JP2004296711A - 多層セラミック基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】多層セラミック基板の焼成温度では焼結しない無機組成物よりなる拘束シートをグリーンシート積層体の少なくとも一方の表面に積層し焼成処理を行う多層セラミック基板の製造方法において、連続炉で焼成を行う際でも基板内寸法ばらつきを抑制し、高い寸法精度を有する多層セラミック基板を得るための多層セラミック基板の製造方法を提供する。
【解決手段】グリーンシート積層体4の少なくとも一方主面に、セラミックグリーンシート1の焼成温度では焼結しない無機組成物よりなる拘束シート5を積層した後、前記グリーンシート積層体4を可動ベルトに載置し、所望温度に加熱された領域を通過させて焼成処理を行い、その後、前記拘束シート5を取り除くことを特徴とする多層セラミック基板の製造方法において、前記拘束シート5の厚みを、前記可動ベルトの進行方向に対し、後端側から先端側にかけて徐々に小さくした。
【選択図】図2
【解決手段】グリーンシート積層体4の少なくとも一方主面に、セラミックグリーンシート1の焼成温度では焼結しない無機組成物よりなる拘束シート5を積層した後、前記グリーンシート積層体4を可動ベルトに載置し、所望温度に加熱された領域を通過させて焼成処理を行い、その後、前記拘束シート5を取り除くことを特徴とする多層セラミック基板の製造方法において、前記拘束シート5の厚みを、前記可動ベルトの進行方向に対し、後端側から先端側にかけて徐々に小さくした。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層セラミック基板の製造方法に関し、特に、多層配線基板及び半導体素子収納用パッケージなどに適した多層セラミック基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、高集積化が進むICやLSI等の半導体素子を搭載する半導体素子収納用パッケージや、各種電子部品が搭載される混成集積回路装置等に適用される配線基板においては、高密度化、低抵抗化、小型軽量化が要求されており、アルミナ系セラミック材料に比較して低い誘電率が得られ、配線回路層としてCu等の低抵抗金属を用いることができることから、焼成温度が1000℃以下のいわゆる多層セラミック配線基板が一層注目されている。
【0003】
また、多層セラミック基板の高密度化が進むのに伴い、寸法の高精度化に対する要求も強くなっている。ガラス成分を含むセラミックは、アルミナ系セラミック材料等と比較して低い温度で焼成が行える事から、高精度化に対して次のような焼成方法が提案されている。
【0004】
そして、下記の特許文献1によれば、ガラス成分を含むセラミック基板を焼成する際に、多層セラミック基板の焼成温度では焼結しない無機組成物よりなる拘束シートをグリーンシート積層体の両面に積層し焼成処理を行う事により、基板の面方向にはほとんど収縮させずに焼結させる手法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特許第2554415号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図4の矢印に示す方向に移動する可動ベルト101上にトレイ102を介して載置し、焼成する前記手法を連続焼成炉に適用すると、可動ベルト101上に載置したグリーンシート積層体の焼成収縮率が、この可動ベルト101の炉内への入口側から出口側に向かって徐々に小さくなるように収縮してしまい、結果として、可動ベルト101上の多層セラミック基板103の先端側が後端側より大きくなり、多層セラミック基板103内の収縮率のばらつきが大きくなるという問題があった。
【0007】
従って、本発明は、多層セラミック基板の焼成温度では焼結しない無機組成物よりなる拘束シートをグリーンシート積層体の少なくとも一方の表面に積層し焼成処理を行う多層セラミック基板の製造方法において、連続炉で焼成を行う際でも基板内の収縮率のばらつきを抑制し、高い寸法精度を有する多層セラミック基板を得るための多層セラミック基板の製造方法を提供する事を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記のような課題について鋭意検討した結果、前記拘束シートの厚みを可動ベルトの進行方向に対して徐々に小さくする事により、徐々に拘束力を変化させる事ができ、連続炉で焼成を行う際に発生する基板内の収縮率のばらつきを抑制するという目的が達成できる事を見出した。
【0009】
即ち、本発明の多層セラミック基板の製造方法は、セラミックグリーンシートに導体パターンおよびビアホール導体を形成し、同様に作製した所望枚数のセラミックグリーンシートを積層したグリーンシート積層体の少なくとも一方主面に、前記セラミックグリーンシートの焼成温度では焼結しない無機組成物よりなる拘束シートを積層した後、前記グリーンシート積層体を可動ベルトに載置し、所望温度に加熱された領域を通過させて焼成処理を行い、その後、前記拘束シートを取り除くことを特徴とする多層セラミック基板の製造方法において、前記拘束シートの厚みを、前記可動ベルトの進行方向に対し、後端側から先端側にかけて徐々に小さくした事を特徴とするものである。
【0010】
また、上記多層セラミック基板の製造方法では、前記拘束シートの最薄部の厚みが、前記グリーンシート積層体の厚みの10〜40%である事が望ましい。
【0011】
また、上記多層セラミック基板の製造方法では、前記拘束シートの最厚部の厚みをt0、最薄部の厚みをt1とし、前記セラミック積層体の進行方向長さをLとしたときに、前記拘束シートの厚み変化率((t0−t1)/L)×100(%)が、0.05〜0.3%である事が望ましい。
【0012】
また、上記多層セラミック基板の製造方法では、前記拘束シート中にガラスを1〜15体積%含有することが望ましい。
【0013】
また、上記多層セラミック基板の製造方法では、前記拘束シートが、Al2O3、SiO2、MgO、ZrO2、TiO2、MgAl2O3、ZnAl2O4、Mg2SiO4の少なくとも1種を含有する事が望ましい。
【0014】
さらに、上記多層セラミック基板の製造方法では、前記電極パターンが、Au、Ag、Cu、Pd、Ptの少なくとも1種を含有する金属焼結体あるいは金属箔からなる事が望ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図面に基づいて説明する。図1は本発明の多層セラミック基板を製造するための工程図である。
【0016】
図1によれば、上記のような多層セラミック基板は、(a)ガラス粉末を含むセラミック組成物からなるセラミックグリーンシート1を得る工程と、(b)セラミックグリーンシート1に穴あけ加工を施し、ビアホールを形成し、ビアホールに導体ペーストを充填してビアホール導体2を形成する工程と、(c)セラミックグリーンシート1表面に、導体パターン3を形成する工程と、(a)〜(c)工程を経て作製したセラミックグリーンシート1を積層し、グリーンシート積層体4を作製する工程(d)と、(e)厚みに勾配を有する拘束シート5を前記グリーンシート積層体4に積層する工程と、(f)前記(a)〜(e)工程を経て作製した複合積層体6を焼成する工程と、焼成後の前記複合積層体6から前記拘束シート5を除去する工程を経て製造される。
【0017】
以下に各工程毎に詳細に説明する。
【0018】
(a)セラミックグリーンシート1を得る工程では、原料粉末としてガラス粉末とセラミックフィラー粉末を所定量秤量し、さらに有機バインダ、可塑剤、有機溶剤等を加えてスラリーを調製した後、ドクターブレード法、圧延法、プレス法等の周知の成形法によりシート状に成形して厚さ50〜500μmのセラミックグリーンシート1を作製する。
【0019】
用いるガラス粉末の成分としては、少なくともSiO2を含み、Al2O3、B2O3、ZnO、PbO、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属酸化物のうちの少なくとも1種以上を含有したものであって、例えば、SiO2−B2O3系、SiO2−B2O3−Al2O3系、SiO2−B2O3−MO系(但し、MはCa、Sr、Mg、BaまたはZnを示す)等のホウケイ酸ガラス、アルカリ珪酸ガラス、Ba系ガラス、Pb系ガラス、Bi系ガラス等が挙げられる。
【0020】
これらのガラス粉末の成分は焼成処理することによっても非晶質ガラスであるもの、また焼成処理によって、リチウムシリケート、クォーツ、クリストバライト、コージェライト、ムライト、アノーサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ウイレマイト、ドロマイト、ペタライト、ディオプサイドやその置換誘導体の結晶を少なくとも1種類を析出するものが用いられる。
【0021】
また、セラミックフィラー粉末としては、クォーツ、クリストバライト等のSiO2や、Al2O3、ZrO2、コージェライト、ムライト、フォルステライト、エンスタタイト、スピネル、マグネシア等が好適に用いられる。
【0022】
(b)セラミックグリーンシート1に穴あけ加工を施し、ビアホールを形成し、ビアホールに導体ペーストを充填する工程では、(a)で得たセラミックグリーンシート1に、レーザーやマイクロドリル、パンチングなどにより、直径30〜300μmの貫通孔を形成し、その内部にビア用導体ペーストを充填し、ビアホール導体2を形成する。
【0023】
ビア用導体ペーストは、Au、Cu、Ag、Pd、Ptのうち少なくとも1種を主成分とする金属粉末に、アクリル樹脂などからなる有機バインダとテルピネオール、ジブチルフタレートなどの有機溶剤とを均質混合して形成される。
【0024】
有機バインダは、金属成分100質量%に対して、0.5〜15.0質量%、有機溶剤は、固形成分及び有機バインダ100質量%に対して、5〜100質量%の割合で混合されることが望ましい。なお、このビア用導体ペースト中には若干のセラミックフィラー粉末やガラス粉末等を添加してもよい。
【0025】
(c)セラミックグリーンシート1の表面に導体パターン3を形成する工程では、ビアホール導体2を形成したセラミックグリーンシート1の表面に、パターン用導体ペーストをスクリーン印刷法で印刷するかもしくは金属箔を転写法によって導体パターン3を形成する。
【0026】
パターン用導体ペーストは、上記ビア用導体ペーストと同様の手法により作製され、必要に応じて成分や配合比率を変更することにより作製する。
【0027】
一方、金属箔を用いた転写法による導体パターン3の形成方法としては、まず高分子材料等からなる転写フィルム上に金属箔を接着した後、この金属箔の表面に回路パターンとはネガ対称のレジストを塗布した後、エッチング処理およびレジスト除去を行って回路パターンを形成する。
【0028】
そして、回路パターンを形成した転写フィルムを前記ビアホール導体2が形成されたセラミックグリーンシート1の表面に位置合わせして積層圧着した後、転写フィルムを剥がす事により、ビアホール導体2と接続した導体パターン3を具備するセラミックグリーンシート1を形成する。
【0029】
なお、上記印刷法と転写法による導体パターン3はいずれか一方のみでも、両者が混在していても差し支えない。
【0030】
(d)グリーンシート積層体4を作製する工程では、同様にして得られた導体パターン3を形成した複数のセラミックグリーンシート1を積層圧着してグリーンシート積層体4を形成する。
【0031】
セラミックグリーンシート1の積層には、積み重ねられたセラミックグリーンシート1に熱と圧力を加えて熱圧着する方法、有機バインダ、可塑剤、溶剤等からなる接着剤をシート間に塗布して熱圧着する方法等が採用可能である。
【0032】
(e)次に、本発明では、セラミックグリーンシート1を積層したグリーンシート積層体4の表面に、このグリーンシート積層体4の焼成での収縮を抑制するための拘束シート5を積層して複合積層体6を作製し、次いで、この複合積層体6を可動ベルトに載置し、所望温度に加熱された領域を通過させる事により焼成処理を行う。
【0033】
次に、作製した複合積層体6を前記金属導体の融点以下の温度で焼成する工程では、この複合積層体6を100〜800℃、特に400〜750℃で加熱処理して複合積層体6中の有機成分を分解除去した後、800〜1000℃で同時焼成する。このとき、配線パターン3およびビアホール導体2を、Cuを主成分とした場合には窒素雰囲気中で焼成する必要があり、Au、Ag、Pd、Ptを主成分とした場合には、焼成雰囲気は大気中でおこなうことができる。
【0034】
また、焼成後の冷却速度が早すぎると、多層セラミック基板7と導体パターン3、拘束シート5の熱膨張差によるクラックが発生するために、冷却速度は400℃/hr以下であることが望ましい。
【0035】
また、焼成時には反りを防止するために複合積層体6上面に重しを載せる等して、荷重をかけてもよい。荷重は25Pa〜1MPa、特に50〜500Paが適当である。
【0036】
ここで、焼成は量産性を考慮して連続焼成炉で行うのが望ましいが、連続焼成炉で焼成を行うと可動ベルトの進行方向に対して、焼成されるグリーンシート積層体4の先端側から後端側にかけて収縮率が徐々に大きくなる問題が生じる。
【0037】
しかし、本発明によれば、拘束シート5を用いることにより、拘束力を調節することができ、連続焼成炉で焼成を行った場合でも、面内の焼成収縮率のばらつきを±0.05%以下に抑える事が可能になる。
【0038】
図2は、本発明の厚み変化率を有する拘束シート5の斜視図である。
【0039】
ここで、本発明の厚み勾配を有する拘束シート5を得る工程では、前記セラミック組成物の焼成温度では焼結しない無機組成物よりなり、かつ連続焼成炉の可動ベルトの進行方向に対して厚み勾配を有する拘束シート5を、セラミックグリーンシート1を作製する工程と同様、スラリーを調製した後、ドクターブレード法等で作製する。即ち、本発明の製造方法は、拘束シート5の厚みが、焼成時の可動ベルトの進行方向である一方向に対して後端側から先端側にかけて徐々に小さくなっていることが重要である。
【0040】
このように徐々に小さくすると厚み差によって拘束シート5の剛性を変化させることができ、これによりグリーンシート積層体4に対する焼成時の拘束力を変化させることができる。
【0041】
また、この拘束シート5は、拘束力を高めかつ焼成後の除去をしやすくするという理由から、その最薄部の厚みが、この拘束シート5を適用するグリーンシート積層体4の厚みの10〜40%である事が望ましく、特に、20〜30%がより望ましい。
【0042】
さらに、本発明の拘束シート5は、この拘束シート5の最厚部の厚みをt0、最薄部の厚みをt1とし、前記ガラスセラミック積層体の進行方向長さをLとしたときに、前記拘束シートの厚み変化率((t0−t1)/L)×100(%)が、0.01〜0.35%である事が望ましいが、特には、0.05〜0.3%、さらには、0.1〜0.25%であることがより望ましい。この場合、連続炉で発生する収縮率の変化率を考慮して最適値を選択するのが望ましい。
【0043】
通常、グリーンシート積層体4を連続炉で焼成を行う場合、可動ベルトの進行方向に対して温度分布があるために収縮開始のタイミングがずれ、収縮率が徐々に大きくなる問題が生じるが、本発明の拘束シート5を用いる事により、グリーンシート積層体4の焼成時の可動ベルトの進行方向に対する拘束力を調節する事ができ、連続炉を用いた場合でも面内の焼成収縮ばらつきを±0.1%以下、特に、0.08%、さらには0.06%以下、0.05%に抑える事ができる。
【0044】
尚、前記拘束シートは、Al2O3、SiO2、MgO、ZrO2、TiO2、MgAl2O4、ZnAl2O4、Mg2SiO4の少なくとも1種を主体とし、平均粒径0.5〜5μmの原料粉末が80〜99.5質量%、特に90〜97質量%、450〜950℃、特に650〜900℃に軟化点を有するガラス粉末1〜15質量%、特に3〜10質量%からなり、セラミックグリーンシート1として粉末充填率が53〜60%である事が望ましい。
【0045】
また、拘束シート5に含まれるガラス粉末としては、軟化点がグリーンシート積層体4の焼成温度以下で、かつ拘束シート5の有機成分の分解揮散温度よりも高いことが望ましい。
【0046】
具体的には、拘束シート5のガラス粉末の軟化点は450〜950℃、特に650〜900℃であることが好ましい。ガラス粉末の軟化点が450℃よりも低い場合にはグリーンシート積層体4からの有機成分の除去時に軟化したガラス粉末が溶融して有機成分の除去経路を塞ぐことになり、有機成分を完全に除去できなくなる恐れがある。
【0047】
一方、ガラス粉末の軟化点が950℃を越える場合には、通常のグリーンシート積層体4の焼成条件ではセラミックグリーンシート1への結合剤として作用しなくなる。該ガラスは、前述したセラミックグリーンシート1に含まれるガラス成分と異なるものであっても良いが、グリーンシート積層体4中のガラス成分の拡散を防止するうえでは同一のガラス粉末を用いることが望ましい。
【0048】
以上の条件を満たす原料を調合し、スラリーを調製した後、ドクターブレード法によってシート状に成形するが、この際に、ブレードに対し、ベルトの進行方向に対して垂直方向に勾配を設ける事により、厚み勾配を有する拘束シート5を得る事ができる。
【0049】
(f)前記複合積層体6から前記拘束シート5を除去する工程では、超音波洗浄、研磨、ウォータージェット、ケミカルブラスト、サンドブラスト、ウェットブラスト等の方法を用いて多層ガラスセラミック基板7から拘束シート5を除去する。
【0050】
これによって得られる多層ガラスセラミック基板7は、焼成時の収縮が拘束シート5によって厚さ方向だけに抑えられているので、そのグリーンシート積層体4の面内収縮を0.5%以下に抑えることが可能となり、しかも、このグリーンシート積層体4は拘束シート5によって全面にわたって均一にかつ確実に結合されているので、拘束シート5の一部剥離等による反りや変形を防止することができ、かつ拘束力を調節することが可能になる。
【0051】
それによって連続焼成炉で焼成を行う際に発生する、可動ベルトの進行方向に対して先端側から後端側にかけて焼成収縮率が徐々に大きくなるという現象を防止することができ、面内での焼成収縮率のばらつきを±0.05%以下に抑えることができる。これにより、高い寸法精度を有する多層セラミック基板を提供することができる。
【0052】
【実施例】
本発明の多層セラミック配線基板について、実施例に基づき評価する。
【0053】
先ず、SiO2:50質量%、MgO:18.5質量%、CaO:26質量%、Al2O3:5.5質量%の組成を有するガラス粉末を60質量%と、セラミックフィラー粉末としてAl2O3を40質量%秤量し、ガラス粉末を含むセラミック組成物を作製した。
【0054】
それらに、有機バインダとしてアクリル樹脂、可塑剤としてDBP(ジブチルフタレート)、溶媒としてトルエンとイソプロピルアルコ−ルを加えて調製したスラリーを用いて、ドクターブレード法により厚さ200μmのセラミックグリーンシートを作製した。
【0055】
次に、Cu粉末100質量%に対し、ガラス粉末16質量%を秤量し、それに有機バインダとしてアクリル樹脂を、溶媒としてDBPを添加、混練して、ビアホール導体用ペースト試料を作製した。
【0056】
尚、前記ビアホール用ペースト試料中の有機バインダ量は、Cu粉末に対して12質量%であり、固形成分、有機バインダに対して36質量%の割合で溶剤を加えた。このCuペーストを、セラミックグリーンシートの所定個所に形成されたビアホールに充填した。
【0057】
さらに、Cu粉末100質量%に対し、アルミナ粉末0.2質量%、ガラス粉末1質量%を秤量し、それに有機バインダとしてアクリル樹脂を、溶媒としてDBPを添加、混練して、パターン用Cuペースト試料を作製した。尚、有機バインダ量は、主成分に対して15質量%であり、固形成分、有機バインダに対して13質量%の割合で溶剤を加えた。得られたCuペーストを先のビアインクを充填したセラミックグリーンシートに、スクリーン印刷法により導体パターンを形成した。このときの導体パターンの印刷厚みは10〜30μmとした。
【0058】
その後、この導体パターンを形成したセラミックグリーンシートを5枚積層し、45℃、4MPaの条件で加圧積層してグリーンシート積層体を作製した。
【0059】
次に拘束シートとして、平均粒径が3μmのAl2O3に、前記ガラスセラミックグリーンシート中のガラス粉末と同じガラス粉末を用いて、表1に示すセラミック組成物からなる拘束シートを作製した。
【0060】
この際に、拘束シートの最薄部の厚みおよび厚み変化率は表2に示す値となるように調整した。なお拘束シートを作製する時に用いる有機バインダ、可塑剤、溶媒等はセラミックグリーンシートと同様とした。
【0061】
その後、グリーンシート積層体の両面に前記拘束シートを45℃、5MPaで加圧積層し、グリーンシート積層体を得た。
【0062】
続いて、連続焼成炉において前記グリーンシート積層体の焼成を行った。このグリーンシート積層体をAl2O3の台板上に載置して有機バインダ等の有機成分を分解除去するために、窒素雰囲気中、750℃で焼成し、次に窒素雰囲気中、900℃で1時間焼成を行った。その後、拘束シートをブラスト処理で除去し、多層セラミック基板を作製した。
【0063】
上記試料を表2中の各条件で10個ずつ作製し、3次元測定機を用いて収縮率ばらつきを測定した。収縮率のばらつきは、図3に示すように、多層セラミック基板の表面の焼成前後の導体パターンの寸法変化率から求めた。即ち、連続式焼成炉の可動ベルトの進行方向に対して垂直方向の測定箇所x1〜x3の3箇所について、焼成前後における収縮率のばらつき(6σ(σ:標準偏差))から算出した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
表2より明らかなように、本発明に従い、厚み変化率を設けた拘束シートを積層して焼成した試料No.2〜16では、除去後の残渣が無く、焼成収縮公差±0.1%以下の高寸法精度な配線基板を製造する事ができた。
【0067】
さらに、拘束シートの最薄部の厚みをグリーンシート積層体の厚みに対して10〜40%とした試料No.2〜12、14、15では、焼成収縮公差を±0.08%以下にできた。
【0068】
特に、拘束シートの最薄部の厚みをグリーンシート積層体の厚みに対して25%とし、かつ厚み変化率を0.05〜0.3%とした試料No.3〜8、10〜12では、ガラスセラミック基板を収縮公差を0.06%以下にできた。
【0069】
さらには、拘束シートの厚み変化率を0.1〜0.25%とした試料No.4〜7、10〜12では、多層セラミック基板の収縮公差を±0.05%以下にさらに小さくできた。
【0070】
一方、厚み勾配を設けなかった拘束シートを用いた試料No.1では、多層セラミック基板の収縮公差が±0.1%と大きかった。
【0071】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明によれば、拘束シートの厚みを、可動ベルトの進行方向に対して後端側から先端側にかけて徐々に小さくすることにより、連続焼成炉で焼成を行う際においても、効果的に焼成収縮ばらつきを抑制する事ができる。
【0072】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層セラミック基板を製造するための工程図である。
【図2】本発明の厚み変化率を有する拘束シートの斜視図である。
【図3】試料の測定個所を説明するための概略図である。
【図4】連続焼成炉で焼成した後の多層セラミック基板の形状を示す平面図である。
【符号の説明】
1 グリーンシート
2 ビアホール導体
3 配線パターン
4 グリーンシート積層体
5 拘束シート
6 複合積層体
7 多層セラミック基板
t0 最厚部
t1 最薄部
L グリーンシート積層体の進行方向の長さ
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層セラミック基板の製造方法に関し、特に、多層配線基板及び半導体素子収納用パッケージなどに適した多層セラミック基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、高集積化が進むICやLSI等の半導体素子を搭載する半導体素子収納用パッケージや、各種電子部品が搭載される混成集積回路装置等に適用される配線基板においては、高密度化、低抵抗化、小型軽量化が要求されており、アルミナ系セラミック材料に比較して低い誘電率が得られ、配線回路層としてCu等の低抵抗金属を用いることができることから、焼成温度が1000℃以下のいわゆる多層セラミック配線基板が一層注目されている。
【0003】
また、多層セラミック基板の高密度化が進むのに伴い、寸法の高精度化に対する要求も強くなっている。ガラス成分を含むセラミックは、アルミナ系セラミック材料等と比較して低い温度で焼成が行える事から、高精度化に対して次のような焼成方法が提案されている。
【0004】
そして、下記の特許文献1によれば、ガラス成分を含むセラミック基板を焼成する際に、多層セラミック基板の焼成温度では焼結しない無機組成物よりなる拘束シートをグリーンシート積層体の両面に積層し焼成処理を行う事により、基板の面方向にはほとんど収縮させずに焼結させる手法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特許第2554415号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図4の矢印に示す方向に移動する可動ベルト101上にトレイ102を介して載置し、焼成する前記手法を連続焼成炉に適用すると、可動ベルト101上に載置したグリーンシート積層体の焼成収縮率が、この可動ベルト101の炉内への入口側から出口側に向かって徐々に小さくなるように収縮してしまい、結果として、可動ベルト101上の多層セラミック基板103の先端側が後端側より大きくなり、多層セラミック基板103内の収縮率のばらつきが大きくなるという問題があった。
【0007】
従って、本発明は、多層セラミック基板の焼成温度では焼結しない無機組成物よりなる拘束シートをグリーンシート積層体の少なくとも一方の表面に積層し焼成処理を行う多層セラミック基板の製造方法において、連続炉で焼成を行う際でも基板内の収縮率のばらつきを抑制し、高い寸法精度を有する多層セラミック基板を得るための多層セラミック基板の製造方法を提供する事を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記のような課題について鋭意検討した結果、前記拘束シートの厚みを可動ベルトの進行方向に対して徐々に小さくする事により、徐々に拘束力を変化させる事ができ、連続炉で焼成を行う際に発生する基板内の収縮率のばらつきを抑制するという目的が達成できる事を見出した。
【0009】
即ち、本発明の多層セラミック基板の製造方法は、セラミックグリーンシートに導体パターンおよびビアホール導体を形成し、同様に作製した所望枚数のセラミックグリーンシートを積層したグリーンシート積層体の少なくとも一方主面に、前記セラミックグリーンシートの焼成温度では焼結しない無機組成物よりなる拘束シートを積層した後、前記グリーンシート積層体を可動ベルトに載置し、所望温度に加熱された領域を通過させて焼成処理を行い、その後、前記拘束シートを取り除くことを特徴とする多層セラミック基板の製造方法において、前記拘束シートの厚みを、前記可動ベルトの進行方向に対し、後端側から先端側にかけて徐々に小さくした事を特徴とするものである。
【0010】
また、上記多層セラミック基板の製造方法では、前記拘束シートの最薄部の厚みが、前記グリーンシート積層体の厚みの10〜40%である事が望ましい。
【0011】
また、上記多層セラミック基板の製造方法では、前記拘束シートの最厚部の厚みをt0、最薄部の厚みをt1とし、前記セラミック積層体の進行方向長さをLとしたときに、前記拘束シートの厚み変化率((t0−t1)/L)×100(%)が、0.05〜0.3%である事が望ましい。
【0012】
また、上記多層セラミック基板の製造方法では、前記拘束シート中にガラスを1〜15体積%含有することが望ましい。
【0013】
また、上記多層セラミック基板の製造方法では、前記拘束シートが、Al2O3、SiO2、MgO、ZrO2、TiO2、MgAl2O3、ZnAl2O4、Mg2SiO4の少なくとも1種を含有する事が望ましい。
【0014】
さらに、上記多層セラミック基板の製造方法では、前記電極パターンが、Au、Ag、Cu、Pd、Ptの少なくとも1種を含有する金属焼結体あるいは金属箔からなる事が望ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図面に基づいて説明する。図1は本発明の多層セラミック基板を製造するための工程図である。
【0016】
図1によれば、上記のような多層セラミック基板は、(a)ガラス粉末を含むセラミック組成物からなるセラミックグリーンシート1を得る工程と、(b)セラミックグリーンシート1に穴あけ加工を施し、ビアホールを形成し、ビアホールに導体ペーストを充填してビアホール導体2を形成する工程と、(c)セラミックグリーンシート1表面に、導体パターン3を形成する工程と、(a)〜(c)工程を経て作製したセラミックグリーンシート1を積層し、グリーンシート積層体4を作製する工程(d)と、(e)厚みに勾配を有する拘束シート5を前記グリーンシート積層体4に積層する工程と、(f)前記(a)〜(e)工程を経て作製した複合積層体6を焼成する工程と、焼成後の前記複合積層体6から前記拘束シート5を除去する工程を経て製造される。
【0017】
以下に各工程毎に詳細に説明する。
【0018】
(a)セラミックグリーンシート1を得る工程では、原料粉末としてガラス粉末とセラミックフィラー粉末を所定量秤量し、さらに有機バインダ、可塑剤、有機溶剤等を加えてスラリーを調製した後、ドクターブレード法、圧延法、プレス法等の周知の成形法によりシート状に成形して厚さ50〜500μmのセラミックグリーンシート1を作製する。
【0019】
用いるガラス粉末の成分としては、少なくともSiO2を含み、Al2O3、B2O3、ZnO、PbO、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属酸化物のうちの少なくとも1種以上を含有したものであって、例えば、SiO2−B2O3系、SiO2−B2O3−Al2O3系、SiO2−B2O3−MO系(但し、MはCa、Sr、Mg、BaまたはZnを示す)等のホウケイ酸ガラス、アルカリ珪酸ガラス、Ba系ガラス、Pb系ガラス、Bi系ガラス等が挙げられる。
【0020】
これらのガラス粉末の成分は焼成処理することによっても非晶質ガラスであるもの、また焼成処理によって、リチウムシリケート、クォーツ、クリストバライト、コージェライト、ムライト、アノーサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ウイレマイト、ドロマイト、ペタライト、ディオプサイドやその置換誘導体の結晶を少なくとも1種類を析出するものが用いられる。
【0021】
また、セラミックフィラー粉末としては、クォーツ、クリストバライト等のSiO2や、Al2O3、ZrO2、コージェライト、ムライト、フォルステライト、エンスタタイト、スピネル、マグネシア等が好適に用いられる。
【0022】
(b)セラミックグリーンシート1に穴あけ加工を施し、ビアホールを形成し、ビアホールに導体ペーストを充填する工程では、(a)で得たセラミックグリーンシート1に、レーザーやマイクロドリル、パンチングなどにより、直径30〜300μmの貫通孔を形成し、その内部にビア用導体ペーストを充填し、ビアホール導体2を形成する。
【0023】
ビア用導体ペーストは、Au、Cu、Ag、Pd、Ptのうち少なくとも1種を主成分とする金属粉末に、アクリル樹脂などからなる有機バインダとテルピネオール、ジブチルフタレートなどの有機溶剤とを均質混合して形成される。
【0024】
有機バインダは、金属成分100質量%に対して、0.5〜15.0質量%、有機溶剤は、固形成分及び有機バインダ100質量%に対して、5〜100質量%の割合で混合されることが望ましい。なお、このビア用導体ペースト中には若干のセラミックフィラー粉末やガラス粉末等を添加してもよい。
【0025】
(c)セラミックグリーンシート1の表面に導体パターン3を形成する工程では、ビアホール導体2を形成したセラミックグリーンシート1の表面に、パターン用導体ペーストをスクリーン印刷法で印刷するかもしくは金属箔を転写法によって導体パターン3を形成する。
【0026】
パターン用導体ペーストは、上記ビア用導体ペーストと同様の手法により作製され、必要に応じて成分や配合比率を変更することにより作製する。
【0027】
一方、金属箔を用いた転写法による導体パターン3の形成方法としては、まず高分子材料等からなる転写フィルム上に金属箔を接着した後、この金属箔の表面に回路パターンとはネガ対称のレジストを塗布した後、エッチング処理およびレジスト除去を行って回路パターンを形成する。
【0028】
そして、回路パターンを形成した転写フィルムを前記ビアホール導体2が形成されたセラミックグリーンシート1の表面に位置合わせして積層圧着した後、転写フィルムを剥がす事により、ビアホール導体2と接続した導体パターン3を具備するセラミックグリーンシート1を形成する。
【0029】
なお、上記印刷法と転写法による導体パターン3はいずれか一方のみでも、両者が混在していても差し支えない。
【0030】
(d)グリーンシート積層体4を作製する工程では、同様にして得られた導体パターン3を形成した複数のセラミックグリーンシート1を積層圧着してグリーンシート積層体4を形成する。
【0031】
セラミックグリーンシート1の積層には、積み重ねられたセラミックグリーンシート1に熱と圧力を加えて熱圧着する方法、有機バインダ、可塑剤、溶剤等からなる接着剤をシート間に塗布して熱圧着する方法等が採用可能である。
【0032】
(e)次に、本発明では、セラミックグリーンシート1を積層したグリーンシート積層体4の表面に、このグリーンシート積層体4の焼成での収縮を抑制するための拘束シート5を積層して複合積層体6を作製し、次いで、この複合積層体6を可動ベルトに載置し、所望温度に加熱された領域を通過させる事により焼成処理を行う。
【0033】
次に、作製した複合積層体6を前記金属導体の融点以下の温度で焼成する工程では、この複合積層体6を100〜800℃、特に400〜750℃で加熱処理して複合積層体6中の有機成分を分解除去した後、800〜1000℃で同時焼成する。このとき、配線パターン3およびビアホール導体2を、Cuを主成分とした場合には窒素雰囲気中で焼成する必要があり、Au、Ag、Pd、Ptを主成分とした場合には、焼成雰囲気は大気中でおこなうことができる。
【0034】
また、焼成後の冷却速度が早すぎると、多層セラミック基板7と導体パターン3、拘束シート5の熱膨張差によるクラックが発生するために、冷却速度は400℃/hr以下であることが望ましい。
【0035】
また、焼成時には反りを防止するために複合積層体6上面に重しを載せる等して、荷重をかけてもよい。荷重は25Pa〜1MPa、特に50〜500Paが適当である。
【0036】
ここで、焼成は量産性を考慮して連続焼成炉で行うのが望ましいが、連続焼成炉で焼成を行うと可動ベルトの進行方向に対して、焼成されるグリーンシート積層体4の先端側から後端側にかけて収縮率が徐々に大きくなる問題が生じる。
【0037】
しかし、本発明によれば、拘束シート5を用いることにより、拘束力を調節することができ、連続焼成炉で焼成を行った場合でも、面内の焼成収縮率のばらつきを±0.05%以下に抑える事が可能になる。
【0038】
図2は、本発明の厚み変化率を有する拘束シート5の斜視図である。
【0039】
ここで、本発明の厚み勾配を有する拘束シート5を得る工程では、前記セラミック組成物の焼成温度では焼結しない無機組成物よりなり、かつ連続焼成炉の可動ベルトの進行方向に対して厚み勾配を有する拘束シート5を、セラミックグリーンシート1を作製する工程と同様、スラリーを調製した後、ドクターブレード法等で作製する。即ち、本発明の製造方法は、拘束シート5の厚みが、焼成時の可動ベルトの進行方向である一方向に対して後端側から先端側にかけて徐々に小さくなっていることが重要である。
【0040】
このように徐々に小さくすると厚み差によって拘束シート5の剛性を変化させることができ、これによりグリーンシート積層体4に対する焼成時の拘束力を変化させることができる。
【0041】
また、この拘束シート5は、拘束力を高めかつ焼成後の除去をしやすくするという理由から、その最薄部の厚みが、この拘束シート5を適用するグリーンシート積層体4の厚みの10〜40%である事が望ましく、特に、20〜30%がより望ましい。
【0042】
さらに、本発明の拘束シート5は、この拘束シート5の最厚部の厚みをt0、最薄部の厚みをt1とし、前記ガラスセラミック積層体の進行方向長さをLとしたときに、前記拘束シートの厚み変化率((t0−t1)/L)×100(%)が、0.01〜0.35%である事が望ましいが、特には、0.05〜0.3%、さらには、0.1〜0.25%であることがより望ましい。この場合、連続炉で発生する収縮率の変化率を考慮して最適値を選択するのが望ましい。
【0043】
通常、グリーンシート積層体4を連続炉で焼成を行う場合、可動ベルトの進行方向に対して温度分布があるために収縮開始のタイミングがずれ、収縮率が徐々に大きくなる問題が生じるが、本発明の拘束シート5を用いる事により、グリーンシート積層体4の焼成時の可動ベルトの進行方向に対する拘束力を調節する事ができ、連続炉を用いた場合でも面内の焼成収縮ばらつきを±0.1%以下、特に、0.08%、さらには0.06%以下、0.05%に抑える事ができる。
【0044】
尚、前記拘束シートは、Al2O3、SiO2、MgO、ZrO2、TiO2、MgAl2O4、ZnAl2O4、Mg2SiO4の少なくとも1種を主体とし、平均粒径0.5〜5μmの原料粉末が80〜99.5質量%、特に90〜97質量%、450〜950℃、特に650〜900℃に軟化点を有するガラス粉末1〜15質量%、特に3〜10質量%からなり、セラミックグリーンシート1として粉末充填率が53〜60%である事が望ましい。
【0045】
また、拘束シート5に含まれるガラス粉末としては、軟化点がグリーンシート積層体4の焼成温度以下で、かつ拘束シート5の有機成分の分解揮散温度よりも高いことが望ましい。
【0046】
具体的には、拘束シート5のガラス粉末の軟化点は450〜950℃、特に650〜900℃であることが好ましい。ガラス粉末の軟化点が450℃よりも低い場合にはグリーンシート積層体4からの有機成分の除去時に軟化したガラス粉末が溶融して有機成分の除去経路を塞ぐことになり、有機成分を完全に除去できなくなる恐れがある。
【0047】
一方、ガラス粉末の軟化点が950℃を越える場合には、通常のグリーンシート積層体4の焼成条件ではセラミックグリーンシート1への結合剤として作用しなくなる。該ガラスは、前述したセラミックグリーンシート1に含まれるガラス成分と異なるものであっても良いが、グリーンシート積層体4中のガラス成分の拡散を防止するうえでは同一のガラス粉末を用いることが望ましい。
【0048】
以上の条件を満たす原料を調合し、スラリーを調製した後、ドクターブレード法によってシート状に成形するが、この際に、ブレードに対し、ベルトの進行方向に対して垂直方向に勾配を設ける事により、厚み勾配を有する拘束シート5を得る事ができる。
【0049】
(f)前記複合積層体6から前記拘束シート5を除去する工程では、超音波洗浄、研磨、ウォータージェット、ケミカルブラスト、サンドブラスト、ウェットブラスト等の方法を用いて多層ガラスセラミック基板7から拘束シート5を除去する。
【0050】
これによって得られる多層ガラスセラミック基板7は、焼成時の収縮が拘束シート5によって厚さ方向だけに抑えられているので、そのグリーンシート積層体4の面内収縮を0.5%以下に抑えることが可能となり、しかも、このグリーンシート積層体4は拘束シート5によって全面にわたって均一にかつ確実に結合されているので、拘束シート5の一部剥離等による反りや変形を防止することができ、かつ拘束力を調節することが可能になる。
【0051】
それによって連続焼成炉で焼成を行う際に発生する、可動ベルトの進行方向に対して先端側から後端側にかけて焼成収縮率が徐々に大きくなるという現象を防止することができ、面内での焼成収縮率のばらつきを±0.05%以下に抑えることができる。これにより、高い寸法精度を有する多層セラミック基板を提供することができる。
【0052】
【実施例】
本発明の多層セラミック配線基板について、実施例に基づき評価する。
【0053】
先ず、SiO2:50質量%、MgO:18.5質量%、CaO:26質量%、Al2O3:5.5質量%の組成を有するガラス粉末を60質量%と、セラミックフィラー粉末としてAl2O3を40質量%秤量し、ガラス粉末を含むセラミック組成物を作製した。
【0054】
それらに、有機バインダとしてアクリル樹脂、可塑剤としてDBP(ジブチルフタレート)、溶媒としてトルエンとイソプロピルアルコ−ルを加えて調製したスラリーを用いて、ドクターブレード法により厚さ200μmのセラミックグリーンシートを作製した。
【0055】
次に、Cu粉末100質量%に対し、ガラス粉末16質量%を秤量し、それに有機バインダとしてアクリル樹脂を、溶媒としてDBPを添加、混練して、ビアホール導体用ペースト試料を作製した。
【0056】
尚、前記ビアホール用ペースト試料中の有機バインダ量は、Cu粉末に対して12質量%であり、固形成分、有機バインダに対して36質量%の割合で溶剤を加えた。このCuペーストを、セラミックグリーンシートの所定個所に形成されたビアホールに充填した。
【0057】
さらに、Cu粉末100質量%に対し、アルミナ粉末0.2質量%、ガラス粉末1質量%を秤量し、それに有機バインダとしてアクリル樹脂を、溶媒としてDBPを添加、混練して、パターン用Cuペースト試料を作製した。尚、有機バインダ量は、主成分に対して15質量%であり、固形成分、有機バインダに対して13質量%の割合で溶剤を加えた。得られたCuペーストを先のビアインクを充填したセラミックグリーンシートに、スクリーン印刷法により導体パターンを形成した。このときの導体パターンの印刷厚みは10〜30μmとした。
【0058】
その後、この導体パターンを形成したセラミックグリーンシートを5枚積層し、45℃、4MPaの条件で加圧積層してグリーンシート積層体を作製した。
【0059】
次に拘束シートとして、平均粒径が3μmのAl2O3に、前記ガラスセラミックグリーンシート中のガラス粉末と同じガラス粉末を用いて、表1に示すセラミック組成物からなる拘束シートを作製した。
【0060】
この際に、拘束シートの最薄部の厚みおよび厚み変化率は表2に示す値となるように調整した。なお拘束シートを作製する時に用いる有機バインダ、可塑剤、溶媒等はセラミックグリーンシートと同様とした。
【0061】
その後、グリーンシート積層体の両面に前記拘束シートを45℃、5MPaで加圧積層し、グリーンシート積層体を得た。
【0062】
続いて、連続焼成炉において前記グリーンシート積層体の焼成を行った。このグリーンシート積層体をAl2O3の台板上に載置して有機バインダ等の有機成分を分解除去するために、窒素雰囲気中、750℃で焼成し、次に窒素雰囲気中、900℃で1時間焼成を行った。その後、拘束シートをブラスト処理で除去し、多層セラミック基板を作製した。
【0063】
上記試料を表2中の各条件で10個ずつ作製し、3次元測定機を用いて収縮率ばらつきを測定した。収縮率のばらつきは、図3に示すように、多層セラミック基板の表面の焼成前後の導体パターンの寸法変化率から求めた。即ち、連続式焼成炉の可動ベルトの進行方向に対して垂直方向の測定箇所x1〜x3の3箇所について、焼成前後における収縮率のばらつき(6σ(σ:標準偏差))から算出した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
表2より明らかなように、本発明に従い、厚み変化率を設けた拘束シートを積層して焼成した試料No.2〜16では、除去後の残渣が無く、焼成収縮公差±0.1%以下の高寸法精度な配線基板を製造する事ができた。
【0067】
さらに、拘束シートの最薄部の厚みをグリーンシート積層体の厚みに対して10〜40%とした試料No.2〜12、14、15では、焼成収縮公差を±0.08%以下にできた。
【0068】
特に、拘束シートの最薄部の厚みをグリーンシート積層体の厚みに対して25%とし、かつ厚み変化率を0.05〜0.3%とした試料No.3〜8、10〜12では、ガラスセラミック基板を収縮公差を0.06%以下にできた。
【0069】
さらには、拘束シートの厚み変化率を0.1〜0.25%とした試料No.4〜7、10〜12では、多層セラミック基板の収縮公差を±0.05%以下にさらに小さくできた。
【0070】
一方、厚み勾配を設けなかった拘束シートを用いた試料No.1では、多層セラミック基板の収縮公差が±0.1%と大きかった。
【0071】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明によれば、拘束シートの厚みを、可動ベルトの進行方向に対して後端側から先端側にかけて徐々に小さくすることにより、連続焼成炉で焼成を行う際においても、効果的に焼成収縮ばらつきを抑制する事ができる。
【0072】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層セラミック基板を製造するための工程図である。
【図2】本発明の厚み変化率を有する拘束シートの斜視図である。
【図3】試料の測定個所を説明するための概略図である。
【図4】連続焼成炉で焼成した後の多層セラミック基板の形状を示す平面図である。
【符号の説明】
1 グリーンシート
2 ビアホール導体
3 配線パターン
4 グリーンシート積層体
5 拘束シート
6 複合積層体
7 多層セラミック基板
t0 最厚部
t1 最薄部
L グリーンシート積層体の進行方向の長さ
Claims (6)
- セラミックグリーンシートに導体パターンおよびビアホール導体を形成し、同様に作製した所望枚数のセラミックグリーンシートを積層したグリーンシート積層体の少なくとも一方主面に、前記セラミックグリーンシートの焼成温度では焼結しない無機組成物よりなる拘束シートを積層した後、前記グリーンシート積層体を可動ベルトに載置し、所望温度に加熱された領域を通過させて焼成処理を行い、その後、前記拘束シートを取り除くことを特徴とする多層セラミック基板の製造方法において、前記拘束シートの厚みを、前記可動ベルトの進行方向に対し、後端側から先端側にかけて徐々に小さくした事を特徴とする多層セラミック基板の製造方法。
- 前記拘束シートの最薄部の厚みが、前記グリーンシート積層体の厚みの10〜40%である事を特徴とする請求項1に記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 前記拘束シートの最厚部の厚みをt0、最薄部の厚みをt1とし、前記ガラスセラミック積層体の進行方向長さをLとしたときに、前記拘束シートの厚み変化率((t0−t1)/L)×100(%)が、0.05〜0.3%である事を特徴とする請求項1または2に記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 前記拘束シート中にガラスを1〜15体積%含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 前記拘束シートが、Al2O3、SiO2、MgO、ZrO2、TiO2、MgAl2O3、ZnAl2O4、Mg2SiO4の少なくとも1種を含有とする事を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 前記導体パターンが、Au、Ag、Cu、Pd、Ptの少なくとも1種を含有する金属焼結体あるいは金属箔からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか記載の多層セラミック基板の製造方法。
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