JP3926285B2 - 回転メッキ装置及び電子部品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転メッキ装置とこの回転メッキ装置を利用した電子部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
微小な被メッキ物、例えば図2に示すような電子部品用チップCCに設けられた下地金属膜CCa上にニッケル膜や錫膜や銅膜や半田膜等の金属膜を形成する装置として、図1に示すような回転メッキ装置が知られている。
【0003】
この回転メッキ装置は、メッキ槽1と、メッキ槽1を支持する回転テーブル11と、回転テーブル11に連結された回転軸12と、回転軸12に接触状態で配置された給電ブラシ13と、下ケース14と、下ケース14上に着脱自在に取り付けられた上ケース15と、メッキ槽1内に挿入配置された籠状の陽極16と、メッキ液PLを供給するための給液パイプ17と、陽極16内に収容された可溶性金属体18とを備える。
【0004】
メッキ槽1は、円形の支持盤2と、支持盤2上に配置されたリング状の排液部材3と、排液部材3上に配置されたリング状の陰極4と、陰極5上に配置されたリング状のカバー部材5とから構成されている。このメッキ槽1は、支持盤2と排液部材3と陰極4とカバー部材5に形成されたボルト挿通孔(図示省略)に上側からボルト(図示省略)を挿入し、このボルトを回転テーブル11のボルト穴(図示省略)にねじ込むことによって回転テーブル11上に着脱自在に取り付けられており、陰極4はこのボルト,支持盤2,回転テーブル11及び回転軸12を通じて給電ブラシ13と導通している。また、カバー部材5の中央には、陽極16を出し入れするための開口5aが設けられている。
【0005】
下ケース14は回転テーブル11の周囲及び下側に配置され、上ケース15の下端部は下ケース14の上端部に着脱自在に嵌め込まれており、メッキ槽1及び回転テーブル11は、下ケース14と上ケース15によって囲まれた空間内に位置している。また、下ケース14には環状の貯液部14aが形成され、貯液部14aの底面には排液口14bが設けられている。さらに、上ケース15の中央には、陽極16を出し入れするための開口15aが設けられている。
【0006】
この回転メッキ装置を用いて図2に示したチップCCの下地膜CCa上に所定の金属膜、例えばニッケル膜を形成するときには、メッキ槽1内に多数のチップCCを投入し、可溶性金属体(ニッケル塊)18を収納した陽極16を開口15a,5aを通じてメッキ槽1内に挿入した後、給液パイプ17からメッキ槽1内にメッキ液(ニッケルメッキ用のもの)を供給する。続いて、図示省略のモータからの回転力を変速機等を介して回転軸12に伝え、回転テーブル11とその上のメッキ槽1を所定方向に回転させ、チップCCを遠心力によって陰極4の内周面に移動させると共に、陽極16と陰極4の間に所定の電流を流してチップCCの下地金属膜CCa上にニッケル膜を形成する。
【0007】
メッキ処理時には、所期のメッキ処理が効果的に行えるように、メッキ槽1内のメッキ液PLを排液部材3を通じて外部(上・下ケース14,15の内側)に排出し、且つ、排出量に相当するメッキ液PLを給液パイプ17からメッキ槽1内へ供給してメッキ槽1内の液面高さが一定となるように制御する。また、メッキ処理時には、陰極4の内周面に移動したチップCCがメッキ膜によって相互固着することを防止するため、通電を数秒毎に停止すると共にメッキ槽1を逆回転させてチップCCの撹拌を行う。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−239799号公報
【特許文献2】
特開平8−296094号公報
【特許文献3】
特開平11−117087号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この種の回転メッキ装置によって所期のメッキ処理を適正に行うには、排液部材3を通じてメッキ槽1外に排出されるメッキ液PLの量を十分に確保する必要がある。
【0010】
しかし、先に述べた従来の回転メッキ装置では、遠心力及びメッキ槽1内のメッキ液PLの流れによって、図3に示すようにリング状排液部材3の内周面にチップCCが付着し、これによってリング状排液部材3の排液有効面積が減少して排出量が減少し、メッキ槽1内のメッキ液PLの温度上昇や酸化促進等が生じてメッキ品質が低下する不具合がある。
【0011】
また、リング状排液部材3の排液有効面積が減少すると、図3に示すようにメッキ槽1内において下から上に向かう環流の度合が強くなってリング状陰極4の内周面に移動したチップCCが盛り上がった形態となり、これによってチップCCとリング状陰極4の内周面との最大距離Dが増加して通電不良が発生し、メッキ膜厚のバラツキ増大等の品質不良を生じる不具合がある。
【0012】
本発明は前記事情に鑑みて創作されたもので、その目的とするところは、微小な被メッキ物へのメッキ膜形成を良好に行える回転メッキ装置と、この装置を利用した電子部品の製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明に係る回転メッキ装置は、支持盤とリング状陰極の間にメッキ液排出用の排液部材を備える回転可能なメッキ槽と、メッキ槽内に配置された陽極とを具備し、被メッキ物が投入されたメッキ槽を回転させ、且つ、メッキ槽内に供給されたメッキ液を排液部材を通じてメッキ槽外に排出しながら被メッキ物へのメッキ処理を行う回転メッキ装置において、前記メッキ槽の排液部材は外周縁がリング状陰極の下面と接する形状のシートから成りメッキ槽の内側底面を構成しており、前記支持盤の表面外周部分には、シート状排液部材の下面と向き合う排液溝が少なくとも1つ設けられている、ことをその特徴とする。
また、本発明に係る回転メッキ装置は、支持盤とリング状陰極の間にメッキ液排出用の排液部材を備える回転可能なメッキ槽と、メッキ槽内に配置された陽極とを具備し、被メッキ物が投入されたメッキ槽を回転させ、且つ、メッキ槽内に供給されたメッキ液を排液部材を通じてメッキ槽外に排出しながら被メッキ物へのメッキ処理を行う回転メッキ装置において、前記メッキ槽の排液部材は外周縁がリング状陰極の下面と接する形状のシートから成りメッキ槽の内側底面を構成しており、前記シート状排液部材の中央には、リング状陰極の内形よりも小さな通液抑制部が設けられている、ことをその特徴とする。
【0014】
これら回転メッキ装置によれば、メッキ槽内のメッキ液は、シート状排液部材のリング状陰極接触箇所を除く部分の表面から内部に浸透してその外部露出面からメッキ槽外に排出されることになる。つまり、シート状排液部材によって排液有効面積が大きく確保されているので、リング状陰極の近傍位置で被メッキ物がシート状排液部材に付着したとしても、シート状排液部材を通じてメッキ槽外に排出されるメッキ液の量を十分に確保することができる。また、シート状排液部材によって排液有効面積が大きく確保されていてメッキ液の排出量を十分に確保できることから、メッキ槽内において下から上に向かう環流の度合が弱く、この環流の影響によってリング状陰極の内周面に移動した被メッキ物が盛り上がった形態となることを防止して、被メッキ物とリング状陰極の内周面との最大距離を大きく減少させることができる。つまり、被メッキ物とリング状陰極の内周面との最大距離の増加を原因とした通電不良の発生を抑制し、メッキ膜厚のバラツキを抑えて品質向上を図ることができる。
排液溝を支持盤の表面外周部分に形成した前者の装置では、メッキ槽内のメッキ液はシート状排液部材の表面から内部に浸透しその外周面からメッキ槽外に排出されると共に、排液溝を通じてメッキ槽外に排出されることになり、排液溝はシート状排液部材の排液能力を高める作用を発揮するので、排液溝の数,断面積及び長さを適宜選択することによって、シート状排液部材を通じてメッキ槽外に排出されるメッキ液PLの量(単位時間当たりの量)を任意にコントロールできる。
また、通液抑制部をシート状排液部材の中央に設けた後者の装置では、メッキ槽内のメッキ液はシート状排液部材の通液抑制部以外の部分の表面から内部に浸透しその外周面からメッキ槽外に排出されることになり、通液抑制部はシート状排液部材の排液能力を低める作用を発揮するので、通液抑制部の大きさ及び形状を適宜選択することによって、シート状排液部材を通じてメッキ槽外に排出されるメッキ液の量を任意にコントロールできる。
【0015】
一方、本発明に係る回転メッキ装置は、支持盤とリング状陰極の間にメッキ液排出用の排液部材を備える回転可能なメッキ槽と、メッキ槽内に配置された陽極とを具備し、被メッキ物が投入されたメッキ槽を回転させ、且つ、メッキ槽内に供給されたメッキ液を排液部材を通じてメッキ槽外に排出しながら被メッキ物へのメッキ処理を行う回転メッキ装置において、前記メッキ槽の排液部材は外周縁がリング状陰極の下面と接する形状のシートから成りメッキ槽の内側底面を構成しており、前記メッキ槽は支持盤とリング状陰極の間とは異なる位置に別の排液部材を備える、ことをその特徴とする。
【0016】
この回転メッキ装置によれば、メッキ槽内のメッキ液は、支持盤とリング状陰極の間の排液部材を通じてメッキ槽外に排出されると共に、別位置に配された排液部材を通じてメッキ槽外に排出されることになる。つまり、支持盤とリング状陰極の間の排液部材とこれとは異なる位置の別の排液部材によって排液有効面積が大きく確保されているので、リング状陰極の近傍位置で被メッキ物が排液部材に付着したとしても、2以上の排液部材を通じてメッキ槽外に排出されるメッキ液の量を十分に確保することができる。また、2以上の排液部材によって排液有効面積が大きく確保されていてメッキ液の排出量を十分に確保できることから、メッキ槽内において下から上に向かう環流の度合が弱く、この環流の影響によってリング状陰極の内周面に移動した被メッキ物が盛り上がった形態となることを防止して、被メッキ物とリング状陰極の内周面との最大距離を大きく減少させることができる。つまり、被メッキ物とリング状陰極の内周面との最大距離の増加を原因とした通電不良の発生を抑制し、メッキ膜厚のバラツキを抑えて品質向上を図ることができる。
【0017】
さらに、本発明に係る電子部品の製造方法は、前記の回転メッキ装置を用いて、電子部品用チップに設けられた下地金属膜上に少なくとも1層の金属膜を形成する、ことをその特徴とする。この製造方法によれば、所望の金属膜が適切に形成された電子部品を得ることができる。
【0018】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
図4は本発明に係る回転メッキ装置の第1実施形態を示す。
【0020】
この回転メッキ装置が、図1に示した従来装置と異なるところは、リング状排液部材3の代わりに円形のシート状排液部材21を用いた点にある。他の構成は図1に示した従来装置と同じであるので、同一符号を用いその説明を省略する。
【0021】
このシート状排液部材21は、数μm〜数百μmの空孔を連通状態で有する多孔質のプラスチックやセラミクスや金属焼結体等から成り、円形の支持盤2の表面形状にほぼ合致した形状を有している。また、シート状排液部材21は、リング状陰極4の下面が接触する外周縁を除く部分の表面によってメッキ槽1の内側底面を構成している。つまり、メッキ槽1内のメッキ液PLは、図5に示すように、シート状排液部材21のリング状陰極接触箇所を除く部分の表面から内部に浸透してその外周面(外部露出面)からメッキ槽1外に排出される。
【0022】
この回転メッキ装置を用いて微小な被メッキ物、例えば図2に示すような電子部品用チップCCの下地金属膜CCa上に所定の金属膜、例えばニッケル膜を形成するときには、メッキ槽1内に多数のチップCCを投入し、可溶性金属体(ニッケル塊)18を収納した陽極16を開口15a,5aを通じてメッキ槽1内に挿入した後、給液パイプ17からメッキ槽1内にメッキ液(ニッケルメッキ用のもの)を供給する。続いて、図示省略のモータからの回転力を変速機等を介して回転軸12に伝え、回転テーブル11とその上のメッキ槽1を所定方向に回転させ、チップCCを遠心力によって陰極4の内周面に移動させると共に、陽極16と陰極4の間に所定の電流を流してチップCCの下地金属膜CCa上にニッケル膜を形成する。
【0023】
メッキ処理時には、所期のメッキ処理が効果的に行えるように、メッキ槽1内のメッキ液PLをシート状排液部材21を通じて外部(上・下ケース14,15の内側)に排出し、且つ、排出量に相当するメッキ液PLを給液パイプ17からメッキ槽1内へ供給してメッキ槽1内の液面高さが一定となるように制御する。また、メッキ処理時には、陰極4の内周面に移動したチップCCがメッキ膜によって相互固着することを防止するため、通電を数秒毎に停止すると共にメッキ槽1を逆回転させてチップCCの撹拌を行う。
【0024】
前記のメッキ処理の前または後にニッケル膜以外の金属膜、例えば銅膜や錫膜や半田膜等を、前記のメッキ処理に先立って或いは前記のメッキ処理後に続けてチップCCに形成するときには、メッキ槽1を回転させてメッキ槽1内のメッキ液PLをシート状排液部材21を通じて排出し、続けて洗浄水を供給しながらメッキ槽1を回転させてメッキ後のチップCCの洗浄を行う。洗浄後は、ニッケル塊とは異なる可溶性金属体18を収納した陽極16を開口15a,5aを通じてメッキ槽1内に挿入し、この可溶性金属体18に対応したメッキ液をメッキ槽1内に供給しながら前記と同様のメッキ処理を行う。
【0025】
前述の回転メッキ装置によれば、メッキ槽1の排液部材21が支持盤2の表面形状にほぼ合致した形状のシートから成りメッキ槽1の内側底面を構成しているので、メッキ槽1内のメッキ液PLは、図5に示すように、シート状排液部材21のリング状陰極接触箇所を除く部分の表面から内部に浸透してその外周面(外部露出面)からメッキ槽1外に排出されることになる。つまり、シート状排液部材21によって排液有効面積が大きく確保されているので、リング状陰極4の近傍位置でチップCCがシート状排液部材21に付着したとしても、シート状排液部材21を通じてメッキ槽1外に排出されるメッキ液PLの量を十分に確保することができる。
【0026】
また、シート状排液部材21によって排液有効面積が大きく確保されていてメッキ液PLの排出量を十分に確保できることから、メッキ槽1内において下から上に向かう環流の度合が弱く、この環流の影響によってリング状陰極4の内周面に移動したチップCCが盛り上がった形態となることを防止して、図5に示すように、チップCCとリング状陰極4の内周面との最大距離Dを大きく減少させることができる。つまり、チップCCとリング状陰極4の内周面との最大距離Dの増加を原因とした通電不良の発生を抑制し、メッキ膜厚のバラツキを抑えて品質向上を図ることができる。
【0027】
尚、前記のシート状排液部材21を通じてメッキ槽1外に排出されるメッキ液PLの量(単位時間当たりの量)はシート状排液部材21の厚さを変えることによっても調整可能であるが、これ以外にも以下の方法が採用できる。
【0028】
図6(A)及び(B)は第1の調整方法を示すもので、ここでは円形の支持盤2の表面外周部分に、シート状排液部材21の下面と向き合う排液溝2aを少なくとも1つ(図中は上から見て60度間隔で放射状に6本)設けてある。因みに、図6(B)中の4ISはリング状陰極4の内周面位置を示し、2bはボルト挿入孔を示す。
【0029】
このような排液溝2aを支持盤2の表面外周部分に形成した場合、メッキ槽1内のメッキ液PLは、図6(A)に示すように、シート状排液部材21の表面から内部に浸透しその外周面(外部露出面)からメッキ槽1外に排出されると共に、排液溝2aを通じてメッキ槽1外に排出されることになる。
【0030】
この場合の排液溝2aはシート状排液部材21’の排液能力を高める作用を発揮するので、排液溝2aの数,断面積及び長さを適宜選択することによって、シート状排液部材21を通じてメッキ槽1外に排出されるメッキ液PLの量を任意にコントロールできる。
【0031】
図7(A)及び(B)は第2の調整方法を示すもので、ここではシート状排液部材21’の中央に、リング状陰極4の内形よりも小さな通液抑制部21bを設けてある。この通液抑制部21bは、シート状排液部材21’の所望部分にエポキシ系プラスチック等の硬化可能な材料を染み込ませて硬化させるか、シート状排液部材21’の所望部分を通液性のない部材と置換することにより得ることができる。因みに、図7(B)中の21aはシート状排液部材21’の通液抑制部21b以外の部分を示し、21cはボルト挿入孔を示す。
【0032】
このような通液抑制部21bをシート状排液部材21’の中央に設けた場合、メッキ槽1内のメッキ液PLは、図7(A)に示すように、シート状排液部材21’の通液抑制部21b以外の部分21aの表面から内部に浸透しその外周面(外部露出面)からメッキ槽1外に排出されることになる。
【0033】
この場合の通液抑制部21bはシート状排液部材21’の排液能力を低める作用を発揮するので、通液抑制部21bの大きさ及び形状を適宜選択することによって、シート状排液部材21を通じてメッキ槽1外に排出されるメッキ液PLの量を任意にコントロールできる。
【0034】
[第2実施形態]
図8は本発明に係る回転メッキ装置の第2実施形態を示す。
【0035】
この回転メッキ装置が、図4に示した第1実施形態と異なるところは、支持盤2とリング状陰極4の間とは異なる位置(リング状陰極4とカバー部材5の間)に別の排液部材22を設けた点にある。他の構成は図4に示した第1実施形態と同じであるので、同一符号を用いその説明を省略する。
【0036】
この排液部材22は、数μm〜数百μmの空孔を連通状態で有する多孔質のプラスチックやセラミクスや金属焼結体等から成り、リング状陰極4と同じ内外径を有するリング状を成している。つまり、メッキ槽1内のメッキ液PLは、図9に示すように、シート状排液部材21のリング状陰極接触箇所を除く部分の表面から内部に浸透してその外周面(外部露出面)からメッキ槽1外に排出されると共に、リング状排液部材22の内周面から内部に浸透してその外周面(外部露出面)からメッキ槽1外に排出される。
【0037】
この回転メッキ装置を用いて微小な被メッキ物、例えば図2に示すような電子部品用チップCCの下地金属膜CCa上に所定の金属膜、例えばニッケル膜を形成するときには、メッキ槽1内に多数のチップCCを投入し、可溶性金属体(ニッケル塊)18を収納した陽極16を開口15a,5aを通じてメッキ槽1内に挿入した後、給液パイプ17からメッキ槽1内にメッキ液(ニッケルメッキ用のもの)を供給する。続いて、図示省略のモータからの回転力を変速機等を介して回転軸12に伝え、回転テーブル11とその上のメッキ槽1を所定方向に回転させ、チップCCを遠心力によって陰極4の内周面に移動させると共に、陽極16と陰極4の間に所定の電流を流してチップCCの下地金属膜CCa上にニッケル膜を形成する。
【0038】
メッキ処理時には、所期のメッキ処理が効果的に行えるように、メッキ槽1内のメッキ液PLをシート状排液部材21及びリング状排液部材22を通じて外部(上・下ケース14,15の内側)に排出し、且つ、排出量に相当するメッキ液PLを給液パイプ17からメッキ槽1内へ供給してメッキ槽1内の液面高さが一定となるように制御する。また、メッキ処理時には、陰極4の内周面に移動したチップCCがメッキ膜によって相互固着することを防止するため、通電を数秒毎に停止すると共にメッキ槽1を逆回転させてチップCCの撹拌を行う。
【0039】
前記のメッキ処理の前または後にニッケル膜以外の金属膜、例えば銅膜や錫膜や半田膜等を、前記のメッキ処理に先立って或いは前記のメッキ処理後に続けてチップCCに形成するときには、メッキ槽1を回転させてメッキ槽1内のメッキ液PLをシート状排液部材21及びリング状排液部材22を通じて排出し、続けて洗浄水を供給しながらメッキ槽1を回転させてメッキ後のチップCCの洗浄を行う。洗浄後は、ニッケル塊とは異なる可溶性金属体18を収納した陽極16を開口15a,5aを通じてメッキ槽1内に挿入し、この可溶性金属体18に対応したメッキ液をメッキ槽1内に供給しながら前記と同様のメッキ処理を行う。
【0040】
前述の回転メッキ装置によれば、支持盤2とリング状陰極4の間にシート状排液部材21を備え、リング状陰極4とカバー部材5の間に別のリング状排液部材22を備えているので、メッキ槽1内のメッキ液PLは、図9に示すように、シート状排液部材21のリング状陰極接触箇所を除く部分の表面から内部に浸透してその外周面(外部露出面)からメッキ槽1外に排出されると共に、リング状排液部材22の内周面から内部に浸透してその外周面(外部露出面)からメッキ槽1外に排出されることになる。つまり、シート状排液部材21とリング状排液部材22によって排液有効面積が大きく確保されているので、リング状陰極4の近傍位置でチップCCがシート状排液部材21やリング状排液部材22に付着したとしても、シート状排液部材21及びリング状排液部材22を通じてメッキ槽1外に排出されるメッキ液PLの量を十分に確保することができる。
【0041】
また、シート状排液部材21及びリング状排液部材22によって排液有効面積が大きく確保されていてメッキ液PLの排出量を十分に確保できることから、メッキ槽1内において下から上に向かう環流の度合が弱く、この環流の影響によってリング状陰極4の内周面に移動したチップCCが盛り上がった形態となることを防止して、図9に示すように、チップCCとリング状陰極4の内周面との最大距離Dを大きく減少させることができる。つまり、チップCCとリング状陰極4の内周面との最大距離Dの増加を原因とした通電不良の発生を抑制し、メッキ膜厚のバラツキを抑えて品質向上を図ることができる。
【0042】
尚、前記の装置ではシート状排液部材21の他に1つのリング状排液部材22を設けたものを示したが、図10に示すように、メッキ槽1に2つのリング状陰極4を設け、支持盤2と最下位のリング状陰極4と間にシート状排液部材21を設け、隣接するリング状陰極4の間に1つ目のリング状排液部材22を設け、最上位のリング状陰極4とカバー部材5の間に2つ目のリング状排液部材22を設けるようにしてもよい。この場合、メッキ槽1内のメッキ液PLは、図10に示すように、シート状排液部材21のリング状陰極接触箇所を除く部分の表面から内部に浸透してその外周面(外部露出面)からメッキ槽1外に排出されると共に、上下2つのリング状排液部材22の内周面から内部に浸透してその外周面(外部露出面)からメッキ槽1外に排出されることになるので、排液有効面積をより大きく確保してメッキ槽1外に排出されるメッキ液PLの量を十分に確保することができる。勿論、リング状陰極4の数を3以上とすれば4以上の排液部材をメッキ槽1に設けることも可能である。
【0043】
また、前記の装置並びに図10に示した装置では支持盤2と最下位のリング状陰極4の間にシート状排液部材21を設けたものを示したが、他のリング状排液部材22によって排液有効面積をより大きく確保できるので、シート状排液部材21の代わりにリング状排液部材22を用いてもメッキ槽1外に排出されるメッキ液PLの量を十分に確保することができる。
【0044】
以上、前述の説明では、微小な被メッキ物として電子部品用チップCCを示したが、ここでのチップCCにはチップコンデンサやチップインダクタやチップ抵抗器やチップコンデンサアレイやチップインダクタアレイやチップ抵抗アレイは勿論のこと、これら以外の電子部品用チップが含まれる。また、電子部品用チップ以外の微小な被メッキ物にメッキ処理を行う場合にも適用でき前記と同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、微小な被メッキ物へのメッキ膜形成を良好に行える回転メッキ装置を提供できると共に、この装置を用いて所望の金属膜が適切に形成された電子部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の回転メッキ装置を示す縦断面図
【図2】電子部品用チップの斜視図
【図3】図1に示した回転メッキ装置のメッキ液排出作用の説明図
【図4】本発明に係る回転メッキ装置の第1実施形態を示す縦断面図
【図5】図4に示した回転メッキ装置のメッキ液排出作用の説明図
【図6】図1に示した回転メッキ装置の変形例を示す要部縦断面図と支持盤の上面図
【図7】図1に示した回転メッキ装置の別な変形例を示す要部縦断面図とシート状排液部材の上面図
【図8】本発明に係る回転メッキ装置の第2実施形態を示す縦断面図
【図9】図8に示した回転メッキ装置のメッキ液排出作用の説明図
【図10】図1に示した回転メッキ装置の変形例を示す要部縦断面図
【符号の説明】
1…メッキ槽、2…支持盤、4…リング状陰極、5…カバー部材、11…回転テーブル、12…回転軸、13…給電ブラシ、16陽極、17…給液パイプ、18…可溶性金属体、PL…メッキ液、CC…チップ、CCa…下地金属膜、21…シート状排液部材、2a…排液溝、21’…シート状排液部材、21a…シート状排液部材21’の通液抑制部21b以外の部分、21b…シート状排液部材21’の通液抑制部、22…リング状排液部材。
Claims (5)
- 支持盤とリング状陰極の間にメッキ液排出用の排液部材を備える回転可能なメッキ槽と、メッキ槽内に配置された陽極とを具備し、被メッキ物が投入されたメッキ槽を回転させ、且つ、メッキ槽内に供給されたメッキ液を排液部材を通じてメッキ槽外に排出しながら被メッキ物へのメッキ処理を行う回転メッキ装置において、
前記メッキ槽の排液部材は外周縁がリング状陰極の下面と接する形状のシートから成りメッキ槽の内側底面を構成しており、
前記支持盤の表面外周部分には、シート状排液部材の下面と向き合う排液溝が少なくとも1つ設けられている、
ことを特徴とする回転メッキ装置。 - 支持盤とリング状陰極の間にメッキ液排出用の排液部材を備える回転可能なメッキ槽と、メッキ槽内に配置された陽極とを具備し、被メッキ物が投入されたメッキ槽を回転させ、且つ、メッキ槽内に供給されたメッキ液を排液部材を通じてメッキ槽外に排出しながら被メッキ物へのメッキ処理を行う回転メッキ装置において、
前記メッキ槽の排液部材は外周縁がリング状陰極の下面と接する形状のシートから成りメッキ槽の内側底面を構成しており、
前記シート状排液部材の中央には、リング状陰極の内形よりも小さな通液抑制部が設けられている、
ことを特徴とする回転メッキ装置。 - 支持盤とリング状陰極の間にメッキ液排出用の排液部材を備える回転可能なメッキ槽と、メッキ槽内に配置された陽極とを具備し、被メッキ物が投入されたメッキ槽を回転させ、且つ、メッキ槽内に供給されたメッキ液を排液部材を通じてメッキ槽外に排出しながら被メッキ物へのメッキ処理を行う回転メッキ装置において、
前記メッキ槽の排液部材は外周縁がリング状陰極の下面と接する形状のシートから成りメッキ槽の内側底面を構成しており、
前記メッキ槽は支持盤とリング状陰極の間とは異なる位置に別の排液部材を備える、
ことを特徴とする回転メッキ装置。 - 前記メッキ槽は、2以上のリング状陰極を備え、支持盤と最下位のリング状陰極の間と、隣接するリング状陰極の間と、最上位のリング状陰極とカバー部材の間のそれぞれに排液部材を備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の回転メッキ装置。 - 請求項1〜4の何れか1項に記載の回転メッキ装置を用いて、電子部品用チップに設けられた下地金属膜上に少なくとも1層の金属膜を形成する、
ことを特徴とする電子部品の製造方法。
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