JP2004300573A - 常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板およびその製造方法 - Google Patents

常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄冷延鋼板を提供する。
【解決手段】 質量%で、C:0.0001〜0.2%、N:0.0001〜0.2%、C+N:0.002〜0.3%、Mn:0.01〜3%、Si:0.001〜2%、P:0.001〜0.1%、S:0.05%以下、Al:0.0001〜0.1%、を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる薄鋼板に、1×109〜2×1010cm-2の密度の転位を導入した後、該薄鋼板を時効し、続いて、該薄鋼に、新たに1×109〜2×1010cm-2の密度の転位を導入することを特徴とする常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板の製造方法である。
【選択図】 図2

Description

本発明は、常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板に関する。
自動車の車体軽量化のため、使用する鋼板板厚の減少が要望され、自動車用鋼板の高強度化が検討されてきた。しかし、鋼板の高強度化は、鋼板のプレス成形性を劣化させる傾向があり、プレス成形性に優れた高張力鋼板が要望されていた。
このようなプレス成形性と高強度化を両立させた鋼板として、塗装焼付硬化型自動車用鋼板が開発されている。この鋼板は、プレス成形後に、通常150〜200℃の高温保持を含む塗装焼付処理を施すことにより、降伏応力が上昇する鋼板である。
鋼中に、固溶Cまたは固溶Nを存在させることによって、塗装焼付処理時の高温加熱で、CまたはNがプレス成形時に導入された転位に固着して転位の移動を妨げ、降伏応力が上昇する。この降伏応力の上昇分が、焼付硬化量(BH量)であり、BH量は一般に、固溶C量または固溶N量を増やすことによって増加する。
このような硬化機構の問題点は次の点にある。
BH量を増加するために固溶C量または固溶N量を増加させると、成形前に既に一部の転位がCまたはNにより固着され(常温時効)、プレス成形時に降伏点伸びによるストレッチャーストレインと呼ばれる波状の表面欠陥を生じ、製品特性を著しく劣化させる。
この常温時効の問題を解決し、耐時効性に優れた高い塗装焼付硬化性を有する薄鋼板を実現することは長年の課題であった。
この課題に対し、特許文献1および特許文献2には、NbおよびAl添加量を制御し、焼付硬化性および耐時効性を実現する方法が開示されている。
この方法は、固溶N量、固溶C量を適量にして耐時効性を得ようとする方法であるが、BH量を増加するために固溶C量を増やすと時効劣化が生じることになり、高い焼付硬化特性を有する鋼を製造することはできない。
また、特許文献3には、Mo、Cr、W等を規定量添加することで、常温時効性と焼付硬化性を同時に得る方法が開示されている。しかし、この方法では、その機構が不明であるため、十分な材料設計指針がなく、更なる高い焼付硬化性や遅時効性の課題に十分対応できないのが現状である。また、このような特定の元素を添加する方法では、コスト面で問題がある。
また、さらに、特許文献4には、成分および製造条件を規定し、粒界偏析C量を増加させることで、耐時効性に優れた塗装焼付硬化型鋼板を製造する方法が開示されている。
しかし、実際に粒界に偏析するC量は、粒内のC量に比べればわずかであり、粒界からの拡散距離も粒サイズに比べ小さいため、粒内のすべての転位を固着することはできず、高いBH量は得られない。
特開平5−331553号公報 特開平7−300623号公報 特開平5−25549号公報 特開平11−229085号公報
本発明は、このような現状に鑑み、常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、次の新しい知見を得た。
薄鋼板に転位を導入し時効させると、格子間原子のCまたはNが拡散し、導入した転位周囲にコットレル雰囲気を形成し転位を固着し鋼が硬くなる。
この鋼にさらに、調質圧延によって新たな転位を導入すると、コットレル雰囲気を形成したCまたはNは新たな転位に拡散しにくくなるため、常温での時効劣化が抑制されることを見出した。
そして、本発明者らは、また、さらに加工を行うことにより、鋼中にさらに多量の転位を導入し、塗装焼付処理によって鋼板の温度を上昇させると、弱い転位歪場にトラップされた一部のCまたはNは、歪場から脱離し、加工により導入された転位に拡散することを見出した。
拡散したCまたはNは、新たな転位にコットレル雰囲気を形成し転位を固着し、さらに、古い転位も固着されているため、鋼は強化されることになる。
従って、鋼中の転位は、常温ではCまたはNの拡散を抑制するトラップサイトとして利用でき、この機構を活用することによって、常温での耐時効性と高温での焼付硬化性が同時に実現することができる。
すなわち、本発明は、上述のように、従来法とは全く異なる新しい発想に基づき、鋼中の転位をCまたはNのトラップサイトとして利用するものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.0001〜0.2%、N:0.0001〜0.2%、C+N:0.002〜0.3%、Mn:0.01〜3%、Si:0.001〜2%、P:0.001〜0.1%、S:0.05%以下、Al:0.0001〜0.1%、を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる薄鋼板に、1×109〜2×1010cm-2の密度の転位を導入した後、該薄鋼板を時効し、続いて、該薄鋼板に、新たに1×109〜2×1010cm-2の密度の転位を導入することを特徴とする常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板の製造方法。
(2)質量%で、C:0.0001〜0.2%、N:0.0001〜0.2%、C+N:0.002〜0.3%、Mn:0.01〜3%、Si:0.001〜2%、P:0.001〜0.1%、S:0.05%以下、Al:0.0001〜0.1%、を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる薄鋼板に、歪量0.2〜2.0%の調質圧延を行った後、該薄鋼板を時効し、続いて、該薄鋼板に歪量0.2〜2.0%の調質圧延を行うことを特徴とする常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板の製造方法。
(3)前記時効が、100℃以上300℃未満の温度範囲で、1分以上2時間以下行うことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板の製造方法。
(4)前記時効が、50℃以上100℃未満の温度範囲で、1時間以上10日以下行うことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板の製造方法。
(5)前記時効が、10℃以上50℃未満の温度範囲で、10日以上180日以下行うことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板の製造方法。
(6)前記薄鋼板が、さらに、質量%で、Nb、Tiのいずれか1種または2種を合計で0.001〜0.1%含有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板の製造方法。
(7)質量%で、C:0.0001〜0.2%、N:0.0001〜0.2%、C+N:0.002〜0.3%、Mn:0.01〜3%、Si:0.001〜2%、P:0.001〜0.1%、S:0.05%以下、Al:0.0001〜0.1%、を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる薄鋼板で、CまたはNによって固着された1×109〜2×1010cm-2の密度の転位と、固着されていない1×109〜2×1010cm-2の密度の転位を有することを特徴とする常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板。
(8)前記薄鋼板が、さらに、質量%で、Nb、Tiのいずれか1種または2種を合計で0.001〜0.1%含有することを特徴とする前記(7)に記載の常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板。
本発明により、常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板を提供することができる。
本発明に係る薄鋼板は、熱延鋼板、冷延鋼板のどちらでもかまわない。さらに、熱間圧延工程、冷間圧延工程は特に限定されるものではない。JISの定義では、厚さ3mm未満の鋼板を薄鋼板と称する。
本発明に係る薄鋼板の含有成分の限定理由を以下に示す。なお、含有量の%は、質量%を表す。
CおよびNは、焼付硬化性を発現させる上で重要な元素であり、塗装焼付硬化性を発現させるためには、C+N量として0.002%以上含有することが必須である。しかし、C+N量が多すぎると、固溶量が増し、常温時効性を確保することが困難になるため、上限を0.3%とした。
CおよびNの下限値を、それぞれ0.0001%とした理由は、これら下限値未満への低減は、製鋼での多大なコストアップになるばかりでなく、高い焼付硬化性を得られないためであり、さらに、炭素物、窒化物からなる超微細析出物を高密度で作ることができなくなるためである。
一方、CおよびNの上限値を、それぞれ0.2%とした理由は、これら上限値を超えると、強度が高くなり過ぎ加工性を損なうためである。
本発明に係る薄鋼板は、上記元素に加えて、Mn、Si、P、S、Alを含有する。
Mn、Si、Pは、薄鋼板として必要とされる強度を得るために必須の成分である。Mn、Si、Pの下限値は、Mnが0.01%、Siが0.001%、Pが0.001%であり、これら下限値未満であると薄鋼板の強度が不足する。
Mn、Si、Pの上限値は、Mnが3%、Siが2%、Pが0.1%であり、これら上限値を超えると、薄鋼板の強度が高くなりすぎ加工性を損なう。
Sは、0.05%を超えて含有すると、熱間圧延時に赤熱脆化を起こし表面で割れる、いわゆる熱間脆化を起こすことがあるため、0.05%以下とする必要がある。
Alは、脱酸剤として有効な元素であり、脱酸剤として機能するためには0.0001%以上が必要である。上限値を0.1%とした理由は、それを超えて添加すると、薄鋼板の強度が高くなり加工性を損なうためである。
また、さらに、本発明に係る薄鋼板は、上記元素に加えて必要に応じて、Ti、Nbを含有する。
NbとTiは、加工性の向上や高強度化、さらには組織の微細化と均一化に有効な元素であるので、必要に応じていずれか1種または2種を合計で0.001〜0.1%の範囲で添加してもよい。
しかし、その添加量が0.001%未満では、添加効果が発現せず、一方、0.1%を超えて添加すると、炭窒化物として析出し固溶Cおよび固溶Nの確保が困難になったり、再結晶温度が上昇し材質劣化の原因となったりする。より好ましい範囲は、0.005〜0.02%である。
次に、本発明の薄鋼板の転位密度について述べる。
本発明の薄鋼板は、上述のように、鋼中の転位をCまたはNのトラップサイトとして利用することにより、優れた常温遅時効性と焼付硬化性を発現させたものである。本発明の薄鋼板は、鋼中の転位をCまたはNのトラップサイトとして利用するため、転位密度が重要となる。
本発明の薄鋼板は、焼鈍後に一度調質圧延を行い転位を導入した後に鋼を時効させ、その後、再度、二度目の調質圧延を行って転位を導入するものである。
一般に、焼鈍後に調質圧延によって転位を導入する理由は、鋼中に可動転位を分散させることで加工性を向上するためであり、通常は調質圧延を一度行うだけである。
また、調質圧延の方法としては、一般にはスキンパス圧延を用いるが、ショット投射、レーザー照射等の方法でもかまわない。
本発明の薄鋼板の時効前の転位(CまたはNをトラップさせる転位)の密度は、1×109〜2×1010cm-2が好ましい。時効前の転位密度が1×109cm-2未満の場合は、CまたはNのトラップサイトが不足することになり、鋼中に固溶したトラップされていないCおよびNによって、時効劣化が引き起こされることになる。
時効前の転位密度が2×1010cm-2超の場合は、鋼中のすべてのCまたはNが転位に強くトラップし、転位から離脱することができなくなり、薄鋼板は耐時効性に優れるものの焼付硬化性が確保できなくなる。さらに、延性減少やr値の低下が顕著になり、加工性劣化の原因となる。
本発明の薄鋼板に時効後に導入する転位は加工性を上げるための可動転位であり、転位密度は1×109〜2×1010cm-2とすることが好ましい。
時効後の転位密度が1×109cm-2未満では、可動転位密度としては不十分であり加工時にストレッチャーストレインが発生する場合もある。
時効後の転位密度が2×1010cm-2超の場合は、加工硬化によって十分な加工性が得られなくなったり、延性が減少する場合がある。
図1に、スキンパス圧延による歪量と転位密度との関係を示す。なお、転位密度の算出方法については後述する。歪量と転位密度はほぼ一様に増加しており、4%程度までは鋼中にほぼ均一に分布していた。それ以上の歪量では転位セルの形成が観察された。
この図から示されるように、転位密度1×109cm-2の転位を導入するためには0.2%の調質圧延量が必要であり、転位密度2×1010cm-2の転位を導入するためには2%の調質圧延量が必要であることがわかる。
従って、転位密度1×109〜2×1010cm-2の転位を導入するためには、0.2〜2%の調質圧延量が必要である。
次に、本発明の薄鋼板の製造方法について述べる。
本発明の薄鋼板は、上述のように、一度調質圧延を行い転位を導入した後に鋼を時効させ、その後、再度、二度目の調質圧延を行って転位を導入する。
本発明では、薄鋼板に一度転位を導入した後に鋼を時効させ、CおよびNを転位にトラップさせる必要がある。
一般に、時効温度が高いほどCおよびNの拡散速度が大きいため、時効時間は短くしてもよい。しかし、300℃を超える温度で時効させると、不要な炭化物または窒化物が鋼中に生成し、焼付硬化性に寄与しなくなる。
また、時効温度が10℃未満と低い場合はCおよびNの拡散速度が著しく低下するため、十分時効させるためには非常に長い時間を必要とし、生産性の妨げとなる。
時効時間が足りない場合は、転位に十分な量のCおよびNがトラップされないため、耐時効性に劣ることになる。
従って、時効条件としては、生産性の観点から100℃以上300℃未満で1分以上2時間以下が最も好ましく、50℃以上100℃未満で60分以上10日以下が、次に好ましく、10℃以上50℃未満で10日以上180日以下が、その次に好ましい。
100℃以上300℃未満で2時間を超える時効、50℃以上100℃未満で10日を超える時効、および、10℃以上50℃未満で180日を超える時効は、転位に炭窒化物等の析出が生じ、焼付硬化性や常温遅時効性の低下が大きくなるので好ましくない。
前記時効時間は、薄板鋼の成分や時効温度によって最適値が異なるが、一般には、完全時効する前の時効時間とするのが好ましい。また、薄鋼板の時効の方法は限定しないが、例えば、箱型焼鈍(BAF)を用いてもよい。
本発明の薄鋼板の製造方法は、薄鋼板中の転位密度とCおよびNの存在状態を限定するものであり、熱間圧延、巻き取り、冷間圧延条件等を限定するものではないが、固溶C量または固溶N量は焼付硬化性に寄与するため、時効前の調質圧延前の鋼板に適量残す必要がある。
固溶C量と固溶N量の合計量としては、0.001〜0.005%とすることが好ましい。この合計量が0.001%未満では、十分な焼付硬化性が得られず、0.005%超では十分な耐時効性が得られなくなる。より好ましくは、0.0015〜0.0035%である。
このような製造条件として、例えば、好ましい熱間圧延の加熱温度は1100〜1200℃、仕上温度は850〜950℃、巻き取り温度は400〜700℃である。また、冷間圧延率は30〜90%である。
また、焼鈍条件は鋼中の成分等によって異なるが、780℃以上Ac3温度以下で0.2〜3分保持した後、10〜100℃/sの冷却速度で冷却する。必要に応じて、200〜400℃で1〜10分の過時効処理を施してもよい。また、溶融亜鉛めっきやそれ以外のめっきを施してもよい。
次に、本発明の薄鋼板の耐時効性と焼付硬化性の評価方法、および、鋼中の転位密度の計測方法について述べる。
常温時効性は、薄鋼板を40℃の雰囲気に70日保持し引張試験を行い、この時の降伏点伸び(YP−El)を測定することによって調べることができる。
本発明法では、代わりに100℃×1時間の人工加速試験によって耐時効性を評価し、YP−El値が0.4%以下を良好とする。
また、焼付硬化性の測定は、薄鋼板を2%引張り170℃にて20分保持した後の上降伏応力(YP)を測定し、先に2%引張試験を行った時の強度の差をBH量として評価する。BH量が70MPa以上を良好とする。
鋼中の転位密度の計測には電子顕微鏡を用いる。転位密度の見積りにはいくつかの方法があるが、本発明においては次のように行う。
予め試料の厚みを測定し、特定の回折条件において観察できる転位数を計測することにより実際に存在する転位数を導出し、転位の平均長さを見積る。これらの値を用いて、下式(1)に基づいて転位密度を求める。
なお、観察場所によるデータのばらつきを抑えるため、複数の結晶粒において10点の測定を行い、平均値を取った。
(転位密度)=(転位数)×(転位平均長さ)/(観察領域の体積) …式(1)
CまたはNによって固着されている転位と、固着されていない転位を電子顕微鏡等の直接観察から判断することは困難である。
したがって、固着された転位の密度は完全時効させる以前に鋼中に含まれていた転位の密度として計測し、完全時効後に行う調質圧延後、総転位密度を新たに計測し、この値から時効前の転位密度を差し引いた値を、固着されていない転位密度とした。
次に、実施例によって本発明の作用効果をさらに具体的に説明するが、それらは、単に例示のためであって、それによって本発明は不当に制限されることはない。
(実施例1)
表1に記載した化学組成a〜dを有する供試材を溶製した。なお、化学成分の%は質量%を表す。a〜cは本発明の化学組成であるが、dは本発明の範囲外の化学組成である。
熱間圧延の加熱温度は1100℃、仕上温度は900℃、巻き取り温度は650℃とした。また、冷間圧延率は80%とし、0.8mm薄板とした。焼鈍は800℃で1分間保持した後、50℃/sの冷却速度で冷却した。350℃において3分の過時効処理を施した薄板を用いた。
Figure 2004300573
続いて、表2に記載した条件A〜Iで、時効前スキンパス圧延、時効処理、時効後スキンパス圧延を行って塗装焼付硬化型鋼板を製造し試料とした。A〜Dは本発明の製造条件であるが、E〜Iは本発明の範囲外の製造条件である。
Eは従来の製造条件同様、時効処理を行わずスキンパス圧延を1回行う条件であり、Fはスキンパス圧延後時効処理をせず、さらに、もう一度スキンパス圧延を行う条件である。
また、G、Hは時効前後のスキンパス量を本発明範囲外とした条件である。
また、Iは時効時間を本発明範囲外とした条件である。
次に、各試験片について上述の方法で引張試験を実施し、BH特性の評価、降伏点伸びの評価を行った。
Figure 2004300573
表3には、機械的試験の結果を示す。BH量は、70MPa以上を良好とし表中に〇で示し、70MPa未満を不良とし表中に×で示した。100℃×1時間の人工加速試験後の降伏点伸び(YP−El)値は、0.4%以下を良好とし表中に〇で示し、0.4%超を不良とし表中に×で示した。
化学組成a、b、cの鋼板では、A、B、C、Dの製造条件において、焼付硬化性および耐時効性の両方において良好な結果が得られた。
一方、E、Fの製造条件では、焼付硬化性と耐時効性の両方が劣っていた。これらの製造条件では、本発明で示された固溶Cおよび固溶Nのトラップサイトがないため、100℃×1時間の間に多くの可動転位を固着したためと考えられる。
G、Hの製造条件においては、耐時効性は良好であったが、焼付硬化性が劣っていた。Gの条件では時効前スキンパス歪量が大きすぎ、Hの条件では時効後スキンパス歪量が大きすぎるために、BH量が小さくなったものと考えられる。
Iの製造条件においては、耐時効性と焼付硬化性が劣っていた。Iの条件では時効時間が長すぎるために、転位に炭窒化物等の析出が生じ、焼付硬化性や耐時効性が小さくなったものと考えられる。
化学組成dの鋼板を使用して、条件A〜Cでスキンパス圧延および時効を施したが、耐時効性は良好であったものの、焼付硬化性は劣っていた。
dの鋼板は、C+Nの添加量が本発明の規定量よりも少ないため、これらは時効前に導入した転位に深くトラップし、時効を経ても拡散できず、時効後に導入した転位を固着できなかったためと考えられる。
なお、ここでは記載していないが、化学組成a〜cの鋼板を製造条件A〜Dでスキンパス圧延および時効を施した試験材は、時効前に行ったスキンパス圧延による転位密度が1×109〜2×1010cm-2であり、さらに、時効後に行ったスキンパス圧延後の転位密度は2×109〜4×1010cm-2となっていた。
この増加分が、時効後に行ったスキンパス圧延によって導入された転位である。
従って、CまたはNによって固着された転位の密度が1×109〜2×1010cm-2であり、固着されていない転位の密度が1×109〜2×1010cm-2であった。
Figure 2004300573
(実施例2)
実施例1の鋼種aと同様の化学成分および製造条件で製造した0.8mm薄板を用い、時効前後のスキンパス圧延量を変化させ、焼付硬化性および耐時効性を調べた。なお、時効条件は、120℃において2時間とした。
図2に結果を示す。図中○は、焼付硬化性および耐時効性が共に良好であった条件を示し、黒三角は、両方またはどちらかの特性が悪かった条件を示す。スキンパス量が時効前および時効後が、それぞれ、共に0.2〜2.0%の範囲において、焼付硬化性および耐時効性が共に良好な結果が得られた。
0.2%歪の鋼では1×109cm-2の転位密度を有し、2.0%歪印加の鋼では約2×1010cm-2の転位密度を有しており、0.2〜2.0%歪を印加した鋼の転位密度は1×109〜2×1010cm-2であった。
前述したように、本発明により、常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板を提供することができる。したがって、本発明の産業上の価値は、極めて高いといえる。
調質圧延による歪量と鋼中の転位密度の相関を示す図である。 時効前後の歪量と焼付硬化性および耐時効性の関係を示す図である。

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C :0.0001〜0.2%、
    N :0.0001〜0.2%、
    C+N:0.002〜0.3%、
    Mn :0.01〜3%、
    Si :0.001〜2%、
    P :0.001〜0.1%、
    S :0.05%以下、
    Al :0.0001〜0.1%、
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる薄鋼板に、1×109〜2×1010cm-2の密度の転位を導入した後、該薄鋼板を時効し、続いて、該薄鋼板に、新たに1×109〜2×1010cm-2の密度の転位を導入することを特徴とする常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板の製造方法。
  2. 質量%で、
    C :0.0001〜0.2%、
    N :0.0001〜0.2%、
    C+N:0.002〜0.3%、
    Mn :0.01〜3%、
    Si :0.001〜2%、
    P :0.001〜0.1%、
    S :0.05%以下、
    Al :0.0001〜0.1%、
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる薄鋼板に、歪量0.2〜2.0%の調質圧延を行った後、該薄鋼板を時効し、続いて、該薄鋼板に歪量0.2〜2.0%の調質圧延を行うことを特徴とする常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板の製造方法。
  3. 前記時効が、100℃以上300℃未満の温度範囲で、1分以上2時間以下行うことを特徴とする請求項1または2に記載の常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板の製造方法。
  4. 前記時効が、50℃以上100℃未満の温度範囲で、1時間以上10日以下行うことを特徴とする請求項1または2に記載の常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板の製造方法。
  5. 前記時効が、10℃以上50℃未満の温度範囲で、10日以上180日以下行うことを特徴とする請求項1または2に記載の常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板の製造方法。
  6. 前記薄鋼板が、さらに、質量%で、Nb、Tiのいずれか1種または2種を合計で0.001〜0.1%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板の製造方法。
  7. 質量%で、
    C :0.0001〜0.2%、
    N :0.0001〜0.2%、
    C+N:0.002〜0.3%、
    Mn :0.01〜3%、
    Si :0.001〜2%、
    P :0.001〜0.1%、
    S :0.05%以下、
    Al :0.0001〜0.1%、
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる薄鋼板で、CまたはNによって固着された1×109〜2×1010cm-2の密度の転位と、固着されていない1×109〜2×1010cm-2の密度の転位を有することを特徴とする常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板。
  8. 前記薄鋼板が、さらに、質量%で、Nb、Tiのいずれか1種または2種を合計で0.001〜0.1%含有することを特徴とする請求項7に記載の常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板。
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