JP2004298260A - 人工上顎臼歯及び該人工上顎臼歯を床義歯に配列する際使用する配列具 - Google Patents
人工上顎臼歯及び該人工上顎臼歯を床義歯に配列する際使用する配列具 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】食物を噛み切ることを可能とし、使用者に痛み等の負担をかけない人工上顎臼歯、及び人工上顎臼歯を用いて義歯を製作する製作工程を容易にする配列具を提供する。
【解決手段】人工上顎臼歯6の咬合面に、天然上顎臼歯の咬合面における咬頭の隆線に対応したラインに沿って先端の尖った峰8を連ならせ、その峰8の両サイドに、咬合面側から歯根側へ向かうに従って徐々に傾斜を緩くした凹状面9を形成した人工上顎臼歯6を用いて、床義歯を製作する。その床義歯を製作する際に、一つの面に人工上顎臼歯6の咬合面に対応する歯型が設けられている配列具を用いれることで、精度の高い床義歯が容易に製作可能となる。
【選択図】 図1
【解決手段】人工上顎臼歯6の咬合面に、天然上顎臼歯の咬合面における咬頭の隆線に対応したラインに沿って先端の尖った峰8を連ならせ、その峰8の両サイドに、咬合面側から歯根側へ向かうに従って徐々に傾斜を緩くした凹状面9を形成した人工上顎臼歯6を用いて、床義歯を製作する。その床義歯を製作する際に、一つの面に人工上顎臼歯6の咬合面に対応する歯型が設けられている配列具を用いれることで、精度の高い床義歯が容易に製作可能となる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、口腔内において上顎臼歯として機能し、全部床義歯や部分床義歯等に使用するための人工上顎臼歯、及び該人工上顎臼歯を床義歯に配列する際使用する配列具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、臼歯として使用する人工歯の形状は、臼歯が食物をすりつぶす機能を果たすという考えに基づいて、天然歯を忠実に再現しようとしたものが多数をしめている。また、人工歯の材料としてプラスチックを用いたものがよく見受けられる。しかしながら、臼歯も主に食物を噛み切る機能を果たしているということが最近解明されており、従来のような咬合面を緩やかな起伏面とした形状では、食物を噛み切ることを期待することはできない。なぜなら、人工歯を全部床義歯や部分床義歯として使用する場合、いずれの義歯も脆弱な歯肉の上に乗っているだけであるため、天然歯と比べて圧倒的に咀嚼圧は小さなものとなっているからである。したがって、従来のような咬合面が緩やかな起伏面の人工歯では硬い食物や繊維質の食物を噛み切ったり粉砕したりすることは不可能である。
また、プラスチックにより製作された人工歯は、咬頭や隆線といった部分が摩耗しやすいため、長期的に使用することでものを噛むことが困難なものとなっている。
【0003】
そこで、より人工歯の摩耗を抑制すると同時に咀嚼機能を向上させることを目的として特許文献1に開示されているような人工歯が発明された。この人工歯は、平らな咬合面から摩耗しにくいワイヤを部分的に露出させたものである。ワイヤを露出させることで、食物をワイヤによって捕捉し、噛み切ろうとするものである。
また、特許文献2に開示されているようなブレードメタルティース80と称される金属製の人工歯も使用されている。ブレードメタルティース80は図11に示されているように、薄い半円板81を直径となっている面で立て、直角に交差させた形状となっている。二枚の半円板81、81が交差する部分を咬頭82として、食物を噛み切ろうとするものである。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−306511号公報
【特許文献2】
特開昭55−106146号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示されたワイヤ付き人工歯では、実際に食物を突き刺すことは不可能であり、天然歯と比べて弱い咀嚼圧の義歯では、依然として食物を噛み切ることは困難であった。
また、特許文献2に開示されたブレードメタルティース80は、凹凸が天然歯とは逆の形状であり、歯の中心が隆起した形状となっているため、左右側方運動においては上下の歯の凸部分同士が接触し、義歯の転覆がおこりやすい。ひいては、舌及び頬粘膜を傷つけることになり、咀嚼運動の障害の原因ともなりえた。さらに、半円板A1が壁のように垂直に立てられているため、食物を噛んだ際に食物がSA人工歯底部水平面で止められることとなり、食物ははね返される。したがって、噛み切り開きながら口腔内に導くこと、つまりスムーズな咀嚼運動を実現することは困難であった。
さらにまた、ブレードメタルティース80を用いて製作された従来の一般的な全部床義歯は、第二小臼歯、第一大臼歯及び第二大臼歯をブレードメタルティース80、80・・に置き換えたものである。つまり、第一小臼歯はプラスチックで製作された従来の人工歯であった。しかしながら、人間が食物を噛み切る際、上顎犬歯と上顎第一小臼歯の下側咬頭で噛み切るため、従来のような形態では上手く食物を噛み切ることができなかった。
【0006】
加えて、従来より、床義歯の製作にあたっては、患者の口腔内模型やX線写真等から製作者が経験に基づいて床義歯に人工臼歯を一本一本配列させている。そのため、製作者の力量に床義歯の完成度はゆだねられており、完成度には当然多くのばらつきが生じる。また、土台となる蝋が乾燥により収縮を起こし、重合後には歪みが発生するため、設置した人工臼歯を更に削ることで歪みを治す等の作業が行われている。当然、無理に削る等され、咬合面が平らになってくるため、義歯が望むような働きを行うことは困難となる。
【0007】
そこで、本発明は、弱い咀嚼圧であっても食物を噛み切ることが可能であり、且つ人の咀嚼運動と一致するように天然歯の解剖学的形態を尊重した人工上顎臼歯を提供しようとするものである。
また、床義歯の製作工程を簡便にし、より精度の高い床義歯を製作するための配列具を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の人工上顎臼歯は、口腔内において上顎臼歯として機能するように製作された人工上顎臼歯であって、その人工上顎臼歯の咬合面は、天然上顎臼歯の咬合面における咬頭の隆線に対応したラインに沿って先端の尖った峰が連なり、その峰の両サイドは、咬合面側から歯根側へ向かうに従って徐々に傾斜を緩くした凹状面に形成されていることを特徴とするものである。
請求項2に記載の人工上顎臼歯は、請求項1の目的に加えて、頬や舌を傷つけないために、人工上顎臼歯の頬側面及び舌側面側が面取りされていることを特徴とするものである。
請求項3に記載の人工上顎臼歯は、請求項1〜2の目的に加えて、例えば床義歯製作作業をより楽にするために、隣り合う複数の人工臼上顎歯を一体又は連結可能に形成したことを特徴とするものである。
請求項4に記載の人工上顎臼歯は、請求項1〜3の目的に加えて、例えば磁性アタッチメントやインプラント等として使用できるように、人工上顎臼歯の裏側に空洞を設けたことを特徴とするものである。
請求項5に記載の配列具は、請求項1〜4のいずれかに記載の人工上顎臼歯を用いて床義歯を製作する際に使用する配列具であり、一つの面に人工上顎臼歯の咬合面に対応する歯型が設けられていることを特徴とするものである。
請求項6に記載の配列具は、請求項1〜4のいずれかに記載の人工上顎臼歯を用いて全部床義歯を製作する際に使用する配列具であり、向かい合う面に、人工上顎臼歯の咬合面に対応する歯型と下顎臼歯の咬合面に対応する歯型とが、咬み合わせの状態で設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態である、四本の上顎臼歯を一体的に形成した一体型人工上顎臼歯を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は上顎の人工第一小臼歯2、人工第二小臼歯3、人工第一大臼歯4、及び人工第二大臼歯5を一体的に形成した一体型人工上顎臼歯6を上顎用全部床義歯7に設置した状態を示す斜視図である。図2は、一体型人工上顎臼歯6を上顎用全部床義歯に設置した状態を示す平面図である。図3は人工第一大臼歯4のA−A断面図である。
これら人工上顎臼歯は全て、耐摩耗性や耐久性等に優れたチタン系の素材により加工されており、またそれぞれの人工上顎臼歯の幅、高さ、長さ等は、それぞれの天然臼歯の平均的なサイズとなっている。
【0011】
ここで、人工第一大臼歯4(奥から二番目の臼歯)の部分について、その形態を説明する。人工第一大臼歯4の咬合面は、天然の第一大臼歯の咬合面における咬頭の隆線に対応したラインを峰8として連ならせ、その連なった峰8の先端を斧のように尖らせている。また、図2に示されているように、峰8から人工第一大臼歯4の歯根側に向けて徐々に傾斜を緩くした凹状面9が四方へ広がるように形成されている。すなわち、人工第一大臼歯4の咬合面は天然臼歯の咬合面のように緩やかな起伏面に形成されておらず、峰8のみを残して、他の咬合面(図2においてハッチングされている部分)は侵食されるが如き形状の凹状面9が形成された形態となっている。
【0012】
図3は人工第一大臼歯4のA−A断面図であり、図4は人工第一大臼歯4のB−B断面図である。
図3に示されているように、峰8の先端の角度は、咬合面の水平に対して100−110度となっており、食物を噛み切るのに適した角度となっている。また、図4に示されているように、峰8は、天然臼歯の咬合面における咬頭の隆線に対応したものであるため、天然臼歯同様に臼歯の中央が凹んだ形状となっている。さらに、人工第一大臼歯4の頬側面21及び舌側面22は、角が面取りされており、丸みを帯びた形状となっている。
【0013】
人工第一小臼歯2、人工第二小臼歯3、及び人工第二大臼歯5の部分もそれぞれ人工第一大臼歯4と同じように、それぞれの天然臼歯の咬合面における咬頭の隆線に対応したラインに沿って先端の尖った峰を連ならせ、その峰の両サイドを、咬合面側から歯根側へ向かうに従って徐々に傾斜が緩くなった凹状面に形成している。
しかしながら、人工第一小臼歯2の頬側部10(図2参照)は、削り取られている。この削り取られた部分は、上顎用全部床義歯を製作する際、プラスチックによって天然臼歯の如く形成される。
【0014】
一体型人工上顎臼歯6は、上述した人工第一小臼歯2、人工第二小臼歯3、人工第一大臼歯4、及び人工第二大臼歯5を一体的に形成したものである。その際、隣り合う人工臼歯の峰は一連となるように形成されている。凹状面についても同様であり、隣り合う人工臼歯の凹状面同士は、なだらかに一面となるように形成されている。
【0015】
このように形成された一体型人工上顎臼歯6を設置した上顎用全部床義歯7を用いると、人工上顎臼歯の咬合面に先端の尖った峰8が連なっているため、たとえ弱い咀嚼圧であっても、使用者は食物を難なく噛み切ることが可能となる。その結果として、上顎用全部床義歯7がぐらつきにくくなり、咀嚼運動における痛みを極力おさえることができる。また、丸みを帯びた凹状面9が形成されているため、食物を噛んだ際、食物が停滞することなく凹状面9に沿って切り開かれ、口腔内に運ばれることとなり、より咀嚼運動が快適に行える。
【0016】
また、峰8の形態は天然臼歯の咬合面における咬頭の隆線に対応したラインであるため、上顎臼歯の隆線と下顎臼歯の隆線とが擦れ合うように食物を切り開いた後、図5に示されているように、上顎臼歯の舌側咬頭が上手く下顎臼歯23の中央の窪みに噛み合う。つまり、自然の咀嚼運動と同じ咀嚼運動を行うことができるため、床義歯が安定する。したがって、床義歯使用者の歯肉にあまり負担をかけず、使用者の咀嚼時の痛みを極力抑えることができる。
さらに、一体型人工上顎臼歯6の頬側及び舌側は丸みを帯びた形状となっているため、使用者の頬粘膜や舌を傷つけにくくなっている。
加えて、四本の臼歯を一体的に形成したものであるため、四本のうち必要な部分を分割して使用したとしても、残りの部分を残しておいて、後日残しておいた部分が悪くなった時に使用することもできる。
【0017】
さらにまた、四本の臼歯が一体的に形成されているため、臼歯と臼歯との間に隙間がない。したがって、隙間に汚れがたまりにくく、人工上顎臼歯を清潔に保ちやすい。
加えて、第一人工小臼歯の頬側部を天然歯を模したプラスチック製の臼歯とすることで、該人工臼歯を使用したとしても、口腔内の見た目が悪くなることを極力おさえることができる。また、このように人工上顎臼歯を加工したとしても、食物を噛み切る機能等にそれほど影響は出ない。
【0018】
次に、上記の如く構成された人工臼歯を上顎用全部床義歯上に配列させる際に用いる配列具の実施の一形態及び使用方法について説明する。
【0019】
図6(a)は上顎用全部床義歯14を製作する際に用いる第一の配列具12の表面を示す図であり、図6(b)は上顎用全部床義歯14に対応する下顎用全部床義歯15を製作する際に用いる第二の配列具17の裏面を示す図である。
第一の配列具12及び第二の配列具17は、薄い板状体であって、シリコンゴムのような弾性部材により形成されている。
第一の配列具12の表面には一体型人工上顎臼歯6の咬合面の歯型13が設けられており、裏面は平面となっている。
【0020】
また、第二の配列具17は、表面には一体型人工上顎臼歯6の咬合面の歯型13が設けられており、裏面には上顎用全部床義歯14に対応する下顎用全部床義歯15の人工下顎臼歯20の咬合面の歯型16が、上顎の歯型13と対応するように噛み合わせの状態で設けられている(図9参照)。したがって、上顎臼歯と下顎臼歯とが接触する部分は穴24が空いた形状となっている。
【0021】
ここで、図7、8及び9を用いて、全部床義歯を製作時における第一の配列具12及び第二の配列具17の使用方法を説明する。
全部床義歯を製作する際には、基台25、基台25上に取り付けられた支持台26、その支持台26上に載置された咬合平面板19及び顎の開閉運動を再現可能な可動部27を備えた製作器具18を使用する。
まず、製作器具18に備えられている咬合平面板19が全部床義歯使用者の咬合平面となるように調整して、上顎用全部床義歯14を装着する。次に、図8で示されているように、第一の配列具12の表面に設けられた歯型13に一体型人工上顎臼歯6を噛み込ませたものを、咬合平面板19上に設置し、一体型人工上顎臼歯6と上顎用全部床義歯14とが相対的に所定の位置関係となるように、一体型人工上顎臼歯6を第一の配列具12とともに調整する。そして、一体型人工上顎臼歯6と上顎用全部床義歯14との隙間を蝋で埋める。
【0022】
次に、図9に示されているように、上顎用全部床義歯14を上下逆さとし、咬合平面板19を取り除く。そして、第一の配列具12を除去して、第二の配列具17の歯型13が設けられている面を一体型人工上顎臼歯6に噛み込ませる。さらに、第二の配列具17に設けられた人工下顎臼歯20の咬合面の歯型16に下顎用人工臼歯20を噛み込ませる。
下顎用全部床義歯15を製作器具18の可動部27に取り付け、咬み合わせた状態とし、人工下顎臼歯20と下顎用全部床義歯15との隙間を蝋で埋めれば、全部床義歯は完成する。
【0023】
このようにして製作された全部床義歯は、第一の配列具12を用いることで、一本一本人工臼歯を並べていくものと比べると、人工臼歯が連結されているため、歯と歯の相対的な位置関係はずれにくい。また、咬合平面を水平に形成しやすい。さらに、配列具に人工臼歯を噛み込ませているため、蝋が乾燥収縮したとしても、人工臼歯の位置がずれることはない。したがって、精度の高い上顎用全部床義歯を、より簡便に製作することが可能となる。
さらにまた、第二の配列具17を用いることで、上顎に対する下顎の位置を実に簡単に位置決めすることができる上、上顎と下顎の噛み合わせが極めて優れている全部床義歯を製作することができる。
【0024】
なお、本発明は、上記した実施例において、四本の臼歯を一体的に形成した一体型人工上顎臼歯を採り上げたが、この態様に何ら限定されるものではない。
例えば、四本の臼歯を一体的に形成せず、隣り合う三本の臼歯を一体的に形成してもよく、また隣り合う二本の臼歯を一体的に形成してもよい。さらに、一本だけでも十分に機能するものである。また、実施例では全部床義歯の一部としたが、該人工上顎臼歯のみで部分床義歯として使用することも可能である。
【0025】
さらに、図10に示すように、人工上顎臼歯の裏側に空洞11を設け、磁性アタッチメントやインプラント等として使用することも可能である。
さらにまた、人工上顎臼歯の材料として、チタン系の素材のもの以外にもチタン系、白金加金系、コバルトクロム系の金属或いは硬質プラスチック等を使用してもよい。また、該人工上顎臼歯と対合する下顎臼歯が天然臼歯の場合であっても、硬質プラスチックや白金加金系等のより軟質な金属等を用いることによって、天然臼歯を傷つけることなく、人工上顎臼歯を使用することができる。
【0026】
加えて、実施例では、第一人工小臼歯の頬側部10を天然歯を模したプラスチック製の臼歯としたが、削り取らずに、峰や凹状面を残した第一人工臼歯としても何ら問題はない。
さらに、一体型人工上顎臼歯の裏側に、上顎用全部床義歯に設置する際、脱落を防止するための棒状の維持部を設けてもよい。
【0027】
また、実施例において配列具を全部床義歯製作時に使用するものとしたが、部分床義歯を製作する際にも使用することは当然可能である。さらに、四本を一体形成した人工臼歯に対応する歯型を設けるものとしたが、三本を一体形成した、あるいは二本を一体形成した人工臼歯に対応する歯型としてもよいし、一本の人工臼歯に対応する歯型としても何ら問題はない。
加えて、配列具の材料は弾性部材であればよく、シリコンゴムに何ら限定されることはない。また、配列具の形状を板状体とはせずに、塊のようなものとしてもよく、つまるところ、歯型を設けられる程度の厚みのあるものであれば、どのような形状でも何ら問題はない。
【0028】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、咬合面に先端の尖った連なった峰が形成されているため、弱い咀嚼圧であっても、難なく食物を噛み切ることが可能である。また、峰の両サイドには、低くなるに従って徐々に傾斜を緩くした凹状面が形成されているため、食物を噛み切る際、食物が凹状面に沿って切り開かれ、口腔内に運ばれる。よって、より食物を噛み切りやすい。さらに、峰は天然上顎臼歯の咬合面における咬頭の隆線に対応したラインに沿って設けられているため、下顎臼歯との噛み合わせが非常によい。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、頬粘膜や舌等、口腔内を傷つける心配がない。
請求項3に記載の発明によれば、さらに、人工上顎臼歯が一体的あるいは連結した状態に形成されているため、床義歯製作時に臼歯と臼歯との相対的な位置関係がずれにくく、咬合平面が水平な精度の高い床義歯をより楽に製作可能としている。加えて、臼歯と臼歯との間の隙間がなくなるため、汚れがたまりにくく、人工上顎臼歯を清潔に保ちやすい。
請求項4に記載の発明によれば、人工上顎臼歯の裏側に空洞が設けられているため、磁性アタッチメントやインプラント等としても使用することが可能である。
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれかに記載の人工上顎臼歯を用いて床義歯を製作する際、一つの面に設けられている人工上顎臼歯の咬合面に対応する歯型に人工上顎臼歯を噛み込ませて床義歯を製作できるため、土台の乾燥収縮等により人工上顎臼歯がずれるといった事態を防ぐことができる。
請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれかに記載の人工上顎臼歯を用いて全部床義歯を製作する際、向かい合う面に、人工上顎臼歯の咬合面に対応する歯型と下顎臼歯の咬合面に対応する歯型とが、咬み合わせの状態で設けられているため、上顎に対する下顎の位置を実に簡単に位置決めすることができる上、上顎と下顎の噛み合わせが極めて優れている全部床義歯を製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一体型人工上顎臼歯を上顎用全部床義歯に設置した状態を示す斜視図である。
【図2】一体型人工上顎臼歯を上顎用全部床義歯に設置した状態を示す平面図である。
【図3】図1におけるA−A断面図である。
【図4】図1におけるB−B断面図である。
【図5】人工上顎臼歯を用いた床義歯の咬合図である。
【図6】配列具の平面図である。
【図7】製作器具を用いて全部床義歯を製作する状態を示す図である。
【図8】配列具を用いて全部床義歯を製作する状態を示す図である。
【図9】配列具を用いて全部床義歯を製作する状態を示す図である。
【図10】空洞を設けた人工上顎臼歯の断面図である。
【図11】従来の床義歯を示す図である。
【符号の説明】
2・・人工第一小臼歯、3・・人工第二小臼歯、4・・人工第一大臼歯、5・・人工第二大臼歯、6・・一体型上顎人工臼歯、7・・上顎用全部床義歯、8・・峰、9・・凹状面、10・・頬側部、11・・空洞、12・・第一の配列具、13・・歯型、14・・上顎用全部床義歯、15・・下顎用全部床義歯、16・・歯型、17・・第二の配列具、18・・製作器具、19・・咬合平面板、20・・人工下顎臼歯、21・・頬側面、22・・舌側面、23・・下顎臼歯、24・・穴、25・・基台、26・・支持台、27・・可動部。
【発明の属する技術分野】
この発明は、口腔内において上顎臼歯として機能し、全部床義歯や部分床義歯等に使用するための人工上顎臼歯、及び該人工上顎臼歯を床義歯に配列する際使用する配列具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、臼歯として使用する人工歯の形状は、臼歯が食物をすりつぶす機能を果たすという考えに基づいて、天然歯を忠実に再現しようとしたものが多数をしめている。また、人工歯の材料としてプラスチックを用いたものがよく見受けられる。しかしながら、臼歯も主に食物を噛み切る機能を果たしているということが最近解明されており、従来のような咬合面を緩やかな起伏面とした形状では、食物を噛み切ることを期待することはできない。なぜなら、人工歯を全部床義歯や部分床義歯として使用する場合、いずれの義歯も脆弱な歯肉の上に乗っているだけであるため、天然歯と比べて圧倒的に咀嚼圧は小さなものとなっているからである。したがって、従来のような咬合面が緩やかな起伏面の人工歯では硬い食物や繊維質の食物を噛み切ったり粉砕したりすることは不可能である。
また、プラスチックにより製作された人工歯は、咬頭や隆線といった部分が摩耗しやすいため、長期的に使用することでものを噛むことが困難なものとなっている。
【0003】
そこで、より人工歯の摩耗を抑制すると同時に咀嚼機能を向上させることを目的として特許文献1に開示されているような人工歯が発明された。この人工歯は、平らな咬合面から摩耗しにくいワイヤを部分的に露出させたものである。ワイヤを露出させることで、食物をワイヤによって捕捉し、噛み切ろうとするものである。
また、特許文献2に開示されているようなブレードメタルティース80と称される金属製の人工歯も使用されている。ブレードメタルティース80は図11に示されているように、薄い半円板81を直径となっている面で立て、直角に交差させた形状となっている。二枚の半円板81、81が交差する部分を咬頭82として、食物を噛み切ろうとするものである。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−306511号公報
【特許文献2】
特開昭55−106146号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示されたワイヤ付き人工歯では、実際に食物を突き刺すことは不可能であり、天然歯と比べて弱い咀嚼圧の義歯では、依然として食物を噛み切ることは困難であった。
また、特許文献2に開示されたブレードメタルティース80は、凹凸が天然歯とは逆の形状であり、歯の中心が隆起した形状となっているため、左右側方運動においては上下の歯の凸部分同士が接触し、義歯の転覆がおこりやすい。ひいては、舌及び頬粘膜を傷つけることになり、咀嚼運動の障害の原因ともなりえた。さらに、半円板A1が壁のように垂直に立てられているため、食物を噛んだ際に食物がSA人工歯底部水平面で止められることとなり、食物ははね返される。したがって、噛み切り開きながら口腔内に導くこと、つまりスムーズな咀嚼運動を実現することは困難であった。
さらにまた、ブレードメタルティース80を用いて製作された従来の一般的な全部床義歯は、第二小臼歯、第一大臼歯及び第二大臼歯をブレードメタルティース80、80・・に置き換えたものである。つまり、第一小臼歯はプラスチックで製作された従来の人工歯であった。しかしながら、人間が食物を噛み切る際、上顎犬歯と上顎第一小臼歯の下側咬頭で噛み切るため、従来のような形態では上手く食物を噛み切ることができなかった。
【0006】
加えて、従来より、床義歯の製作にあたっては、患者の口腔内模型やX線写真等から製作者が経験に基づいて床義歯に人工臼歯を一本一本配列させている。そのため、製作者の力量に床義歯の完成度はゆだねられており、完成度には当然多くのばらつきが生じる。また、土台となる蝋が乾燥により収縮を起こし、重合後には歪みが発生するため、設置した人工臼歯を更に削ることで歪みを治す等の作業が行われている。当然、無理に削る等され、咬合面が平らになってくるため、義歯が望むような働きを行うことは困難となる。
【0007】
そこで、本発明は、弱い咀嚼圧であっても食物を噛み切ることが可能であり、且つ人の咀嚼運動と一致するように天然歯の解剖学的形態を尊重した人工上顎臼歯を提供しようとするものである。
また、床義歯の製作工程を簡便にし、より精度の高い床義歯を製作するための配列具を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の人工上顎臼歯は、口腔内において上顎臼歯として機能するように製作された人工上顎臼歯であって、その人工上顎臼歯の咬合面は、天然上顎臼歯の咬合面における咬頭の隆線に対応したラインに沿って先端の尖った峰が連なり、その峰の両サイドは、咬合面側から歯根側へ向かうに従って徐々に傾斜を緩くした凹状面に形成されていることを特徴とするものである。
請求項2に記載の人工上顎臼歯は、請求項1の目的に加えて、頬や舌を傷つけないために、人工上顎臼歯の頬側面及び舌側面側が面取りされていることを特徴とするものである。
請求項3に記載の人工上顎臼歯は、請求項1〜2の目的に加えて、例えば床義歯製作作業をより楽にするために、隣り合う複数の人工臼上顎歯を一体又は連結可能に形成したことを特徴とするものである。
請求項4に記載の人工上顎臼歯は、請求項1〜3の目的に加えて、例えば磁性アタッチメントやインプラント等として使用できるように、人工上顎臼歯の裏側に空洞を設けたことを特徴とするものである。
請求項5に記載の配列具は、請求項1〜4のいずれかに記載の人工上顎臼歯を用いて床義歯を製作する際に使用する配列具であり、一つの面に人工上顎臼歯の咬合面に対応する歯型が設けられていることを特徴とするものである。
請求項6に記載の配列具は、請求項1〜4のいずれかに記載の人工上顎臼歯を用いて全部床義歯を製作する際に使用する配列具であり、向かい合う面に、人工上顎臼歯の咬合面に対応する歯型と下顎臼歯の咬合面に対応する歯型とが、咬み合わせの状態で設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態である、四本の上顎臼歯を一体的に形成した一体型人工上顎臼歯を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は上顎の人工第一小臼歯2、人工第二小臼歯3、人工第一大臼歯4、及び人工第二大臼歯5を一体的に形成した一体型人工上顎臼歯6を上顎用全部床義歯7に設置した状態を示す斜視図である。図2は、一体型人工上顎臼歯6を上顎用全部床義歯に設置した状態を示す平面図である。図3は人工第一大臼歯4のA−A断面図である。
これら人工上顎臼歯は全て、耐摩耗性や耐久性等に優れたチタン系の素材により加工されており、またそれぞれの人工上顎臼歯の幅、高さ、長さ等は、それぞれの天然臼歯の平均的なサイズとなっている。
【0011】
ここで、人工第一大臼歯4(奥から二番目の臼歯)の部分について、その形態を説明する。人工第一大臼歯4の咬合面は、天然の第一大臼歯の咬合面における咬頭の隆線に対応したラインを峰8として連ならせ、その連なった峰8の先端を斧のように尖らせている。また、図2に示されているように、峰8から人工第一大臼歯4の歯根側に向けて徐々に傾斜を緩くした凹状面9が四方へ広がるように形成されている。すなわち、人工第一大臼歯4の咬合面は天然臼歯の咬合面のように緩やかな起伏面に形成されておらず、峰8のみを残して、他の咬合面(図2においてハッチングされている部分)は侵食されるが如き形状の凹状面9が形成された形態となっている。
【0012】
図3は人工第一大臼歯4のA−A断面図であり、図4は人工第一大臼歯4のB−B断面図である。
図3に示されているように、峰8の先端の角度は、咬合面の水平に対して100−110度となっており、食物を噛み切るのに適した角度となっている。また、図4に示されているように、峰8は、天然臼歯の咬合面における咬頭の隆線に対応したものであるため、天然臼歯同様に臼歯の中央が凹んだ形状となっている。さらに、人工第一大臼歯4の頬側面21及び舌側面22は、角が面取りされており、丸みを帯びた形状となっている。
【0013】
人工第一小臼歯2、人工第二小臼歯3、及び人工第二大臼歯5の部分もそれぞれ人工第一大臼歯4と同じように、それぞれの天然臼歯の咬合面における咬頭の隆線に対応したラインに沿って先端の尖った峰を連ならせ、その峰の両サイドを、咬合面側から歯根側へ向かうに従って徐々に傾斜が緩くなった凹状面に形成している。
しかしながら、人工第一小臼歯2の頬側部10(図2参照)は、削り取られている。この削り取られた部分は、上顎用全部床義歯を製作する際、プラスチックによって天然臼歯の如く形成される。
【0014】
一体型人工上顎臼歯6は、上述した人工第一小臼歯2、人工第二小臼歯3、人工第一大臼歯4、及び人工第二大臼歯5を一体的に形成したものである。その際、隣り合う人工臼歯の峰は一連となるように形成されている。凹状面についても同様であり、隣り合う人工臼歯の凹状面同士は、なだらかに一面となるように形成されている。
【0015】
このように形成された一体型人工上顎臼歯6を設置した上顎用全部床義歯7を用いると、人工上顎臼歯の咬合面に先端の尖った峰8が連なっているため、たとえ弱い咀嚼圧であっても、使用者は食物を難なく噛み切ることが可能となる。その結果として、上顎用全部床義歯7がぐらつきにくくなり、咀嚼運動における痛みを極力おさえることができる。また、丸みを帯びた凹状面9が形成されているため、食物を噛んだ際、食物が停滞することなく凹状面9に沿って切り開かれ、口腔内に運ばれることとなり、より咀嚼運動が快適に行える。
【0016】
また、峰8の形態は天然臼歯の咬合面における咬頭の隆線に対応したラインであるため、上顎臼歯の隆線と下顎臼歯の隆線とが擦れ合うように食物を切り開いた後、図5に示されているように、上顎臼歯の舌側咬頭が上手く下顎臼歯23の中央の窪みに噛み合う。つまり、自然の咀嚼運動と同じ咀嚼運動を行うことができるため、床義歯が安定する。したがって、床義歯使用者の歯肉にあまり負担をかけず、使用者の咀嚼時の痛みを極力抑えることができる。
さらに、一体型人工上顎臼歯6の頬側及び舌側は丸みを帯びた形状となっているため、使用者の頬粘膜や舌を傷つけにくくなっている。
加えて、四本の臼歯を一体的に形成したものであるため、四本のうち必要な部分を分割して使用したとしても、残りの部分を残しておいて、後日残しておいた部分が悪くなった時に使用することもできる。
【0017】
さらにまた、四本の臼歯が一体的に形成されているため、臼歯と臼歯との間に隙間がない。したがって、隙間に汚れがたまりにくく、人工上顎臼歯を清潔に保ちやすい。
加えて、第一人工小臼歯の頬側部を天然歯を模したプラスチック製の臼歯とすることで、該人工臼歯を使用したとしても、口腔内の見た目が悪くなることを極力おさえることができる。また、このように人工上顎臼歯を加工したとしても、食物を噛み切る機能等にそれほど影響は出ない。
【0018】
次に、上記の如く構成された人工臼歯を上顎用全部床義歯上に配列させる際に用いる配列具の実施の一形態及び使用方法について説明する。
【0019】
図6(a)は上顎用全部床義歯14を製作する際に用いる第一の配列具12の表面を示す図であり、図6(b)は上顎用全部床義歯14に対応する下顎用全部床義歯15を製作する際に用いる第二の配列具17の裏面を示す図である。
第一の配列具12及び第二の配列具17は、薄い板状体であって、シリコンゴムのような弾性部材により形成されている。
第一の配列具12の表面には一体型人工上顎臼歯6の咬合面の歯型13が設けられており、裏面は平面となっている。
【0020】
また、第二の配列具17は、表面には一体型人工上顎臼歯6の咬合面の歯型13が設けられており、裏面には上顎用全部床義歯14に対応する下顎用全部床義歯15の人工下顎臼歯20の咬合面の歯型16が、上顎の歯型13と対応するように噛み合わせの状態で設けられている(図9参照)。したがって、上顎臼歯と下顎臼歯とが接触する部分は穴24が空いた形状となっている。
【0021】
ここで、図7、8及び9を用いて、全部床義歯を製作時における第一の配列具12及び第二の配列具17の使用方法を説明する。
全部床義歯を製作する際には、基台25、基台25上に取り付けられた支持台26、その支持台26上に載置された咬合平面板19及び顎の開閉運動を再現可能な可動部27を備えた製作器具18を使用する。
まず、製作器具18に備えられている咬合平面板19が全部床義歯使用者の咬合平面となるように調整して、上顎用全部床義歯14を装着する。次に、図8で示されているように、第一の配列具12の表面に設けられた歯型13に一体型人工上顎臼歯6を噛み込ませたものを、咬合平面板19上に設置し、一体型人工上顎臼歯6と上顎用全部床義歯14とが相対的に所定の位置関係となるように、一体型人工上顎臼歯6を第一の配列具12とともに調整する。そして、一体型人工上顎臼歯6と上顎用全部床義歯14との隙間を蝋で埋める。
【0022】
次に、図9に示されているように、上顎用全部床義歯14を上下逆さとし、咬合平面板19を取り除く。そして、第一の配列具12を除去して、第二の配列具17の歯型13が設けられている面を一体型人工上顎臼歯6に噛み込ませる。さらに、第二の配列具17に設けられた人工下顎臼歯20の咬合面の歯型16に下顎用人工臼歯20を噛み込ませる。
下顎用全部床義歯15を製作器具18の可動部27に取り付け、咬み合わせた状態とし、人工下顎臼歯20と下顎用全部床義歯15との隙間を蝋で埋めれば、全部床義歯は完成する。
【0023】
このようにして製作された全部床義歯は、第一の配列具12を用いることで、一本一本人工臼歯を並べていくものと比べると、人工臼歯が連結されているため、歯と歯の相対的な位置関係はずれにくい。また、咬合平面を水平に形成しやすい。さらに、配列具に人工臼歯を噛み込ませているため、蝋が乾燥収縮したとしても、人工臼歯の位置がずれることはない。したがって、精度の高い上顎用全部床義歯を、より簡便に製作することが可能となる。
さらにまた、第二の配列具17を用いることで、上顎に対する下顎の位置を実に簡単に位置決めすることができる上、上顎と下顎の噛み合わせが極めて優れている全部床義歯を製作することができる。
【0024】
なお、本発明は、上記した実施例において、四本の臼歯を一体的に形成した一体型人工上顎臼歯を採り上げたが、この態様に何ら限定されるものではない。
例えば、四本の臼歯を一体的に形成せず、隣り合う三本の臼歯を一体的に形成してもよく、また隣り合う二本の臼歯を一体的に形成してもよい。さらに、一本だけでも十分に機能するものである。また、実施例では全部床義歯の一部としたが、該人工上顎臼歯のみで部分床義歯として使用することも可能である。
【0025】
さらに、図10に示すように、人工上顎臼歯の裏側に空洞11を設け、磁性アタッチメントやインプラント等として使用することも可能である。
さらにまた、人工上顎臼歯の材料として、チタン系の素材のもの以外にもチタン系、白金加金系、コバルトクロム系の金属或いは硬質プラスチック等を使用してもよい。また、該人工上顎臼歯と対合する下顎臼歯が天然臼歯の場合であっても、硬質プラスチックや白金加金系等のより軟質な金属等を用いることによって、天然臼歯を傷つけることなく、人工上顎臼歯を使用することができる。
【0026】
加えて、実施例では、第一人工小臼歯の頬側部10を天然歯を模したプラスチック製の臼歯としたが、削り取らずに、峰や凹状面を残した第一人工臼歯としても何ら問題はない。
さらに、一体型人工上顎臼歯の裏側に、上顎用全部床義歯に設置する際、脱落を防止するための棒状の維持部を設けてもよい。
【0027】
また、実施例において配列具を全部床義歯製作時に使用するものとしたが、部分床義歯を製作する際にも使用することは当然可能である。さらに、四本を一体形成した人工臼歯に対応する歯型を設けるものとしたが、三本を一体形成した、あるいは二本を一体形成した人工臼歯に対応する歯型としてもよいし、一本の人工臼歯に対応する歯型としても何ら問題はない。
加えて、配列具の材料は弾性部材であればよく、シリコンゴムに何ら限定されることはない。また、配列具の形状を板状体とはせずに、塊のようなものとしてもよく、つまるところ、歯型を設けられる程度の厚みのあるものであれば、どのような形状でも何ら問題はない。
【0028】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、咬合面に先端の尖った連なった峰が形成されているため、弱い咀嚼圧であっても、難なく食物を噛み切ることが可能である。また、峰の両サイドには、低くなるに従って徐々に傾斜を緩くした凹状面が形成されているため、食物を噛み切る際、食物が凹状面に沿って切り開かれ、口腔内に運ばれる。よって、より食物を噛み切りやすい。さらに、峰は天然上顎臼歯の咬合面における咬頭の隆線に対応したラインに沿って設けられているため、下顎臼歯との噛み合わせが非常によい。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、頬粘膜や舌等、口腔内を傷つける心配がない。
請求項3に記載の発明によれば、さらに、人工上顎臼歯が一体的あるいは連結した状態に形成されているため、床義歯製作時に臼歯と臼歯との相対的な位置関係がずれにくく、咬合平面が水平な精度の高い床義歯をより楽に製作可能としている。加えて、臼歯と臼歯との間の隙間がなくなるため、汚れがたまりにくく、人工上顎臼歯を清潔に保ちやすい。
請求項4に記載の発明によれば、人工上顎臼歯の裏側に空洞が設けられているため、磁性アタッチメントやインプラント等としても使用することが可能である。
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれかに記載の人工上顎臼歯を用いて床義歯を製作する際、一つの面に設けられている人工上顎臼歯の咬合面に対応する歯型に人工上顎臼歯を噛み込ませて床義歯を製作できるため、土台の乾燥収縮等により人工上顎臼歯がずれるといった事態を防ぐことができる。
請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれかに記載の人工上顎臼歯を用いて全部床義歯を製作する際、向かい合う面に、人工上顎臼歯の咬合面に対応する歯型と下顎臼歯の咬合面に対応する歯型とが、咬み合わせの状態で設けられているため、上顎に対する下顎の位置を実に簡単に位置決めすることができる上、上顎と下顎の噛み合わせが極めて優れている全部床義歯を製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一体型人工上顎臼歯を上顎用全部床義歯に設置した状態を示す斜視図である。
【図2】一体型人工上顎臼歯を上顎用全部床義歯に設置した状態を示す平面図である。
【図3】図1におけるA−A断面図である。
【図4】図1におけるB−B断面図である。
【図5】人工上顎臼歯を用いた床義歯の咬合図である。
【図6】配列具の平面図である。
【図7】製作器具を用いて全部床義歯を製作する状態を示す図である。
【図8】配列具を用いて全部床義歯を製作する状態を示す図である。
【図9】配列具を用いて全部床義歯を製作する状態を示す図である。
【図10】空洞を設けた人工上顎臼歯の断面図である。
【図11】従来の床義歯を示す図である。
【符号の説明】
2・・人工第一小臼歯、3・・人工第二小臼歯、4・・人工第一大臼歯、5・・人工第二大臼歯、6・・一体型上顎人工臼歯、7・・上顎用全部床義歯、8・・峰、9・・凹状面、10・・頬側部、11・・空洞、12・・第一の配列具、13・・歯型、14・・上顎用全部床義歯、15・・下顎用全部床義歯、16・・歯型、17・・第二の配列具、18・・製作器具、19・・咬合平面板、20・・人工下顎臼歯、21・・頬側面、22・・舌側面、23・・下顎臼歯、24・・穴、25・・基台、26・・支持台、27・・可動部。
Claims (6)
- 口腔内において上顎臼歯として機能するように製作された人工上顎臼歯であって、
その人工上顎臼歯の咬合面は、天然上顎臼歯の咬合面における咬頭の隆線に対応したラインに沿って先端の尖った峰が連なり、その峰の両サイドは、咬合面側から歯根側へ向かうに従って徐々に傾斜を緩くした凹状面に形成されていることを特徴とする人工上顎臼歯。 - 人工上顎臼歯の頬側面及び舌側面側が面取りされていることを特徴とする請求項1に記載の人工上顎臼歯。
- 隣り合う複数の人工臼上顎歯を一体又は連結可能に形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の人工上顎臼歯。
- 人工上顎臼歯の裏側に空洞を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の人工上顎臼歯。
- 一つの面に人工上顎臼歯の咬合面に対応する歯型が設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の人工上顎臼歯を用いて床義歯を製作する際に使用する配列具。
- 背中合わせの面に、人工上顎臼歯の咬合面に対応する歯型と下顎臼歯の咬合面に対応する歯型とが、咬み合わせの状態で設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の人工上顎臼歯を用いて全部床義歯を製作する際に使用する配列具。
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