JP2004296972A - 面発光レーザ - Google Patents

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Takeshi Inoue
武史 井上
Mamoru Hihara
衛 日原
Takaaki Hirata
隆昭 平田
Daisuke Hayashi
大介 林
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Abstract

【課題】発熱を抑えて高出力まで安定な横モード制御が可能な面発光レーザを実現する。
【解決手段】成長層に垂直な方向にレーザ光を出射する面発光レーザにおいて、光の取り出し口を有する基板と、この基板上に形成された第1の分布反射層と、第1及び第2のスペーサ層により上下方向から挟まれると共に第1の分布反射層上に形成された活性層と、上部の第1のスペーサ層上に形成され周辺部分が選択酸化された選択酸化層と、この選択酸化層上にトンネル接合を形成するトンネル接合層と、このトンネル接合層上に形成された第3のスペーサ層と、この第3のスペーサ層上の周辺部に形成されたコンタクト層と、コンタクト層上に形成される第1の電極と、基板の裏面であって光の取り出し口以外の部分に形成された第2の電極と、第3のスペーサ層とエアギャップを介して対向するように第2の分布反射層とを設ける。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成長層に垂直な方向にレーザ光を出射する面発光レーザに関し、特に高出力まで安定な横モード制御が可能な面発光レーザに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)は活性層とクラッド層を多層膜等で形成された反射層で挟み込んだ構造を有するものであり、光通信用光源や光計測用光源として用いられ、特にWDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)等の波長多重通信に適用することが可能な面発光レーザに関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0003】
【特許文献1】
特開平08−213702号公報
【特許文献2】
特開平10−004239号公報
【特許文献3】
特開2000−277853号公報
【特許文献4】
特開2002−134835号公報
【特許文献5】
特開2002−319703号公報
【非特許文献1】
M.Ortsiefer et.al., Appl.Phys.Lett vol.76 pp.2179−2181(2000)
【非特許文献2】
J.H.Shin et.al., IEEE Photonics Tech. Lett. Vol.14 pp.1031−1033(2002)
【0004】
図6はこのような従来の面発光レーザの一例を示す構成断面図であり、「M.Ortsiefer et.al., Appl.Phys.Lett vol.76 pp.2178−2181(2000)」に記載されたものである。
【0005】
図6において1はInAlAs/InGaAlAsで形成されたn型の分布反射層(Distributed Bragg Reflector:以下、DBR層と呼ぶ。)、2及び4はスペーサ層、3は量子井戸(Quantum Well)等を用いた活性層、5はp型不純物が高濃度にドーピングされたp型のトンネル接合層、6はn型不純物が高濃度にドーピングされたn型のトンネル接合層、7はn型のInP等の低屈折率層、8はミラー層、9はコンタクト層、10は電極、11はヒートシンク、12はもう一つの電極である。
【0006】
DBR層1の上(実際の図6では下であるが以下の形成過程の説明に際しては上下逆転して説明する。)には下部のスペーサ層2、活性層3及び上部のスペーサ層4が順次形成され、上部のスペーサ層4の上にはp型のトンネル接合層5及びn型のトンネル接合層6が順次形成され、トンネル接合が形成される。
【0007】
このようなトンネル接合がn型のDBR層1の上であって中央部にのみ形成されるようにp型のトンネル接合層5の一部及びn型のトンネル接合層6であって図6中”CI01”及び図6中”CI02”に示すような周囲の部分がエッチングにより取り除かれる。
【0008】
その後、n型のトンネル接合層6及び前記エッチングの工程で表面に現れたp型のトンネル接合層5の上にはInP等の低屈折率層7が形成される。
【0009】
そして、低屈折率層7の上であって中央部には上部ミラーを構成するミラー層8が形成され、当該ミラー層8の周囲にはコンタクト層9が形成される。また、トンネル接合層6と低屈折率層7との側面には絶縁膜が形成さる。
【0010】
コンタクト層9に接続するように上部の電極10が形成され、電極10の上面及び側面にはヒートシンク11が形成される。さらに、DBR層1の裏面には下部の電極12が形成される。
【0011】
ここで、図6に示す従来例の動作を図7を用いて説明する。但し、図7を用いた動作説明に際してはDBR層1を上部として説明する。また、図7は注入電流の流れの一例を示す説明図である。
【0012】
上部の電極12と下部の電極10との間に電圧が印加されると下部の電極10から上部の電極12へ図7中”CR11”及び図7中”CR12”に示すように電流が中央部に形成されたトンネル接合を通じて流れて電流狭窄される。
【0013】
このとき、バンドギャップの最も狭い活性層3において正孔と電子の結合が生じて光が発光し、DBR層1とミラー層8との間に形成される光共振器で光増幅されて、DBR層1側であって上部の電極12が無い部分から図7中”LR11”に示すようにレーザ光として出力される。
【0014】
一方、トンネル接合部分は高屈折率材料を用いており、周囲には低屈折率層7が形成されているので、両者の間で等価屈折率差”Δneff”が生じる。
【0015】
このような、等価屈折率差”Δneff”は、トンネル接合部分での共振波長を”λ”、トンネル接合部分と周辺部分との共振波長の差を”Δλ”、等価屈折率を”neff”とした場合、
Δneff/neff=Δλ/λ (1)
で表される。
【0016】
すなわち、この等価屈折率”neff”により、トンネル接合部分に前述の光共振器で共振するレーザ光が閉じ込められ、面発光レーザのレーザ光の光強度分布が中央部分(トンネル接合部分)で最大となるため横モード制御が可能になる。
【0017】
また、図8は従来の面発光レーザの他の一例を示す構成断面図であり、「J.H.Shin et.al., IEEE Photonics Tech. Lett. Vol.14 pp.1031−1033(2002)」に記載されたものである。
【0018】
図8において13はn型のInP等の基板、14はInGaAlAsで形成されたn型のDBR層、15及び17はスペーサ層、16は量子井戸(Quantum Well)等を用いた活性層、18はAlを包含する層の周囲部分を酸化させ高抵抗化させた選択酸化層、19はp型のスペーサ層、20はInGaAlAsで形成されたDBR層、21及び22はAuZn等で形成された電極、23はAuGe/Ni/Au等で形成された電極である。
【0019】
基板13の上にはDBR層14、下部のスペーサ層15、活性層16及び上部のスペーサ層17が順次形成され、上部のスペーサ層17の上には選択酸化層18が形成され、選択酸化層18は側面を露出させ、選択酸化層18の上にはさらにスペーサ層19が形成され、スペーサ層19上であって中央部分には上部のDBR層20が形成される。選択酸化により周囲部分を酸化させて高抵抗化(中心部分は低抵抗である)させる。
【0020】
スペーサ層19上であって周辺部分には電極21及び22がそれぞれ形成される。さらに、基板13の裏面には電極23が形成される。
【0021】
ここで、図8に示す従来例の動作を図9を用いて説明する。図9は注入電流の流れの一例を示す説明図である。
【0022】
上部の電極21及び22と下部の電極23との間に電圧が印加されると上部の電極21及び22から下部の電極23へ図9中”CR21”及び図9中”CR22”に示すように電流が選択酸化層の中央部に形成された低抵抗の部分を流れて電流狭窄させる。
【0023】
このとき、バンドギャップの最も狭い活性層16において正孔と電子の結合が生じて光が発光し、DBR層14とDBR層20との間に形成される光共振器で光増幅されて、DBR層14側であって下部の電極23が無い部分から図9中”LR21”に示すようにレーザ光として出力される。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図6に示す従来の面発光レーザでは、中央部分にのみ電流を流して電流狭窄を行わせるため図6中”CI01”及び図6中”CI02”に示す部分をエッチングにより除去しているため、中央部分に残されたトンネル接合部分で大きな光吸収が生じる。
【0025】
このため、基本モードの損失が高次モードより大きくなり、高次モードが基本モードよりも発振し易くなる、言い換えれば、横モード制御が不安定になる要因となってしまうと言った問題点があった。
【0026】
この場合には、トンネル接合を極めて薄く形成し定在波の節を当該トンネル接合部分に配置することにより、光吸収による問題点を回避しているが、波長可変レーザに適用した場合には、定在波の節がトンネル接合部分から若干ずれることによる影響が無視できなくなり、横モード制御が不安定になってしまうと言った問題点があった。
【0027】
さらに,図6に示す従来例ではトンネル接合部分の周囲をエッチングにより除去する工程が必要になり、結晶成長の工程を2回に分けて行わなければならないと言った問題点があった。
【0028】
一方、図8に示す従来例では、選択酸化層18によって電流狭窄を行わせているため、中心部分の光吸収が大きくなって横モード制御が不安定になると言った図6に示す従来例の問題点は克服できるものの、選択酸化層18上に形成されるp型のスペーサ層19の抵抗値が大きいため発熱が大きくなってしまうと言った問題点があった。
従って本発明が解決しようとする課題は、発熱を抑えて高出力まで安定な横モード制御が可能な面発光レーザを実現することにある。
【0029】
【課題を解決するための手段】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
成長層に垂直な方向にレーザ光を出射する面発光レーザにおいて、
光の取り出し口を有する基板と、この基板上に形成された第1の分布反射層と、第1及び第2のスペーサ層により上下方向から挟まれると共に前記第1の分布反射層上に形成された活性層と、上部の前記第1のスペーサ層上に形成され周辺部分が選択酸化された選択酸化層と、この選択酸化層上にトンネル接合を形成するトンネル接合層と、このトンネル接合層上に形成された第3のスペーサ層と、この第3のスペーサ層上の周辺部に形成されたコンタクト層と、前記コンタクト層上に形成される第1の電極と、前記基板の裏面であって前記光の取り出し口以外の部分に形成された第2の電極と、前記第3のスペーサ層とエアギャップを介して対向するように第2の分布反射層とを備えたことにより、発熱を抑えて高出力まで安定な横モード制御が可能になる。
【0030】
請求項2記載の発明は、
成長層に垂直な方向にレーザ光を出射する面発光レーザにおいて、
光の取り出し口を有する基板と、この基板上に形成された第1の分布反射層と、第1及び第2のスペーサ層により上下方向から挟まれると共に前記第1の分布反射層上に形成された活性層と、上部の前記第1のスペーサ層上にトンネル接合を形成するトンネル接合層と、このトンネル接合層上に形成され周辺部分が選択酸化された選択酸化層と、この選択酸化層上に形成された第3のスペーサ層と、この第3のスペーサ層上の周辺部に形成されたコンタクト層と、前記コンタクト層上に形成される第1の電極と、前記基板の裏面であって前記光の取り出し口以外の部分に形成された第2の電極と、前記第3のスペーサ層とエアギャップを介して対向するように第2の分布反射層とを備えたことにより、発熱を抑えて高出力まで安定な横モード制御が可能になる。
【0031】
請求項3記載の発明は、
請求項1若しくは請求項2記載の発明である面発光レーザにおいて、
前記選択酸化層が、
InAlAs/AlAs超格子であることにより、結晶性を維持しつつ実効的な膜厚を厚く、且つ、Al組成比を高くすることが可能になり、酸化が容易になる。
【0032】
請求項4記載の発明は、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発明である面発光レーザにおいて、
前記選択酸化層及び前記トンネル接合層により格子不整合による歪を補償することにより、トンネル接合層上若しくは選択酸化層上の結晶成長が容易になり、歪補償をしない場合と比較して結晶性が改善されると共に活性層へのストレスを抑制でき信頼性の向上に寄与する。
【0033】
請求項5記載の発明は、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の発明である面発光レーザにおいて、
前記コンタクト層若しくは前記第3のスペーサ層の表面に凹凸を形成して中央部分と前記エアギャップの境界面に定在波の腹が位置するように中央部分の膜厚を調整したことにより、エアギャップをコンタクト層とDBR層との間に挿入する構成にした場合であっても横モード制御が可能にすることができる。
【0034】
請求項6記載の発明は、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の発明である面発光レーザにおいて、
前記コンタクト層若しくは前記第3のスペーサ層上の中央部分に位相調整層を設けて中央部分と前記エアギャップの境界面に定在波の腹が位置するように前記位相調整層の膜厚を調整したことにより、エアギャップをコンタクト層とDBR層との間に挿入する構成にした場合であっても閾値電流を低くすることが可能になる。
【0035】
請求項7記載の発明は、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の発明である面発光レーザにおいて、
前記第2の分布反射膜は半導体微細加工技術によって形成され可動にしたことにより、レーザ光の発振波長を可変することが可能になる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る面発光レーザの一実施例を示す構成断面図である。
【0037】
図1において24はn型のInP等の基板、25はn型のInGaAsPとn型のInP等から構成されるDBR層、26はn型のInP等のスペーサ層、27はInGaAsPの歪多重量子井戸等を用いた活性層、28はp型のInP等のスペーサ層、29はp型のInAlAs等の選択酸化層、30は高濃度のp型のInGaAsP若しくはInGaAlAs等のトンネル接合層、31は高濃度のn型のInGaAs等のトンネル接合層、32はn型のInP等のスペーサ層、33はn型のInGaAsP等のコンタクト層、34はDBR層、35はSiで形成されたメンブレン、36及び37は電極である。
【0038】
基板24上には下部のDBR層25が形成され、DBR層25の上には下部のスペーサ層26、活性層27及び上部のスペーサ層28が順次形成される。
【0039】
上部のスペーサ層28の上には選択酸化層29が形成され、選択酸化層29の上にはp型のトンネル接合層30及びn型のトンネル接合層31が順次形成されてトンネル接合を形成する。
【0040】
n型のトンネル接合層31の上にはスペーサ層32及びコンタクト層33が順次形成され、選択酸化層29に到達するまで周辺部分をメサエッチングした後、水蒸気酸化することにより選択酸化層29の中央部分以外を酸化させて高抵抗化させる。また、コンタクト層33上であって周辺部分には電極36が形成される。
【0041】
そして、コンタクト層33の上方にはコンタクト層33に接しない状態でメンブレン35が形成され、メンブレン35の下、言い換えれば、コンタクト層33に対向する面にはDBR層34が形成されて、図1中”AG31”に示すようなエアギャップを形成する。
【0042】
一方、基板24は裏面であって図1中”AR31”に示す部分が光の取り出し口としてエッチングによりDBR層25表面まで取り除かれ、残った基板24の裏面には電極37が形成される。
【0043】
ここで,図1に示す実施例の動作を図2を用いて説明する。図2は注入電流の流れの一例を示す説明図である。
【0044】
上部の電極36と下部の電極37との間に電圧が印加されると上部の電極36から図2中”CR41”及び図2中”CR42”に示すように電流が図2中”CP41”に示す選択酸化層29の酸化されていない中央部分(低抵抗部分)を通じて流れて電流狭窄され、活性層27を介して下部の電極37に流れる。
【0045】
このとき、バンドギャップの最も狭い活性層27において正孔と電子の結合が生じて光が発光し、DBR層25とDBR層34の間に形成される光共振器で光増幅されて、DBR層25側であって基板24が取り除かれた光の取り出し口から図2中”LR41”に示すようにレーザ光として出力される。
【0046】
そして、上部のスペーサ層28と下部のスペーサ層26の膜厚は活性層27に定在波の腹が、トンネル接合部分に定在波の節がくるように調整され、また、スペーサ層32及びコンタクト層33の膜厚はエアギャップとの境界面に定在波の腹がくるように調整される。
【0047】
また、メンブレン35をMEMS(micro electro−mechanical systems:可動部品と電子回路を半導体微細加工技術によって集積した微小な機械システム)で可動にして、コンタクト層33とDBR層34との間隔(図1中”AG31”に示すエアギャップの間隔に相当)を調整することにより、レーザ光の発振波長を可変にしている。
【0048】
このような構成では、電流狭窄を選択酸化層29が行うためトンネル接合層の周辺部分をエッチングで除去する必要性がなく、膜厚を均一にすることが可能になるので、トンネル接合層の中央部分でのみ大きな光吸収が生じることがなくなり、高次モードが基本モードよりも発振し易くなる、言い換えれば、横モード制御が不安定になることを抑制することが可能になる。
【0049】
また、スペーサ層32やコンタクト層33は電子の移動度の高いn型のInPやInGaAsP等を用いることができるので、素子抵抗を下げて発熱を抑制することが可能になる。
【0050】
さらに、選択酸化層29の選択酸化された部分(周辺部分)の屈折率が低下することにより、活性層27の周辺部分にくるように調整されている定在波の腹がずれる(活性層27の中央部分には定在波の腹くる)ことにより、活性層27の中央部分と周辺部分とで利得の差が発生し基本モードが高次モードよりも発振し易くなる、言い換えれば、横モード制御が容易になる。
【0051】
この結果、トンネル接合やn型の半導体部材を用いることにより低抵抗化を図ると共に、周辺部分を選択酸化させた選択酸化膜29により電流狭窄を行わせることにより、発熱を抑えて高出力まで安定な横モード制御が可能になる。
【0052】
なお、図1に示す実施例では選択酸化層29の上にトンネル接合層30及び31を形成してトンネル接合を構成させているが、トンネル接合と選択酸化層の位置関係を逆転させても構わない。
【0053】
図3はこのような本発明に係る面発光レーザの他の実施例を示す構成断面図である。但し、図3に示す実施例の動作に関しては図1に示す実施例と同様であるので動作の説明は省略する。
【0054】
図3において24,25,26,27,28,32,33,34,35,36及び37は図1と同一符号を付してあり、38は高濃度のp型のInGaAsP若しくはInGaAlAs等のトンネル接合層、39は高濃度のn型のInGaAs等のトンネル接合層、40はn型のInAlAs等の選択酸化層である。
【0055】
基板24上には下部のDBR層25が形成され、DBR層25の上には下部のスペーサ層26、活性層27及び上部のスペーサ層28が順次形成される。
【0056】
上部のスペーサ層28の上にはp型のトンネル接合層38及びn型のトンネル接合層39が順次形成されてトンネル接合を形成し、n型のトンネル接合層39の上には選択酸化層40が形成される。
【0057】
選択酸化層40の上にはスペーサ層32及びコンタクト層33が順次形成され、選択酸化層40に到達するまで周辺部分をメサエッチングした後、水蒸気酸化することにより選択酸化層40の中央部分以外を酸化させて高抵抗化させる。また、コンタクト層33上であって周辺部分には電極36が形成される。
【0058】
そして、コンタクト層33の上方にはコンタクト層33に接しない状態でメンブレン35が形成され、メンブレン35の下、言い換えれば、コンタクト層33に対向する面にはDBR層34が形成されて、図3中”AG51”に示すようなエアギャップを形成する。
【0059】
一方、基板24は裏面であって図3中”AR51”に示す部分が光の取り出し口としてエッチングによりDBR層25表面まで取り除かれ、残った基板24の裏面には電極37が形成される。
【0060】
また、選択酸化層29及び40としてはInAlAs等を例示しているが、InAlAs/AlAs超格子を用いても構わない。
【0061】
この場合には、InAlAs/AlAs超格子を用いることにより、酸化の速度を速くすることが可能なAlAsのようにAl組成比の高い部材を用いた場合であっても、InPとの間での結晶性を維持しつつ実効的な膜厚を厚くすることが可能になり、酸化が容易になる。
【0062】
また、選択酸化層とトンネル接合層とにより格子不整合による歪を補償しても構わない。すなわち、選択酸化層として酸化速度の速い組成比の高いAlAsを用いることにより、スペーサ層32との間で格子不整合が生じて歪が発生する。
【0063】
このため、トンネル接合層で選択酸化層の歪を打ち消すような歪を持たせて形成して歪を補償することにより、トンネル接合層若しくは選択酸化層上の結晶成長が容易になり、歪補償をしない場合と比較して結晶性が改善されると共に活性層へのストレスを抑制でき信頼性の向上に寄与する。
【0064】
また、コンタクト層の表面に凹凸を形成してコンタクト層の中央部分(凸部)とエアギャップの境界面に定在波の腹が位置するように、且つ、コンタクト層の周辺部分(凹部)とエアギャップの境界面に定在波の節が位置するようにコンタクト層の各部分の膜厚を調整することにより、エアギャップをコンタクト層とDBR層34との間に挿入する構成にした場合であっても横モード制御が可能にすることができる。
【0065】
図4はこのような本発明に係る面発光レーザの他の実施例を示す構成断面図である。但し、図4に示す実施例の動作に関しては図1に示す実施例と同様であるので動作の説明は省略する。
【0066】
図4において24,25,26,27,28,29,30,31,32,34,35,36及び37は図1と同一符号を付してあり、41は中央部分に凸部が、周辺部分に凹部が形成されたコンタクト層である。
【0067】
基板24上には下部のDBR層25が形成され、DBR層25の上には下部のスペーサ層26、活性層27及び上部のスペーサ層28が順次形成される。
【0068】
上部のスペーサ層28の上には選択酸化層29が形成され、選択酸化層29の上にはp型のトンネル接合層30及びn型のトンネル接合層31が順次形成されてトンネル接合を形成する。
【0069】
n型のトンネル接合層31の上にはスペーサ層32及びコンタクト層41が順次形成され、選択酸化層29に到達するまで周辺部分をメサエッチングした後、水蒸気酸化することにより選択酸化層29の中央部分以外を酸化させて高抵抗化させる。
【0070】
この時、コンタクト層41の中央部分(凸部)とエアギャップとの境界面に定在波の腹が位置するように、コンタクト層41の膜厚が調整される。
【0071】
また、コンタクト層41の周辺部分はエッチング等によって除去して凹部を形成し、当該コンタクト層41上であって周辺部分(凹部)には電極36が形成される。
【0072】
この時、コンタクト層41の周辺部分(凹部)とエアギャップとの境界面に定在波の節が位置するように、コンタクト層41の周辺部分(凹部)の膜厚が調整される。
【0073】
そして、コンタクト層41の上方にはコンタクト層41に接しない状態でメンブレン35が形成され、メンブレン35の下、言い換えれば、コンタクト層41に対向する面にはDBR層34が形成されて、エアギャップを形成する。
【0074】
一方、基板24は裏面の中央部分は光の取り出し口としてエッチングによりDBR層25表面まで取り除かれ、残った基板24の裏面には電極37が形成される。
【0075】
また、図4に示す実施例では中央部分が凸部で周辺部分が凹部としているが、中央部分とエアギャップの境界面に定在波の腹が位置し、且つ、コンタクト層の周辺部分とエアギャップの境界面に定在波の節が位置する状況が実現できれば、中央部分を凹部で周辺部分が凸部としても勿論構わない。
【0076】
また、電極36に接する部分以外のコンタクト層41を選択エッチング等により除去してスペーサ層32の表面に凹凸を形成しても構わない。
【0077】
また、コンタクト層の表面に位相調整層を形成し、位相調整層とエアギャップの境界面に定在波の腹が位置するように位相調整層の膜厚を調整することにより、活性層における発振するレーザ光の閉じ込めが多くなり、エアギャップをコンタクト層とDBR層との間に挿入する構成にした場合であっても閾値電流を低くすることが可能になる。
【0078】
図5はこのような本発明に係る面発光レーザの他の実施例を示す構成断面図である。但し、図5に示す実施例の動作に関しては図1に示す実施例と同様であるので動作の説明は省略する。
【0079】
図5において24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36及び37は図1と同一符号を付してあり、42はn型のInPで形成された位相調整層である。
【0080】
基板24上には下部のDBR層25が形成され、DBR層25の上には下部のスペーサ層26、活性層27及び上部のスペーサ層28が順次形成される。
【0081】
上部のスペーサ層28の上には選択酸化層29が形成され、選択酸化層29の上にはp型のトンネル接合層30及びn型のトンネル接合層31が順次形成されてトンネル接合を形成する。
【0082】
n型のトンネル接合層31の上にはスペーサ層32及びコンタクト層33、位相調整層42が順次形成され、選択酸化層29に到達するまで周辺部分をメサエッチングした後、水蒸気酸化することにより選択酸化層29の中央部分以外を酸化させ高抵抗化させる。
【0083】
また、コンタクト層33上であって周辺部分には電極36が形成され、中央部分には位相調整層42が位相調整層42とエアギャップとの境界面に定在波の腹が位置するように位相調整層42の膜厚が調整されて形成される。
【0084】
そして、コンタクト層33の上方には位相調整層42に接しない状態でメンブレン35が形成され、メンブレン35の下、言い換えれば、位相調整層42に対向する面にはDBR層34が形成されて、エアギャップを形成する。
【0085】
一方、基板24は裏面の中央部分は光の取り出し口としてエッチングによりDBR層25表面まで取り除かれ、残った基板24の裏面には電極37が形成される。
【0086】
また、位相調整層42には半導体層を用いた例を示したが、誘電体膜等を用いても勿論構わない。
【0087】
また、図1等に示す実施例では、メンブレン35をMEMSで可動にして、コンタクト層と上部のDBR層との間隔(図1中”AG31”に示すエアギャップの間隔に相当)を調整することにより、レーザ光の発振波長を可変にしているが固定波長の面発光レーザに適用しても勿論構わない。
【0088】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次のような効果がある。
請求項1及び請求項2の発明によれば、トンネル接合やn型の半導体部材を用いることにより低抵抗化を図ると共に、周辺部分を選択酸化させた選択酸化膜により電流狭窄を行わせることにより、発熱を抑えて高出力まで安定な横モード制御が可能になる。
【0089】
また、請求項3の発明によれば、InAlAs/AlAs超格子を用いることにより、酸化の速度を速くすることが可能なAlAsのように組成比の高い部材を用いた場合であっても、InPとの間での結晶性を維持しつつ実効的な膜厚を厚くすることが可能になり、酸化が容易になる。
【0090】
また、請求項4の発明によれば、トンネル接合層で選択酸化層の歪を打ち消すような歪を持たせて形成して歪を補償することにより、トンネル接合層上の結晶成長が容易になり、歪補償をしない場合と比較して結晶性が改善されると共に活性層へのストレスを抑制でき信頼性の向上に寄与する。
【0091】
また、請求項5の発明によれば、コンタクト層の表面に凹凸を形成してコンタクト層の中央部分とエアギャップの境界面に定在波の腹が位置するように、且つ、コンタクト層の周辺部分とエアギャップの境界面に定在波の節が位置するようにコンタクト層の各部分の膜厚を調整することにより、エアギャップをコンタクト層とDBR層との間に挿入する構成にした場合であっても横モード制御が可能にすることができる。
【0092】
また、請求項6の発明によれば、コンタクト層の表面に位相調整層を形成し、位相調整層とエアギャップの境界面に定在波の腹が位置するように位相調整層の膜厚を調整することにより、活性層における発振するレーザ光の閉じ込めが多くなり、エアギャップをコンタクト層とDBR層との間に挿入する構成にした場合であっても閾値電流を低くすることが可能になる。
【0093】
また、請求項7の発明によれば、メンブレンをMEMSで可動にして、スペーサ層とDBR層との間隔を調整することにより、レーザ光の発振波長を可変にすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る面発光レーザの一実施例を示す構成断面図である。
【図2】注入電流の流れの一例を示す説明図である。
【図3】本発明に係る面発光レーザの他の実施例を示す構成断面図である。
【図4】本発明に係る面発光レーザの他の実施例を示す構成断面図である。
【図5】本発明に係る面発光レーザの他の実施例を示す構成断面図である。
【図6】従来の面発光レーザの一例を示す構成断面図である。
【図7】注入電流の流れの一例を示す説明図である。
【図8】従来の面発光レーザの他の一例を示す構成断面図である。
【図9】注入電流の流れの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1,14,20,25,34 分布反射層(DBR層)
2,4,15,17,19,26,28,32 スペーサ層
3,16,27 活性層
5,6,30,31,38,39 トンネル接合層
7 低屈折率層
8 ミラー層
9,41 コンタクト層
10,12,21,22,23,36,37 電極
11 ヒートシンク
13,24 基板
18,29,40 選択酸化層
33 コンタクト層
35 メンブレン
42 位相調整層

Claims (7)

  1. 成長層に垂直な方向にレーザ光を出射する面発光レーザにおいて、
    光の取り出し口を有する基板と、
    この基板上に形成された第1の分布反射層と、
    第1及び第2のスペーサ層により上下方向から挟まれると共に前記第1の分布反射層上に形成された活性層と、
    上部の前記第1のスペーサ層上に形成され周辺部分が選択酸化された選択酸化層と、
    この選択酸化層上にトンネル接合を形成するトンネル接合層と、
    このトンネル接合層上に形成された第3のスペーサ層と、
    この第3のスペーサ層上の周辺部に形成されたコンタクト層と、
    このコンタクト層上に形成される第1の電極と、
    前記基板の裏面であって前記光の取り出し口以外の部分に形成された第2の電極と、
    前記第3のスペーサ層とエアギャップを介して対向するように第2の分布反射層と
    を備えたことを特徴とする面発光レーザ。
  2. 成長層に垂直な方向にレーザ光を出射する面発光レーザにおいて、
    光の取り出し口を有する基板と、
    この基板上に形成された第1の分布反射層と、
    第1及び第2のスペーサ層により上下方向から挟まれると共に前記第1の分布反射層上に形成された活性層と、
    上部の前記第1のスペーサ層上にトンネル接合を形成するトンネル接合層と、
    このトンネル接合層上に形成され周辺部分が選択酸化された選択酸化層と、
    この選択酸化層上に形成された第3のスペーサ層と、
    この第3のスペーサ層上の周辺部に形成されたコンタクト層と、
    このコンタクト層上に形成される第1の電極と、
    前記基板の裏面であって前記光の取り出し口以外の部分に形成された第2の電極と、
    前記第3のスペーサ層とエアギャップを介して対向するように第2の分布反射層と
    を備えたことを特徴とする面発光レーザ。
  3. 前記選択酸化層が、
    InAlAs/AlAs超格子であることを特徴とする
    請求項1若しくは請求項2記載の面発光レーザ。
  4. 前記選択酸化層及び前記トンネル接合層により格子不整合による歪を補償することを特徴とする
    請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の面発光レーザ。
  5. 前記コンタクト層若しくは前記第3のスペーサ層の表面に凹凸を形成して中央部分と前記エアギャップの境界面に定在波の腹が位置するように中央部分の膜厚を調整したことを特徴とする
    請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の面発光レーザ。
  6. 前記コンタクト層若しくは前記第3のスペーサ層上の中央部分に位相調整層を設けて中央部分と前記エアギャップの境界面に定在波の腹が位置するように前記位相調整層の膜厚を調整したことを特徴とする
    請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の面発光レーザ。
  7. 前記第2の分布反射膜は半導体微細加工技術によって形成され可動にしたことを特徴とする
    請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の面発光レーザ。
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