JP2004300807A - 可撓性膜製起伏堰 - Google Patents
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Abstract
【課題】堰内圧を低下させた場合にもVノッチを発生させず、越流時の騒音も抑制する。
【解決手段】可撓性膜製の袋体11を、流れを横断するように河川床12aに取り付け、袋体11の内部に給水することで河川12内で膨張起立、また、袋体11の内部から排水することで河川12内で収縮倒伏させて、水位の維持や流量調整を行う可撓性膜製起伏堰である。下流側端部をヒンジ14により河川床12aに取り付けた鋼製の越流シュート13を、袋体11の下流に起伏揺動が自在なように配置する。越流シュート13の上流側端部を袋体11に至る長さとなす。上流側端部の幅を河川幅と略同じとなす。越流シュート13の上流側端部の裏面が袋体11に自重で当接させる。
【効果】袋体の内圧低下時、越流シュートの重みにより袋体の形状が平準化されてVノッチが抑制される。また、越流シュートの傾斜が緩くなり、緩越流が可能になって、越流時の騒音が減少する。
【選択図】 図4
【解決手段】可撓性膜製の袋体11を、流れを横断するように河川床12aに取り付け、袋体11の内部に給水することで河川12内で膨張起立、また、袋体11の内部から排水することで河川12内で収縮倒伏させて、水位の維持や流量調整を行う可撓性膜製起伏堰である。下流側端部をヒンジ14により河川床12aに取り付けた鋼製の越流シュート13を、袋体11の下流に起伏揺動が自在なように配置する。越流シュート13の上流側端部を袋体11に至る長さとなす。上流側端部の幅を河川幅と略同じとなす。越流シュート13の上流側端部の裏面が袋体11に自重で当接させる。
【効果】袋体の内圧低下時、越流シュートの重みにより袋体の形状が平準化されてVノッチが抑制される。また、越流シュートの傾斜が緩くなり、緩越流が可能になって、越流時の騒音が減少する。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、河川等の水路を開閉し、水位を維持したり土砂吐き等の機能を有する可撓性膜製の起伏堰に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
河川等の水路に設置される起伏堰として、可撓性膜製堰、鋼製堰、鋼製2段堰などが知られている。
このうち、可撓性膜製堰は、図6に示すように、例えばゴム引布等の袋体1を河川床2に取り付け、前記袋体1の内部に空気又は水を注入したり、袋体1の内部の空気又は水を排出したりすることで、図6に示したように袋体1を膨張起立させたり、収縮倒伏させたりするものである(例えば、特許文献1参照。)。なお、図6中の7は袋体1の底部と下流側の内部に設けられたクッション材、8は河川床2における袋体1の底部にあたる部分に配置されたシールシートである。
【0003】
【特許文献1】
特公昭62−9686号公報(第1〜2頁、第1図)
【0004】
また、鋼製堰は、図7に示すように、例えば扉体3の下部に設置した支承ピン4を介して扉体3を河床2に取り付け、油圧シリンダ5のロッドの出退により支承ピン4を中心として前記扉体3を起立・倒伏させるものである。
【0005】
また、鋼製2段堰、例えば鋼製2段式ローラゲートは、図8に示すように、扉体を下段扉3aと上段扉3bの2段に分割して、河川の上下流に配置し、これら下段扉3aと上段扉3bを夫々の戸溝6a,6bに沿って昇降動させるものである。
【0006】
上述の堰のうち、可撓性膜製堰は、鋼製堰や鋼製2段堰に比べて構造が簡単で軽量であり、設置のための工期や施工の点で優れている。また、鋼製堰や鋼製2段堰は一定形状の扉体を起伏揺動させたり昇降させる関係で、水路の横断面形状を矩形にしなければならないが、可撓性膜製堰ではそのような必要がない。すなわち、可撓性膜製堰は、通常の河川のように、側壁が勾配をもち、横断面形状が台形の水路であっても、そのまま設置できるという利点を有している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、可撓性膜製堰では、その堰高を下げるために堰内圧を低圧にした場合には、水圧などの影響を受けて堰の形状が大きく変動する。特に、堰内圧を低下させるために、内部の流体を排出している途中などで、堰の頂部の一部がV字状に変形する座屈現象、いわゆるVノッチが発生する場合がある。
【0008】
このVノッチが発生すると、堰高が部分的に低下するため、堰高の制御が困難となるのみならず、Vノッチの発生箇所の下流側水路の底面を局所的に洗掘して、水路形状を変える等の問題が生じる。
【0009】
また、可撓性膜製堰では越流が急落下して騒音が大きくなるため、この騒音を抑制するために、堰の越流頂に水膜分離装置(スポイラー)を設置することが多いが、このスポイラーに枯れ草等の浮遊物が溜まり易く、景観を悪くする。
【0010】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、堰内圧を低下させた場合にもVノッチを発生させず、しかも、越流時の騒音も抑制できる可撓性膜製起伏堰を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明に係る可撓性膜製起伏堰は、下流側端部をヒンジにより流路床に取り付けた鋼製の越流シュートを、可撓性膜製の袋体の下流に起伏揺動が自在なように配置し、かつ、この越流シュートの上流側端部を前記袋体に至る長さとなすと共に、上流側端部の幅を流路幅と略同じとなし、前記越流シュートの上流側端部の裏面が前記袋体に自重で当接するように構成している。
【0012】
そして、このようにすることで、堰内圧を低下させ、内部の流体を排出している途中でも、Vノッチが発生せず、また、傾斜が緩やかな越流シュートによって、越流時の騒音を抑制できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に係る可撓性膜製起伏堰は、可撓性膜製の袋体を、流れを横断するように流路床に取り付け、袋体内部に流体を供給することで流路内で膨張起立、また、袋体内部から流体を排出することで流路内で収縮倒伏させて、水位の維持や流量調整を行う可撓性膜製起伏堰において、
下流側端部をヒンジにより流路床に取り付けた鋼製の越流シュートを、前記袋体の下流に起伏揺動が自在なように配置し、かつ、この越流シュートの上流側端部を前記袋体に至る長さとなすと共に、上流側端部の幅を流路幅と略同じとなし、前記越流シュートの上流側端部の裏面が前記袋体に自重で当接するように構成したものである。
【0014】
本発明に係る可撓性膜製起伏堰では、袋体の下流に起伏揺動が自在なように配置した鋼製の越流シュートの、流路と略同じ幅を有する上流側端部が、袋体の頂部を覆っているので、堰内圧を低下させ、袋体の内部の流体を排出している途中でも、Vノッチが発生しない。Vノッチの発生を抑制する点のみを考えると、越流シュートの上流側端部のみが流路と略同じ幅であれば良いが、越流時の騒音防止の観点からは、上流側端部のみならず下流側も流路と略同じ幅となすことが望ましい。
【0015】
また、本発明に係る可撓性膜製起伏堰では、鋼製の越流シュートは、その下流側端部をヒンジにより流路床に取り付け、袋体と越流シュートの上流側端部との当接は越流シュートの自重で当接させ、当接位置は固定ではないので、袋体を起立させた際の越流シュートの傾斜が緩やかになり、越流時の騒音を抑制できる。
【0016】
上記の本発明に係る可撓性膜製起伏堰において、前記越流シュートの長さを、前記袋体の膨張起立時、越流シュートの上流端が前記当接位置よりオーバーハングするような長さとした場合には、越流シュートが袋体を押さえ付ける力が大きくなるので、越流シュートが流れによって浮き上がって、袋体から離反するのを防止できる。
【0017】
そして、上記の何れかの本発明に係る可撓性膜製起伏堰において、前記越流シュートの上流側端部裏面に、ウェイトを配置した場合には、前記越流シュートの袋体からの離反をより確実に防止できる。この場合、袋体を疵付けないようにするため、ウェイトは鋭部が無いものを使用することは言うまでもない。
【0018】
また、上記の何れかの本発明に係る可撓性膜製起伏堰において、前記越流シュートの起立揺動域を制限する金物を設けた場合には、越流シュートが袋体から離反することがなく上記の作用効果が安定する。
【0019】
また、上記の何れかの本発明に係る可撓性膜製起伏堰において、前記越流シュートの上流側端部を、側面視、前記袋体側に中心を有する湾曲状となした場合には、越流シュートを超えた流れが乱れるのを防止することができる。
【0020】
また、上記の何れかの本発明に係る可撓性膜製起伏堰において、前記の越流シュートと袋体間に形成された空間と、前記越流シュートの下流側流路とを連通するドレン管を設けた場合には、前記空間の水圧上昇による越流シュートへの負荷を軽減できるのと共に、前記空間に溜まったごみを排出することもできる。
【0021】
【実施例】
以下、本発明に係る可撓性膜製起伏堰を図1〜図5に示す実施例に基づいて説明する。
図1〜図3は本発明に係る可撓性膜製起伏堰の概略説明図で、図1は全体図、図2は側面から見た越流時の図、図3は側面から見た全開時の図、図4及び図5は本発明に係る可撓性膜製起伏堰の詳細図で、図4は側面から見た越流時の図、図5(a)の紙面左半分は正面から見た図、右半分は背面から見た図、(b)は越流シュートの断面図である。
【0022】
図1〜図5において、11はゴム引布製の袋体であり、例えば河川12の流れを横断するように河川床12aに取り付けられている。そして、この袋体11の内部に例えば水を供給することで、図2や図4に示したように、袋体11を膨張させて河川12内で起立させ、河川12を流れる流水がこの袋体11を越流するようにする。その際、袋体11に供給する水量を調整することで、堰高を調整し、越流する流量を調整することもできる。一方、袋体11の内部から水を完全に排出した場合には、図3に示したように、河川12は全開状態になる。
【0023】
13は前記袋体11の下流側に配置される鋼製の越流シュートであり、図1〜図3に示したものは3枚で、また、図4及び図5に示したものは1枚で、河川の幅と略同じ幅を確保する様にしている。
【0024】
この越流シュート13は、起伏揺動が自在なように、その下流側の端部をヒンジ14により河川床12aに取り付けると共に、上流側端部が袋体11の上面に至るような長さを有し、上流側端部の裏面が前記袋体11に自重で当接するようになされている。
【0025】
この越流シュート13は、図1〜図5に示した例では、その上流側端部を、側面視、袋体11側に中心を有する湾曲状となし、越流シュート13を超えた流れが乱れないようにするものを示している。このうち、図1〜図3の例では、図2に示したように、袋体11の膨張起立時、越流シュート13の上流側端部の裏面全体が袋体11の外周面と当接している。
【0026】
一方、図4及び図5の例では、図4に示したように、袋体11の膨張起立時、越流シュート13の上流端が袋体11との当接位置よりオーバーハングするようにし、その裏面に、例えば半球状のウェイト15を配置している。このようにすれば、特に袋体11が膨張起立状態の際、越流シュート13が流れによって浮き上がり、袋体11から離反するのを確実に防止できる。
【0027】
16は袋体11が膨張起立した場合に、流れによって越流シュート13が袋体11から離反することがないように、越流シュート13の起立揺動域を制限する金物であり、前記ヒンジ14の近傍に、河川床12aと越流シュート13の裏面側を繋ぐように設けられている。
【0028】
17は一方端が例えば前記ヒンジ14と金物16の間の河川12に、また、他方端がヒンジ14より下流側の河川12に夫々が開口すべく河川床12aに埋設されたドレン管である。このドレン管17を設けた場合には、越流シュート13と袋体11との間に形成される空間18の水圧上昇によって越流シュート13に作用する負荷を軽減できるのと共に、前記空間18に溜まったごみを下流側に排出することもできる。
【0029】
なお、図1〜図3中の19は越流シュート13の下流側端部のヒンジ14取り付け部に配置された防塵ゴム、20は前記ヒンジ14と金物16の間の河川床12aに設置され、袋体11の内部から水を完全に排出した全開時に、越流シュート13が袋体11を押し付けて疵付けないように、越流シュート13の倒伏位置を規制するストッパーを示す。
【0030】
上記したような構成の本発明に係る可撓性膜製起伏堰では、袋体11の下流に起伏揺動が自在なように配置した鋼製の越流シュート13の上流側端部が、袋体11の頂部を覆っているので、堰内圧を低下させ、袋体11の内部の水を排出している途中でも、Vノッチが発生することがない。
【0031】
また、本発明に係る可撓性膜製起伏堰では、鋼製の越流シュート13は、その下流側をヒンジ14により河川床12aに取り付け、越流シュート13の上流側を袋体11にその自重で当接させているので、袋体11を起立させた際の越流シュート13の傾斜が緩やかになって、越流時の騒音が抑制される。
【0032】
本発明に係る可撓性膜製起伏堰は、上記の実施例に限るものではなく、各請求項に記載の発明の技術的範囲の範疇であれば、その実施形態の変更は自由である。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、鋼製の越流シュートと袋体との当接位置が固定ではなく、越流シュートの自重で袋体を流路の幅方向に均一に押え付けるようにすることで、袋体の内圧を低下させた場合にも、越流シュートの重みにより袋体の形状が平準化されてVノッチが抑制され、流量調整に適したものとなる。
【0034】
また、越流シュートの下流側端部をヒンジにより支持することで、越流シュートの傾斜が緩くなり、緩越流が可能になって、越流時の騒音が減少する。従って、越流頂にスポイラーを設置する必要がなくなり、枯れ草等の浮遊物がたまりにくくなって、景観が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る可撓性膜製起伏堰の概略説明図で、(a)は正面から見た全体図、(b)は平面から見た全体図である。
【図2】本発明に係る可撓性膜製起伏堰の概略説明図で、側面から見た越流時の図である。
【図3】本発明に係る可撓性膜製起伏堰の概略説明図で、側面から見た全開時の図である。
【図4】本発明に係る可撓性膜製起伏堰の詳細図で、側面から見た越流時の図である。
【図5】(a)は本発明に係る可撓性膜製起伏堰の詳細図で、紙面左半分は正面から見た図、右半分は背面から見た図、(b)は越流シュートの断面図である。
【図6】従来の可撓性膜製起伏堰の概略説明図である。
【図7】従来の鋼製起伏堰の概略説明図である。
【図8】従来の鋼製2段式ローラゲートの概略説明図である。
【符号の説明】
11 袋体
12 河川
12a 河川床
13 越流シュート
14 ヒンジ
15 ウェイト
16 金物
17 ドレン管
18 空間
【発明の属する技術分野】
本発明は、河川等の水路を開閉し、水位を維持したり土砂吐き等の機能を有する可撓性膜製の起伏堰に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
河川等の水路に設置される起伏堰として、可撓性膜製堰、鋼製堰、鋼製2段堰などが知られている。
このうち、可撓性膜製堰は、図6に示すように、例えばゴム引布等の袋体1を河川床2に取り付け、前記袋体1の内部に空気又は水を注入したり、袋体1の内部の空気又は水を排出したりすることで、図6に示したように袋体1を膨張起立させたり、収縮倒伏させたりするものである(例えば、特許文献1参照。)。なお、図6中の7は袋体1の底部と下流側の内部に設けられたクッション材、8は河川床2における袋体1の底部にあたる部分に配置されたシールシートである。
【0003】
【特許文献1】
特公昭62−9686号公報(第1〜2頁、第1図)
【0004】
また、鋼製堰は、図7に示すように、例えば扉体3の下部に設置した支承ピン4を介して扉体3を河床2に取り付け、油圧シリンダ5のロッドの出退により支承ピン4を中心として前記扉体3を起立・倒伏させるものである。
【0005】
また、鋼製2段堰、例えば鋼製2段式ローラゲートは、図8に示すように、扉体を下段扉3aと上段扉3bの2段に分割して、河川の上下流に配置し、これら下段扉3aと上段扉3bを夫々の戸溝6a,6bに沿って昇降動させるものである。
【0006】
上述の堰のうち、可撓性膜製堰は、鋼製堰や鋼製2段堰に比べて構造が簡単で軽量であり、設置のための工期や施工の点で優れている。また、鋼製堰や鋼製2段堰は一定形状の扉体を起伏揺動させたり昇降させる関係で、水路の横断面形状を矩形にしなければならないが、可撓性膜製堰ではそのような必要がない。すなわち、可撓性膜製堰は、通常の河川のように、側壁が勾配をもち、横断面形状が台形の水路であっても、そのまま設置できるという利点を有している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、可撓性膜製堰では、その堰高を下げるために堰内圧を低圧にした場合には、水圧などの影響を受けて堰の形状が大きく変動する。特に、堰内圧を低下させるために、内部の流体を排出している途中などで、堰の頂部の一部がV字状に変形する座屈現象、いわゆるVノッチが発生する場合がある。
【0008】
このVノッチが発生すると、堰高が部分的に低下するため、堰高の制御が困難となるのみならず、Vノッチの発生箇所の下流側水路の底面を局所的に洗掘して、水路形状を変える等の問題が生じる。
【0009】
また、可撓性膜製堰では越流が急落下して騒音が大きくなるため、この騒音を抑制するために、堰の越流頂に水膜分離装置(スポイラー)を設置することが多いが、このスポイラーに枯れ草等の浮遊物が溜まり易く、景観を悪くする。
【0010】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、堰内圧を低下させた場合にもVノッチを発生させず、しかも、越流時の騒音も抑制できる可撓性膜製起伏堰を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明に係る可撓性膜製起伏堰は、下流側端部をヒンジにより流路床に取り付けた鋼製の越流シュートを、可撓性膜製の袋体の下流に起伏揺動が自在なように配置し、かつ、この越流シュートの上流側端部を前記袋体に至る長さとなすと共に、上流側端部の幅を流路幅と略同じとなし、前記越流シュートの上流側端部の裏面が前記袋体に自重で当接するように構成している。
【0012】
そして、このようにすることで、堰内圧を低下させ、内部の流体を排出している途中でも、Vノッチが発生せず、また、傾斜が緩やかな越流シュートによって、越流時の騒音を抑制できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に係る可撓性膜製起伏堰は、可撓性膜製の袋体を、流れを横断するように流路床に取り付け、袋体内部に流体を供給することで流路内で膨張起立、また、袋体内部から流体を排出することで流路内で収縮倒伏させて、水位の維持や流量調整を行う可撓性膜製起伏堰において、
下流側端部をヒンジにより流路床に取り付けた鋼製の越流シュートを、前記袋体の下流に起伏揺動が自在なように配置し、かつ、この越流シュートの上流側端部を前記袋体に至る長さとなすと共に、上流側端部の幅を流路幅と略同じとなし、前記越流シュートの上流側端部の裏面が前記袋体に自重で当接するように構成したものである。
【0014】
本発明に係る可撓性膜製起伏堰では、袋体の下流に起伏揺動が自在なように配置した鋼製の越流シュートの、流路と略同じ幅を有する上流側端部が、袋体の頂部を覆っているので、堰内圧を低下させ、袋体の内部の流体を排出している途中でも、Vノッチが発生しない。Vノッチの発生を抑制する点のみを考えると、越流シュートの上流側端部のみが流路と略同じ幅であれば良いが、越流時の騒音防止の観点からは、上流側端部のみならず下流側も流路と略同じ幅となすことが望ましい。
【0015】
また、本発明に係る可撓性膜製起伏堰では、鋼製の越流シュートは、その下流側端部をヒンジにより流路床に取り付け、袋体と越流シュートの上流側端部との当接は越流シュートの自重で当接させ、当接位置は固定ではないので、袋体を起立させた際の越流シュートの傾斜が緩やかになり、越流時の騒音を抑制できる。
【0016】
上記の本発明に係る可撓性膜製起伏堰において、前記越流シュートの長さを、前記袋体の膨張起立時、越流シュートの上流端が前記当接位置よりオーバーハングするような長さとした場合には、越流シュートが袋体を押さえ付ける力が大きくなるので、越流シュートが流れによって浮き上がって、袋体から離反するのを防止できる。
【0017】
そして、上記の何れかの本発明に係る可撓性膜製起伏堰において、前記越流シュートの上流側端部裏面に、ウェイトを配置した場合には、前記越流シュートの袋体からの離反をより確実に防止できる。この場合、袋体を疵付けないようにするため、ウェイトは鋭部が無いものを使用することは言うまでもない。
【0018】
また、上記の何れかの本発明に係る可撓性膜製起伏堰において、前記越流シュートの起立揺動域を制限する金物を設けた場合には、越流シュートが袋体から離反することがなく上記の作用効果が安定する。
【0019】
また、上記の何れかの本発明に係る可撓性膜製起伏堰において、前記越流シュートの上流側端部を、側面視、前記袋体側に中心を有する湾曲状となした場合には、越流シュートを超えた流れが乱れるのを防止することができる。
【0020】
また、上記の何れかの本発明に係る可撓性膜製起伏堰において、前記の越流シュートと袋体間に形成された空間と、前記越流シュートの下流側流路とを連通するドレン管を設けた場合には、前記空間の水圧上昇による越流シュートへの負荷を軽減できるのと共に、前記空間に溜まったごみを排出することもできる。
【0021】
【実施例】
以下、本発明に係る可撓性膜製起伏堰を図1〜図5に示す実施例に基づいて説明する。
図1〜図3は本発明に係る可撓性膜製起伏堰の概略説明図で、図1は全体図、図2は側面から見た越流時の図、図3は側面から見た全開時の図、図4及び図5は本発明に係る可撓性膜製起伏堰の詳細図で、図4は側面から見た越流時の図、図5(a)の紙面左半分は正面から見た図、右半分は背面から見た図、(b)は越流シュートの断面図である。
【0022】
図1〜図5において、11はゴム引布製の袋体であり、例えば河川12の流れを横断するように河川床12aに取り付けられている。そして、この袋体11の内部に例えば水を供給することで、図2や図4に示したように、袋体11を膨張させて河川12内で起立させ、河川12を流れる流水がこの袋体11を越流するようにする。その際、袋体11に供給する水量を調整することで、堰高を調整し、越流する流量を調整することもできる。一方、袋体11の内部から水を完全に排出した場合には、図3に示したように、河川12は全開状態になる。
【0023】
13は前記袋体11の下流側に配置される鋼製の越流シュートであり、図1〜図3に示したものは3枚で、また、図4及び図5に示したものは1枚で、河川の幅と略同じ幅を確保する様にしている。
【0024】
この越流シュート13は、起伏揺動が自在なように、その下流側の端部をヒンジ14により河川床12aに取り付けると共に、上流側端部が袋体11の上面に至るような長さを有し、上流側端部の裏面が前記袋体11に自重で当接するようになされている。
【0025】
この越流シュート13は、図1〜図5に示した例では、その上流側端部を、側面視、袋体11側に中心を有する湾曲状となし、越流シュート13を超えた流れが乱れないようにするものを示している。このうち、図1〜図3の例では、図2に示したように、袋体11の膨張起立時、越流シュート13の上流側端部の裏面全体が袋体11の外周面と当接している。
【0026】
一方、図4及び図5の例では、図4に示したように、袋体11の膨張起立時、越流シュート13の上流端が袋体11との当接位置よりオーバーハングするようにし、その裏面に、例えば半球状のウェイト15を配置している。このようにすれば、特に袋体11が膨張起立状態の際、越流シュート13が流れによって浮き上がり、袋体11から離反するのを確実に防止できる。
【0027】
16は袋体11が膨張起立した場合に、流れによって越流シュート13が袋体11から離反することがないように、越流シュート13の起立揺動域を制限する金物であり、前記ヒンジ14の近傍に、河川床12aと越流シュート13の裏面側を繋ぐように設けられている。
【0028】
17は一方端が例えば前記ヒンジ14と金物16の間の河川12に、また、他方端がヒンジ14より下流側の河川12に夫々が開口すべく河川床12aに埋設されたドレン管である。このドレン管17を設けた場合には、越流シュート13と袋体11との間に形成される空間18の水圧上昇によって越流シュート13に作用する負荷を軽減できるのと共に、前記空間18に溜まったごみを下流側に排出することもできる。
【0029】
なお、図1〜図3中の19は越流シュート13の下流側端部のヒンジ14取り付け部に配置された防塵ゴム、20は前記ヒンジ14と金物16の間の河川床12aに設置され、袋体11の内部から水を完全に排出した全開時に、越流シュート13が袋体11を押し付けて疵付けないように、越流シュート13の倒伏位置を規制するストッパーを示す。
【0030】
上記したような構成の本発明に係る可撓性膜製起伏堰では、袋体11の下流に起伏揺動が自在なように配置した鋼製の越流シュート13の上流側端部が、袋体11の頂部を覆っているので、堰内圧を低下させ、袋体11の内部の水を排出している途中でも、Vノッチが発生することがない。
【0031】
また、本発明に係る可撓性膜製起伏堰では、鋼製の越流シュート13は、その下流側をヒンジ14により河川床12aに取り付け、越流シュート13の上流側を袋体11にその自重で当接させているので、袋体11を起立させた際の越流シュート13の傾斜が緩やかになって、越流時の騒音が抑制される。
【0032】
本発明に係る可撓性膜製起伏堰は、上記の実施例に限るものではなく、各請求項に記載の発明の技術的範囲の範疇であれば、その実施形態の変更は自由である。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、鋼製の越流シュートと袋体との当接位置が固定ではなく、越流シュートの自重で袋体を流路の幅方向に均一に押え付けるようにすることで、袋体の内圧を低下させた場合にも、越流シュートの重みにより袋体の形状が平準化されてVノッチが抑制され、流量調整に適したものとなる。
【0034】
また、越流シュートの下流側端部をヒンジにより支持することで、越流シュートの傾斜が緩くなり、緩越流が可能になって、越流時の騒音が減少する。従って、越流頂にスポイラーを設置する必要がなくなり、枯れ草等の浮遊物がたまりにくくなって、景観が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る可撓性膜製起伏堰の概略説明図で、(a)は正面から見た全体図、(b)は平面から見た全体図である。
【図2】本発明に係る可撓性膜製起伏堰の概略説明図で、側面から見た越流時の図である。
【図3】本発明に係る可撓性膜製起伏堰の概略説明図で、側面から見た全開時の図である。
【図4】本発明に係る可撓性膜製起伏堰の詳細図で、側面から見た越流時の図である。
【図5】(a)は本発明に係る可撓性膜製起伏堰の詳細図で、紙面左半分は正面から見た図、右半分は背面から見た図、(b)は越流シュートの断面図である。
【図6】従来の可撓性膜製起伏堰の概略説明図である。
【図7】従来の鋼製起伏堰の概略説明図である。
【図8】従来の鋼製2段式ローラゲートの概略説明図である。
【符号の説明】
11 袋体
12 河川
12a 河川床
13 越流シュート
14 ヒンジ
15 ウェイト
16 金物
17 ドレン管
18 空間
Claims (6)
- 可撓性膜製の袋体を、流れを横断するように流路床に取り付け、袋体内部に流体を供給することで流路内で膨張起立、また、袋体内部から流体を排出することで流路内で収縮倒伏させて、水位の維持や流量調整を行う可撓性膜製起伏堰において、
下流側端部をヒンジにより流路床に取り付けた鋼製の越流シュートを、前記袋体の下流に起伏揺動が自在なように配置し、かつ、この越流シュートの上流側端部を前記袋体に至る長さとなすと共に、上流側端部の幅を流路幅と略同じとなし、前記越流シュートの上流側端部の裏面が前記袋体に自重で当接するように構成したことを特徴とする可撓性膜製起伏堰。 - 前記越流シュートは、前記袋体の膨張起立時、越流シュートの上流端が前記当接位置よりオーバーハングするような長さを有することを特徴とする請求項1記載の可撓性膜製起伏堰。
- 前記越流シュートの上流側端部裏面に、ウェイトを配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の可撓性膜製起伏堰。
- 前記越流シュートの起立揺動域を制限する金物を設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れか記載の可撓性膜製起伏堰。
- 前記越流シュートの上流側端部を、側面視、前記袋体側に中心を有する湾曲状となしたことを特徴とする請求項1〜4の何れか記載の可撓性膜製起伏堰。
- 前記の越流シュートと袋体間に形成された空間と、前記越流シュートの下流側流路とを連通するドレン管を設けたことを特徴とする請求項1〜5の何れか記載の可撓性膜製起伏堰。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003095950A JP2004300807A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | 可撓性膜製起伏堰 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003095950A JP2004300807A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | 可撓性膜製起伏堰 |
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JP2004300807A true JP2004300807A (ja) | 2004-10-28 |
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ID=33408153
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JP (1) | JP2004300807A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP6282370B1 (ja) * | 2017-05-18 | 2018-02-21 | 日本自動機工株式会社 | 大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法 |
-
2003
- 2003-03-31 JP JP2003095950A patent/JP2004300807A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP6282370B1 (ja) * | 2017-05-18 | 2018-02-21 | 日本自動機工株式会社 | 大型可撓性膜起伏堰本体の製造方法 |
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