JP2004305602A - 卓球用ラバーシート - Google Patents
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Abstract
【課題】反発性能に優れ、柔軟性を有しコントロール性もよい卓球用ラバーシート7の提供。
【解決手段】卓球用ラバーシート7は、主成分として天然ゴムラテックスを含むラテックス配合物から成形されてなる。この卓球用ラバーシート7は反発がよく、柔軟性がある。これを使用した卓球用ラケットは、飛びが優れており、コントロール性もよい。また、ラバーシート7は、一定の条件で正弦波引張条件の粘弾性スペクトルを測定したとき、正接損失tanδが0.01以上0.04以下かつ複素弾性率E*が2MPa以下となることが好ましい。脱蛋白処理された天然ゴムラテックスであることがより好ましい。このラバーシートは、物性がより優れており、ゴム臭も少ない。天然ゴムラテックスに、合成ゴムラテックスを一部添加してもよい。
【選択図】 図2
【解決手段】卓球用ラバーシート7は、主成分として天然ゴムラテックスを含むラテックス配合物から成形されてなる。この卓球用ラバーシート7は反発がよく、柔軟性がある。これを使用した卓球用ラケットは、飛びが優れており、コントロール性もよい。また、ラバーシート7は、一定の条件で正弦波引張条件の粘弾性スペクトルを測定したとき、正接損失tanδが0.01以上0.04以下かつ複素弾性率E*が2MPa以下となることが好ましい。脱蛋白処理された天然ゴムラテックスであることがより好ましい。このラバーシートは、物性がより優れており、ゴム臭も少ない。天然ゴムラテックスに、合成ゴムラテックスを一部添加してもよい。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、卓球用ラバーシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
卓球用ラバーシートには、飛び性能とコントロール性能とが求められている。飛びを向上させるために、ゴムの架橋密度を高めることが行われている。一般に、架橋密度を高くすると反発性能が向上することが知られている。しかし、架橋密度を高くすると、卓球用ラバーシートは、柔軟性が失われ、強度が低下する。一方、コントロール性能にとっては、卓球用ラバーシートが柔軟性を有することが求められる。
【0003】
特開平4−50247に、柔らかくて、しかも反発のよいゴム成形物が得られるゴム組成物が提案されている。その手段は、ポリマー中に高沸点の液状物質を添加するものである。しかし、このゴム成型物には、液状物質が揮発して物性が変化したり、ゴム成形物自体の強度が低下したりする問題がある。
【0004】
特開平5−222137には、上記高沸点液状物質の代わりに液状オリゴマーをゴムに吸収させ、ゴム中で架橋させる方法が開示されている。しかし、液状オリゴマーを吸収させる量を制御することは困難である。また、オリゴマーを架橋させるためには、高温で長時間養生させる必要がある。さらに、吸収させたオリゴマーを完全に架橋させることは困難である等の問題がある。この方法で、安定した性能を有する成形物を製造することは、困難である。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−50247号公報
【特許文献2】
特開平5−222137号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
卓球用ラバーシートの反発性能は十分でなく、さらに改良されることが望まれている。また、卓球用ラバーシートは、コントロール性の面から硬度がむしろ低い方が好ましい。
【0007】
卓球用ラバーシートは、固形のポリマー材料から製造されている。その多くはゴムである。ゴム材料としては、固形の天然ゴムが用いられている。固形のゴムから製造するには、配合材料の混合前にゴムの素練りが必要とされる。この素練りのときに、ゴム分子が切断される。切断されたゴム分子が、配合された架橋剤により架橋されてラバーシートが成形される。この固形ゴムからなる成形体では、前述のように、反発性と柔軟性との両立が困難である。
【0008】
一般に、天然ゴムにイソプレンゴムが加えられてなる成形物は、柔らかくなる。しかし、イソプレンゴムを使用すると、飛びと強度とが悪くなる傾向がある。また、天然ゴムにブタジエンゴムを加えた組成物は、一般に成形物の飛びを良くする(正接損失tanδは小さくなる)。しかし、このゴム成形物は、硬くなり、強度が低くなる傾向がある。現状では、卓球用ラバーシートに好適な材料がない。本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、飛びがよく、コントロール性もよい卓球用ラバーシートの提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る卓球用ラバーシートは、主成分として天然ゴムラテックスを含むラテックス配合物から成形されてなる。この卓球用ラバーシートは反発がよく、柔軟性があり、物性も優れている。
【0010】
より好ましくは、天然ゴムラテックスが脱蛋白処理されたラテックス配合物を用いることである。この成形物からなる卓球用ラバーシートは、さらに反発がよく、軟らかい上、物性が優れている。
【0011】
さらに好ましくは、上記天然ゴムラテックスの固形分ゴムが基材ポリマー固形分の60質量%以上含まれることである。この卓球用ラバーシートは、反発及び柔軟性が優れている。
【0012】
また、卓球用ラバーシートは、つぎの物性を有する配合物からなる。すなわち、形状が厚み2mm、幅4mmの試料で、チャック間距離30mmで、周波数10Hzで、変位振幅5μmで、初期荷重250gで、測定温度20℃により正弦波引張条件の粘弾性スペクトルを測定したとき、正接損失tanδが0.01以上0.04以下かつ複素弾性率E*が2MPa以下である。この卓球用ラバーシートは反発、柔軟性ともに優れている。
【0013】
上記の配合物からなる卓球用ラバーシートを用いた卓球ラケットは、飛びがよく、コントロール性があり、プレー性能が優れている。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の卓球用ラバーシート(以下「ラバーシート」ということがある)及びこれを使用した卓球ラケットの好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る卓球ラケット1が示された斜視図である。この卓球ラケット1は、本体3、グリップ5及びラバーシート7を備えている。本体3及びグリップ5は木製である。本体3は板状であり、単板又は合板からなる。
【0016】
図2は、図1のII−II線に沿った部分拡大面図である。この図2から明らかなように、ラバーシート7は本体3の表面に貼り付けられている。このラバーシート7の貼り付けには、通常、接着剤が用いられる。
【0017】
このラバーシート7は、裏ソフトタイプである。このラバーシート7は、サンドイッチラバー9とソリッドラバー11とからなる。サンドイッチラバー9とソリッドラバー11とは、積層されている。サンドイッチラバー9の厚みは、通常0.3mm以上2.8mm以下である。ソリッドラバー11の厚みは1.0mm以上4.0mm以下である。
【0018】
サンドイッチラバー9は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されており、気泡を含んでいる。サンドイッチラバー9には、一般に、基材ポリマーとして天然ゴム、ポリイソプレン等が用いられている。サンドイッチラバー9には、液状ポリマー等の軟化剤が配合されている。サンドイッチラバー9の発泡倍率は、通常2倍以上5倍以下である。
【0019】
ソリッドラバー11は、ベース13と、このベース13から突出する多数のピンプル15とを備えている。ベース13とピンプル15とは、一体に成形されている。ピンプル15の先端は、サンドイッチラバー9と接着されている。
【0020】
ソリッドラバー11は、主成分として天然ゴムラテックスを含むラテックス配合物から成形されてなる。天然ゴムラテックスのゴムは、高分子量のゴム分子が切断されることなく利用される。したがって、ラテックス配合物をラテックス成形して得られる成形体は、強度が高い割に伸びが大きい。材料として天然ゴムラテックスが用いられると、ソリッドラバー11の反発性と柔軟性とがともに向上することが判明した。
【0021】
天然ゴムラテックスには、ゴム粒子の水中での安定化の形態及び濃度等によりハイアンモニアラテックス、ローアンモニアラテックス、遠心分離ラテックス、酸性ラテックス、ノニオン安定化ラテックス等各種ある。これらは、いずれも使用できる。保管及び取り扱いが容易であることから、アンモニア保存天然ゴムラテックスが通常用いられる。なかでも、ハイアンモニア天然ゴムラテックスが好適に用いられる。より好ましくは、脱蛋白処理された天然ゴムラテックスである。脱蛋白処理は通常、遠心分離により行われる。蛋白質の含有量は、総窒素含有率を指標として表され、この値が0.1%以下であることが好ましい。
【0022】
さらに好ましい脱蛋白天然ゴムラテックスは、脱蛋白質処理剤を用いて製造される。なかでも、好ましい脱蛋白処理剤は、蛋白質分解酵素であるプロテアーゼと界面活性剤とからなる。この脱蛋白天然ゴムラテックスは、脱蛋白処理剤で蛋白質を分解し、洗浄し、遠心分離されることにより製造される。除去される蛋白質の量は、この界面活性剤の選択や遠心分離の回数により異なる。上記の界面活性剤は、スルホン酸系、硫酸エステル系及びリン酸エステル系よりなる群から選ばれる一種又は二種以上の陰イオン界面活性剤を有効成分として含むことがより好ましい。脱蛋白処理された天然ゴムラテックスのゴムの総窒素含有率は、0.02%以下であることが好ましい。なお、天然ゴムの総窒素含有率は、一般にケールダール法によって測定される総窒素含有率の6.3倍量で表わされる。
【0023】
ソリッドラバー11に使用する配合物には、天然ゴムラテックスのゴム分が全ポリマー分の50質量%以上含まれている。この配合物にはポリマー分として、他の合成ゴムラテックスをブレンドすることができる。その合成ゴムラテックスは、ブタジエンゴムラテックス(BR)、スチレンブタジエンゴムラテックス(SBR、SB,HS,PS)、アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(NBR)、メチルメタクリレート−ブタジエンラテックス(MBR)、クロロプレンラテックス(CR)、ビニルピリジンラテックス(VP)、cis−1,4ポリイソプレンラテックス(IR)、ブチルラテックス(IIR)、チオコールラテックス(T)、ウレタンラテックス(U)、ポリブテンエマルジョンラテックス(PIB)、アクリレートラテックス(AR)、アクリルエマルジョンラテックス(AM)、塩化ビニルラテックス(PVC)、酢酸ビニルエマルジョン(PVAc)、塩化ビニリデンラテックス(PVdC)、ポリエチレンエマルジョン(PE)及びエチレン酢酸ビニルエマルジョン(EVA)が例示される。
【0024】
ブタジエンゴムラテックスが天然ゴムラテックスにブレンドされると、成形物のtanδを低下させ、反発性を高めることができる。その反面、伸び及び強度は低下する傾向がある。スチレンブタジエンラテックスのブレンドは、硬度を高め、ラテックス配合物の成形性を良くする。この添加量が多すぎると、ゴム弾性が低下し、コントロール性及び飛びが悪くなる。アクリルニトリル−ブタジエンラテックスの添加は、硬度を増し、耐油性を高める。したがって、卓球用ラバーシートのクリーニング剤による劣化を少なくする目的には、有効である。これらの合成ゴムラテックスは、固形分ゴムで50質量%未満の範囲で天然ゴムラテックスにブレンドされて、ソリッドラバー11に上記の特徴を加えることができる。
【0025】
天然ゴムラテックスは、上記の他のポリマーがブレンドされる場合、ラテックス中の固形分ゴムが基材ポリマー固形分の60質量%以上、特に80質量%以上含まれることが好ましい。反発性能と軟らかさを兼ね備えた特徴がより明確に現れるという観点から、配合ポリマーが天然ゴムラテックス中の固形分ゴムからのみなることが、さらに好ましい。より好ましくは、脱蛋白天然ゴムラテックス中の固形分ゴムが基材ポリマー固形分の60質量%以上、特に80質量%以上である。このラバーシートは、反発と柔軟性とがともに優れている。
【0026】
上記ラテックス配合物には、基材ラテックスの他に、例えば、安定剤、架橋剤、架橋促進剤が配合される。その他、劣化防止剤、軟化剤、加工助剤、紫外線吸収剤、難燃剤及び着色剤等が必要に応じて適宜配合される。
【0027】
安定剤としては、ラテックスの種類に応じた界面活性剤や電解質水溶液が用いられる。通常のアンモニア保存天然ラテックスには、アニオン又はノニオンの安定剤が用いられる。通常はアニオン安定剤が用いられ、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪酸塩、水酸化カリウム、アンモニア、カゼイン及びカルボキシメチルセルロースが例示される。安定剤は、ラテックスの保存、熟成、撹拌等の機械的処理、ラテックス成形法等の条件が考慮されて、その種類及び量が選択される。
【0028】
ラテックス用架橋剤としては、主として粉末硫黄が用いられる。その他、4−4’ジチオジモルフォリン等の有機硫黄化合物も用いられる。硫黄は、界面活性剤とともに水中でボールミル等で粉砕、細粒子化された水中分散体として配合される。硫黄の配合量は、基材固形分ゴム100質量部に対して、一般に0.3質量部以上3質量部以下である。
【0029】
ゴムの架橋助剤として、亜鉛華、オレイン酸アンモニウムその他の脂肪酸塩等が用いられることがある。亜鉛華は、粒体であるから微細に粉砕されて水中分散体とされる。基材固形分ゴム100質量部に対して通常、0.2質量部以上5質量部以下である。
【0030】
加硫促進剤としては、ジンクメルカプトベンゾチアゾール(MZ)、ソヂウムメルカプトベンゾチアゾール(NaMBT)等のチアゾール系加硫促進剤、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系加硫促進剤及びジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛等のカルバミン酸塩系加硫促進剤が例示される。これらの加硫促進剤の配合量としては、基材固形分ゴム100質量部に対して0.2質量部以上3質量部以下である。
【0031】
その他、老化防止剤、軟化剤、充填剤、顔料等を配合する場合も、同様に固体の材料は水中に分散させ、油状のものは乳化させて配合される。この配合は、ラテックスに安定剤を添加した後、撹拌しながら調整した配合剤を加える。加えた後、通常、数時間から数日熟成した後にラテックス配合物が成形される。
【0032】
ラテックス成形法としては、直接浸漬法、凝着浸漬法、感熱浸漬法、キャスティング法(注型法)が一般に用いられる。直接浸漬法は、基材に配合物を浸透させたり、直接凝着させる方法である。陰イオンにより安定化された天然ゴムラテックスの場合、型に陽イオンを付けて配合物を凝着させる凝着浸漬法が普通に用いられる。凝固剤として、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等が用いられる。感熱浸漬法は、感熱凝固剤を添加したラテックス配合物を成形時に加熱して凝固させる。感熱剤としては、2−メルカプロベンズイミダゾール等が用いられる。キャスティング法は、配合物を型に注入して水分除去により成形体を得る。いずれの成形法によってもよいが、作業性等の面からキャスティング法が好ましい。
【0033】
凝着浸漬法による場合は、凝着された配合ゴム固形物に含まれている凝固剤を洗浄、除去する。これを乾燥した後加硫する。キャスティング法では、型に配合物が注入され、配合物の水分が除去される。乾燥された成形物の架橋には、オーブンによる熱風加硫又は加硫缶の蒸気(直接又は間接)による加硫が主として用いられる。
【0034】
図3は、本発明の他の実施形態に係る卓球ラケット17が示された部分断面図である。この卓球ラケット17は、本体19とラバーシート21とを備えている。本体19の構成及び図示されていないグリップは、図1の卓球ラケットと同様である。このラバーシート21は、表ソフトタイプである。このラバーシートは、サンドイッチラバー23とソリッドラバー25とが積層されてなる。サンドイッチラバー23の構成は、図2のサンドイッチラバー9と同等である。ソリッドラバー25では、ベース27とピンプル29とが一体に成形されている。本ソリッドラバー25は、図2に示されたソリッドラバー11と同等の天然ゴムラテックス配合物を用いてなり、反発性能が優れ、かつ柔軟性がある。したがって、飛びがよく、コントロール性もよい。
【0035】
図4は、本発明のさらに他の実施形態に係る卓球ラケット31が示された部分断面図である。この卓球ラケット31は、本体33とラバーシート35とを備えている。ラバーシート35は、接着剤によって本体33の表面に貼り付けられている。本体33の構成は、図1及び図2に示された卓球ラケットの本体3と同様である。図示されていないが、この卓球ラケット31も、図1の卓球ラケット1と同様のグリップを備えている。
【0036】
このラバーシート35は、一枚ラバータイプである。すなわち、このラバーシート35はソリッドラバー37からのみなる。このソリッドラバーシート37は、ベース39と、このベース39から上方に向けて突出する多数のピンプル41とを備えている。ベース39とピンプル41とは、一体に成形されている。ベース39の下面は、本体33と接触されている。ピンプル41の上端面は、ピン球との接触面を構成する。ピンプル41の高さが1.4mm以上のものは粒高タイプである。本ソリッドラバー37も図2に示されたソリッドラバー11と同等の天然ゴムラテックス配合物の成形体からなり、反発性能が優れているとともに柔軟性がある。
【0037】
本発明の実施形態をソリッドラバーについて述べた。しかし、ラバーシートのサンドイッチラバーについても、天然ゴムラテックス組成物を用いることができる。ソリッドラバー若しくはサンドイッチラバー又はその両方に本発明のゴム組成物を適用したラバーシートは、柔軟性がある上に反発性がよいので飛びとコントロール性に優れる。
【0038】
以下、実施例にもとづいて本発明の効果が明らかにされるが、この記載により限定的に解釈されるものではない。
【0039】
[実施例1]
脱蛋白天然ゴムラテックス(住友ゴム工業社の「SELATEX6110」;固形分ゴム60質量%、総窒素含有率0.02%)を100質量部(固形分ゴム)、水酸化カリウム(米山薬品工業製;10質量%水溶液としてラテックスに配合)0.75質量部、硫黄(鶴見化学社の「粉末硫黄」;40質量%水中分散体として配合)1質量部、亜鉛華(三井金属工業社の「酸化亜鉛2種」;40質量%水中分散体として配合)0.5質量部、加硫促進剤(大内新興化学社の「ノクセラーBZ」;ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛;40質量%水中分散体として配合)1質量部を配合して一昼夜熟成した。この配合組成物をシリコン型に注入し、室温で18時間乾燥させた後、100℃で2時間オーブン加硫により架橋させて実施例1のソリッドラバーを得た。
【0040】
[実施例2]
天然ゴムラテックスとして、ハイアンモニア天然ゴムラテックス(野村貿易社の「HALATEX」)100質量部(固形分ゴム)を用いた他は実施例1と同様にして実施例2のソリッドラバーを得た。
【0041】
[実施例3、実施例4及び比較例1]
天然ゴムラテックスとして、脱蛋白天然ゴムラテックス(住友ゴム工業社の「SELATEX6110」)を固形分ゴムとして、それぞれ80質量部、60質量部及び40質量部とし、スチレンブタジエンゴムラテックス(日本ゼオン社の「NipolLX206」、固形分ゴム45質量%)を固形分ゴムとして、それぞれ20質量部、40質量部及び60質量部とした他は実施例1と同様にして、実施例3、実施例4及び比較例1のソリッドラバーを得た。
【0042】
[実施例5]
天然ゴムラテックスとして、脱蛋白天然ゴムラテックス(住友ゴム工業社の「SELATEX6110」)80質量部(固形分ゴム)及びブタジエンゴムラテックス(日本ゼオン社の「NipolLX111」、固形分ゴム55質量%)20質量部(固形分ゴム)とした他は、実施例1と同様にして実施例5のソリッドラバーを得た。
【0043】
[比較例2]
天然ゴム(テックビーハン社の「RSS#3」)80質量部、ポリブタジエン(JSR社の「BR11」)20質量部、液状ポリイソプレン(クラレ社の「LIR50」)20質量部、亜鉛華(三井金属工業社の「酸化亜鉛2種」)5質量部、老化防止剤(大内新興化学社の「ノクラック200」)2質量部、硫黄(鶴見化学社の「粉末硫黄」)3質量部、ステアリン酸(日本油脂社製)1質量部、加硫促進剤M(大内新興化学社の「ノクセラーM」;2−メルカプトベンゾチアゾール)2質量部、加硫促進剤D(大内新興化学社の「ノクセラーD」1,3−ジフェニルグアニジン)1.6質量部及びスコーチ防止剤(バイエル社の「ブルカレントE/C」)を0.7質量部をオープンロールで混合とした。このゴム組成物をプレス加硫機で150℃、5分間加硫してソリッドラバーを得た。
【0044】
表1及び表2において、ラテックスについては、ラテックス中の固形分ゴムの量を記載した。物性の測定には、厚さ2mmの試料を使用した。各評価方法はつぎのとおりである。
(a)損失正接:粘弾性スペクトラム(株式会社レオロジー製 DVE−V4FT)により、(1)形状が厚み2mm、幅4mmの試料で、(2)チャック間距離30mmで、(3)周波数10Hzで、(4)変位振幅5μmで、(5)初期荷重250gで、(6)測定温度20℃の条件で測定した。
(b)硬度:測定はJIS−K6253のデュロメーターAで測定した。
(c)100%引張モジュラス:引張試験における100%モジュラスを測定した。測定はJISK6251に準拠して行った。
(d)引張強度及び切断時伸び:JISK6251に準じて測定した。
(e)飛び:コンクリート床の上に、試料のラバーシートを両面接着テープで貼り付け、2mの高さから卓球ボールを自然落下させて跳ね返ったボールの高さを測定した。試料のラバーシートは、厚さ2mm、比重0.35、硬度(C型硬度計測定値)50の天然ゴム製サンドイッチラバーにソリッドラバーを積層して、裏ソフトタイプのラバーシートを作製した。卓球ボールは、ITTF(International Table Tennis Fedelation)のルールに定められた標準ボール(ヤマト卓球株式会社製の「TPS40mm 3スター」)を使用した。
(f)コントロール性:試料のラバーシートをタマス社製の「センコースーパー95S」ラケット本体に貼り付け、裏ソフトタイプの卓球ラケットを作成した。この卓球ラケットを10人のプレーヤーが使用して、コントロール性について打球感を評価した。また臭いについても同様に、良い○及び悪い×で評価した。その評価の過半数を評価結果とした。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表1及び表2から明らかなように、実施例のラバーシートは、上記の一定の条件で正弦波引張条件の粘弾性スペクトルを測定したとき、正接損失tanδが0.01以上0.04以下かつ複素弾性率E*が2MPa以下であり、飛びの値が高く、硬度及びモジュラスが低い。主成分が天然ゴムラテックスでない配合物からなる比較例のラバーシートに比べて、実施例の優位性は明らかである。
【0048】
【発明の効果】
以上の評価結果から明らかなように、本発明のソリッドラバーは、tanδ及び複素弾性率が小さく、反発性能が高いにもかかわらず軟らかい。飛びがよく、コントロール性にも優れている。このソリッドラバーを備えた卓球用ラバーシートは、高反発で軟らかい。この卓球用ラバーシートを用いた卓球ラケットは、プレーにおける飛び及びコントロール性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る卓球ラケットが示された斜視図である。
【図2】図2は、図1のII−II線に沿った部分拡大断面図である。
【図3】図3は、本発明の他の実施形態に係る卓球ラケットが示された部分断面図である。
【図4】図4は、本発明のさらに他の実施形態に係る卓球ラケットが示された部分断面図である。
【符号の説明】
1、17、31・・・卓球ラケット
3、19,33・・・本体
5・・・グリップ
7、21、35・・・ラバーシート
9、23・・・サンドイッチラバー
11、25、37・・・ソリッドラバー
13、27、39・・・ベース
15、29、41・・・ピンプル
【発明の属する技術分野】
本発明は、卓球用ラバーシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
卓球用ラバーシートには、飛び性能とコントロール性能とが求められている。飛びを向上させるために、ゴムの架橋密度を高めることが行われている。一般に、架橋密度を高くすると反発性能が向上することが知られている。しかし、架橋密度を高くすると、卓球用ラバーシートは、柔軟性が失われ、強度が低下する。一方、コントロール性能にとっては、卓球用ラバーシートが柔軟性を有することが求められる。
【0003】
特開平4−50247に、柔らかくて、しかも反発のよいゴム成形物が得られるゴム組成物が提案されている。その手段は、ポリマー中に高沸点の液状物質を添加するものである。しかし、このゴム成型物には、液状物質が揮発して物性が変化したり、ゴム成形物自体の強度が低下したりする問題がある。
【0004】
特開平5−222137には、上記高沸点液状物質の代わりに液状オリゴマーをゴムに吸収させ、ゴム中で架橋させる方法が開示されている。しかし、液状オリゴマーを吸収させる量を制御することは困難である。また、オリゴマーを架橋させるためには、高温で長時間養生させる必要がある。さらに、吸収させたオリゴマーを完全に架橋させることは困難である等の問題がある。この方法で、安定した性能を有する成形物を製造することは、困難である。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−50247号公報
【特許文献2】
特開平5−222137号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
卓球用ラバーシートの反発性能は十分でなく、さらに改良されることが望まれている。また、卓球用ラバーシートは、コントロール性の面から硬度がむしろ低い方が好ましい。
【0007】
卓球用ラバーシートは、固形のポリマー材料から製造されている。その多くはゴムである。ゴム材料としては、固形の天然ゴムが用いられている。固形のゴムから製造するには、配合材料の混合前にゴムの素練りが必要とされる。この素練りのときに、ゴム分子が切断される。切断されたゴム分子が、配合された架橋剤により架橋されてラバーシートが成形される。この固形ゴムからなる成形体では、前述のように、反発性と柔軟性との両立が困難である。
【0008】
一般に、天然ゴムにイソプレンゴムが加えられてなる成形物は、柔らかくなる。しかし、イソプレンゴムを使用すると、飛びと強度とが悪くなる傾向がある。また、天然ゴムにブタジエンゴムを加えた組成物は、一般に成形物の飛びを良くする(正接損失tanδは小さくなる)。しかし、このゴム成形物は、硬くなり、強度が低くなる傾向がある。現状では、卓球用ラバーシートに好適な材料がない。本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、飛びがよく、コントロール性もよい卓球用ラバーシートの提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る卓球用ラバーシートは、主成分として天然ゴムラテックスを含むラテックス配合物から成形されてなる。この卓球用ラバーシートは反発がよく、柔軟性があり、物性も優れている。
【0010】
より好ましくは、天然ゴムラテックスが脱蛋白処理されたラテックス配合物を用いることである。この成形物からなる卓球用ラバーシートは、さらに反発がよく、軟らかい上、物性が優れている。
【0011】
さらに好ましくは、上記天然ゴムラテックスの固形分ゴムが基材ポリマー固形分の60質量%以上含まれることである。この卓球用ラバーシートは、反発及び柔軟性が優れている。
【0012】
また、卓球用ラバーシートは、つぎの物性を有する配合物からなる。すなわち、形状が厚み2mm、幅4mmの試料で、チャック間距離30mmで、周波数10Hzで、変位振幅5μmで、初期荷重250gで、測定温度20℃により正弦波引張条件の粘弾性スペクトルを測定したとき、正接損失tanδが0.01以上0.04以下かつ複素弾性率E*が2MPa以下である。この卓球用ラバーシートは反発、柔軟性ともに優れている。
【0013】
上記の配合物からなる卓球用ラバーシートを用いた卓球ラケットは、飛びがよく、コントロール性があり、プレー性能が優れている。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の卓球用ラバーシート(以下「ラバーシート」ということがある)及びこれを使用した卓球ラケットの好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る卓球ラケット1が示された斜視図である。この卓球ラケット1は、本体3、グリップ5及びラバーシート7を備えている。本体3及びグリップ5は木製である。本体3は板状であり、単板又は合板からなる。
【0016】
図2は、図1のII−II線に沿った部分拡大面図である。この図2から明らかなように、ラバーシート7は本体3の表面に貼り付けられている。このラバーシート7の貼り付けには、通常、接着剤が用いられる。
【0017】
このラバーシート7は、裏ソフトタイプである。このラバーシート7は、サンドイッチラバー9とソリッドラバー11とからなる。サンドイッチラバー9とソリッドラバー11とは、積層されている。サンドイッチラバー9の厚みは、通常0.3mm以上2.8mm以下である。ソリッドラバー11の厚みは1.0mm以上4.0mm以下である。
【0018】
サンドイッチラバー9は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されており、気泡を含んでいる。サンドイッチラバー9には、一般に、基材ポリマーとして天然ゴム、ポリイソプレン等が用いられている。サンドイッチラバー9には、液状ポリマー等の軟化剤が配合されている。サンドイッチラバー9の発泡倍率は、通常2倍以上5倍以下である。
【0019】
ソリッドラバー11は、ベース13と、このベース13から突出する多数のピンプル15とを備えている。ベース13とピンプル15とは、一体に成形されている。ピンプル15の先端は、サンドイッチラバー9と接着されている。
【0020】
ソリッドラバー11は、主成分として天然ゴムラテックスを含むラテックス配合物から成形されてなる。天然ゴムラテックスのゴムは、高分子量のゴム分子が切断されることなく利用される。したがって、ラテックス配合物をラテックス成形して得られる成形体は、強度が高い割に伸びが大きい。材料として天然ゴムラテックスが用いられると、ソリッドラバー11の反発性と柔軟性とがともに向上することが判明した。
【0021】
天然ゴムラテックスには、ゴム粒子の水中での安定化の形態及び濃度等によりハイアンモニアラテックス、ローアンモニアラテックス、遠心分離ラテックス、酸性ラテックス、ノニオン安定化ラテックス等各種ある。これらは、いずれも使用できる。保管及び取り扱いが容易であることから、アンモニア保存天然ゴムラテックスが通常用いられる。なかでも、ハイアンモニア天然ゴムラテックスが好適に用いられる。より好ましくは、脱蛋白処理された天然ゴムラテックスである。脱蛋白処理は通常、遠心分離により行われる。蛋白質の含有量は、総窒素含有率を指標として表され、この値が0.1%以下であることが好ましい。
【0022】
さらに好ましい脱蛋白天然ゴムラテックスは、脱蛋白質処理剤を用いて製造される。なかでも、好ましい脱蛋白処理剤は、蛋白質分解酵素であるプロテアーゼと界面活性剤とからなる。この脱蛋白天然ゴムラテックスは、脱蛋白処理剤で蛋白質を分解し、洗浄し、遠心分離されることにより製造される。除去される蛋白質の量は、この界面活性剤の選択や遠心分離の回数により異なる。上記の界面活性剤は、スルホン酸系、硫酸エステル系及びリン酸エステル系よりなる群から選ばれる一種又は二種以上の陰イオン界面活性剤を有効成分として含むことがより好ましい。脱蛋白処理された天然ゴムラテックスのゴムの総窒素含有率は、0.02%以下であることが好ましい。なお、天然ゴムの総窒素含有率は、一般にケールダール法によって測定される総窒素含有率の6.3倍量で表わされる。
【0023】
ソリッドラバー11に使用する配合物には、天然ゴムラテックスのゴム分が全ポリマー分の50質量%以上含まれている。この配合物にはポリマー分として、他の合成ゴムラテックスをブレンドすることができる。その合成ゴムラテックスは、ブタジエンゴムラテックス(BR)、スチレンブタジエンゴムラテックス(SBR、SB,HS,PS)、アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(NBR)、メチルメタクリレート−ブタジエンラテックス(MBR)、クロロプレンラテックス(CR)、ビニルピリジンラテックス(VP)、cis−1,4ポリイソプレンラテックス(IR)、ブチルラテックス(IIR)、チオコールラテックス(T)、ウレタンラテックス(U)、ポリブテンエマルジョンラテックス(PIB)、アクリレートラテックス(AR)、アクリルエマルジョンラテックス(AM)、塩化ビニルラテックス(PVC)、酢酸ビニルエマルジョン(PVAc)、塩化ビニリデンラテックス(PVdC)、ポリエチレンエマルジョン(PE)及びエチレン酢酸ビニルエマルジョン(EVA)が例示される。
【0024】
ブタジエンゴムラテックスが天然ゴムラテックスにブレンドされると、成形物のtanδを低下させ、反発性を高めることができる。その反面、伸び及び強度は低下する傾向がある。スチレンブタジエンラテックスのブレンドは、硬度を高め、ラテックス配合物の成形性を良くする。この添加量が多すぎると、ゴム弾性が低下し、コントロール性及び飛びが悪くなる。アクリルニトリル−ブタジエンラテックスの添加は、硬度を増し、耐油性を高める。したがって、卓球用ラバーシートのクリーニング剤による劣化を少なくする目的には、有効である。これらの合成ゴムラテックスは、固形分ゴムで50質量%未満の範囲で天然ゴムラテックスにブレンドされて、ソリッドラバー11に上記の特徴を加えることができる。
【0025】
天然ゴムラテックスは、上記の他のポリマーがブレンドされる場合、ラテックス中の固形分ゴムが基材ポリマー固形分の60質量%以上、特に80質量%以上含まれることが好ましい。反発性能と軟らかさを兼ね備えた特徴がより明確に現れるという観点から、配合ポリマーが天然ゴムラテックス中の固形分ゴムからのみなることが、さらに好ましい。より好ましくは、脱蛋白天然ゴムラテックス中の固形分ゴムが基材ポリマー固形分の60質量%以上、特に80質量%以上である。このラバーシートは、反発と柔軟性とがともに優れている。
【0026】
上記ラテックス配合物には、基材ラテックスの他に、例えば、安定剤、架橋剤、架橋促進剤が配合される。その他、劣化防止剤、軟化剤、加工助剤、紫外線吸収剤、難燃剤及び着色剤等が必要に応じて適宜配合される。
【0027】
安定剤としては、ラテックスの種類に応じた界面活性剤や電解質水溶液が用いられる。通常のアンモニア保存天然ラテックスには、アニオン又はノニオンの安定剤が用いられる。通常はアニオン安定剤が用いられ、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪酸塩、水酸化カリウム、アンモニア、カゼイン及びカルボキシメチルセルロースが例示される。安定剤は、ラテックスの保存、熟成、撹拌等の機械的処理、ラテックス成形法等の条件が考慮されて、その種類及び量が選択される。
【0028】
ラテックス用架橋剤としては、主として粉末硫黄が用いられる。その他、4−4’ジチオジモルフォリン等の有機硫黄化合物も用いられる。硫黄は、界面活性剤とともに水中でボールミル等で粉砕、細粒子化された水中分散体として配合される。硫黄の配合量は、基材固形分ゴム100質量部に対して、一般に0.3質量部以上3質量部以下である。
【0029】
ゴムの架橋助剤として、亜鉛華、オレイン酸アンモニウムその他の脂肪酸塩等が用いられることがある。亜鉛華は、粒体であるから微細に粉砕されて水中分散体とされる。基材固形分ゴム100質量部に対して通常、0.2質量部以上5質量部以下である。
【0030】
加硫促進剤としては、ジンクメルカプトベンゾチアゾール(MZ)、ソヂウムメルカプトベンゾチアゾール(NaMBT)等のチアゾール系加硫促進剤、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系加硫促進剤及びジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛等のカルバミン酸塩系加硫促進剤が例示される。これらの加硫促進剤の配合量としては、基材固形分ゴム100質量部に対して0.2質量部以上3質量部以下である。
【0031】
その他、老化防止剤、軟化剤、充填剤、顔料等を配合する場合も、同様に固体の材料は水中に分散させ、油状のものは乳化させて配合される。この配合は、ラテックスに安定剤を添加した後、撹拌しながら調整した配合剤を加える。加えた後、通常、数時間から数日熟成した後にラテックス配合物が成形される。
【0032】
ラテックス成形法としては、直接浸漬法、凝着浸漬法、感熱浸漬法、キャスティング法(注型法)が一般に用いられる。直接浸漬法は、基材に配合物を浸透させたり、直接凝着させる方法である。陰イオンにより安定化された天然ゴムラテックスの場合、型に陽イオンを付けて配合物を凝着させる凝着浸漬法が普通に用いられる。凝固剤として、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等が用いられる。感熱浸漬法は、感熱凝固剤を添加したラテックス配合物を成形時に加熱して凝固させる。感熱剤としては、2−メルカプロベンズイミダゾール等が用いられる。キャスティング法は、配合物を型に注入して水分除去により成形体を得る。いずれの成形法によってもよいが、作業性等の面からキャスティング法が好ましい。
【0033】
凝着浸漬法による場合は、凝着された配合ゴム固形物に含まれている凝固剤を洗浄、除去する。これを乾燥した後加硫する。キャスティング法では、型に配合物が注入され、配合物の水分が除去される。乾燥された成形物の架橋には、オーブンによる熱風加硫又は加硫缶の蒸気(直接又は間接)による加硫が主として用いられる。
【0034】
図3は、本発明の他の実施形態に係る卓球ラケット17が示された部分断面図である。この卓球ラケット17は、本体19とラバーシート21とを備えている。本体19の構成及び図示されていないグリップは、図1の卓球ラケットと同様である。このラバーシート21は、表ソフトタイプである。このラバーシートは、サンドイッチラバー23とソリッドラバー25とが積層されてなる。サンドイッチラバー23の構成は、図2のサンドイッチラバー9と同等である。ソリッドラバー25では、ベース27とピンプル29とが一体に成形されている。本ソリッドラバー25は、図2に示されたソリッドラバー11と同等の天然ゴムラテックス配合物を用いてなり、反発性能が優れ、かつ柔軟性がある。したがって、飛びがよく、コントロール性もよい。
【0035】
図4は、本発明のさらに他の実施形態に係る卓球ラケット31が示された部分断面図である。この卓球ラケット31は、本体33とラバーシート35とを備えている。ラバーシート35は、接着剤によって本体33の表面に貼り付けられている。本体33の構成は、図1及び図2に示された卓球ラケットの本体3と同様である。図示されていないが、この卓球ラケット31も、図1の卓球ラケット1と同様のグリップを備えている。
【0036】
このラバーシート35は、一枚ラバータイプである。すなわち、このラバーシート35はソリッドラバー37からのみなる。このソリッドラバーシート37は、ベース39と、このベース39から上方に向けて突出する多数のピンプル41とを備えている。ベース39とピンプル41とは、一体に成形されている。ベース39の下面は、本体33と接触されている。ピンプル41の上端面は、ピン球との接触面を構成する。ピンプル41の高さが1.4mm以上のものは粒高タイプである。本ソリッドラバー37も図2に示されたソリッドラバー11と同等の天然ゴムラテックス配合物の成形体からなり、反発性能が優れているとともに柔軟性がある。
【0037】
本発明の実施形態をソリッドラバーについて述べた。しかし、ラバーシートのサンドイッチラバーについても、天然ゴムラテックス組成物を用いることができる。ソリッドラバー若しくはサンドイッチラバー又はその両方に本発明のゴム組成物を適用したラバーシートは、柔軟性がある上に反発性がよいので飛びとコントロール性に優れる。
【0038】
以下、実施例にもとづいて本発明の効果が明らかにされるが、この記載により限定的に解釈されるものではない。
【0039】
[実施例1]
脱蛋白天然ゴムラテックス(住友ゴム工業社の「SELATEX6110」;固形分ゴム60質量%、総窒素含有率0.02%)を100質量部(固形分ゴム)、水酸化カリウム(米山薬品工業製;10質量%水溶液としてラテックスに配合)0.75質量部、硫黄(鶴見化学社の「粉末硫黄」;40質量%水中分散体として配合)1質量部、亜鉛華(三井金属工業社の「酸化亜鉛2種」;40質量%水中分散体として配合)0.5質量部、加硫促進剤(大内新興化学社の「ノクセラーBZ」;ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛;40質量%水中分散体として配合)1質量部を配合して一昼夜熟成した。この配合組成物をシリコン型に注入し、室温で18時間乾燥させた後、100℃で2時間オーブン加硫により架橋させて実施例1のソリッドラバーを得た。
【0040】
[実施例2]
天然ゴムラテックスとして、ハイアンモニア天然ゴムラテックス(野村貿易社の「HALATEX」)100質量部(固形分ゴム)を用いた他は実施例1と同様にして実施例2のソリッドラバーを得た。
【0041】
[実施例3、実施例4及び比較例1]
天然ゴムラテックスとして、脱蛋白天然ゴムラテックス(住友ゴム工業社の「SELATEX6110」)を固形分ゴムとして、それぞれ80質量部、60質量部及び40質量部とし、スチレンブタジエンゴムラテックス(日本ゼオン社の「NipolLX206」、固形分ゴム45質量%)を固形分ゴムとして、それぞれ20質量部、40質量部及び60質量部とした他は実施例1と同様にして、実施例3、実施例4及び比較例1のソリッドラバーを得た。
【0042】
[実施例5]
天然ゴムラテックスとして、脱蛋白天然ゴムラテックス(住友ゴム工業社の「SELATEX6110」)80質量部(固形分ゴム)及びブタジエンゴムラテックス(日本ゼオン社の「NipolLX111」、固形分ゴム55質量%)20質量部(固形分ゴム)とした他は、実施例1と同様にして実施例5のソリッドラバーを得た。
【0043】
[比較例2]
天然ゴム(テックビーハン社の「RSS#3」)80質量部、ポリブタジエン(JSR社の「BR11」)20質量部、液状ポリイソプレン(クラレ社の「LIR50」)20質量部、亜鉛華(三井金属工業社の「酸化亜鉛2種」)5質量部、老化防止剤(大内新興化学社の「ノクラック200」)2質量部、硫黄(鶴見化学社の「粉末硫黄」)3質量部、ステアリン酸(日本油脂社製)1質量部、加硫促進剤M(大内新興化学社の「ノクセラーM」;2−メルカプトベンゾチアゾール)2質量部、加硫促進剤D(大内新興化学社の「ノクセラーD」1,3−ジフェニルグアニジン)1.6質量部及びスコーチ防止剤(バイエル社の「ブルカレントE/C」)を0.7質量部をオープンロールで混合とした。このゴム組成物をプレス加硫機で150℃、5分間加硫してソリッドラバーを得た。
【0044】
表1及び表2において、ラテックスについては、ラテックス中の固形分ゴムの量を記載した。物性の測定には、厚さ2mmの試料を使用した。各評価方法はつぎのとおりである。
(a)損失正接:粘弾性スペクトラム(株式会社レオロジー製 DVE−V4FT)により、(1)形状が厚み2mm、幅4mmの試料で、(2)チャック間距離30mmで、(3)周波数10Hzで、(4)変位振幅5μmで、(5)初期荷重250gで、(6)測定温度20℃の条件で測定した。
(b)硬度:測定はJIS−K6253のデュロメーターAで測定した。
(c)100%引張モジュラス:引張試験における100%モジュラスを測定した。測定はJISK6251に準拠して行った。
(d)引張強度及び切断時伸び:JISK6251に準じて測定した。
(e)飛び:コンクリート床の上に、試料のラバーシートを両面接着テープで貼り付け、2mの高さから卓球ボールを自然落下させて跳ね返ったボールの高さを測定した。試料のラバーシートは、厚さ2mm、比重0.35、硬度(C型硬度計測定値)50の天然ゴム製サンドイッチラバーにソリッドラバーを積層して、裏ソフトタイプのラバーシートを作製した。卓球ボールは、ITTF(International Table Tennis Fedelation)のルールに定められた標準ボール(ヤマト卓球株式会社製の「TPS40mm 3スター」)を使用した。
(f)コントロール性:試料のラバーシートをタマス社製の「センコースーパー95S」ラケット本体に貼り付け、裏ソフトタイプの卓球ラケットを作成した。この卓球ラケットを10人のプレーヤーが使用して、コントロール性について打球感を評価した。また臭いについても同様に、良い○及び悪い×で評価した。その評価の過半数を評価結果とした。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表1及び表2から明らかなように、実施例のラバーシートは、上記の一定の条件で正弦波引張条件の粘弾性スペクトルを測定したとき、正接損失tanδが0.01以上0.04以下かつ複素弾性率E*が2MPa以下であり、飛びの値が高く、硬度及びモジュラスが低い。主成分が天然ゴムラテックスでない配合物からなる比較例のラバーシートに比べて、実施例の優位性は明らかである。
【0048】
【発明の効果】
以上の評価結果から明らかなように、本発明のソリッドラバーは、tanδ及び複素弾性率が小さく、反発性能が高いにもかかわらず軟らかい。飛びがよく、コントロール性にも優れている。このソリッドラバーを備えた卓球用ラバーシートは、高反発で軟らかい。この卓球用ラバーシートを用いた卓球ラケットは、プレーにおける飛び及びコントロール性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る卓球ラケットが示された斜視図である。
【図2】図2は、図1のII−II線に沿った部分拡大断面図である。
【図3】図3は、本発明の他の実施形態に係る卓球ラケットが示された部分断面図である。
【図4】図4は、本発明のさらに他の実施形態に係る卓球ラケットが示された部分断面図である。
【符号の説明】
1、17、31・・・卓球ラケット
3、19,33・・・本体
5・・・グリップ
7、21、35・・・ラバーシート
9、23・・・サンドイッチラバー
11、25、37・・・ソリッドラバー
13、27、39・・・ベース
15、29、41・・・ピンプル
Claims (5)
- 主成分として天然ゴムラテックスを含むラテックス配合物から成形されてなる卓球用ラバーシート。
- 上記天然ゴムラテックスが脱蛋白処理された天然ゴムラテックスである請求項1に記載の卓球用ラバーシート。
- 天然ゴムラテックスの固形分ゴムが基材ポリマー固形分の60質量%以上含まれる請求項1又は2に記載の卓球用ラバーシート。
- 形状が厚み2mm、幅4mmの試料で、チャック間距離30mmで、周波数10Hzで、変位振幅5μmで、初期荷重250gで、測定温度20℃により正弦波引張条件の粘弾性スペクトルを測定したとき、正接損失tanδが0.01以上0.04以下かつ複素弾性率E*が2MPa以下となる請求項1から3のいずれかに記載の卓球用ラバーシート。
- 本体、グリップ及びラバーシートを備えており、このラバーシートが、主成分として天然ゴムラテックスを含むラテックス配合物から成形されてなる卓球ラケット。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20060704 |