JP2004298176A - 植物成長調節剤およびその製造方法 - Google Patents

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義彦 飯島
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Abstract

【課題】 良好な作業性を有すると共に、環境に優しく、毒性が少なく安全で、植物体の徒長を確実に抑制することにより優れた矮化効果を発揮し、園芸作物や農作物の品質を高めることができる植物成長調節剤を提供すること。
【解決手段】 桂皮酸を高濃度で水系媒体に分散あるいは溶解してなる植物成長調節剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は、植物の矮化(矮小化)に有効な植物成長調節剤に関する。さらに詳しくは、園芸作物については該作物の徒長(無駄に伸びること)を抑制し、該作物の形態を整えることにより、該作物の商品価値を向上させ、農作物については該作物の苗の徒長を防止し、省スペースでの育苗を実現することにより農作物の生産性を改善し、加えて病原菌による苗の根腐れや葉の枯死の予防にも有効な、安全性の高い植物成長調節剤およびその製造方法に関する。
従来から作物(以下「植物」ともいう)の矮化は各方面で注目され、研究されてきた。例えば、鉢に植えられた作物、すなわち植物は、鉢と植物とのバランスが大切であり、一般的には生育状態のしまった、草丈の短い植物からなる鉢物が高品質とされており、鉢物の高品質生産のためには植物の適切な矮化技術が必須である。また、農業分野の野菜栽培においては多数の鉢(セル)を用いて植物の苗を育成して使用する技術(セル成型苗)の利用が急増している。しかし、セル成型苗は高密度に苗を生産するために苗が徒長しやすく、この徒長防止策としての有効な苗の矮化技術が求められている。このように今日では園芸・農業両分野において植物の矮化技術が必要不可欠なものとなっている。
植物の矮化技術(特許文献1)には、植物矮化剤の使用、植物に与える肥料成分の減少、植物に対する潅水の制限、植物に対する送風や接触刺激、植物に塩分ストレスを与える技術などがあるが、これらの技術の内では、手間やコスト、そして効果の再現性、さらには実施の際の簡便性を考慮すると、前記の矮化剤の使用が有利である。
現在、植物の矮化によく使用される薬剤には、ダミノジット剤、クロルメコート液剤、パクロブトラゾール粒剤、ウニコナゾール剤などがあるがこれらの薬剤は、いずれも合成化合物を主成分とする化学農薬であり、これらの中には変異原性が報告されているものもある。また、過剰使用の際に薬害が心配されるものも少なくない。これらの内、多くの化学農薬は使用濃度に依存する薬効成分であるため、薬害の回避方法や使用時期の選定などに知識と経験が必要とされ、その使用には細心の注意が必要となるばかりでなく、実際に薬害や環境汚染の発生が現実的なものとなる危惧も生じている。
しかしながら、薬害や環境汚染の発生の恐れのない矮化剤の提案は見当たらず、環境に優しく、人体に安全で、しかも低コストかつ簡便で作業性の良好な矮化剤の開発が強く望まれている。
特開2003−018919公報
上記の事情に鑑みてなされた本発明の目的は、良好な作業性を有するとともに、環境に優しく、毒性が少なく安全で、植物の徒長を確実に抑制することにより優れた矮化効果を発揮し、園芸作物や農作物の品質を高めることができる植物成長調節剤を提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、桂皮酸が園芸作物や農作物の徒長を良好に防止し、優れた矮化剤として機能することを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明によれば、桂皮酸を含有することを特徴とする植物成長調節剤およびその製造方法が提供される。
本発明によれば、良好な作業性を有するとともに、環境に優しく、毒性が少なく安全で、植物の徒長を確実に抑制することにより優れた矮化効果を発揮し、園芸作物や農作物の品質を高めることができる植物成長調節剤が提供される。
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明で植物成長調節剤として使用される桂皮酸は、天然に存在する植物関連の物質であり、さらに食品添加物でもあるので、極めて安全性が高い物質である。桂皮酸は、抗菌・防黴作用をも有する(特開平5−117125号公報)ことから、本発明の植物成長調節剤は、植物の矮化のみならず、植物周辺の環境衛生の保持にも効果を発揮する。
本発明における矮化の対象植物としては、園芸作物では、例えば、ポインセチア、ゼラニウム、ハイドランジア、キク、ユリ、アサガオ、ペチュニアなどの苗が挙げられるが、特に、本発明の植物成長調節剤は、ポインセチアおよびゼラニウムの苗に対して効果が大きい。また、農作物では、広く野菜類が対象植物として挙げられるが、本発明の植物成長調節剤は、例えば、ハクサイ、キャベツ、にんじん、ネギ、玉ネギ、チンゲンサイ、大根、レタス、さやえんどう、カリフラワー、ブロッコリー、ごぼう、二十日大根、蕪、トマト、きゅうり、ナス、かぼちゃ、スイカ、プリンスメロン、まくわうり、メロンなどの苗に対し効果が大きい。
一般に、矮化剤は葉や茎から矮化成分が吸収される葉面散布剤と、根から矮化成分が吸収されて矮化効果を発現する土壌潅注剤とに分けられる。葉面散布剤は、矮化剤を200倍前後の水で希釈し、得られた水溶液(0.5質量%)を、霧吹きで葉面に散布する。新芽が伸び始めたころに処理するのが効果的であるが、植物によっては効果が発現されないものもある。また、葉面や茎の表面に薬剤が残留するので、当該植物に接触することにより人体に薬剤が移行することがあり、薬剤の毒性が高い場合は安全性が問題となる。一方、土壌潅注剤は土壌もしくは栽培土に薬剤を直接施すもので、比較的矮化効果を発現しやすく、葉面散布剤で効果が発現されない場合は土壌潅注剤が用いられる。また、土壌潅注剤は植物表面には薬剤の付着が無いので、植物表面から人体への薬剤の移行は考慮する必要がない。
本発明の植物成長調節剤は、植物中に自然に存在する物質である桂皮酸を主成分としており、極めて安全性が高いので、葉面散布剤としても土壌潅注剤としても用いられる。特に、土壌潅注剤として用いた場合により矮化効果が期待できる。主成分である桂皮酸は食品添加物であり、しかも化学合成物質を主成分とした矮化剤に散見される変異原性や環境ホルモンとしての疑いも認められていないので、極めて高い安全性を具備している。
一般に矮化剤をその作用性の観点から分類すると、抗オーキシン性と抗ジベレリン性に分けられるが、本発明の植物成長調節剤は抗オーキシン性を示す。すなわち、本発明の植物成長調節剤の主成分である桂皮酸が細胞の分裂と伸長に関与する植物ホルモンであるオーキシンの作用を撹乱し、細胞分裂の抑制、呼吸作用の異常増進などが生じ、節間伸長が抑制されて矮化効果が発現されると推定される。本発明の植物成長調節剤は、節間伸長を抑制することにより、草姿を改善した高品位化鉢物の生産を可能とし、セル成型野菜苗の徒長を防止できる他、着花促進効果をも有しているので利用価値が高い。
本発明の植物成長調節剤は、例えば、それを種々の形態で植物に散布するか、またはその水溶液や分散液などに植物の根や茎を浸すことにより、あるいは当該植物が元々その根の周辺に存在する水溶液や分散液中の桂皮酸を吸い上げることにより、矮化剤として作用する。矮化剤(桂皮酸)は茎、葉、または根部から吸収されて、植物内を移行して矮化効果を発揮する。矮化剤は植物に散布後、植物全体に移行するため、矮化剤の多少のかけむらは許容される。
本発明の植物成長調節剤の使用形態は、特に制限されないが、上記の植物成長調節物質である桂皮酸を水に易分散性の粉体あるいは顆粒状などとして、また、上記の植物成長調節物質を、水や他の溶剤に溶解、乳化、分散あるいは懸濁させた溶液、乳化液、あるいは分散液などの液体状で使用される。
上記桂皮酸を液体状として使用する場合には、桂皮酸を含む液を予め所定の濃度に希釈したものでも、桂皮酸を含む濃厚液として、その使用時に希釈して使用するものでもよい。さらに必要により展着剤や他の植物成長調節剤、矮化剤やその他の添加剤などと混合して用いることができる。また、上記の桂皮酸をシクロデキストリンなどとの包接化合物として、ゼオライト、シリカなどの担体に担持させた粉体、もしくはその懸濁液としても使用できる。
本発明の植物成長調節剤の使用量は特に制限されないが、特に効果的な使用量は、栽培用用土(肥料、添加剤も含めて)100質量部当たり桂皮酸として0.0001〜0.2質量部となる量である。使用量が多すぎると植物の成育に悪い影響を与える場合があり、少なすぎると十分な効果が発揮されない場合がある。
本発明の好ましい実施形態である植物成長調節剤としての水性分散液は、分散剤を使用する一般的に知られている分散方法により製造することができる。例えば、桂皮酸を分散剤および水と混合し、この混合物をサンドミルなどの分散機のベッセルに入れ、120rpmの回転数で3時間ほど分散処理をすることで水性分散液の形態の植物成長調節剤が得られる。
本発明において用いられるサンドミルとしては、例えば、円筒状容器内に分散メディアとして小径(0.2〜5.0mm程度)の球状のものを内容積の30〜95%に充填し、さらに容器内部に分散メディアを攪拌する回転機構を備えている構造のものである。円筒状容器の容積は0.3〜250リットル、容器の材質としては、例えば、安定化ジルコニア、アルミナ、ゴムなどが好ましく、分散メディアの材質としては、例えば、安定化ジルコニウム、アルミナ、ガラスビーズなどが使用できる。使用条件としては、例えば、回転数は300〜3000rpmであり、桂皮酸はスラリー供給量0.2〜5000ml/分で供給され、必要に応じて分散液は複数回分散機を通すことが望ましい。
水系媒体としては、水、水と水に可溶性のアルコール類、ケトン類、エステル類、エタノールアミン類などの有機溶剤との混合溶剤が使用されるが、水が特に好ましい。また、分散液中の桂皮酸の平均粒子径は特に限定されないが、3μm以下が好ましい。
本発明に用いる分散剤としては、従来から水系媒体で使用される分散剤であれば、いずれの分散剤も使用可能である。例えば、天然物系、無機化合物系、重合物系、または特殊界面活性剤系が用いられる。天然物系としては、例えば、リグニンスルホン酸塩やカルボキシメチルセルロース(CMC)などが、無機化合物系としては、例えば、ヘキサメタリン酸塩などの縮合リン酸塩などが、重合物系としては、例えば、ポリアクリル酸塩、アクリル酸−マレイン酸共重合物の塩、オレフィン−マレイン酸共重合物の塩などが挙げられる。特殊界面活性剤としては、例えば、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩や多環の特殊非イオン界面活性剤などが用いられる。
また、水系分散剤としては、天然物由来の陰イオン系、陽イオン系、非イオン系、または両性系の各種界面活性剤が用いられる。陰イオン系活性剤としては、例えば、ヒマシ油、ナタネ油、オリーブ油のような油脂類の硫酸化塩および硫酸エステル化塩、マレイン酸と高級アルコールのエステルに硫酸を付加したエアロゾル型界面活性剤、脂肪酸クロリドとアミンスルホン酸であるタウリンを縮合させて得られるアミド硫酸化塩、ナフタリン系硫酸化塩、α−オレフィン硫酸化塩などが挙げられる。
陽イオン系活性剤としては、例えば、アルキルアミンの酢酸塩、アルキルアミンの塩酸塩、アルキルジエタノールアミン塩などの第1級〜第3級アミン塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩などが挙げられる。
非イオン(ノニオン)系活性剤としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、ソルビタン、ショ糖など、多価アルコールの脂肪酸エステルなどの脂肪族のポリオキシエチレンエステル、高級アルコール、アルキルフェノール、ヒマシ油、ポリオキシプロピレンなどのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトール、ソルビタン脂肪酸エステルのポリオキシエチレン付加物などの酸化エチレン重合付加型活性剤、モノエタノールアミン縮合物、ジエタノールアミン縮合物などの脂肪酸のアルキロールアマイド型活性剤などが挙げられる。
両性イオン系活性剤としては、例えば、ベタイン型活性剤、ドデシルジアミノエチルグリシン塩酸塩、N−テトラデシルタウリンソーダ塩などのアミノ酸型活性剤が用いられる。上記の例示分散剤の内で特に好ましいものは、環境汚染の心配の少ないリグニンスルホン酸塩やCMCなどの天然物系分散剤である。
本発明の植物の矮化方法の実施に際しては、例えば、純分30質量%程度の桂皮酸の分散液を調製し、使用時に該分散液を30〜3000倍程度に希釈して使用する。また、純分10質量%程度の桂皮酸水性分散液の場合は、使用時に該分散液を10〜1000倍程度に希釈して使用する。
本発明の植物成長調節剤の主成分である桂皮酸の高濃度水溶液は、桂皮酸が、その水に対する25℃の飽和溶解度(最大溶解度:0.546g/リットル)を超える濃度に水に溶解していることが特徴である。フリーの桂皮酸の水に対する溶解度は上記の通り低いので、高濃度の桂皮酸水溶液が必要である場合には、桂皮酸水溶液の調製に、水溶性の溶解助剤を使用することができる。該溶解助剤を用いることで、桂皮酸がその水に対する25℃の飽和溶解度を超える高濃度に溶解している桂皮酸水溶液(桂皮酸は塩として溶解している)を調製することができる。
本発明で使用する溶解助剤は、その水溶液がアルカリ性を呈する弱酸と強塩基の塩または塩基であればいずれも使用可能であるが、特にpH緩衝作用を示し、環境汚染の恐れが少なく、人体に安全であるものが好ましい。弱酸と強塩基との塩としては、例えば、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸3カリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどが、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが好ましいものとして挙げられる。特に好ましい溶解助剤としては、食品添加物に指定されているトリポリリン酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウムおよび酢酸ナトリウムなどが用いられる。
桂皮酸の高濃度水溶液を製造するに際しては、例えば、溶解助剤の水溶液を予め調製し、これに桂皮酸を加えよく混合して溶解させることにより容易に桂皮酸の高濃度水溶液を得ることができる。溶解助剤の使用量は特に限定されないが、桂皮酸に対して35〜300質量%となる量が好ましい。
このように溶解助剤を使用することで桂皮酸の含有量が、室温での水に対するフリーの桂皮酸の最大溶解度を超えて、25質量%以下の高濃度水溶液が得られる。高濃度水溶液は、その保管スペース、輸送効率などの点から、好ましい濃度は0.5〜25質量%である。
本発明の桂皮酸の高濃度水溶液からなる植物成長調節剤は、その使用に際しては、一応の目安として、例えば、純分10質量%程度に調製した高濃度水溶液を、10〜1000倍程度に希釈して使用する。
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中の「%」は質量基準である。
実施例1
(1)0.3%および0.5%桂皮酸水溶液の調製
20℃にて蒸留水400mlに水酸化カリウム18.4gを溶解し、この水酸化カリウム溶液に桂皮酸50gを加えて撹拌することにより、溶解し、該溶液を蒸留水にて希釈し全量を500mlとし、濃度10%の桂皮酸水溶液(pH8.8)を作製した。次に、この水溶液を蒸留水にて33.3倍および20倍に希釈して、濃度0.3%および0.5%の桂皮酸水溶液を作製した。
(2)ポインセチア苗の矮化試験
草丈約10cmのポインセチア苗を5号鉢(直径14.5cm、深さ14.5cm)に定植し、栽培を続けた。49日目と78日目に、1鉢当り100mlの上記の0.3%および0.5%の桂皮酸水溶液をそれぞれ30鉢の栽培用土に添加し、それぞれ0.3%桂皮酸水溶液添加区、0.5%桂皮酸水溶液添加区とした。また、通常の水やりのみの鉢を30鉢用意し対照区とした。それぞれの区の鉢の栽培を続け、93日目に、各栽培鉢の用土面からポインセチア苗の頭頂部までの長さを測定し、下記式で矮化率(%)を算出し、桂皮酸水溶液の矮化効果を調べた(以下の他の実施例も同様である)。
矮化率(%)=〔(対照区の草丈−添加区の草丈)/対照区の草丈〕×100 この結果を表1に示す。表1の結果より桂皮酸水溶液はポインセチア苗の矮化に有効であることが明らかになった。
なお、以下の全ての表における「草丈」は、各試験において用いた鉢の用土面から植物の頭頂部までの高さの平均値である。
Figure 2004298176
実施例2
(1)0.1%および0.01%桂皮酸分散液の調製
桂皮酸160g、分散剤(リグニンスルホン酸ナトリウム)80g、水293gを混合し、さらに1800gのガラスビーズ(直径1〜1.25mm)をこれに加え、これを分散機(アールエム社製 並列6筒式テスト用サンドミル)のベッセルに入れ、回転数120rpmにて3時間分散処理を行い、30%の桂皮酸分散液(桂皮酸の平均粒径は0.3μm)を得た。次に、この分散液を蒸留水にて300倍および3000倍に希釈し、0.1%および0.01%の桂皮酸分散液を得た。
(2)ゼラニウム苗の矮化試験
草丈7cm、葉数10〜12枚のゼラニウムの苗30鉢を購入し、25℃の組立式室内用アルミ温室(440×840×1500mm)内に置いた。3日目に上記桂皮酸分散液をゼラニウム鉢に添加した。30鉢の内10鉢を0.01%桂皮酸分散液添加区とし、1鉢当り100mlの上記0.01%桂皮酸分散液を栽培用土に添加した。また、別の10鉢を0.1%桂皮酸分散液添加区とし、1鉢当り100mlの上記0.1%桂皮酸分散液を栽培用土に添加した。残りの10鉢は対照区として桂皮酸分散液の代わりに100mlの水を各鉢に添加した。その後は各区の鉢について通常の条件で栽培を続けた。3つの区のゼラニウム鉢について栽培を続けたところ、24日目に各区の鉢のゼラニウムが開花した。さらに栽培を続け、置床後44日目に各区の鉢のゼラニウムの草丈を測定し、矮化率(%)を算出し、桂皮酸分散液のゼラニウム苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表2に示す。表2の結果より桂皮酸分散液はゼラニウム苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例3
(1)0.1%および0.3%桂皮酸水溶液の調製
20℃にて蒸留水400mlに水酸化カリウム18.4gを溶解し、この水酸化カリウム溶液に桂皮酸50gを加えて撹拌することにより、溶解し、該溶液を蒸留水にて希釈し全量を500mlとし10%の桂皮酸水溶液(pH8.8)を作製した。次に、この水溶液を蒸留水にて100倍および33.3倍に希釈して、0.1%および0.3%の桂皮酸水溶液を作製した。
(2)ハクサイ苗の矮化試験
家庭用培養土をポリエチレン製連結ポット(36セル:45×45×30mm/セル)に充填し、充分に潅水を行った後、ハクサイの種子を播種した。播種後、これらを25℃の前記と同じ温室内に置いて発芽させた。その後4日目に桂皮酸水溶液を連結ポット中の培養土に添加した。
36セルの内12セルを0.1%桂皮酸水溶液添加区とし、1セル当り5mlの上記0.1%桂皮酸水溶液を培養土に添加した。また、別の12セルを0.3%桂皮酸水溶液添加区とし、1セル当り5mlの上記0.3%桂皮酸水溶液を培養土に添加した。残りの12セルは対照区として桂皮酸水溶液の代わりに5mlの水を添加した。その後は各区のハクサイ苗について通常の条件で栽培を続けた。22日目に各区の苗の草丈を測定し、矮化率(%)を算出し、桂皮酸水溶液のハクサイ苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表3に示す。表3の結果より桂皮酸水溶液はハクサイ苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例4
(キャベツ苗の矮化試験)
家庭用培養土を前記と同じポリエチレン製連結ポットに充填し、充分に潅水を行った後、キャベツの種子を播種した。播種後、これらを25℃の前記と同じ温室内に置いて発芽させた。その後、4日目に桂皮酸水溶液を連結ポット中の培養土に添加した。36セルの内12セルを0.1%桂皮酸水溶液添加区とし、1セル当り5mlの実施例3の0.1%桂皮酸水溶液を培養土に添加した。また、別の12セルを0.3%桂皮酸水溶液添加区とし、1セル当り5mlの実施例3の0.3%桂皮酸水溶液を培養土に添加した。残りの12セルは対照区として桂皮酸水溶液の代わりに5mlの水を添加した。その後は各区のキャベツ苗について通常の条件で栽培を続けた。22日目に各区の苗の草丈を測定し、矮化率(%)を算出し、桂皮酸水溶液のキャベツ苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表4に示す。
表4の結果より桂皮酸水溶液はキャベツ苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例5
(1)0.05%および0.2%桂皮酸水溶液の調製
80℃の蒸留水400mlにトリポリリン酸ナトリウム50gを溶解し、このトリポリリン酸ナトリウム溶液に桂皮酸17.5gを加えて攪拌することにより、溶解し、該溶液を蒸留水にて希釈し全量を500mlとし、3.5%の桂皮酸水溶液(pH6.5)を作製した。次に、この水溶液を蒸留水にて70倍および17.5倍に希釈し、0.05%および0.2%の桂皮酸水溶液を作製した。
(2)にんじん苗の矮化試験
家庭用培養土を紙製連結ポット(24セル:34×34×50mm/セル)に充填し、充分に潅水を行った後、にんじんの種子を播種した。播種後、これらを20℃の前記と同じ温室内に置いて発芽させた。その後、5日目に桂皮酸水溶液を連結ポット中の培養土に添加した。1つの連結ポット(24セル)を0.05%桂皮酸水溶液添加区とし、1セル当り5mlの上記0.05%桂皮酸水溶液を培養土に添加した。また、別の連結ポット1つを0.2%桂皮酸水溶液添加区とし、1セル当り5mlの上記0.2%桂皮酸水溶液を培養土に添加した。さらに別の連結ポット1つを対照区として桂皮酸水溶液の代わりに5mlの水を添加した。その後は各区のにんじん苗について通常の条件で栽培を続けた。27日目に各区の苗の草丈を測定し、矮化率(%)を算出し、桂皮酸水溶液のにんじん苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表5に示す。表5の結果より0.05%および0.2%桂皮酸水溶液はにんじん苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例6
(ネギ苗の矮化試験)
ネギの種子を播種する以外は実施例5と同様にして、桂皮酸水溶液のネギ苗に対する矮化効果を試験した。この結果を表6に示す。表6の結果より桂皮酸水溶液はネギ苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例7
(玉ネギ苗の矮化試験)
玉ネギの種子を播種する以外は実施例5と同様にして、桂皮酸水溶液の玉ネギ苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表7に示す。表7の結果より桂皮酸水溶液は玉ネギ苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例8
(チンゲンサイ苗の矮化試験)
チンゲンサイの種子を播種し、20日目に草丈を測定すること以外は実施例5と同様にして、桂皮酸水溶液のチンゲンサイ苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表8に示す。表8の結果より桂皮酸水溶液はチンゲンサイ苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例9
(大根苗の矮化試験)
大根の種子を播種する以外は実施例5と同様にして、桂皮酸水溶液の大根苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表9に示す。表9の結果より桂皮酸水溶液は大根苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例10
(レタス苗の矮化試験)
レタスの種子を播種し、20日目に各区の苗の草丈を測定する以外は実施例5と同様にして、桂皮酸水溶液のレタス苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表10に示す。表10の結果より桂皮酸水溶液はレタス苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例11
(さやえんどう苗の矮化試験)
さやえんどうの種子を播種し、実施例3の0.1%および0.3%桂皮酸水溶液を連結ポット中の培養土に添加し、24日目に各区の苗の草丈を測定すること以外は実施例5と同様にして、桂皮酸水溶液のさやえんどう苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表11に示す。表11の結果より桂皮酸水溶液はさやえんどう苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例12
(カリフラワー苗の矮化試験)
カリフラワーの種子を播種し、4日目に桂皮酸水溶液を連結ポット中の培養土に添加し、20日目に各区の苗の草丈を測定すること以外は実施例5と同様にして、桂皮酸水溶液のカリフラワー苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表12に示す。表12の結果より桂皮酸水溶液はカリフラワー苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例13
(ブロッコリー苗の矮化試験)
ブロッコリーの種子を播種すること以外は実施例12と同様にして、桂皮酸水溶液のブロッコリー苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表13に示す。表13の結果より桂皮酸水溶液はブロッコリー苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例14
(ごぼう苗の矮化試験)
ごぼうの種子を播種すること以外は実施例12と同様にして、桂皮酸水溶液のごぼう苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表14に示す。表14の結果より桂皮酸水溶液はごぼう苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例15
(二十日大根苗の矮化試験)
二十日大根の種子を播種すること以外は実施例12と同様にして、桂皮酸水溶液の二十日大根苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表15に示す。表15の結果より桂皮酸水溶液は二十日大根苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例16
(蕪苗の矮化試験)
色蕪の種子を播種すること以外は実施例12と同様にして、桂皮酸水溶液の蕪苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表16に示す。表16の結果より桂皮酸水溶液は蕪苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例17
(トマト苗の矮化試験)
トマトの種子を播種し、7日目に桂皮酸水溶液を連結ポット中の培養土に添加すること以外は実施例12と同様にして、桂皮酸水溶液のトマト苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表17に示す。表17の結果より桂皮酸水溶液はトマト苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例18
(きゅうり苗の矮化試験)
きゅうりの種子を播種すること以外は実施例17と同様にして、桂皮酸水溶液のきゅうり苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表18に示す。表18の結果より桂皮酸水溶液はきゅうり苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例19
(ナス苗の矮化試験)
ナスの種子を播種、25日目に草丈を測定すること以外は実施例17と同様にして、桂皮酸水溶液のナス苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表19に示す。表19の結果より桂皮酸水溶液はナス苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例20
(かぼちゃ苗の矮化試験)
かぼちゃの種子を播種すること以外は実施例17と同様にして、桂皮酸水溶液のかぼちゃ苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表20に示す。表20の結果より桂皮酸水溶液はかぼちゃ苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例21
(スイカ苗の矮化試験)
スイカの種子を播種し、27日目に草丈を測定すること以外は実施例17と同様にして、桂皮酸水溶液のスイカ苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表21に示す。表21の結果より桂皮酸水溶液はスイカ苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例22
(ニューメロン苗の矮化試験)
ニューメロンの種子を播種すること以外は実施例21と同様にして、桂皮酸水溶液のニューメロン苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表22に示す。表22の結果より桂皮酸水溶液はニューメロン苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例23
(まくわうり苗の矮化試験)
まくわうりの種子を播種すること以外は実施例21と同様にして、桂皮酸水溶液のまくわうり苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表23に示す。表23の結果より桂皮酸水溶液はまくわうり苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例24
(プリンスメロン苗の矮化試験)
プリンスメロンの種子を播種すること以外は実施例21と同様にして、桂皮酸水溶液のプリンスメロン苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表24に示す。表24の結果より桂皮酸水溶液はプリンスメロン苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例25
(メロン苗の矮化試験)
メロンの種子を播種し、25日目に草丈を測定すること以外は実施例17と同様にして、桂皮酸水溶液のメロン苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表25に示す。表25の結果より桂皮酸水溶液はメロン苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
実施例26
(1)0.2%および0.4%桂皮酸水溶液の調製
20℃にて蒸留水400mlに水酸化ナトリウム18.4gを溶解し、この水酸化ナトリウム溶液に桂皮酸50gを加えて攪拌することにより、溶解し、該溶液を蒸留水にて希釈し全量を500mlとし、10%の桂皮酸水溶液(pH8.8)を作製した。次に、この水溶液を蒸留水にて50倍および25倍に希釈し、0.2%および0.4%の桂皮酸水溶液を作製した。
(2)ハイドランジア苗の矮化試験
ハイドランジア(セイヨウアジサイ)の新芽を3.5号鉢(直径10.5cm、深さ8.5cm)中の用土に挿し木した。挿し木後、栽培を続け、42日目に摘芯し、苗木を高さ8cmおよび葉数4枚に整え、これを5号鉢(直径14.5cm、深さ14.5cm)に定植した。この際、1鉢当たり100mlの上記0.2%および0.4%の桂皮酸水溶液を各8鉢の栽培用土に添加し、それぞれ0.2%桂皮酸水溶液添加区、0.4%桂皮酸水溶液添加区とした。また、通常の水やりのみの鉢を8鉢用意し対照区とした。それぞれの区の苗の栽培を続け、72日目に、各区の苗木の高さを測定し、矮化率を算出し、桂皮酸水溶液のハイドランジア苗に対する矮化効果を調べた。この結果を表26に示す。表26の結果より桂皮酸水溶液はハイドランジア苗の矮化に有効であることが明らかになった。
Figure 2004298176
以上の本発明によれば、良好な作業性を有するとともに、環境に優しく、毒性が少なく安全で、植物の徒長を確実に抑制することにより優れた矮化効果を発揮し、園芸作物や農作物の品質を高めることができる植物成長調節剤が提供される。

Claims (13)

  1. 桂皮酸を含有することを特徴とする植物成長調節剤。
  2. 桂皮酸が、水系媒体中に分散してなる請求項1に記載の植物成長調節剤。
  3. 分散剤を含有し、該分散剤によって桂皮酸が水系媒体中に分散されている請求項2に記載の植物成長調節剤。
  4. 前記分散剤が、リグニンスルホン酸塩またはカルボキシメチルセルロースである請求項3に記載の植物成長調節剤。
  5. 桂皮酸が、その水に対する最大溶解度を超える濃度に、桂皮酸塩として水系媒体中に溶解している請求項1に記載の植物成長調節剤。
  6. 桂皮酸が、アルカリ性溶解助剤の水溶液に溶解してなる請求項5に記載の植物成長調節剤。
  7. 前記溶解助剤が、トリポリリン酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウムおよび酢酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種である請求項6に記載の植物成長調節剤。
  8. 桂皮酸濃度が、25質量%以下である請求項1に記載の植物成長調節剤。
  9. 植物が、ポインセチア、ゼラニウム、ハイドランジア、キク、ユリ、アサガオおよびペチュニアからなる群から選ばれる少なくとも1種の苗である請求項1に記載の植物成長調節剤。
  10. 植物が、ハクサイ、キャベツ、にんじん、ネギ、玉ネギ、チンゲンサイ、大根、レタス、さやえんどう、カリフラワー、ブロッコリー、ごぼう、二十日大根、蕪、トマト、きゅうり、ナス、かぼちゃ、スイカ、プリンスメロン、まくわうりおよびメロンからなる群から選ばれる少なくとも1種の苗である請求項1に記載の植物成長調節剤。
  11. 桂皮酸と水系媒体とを分散メディアの存在下に混合分散することを特徴とする植物成長調節剤の製造方法。
  12. アルカリ性溶解助剤の水溶液に桂皮酸を溶解させることを特徴とする植物成長調節剤の製造方法。
  13. 請求項1に記載の植物成長調節剤を、植物の苗が栽培されている用土100質量部当たり桂皮酸として0.0001〜0.2質量部の割合で使用することを特徴とする植物苗の矮化方法。
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