JP2004300469A - 回転メッキ装置及び電子部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持盤2とリング状陰極4の間にメッキ液排出用の排液部材21を備える回転可能なメッキ槽1と、メッキ槽1内に配置された陽極16と、メッキ槽1を覆う上・下ケース14,15とを具備し、電子部品用チップCCが投入されたメッキ槽1を回転させ、且つ、メッキ槽1内に供給されたメッキ液PLを排液部材21を通じてメッキ槽1外に排出しながらチップCCへのメッキ処理を行う回転メッキ装置であって、前記上ケース15には、メッキ槽1の排液部材21の外部露出面と向き合う位置よりも低い位置に、不活性ガスIGをケース内に吹き込むためのガス吹込口15bが設けられている。
【選択図】図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転メッキ装置とこの回転メッキ装置を利用した電子部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
微小な被メッキ物、例えば図2に示すような電子部品用チップCCに設けられた下地金属膜CCa上にニッケル膜や錫膜や銅膜や半田膜等の金属膜を形成する装置として、図1に示すような回転メッキ装置が知られている。
【0003】
この回転メッキ装置は、メッキ槽1と、メッキ槽1を支持する回転テーブル11と、回転テーブル11に連結された回転軸12と、回転軸12に接触状態で配置された給電ブラシ13と、下ケース14と、下ケース14上に着脱自在に取り付けられた上ケース15と、メッキ槽1内に挿入配置された籠状の陽極16と、メッキ液PLを供給するための給液パイプ17と、陽極16内に収容された可溶性金属体18と、上ケース15の開口15aを塞ぐ蓋板19とを備える。
【0004】
メッキ槽1は、円形の支持盤2と、支持盤2上に配置されたリング状の排液部材3と、排液部材3上に配置されたリング状の陰極4と、陰極5上に配置されたリング状のカバー部材5とから構成されている。このメッキ槽1は、支持盤2と排液部材3と陰極4とカバー部材5に形成されたボルト挿通孔(図示省略)に上側からボルト(図示省略)を挿入し、このボルトを回転テーブル11のボルト穴(図示省略)にねじ込むことによって回転テーブル11上に着脱自在に取り付けられており、陰極4はこのボルト,支持盤2,回転テーブル11及び回転軸12を通じて給電ブラシ13と導通している。また、カバー部材5の中央には、陽極16を出し入れするための開口5aが設けられている。
【0005】
下ケース14は回転テーブル11の周囲及び下側に配置され、上ケース15の下端部は下ケース14の上端部に着脱自在に嵌め込まれており、メッキ槽1及び回転テーブル11は、下ケース14及び上ケース15により構成されたケース(符号無し)内に位置している。また、下ケース14の中央には回転軸12が遊挿された回転軸挿入孔14aが形成され、この回転軸挿入孔14aの周囲には環状の貯液部14aが形成され、この貯液部14aの底面には排液口14cが設けられている。さらに、上ケース15の中央には陽極16を出し入れするための開口15aが形成され、その側面には窒素ガス等の不活性ガスIGをケース内に吹き込むためのガス吹込口15bが形成されている。
【0006】
この回転メッキ装置を用いて図2に示したチップCCの下地膜CCa上に所定の金属膜、例えばニッケル膜を形成するときには、メッキ槽1内に多数のチップCCを投入し、可溶性金属体(ニッケル塊)18を収納した陽極16を開口15a,5aを通じてメッキ槽1内に挿入して開口15aを蓋板19で塞いだ後、給液パイプ17からメッキ槽1内にメッキ液(ニッケルメッキ用のもの)を供給する。続いて、図示省略のモータからの回転力を変速機等を介して回転軸12に伝え、回転テーブル11とその上のメッキ槽1を所定方向に回転させ、チップCCを遠心力によって陰極4の内周面に移動させると共に、陽極16と陰極4の間に所定の電流を流してチップCCの下地金属膜CCa上にニッケル膜を形成する。
【0007】
メッキ処理時には、所期のメッキ処理が効果的に行えるように、メッキ槽1内のメッキ液PLを排液部材3を通じて外部(上・下ケース14,15の内側)に排出し、且つ、排出量に相当するメッキ液PLを給液パイプ17からメッキ槽1内へ供給してメッキ槽1内の液面高さが一定となるように制御する。また、メッキ処理時には、陰極4の内周面に移動したチップCCがメッキ膜によって相互固着することを防止するため、通電を数秒毎に停止すると共にメッキ槽1を逆回転させてチップCCの撹拌を行う。
【0008】
さらに、メッキ処理時には、排液部材3を通じてメッキ槽1から排出されたメッキ液PLを貯液部14b及び排液口14cを通じてメッキ液槽(図示省略)に戻して再利用するために、上ケース15のガス吹込口15bからケース内に不活性ガスIGを吹き込んでメッキ槽1から排出されたメッキ液PLの酸化を防止する。
【0009】
【特許文献1】
特開平8−239799号公報
【特許文献2】
特開平8−296094号公報
【特許文献3】
特開平11−117087号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
メッキ槽1から排出されたメッキ液PLを再利用するためには、排出後のメッキ液PLの酸化を防止してメッキ液PLに含まれる金属イオンの価数の変動(増加)を抑制する必要がある。例えば、メッキ処理により錫膜を形成するときにメッキ槽1から排出されるメッキ液PLに含まれる錫イオンの価数は基本的には2(Sn2+)であるが、このメッキ液PLが酸素を含む空気に触れると価数が4の錫イオン(Sn4+)が生成されてしまう。このような4価の錫イオンが含まれるメッキ液PLがメッキ液槽に戻されて再利用されると、次にメッキ処理を行う際の析出効率が低下し、形成される錫膜が空隙の多い低品位のものになって信頼性が格段低下する。
【0011】
先に述べた従来の回転メッキ装置でも、メッキ処理時には排出メッキ液PLの酸化を防止するためにケース内に不活性ガスIGを吹き込むようにしているが、ガス吹込口15bがメッキ槽1の排液部材3の外部露出面よりも高い位置にあるため、メッキ槽1から排出されたメッキ液PLに不活性ガスを効率良く接触させることができない。
【0012】
要するに、窒素ガス等から成る不活性ガスIGは空気よりも比重が軽いため、ガス吹込口15bを通じてケース内に吹き込まれた不活性ガスIGはその大半が排出メッキ液PLに接触することなくその上端の開口15aと蓋板19との隙間等から外部に放出されてしまう。また、排液部材3として連通多孔質のものが使用され、しかも、メッキ槽1が高速で回転する関係から、排液部材3から排出されるメッキ液PLは気体と接触し易い霧状或いはこれに近い状態にあるため、排出メッキ液PLは微量の空気と接触するだけで簡単に酸化してしまう。
【0013】
本発明は前記事情に鑑みて創作されたもので、その目的とするところは、排出メッキ液の酸化を防止できる回転メッキ装置と、この装置を利用した電子部品の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明に係る回転メッキ装置は、支持盤とリング状陰極の間にメッキ液排出用の排液部材を備える回転可能なメッキ槽と、メッキ槽内に配置された陽極と、メッキ槽を覆うケースとを具備し、被メッキ物が投入されたメッキ槽を回転させ、且つ、メッキ槽内に供給されたメッキ液を排液部材を通じてメッキ槽外に排出しながら被メッキ物へのメッキ処理を行う回転メッキ装置において、前記ケースには、メッキ槽の排液部材の外部露出面と向き合う位置もしくはそれよりも低い位置に、不活性ガスをケース内に吹き込むためのガス吹込口が設けられている、ことをその特徴とする。
【0015】
この回転メッキ装置によれば、ガス吹込口がメッキ槽の排液部材の外部露出面と向き合う位置もしくはそれよりも低い位置に設けられているので、メッキ槽から排出されるメッキ液全体に不活性ガスを効果的に接触させてその酸化を防止することができ、酸化による金属イオンの価数変動(増加)を抑制して排出メッキ液の再利用を的確に行うことができる。
【0016】
また、本発明に係る電子部品の製造方法は、前記の回転メッキ装置を用いて、電子部品用チップに設けられた下地金属膜上に少なくとも1層の金属膜を形成する、ことをその特徴とする。この製造方法によれば、所望の金属膜が適切に形成された電子部品を得ることができる。
【0017】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【0018】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
図3は本発明に係る回転メッキ装置の第1実施形態を示す。
【0019】
この回転メッキ装置が、図1に示した従来装置と異なるところは、上ケース15のガス吹込口15bをメッキ槽1の排液部材21の外部露出面と向き合う位置よりも低い位置に設けた点と、回転テーブル11の下面にケース内から回転軸挿入孔14aへのメッキ液PLの侵入を抑制する壁部材22を設けた点と、リング状排液部材3の代わりに円形のシート状排液部材21を用いた点にある。他の構成は図1に示した従来装置と同じであるので、同一符号を用いその説明を省略する。
【0020】
ガス吹込口15bはその上端高さ位置が排液部材21の外部露出面の上端高さ位置よりも低くなるように形成されている。このガス吹込口15bは図示省略のチューブを介してガスボンベ等の不活性ガス供給源に接続されており、窒素ガス等の不活性ガスIGが所定の流量で供給される。
【0021】
壁部材22は円筒形状を成す部品から成り、下ケース14の回転軸挿入孔14aの近傍位置においてその下端が貯液部14b内に入り込むように、回転テーブル11の下面に取り付けられている。この壁部材22はケース内から回転軸挿入孔14aへのメッキ液PLの侵入を抑制するためのもので、壁部材22の下端は、貯液部14bに一時的に貯留されるメッキ液PLに触れないよう、その下端高さを最大貯液面高さよりも僅かに高く設定されている。
【0022】
シート状排液部材21は数μm〜数百μmの空孔を連通状態で有する多孔質のプラスチックやセラミクスや金属焼結体等から成り、円形の支持盤2の表面形状にほぼ合致した形状を有している。また、排液部材21は、リング状陰極4の下面が接触する外周縁を除く部分の表面によってメッキ槽1の内側底面を構成している。つまり、メッキ槽1内のメッキ液PLは、排液部材21のリング状陰極接触箇所を除く部分の表面から内部に浸透してその外周面(外部露出面)からメッキ槽1外に排出される。
【0023】
この回転メッキ装置を用いて微小な被メッキ物、例えば図2に示すような電子部品用チップCCの下地金属膜CCa上に所定の金属膜、例えばニッケル膜を形成するときには、メッキ槽1内に多数のチップCCを投入し、可溶性金属体(ニッケル塊)18を収納した陽極16を開口15a,5aを通じてメッキ槽1内に挿入して開口15aを蓋板19で塞いだ後、給液パイプ17からメッキ槽1内にメッキ液(ニッケルメッキ用のもの)を供給する。続いて、図示省略のモータからの回転力を変速機等を介して回転軸12に伝え、回転テーブル11とその上のメッキ槽1を所定方向に回転させ、チップCCを遠心力によって陰極4の内周面に移動させると共に、陽極16と陰極4の間に所定の電流を流してチップCCの下地金属膜CCa上にニッケル膜を形成する。
【0024】
このメッキ処理時には、所期のメッキ処理が効果的に行えるように、メッキ槽1内のメッキ液PLを排液部材21を通じて外部(上・下ケース14,15の内側)に排出し、且つ、排出量に相当するメッキ液PLを給液パイプ17からメッキ槽1内へ供給してメッキ槽1内の液面高さが一定となるように制御する。また、メッキ処理時には、陰極4の内周面に移動したチップCCがメッキ膜によって相互固着することを防止するため、通電を数秒毎に停止すると共にメッキ槽1を逆回転させてチップCCの撹拌を行う。
【0025】
さらに、メッキ処理時には、排液部材21を通じてメッキ槽1から排出されたメッキ液PLを貯液部14b及び排液口14cを通じてメッキ液槽(図示省略)に戻して再利用するために、上ケース15のガス吹込口15bからケース内に不活性ガスIGを吹き込んで、この不活性ガスIGによってメッキ槽1から排出されるメッキ液PLの酸化を防止する。
【0026】
本実施形態では、ガス吹込口15bがその上端高さ位置が排液部材21の外部露出面の上端高さ位置よりも低くなるように上ケース15に設けられているので、ガス吹込口15bに送り込まれた不活性ガスIGは、図3中に白抜き矢印で示すように、ケース内の排液部材21の外部露出面のやや下側に向けて吹き込まれると共にここから上方に向かって移動する。
【0027】
つまり、ケース内に吹き込まれた不活性ガスIGは、排液部材21から排出されるメッキ液PL全体と効果的に接触することになるので、窒素ガス等から成る不活性ガスIGが空気よりも比重が軽くても、不活性ガスIGによる排出メッキ液PLの酸化防止を効率良く行って、酸化による金属イオンの価数変動(増加)を抑制することができる。
【0028】
前記のメッキ処理の前または後にニッケル膜以外の金属膜、例えば銅膜や錫膜や半田膜等を、前記のメッキ処理に先立って或いは前記のメッキ処理後に続けてチップCCに形成するときには、メッキ槽1を回転させてメッキ槽1内のメッキ液PLを排液部材21を通じて排出し、続けて洗浄水を供給しながらメッキ槽1を回転させてメッキ後のチップCCの洗浄を行う。洗浄後は、ニッケル塊とは異なる可溶性金属体18を収納した陽極16を開口15a,5aを通じてメッキ槽1内に挿入し、この可溶性金属体18に対応したメッキ液をメッキ槽1内に供給しながら前記と同様のメッキ処理を行う。
【0029】
前述の回転メッキ装置によれば、ケース内に吹き込まれた不活性ガスIGを排出メッキ液PL全体と効果的に接触させることができるので、不活性ガスIGによる排出メッキ液PLの酸化防止を効率良く行って酸化による金属イオンの価数変動(増加)を抑制し、排出メッキ液PLの再利用を的確に行うことができる。
【0030】
また、前述の回転メッキ装置によれば、回転テーブル11の下面にケース内から回転軸挿入孔14aへのメッキ液PLの侵入を抑制するための壁部材22が設けられているので、回転軸12の軸受部や駆動系にメッキ液PLが回り込むことによる腐食の問題を防止して、これら機器の長寿命化を図ることができる。
【0031】
さらに、前述の回転メッキ装置によれば、メッキ槽1の排液部材21が支持盤2の表面形状にほぼ合致した形状のシートから成りメッキ槽1の内側底面を構成しているので、リング状のものに比べ排液有効面積を大きく確保することができ、リング状陰極4の近傍位置でチップCCが排液部材21に付着したとしても排液部材21を通じてメッキ槽1外に排出されるメッキ液PLの量を十分に確保して所期のメッキ処理を効果的に行うことができる。しかも、排液有効面積が大きく確保されていてメッキ液PLの排出量を十分に確保できることから、メッキ槽1内において下から上に向かう環流の度合が弱く、この環流の影響によってリング状陰極4の内周面に移動したチップCCが盛り上がった形態となることを防止して、チップCCとリング状陰極4の内周面との最大距離を大きく減少させることができ、これにより、チップCCとリング状陰極4の内周面との最大距離の増加を原因とした通電不良の発生を抑制し、メッキ膜厚のバラツキを抑えて品質向上を図ることができる。
【0032】
尚、前述の実施形態では、ガス吹込口15bとしてその上端が排液部材21の外部露出面の上端よりも低くなる位置に形成したものを示したが、ガス吹込口15bは、その上端が排液部材21の外部露出面の下端よりも低くなる位置に形成されていても、排液部材21の外部露出面と向き合う位置(正対する位置)に形成されていても、前記同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
また、前述の実施形態では、排液部材21として支持盤2の表面を覆うシート状のものを示したが、図1に示した従来装置と同様のリング状排液部材3を排液部材21の代わりに用いても構わない。
【0034】
[第2実施形態]
図4は本発明に係る回転メッキ装置の第2実施形態を示す。
【0035】
この回転メッキ装置が、図1に示した従来装置と異なるところは、上ケース15のガス吹込口15bを排除しその代わりに下ケース14の回転軸挿入孔14aの下側にガス吹込口23aを有する筒状部品23を設けた点(回転軸挿入孔14aと回転軸12との隙間をガス吹込口として利用した点)と、回転テーブル11の下面にケース内から回転軸挿入孔14aへのメッキ液PLの侵入を抑制する壁部材22を設けた点と、リング状排液部材3の代わりに円形のシート状排液部材21を用いた点にある。他の構成は図1に示した従来装置と同じであるので、同一符号を用いその説明を省略する。
【0036】
筒状部品23は回転軸12の直径よりも僅かに大きな円形孔23bを中央に有し、回転軸挿入孔14aと回転軸12との隙間に通じるガス吹込口23aをその側面に有している。このガス吹込口23aは図示省略のチューブを介してガスボンベ等の不活性ガス供給源に接続されており、窒素ガス等の不活性ガスIGが所定の流量で供給される。
【0037】
壁部材22は円筒形状を成す部品から成り、下ケース14の回転軸挿入孔14aの近傍位置においてその下端が貯液部14b内に入り込むように、回転テーブル11の下面に取り付けられている。この壁部材22はケース内から回転軸挿入孔14aへのメッキ液PLの侵入を抑制するためのもので、壁部材22の下端は、貯液部14bに一時的に貯留されるメッキ液PLに触れないよう、その下端高さを最大貯液面高さよりも僅かに高く設定されている。
【0038】
シート状排液部材21は数μm〜数百μmの空孔を連通状態で有する多孔質のプラスチックやセラミクスや金属焼結体等から成り、円形の支持盤2の表面形状にほぼ合致した形状を有している。また、排液部材21は、リング状陰極4の下面が接触する外周縁を除く部分の表面によってメッキ槽1の内側底面を構成している。つまり、メッキ槽1内のメッキ液PLは、排液部材21のリング状陰極接触箇所を除く部分の表面から内部に浸透してその外周面(外部露出面)からメッキ槽1外に排出される。
【0039】
この回転メッキ装置を用いて微小な被メッキ物、例えば図2に示すような電子部品用チップCCの下地金属膜CCa上に所定の金属膜、例えばニッケル膜を形成するときには、メッキ槽1内に多数のチップCCを投入し、可溶性金属体(ニッケル塊)18を収納した陽極16を開口15a,5aを通じてメッキ槽1内に挿入し開口15aを蓋板19で塞いだ後、給液パイプ17からメッキ槽1内にメッキ液(ニッケルメッキ用のもの)を供給する。続いて、図示省略のモータからの回転力を変速機等を介して回転軸12に伝え、回転テーブル11とその上のメッキ槽1を所定方向に回転させ、チップCCを遠心力によって陰極4の内周面に移動させると共に、陽極16と陰極4の間に所定の電流を流してチップCCの下地金属膜CCa上にニッケル膜を形成する。
【0040】
このメッキ処理時には、所期のメッキ処理が効果的に行えるように、メッキ槽1内のメッキ液PLを排液部材21を通じて外部(上・下ケース14,15の内側)に排出し、且つ、排出量に相当するメッキ液PLを給液パイプ17からメッキ槽1内へ供給してメッキ槽1内の液面高さが一定となるように制御する。また、メッキ処理時には、陰極4の内周面に移動したチップCCがメッキ膜によって相互固着することを防止するため、通電を数秒毎に停止すると共にメッキ槽1を逆回転させてチップCCの撹拌を行う。
【0041】
さらに、メッキ処理時には、排液部材21を通じてメッキ槽1から排出されたメッキ液PLを貯液部14b及び排液口14cを通じてメッキ液槽(図示省略)に戻して再利用するために、下ケース14の下面に設けた筒状部品23のガス吹込口23aから回転軸挿入孔14aと回転軸12の隙間を通じケース内に不活性ガスIGを吹き込んで、この不活性ガスIGによってメッキ槽1から排出されるメッキ液PLの酸化を防止する。
【0042】
本実施形態では、ガス吹込口23aが回転軸挿入孔14aと回転軸12の隙間を通じるように下ケース14の下側に設けられているので、ガス吹込口23aから回転軸挿入孔14aと回転軸12との隙間に送り込まれた不活性ガスIGは、図4中に白抜き矢印で示すように、回転テーブル11下面の壁部材22と貯液部14bの貯留メッキ液PLとの隙間を通じて、ケース内の回転テーブル14下面側に吹き込まれると共にここから上方に向かって移動する。
【0043】
つまり、ケース内に吹き込まれた不活性ガスIGは、排液部材21から排出されるメッキ液PL全体と効果的に接触することになるので、窒素ガス等から成る不活性ガスIGが空気よりも比重が軽くても、不活性ガスIGによる排出メッキ液PLの酸化防止を効率良く行って、酸化による金属イオンの価数変動(増加)を抑制することができる。
【0044】
前記のメッキ処理の前または後にニッケル膜以外の金属膜、例えば銅膜や錫膜や半田膜等を、前記のメッキ処理に先立って或いは前記のメッキ処理後に続けてチップCCに形成するときには、メッキ槽1を回転させてメッキ槽1内のメッキ液PLを排液部材21を通じて排出し、続けて洗浄水を供給しながらメッキ槽1を回転させてメッキ後のチップCCの洗浄を行う。洗浄後は、ニッケル塊とは異なる可溶性金属体18を収納した陽極16を開口15a,5aを通じてメッキ槽1内に挿入し、この可溶性金属体18に対応したメッキ液をメッキ槽1内に供給しながら前記と同様のメッキ処理を行う。
【0045】
前述の回転メッキ装置によれば、ケース内に吹き込まれた不活性ガスIGを排出メッキ液PL全体と効果的に接触させることができるので、不活性ガスIGによる排出メッキ液PLの酸化防止を効率良く行って酸化による金属イオンの価数変動(増加)を抑制し、排出メッキ液PLの再利用を的確に行うことができる。
【0046】
また、前述の回転メッキ装置によれば、回転テーブル11の下面にケース内から回転軸挿入孔14aへのメッキ液PLの侵入を抑制するための壁部材22が設けられているので、回転軸12の軸受部や駆動系に排出メッキ液PLが回り込むことによる腐食の問題を防止して、これら機器の長寿命化を図ることができる。しかも、不活性ガスIGが、回転軸挿入孔14aと回転軸12との隙間から、回転テーブル11下面の壁部材22と貯液部14bの貯留メッキ液PLとの隙間を通じて、ケース内の回転テーブル14下面側に吹き込まれるので、排出メッキ液PLが回転軸挿入孔14aに侵入することを不活性ガスIGの圧力により抑制して、回転軸12の軸受部や駆動系に排出メッキ液PLが回り込むことによる腐食の問題をより確実に防止することができる。
【0047】
さらに、前述の回転メッキ装置によれば、メッキ槽1の排液部材21が支持盤2の表面形状にほぼ合致した形状のシートから成りメッキ槽1の内側底面を構成しているので、リング状のものに比べ排液有効面積を大きく確保することができ、リング状陰極4の近傍位置でチップCCが排液部材21に付着したとしても排液部材21を通じてメッキ槽1外に排出されるメッキ液PLの量を十分に確保して所期のメッキ処理を効果的に行うことができる。しかも、排液有効面積が大きく確保されていてメッキ液PLの排出量を十分に確保できることから、メッキ槽1内において下から上に向かう環流の度合が弱く、この環流の影響によってリング状陰極4の内周面に移動したチップCCが盛り上がった形態となることを防止して、チップCCとリング状陰極4の内周面との最大距離を大きく減少させることができ、これにより、チップCCとリング状陰極4の内周面との最大距離の増加を原因とした通電不良の発生を抑制し、メッキ膜厚のバラツキを抑えて品質向上を図ることができる。
【0048】
尚、前述の実施形態では、下ケース14の回転軸挿入孔14aの下側にガス吹込口23aを有する筒状部品23を設けたものを示したが、筒状部品23に相当する部位を下ケース14に一体形成しても良い。勿論、回転軸挿入孔14aと回転軸12との隙間をガス吹出口として利用できるものであれば筒状部品23の代わりに他の部品(部位)を用いても良い。
【0049】
また、前述の実施形態では、排液部材21として支持盤2の表面を覆うシート状のものを示したが、図1に示した従来装置と同様のリング状排液部材3を排液部材21の代わりに用いても構わない。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、排出メッキ液の酸化を防止してその再利用を的確に行える回転メッキ装置を提供できると共に、この装置を用いて所望の金属膜が適切に形成された電子部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の回転メッキ装置を示す縦断面図
【図2】電子部品用チップの斜視図
【図3】本発明に係る回転メッキ装置の第1実施形態を示す縦断面図
【図4】本発明に係る回転メッキ装置の第2実施形態を示す縦断面図
【符号の説明】
1…メッキ槽、2…支持盤、4…リング状陰極、5…カバー部材、11…回転テーブル、12…回転軸、13…給電ブラシ、14…下ケース、14a…回転軸挿入孔、15…上ケース、15b…ガス吹込口、16陽極、17…給液パイプ、18…可溶性金属体、19…蓋板、PL…メッキ液、CC…チップ、CCa…下地金属膜、21…シート状排液部材、22…壁部材、23…筒状部品、23a…ガス吹込口。
Claims (5)
- 支持盤とリング状陰極の間にメッキ液排出用の排液部材を備える回転可能なメッキ槽と、メッキ槽内に配置された陽極と、メッキ槽を覆うケースとを具備し、被メッキ物が投入されたメッキ槽を回転させ、且つ、メッキ槽内に供給されたメッキ液を排液部材を通じてメッキ槽外に排出しながら被メッキ物へのメッキ処理を行う回転メッキ装置において、
前記ケースには、メッキ槽の排液部材の外部露出面と向き合う位置もしくはそれよりも低い位置に、不活性ガスをケース内に吹き込むためのガス吹込口が設けられている、
ことを特徴とする回転メッキ装置。 - メッキ槽を支持する回転テーブルと、回転テーブルに連結された回転軸とを具備し、ケースはその下部に回転軸挿入孔を有していてメッキ槽及び回転テーブルを覆う形態を備え、回転テーブルの下面にはケース内から回転軸挿入孔へのメッキ液の侵入を抑制する壁部材が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転メッキ装置。 - メッキ槽を支持する回転テーブルと、回転テーブルに連結された回転軸とを具備し、ケースはその下部に回転軸挿入孔を有していてメッキ槽及び回転テーブルを覆う形態を備え、ガス吹込口は回転軸挿入孔と回転軸との隙間によって構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転メッキ装置。 - 回転テーブルの下面にはケース内から回転軸挿入孔へのメッキ液の侵入を抑制する壁部材が設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の回転メッキ装置。 - 請求項1〜4の何れか1項に記載の回転メッキ装置を用いて、電子部品用チップに設けられた下地金属膜上に少なくとも1層の金属膜を形成する、
ことを特徴とする電子部品の製造方法。
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