JP2004301232A - 円筒ころ軸受用保持器 - Google Patents
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Abstract
【課題】側輪に片持ち構造の柱部を突設した櫛型保持器の高速回転時における柱部と、ころの異常接触を無くし、非繰り返し振れを抑制した円筒ころ軸受用保持器の提供。
【解決手段】円環状の側輪12の片端面に等間隔で複数の柱部13を突設した樹脂製の櫛型保持器10で、隣接する柱部間のポケット14を形成する柱部13のポケット内周面13aが、ころPCDより内径側及び外径側共にころ外周面に沿う円筒面13a1、13a2であり、内径側円筒面13a1の柱自由端13b側に、柱自由端13bに向かって内径が大きくなる直線状の面切取部20を形成して、高速回転時の柱部変形でポケット内周面13aところ5が異常接触するのを面切取部20で回避させる。
【選択図】 図2
【解決手段】円環状の側輪12の片端面に等間隔で複数の柱部13を突設した樹脂製の櫛型保持器10で、隣接する柱部間のポケット14を形成する柱部13のポケット内周面13aが、ころPCDより内径側及び外径側共にころ外周面に沿う円筒面13a1、13a2であり、内径側円筒面13a1の柱自由端13b側に、柱自由端13bに向かって内径が大きくなる直線状の面切取部20を形成して、高速回転時の柱部変形でポケット内周面13aところ5が異常接触するのを面切取部20で回避させる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機械の主軸などの支持に用いられる円筒ころ軸受の保持器で、詳しくは、高速回転時の非繰り返し振れ(NRRO)、潤滑特性に優れた櫛型の円筒ころ軸受用保持器に関する。
【0002】
【従来の技術】
円筒ころ軸受に使用される櫛型保持器は、銅合金製と樹脂製に大別され、銅合金製保持器は樹脂製保持器に比べて高速回転時の耐変形性に優れるが、摩耗粉の問題があることから、摩耗紛問題の少ない樹脂製の櫛型保持器が賞用される傾向にある。樹脂製の櫛型保持器は、円環状側輪の片面に片持ち構造の複数の柱部を軸方向に突設している(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
上記特許文献1と特許文献2の保持器の概要を図5(A)、(B)に示すと、同図の保持器1は樹脂製の櫛型保持器で、円環状の側輪2の内端面2aに等間隔で複数の柱部3を一体に突設して、隣接する柱部3の間に、1つのころ5を保持するポケット4を形成している。ポケット4を形成する柱部3のポケット内周面3aは、ころPCDを境に外径側と内径側に分けられ、内径側が平坦面3a1であり、外径側がころ5の外周面に沿う円筒面3a2である。隣接する柱部3の円筒面3a2はころ外周面とほぼ同曲率で、ころ5を保持して保持器半径方向外方へのころ5の抜けを防止する。隣接する柱部3の平坦面3a1は、ころ外径より大きな間隔で平行に対向して、後述するように高速回転時に柱部3が保持器半径方向外方に変形しても、ころ5に異常接触しないようにしてある。
【0004】
また、特許文献3に明示されてはいないが、樹脂製櫛型保持器の別の種類を図6(A)、(B)に示す。この保持器1の図5に示す保持器と相違するところは、柱部3のポケット内周面3bである。このポケット内周面3bは、ころPCDを境にした外径側と内径側の両面を共に、ころ外周面に沿う円筒面3b1、3b2にしている。この場合、外径側円筒面3b2と内径側円筒面3b2のいずれかにころ5が接触して保持される。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−166544号公報(第0027段、図10)
【特許文献2】
特開2001−330037号公報(第0003段、図10)
【特許文献3】
実開平5−94530号公報(図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
工作機械の主軸の支持に使用される円筒ころ軸受には、主要な特性として高速回転(通常、d・n値(=内輪内径×回転数)60万mm・rpm以上)が可能であることと、軸受の非繰り返し振れが小さいことが要求される。図5の保持器を備えた円筒ころ軸受は、高速回転に適合するが、次の理由で円筒ころ軸受の非繰り返し振れを小さくする要求を満たすことが難しい。
【0007】
すなわち、円筒ころ軸受の非繰り返し振れを小さくするためには、ころの等配精度を高くするよう、保持器の案内すきまを小さくする必要がある。逆に、保持器の案内すきまが大きくなると、高速回転時に保持器が軸受中心に対して偏心し、ころの等配が崩れることがある。例えば、図7(A)に図5の保持器1を使用した円筒ころ軸受の断面を示す。なお、図7はころ数を少なくした概略図である。同図において、6は工作機械の主軸(図示省略)に嵌合される内輪、7は工作機械のハウジング(図示省略)に嵌合される外輪であり、図7(A)は低速回転の通常運転時の概要を示している。このとき、保持器の初期案内すきまgが充分に小さくて、保持器1は軸受中心Pに対して偏心しない状態にある。
【0008】
工作機械の主軸が内輪6と共に高速回転すると、図7(B)に示すように保持器1が遠心力で半径方向外方に膨張し、この膨張で案内すきまgが増大することがある。図8の破線で示す柱部3は、低速回転時のものであり、保持器1が高速回転すると図8の実線で示すように、柱部3が遠心力で保持器半径方向外方へと変形して、ポケット内周面3aの外径側円筒面3a2での案内すきまg’が初期案内すきまgより増大する。この増大する案内すきまg’の発生箇所は不定であり、図7(B)には図面上部のころ5の部所で発生した場合が示され、このとき保持器1は軸受中心Pから図7(B)の図面上部へと偏心する。このような保持器1の偏心方向と偏心量が一定せず、保持器1が偏心することで全数のころの公転中心が振れて、内輪6が不安定に振れる非繰り返し振れを起こす。この非繰り返し振れは、回転数の上昇に比例して悪化し、工作機械の主軸に取付けられた工具による加工精度を悪化させるなどの要因になっている。
【0009】
図6の保持器1に示す柱部3のように、ポケット内周面3bをころPCDを境に内外径側共に円筒面3b1、3b2にした場合や、図示しないが少なくとも内径側を円筒面にしたポケット内周面を持つ櫛型保持器を組込んだ円筒ころ軸受を高速回転させると、柱部3に遠心力が作用して、次のような挙動を示す。
【0010】
柱部3が側輪2の片面から突出した片持ち構造であり、保持器断面の重心位置が柱部3にあるため、高速回転すると遠心力で図9(A)、(B)に示すように円環状の側輪2が円錐台形状に変形し、個々の柱部3が保持器半径方向外方に弓なり状に変形する。図6の通常の運転状態の保持器1では、柱部3の長さに対する側輪2の幅(厚さ)が小さいため、高速回転すると変形は図9の円錐台変形が主体になる。特に、NN型などの複列円筒ころ軸受で二つの保持器を背面合わせで組込んだ仕様(図4、又は、特許文献3参照)では、側輪2の幅寸法がますます小さくなり、円錐台変形が顕著に現れる。この円錐台変形は、保持器の公転回転数と、保持器の寸法仕様(側輪の内径寸法、軸方向幅や径方向高さ、柱部の軸方向長さや周方向幅)と、保持器の材料(ヤング率、ポアソン比、密度)で一義的に決まる。また、工作機械用の軸受では、高速回転を容易とするために樹脂製保持器を採用しているため、合金製保持器と比較して上述変形が著しくなっている。
【0011】
通常の運転状態(低速回転)では、上述の変形量は、ころと保持器柱部のポケット内周面とのすきまで吸収され、特に問題とならないのであるが、高速運転して変形量が増大すると、図9(B)の丸印で示す部分、つまり、柱部3のポケット内周面3bの内径側円筒面3b1の柱自由端3cに在るエッジ部分3dがころ5と接触して接触面圧が増大することがある。このようにポケット内周面3bところ5の接触面圧が増大するといった異常接触が発生すると、案内すきまの潤滑材(グリース)が掻き取られて、潤滑不良による表面損傷が発生しやすくなり、高速回転させることが難しくなる。
【0012】
なお、図9は柱部3の変形が分かりやすいように変形量を増大させて図示したものであり、実際の変形量は僅かである。
【0013】
例えば、図6と同等の保持器の仕様が、PCD=φ126、保持器外径=φ133、内径=φ120、幅=10.5、側輪の幅=約2.5であり、PEEK樹脂[ヤング率:11.5Gpa、ポアソン比:0.37、密度:1.44g/cm3]の樹脂製品の場合で、保持器の回転数を3650rpm(内輪回転数で8000rpmに相当)としたとき、柱自由端の保持器半径方向外方の変形量は0.22mmである。
【0014】
また、図6と同等の保持器の仕様が、PCD=φ126、保持器外径=φ133、内径=φ122、幅=11.3、側輪の幅=約3.5であり、PA樹脂[ヤング率:6.5Gpa、ポアソン比:0.3、密度:1.32g/cm3]の樹脂製品の場合で、保持器の回転数を3650rpm(内輪回転数で8000rpmに相当)としたとき、柱自由端の保持器半径方向外方の変形量は0.23mmである。
【0015】
このような僅かな保持器柱部自由端の変形量でも、上記の異常接触が発生することが、各種の円筒ころ軸受において報告されており、高速回転時の信頼性に問題を残していた。
【0016】
本発明の目的は、高速回転時における柱部ところの異常接触を抑制した、かつ、非繰り返し振れ(NRRO)と潤滑特性に優れた円筒ころ軸受用保持器を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、内輪と外輪と保持器10に案内される複数のころ5からなる円筒ころ軸受であって、保持器10は、円環状の側輪12と、この側輪12に軸方向に突設した複数の柱部13を有する櫛型で、隣接する柱部間のポケット14を形成する柱部13のポケット内周面13aがころPCDより内径側及び外径側共にころ外周面に沿う円筒面13a1、13a2であり、各ポケット円筒面13a1、13a2におけるころPCDより内径側円筒面13a1の柱自由端13b側に、柱自由端13bに向かって内径が大きくなる面切取部20を形成したことを特徴とする。
【0018】
ここで、柱部13のポケット内周面13aの内径側円筒面13a1と外径側円筒面13a2のいずれかがころ外周面に接触してころ5を保持し、両円筒面13a1、13a2ところ5との初期案内すきまを充分に小さく設定しておくことで、高速回転時の非繰り返し振れを問題ない程度に抑制することができる。一方の内径側円筒面13a1における面切取部20の形成位置は、高速回転時に柱部13が変形して最も先にころ外周に当接するエッジ部分に相当し、このエッジ部分を削除することで高速回転時の柱部13と、ころ14との異常接触が回避されて、潤滑特性が改善される。
【0019】
かかる面切取部20の形状は、直線形状、曲線形状が可能である。面切取部20の形状と寸法は、保持器の種類、仕様による高速回転時の変形量の解析に基づいて適宜に決めることができる。つまり、柱部13の半径方向外方の変形(遠心力)は回転数の二乗に比例するため、上記のような変形量の解析に基づいて、簡単に、目的とする種種の回転数に対して、具体的な切取り寸法が決められる。
【0020】
ただし、遠心力によって保持器が変形し、保持器柱部13のポケット内周面13aの側輪12側の基端部nがころ5の案内をするようになったとき、安定した案内をするためには、柱部13の長さW3から面切取部20の長さW2を差し引いた分の基端部長さW1は、ころ長さW3の35%以上を確保することが望ましい。円筒ころ5の両端には通常ころ長さの15〜25%程度でクラウニングが施されているため、保持器ところが接触する範囲を保つためには、基端部長さW1はころ長さW3の35%以上が必要であるためである。
【0021】
本発明において、上記面切取部20は、柱部ポケット内周面13aの保持器半径方向内方側エッジの一部から柱自由端13bに向けて直線状に延在する形状であることが、高品質に安定して保持器を製作する上で有効である。
【0022】
また、本発明においては、側輪12の反柱部側の外端面12bに潤滑材溜め用溝30を形成することが望ましい。この場合の潤滑材はグリースなどで、複列ころ軸受のように一対の保持器の側輪を背中合わせに接触させて使用するような場合に、一対の側輪間の潤滑材が潤滑材溜め用溝に溜まった潤滑材で補足されて、潤滑特性の悪化が防止される。この場合、一対の側輪の両方の背面に潤滑材溜め用溝を形成することが望ましいが、一方の側輪の背面だけに形成するようにしてもよい。
【0023】
また、本発明においては、側輪12のポケット14を形成する内端面12aに部分的に、ころ端面の中央部に接する突起40を一体に形成することが望ましい。この側輪内端面12aの突起40にころ端面の中央部が当接することで、内端面12aの突起周辺部と、ころ端面の周辺部の間に潤滑材溜め隙間が形成されて、側輪12ところ端面との潤滑特性が良好になり、延いては保持器ところの潤滑特性が良好、かつ、安定したものとなる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態を図1乃至図4を参照して説明する。
【0025】
図1(A)、(B)と図2(A)、(B)に示される円筒ころ軸受用保持器10は、PPSなどの樹脂製の櫛型保持器で、円環状の側輪12と、この側輪12に軸方向に片持ち構造で突設した複数の柱部13を有し、隣接する柱部13の間にポケット14を形成する。隣接する柱部13の対向する側面がポケット14を形成するポケット内周面13aで、このポケット内周面13aがころPCDを境に内径側と外径側に分けられ、内外径両側がころ外周面に沿う円筒面13a1、13a2にしてある。ポケット内周面13aのころPCDより内径側円筒面13a1と外径側円筒面13a2は、図6のものと同様な曲率のころ保持面である。本発明の特徴の1つは、ポケット内周面13aの内径側円筒面13a1の柱自由端13b側に、柱自由端13bに向かって内径が大きくなる面切取部20を形成したことである。
【0026】
また、本発明の別の特徴の1つは、側輪12の反ポケット側である外端面12bに側輪12と同心の円環状潤滑材溜め用溝30を形成したことである。この溝30は、後述する複列ころ軸受において特に有効となる。また、本発明の別の特徴の1つは、側輪12のポケット側である内端面12aに部分的に、ころ端面の中央部と接触する突起40を形成したことである。この突起40により、内端面12aの突起40周辺部ところ端面の間に潤滑材溜め隙間が形成される。これら溝30と突起40の作用は、図4を参照して後述する。
【0027】
通常運転時においては、柱部13のポケット内周面13aの内径側円筒面13a1と外径側円筒面13a2のいずれかがころ5を保持する。高速運転で柱部13が半径方向外方に変形すると、ポケット内周面13aの内径側円筒面13a1の柱自由端13b側がころ外周面に接近するが、この接近する部分が面切取部20で面切りされた空間となっているために、ころ外周面との異常接触が回避される。
【0028】
図6の場合と同様に、通常運転時における円筒面13a1、13a2ところ5との初期案内すきまを充分に小さく設定しておくことで、高速回転時の非繰り返し振れが問題ない程度まで小さく抑制できる。高速回転時に柱部13が図3(A)、(B)に示すように大きく変形した場合、ポケット内周面13aの内径側円筒面13a1と外径側円筒面13a2のいずれかがころ5を保持する。このとき、内径側円筒面13a1の先端部が面切取部20のために、ころ5との接触面積が少なくて、ころ5の保持は主として内径側円筒面13a1の基端部n側で行われる。この基端部nは、側輪12の突起40から面切取部20までの区間である。基端部nは、通常運転時と同様にしてころ外周面に接触するため、潤滑グリースを掻き取るようなことがなくて、潤滑特性を良好に維持する。かつ、高速回転時に柱部13が変形しても、最も先にころ外周に当接するエッジ部分に相当する部所が面切取部20で切り取られた空間であるので、高速回転時の柱部13ところ14との異常接触が回避されて、高速回転が円滑に行われる。また、このように高速回転時の柱部13ところ5の異常接触が回避され、潤滑特性が維持されるように、面切取部20の形状、寸法が設定される。面切取部20の形状は、直線状が樹脂製保持器を製造する金型の製作上に望ましい。
【0029】
高速回転時における柱部13の半径方向外方の変形量は回転数の二乗に比例するため、この変形量の解析に基づいて面切取部20の具体的な切り取り寸法が決められる。例えば、前述した保持器の仕様が、PCD=φ126、保持器外径=φ133、内径=φ120、幅=10.5、側輪の幅=約2.5であり、PEEK樹脂[ヤング率:11.5Gpa、ポアソン比:0.37、密度:1.44g/cm3]の樹脂製品の場合で、保持器の回転数を3650rpm(内輪回転数で8000rpmに相当)としたときの柱自由端の保持器半径方向外方の変形量が0.22mmである保持器の場合、面切取部20を柱自由端13bから柱部13の略中央までの範囲で、図2(B)で示すテーパ角度θを約20°にして形成すればよい。
【0030】
ただし、遠心力によって保持器10が変形し、保持器柱部13の内径側円筒面13a1の基端部nがころ案内をするようになったとき、安定した案内をするためには、図2(B)のように柱部13の長さから面切取部20の長さW2を差し引いた基端部nの長さW1を、ころ長さW3の35%以上になるよう設計する。通常においてころ5の両端にはころ長さW3の15〜25%程度でクラウニングが施されているため、高速回転時に保持器10ところ5が良好に接触する範囲を保つためには、基端部nの長さW1がころ長さW3の35%以上が必要であるためである。
【0031】
図4は、複列円筒ころ軸受に一対の保持器10,10を背面合わせで組み込んだ実施の形態が示される。一対の保持器10、10で保持されたころ5が内輪6と外輪7の間に介装される。一対の保持器10,10は同一形状のもので、各々の側輪12、12同士が背面合わせで組み込まれる。この場合、一対の側輪12,12の背面(外端面)に形成した潤滑材溜め溝30,30が合致して両者間に潤滑材溜め空間が形成され、この空間に潤滑材のグリースが充填されて、一対の背面合わせした保持器10,10の間の潤滑性を良好にし、摩耗粉の発生を抑制する。また、摩耗粉の発生が抑制されることで、潤滑グリースの汚れが抑制されて、長期にわたり潤滑性が良好に維持される。
【0032】
また、保持器10の側輪12に形成した突起40がころ端面の中央部に接触して、ころ端面周辺部に潤滑材溜まりが形成されるので、内輪6の鍔面6’とすべり接触するころ端面に充分な潤滑グリースが供給されて、潤滑性が良好に維持され、高速回転時の発熱が抑制できて、尚一層に高速回転に適合する保持器構造にすることができる。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、高速回転時に櫛型保持器の柱部が遠心力で保持器半径方向外方に変形しても、柱部のポケット内周面ところ外周面との異常接触が面切取部で回避されて、ポケット内周面が潤滑材を掻き取るといった不具合発生がなくなり、高速回転時も潤滑特性が良好に維持できて、高速回転時の性能に優れた円筒ころ軸受用保持器が提供できる。また、高速回転で柱部が変形しても、柱部のポケット内周面の内径側円筒面と外径側円筒面のいずれかが所定の案内すきまでころを保持して、軸受の非繰り返し振れの悪化を抑制するので、工作機械の主軸などの高速回転時の異常な振れを問題ない程度まで抑制する高性能な円筒ころ軸受用保持器が提供できる。
【0034】
また、複列円筒ころ軸受で保持器を背面組合せで使用するような場合、保持器の側輪の背面に形成した潤滑材溜め用溝が潤滑材補足をして、異常摩耗や摩耗粉の発生を抑えて、高速運転性能を上げる。
【0035】
また、保持器の側輪にころ端面の中央部と接触する突起を設けることで、内輪の鍔面とすべり接触するころ端面に充分な潤滑材が供給されて発熱が抑制され、高速運転に適合する円筒ころ軸受用保持器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の実施の形態を示す保持器の部分正面図、(B)は保持器の部分平面図である。
【図2】(A)は図1(A)の保持器の部分拡大正面図、(B)はT1−T1線に沿う断面図である。
【図3】(A)は高速回転時の保持器の変形を説明するための部分正面図、(B)はT2−T2線に沿う断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を示す複列円筒ころ軸受の部分断面図である。
【図5】(A)は従来の円筒ころ軸受用保持器の部分正面図、(B)はT3−T3線に沿う断面図である。
【図6】(A)は他の従来の円筒ころ軸受用保持器の部分正面図、(B)はT4−T4線に沿う断面図である。
【図7】(A)は図5の保持器を使用した円筒ころ軸受の概要を示す断面図、(B)は同じ円筒ころ軸受の高速回転時の保持器偏心を説明するための断面図である。
【図8】図5の保持器の変形を説明するための部分正面図である。
【図9】(A)は図6の保持器の高速回転時の変形を説明するための正面図、(B)はT5−T5線に沿う断面図である。
【符号の説明】
5 ころ
6 内輪
7 外輪
10 保持器
12 側輪
12a 側輪の内端面
12b 側輪の外端面
13 柱部
13a ポケット内周面
13a1 内径側円筒面
13a2 外径側円筒面
13b 柱自由端
14 ポケット
20 面切取部
30 潤滑材溜め用溝
40 突起
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機械の主軸などの支持に用いられる円筒ころ軸受の保持器で、詳しくは、高速回転時の非繰り返し振れ(NRRO)、潤滑特性に優れた櫛型の円筒ころ軸受用保持器に関する。
【0002】
【従来の技術】
円筒ころ軸受に使用される櫛型保持器は、銅合金製と樹脂製に大別され、銅合金製保持器は樹脂製保持器に比べて高速回転時の耐変形性に優れるが、摩耗粉の問題があることから、摩耗紛問題の少ない樹脂製の櫛型保持器が賞用される傾向にある。樹脂製の櫛型保持器は、円環状側輪の片面に片持ち構造の複数の柱部を軸方向に突設している(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
上記特許文献1と特許文献2の保持器の概要を図5(A)、(B)に示すと、同図の保持器1は樹脂製の櫛型保持器で、円環状の側輪2の内端面2aに等間隔で複数の柱部3を一体に突設して、隣接する柱部3の間に、1つのころ5を保持するポケット4を形成している。ポケット4を形成する柱部3のポケット内周面3aは、ころPCDを境に外径側と内径側に分けられ、内径側が平坦面3a1であり、外径側がころ5の外周面に沿う円筒面3a2である。隣接する柱部3の円筒面3a2はころ外周面とほぼ同曲率で、ころ5を保持して保持器半径方向外方へのころ5の抜けを防止する。隣接する柱部3の平坦面3a1は、ころ外径より大きな間隔で平行に対向して、後述するように高速回転時に柱部3が保持器半径方向外方に変形しても、ころ5に異常接触しないようにしてある。
【0004】
また、特許文献3に明示されてはいないが、樹脂製櫛型保持器の別の種類を図6(A)、(B)に示す。この保持器1の図5に示す保持器と相違するところは、柱部3のポケット内周面3bである。このポケット内周面3bは、ころPCDを境にした外径側と内径側の両面を共に、ころ外周面に沿う円筒面3b1、3b2にしている。この場合、外径側円筒面3b2と内径側円筒面3b2のいずれかにころ5が接触して保持される。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−166544号公報(第0027段、図10)
【特許文献2】
特開2001−330037号公報(第0003段、図10)
【特許文献3】
実開平5−94530号公報(図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
工作機械の主軸の支持に使用される円筒ころ軸受には、主要な特性として高速回転(通常、d・n値(=内輪内径×回転数)60万mm・rpm以上)が可能であることと、軸受の非繰り返し振れが小さいことが要求される。図5の保持器を備えた円筒ころ軸受は、高速回転に適合するが、次の理由で円筒ころ軸受の非繰り返し振れを小さくする要求を満たすことが難しい。
【0007】
すなわち、円筒ころ軸受の非繰り返し振れを小さくするためには、ころの等配精度を高くするよう、保持器の案内すきまを小さくする必要がある。逆に、保持器の案内すきまが大きくなると、高速回転時に保持器が軸受中心に対して偏心し、ころの等配が崩れることがある。例えば、図7(A)に図5の保持器1を使用した円筒ころ軸受の断面を示す。なお、図7はころ数を少なくした概略図である。同図において、6は工作機械の主軸(図示省略)に嵌合される内輪、7は工作機械のハウジング(図示省略)に嵌合される外輪であり、図7(A)は低速回転の通常運転時の概要を示している。このとき、保持器の初期案内すきまgが充分に小さくて、保持器1は軸受中心Pに対して偏心しない状態にある。
【0008】
工作機械の主軸が内輪6と共に高速回転すると、図7(B)に示すように保持器1が遠心力で半径方向外方に膨張し、この膨張で案内すきまgが増大することがある。図8の破線で示す柱部3は、低速回転時のものであり、保持器1が高速回転すると図8の実線で示すように、柱部3が遠心力で保持器半径方向外方へと変形して、ポケット内周面3aの外径側円筒面3a2での案内すきまg’が初期案内すきまgより増大する。この増大する案内すきまg’の発生箇所は不定であり、図7(B)には図面上部のころ5の部所で発生した場合が示され、このとき保持器1は軸受中心Pから図7(B)の図面上部へと偏心する。このような保持器1の偏心方向と偏心量が一定せず、保持器1が偏心することで全数のころの公転中心が振れて、内輪6が不安定に振れる非繰り返し振れを起こす。この非繰り返し振れは、回転数の上昇に比例して悪化し、工作機械の主軸に取付けられた工具による加工精度を悪化させるなどの要因になっている。
【0009】
図6の保持器1に示す柱部3のように、ポケット内周面3bをころPCDを境に内外径側共に円筒面3b1、3b2にした場合や、図示しないが少なくとも内径側を円筒面にしたポケット内周面を持つ櫛型保持器を組込んだ円筒ころ軸受を高速回転させると、柱部3に遠心力が作用して、次のような挙動を示す。
【0010】
柱部3が側輪2の片面から突出した片持ち構造であり、保持器断面の重心位置が柱部3にあるため、高速回転すると遠心力で図9(A)、(B)に示すように円環状の側輪2が円錐台形状に変形し、個々の柱部3が保持器半径方向外方に弓なり状に変形する。図6の通常の運転状態の保持器1では、柱部3の長さに対する側輪2の幅(厚さ)が小さいため、高速回転すると変形は図9の円錐台変形が主体になる。特に、NN型などの複列円筒ころ軸受で二つの保持器を背面合わせで組込んだ仕様(図4、又は、特許文献3参照)では、側輪2の幅寸法がますます小さくなり、円錐台変形が顕著に現れる。この円錐台変形は、保持器の公転回転数と、保持器の寸法仕様(側輪の内径寸法、軸方向幅や径方向高さ、柱部の軸方向長さや周方向幅)と、保持器の材料(ヤング率、ポアソン比、密度)で一義的に決まる。また、工作機械用の軸受では、高速回転を容易とするために樹脂製保持器を採用しているため、合金製保持器と比較して上述変形が著しくなっている。
【0011】
通常の運転状態(低速回転)では、上述の変形量は、ころと保持器柱部のポケット内周面とのすきまで吸収され、特に問題とならないのであるが、高速運転して変形量が増大すると、図9(B)の丸印で示す部分、つまり、柱部3のポケット内周面3bの内径側円筒面3b1の柱自由端3cに在るエッジ部分3dがころ5と接触して接触面圧が増大することがある。このようにポケット内周面3bところ5の接触面圧が増大するといった異常接触が発生すると、案内すきまの潤滑材(グリース)が掻き取られて、潤滑不良による表面損傷が発生しやすくなり、高速回転させることが難しくなる。
【0012】
なお、図9は柱部3の変形が分かりやすいように変形量を増大させて図示したものであり、実際の変形量は僅かである。
【0013】
例えば、図6と同等の保持器の仕様が、PCD=φ126、保持器外径=φ133、内径=φ120、幅=10.5、側輪の幅=約2.5であり、PEEK樹脂[ヤング率:11.5Gpa、ポアソン比:0.37、密度:1.44g/cm3]の樹脂製品の場合で、保持器の回転数を3650rpm(内輪回転数で8000rpmに相当)としたとき、柱自由端の保持器半径方向外方の変形量は0.22mmである。
【0014】
また、図6と同等の保持器の仕様が、PCD=φ126、保持器外径=φ133、内径=φ122、幅=11.3、側輪の幅=約3.5であり、PA樹脂[ヤング率:6.5Gpa、ポアソン比:0.3、密度:1.32g/cm3]の樹脂製品の場合で、保持器の回転数を3650rpm(内輪回転数で8000rpmに相当)としたとき、柱自由端の保持器半径方向外方の変形量は0.23mmである。
【0015】
このような僅かな保持器柱部自由端の変形量でも、上記の異常接触が発生することが、各種の円筒ころ軸受において報告されており、高速回転時の信頼性に問題を残していた。
【0016】
本発明の目的は、高速回転時における柱部ところの異常接触を抑制した、かつ、非繰り返し振れ(NRRO)と潤滑特性に優れた円筒ころ軸受用保持器を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、内輪と外輪と保持器10に案内される複数のころ5からなる円筒ころ軸受であって、保持器10は、円環状の側輪12と、この側輪12に軸方向に突設した複数の柱部13を有する櫛型で、隣接する柱部間のポケット14を形成する柱部13のポケット内周面13aがころPCDより内径側及び外径側共にころ外周面に沿う円筒面13a1、13a2であり、各ポケット円筒面13a1、13a2におけるころPCDより内径側円筒面13a1の柱自由端13b側に、柱自由端13bに向かって内径が大きくなる面切取部20を形成したことを特徴とする。
【0018】
ここで、柱部13のポケット内周面13aの内径側円筒面13a1と外径側円筒面13a2のいずれかがころ外周面に接触してころ5を保持し、両円筒面13a1、13a2ところ5との初期案内すきまを充分に小さく設定しておくことで、高速回転時の非繰り返し振れを問題ない程度に抑制することができる。一方の内径側円筒面13a1における面切取部20の形成位置は、高速回転時に柱部13が変形して最も先にころ外周に当接するエッジ部分に相当し、このエッジ部分を削除することで高速回転時の柱部13と、ころ14との異常接触が回避されて、潤滑特性が改善される。
【0019】
かかる面切取部20の形状は、直線形状、曲線形状が可能である。面切取部20の形状と寸法は、保持器の種類、仕様による高速回転時の変形量の解析に基づいて適宜に決めることができる。つまり、柱部13の半径方向外方の変形(遠心力)は回転数の二乗に比例するため、上記のような変形量の解析に基づいて、簡単に、目的とする種種の回転数に対して、具体的な切取り寸法が決められる。
【0020】
ただし、遠心力によって保持器が変形し、保持器柱部13のポケット内周面13aの側輪12側の基端部nがころ5の案内をするようになったとき、安定した案内をするためには、柱部13の長さW3から面切取部20の長さW2を差し引いた分の基端部長さW1は、ころ長さW3の35%以上を確保することが望ましい。円筒ころ5の両端には通常ころ長さの15〜25%程度でクラウニングが施されているため、保持器ところが接触する範囲を保つためには、基端部長さW1はころ長さW3の35%以上が必要であるためである。
【0021】
本発明において、上記面切取部20は、柱部ポケット内周面13aの保持器半径方向内方側エッジの一部から柱自由端13bに向けて直線状に延在する形状であることが、高品質に安定して保持器を製作する上で有効である。
【0022】
また、本発明においては、側輪12の反柱部側の外端面12bに潤滑材溜め用溝30を形成することが望ましい。この場合の潤滑材はグリースなどで、複列ころ軸受のように一対の保持器の側輪を背中合わせに接触させて使用するような場合に、一対の側輪間の潤滑材が潤滑材溜め用溝に溜まった潤滑材で補足されて、潤滑特性の悪化が防止される。この場合、一対の側輪の両方の背面に潤滑材溜め用溝を形成することが望ましいが、一方の側輪の背面だけに形成するようにしてもよい。
【0023】
また、本発明においては、側輪12のポケット14を形成する内端面12aに部分的に、ころ端面の中央部に接する突起40を一体に形成することが望ましい。この側輪内端面12aの突起40にころ端面の中央部が当接することで、内端面12aの突起周辺部と、ころ端面の周辺部の間に潤滑材溜め隙間が形成されて、側輪12ところ端面との潤滑特性が良好になり、延いては保持器ところの潤滑特性が良好、かつ、安定したものとなる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態を図1乃至図4を参照して説明する。
【0025】
図1(A)、(B)と図2(A)、(B)に示される円筒ころ軸受用保持器10は、PPSなどの樹脂製の櫛型保持器で、円環状の側輪12と、この側輪12に軸方向に片持ち構造で突設した複数の柱部13を有し、隣接する柱部13の間にポケット14を形成する。隣接する柱部13の対向する側面がポケット14を形成するポケット内周面13aで、このポケット内周面13aがころPCDを境に内径側と外径側に分けられ、内外径両側がころ外周面に沿う円筒面13a1、13a2にしてある。ポケット内周面13aのころPCDより内径側円筒面13a1と外径側円筒面13a2は、図6のものと同様な曲率のころ保持面である。本発明の特徴の1つは、ポケット内周面13aの内径側円筒面13a1の柱自由端13b側に、柱自由端13bに向かって内径が大きくなる面切取部20を形成したことである。
【0026】
また、本発明の別の特徴の1つは、側輪12の反ポケット側である外端面12bに側輪12と同心の円環状潤滑材溜め用溝30を形成したことである。この溝30は、後述する複列ころ軸受において特に有効となる。また、本発明の別の特徴の1つは、側輪12のポケット側である内端面12aに部分的に、ころ端面の中央部と接触する突起40を形成したことである。この突起40により、内端面12aの突起40周辺部ところ端面の間に潤滑材溜め隙間が形成される。これら溝30と突起40の作用は、図4を参照して後述する。
【0027】
通常運転時においては、柱部13のポケット内周面13aの内径側円筒面13a1と外径側円筒面13a2のいずれかがころ5を保持する。高速運転で柱部13が半径方向外方に変形すると、ポケット内周面13aの内径側円筒面13a1の柱自由端13b側がころ外周面に接近するが、この接近する部分が面切取部20で面切りされた空間となっているために、ころ外周面との異常接触が回避される。
【0028】
図6の場合と同様に、通常運転時における円筒面13a1、13a2ところ5との初期案内すきまを充分に小さく設定しておくことで、高速回転時の非繰り返し振れが問題ない程度まで小さく抑制できる。高速回転時に柱部13が図3(A)、(B)に示すように大きく変形した場合、ポケット内周面13aの内径側円筒面13a1と外径側円筒面13a2のいずれかがころ5を保持する。このとき、内径側円筒面13a1の先端部が面切取部20のために、ころ5との接触面積が少なくて、ころ5の保持は主として内径側円筒面13a1の基端部n側で行われる。この基端部nは、側輪12の突起40から面切取部20までの区間である。基端部nは、通常運転時と同様にしてころ外周面に接触するため、潤滑グリースを掻き取るようなことがなくて、潤滑特性を良好に維持する。かつ、高速回転時に柱部13が変形しても、最も先にころ外周に当接するエッジ部分に相当する部所が面切取部20で切り取られた空間であるので、高速回転時の柱部13ところ14との異常接触が回避されて、高速回転が円滑に行われる。また、このように高速回転時の柱部13ところ5の異常接触が回避され、潤滑特性が維持されるように、面切取部20の形状、寸法が設定される。面切取部20の形状は、直線状が樹脂製保持器を製造する金型の製作上に望ましい。
【0029】
高速回転時における柱部13の半径方向外方の変形量は回転数の二乗に比例するため、この変形量の解析に基づいて面切取部20の具体的な切り取り寸法が決められる。例えば、前述した保持器の仕様が、PCD=φ126、保持器外径=φ133、内径=φ120、幅=10.5、側輪の幅=約2.5であり、PEEK樹脂[ヤング率:11.5Gpa、ポアソン比:0.37、密度:1.44g/cm3]の樹脂製品の場合で、保持器の回転数を3650rpm(内輪回転数で8000rpmに相当)としたときの柱自由端の保持器半径方向外方の変形量が0.22mmである保持器の場合、面切取部20を柱自由端13bから柱部13の略中央までの範囲で、図2(B)で示すテーパ角度θを約20°にして形成すればよい。
【0030】
ただし、遠心力によって保持器10が変形し、保持器柱部13の内径側円筒面13a1の基端部nがころ案内をするようになったとき、安定した案内をするためには、図2(B)のように柱部13の長さから面切取部20の長さW2を差し引いた基端部nの長さW1を、ころ長さW3の35%以上になるよう設計する。通常においてころ5の両端にはころ長さW3の15〜25%程度でクラウニングが施されているため、高速回転時に保持器10ところ5が良好に接触する範囲を保つためには、基端部nの長さW1がころ長さW3の35%以上が必要であるためである。
【0031】
図4は、複列円筒ころ軸受に一対の保持器10,10を背面合わせで組み込んだ実施の形態が示される。一対の保持器10、10で保持されたころ5が内輪6と外輪7の間に介装される。一対の保持器10,10は同一形状のもので、各々の側輪12、12同士が背面合わせで組み込まれる。この場合、一対の側輪12,12の背面(外端面)に形成した潤滑材溜め溝30,30が合致して両者間に潤滑材溜め空間が形成され、この空間に潤滑材のグリースが充填されて、一対の背面合わせした保持器10,10の間の潤滑性を良好にし、摩耗粉の発生を抑制する。また、摩耗粉の発生が抑制されることで、潤滑グリースの汚れが抑制されて、長期にわたり潤滑性が良好に維持される。
【0032】
また、保持器10の側輪12に形成した突起40がころ端面の中央部に接触して、ころ端面周辺部に潤滑材溜まりが形成されるので、内輪6の鍔面6’とすべり接触するころ端面に充分な潤滑グリースが供給されて、潤滑性が良好に維持され、高速回転時の発熱が抑制できて、尚一層に高速回転に適合する保持器構造にすることができる。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、高速回転時に櫛型保持器の柱部が遠心力で保持器半径方向外方に変形しても、柱部のポケット内周面ところ外周面との異常接触が面切取部で回避されて、ポケット内周面が潤滑材を掻き取るといった不具合発生がなくなり、高速回転時も潤滑特性が良好に維持できて、高速回転時の性能に優れた円筒ころ軸受用保持器が提供できる。また、高速回転で柱部が変形しても、柱部のポケット内周面の内径側円筒面と外径側円筒面のいずれかが所定の案内すきまでころを保持して、軸受の非繰り返し振れの悪化を抑制するので、工作機械の主軸などの高速回転時の異常な振れを問題ない程度まで抑制する高性能な円筒ころ軸受用保持器が提供できる。
【0034】
また、複列円筒ころ軸受で保持器を背面組合せで使用するような場合、保持器の側輪の背面に形成した潤滑材溜め用溝が潤滑材補足をして、異常摩耗や摩耗粉の発生を抑えて、高速運転性能を上げる。
【0035】
また、保持器の側輪にころ端面の中央部と接触する突起を設けることで、内輪の鍔面とすべり接触するころ端面に充分な潤滑材が供給されて発熱が抑制され、高速運転に適合する円筒ころ軸受用保持器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の実施の形態を示す保持器の部分正面図、(B)は保持器の部分平面図である。
【図2】(A)は図1(A)の保持器の部分拡大正面図、(B)はT1−T1線に沿う断面図である。
【図3】(A)は高速回転時の保持器の変形を説明するための部分正面図、(B)はT2−T2線に沿う断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を示す複列円筒ころ軸受の部分断面図である。
【図5】(A)は従来の円筒ころ軸受用保持器の部分正面図、(B)はT3−T3線に沿う断面図である。
【図6】(A)は他の従来の円筒ころ軸受用保持器の部分正面図、(B)はT4−T4線に沿う断面図である。
【図7】(A)は図5の保持器を使用した円筒ころ軸受の概要を示す断面図、(B)は同じ円筒ころ軸受の高速回転時の保持器偏心を説明するための断面図である。
【図8】図5の保持器の変形を説明するための部分正面図である。
【図9】(A)は図6の保持器の高速回転時の変形を説明するための正面図、(B)はT5−T5線に沿う断面図である。
【符号の説明】
5 ころ
6 内輪
7 外輪
10 保持器
12 側輪
12a 側輪の内端面
12b 側輪の外端面
13 柱部
13a ポケット内周面
13a1 内径側円筒面
13a2 外径側円筒面
13b 柱自由端
14 ポケット
20 面切取部
30 潤滑材溜め用溝
40 突起
Claims (4)
- 内輪と外輪と保持器に案内される複数のころからなる円筒ころ軸受であって、
前記保持器は、円環状の側輪と、この側輪に軸方向に突設した複数の柱部を有する櫛型で、隣接する柱部間のポケットを形成する柱部のポケット内周面がころPCDより内径側及び外径側共にころ外周面に沿う円筒面であり、
前記ポケット内周面における内径側円筒面の柱自由端側に、柱自由端に向かって内径が大きくなる面切取部を形成したことを特徴とする円筒ころ軸受用保持器。 - 前記面切取部が、柱部ポケット内周面の保持器半径方向内方側エッジの一部から柱自由端に向けて直線状に延在することを特徴とする請求項1記載の円筒ころ軸受用保持器。
- 前記側輪の反柱部側の外端面に潤滑材溜め用溝を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の円筒ころ軸受用保持器。
- 前記側輪のポケットを形成する内端面に部分的に、ころ端面の中央部に接する突起を一体に形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の円筒ころ軸受用保持器。
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2003
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