JP2004299972A - セメント系固化材および地盤改良方法 - Google Patents

セメント系固化材および地盤改良方法 Download PDF

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豊次 安井
Yasunori Suzuki
康範 鈴木
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Abstract

【課題】関東ロームに代表される火山灰質粘性土は一般土と比べて六価クロムが溶出されやすい。従来のカルシウムアルミネート系鉱物を混合してなるセメント系固化材は該六価クロムの溶出は効果的に防止し得るが、改良処理された地盤の強度増進が十分でない。本発明は、斯かる問題点に鑑み、火山灰質粘性土を地盤改良する場合であっても、六価クロムの溶出を防止でき、しかも十分な強度増進効果の得られるセメント系固化材および地盤改良方法を提供することを課題とする。
【解決手段】カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物を含有し、且つ該カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物に対して0.1〜1.0質量%の硫化物硫黄が含有されてなることを特徴とするセメント系固化材による。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメント系固化材と、これを用いた地盤改良方法に関し、より詳しくは、関東ロームのような火山灰質粘性土を地盤改良処理するためのセメント系固化材および地盤改良方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セメント系固化材は、ポルトランドセメントを主成分として、ポゾラン物質や石膏などの強度増進材を添加して製造されたものであり、地盤改良土、流動化処理土、気泡混合処理土などの軟弱地盤の地盤改良工事に多用されている。
【0003】
ところで、該セメント系固化材を用いた地盤改良工事に関し、2000年3月に旧建設省、旧運輸省、農林水産省などにより、「セメント及びセメント系固化材の地盤改良への使用及び改良土の再利用に関する当面の措置について」の通達が出された。該通達により、(1)事前に現地土壌と使用予定の固化材による六価クロム溶出試験を実施すること、(2)土壌環境基準(0.05mg/l)を超える場合、溶出が少ない固化材の使用など配合設計の変更や工法の変更を行うこと、(3)改良土を再利用する場合、六価クロム溶出量が土壌環境基準以下であることを確認すること、が義務付けられた。
その後、学識経験者を含めた委員会の検討も踏まえ、2001年4月には、国土交通省より「セメント及びセメント系固化材を使用した改良土の六価クロム溶出試験要領(案)の一部変更について」の通達が出された。具体的には、火山灰質粘性土以外の土に関しては、配合設計の段階で環境基準を満足すればその後の施工後の確認試験は不要とするという緩和策であった。
しかしながら、関東ロームに代表される火山灰質粘性土は一般土と比べて六価クロムが溶出されやすいため、緩和措置は適用されず依然として上述のような施工後の溶出試験が必要な状況となっている。
【0004】
従来、六価クロムの溶出を低減し得るセメント系固化材として、カルシウムアルミネート系鉱物を混合してなるセメント系固化材も提案されている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−279937号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、該カルシウムアルミネート系鉱物を混合してなるセメント系固化材を用いて火山灰質粘性土の地盤改良を行った場合、六価クロムの溶出は効果的に防止されるが、改良処理された地盤の強度増進が十分でないという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、火山灰質粘性土を地盤改良する場合であっても、六価クロムの溶出を防止でき、しかも十分な強度増進効果の得られるセメント系固化材および地盤改良方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意研究を重ねたところ、六価クロム溶出量の低減に有効なカルシウムアルミネート系クリンカ鉱物を含有し、且つ該カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物に対して所定量の硫化物硫黄を含有するセメント系固化材が強度改善にも極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物を含有し、且つ該カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物に対して0.1〜1.0質量%の硫化物硫黄が含有されてなることを特徴とするセメント系固化材を提供する。
【0010】
また、本発明は、カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物を含有し、且つ該カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物に対して0.2〜0.5質量%の硫化物硫黄が含有されてなることを特徴とするセメント系固化材を提供する。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、前記カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物が、11CaO・7Al・CaFを含有したものとする。
【0012】
さらに、本発明は、上述のようなセメント系固化材を用いて火山灰質粘性土を地盤改良することを特徴とする地盤改良方法を提供する。
【0013】
尚、本発明において、カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物に対する硫化物硫黄の含有量は、JIS R 5202「ポルトランドセメントの化学分析方法」に規定された「硫化物硫黄の定量方法」に基づいて測定される値である。
【0014】
硫化物硫黄を含有するセメントクリンカは、エトリンガイトの生成を促進して成形体を膨張させると考えられていたため、コンクリート等として用いられる一般的なセメントでは、硫化物硫黄の含有は好ましくないと考えられている。
しかしながら、本発明に係るセメント系固化材においては、カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物に硫化物硫黄が含まれていることにより、逆に地盤の強度が改善することが可能となった。このように、地盤の強度が改善される理由は定かではないが、処理土と混合して用いられるセメント系固化材においては、セメントの膨張がさほど悪影響とならず、逆に、石膏と同様の効果を果たすこと等によって強度が増進したものと推測される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、好ましい態様に基づいてさらに詳細に説明する。
【0016】
本発明のセメント系固化材は、カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物を含有するものであって、且つ該カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物に対して0.1〜1.0質量%、好ましくは0.2〜0.5質量%の硫化物硫黄が含有されてなる。
カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物に対する硫化物硫黄の含有量が0.1質量%未満の場合、或いは1.0質量%を越える場合には、強度改善効果が得られ難くなる虞がある。また、硫化物硫黄の含有量が0.2〜0.5質量%であれば、地盤の強度をより一層効果的に改善することができる。
【0017】
カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物としては、CaO・Al、CaO・2Al、3CaO・Al、12CaO・7Al、カルシウムハロアルミネート(例えば11CaO・7Al・CaF)、カルシウムスルホアルミネート(例えば3CaO・3AlO・3Al・CaSO)、アルミナセメントなどが挙げられ、特に11CaO・7Al・CaFが好適である。
【0018】
0.1〜1.0質量%の硫化物硫黄を含むカルシウムアルミネート系クリンカ鉱物を得るための焼成方法については特に限定されるものではないが、例えば、カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物が20〜30質量%、3CaO・SiOが50〜80質量%得られるような配合でセメント原料を焼成装置へ供給し、該セメント原料を1550〜1650℃の焼成温度で焼成すればよい。
【0019】
また、本発明のセメント系固化材は、前記カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物を40〜65質量%含有し、それ以外の成分として、普通ポルトランドセメントを0〜20質量%、高炉水砕スラグを10〜25質量%、ニ水石膏を5〜15質量%含んでなるものが好ましい。
斯かる配合のセメント固化材によれば、火山灰質粘性土を地盤改良する際に六価クロムの溶出をより効果的に防止し、しかも、地盤強度をより効果的に改善することができる。
【0020】
また、本発明に係る地盤改良方法は、上述のような構成のセメント系固化材を用い、火山灰質粘性土を被処理土として地盤改良処理を行うものである。
具体的には、上述のようなセメント系固化材を粉体状にしたもの、或いは、該粉体状のセメント系固化材と水とを混合してスラリー状にしたものを用い、該セメント系固化材を、公知の手段によって被処理土たる火山灰質粘性土に注入、あるいは攪拌混合する。
【0021】
被処理土となる火山灰質粘性土としては、例えば、関東ロームを挙げることができる。
【0022】
斯かる方法によれば、六価クロムの溶出を効果的に防止し、しかも、一般土を強度改善した場合と同程度の強度にまで、火山灰質粘性土の強度を改善することが可能となる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明する。ただし本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
硫化物硫黄を0.3質量%含む11CaO・7Al・CaFクリンカ鉱物40質量部と、普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント株式会社製)20質量部と、高炉水砕スラグ25質量部と、ニ水石膏15質量部とを配合し、セメント固化材を調製した。
【0025】
(比較例1)
前記11CaO・7Al・CaFクリンカ鉱物の代わりに、硫化物硫黄を含まない11CaO・7Al・CaFクリンカ鉱物を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例1のセメント系固化材を調製した。
【0026】
(比較例2)
普通ポルトランドセメント(同上)65質量部と、高炉水砕スラグ25質量部と、ニ水石膏15質量部とを配合し、比較例2のセメント固化材を調製した。
【0027】
(比較例3)
普通ポルトランドセメント(同上)85質量部と、ニ水石膏15質量部とを配合し、比較例3のセメント固化材を調製した。
【0028】
強度の測定
前記実施例および比較例のセメント系固化材200kgを1mの火山灰質粘性土(千葉県佐倉市産で採取した湿潤状態の関東ローム)および一般粘性土(滋賀県彦根市で採取した土)とそれぞれ混練して地盤改良サンプル(φ5×10cmの供試体を)を作成し、JIS A 1216に基づく一軸圧縮試験を行った。結果を表1に示す。
【0029】
六価クロム溶出量の測定
六価クロムの溶出量は、環境庁告示46号「土壌の汚染に係る環境基準について」で定められた溶出試験方法であるDC法(ジフェニルカルバジド吸光光度法)(JIS K 0102の65.2.1)により求めた。結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
Figure 2004299972
【0031】
表1に示したように、比較例3のような通常のセメント系固化材では、一般土および関東ロームに対して強度改善効果が良好であるが、六価クロム溶出量が多い結果となった。
【0032】
また、比較例2のような、いわゆる六価クロムの溶出低減型のセメント固化材では、一般土においては六価クロム溶出低減効果が良好であるものの、関東ロームに対しては溶出低減効果および強度改善効果が十分でないことがわかる。
【0033】
さらに、比較例1のような、従来のカルシウムアルミネート系クリンカ鉱物を含有したセメント固化材では、一般土および関東ロームの双方において六価クロムの溶出低減効果に優れているものの、関東ロームにおいては強度改善効果が不充分であることがわかる。
【0034】
これに対し、実施例のセメント系固化材によれば、一般土および関東ロームの双方において六価クロムの溶出低減効果に優れており、しかも、関東ロームにおいても、通常のセメント系固化材と同程度の優れた強度改善効果が得られていることが認められる。
【0035】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るセメント系固化材および地盤改良方法によれば、火山灰質粘性土のような六価クロム溶出量の多い地盤の改良工事に使用した場合であっても、六価クロムの溶出低減のみならず、優れた強度改善効果を奏することができる。

Claims (4)

  1. カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物を含有し、且つ該カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物に対して0.1〜1.0質量%の硫化物硫黄が含有されてなることを特徴とするセメント系固化材。
  2. カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物を含有し、且つ該カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物に対して0.2〜0.5質量%の硫化物硫黄が含有されてなることを特徴とするセメント系固化材。
  3. 前記カルシウムアルミネート系クリンカ鉱物が、11CaO・7Al・CaFを含有してなることを特徴とする請求項1又は2記載のセメント系固化材。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載のセメント系固化材を用いて火山灰質粘性土を地盤改良することを特徴とする地盤改良方法。
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