JP2002113022A - 人工臼歯ユニット及び総義歯補綴物 - Google Patents

人工臼歯ユニット及び総義歯補綴物

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JP2002113022A JP2000310703A JP2000310703A JP2002113022A JP 2002113022 A JP2002113022 A JP 2002113022A JP 2000310703 A JP2000310703 A JP 2000310703A JP 2000310703 A JP2000310703 A JP 2000310703A JP 2002113022 A JP2002113022 A JP 2002113022A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】義歯製作に供される補綴用人工臼歯に関し、上
下顎の大小臼歯をそれぞれ天然歯に近似した咬合関係を
有するナチュラルファセット臼歯として再構成し、それ
らを組み合わせて一式とした人工臼歯ユニットを用い、
標準的に調整されたスマイルラインの形成を含み全運動
方向にバランスのとれた咬合状態を再現可能とする。 【解決手段】人工臼歯ユニットXは、天然歯列をマスタ
ーモデルとして、そのファセット(歯牙咬頭傾斜角度)
あるいは咬耗形態、及びスピーカーブあるいは排列状態
を写像ないしは複製又は調整した上下顎の大小臼歯を個
々に造形し、かつブロック排列した上顎用ナチュラルフ
ァセット臼歯ブロック要素X1及び下顎用ナチュラルファ
セット臼歯ブロック要素X2からなる。また、展開角約1
50°のファセットを有する人工臼歯ユニットを用いた
総義歯補綴物を製作する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、上下顎の大小臼歯
をそれぞれ天然歯に近似した咬合関係を有するナチュラ
ルファセット臼歯として再構成し、それらを組み合わせ
て一式とした人工臼歯ユニット、及び歯科用咬合器を用
いて人工臼歯ユニットを組み込むことにより製作可能で
生理的咬合状態を創出可能な総義歯補綴物に関する。
【0002】なお、ファセット[fasset]は歯牙咬頭傾斜
角度であって咬耗形態を規定し〔図10、図11、図13、及
び図14参照〕、スピーカーブ[spee curve]は口腔円錐[d
ental corn] の頂点であるスピーセンター[spee cennte
r]からの円弧(R≒10cm)であって排列状態を規定する
〔図9参照〕。
【0003】また、生理的咬合状態とは、噛み合わせの
出発点と終点である咬頭嵌合位、及び靱帯が緊張させら
れた限界位である後方咬合位に係る咬合状態をいう。
【0004】
【従来の技術】先に本発明者は、上下の顎フレーム間に
歯牙石膏模型を装着して、生体の顎関節機能と同等の全
運動方向に動作可能な受圧機能と牽引機能を具現するこ
とにより、生理的な咬合状態を再現又は分析可能とする
歯科用咬合器〔以下、先願咬合器。〕を提案してきた。
【0005】図18に示すとおり、先願咬合器は、歯科
医及び歯科技工士の臨床的分野において上下の歯牙の噛
み合わせの治療及び補綴物を作成する際に使用され、前
傾角度10°を有した咬合平面板8を用いて、上顎歯牙石
膏模型6を補綴学的平面であるカンペル平面(Cammpel P
lane) と平行に上顎フレーム51に装着し、下顎歯牙石膏
模型7を下顎フレーム52を基台として載置固定した変換
プレート(上部構造部材2) 上に装着し、上下顎関係
が中心位(前方上位)の状態となるように生理的上下関
係を再現するとともに、変換プレート(2) をずらし操
作して下顎運動の全運動方向を調整することにより、生
体の生理的な咬合状態を再現又は分析可能とするもので
ある。〔WO00/21457〕
【0006】その特徴的構成は、生体の咬合平面角度と
同様の前傾角度を有する咬合平面板8と;スピーセンタ
ー91と後方運動軸92の平均的位置を複数箇所に設定し、
それぞれ両面一対として点描した咬合分析板9と;前後
左右の咬頭傾斜を写像する倒立した円錐形状斜面を刻設
して切歯指導桿54の先端を摺動させるようにした切歯指
導板56と;下顎フレーム52を基台として装着される変換
プレート(2) を具備し、変換プレート(2) 上に下顎
の歯牙石膏模型7を載置・装着してずらし操作すること
により、生体の咬頭嵌合位及び後方咬合位に係る生理的
咬合状態を再現するようにしている。
【0007】そして、上部構造部材と下部構造部材を
歯合させ固定することにより咬頭嵌合位に係る咬合状態
が再現操作されるとともに、上部構造部材を摺動させ
て、下部構造部材を相対的に前下方30°方向に平行移動
(スライド)させ固定することにより、咬頭嵌合位及び
後方咬合位に係る生理的咬合状態を再現操作することが
できる。〔図19参照〕
【0008】ところで、新調した総義歯が合わなくて、
調整を繰り返しても咬合の不調和が解消しないという事
例が多くあり、これにともない全身の症状を訴える場合
も多くみられる。
【0009】こうした場合、臨床歯科医は咬合治療をす
ることになるが、その指針となる基本的顎位の概念であ
る「中心位」に関し、近年「最後退位」から「前上方
位」に定義が変更されてきたにもかかわらず、未だ臨床
的意義が明らかにされていないため、標準的な術式が確
立していない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】中心位(前上方位)
は、歯の噛み合わせが顎関節を支点として閉口筋の活動
により決定され、正常時、歯を噛み合わせたときの筋活
動が左右前後的にバランスが保たれている生理重力下で
の安定した位置(解剖学的には顆頭安定位)あるいは生
理的・機能的に不偏な中立関係位置(本発明者の提唱す
るニュートラル・リレーション[Neutral Relation]、以
下NRと略称する。)をいうものであるから、顎関節の
解剖的所見と機能解析における新たな指導原理、すなわ
ち生体において顎口腔系は咀嚼機能運動を営むばかりで
なく、姿勢制御における頭位軸慣性平衡系、つまり頭蓋
部の前後左右的なバランスをとる機能(前記NRの定義
に包摂される。)を有しているとの認識に立脚した生理
的な咬合の診断及び治療法が重要である。
【0011】また、総義歯はすべての歯が失われている
ために、咬合高径、咬合位等すべての咬合要素を再構成
する咬合治療(下顎位の修正を基本とする)といえ、有
歯顎と無歯顎とを問わない顎関節障害の治療と共通す
る。
【0012】上述のとおり先願咬合器は、生理重力下に
おいて左右対称性を有し、約10°の前傾角度を有した咬
合平面が設定可能で、生体の下顎の振子運動に調和した
スピーカーブを有し、咬頭嵌合位や後方咬合位、左右前
後的に調和のとれた咬頭斜面を再現可能としており、新
たな指導原理に基づく全運動方向の生理的咬合状態(前
記NRの定義に包摂される。)を再現操作できるもので
ある。〔図16〜図19参照〕
【0013】この先願咬合器を用いれば、全運動方向の
生理的咬合状態を再現操作できるので、天然歯列(マス
ターモデル)を写像ないしは複製又は調整した義歯(本
発明に関し人工臼歯)を製作できる。また、生理的咬合
状態を創出可能な義歯補綴物(本発明に関し総義歯補綴
物)を製作できる。
【0014】なお、天然歯列を模擬した人工臼歯の提案
は従来技術としてあるが、本発明者が提案した先願咬合
器を用いなければ、正しい又は理想的な人工臼歯(ナチ
ュラルファセット臼歯)の作成は不可能であろう。なぜ
ならば、先願明細書で述べたように、新たな指導原理に
基づく知見(「咬合器と生体との関係」と「顎運動の幾
何解剖学的考察」)を有し、これに立脚して生体の顎関
節機能と同等の全運動方向に動作可能な受圧機能と牽引
機能を咬合器により具現し、生理的な咬合状態を再現又
は分析ないしは検証できなければ、正しい又は理想的な
義歯製作は困難だからである。図20に咬合面形態と顎運
動軌跡(三次元解析)の調和を示す。〔藤田和也:顎関
節症−生理的咬合の判定基準−(2nd.ed.),デンタルフ
ォーラム1999,P.186 所収〕また、図21に咬合平面
(基準面)、スピーカーブ及び後方運動軸(後方誘導
面)の関係を示すとともに、前歯と大小臼歯の頬側咬頭
頂が標準的又は理想的に調整されたスマイルラインを示
す。〔ibid.,P.150 所収〕
【0015】本発明はこのような事情に鑑みなされたも
のであって、上下顎の大小臼歯をそれぞれ天然歯に近似
した咬合関係を有するナチュラルファセット臼歯として
再構成し、それらを組み合わせて一式とした人工臼歯ユ
ニット、及び歯科用咬合器を用いて人工臼歯ユニットを
組み込むことにより製作可能で生理的な咬合状態を再現
可能な総義歯補綴物を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】課題を解決するために本
発明は、上下顎の大小臼歯をそれぞれ天然歯に近似した
咬合関係を有するナチュラルファセット臼歯として再構
成し、それらを組み合わせて一式とすることより、標準
的に調整されたスマイルラインの形成を含み全運動方向
にバランスのとれた咬合状態を再現可能とする人工臼歯
ユニットであって、天然歯列をマスターモデルとして、
そのファセット(歯牙咬頭傾斜角度)あるいは咬耗形
態、及びスピーカーブあるいは排列状態を写像ないし複
製又は調整した上下顎の大小臼歯を個々に造形し、かつ
ブロック排列した上顎用ナチュラルファセット臼歯ブロ
ック要素及び下顎用ナチュラルファセット臼歯ブロック
要素からなることを特徴とするものである。
【0017】また、先願咬合器を用いて、総義歯補綴用
に展開角140°〜150°のファセットを有する上記
人工臼歯ユニットを組み込んで作成した総義歯補綴物で
あって、以下の性質を有することを特徴とするものであ
る。
【0018】<1>天然歯列のファセット(歯牙咬頭傾
斜角度)あるいは咬耗形態、及びスピーカーブあるいは
排列状態を写像ないしは複製又は調整することより造形
され、天然歯に近似した咬合関係を有するように再構成
されている。
【0019】<2>上顎用ナチュラルファセット臼歯ブ
ロック要素の第1小臼歯頬側咬頭頂(P1)、第2小臼歯
舌側及び頬側咬頭頂(P2,P3)、並びに第1大臼歯舌側咬
頭頂(P4)を包含する平面が上顎咬合平面(基準面)と
なるようにレベル形成されている。
【0020】<3>全運動方向にバランスのとれた咬合
状態を再現しており、削合調整が不要である。
【0021】<4>前歯と大小臼歯の頬側咬頭頂が標準
的に調整されたスマイルライン上に排列されている。
【0022】ここで、附属治具として、生体の咬合平面
と平行なカンペル平面を記録するためのフェイスボー
(図示省略)を具備するのが好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を添付図面に
基づいて以下説明する。
【0024】図1はマスターモデルとした天然歯列Nを
示す外観説明図である。人工臼歯を造形するために、天
然歯を歯科用咬合器Zに装着して、そのファセット(歯
牙咬頭傾斜角度)あるいは咬耗形態、及びスピーカーブ
あるいは排列状態等を含む歯列を解析又は検証する。
【0025】図2は人工臼歯ユニットXを示す咬合面観
説明図であり、(a)が上顎用ナチュラルファセット臼
歯ブロック要素X1、及び(b)が下顎用ナチュラルファ
セット臼歯ブロック要素X2である。
【0026】図3は上顎(右)用ナチュラルファセット
臼歯ブロック要素X1の咬合面観を示す説明図である。上
顎咬合平面P(基準面)をレベル形成している点に注意
されたい。図中、XXは歯間接合部である。
【0027】図4は上顎(右)用ナチュラルファセット
臼歯ブロック要素X1の上顎咬合平面P(基準面)を咬合
平面板8にあわせた状態を示す頬側視説明図である。す
でにスピーカーブが現出できている点に注意されたい。
【0028】図5は上顎(左)用ナチュラルファセット
臼歯ブロック要素X1の頬側視説明図である。
【0029】図6は下顎(左)用ナチュラルファセット
臼歯ブロック要素X2の舌側視説明図である。
【0030】図7は上下顎(左)用ナチュラルファセッ
ト臼歯ブロック要素X1,X2(X2a;x2b)の頬側視咬合説明図
である。
【0031】図8は上下顎臼歯部完成義歯の咬合面観を
示す説明図である。
【0032】図9は図8中A視咬合端面を示す説明図で
ある。上下顎臼歯部においてそれぞれが嵌合する上顎の
近心窩及び中心窩と下顎の咬頭頂を切断線としているの
で、スピーカーブが看てとれる。
【0033】図10は図8中B視咬合端面を示す説明図で
ある。上下顎の第1小臼歯を側方に切断しているので水
平運動軌跡L4〔図20〕が推認される。
【0034】図11は図8中C視咬合端面を示す説明図で
ある。上下顎の第1大臼歯を側方に切断しているので水
平運動軌跡L6〔図20〕が推認される。
【0035】図12は上下顎臼歯部完成義歯の咬合面観を
示す説明図である。
【0036】図13は図12中D視咬合端面を示す説明図で
ある。上顎第1小臼歯14を後方運動方向に切断している
ので後方誘導面が推認される。〔必要ならば、図19、図
20の後方運動軌跡L4、及び図21参照〕
【0037】図14は図12中E視咬合端面を示す説明図で
ある。上顎臼歯部(X1)を後方運動方向に切断しているの
で後方誘導面が推認される。〔必要ならば、図19、図20
の後方運動軌跡L6、及び図21参照〕
【0038】図15は総義歯補綴物Yを示す咬合面観説明
図であり、(a)が上顎用ナチュラルファセット臼歯ブ
ロック要素X1を用いた上顎完成義歯Y1、及び(b)が下
顎用ナチュラルファセット臼歯ブロック要素X2を用いた
下顎完成義歯Y2である。
【0039】図16は歯科用咬合器Zと生体(セファロ表
示)との関係を示す側面視説明図である。
【0040】図17は咬頭嵌合位における口腔円錐を示す
側面視説明図である。
【0041】図1に示す天然歯列Nをマスターモデルと
して、図18に示す先願咬合器Zを用いて、そのファセッ
ト(歯牙咬頭傾斜角度)あるいは咬耗形態、及びスピー
カーブあるいは排列状態を写像ないしは複製又は調整し
た上下顎の大小臼歯(人工臼歯)を個々に造形する。上
下顎ともそれぞれ左右一対とするのは当然であるから、
左右いずれかには特にこだわらない。
【0042】ここで、先願咬合器Zにおける切歯指導板
56は、展開角の異なった3種類の円錐形状のものを用意
し、後方運動軸92とペアで使用する。
【0043】顎関節の正常な典型的な咬合歯列には、後
方運動角30°、展開角100 °のものを使用する。総義歯
補綴物には、後方運動角15°、展開角140 °のものを使
用する。これらの中間の咬合歯列に対しては、後方運動
角22°、展開角120 °のものを使用する。
【0044】この切歯指導板56は、前後左右方向に切歯
指導桿54を動かせて、それぞれの傾斜角度を測ることが
できるので、従来的な切歯を指導するのみならず、臼歯
を指導するもの〔臼歯指導桿〕となっているのである。
【0045】図2〜図7に示すように、造形後の個々の
人工臼歯14〜17;24〜27をブロック排列した上下顎用ナ
チュラルファセット臼歯ブロック要素X1;X2(X2a,X2b)
は、大小臼歯4本を1ブロックとして排列し一体化構成
した上顎用ナチュラルファセット臼歯ブロック要素X1
と、大臼歯2本を1ブロック(X2a) 、及び小臼歯2本を
1ブロック(X2b) としてそれぞれに一体化構成した下顎
用ナチュラルファセット臼歯ブロック要素X2を作成す
る。
【0046】ここで、上顎用ナチュラルファセット臼歯
ブロック要素X1の第1小臼歯14頬側咬頭頂(P1)、第2
小臼歯15舌側及び頬側咬頭頂(P2,P3)、並びに第1大臼
歯16舌側咬頭頂(P4)を包含する平面が上顎咬合平面P
(基準面)となるようにレベル形成される。そして、上
顎用ナチュラルファセット臼歯ブロック要素X1を咬合平
面板8に載置し基準面Pをあわせた状態で上顎基礎床に
ワックス固定することにより臼歯部の補綴物を作成する
ようにしている。
【0047】スピーカーブ及び水平運動に関し、上下顎
の臼歯部の完成義歯を咬合面観を図8に示し、図9〜図
11に図8中のA、B、及びC視での咬合端面を示す。ま
た、後方誘導面(後方運動)に関し、上下顎の臼歯部の
完成義歯を咬合面観を図12に示し、図13、図14に図12中
のD、及びE視での咬合端面を示す。〔あわせて図20、
図21を参照。〕
【0048】上記構成の各ブッロク要素X1;X2(X2a,X2
b) は成形金型をおこす際の原型(マスターピース)と
されればよく、臨床では複製された成形品を使用するこ
とになる。
【0049】また、図15に示すように、総義歯補綴物Y
は、通法により人工歯排列用基礎床を作成し、先願咬合
器Z〔図18〕の咬合平面板8上で前歯を排列調整した
後、展開角140°〜150°(実際的には約150°
になる)の上記人工臼歯ユニットX〔X1;X2(X2a,X2b)
〕を用意し、上顎用ナチュラルファセット臼歯ブロッ
ク要素X1の基準面Pを咬合平面板8にあわせた状態で上
顎基礎床に無収縮ワックスで固定し、歯肉部をワックス
アップして上顎の義歯補綴物Y1を作成し、下顎について
前記上顎の義歯補綴物Y1にあわせて下顎用ナチュラルフ
ァセット臼歯ブロック要素X2(X2a,X2b) をそれぞれ嵌合
させて無収縮ワックスで固定し、歯肉部をワックスアッ
プして下顎の義歯補綴物Y2を作成することにより得られ
る。
【0050】すなわち、閉口時の咬合採得をし、生体の
咬合平面と平行なカンペル平面を記録するためのカンペ
ル・フェイスボー(図示省略)を用いて上顎咬合平面の
フェイスボー採得をし、先願咬合器Zを用いて上顎及び
下顎の作業模型をマウントし、咬合採得に用いた咬合床
を取り外して人工歯排列用基礎床を作成し、前歯を排列
調整した後、展開角約150°の上記人工臼歯ユニット
X〔X1;X2(X2a,X2b)〕を用意し、上顎用ナチュラルフ
ァセット臼歯ブロック要素X1の基準面Pを咬合平面板8
にあわせた状態で上顎基礎床に無収縮ワックスで固定
し、歯肉部をワックスアップして上顎の義歯補綴物(Y
1)を作成することで、臼歯部の近心窩及び中心窩はス
ピーカーブ上に排列調整され、上顎切歯部切端をスマイ
ルセンター(近似的にはスピーセンター、以下同じ。)
を中心にした円弧に揃えて前歯と大小臼歯の頬側咬頭頂
が標準的に調和したスマイルラインを形成する。(上顎
完成義歯Y1)
【0051】ついで上顎完成義歯Y1(対象は排列された
上顎用ナチュラルファセット臼歯ブロック要素X1)に対
して下顎用ナチュラルファセット臼歯ブロック要素X2(X
2a,X2b) をそれぞれ嵌合させて無収縮ワックスで固定
し、歯肉部をワックスアップすることで、下顎臼歯部の
頬側咬頭頂はスピーカーブ上に排列調整され、下顎切歯
部切端及び下顎犬歯部切端をそれぞれスマイルセンター
を中心にした円弧に揃えて左右均等な前方咬合時の切端
咬合位を再現することにより下顎の義歯補綴物(下顎完
成義歯Y2)を作成し総義歯補綴物Yを完成する。
【0052】ここで、標準的なスマイルラインの形成
は、上顎臼歯部の近心窩及び中心窩と下顎臼歯部の頬側
咬頭頂をそれぞれスピーカーブ上に排列調整し、上顎中
切歯及び犬歯切端、上顎第1小臼歯頬側咬頭頂、上顎第
2小臼歯頬側及び舌側咬頭頂、並びに上顎第1大臼歯舌
側咬頭頂を1つの平面である咬合平面に接し、上下顎切
歯部切端及び下顎犬歯部切端をそれぞれスマイルセンタ
ーを中心にした円弧に揃えて、左右均等な前方咬合時の
切端咬合位を再現するように調整される。〔図16、図17
及び図21参照〕
【0053】こうして得られた総義歯補綴物Yは、天然
歯に近似した咬合関係を有し、全運動方向にバランスの
とれた咬合状態を再現可能で、削合調整が不要である。
また、前歯と大小臼歯の頬側咬頭頂が標準的に調整され
たスマイルラインを有している。
【0054】
【発明の効果】本発明は以上の構成よりなるものであ
り、これによれば人工臼歯ユニットが天然歯列のファセ
ット(歯牙咬頭傾斜角度)あるいは咬耗形態、及びスピ
ーカーブあるいは排列状態を写像又は複製することより
造形されているので、総義歯補綴物を天然歯に近似した
咬合関係を有するように再構成することができる。しか
も、全運動方向にバランスのとれた咬合状態を再現でき
るので、削合調整が不要である。また、前歯と大小臼歯
の頬側咬頭頂が標準的に調整されたスマイルラインを現
出できる。
【0055】先願咬合器により作成した各ナチュラルフ
ァセット臼歯ブッロク要素は成形金型をおこす際の原型
(マスターピース)とされればよく、臨床では複製され
た成形品を使用することができるので量産可能であり、
しかも人工臼歯及びこれを含む総義歯補綴物の製作を標
準化できる。故に、斯界に極めて有益で価値の高いもの
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】マスターモデルとした上顎天然歯列Nを示す外
観説明図である。
【図2】人工臼歯ユニットXを示す咬合面観説明図であ
り、(a)が上顎用ナチュラルファセット臼歯ブロック
要素X1、及び(b)が下顎用ナチュラルファセット臼歯
ブロック要素X2である。
【図3】上顎(右)用ナチュラルファセット臼歯ブロッ
ク要素X1の咬合面観を示す説明図である。
【図4】上顎(右)用ナチュラルファセット臼歯ブロッ
ク要素X1の上顎咬合平面を咬合平面板にあわせた状態を
示す頬側視説明図である。
【図5】上顎(左)用ナチュラルファセット臼歯ブロッ
ク要素X1の頬側視説明図である。
【図6】下顎(左)用ナチュラルファセット臼歯ブロッ
ク要素X2の舌側視説明図である。
【図7】上下顎(左)用ナチュラルファセット臼歯ブロ
ック要素X1,X2(X2a;x2b)の頬側視咬合説明図である。
【図8】上下顎臼歯部完成義歯の咬合面観を示す説明図
である。
【図9】図8中A視咬合端面を示す説明図である。
【図10】図8中B視咬合端面を示す説明図である。
【図11】図8中C視咬合端面を示す説明図である。
【図12】上下顎臼歯部完成義歯の咬合面観を示す説明図
である。
【図13】図12中D視咬合端面を示す説明図である。
【図14】図12中E視咬合端面を示す説明図である。
【図15】総義歯補綴物Yを示す咬合面観説明図であり、
(a)が上顎用ナチュラルファセット臼歯ブロック要素
X1を用いた上顎完成義歯Y1、及び(b)が下顎用ナチュ
ラルファセット臼歯ブロック要素X2を用いた下顎完成義
歯Y2である。
【図16】先願咬合器Zと生体(セファロ表示)との関係
を示す側面視説明図である。
【図17】咬頭嵌合位における口腔円錐(スピーセンター
含む)を示す側面視説明図である。
【図18】先願咬合器Zの構成を示す側面視説明図であ
る。
【図19】先願咬合器Zの使用方法(生理的咬合状態の再
現操作)を示す側面視説明図である。
【図20】咬合面形態と顎運動軌跡の調和を示す顎運動の
三次元解析図である。
【図21】咬合平面(基準面)、スピーカーブ及び後方運
動軸(後方誘導面)の関係とともに、前歯と大小臼歯の
頬側咬頭頂が標準的又は理想的に調整されたスマイルラ
インを示す説明図である。
【符号の説明】
X 人工臼歯ユニット X1 上顎用ナチュラルファセット臼歯ブロック要素 14 第1小臼歯(上顎4番) 15 第2小臼歯(上顎5番) 16 第1大臼歯(上顎6番) 17 第2大臼歯(上顎7番) P 上顎咬合平面(基準面) P1 第1小臼歯頬側咬頭頂 P2 第2小臼歯舌側咬頭頂 P3 第2小臼歯頬側咬頭頂 P4 第1大臼歯舌側咬頭頂 X2 下顎用ナチュラルファセット臼歯ブロック要素 X2a 大臼歯1ブロック X2b 小臼歯1ブロック 24 第1小臼歯(下顎4番) 25 第2小臼歯(下顎5番) 26 第1大臼歯(下顎6番) 27 第2大臼歯(下顎7番) XX 歯間接合部 Y 総義歯補綴物 Y1 上顎完成義歯 Y2 下顎完成義歯 8 咬合平面板 N 上顎天然歯列(マスターモデル) Z 歯科用咬合器

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 義歯製作に供される補綴用人工臼歯にお
    いて、上下顎の大小臼歯をそれぞれ天然歯に近似した咬
    合関係を有するナチュラルファセット臼歯として再構成
    し、それらを組み合わせて一式とすることより、標準的
    に調整されたスマイルラインの形成を含み全運動方向に
    バランスのとれた咬合状態を再現可能とする人工臼歯ユ
    ニットであって、天然歯列をマスターモデルとして、そ
    のファセット(歯牙咬頭傾斜角度)あるいは咬耗形態、
    及びスピーカーブあるいは排列状態を写像ないしは複製
    又は調整した上下顎の大小臼歯を個々に造形し、かつブ
    ロック排列した上顎用ナチュラルファセット臼歯ブロッ
    ク要素及び下顎用ナチュラルファセット臼歯ブロック要
    素からなることを特徴とする人工臼歯ユニット。
  2. 【請求項2】 上顎用ナチュラルファセット臼歯ブロッ
    ク要素が大小臼歯4本を1ブロックとして構成され、第
    1小臼歯頬側咬頭頂(P1)、第2小臼歯舌側及び頬側咬
    頭頂(P2,P3)、並びに第1大臼歯舌側咬頭頂(P4)を包
    含する平面が上顎咬合平面(基準面)となるようにレベ
    ル形成したものであり、下顎用ナチュラルファセット臼
    歯ブロック要素が大臼歯2本を1ブロック、及び小臼歯
    2本を1ブロックとしてそれぞれ構成したものであり、
    前記上顎用ナチュラルファセット臼歯ブロック要素を咬
    合平面板に載置し前記基準面をあわせた状態で上顎基礎
    床にワックス固定することにより補綴物を作成するよう
    にした請求項1記載の人工臼歯ユニット。
  3. 【請求項3】 天然歯列のマスターモデルが総義歯補綴
    用であって、展開角140°〜150°のファセットを
    有するものである請求項1記載の人工臼歯ユニット。
  4. 【請求項4】 総義歯補綴物において、通法により人工
    歯排列用基礎床を作成し、咬合器の咬合平面板上で前歯
    を排列調整した後、請求項3記載の人工臼歯ユニットの
    上顎用ナチュラルファセット臼歯ブロック要素の基準面
    を咬合平面板にあわせた状態で上顎基礎床に無収縮ワッ
    クスで固定し、歯肉部をワックスアップして上顎の義歯
    補綴物を作成し、下顎について前記上顎の義歯補綴物に
    合わせて請求項3記載の人工臼歯ユニットの下顎用ナチ
    ュラルファセット臼歯ブロック要素を嵌合させて無収縮
    ワックスで固定し、歯肉部をワックスアップして下顎の
    義歯補綴物を作成して得られる総義歯補綴物であって、
    以下の性質を有することを特徴とする総義歯補綴物。 <1>天然歯列のファセット(歯牙咬頭傾斜角度)ある
    いは咬耗形態、及びスピーカーブあるいは排列状態を写
    像ないしは複製又は調整することより造形され、天然歯
    に近似した咬合関係を有するように再構成されている。 <2>上顎用ナチュラルファセット臼歯ブロック要素の
    第1小臼歯頬側咬頭頂(P1)、第2小臼歯舌側及び頬側
    咬頭頂(P2,P3)、並びに第1大臼歯舌側咬頭頂(P4)を
    包含する平面が上顎咬合平面(基準面)となるようにレ
    ベル形成されている。 <3>全運動方向にバランスのとれた咬合状態を再現し
    ており、削合調整が不要である。 <4>前歯と大小臼歯の頬側咬頭頂が標準的に調整され
    たスマイルライン上に排列されている。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP7560408B2 (ja) 2020-07-14 2024-10-02 株式会社松風 歯列弓及び咬合彎曲の調節性を有する部分連結型全顎人工歯

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