JP2004299932A - 炭素複合材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温、かつ、還元性ガスや反応性ガス雰囲気下で、長時間使用された場合であっても消耗やピンホール等が生じることがなく、耐久性に優れた炭素複合材料を提供する。
【解決手段】黒鉛基材と前記黒鉛基材の表面に形成された窒化タンタル層とからなる炭素複合材料であって、前記窒化タンタル層を構成する結晶のX線回折による分析における最大のピークの半値幅が2°以下であることを特徴とする炭素複合材料。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素基材の表面に窒化タンタル層が形成された炭素複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリコンや炭化珪素等からなる単結晶ウエハ等に対して成膜を行う際には、MOCVD(有機金属化学気相成長)、MOVPE(有機金属化学気相エピタキシャル成長)等に使用されるCVD装置、MBE(分子線エピタキシャル成長)装置、昇華法に使用される単結晶成長装置等が用いられており、これらの装置内を構成する部材や、これらの装置で使用される治具には、黒鉛基材の表面をCVD−炭化珪素等により被覆してなる炭素複合材料が利用されていた。
【0003】
これらのCVD装置等の装置では、ウエハ上に成膜を行ったり、装置部材のクリーニングを行ったりする際に、通常、原料ガスや水素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、塩化水素ガス等の反応性ガスを含む1000℃以上の高温ガス雰囲気が形成され、黒鉛基材の表面をCVD−炭化珪素等により被覆してなる炭素複合材料からなる装置部材や治具も、この高温ガス雰囲気に晒されることとなる。
しかしながら、CVD−炭化珪素等からなる表面処理膜は、この高温ガス雰囲気において、還元性ガスや反応性ガスと反応して消耗したり、ピンホールを発生したりするため、黒鉛基材の表面をCVD−炭化珪素等により被覆してなる炭素複合材料からなる装置部材や治具は、黒鉛基材が露出してしまい、この状態でウエハの成膜に使用されると、結晶の成長過程に悪影響を与えてしまうので、頻繁に交換する必要があった。
【0004】
特許文献1には、黒鉛基材の表面にアンモニアに対する耐食性に優れたCVD−炭化珪素被膜が形成されたCVD−炭化珪素被覆材が開示されている。
このCVD−炭化珪素被覆材では、黒鉛基材の表面にアンモニアに対する耐食性に優れたCVD−炭化珪素被膜が形成されているため、黒鉛基材が直接高温ガス雰囲気に晒されることがなく、その結果、黒鉛基材の露出防止に対して効果がある。しかしながら、このCVD−炭化珪素被覆材は、使用可能温度が1250℃程度と充分でなかった。
【0005】
また、CVD−炭化珪素により表面被覆された炭素複合材料は、炭化珪素ウエハ上に炭化珪素をエピタキシャル成長させる処理に用いられる装置の構成部材や治具として用いられると、CVD−炭化珪素被膜の結晶構造に起因して、炭化珪素ウエハのCVD−炭化珪素被膜と接触している側において、結晶構造の異なる炭化珪素が成長してしまい、結晶の成長過程に悪影響を与えるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−47570号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高温、かつ、還元性ガスや反応性ガス雰囲気下で、長時間使用された場合であっても消耗、ピンホール、剥離等が生じることがなく、耐久性に優れた炭素複合材料を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、第一の本発明の炭素複合材料は、炭素基材と上記炭素基材の表面に形成された窒化タンタル層とからなる炭素複合材料であって、
上記窒化タンタル層を構成する結晶のX線回折による分析における最大のピークの半値幅が2°以下であることを特徴とする。
【0009】
第二の本発明の炭素複合材料は、炭素基材と上記炭素基材の表面に形成された窒化タンタル層とからなる炭素複合材料であって、
上記炭素基材の上記窒化タンタル層と接する表面におけるJIS B 0601に基づく算術平均粗さRaは、1〜15μmであることを特徴とする。
【0010】
第三の本発明の炭素複合材料は、炭素基材と上記炭素基材の表面に形成された窒化タンタル層とからなる炭素複合材料であって、
上記炭素基材の水銀ポロシメータで測定した平均気孔半径が0.1〜5μmであることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
まず、第一の本発明の炭素複合材料について説明する。
なお、特に発明を第一〜第三の本発明に限定する必要がない場合には、単に本発明の炭素複合材料として説明する。
第一の本発明の炭素複合材料は、炭素基材と上記炭素基材の表面に形成された窒化タンタル層とから構成されている。
【0012】
上記窒化タンタル層は、窒化タンタル層を構成する結晶のX線回折による分析で、最大のピークの半値幅が2°以下である。
通常、窒化タンタル層を構成する結晶のX線回折による分析を行うと、チャートには、上記窒化タンタル層を構成する結晶の結晶面に応じた複数のピークが現れ、各ピークの強度は、上記窒化タンタル層に存在する結晶面の存在比率を表す。本明細書において、上記最大のピークとは、X線回折のチャートにおいて、最大の強度を持つピークをいう。従って、上記最大のピークは、窒化タンタル層に存在する結晶面のうち、最も高い存在比率を持つ結晶面に対応するピークである。
【0013】
また、半値幅とは、一般に、二つの物理的量の関係を表すグラフが山形をなすとき、縦軸の値が山の最大値の半分になる所の横軸の幅をいう。上記ピークの半値幅は、その結晶の結晶化度を表しており、例えば、(110)面に対応するピークの半値幅が狭い場合(即ち、ピークがシャープな場合)、(110)面での結晶化が進んでいることを示している。一方、(110)面に対応するピークの半値幅が広い場合(即ち、ピークがなだらかな場合)、(110)面での結晶化が発達しておらず、(110)の面指数を持つ結晶の結晶性が低く、アモルファス状態に近いことを示している。
【0014】
第一の本発明の炭素複合材料では、上記窒化タンタル層を構成する結晶のX線回折による分析における最大のピークの半値幅が2°以下となるように設定されている。
従って、上記窒化タンタル層を構成する結晶は、結晶化が進んでいる状態となっており、結晶が安定した状態となっている。その結果、窒化タンタル層の表面は、還元性ガスや反応性ガスと接触したとしても消耗されにくくなり、ピンホールが発生しにくくなると推定される。
【0015】
窒化タンタル層を構成する結晶のX線回折による分析における最大のピークの半値幅が、2°より大きいと、窒化タンタル層は、結晶性が悪くなってアモルファスに近い結晶になり、結晶化されていない不安定な部分から消耗やピンホールが発生しやすくなる。
窒化タンタル層を構成する結晶のX線回折による分析における最大のピークの半値幅の好ましい上限値は、1.5°である。
【0016】
図1は、第一の本発明の炭素複合材料を構成する窒化タンタル層についてX線回折分析を行ったチャートの一例である。図1中に記載している(110)、(101)等で示したピークは各結晶面に相当するメインピークを表している。
図1のチャートにおいて、最大のピークは、(110)面に相当するピークであり、その半値幅は、(110)面に相当するピークの最大値の半分の強度であるところの横軸の幅であり、0.3°となっている。
従って、上記窒化タンタル層を構成する結晶のX線回折による分析における最大のピークの半値幅が2°以下となっており、上記窒化タンタル層を構成する結晶は、結晶化が進んでいる状態となっているため、上記窒化タンタル層の表面には、化学的又は物理的に弱い部分が存在しにくくなっており、その結果、上記窒化タンタル層の表面は、還元性ガスや反応性ガスと接触したとしても消耗されにくく、ピンホールが発生しにくいものとなっている。
【0017】
第一の本発明の炭素複合材料を構成する窒化タンタル層は、上記炭素基材の表面に形成されている。上記窒化タンタル層は、上記炭素基材の表面の全面に形成されてもよく、上記炭素基材の表面の一部に形成されてもよいが、炭素基材が直接還元性ガスや反応性ガスに接触することがないように形成されていることが好ましい。
【0018】
上記窒化タンタル層を構成する窒化タンタルは、耐熱性及び耐アンモニア性等に優れたものであり、高温下においても還元性ガスや反応性ガスとの反応性が低いものである。
【0019】
上記窒化タンタル層は、窒化タンタル微粒子が均質かつ緻密に積層した状態の結晶質の組織からなる層であることが望ましい。第一の本発明の炭素複合材料を高温の反応性ガス、例えばアンモニア雰囲気下に晒しても、消耗やピンホールが生じにくく、たとえ、消耗等が生じても、表面の浅い層で止まり、内部まで進行しにくくなるからである。また、窒化タンタル層が微粒子状結晶からなるものであれば、炭素基材中の不純物(Fe、Al等)が拡散して窒化タンタル層の下層に到達しても、窒化タンタル層中での拡散速度が遅くなり、第一の本発明の炭素複合材料に起因する汚染を防止することができる。
【0020】
上記窒化タンタル層の厚さの望ましい下限値は、10μmであり、望ましい上限値は、200μmである。また、窒化タンタル層の厚さのより望ましい下限値は、20μmであり、より望ましい上限値は、60μmである。
10μm未満であると、厚さが薄すぎるため、内部の炭素基材と還元性ガスや反応性ガスとの反応が進行することがあり、一方、200μmを超えると、熱膨張率の違い等に起因して、窒化タンタル層と炭素基材との剥離が生じやすくなり、また、製品コストの上昇を招くこととなる。
【0021】
第一の本発明の炭素複合材料を構成する炭素基材の材質としては、耐熱性に優れたものであれば特に限定されず、種々の炭素材料を使用することができるが、なかでも、黒鉛が好ましい。また、黒鉛のなかでは、窒化タンタル層との親和性に優れる高純度等方性黒鉛がより好ましい。
【0022】
上記炭素基材の熱膨張係数は、その表面に形成される窒化タンタル層の熱膨張係数に対し、±2.0×10−6/K であることが好ましい。炭素基材と窒化タンタル層との熱膨張係数の差により窒化タンタル層に発生する熱応力を小さくすることができるからである。
【0023】
上記炭素基材の平均気孔半径は、特に限定されるものではないが、0.1〜5μmであることが好ましい。本明細書において、「平均気孔半径」とは、水銀ポロシメーターにより、最大圧力98MPa、試料と水銀の接触角141.3°の条件で気孔容積を求めたときに、累積気孔容積の半分値となる気孔容積に対応する気孔半径の値であるものとする。
上記平均気孔半径が0.1μm未満であると、いわゆるアンカー効果が充分に発揮されず、窒化タンタル層が剥離しやすくなり、一方、5μmを超えると、高温下で炭素基材から放出されるガスの量が多くなる。
【0024】
上記炭素基材の1000℃基準でのガス放出圧力は、10−4Pa/g以下であることが好ましい。放出されるガスとしては、H、CH、CО、CО、HО等が挙げられるが、特に窒化タンタルと反応しやすいCО、HОの発生量をできる限り少なくするために、10−4Pa/g以下であることが好ましい。
【0025】
上記炭素基材の大きさ及び形態としては特に限定されず、用途に応じて種々の大きさ及び形態にすることができる。
【0026】
上記炭素基材の表面は、粗面であることが好まし。粗面の粗さは特に限定されるものではないが、例えば、窒化タンタル層と接する表面におけるJIS B 0601に基づく算術平均粗さRaが1〜15μmであることが特に好ましい。JIS B 0601に基づく算術平均粗さRaが1〜15μmである炭素基材の粗面上に窒化タンタル層が形成されることにより、炭素基材と窒化タンタル層との間でアンカー効果が得られやすくなり、両者の接着強度が強固なものとなるので、炭素基材と窒化タンタル層との間で剥離等が発生することを低減することができる。
【0027】
JIS B 0601に基づく算術平均粗さRaが1μm未満であると、炭素基材と窒化タンタル層との間で充分なアンカー効果を得ることができない。
一方、JIS B 0601に基づく算術平均粗さRaが15μmを超えると、炭素基材の表面に窒化タンタル層を形成する際に、炭素基材の表面における種々の高さの地点で結晶の成長が始まるため、結晶の積層が良好に進行せず、形成される窒化タンタル層は、結晶性が低く、気孔を多く含むものとなり、この気孔の増加に起因して内部まで消耗が進行しやすいものとなる。
【0028】
上記炭素基材の窒化タンタル層と接する表面におけるJIS B 0601に基づく算術平均粗さRaを1〜15μmに調整する方法としては特に限定されず、例えば、サンドブラスト処理、切削加工、サンドペーパーや砥石による研磨処理等の表面処理方法が挙げられる。なかでも、切削加工が好適に用いられる。切削加工の処理速度を調整することにより、表面粗度の大小を調整することが比較的容易だからである。
【0029】
上記炭素基材における不純物の含有量は、Al<0.3ppm、Fe<1.0ppm、Mg<0.1ppm、Si<0.1ppmで、灰分が10ppm以下であることが好ましい。不純物の量がこの範囲を超えると、高温下における窒化タンタルとの化学反応により炭素基材と窒化タンタル層との界面が剥離しやすくなる。
【0030】
更に、上記炭素基材におけるCl及びFの含有量は、それぞれ20ppm以下であることが好ましく、より好ましくはそれぞれ5ppm以下である。
上記炭素基材におけるCl及びFの含有量を上記範囲に調整する方法としては特に限定されず、例えば、ハロゲンガス等による高純度化処理等が挙げられる。
【0031】
第一の本発明の炭素複合材料の用途としては特に限定されず、例えば、半導体の製造工程において使用されるサセプタ、半導体製造装置等における炉部材等の広範囲の用途が挙げられる。
【0032】
図2は、第一の本発明の炭素複合材料の実施形態の一例であるサセプタ10を示した断面図である。
このサセプタ10は、上面に凹部13を有する平板形状の炭素基材11の表面全体に、窒化タンタルからなる被覆層、すなわち、窒化タンタル層12が形成されたものである。
半導体の製造工程においては、炭化珪素ウエハ等の半導体ウエハを、サセプタ10の上面の凹部13に載置、固定し、その後、種々の処理が可能な装置により、エッチング、CVD法等の種々の処理を施して、導体回路や素子等を形成する。
【0033】
次に、第一の本発明の炭素複合材料の製造方法の一例について説明する。
第一の本発明の炭素複合材料を製造する際には、まず、炭素基材を製造する。
炭素基材を製造する際には、最初に、原料であるコークス等の粉砕、整粒を行い、粉砕粒子を様々な粒度に分けた後、複数の粒度の粉末を組み合わせて原料粉末を調製する。
【0034】
次に、この原料粉末に結合材であるピッチ等を添加して混捏し、必要により再粉砕した後、CIP成形、型込め成形、押し出し成形等の成形方法を用いて所定形状の成形体を作製する。
次いで、成形体を、熱処理中の変形と酸化を防ぐため、コークス粉等のパッキング材中に埋め込んで、還元雰囲気下、1000℃前後で加熱焼成処理を行い炭素基材を製造する。また、必要により、さらに、高温にして黒鉛化工程を行うことにより黒鉛からなる炭素基材としてもよい。
なお、第一の本発明に係る炭素基材を製造する方法としては、上述の方法に限られず、他の方法を用いて製造してもよい。
また、上述したように、上記炭素基材を構成する炭素材料としては、特に限定されないが、黒鉛が好ましく、なかでも等方性黒鉛等がより好ましい。このような等方性黒鉛は、例えば、CIP法等により成形を行うことにより、等方性黒鉛からなる炭素基材を製造することができる。
【0035】
上述のようにして製造された炭素基材の形状を加工する方法としては、切削液による汚染を防止するために、乾式による切削加工や研削加工が望ましい。
また、上記炭素基材には、ハロゲンガス等により高純度化処理を施すことが望ましい。
更に、上記炭素基材の表面には、粗面化処理が施されることが好ましい。アンカー効果により、窒化タンタル層との密着性を向上させるためである。
【0036】
次に、炭素基材上に窒化タンタル層を形成する。
上記窒化タンタル層の形成方法としては特に限定されず、例えば、化学蒸着(CVD)法等が好適に用いられる。CVD法により窒化タンタル層を形成する場合には、炭素基材の表面に窒化タンタルを堆積させることにより窒化タンタル層を形成するため、反応温度や各原料ガスのモル比、真空度等の反応条件をコントロールすることにより、結晶性や発達させる結晶面のコントロールが比較的容易であるとともに、反応時間の変更等により窒化タンタル層の厚さのコントロールも比較的容易であるからである。
【0037】
CVD法としては、例えば、タンタルの原料ガスである塩化タンタル(TaCll)ガス等と、窒素の原料であるアンモニア(NH)ガスと水素(H)ガスの混合ガスとを1100〜1800℃の真空加熱炉内で熱分解反応させることにより、下記反応式(1)に示す反応を進行させ、窒化タンタルを炭素基材に堆積させる方法等が挙げられる。
【0038】
TaCl+NH+H→TaN+5HCl・・・(1)
【0039】
また、上記窒化タンタル層の形成方法としては、その他に、溶射法、PVD法、EB法、プラズマCVD法、ターゲット材としての金属タンタル及び反応ガスを使用してのアークイオンプレーティング式反応性蒸着を行う方法等が挙げられ、これらの方法を使用して窒化タンタル層を形成してもよい。
【0040】
上記方法で製造することにより、窒化タンタル層を構成する結晶のX線回折による分析で、最大のピークの半値幅が2°以下である炭素複合材料を製造することができる。
【0041】
以上説明したように、第一の本発明の炭素複合材料では、上記窒化タンタル層を構成する結晶のX線回折による分析における最大のピークの半値幅が2°以下となるように設定されている。
このため、窒化タンタル層の表面には、化学的又は物理的に弱い部分が存在しにくくなり、窒化タンタル層の表面は、還元性ガスや反応性ガスと接触したとしても消耗やピンホールが発生しにくくなる。
【0042】
次に、第二の本発明の炭素複合材料について説明する。
第二の本発明の炭素複合材料は、炭素基材と上記炭素基材の表面に形成された窒化タンタル層とからなる炭素複合材料であって、
上記炭素基材の上記窒化タンタル層と接する表面におけるJIS B 0601に基づく算術平均粗さRaは、1〜15μmであることを特徴とする。
【0043】
第二の本発明の炭素複合材料を構成する窒化タンタル層は、上記炭素基材の表面に形成されている。上記窒化タンタル層は、上記炭素基材の表面の全面に形成されてもよく、上記炭素基材の表面の一部に形成されてもよいが、炭素基材が直接還元性ガスや反応性ガスに接触することがないように形成されていることが好ましい。
【0044】
第二の本発明の炭素複合材料では、上記した粗面を有する炭素基材上に窒化タンタル層が形成されているため、炭素基材と窒化タンタル層との間でアンカー効果が得られやすくなり、両者の接着強度が強固なものとなり、炭素基材と窒化タンタル層との間で剥離等が発生することを低減することができる。
【0045】
上記炭素基材の上記窒化タンタル層と接する表面におけるJIS B 0601に基づく算術平均粗さRaが1μm未満であると、炭素基材と窒化タンタル層との間で充分なアンカー効果を得ることができない。
一方、JIS B 0601に基づく算術平均粗さRaが15μmを超えると、炭素基材の表面に窒化タンタル層を形成する際に、炭素基材の表面における種々の高さの地点で結晶の成長が始まるため、結晶の積層が良好に進行せず、形成される窒化タンタル層は、結晶性が低く、気孔を多く含むものとなり、この気孔の増加に起因して内部まで消耗が進行しやすいものとなる。
上記炭素基材の上記窒化タンタル層と接する表面のJIS B 0601に基づく算術平均粗さRaの好ましい下限は、3.2μmであり、好ましい上限は、12.5μmである。
【0046】
第二の本発明の炭素複合材料において、上記窒化タンタル層を構成する結晶のX線回折による分析における最大のピークの半値幅は、2°以下であることが好ましい。
窒化タンタル層を構成する結晶にピンホール等の破損が発生しにくくなるからである。これは、上記窒化タンタル層を構成する結晶の結晶化が進み、結晶が安定した状態となり、その表面が還元性ガスや反応性ガスと接触したとしても消耗されにくくなるためではないかと推定される。
【0047】
上記窒化タンタル層は、窒化タンタル微粒子が均質かつ緻密に積層した状態の結晶質の組織からなる層であることが望ましい。第二の本発明の炭素複合材料を高温の反応性ガス、例えばアンモニア雰囲気下に晒しても、消耗やピンホールが生じにくく、たとえ、消耗等が生じても、表面の浅い層で止まり、内部まで進行しにくくなるからである。また、窒化タンタル層が微粒子状結晶からなるものであれば、炭素基材中の不純物(Fe、Al等)が拡散して窒化タンタル層の下層に到達しても、窒化タンタル層中での拡散速度が遅くなり、第二の本発明の炭素複合材料に起因する汚染を防止することができる。
【0048】
第一の本発明の場合と同様に、上記窒化タンタル層の厚さの望ましい下限値は、10μmであり、望ましい上限値は、200μmである。また、窒化タンタル層の厚さのより望ましい下限値は、20μmであり、より望ましい上限値は、60μmである。第一の本発明の場合と同様の理由による。
【0049】
第二の本発明の炭素複合材料を構成する炭素基材の望ましい材質、熱膨張係数、平均気孔半径、ガス放出圧力、不純物の含有量等は、第一の本発明の炭素基材と同様であるので、ここでは、その詳しい説明を省略する。
【0050】
上記炭素基材の大きさ及び形態としては特に限定されず、用途に応じて種々の大きさ及び形態にすることができる。
【0051】
上記炭素基材の窒化タンタル層と接する表面におけるJIS B 0601に基づく算術平均粗さRaを1〜15μmに調整する方法としては特に限定されず、例えば、サンドブラスト処理、切削加工、サンドペーパーや砥石による研磨処理等の表面処理方法が挙げられる。なかでも、切削加工が好適に用いられる。切削加工の処理速度を調整することにより、表面粗度の大小を調整することが比較的容易だからである。
【0052】
第二の本発明の炭素複合材料の用途としては特に限定されず、例えば、半導体の製造工程において使用されるサセプタ、半導体製造装置等における炉部材等の広範囲の用途が挙げられる。
【0053】
第二の本発明の炭素複合材料の製造方法は、例えば、上述した方法を用いることにより、上記炭素基材の窒化タンタル層と接する表面におけるJIS B 0601に基づく算術平均粗さRaを1〜15μmに調整する点、及び、炭素基材上に形成された窒化タンタル層のX線回折分析おける最大のピークの半値幅が2°以下に限定されない点を除いて、上述した第一の本発明の炭素複合材料の製造方法と同様の方法をとることができる。従って、ここでは、その詳しい説明を省略することとする。
【0054】
以上説明したように、第二の本発明の炭素複合材料では、JIS B 0601に基づく算術平均粗さRaが1〜15μmである炭素基材の粗面上に窒化タンタル層が形成されているので、炭素基材と窒化タンタル層との間でアンカー効果が得られやすくなり、両者の接着強度が強固なものとなり、炭素基材と窒化タンタル層との間で剥離等が発生することを低減することができる。また、表面の粗化度を良好な範囲に調整しているため、窒化タンタル層を形成する際、結晶の積層が比較的良好に進行し、形成される窒化タンタル層の結晶性が高くなり、還元性ガスや反応性ガスと接触したとしても消耗やピンホールが発生しにくくなり、耐久性に優れたものとなる。
【0055】
第三の本発明の炭素複合材料は、炭素基材と上記炭素基材の表面に形成された窒化タンタル層とからなる炭素複合材料であって、
上記炭素基材の水銀ポロシメータで測定した平均気孔半径が0.1〜5μmであることを特徴とする。
【0056】
第一の本発明で記載したように、本明細書において、「炭素基材の水銀ポロシメーターにより測定した平均気孔半径」とは、水銀ポロシメーターにより、最大圧力98MPa、試料と水銀の接触角141.3°の条件で炭素基材の気孔容積を求めたときに、累積気孔容積の半分値となる気孔容積に対応する気孔半径の値であるものとする。
【0057】
第三の本発明の炭素複合材料では、上記平均気孔半径を0.1〜5μmの範囲に設定しているので、炭素基材の表面に適当な粗面が形成されていることとなり、炭素基材と窒化タンタル層との間でアンカー効果が得られやすくなり、両者の接着強度が強固なものとなり、炭素基材と窒化タンタル層との間で剥離等が発生することを低減することができ、また、窒化タンタル層を形成することにより、気孔を充分に充填することができる。さらに、炭素複合材料を構成する炭素粒子も適当な大きさに設定されているので、ガス放出を少なくして、窒化タンタル層の劣化を防止することができ、耐久性に優れた炭素複合材料とすることができる。上記炭素基材の水銀ポロシメータで測定した平均気孔半径の好ましい下限は、0.3μmであり、好ましい上限は、3μmである。
【0058】
上記平均気孔半径が0.1μm未満であると、いわゆるアンカー効果が充分に発揮されず、窒化タンタル層が剥離しやすくなり、一方、5μmを超えると、高温下で炭素基材から放出されるガスの量が多くなる。
【0059】
第三の本発明の炭素複合材料において、上記窒化タンタル層を構成する結晶のX線回折による分析における最大のピークの半値幅は、第二の本発明の場合と同様に、2°以下であることが好ましい。また、上記窒化タンタル層は、窒化タンタル微粒子が均質かつ緻密に積層した状態の結晶質の組織からなる層であることが望ましく、さらに、上記窒化タンタル層は、微粒子状結晶からなるものであることが望ましい。第一の本発明の場合と同様の理由による。
【0060】
また、第二の本発明の場合と同様に、上記窒化タンタル層の厚さの望ましい下限値は、10μmであり、望ましい上限値は、200μmである。また、窒化タンタル層の厚さのより望ましい下限値は、20μmであり、より望ましい上限値は、60μmである。第一の本発明の場合と同様の理由による。
【0061】
第三の本発明の炭素複合材料を構成する炭素基材の望ましい材質、表面粗度、熱膨張係数、ガス放出圧力、不純物の含有量等は、第一の本発明の炭素基材と同様であるので、ここでは、その詳しい説明を省略する。
【0062】
上記炭素基材の大きさ及び形態としては特に限定されず、用途に応じて種々の大きさ及び形態にすることができる。
【0063】
第三の本発明の炭素複合材料の用途としては特に限定されず、例えば、半導体の製造工程において使用されるサセプタ、半導体製造装置等における炉部材等の広範囲の用途が挙げられる。
【0064】
第三の本発明の炭素複合材料の製造方法は、炭素基材として、水銀ポロシメータで測定した平均気孔半径が0.1〜5μmのものを用いる点、及び、炭素基材上に形成する窒化タンタル層のX線回折分析おける最大のピークの半値幅が2°以下に限定されない点を除いて、上述した第一の本発明の炭素複合材料の製造方法と同様の方法をとることができる。従って、ここでは、その詳しい説明を省略することとする。
【0065】
以上説明したように、第三の本発明の炭素複合材料では、炭素基材の水銀ポロシメータで測定した平均気孔半径が0.1〜5μmであるので、炭素基材の表面に適当な粗面が形成され、炭素基材と窒化タンタル層との間でアンカー効果が得られやすくなり、両者の接着強度が強固なものとなり、炭素基材と窒化タンタル層との間で剥離等が発生することを低減することができる。
また、平均気孔半径が適切に設定されているため、窒化タンタル層を形成することにより、気孔を充分に充填することができる。さらに、炭素基材を構成する炭素粒子も適当な大きさに設定されているので、ガス放出を少なくして、窒化タンタル層の劣化を防止することができ、耐久性に優れた炭素複合材料とすることができる。
【0066】
【実施例】
以下に実施例を掲げて、図面を参照しながら、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
炭素材料として上述した方法で製造した等方性黒鉛材料(イビデン社製、商品名EX−70)を用い、これを切削することにより、直径350mm、厚さ20mmの黒鉛からなる円盤状体を作製した。
次いで、円盤状体の上部を切削し、炭化珪素ウエハ等の半導体ウエハを載置するための直径50mm、深さ0.5mmの凹部13を設けた。この凹部13を有する円盤状体を、真空中2000℃の雰囲気でハロゲンガスを用いて高純度化処理を行い、炭素基材11とした。
【0068】
上記高純度化処理後の炭素基材11を真空加熱炉内に設置した。真空加熱炉内を2000Paの減圧状態とし、1500℃の条件で加熱するとともに、TaClガス、NHガス、及び、Hガスを真空加熱炉内に混合して供給した。なお、キャリアガスの流量の制御により、TaClガス、NHガス、及び、Hガスの流量は、それぞれ、200cc/min、600cc/min、1000cc/minとし、それぞれのモル比は、1:3:5とした。
上記真空加熱炉内では、上記反応式(1)に示す熱分解反応が進行し、生成した窒化タンタルは、炭素基材11上に堆積し、炭素基材の表面に厚さ30μmの窒化タンタル層12を形成した。すなわち、CVD法により窒化タンタル層12を形成し、サセプタ10を作製した。なお、反応は、3時間行った。
【0069】
窒化タンタル層を形成した後、Cuの管球を使用して、窒化タンタル層の表面のX線回折分析を行った。図1は、その分析チャートである。ここで、チャートにおける最大のピークの半値幅は、0.3°であった。なお、上記真空加熱炉内の圧力、加熱温度、TaClガス、NHガス及びHガスの流量、それぞれのガスのモル比、及び、反応時間を、それぞれ表1に示した。また、形成された窒化タンタル層の厚さ、及び、最大のピークの半値幅を、表2に示した。
【0070】
(実施例2)
上記真空加熱炉内の圧力、加熱温度、TaClガス、NHガス及びHガスの流量、それぞれのガスのモル比、及び、反応時間を変更したこと以外は、実施例1と同様にしてサセプタ10を作製した。なお、各変更条件について、表1に示した。また、形成された窒化タンタル層の厚さ、及び、最大のピークの半値幅を、表2に示した。
【0071】
(比較例1)
上記真空加熱炉内の圧力、加熱温度、TaClガス、NHガス及びHガスの流量、それぞれのガスのモル比、及び、反応時間を変更したこと以外は、実施例1と同様にしてサセプタ10を作製した。なお、各変更条件について、表1に示した。また、形成された窒化タンタル層の厚さ、及び、最大のピークの半値幅を、表2に示した。また、図3は、比較例1に係るサセプタについて、Cuの管球を使用して、窒化タンタル層の表面のX線回折分析を行った際の分析チャートである。ここで、図3のチャートにおける最大のピークの半値幅は、4°であった。
【0072】
【表1】
Figure 2004299932
【0073】
【表2】
Figure 2004299932
【0074】
実施例1〜2、及び、比較例1に係るサセプタを観察したところ、実施例に係るサセプタでは、炭素基材上に窒化タンタル微粒子が均質かつ緻密に積層した結晶質状態の組織からなる窒化タンタル層が形成されており、一方、比較例に係るサセプタにおいて形成された窒化タンタル層は、実施例に係るサセプタにおいて形成された窒化タンタル層に比べて結晶性の低いものであった。
【0075】
また、実施例1〜2、及び、比較例1に係るサセプタを半導体製造装置内に設置し、アンモニアガス及び水素ガスの雰囲気下で、装置内を1200〜1700℃の高温にし、10時間の耐久性試験を行った。
試験後、窒化タンタル層の表面状態を電子顕微鏡により観察し、以下の基準により、ピンホールの発生状況、及び、消耗の進行度について評価した。
結果を表3及び4に示した。
【0076】
<ピンホールの発生状況>
○・・・ピンホールの発生なし
△・・・ピンホールが僅かに発生していた
×・・・ピンホールが多数発生していた
【0077】
【表3】
Figure 2004299932
【0078】
<消耗の進行度>
○・・・殆ど消耗していなかった
△・・・消耗していた
×・・・大きく消耗していた
【0079】
【表4】
Figure 2004299932
【0080】
表3及び4に示したように、実施例1〜2に係るサセプタでは、耐久性試験後においても、ピンホールの発生は確認されず、消耗も殆ど確認されなかった。比較例1に係るサセプタでは、最も低温で試験した1200℃での耐久性試験においても、ピンホールが確認され、1300℃以上での耐久性試験では、いずれもピンホール及び消耗がともに確認された。
【0081】
(実施例3)
炭素材料として上述した方法で製造した等方性黒鉛材料(イビデン社製、商品名EX−70)を用い、これを切削することにより、直径350mm、厚さ20mmの黒鉛からなる円盤状体を作製した。
その後、上記円盤状体の上部を切削し、シリコンウエハ等の半導体ウエハを載置するための直径50mm、深さ0.5mmの凹部13を設けた。
更に、凹部13を有する円盤状体の全面を、送り速度0.1mm/秒の条件で切削加工することにより、その表面粗さRaを1μmにし、真空中2000℃の雰囲気でハロゲンガスを用いて高純度化処理を行い、炭素基材11とした。
【0082】
上記高純度化処理後の炭素基材11を真空加熱炉内に設置し、実施例1と同様の条件で、厚さ30μmの窒化タンタル層12を形成し、サセプタ10を作製した。
【0083】
(実施例4)
凹部13を有する円盤状体の全面を切削加工する際の送り速度を0.3mm/秒として、炭素基材の表面粗さRaを5μmにしたこと以外は、実施例3と同様にしてサセプタ10を作製した。
【0084】
(実施例5)
凹部13を有する円盤状体の全面を切削加工する際の送り速度を0.8mm/秒として、炭素基材の表面粗さRaを15μmにしたこと以外は、実施例3と同様にしてサセプタ10を作製した。
【0085】
(比較例2)
凹部13を有する円盤状体の全面を切削加工する際の送り速度を0.1mm/秒として、炭素基材の表面粗さRaを0.3μmにしたこと以外は、実施例3と同様にしてサセプタ10を作製した。
【0086】
(比較例3)
凹部13を有する円盤状体の全面を切削加工する際の送り速度を1mm/秒として、炭素基材の表面粗さRaを18μmにしたこと以外は、実施例3と同様にしてサセプタ10を作製した。
【0087】
実施例3〜5及び比較例2〜3に係るサセプタを構成する窒化タンタル層を切断し、電子顕微鏡観察により観察したところ、実施例3〜5に係るサセプタを構成する窒化タンタル層は、炭素基材上に微粒な窒化タンタル結晶粒子が均質かつ緻密に積層されてなるほとんど配向のないものであり、一方、比較例2に係るサセプタを構成する窒化タンタル層は、実施例3〜5に係るサセプタに比べて結晶が配向したものであった。また、比較例3に係るサセプタを構成する窒化タンタル層は、結晶状態は良かったものの、気孔が存在していた。
【0088】
次に、実施例3〜5及び比較例2〜3に係るサセプタを半導体製造装置内に設置し、装置内をアンモニアガス及び水素ガス雰囲気下で1600℃にした状態で、100時間の耐久性試験を行った。試験後、実施例3〜5及び比較例2〜3に係るサセプタを構成する窒化タンタル層におけるクラックの発生の有無、及び、剥離の有無を電子顕微鏡により観察して確認した。結果を表5に示した。
【0089】
【表5】
Figure 2004299932
【0090】
表5に示したように、実施例3〜5に係るサセプタでは、窒化タンタル層においてクラック及び剥離は発見されなかった。一方、比較例2に係るサセプタでは、窒化タンタル層の深部まで進行したクラックが発見され、窒化タンタル層の一部で剥離も発見された。比較例3に係るサセプタでは、窒化タンタル層の剥離は発見されなかったが、細かなクラックが多数発見された。
【0091】
(実施例6)
炭素材料としてガラス状炭素材料を用い、これを切削することにより、直径350mm、厚さ20mmの黒鉛からなる円盤状体を作製した。
その後、上記円盤状体の上部を切削し、シリコンウエハ等の半導体ウエハを載置するための直径50mm、深さ0.5mmの凹部13を設けた。この凹部13を有する円盤状体を真空中2000℃の雰囲気でハロゲンガスを用いて高純度化処理を行い、炭素基材11とした。
この炭素基材11の水銀ポロシメータで測定した平均気孔半径は、0.1μmであった。
【0092】
上記高純度化処理後の炭素基材を真空加熱炉内に設置し、実施例1と同様の条件で、厚さ30μmの窒化タンタル層12を形成し、サセプタ10を作製した。
【0093】
(実施例7)
黒鉛からなる炭素基材の水銀ポロシメータで測定した平均気孔半径を2.5μmとしたこと以外は、実施例6と同様にしてサセプタ10を作製した。
【0094】
(実施例8)
黒鉛からなる炭素基材の水銀ポロシメータで測定した平均気孔半径を5.0μmとしたこと以外は、実施例6と同様にしてサセプタ10を作製した。
【0095】
(比較例4)
黒鉛からなる炭素基材の水銀ポロシメータで測定した平均気孔半径を0.07μmとしたこと以外は、実施例6と同様にしてサセプタ10を作製した。
【0096】
(比較例5)
黒鉛からなる炭素基材の水銀ポロシメータで測定した平均気孔半径を7.0μmとしたこと以外は、実施例6と同様にしてサセプタ10を作製した。
【0097】
実施例6〜8及び比較例4〜5に係るサセプタを構成する窒化タンタル層を切断し、電子顕微鏡観察により観察したところ、実施例6〜8に係るサセプタを構成する窒化タンタル層は、炭素基材上に微粒な窒化タンタル結晶粒子が均質かつ緻密に積層されてなるほとんど配向のないものであり、一方、比較例4に係るサセプタを構成する窒化タンタル層は、実施例6〜8に係るサセプタに比べて結晶が配向したものであった。また、比較例5に係るサセプタを構成する窒化タンタル層は、結晶状態は良かったものの、気孔が存在していた。
【0098】
実施例6〜8及び比較例4〜5に係るサセプタを半導体製造装置内に設置し、装置内をアンモニアガス及び水素ガス雰囲気下で1600℃にした状態で、100時間の耐久性試験を行った。試験後、実施例6〜8及び比較例4〜5に係るサセプタを構成する窒化タンタル層におけるクラックの発生の有無、及び、剥離の有無を電子顕微鏡により観察して確認した。結果を表6に示した。
【0099】
【表6】
Figure 2004299932
【0100】
表6に示したように、実施例6〜8に係るサセプタでは、窒化タンタル層においてクラック及び剥離は発見されなかった。一方、比較例4に係るサセプタでは、窒化タンタル層の深部まで進行したクラックが発見され、窒化タンタル層の一部で剥離も発見された。比較例5に係るサセプタでは、窒化タンタル層の剥離は発見されなかったが、細かなクラックが多数発見された。
【0101】
【発明の効果】
以上説明したように、第一の本発明の炭素複合材料によれば、窒化タンタル層を構成する結晶のX線回折による分析における最大のピークの半値幅が2°以下に設定されているので、本発明の炭素複合材料は、高温、かつ、還元性ガスや反応性ガス雰囲気下で、長時間使用された場合であっても消耗やピンホール等が生じることがなく、極めて耐久性に優れた炭素複合材料を提供することができる。
【0102】
第二の本発明の炭素複合材料によれば、JIS B 0601に基づく算術平均粗さRaが1〜15μmである炭素基材の粗面上に窒化タンタル層が形成されているので、アンカー効果により窒化タンタル層と炭素複合材料との接着強度が強固なものとなり、剥離等が発生することを低減することができる。また、表面の粗化度を良好な範囲に調整しているため、窒化タンタル層を形成する際、結晶の積層が比較的良好に進行し、形成される窒化タンタル層の結晶性が高くなり、還元性ガスや反応性ガスと接触したとしても消耗やピンホールが発生しにくくなり、極めて耐久性に優れた炭素複合材料を提供することができる。
【0103】
第三の本発明の炭素複合材料によれば、炭素基材の水銀ポロシメータで測定した平均気孔半径が0.1〜5μmであるので、炭素基材の表面に適当な粗面が形成されていることとなり、アンカー効果により、炭素基材と窒化タンタル層との接着強度が強固なものとなり、剥離等の発生を防止することができる。
また、平均気孔半径が適切に設定されているため、窒化タンタル層を形成することにより、気孔を充分に充填することができる。さらに、炭素基材を構成する炭素粒子も適当な大きさに設定されているので、ガス放出を少なくして、窒化タンタル層の劣化を防止することができ、極めて耐久性に優れた炭素複合材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明(実施例1)に係る炭素複合材料を構成する窒化タンタル層のX線回折分析を行った結果を示すX線回折チャート図である。
【図2】本発明の炭素複合材料の実施形態の一例であるサセプタを示した断面図である。
【図3】比較例1に係る炭素複合材料を構成する窒化タンタル層のX線回折分析を行った結果を示すX線回折チャート図である。
【符号の説明】
10 サセプタ
11 炭素基材
12 窒化タンタル層
13 凹部

Claims (4)

  1. 炭素基材と前記炭素基材の表面に形成された窒化タンタル層とからなる炭素複合材料であって、
    前記窒化タンタル層を構成する結晶のX線回折による分析における最大のピークの半値幅が2°以下であることを特徴とする炭素複合材料。
  2. 炭素基材と前記炭素基材の表面に形成された窒化タンタル層とからなる炭素複合材料であって、
    前記炭素基材の前記窒化タンタル層と接する表面におけるJIS B 0601に基づく算術平均粗さRaは、1〜15μmであることを特徴とする炭素複合材料。
  3. 炭素基材と前記炭素基材の表面に形成された窒化タンタル層とからなる炭素複合材料であって、
    前記炭素基材の水銀ポロシメータで測定した平均気孔半径が0.1〜5μmであることを特徴とする炭素複合材料。
  4. 窒化タンタル層は、化学蒸着(CVD)法により形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素複合材料。
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