。
(2)希薄な水酸化ナトリウム水溶液を用いるため、可溶化剤として大量のアルコール、あるいは種々の溶媒を必要としていた。
これらの問題を解決し、工業的に有用なN6−アシル化−2’−デオキシアデノシン類の製造方法を開発することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、2’−デオキシアデノシン類を、ピリジン溶媒中アシル化剤によりアシル化したのち、過剰のアシル化剤を炭素数2〜3のアルコールにてエステル化を行い、さらにこの反応液を抽出操作等することなく高濃度の水酸化ナトリウム水溶液をもちいて加水分解反応を行うことにより、効率的にN6−アシル化−2’−デオキシアデノシン誘導体を得る方法を見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、
[1] 一般式(1)[化4]
【0013】
【化4】
【0014】
(式中、R1は水素原子、あるいは置換されている水酸基を表す)であらわされる化合物を原料として、ピリジン溶媒中、R2−COCl(式中、R2はフェニル基、置換されてもよいフェニル基、置換されてもよいフェニルアセチル基、又は置換されてもよいフェノキシアセチル基を表す)で表される酸クロライドを用いて、第一工程としてアシル化工程を行ない、続いて第二工程としてアルカリ水溶液を用いた加水分解工程からなる一般式(2)[化5]
【0015】
【化5】
【0016】
(式中、R1およびR2は前記に同じ)で表される化合物の製造法において、第一工程と第二工程を1ポットで、連続的に反応する事を特徴とするN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法であり、
[2] 一般式(1)であらわされる化合物と
1)ピリジン溶媒中R2−COCl(式中、R2はフェニル基、置換されてもよいフェニル基、置換されてもよいフェニルアセチル基、又は置換されてもよいフェノキシアセチル基を表す)を用いてアシル化反応を行い一般式(3)[化6]
【0017】
【化6】
【0018】
(式中、R1、R2は前記に同じ、R3、R4,R5基は水素原子またはR2CO基を表す(ただし、R3,R4,R5は同時に水素原子にはならない))を得る工程
2)1)で得られた反応液に、続けて炭素数2から3のアルコールを加え、未反応のR2−COClをエステルとして分解する工程
3)2)で得られた溶液に、続けて25%重量濃度以上のアルカリ水溶液を加えて加水分解反応させる工程
上記工程により一般式(2)で表される化合物を得ることを特徴とするN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法であり、
[3] 一般式(1)に示される化合物においてR1が水素原子であらわされ、R2がフェニル基で表されることを特徴とする[1]または[2]に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法であり、
[4] アルカリ水溶液による反応の温度が5℃以下であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法であり、
[5] アルカリ水溶液による反応工程におけるアルコールがエタノールであり、アルカリ水溶液滴下後のエタノールと水の重量がそれぞれピリジンの重量以下である[1]〜[4]のいずれか一項に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法であり、
[6] アルカリ水溶液滴下後のエタノールの重量がピリジン重量の1/2重量以下である[1]〜[5]のいずれか一項に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法であり、
[7] アルカリ水溶液滴下後のエタノールの重量がピリジン重量の1/2重量以下、水の重量がピリジン重量の1/2重量以下であ[1]〜[6]のいずれか一項に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法であり、
[8] アシル化工程におけるピリジンの量が、一般式(1)で表される化合物に対して10重量倍以下であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法であり、
[9] 使用されるアルカリ水溶液が水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムを含有する水溶液である事を特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
一般式(1)に示される化合物のR1における置換されている水酸基とは、水酸基の先にアルキル基、あるいは他の官能基によりさらに置換されているアルキル基を表す。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、ベンジルオキシメトキシ基、t−ブチルジメチルシリル基などがあげられる。
【0020】
R2における置換されてもよいフェニル基とは、置換基がフェニル基の芳香環2位、3位,4位いずれの位置にあってもよい。また、複数の位置に置換基があってもよい。置換基としてはたとえばメチル基、エチル基、2−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基などのアルキルオキシ基、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基などのアルキルアミノ基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基などのアシル基、フェニル基ピリジニル基等が挙げられる。具体的にはフェニル基、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、4−ニトロフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジニトロフェニル基などが挙げられる。
【0021】
R2における置換されてもよいフェニルアセチル基とは、フェニル基あるいはアセチル基部分にそれぞれ置換基を有してもよいフェニルアセチル基を表す。具体的には、フェニルアセチル基、2−ニトロフェニルアセチル基、3−ニトロフェニルアセチル基、4−ニトロフェニルアセチル基、4−メトキシフェニルアセチル基などが挙げられる。
【0022】
R2における置換されてもよいフェノキシアセチル基とはフェニル基、あるいはアセチル基部分にそれぞれ置換基を有してもよいフェノキシアセチル基を表す。具体的にはフェノキシアセチル基、4−ニトロフェノキシアセチル基、4−メトキシフェノキシアセチル基などが挙げられる。
【0023】
炭素数2から3のアルコールとは、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリンがあげられ,さらに望ましいのはエタノールである。
【0024】
アルカリ水溶液とは、アシル基を加水分解できれば特に限定は無いが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩、アンモニア、メチルアミン、エチルアミンなどのアミン類が挙げられ、好適には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化物である。
【0025】
アシル化反応におけるピリジンの量は、R2−COClのアシル化により発生する塩酸をトラップし,かつ反応器内で十分撹拌できればいずれの量においてもかまわないが,一般式(1)で表される2’−デオキシアデノシン類に対しての3倍量から15倍量の間が望ましく、さらに望ましくは5倍量から10倍量である。アシル化反応におけるR2COClの当量は、2’−デオキシアデノシン誘導体中中に含まれる水分及びの交換性水素原子を置換するのに十分な量あればよいが、2’−デオキシアデノシン誘導体に対して5モル倍から8モル倍の間が望ましく、さらに望ましくは5.5モル倍から7モル倍である。アシル化反応における温度については、低温の場合は反応時間が長くかかってしまい,高温にすると副反応が起きることから5℃から40℃の範囲が望ましく、さらに望ましくは5℃〜25℃である。反応時間に関しては、アシル化反応が十分進行する時間であり,分解反応が起きない範囲であればいずれでもかまわないが,望ましくは0.5時間から24時間の範囲であり、さらに望ましくは1時間から12時間の範囲である。
【0026】
未反応のR2−COClをエステル化する工程においては、R20−COClをエステル化するのに十分なエタノールがあればよいが、2’−デオキシアデノシン誘導体に対して2モル倍からピリジンの重量の範囲が望ましく、さらに望ましくは2モル倍からピリジンの重量の半量である。エステル化の際の温度については、エステル化されるのに十分な温度があり、分解等が起きない条件であればよいが、0℃から25℃の範囲が望ましく、さらに望ましくは5℃〜20℃の範囲である。エステル化の反応時間については、反応が十分進行するのに必要な時間があればよいが、0.2時間から24時間の範囲が望ましく、さらに望ましくは0.5時間から12時間である。
【0027】
加水分解反応における水酸化ナトリウムの当量に関しては、反応系内に含まれる塩酸の中和、およびR3からR5の加水分解に必要な量であればいずれでもよいが,装入した酸クロリドのモル当量に加え,2’−デオキシアデノシン誘導体に対して4当量から20当量の範囲で加えるのが望ましく、さらに望ましくは酸クロリドのモル当量4.5当量から10当量の範囲が望ましい。加水分解反応の温度については、−10℃から10℃の範囲が望ましく、さらに望ましくは−10℃から5℃であり、さらに望ましくは−10℃から0℃である。加水分解反応の反応時間は、加水分解反応が十分進行する時間であればいずれでもよいが、0.5時間から24時間の間が望ましく、さらに望ましくは1時間から6時間である。加水分解における水酸化ナトリウム水溶液の濃度については、25%濃度以上、飽和溶液の範囲で撹拌に問題なければいずれでもかまわないが、25%から40%の範囲が望ましく、さらに望ましくは30から40%の範囲である。
【0028】
加水分解を行った反応マス(反応液)はさらに中和操作,濃縮操作、精製操作などを行いN6−アシル化デオキシアデノシン類を単離することができる。
【0029】
中和操作においては、種々の塩酸,硫酸,燐酸、などに代表される無機酸,蟻酸、酢酸などに代表される有機酸、陽イオン交換樹脂などが利用できるが、塩酸が望ましい。塩酸の濃度は1%から飽和濃度の間で任意に選ぶことができるが、1%から25%の範囲が望ましく、さらに望ましくは10%から20%重量濃度である。
中和後のpHについては、その後の操作に応じ,適宜選ばれるが、pH7.0から9.0の範囲が望ましい。
【0030】
精製操作においては、たとえば、分液操作によるエステル類の除去、結晶化による不純物の除去などが挙げられる。エステル類の除去においては、反応マス(反応液)と分離する有機溶媒を用いて、分液操作を行いエステル類を有機相に除去することができる。有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ジイソプロピルベンゼンなどの脂肪族および芳香族炭化水素、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル,酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられるが、トルエン、キシレン、ジイソプロピルベンゼンなどの芳香族炭化水素,シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類が望ましく、さらに望ましくは芳香族炭化水素である。結晶化による不純物の除去においては、不純物を除去可能な溶媒であればいずれでもかまわないが、水が特に望ましい。結晶化時におけるpHについては、生成物が分解しない範囲であればいずれでもかまわないが,pH7〜9が望ましく、さらに望ましくはpH8〜8.5である。結晶化の際の温度については結晶化に十分な温度であればいずれでもかまわないが、−2℃から5℃が望ましくさらに望ましくは−1℃から2℃である。
【0031】
以上、本発明により、高収率高純度のN6−アシル化−2’−デオキシアデノシン類を工業的に得ることができるようになった。
【0032】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0033】
実施例及び比較例のHPLC条件
カラム:Develosil TMS−UG−5
150mm×φ4.6
流速:0.6mL/min
カラム温度:35℃
検出波長:254nm
【0034】
〔A液〕
水(2940ml)にNaH2PO4・2水和物(1.92g)、Na2HPO4(2.43g)を溶解後、MeOH(60ml)を加え混和し、脱気する。
〔B液〕
水(300ml)にNaH2PO4・2水和物(196mg)、Na2HPO4(248mg)を溶解後、MeOH(2700ml)を加え混和し、脱気する。
【0035】
実施例1 N6−ベンゾイル−2’−デオシキアデノシン一水和物の製造
2’−デオシキアデノシン100gをピリジン700gに懸濁し、ベンゾイルクロライド287gを室温で滴下し、3時間反応した。反応終了後、反応液にエタノール220gを加え1時間攪拌後、0℃まで冷却し36%NaOH水溶液405gを加え、同温で3時間反応した。得られた反応液を35%塩酸水で中和後、トルエン900g、水950gを加えて分液し、更に有機層を同量の水を加え洗浄した。得られた水層を合わせて濃縮したのちに冷却し、析出した沈殿物をろ取、洗浄、乾燥し、目的物であるN6−ベンゾイル−2’−デオシキアデノシン一水和物117g(84.4%)を得た。
【0036】
実施例2
2’−デオシキアデノシン10gをピリジン70gに懸濁し、ベンゾイルクロライド28.7gを室温で滴下し、3時間反応した。反応終了後、反応液にエタノール22gを加え1時間攪拌後、0℃まで冷却した。この反応液に36%NaOH水溶液40.5gに相当する水酸化ナトリウムを含むそれぞれの濃度の水酸化ナトリウム水溶液を加え、0℃にて20時間反応させた。得られた反応液中のN6−ベンゾイルー2’−デオキシアデノシンの生成量について、HPLC法により分析を行った。結果を表1に示した。
【0037】
【表1】
【0038】
上記表のように、25%濃度以上の水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合,高い反応収率にて生成物が得られることが判明した。低濃度における加水分解の副生成物は、中間体のN6,N6,3’,5’−テトラベンゾイル−2’−デオキシアデノシンであった。
【0039】
実施例3
N6、N6,3’,5’−テトラベンゾイル−2’−デオキシアデノシン 1.0gにピリジン5gを加え,さらに種々のアルコール2gを加えた調整液に対して、40%水酸化ナトリウム水溶液0.6gを氷冷下滴下したのちに、氷冷下2時間撹拌した。反応で得られたN6−ベンゾイル−2’−デオキシアデノシンへの反応収率と、2’−デオキシアデノシン(N−無置換体)の生成量をHPLC分析により定量した。結果を表2に示す
【0040】
【表2】
【0041】
上記のように同様の条件においてはメタノールに比べてエタノール、イソプロピルアルコールの方が過剰分解しにくいことが判明した。
【0042】
実施例4
2’−デオキシアデノシン 1水和物 20gのピリジン150g懸濁液にベンゾイルクロリド60.56gを加え室温でアシル化を行った。エタノール8.2gを加え過剰の酸クロリドをエステル化したのちに、それぞれの温度まで冷却し、40%水酸化ナトリウム水溶液73gを滴下装入したのちにそれぞれの温度にて20時間撹拌した。20時間後の反応マス中のN6−ベンゾイル−2’−デオキシアデノシン量をHPLCにより定量した。結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
上記表のように、5℃以下の反応条件において、非常に高い反応収率でN6−ベンゾイルー2’−デオキシアデノシンを得ることができる。
【0045】
【発明の効果】
本発明により、中間体であるN6,3’,5’−トリ−またはN6,N6,3’,5’−テトラ−アシル化−2’−デオキシアデノシンを単離することなく、N6−アシル化―2’−デオキシアデノシン類を製造できるようになった。
Claims (9)
- 一般式(1)[化1]
- 一般式(1)であらわされる化合物と
1)ピリジン溶媒中R2−COCl(式中、R2はフェニル基、置換されてもよいフェニル基、置換されてもよいフェニルアセチル基、又は置換されてもよいフェノキシアセチル基を表す)を用いてアシル化反応を行い一般式(3)[化3]
2)1)で得られた反応液に、続けて炭素数2から3のアルコールを加え、未反応のR2−COClをエステルとして分解する工程
3)2)で得られた溶液に、続けて25%重量濃度以上のアルカリ水溶液を加えて加水分解反応させる工程
上記工程により一般式(2)で表される化合物を得ることを特徴とするN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法。 - 一般式(1)に示される化合物においてR1が水素原子であらわされ、R2がフェニル基で表されることを特徴とする請求項1または2に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法。
- アルカリ水溶液による反応の温度が5℃以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法。
- アルカリ水溶液による反応工程におけるアルコールがエタノールであり、アルカリ水溶液滴下後のエタノールと水の重量がそれぞれピリジンの重量以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法。
- アルカリ水溶液滴下後のエタノールの重量がピリジン重量の1/2重量以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法。
- アルカリ水溶液滴下後のエタノールの重量がピリジン重量の1/2重量以下、水の重量がピリジン重量の1/2重量以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法。
- アシル化工程におけるピリジンの量が、一般式(1)で表される化合物に対して10重量倍以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法。
- 使用されるアルカリ水溶液が水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムを含有する水溶液である事を特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のN6−アシル化デオキシアデノシン誘導体の製造法。
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JP2008266374A (ja) * | 2007-04-17 | 2008-11-06 | Daicel Chem Ind Ltd | 多糖アシレートの製造方法、及び高純度多糖アシレート |
-
2003
- 2003-04-08 JP JP2003103893A patent/JP2004307408A/ja active Pending
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