JP2004306766A - モータリトラクタの作動音低減方法及びその作動音低減機構 - Google Patents
モータリトラクタの作動音低減方法及びその作動音低減機構 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】モータを所定期間回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、モータリトラクタの作動音を低減することができるモータリトラクタの作動音低減方法及びその作動音低減機構を得る。
【解決手段】モータリトラクタでは、モータと巻取軸とが、互いに連結状態にある少なくとも2つのギアによって連結されている。このモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際には、モータと巻取軸とを連結しているギアのうち少なくとも1つのギアをその回転軸方向に所定量移動してギアの連結状態が解除され、モータが所定期間回転する。このため、モータリトラクタの作動音は、連結状態が解除されたギアよりもモータ側の回転音のみとなる。
【選択図】 図2
【解決手段】モータリトラクタでは、モータと巻取軸とが、互いに連結状態にある少なくとも2つのギアによって連結されている。このモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際には、モータと巻取軸とを連結しているギアのうち少なくとも1つのギアをその回転軸方向に所定量移動してギアの連結状態が解除され、モータが所定期間回転する。このため、モータリトラクタの作動音は、連結状態が解除されたギアよりもモータ側の回転音のみとなる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両等の座席に着座した乗員の身体を長尺帯状のウエビングベルトで拘束するためのシートベルト装置を構成するモータリトラクタの作動音低減方法及びその作動音低減機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
乗用車等の車両には、シートベルト装置が取り付けられている。このシートベルト装置は、車両の座席に着座した乗員に装着された状態でこの乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトと、このウエビングベルトの長手方向基端側が係止され、回転することでこのウエビングベルトを基端側から巻き取る巻取軸と、巻取軸をこのウエビングベルトの巻取方向へ付勢する渦巻きばね等の付勢部材と、を備えている。ウエビングベルトを乗員が装着している際には、付勢部材によって巻取軸がこのウエビングベルトの巻取方向へ付勢され、この巻取軸がウエビングベルトの弛み等を取り除いて乗員の身体を拘束する構成である。
【0003】
このようなシートベルト装置には、車両が急減速した状態等にウエビングベルトの巻取軸をモータによって回転させるモータリトラクタを備えたものがある(特許文献1及び2)。このモータリトラクタは、動力伝達ベルトや少なくとも2つのギアを介して巻取軸に連結され、駆動力でこの巻取軸をウエビングベルトの巻取方向へ回転させるモータと、ウエビングベルトのタングプレートがバックルから解除されたことを検知して信号を出力するバックルスイッチと、このバックルスイッチから出力された信号に基づいてモータの駆動を制御するECU等の制御手段と、を備えている。ウエビングベルトのタングプレートがバックルから解除されたことがバックルスイッチによって検知されると、制御手段によってモータが駆動し、巻取軸がこのウエビングベルトの巻取方向へ回転してウエビングベルトを巻き取る構成である。
【0004】
このようなモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際には、モータを所定期間回転させる必要がある。モータを所定期間回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際には、このモータの回転に伴って動力伝達ベルト又はギアが回転し、このモータリトラクタに作動音が発生する。このため、車両の乗員にとってこのモータリトラクタの作動音が耳障りとなる。この結果、モータリトラクタは乗員に不快感を与えてしまう。
【0005】
このようなモータリトラクタの作動音を低減させるために、モータリトラクタに消音材や吸音材を取り付けること等が考えられるが、モータリトラクタのコストが高くなってしまったり、このモータリトラクタのサイズが大きくなってしまったりする欠点があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−180253号公報
【特許文献2】
特開平11−170966号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑み、モータを所定期間回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、モータリトラクタの作動音を低減することができるモータリトラクタの作動音低減方法及びその作動音低減機構を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、車両の座席に着座した乗員に装着された状態で前記乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトと、前記ウエビングベルトの長手方向基端側が係止され、回転することで前記ウエビングベルトを前記基端側から巻き取る巻取軸と、互いに連結状態にある少なくとも2つのギアを介して前記巻取軸に連結され、駆動力で前記巻取軸を前記ウエビングベルトの巻取方向へ回転させるモータと、を備えたモータリトラクタの作動音低減方法であって、前記モータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、前記ギアのうち少なくとも1つのギアを移動して前記連結状態を解除し、しかる後に前記モータを所定期間回転させる、ことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、モータリトラクタでは、モータと巻取軸とが、互いに連結状態にある少なくとも2つのギアによって連結されている。このモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際(以下、故障検査時ともいう。)には、例えば、モータと巻取軸とを連結しているギアのうち少なくとも1つのギアをその回転軸方向に所定量移動してギアの連結状態が解除され、モータが所定期間回転する。なお、ギアの連結状態を解除する構成は、これに限らず、ギアをその径方向に移動するようなものとしてもよい。
【0010】
ここで、従来のモータリトラクタでは、故障検査時にモータを回転させると、このモータと巻取軸とを連結しているギアが回転し、モータの回転音に加えてギアの回転音が生じる。このため、乗員にとってモータリトラクタの作動音が耳障りとなり、この結果、モータリトラクタはこの乗員に不快感を与える。
【0011】
この点、本発明のモータリトラクタの作動音低減方法では上述の連結状態が解除されるため、故障検査時にモータを回転させても回転しないギアがある。この結果、回転しないギアからはギアの噛み合い音が生じないので、モータリトラクタの作動音は、連結状態が解除されたギアよりもモータ側の回転音のみとなる。したがって、モータを所定期間回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、モータリトラクタの作動音を低減することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、車両の座席に着座した乗員に装着された状態で前記乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトと、前記ウエビングベルトの長手方向基端側が係止され、回転することで前記ウエビングベルトを前記基端側から巻き取る巻取軸と、前記巻取軸にギアを介して連結され、駆動力で前記巻取軸を前記ウエビングベルトの巻取方向へ回転させるモータと、を備えたモータリトラクタの作動音低減方法であって、前記モータを所定期間逆回転させながら前記モータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、前記ギアに摺動摩擦を与えて前記ギアの回転速度を低減させる、ことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、モータリトラクタでは、モータと巻取軸とが、ギアによって連結されている。モータを所定期間逆回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際には、ギアに摺動摩擦が与えられてこのギアの回転速度が低減する。
【0014】
ここで、従来のモータリトラクタでは、モータを所定期間回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際には、このモータと巻取軸とを連結しているギアが回転し、モータの回転音に加えてギアの回転音が生じる。このため、乗員にとってモータリトラクタの作動音が耳障りとなり、この結果、モータリトラクタはこの乗員に不快感を与える。
【0015】
この点、本発明のモータリトラクタの作動音低減方法では、ギアに摺動摩擦が与えられてこのギアの回転速度が低減する。ギアの回転速度が低下するに従ってこのギアの回転音が低減するので、モータを所定期間逆回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、モータリトラクタの作動音を低減することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、車両の座席に着座した乗員に装着された状態で前記乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトと、前記ウエビングベルトの長手方向基端側が係止され、回転することで前記ウエビングベルトを前記基端側から巻き取る巻取軸と、互いに連結状態にある少なくとも2つのギアを介して前記巻取軸に連結され、駆動力で前記巻取軸を前記ウエビングベルトの巻取方向へ回転させるモータと、前記モータを所定期間回転させながら前記モータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する故障検査手段と、前記故障検査手段によって前記モータを回転させる際に、前記ギアのうち少なくとも1つのギアを移動して前記連結状態を解除する連結状態解除手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、モータリトラクタでは、モータと巻取軸とが、互いに連結状態にある少なくとも2つのギアによって連結されている。故障検査時には、例えば、連結状態解除手段がモータと巻取軸とを連結しているギアのうち少なくとも1つのギアをその回転軸方向に所定量移動してギアの連結状態を解除し、故障検査手段によってモータが所定期間回転する。なお、ギアの連結状態を解除する構成は、これに限らず、ギアをその径方向に移動するようなものとしてもよい。
【0018】
ここで、従来のモータリトラクタでは、故障検査時にモータを回転させると、このモータと巻取軸とを連結しているギアが回転し、モータの回転音に加えてギアの回転音が生じる。このため、乗員にとってモータリトラクタの作動音が耳障りとなり、この結果、モータリトラクタはこの乗員に不快感を与える。
【0019】
この点、本発明のモータリトラクタの作動音低減機構では上述の連結状態が解除されるため、故障検査時にモータを回転させても回転しないギアがある。この結果、回転しないギアからはギアの噛み合い音が生じないので、モータリトラクタの作動音は、連結状態が解除されたギアよりもモータ側の回転音のみとなる。したがって、モータを所定期間回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、モータリトラクタの作動音を低減することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、車両の座席に着座した乗員に装着された状態で前記乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトと、前記ウエビングベルトの長手方向基端側が係止され、回転することで前記ウエビングベルトを前記基端側から巻き取る巻取軸と、前記巻取軸にギアを介して連結され、駆動力で前記巻取軸を前記ウエビングベルトの巻取方向へ回転させるモータと、前記モータを所定期間逆回転させながら前記モータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する故障検査手段と、前記故障検査手段によって前記モータを逆回転させる際に、前記ギアに摺動摩擦を与えて前記ギアの回転速度を低減させる回転速度低減手段と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、モータリトラクタでは、モータと巻取軸とが、ギアによって連結されている。故障検査手段によってモータを所定期間逆回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際、回転速度低減手段によってギアに摺動摩擦が与えられてこのギアの回転速度が低減する。
【0022】
ここで、従来のモータリトラクタでは、モータを所定期間回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際には、このモータと巻取軸とを連結しているギアが回転し、モータの回転音に加えてギアの回転音が生じる。このため、乗員にとってモータリトラクタの作動音が耳障りとなり、この結果、モータリトラクタはこの乗員に不快感を与える。
【0023】
この点、本発明のモータリトラクタの作動音低減機構では、ギアに摺動摩擦が与えられてこのギアの回転速度が低減する。ギアの回転速度が低下するに従ってこのギアの回転音が低減するので、モータを所定期間逆回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、モータリトラクタの作動音を低減することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
図1には、本発明の第1の実施の形態に係るモータリトラクタとしてのウエビングベルト巻取装置10の全体構成の概略が正面断面図によって示されている。
【0025】
この図に示されるように、ウエビングベルト巻取装置10はフレーム12を備えている。フレーム12は略板状の背板14を備えており、この背板14がボルト等の図示しない締結手段によって車体に固定されることで、本ウエビングベルト巻取装置10が車体に取り付けられる構成となっている。背板14の幅方向両端からは一対の脚板16、18が互いに平行に延出されており、これらの脚板16、18間にダイカスト等によって製作された巻取軸としてのスプール20が回転可能に配置されている。
【0026】
スプール20は略円筒形状のスプール本体22と、このスプール本体22の両端部に略円盤形状にそれぞれ形成された一対のフランジ部24、26とによって構成されており、全体としては鼓形状をなしている。
【0027】
スプール本体22はフランジ部24、26間には、長尺帯状に形成されたウエビングベルト28の基端部が固定されており、スプール20をその軸周り一方へ回転させると、ウエビングベルト28がその基端側からスプール本体22の外周部に層状に巻き取られる。また、ウエビングベルト28をその先端側から引っ張れば、スプール本体22の外周部に巻き取られたウエビングベルト28が引き出され、これに伴い、ウエビングベルト28を巻き取る際の回転方向(以下、この方向を便宜上「巻取方向」と称する)とは反対にスプール20が回転する(以下、ウエビングベルト28を引き出す際のスプール20の回転方向を便宜上「引出方向」と称する)。
【0028】
フランジ部24のフランジ部26とは反対側でスプール20の一端側は、脚板16に形成された円孔30を略同軸的に貫通してフレーム12の外部に突出している。脚板16側のフレーム12の外側には、ケース32が配置されている。ケース32は、スプール20の軸方向に沿って脚板16と対向して配置されて脚板16に固定されている。また、ケース32は全体的に脚板16側へ向けて開口しており、円孔30を貫通したスプール20の一端側はケース32の内側に入り込み、ケース32によって回転自在に軸支されている。
【0029】
さらに、ケース32の内部には渦巻きばね34が配置されている。渦巻きばね34は渦巻き方向外側の端部がケース32に係止されており、渦巻き方向内側の端部がスプール20に係止されている。渦巻きばね34は特別に負荷をかけない中立状態からスプール20を引出方向へ回転させると、巻取方向の付勢力が生じてスプール20を巻取方向へ付勢する。したがって、基本的には、スプール20から引き出すためにウエビングベルト28に付与した引っ張り力を解除すると、渦巻きばね34の付勢力がスプール20を巻取方向へ回転させ、スプール20にウエビングベルト28を巻き取らせる構造になっている。
【0030】
一方、フランジ部26のフランジ部24とは反対側でスプール20の他端側は、脚板18に形成された内歯のラチェット孔36を略同軸的に貫通してフレーム12の外部に突出している。脚板18側のフレーム12の外側には、ロック機構38が配置されている。ロック機構38はケース40を備えている。ケース40はスプール20の軸方向に沿って脚板18と対向して配置されて脚板18に固定されている。
【0031】
ケース40の内側には、ロック機構38を構成するラチェットギヤ42がスプール20に対して同軸的で且つ相対回転可能に収容されている。ラチェットギヤ42は、軸方向脚板18とは反対側が開口した浅底円筒状とされており、その外周部にはラチェット歯が形成されている。
【0032】
ラチェットギヤ42の内側には、ロックベース44が収容されている。ロックベース44はスプール20に対して同軸的で且つ一体的に設けられており、したがって、スプール20の回転によりスプール20と一体的に回転する。ロックベース44には図示しない圧縮コイルスプリング等の付勢手段が設けられている。この付勢手段は、一部が上述したラチェットギヤ42に係合しており、ロックベース44が回転すると、ロックベース44と共に回転して、その回転方向に沿った付勢力をラチェットギヤ42に付与する。このため、ラチェットギヤ42は、本来スプール20に対して相対回転可能であるが、スプール20と一体にロックベース44が回転することで付勢手段から付与される付勢力により、ラチェットギヤ42がスプール20の回転に追従して回転する構成となっている。
【0033】
一方、上述したラチェット孔36の内側では、ロックベース44にロックプレート46が支持されている。ロックプレート46は、ロックベース44に支持された状態でラチェット孔36の内歯に対し接離移動可能とされている。また、ロックプレート46は、上述したラチェットギヤ42に係合しており、ラチェットギヤ42がロックベース44に対して上述した巻取方向へ相対回転した場合に、この回転に連動してラチェット孔36の内歯に接近してラチェット孔36の内歯に噛み合う構成となっている。
【0034】
また、ラチェットギヤ42の半径方向下方には、センサフレーム48が配置されている。センサフレーム48は、所定の曲率で湾曲して上方へ向けて開口した図示しない載置部を有しており、この載置部にセンサボール50が載置されている。さらに、センサボール50の上方には係合板52が設けられている。係合板52は、上下に回動可能にセンサフレーム48に取り付けられており、センサボール50が上述した載置部上を転動して上方へ変位した際には、センサボール50に上方から押圧されて回動する。また、係合板52には係合爪54が形成されている。係合爪54は、その先端がラチェットギヤ42のラチェット歯に対向しており、係合板52が上方へ回動すると係合爪54がラチェットギヤ42のラチェット歯に噛み合い、ラチェットギヤ42の回転を規制する構成となっている。
【0035】
一方、スプール20の下方で脚板16と脚板18との間には、モータ60が配置されている。モータ60の出力軸62にはギヤ64が同軸的且つ一体的に設けられている。
【0036】
ギヤ64の半径方向上方には、ギヤ64よりも大径のギヤ66が配置されている。ギヤ66は脚板16、18間に設けられた支持板68と脚板16とによりスプール20と平行な軸周りに回転自在に軸支された状態で、ギヤ64に噛み合っている。また、ギヤ66の軸方向側方にはギヤ66よりも小径のギヤ70がギヤ66に対して同軸的且つ一体的に設けられている。
【0037】
さらに、ギヤ70の半径方向上側側方には、クラッチ72が設けられている。クラッチ72は、リング状に形成された外歯のギヤ74を備えている。ギヤ74はスプール20に対して同軸的で且つ相対回転可能に設けられており、その軸方向両端は図示しない円盤状部材により閉止されている。また、ギヤ74の内側には、筒状のアダプタ76がスプール20に対して同軸的に設けられている。アダプタ76は、スプール20に同軸的且つ一体的に設けられていると共に、ギヤ74の両端を閉止する円盤状部材を貫通した状態で、円盤状部材、ひいてはギヤ74をスプール20周りに回転可能に軸支している。
【0038】
ギヤ74の内側には、例えば、遠心力で揺動するパウル等の連結部材が収容されている。連結部材は、例えば、上記の円盤状部材に支持されており、ギヤ74と共に回転可能であると共に、遠心力で揺動することで、アダプタ76の外周部に係合してギヤ74とアダプタ76とを機械的に連結し、ギヤ74の回転力をアダプタ76、ひいてはスプール20に伝えることができる構造となっている。
【0039】
すなわち、上記のクラッチ72は、ギヤ74側(モータ60の出力軸62側)の回転をスプール20に伝えることはできるが、スプール20の回転をギヤ74へ伝えることはできない構造となっている。
【0040】
一方、モータ60の駆動はドライバ82とECU86とによって制御される。図1に示されるように、上述したモータ60は、ドライバ82を介して車両に搭載されたバッテリー84に電気的に接続されており、バッテリー84からの電流がドライバ82を介してモータ60に流れることで、モータ60は駆動力で出力軸62を正方向(巻取方向と対応する方向)へ回転(正回転)又は逆方向へ回転(逆回転)させる構成となっている。ドライバ82は、マイコン等で構成されてECU86に接続されている。
【0041】
このドライバ82には、ソレノイド88が接続されている。このソレノイド88は、モータ60の下方に配置されている。図2(A)及び(B)に示されるように、ソレノイド88は先端部92と突出部94とから構成される可動部90を備えており、その先端部92は、支持板68を挿通してギア64の径方向中心側にこのギア64と対向して配置されている。先端部92には、略長尺状の板状部材で形成されており、ギア64側端部に略U字状に切り欠いた凹部96が設けられている。先端部92では、凹部96にギア64が進入した状態で配置されており、ギア64の外周面と凹部96の底部とが非接触な状態に保たれている。この先端部92のギア64と反対側の端部には、略長尺状の板状部材で形成された突出部94が設けられている。これらの先端部92と突出部94とは、互いの長尺方向端部同士が支持板68に対してギア64と反対側で連結しており、先端部92と突出部94とが一体となって可動部90とされている。すなわち、この可動部90は、正面から見て、ソレノイド88の外部に露出した略L字状の板状体となっている。
【0042】
以上説明したようなウエビングベルト巻取装置10に故障が生じているか否かを検査する際には、ECU86及びドライバ82がモータ60を所定期間逆転させる。モータ60を所定期間逆回転させながらウエビングベルト巻取装置10に故障が生じているか否かを検査する際(以下、故障検査時ともいう。)には、ECU86によってドライバ82からモータ60の駆動を制御するダイアグ信号が出力されると共にソレノイド88に信号が出力される。ドライバ82から出力された信号がソレノイド88に入力されると、この可動部90がモータ60の出力軸62方向、すなわちギア64の回転軸方向(図2(A)及び(B)における矢印Aを参照。)に所定量移動するようになっている。このギア64は通常時ではギア66と互いに連結状態とされている(図2(A))。このギア64の回転軸方向に移動する所定量は、ギア64とギア66との連結状態を解除できる移動量に設定されている。このように可動部90がギア64の回転軸方向に所定量移動できるように、支持板68には、可動部90が挿通した状態でギア64の回転軸方向に移動するための切欠きがギア64の回転軸方向に沿って設けられている。
【0043】
以下に、本発明の第1の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10の作用について説明する。
【0044】
ウエビングベルト巻取装置10では、モータ60とスプール20とが、互いに連結状態にあるギア64、66等によって連結されている。故障検査時には、ドライバ82からソレノイド88に信号が出力される。ソレノイド88と可動部90とによってモータ60とスプール20とを連結しているギアの1つであるギア64をその回転軸方向(モータ60の出力軸62方向)に所定量移動してギア64とギア66との連結状態を解除し、ECU86及びドライバ82によってモータ60が所定期間逆回転する。
【0045】
ここで、従来のモータリトラクタでは、故障検査時にモータを回転させると、このモータと巻取軸とを連結しているギアが回転し、モータの回転音に加えてギアの回転音が生じる。このため、乗員にとってモータリトラクタの作動音が耳障りとなり、この結果、モータリトラクタはこの乗員に不快感を与える。
【0046】
この点、本発明第1の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10では上述の連結状態が解除されるため、故障検査時にモータ60を逆回転させても回転しないギア(ギア66、70等)がある。この結果、回転しないギア(ギア66、70等)からはギアの噛み合い音が生じないので、ウエビングベルト巻取装置10の作動音は、連結状態が解除されたギア64よりもモータ60側の回転音(すなわちモータ60の回転音)のみとなる。したがって、モータ60を所定期間逆回転させながらウエビングベルト巻取装置10に故障が生じているか否かを検査する際に、ウエビングベルト巻取装置10の作動音を低減することができる。
【0047】
このようなウエビングベルト巻取装置10では、イグニッションがオフの時は、ギア64を常に連結状態としておき、異常検査時にこの連結状態を解除し、異常検査時が終了した後、このギア64を連結状態が解除された状態から再び連結状態に戻すようにしてもよい。
【0048】
なお、本発明の第1の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10では、ウエビングベルト巻取装置10に故障が生じているか否かを検査する際に、モータ60を逆回転させるものとしたが、本発明はこれに限らない。本発明は、ウエビングベルト巻取装置10に故障が生じているか否かを検査する際に、モータ60を正回転させるようにしてもよい。この場合においても、モータ60とスプール20との間に介在するギアのうち回転しないギアがあり、この結果、回転しないギアからはギアの噛み合い音が生じない。したがって、モータを正回転させながらウエビングベルト巻取装置10に故障が生じているか否かを検査する際も、本発明の第1の実施の形態で説明した作用、効果と同様の作用、効果を有する。
【0049】
また、ウエビングベルト巻取装置10において、ギア64以外のギア(例えばギア66等)の連結状態を解除するようにしてもよい。この場合においても本発明の第1の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10と同様の作用、効果を有する。
【0050】
また、本発明の第1の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10では、ギアの連結状態を解除する際に、ギア64をその回転軸方向に移動させる構成としたが、ギアの連結状態を解除する構成はこれに限らない。例えば、ギアの連結状態を解除する構成は、ギア(例えば、ギア66)をその径方向に移動するようなものとしてもよい。このような構成であっても、モータ60を所定期間逆回転(あるいは所定期間正回転)させながらウエビングベルト巻取装置10に故障が生じているか否かを検査する際に、ウエビングベルト巻取装置10の作動音を低減することができる。
(第2の実施の形態)
以下に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、上述した第1の実施の形態と同一構成・同一作用の箇所には、同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
図3に示されるように、第2の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10Aは、第1の実施の形態で説明したソレノイド88及び可動部90(図1を参照。)に換えてソレノイド98及びその押圧部100がウエビング巻取装置10に適用されたものである。
【0052】
ドライバ82には、ソレノイド98が接続されている。このソレノイド98は、スプール20とモータ60との間であって脚板16と脚板18との間に配置されている。図4に示されるように、ソレノイド98は先端部102と突出部104とから構成される押圧部100を備えており、その先端部102は、支持板68を挿通してギア66の側面と対向した状態で突出可能に配置されている。
【0053】
先端部102の表面は略半球状の球面部と円状の平面部とから構成されており、先端部102は、この球面部の仮想頂点の位置をギア66の側面側とし、平面部の仮想中心の位置をギア66とは反対の支持板68側となるように配置されている。先端部102は、通常時では、ギア66の側面と非接触状態に保たれている。
【0054】
この先端部102には、先端部102に対してギア66と反対側に円柱状に形成された突出部104が設けられている。突出部104は、その円状の平面部と先端部102の平面部とを面接触させるようにして一体的に連結しており、先端部102と突出部104とが一体となって押圧部100とされている。すなわち、この押圧部100は、正面から見て、ソレノイド98の外部に露出しており、いわゆる綿棒状となっている。
【0055】
以上説明したようなウエビングベルト巻取装置10Aに故障が生じているか否かを検査する際には、ECU86及びドライバ82がモータ60を所定期間逆転させる。モータ60を所定期間逆回転させながらウエビングベルト巻取装置10に故障が生じているか否かを検査する際(故障検査時)には、モータ60の回転終了時と同時にドライバ82からソレノイド98に信号が出力される。ドライバ82から出力された信号がソレノイド98に入力されると、この押圧部100がギア66の回転軸方向に移動してギア66の側面と接触(図4において一点鎖線で示される状態を参照。)し、ギア66に摺動摩擦を与えてギア66の回転速度を低減(押圧部100によるブレーキ作動)させるようになっている。このギア押圧部100は通常時ではギア66と互いに非接触状態とされている。
【0056】
以下に、本発明の第2の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10の作用について説明する。
【0057】
ウエビングベルト巻取装置10では、モータ60とスプール20とが、ギア64、66等によって連結されている。ECU86及びドライバ82によってモータ60を所定期間逆回転させる際(ダイアグ信号がLレベルからHレベルになってモータ60を逆回転させる際。図5(A)を参照。)に、ドライバ82からソレノイド88に信号が出力される(図5(B)を参照。)。この信号がHレベルからLレベルになると、ソレノイド98と押圧部100とによってギア66に摺動摩擦が与えられてこのギア66の回転速度が低減する(図5(C)を参照)。この結果、ダイアグ信号がHレベルからLレベルに戻った後において、ギア66が惰性回転する期間を短くすることができる(図5(C)の破線部を参照。)。
【0058】
ここで、従来のモータリトラクタでは、モータを所定期間回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際には、このモータと巻取軸とを連結しているギアが回転し、モータの回転音に加えてギアの回転音が生じる。このため、乗員にとってモータリトラクタの作動音が耳障りとなり、この結果、モータリトラクタはこの乗員に不快感を与える。
【0059】
この点、本発明の第2の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10Aでは、ギア66に摺動摩擦が与えられてこのギア66の回転速度が低減する。ギア66の回転速度が低下するに従ってこのギア66の回転音が低減するので、モータ60を所定期間逆回転させながらウエビングベルト巻取装置10Aに故障が生じているか否かを検査する際に、ウエビングベルト巻取装置10Aの作動音を低減することができる。
【0060】
以上説明したように、第2の実施の形態では、モータ60を所定期間逆回転させながらウエビングベルト巻取装置10に故障が生じているか否かを検査する際(故障検査時)には、モータ60の逆回転終了時と同時にECU86からソレノイド98に信号が出力されるものとしたが、本発明はこれに限らない。図6に示されるように、例えば、故障検査時において、モータ60の逆回転開始時(ダイアグ信号がHレベルからLレベルになった時)と同時にドライバ82からソレノイド98に信号が出力されるようにしてもよい(図6(A)及び(B)を参照。)。この場合、ギア66が回転停止するまでこのギア66に摺動摩擦が与えられる(図6(C)を参照)。この結果、異常検出時におけるギア66の回転速度を低速にすることができる(図6(C)の破線部を参照。)。
【0061】
このように、故障検査時において、モータ60の回転開始時と同時にECU86からソレノイド98に信号が出力されるようにしても、ギア66の回転速度が低下するに従ってこのギア66の回転音が低減するので、モータ60を所定期間逆回転させながらウエビングベルト巻取装置10Aに故障が生じているか否かを検査する際に、ウエビングベルト巻取装置10Aの作動音を低減することができる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明した如く本発明に係るモータリトラクタは、モータを所定期間回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、モータリトラクタの作動音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置の全体構成の概略を示す正面図である。
【図2】図1におけるモータの出力軸と連結したギア付近の拡大図であって、(A)は通常時における状態、(B)は異常検査時における状態を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置の全体構成の概略を示す正面図である。
【図4】図3におけるモータとスロープとを連結するギア付近の拡大図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置において、(A)はダイアグ信号のレベルを示すタイムチャートであり、(B)はソレノイドがドライバから入力する信号のレベルを示すタイムチャートであり、(C)は摺動摩擦が与えられるギアの回転速度を示すタイムチャートである。
【図6】図5における各動作の変形例を示すタイムチャートであって、(A)はダイアグ信号のレベルを示すタイムチャートであり、(B)はソレノイドがドライバから入力する信号のレベルを示すタイムチャートであり、(C)は摺動摩擦が与えられるギアの回転速度を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
10 ウエビングベルト巻取装置(モータリトラクタ)
20 スプール(巻取軸)
28 ウエビングベルト
60 モータ
72 クラッチ
82 ドライバ(故障検査手段)
86 ECU(故障検査手段)
88 ソレノイド(連結状態解除手段)
90 可動部(連結状態解除手段)
98 ソレノイド(回転速度低減手段)
100 押圧部(回転速度低減手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両等の座席に着座した乗員の身体を長尺帯状のウエビングベルトで拘束するためのシートベルト装置を構成するモータリトラクタの作動音低減方法及びその作動音低減機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
乗用車等の車両には、シートベルト装置が取り付けられている。このシートベルト装置は、車両の座席に着座した乗員に装着された状態でこの乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトと、このウエビングベルトの長手方向基端側が係止され、回転することでこのウエビングベルトを基端側から巻き取る巻取軸と、巻取軸をこのウエビングベルトの巻取方向へ付勢する渦巻きばね等の付勢部材と、を備えている。ウエビングベルトを乗員が装着している際には、付勢部材によって巻取軸がこのウエビングベルトの巻取方向へ付勢され、この巻取軸がウエビングベルトの弛み等を取り除いて乗員の身体を拘束する構成である。
【0003】
このようなシートベルト装置には、車両が急減速した状態等にウエビングベルトの巻取軸をモータによって回転させるモータリトラクタを備えたものがある(特許文献1及び2)。このモータリトラクタは、動力伝達ベルトや少なくとも2つのギアを介して巻取軸に連結され、駆動力でこの巻取軸をウエビングベルトの巻取方向へ回転させるモータと、ウエビングベルトのタングプレートがバックルから解除されたことを検知して信号を出力するバックルスイッチと、このバックルスイッチから出力された信号に基づいてモータの駆動を制御するECU等の制御手段と、を備えている。ウエビングベルトのタングプレートがバックルから解除されたことがバックルスイッチによって検知されると、制御手段によってモータが駆動し、巻取軸がこのウエビングベルトの巻取方向へ回転してウエビングベルトを巻き取る構成である。
【0004】
このようなモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際には、モータを所定期間回転させる必要がある。モータを所定期間回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際には、このモータの回転に伴って動力伝達ベルト又はギアが回転し、このモータリトラクタに作動音が発生する。このため、車両の乗員にとってこのモータリトラクタの作動音が耳障りとなる。この結果、モータリトラクタは乗員に不快感を与えてしまう。
【0005】
このようなモータリトラクタの作動音を低減させるために、モータリトラクタに消音材や吸音材を取り付けること等が考えられるが、モータリトラクタのコストが高くなってしまったり、このモータリトラクタのサイズが大きくなってしまったりする欠点があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−180253号公報
【特許文献2】
特開平11−170966号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑み、モータを所定期間回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、モータリトラクタの作動音を低減することができるモータリトラクタの作動音低減方法及びその作動音低減機構を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、車両の座席に着座した乗員に装着された状態で前記乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトと、前記ウエビングベルトの長手方向基端側が係止され、回転することで前記ウエビングベルトを前記基端側から巻き取る巻取軸と、互いに連結状態にある少なくとも2つのギアを介して前記巻取軸に連結され、駆動力で前記巻取軸を前記ウエビングベルトの巻取方向へ回転させるモータと、を備えたモータリトラクタの作動音低減方法であって、前記モータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、前記ギアのうち少なくとも1つのギアを移動して前記連結状態を解除し、しかる後に前記モータを所定期間回転させる、ことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、モータリトラクタでは、モータと巻取軸とが、互いに連結状態にある少なくとも2つのギアによって連結されている。このモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際(以下、故障検査時ともいう。)には、例えば、モータと巻取軸とを連結しているギアのうち少なくとも1つのギアをその回転軸方向に所定量移動してギアの連結状態が解除され、モータが所定期間回転する。なお、ギアの連結状態を解除する構成は、これに限らず、ギアをその径方向に移動するようなものとしてもよい。
【0010】
ここで、従来のモータリトラクタでは、故障検査時にモータを回転させると、このモータと巻取軸とを連結しているギアが回転し、モータの回転音に加えてギアの回転音が生じる。このため、乗員にとってモータリトラクタの作動音が耳障りとなり、この結果、モータリトラクタはこの乗員に不快感を与える。
【0011】
この点、本発明のモータリトラクタの作動音低減方法では上述の連結状態が解除されるため、故障検査時にモータを回転させても回転しないギアがある。この結果、回転しないギアからはギアの噛み合い音が生じないので、モータリトラクタの作動音は、連結状態が解除されたギアよりもモータ側の回転音のみとなる。したがって、モータを所定期間回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、モータリトラクタの作動音を低減することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、車両の座席に着座した乗員に装着された状態で前記乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトと、前記ウエビングベルトの長手方向基端側が係止され、回転することで前記ウエビングベルトを前記基端側から巻き取る巻取軸と、前記巻取軸にギアを介して連結され、駆動力で前記巻取軸を前記ウエビングベルトの巻取方向へ回転させるモータと、を備えたモータリトラクタの作動音低減方法であって、前記モータを所定期間逆回転させながら前記モータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、前記ギアに摺動摩擦を与えて前記ギアの回転速度を低減させる、ことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、モータリトラクタでは、モータと巻取軸とが、ギアによって連結されている。モータを所定期間逆回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際には、ギアに摺動摩擦が与えられてこのギアの回転速度が低減する。
【0014】
ここで、従来のモータリトラクタでは、モータを所定期間回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際には、このモータと巻取軸とを連結しているギアが回転し、モータの回転音に加えてギアの回転音が生じる。このため、乗員にとってモータリトラクタの作動音が耳障りとなり、この結果、モータリトラクタはこの乗員に不快感を与える。
【0015】
この点、本発明のモータリトラクタの作動音低減方法では、ギアに摺動摩擦が与えられてこのギアの回転速度が低減する。ギアの回転速度が低下するに従ってこのギアの回転音が低減するので、モータを所定期間逆回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、モータリトラクタの作動音を低減することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、車両の座席に着座した乗員に装着された状態で前記乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトと、前記ウエビングベルトの長手方向基端側が係止され、回転することで前記ウエビングベルトを前記基端側から巻き取る巻取軸と、互いに連結状態にある少なくとも2つのギアを介して前記巻取軸に連結され、駆動力で前記巻取軸を前記ウエビングベルトの巻取方向へ回転させるモータと、前記モータを所定期間回転させながら前記モータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する故障検査手段と、前記故障検査手段によって前記モータを回転させる際に、前記ギアのうち少なくとも1つのギアを移動して前記連結状態を解除する連結状態解除手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、モータリトラクタでは、モータと巻取軸とが、互いに連結状態にある少なくとも2つのギアによって連結されている。故障検査時には、例えば、連結状態解除手段がモータと巻取軸とを連結しているギアのうち少なくとも1つのギアをその回転軸方向に所定量移動してギアの連結状態を解除し、故障検査手段によってモータが所定期間回転する。なお、ギアの連結状態を解除する構成は、これに限らず、ギアをその径方向に移動するようなものとしてもよい。
【0018】
ここで、従来のモータリトラクタでは、故障検査時にモータを回転させると、このモータと巻取軸とを連結しているギアが回転し、モータの回転音に加えてギアの回転音が生じる。このため、乗員にとってモータリトラクタの作動音が耳障りとなり、この結果、モータリトラクタはこの乗員に不快感を与える。
【0019】
この点、本発明のモータリトラクタの作動音低減機構では上述の連結状態が解除されるため、故障検査時にモータを回転させても回転しないギアがある。この結果、回転しないギアからはギアの噛み合い音が生じないので、モータリトラクタの作動音は、連結状態が解除されたギアよりもモータ側の回転音のみとなる。したがって、モータを所定期間回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、モータリトラクタの作動音を低減することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、車両の座席に着座した乗員に装着された状態で前記乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトと、前記ウエビングベルトの長手方向基端側が係止され、回転することで前記ウエビングベルトを前記基端側から巻き取る巻取軸と、前記巻取軸にギアを介して連結され、駆動力で前記巻取軸を前記ウエビングベルトの巻取方向へ回転させるモータと、前記モータを所定期間逆回転させながら前記モータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する故障検査手段と、前記故障検査手段によって前記モータを逆回転させる際に、前記ギアに摺動摩擦を与えて前記ギアの回転速度を低減させる回転速度低減手段と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、モータリトラクタでは、モータと巻取軸とが、ギアによって連結されている。故障検査手段によってモータを所定期間逆回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際、回転速度低減手段によってギアに摺動摩擦が与えられてこのギアの回転速度が低減する。
【0022】
ここで、従来のモータリトラクタでは、モータを所定期間回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際には、このモータと巻取軸とを連結しているギアが回転し、モータの回転音に加えてギアの回転音が生じる。このため、乗員にとってモータリトラクタの作動音が耳障りとなり、この結果、モータリトラクタはこの乗員に不快感を与える。
【0023】
この点、本発明のモータリトラクタの作動音低減機構では、ギアに摺動摩擦が与えられてこのギアの回転速度が低減する。ギアの回転速度が低下するに従ってこのギアの回転音が低減するので、モータを所定期間逆回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、モータリトラクタの作動音を低減することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
図1には、本発明の第1の実施の形態に係るモータリトラクタとしてのウエビングベルト巻取装置10の全体構成の概略が正面断面図によって示されている。
【0025】
この図に示されるように、ウエビングベルト巻取装置10はフレーム12を備えている。フレーム12は略板状の背板14を備えており、この背板14がボルト等の図示しない締結手段によって車体に固定されることで、本ウエビングベルト巻取装置10が車体に取り付けられる構成となっている。背板14の幅方向両端からは一対の脚板16、18が互いに平行に延出されており、これらの脚板16、18間にダイカスト等によって製作された巻取軸としてのスプール20が回転可能に配置されている。
【0026】
スプール20は略円筒形状のスプール本体22と、このスプール本体22の両端部に略円盤形状にそれぞれ形成された一対のフランジ部24、26とによって構成されており、全体としては鼓形状をなしている。
【0027】
スプール本体22はフランジ部24、26間には、長尺帯状に形成されたウエビングベルト28の基端部が固定されており、スプール20をその軸周り一方へ回転させると、ウエビングベルト28がその基端側からスプール本体22の外周部に層状に巻き取られる。また、ウエビングベルト28をその先端側から引っ張れば、スプール本体22の外周部に巻き取られたウエビングベルト28が引き出され、これに伴い、ウエビングベルト28を巻き取る際の回転方向(以下、この方向を便宜上「巻取方向」と称する)とは反対にスプール20が回転する(以下、ウエビングベルト28を引き出す際のスプール20の回転方向を便宜上「引出方向」と称する)。
【0028】
フランジ部24のフランジ部26とは反対側でスプール20の一端側は、脚板16に形成された円孔30を略同軸的に貫通してフレーム12の外部に突出している。脚板16側のフレーム12の外側には、ケース32が配置されている。ケース32は、スプール20の軸方向に沿って脚板16と対向して配置されて脚板16に固定されている。また、ケース32は全体的に脚板16側へ向けて開口しており、円孔30を貫通したスプール20の一端側はケース32の内側に入り込み、ケース32によって回転自在に軸支されている。
【0029】
さらに、ケース32の内部には渦巻きばね34が配置されている。渦巻きばね34は渦巻き方向外側の端部がケース32に係止されており、渦巻き方向内側の端部がスプール20に係止されている。渦巻きばね34は特別に負荷をかけない中立状態からスプール20を引出方向へ回転させると、巻取方向の付勢力が生じてスプール20を巻取方向へ付勢する。したがって、基本的には、スプール20から引き出すためにウエビングベルト28に付与した引っ張り力を解除すると、渦巻きばね34の付勢力がスプール20を巻取方向へ回転させ、スプール20にウエビングベルト28を巻き取らせる構造になっている。
【0030】
一方、フランジ部26のフランジ部24とは反対側でスプール20の他端側は、脚板18に形成された内歯のラチェット孔36を略同軸的に貫通してフレーム12の外部に突出している。脚板18側のフレーム12の外側には、ロック機構38が配置されている。ロック機構38はケース40を備えている。ケース40はスプール20の軸方向に沿って脚板18と対向して配置されて脚板18に固定されている。
【0031】
ケース40の内側には、ロック機構38を構成するラチェットギヤ42がスプール20に対して同軸的で且つ相対回転可能に収容されている。ラチェットギヤ42は、軸方向脚板18とは反対側が開口した浅底円筒状とされており、その外周部にはラチェット歯が形成されている。
【0032】
ラチェットギヤ42の内側には、ロックベース44が収容されている。ロックベース44はスプール20に対して同軸的で且つ一体的に設けられており、したがって、スプール20の回転によりスプール20と一体的に回転する。ロックベース44には図示しない圧縮コイルスプリング等の付勢手段が設けられている。この付勢手段は、一部が上述したラチェットギヤ42に係合しており、ロックベース44が回転すると、ロックベース44と共に回転して、その回転方向に沿った付勢力をラチェットギヤ42に付与する。このため、ラチェットギヤ42は、本来スプール20に対して相対回転可能であるが、スプール20と一体にロックベース44が回転することで付勢手段から付与される付勢力により、ラチェットギヤ42がスプール20の回転に追従して回転する構成となっている。
【0033】
一方、上述したラチェット孔36の内側では、ロックベース44にロックプレート46が支持されている。ロックプレート46は、ロックベース44に支持された状態でラチェット孔36の内歯に対し接離移動可能とされている。また、ロックプレート46は、上述したラチェットギヤ42に係合しており、ラチェットギヤ42がロックベース44に対して上述した巻取方向へ相対回転した場合に、この回転に連動してラチェット孔36の内歯に接近してラチェット孔36の内歯に噛み合う構成となっている。
【0034】
また、ラチェットギヤ42の半径方向下方には、センサフレーム48が配置されている。センサフレーム48は、所定の曲率で湾曲して上方へ向けて開口した図示しない載置部を有しており、この載置部にセンサボール50が載置されている。さらに、センサボール50の上方には係合板52が設けられている。係合板52は、上下に回動可能にセンサフレーム48に取り付けられており、センサボール50が上述した載置部上を転動して上方へ変位した際には、センサボール50に上方から押圧されて回動する。また、係合板52には係合爪54が形成されている。係合爪54は、その先端がラチェットギヤ42のラチェット歯に対向しており、係合板52が上方へ回動すると係合爪54がラチェットギヤ42のラチェット歯に噛み合い、ラチェットギヤ42の回転を規制する構成となっている。
【0035】
一方、スプール20の下方で脚板16と脚板18との間には、モータ60が配置されている。モータ60の出力軸62にはギヤ64が同軸的且つ一体的に設けられている。
【0036】
ギヤ64の半径方向上方には、ギヤ64よりも大径のギヤ66が配置されている。ギヤ66は脚板16、18間に設けられた支持板68と脚板16とによりスプール20と平行な軸周りに回転自在に軸支された状態で、ギヤ64に噛み合っている。また、ギヤ66の軸方向側方にはギヤ66よりも小径のギヤ70がギヤ66に対して同軸的且つ一体的に設けられている。
【0037】
さらに、ギヤ70の半径方向上側側方には、クラッチ72が設けられている。クラッチ72は、リング状に形成された外歯のギヤ74を備えている。ギヤ74はスプール20に対して同軸的で且つ相対回転可能に設けられており、その軸方向両端は図示しない円盤状部材により閉止されている。また、ギヤ74の内側には、筒状のアダプタ76がスプール20に対して同軸的に設けられている。アダプタ76は、スプール20に同軸的且つ一体的に設けられていると共に、ギヤ74の両端を閉止する円盤状部材を貫通した状態で、円盤状部材、ひいてはギヤ74をスプール20周りに回転可能に軸支している。
【0038】
ギヤ74の内側には、例えば、遠心力で揺動するパウル等の連結部材が収容されている。連結部材は、例えば、上記の円盤状部材に支持されており、ギヤ74と共に回転可能であると共に、遠心力で揺動することで、アダプタ76の外周部に係合してギヤ74とアダプタ76とを機械的に連結し、ギヤ74の回転力をアダプタ76、ひいてはスプール20に伝えることができる構造となっている。
【0039】
すなわち、上記のクラッチ72は、ギヤ74側(モータ60の出力軸62側)の回転をスプール20に伝えることはできるが、スプール20の回転をギヤ74へ伝えることはできない構造となっている。
【0040】
一方、モータ60の駆動はドライバ82とECU86とによって制御される。図1に示されるように、上述したモータ60は、ドライバ82を介して車両に搭載されたバッテリー84に電気的に接続されており、バッテリー84からの電流がドライバ82を介してモータ60に流れることで、モータ60は駆動力で出力軸62を正方向(巻取方向と対応する方向)へ回転(正回転)又は逆方向へ回転(逆回転)させる構成となっている。ドライバ82は、マイコン等で構成されてECU86に接続されている。
【0041】
このドライバ82には、ソレノイド88が接続されている。このソレノイド88は、モータ60の下方に配置されている。図2(A)及び(B)に示されるように、ソレノイド88は先端部92と突出部94とから構成される可動部90を備えており、その先端部92は、支持板68を挿通してギア64の径方向中心側にこのギア64と対向して配置されている。先端部92には、略長尺状の板状部材で形成されており、ギア64側端部に略U字状に切り欠いた凹部96が設けられている。先端部92では、凹部96にギア64が進入した状態で配置されており、ギア64の外周面と凹部96の底部とが非接触な状態に保たれている。この先端部92のギア64と反対側の端部には、略長尺状の板状部材で形成された突出部94が設けられている。これらの先端部92と突出部94とは、互いの長尺方向端部同士が支持板68に対してギア64と反対側で連結しており、先端部92と突出部94とが一体となって可動部90とされている。すなわち、この可動部90は、正面から見て、ソレノイド88の外部に露出した略L字状の板状体となっている。
【0042】
以上説明したようなウエビングベルト巻取装置10に故障が生じているか否かを検査する際には、ECU86及びドライバ82がモータ60を所定期間逆転させる。モータ60を所定期間逆回転させながらウエビングベルト巻取装置10に故障が生じているか否かを検査する際(以下、故障検査時ともいう。)には、ECU86によってドライバ82からモータ60の駆動を制御するダイアグ信号が出力されると共にソレノイド88に信号が出力される。ドライバ82から出力された信号がソレノイド88に入力されると、この可動部90がモータ60の出力軸62方向、すなわちギア64の回転軸方向(図2(A)及び(B)における矢印Aを参照。)に所定量移動するようになっている。このギア64は通常時ではギア66と互いに連結状態とされている(図2(A))。このギア64の回転軸方向に移動する所定量は、ギア64とギア66との連結状態を解除できる移動量に設定されている。このように可動部90がギア64の回転軸方向に所定量移動できるように、支持板68には、可動部90が挿通した状態でギア64の回転軸方向に移動するための切欠きがギア64の回転軸方向に沿って設けられている。
【0043】
以下に、本発明の第1の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10の作用について説明する。
【0044】
ウエビングベルト巻取装置10では、モータ60とスプール20とが、互いに連結状態にあるギア64、66等によって連結されている。故障検査時には、ドライバ82からソレノイド88に信号が出力される。ソレノイド88と可動部90とによってモータ60とスプール20とを連結しているギアの1つであるギア64をその回転軸方向(モータ60の出力軸62方向)に所定量移動してギア64とギア66との連結状態を解除し、ECU86及びドライバ82によってモータ60が所定期間逆回転する。
【0045】
ここで、従来のモータリトラクタでは、故障検査時にモータを回転させると、このモータと巻取軸とを連結しているギアが回転し、モータの回転音に加えてギアの回転音が生じる。このため、乗員にとってモータリトラクタの作動音が耳障りとなり、この結果、モータリトラクタはこの乗員に不快感を与える。
【0046】
この点、本発明第1の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10では上述の連結状態が解除されるため、故障検査時にモータ60を逆回転させても回転しないギア(ギア66、70等)がある。この結果、回転しないギア(ギア66、70等)からはギアの噛み合い音が生じないので、ウエビングベルト巻取装置10の作動音は、連結状態が解除されたギア64よりもモータ60側の回転音(すなわちモータ60の回転音)のみとなる。したがって、モータ60を所定期間逆回転させながらウエビングベルト巻取装置10に故障が生じているか否かを検査する際に、ウエビングベルト巻取装置10の作動音を低減することができる。
【0047】
このようなウエビングベルト巻取装置10では、イグニッションがオフの時は、ギア64を常に連結状態としておき、異常検査時にこの連結状態を解除し、異常検査時が終了した後、このギア64を連結状態が解除された状態から再び連結状態に戻すようにしてもよい。
【0048】
なお、本発明の第1の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10では、ウエビングベルト巻取装置10に故障が生じているか否かを検査する際に、モータ60を逆回転させるものとしたが、本発明はこれに限らない。本発明は、ウエビングベルト巻取装置10に故障が生じているか否かを検査する際に、モータ60を正回転させるようにしてもよい。この場合においても、モータ60とスプール20との間に介在するギアのうち回転しないギアがあり、この結果、回転しないギアからはギアの噛み合い音が生じない。したがって、モータを正回転させながらウエビングベルト巻取装置10に故障が生じているか否かを検査する際も、本発明の第1の実施の形態で説明した作用、効果と同様の作用、効果を有する。
【0049】
また、ウエビングベルト巻取装置10において、ギア64以外のギア(例えばギア66等)の連結状態を解除するようにしてもよい。この場合においても本発明の第1の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10と同様の作用、効果を有する。
【0050】
また、本発明の第1の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10では、ギアの連結状態を解除する際に、ギア64をその回転軸方向に移動させる構成としたが、ギアの連結状態を解除する構成はこれに限らない。例えば、ギアの連結状態を解除する構成は、ギア(例えば、ギア66)をその径方向に移動するようなものとしてもよい。このような構成であっても、モータ60を所定期間逆回転(あるいは所定期間正回転)させながらウエビングベルト巻取装置10に故障が生じているか否かを検査する際に、ウエビングベルト巻取装置10の作動音を低減することができる。
(第2の実施の形態)
以下に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、上述した第1の実施の形態と同一構成・同一作用の箇所には、同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
図3に示されるように、第2の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10Aは、第1の実施の形態で説明したソレノイド88及び可動部90(図1を参照。)に換えてソレノイド98及びその押圧部100がウエビング巻取装置10に適用されたものである。
【0052】
ドライバ82には、ソレノイド98が接続されている。このソレノイド98は、スプール20とモータ60との間であって脚板16と脚板18との間に配置されている。図4に示されるように、ソレノイド98は先端部102と突出部104とから構成される押圧部100を備えており、その先端部102は、支持板68を挿通してギア66の側面と対向した状態で突出可能に配置されている。
【0053】
先端部102の表面は略半球状の球面部と円状の平面部とから構成されており、先端部102は、この球面部の仮想頂点の位置をギア66の側面側とし、平面部の仮想中心の位置をギア66とは反対の支持板68側となるように配置されている。先端部102は、通常時では、ギア66の側面と非接触状態に保たれている。
【0054】
この先端部102には、先端部102に対してギア66と反対側に円柱状に形成された突出部104が設けられている。突出部104は、その円状の平面部と先端部102の平面部とを面接触させるようにして一体的に連結しており、先端部102と突出部104とが一体となって押圧部100とされている。すなわち、この押圧部100は、正面から見て、ソレノイド98の外部に露出しており、いわゆる綿棒状となっている。
【0055】
以上説明したようなウエビングベルト巻取装置10Aに故障が生じているか否かを検査する際には、ECU86及びドライバ82がモータ60を所定期間逆転させる。モータ60を所定期間逆回転させながらウエビングベルト巻取装置10に故障が生じているか否かを検査する際(故障検査時)には、モータ60の回転終了時と同時にドライバ82からソレノイド98に信号が出力される。ドライバ82から出力された信号がソレノイド98に入力されると、この押圧部100がギア66の回転軸方向に移動してギア66の側面と接触(図4において一点鎖線で示される状態を参照。)し、ギア66に摺動摩擦を与えてギア66の回転速度を低減(押圧部100によるブレーキ作動)させるようになっている。このギア押圧部100は通常時ではギア66と互いに非接触状態とされている。
【0056】
以下に、本発明の第2の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10の作用について説明する。
【0057】
ウエビングベルト巻取装置10では、モータ60とスプール20とが、ギア64、66等によって連結されている。ECU86及びドライバ82によってモータ60を所定期間逆回転させる際(ダイアグ信号がLレベルからHレベルになってモータ60を逆回転させる際。図5(A)を参照。)に、ドライバ82からソレノイド88に信号が出力される(図5(B)を参照。)。この信号がHレベルからLレベルになると、ソレノイド98と押圧部100とによってギア66に摺動摩擦が与えられてこのギア66の回転速度が低減する(図5(C)を参照)。この結果、ダイアグ信号がHレベルからLレベルに戻った後において、ギア66が惰性回転する期間を短くすることができる(図5(C)の破線部を参照。)。
【0058】
ここで、従来のモータリトラクタでは、モータを所定期間回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際には、このモータと巻取軸とを連結しているギアが回転し、モータの回転音に加えてギアの回転音が生じる。このため、乗員にとってモータリトラクタの作動音が耳障りとなり、この結果、モータリトラクタはこの乗員に不快感を与える。
【0059】
この点、本発明の第2の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置10Aでは、ギア66に摺動摩擦が与えられてこのギア66の回転速度が低減する。ギア66の回転速度が低下するに従ってこのギア66の回転音が低減するので、モータ60を所定期間逆回転させながらウエビングベルト巻取装置10Aに故障が生じているか否かを検査する際に、ウエビングベルト巻取装置10Aの作動音を低減することができる。
【0060】
以上説明したように、第2の実施の形態では、モータ60を所定期間逆回転させながらウエビングベルト巻取装置10に故障が生じているか否かを検査する際(故障検査時)には、モータ60の逆回転終了時と同時にECU86からソレノイド98に信号が出力されるものとしたが、本発明はこれに限らない。図6に示されるように、例えば、故障検査時において、モータ60の逆回転開始時(ダイアグ信号がHレベルからLレベルになった時)と同時にドライバ82からソレノイド98に信号が出力されるようにしてもよい(図6(A)及び(B)を参照。)。この場合、ギア66が回転停止するまでこのギア66に摺動摩擦が与えられる(図6(C)を参照)。この結果、異常検出時におけるギア66の回転速度を低速にすることができる(図6(C)の破線部を参照。)。
【0061】
このように、故障検査時において、モータ60の回転開始時と同時にECU86からソレノイド98に信号が出力されるようにしても、ギア66の回転速度が低下するに従ってこのギア66の回転音が低減するので、モータ60を所定期間逆回転させながらウエビングベルト巻取装置10Aに故障が生じているか否かを検査する際に、ウエビングベルト巻取装置10Aの作動音を低減することができる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明した如く本発明に係るモータリトラクタは、モータを所定期間回転させながらモータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、モータリトラクタの作動音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置の全体構成の概略を示す正面図である。
【図2】図1におけるモータの出力軸と連結したギア付近の拡大図であって、(A)は通常時における状態、(B)は異常検査時における状態を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置の全体構成の概略を示す正面図である。
【図4】図3におけるモータとスロープとを連結するギア付近の拡大図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るウエビングベルト巻取装置において、(A)はダイアグ信号のレベルを示すタイムチャートであり、(B)はソレノイドがドライバから入力する信号のレベルを示すタイムチャートであり、(C)は摺動摩擦が与えられるギアの回転速度を示すタイムチャートである。
【図6】図5における各動作の変形例を示すタイムチャートであって、(A)はダイアグ信号のレベルを示すタイムチャートであり、(B)はソレノイドがドライバから入力する信号のレベルを示すタイムチャートであり、(C)は摺動摩擦が与えられるギアの回転速度を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
10 ウエビングベルト巻取装置(モータリトラクタ)
20 スプール(巻取軸)
28 ウエビングベルト
60 モータ
72 クラッチ
82 ドライバ(故障検査手段)
86 ECU(故障検査手段)
88 ソレノイド(連結状態解除手段)
90 可動部(連結状態解除手段)
98 ソレノイド(回転速度低減手段)
100 押圧部(回転速度低減手段)
Claims (4)
- 車両の座席に着座した乗員に装着された状態で前記乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトと、
前記ウエビングベルトの長手方向基端側が係止され、回転することで前記ウエビングベルトを前記基端側から巻き取る巻取軸と、
互いに連結状態にある少なくとも2つのギアを介して前記巻取軸に連結され、駆動力で前記巻取軸を前記ウエビングベルトの巻取方向へ回転させるモータと、
を備えたモータリトラクタの作動音低減方法であって、
前記モータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、前記ギアのうち少なくとも1つのギアを移動して前記連結状態を解除し、しかる後に前記モータを所定期間回転させる、
ことを特徴とするモータリトラクタの作動音低減方法。 - 車両の座席に着座した乗員に装着された状態で前記乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトと、
前記ウエビングベルトの長手方向基端側が係止され、回転することで前記ウエビングベルトを前記基端側から巻き取る巻取軸と、
前記巻取軸にギアを介して連結され、駆動力で前記巻取軸を前記ウエビングベルトの巻取方向へ回転させるモータと、
を備えたモータリトラクタの作動音低減方法であって、
前記モータを所定期間逆回転させながら前記モータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する際に、前記ギアに摺動摩擦を与えて前記ギアの回転速度を低減させる、
ことを特徴とするモータリトラクタの作動音低減方法。 - 車両の座席に着座した乗員に装着された状態で前記乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトと、
前記ウエビングベルトの長手方向基端側が係止され、回転することで前記ウエビングベルトを前記基端側から巻き取る巻取軸と、
互いに連結状態にある少なくとも2つのギアを介して前記巻取軸に連結され、駆動力で前記巻取軸を前記ウエビングベルトの巻取方向へ回転させるモータと、
前記モータを所定期間回転させながら前記モータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する故障検査手段と、
前記故障検査手段によって前記モータを回転させる際に、前記ギアのうち少なくとも1つのギアを移動して前記連結状態を解除する連結状態解除手段と、
を備えたことを特徴とするモータリトラクタの作動音低減機構。 - 車両の座席に着座した乗員に装着された状態で前記乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトと、
前記ウエビングベルトの長手方向基端側が係止され、回転することで前記ウエビングベルトを前記基端側から巻き取る巻取軸と、
前記巻取軸にギアを介して連結され、駆動力で前記巻取軸を前記ウエビングベルトの巻取方向へ回転させるモータと、
前記モータを所定期間逆回転させながら前記モータリトラクタに故障が生じているか否かを検査する故障検査手段と、
前記故障検査手段によって前記モータを逆回転させる際に、前記ギアに摺動摩擦を与えて前記ギアの回転速度を低減させる回転速度低減手段と、
を備えたことを特徴とするモータリトラクタの作動音低減機構。
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JP2003102703A JP2004306766A (ja) | 2003-04-07 | 2003-04-07 | モータリトラクタの作動音低減方法及びその作動音低減機構 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006327470A (ja) * | 2005-05-27 | 2006-12-07 | Takata Corp | シートベルトリトラクタおよびこれを用いたシートベルト装置 |
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2003
- 2003-04-07 JP JP2003102703A patent/JP2004306766A/ja active Pending
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JP4702833B2 (ja) * | 2005-05-27 | 2011-06-15 | タカタ株式会社 | シートベルトリトラクタおよびこれを用いたシートベルト装置 |
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