JP2004297287A - 通話品質評価システム、および、該通話品質評価のための装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】通話品質評価システム200は、音声品質評価装置310および410と、ネットワークアナライザ320および420と、制御装置500とを備える。通話品質評価システム200は、音声品質評価装置310から評価用音声信号を送信し、ネットワークアナライザ320が評価用音声信号の有音部に対応するパケットを捕獲し、音声品質評価装置410がIPネットワーク310を経由して劣化した評価用音声信号を受信し、ネットワークアナライザ320が該受信する評価用音声信号の有音部に対応するパケットを捕獲する。
【選択図】図7
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、IP(Internet Protocol)ネットワークを介して通話する電話の通話品質を評価するシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
IPネットワークを介して通話するIP電話方式は、既存のSTM(Synchronous Transfer Protocol)網を介して通話する電話方式に代わる電話方式として注目されている。IP電話方式を用いたサービスには、電話機だけがあれば良いタイプ、アダプタと電話機を使用するタイプ、コンピュータと専用ソフトウェアを使用するタイプなどがある。これらのサービスは、「IP電話」や「インターネット電話」と称され、通信市場を賑わしている。なお、本書では、IP電話方式を用いたサービスをIP電話サービスと称する。
【0003】
IP電話サービスでは、通話料金だけでなく通話品質も重要な項目である。IP電話サービスに対する要求は、既存電話方式に比べて多様である。ある利用者は通話料金よりも通話品質を求め、他のある利用者は通話品質よりも通話料金を求める。従って、サービス事業者は、利用者に対して通話料金と共に通話品質を提示しなければならない。また、IP電話サービスは、自社のIPネットワークだけを用いて提供されるだけでなく、複数のサービス事業者がそれぞれ所有するIPネットワークを相互に接続して提供される場合がある。このような場合、サービス事業者は、利用者に対して一定の通話品質を保証するために、他のサービス事業者のIPネットワークの通話品質を知っておく必要がある。従って、サービス事業者は、他のサービス事業者に対しても通話品質を提示しなければならない。
【0004】
IP電話の通話品質を評価する方法は、3つの方法に大別される。1つ目の方法は、IPネットワークの伝送品質を評価する方法である。2つ目の方法は、電話端末間の明瞭度を測定する方法である。3つ目の方法は、R値を測定する方法である。
【0005】
IPネットワークの伝送品質は、IPネットワークにおけるパケットロス率、パケット遅延量、および、スループットなどで評価される。それらのパラメータの測定は、IPネットワーク上のある場所でパケットを送出しIPネットワーク上の他のある場所でその送出されるパケットを捕獲するか、IPネットワーク上のある場所で単純にパケットを捕獲する事により実施される。
【0006】
電話端末間の明瞭度を測定する方法は、いくつかの方法がある。例えば、MOS(ITU−T勧告P.800)がある。MOSは、IPネットワークを含む電話網を通して劣化した音を実際に人間が聞き5段階の整数で評価し、評価結果を平均する事により明瞭度を測定する。この方法は、人間が実際に感じる通話品質にもっとも近い評価が可能である。しかし、評価には時間と人手が多く必要であり、また、評価人の主観に依存した結果が出る。
【0007】
その問題を解決する方法として、PSQM(ITU−T勧告G.861)がある。PSQMは、原音とネットワークを通じて劣化した音とを比較するので、簡便であり、明瞭度を客観的に測定する事ができる。この類の評価方法、すなわち、客観的かつ機械的に明瞭度を測定する方法は、上述のPSQM法の他に、PSQM+、PSQM99、PAMS、および、PESQ(ITU−T勧告G.862)などがある。
【0008】
R値の測定方法は、ITU−T勧告G.107で規定されている。R値は、実測される多くのパラメータに基づいて計算により求められる。これらのパラメータ全てを実測することは容易ではないので、勧告G.107では各パラメータについてデフォルト値を定めている。例えば、受話側音である室内騒音などは、ある条件を想定して固定値が利用される場合が多い。もちろん、妥当なR値を測定するには、少なくとも、音声品質、エコーの大きさ、および、遅延量を実測する必要がある。R値は、上述の伝送品質評価や明瞭度測定と比べて、エコーや遅延などの影響を考慮した総合的な通話品質として算出されるので、IP電話サービスを提供した場合の通話品質に対するサービス利用者の満足度を評価できるものとして期待されている。
【0009】
近年、世界的な標準機関がR値を標準化している事を受けて、従来の通話品質評価装置や通話品質評価ソフトウェアは、R値測定機能を備える傾向にある(例えば、非特許文献1および非特許文献2)。以下、通話品質評価装置や通話品質評価ソフトウェアを、通話品質評価装置と総称する。また、R値測定機能を備える通話品質評価装置や通話品質評価ソフトウェアを、R値測定装置と称する。
【0010】
【非特許文献1】
閑歳孝子,「ここが知りたい IP電話の音質評価」,日経コミュニケーション,日経BP社,2002年5月20日,2002年5月20日号,p.96−102,表3
【非特許文献2】
市嶋洋平,「インターネットのための電話番号「050」電話登場の意義」,日経コミュニケーション,日経BP社,2002年11月22日,2002年12月号,p.122,図4
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、勧告G.107は、音声品質の評価方法について明示していない。勧告G.107は、音声品質の評価方法として、パケットロス率と音声符号化方式から値を算出する方法(ITU−T勧告G.113)や、受話MOS(ITU−T勧告P.800)から算出する方法を例示するに止まっている。R値の測定方法はITU−T以外の世界的な標準機関でも標準化されているが、いずれの標準機関においてもITU−Tと同様に、R値の測定方法は明確に定められていない。
【0012】
従って、従来のR値測定装置は、各社様々な方法でR値を測定している。例えば、IPネットワークのランダムパケットロス率のみから簡易的にR値を測定するR値測定装置や、明瞭度と音声遅延量のみからR値を算出するR値測定装置などがある。しかし、これらのR値測定装置が測定するR値は、IP電話サービスの利用者が感じる通話品質に上手く合致しないという問題がある。例えば、サービス事業者は、サービス利用者から通話品質の劣化を指摘された時間帯において、良好なR値を得ている場合がある。従来の装置におけるこのような問題は、通話品質評価に用いるデータの測定方法や通話品質の評価方法に起因している場合が多い。
【0013】
また、従来のR値測定装置は、長期間連続して測定できないという問題がある。そもそも、R値はネットワーク設計のために考案されたものであり、通話品質を評価するためのものではない。従って、R値測定は、単発測定であれば足り連続測定の機能は必要とされなかった。ところが、サービス事業者は、一般に通話品質の最悪値を保証値とするので、サービス中のR値を連続的に測定する必要がある。通話品質に影響を及ぼすネットワークのトラフィック量は、時間帯、曜日または休日などの時間的要素に依存して大きく変化する。特に、年始年末の急激なトラフィック変動などは驚異的である。従って、サービス事業者は、少なくとも1年間、サービス中のR値を連続的に測定する必要がある。
【0014】
さらに、従来の通話品質評価装置は不具合対応に適していないという問題がある。例えば、IPネットワークの伝送品質を評価する通話品質評価装置やIPネットワークのランダムパケットロス率のみから簡易的にR値を算出するR値測定装置は、VoIP(Voice over IP)ゲートウェイ装置やVoIPアダプタなどのコーデック装置による通話品質の劣化を検知できない。また、電話端末間の明瞭度などを測定する通話品質測定装置や電話端末間の明瞭度と音声遅延量のみからR値を算出するR値測定装置は、電話端末間の通話品質の劣化を検知できるが、通話品質の劣化要因を全く特定できない。
【0015】
要するに、従来の通話品質評価装置は、たとえR値を測定できるものであっても、実際に人間が感じるような通話品質を連続して評価する事ができない。また、従来の通話品質評価装置は、通話品質が劣化した時の不具合対応にも適していない。現在、通信事業者にとってIP電話サービスの開始は急務であり、そのサービス運用に必要なツールが望まれている。そこで、本発明は、上記の課題を解決し、IP電話サービス運用時に用いて好適な通話品質評価システムを提供することを目的とする。また、本発明は、上記の評価システムを提供するにあたり必要とされる装置、方法、または、プログラムを提供する事も目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するためになされたものであって、本第一の発明は、パケットネットワークを介する電話端末間の通話品質を評価するシステムにおいて、音声信号を送信する音声信号送信手段と、前記音声信号に対応する第一のパケットを捕獲する第一のパケット捕獲手段と、前記パケットネットワークを介して劣化した前記音声信号を受信音声信号受信手段と、前記劣化した音声信号に対応する第二のパケットを捕獲する第二のパケット捕獲手段と、さらに、前記音声信号送信手段が送信する音声信号と、前記音声信号受信手段が受信する音声信号と、前記第一のパケットと、前記第二のパケットとを用いて、前記電話端末間の通話品質を評価する通話品質評価手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0017】
また、本第二の発明は、本第一の発明において、前記第一のパケット捕獲手段および前記第二のパケット捕獲手段を、前記音声信号の有音部に対応するパケットを捕獲するようにしたことを特徴とするものである。
【0018】
さらに、本第三の発明は、本第一の発明または本第二の発明において、前記通話品質評価手段を、前記音声信号送信手段が送信する前記音声信号と前記音声信号受信手段が受信する前記音声信号とを、それぞれの信号の有音部毎に比較する事により音声遅延量を測定し、前記音声遅延量を用いて前記電話端末間の通話品質を評価するようにしたことを特徴とするものである。
【0019】
またさらに、本第四の発明は、本第一の発明または本第二の発明において、前記通話品質評価手段を、前記第一のパケットと前記第二のパケットとを同一の識別番号を有するパケット毎に比較する事によりパケット遅延量を測定し、前記パケット遅延量を用いて前記電話端末間の通話品質を評価するようにしたことを特徴とするものである。
【0020】
また、本第五の発明は、本第一の発明または本第二の発明において、さらに、前記第一のパケットから第一の復号化音声信号を復号化する手段と、前記第二のパケットから第二の復号化音声信号を復号化する手段と、を備え、前記通話品質評価手段を、前記第一の復号化音声信号と前記第二の復号化音声信号とを比較する事により音声遅延量を測定し、前記音声遅延量を用いて前記電話端末間の通話品質を評価するようにしたことを特徴とするものである。
【0021】
また、本第六の発明は、本第五の発明において、前記第一の復号化音声信号と前記第二の復号化音声信号とが有音部毎に比較されるようにしたことを特徴とするものである。
【0022】
さらに、本第七の発明は、本第五の発明または本第六の発明において、前記通話品質評価手段を、前記測定した音声遅延量を第一のパケット捕獲手段と第二のパケット捕獲手段との間のパケット遅延量とし、前記パケット遅延量を用いて前記電話端末間の通話品質を評価するようにしたことを特徴とするものである。
【0023】
またさらに、本第八の発明は、本第三乃至本第七の発明において、前記通話品質評価手段を、前記音声遅延量または前記パケット遅延量を用いてR値を測定する事により前記電話端末間の通話品質を評価するようにしたことを特徴とするものである。
【0024】
また、本第九の発明は、本第四乃至本第七の発明において、さらに、表示手段を備え、前記表示手段は、前記通話品質評価手段により測定されるパケット遅延量の所定期間における平均値を時系列に表示し、さらに、該測定されるパケット遅延量の前記所定期間における変動幅を該測定されるパケット遅延量の前記所定期間における平均値に重ねて表示することを特徴とするものである。
【0025】
さらに、本第十の発明は、本第八の発明において、さらに、表示手段を備え、前記表示手段は、前記通話品質評価手段により測定されるR値の所定期間における平均値を時系列に表示し、さらに、該測定されるR値の前記所定期間における変動幅を該測定されるR値の前記所定期間における平均値に重ねて表示することを特徴とするものである。
【0026】
またさらに、本第十一の発明は、本第十の発明において、前記表示手段が、前記R値の劣化箇所が表示画面上で選択された時に、電話端末間を複数の区間に区切って測定した遅延量や欠損を表示するようにしたことを特徴とするものである。
【0027】
またさらに、本第十二の発明は、本第一乃至本第十一の発明において、さらに、制御手段を備え、前記制御手段は、前記電話端末間の評価を該評価が完了しているか否かに関わらず所定時間単位で実施することを特徴とするものである。
【0028】
また、本第十三の発明は、本第十二の発明において、前記制御手段が、前記所定時間単位の評価を予定に従って繰り返し、または、予定に従って前記電話端末の組み合わせを変更しながら実施するようにしたことを特徴とするものである。
【0029】
さらに、本第十四の発明は、本第十二の発明または本第十三の発明において、前記音声信号送信手段が送信する前記音声信号を、前記電話端末間の評価が前記所定時間内に完了するように調整されるようにしたことを特徴とするものである。
【0030】
またさらに、本第十五の発明は、本第一乃至本第十四の発明において、さらに、データベース手段を備え、前記データベース手段は、評価された通話品質が所定値と比べて劣化している時に、前記音声信号送信手段が送信する音声信号、前記音声信号受信手段が受信する音声信号、前記第一のパケット、および、前記第二のパケットのうち少なくとも1つが格納されることを特徴とするものである。
【0031】
また、本第十六の発明は、本第一乃至本第十五の発明において、前記第一のパケット捕獲手段および前記第二のパケット捕獲手段が、時刻同期手段を備え、同期したタイムスタンプとともに捕獲したパケットを格納するようにしたことを特徴とするものである。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明を、添付の図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。本発明の第一の実施形態は、通話品質評価システムであって、その基本的な構成図を図1に示す。なお、図1は、IPネットワーク130を介した電話システム100と通話品質評価システム200とを図示している。電話システム100は、従来からあるアナログ電話端末110および150と、アナログ電話端末をIPネットワークに接続するためのVoIPアダプタ120および140と、IPネットワーク130とからなる。
【0033】
IP通話品質評価システム200は、アナログ電話端末110側に設置されるサブシステム300と、アナログ電話端末150側に設置されるサブシステム400と、システム全体を制御する制御装置500と、管理ネットワーク210とを備える。
【0034】
サブシステム300は、音声品質評価装置310と、ネットワークアナライザ320と、GPS(Global Positioning System)330とを備える。
【0035】
音声品質評価装置310は、アナログ電話端末110とVoIPアダプタ120との間に接続されて、アナログ電話端末110における音声の明瞭度、音声遅延量、および、エコーの大きさなどを測定する装置である。詳細に言えば、音声品質評価装置310は、アナログ電話端末110に代わって発呼もしくは着呼し、音評価用音声信号を送受信する。さらに、音声品質評価装置310は、送受信した信号を装置内に格納し、または、送受信した信号から音声品質を評価する。評価用の音声信号は、話す人の声を録音したものであって、言語、性別、年齢、および、信号再生時間の違いにより複数種類ある。また、評価用の音声信号には、DTMFトーン信号も含まれる。送信するための評価用音声信号や受信する音声信号は、ディジタル符号化され、音声データとして音声品質評価装置310内に格納される。また、音声品質評価装置310は、NTP(Network Time Protcol)による時間同期モジュール315を備えており、数ミリ秒程度の精度で音声品質評価装置310内の時計を合わせる事ができる。
【0036】
ネットワークアナライザ320は、VoIPアダプタ120とIPネットワーク130との間でやりとりされるパケットを捕獲し、伝送品質を評価する装置である。捕獲されるパケットは、個々に捕獲時のタイムスタンプが付加される。また、ネットワークアナライザ320は、任意に決められた条件を満たすパケットのみを捕獲できるようにフィルタ機能を備えている。例えば、フィルタ条件には、発信元アドレス、宛先アドレス、および、ポート番号などがある。さらに、ネットワークアナライザ320は、GPS330に接続されており、数ナノ秒程度の精度でネットワークアナライザ320内の時計を合わせる事ができる。
【0037】
サブシステム400は、音声品質評価装置410と、ネットワークアナライザ420と、GPS430とを備える。
【0038】
音声品質評価装置410は、アナログ電話端末150とVoIPアダプタ140との間に接続されて、アナログ電話端末150における音声の明瞭度、音声遅延量、および、エコーの大きさなどを測定する装置である。詳細に言えば、音声品質評価装置410は、アナログ電話端末150に代わって発呼もしくは着呼し、音評価用音声信号を送受信する。さらに、音声品質評価装置410は、送受信した信号を装置内に格納し、または、送受信した信号から音声品質を評価する。評価用の音声信号は、話す人の声を録音したものであって、言語、性別、年齢、および、信号再生時間の違いにより複数種類ある。また、評価用の音声信号には、DTMFトーン信号も含まれる。送信するための評価用音声信号や受信する音声信号は、ディジタル符号化され、音声データとして音声品質評価装置410内に格納される。また、音声品質評価装置410は、NTPによる時間同期モジュール415を備えており、数ミリ秒程度の精度で音声品質評価装置410内の時計を合わせる事ができる。
【0039】
ネットワークアナライザ420は、VoIPアダプタ140とIPネットワーク130との間でやりとりされるパケットを捕獲し、伝送品質を評価する装置である。捕獲されるパケットは、個々に捕獲時のタイムスタンプが付加される。また、ネットワークアナライザ420は、任意に決められた条件を満たすパケットのみを捕獲できるようにフィルタ機能を備えている。例えば、フィルタ条件には、発信元アドレス、宛先アドレス、および、ポート番号などがある。さらに、ネットワークアナライザ420は、GPS430に接続されており、数ナノ秒程度の精度でネットワークアナライザ420内の時計を合わせる事ができる。
【0040】
以下、音声品質評価装置310および410、ならびに、ネットワークアナライザ320および420を総じて「音声品質評価装置310など」と称する。
【0041】
制御装置500は、通話品質評価システム200全体を制御するコンピュータ装置である。制御装置500は、メモリーやハードディスクドライブなどの記憶装置(不図示)に格納されるプログラムを実行する事により動作する。従って、制御装置500は、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)を備え演算処理し、望ましくはDSP(Digital Signal Processor)または複数のCPUを追加で備え並列に演算処理する。制御装置500は、管理ネットワーク210を介して、音声品質評価装置310などを制御し、また、音声品質評価装置310などとの通信により各種データや設定情報などを授受する事ができる。さらに、制御装置500は、データベース510を備えている。このデータベース510には、音声品質評価装置310などの初期設定情報、音声品質評価装置310などの動作手順、および、音声品質評価装置310などから受け取る様々なデータや設定情報などが格納される。なお、データベース510は、管理ネットワーク210を介して外部装置から自由にアクセスされる。
【0042】
管理ネットワーク210は、制御やデータ通信のためのネットワークである。制御装置500および音声品質評価装置310などは、管理ネットワーク210に接続され、互いに通信する。
【0043】
なお、通話品質評価システム200を構成する装置のいくつかは、一体の装置となっていても良い。もちろん、すべての装置が1つの装置となっていても良い。また、通話品質評価システム200を構成する装置のいくつかは、電話システム100の一部として組み込まれても良い。例えば、サブシステム300がVoIPアダプタ120に、サブシステム400がVoIPアダプタ140に、それぞれ組み込まれても良い。
【0044】
上記のように構成される通話品質評価システム200において、アナログ電話端末110とアナログ電話端末150との間の通話品質は、明瞭度、R値、音声遅延量、エコーの大きさ、パケット遅延量、または、スループットなどにより評価される。これらのパラメータを総じて「通話品質評価値」と称する。なお、明瞭度は、客観的かつ機械的な明瞭度測定方法、例えば、PESQ法などにより得られる値である。
【0045】
通話品質評価値は、それぞれ以下のようにして得られる。パケット遅延量、および、スループットは、一方の音声品質評価装置から評価用音声信号を送信し、送信される音声信号に対応するパケットとIPネットワーク130を経由して劣化した評価用音声信号に対応するパケットとをネットワークアナライザ320および420で捕獲し、それぞれのネットワークアナライザが捕獲したパケットを比較する事により得られる。明瞭度は、一方の音声品質評価装置から評価用音声信号を送信し、IPネットワーク130を経由して劣化した評価用音声信号を他方の音声品質評価装置で受信し、送信する音声信号と受信する音声信号とを比較する事により得られる。音声遅延量は、一方の音声品質評価装置から評価用音声信号を送信し、他方の音声品質評価装置からループバックされる該音声信号をさらに受信し、送信する音声信号と受信する音声信号とを比較する事により得られる。エコーの大きさは、一方の音声品質評価装置から評価用音声信号を送信し、同じ音声品質評価装置で測定される。R値は、上述のようにして得られる明瞭度やパケット遅延量などから計算により求められる。
【0046】
ここで、通話品質評価中に、送信される音声信号と受信される音声信号と捕獲されるパケットとの時間関係について示した図を、図2に示す。なお、図2は、図1において音声信号が音声品質評価装置310から送信され、音声品質評価装置410により受信される場合の時間関係を示す。
【0047】
図2において、上から順に、音声品質評価装置310が送信する音声信号、ネットワークアナライザ320が捕獲するパケット、音声品質評価装置410が受信する音声信号、ネットワークアナライザ420が捕獲するパケットが図示されている。これらの音声信号およびパケットは、一評価期間内に行われる一回の通話に関するものである。また、音声信号の送受信およびパケットの捕獲は、予め決められた評価期間内に開始して終了する。なお、図中に2本ある縦実線のうち、左の実線は一評価の開始時刻を示し、右の実線は同一評価の終了時刻を示す。
【0048】
音声品質評価装置310から送信される音声信号は、評価開始から少し遅れて送信される。音声信号は、音声品質評価装置310と音声品質評価装置410との間の呼が確立した後に、送信されるからである。また、送信される音声信号は、少なくとも1種類の評価用音声信号からなり、望ましくは異なる種類の評価用音声信号が複数連なって構成されるものである。なお、それら評価用音声信号は、エコーの影響を抑制するために無音の音声信号によって互いに分離されている。従って、音声品質評価装置310から送信される音声信号は、有音部と無音部とが混在している。また、評価用音声信号は、会話を録音したものを含み、有音部と無音部が混在している場合がある。図示しないが音声信号を送信した後、音声品質評価装置310は呼の開放を行う。
【0049】
音声品質評価装置410により受信される音声信号は、音声品質評価装置310から送信されIPネットワーク130を経由する事により劣化した音声信号である。また、受信される音声信号は、評価開始から少し遅れて受信が開始される。前述の通り、音声信号は呼が確立した後に送信されるからである。なお、受信される音声の冒頭には、僅かに無音部が生じる。音声品質評価装置310から送信される音声信号は、少し遅れて音声品質評価装置410に到達するからである。
【0050】
ネットワークアナライザ320により捕獲されるパケットは、音声品質評価装置310が送信する音声信号に対応するパケットである。実際には、発信元がVoIPアダプタ120であり宛先がVoIPアダプタ130であるRTP(Realtime Transport Protocol)パケットが捕獲されるように、ネットワークアナライザ420のフィルタが設定されている。このRTPパケットは、音声パケットとも称される。図2において、捕獲されるパケットは内部に斜線が施されている。なお、内部が無地のパケットは、呼制御用のパケットなど音声信号に対応しないパケットであり、捕獲されない。また、説明の便宜上、音声品質評価装置310が送信する音声信号に対応するパケットは8個とする。もちろん、実際の個数はさらに多数である事は言うまでもない。
【0051】
ネットワークアナライザ420により捕獲されるパケットは、音声品質評価装置410が受信する音声信号に対応するパケットである。実際には、発信元がVoIPアダプタ120であり宛先がVoIPアダプタ130であるRTPパケットが捕獲されるように、ネットワークアナライザ420のフィルタが設定されている。図2において、捕獲されるパケットは内部に斜線が施されている。なお、内部が無地のパケットは、呼制御用のパケットなど音声信号に対応しないパケットであり、捕獲されない。また、音声品質評価装置410が送信する音声信号に対応するパケットは、上述同様に8個とする。
【0052】
次に、通話品質評価システム200の動作手順について説明する。ここで、通話品質評価システム200の動作を示す概略フローチャートを、図3に示す。なお、これらの動作は、制御装置500で実行されるプログラムによるものである。
【0053】
最初に、ステップS10において、制御装置500は、音声品質評価装置310などの初期設定を行う。例えば、制御装置500は、音声品質評価装置310および410に電話番号やIPアドレスなどを設定する。
【0054】
次に、ステップS20において、音声品質評価装置310などに設定される動作手順を検証する。ある通話品質評価は、時間的に隣り合う他の通話品質評価に影響を与えるものであってはならない。そのため、1回の通話品質評価は、必ず所定の時間内に終了しなければならない。ところが、その評価時間は、評価対象である電話システム100の状況に応じて長くなる場合がある。例えば、呼の確立や開放に時間を要したり、通話中に一時不通になるなどして、所定の時間内に評価が完了しない場合がある。仮に、評価完了を待って次の評価を行うようにすると、定期的に通話品質を評価する事ができない恐れがある。そこで、本ステップでは、音声品質評価装置310などに対して設定される動作手順を試験的に実行し、1回の通話品質評価が所定の時間内に終了するかどうかを検証し、必要に応じて評価用音声信号を調整する。具体的には、送信する評価用信号の種類や各評価用信号の再生時間を調整し、全体として送信時間が短くなるように調整する。なお、所定の時間とは、図2に示す強制終了判断時間である。強制終了判断時間は、次の通話品質評価の準備時間を確保するために、一評価期間の終了時間よりも前に設定される。
【0055】
最後に、ステップS30において、アナログ電話端末110とアナログ電話端末150との間における通話品質評価値を測定する。通話品質評価システム200は、予め決められたスケジュールと予め設定される動作手順とに従って、所定時間長の通話品質評価を実施する。例えば、通話品質評価システム200は、所定時間長の通話品質評価を繰り返し実施する事により、通話品質の長期間の変化を評価する事ができる。また、複数のサブシステムを複数地点に分散して配備する場合、アナログ電話端末の組み合わせを変えながら、所定時間長の通話品質評価を実施する事により、各地点間の通話品質を評価する事ができる。もちろん、各地点間の長期間評価も可能である。本第一の実施形態では、アナログ電話端末110が発呼および送話しアナログ電話端末150が着呼および受話する時の、アナログ電話端末110からアナログ電話端末150方向の通話品質評価を繰り返し実施するものとする。
【0056】
ここで、ステップS30における所定時間長の通話品質評価について、さらに詳述する。通話品質評価の手順を示したフローチャートを、図4に示す。
【0057】
最初に、ステップS31において、制御装置500は、管理ネットワーク210を介して、音声品質評価装置310などに動作手順と該手順の開始時刻を設定する。
【0058】
次に、ステップS32において、音声品質評価装置310などは、それぞれに設定された手順と該手順の開始時刻とに従い測定を行う。まず、音声品質評価装置310が発呼し、音声品質評価装置310と音声品質評価装置410との間の呼を確立する。続けて、音声品質評価装置310は、評価用の音声信号を送信するとともに、エコーの大きさと回線雑音の大きさを測定する。音声品質評価装置410は、IPネットワーク130を経由して劣化した評価用音声信号を受信し音声データとして格納するとともに、受信した音声信号を音声品質評価装置310にループバックする。音声品質評価装置310は、音声信号の送信と同時に、音声品質評価装置410からループバックされる音声信号を受信し、音声遅延量を測定する。この場合に測定される遅延量は、往復の音声遅延量である。片道の音声遅延量は、往復遅延量の半値を代用する。ネットワークアナライザ320および420は、それぞれパケットを捕獲するとともに、スループットを測定する。この時、制御装置500は、管理ネットワーク210を介して、定期的に音声品質評価装置310などの状態を確認している。なお、エコーの大きさ、回線雑音の大きさ、および、音声遅延量は、一評価期間内の平均値が測定される。また、スループットは単位時間あたりの平均値が測定される。従って、スループットは、一評価期間に複数回測定され、数値配列に格納される。単位時間は、IPネットワーク130の状況に応じて任意に設定されるが、例えば、200ミリ秒程度に設定される。
【0059】
次に、ステップS33において、測定時間を検査する。測定時間は、音声品質評価装置310が発呼を開始してから音声品質評価装置310などが測定を完了するまでの時間をいう。本ステップS33では、音声品質評価装置310などの測定が図2に示す強制終了判断時間Tfを超えて継続する時、制御装置500は音声品質評価装置310などの測定を強制終了し、測定不能フラグをオンにして、ステップS36へ処理を進める。音声品質評価装置310などの測定が強制終了判断時間Tfに達する前に正常終了している時は、ステップS34へ処理を進める。音声品質評価装置310などの測定の正常終了後または強制終了後、音声品質評価装置310と音声品質評価装置410との間の呼は開放される。
【0060】
次に、ステップS34において、管理ネットワーク210を介して、様々なデータや測定結果が転送される。具体的には、以下の通りである。まず、音声品質評価装置410で受信された評価用音声信号のデータは、音声品質評価装置310へ転送される。この時、音声品質評価装置310は、自分自身が送信した音声信号のデータと音声品質評価装置410から転送された音声データとを参照して明瞭度を測定する。なお、この明瞭度も、一評価期間内の平均値が測定される。次に、音声品質評価装置310から制御装置500へ、明瞭度、音声遅延量、エコーの大きさ、および、回線雑音の大きさの測定結果が送られる。また、ネットワークアナライザ420から制御装置500へ、スループットの測定結果が送られる。さらに、ネットワークアナライザ320および420から制御装置500へ、それぞれが捕獲したパケットが送られる。
【0061】
次に、ステップS35において、制御装置500は、演算によりパケット遅延量とR値を測定する。パケット遅延量は、ネットワークアナライザ320および420のそれぞれが捕獲したパケットをパケット毎に比較して得られる。まず、ネットワークアナライザ320が捕獲したパケットとネットワークアナライザ420が捕獲したパケットのそれぞれから、RTPヘッダ内のシーケンス番号が同じパケットを選び出す。この場合、送信パケットと同一の受信パケットを選ぶために利用可能な識別番号であれば、シーケンス番号に代えて他の種類の番号であっても良い。次に、選び出した2つのパケットのタイムスタンプを比較する。この時のタイムスタンプの差がパケット遅延量である。なお、パケットロスの場合のパケット遅延量は、エラーを示す値(例えば、負の値)、もしくは、無限遅延を表す値(例えば、入力が許される範囲で非常に大きい値)が入力される。上述の処理により、パケット遅延量は、パケット毎に逐次変化する値が測定され、数値配列に格納される。
【0062】
R値は、音声品質評価装置310が測定したエコーの大きさと明瞭度と音声遅延量と回線雑音の大きさ、および、上述の処理によって得られたパケット遅延量から算出される。R値は、パケット遅延量の変化に応じて逐次変化する値が算出され、数値配列に格納される。明瞭度、音声遅延量、エコーの大きさ、回線雑音の大きさ、および、スループットの測定結果と演算により得られたパケット遅延量およびR値と捕獲パケットは、一評価毎にデータベース510へ格納される。
【0063】
最後に、ステップS36において、予定した通話品質評価が完了したかどうかを判断する。評価を完了していなければ、ステップS31に戻って処理を継続する。ステップS31へ処理を進める際、測定不能フラグがオンであれば、ステップS20のおける処理と同様に、送信する音声信号を構成する評価用音声信号の種類を減らしたり各評価用信号の再生時間を短く調整する。このように調整された音声信号は、同一の電話端末間における測定が所定条件を満たして完了するようになれば元に復帰する。例えば、強制終了判断時間Tf内の測定完了が2回以上継続すれば、音声信号を一段階復帰させる。最後に、測定不能フラグをオフにし、ステップS31へ処理を進める。
【0064】
ここで、通話品質評価値の結果表示について触れておく。データベース510に格納されるR値などは、ステップS10からステップS30の手順とは独立した手順で読み出され、制御装置500に備えられた表示装置(図示せず)などへ出力される。ここで、R値の表示例を図5に示す。図5に示すグラフにおいて、横軸は時間を、縦軸はR値を、それぞれ示している。また、R値は、縦軸の上方にあるほど大きく、逆に下方にあるほど小さい。横軸は、時間だけでなく日付も表示される。図5のグラフは、一評価期間毎のR値の平均値をプロットし、さらにプロットした点同士を結線したものである。また、図中に長さの異なる縦線が複数存在する。この縦線は、一評価期間内のR値の変動幅を表している。パケットロスは、グラフの最下部の値で表現する。従って、対象となる評価期間内において1度でもパケットロスが生じていれば、変動幅を表す縦線はグラフの最下部まで伸びる。また、測定の強制終了によりR値が測定されていない場合、縦線は描かれず、点のみがグラフの最下部にプロットされる。なお、平均値や変動幅算出の対象となる評価期間の数は、1つに限られず、横軸の時間幅に応じて変化する。このようなR値の表示方法は、大局的な通話品質の変化と瞬時的な障害の有無を同時に知らせる事ができるので、IP電話サービス運用時に好適である。なお、この表示動作も、制御装置500で実行されるプログラムによるものである。また、上記のように平均値と変動幅を重ねて表示する方法は、時系列に変化する他の通話品質評価値にも有効である。例えば、明瞭度、音声遅延量またはパケット遅延量の表示には、本表示方法が極めて有効である。
【0065】
ところで、一般的なVoIPアダプタは、所定時間よりも遅れて到達するパケットを破棄する。つまり、VoIPアダプタにとって、所定時間よりも遅れて到達するパケットは、ロスパケットと同じなのである。例えば、所定時間よりも僅かに遅れて到着するパケットと、所定時間より大幅に遅れて到着するパケットとでは、遅延量が異なる。また、それぞれの遅延量を参照して算出されるR値も異なる。しかし、両パケットはVoIPアダプタによって破棄されるので、実際の通話品質は同じである。従って、パケット遅延量がR値へ及ぼす影響も同じでなければならない。そこで、実際の通話品質に合うようにパケット遅延量を測定するようにした第二の実施形態について以下に説示する。
【0066】
第二の実施形態は、第一の実施形態において、受話側のVoIPアダプタによって規定される所定時間よりも大きい遅延量を有するパケットをロスパケットとして扱うようにしたものである。詳細に言えば、第二の実施形態は、図4におけるステップ35を以下に示すステップ35aに置き換えて作用する通話品質評価システム200である。
【0067】
さて、ステップS35aにおける動作は次の通りである。まず、ステップS35aにおいて、制御装置500は、演算によりパケット遅延とR値を測定する。パケット遅延は、ネットワークアナライザ320および420のそれぞれが捕獲したパケットをパケット毎に比較して得られる。まず、ネットワークアナライザ320が捕獲したパケットとネットワークアナライザ420が捕獲したパケットのそれぞれから、RTPヘッダ内のシーケンス番号が同じパケットを選び出す。次に、選び出した2つのパケットのタイムスタンプを比較する。この時のタイムスタンプの差がパケット遅延量である。なお、パケット遅延がVoIPアダプタ140によって規定される所定時間よりも大きい場合、そのパケットはロスパケットとして後述の通りに扱う。パケットロスの場合のパケット遅延量は、エラーを示す値(例えば、負の値)、もしくは、無限遅延を表す値(例えば、入力が許される範囲で非常に大きい値)が入力される。上述の処理により、パケット遅延量は、パケット毎に逐次変化する値が測定され、数値配列に格納される。
【0068】
R値は、音声品質評価装置310が測定したエコーの大きさと明瞭度と音声遅延量と回線雑音の大きさ、および、上述の処理によって得られたパケット遅延量から算出される。R値は、パケット遅延量の変化に応じて逐次変化する値が算出され、数値配列に格納される。明瞭度、音声遅延量、エコーの大きさ、回線雑音の大きさ、および、スループットの測定結果と演算により得られたパケット遅延量およびR値と捕獲パケットは、一評価毎にデータベース510へ格納される。以上が、ステップ35aにおける動作の説明である。
【0069】
また、一部のVoIPアダプタでは、パケットを破棄した場合やパケットロスが発生した場合に音声信号を補完できる機能を有している。音声信号が補完された場合、人間は通話品質の劣化をほとんど感じない時がある。一方、この時、第一および第二の実施形態における通話品質評価システムでは、R値が悪く測定されてしまう場合がある。そこで、その問題を解決する第三の実施形態について以下に説示する。
【0070】
第三の実施形態は、第一の実施形態において、パケットのペイロードを参照し受話側のVoIPアダプタの復号化方法に従って音声信号を復号化し、その復号化した音声信号について有音部毎に遅延量を測定するようにしたものである。詳細に言えば、第三の実施形態は、図4におけるステップ35を以下に示すステップ35bに置き換えて作用する通話品質評価システム200である。
【0071】
なお、本明細書において、VoIPアダプタの復号化方法とは、音声圧縮方式やパケット破棄規則など、VoIPアダプタがパケットデータを受信してから音声信号を生成するまでの工程の一部または全部に関する方法をいう。また、音声信号の有音部とは、音声信号において、音声信号のパワー、振幅レベル、または、信号対雑音比のいずれかが所定値を超え、かつ、その状態が所定時間継続する部分とする。所定値や所定時間は、それらの条件値によって取り出される音声が人間にとって意味のある音声と認識できる程度に設定される。例えば、本明細書において所定時間は0.1秒である。
【0072】
さて、ステップS35bにおける動作は次の通りである。まず、ステップS35bにおいて、制御装置500は、演算によりパケット遅延量とR値を測定する。パケット遅延量は、パケットのペイロードを参照して復号化される音声信号を有音部毎に比較して得られる。ここで、図6を参照する。まず、ネットワークアナライザ320が捕獲したパケットT1からT6のそれぞれとネットワークアナライザ420が捕獲したパケットR1からR6のそれぞれとについて、パケットのペイロードを参照して音声信号を復号化する。この時の復号化は、VoIPアダプタ140の復号化方法に従う。次に、復号化した音声信号のそれぞれについて、上述の定義に従い有音部を取り出す。評価用音声信号には無音部が含まれる場合、復号化した音声信号から2以上の有音部が取り出される。次に、有音部毎に時刻を比較するために、強い相互相関関係にある位置を探索し決定する。この作業は、比較作業を行うための基準位置の決定または頭出しとも言える。具体的には、ネットワークアナライザ320が捕獲したパケットから符号化された信号の有音部とネットワークアナライザ420が捕獲したパケットから符号化された信号の有音部とを比較し、それぞれの有音部内において連続する5バイト分の音声信号のデータが初めて合致する位置を、それぞれの有音部の代表位置とする。この代表位置は、その位置に関連するパケットから復号化された音声信号の先頭から何バイト目であるかによって、その先頭に対する相対時刻が一意に決まっている。なお、代表場所に関連するパケットから復号化された音声信号の先頭の時刻は、そのパケットのタイムスタンプが示す時刻である。最後に、各有音部毎に、代表位置の時刻を比較して遅延量を測定する。図6では、遅延時間1、遅延時間2、および、遅延時間3が測定される。最後に、各有音部の遅延量を関連するパケットそれぞれの遅延量とする。図6では、遅延時間1がパケットR1の遅延量となり、遅延時間2がパケットR2からR5それぞれの遅延量となり、遅延時間3がパケットR6の遅延量となる。なお、ネットワークアナライザ420が捕獲したパケットから復号化した音声信号に欠損があって比較できない場合には、関連するパケットをロスパケットとして扱う。その場合のパケット遅延は、エラーを示す値(例えば、負の値)、もしくは、無限遅延を表す値(例えば、入力が許される範囲で非常に大きい値)が入力される。上述の処理により、パケット遅延量は、有音部毎に逐次変化する値が測定され、数値配列に格納される。
【0073】
R値は、音声品質評価装置310が測定したエコーの大きさと明瞭度と音声遅延量と回線雑音の大きさ、および、上述の処理によって得られたパケット遅延量から算出される。なお、無音部に対応するパケットの遅延量を測定していないので、無音部におけるR値も算出しない。R値は、パケット遅延量の変化に応じて逐次変化する値が算出され、数値配列に格納される。明瞭度、音声遅延量、エコーの大きさ、回線雑音の大きさ、および、スループットの測定結果と演算により得られたパケット遅延量およびR値と捕獲パケットは、一評価毎にデータベース510へ格納される。以上が、ステップ35bにおける動作の説明である。
【0074】
第三の実施形態における結果表示は、第一の実施形態の場合とほぼ同様になされる。異なる点は、図5中に示されるR値の変動幅が、復号化音声の有音部におけるR値のみを対象としている事である。
【0075】
第三の実施形態におけるパケット遅延測定方法は、単純にパケット毎の比較を行う測定方法に比べて、実際の通話品質に合った値を測定する事ができる。その結果、R値も実際の通話品質に近い値が算出される。
【0076】
さて、第一乃至第三の実施形態において、制御装置500および音声品質評価装置310などは、データ転送や装置制御などのための管理ネットワークに接続されている。実際のところ、音声品質評価装置310などを接続しなければならない場所に必ずしも管理ネットワークが存在するとは限らない。例えば、一般消費者宅内などは、通話品質評価のために管理用のネットワークを敷設する事ができない。その問題を解決する第四の実施形態を以下に説示する。
【0077】
第四の実施形態は、同様に通話品質評価システムであって、その基本的な構成図を図7に示す。図7において、通話品質評価システム600は、通話品質評価システム200と同様にサブシステム300および400を備える。サブシステム300および400と電話システム100との接続形態は、ほぼ同じである。構成上で通話品質評価システム200と異なる点は、管理ネットワーク260への接続がIPネットワーク130への接続に変わっている事のみである。これに伴い、通話品質評価システム600は、幾つか動作上の変更が施される。
【0078】
上記のように構成される通話品質評価システム600は、図4のステップS34で行われる捕獲パケットなどの転送時間を考慮して、システムの動作手順を決める必要がある。特に、音声データや捕獲パケットなどの転送時間は、測定時間を短縮させる要因である。
【0079】
第四の実施形態は、その転送時間を短縮するために、ネットワークアナライザ320および420が捕獲するパケットを、音声信号の有音部に対応するパケットに限定する。音声品質評価装置310が送信する音声信号は、異なる種類の評価用音声信号が複数連なったものである。なお、それら評価用音声信号は、エコーの影響を抑制するために無音の音声信号によって互いに分離されている。また、評価用の音声信号は、会話を録音したものであって、有音部と無音部が混在している。従って、有音部に対応するパケットのみを捕獲するようにすれば、転送するパケット量を大幅に削減できる。転送時間が短くなれば、一評価期間内の測定時間を多くする事ができ、評価漏れが少なく、かつ、より正確に通話品質を評価できるようになる。
【0080】
また、第四の実施形態では、音声データや捕獲パケット転送がなくとも測定できるパラメータについて、その測定結果を制御装置500へ転送するようにする。測定結果を破棄せず有効活用できるようにするためである。
【0081】
通話品質評価値は、それぞれ以下のようにして得られる。パケット遅延量、および、スループットは、一方の音声品質評価装置から評価用音声信号を送信し、送信される音声信号に対応するパケットとIPネットワーク130を経由して劣化した評価用音声信号に対応するパケットとをネットワークアナライザ320および420で捕獲し、それぞれのネットワークアナライザが捕獲したパケットから復号化される音声信号を比較する事により得られる。明瞭度は、一方の音声品質評価装置から評価用音声信号を送信し、IPネットワーク130を経由して劣化した評価用音声信号を他方の音声品質評価装置で受信し、送信する音声信号と受信する音声信号とを比較する事により得られる。音声遅延量は、一方の音声品質評価装置から評価用音声信号を送信し、他方の音声品質評価装置からループバックされる該音声信号をさらに受信し、送信する音声信号と受信する音声信号とを比較する事により得られる。エコーの大きさは、一方の音声品質評価装置から評価用音声信号を送信し、同じ音声品質評価装置で測定される。R値は、上述のようにして得られる明瞭度やパケット遅延量などから計算により求められる。
【0082】
ここで、通話品質評価中に、送信される音声信号と受信される音声信号と捕獲されるパケットとの時間関係について示した図を、図8に示す。なお、図8は、図7において音声信号が音声品質評価装置310から送信され、音声品質評価装置410により受信される場合を示す。
【0083】
図8において、上から順に、音声品質評価装置310が送信する音声信号、ネットワークアナライザ320が捕獲するパケット、音声品質評価装置410が受信する音声信号、ネットワークアナライザ420が捕獲するパケットが図示されている。これらの音声信号およびパケットは、一評価期間内に行われる一回の通話に関するものである。また、音声信号の送受信およびパケットの捕獲は、予め決められた評価期間内に開始して終了する。なお、図中に2本ある縦実線のうち、左の実線は一評価の開始時刻を示し、右の実線は同一評価の終了時刻を示す。
【0084】
音声品質評価装置310から送信される音声信号は、評価開始から少し遅れて送信される。音声信号は、音声品質評価装置310と音声品質評価装置410との間の呼が確立した後に、送信されるからである。また、送信される音声信号は、少なくとも1種類の評価用音声信号からなり、望ましくは異なる種類の評価用音声信号が複数連なって構成されるものである。なお、それら評価用音声信号は、エコーの影響を抑制するために無音の音声信号によって互いに分離されている。従って、音声品質評価装置310から送信される音声信号は、有音部と無音部とが混在している。また、評価用の音声信号は、会話を録音したものを含み、有音部と無音部が混在している場合がある。図示しないが音声信号を送信した後、音声品質評価装置310は呼の開放を行う。
【0085】
音声品質評価装置410により受信される音声信号は、音声品質評価装置310から送信されIPネットワーク130を経由する事により劣化した音声信号である。また、受信される音声信号は、評価開始から少し遅れて受信が開始される。前述の通り、音声信号は呼が確立した後に送信されるからである。なお、受信される音声の冒頭には、僅かに無音部が生じる。音声品質評価装置310から送信される音声信号は、少し遅れて音声品質評価装置410に到達するからである。
【0086】
ネットワークアナライザ320により捕獲されるパケットは、音声品質評価装置410が受信する音声信号の有音部に対応するパケットである。詳細に言えば、捕獲されるパケットは、VoIPアダプタ120のIPアドレスとVoIPアダプタ130のIPアドレスとで限定されるRTP(Realtime Transport Protocol)パケットであって、予め決められた時間帯に捕獲されるパケットである。図8において、捕獲されるパケットは内部に斜線が施されている。なお、内部が無地のパケットは、音声信号の無音部に対応するパケットや呼制御用のパケットなど音声信号に対応しないパケットであり、捕獲されない。また、説明の便宜上、音声品質評価装置310が送信する音声信号に対応するパケットを7個とする。もちろん、実際の個数はさらに多数である事は言うまでもない。
【0087】
ネットワークアナライザ420により捕獲されるパケットは、音声品質評価装置410が送信する音声信号の有音部に対応するパケットである。詳細に言えば、捕獲されるパケットは、VoIPアダプタ120のIPアドレスとVoIPアダプタ130のIPアドレスとで限定されるRTPパケットであって、予め決められた時間帯に捕獲されるパケットである。図8において、捕獲されるパケットは内部に斜線が施されている。なお、内部が無地のパケットは、音声信号の無音部に対応するパケットや呼制御用のパケットなど音声信号に対応しないパケットであり、捕獲されない。また、音声品質評価装置410が送信する音声信号に対応するパケットは、上述同様に7個とする。
【0088】
次に、通話品質評価システム600の動作手順について説明する。ここで、通話品質評価システム600の動作を示す概略フローチャートを、図9に示す。なお、これらの動作は、制御装置500で実行されるプログラムによるものである。
【0089】
最初に、ステップS40において、制御装置500は、音声品質評価装置310などの初期設定を行う。例えば、制御装置500は、音声品質評価装置310および410に電話番号やIPアドレスなどを設定する。
【0090】
次に、ステップS50において、音声品質評価装置310などに設定される動作手順を試験的に実行し、1回の通話品質評価が所定の時間内に終了するかどうかを検証し、必要に応じて評価用音声信号を調整し、全体として送信時間が短くなるように調整する。具体的には、送信する評価用信号の種類や各評価用信号の再生時間を調整する。なお、所定の時間とは、図8に示す評価有効時間Teである。評価有効時間は、測定結果や捕獲パケットの転送時間、および、次の通話品質評価の準備時間を確保するように、一評価期間の終了時間よりも前に設定される。また、本ステップにおいて、ネットワークアナライザ320および420がパケットを捕獲する時間帯が決定される。具体的には以下の通りである。まず、1回の通話品質評価が所定の時間内に終了するように評価用音声信号が調整された時に、音声品質評価装置310が送信する音声信号において、有音部が評価期間内のどの時間帯に存在するかを調べる。次に、有音部の時間帯のそれぞれについて、開始時刻を500ミリ秒遅らせ、終了時刻を500ミリ秒早める。結果として得られた時間帯を、ネットワークアナライザ320がパケットを捕獲する時間帯とする。同様に、1回の通話品質評価が所定の時間内に終了するように評価用音声信号が調整された時に、音声品質評価装置410が受信する音声信号において、有音部が評価期間内のどの時間帯に存在するかを調べる。次に、有音部の時間帯のそれぞれについて、開始時刻を500ミリ秒遅らせ、終了時刻を500ミリ秒早める。結果として得られた時間帯を、ネットワークアナライザ420がパケットを捕獲する時間帯とする。このように、有音部の時間帯の前後を短くする理由は、音声信号が落ち着くまでの時間を確保するためである。また、IP電話サービスに許容される端末間の最大遅延の影響を避け、必ず有音部に対応するパケットを捕獲するためでもある。なお、短くする時間は、500ミリ秒に限られず、IP電話サービスの仕様などよって適当に設定される。
【0091】
最後に、ステップS60において、アナログ電話端末110とアナログ電話端末150との間の通話品質評価値を測定する。通話品質評価システム200は、ステップ30の場合と同様に、予め決められたスケジュールと予め設定される動作手順とに従って、所定時間長の通話品質評価を実施する。その通話品質評価では、以下に示す一連の手順を実施する事により、R値やパケット遅延量などが得られる。
【0092】
以下に、ステップS60における通話品質評価の手順を詳述する。その詳細手順を示したフローチャートを、図10に示す。
【0093】
最初に、ステップS61において、制御装置500は、IPネットワーク130を介して、音声品質評価装置310などに測定手順と該手順の開始時刻などを設定する。音声品質評価装置310および410の測定開始時刻は予め決められたものが、ネットワークアナライザ320および420がパケットを捕獲する時間帯はステップS50において決定されたものである。
【0094】
次に、ステップS62において、音声品質評価装置310などは、それぞれに設定された手順と該手順の開始時刻に従い測定を行う。まず、音声品質評価装置310が発呼し、音声品質評価装置310と音声品質評価装置410との間の呼を確立する。続けて、音声品質評価装置310は、評価用の音声信号を送信するとともに、エコーの大きさと回線雑音の大きさを測定する。音声品質評価装置410は、IPネットワーク130を経由して劣化した評価用音声信号を受信し音声データとして格納するとともに、受信した音声信号を音声品質評価装置310にループバックする。音声品質評価装置310は、音声信号の送信と同時に、音声品質評価装置410からループバックされる音声信号を受信し、音声遅延量を測定する。この場合に測定される遅延量は、往復の音声遅延量である。片道の音声遅延量は、往復遅延量の半値を代用する。ネットワークアナライザ320および420は、それぞれパケットを捕獲するとともに、スループットを測定する。この時、制御装置500は、IPネットワーク130を介して、定期的に音声品質評価装置310などの状態を確認している。なお、エコーの大きさ、回線雑音の大きさ、および、音声遅延量は、一評価期間内の平均値が測定される。また、スループットは単位時間あたりの平均値が測定される。従って、スループットは、一評価期間に複数回測定され、数値配列に格納される。単位時間は、IPネットワーク130の状況に応じて任意に設定されるが、例えば、200ミリ秒程度に設定される。
【0095】
次に、ステップS63において、測定時間を検査する。測定時間は、音声品質評価装置310が発呼を開始してから音声品質評価装置310などが測定を完了するまでの時間をいう。具体的には、音声品質評価装置310などの測定が図8に示す強制終了判断時間Tfを超えて継続する時、制御装置500は音声品質評価装置310などの測定を強制終了し、測定不能フラグをオンにして、ステップS68へ処理を進める。音声品質評価装置310などの測定が強制終了判断時間Tfに達する前に正常終了している時は、ステップS64へ処理を進める。音声品質評価装置310などの測定の正常終了後または強制終了後、音声品質評価装置310と音声品質評価装置410との間の呼は開放される。
【0096】
次に、ステップS64において、正常終了した測定の測定時間を検査する。測定時間は、音声品質評価装置310が発呼を開始してから音声品質評価装置310などが測定を完了するまでの時間をいう。具体的には、音声品質評価装置310などの測定時間が図8に示す評価有効時間Teを超えている時、測定無効フラグをオンにして、ステップS65へ処理を進める。音声品質評価装置310などの測定時間が図8に示す評価有効時間Teを超えていない時は、ステップS66へ処理を進める。
【0097】
ステップS65において、測定結果が転送される。具体的には、音声品質評価装置310から制御装置500へ、音声遅延量、エコーの大きさ、および、回線雑音の大きさの測定結果が送られる。また、ネットワークアナライザ420から制御装置500へ、スループットの測定結果が送られる。
【0098】
ステップS66において、IPネットワーク130を介して、様々なデータや測定結果が転送される。具体的には、以下の通りである。まず、音声品質評価装置410で受信された評価用音声信号のデータは、音声品質評価装置310へ転送される。この時、音声品質評価装置310は、自分自身が送信した音声信号と音声品質評価装置410から転送された音声データを参照して明瞭度を測定する。なお、この明瞭度も、一評価期間内の平均値が測定される。次に、音声品質評価装置310から制御装置500へ、明瞭度、音声遅延量、エコーの大きさ、および、回線雑音の大きさの測定結果が送られる。また、ネットワークアナライザ420から制御装置500へ、スループットの測定結果が送られる。さらに、ネットワークアナライザ320および420から制御装置500へ、それぞれが捕獲したパケットが送られる。
【0099】
さて、ステップS67において、制御装置500は、演算によりパケット遅延とR値を測定する。パケット遅延は、パケットのペイロードを参照して復号化される音声信号を有音部毎に比較して得られる。まず、ネットワークアナライザ320が捕獲したパケットのそれぞれとネットワークアナライザ420が捕獲したパケットのそれぞれとについて、パケットのペイロードを参照して音声信号を復号化する。この時の復号化は、VoIPアダプタ140の復号化方法に従う。パケットは、予め捕獲時間帯が調整されるので、評価用音声信号の有音部のみが捕獲される。しかし、パケットロスや大きなパケット遅延により、復号化音声に無音部が生じる可能性がある。そこで、復号化した音声信号のそれぞれについて、有音部と無音部の状況を調べ、有音部のみを取り出す。なお、それらの音声信号に複数の有音部が存在すれば、個別に有音部を取り出す。次に、有音部毎の時刻を比較するために、次に、有音部毎に時刻を比較するために、強い相互相関関係にある位置を探索し決定する。この作業は、比較作業を行うための基準位置の決定または頭出しとも言える。具体的には、ネットワークアナライザ320が捕獲したパケットから符号化された音声信号の有音部とネットワークアナライザ420が捕獲したパケットから符号化された音声信号の有音部とを比較し、それぞれの有音部内において連続する5バイト分の音声信号のデータが初めて合致する位置を、それぞれの有音部の代表位置とする。この代表位置は、その位置に関連するパケットから復号化された音声信号の先頭から何バイト目であるかによって、その先頭に対する相対時刻が一意に決まっている。なお、代表場所に関連するパケットより復号化された音声信号の先頭の時刻は、そのパケットのタイムスタンプが示す時刻である。最後に、各有音部毎に、代表位置の時刻を比較して遅延量を測定する。各有音部の遅延量は、関連するパケットそれぞれの遅延量とする。なお、ネットワークアナライザ420が捕獲したパケットから復号化した音声信号に欠損があって比較できない場合には、関連するパケットをロスパケットとして扱う。その場合のパケット遅延量は、エラーを示す値(例えば、負の値)、もしくは、無限遅延を表す値(例えば、入力が許される範囲で非常に大きい値)が入力される。上述の処理により、パケット遅延量は、有音部毎に逐次変化する値が測定され、数値配列に格納される。
【0100】
R値は、音声品質評価装置310が測定したエコーの大きさと明瞭度と音声遅延量と回線雑音の大きさ、および、上述の処理によって得られたパケット遅延量から算出される。R値は、パケット遅延量の変化に応じて逐次変化する値が算出され、数値配列に格納される。明瞭度、音声遅延量、エコーの大きさ、回線雑音の大きさ、および、スループットの測定結果と演算により得られたパケット遅延量およびR値と捕獲パケットは、一評価毎にデータベース510へ格納される。
【0101】
最後に、ステップS68において、予定した通話品質評価が完了したかどうかを判断する。評価を完了していなければ、ステップS61に戻って処理を継続する。ステップS61へ処理を進める際、測定無効フラグがオンであれば、送信する音声信号を構成する評価用信号の種類を減らしたり各評価用信号の再生時間を短く調整する。このように調整された音声信号は、同一の電話端末間における測定が所定条件を満たして完了するようになれば元に復帰する。例えば、評価有効時間Te内の測定完了が2回以上継続すれば、音声信号を一段階復帰させる。最後に、測定無効フラグをオフにし、ステップS61へ処理を進める。また、測定不能フラグがオンの場合も同様に、音声信号を調整し、測定不能フラグをオフにし、ステップS61へ処理を進める。測定不能フラグがオンの場合、測定無効フラグがオンの場合と比べて、測定時間をより短く調整する方が好ましい。
【0102】
本第四の実施形態における結果表示は、第一の実施形態の場合とほぼ同様になされる。異なる点は、図5中に示されるR値の変動幅が、復号化音声の有音部におけるR値のみを対象としている事である。
【0103】
なお、本第四の実施形態において、パケット遅延量は、第一の実施形態のようにパケット単位の比較によって求めても良い。また、パケット遅延量は、第二の実施形態のように所定時間よりも大きい遅延量を有するパケットをロスパケットとして処理した後にパケット単位で比較する事により求めても良い。さらに、上記の変更を行う場合、結果表示は、それぞれの実施形態において示される方法または手順に従う。
【0104】
次に、通話品質が劣化した場合に、その要因を特定できるようにした第五の実施形態について説明する。第五の実施形態は、同様に通話品質評価システムであって、その構成は図7に示される通話品質評価システム600と同じである。また、図9に示される概略動作も同じである。ただし、図10に示される手順が若干異なる。
【0105】
ここで、本第五の実施形態における通話品質評価の手順を示すフローチャートを、図11に示す。図11に示すフローチャートは、図10に示されるフローチャートと比べて、ステップS70とステップS71が新たに加わっている点で異なる。その他のステップにおける動作は、図10中のフローチャートに同一番号で示されるステップと同じである。
【0106】
ステップS70において、制御装置500は、音声品質評価装置310が測定した明瞭度を判定する。明瞭度が所定値よりも良好である場合は、ステップS67へ処理を進める。また、明瞭度が所定値よりも悪いである場合には、ステップS71へ処理を進める。
【0107】
ステップS71において、音声品質評価装置310が送信した音声信号と音声品質評価装置410が受信した音声信号は、音声データとして制御装置500へ送られ、さらにデータベース510へ格納される。なお、通話品質評価システム600では、上述のように、音声データが制御装置500へ転送される時間が新たに必要となるで、第四の実施形態と比べて、評価有効時間Teが早めに設定される。
【0108】
ステップS70とステップS71は、ステップS66とステップS67の間ではなく、ステップS67とステップS68の間にあっても良い。要するに、明瞭度の劣化が認められる場合、次の評価開始までに音声データを保存できれば良いのである。
【0109】
さて、通話品質評価システム600では、通話品質の劣化要因を特定するためのパラメータを新たに測定する。そのパラメータとは、3つの区間における遅延である。3つの区間とは、アナログ電話端末120とVoIPアダプタ120のIPネットワーク130接続端との間(以下、区間1と称する)、VoIPアダプタ140のIPネットワーク130接続端とアナログ電話端末150との間(以下、区間2と称する)、および、VoIPアダプタ120とVoIPアダプタ140との間(以下、区間3と称する)である。
【0110】
次に、それら3つの区間における遅延量の測定手順について説明する。本測定手順は、図9および図10に示される手順とは独立して実施可能である。
【0111】
まず、区間1における遅延量は、音声品質評価装置310が送信した音声信号とネットワークアナライザ320が捕獲したパケットのペイロード内のデータから復号化された音声信号とを比較して測定される。この時の復号化は、VoIPアダプタ140の復号化方法に従う。この場合の遅延量測定は、以下の通りに行う。
【0112】
まず、ネットワークアナライザ320が捕獲したパケットについて、パケットのペイロードを参照して音声信号を復号化する。この時の復号化は、VoIPアダプタ120の復号化方法に従う。次に、音声品質評価装置310が送信した音声信号と復号化した音声信号とのそれぞれについて、有音部と無音部の状況を調べ、有音部のみを取り出す。なお、それらの音声信号に複数の有音部が存在すれば、個別に有音部を取り出す。次に、有音部毎に時刻を比較するために、強い相互相関関係にある位置を探索し決定する。この作業は、比較作業を行うための基準位置の決定または頭出しとも言える。具体的には、音声品質評価装置310が送信した音声信号の有音部とネットワークアナライザ320が捕獲したパケットから符号化された信号の有音部とを比較し、それぞれの有音部内において連続する5バイト分の音声信号のデータが初めて合致する位置を、それぞれの有音部の代表位置とする。音声品質評価装置310が送信した音声信号における有音部の代表位置は、その位置が音声信号の先頭から何バイト目であるかによって、その先頭に対する相対時刻が一意に決まっている。なお、音声品質評価装置310が送信した音声信号の先頭の時刻は、その音声信号の送信開始時刻である。また、復号化音声における有音部の代表位置は、その位置に関連するパケットから復号化された音声信号の先頭から何バイト目であるかによって、その先頭に対する相対時刻が一意に決まっている。なお、代表場所に関連するパケットより復号化された音声信号の先頭の時刻は、そのパケットのタイムスタンプが示す時刻である。最後に、各有音部毎に、代表位置の時刻を比較して遅延量を測定する。各有音部の遅延量は、関連するパケットそれぞれの遅延量とする。なお、ネットワークアナライザ320が捕獲したパケットから復号化した音声信号に欠損があって比較できない場合には、関連するパケットをロスパケットとして扱う。その場合のパケット遅延量は、エラーを示す値(例えば、負の値)、もしくは、無限遅延を表す値(例えば、入力が許される範囲で非常に大きい値)が入力される。上述の処理により、パケット遅延量は、有音部毎に逐次変化する値が測定され、数値配列に格納される。
【0113】
区間2における遅延量は、ネットワークアナライザ310が捕獲したパケットのペイロード内のデータから復号化された音声信号とネットワークアナライザ410が捕獲したパケットのペイロード内のデータから復号化された音声信号とを比較して測定される。この時の復号化は、同様にVoIPアダプタ140の復号化方法に従う。この場合の遅延量測定は、以下の通りに行う。
【0114】
パケット遅延は、パケットのペイロードを参照して復号化される音声信号を有音部毎に比較して得られる。まず、ネットワークアナライザ320が捕獲したパケットとネットワークアナライザ420が捕獲したパケットのそれぞれについて、パケットのペイロードを参照して音声信号を復号化する。この時の復号化は、VoIPアダプタ140の復号化方法に従う。パケットは、予め捕獲時間帯が調整されるので、評価用音声信号の有音部のみが捕獲される。しかし、パケットロスや大きなパケット遅延により、復号化音声に無音部が生じる可能性がある。そこで、復号化した音声信号のそれぞれについて、有音部と無音部の状況を調べ、有音部のみを取り出す。なお、それらの音声信号に複数の有音部が存在すれば、個別に有音部を取り出す。次に、有音部毎に時刻を比較するために、強い相互相関関係にある位置を探索し決定する。この作業は、比較作業を行うための基準位置の決定または頭出しとも言える。具体的には、ネットワークアナライザ320が捕獲したパケットから符号化された信号の有音部とネットワークアナライザ420が捕獲したパケットから符号化された信号の有音部とを比較し、それぞれの有音部内において連続する5バイト分の音声信号のデータが初めて合致する位置を、それぞれの有音部の代表位置とする。この代表位置は、その位置に関連するパケットから復号化された音声信号の先頭から何バイト目であるかによって、その先頭に対する相対時刻が一意に決まっている。なお、代表場所に関連するパケットより復号化された音声信号の先頭の時刻は、そのパケットのタイムスタンプが示す時刻である。最後に、各有音部毎に、代表位置の時刻を比較して遅延量を測定する。各有音部の遅延量は、関連するパケットそれぞれの遅延量とする。なお、ネットワークアナライザ420が捕獲したパケットから復号化した音声信号に欠損があって比較できない場合には、関連するパケットをロスパケットとして扱う。その場合のパケット遅延量は、エラーを示す値(例えば、負の値)、もしくは、無限遅延を表す値(例えば、入力が許される範囲で非常に大きい値)が入力される。上述の処理により、パケット遅延量は、有音部毎に逐次変化する値が測定され、数値配列に格納される。
【0115】
区間3における遅延量は、ネットワークアナライザ420が捕獲したパケットのペイロード内のデータから復号化された音声信号と音声品質評価装置410が受信した音声信号とを比較して測定される。この時の復号化は、同様にVoIPアダプタ140の復号化方法に従う。この場合の遅延量測定は、以下の通りに行う。
【0116】
まず、ネットワークアナライザ420が捕獲したパケットについて、パケットのペイロードを参照して音声信号を復号化する。この時の復号化は、VoIPアダプタ140の復号化方法に従う。次に、復号化した音声信号と音声品質評価装置410が受信した音声信号とのそれぞれについて、有音部と無音部の状況を調べ、有音部のみを取り出す。なお、それらの音声信号に複数の有音部が存在すれば、個別に有音部を取り出す。次に、有音部毎に時刻を比較するために、強い相互相関関係にある位置を探索し決定する。この作業は、比較作業を行うための基準位置の決定または頭出しとも言える。具体的には、音声品質評価装置410が受信した音声信号の有音部とネットワークアナライザ420が捕獲したパケットから符号化された信号の有音部とを比較し、それぞれの有音部内において連続する5バイト分の音声信号のデータが初めて合致する位置を、それぞれの有音部の代表位置とする。音声品質評価装置410が受信した音声信号における有音部の代表位置は、その位置が音声信号の先頭から何バイト目であるかによって、その先頭に対する相対時刻が一意に決まっている。なお、音声品質評価装置410が送信した音声信号の先頭の時刻は、その音声信号の受信開始時刻である。また、復号化音声における有音部の代表位置は、その位置に関連するパケットから復号化された音声信号の先頭から何バイト目であるかによって、その先頭に対する相対時刻が一意に決まっている。なお、代表場所に関連するパケットより復号化された音声信号の先頭の時刻は、そのパケットのタイムスタンプが示す時刻である。最後に、各有音部毎に、代表位置の時刻を比較して遅延量を測定する。各有音部の遅延量は、関連するパケットそれぞれの遅延量とする。なお、音声品質評価装置410が受信した音声信号に欠損があって比較できない場合には、関連するパケットをロスパケットとして扱う。その場合のパケット遅延量は、エラーを示す値(例えば、負の値)、もしくは、無限遅延を表す値(例えば、入力が許される範囲で非常に大きい値)が入力される。上述の処理により、パケット遅延量は、有音部毎に逐次変化する値が測定され、数値配列に格納される。
【0117】
上述の遅延量測定において使用される音声信号およびパケットは、データベース510に格納されたものが参照される。
【0118】
上記の処理により求められた遅延量のそれぞれは、制御装置500の表示装置(図示せず)などに出力される。ここで、その出力例を図12に示す。図12に示す3つのグラフにおいて、横軸は時間を、縦軸は遅延量を、それぞれ示している。横軸は、時間だけでなく日付も表示される。また、遅延は、縦軸の上方にあるほど大きく、逆に下方にあるほど小さい。さて、一番上のグラフは、アナログ電話端末120とVoIPアダプタ120のIPネットワーク130接続端との間の遅延量を示している。真ん中のグラフは、VoIPアダプタ120とVoIPアダプタ140との間の遅延量を示している。一番下のグラフは、VoIPアダプタ140のIPネットワーク130接続端とアナログ電話端末150との間の遅延量を示している。各グラフにおいて、受信すべき音声信号やパケットが欠損している場合は、グラフの最下部にプロットされる。なお、第五の実施形態において追加された上記の動作も、制御装置500で実行されるプログラムによるものである。
【0119】
上述のように表示されるグラフによれば、通話品質の劣化を引き起こしている区間が特定される。例えば、ある同一時刻において、受信すべき音声信号やパケットが欠損している区間は、通話品質の劣化要因区間と推定される。また、ある同一時刻において、遅延量の増加率が最も大きい区間も、通話品質の劣化要因区間と推定される。このように、本第五の実施形態の通話品質評価システム600は、電話端末間を複数の区間に分割した時のそれぞれの区間における遅延量や欠損を測定し表示するようにしたので、通話品質を評価し且つ障害を解析する事もできる。さらに付け加えれば、常は図5のようにR値または明瞭度のトレンドを表示させておき、R値または明瞭度が劣化した箇所をクリックした時に図12に示すグラフが表示されるようにすれば、運用から障害対応へ即座に移行できるので、通話品質評価システム600はIP電話サービス事業者にとって一層魅力的なシステムとなる。
【0120】
なお、本第五の実施形態では、ステップS71において、音声品質評価装置310が送信した音声信号を音声データとして制御装置500へ送る。これは、通話品質評価システム600において、評価用音声信号が適宜調整され一定しないからである。しかし、音声データの転送時間は、測定時間を圧迫するものであるので可能な限り短く抑えたい。そこで、音声品質評価装置310および制御装置500は、番号付けされた複数パターンの評価用音声信号を予め保持し、状況に応じてそれらを適宜切り替えるようにする。そして、ステップS71では、音声品質評価装置310が送信した音声信号に付けられた番号のみを制御装置500へ送るようにすると良い。この番号付けは、送信された評価用音声信号の確認のためにデータ転送が生じる他の実施形態において有効である。
【0121】
さて、本発明の通話品質評価システムは、アナログ電話端末110からアナログ電話端末150への方向の通話品質を評価している。一般に、通話品質は両方向についての評価が要求される。アナログ電話端末150からアナログ電話端末110への方向の通話品質を評価する場合、サブシステム300とサブシステム400を入れ替えた手順を追加実施すれば良い。例えば、前述のステップS32は、次のような手順に変えて実施される。まず、音声品質評価装置410が発呼し、音声品質評価装置310と音声品質評価装置410との間の呼を確立する。続けて、音声品質評価装置410は、評価用の音声信号を送信するとともに、エコーの大きさと回線雑音の大きさを測定する。ネットワークアナライザ320および420は、それぞれパケットを捕獲するとともに、スループットを測定する。また、音声品質評価装置410の音声遅延量測定と音声品質評価装置310のループバックは、逆方向の通話品質評価と重複するので省いても良い。他のステップにおいても同様に入れ替えと省略ができるであろう。なお、アナログ電話端末110からアナログ電話端末150への方向の通話品質手順とアナログ電話端末150からアナログ電話端末110への方向の通話品質手順は、同一評価期間の中で実施しても良いし個別に実施しても良い。
【0122】
また、本発明の通話品質評価システムは、評価すべき電話端末の組み合わせを順次変更して通話品質評価する事ができる。この場合、サブシステムが多地点に配備される事になる。解析機能を有する装置は高価である場合が多く、このような装置を多地点に配備すれば通話品質評価システム全体のコストが高くなる。本発明の通話品質評価システムは、その問題を解決するために、ネットワークアナライザをパケット捕獲装置に、音声品質評価装置を音声信号送受装置に、それぞれ代えて通話品質を評価することができる。例えば、ネットワークアナライザと音声品質評価装置とを備えるサブシステムを少なくとも1つ配備し、パケット捕獲装置と音声信号送受装置とを備えるサブシステムを複数配備する。そして、評価すべき電話端末の組に関連するサブシステムのいずれか一方に解析機能を有する装置が必ず含まれるように評価スケジュールを組み、通話品質評価を行う。なお、パケット捕獲装置はネットワークアナライザから伝送品質評価機能を削除したものであり、また、音声信号送受装置は音声品質評価装置から音声品質評価機能を削除したものである。
【0123】
さらに、本発明の通話品質評価システムは、R値算出のための音声遅延量として一評価期間の音声遅延量の平均値を用いているが、同時に測定されるパケット遅延量を代用する事もできる。
【0124】
またさらに、本発明の通話品質評価システムは、R値算出のための音声遅延量として一評価期間の音声遅延量の平均値を用いているが、一評価期間内でリアルタイムに測定される音声遅延量を用いるようにしても良い。その場合、例えば、音声品質評価装置は、送信する音声信号と受信する音声信号とを比較する際に、それぞれの音声信号の有音部毎に音声遅延量を測定するようにすると良い。
【0125】
また、本発明の通話品質評価システムは、音声品質評価装置が送信する評価用音声信号に、IP電話サービス利用者(例えば、アナログ電話端末110または150の利用者)の肉声を録音したものを使用する事ができる。この場合、通話品質評価システムは、その端末利用者が感じる通話品質に一層合った評価が可能となる。
【0126】
さらに、本発明の通話品質評価システムは、通話品質評価値や測定データをデータベース510に格納している。これらの値やデータは、データベース510において、時刻情報または端末特定情報(例えば、電話番号やSIPアドレス)をキーワードにして検索できるようにすると良い。IP電話サービス事業者は、顧客からのクレームがあった場合などに迅速に対処する事ができるようになるからである。また、端末別または端末グループ別の通話品質評価値を閲覧できるようになるので、設備計画時にも有効なデータベースとなる。
【0127】
またさらに、本発明の通話品質評価システムは、パケットネットワークの一種であるIPネットワークを介した電話サービスの品質評価システムとして説明してきた。しかし、本発明の通話品質評価システムは、IPネットワークに限らず伝送品質が安定しない他のパケットネットワークを介した電話サービスの通話品質評価に対しても有効であろう。その場合は、IPネットワーク130を他のパケットネットワークに置き換えて考えればよい。
【0128】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されるので、以下の通りに効果を奏する。
【0129】
すなわち、本発明の通話品質評価システムは、自ら音声信号を送信すると同時に音声信号を受信し、同時に当該音声信号に対応したパケットを送話側と受話側とで捕獲するようにしたので、実際に人間が感じる通話品質に合った通話品質を評価する事ができる。
【0130】
また、本発明の通話品質評価システムは、所定時間を一単位として通話品質評価するようにしたので、その通話品質評価を繰り返す事により、長期間継続して通話品質を評価する事ができる。
【0131】
さらに、本発明の通話品質評価システムは、所定時間を一単位として通話品質評価するようにしたので、その通話品質評価を実施する端末の組み合わせを適宜変更する事により、あらゆる2地点間の通話品質を評価する事ができる。
【0132】
またさらに、本発明の通話品質評価システムは、一評価期間内に測定および評価が完了するように評価用音声信号の再生時間や種類などを調整するようにしたので、測定および評価の失敗をできるだけ少なくする事ができる。
【0133】
また、本発明の通話品質評価システムは、一評価期間内における変動が明らかになるようにパケット遅延量を測定し、その測定値を用いてR値を算出するようにしたので、実際に人間が感じる通話品質に合ったR値を漏れなく測定する事ができる。
【0134】
さらに、本発明の通話品質評価システムは、音声信号の有音部に対応するパケットのみを捕獲するようにしたので、通話品質評価に必要なデータ転送量を低減でき、また、より正確に漏れなく通話品質を評価する事ができる。
【0135】
またさらに、本発明の通話品質評価システムは、パケット遅延量測定において、復号化音声の遅延測定や所定の規則に基づくパケット破棄を行うようにしたので、実際に人間が感じる通話品質と合ったパケット遅延量を測定する事ができる。
【0136】
また、本発明の通話品質評価システムは、電話サービス利用者の肉声を評価用音声信号としたので、その利用者が感じる通話品質に近い評価値を測定する事ができる。
【0137】
さらに、本発明の通話品質評価システムは、通話品質評価値をデータベースに蓄積するようにしたので、電話サービス事業者は障害発生時などに時間を遡って通話品質評価値を参照する事ができる。また、電話サービス事業者は蓄積した通話品質評価値を参照して効果的な設備増強や設備の最適化を行う事もできる。
【0138】
またさらに、本発明の通話品質評価システムは、通話品質評価値などが劣化した場合に測定データをデータベースに格納するようにしたので、電話サービス事業者は通話品質劣化時に障害要因を特定ができる。
【0139】
また、本発明の通話品質評価システムは、データベースに格納された通話品質評価値などを時刻情報や端末特定情報などから検索できるようにしたので、設備計画に有意義な情報を即座に提供する事ができる。また、電話サービス事業者は迅速に不具合対応する事ができる。
【0140】
またさらに、本発明の通話品質評価システムは、制御装置が音声品質評価装置やネットワークアナライザを遠隔制御し、それらと通信するようにしたので、電話サービス事業者は評価のために作業者を現地へ出向かせる必要がない。
【0141】
また、本発明の通話品質評価システムは、通話品質評価中の測定とデータ転送とを時分割して行うようにしたので、データ転送が通話品質評価に及ぼす影響を抑制または無くする事ができる。
【0142】
さらに、本発明の通話品質評価システムは、パケット捕獲装置と音声信号送受装置とを具備するサブシステムを分散配備して通話品質を評価するようにしたので、システムに係るコストを低減する事ができる。
【0143】
さらに、本発明の通話品質評価システムは、データベースに格納された測定データから、電話端末間を複数の区間に分割した時のそれぞれの区間における遅延量や欠損を測定し表示するようにしたので、電話サービス事業者は通話品質劣化時に障害要因を明確に特定する事ができる。
【0144】
またさらに、本発明の通話品質評価システムは、通話品質評価値が劣化した際に、その劣化箇所を画面上で選択する事により、電話端末間を複数の区間に区切って測定した遅延量や欠損が表示されるので、運用から障害対応へ速やかに移行をする事を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態である通話品質評価システムの基本構成を示す図である。
【図2】本発明の第一の実施形態である通話品質評価システムにおける音声信号およびパケットの時間関係を示す図である。
【図3】本発明の第一の実施形態である通話品質評価システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第一の実施形態である通話品質評価システムの動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第一の実施形態である通話品質評価システムにおける結果表示例を示す図である。
【図6】本発明の第三の実施形態である通話品質評価システムにおけるパケット遅延測定手順を示す図である。
【図7】本発明の第四の実施形態である通話品質評価システムの基本構成を示す図である。
【図8】本発明の第四の実施形態である通話品質評価システムにおける音声信号およびパケットの時間関係を示す図である。
【図9】本発明の第四の実施形態である通話品質評価システムの動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第四の実施形態である通話品質評価システムの動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第五の実施形態である通話品質評価システムの動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第四の実施形態である通話品質評価システムにおける結果表示例を示す図である。
【符号の説明】
100 電話システム
110,150 アナログ電話端末
120,140 VoIPアダプタ
130 IPネットワーク
200,600 通話品質評価システム
210 管理ネットワーク
300,400 サブシステム
310,410 音声品質評価装置
315,415 時刻同期モジュール
320,420 ネットワークアナライザ
330,430 GPS
500 制御装置
510 データベース
Claims (36)
- パケットネットワークを介する電話端末間の通話品質を評価するシステムにおいて、
音声信号を送信する音声信号送信手段と、
前記音声信号に対応する第一のパケットを捕獲する第一のパケット捕獲手段と、
前記パケットネットワークを介して劣化した前記音声信号を受信音声信号受信手段と、
前記劣化した音声信号に対応する第二のパケットを捕獲する第二のパケット捕獲手段と、
さらに、
前記音声信号送信手段が送信する音声信号と、前記音声信号受信手段が受信する音声信号と、前記第一のパケットと、前記第二のパケットとを用いて、前記電話端末間の通話品質を評価する通話品質評価手段と、
を備えることを特徴とする通話品質評価システム。 - 前記第一のパケット捕獲手段および前記第二のパケット捕獲手段は、前記音声信号の有音部に対応するパケットを捕獲する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通話品質評価システム。 - 前記通話品質評価手段は、前記音声信号送信手段が送信する前記音声信号と前記音声信号受信手段が受信する前記音声信号とを、それぞれの信号の有音部毎に比較する事により音声遅延量を測定し、前記音声遅延量を用いて前記電話端末間の通話品質を評価する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通話品質評価システム。 - 前記通話品質評価手段は、前記第一のパケットと前記第二のパケットとを同一の識別番号を有するパケット毎に比較する事によりパケット遅延量を測定し、前記パケット遅延量を用いて前記電話端末間の通話品質を評価する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通話品質評価システム。 - さらに、
前記第一のパケットから第一の復号化音声信号を復号化する手段と、
前記第二のパケットから第二の復号化音声信号を復号化する手段と、
を備え、
前記通話品質評価手段は、前記第一の復号化音声信号と前記第二の復号化音声信号とを比較する事により音声遅延量を測定し、前記音声遅延量を用いて前記電話端末間の通話品質を評価する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通話品質評価システム。 - 前記第一の復号化音声信号と前記第二の復号化音声信号との比較は、有音部毎に比較される、
ことを特徴とする請求項5に記載の通話品質評価システム。 - 前記通話品質評価手段は、前記測定した音声遅延量を第一のパケット捕獲手段と第二のパケット捕獲手段との間のパケット遅延量とし、前記パケット遅延量を用いて前記電話端末間の通話品質を評価する、
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の通話品質評価システム。 - 前記通話品質評価手段は、前記音声遅延量または前記パケット遅延量を用いてR値を測定する事により前記電話端末間の通話品質を評価する、
ことを特徴とする請求項3乃至7のいずれかに記載の通話品質評価システム。 - さらに、表示手段を備え、
前記表示手段は、前記通話品質評価手段により測定されるパケット遅延量の所定期間における平均値を時系列に表示し、さらに、該測定されるパケット遅延量の前記所定期間における変動幅を該測定されるパケット遅延量の前記所定期間における平均値に重ねて表示する、
ことを特徴とする請求項4または請求項7に記載の通話品質評価システム。 - さらに、表示手段を備え、
前記表示手段は、前記通話品質評価手段により測定されるR値の所定期間における平均値を時系列に表示し、さらに、該測定されるR値の前記所定期間における変動幅を該測定されるR値の前記所定期間における平均値に重ねて表示する、
ことを特徴とする請求項8に記載の通話品質評価システム。 - 前記表示手段は、前記R値の劣化箇所が表示画面上で選択された時に、電話端末間を複数の区間に区切って測定した遅延量や欠損を表示する、
ことを特徴とする請求項10に記載の通話品質評価システム。 - さらに、制御手段を備え、
前記制御手段は、前記電話端末間の評価を該評価が完了しているか否かに関わらず所定時間単位で実施する、
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の通話品質評価システム。 - 前記制御手段は、前記所定時間単位の評価を予定に従って繰り返し、または、予定に従って前記電話端末の組み合わせを変更しながら実施する、
ことを特徴とする請求項12に記載の通話品質評価システム。 - 前記音声信号送信手段が送信する前記音声信号は、前記電話端末間の評価が前記所定時間内に完了するように調整される、
ことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の通話品質評価システム。 - さらに、データベース手段を備え、
前記データベース手段は、評価された通話品質が所定値と比べて劣化している時に、前記音声信号送信手段が送信する音声信号、前記音声信号受信手段が受信する音声信号、前記第一のパケット、および、前記第二のパケットのうち少なくとも1つが格納される、
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに通話品質評価システム。 - 前記第一のパケット捕獲手段および前記第二のパケット捕獲手段は、時刻同期手段を備え、同期したタイムスタンプとともに捕獲したパケットを格納する、
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の通話品質評価システム。 - 前記音声信号送信手段が送信する前記音声信号は、前記電話端末の利用者の肉声である、
ことを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の通話品質評価システム。 - パケットネットワークを介する電話端末間の通話品質を評価するシステムにおいて、
音声信号送信手段と、
第一のパケット捕獲手段と、
第二のパケット捕獲手段と、
音声信号受信手段と、
を具備し
前記音声信号送信手段は、前記音声信号受信手段に対して音声信号を送信し、
前記第一のパケット捕獲手段は、前記音声信号に対応する第一のパケットを捕獲し、
前記音声信号受信手段は、前記パケットネットワークを介して劣化した前記音声信号を受信し、
前記第一のパケット捕獲手段は、前記劣化した音声信号に対応する第二のパケットを捕獲し、
さらに、
前記第一のパケット捕獲手段が捕獲するパケットから第一の復号化音声信号を復号化し、前記音声信号送信手段が送信する音声信号と前記第一の復号化音声信号とを比較し第一の音声遅延量を測定する手段と、
前記パケット捕獲手段が捕獲するパケットから第二の復号化音声信号を復号化し、前記第一の復号化音声信号と前記第二の復号化音声信号とを比較し第二の音声遅延量を測定する手段と、
前記音声信号受信手段が受信する音声信号と前記第二の復号化音声信号とを比較し第三の音声遅延量を測定する手段、
を備えることを特徴とする遅延量測定装置。 - パケットネットワークを介する電話端末間の通話品質を評価するシステムにおいて、
パケット遅延量測定手段を備え、
前記パケット遅延量測定手段は、前記パケットネットワークを流れるパケットのうち、音声信号の有音部に対応するパケットの遅延量を測定する、
ことを特徴とする通話品質評価システム。 - 前記パケット遅延測定手段は、前記音声信号の有音部に対応するパケットから前記音声信号を復号化し、音声遅延量を測定してパケット遅延量とする、
ことを特徴とする請求項18に記載の通話品質評価システム。 - パケットネットワークを介する電話端末間の通話品質を評価するシステムにおいて、
パケット遅延量測定手段と、
R値測定手段と、
を備え、
前記パケット遅延量測定手段は、前記パケットネットワークを流れる音声信号に対応するパケットについてパケット毎にパケット遅延量を測定し、または、前記パケットネットワークを流れるパケットのうち音声信号の有音部に対応するパケットの遅延量を測定し、
前記R値測定手段は、前記測定されるパケット遅延量を用いて、パケット毎または有音部毎に変化するR値を測定する、
ことを特徴とする通話品質評価システム。 - 音声遅延量測定手段を具備し、前記音声遅延量測定手段により測定される音声遅延量を用いて、電話端末間の通話品質を評価するシステムにおいて、
前記音声遅延量測定手段は、前記電話端末間でやりとりされる音声信号について、その音声信号の有音部毎に音声遅延量を測定する、
ことを特徴とする通話品質評価システム。 - パケットネットワークを介する電話端末間の通話品質を評価するシステムにおいて、
制御手段を備え、
前記制御手段は、前記電話端末間の評価を該評価が完了しているか否かに関わらず所定時間単位で実施する、
ことを特徴とする通話品質評価システム。 - 前記制御手段は、前記所定時間単位の評価を予定に従って繰り返し、または、予定に従って前記電話端末の組み合わせを変更しながら実施する、
ことを特徴とする請求項22に記載の通話品質評価システム。 - さらに、音声信号を送信する手段を備え、
前記音声信号は、前記電話端末間の評価が前記所定時間内に完了するように調整される、
ことを特徴とする請求項22または請求項23に記載の通話品質評価システム。 - パケットネットワークを介する電話端末間の通話品質を評価するシステムにおいて、
データベース手段と、
を備え、
前記データベース手段は、評価された通話品質が所定値と比べて劣化している時に、前記電話端末間の通話に関連する音声信号もしくはパケットデータまたはその両方が格納される、
ことを特徴とする通話品質評価システム。 - パケットネットワークを介する電話端末間の通話品質を評価するシステムにおいて、
R値測定手段と、
表示手段と、
を備え、
前記表示手段は、前記R値測定手段により測定されるR値の所定期間における平均値を時系列に表示し、さらに、該測定されるR値の前記所定期間における変動幅を該測定されるR値の前記所定期間における平均値に重ねて表示する、
ことを特徴とする通話品質評価システム。 - 前記表示手段は、前記R値の劣化箇所が表示画面上で選択された時に、電話端末間を複数の区間に区切って測定した遅延量や欠損を表示する、
ことを特徴とする請求項27に記載の通話品質評価システム。 - 電話端末間の通話品質を評価するシステムにおいて、
遅延量測定手段と、
表示手段と、
を備え、
前記表示手段は、前記遅延量測定手段により測定される遅延量の所定期間における平均値を時系列に表示し、さらに、該測定される遅延量の前記所定期間における変動幅を該測定される遅延量の前記所定期間における平均値に重ねて表示する、
ことを特徴とする通話品質評価システム。 - パケットネットワーク上の第一の地点と第二の地点との間のパケット遅延量を測定する装置において、
前記第一の地点で音声信号の有音部に対応する第一の音声パケットを捕獲する手段と、
前記第二の地点で音声信号の有音部に対応する第二の音声パケットと捕獲する手段と、
前記第一の音声パケットと前記第二の音声パケットとを比較する事によりパケット遅延量を測定する手段と、
を備えることを特徴とするパケット遅延量測定装置。 - パケットネットワーク上の第一の地点と第二の地点との間のパケット遅延量を測定する装置において、
第一の地点において第一のパケットを捕獲する手段と、
第二の地点において第二のパケットを捕獲する手段と
第一のパケットから第一の音声信号を復号化する手段と、
第二のパケットから第二の音声信号を復号化する手段と、
前記第一の音声信号と前記第二の音声信号とを比較する事により音声遅延量を測定し、前記音声遅延量を前記第一の地点と前記第二の地点との間のパケット遅延量とする手段と、
を備えることを特徴とするパケット遅延量測定装置。 - 前記第一の音声信号と前記第二の音声信号との比較を、それぞれの信号の有音部毎に行うようにした、
ことを特徴とする請求項31に記載の遅延測定装置。 - 音声信号を送信する送信手段と、
前記音声信号に対応するパケットを捕獲するパケット捕獲手段と、
前記パケット捕獲手段が捕獲するパケットから音声信号を復号化し、前記音声信号と前記復号化した音声信号とを比較し音声遅延量を測定する手段と、
を備えることを特徴とする遅延量測定装置。 - 音声信号を受信する送信装置と、
前記音声信号に対応するパケットを捕獲するパケット捕獲手段と、
前記パケット捕獲手段が捕獲するパケットから音声信号を復号化し、前記音声信号と前記復号化した音声信号とを比較し音声遅延量を測定する手段と、
を備えることを特徴とする遅延量測定装置。 - 前記音声信号と前記復号化音声信号との比較を、それぞれの信号の有音部毎に行うようにした、
ことを特徴とする請求項33または34に記載の遅延測定装置。 - 音声信号を送信する送信手段と、
前記音声信号を受信する受信手段と、
前記送信手段が送信する前記音声信号と前記受信手段が受信する前記音声信号とを、それぞれの信号の有音部毎に比較する事により音声遅延量を測定する手段と、
を備えることを特徴とする音声遅延量測定装置。
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