JP2004300637A - 織機における開口装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】停留範囲を広くするのに好適な開口装置を提供する。
【解決手段】電動モータ23の出力軸231は、一方方向に回転し、出力軸231の一方方向の回転は、3次元クランク機構31によって往復回転運動に変換されて駆動歯車25に伝達される。駆動歯車25が往復回転すると、支軸27が駆動歯車25の回転方向とは逆方向に往復回転し、往復レバー28が支軸27を中心にして往復回転する。この往復回転は、伝達リンク29,30、ブラケット36,37、スライダ34,35及び掛け止めアーム38,39,40,41を介して第1の耳形成用綜絖11及び第2の耳形成用綜絖12に伝達される。
【選択図】 図3
【解決手段】電動モータ23の出力軸231は、一方方向に回転し、出力軸231の一方方向の回転は、3次元クランク機構31によって往復回転運動に変換されて駆動歯車25に伝達される。駆動歯車25が往復回転すると、支軸27が駆動歯車25の回転方向とは逆方向に往復回転し、往復レバー28が支軸27を中心にして往復回転する。この往復回転は、伝達リンク29,30、ブラケット36,37、スライダ34,35及び掛け止めアーム38,39,40,41を介して第1の耳形成用綜絖11及び第2の耳形成用綜絖12に伝達される。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、互いに逆方向へ往復動する第1の綜絖と第2の綜絖との動作に基づいて経糸の開口を形成する織機における開口装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
互いに逆方向へ往復動する第1の耳形成用綜絖と第2の耳形成用綜絖との動作に基づいて耳を形成する耳形成用の開口装置は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示の耳形成用の開口装置では、電動モータによって2次元クランク機構を駆動し、2次元クランク機構の駆動によって糸ガイド要素(綜絖)を往復直線運動させるようになっている。
【0003】
【特許文献1】
特表平10−503563号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
耳形成用の耳糸(経糸)の開口形成では、最大の開口量に近い開口量の耳糸開口状態を長く維持することが緯糸の緯入れにおいて重要である。特許文献1に開示の2次元クランク機構は、電動モータの往復の回転運動を往復直線運動に変換するが、この往復直線運動の死点側における綜絖の位置変化が小さい範囲(いわゆる停留範囲)は、それほど広くない。そのため、2次元クランク機構は、最大の開口量に近い開口量の耳糸開口状態を長く維持するには好適な機構とは言えない。
【0005】
本発明は、停留範囲を広くするのに好適な開口装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そのために本発明は、互いに逆方向へ往復動する第1の綜絖と第2の綜絖との動作に基づいて経糸の開口を形成する開口装置を対象とし、請求項1の発明では、一方方向の回転運動を往復の回転運動に変換する3次元クランク機構と、前記3次元クランク機構によって変換された往復の回転運動によって前記第1の綜絖と第2の綜絖とを互いに逆方向へ往復直線運動させる運動変換機構とを備えた開口装置を構成した。
【0007】
3次元クランク機構によって第1及び第2の綜絖を往復直線運動させる状態では、往復直線運動の死点側における第1及び第2の綜絖の位置変化が小さい範囲(いわゆる停留範囲)が2次元クランク機構に比べて広くなる。そのため、3次元クランク機構を用いた場合における最大の開口量に近い開口量の経糸開口状態は、2次元クランク機構を用いた場合よりも長く維持することができる。
【0008】
請求項2の発明では、請求項1において、前記3次元クランク機構の往復出力軸から駆動力を得て往復回転される往復レバーと、前記往復レバーに連結されて互いに逆方向へ往復動される一対の伝達リンクと、前記一対の伝達リンクと前記第1及び第2の綜絖とを1対1に連結する連結手段と、前記第1及び第2の綜絖を往復直線運動させるように案内する案内手段とを備えた前記運動変換機構を構成した。
【0009】
往復レバーが往復回転されると、一対の伝達リンクが互いに逆方向に往復動され、第1の綜絖と第2の綜絖とが互いに逆方向に往復直線運動する。
請求項3の発明では、請求項2において、前記一対の伝達リンクと前記往復レバーとの連結位置を前記往復レバーの回転中心軸線から等距離の位置に設定し、前記綜絖の往復動経路と平行に往復動するように隣り合わせた一対のスライダを備えた前記案内手段を構成し、前記一対のスライダに1対1に連結されて側方へ互いに逆方向へ延びる一対のブラケットを備えた前記連結手段を構成し、前記第1及び第2の綜絖を前記一対のスライダに1対1に連結し、前記一対の伝達リンクを前記一対のブラケットに1対1に連結した。
【0010】
往復レバーが往復回転されると、一対のブラケットが互いに逆方向に往復動され、一対のスライダが互いに逆方向に往復動される。これにより第1の綜絖と第2の綜絖とが互いに逆方向に往復直線運動する。一対のブラケットの存在は、ワープラインから上における経糸開口量と、ワープラインから下における経糸開口量との差を少なくすることに寄与する。
【0011】
請求項4の発明では、請求項1乃至請求項3のいずれか1項において、前記3次元クランク機構を電動モータによって駆動するようにした。
電動モータは、3次元クランク機構の駆動源として好適である。
【0012】
請求項5の発明では、請求項1乃至請求項4のいずれか1項において、開口装置は、互いに逆方向へ往復動する第1の耳形成用綜絖と第2の耳形成用綜絖との動作に基づいて耳を形成する耳形成用開口装置とした。
【0013】
本発明は、耳形成用開口装置への適用において好適である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を耳形成用開口装置に具体化した一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
【0015】
図1に示すように、第1の耳形成用綜絖11及び第2の耳形成用綜絖12は、往復駆動機構13によって互いに逆方向へ上下動される。第1の耳形成用綜絖11と第2の耳形成用綜絖12との移動経路は、上下に延びる互いに平行な往復動経路である。第1の耳形成用綜絖11に通された耳糸14と、第2の耳形成用綜絖12に通された耳糸15とは、緯入れされた緯糸(図示略)を挟んで耳Weを形成する。
【0016】
図2〜図4に基づいて往復駆動機構13を説明する。図2(a)に示すように、ボックス16内には基枠17が支軸18,19を介して回転可能に支持されている。支軸18,19の軸方向は、織機の前後方向(図1において右側が織機の前側、左側が織機の後側)である。
【0017】
図3(b)及び図4(b)に示すように、基枠17内には連結軸20が回転可能に支持されている。連結軸20の軸線は、支軸18,19の軸線と直交する。連結軸20にはT型の連結具21が結合固定されており、連結具21には別の連結軸22が結合固定されている。連結軸20の軸線と連結軸22の軸線とは、直交している。
【0018】
ボックス16の上壁161の上面には電動モータ23が装着されている。電動モータ23の出力軸231は、上壁161を貫通してボックス16内に突出されており、出力軸231の先端部にはアングル部材24が止着されている。アングル部材24には連結軸22が回転可能に連結されている。出力軸231が回転すると、連結軸22が出力軸231の軸線の周りを公転する。連結軸22が出力軸231の軸線の周りを公転すると、連結軸20が支軸18,19の軸線を中心にして揺動する。連結軸20の揺動は、基枠17を介して支軸18,19に伝えられ、支軸18,19が往復回転する。アングル部材24、連結軸22、連結具21、連結軸20、基枠17及び支軸18,19は、3次元クランク機構31を構成する。支軸19は、3次元クランク機構31の往復出力軸となる。
【0019】
図2(a)に示すように、支軸19は、ボックス16の前壁162からボックス16の外部に突出されており、支軸19の突出端部には駆動歯車25が止着されている。ボックス16の前壁162にはカバー26が止着されており、カバー26の前壁261とボックス16の前壁162とには支軸27が回転可能に支持されている。支軸27の大径部271には歯車部272が形成されており、歯車部272には駆動歯車25が噛合されている。駆動歯車25の歯数は、歯車部272の歯数よりも多くしてある。支軸19が往復回転すると、駆動歯車25が一体的に往復回転し、駆動歯車25の回転が歯車部272に伝えられる。これにより、支軸27は、支軸19の回転速度よりも大きい回転速度で駆動歯車25の回転方向とは逆方向に往復回転する。
【0020】
図3(a)及び図4(a)に示すように、支軸27の大径部271には往復レバー28が止着されている。往復レバー28の両端部には一対の伝達リンク29,30がピン291,301を介して連結されている。往復レバー28と伝達リンク29との連結位置(ピン291の位置)と、往復レバー28と伝達リンク30との連結位置(ピン301の位置)とは、往復レバー28の回転中心軸線281から等しい距離Xにある。支軸27が往復回転すると、往復レバー28が支軸27を中心にして往復回転し、伝達リンク29,30が互いに逆方向へ上下動する。
【0021】
図2(a)に示すように、カバー26の前壁261の内面には取り付け体32が止着されている。取り付け体32にはガイドレール33が垂下状態に止着されている。図2(b)に示すように、ガイドレール33には一対のガイド溝331,332が背中合わせに形成されている。ガイド溝331,332は、第1の耳形成用綜絖11と第2の耳形成用綜絖12との往復動経路と平行な方向に延びるように隣り合っている。ガイド溝331は、織機の前側に露出しており、ガイド溝332は、織機の後側に露出している。
【0022】
各ガイド溝331,332にはスライダ34,35が摺動可能に収容されている。つまり、スライダ34,35は、第1の耳形成用綜絖11と第2の耳形成用綜絖12との往復動経路と平行に往復動するように隣り合っている。スライダ34,35は、炭素繊維で強化された繊維強化プラスチック製である。スライダ34,35の中心線341,351は、往復レバー28の回転中心軸線281と交差するようにしてある。
【0023】
図3(a)及び図4(a)に示すように、スライダ34,35にはブラケット36,37が止着されている。一対のブラケット36,37は、ガイドレール33から側方へ延びる延出部361,371を有している。延出部361,371は、ガイドレール33(及びスライダ34,35)から側方へ互いに逆方向へ延びている。ブラケット36の延出部361の先端部には伝達リンク29の下端部がピン362を介して連結されており、ブラケット37の延出部371の先端部には伝達リンク30の下端部がピン372を介して連結されている。
【0024】
スライダ34の中心線341からブラケット36と伝達リンク29との連結位置(ピン362の位置)に至る距離Zは、スライダ35の中心線351からブラケット37と伝達リンク30との連結位置(ピン372の位置)に至る距離Zに等しくしてある。そして、距離Zは、往復レバー28の回転中心軸線281から往復レバー28と伝達リンク29,30との連結位置に至る距離Xよりも小さくしてある。
【0025】
往復レバー28が往復回転すると、伝達リンク29,30が互いに逆方向へ上下動し、ブラケット36,37が互いに逆方向へ上下動する。これによりスライダ34,35がガイド溝331,332内を互いに逆方向へ上下動する。3次元クランク機構31が図3(b)の配置状態にあるときには、往復レバー28は図3(a)の配置状態にある。3次元クランク機構31が図4(b)の配置状態にあるときには、往復レバー28は図4(a)の配置状態にある。往復レバー28が図3(a)及び図4(a)の配置状態にあるときには、往復レバー28と伝達リンク29,30との連結位置は、ブラケット36,37と伝達リンク29,30との連結位置よりもスライダ34,35の中心線341,351に近い。往復レバー28が水平な配置状態にあるときには、往復レバー28と伝達リンク29,30との連結位置は、ブラケット36,37と伝達リンク29,30との連結位置よりもスライダ34,35の中心線341,351から遠い。
【0026】
スライダ34には一対の掛け止めアーム38,39が止着されており、スライダ35には一対の掛け止めアーム40,41が止着されている。一対の掛け止めアーム38,39には第1の耳形成用綜絖11が掛け止め支持されており、一対の掛け止めアーム40,41には第2の耳形成用綜絖12が掛け止め支持されている。
【0027】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
電動モータ23の出力軸231は、一方方向に回転し、出力軸231の一方方向の回転は、3次元クランク機構31によって往復回転運動に変換されて駆動歯車25に伝達される。これにより、駆動歯車25が往復回転し、支軸27が駆動歯車25の回転方向とは逆方向に往復回転する。支軸27が往復回転すると、往復レバー28が支軸27を中心にして往復回転し、伝達リンク29,30が互いに逆方向へ上下動する。伝達リンク29,30が互いに逆方向へ上下動すると、ブラケット36,37が互いに逆方向へ上下動し、スライダ34,35がガイド溝331,332内を互いに逆方向へ上下動する。スライダ34,35がガイド溝331,332内を互いに逆方向へ上下動すると、第1の耳形成用綜絖11及び第2の耳形成用綜絖12は、互いに逆方向へ上下動する。これにより、第1の耳形成用綜絖11に通された耳糸14(図1参照)と、第2の耳形成用綜絖12に通された耳糸15(図1参照)とが緯入れされた緯糸(図示略)を挟んで耳We(図1参照)を形成する。
【0028】
ガイドレール33、スライダ34,35及び掛け止めアーム38〜41は、第1の耳形成用綜絖11と第2の耳形成用綜絖12とを往復直線運動させるように案内する案内手段を構成する。ブラケット36、スライダ34及び掛け止めアーム38,39は、伝達リンク29と第1の耳形成用綜絖11とを連結する第1の連結手段を構成する。ブラケット37、スライダ35及び掛け止めアーム40,41は、伝達リンク30と第2の耳形成用綜絖12とを連結する第2の連結手段を構成する。第1及び第2の連結手段は、一対の伝達リンク29,30と第1及び第2の耳形成用綜絖11,12とを1対1に連結する連結手段となる。往復レバー28、伝達リンク29,30、第1及び第2の連結手段は、3次元クランク機構31によって変換された往復の回転運動によって第1の耳形成用綜絖11と第2の耳形成用綜絖12とを互いに逆方向へ往復直線運動させる運動変換機構を構成する。
【0029】
本実施の形態では以下の効果が得られる。
(1−1)図5のグラフにおける曲線E1は、3次元クランク機構31を用い、かつ電動モータ23の回転数を一定とした場合の第1の耳形成用綜絖11の位置変化を示す。図5のグラフにおける横軸θは、織機回転角度を表し、縦軸は、高さ位置を表す。なお、図5において、横軸θとして記載したラインは、織機のワープラインの高さ位置に一致する。3次元クランク機構31を用いた場合の第2の耳形成用綜絖12の位置変化は、横軸θを境にして曲線E1を上下に反転した曲線に似た曲線E2で表される。
【0030】
図5のグラフにおける曲線D1は、従来の2次元クランク機構を用い、かつ電動モータの回転数を一定とした場合の第1の耳形成用綜絖11の位置変化を示す。2次元クランク機構を用いた場合の第2の耳形成用綜絖12の位置変化は、横軸θを境にして曲線D1を上下に反転した曲線に似た曲線D2で表される。
【0031】
図5の例は、1/1の耳組織を形成する例である。つまり、第1の耳形成用綜絖11と第2の耳形成用綜絖12とが織機1回転毎に上下入れ替わる。
曲線E1,E2と曲線D1,D2とを比較すると、3次元クランク機構31を用いた場合の耳形成用綜絖11,12の往復直線運動の死点側における位置変化が小さい範囲(いわゆる停留範囲)は、2次元クランク機構を用いた場合の停留範囲に比べて広くなる。図示の例では、耳形成用綜絖11,12の最上位位置H1と、最上位位置H1に近い高さ位置H2との間の高さ位置範囲に対応する織機回転角度の範囲を停留範囲としている。又、耳形成用綜絖11,12の最下位位置L1と、最下位位置L1に近い高さ位置L2との間の高さ位置範囲に対応する織機回転角度の範囲を停留範囲としている。つまり、図示の例では、3次元クランク機構31を用いた場合の耳形成用綜絖11,12の停留範囲は、(Te1+Te2)や(Te3+Te4)で表され、2次元クランク機構を用いた場合の耳形成用綜絖11,12の停留範囲は、(Td1+Td2)や(Td3+Td4)で表される。
【0032】
即ち、3次元クランク機構31を用いた場合における最大の開口量に近い開口量の耳糸(経糸)開口状態は、2次元クランク機構を用いた場合よりも長く維持することができる。
【0033】
(1−2)ブラケット36,37がない場合には、特許文献1に開示のように、伝達リンク29,30をスライダ34,35に直接連結することになる。そうすると、ワープラインから上における経糸開口量K1(図5に図示)と、ワープラインから下における経糸開口量K2(図5に図示)との差が大きくなる。経糸開口量K1,K2の差が大きいと、耳の形成に悪影響がでる。延出部361,371を有する一対のブラケット36,37の存在は、経糸開口量K1,K2の差を少なくして、良好な耳の形成に寄与する。特に、距離Zを距離Xよりも小さくした構成は、経糸開口量K1,K2の差を少なくする上で効果的である。
【0034】
(1−3)特許文献1に開示の装置では、電動モータを往復回転させて2次元クランク機構を駆動しているが、電動モータを短い周期で往復回転させようとすると、電動モータの回転速度を大きくすることが困難である。この困難性は、織機の高速化の妨げとなる。3次元クランク機構31を電動モータ23によって駆動する本実施の形態では、電動モータ23を一方方向にのみ連続して回転すればよく、電動モータ23の回転速度を大きくすることができる。電動モータ23の回転速度を大きくすることができる3次元クランク機構31の採用は、織機の高速化に有利である。
【0035】
(1−4)3次元クランク機構31を用いた本発明では、1/1の耳組織の形成の場合には電動モータ23を加減速させることなく耳形成用綜絖11,12の停留範囲を広くすることができるため、小さいトルクの電動モータ23の採用が可能である。これは、電動モータ23のコストの低減をもたらす。
【0036】
図6のグラフにおける曲線E3は、3次元クランク機構31を用いた場合の第1の耳形成用綜絖11の位置変化を示す。図6のグラフにおける横軸θは、織機回転角度を表し、縦軸は、高さ位置を表す。なお、図6において、横軸θとして記載したラインは、織機のワープラインの高さ位置に一致する。3次元クランク機構31を用いた場合の第2の耳形成用綜絖12の位置変化は、横軸θを境にして曲線E3を上下に反転した曲線に似た曲線E4で表される。
【0037】
図6のグラフにおける曲線D3は、従来の2次元クランク機構を用いた場合の第1の耳形成用綜絖11の位置変化を示す。2次元クランク機構を用いた場合の第2の耳形成用綜絖12の位置変化は、横軸θを境にして曲線D3を上下に反転した曲線に似た曲線D4で表される。
【0038】
図6の例は、2/2の耳組織を形成する例である。つまり、第1の耳形成用綜絖11と第2の耳形成用綜絖12とが織機2回転毎に上下入れ替わる。
2次元クランク機構を用いた場合の2/2耳組織の形成では、曲線D3,D4で示すように、電動モータを往復回転させようとすると電動モータの停止及び急激な加減速が必要である。3次元クランク機構31を用いた場合の2/2耳組織の形成では、曲線E3,E4で示すように、電動モータ23を往復回転させる必要がないために電動モータ23の急激な加減速が不要である。又、電動モータ23を停止及び起動させる場合にも、小さなトルクで済む。
【0039】
さらに、3次元クランク機構31の駆動源として電動モータ23を用いれば、1/3耳組織の形成のような複雑な組織の形成も電動モータ23を急激に加減速させることなく可能である。1/3耳組織の形成では、第1の耳形成用綜絖11と第2の耳形成用綜絖12とは、上下入れ替わった後に織機3回転後に上下入れ替わり、その後の織機1回転後に上下入れ替わる。
【0040】
即ち、織機駆動モータ(図示略)から独立して種々の耳組織の形成に対応可能な電動モータ23は、3次元クランク機構31の駆動源として好適である。
(1−5)支軸27の往復角β〔図3(a)及び図4(a)に図示〕が大きいほど、耳糸14,15によって形成される開口の最大開口量が大きくなる。これは、緯糸の緯入れに有利である。3次元クランク機構31では、往復回転する支軸18,19の往復角α〔図3(b)及び図4(b)に図示〕を大きくすることは難しい。駆動歯車25及ぶ歯車部272からなる増速機構は、3次元クランク機構31からの出力を増速して往復レバー28に伝える。つまり、駆動歯車25及び歯車部272からなる増速機構は、支軸27の往復角βを往復角αよりも大きくする。このような増速機構は、3次元クランク機構31の採用において最大開口量を大きくする上で有効である。
【0041】
本発明では以下のような実施の形態も可能である。
(1)図1〜図4の実施の形態において、ボックス16をオイルタンクとし、ボックス16内に潤滑油を入れて3次元クランク機構31を潤滑するようにしてもよい。この場合、電動モータ23がボックス16の上側にあるため、電動モータ23の内部に潤滑油が侵入しないようにボックス16を構成することが容易となる。
【0042】
(2)図1〜図4の実施の形態における伝達リンク29,30をスライダ34,35に直接連結してもよい。
(3)図1〜図4の実施の形態において、距離Zを距離Xと同等又は距離Xより大きくしてもよい。
【0043】
(4)図1〜図4の実施の形態において、支軸19に往復レバー28を直接連結してもよい。
(5)織布を織るための経糸(地経糸)用の開口装置に本発明を適用してもよい。
【0044】
前記した実施の形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
〔1〕請求項2乃至請求項5のいずれか1項において、前記運動変換機構は、前記3次元クランク機構からの出力を増速して前記往復レバーに伝える増速手段を備えている織機における開口装置。
【0045】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明は、停留範囲を広くするのに好適な開口装置を提供できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態を示す一部破断側面図。
【図2】(a)は、要部側断面図。(b)は、(a)のA−A線断面図。
【図3】(a)は、一部破断正面図。(b)は、要部断面図。
【図4】(a)は、一部破断正面図。(b)は、要部断面図。
【図5】綜絖の位置変化を示すグラフ。
【図6】綜絖の位置変化を示すグラフ。
【符号の説明】
11…第1の綜絖としての第1の耳形成用綜絖。12…第2の綜絖としての第2の耳形成用綜絖。14,15…経糸である耳糸。19…往復出力軸としての支軸。23…電動モータ。25…増速機構を構成する駆動歯車。272…増速機構を構成する歯車部。28…運動変換機構を構成する往復レバー。281…回転中心軸線。29,30…運動変換機構を構成する伝達リンク。31…3次元クランク機構。33…案内手段を構成するガイドレール。34,35…案内手段及び連結手段を構成するスライダ。36,37…連結手段を構成するブラケット。38,39,40,41…案内手段及び連結手段を構成する掛け止めアーム。We…耳。
【発明の属する技術分野】
本発明は、互いに逆方向へ往復動する第1の綜絖と第2の綜絖との動作に基づいて経糸の開口を形成する織機における開口装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
互いに逆方向へ往復動する第1の耳形成用綜絖と第2の耳形成用綜絖との動作に基づいて耳を形成する耳形成用の開口装置は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示の耳形成用の開口装置では、電動モータによって2次元クランク機構を駆動し、2次元クランク機構の駆動によって糸ガイド要素(綜絖)を往復直線運動させるようになっている。
【0003】
【特許文献1】
特表平10−503563号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
耳形成用の耳糸(経糸)の開口形成では、最大の開口量に近い開口量の耳糸開口状態を長く維持することが緯糸の緯入れにおいて重要である。特許文献1に開示の2次元クランク機構は、電動モータの往復の回転運動を往復直線運動に変換するが、この往復直線運動の死点側における綜絖の位置変化が小さい範囲(いわゆる停留範囲)は、それほど広くない。そのため、2次元クランク機構は、最大の開口量に近い開口量の耳糸開口状態を長く維持するには好適な機構とは言えない。
【0005】
本発明は、停留範囲を広くするのに好適な開口装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そのために本発明は、互いに逆方向へ往復動する第1の綜絖と第2の綜絖との動作に基づいて経糸の開口を形成する開口装置を対象とし、請求項1の発明では、一方方向の回転運動を往復の回転運動に変換する3次元クランク機構と、前記3次元クランク機構によって変換された往復の回転運動によって前記第1の綜絖と第2の綜絖とを互いに逆方向へ往復直線運動させる運動変換機構とを備えた開口装置を構成した。
【0007】
3次元クランク機構によって第1及び第2の綜絖を往復直線運動させる状態では、往復直線運動の死点側における第1及び第2の綜絖の位置変化が小さい範囲(いわゆる停留範囲)が2次元クランク機構に比べて広くなる。そのため、3次元クランク機構を用いた場合における最大の開口量に近い開口量の経糸開口状態は、2次元クランク機構を用いた場合よりも長く維持することができる。
【0008】
請求項2の発明では、請求項1において、前記3次元クランク機構の往復出力軸から駆動力を得て往復回転される往復レバーと、前記往復レバーに連結されて互いに逆方向へ往復動される一対の伝達リンクと、前記一対の伝達リンクと前記第1及び第2の綜絖とを1対1に連結する連結手段と、前記第1及び第2の綜絖を往復直線運動させるように案内する案内手段とを備えた前記運動変換機構を構成した。
【0009】
往復レバーが往復回転されると、一対の伝達リンクが互いに逆方向に往復動され、第1の綜絖と第2の綜絖とが互いに逆方向に往復直線運動する。
請求項3の発明では、請求項2において、前記一対の伝達リンクと前記往復レバーとの連結位置を前記往復レバーの回転中心軸線から等距離の位置に設定し、前記綜絖の往復動経路と平行に往復動するように隣り合わせた一対のスライダを備えた前記案内手段を構成し、前記一対のスライダに1対1に連結されて側方へ互いに逆方向へ延びる一対のブラケットを備えた前記連結手段を構成し、前記第1及び第2の綜絖を前記一対のスライダに1対1に連結し、前記一対の伝達リンクを前記一対のブラケットに1対1に連結した。
【0010】
往復レバーが往復回転されると、一対のブラケットが互いに逆方向に往復動され、一対のスライダが互いに逆方向に往復動される。これにより第1の綜絖と第2の綜絖とが互いに逆方向に往復直線運動する。一対のブラケットの存在は、ワープラインから上における経糸開口量と、ワープラインから下における経糸開口量との差を少なくすることに寄与する。
【0011】
請求項4の発明では、請求項1乃至請求項3のいずれか1項において、前記3次元クランク機構を電動モータによって駆動するようにした。
電動モータは、3次元クランク機構の駆動源として好適である。
【0012】
請求項5の発明では、請求項1乃至請求項4のいずれか1項において、開口装置は、互いに逆方向へ往復動する第1の耳形成用綜絖と第2の耳形成用綜絖との動作に基づいて耳を形成する耳形成用開口装置とした。
【0013】
本発明は、耳形成用開口装置への適用において好適である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を耳形成用開口装置に具体化した一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
【0015】
図1に示すように、第1の耳形成用綜絖11及び第2の耳形成用綜絖12は、往復駆動機構13によって互いに逆方向へ上下動される。第1の耳形成用綜絖11と第2の耳形成用綜絖12との移動経路は、上下に延びる互いに平行な往復動経路である。第1の耳形成用綜絖11に通された耳糸14と、第2の耳形成用綜絖12に通された耳糸15とは、緯入れされた緯糸(図示略)を挟んで耳Weを形成する。
【0016】
図2〜図4に基づいて往復駆動機構13を説明する。図2(a)に示すように、ボックス16内には基枠17が支軸18,19を介して回転可能に支持されている。支軸18,19の軸方向は、織機の前後方向(図1において右側が織機の前側、左側が織機の後側)である。
【0017】
図3(b)及び図4(b)に示すように、基枠17内には連結軸20が回転可能に支持されている。連結軸20の軸線は、支軸18,19の軸線と直交する。連結軸20にはT型の連結具21が結合固定されており、連結具21には別の連結軸22が結合固定されている。連結軸20の軸線と連結軸22の軸線とは、直交している。
【0018】
ボックス16の上壁161の上面には電動モータ23が装着されている。電動モータ23の出力軸231は、上壁161を貫通してボックス16内に突出されており、出力軸231の先端部にはアングル部材24が止着されている。アングル部材24には連結軸22が回転可能に連結されている。出力軸231が回転すると、連結軸22が出力軸231の軸線の周りを公転する。連結軸22が出力軸231の軸線の周りを公転すると、連結軸20が支軸18,19の軸線を中心にして揺動する。連結軸20の揺動は、基枠17を介して支軸18,19に伝えられ、支軸18,19が往復回転する。アングル部材24、連結軸22、連結具21、連結軸20、基枠17及び支軸18,19は、3次元クランク機構31を構成する。支軸19は、3次元クランク機構31の往復出力軸となる。
【0019】
図2(a)に示すように、支軸19は、ボックス16の前壁162からボックス16の外部に突出されており、支軸19の突出端部には駆動歯車25が止着されている。ボックス16の前壁162にはカバー26が止着されており、カバー26の前壁261とボックス16の前壁162とには支軸27が回転可能に支持されている。支軸27の大径部271には歯車部272が形成されており、歯車部272には駆動歯車25が噛合されている。駆動歯車25の歯数は、歯車部272の歯数よりも多くしてある。支軸19が往復回転すると、駆動歯車25が一体的に往復回転し、駆動歯車25の回転が歯車部272に伝えられる。これにより、支軸27は、支軸19の回転速度よりも大きい回転速度で駆動歯車25の回転方向とは逆方向に往復回転する。
【0020】
図3(a)及び図4(a)に示すように、支軸27の大径部271には往復レバー28が止着されている。往復レバー28の両端部には一対の伝達リンク29,30がピン291,301を介して連結されている。往復レバー28と伝達リンク29との連結位置(ピン291の位置)と、往復レバー28と伝達リンク30との連結位置(ピン301の位置)とは、往復レバー28の回転中心軸線281から等しい距離Xにある。支軸27が往復回転すると、往復レバー28が支軸27を中心にして往復回転し、伝達リンク29,30が互いに逆方向へ上下動する。
【0021】
図2(a)に示すように、カバー26の前壁261の内面には取り付け体32が止着されている。取り付け体32にはガイドレール33が垂下状態に止着されている。図2(b)に示すように、ガイドレール33には一対のガイド溝331,332が背中合わせに形成されている。ガイド溝331,332は、第1の耳形成用綜絖11と第2の耳形成用綜絖12との往復動経路と平行な方向に延びるように隣り合っている。ガイド溝331は、織機の前側に露出しており、ガイド溝332は、織機の後側に露出している。
【0022】
各ガイド溝331,332にはスライダ34,35が摺動可能に収容されている。つまり、スライダ34,35は、第1の耳形成用綜絖11と第2の耳形成用綜絖12との往復動経路と平行に往復動するように隣り合っている。スライダ34,35は、炭素繊維で強化された繊維強化プラスチック製である。スライダ34,35の中心線341,351は、往復レバー28の回転中心軸線281と交差するようにしてある。
【0023】
図3(a)及び図4(a)に示すように、スライダ34,35にはブラケット36,37が止着されている。一対のブラケット36,37は、ガイドレール33から側方へ延びる延出部361,371を有している。延出部361,371は、ガイドレール33(及びスライダ34,35)から側方へ互いに逆方向へ延びている。ブラケット36の延出部361の先端部には伝達リンク29の下端部がピン362を介して連結されており、ブラケット37の延出部371の先端部には伝達リンク30の下端部がピン372を介して連結されている。
【0024】
スライダ34の中心線341からブラケット36と伝達リンク29との連結位置(ピン362の位置)に至る距離Zは、スライダ35の中心線351からブラケット37と伝達リンク30との連結位置(ピン372の位置)に至る距離Zに等しくしてある。そして、距離Zは、往復レバー28の回転中心軸線281から往復レバー28と伝達リンク29,30との連結位置に至る距離Xよりも小さくしてある。
【0025】
往復レバー28が往復回転すると、伝達リンク29,30が互いに逆方向へ上下動し、ブラケット36,37が互いに逆方向へ上下動する。これによりスライダ34,35がガイド溝331,332内を互いに逆方向へ上下動する。3次元クランク機構31が図3(b)の配置状態にあるときには、往復レバー28は図3(a)の配置状態にある。3次元クランク機構31が図4(b)の配置状態にあるときには、往復レバー28は図4(a)の配置状態にある。往復レバー28が図3(a)及び図4(a)の配置状態にあるときには、往復レバー28と伝達リンク29,30との連結位置は、ブラケット36,37と伝達リンク29,30との連結位置よりもスライダ34,35の中心線341,351に近い。往復レバー28が水平な配置状態にあるときには、往復レバー28と伝達リンク29,30との連結位置は、ブラケット36,37と伝達リンク29,30との連結位置よりもスライダ34,35の中心線341,351から遠い。
【0026】
スライダ34には一対の掛け止めアーム38,39が止着されており、スライダ35には一対の掛け止めアーム40,41が止着されている。一対の掛け止めアーム38,39には第1の耳形成用綜絖11が掛け止め支持されており、一対の掛け止めアーム40,41には第2の耳形成用綜絖12が掛け止め支持されている。
【0027】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
電動モータ23の出力軸231は、一方方向に回転し、出力軸231の一方方向の回転は、3次元クランク機構31によって往復回転運動に変換されて駆動歯車25に伝達される。これにより、駆動歯車25が往復回転し、支軸27が駆動歯車25の回転方向とは逆方向に往復回転する。支軸27が往復回転すると、往復レバー28が支軸27を中心にして往復回転し、伝達リンク29,30が互いに逆方向へ上下動する。伝達リンク29,30が互いに逆方向へ上下動すると、ブラケット36,37が互いに逆方向へ上下動し、スライダ34,35がガイド溝331,332内を互いに逆方向へ上下動する。スライダ34,35がガイド溝331,332内を互いに逆方向へ上下動すると、第1の耳形成用綜絖11及び第2の耳形成用綜絖12は、互いに逆方向へ上下動する。これにより、第1の耳形成用綜絖11に通された耳糸14(図1参照)と、第2の耳形成用綜絖12に通された耳糸15(図1参照)とが緯入れされた緯糸(図示略)を挟んで耳We(図1参照)を形成する。
【0028】
ガイドレール33、スライダ34,35及び掛け止めアーム38〜41は、第1の耳形成用綜絖11と第2の耳形成用綜絖12とを往復直線運動させるように案内する案内手段を構成する。ブラケット36、スライダ34及び掛け止めアーム38,39は、伝達リンク29と第1の耳形成用綜絖11とを連結する第1の連結手段を構成する。ブラケット37、スライダ35及び掛け止めアーム40,41は、伝達リンク30と第2の耳形成用綜絖12とを連結する第2の連結手段を構成する。第1及び第2の連結手段は、一対の伝達リンク29,30と第1及び第2の耳形成用綜絖11,12とを1対1に連結する連結手段となる。往復レバー28、伝達リンク29,30、第1及び第2の連結手段は、3次元クランク機構31によって変換された往復の回転運動によって第1の耳形成用綜絖11と第2の耳形成用綜絖12とを互いに逆方向へ往復直線運動させる運動変換機構を構成する。
【0029】
本実施の形態では以下の効果が得られる。
(1−1)図5のグラフにおける曲線E1は、3次元クランク機構31を用い、かつ電動モータ23の回転数を一定とした場合の第1の耳形成用綜絖11の位置変化を示す。図5のグラフにおける横軸θは、織機回転角度を表し、縦軸は、高さ位置を表す。なお、図5において、横軸θとして記載したラインは、織機のワープラインの高さ位置に一致する。3次元クランク機構31を用いた場合の第2の耳形成用綜絖12の位置変化は、横軸θを境にして曲線E1を上下に反転した曲線に似た曲線E2で表される。
【0030】
図5のグラフにおける曲線D1は、従来の2次元クランク機構を用い、かつ電動モータの回転数を一定とした場合の第1の耳形成用綜絖11の位置変化を示す。2次元クランク機構を用いた場合の第2の耳形成用綜絖12の位置変化は、横軸θを境にして曲線D1を上下に反転した曲線に似た曲線D2で表される。
【0031】
図5の例は、1/1の耳組織を形成する例である。つまり、第1の耳形成用綜絖11と第2の耳形成用綜絖12とが織機1回転毎に上下入れ替わる。
曲線E1,E2と曲線D1,D2とを比較すると、3次元クランク機構31を用いた場合の耳形成用綜絖11,12の往復直線運動の死点側における位置変化が小さい範囲(いわゆる停留範囲)は、2次元クランク機構を用いた場合の停留範囲に比べて広くなる。図示の例では、耳形成用綜絖11,12の最上位位置H1と、最上位位置H1に近い高さ位置H2との間の高さ位置範囲に対応する織機回転角度の範囲を停留範囲としている。又、耳形成用綜絖11,12の最下位位置L1と、最下位位置L1に近い高さ位置L2との間の高さ位置範囲に対応する織機回転角度の範囲を停留範囲としている。つまり、図示の例では、3次元クランク機構31を用いた場合の耳形成用綜絖11,12の停留範囲は、(Te1+Te2)や(Te3+Te4)で表され、2次元クランク機構を用いた場合の耳形成用綜絖11,12の停留範囲は、(Td1+Td2)や(Td3+Td4)で表される。
【0032】
即ち、3次元クランク機構31を用いた場合における最大の開口量に近い開口量の耳糸(経糸)開口状態は、2次元クランク機構を用いた場合よりも長く維持することができる。
【0033】
(1−2)ブラケット36,37がない場合には、特許文献1に開示のように、伝達リンク29,30をスライダ34,35に直接連結することになる。そうすると、ワープラインから上における経糸開口量K1(図5に図示)と、ワープラインから下における経糸開口量K2(図5に図示)との差が大きくなる。経糸開口量K1,K2の差が大きいと、耳の形成に悪影響がでる。延出部361,371を有する一対のブラケット36,37の存在は、経糸開口量K1,K2の差を少なくして、良好な耳の形成に寄与する。特に、距離Zを距離Xよりも小さくした構成は、経糸開口量K1,K2の差を少なくする上で効果的である。
【0034】
(1−3)特許文献1に開示の装置では、電動モータを往復回転させて2次元クランク機構を駆動しているが、電動モータを短い周期で往復回転させようとすると、電動モータの回転速度を大きくすることが困難である。この困難性は、織機の高速化の妨げとなる。3次元クランク機構31を電動モータ23によって駆動する本実施の形態では、電動モータ23を一方方向にのみ連続して回転すればよく、電動モータ23の回転速度を大きくすることができる。電動モータ23の回転速度を大きくすることができる3次元クランク機構31の採用は、織機の高速化に有利である。
【0035】
(1−4)3次元クランク機構31を用いた本発明では、1/1の耳組織の形成の場合には電動モータ23を加減速させることなく耳形成用綜絖11,12の停留範囲を広くすることができるため、小さいトルクの電動モータ23の採用が可能である。これは、電動モータ23のコストの低減をもたらす。
【0036】
図6のグラフにおける曲線E3は、3次元クランク機構31を用いた場合の第1の耳形成用綜絖11の位置変化を示す。図6のグラフにおける横軸θは、織機回転角度を表し、縦軸は、高さ位置を表す。なお、図6において、横軸θとして記載したラインは、織機のワープラインの高さ位置に一致する。3次元クランク機構31を用いた場合の第2の耳形成用綜絖12の位置変化は、横軸θを境にして曲線E3を上下に反転した曲線に似た曲線E4で表される。
【0037】
図6のグラフにおける曲線D3は、従来の2次元クランク機構を用いた場合の第1の耳形成用綜絖11の位置変化を示す。2次元クランク機構を用いた場合の第2の耳形成用綜絖12の位置変化は、横軸θを境にして曲線D3を上下に反転した曲線に似た曲線D4で表される。
【0038】
図6の例は、2/2の耳組織を形成する例である。つまり、第1の耳形成用綜絖11と第2の耳形成用綜絖12とが織機2回転毎に上下入れ替わる。
2次元クランク機構を用いた場合の2/2耳組織の形成では、曲線D3,D4で示すように、電動モータを往復回転させようとすると電動モータの停止及び急激な加減速が必要である。3次元クランク機構31を用いた場合の2/2耳組織の形成では、曲線E3,E4で示すように、電動モータ23を往復回転させる必要がないために電動モータ23の急激な加減速が不要である。又、電動モータ23を停止及び起動させる場合にも、小さなトルクで済む。
【0039】
さらに、3次元クランク機構31の駆動源として電動モータ23を用いれば、1/3耳組織の形成のような複雑な組織の形成も電動モータ23を急激に加減速させることなく可能である。1/3耳組織の形成では、第1の耳形成用綜絖11と第2の耳形成用綜絖12とは、上下入れ替わった後に織機3回転後に上下入れ替わり、その後の織機1回転後に上下入れ替わる。
【0040】
即ち、織機駆動モータ(図示略)から独立して種々の耳組織の形成に対応可能な電動モータ23は、3次元クランク機構31の駆動源として好適である。
(1−5)支軸27の往復角β〔図3(a)及び図4(a)に図示〕が大きいほど、耳糸14,15によって形成される開口の最大開口量が大きくなる。これは、緯糸の緯入れに有利である。3次元クランク機構31では、往復回転する支軸18,19の往復角α〔図3(b)及び図4(b)に図示〕を大きくすることは難しい。駆動歯車25及ぶ歯車部272からなる増速機構は、3次元クランク機構31からの出力を増速して往復レバー28に伝える。つまり、駆動歯車25及び歯車部272からなる増速機構は、支軸27の往復角βを往復角αよりも大きくする。このような増速機構は、3次元クランク機構31の採用において最大開口量を大きくする上で有効である。
【0041】
本発明では以下のような実施の形態も可能である。
(1)図1〜図4の実施の形態において、ボックス16をオイルタンクとし、ボックス16内に潤滑油を入れて3次元クランク機構31を潤滑するようにしてもよい。この場合、電動モータ23がボックス16の上側にあるため、電動モータ23の内部に潤滑油が侵入しないようにボックス16を構成することが容易となる。
【0042】
(2)図1〜図4の実施の形態における伝達リンク29,30をスライダ34,35に直接連結してもよい。
(3)図1〜図4の実施の形態において、距離Zを距離Xと同等又は距離Xより大きくしてもよい。
【0043】
(4)図1〜図4の実施の形態において、支軸19に往復レバー28を直接連結してもよい。
(5)織布を織るための経糸(地経糸)用の開口装置に本発明を適用してもよい。
【0044】
前記した実施の形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
〔1〕請求項2乃至請求項5のいずれか1項において、前記運動変換機構は、前記3次元クランク機構からの出力を増速して前記往復レバーに伝える増速手段を備えている織機における開口装置。
【0045】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明は、停留範囲を広くするのに好適な開口装置を提供できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態を示す一部破断側面図。
【図2】(a)は、要部側断面図。(b)は、(a)のA−A線断面図。
【図3】(a)は、一部破断正面図。(b)は、要部断面図。
【図4】(a)は、一部破断正面図。(b)は、要部断面図。
【図5】綜絖の位置変化を示すグラフ。
【図6】綜絖の位置変化を示すグラフ。
【符号の説明】
11…第1の綜絖としての第1の耳形成用綜絖。12…第2の綜絖としての第2の耳形成用綜絖。14,15…経糸である耳糸。19…往復出力軸としての支軸。23…電動モータ。25…増速機構を構成する駆動歯車。272…増速機構を構成する歯車部。28…運動変換機構を構成する往復レバー。281…回転中心軸線。29,30…運動変換機構を構成する伝達リンク。31…3次元クランク機構。33…案内手段を構成するガイドレール。34,35…案内手段及び連結手段を構成するスライダ。36,37…連結手段を構成するブラケット。38,39,40,41…案内手段及び連結手段を構成する掛け止めアーム。We…耳。
Claims (5)
- 互いに逆方向へ往復動する第1の綜絖と第2の綜絖との動作に基づいて経糸の開口を形成する織機における開口装置において、
一方方向の回転運動を往復の回転運動に変換する3次元クランク機構と、
前記3次元クランク機構によって変換された往復の回転運動によって前記第1の綜絖と第2の綜絖とを互いに逆方向へ往復直線運動させる運動変換機構とを備えた織機における開口装置。 - 前記運動変換機構は、前記3次元クランク機構の往復出力軸から駆動力を得て往復回転される往復レバーと、前記往復レバーに連結されて互いに逆方向へ往復動される一対の伝達リンクと、前記一対の伝達リンクと前記第1及び第2の綜絖とを1対1に連結する連結手段と、前記第1及び第2の綜絖を往復直線運動させるように案内する案内手段とを備えている請求項1に記載の織機における開口装置。
- 前記一対の伝達リンクと前記往復レバーとの連結位置は、前記往復レバーの回転中心軸線から等距離にあり、前記案内手段は、前記綜絖の往復動経路と平行に往復動するように隣り合わせた一対のスライダを備え、前記連結手段は、前記一対のスライダに1対1に連結されて側方へ互いに逆方向へ延びる一対のブラケットを備え、前記第1及び第2の綜絖を前記一対のスライダに1対1に連結し、前記一対の伝達リンクを前記一対のブラケットに1対1に連結した請求項2に記載の織機における開口装置。
- 前記3次元クランク機構を電動モータによって駆動するようにした請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の織機における開口装置。
- 開口装置は、互いに逆方向へ往復動する第1の耳形成用綜絖と第2の耳形成用綜絖との動作に基づいて耳を形成する耳形成用開口装置である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の織機における開口装置。
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