JP2004300171A - エポキシ樹脂混合物およびその製造方法並びに硬化性エポキシ樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、常温で固形であり取り扱い性に優れ、かつ溶融状態において極めて低粘度を有し、かつ硬化性に優れ、機械的強度、耐熱性及び耐湿性に優れた硬化物を与えることから、電気・電子部品の封止材料、成形材料、注型材料、積層材料、複合材料、接着剤及び粉体塗料等の用途に有用なエポキシ樹脂混合物およびその製造方法と、このエポキシ樹脂混合物を必須成分とする硬化性エポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、機械的性質、耐湿性、電気的性質などに優れた硬化物を与えるので、電気・電子部品の封止材料、成形材料、注型材料、積層材料、複合材料、接着剤及び粉体塗料等などの幅広い分野に利用されている。しかしながら、近年、各分野における技術の進歩に伴い、エポキシ樹脂の高性能化に対する要求が高まってきており、従来のエポキシ樹脂ではその要求に対応できなくなってきている。例えば、電気・電子用途の分野においては電子部品の小型化、薄型化技術の進展に伴い、低溶融粘度のエポキシ樹脂混合物が望まれている。これは小型化した部品内部の狭い空隙にも十分に樹脂を送り込ませるためである。従来、低溶融粘度のエポキシ樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が広く用いられているが、これらのエポキシ樹脂は常温で液状または粘稠状であるために、用途によっては取り扱いが困難であり、作業性に劣るという欠点がある。さらにこれらのエポキシ樹脂は機械的強度や耐湿性についても不十分である。
【0003】
これらの問題点を解決するために、常温以上で結晶性を有するエポキシ樹脂が提案されている。例えば、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂(特公平7−53791号公報)、スチルベン型エポキシ樹脂(特開平9−12674号公報)などである。しかし、これらのエポキシ樹脂はエポキシ基の近くに嵩高い置換基を有するため、溶融粘度が高く、さらに硬化性の点でも十分とはいえない。
【0004】
【特許文献1】
特公平7−53791号公報
【特許文献2】
特開平9−12674号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、常温で固形であるため取り扱い性に優れると共に極めて低溶融粘度を有し、硬化性に優れており、さらに機械的強度、耐熱性及び耐湿性に優れた硬化物を与え、電気・電子部品の封止材料、成形材料、注型材料、積層材料、複合材料、接着剤及び粉体塗料等の用途に有用なエポキシ樹脂混合物およびその製造方法と、このエポキシ樹脂混合物を必須成分とする硬化性エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のエポキシ樹脂混合物は、下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂成分を含むエポキシ樹脂混合物であって、該一般式(1)において、n=0、n=1、およびn=2のエポキシ樹脂成分の合計が、該一般式(1)で表される全エポキシ樹脂成分中の50質量%以上であることを特徴とする。
【0007】
【化3】
(ただし、R1〜R8は互いに同じであっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、置換または無置換のアラルキル基、置換または無置換のアリール基あるいは置換または無置換のフェノキシ基を示す。)
【0008】
即ち、本発明者等は、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の化学構造を持つエポキシ樹脂混合物が常温で結晶であるので取り扱い性に優れた固体状を維持することができ、融点以上では極めて低い粘度を示すこと、およびそのエポキシ樹脂混合物を用いた硬化性エポキシ樹脂組成物が硬化性に優れ、機械的強度、耐熱性及び耐湿性に優れた硬化物を与えることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
このエポキシ樹脂混合物は、結晶性であり、その融点が35〜160℃であり、さらに150℃における溶融粘度が50mPa・s以下であることが好ましい。
【0010】
本発明のエポキシ樹脂混合物の製造方法は、このような本発明のエポキシ樹脂混合物を製造する方法であって、下記一般式(2)で表されるジチオビスフェノール化合物と、該ジチオビスフェノール化合物1モルあたり4〜40モルのエピハロヒドリンとを、アルカリ金属水酸化物の存在下に反応させることを特徴とする。
【0011】
【化4】
(ただし、R1〜R8は前記一般式(1)におけると同義である。)
【0012】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、このような本発明のエポキシ樹脂混合物と、エポキシ樹脂硬化剤とを含むことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
本発明のエポキシ樹脂混合物は、前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂成分を複数種類含むエポキシ樹脂混合物であり、前記一般式(1)において、n=0のエポキシ樹脂成分(以下「n=0体」と称す。)と、n=1のエポキシ樹脂成分(以下「n=1体」と称す。)と、n=2のエポキシ樹脂成分(以下「n=2体」と称す。)の合計が、前記一般式(1)で表される全エポキシ樹脂成分中に50質量%以上、好ましくは80質量%以上含有されているものである。より好ましくは、n=0体が前記一般式(1)で表される全エポキシ樹脂成分中の70質量%以上含有されていることが好適である。前記一般式(1)で表される全エポキシ樹脂成分中のこれらのn=0体、n=1体およびn=2体の3成分の合計の割合が50質量%未満であると、nが高次のエポキシ樹脂成分が多くなり、その結果、本発明の特長である結晶性が消失したり、低粘度性が不十分になるなどの不具合がでてくるので好ましくない。
【0015】
また、本発明のエポキシ樹脂混合物は結晶性でありかつ、その融点が35〜160℃、好ましくは45〜130℃、より好ましくは50〜120℃であることが好ましい。融点が35℃より低いと常温でも溶融し始めるため取り扱い作業性が悪くなり、160℃より高い場合は、硬化剤など他の添加剤と混合しにくくなるので好ましくない。
【0016】
また、本発明のエポキシ樹脂混合物は150℃における溶融粘度が50mPa・s以下、特に1〜30mPa・sであることが好ましい。この溶融粘度が50mPa・sより高いと本発明のエポキシ樹脂混合物を用いた硬化性エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなるため用途によっては満足な性能を与えることができない。
【0017】
なお、前記一般式(1)において、R1〜R8のアルキル基としては、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、ターシャルブチル基が挙げられる。また、シクロアルキル基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基が挙げられる。また、アルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、ターシャルブチルオキシ基が挙げられる。また、アラルキル基としては、炭素数7〜12のアラルキル基、例えばベンジル基が挙げられ、このようなアラルキル基に導入できる置換基としては、メチル基、エチル基、ターシャルブチル基などが挙げられる。また、アリール基としては、炭素数6〜15のアリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が挙げられ、このようなアリール基に導入できる置換基としては、メチル基、エチル基、ターシャルブチル基などが挙げられる。また、フェノキシ基に導入できる置換基としては、メチル基、エチル基、ターシャルブチル基などが挙げられる。R1〜R8としては、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、ターシャルブチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、ベンジル基、フェニル基である。また、前記一般式において、nは通常0〜7の範囲である。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂混合物には、特性の微調整のために、前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂成分以外のその他のエポキシ樹脂を含有していてもよい。この場合、前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂成分以外のエポキシ樹脂としては公知のエポキシ樹脂を用いることができ、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、テトラメチルビフェニル型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、ビスフェノールAノボラック型、ジシクロペンタジエンフェノール縮合型、フェノールアラルキル縮合型などのエポキシ樹脂が挙げられ、これらの1種或いは2種以上を用いることができる。これらのうち、ビフェニル型、テトラメチルビフェニル型のエポキシ樹脂が、結晶性で低溶融粘度を呈するため好ましい。これらの前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂成分以外のその他のエポキシ樹脂を用いる場合、その混合割合は前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂成分とその他のエポキシ樹脂との合計のうち50質量%以下とすることが好ましい。この割合が50質量%よりも多いと、本発明の特徴が十分に発現されない。前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂成分以外に用いることができるエポキシ樹脂は、あらかじめ調製或いは入手したものを前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂成分と溶融などの方法で混合して本発明のエポキシ樹脂混合物に含有させることができる。また、これらの他のエポキシ樹脂の前駆体である各種フェノール化合物と後述のジチオビスフェノール化合物とを同時に仕込んで、後述する方法により前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂成分と共に生成させて含有させることもできる。
【0019】
前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂成分を含む本発明のエポキシ樹脂混合物は、例えば、本発明の方法に従って、前記一般式(2)で表されるジチオビスフェノール化合物とエピハロヒドリンとをアルカリ金属水酸化物の存在下に所定の割合で反応させて得ることができる。例えば、まず、ジチオビスフェノール化合物を、ジチオビスフェノール化合物1モルあたり4〜40モルに相当する量のエピハロヒドリンに溶解させて均一な溶液とする。次いで、その溶液を撹拌しながら、これにジチオビスフェノール化合物1モル当たり1.8〜5モル量のアルカリ金属水酸化物を固体または水溶液で加えて反応させる。この反応は、常圧下または減圧下で行わせることができ、反応温度は通常、常圧下の反応の場合は30〜150℃であり、減圧下の反応の場合は30〜80℃である。反応は必要に応じて所定の温度を保持しながら反応液を共沸させ、揮発する蒸気を冷却して得られた凝縮液を油/水分離し、水分を除いた油分を反応系へ戻す方法により脱水しながら行ってもよい。アルカリ金属水酸化物の添加は、急激な反応を抑えるために、1〜8時間かけて少量ずつを断続的もしくは連続的に添加する。その全反応時間は通常、1〜10時間である。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂混合物において、本発明の特長である結晶性と低溶融粘度性を両立させるためには、n=0〜2体の成分の組成を前述のように制御することが重要であるが、この樹脂成分組成は、上記反応工程におけるジチオビスフェノール化合物に対するエピハロヒドリンのモル比で制御することができ、ジチオビスフェノール化合物に対するエピハロヒドリンのモル比は4〜40、好ましくは8〜20とする。このモル比が4より低いと得られるエポキシ樹脂混合物の粘度が高くなり、40より高いとそれ以上エポキシ樹脂混合物の粘度は低くならないばかりか、未反応のエピハロヒドリンの留去に手間がかかり非効率的である。
【0021】
上記反応の終了後は、不溶性の副生塩を濾別して除くか、水洗により除去した後、未反応のエピハロヒドリンを減圧留去して除くことにより、目的のエポキシ樹脂混合物が得られる。
【0022】
この反応におけるエピハロヒドリンとしては通常、エピクロルヒドリンおよび/またはエピブロモヒドリンが用いられる。
【0023】
また、アルカリ金属水酸化物としては通常、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムが用いられる。
【0024】
また、ジチオビスフェノール化合物は前記一般式(2)で表されるものであり、具体的な例を挙げると、4,4’−ジチオビスフェノール、4,4’−ジチオビス(2−メチルフェノール)、4,4’−ジチオビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−ジチオビス(2−t−ブチルフェノール)、4,4’−ジチオビス(5−メチル−2−t−ブチルフェノール)、4,4’−ジチオビス(2−ベンジルフェノール)、4,4’−ジチオビス(2−メトキシフェノール)などである。これらジチオビスフェノール化合物は公知の方法で製造することができる。例えば、フェノール類をエチレングリコールモノアルキルエーテル類に溶解させて、塩化硫黄を滴下して反応させる方法(特開昭63−255260号公報)などが挙げられる。
【0025】
また、この反応においては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミドなどの第四級アンモニウム塩;ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの第三級アミン;2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類;エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイドなどのホスホニウム塩;トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類等の触媒を単独または2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0026】
さらにこの反応においては、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;メトキシプロパノールなどのグリコールエーテル類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒等の、反応に不活性な有機溶媒を単独または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0027】
さらに上記のようにして得られたエポキシ樹脂混合物の可鹸化ハロゲン量が多すぎる場合は、再処理して十分に可鹸化ハロゲン量が低下した精製エポキシ樹脂混合物を得ることができる。即ち、反応により得られた粗製エポキシ樹脂混合物を、2−プロパノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、ジオキサン、メトキシプロパノール、ジメチルスルホキシドなどの不活性な有機溶媒に再溶解し、アルカリ金属水酸化物を固体または水溶液で加えて約30〜120℃の温度で0.5〜8時間再閉環反応を行った後、水洗等の方法で過剰のアルカリ金属水酸化物や副性塩を除去し、さらに有機溶媒を減圧留去して除くと、精製されたエポキシ樹脂混合物が得られる。
【0028】
なお、USP3,350,423に記載されるように、本発明のエポキシ樹脂混合物は、フェノール類とエピハロヒドリンと塩化硫黄の混合物に所定量の水酸化ナトリウム水溶液を加えて、フェノールのエポキシ化とフェノールのスルフィド化を同時に進行させることで、混合物の一部として得ることもできる。しかしながら、この製法の場合、前記一般式(1)で表されるジスルフィド体以外にモノスルフィド体やトリスルフィド体などのエポキシ樹脂が生成するため、得られるエポキシ樹脂混合物は粘調な液状ないし半固形状となり取り扱い性が著しく劣るものとなる。さらに、この製造方法ではエポキシ樹脂成分以外の副生物も生成するので、目的の用途には好ましくない。またジスルフィド体の収率も高くないため再結晶などによる単離は実質的に不可である。
【0029】
本発明によるエポキシ樹脂混合物の製造において、通常、反応溶剤の留去はエポキシ樹脂混合物の融点近傍かそれ以上の温度で実施されるため、溶剤留去直後のエポキシ樹脂混合物は溶融状態である。この溶融状態のエポキシ樹脂混合物を結晶させ固形物とする方法としては特に制限はなく公知の方法を用いることができる。例えば、高温で溶融状態のエポキシ樹脂混合物をバット等に抜き出し、自然冷却により結晶固形化する方法、抜き出した後、あらかじめ用意したそのエポキシ樹脂混合物の結晶固形物を結晶核として少量添加し結晶化を促進する方法、溶融状態のエポキシ樹脂を撹拌したり、振動を与えるなどにより結晶化を促進する方法、ニーダーなどで強い外力を加えながら抜き出す方法、過冷却にならないように温度を制御しながら結晶化を促進させる方法などが挙げられ、これらの方法を単独或いは複数組み合わせて行うことができる。
【0030】
また、エポキシ樹脂混合物の更なる低粘度化や高純度化のために、反応で得られた粗エポキシ樹脂混合物ないし精製エポキシ樹脂混合物を適当な溶剤を用いて再結晶してもよい。
【0031】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂混合物とエポキシ樹脂硬化剤を必須成分として含み、必要に応じて硬化促進剤等を配合なるものである。
【0032】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂硬化剤としては、特に指定はなく、公知のエポキシ樹脂硬化剤を用いることができる。それらのエポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、チオジフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテルなどの多価フェノール類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、種々のフェノール類とベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザールなどの種々のアルデヒド類との縮合反応で得られるフェノール樹脂等、フェノールアラルキル樹脂、フェノールテルペン樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂などの各種フェノール樹脂類、各種フェノール(樹脂)類のフェノール性水酸基の全部もしくは一部をベンゾエート化或いはアセテート化などのエステル化により得られた活性エステル化合物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、メチルナジック酸などの酸無水物類、ジエチレントリアミン、イソホロジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド等のアミン類が挙げられる。これらのエポキシ樹脂硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0033】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に使用されるエポキシ樹脂硬化剤の量は、全エポキシ樹脂中のエポキシ基1モルに対して、全硬化剤中のエポキシ基と反応する基が0.5〜2.0モルになる量が好ましく、より好ましくは0.7〜1.2モルである。この範囲外の配合においてはいずれの場合も硬化が不完全となり、十分な硬化物性が得られない。
【0034】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に任意成分として用いられる硬化促進剤としては、特に指定はなく、公知の硬化促進剤を用いることができる。その硬化促進剤としては例えば、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリス(シアノエチル)ホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリシアノエチルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジシアノ−6−[2−ウンデシルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジンなどのイミダゾール類、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテ−ト、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、2−エチル−1,4−ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレートなどのイミダゾリウム塩、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、テトラメチルブチルグアニジン、N−メチルピペラジン、2−ジメチルアミノ−1−ピロリンなどのアミン類、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレートなどのアンモニウム塩、1,5−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)−オクタンなどのジアザビシクロ化合物、それらジアザビシクロ化合物のテトラフェニルボレート、フェノール塩、フェノールノボラック塩、2−エチルヘキサン酸塩などが挙げられる。これらの硬化促進剤の中では、ホスフィン化合物、イミダゾール化合物、ジアザビシクロ化合物、及びそれらの塩が好ましい。それらの硬化促進剤は、単独でまたは2種以上混合して用いられ、その使用量は、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の全エポキシ樹脂に対して、0.1〜7重量%とすることが好ましい。
【0035】
なお、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物には、その用途上の必要に応じて、前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂成分以外の前述のその他のエポキシ樹脂や、充填材、カップリング剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、溶剤、反応性希釈剤、顔料等の添加剤を適宜に配合することができる。
【0036】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂混合物、各種硬化剤および必要に応じて配合される各種硬化促進剤やその他の添加剤を混合することで得られるが、その混合の方法は特に指定はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、押出機、ニーダー、ロール等を用いて均一になるまで混合しても良いし、容器の中で加熱等により溶融させて混合した後、組成物を取り出しても良い。
【0037】
得られた組成物は、溶融注型或いはトランスファー成形などの方法で、80〜200℃の温度で15秒〜10時間硬化させることで硬化物を得ることができる。また、この組成物をアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミドなどの適当な溶剤に溶解させ、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥することにより得られたプリプレグを、熱プレス成形して硬化物を得ることもできる。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂混合物は取り扱い性に優れ、極めて低溶融粘度を示し、硬化性に優れており、このエポキシ樹脂混合物を用いた本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は機械的強度、耐熱性および耐湿性に優れた硬化物を与えるので、電気・電子部品の封止材料、成形材料、注型材料、積層材料、複合材料、接着剤及び粉体塗料等の用途に有用である。
【0039】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
反応容器に4,4’−ジチオビスフェノール200g、エピクロルヒドリン890g、2−プロパノール350gを仕込み、40℃に昇温して均一に溶解させた後、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液152gを90分かけて滴下した。その間に徐々に昇温し、滴下終了後には系内が65℃になるようにした。その後、65℃で30分保持して反応を完了させ、水洗により副生塩および過剰の水酸化ナトリウムを除去した。次いで、生成物から減圧下で過剰のエピクロルヒドリンと2−プロパノールを留去して、粗製エポキシ樹脂混合物を得た。
【0041】
この粗製エポキシ樹脂混合物をメチルイソブチルケトン440gに溶解させ、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液14gを加え、65℃の温度で1時間反応させた。その後、反応液に第一リン酸ナトリウム水溶液を加えて、過剰の水酸化ナトリウムを中和し、水洗して副生塩を除去した。次いで、加温減圧下でメチルイソブチルケトンを完全に除去したのち、溶融状態の樹脂状物をバットに抜き出し、ガラス棒で十数回撹拌したのち、室温下にて自然冷却させた。約2時間後には全体が結晶固化していた。これを取り出して目的のエポキシ樹脂混合物275gを得た。
【0042】
得られた樹脂混合物はエポキシ当量190g/eq、加水分解性塩素450ppm、150℃における溶融粘度8mPa・s、DSC測定による融点55℃であった。また、室温において固形であり取り扱い性は良好であった。得られたエポキシ樹脂混合物のNMRスペクトルを図1に示し、各ピークの帰属を表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
以上より後述の化学式(I)で表されるエポキシ樹脂混合物が得られたことが確認できた。また、このエポキシ樹脂混合物のHPLC分析(逆相液体クロマトグラフィー、検出器:UV280nm)を行ったところ、図2に示す如く、全樹脂成分中のn=0体、n=1体及びn=2体の含有量はそれぞれ86.2質量%、7.1質量%、0.8質量%であることが確認された。
【0045】
(実施例2)
実施例1において4,4’−ジチオジフェノール200gのかわりに4,4’−ジチオビス(5−メチル−2−t−ブチルフェノール)390gを用い、実施例1と同様の操作を行い、後述の化学式(II)で表されるエポキシ樹脂混合物368gを得た。得られたエポキシ樹脂混合物はエポキシ当量270g/eq、加水分解性塩素423ppm、150℃における溶融粘度17mPa・s、DSC測定による融点104℃であった。また、室温において結晶性の固形であり取り扱い性は良好であった。また、このエポキシ樹脂混合物のHPLC分析より、得られたエポキシ樹脂混合物は後述の化学式(II)で表され、全樹脂成分中のn=0体、n=1体およびn=2体の含有量はそれぞれ80.1質量%、10.9質量%、1.5質量%であることが確認された。
【0046】
(実施例3)
実施例1において4,4’−ジチオジフェノール200gのかわりに4,4’−ジチオジフェノール200gと4,4’−ビフェノール78gとを同時に仕込み、その後は実施例1と同様の操作を行い、後述の化学式(I)で表される本発明に係るエポキシ樹脂成分と化学式(III)で表されるその他の本発明のエポキシ樹脂成分とからなるエポキシ樹脂混合物252gを得た。得られたエポキシ樹脂混合物はエポキシ当量175g/eq、加水分解性塩素543ppm、150℃における溶融粘度は7mPa・sであり、DSCによる融点測定ではピークが不明瞭であり正確な融点測定はできなかった。この混合エポキシ樹脂は室温において結晶性の固形であり、150℃では完全に溶融状態であった。HPLC分析より化学式(I)で表されるエポキシ樹脂成分の含有量は得られたエポキシ樹脂混合物中の65.3質量%であり、化学式(I)で表される全樹脂成分中の各n=0体、n=1体及びn=2体の含有量はそれぞれ93.8質量%、5.4質量%、0.8質量%であることが確認された。
【0047】
【化5】
【0048】
(実施例4〜6)
実施例1〜3で得られた各エポキシ樹脂混合物とエポキシ硬化剤としてフェノールノボラック(軟化点83℃)を用い、表2に示す所定量をガラスビーカー内で100℃にて溶融混合し、さらに硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを表2に示す所定量添加してよく混合した。得られた硬化性エポキシ樹脂組成物を注型し、170℃で、5時間アフターキュアさせて硬化物を得た。得られた硬化物の諸物性を測定し、結果を表2に示した。
【0049】
(比較例1,2)
実施例4〜6において、実施例1〜3で得られたエポキシ樹脂混合物の代わりに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(常温で液状、150℃における粘度は10mPa・s)、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂(融点105℃、150℃における粘度は15mPa・s)をそれぞれ用い、実施例4〜6と同様に硬化物を得、その物性を測定し、結果を表2に示した。
【0050】
【表2】
【0051】
以上の結果から明らかなように、本発明のエポキシ樹脂混合物は常温で固形であるので取り扱い性に優れ、溶融状態で極めて低粘度であった。また、このエポキシ樹脂混合物を用いた硬化性エポキシ樹脂組成物は、硬化性に優れ、機械的強度、耐熱性および耐湿性に優れた硬化物を与えることができる。
【0052】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明のエポキシ樹脂混合物は常温で固形であるため取り扱い性に優れ、かつ溶融状態において極めて低粘度を示すため、充填性等も良好である。このような本発明のエポキシ樹脂混合物は、本発明のエポキシ樹脂混合物の製造方法により容易に製造することができる。また、本発明のエポキシ樹脂混合物を用いた本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は硬化性に優れ、機械的強度、耐熱性および耐湿性に優れた硬化物を与えることから、電気・電子部品の封止材料、成形材料、注型材料、積層材料、複合材料、接着剤及び粉体塗料等の用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で製造したエポキシ樹脂混合物のNMRスペクトルチャートである。
【図2】実施例1で製造したエポキシ樹脂混合物のHPLC分析チャートである。
Claims (5)
- 結晶性であり、その融点が35〜160℃であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂混合物。
- 150℃における溶融粘度が50mPa・s以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のエポキシ樹脂混合物。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂混合物と、エポキシ樹脂硬化剤とを含むことを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物。
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WO2019142646A1 (ja) * | 2018-01-16 | 2019-07-25 | 日立化成株式会社 | 硬化性樹脂組成物、半導体装置、及び半導体装置の製造方法 |
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- 2003-03-28 JP JP2003091486A patent/JP2004300171A/ja active Pending
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