JP2004296361A - カラー陰極線管用ストリップ型マスク構体 - Google Patents
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Abstract
【課題】ピッチムラの発生しない、画面品位の優れたカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体を提供する。
【解決手段】カラー陰極線管用ストリップ型マスク構体における、一部もしくは全スリット9bの上下端とフレームとの溶接線9eとの間に、対応するスリット9bの延長線上に対応するスリット9bからの距離が2mm以下であるように追加孔9dを設け、その追加孔9dの大きさ、位置、および対応するスリット9bに対する個数を変更することにより、張力分布の局部的な変化や各ストリップ9aの長さの差によって発生する各スリット幅の差(ピッチムラ)の発生を抑制する。
【選択図】 図2
【解決手段】カラー陰極線管用ストリップ型マスク構体における、一部もしくは全スリット9bの上下端とフレームとの溶接線9eとの間に、対応するスリット9bの延長線上に対応するスリット9bからの距離が2mm以下であるように追加孔9dを設け、その追加孔9dの大きさ、位置、および対応するスリット9bに対する個数を変更することにより、張力分布の局部的な変化や各ストリップ9aの長さの差によって発生する各スリット幅の差(ピッチムラ)の発生を抑制する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラー陰極線管の内部に設置される色選別用マスク構体の構造に関し、特に、多数の非常に細長い細状素体(ストリップ)を所定間隔で整列させた構造により該ストリップ間に非常に細長い細条スリット孔を電子ビーム通過孔として形成し、かつ、各ストリップを画面左右方向に互いに連結するブリッジが無いかもしくは非常に少ないタイプのマスクであるストリップ型マスク構体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カラー陰極線管の内部に設置されるストリップ型マスク構体としては、張力分布の不均一によって発生するマスクとフレームの溶接点(線)付近のシワを解決するために、スリット上下端とマスク−フレーム溶接点(線)の間に複数列の凸部を設けるようにしておき、マスクをマスクフレ−ムに保持した後、展張によりマスクにシワが発生した場合には、そのシワ部に相当する場所の凸部をレーザー加工等で開口することにより応力の均一化を計り、部分的に集中する張力によって発生するマスクシワ防止するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、各ストリップに対して張力が異なる様に分布を持たせる場合で、特にスリット領域のX方向(水平)端のストリップに加わる張力(応力)が異なる場合の、展張後にX方向(水平)端のスリットの幅が不連続に変化することを防止するために、マスクのスリット領域のX方向(水平)端スリットの外側に、そのスリット幅よりも小さな幅を有し、且つ、電子ビームを遮光し得るエキストラスリットを設けることにより、スリット領域のX方向(水平)端スリット幅を均一に確保し得るストリップ型マスク構体が知られている。(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
【0004】
また、マスク構体を熱処理した場合に発生する高温クリープ現象によりストリップが捩れることが原因で起きるマスクのスジムラを防止するために、スリット領域の端部と溶接点(線)との間のマスク外周部に追加孔を設け、この外周部の単位長さ当りのX(水平)方向の断面積を、ストリップ部(領域)におけるX(水平)方向の単位長さ当りの断面積より小さくすることにより、スリット領域より外周部の方がマスクの剛性が弱くなるように設定して、スジムラの発生を防止するストリップ型マスク構体が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−347129号公報(図1)
【特許文献2】
特許第3158297号公報(図1)
【特許文献3】
特許第3194290号公報(図1)
【特許文献4】
特開平2001−167711号公報(図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ストリップ型マスクの場合、ある外部振動により、全ストリップが、共振し、画面全体の揺れが発生するのを防止する為に、各ストリップの固有振動数を互いに変える必要がある。ストリップの固有振動数は、各ストリップに加えられる張力と関係する為、例えばマスクに加える張力分布を中央部と端部で異ならせることにより、各ストリップの固有振動数も同様な分布にし、画面全体が外部振動により同時に共振することを防いでいる。
【0007】
ところが、各ストリップに対して張力が異なる様に張力分布を持たせた場合、各ストリップに加わる引張(応力)が異なることに加え、張力を加える(以後、張力を加えることを展張と呼ぶ。)工程のバラツキ等によって張力分布が局部的に変化する場合があり、その場合には各ストリップ間にX方向収縮力(ポアソン収縮)の差が発生する。
【0008】
そのX方向収縮力に、更に、各ストリップの長さの僅かな差により発生するストリップを曲げる回転モーメントが加わると、各スリットの幅が不連続に変化する場合がある。この各スリットの幅の変化は、画面(蛍光体スクリーン)にムラ(以後ピッチムラと呼ぶ。)となってあらわれ、画面品位を低下させるという問題がある。また、このピッチムラは、マスクの中央部分より、水平端(X軸端)部に発生し易くなっている。
【0009】
上記した特許文献1の方法は、張力不均一によるマスクの面と直角方向の面外変形、つまり、シワの発生を対策するものであり、また、応力を均一化する為の開口は、展張後にシワが発生した部分のみ、レーザー加工等の複雑な方法により開けられるものであり、シワが発生しないレベルの張力分布の局部的な変化や、各ストリップの長さの差によって発生する各スリット幅の差(ピッチムラ)を解決することができない。
【0010】
また、特許文献2及び特許文献3の方法は、マスクのX方向(水平)端のスリットで発生する張力を、マスクのX方向(水平)端スリットの外側に遮光し得ない幅を有するエキストラスリットを設けて分散させることで、X方向(水平)端のスリットで発生するピッチムラを抑制するものであり、X方向(水平)端のスリットのみか、その周辺のスリットのみに効力を発揮するので、中央部と端部で異なる張力分布の変化に対応できず、各スリット幅の差(ピッチムラ)を解決することはできない。
【0011】
また、特許文献4の方法は、高温クリープによるストリップの捩れ対策として、マスクの外周部における全体的な剛性を弱めることを主眼とするものであり、張力分布の局部的な変化や各ストリップの長さの差によって発生する各スリット幅の差(ピッチムラ)を、解決できる内容ではない。
【0012】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、ストリップ型マスク構体において、張力分布、工程変動等による張力分布の局部的な変化や各ストリップの長さの差によって発生するピッチムラを防止し、画面品位の優れたカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体は、平板に多数の細状素体のストリップが形成されることにより該各ストリップ間に多数の電子ビーム通過用のスリットが形成された色選別マスクと、該色選別マスクの上下端を溶接することにより架張された状態で保持するマスクフレームとからなるカラー陰極線管用のストリップ型マスク構体において、
色選別マスクは、少なくとも一部のスリットの延長線上であり、かつ、当該スリットの上端および下端と対応する上下のマスクフレーム溶接点との間に、当該スリットとは連続しないように間隔をあけて少なくとも1個の追加孔が各々設けられ、
追加孔と当該スリットの端部との間隔の範囲が2mm以内であることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、テレビジョンやコンピュータ用ディスプレイ等に用いられるカラー陰極線管の一例の断面図である。
【0015】
図1のカラー陰極線管1は、内面に蛍光体スクリーン面2が形成されたフェイスパネル3と、フェイスパネル3の後方に接続される漏斗形状のファンネル4と、ファンネル4のネック部4aの内部に設置される電子銃5と、フェイスパネル3の内部の蛍光体スクリーン面2に対向して設けられた色選別マスク6(以後、単にマスクと称する)と、マスク6を支持固定するマスクフレーム7とを備えている。
【0016】
マスク6は、電子銃5から発せられる3本の電子ビーム11がそれぞれ赤色、緑色、青色の所望蛍光体にランディングするよう選別する目的で設置される。また、偏向ヨーク8は、電子銃5から発せられる電子ビーム11を偏向させて蛍光体スクリーン面2を走査させる。なお、図1における電子ビーム11は、偏向ヨーク8により偏向される電子ビーム11の軌道の一例を示している。管軸Z0は、カラー陰極線管1における電子銃5と蛍光体スクリーン面2を結ぶ中心軸である。
【0017】
マスク6の構造の代表的な一例として、多数の非常に細長い略長方形孔(以後、スロット孔あるいはスリットと称する)からなる電子ビーム通過孔を多数有するものが知られている。そのようなマスク6は、一般的に電子ビーム通過孔を金属薄板に選択的にエッチングすることにより形成しており、その構造のマスクは、各スロット孔間に形成される多数の非常に細長い細状素体(以後、ストリップと称する)を画面左右方向に互いに連結する多数のブリッジを有している。このタイプのマスクをブリッジ型マスクと称する。
【0018】
また、他の代表例として、ブリッジの無いもしくは非常に少ないストリップが所定間隔で整列された構造を有しストリップ間の非常に細長い細条スリット孔が電子ビーム通過孔となっているタイプのマスクがある。このタイプのマスクをストリップ型マスクと称し、本実施の形態では、このストリップ型マスクの構造に関する。
【0019】
ストリップ型マスクがブリッジ型マスクに対して優れている点のひとつとして、対熱特性がある。ストリップ型マスクは、ストリップの長手方向に張力を加えマスクフレームに張架保持されて用いられ、また個々のストリップが水平方向に殆ど連結されない構造を有する。これにより、マスクの熱膨張に起因したドーミング現象によって陰極線管の画面上に発生する色ずれ不具合を発生させないようにすることができる。
【0020】
図2は、本実施の形態のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体を示す斜視図であり、マスクとそのマスクを支持固定するマスクフレームの関係を示している。また、図2(a)は、図2の各ストリップ(スリット)の上端部(あるいは下端部)を拡大して示した図である。
【0021】
図2のストリップ型マスク9では、各ストリップ9aの長手方向に張力を加えるために、各ストリップ9aの上端部および下端部がフレームに溶接固定されている。図2では、フレームに沿って溶接により固定されるストリップ9aの上端部および下端部を溶接点(線)9eとして示している。以後、この状態をストリップ型マスク構体と呼ぶ。なお、図2(a)では、各ストリップ9aの間の空間部がスリット9bを示している。
【0022】
ストリップ型マスクの場合には、図2に示したようにストリップ型マスク9の対向する上下の2辺間に張力を加えた状態であるが、上記したようにブリッジが無いか有していても非常に少ない為、各ストリップ9aの形状が非常に細長くなる。その結果、ストリップ型マスク9は、スピーカー等の振動源からの振動により、各ストリップ9aが振動する場合がある。この振動は、図1に示した各電子ビーム11の所定蛍光体へのランディング位置をずらし、画面の色ズレの原因になる。ダンパー線10は、タングステン等により形成される線であり、上記した外部からの振動を抑制する為に、各ストリップの長手方向にほぼ直交する方向で、かつ、各ストリップに接触する様に加張した状態で取りつけられる。このことにより、振動が加わった場合でも、ダンパー線とストリップとの摩擦により、各ストリップの振動が抑制されて画面の色ズレを防止することができる。
【0023】
ここで、本実施の形態の構成の特徴を従来の構成と対比させて示すために従来のストリップ型マスク構体について説明する。
図3は従来のストリップ型マスク構体の構成を示す斜視図であり、図3(a)は、図3の各ストリップ(スリット)の上端部(あるいは下端部)を拡大して示した図である。
【0024】
図3に示した従来のストリップ型マスク構体の各部は、図2に示した本実施の形態のストリップ型マスク構体の各部に対応し、従来のストリップ型マスク9z以外は図2と同じ番号が付与されている。
【0025】
ストリップ型マスクの場合、ある外部振動により、全ストリップが、共振し、画面全体の揺れが発生するのを防止する為に、各ストリップの固有振動数を互いに変える必要がある。ストリップの固有振動数は、各ストリップに加えられる張力と関係する。
【0026】
図4は、図3に示した従来のストリップ型マスク構体を示す正面図であり、図4(a)はその各ストリップ(スリット)の上端部の部分拡大図であり、図4(b)は図4(a)における各ストリップ(スリット)の幅の変化を示す図で、図4(c)は図4に示した従来のストリップ型マスク9に加えられる張力の分布を示す図である。
【0027】
図4の9cはスリット領域を示し、図4(c)において、X軸は、マスクのストリップの長手方向に直行する方向(水平方向)を示し、Y軸は、ストリップに加わる張力を示している。図4に示した従来のストリップ型マスク9zでは、例えば、マスクに加える張力分布を図4(c)に示す分布にすることにより、各ストリップの固有振動数も同様な分布にし、上記した画面全体がある外部振動により同時に共振することを防いでいる。
【0028】
ところが、前記した如く各ストリップに対し、張力が異なる様に分布を持たせた場合、各ストリップに加わる引張(応力)が異なることに加え、展張工程のバラツキ等により、張力分布が局部的に変化する場合がある。すると、各ストリップ間にX方向収縮力(ポアソン収縮)の差が発生する。このX方向収縮力に、更に、各ストリップの長さの僅かな差により発生するストリップを曲げる回転モーメントが加わることにより、各スリットの幅が、不連続に変化することがある。これは、画面(蛍光体スクリーン)にピッチムラとなってあらわれ、画面品位を低下させる原因になる。このピッチムラは、マスクの中央部分よりも、水平端(X軸端)部に発生し易い。
【0029】
図4(a)は、展張前の各ストリップ(スリット)の幅を示し、図4(b)は展張後の各ストリップのスリット)の幅を示している。図4(a)に示す様に、展張前は、当然のことながら、各スリット幅は、均一である。しかし、図4(b)に示す様に、展張後のスリット幅は、張力分布の局部的な変化やストリップ長さの僅かな差等により、例えば、H1≠H2の如く均一で無くなる場合がある。この不均一が、ピッチムラとして現れ、画面品位を低下させる。
【0030】
このピッチムラ発生のメカニズムを、図を用いて説明する。
図5は、図3、図4に示した従来のマスクにおけるピッチムラ発生のメカニズムを示す図である。
【0031】
図5(a)において、S1〜S5は、図4に示したスリット領域9c上端部の任意のスリットを示し、T1〜T4は、スリットS1〜S5にそれぞれ対応するストリップを模式的に示している。溶接線9e(A−A′線)は、前記したようにマスクとフレームが溶接される線状部分を示している。例えば、溶接線A−A′上の応力(張力)分布が、展張工程等のバラツキ等により、図5(b)に示す様に、局部的に変化した場合、スリットの極近辺B−B′線上の応力(張力)分布は、図5(c)に示す如くになる。つまり、ストリップT1、T4に対応する個所B1、B4での応力(張力)が、ストリップT2、T3に対応する個所B2、B3での応力(張力)より大きくなる。
【0032】
この結果、例えば、図5(a)における、ストリップ領域9cのC−C′線上の各ストリップに加わるX方向(水平方向)収縮力(ポアソン収縮)にX方向収縮力差△Pが生じる。図5(d)は、ストリップT1、T4に対応する個所C1、C4のX方向収縮力と、ストリップT2、T3に対応する個所C2、C3のX方向収縮力の間に生じるX方向収縮力差△Pを示す図である。このこのX方向収縮力差△Pに加えて、図5(a)に示す様に、例えば、スリットS2、S4とスリットS3の間にスリット長さの差△Lが発生した場合、ストリップT2とストリップT3に、図5(a)および図5(e)に示す如く、スリットS2、S4を広げ、スリットS3を狭める方向に、回転モーメントMが発生する。この回転モーメントMと、前述のX方向収縮力差△Pにより、結果として、図5(a)に示す如く、スリットS2、S4の幅が広がり、スリットS3の幅が狭まる現象が発生する。このスリットの幅の差が、ピッチムラとして画面に現れ、画面品位を低下させることになる。
【0033】
ここで、本実施の形態の構成に戻り、図2において、図3に示した従来の構成との相違は、図2(a)に示す様に、スリット9bに対応し、スリット上下端とマスク−フレーム7の溶接点(線)の間に、スリットの延長線上にスリット上下端からの距離が所定距離である追加孔9dが設けられている点である。この追加孔9dは、少なくとも一部のスリット、もしくは、全スリットに対して形成されている。
【0034】
図6は、図2および図3のストリップ型マスクの正面図であり、図6(a)は、図6のスリット上端付近の拡大図である。
図4(c)に示したように、追加孔9dが無い場合には不均一な張力による応力の分布が直接に各スリットに加えられる。つまり、図5(a)に示した曲げモーメントMあるいは図5(d)に示したX方向収縮力の差ΔPが直接に各スリットに加えられていた。しかし、図6に示したように本実施の形態の追加孔9dを設けることにより、張力による応力がまず追加孔9dに加わることになる。すると、追加孔9dが、従来各スリットに加えられていた応力により変形する。この追加孔9dの変形が応力の緩衝作用となり、スリットに加えられる応力が軽減される。
【0035】
この追加孔9dは、スリット9bの長手寸法に比べた場合、非常に小さい寸法になるので、追加孔9dとスリット9bの上下端との距離が長くなって隔壁部9sの幅が広がると、追加孔9dの剛性も上昇して変形し難くなる。追加孔9dの剛性が上昇すると、上記した応力による変形が阻害され、応力の緩衝効果が得にくくなる。
【0036】
このため、本実施の形態では、各スリット9bに対応する追加孔9dは、図6(a)に示したようにスリット9bの上下端からの延長線方向の所定距離(隔壁部9sの幅)が2mm以内の個所に設けられる。
【0037】
次に、追加孔9dの作用・効果について説明する。
図7は、図2及び図6に示した本実施の形態のマスクにおけるピッチムラ抑制のメカニズムを示す図である。
図5(a)で説明したのと同様、図7(a)におけるS1〜S5は、スリット領域上端部の任意のスリット、T1〜T4は、スリットS1〜S5にそれぞれ対応するストリップを模式的に示している。溶接線(A−A′)9eは、マスクとフレームの溶接部を示している。
【0038】
例えば、図7(b)に示す様に、溶接線9e上の応力(張力)分布が、展張工程等のバラツキにより、局部的に変化した場合でも、本実施の形態では、追加孔9dがスリット近辺(長手方向延長線上)に設けられ、この追加孔9dが、スリット近辺の応力を緩和する作用を呈する為、スリットの極近辺B−B′線上の応力(張力)分布は、図5(c)に示した従来例とは異なり図7(c)に示すように、変動周期範囲が同様で変動波形が同様になる。つまり、ストリップT1、T4に対応する個所B1、B4での応力(張力)と、ストリップT2、T3に対応する個所B2、B3での応力(張力)が、ほぼ同じ大きさになる。
【0039】
この結果、例えば、図7(a)における、スリット領域C−C′線上における、図7(d)に示した各ストリップに加わるX方向(水平方向)収縮力(ポアソン収縮)差△P、すなわち、ストリップT1、T4に対応する個所C1、C4のX方向収縮力と、ストリップT2、T3に対応する個所C2、C3のX方向収縮力との差△Pは、図5(d)に示した従来例とは異なり小さくなる。また、図7(a)に示す様に、例えば、図5(a)で説明した回転モーメントMは、追加孔9dが呈する応力緩和作用により、図7(e)に示すごとく、図5(e)に示した従来例の場合に比べ小さくなる。したがって、スリットS2,S4の幅を広げ、スリットS3の幅を狭める回転モーメントMおよび、前述のX方向収縮力差△Pが、ともに追加孔を設けることにより、小さくなることになる。その結果、スリットS2,S3,S4の幅の差がなくなり、ピッチムラが画面に現れ、画面品位を低下させるのを防止することができる。
【0040】
図8は、張力分布の局部的な変化およびストリップの長さの差が発生した場合の、スリット先端から追加孔まで距離と、各ストリップに対するX方向収縮力差ΔPの関係および、回転モーメントMの関係を示す図である。
【0041】
図8(a)は、スリットから追加孔までの距離とX方向収縮力差ΔPの関係、図8(b)は、同じくスリットから追加孔までの距離と、回転モーメントMの関係を示している。スリットから追加孔までの距離とX方向収縮力差ΔPもしくは、回転モーメントMの関係には、図8(a)、(b)に示す如く、スリットから追加項までの距離が、ある値以下になると、急激にX方向収縮力差ΔPおよび回転モーメントが小さくなるニーポイントが存在する。このニーポイントは、X方向収縮力差および回転モーメントの場合ともに、発明者の実験によれば2mmであった。これは、追加孔がスリットの極近辺の応力を緩和することにより、X方向収縮力差ΔPおよび回転モーメントMを低減することに起因している。以上より、X方向収縮力差ΔPの低減効果、および回転モーメントMの低減効果を得る為には、スリットから追加孔までの距離を、2mm以内にすることが望ましい。
【0042】
このニーポイント以内の値、すなわち、スリット9bの上下端からの延長線方向の所定距離(隔壁部9sの幅)が2mm以内という値は、発明者の30吋クラスの大型陰極線管における実験により効果が確認された数値であり、効果が確認された隔壁部9sの最低限の幅としては、30μm(0.03mm)で効果を確認している。現状で効果が確認できた範囲は、所定距離(隔壁部9sの幅)が0.03〜2mm以内であるが、隔壁部9sの最低限の幅としては、追加孔9dとスリット9bの間になんらかの隔壁部9sが制作できれば効果を得られると考えられる。また、2mm以内という最大側の限定数値については、マスクの寸法、板厚、スリット幅等の設計値により変化することが予想されるが、30吋クラスの現状最も大型の陰極線管による実験結果に基づく数値であうため、最大値がこの値以上になることは考えられない。
【0043】
このように、本実施の形態では、ストリップ型マスク構体において、スリット9bの上下端からの延長線方向の所定距離(隔壁部9sの幅)が2mm以内に追加孔9dを設けることにより、張力分布、工程変動等による張力分布の局部的な変化や各ストリップの長さの差によって発生するピッチムラを抑制し、カラー陰極線管の画面品位を改善することができる。
【0044】
実施の形態2.
上記した実施の形態1では、ストリップ型マスクのスリット9bの上下端から2mm以内に、位置および大きさについては一定で追加孔9dを設けることでピッチムラを抑制する場合について示したが、上記したように追加孔9dとスリット9bの上下端との距離が長くなり隔壁部9sの幅が広がると、追加孔9dの剛性も上昇して変形し難くなり、その結果、応力による変形が阻害され、応力の緩衝効果が得にくくなるため、応力分布の差に対応させるためにこの隔壁部9sの幅をパラメータとして用いることが可能である。また、追加孔9dの開口寸法(円形の場合の直径寸法、長方形の場合の各辺の寸法等)が増大した場合も、その剛性は低下するので、この追加孔9dの開口寸法も応力分布の差に対応させるためのパラメータとして用いることができる。そこで、以下に示す実施の形態2では、応力分布の差に対応させるために隔壁部9sの幅と追加孔9dの開口寸法を変更する場合について説明する。
【0045】
図9は、実施の形態2のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体のストリップ型マスクの正面図であり、図9(a)は、図9のスリット上端付近の拡大図である。
【0046】
本発明の実施の形態2におけるストリップ型マスクでは、実施の形態1と同様に、一部もしくは全スリットの延長線上に対応スリットの上下端からの距離が2mm以下である追加孔9dが設けられているが、特にピッチムラの発生し易い個所のピッチムラの発生を防ぐように、この追加孔9dのスリット9bの上下端に対する位置(隔壁部9sの幅)もしくは、追加孔9dの大きさ(開口寸法)が変更されている。また、本実施の形態における開口寸法の変更は、各スリット9bのスリット上下端の長手方向の延長線方向に対して実施されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0047】
本発明の実施の形態2では、例えば、図9(a)に示す様に、追加孔9dのスリット9bに対する位置(A1,A2)、および、大きさ(B1,B2)を変更して追加孔9dの剛性を変化させることにより、図7(a)等に示した曲げモーメントの発生を改善し、ピッチムラの発生しているスリットに対応するストリップに対し、そのピッチムラを改善することができる。
【0048】
次に、スリットに対する追加孔の位置および大きさにより、ストリップに曲げモーメントが発生するメカニズムを、図を用いて説明する。
図10(a)は、任意のスリットS1〜S3と、このスリットに対応するストリップT1、T2、および、実施の形態1と同様な追加孔D1〜D3を示しており、また、張力Tが加えられている状態を示している。
【0049】
図10(b)は、本実施の形態の場合で、図10(a)の追加孔D2のスリットS2の上端からの距離をΔCのみ長くした場合(隔壁部9sの幅をΔCのみ広げた場合)を示している。
【0050】
図10(b)の場合、ストリップT1、T2におけるスリットS2上端の極近傍に働く力(張力)F1、F2は、ストリップT1、T2の幅方向(X方向)の位置に応じて、図に示した様に異なった値になりF1>F2となる。この張力F1、F2の差は、同図に示すごとく、ストリップT1、T2に、スリットS1、S3が狭くなり、スリットS2が広くなる様な曲げモーメントMを発生させる。なお、逆に、追加孔D2が、追加孔D1、D3に比べ、スリットS2の上端に近づいた場合は、スリットS1、S3が広く、スリットS2が狭くなる様な曲げモーメントが発生する。
【0051】
図10(c)は、図10(a)の追加孔D2の開口寸法のうち、スリットS2の延長線方向の寸法の大きさをΔEのみ小さくした場合を示している。
この場合も、ストリップT1、T2のスリットS2上端の極近傍に働く力(張力)F1、F2は、ストリップT1、T2の幅方向(X方向)の位置に応じて、図に示したように異なった値になり、F1>F2となる。この張力F1、F2の差は、同図に示すごとく、ストリップT1、T2に、スリットS1、S3が狭くなり、スリットS2が広くなる様な曲げモーメントMを発生させる。なお、逆に、追加孔D2の開口寸法の大きさを、追加孔D1、D3に比べ大きくした場合には、スリットS1、S3が広く、スリットS2が狭くなる様に曲げモーメントが発生する。この様に、任意に追加項のスリットにすることにより、対応するストリップに回転モーメントを発生させることができる。
【0052】
従って、図10(b)、図10(c)に示した追加孔D2のスリットS2に対する位置および大きさの設定を、ピッチムラの発生している個所に、そのピッチムラを減少させるように実施すれば、ピッチムラを抑制することができる。
【0053】
このように本実施の形態では、追加孔9dを設けるとともに、追加孔9dの開口寸法の大きさ、および、位置(対応スリットの端部からの距離)を調整することにより、各ストリップに加わる水平方向収縮力差ΔPおよびストリップに加わる回転モーメントMを小さくすることができる。従って、ピッチムラの発生している個所のストリップに、ピッチムラが解消される方向に曲げモーメントを加えることで、実施の形態1の効果に加えて、ピッチムラの発生を更に抑制することができる。
【0054】
実施の形態3.
上記した実施の形態2では、追加孔9dのスリット上下端からの距離と開口寸法を張力分布の変化に対応させて調整する場合を示したが、追加孔9dの数量を複数に増加させても、追加孔9dの周辺の剛性を変化させることができる。そこで、以下に示す実施の形態3では、応力分布の差に対応させるために追加孔9dの数量を変更する場合について説明する。
【0055】
図11は、実施の形態3のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体のストリップ型マスクの正面図であり、図11(a)は、図11のスリット上端付近の拡大図である。
【0056】
本発明の実施の形態3におけるストリップ型マスク9は、図11(a)に示す様に、最もピッチムラの発生し易い、スリット領域の水平(X)方向端から約20mm以内の各スリット9bのスリット上下端の長手方向の延長線方向に、張力分布の変化に対応させて、追加孔9dを各1個以上設けている。また、複数の追加孔9dが設けられる場合には、最もスリットに近い追加孔9dにおけるスリット9bの上下端からの距離が、追加孔9dが1個の場合と同様に2mm以下となる。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0057】
本発明の実施の形態3では、例えば、図4(c)の張力分布における張力の大きいストリップ等のピッチムラの発生しやすい箇所では、追加孔が呈する応力緩和作用をより増大させるために、複数の追加孔9dを設ける。追加孔の数量は各ストリップが受ける張力(応力)の程度により変化させ、その応力緩和作用によるピッチムラ改善効果を最適に調整する。
【0058】
このように本実施の形態では、各ストリップが受ける張力(応力)の程度により追加孔の数量を変化させるので、各ストリップに加わる水平方向収縮力差ΔPおよびストリップに加わる回転モーメントMを更に小さくかつ制御でき、実施の形態1の効果に加えて、ピッチムラの発生を更に抑制することができる。
【0059】
実施の形態4.
上記した実施の形態2では、追加孔9dのスリット上下端からの距離と開口寸法を張力分布の変化に対応させて調整する場合を示したが、追加孔9dの開口寸法を任意に変更できる場合、その追加孔9dを通過した電子ビーム11が蛍光体スクリーン面2に投影される場合があり、電子ビーム11が透過できない追加孔9dとスリット9bの上下端との間の隔壁部9sの影が蛍光体スクリーン面2に黒い線として現れることがある。この蛍光体スクリーン面2に現れる黒い線は、細くかつ短い場合は、視認できず問題にならないが、太くかつ長くなった場合、カラー陰極線管の使用者に視認されてしまう。これは、実施の形態1あるいは3に示したように追加孔9dの開口寸法を任意に設定する場合も同様である。そこで、以下に示す実施の形態4では、一部もしくは全部の追加孔9dの開口寸法を、隔壁部9sの影が蛍光体スクリーン面2に黒い線として現れない開口寸法に制限する場合について説明する。
【0060】
図12は、図1のカラー陰極線管における実施の形態4のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体と電子ビーム11の関係を示す断面図である。
電子銃5から管軸Z0に対してθ1の角度で放出される電子ビーム11は、図1の偏向ヨークの磁界により角度が変更されてストリップ型マスク9の追加孔9dに入射する。この電子ビーム11が追加孔9dに入射する角度(管軸Z0に平行な軸Z1対する入射角度)をθ2とし、マスク9の厚みをT0とする。また、本実施の形態における追加孔9dの形状は、図2等に示した長方形であり、開口寸法の制限は、各スリット9bのスリット上下端の長手方向の延長線方向に対して実施し、その方向の開口寸法をD0とする。本実施形態では、開口寸法D0を、マスク9の厚みT0により電子ビーム11が通過できない大きさに制限する。
【0061】
電子ビーム11が通過できない大きさの開口寸法D0とは、例えば、マスク9が管軸Z0に垂直な平面であると仮定し、電子ビーム11が追加孔9dに入射する入射角θ2、ストリップ9の板厚をT0、追加孔9dのY方向(スリット上下端の長手方向の延長線方向)の開口寸法をD0としたときに、以下の数式(1)を満足する場合である。
D0<=T0・tanθ2 …(1)
【0062】
図13は、図12の追加孔9d周辺を拡大して示した断面図である。その他の構成は実施の形態1と同様である。
図13(a)は、追加孔9dの開口寸法D0の大きさが電子ビーム11を通過させてしまう場合の断面図であり、図13(b)が、追加孔9dの開口寸法D0の大きさが、マスク9の厚みT0により電子ビーム11を通過させない場合の断面図である。
【0063】
図13(a)においては、追加孔9dの開口寸法D0が大きいので、追加孔9dに斜め(図12のθ2)で入射する電子ビーム11が追加孔9dを通過して、蛍光体スクリーン面(画面)2に達している。従って、この場合の追加孔9dは、蛍光体スクリーン面2の画面周辺電子ビームを到達させてしまう。しかし、隔壁部9sに対応する電子ビームは遮断されている。従って、スリット9bと追加孔9dの間の隔壁部9sの影が蛍光体スクリーン面(画面)2に黒線として現れる。
【0064】
一方、図13(b)の場合には、追加孔9dの開口寸法が小さいので、追加孔9dに斜めに入射する電子ビーム11はマスク9の厚みT0により遮断されて通過できず、蛍光体スクリーン面(画面)2に到達できない。したがって、スリット9bと追加孔9dの間の隔壁部9sの影は、蛍光体スクリーン面(画面)2に黒線として現れない。なお、本実施の形態では、追加孔9dの形状が長方形で、その開口寸法D0の制限は、各スリット9bのスリット上下端の長手方向の延長線方向に対して実施する場合を示したが、他の追加孔の形状、他の開口寸法を調整する場合も、その開口寸法(大きさ)は、本実施の形態と同様にして、電子ビーム11のマスク9に対する入射角θ2、マスク9の板厚T0、追加孔9dの断面形状により決めることができる。
【0065】
このように本実施の形態では、追加孔9dの径を電子ビーム11が通過できないようにして。隔壁部9sの影が蛍光体スクリーン面(画面)上に投影されない大きさにすることにより、上記した実施の形他1〜3に示したようなピッチムラ防止のための追加孔9dを設けた場合でも、画面の上下に視認できる黒線が現れる事態を防止することができる。なお、実施の形態1〜3におけるピッチムラ改善効果は、本実施の形態のように追加孔の開口寸法を減少させても、追加孔9dとスリット9bの位置関係を調節すれば、その効果が減少する事態を避けることができる。
【0066】
実施の形態5.
上記した各実施の形態では、ストリップ型マスクのスリット9bの上下端から2mm以内に少なくとも1個の追加孔9dを設けることでピッチムラを抑制する場合について示したが、スリット9bあるいはストリップ9aの形状については突起部の無い、非常に細長い略長方形の場合を示し、その他の場合については言及していなかった。このストリップの形状としては、例えば、大電流の電子ビームが当たることによる熱膨張等でストリップが弛んで隣り合うストリップと絡む場合を防止するために、隣合うストリップの互いに向い合う長辺の面(スリットの両側の長辺端に相当する面)に1個以上の突起部を付与する場合がある。このスリットの両側に位置する突起部は、熱膨張等でストリップが弛んだ場合に、突起部同士が点接触し、隣り合うストリップ同士が線接触や面接触する事態を避けるように形成されている。そこで、以下に示す実施の形態5では、各ストリップの長辺に、隣り合うストリップの長辺に設けられる突起部と対向する位置に突起部を設ける場合について説明する。
【0067】
図14は、実施の形態5のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体を示す斜視図であり、マスクとそのマスクを支持固定するマスクフレームの関係を示している。また、図14(a)は、図14の各ストリップ(スリット)の上端部(あるいは下端部)を拡大して示した図である。
【0068】
図14(a)に示したように、隣合う各ストリップ9aには、互いに向い合う長辺の面(スリットの両側の長辺端に相当する面)に1個以上の突起部9fが付与されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。この突起部9fは、上記したように、例えば、大電流の電子ビームがマスクの限られた場所に当たることによる熱膨張等でストリップが弛んで隣り合うストリップと絡む場合を防止するために設けられるものである。
【0069】
この突起部9fの大きさは、熱膨張によりストリップが弛んで隣のストリップと線接触により絡み合うの防止する為の大きさ、つまり、線接触を点接触にするための大きさであればよく、必要以上に大きくする必要のないものである。従って、突起部9fは、スリット9bを通過する電子ビーム11の通過量を著しく低減せしめる大きさや、カラー陰極線管の輝度に影響を与える大きさや、外部から振動のみでこの突起部9f自体が接触するような大きさになることはない。例えば、突起部9fの大きさを、外部から振動のみでこの突起部9f自体が接触するような大きさにする場合、逆に、熱膨張等による弛みでストリップ9aの絡みが発生し易くなり、カラー陰極線管の画像に悪影響を与えることになるので、突起部9fの大きさは必要以上に大きくすることは無いものである。
【0070】
本実施の形態では、上記した各実施の形態と同様に、各ストリップ9aの幅および各スリット9bの幅を揃えるように作用する。これは、必要最小限の大きさで形成される突起部9fの隣り合う突起部9fとの間の距離を一定に揃えるように作用することになる。従って、追加孔9dを設けることは、突起部9fが設けられたストリップ9aの絡み防止作用に対して、好影響を与えることは有っても、悪影響を与えることはないことになる。
【0071】
このように本実施の形態では、隣り合うストリップの絡みを防止するために各ストリップの互いに隣り合う面の対向する位置に突起部が設けられたマスクであっても、追加孔9dを設けることにより、実施の形態1〜4と同様にピッチムラの発生を抑制することができる。
【0072】
実施の形態6.
上記した各実施の形態では、ストリップ型マスクのスリット9bの上下端から2mm以内に、少なくとも1個の長方形の追加孔9dを設けることでピッチムラを抑制する場合について示したが、追加孔の形状としては、長方形に限られるわけではなく、円形あるいは正方形や菱形等の4変形を含む多角形であっても良い。そこで、以下に示す実施の形態6では、追加孔9dが円形の場合と、菱形の場合について説明する。
【0073】
図15は、実施の形態6のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体のストリップ型マスクの正面図であり、図15(a)は、追加孔9dが円形の場合の図15のスリット上端付近の拡大図であり、図15(b)は、追加孔9dが菱形の場合の図15のスリット上端付近の拡大図である。
【0074】
図15と、他の実施の形態の各図とを比較した場合、各ストリップに加わるX方向(水平方向)収縮力(ポアソン収縮)差△Pと、各スリット間隔が異なるように各ストリップに発生される回転モーメントMは、本実施の形態では追加孔9dの形状により若干の変動を受ける場合は考えられるが、追加孔9dの周辺の剛性を調整することについては、上記した各実施の形態と全く同様に実施が可能であり、本発明の応力緩和作用による効果も上記した各実施の形態と同様に得ることができる。
【0075】
このように本実施の形態では、追加孔9dの形状を円形や菱形等に変更した場合であっても、実施の形態1〜5と同様にピッチムラの発生を抑制することができる。
【0076】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体は、一部もしくは全スリットの上下端とフレームとの溶接点(線)との間に、対応するスリットの延長線上に対応するスリットからの距離が2mm以下であるように追加孔を設けることにより、張力分布の局部的な変化や各ストリップの長さの差によって発生する各スリット幅の差(ピッチムラ)の発生を、何ら画質を損なうことなく抑制できる。また、さらに、その追加孔の開口寸法の大きさ、位置、および、対応するスリットに対する個数を変化させることにより、さらにピッチムラの発生を抑制でき、結果として、カラー陰極線管の画質を向上させることができる。また、この効果は、ストリップの絡み防止の為に、ストリップに突起部を付けた場合でも変らない。
【図面の簡単な説明】
【図1】テレビジョンやコンピュータ用ディスプレイ等に用いられるカラー陰極線管の一例の断面図である。
【図2】実施の形態1のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体を示す斜視図であり、(a)は各ストリップ(スリット)の上端部(あるいは下端部)を拡大して示した図である。
【図3】従来のストリップ型マスク構体の構成を示す斜視図であり、(a)は各ストリップ(スリット)の上端部(あるいは下端部)を拡大して示した図である。
【図4】図3に示した従来のストリップ型マスク構体を示す正面図であり、(a)はその各ストリップ(スリット)の上端部の部分拡大図であり、(b)は(a)における各ストリップ(スリット)の幅の変化を示す図であり、(c)は従来のストリップ型マスクに加えられる張力の分布を示す図である。
【図5】(a)〜(e)は図3、図4に示した従来のマスクにおけるピッチムラ発生のメカニズムを示す図である。
【図6】図2および図3のストリップ型マスクの正面図であり、(a)はスリット上端付近の拡大図である。
【図7】(a)〜(e)は図2及び図6に示した実施の形態1のマスクにおけるピッチムラ抑制のメカニズムを示す図である。
【図8】(a)、(b)は張力分布の局部的な変化およびストリップの長さの差が発生した場合の、スリット先端から追加孔まで距離と各ストリップに対するX方向収縮力差ΔPの関係および回転モーメントMの関係を示す図である。
【図9】実施の形態2のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体のストリップ型マスクの正面図であり、(a)はスリット上端付近の拡大図である。
【図10】(a)は任意のスリットS1〜S3とこのスリットに対応するストリップT1、T2、および追加孔D1〜D3を示し、張力Tが加えられている状態を示し、(b)は本実施の形態の追加孔D2のスリットS2の上端からの距離をΔCのみ長くした場合を示し、(c)は追加孔D2の開口寸法のうちスリットS2の延長線方向の寸法の大きさをΔEのみ小さくした場合を示している。
【図11】実施の形態3のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体のストリップ型マスクの正面図であり、(a)はスリット上端付近の拡大図である。
【図12】実施の形態4のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体と電子ビームの関係を示す断面図である。
【図13】図12の追加孔周辺を拡大して示した断面図である。
【図14】実施の形態5のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体を示す斜視図であり、(a)は各ストリップ(スリット)の上端部(あるいは下端部)を拡大して示した図である。
【図15】実施の形態6のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体のストリップ型マスクの正面図であり、(a)は追加孔が円形の場合のスリット上端付近の拡大図であり、(b)は追加孔が菱形の場合のスリット上端付近の拡大図である。
【符号の説明】
1 カラー陰極線管、 2 蛍光体スクリーン面、 3 フェイスパネル、 4 ファンネル、 4a ネック部、 5 電子銃、 6 マスク、 7 マスクフレーム、 8 偏向ヨーク、 9 マスク(ストリップ型マスク)、 9 ストリップ、 9a ストリップ、 9b スリット、 9c スリット領域、9d 追加孔、 9e 溶接点(線)、 9f 突起部、 9s 隔壁部、 9z 従来のストリップ、 10 ダンパー線、 11 電子ビーム。
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラー陰極線管の内部に設置される色選別用マスク構体の構造に関し、特に、多数の非常に細長い細状素体(ストリップ)を所定間隔で整列させた構造により該ストリップ間に非常に細長い細条スリット孔を電子ビーム通過孔として形成し、かつ、各ストリップを画面左右方向に互いに連結するブリッジが無いかもしくは非常に少ないタイプのマスクであるストリップ型マスク構体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カラー陰極線管の内部に設置されるストリップ型マスク構体としては、張力分布の不均一によって発生するマスクとフレームの溶接点(線)付近のシワを解決するために、スリット上下端とマスク−フレーム溶接点(線)の間に複数列の凸部を設けるようにしておき、マスクをマスクフレ−ムに保持した後、展張によりマスクにシワが発生した場合には、そのシワ部に相当する場所の凸部をレーザー加工等で開口することにより応力の均一化を計り、部分的に集中する張力によって発生するマスクシワ防止するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、各ストリップに対して張力が異なる様に分布を持たせる場合で、特にスリット領域のX方向(水平)端のストリップに加わる張力(応力)が異なる場合の、展張後にX方向(水平)端のスリットの幅が不連続に変化することを防止するために、マスクのスリット領域のX方向(水平)端スリットの外側に、そのスリット幅よりも小さな幅を有し、且つ、電子ビームを遮光し得るエキストラスリットを設けることにより、スリット領域のX方向(水平)端スリット幅を均一に確保し得るストリップ型マスク構体が知られている。(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
【0004】
また、マスク構体を熱処理した場合に発生する高温クリープ現象によりストリップが捩れることが原因で起きるマスクのスジムラを防止するために、スリット領域の端部と溶接点(線)との間のマスク外周部に追加孔を設け、この外周部の単位長さ当りのX(水平)方向の断面積を、ストリップ部(領域)におけるX(水平)方向の単位長さ当りの断面積より小さくすることにより、スリット領域より外周部の方がマスクの剛性が弱くなるように設定して、スジムラの発生を防止するストリップ型マスク構体が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−347129号公報(図1)
【特許文献2】
特許第3158297号公報(図1)
【特許文献3】
特許第3194290号公報(図1)
【特許文献4】
特開平2001−167711号公報(図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ストリップ型マスクの場合、ある外部振動により、全ストリップが、共振し、画面全体の揺れが発生するのを防止する為に、各ストリップの固有振動数を互いに変える必要がある。ストリップの固有振動数は、各ストリップに加えられる張力と関係する為、例えばマスクに加える張力分布を中央部と端部で異ならせることにより、各ストリップの固有振動数も同様な分布にし、画面全体が外部振動により同時に共振することを防いでいる。
【0007】
ところが、各ストリップに対して張力が異なる様に張力分布を持たせた場合、各ストリップに加わる引張(応力)が異なることに加え、張力を加える(以後、張力を加えることを展張と呼ぶ。)工程のバラツキ等によって張力分布が局部的に変化する場合があり、その場合には各ストリップ間にX方向収縮力(ポアソン収縮)の差が発生する。
【0008】
そのX方向収縮力に、更に、各ストリップの長さの僅かな差により発生するストリップを曲げる回転モーメントが加わると、各スリットの幅が不連続に変化する場合がある。この各スリットの幅の変化は、画面(蛍光体スクリーン)にムラ(以後ピッチムラと呼ぶ。)となってあらわれ、画面品位を低下させるという問題がある。また、このピッチムラは、マスクの中央部分より、水平端(X軸端)部に発生し易くなっている。
【0009】
上記した特許文献1の方法は、張力不均一によるマスクの面と直角方向の面外変形、つまり、シワの発生を対策するものであり、また、応力を均一化する為の開口は、展張後にシワが発生した部分のみ、レーザー加工等の複雑な方法により開けられるものであり、シワが発生しないレベルの張力分布の局部的な変化や、各ストリップの長さの差によって発生する各スリット幅の差(ピッチムラ)を解決することができない。
【0010】
また、特許文献2及び特許文献3の方法は、マスクのX方向(水平)端のスリットで発生する張力を、マスクのX方向(水平)端スリットの外側に遮光し得ない幅を有するエキストラスリットを設けて分散させることで、X方向(水平)端のスリットで発生するピッチムラを抑制するものであり、X方向(水平)端のスリットのみか、その周辺のスリットのみに効力を発揮するので、中央部と端部で異なる張力分布の変化に対応できず、各スリット幅の差(ピッチムラ)を解決することはできない。
【0011】
また、特許文献4の方法は、高温クリープによるストリップの捩れ対策として、マスクの外周部における全体的な剛性を弱めることを主眼とするものであり、張力分布の局部的な変化や各ストリップの長さの差によって発生する各スリット幅の差(ピッチムラ)を、解決できる内容ではない。
【0012】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、ストリップ型マスク構体において、張力分布、工程変動等による張力分布の局部的な変化や各ストリップの長さの差によって発生するピッチムラを防止し、画面品位の優れたカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体は、平板に多数の細状素体のストリップが形成されることにより該各ストリップ間に多数の電子ビーム通過用のスリットが形成された色選別マスクと、該色選別マスクの上下端を溶接することにより架張された状態で保持するマスクフレームとからなるカラー陰極線管用のストリップ型マスク構体において、
色選別マスクは、少なくとも一部のスリットの延長線上であり、かつ、当該スリットの上端および下端と対応する上下のマスクフレーム溶接点との間に、当該スリットとは連続しないように間隔をあけて少なくとも1個の追加孔が各々設けられ、
追加孔と当該スリットの端部との間隔の範囲が2mm以内であることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、テレビジョンやコンピュータ用ディスプレイ等に用いられるカラー陰極線管の一例の断面図である。
【0015】
図1のカラー陰極線管1は、内面に蛍光体スクリーン面2が形成されたフェイスパネル3と、フェイスパネル3の後方に接続される漏斗形状のファンネル4と、ファンネル4のネック部4aの内部に設置される電子銃5と、フェイスパネル3の内部の蛍光体スクリーン面2に対向して設けられた色選別マスク6(以後、単にマスクと称する)と、マスク6を支持固定するマスクフレーム7とを備えている。
【0016】
マスク6は、電子銃5から発せられる3本の電子ビーム11がそれぞれ赤色、緑色、青色の所望蛍光体にランディングするよう選別する目的で設置される。また、偏向ヨーク8は、電子銃5から発せられる電子ビーム11を偏向させて蛍光体スクリーン面2を走査させる。なお、図1における電子ビーム11は、偏向ヨーク8により偏向される電子ビーム11の軌道の一例を示している。管軸Z0は、カラー陰極線管1における電子銃5と蛍光体スクリーン面2を結ぶ中心軸である。
【0017】
マスク6の構造の代表的な一例として、多数の非常に細長い略長方形孔(以後、スロット孔あるいはスリットと称する)からなる電子ビーム通過孔を多数有するものが知られている。そのようなマスク6は、一般的に電子ビーム通過孔を金属薄板に選択的にエッチングすることにより形成しており、その構造のマスクは、各スロット孔間に形成される多数の非常に細長い細状素体(以後、ストリップと称する)を画面左右方向に互いに連結する多数のブリッジを有している。このタイプのマスクをブリッジ型マスクと称する。
【0018】
また、他の代表例として、ブリッジの無いもしくは非常に少ないストリップが所定間隔で整列された構造を有しストリップ間の非常に細長い細条スリット孔が電子ビーム通過孔となっているタイプのマスクがある。このタイプのマスクをストリップ型マスクと称し、本実施の形態では、このストリップ型マスクの構造に関する。
【0019】
ストリップ型マスクがブリッジ型マスクに対して優れている点のひとつとして、対熱特性がある。ストリップ型マスクは、ストリップの長手方向に張力を加えマスクフレームに張架保持されて用いられ、また個々のストリップが水平方向に殆ど連結されない構造を有する。これにより、マスクの熱膨張に起因したドーミング現象によって陰極線管の画面上に発生する色ずれ不具合を発生させないようにすることができる。
【0020】
図2は、本実施の形態のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体を示す斜視図であり、マスクとそのマスクを支持固定するマスクフレームの関係を示している。また、図2(a)は、図2の各ストリップ(スリット)の上端部(あるいは下端部)を拡大して示した図である。
【0021】
図2のストリップ型マスク9では、各ストリップ9aの長手方向に張力を加えるために、各ストリップ9aの上端部および下端部がフレームに溶接固定されている。図2では、フレームに沿って溶接により固定されるストリップ9aの上端部および下端部を溶接点(線)9eとして示している。以後、この状態をストリップ型マスク構体と呼ぶ。なお、図2(a)では、各ストリップ9aの間の空間部がスリット9bを示している。
【0022】
ストリップ型マスクの場合には、図2に示したようにストリップ型マスク9の対向する上下の2辺間に張力を加えた状態であるが、上記したようにブリッジが無いか有していても非常に少ない為、各ストリップ9aの形状が非常に細長くなる。その結果、ストリップ型マスク9は、スピーカー等の振動源からの振動により、各ストリップ9aが振動する場合がある。この振動は、図1に示した各電子ビーム11の所定蛍光体へのランディング位置をずらし、画面の色ズレの原因になる。ダンパー線10は、タングステン等により形成される線であり、上記した外部からの振動を抑制する為に、各ストリップの長手方向にほぼ直交する方向で、かつ、各ストリップに接触する様に加張した状態で取りつけられる。このことにより、振動が加わった場合でも、ダンパー線とストリップとの摩擦により、各ストリップの振動が抑制されて画面の色ズレを防止することができる。
【0023】
ここで、本実施の形態の構成の特徴を従来の構成と対比させて示すために従来のストリップ型マスク構体について説明する。
図3は従来のストリップ型マスク構体の構成を示す斜視図であり、図3(a)は、図3の各ストリップ(スリット)の上端部(あるいは下端部)を拡大して示した図である。
【0024】
図3に示した従来のストリップ型マスク構体の各部は、図2に示した本実施の形態のストリップ型マスク構体の各部に対応し、従来のストリップ型マスク9z以外は図2と同じ番号が付与されている。
【0025】
ストリップ型マスクの場合、ある外部振動により、全ストリップが、共振し、画面全体の揺れが発生するのを防止する為に、各ストリップの固有振動数を互いに変える必要がある。ストリップの固有振動数は、各ストリップに加えられる張力と関係する。
【0026】
図4は、図3に示した従来のストリップ型マスク構体を示す正面図であり、図4(a)はその各ストリップ(スリット)の上端部の部分拡大図であり、図4(b)は図4(a)における各ストリップ(スリット)の幅の変化を示す図で、図4(c)は図4に示した従来のストリップ型マスク9に加えられる張力の分布を示す図である。
【0027】
図4の9cはスリット領域を示し、図4(c)において、X軸は、マスクのストリップの長手方向に直行する方向(水平方向)を示し、Y軸は、ストリップに加わる張力を示している。図4に示した従来のストリップ型マスク9zでは、例えば、マスクに加える張力分布を図4(c)に示す分布にすることにより、各ストリップの固有振動数も同様な分布にし、上記した画面全体がある外部振動により同時に共振することを防いでいる。
【0028】
ところが、前記した如く各ストリップに対し、張力が異なる様に分布を持たせた場合、各ストリップに加わる引張(応力)が異なることに加え、展張工程のバラツキ等により、張力分布が局部的に変化する場合がある。すると、各ストリップ間にX方向収縮力(ポアソン収縮)の差が発生する。このX方向収縮力に、更に、各ストリップの長さの僅かな差により発生するストリップを曲げる回転モーメントが加わることにより、各スリットの幅が、不連続に変化することがある。これは、画面(蛍光体スクリーン)にピッチムラとなってあらわれ、画面品位を低下させる原因になる。このピッチムラは、マスクの中央部分よりも、水平端(X軸端)部に発生し易い。
【0029】
図4(a)は、展張前の各ストリップ(スリット)の幅を示し、図4(b)は展張後の各ストリップのスリット)の幅を示している。図4(a)に示す様に、展張前は、当然のことながら、各スリット幅は、均一である。しかし、図4(b)に示す様に、展張後のスリット幅は、張力分布の局部的な変化やストリップ長さの僅かな差等により、例えば、H1≠H2の如く均一で無くなる場合がある。この不均一が、ピッチムラとして現れ、画面品位を低下させる。
【0030】
このピッチムラ発生のメカニズムを、図を用いて説明する。
図5は、図3、図4に示した従来のマスクにおけるピッチムラ発生のメカニズムを示す図である。
【0031】
図5(a)において、S1〜S5は、図4に示したスリット領域9c上端部の任意のスリットを示し、T1〜T4は、スリットS1〜S5にそれぞれ対応するストリップを模式的に示している。溶接線9e(A−A′線)は、前記したようにマスクとフレームが溶接される線状部分を示している。例えば、溶接線A−A′上の応力(張力)分布が、展張工程等のバラツキ等により、図5(b)に示す様に、局部的に変化した場合、スリットの極近辺B−B′線上の応力(張力)分布は、図5(c)に示す如くになる。つまり、ストリップT1、T4に対応する個所B1、B4での応力(張力)が、ストリップT2、T3に対応する個所B2、B3での応力(張力)より大きくなる。
【0032】
この結果、例えば、図5(a)における、ストリップ領域9cのC−C′線上の各ストリップに加わるX方向(水平方向)収縮力(ポアソン収縮)にX方向収縮力差△Pが生じる。図5(d)は、ストリップT1、T4に対応する個所C1、C4のX方向収縮力と、ストリップT2、T3に対応する個所C2、C3のX方向収縮力の間に生じるX方向収縮力差△Pを示す図である。このこのX方向収縮力差△Pに加えて、図5(a)に示す様に、例えば、スリットS2、S4とスリットS3の間にスリット長さの差△Lが発生した場合、ストリップT2とストリップT3に、図5(a)および図5(e)に示す如く、スリットS2、S4を広げ、スリットS3を狭める方向に、回転モーメントMが発生する。この回転モーメントMと、前述のX方向収縮力差△Pにより、結果として、図5(a)に示す如く、スリットS2、S4の幅が広がり、スリットS3の幅が狭まる現象が発生する。このスリットの幅の差が、ピッチムラとして画面に現れ、画面品位を低下させることになる。
【0033】
ここで、本実施の形態の構成に戻り、図2において、図3に示した従来の構成との相違は、図2(a)に示す様に、スリット9bに対応し、スリット上下端とマスク−フレーム7の溶接点(線)の間に、スリットの延長線上にスリット上下端からの距離が所定距離である追加孔9dが設けられている点である。この追加孔9dは、少なくとも一部のスリット、もしくは、全スリットに対して形成されている。
【0034】
図6は、図2および図3のストリップ型マスクの正面図であり、図6(a)は、図6のスリット上端付近の拡大図である。
図4(c)に示したように、追加孔9dが無い場合には不均一な張力による応力の分布が直接に各スリットに加えられる。つまり、図5(a)に示した曲げモーメントMあるいは図5(d)に示したX方向収縮力の差ΔPが直接に各スリットに加えられていた。しかし、図6に示したように本実施の形態の追加孔9dを設けることにより、張力による応力がまず追加孔9dに加わることになる。すると、追加孔9dが、従来各スリットに加えられていた応力により変形する。この追加孔9dの変形が応力の緩衝作用となり、スリットに加えられる応力が軽減される。
【0035】
この追加孔9dは、スリット9bの長手寸法に比べた場合、非常に小さい寸法になるので、追加孔9dとスリット9bの上下端との距離が長くなって隔壁部9sの幅が広がると、追加孔9dの剛性も上昇して変形し難くなる。追加孔9dの剛性が上昇すると、上記した応力による変形が阻害され、応力の緩衝効果が得にくくなる。
【0036】
このため、本実施の形態では、各スリット9bに対応する追加孔9dは、図6(a)に示したようにスリット9bの上下端からの延長線方向の所定距離(隔壁部9sの幅)が2mm以内の個所に設けられる。
【0037】
次に、追加孔9dの作用・効果について説明する。
図7は、図2及び図6に示した本実施の形態のマスクにおけるピッチムラ抑制のメカニズムを示す図である。
図5(a)で説明したのと同様、図7(a)におけるS1〜S5は、スリット領域上端部の任意のスリット、T1〜T4は、スリットS1〜S5にそれぞれ対応するストリップを模式的に示している。溶接線(A−A′)9eは、マスクとフレームの溶接部を示している。
【0038】
例えば、図7(b)に示す様に、溶接線9e上の応力(張力)分布が、展張工程等のバラツキにより、局部的に変化した場合でも、本実施の形態では、追加孔9dがスリット近辺(長手方向延長線上)に設けられ、この追加孔9dが、スリット近辺の応力を緩和する作用を呈する為、スリットの極近辺B−B′線上の応力(張力)分布は、図5(c)に示した従来例とは異なり図7(c)に示すように、変動周期範囲が同様で変動波形が同様になる。つまり、ストリップT1、T4に対応する個所B1、B4での応力(張力)と、ストリップT2、T3に対応する個所B2、B3での応力(張力)が、ほぼ同じ大きさになる。
【0039】
この結果、例えば、図7(a)における、スリット領域C−C′線上における、図7(d)に示した各ストリップに加わるX方向(水平方向)収縮力(ポアソン収縮)差△P、すなわち、ストリップT1、T4に対応する個所C1、C4のX方向収縮力と、ストリップT2、T3に対応する個所C2、C3のX方向収縮力との差△Pは、図5(d)に示した従来例とは異なり小さくなる。また、図7(a)に示す様に、例えば、図5(a)で説明した回転モーメントMは、追加孔9dが呈する応力緩和作用により、図7(e)に示すごとく、図5(e)に示した従来例の場合に比べ小さくなる。したがって、スリットS2,S4の幅を広げ、スリットS3の幅を狭める回転モーメントMおよび、前述のX方向収縮力差△Pが、ともに追加孔を設けることにより、小さくなることになる。その結果、スリットS2,S3,S4の幅の差がなくなり、ピッチムラが画面に現れ、画面品位を低下させるのを防止することができる。
【0040】
図8は、張力分布の局部的な変化およびストリップの長さの差が発生した場合の、スリット先端から追加孔まで距離と、各ストリップに対するX方向収縮力差ΔPの関係および、回転モーメントMの関係を示す図である。
【0041】
図8(a)は、スリットから追加孔までの距離とX方向収縮力差ΔPの関係、図8(b)は、同じくスリットから追加孔までの距離と、回転モーメントMの関係を示している。スリットから追加孔までの距離とX方向収縮力差ΔPもしくは、回転モーメントMの関係には、図8(a)、(b)に示す如く、スリットから追加項までの距離が、ある値以下になると、急激にX方向収縮力差ΔPおよび回転モーメントが小さくなるニーポイントが存在する。このニーポイントは、X方向収縮力差および回転モーメントの場合ともに、発明者の実験によれば2mmであった。これは、追加孔がスリットの極近辺の応力を緩和することにより、X方向収縮力差ΔPおよび回転モーメントMを低減することに起因している。以上より、X方向収縮力差ΔPの低減効果、および回転モーメントMの低減効果を得る為には、スリットから追加孔までの距離を、2mm以内にすることが望ましい。
【0042】
このニーポイント以内の値、すなわち、スリット9bの上下端からの延長線方向の所定距離(隔壁部9sの幅)が2mm以内という値は、発明者の30吋クラスの大型陰極線管における実験により効果が確認された数値であり、効果が確認された隔壁部9sの最低限の幅としては、30μm(0.03mm)で効果を確認している。現状で効果が確認できた範囲は、所定距離(隔壁部9sの幅)が0.03〜2mm以内であるが、隔壁部9sの最低限の幅としては、追加孔9dとスリット9bの間になんらかの隔壁部9sが制作できれば効果を得られると考えられる。また、2mm以内という最大側の限定数値については、マスクの寸法、板厚、スリット幅等の設計値により変化することが予想されるが、30吋クラスの現状最も大型の陰極線管による実験結果に基づく数値であうため、最大値がこの値以上になることは考えられない。
【0043】
このように、本実施の形態では、ストリップ型マスク構体において、スリット9bの上下端からの延長線方向の所定距離(隔壁部9sの幅)が2mm以内に追加孔9dを設けることにより、張力分布、工程変動等による張力分布の局部的な変化や各ストリップの長さの差によって発生するピッチムラを抑制し、カラー陰極線管の画面品位を改善することができる。
【0044】
実施の形態2.
上記した実施の形態1では、ストリップ型マスクのスリット9bの上下端から2mm以内に、位置および大きさについては一定で追加孔9dを設けることでピッチムラを抑制する場合について示したが、上記したように追加孔9dとスリット9bの上下端との距離が長くなり隔壁部9sの幅が広がると、追加孔9dの剛性も上昇して変形し難くなり、その結果、応力による変形が阻害され、応力の緩衝効果が得にくくなるため、応力分布の差に対応させるためにこの隔壁部9sの幅をパラメータとして用いることが可能である。また、追加孔9dの開口寸法(円形の場合の直径寸法、長方形の場合の各辺の寸法等)が増大した場合も、その剛性は低下するので、この追加孔9dの開口寸法も応力分布の差に対応させるためのパラメータとして用いることができる。そこで、以下に示す実施の形態2では、応力分布の差に対応させるために隔壁部9sの幅と追加孔9dの開口寸法を変更する場合について説明する。
【0045】
図9は、実施の形態2のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体のストリップ型マスクの正面図であり、図9(a)は、図9のスリット上端付近の拡大図である。
【0046】
本発明の実施の形態2におけるストリップ型マスクでは、実施の形態1と同様に、一部もしくは全スリットの延長線上に対応スリットの上下端からの距離が2mm以下である追加孔9dが設けられているが、特にピッチムラの発生し易い個所のピッチムラの発生を防ぐように、この追加孔9dのスリット9bの上下端に対する位置(隔壁部9sの幅)もしくは、追加孔9dの大きさ(開口寸法)が変更されている。また、本実施の形態における開口寸法の変更は、各スリット9bのスリット上下端の長手方向の延長線方向に対して実施されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0047】
本発明の実施の形態2では、例えば、図9(a)に示す様に、追加孔9dのスリット9bに対する位置(A1,A2)、および、大きさ(B1,B2)を変更して追加孔9dの剛性を変化させることにより、図7(a)等に示した曲げモーメントの発生を改善し、ピッチムラの発生しているスリットに対応するストリップに対し、そのピッチムラを改善することができる。
【0048】
次に、スリットに対する追加孔の位置および大きさにより、ストリップに曲げモーメントが発生するメカニズムを、図を用いて説明する。
図10(a)は、任意のスリットS1〜S3と、このスリットに対応するストリップT1、T2、および、実施の形態1と同様な追加孔D1〜D3を示しており、また、張力Tが加えられている状態を示している。
【0049】
図10(b)は、本実施の形態の場合で、図10(a)の追加孔D2のスリットS2の上端からの距離をΔCのみ長くした場合(隔壁部9sの幅をΔCのみ広げた場合)を示している。
【0050】
図10(b)の場合、ストリップT1、T2におけるスリットS2上端の極近傍に働く力(張力)F1、F2は、ストリップT1、T2の幅方向(X方向)の位置に応じて、図に示した様に異なった値になりF1>F2となる。この張力F1、F2の差は、同図に示すごとく、ストリップT1、T2に、スリットS1、S3が狭くなり、スリットS2が広くなる様な曲げモーメントMを発生させる。なお、逆に、追加孔D2が、追加孔D1、D3に比べ、スリットS2の上端に近づいた場合は、スリットS1、S3が広く、スリットS2が狭くなる様な曲げモーメントが発生する。
【0051】
図10(c)は、図10(a)の追加孔D2の開口寸法のうち、スリットS2の延長線方向の寸法の大きさをΔEのみ小さくした場合を示している。
この場合も、ストリップT1、T2のスリットS2上端の極近傍に働く力(張力)F1、F2は、ストリップT1、T2の幅方向(X方向)の位置に応じて、図に示したように異なった値になり、F1>F2となる。この張力F1、F2の差は、同図に示すごとく、ストリップT1、T2に、スリットS1、S3が狭くなり、スリットS2が広くなる様な曲げモーメントMを発生させる。なお、逆に、追加孔D2の開口寸法の大きさを、追加孔D1、D3に比べ大きくした場合には、スリットS1、S3が広く、スリットS2が狭くなる様に曲げモーメントが発生する。この様に、任意に追加項のスリットにすることにより、対応するストリップに回転モーメントを発生させることができる。
【0052】
従って、図10(b)、図10(c)に示した追加孔D2のスリットS2に対する位置および大きさの設定を、ピッチムラの発生している個所に、そのピッチムラを減少させるように実施すれば、ピッチムラを抑制することができる。
【0053】
このように本実施の形態では、追加孔9dを設けるとともに、追加孔9dの開口寸法の大きさ、および、位置(対応スリットの端部からの距離)を調整することにより、各ストリップに加わる水平方向収縮力差ΔPおよびストリップに加わる回転モーメントMを小さくすることができる。従って、ピッチムラの発生している個所のストリップに、ピッチムラが解消される方向に曲げモーメントを加えることで、実施の形態1の効果に加えて、ピッチムラの発生を更に抑制することができる。
【0054】
実施の形態3.
上記した実施の形態2では、追加孔9dのスリット上下端からの距離と開口寸法を張力分布の変化に対応させて調整する場合を示したが、追加孔9dの数量を複数に増加させても、追加孔9dの周辺の剛性を変化させることができる。そこで、以下に示す実施の形態3では、応力分布の差に対応させるために追加孔9dの数量を変更する場合について説明する。
【0055】
図11は、実施の形態3のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体のストリップ型マスクの正面図であり、図11(a)は、図11のスリット上端付近の拡大図である。
【0056】
本発明の実施の形態3におけるストリップ型マスク9は、図11(a)に示す様に、最もピッチムラの発生し易い、スリット領域の水平(X)方向端から約20mm以内の各スリット9bのスリット上下端の長手方向の延長線方向に、張力分布の変化に対応させて、追加孔9dを各1個以上設けている。また、複数の追加孔9dが設けられる場合には、最もスリットに近い追加孔9dにおけるスリット9bの上下端からの距離が、追加孔9dが1個の場合と同様に2mm以下となる。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0057】
本発明の実施の形態3では、例えば、図4(c)の張力分布における張力の大きいストリップ等のピッチムラの発生しやすい箇所では、追加孔が呈する応力緩和作用をより増大させるために、複数の追加孔9dを設ける。追加孔の数量は各ストリップが受ける張力(応力)の程度により変化させ、その応力緩和作用によるピッチムラ改善効果を最適に調整する。
【0058】
このように本実施の形態では、各ストリップが受ける張力(応力)の程度により追加孔の数量を変化させるので、各ストリップに加わる水平方向収縮力差ΔPおよびストリップに加わる回転モーメントMを更に小さくかつ制御でき、実施の形態1の効果に加えて、ピッチムラの発生を更に抑制することができる。
【0059】
実施の形態4.
上記した実施の形態2では、追加孔9dのスリット上下端からの距離と開口寸法を張力分布の変化に対応させて調整する場合を示したが、追加孔9dの開口寸法を任意に変更できる場合、その追加孔9dを通過した電子ビーム11が蛍光体スクリーン面2に投影される場合があり、電子ビーム11が透過できない追加孔9dとスリット9bの上下端との間の隔壁部9sの影が蛍光体スクリーン面2に黒い線として現れることがある。この蛍光体スクリーン面2に現れる黒い線は、細くかつ短い場合は、視認できず問題にならないが、太くかつ長くなった場合、カラー陰極線管の使用者に視認されてしまう。これは、実施の形態1あるいは3に示したように追加孔9dの開口寸法を任意に設定する場合も同様である。そこで、以下に示す実施の形態4では、一部もしくは全部の追加孔9dの開口寸法を、隔壁部9sの影が蛍光体スクリーン面2に黒い線として現れない開口寸法に制限する場合について説明する。
【0060】
図12は、図1のカラー陰極線管における実施の形態4のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体と電子ビーム11の関係を示す断面図である。
電子銃5から管軸Z0に対してθ1の角度で放出される電子ビーム11は、図1の偏向ヨークの磁界により角度が変更されてストリップ型マスク9の追加孔9dに入射する。この電子ビーム11が追加孔9dに入射する角度(管軸Z0に平行な軸Z1対する入射角度)をθ2とし、マスク9の厚みをT0とする。また、本実施の形態における追加孔9dの形状は、図2等に示した長方形であり、開口寸法の制限は、各スリット9bのスリット上下端の長手方向の延長線方向に対して実施し、その方向の開口寸法をD0とする。本実施形態では、開口寸法D0を、マスク9の厚みT0により電子ビーム11が通過できない大きさに制限する。
【0061】
電子ビーム11が通過できない大きさの開口寸法D0とは、例えば、マスク9が管軸Z0に垂直な平面であると仮定し、電子ビーム11が追加孔9dに入射する入射角θ2、ストリップ9の板厚をT0、追加孔9dのY方向(スリット上下端の長手方向の延長線方向)の開口寸法をD0としたときに、以下の数式(1)を満足する場合である。
D0<=T0・tanθ2 …(1)
【0062】
図13は、図12の追加孔9d周辺を拡大して示した断面図である。その他の構成は実施の形態1と同様である。
図13(a)は、追加孔9dの開口寸法D0の大きさが電子ビーム11を通過させてしまう場合の断面図であり、図13(b)が、追加孔9dの開口寸法D0の大きさが、マスク9の厚みT0により電子ビーム11を通過させない場合の断面図である。
【0063】
図13(a)においては、追加孔9dの開口寸法D0が大きいので、追加孔9dに斜め(図12のθ2)で入射する電子ビーム11が追加孔9dを通過して、蛍光体スクリーン面(画面)2に達している。従って、この場合の追加孔9dは、蛍光体スクリーン面2の画面周辺電子ビームを到達させてしまう。しかし、隔壁部9sに対応する電子ビームは遮断されている。従って、スリット9bと追加孔9dの間の隔壁部9sの影が蛍光体スクリーン面(画面)2に黒線として現れる。
【0064】
一方、図13(b)の場合には、追加孔9dの開口寸法が小さいので、追加孔9dに斜めに入射する電子ビーム11はマスク9の厚みT0により遮断されて通過できず、蛍光体スクリーン面(画面)2に到達できない。したがって、スリット9bと追加孔9dの間の隔壁部9sの影は、蛍光体スクリーン面(画面)2に黒線として現れない。なお、本実施の形態では、追加孔9dの形状が長方形で、その開口寸法D0の制限は、各スリット9bのスリット上下端の長手方向の延長線方向に対して実施する場合を示したが、他の追加孔の形状、他の開口寸法を調整する場合も、その開口寸法(大きさ)は、本実施の形態と同様にして、電子ビーム11のマスク9に対する入射角θ2、マスク9の板厚T0、追加孔9dの断面形状により決めることができる。
【0065】
このように本実施の形態では、追加孔9dの径を電子ビーム11が通過できないようにして。隔壁部9sの影が蛍光体スクリーン面(画面)上に投影されない大きさにすることにより、上記した実施の形他1〜3に示したようなピッチムラ防止のための追加孔9dを設けた場合でも、画面の上下に視認できる黒線が現れる事態を防止することができる。なお、実施の形態1〜3におけるピッチムラ改善効果は、本実施の形態のように追加孔の開口寸法を減少させても、追加孔9dとスリット9bの位置関係を調節すれば、その効果が減少する事態を避けることができる。
【0066】
実施の形態5.
上記した各実施の形態では、ストリップ型マスクのスリット9bの上下端から2mm以内に少なくとも1個の追加孔9dを設けることでピッチムラを抑制する場合について示したが、スリット9bあるいはストリップ9aの形状については突起部の無い、非常に細長い略長方形の場合を示し、その他の場合については言及していなかった。このストリップの形状としては、例えば、大電流の電子ビームが当たることによる熱膨張等でストリップが弛んで隣り合うストリップと絡む場合を防止するために、隣合うストリップの互いに向い合う長辺の面(スリットの両側の長辺端に相当する面)に1個以上の突起部を付与する場合がある。このスリットの両側に位置する突起部は、熱膨張等でストリップが弛んだ場合に、突起部同士が点接触し、隣り合うストリップ同士が線接触や面接触する事態を避けるように形成されている。そこで、以下に示す実施の形態5では、各ストリップの長辺に、隣り合うストリップの長辺に設けられる突起部と対向する位置に突起部を設ける場合について説明する。
【0067】
図14は、実施の形態5のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体を示す斜視図であり、マスクとそのマスクを支持固定するマスクフレームの関係を示している。また、図14(a)は、図14の各ストリップ(スリット)の上端部(あるいは下端部)を拡大して示した図である。
【0068】
図14(a)に示したように、隣合う各ストリップ9aには、互いに向い合う長辺の面(スリットの両側の長辺端に相当する面)に1個以上の突起部9fが付与されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。この突起部9fは、上記したように、例えば、大電流の電子ビームがマスクの限られた場所に当たることによる熱膨張等でストリップが弛んで隣り合うストリップと絡む場合を防止するために設けられるものである。
【0069】
この突起部9fの大きさは、熱膨張によりストリップが弛んで隣のストリップと線接触により絡み合うの防止する為の大きさ、つまり、線接触を点接触にするための大きさであればよく、必要以上に大きくする必要のないものである。従って、突起部9fは、スリット9bを通過する電子ビーム11の通過量を著しく低減せしめる大きさや、カラー陰極線管の輝度に影響を与える大きさや、外部から振動のみでこの突起部9f自体が接触するような大きさになることはない。例えば、突起部9fの大きさを、外部から振動のみでこの突起部9f自体が接触するような大きさにする場合、逆に、熱膨張等による弛みでストリップ9aの絡みが発生し易くなり、カラー陰極線管の画像に悪影響を与えることになるので、突起部9fの大きさは必要以上に大きくすることは無いものである。
【0070】
本実施の形態では、上記した各実施の形態と同様に、各ストリップ9aの幅および各スリット9bの幅を揃えるように作用する。これは、必要最小限の大きさで形成される突起部9fの隣り合う突起部9fとの間の距離を一定に揃えるように作用することになる。従って、追加孔9dを設けることは、突起部9fが設けられたストリップ9aの絡み防止作用に対して、好影響を与えることは有っても、悪影響を与えることはないことになる。
【0071】
このように本実施の形態では、隣り合うストリップの絡みを防止するために各ストリップの互いに隣り合う面の対向する位置に突起部が設けられたマスクであっても、追加孔9dを設けることにより、実施の形態1〜4と同様にピッチムラの発生を抑制することができる。
【0072】
実施の形態6.
上記した各実施の形態では、ストリップ型マスクのスリット9bの上下端から2mm以内に、少なくとも1個の長方形の追加孔9dを設けることでピッチムラを抑制する場合について示したが、追加孔の形状としては、長方形に限られるわけではなく、円形あるいは正方形や菱形等の4変形を含む多角形であっても良い。そこで、以下に示す実施の形態6では、追加孔9dが円形の場合と、菱形の場合について説明する。
【0073】
図15は、実施の形態6のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体のストリップ型マスクの正面図であり、図15(a)は、追加孔9dが円形の場合の図15のスリット上端付近の拡大図であり、図15(b)は、追加孔9dが菱形の場合の図15のスリット上端付近の拡大図である。
【0074】
図15と、他の実施の形態の各図とを比較した場合、各ストリップに加わるX方向(水平方向)収縮力(ポアソン収縮)差△Pと、各スリット間隔が異なるように各ストリップに発生される回転モーメントMは、本実施の形態では追加孔9dの形状により若干の変動を受ける場合は考えられるが、追加孔9dの周辺の剛性を調整することについては、上記した各実施の形態と全く同様に実施が可能であり、本発明の応力緩和作用による効果も上記した各実施の形態と同様に得ることができる。
【0075】
このように本実施の形態では、追加孔9dの形状を円形や菱形等に変更した場合であっても、実施の形態1〜5と同様にピッチムラの発生を抑制することができる。
【0076】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体は、一部もしくは全スリットの上下端とフレームとの溶接点(線)との間に、対応するスリットの延長線上に対応するスリットからの距離が2mm以下であるように追加孔を設けることにより、張力分布の局部的な変化や各ストリップの長さの差によって発生する各スリット幅の差(ピッチムラ)の発生を、何ら画質を損なうことなく抑制できる。また、さらに、その追加孔の開口寸法の大きさ、位置、および、対応するスリットに対する個数を変化させることにより、さらにピッチムラの発生を抑制でき、結果として、カラー陰極線管の画質を向上させることができる。また、この効果は、ストリップの絡み防止の為に、ストリップに突起部を付けた場合でも変らない。
【図面の簡単な説明】
【図1】テレビジョンやコンピュータ用ディスプレイ等に用いられるカラー陰極線管の一例の断面図である。
【図2】実施の形態1のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体を示す斜視図であり、(a)は各ストリップ(スリット)の上端部(あるいは下端部)を拡大して示した図である。
【図3】従来のストリップ型マスク構体の構成を示す斜視図であり、(a)は各ストリップ(スリット)の上端部(あるいは下端部)を拡大して示した図である。
【図4】図3に示した従来のストリップ型マスク構体を示す正面図であり、(a)はその各ストリップ(スリット)の上端部の部分拡大図であり、(b)は(a)における各ストリップ(スリット)の幅の変化を示す図であり、(c)は従来のストリップ型マスクに加えられる張力の分布を示す図である。
【図5】(a)〜(e)は図3、図4に示した従来のマスクにおけるピッチムラ発生のメカニズムを示す図である。
【図6】図2および図3のストリップ型マスクの正面図であり、(a)はスリット上端付近の拡大図である。
【図7】(a)〜(e)は図2及び図6に示した実施の形態1のマスクにおけるピッチムラ抑制のメカニズムを示す図である。
【図8】(a)、(b)は張力分布の局部的な変化およびストリップの長さの差が発生した場合の、スリット先端から追加孔まで距離と各ストリップに対するX方向収縮力差ΔPの関係および回転モーメントMの関係を示す図である。
【図9】実施の形態2のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体のストリップ型マスクの正面図であり、(a)はスリット上端付近の拡大図である。
【図10】(a)は任意のスリットS1〜S3とこのスリットに対応するストリップT1、T2、および追加孔D1〜D3を示し、張力Tが加えられている状態を示し、(b)は本実施の形態の追加孔D2のスリットS2の上端からの距離をΔCのみ長くした場合を示し、(c)は追加孔D2の開口寸法のうちスリットS2の延長線方向の寸法の大きさをΔEのみ小さくした場合を示している。
【図11】実施の形態3のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体のストリップ型マスクの正面図であり、(a)はスリット上端付近の拡大図である。
【図12】実施の形態4のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体と電子ビームの関係を示す断面図である。
【図13】図12の追加孔周辺を拡大して示した断面図である。
【図14】実施の形態5のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体を示す斜視図であり、(a)は各ストリップ(スリット)の上端部(あるいは下端部)を拡大して示した図である。
【図15】実施の形態6のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体のストリップ型マスクの正面図であり、(a)は追加孔が円形の場合のスリット上端付近の拡大図であり、(b)は追加孔が菱形の場合のスリット上端付近の拡大図である。
【符号の説明】
1 カラー陰極線管、 2 蛍光体スクリーン面、 3 フェイスパネル、 4 ファンネル、 4a ネック部、 5 電子銃、 6 マスク、 7 マスクフレーム、 8 偏向ヨーク、 9 マスク(ストリップ型マスク)、 9 ストリップ、 9a ストリップ、 9b スリット、 9c スリット領域、9d 追加孔、 9e 溶接点(線)、 9f 突起部、 9s 隔壁部、 9z 従来のストリップ、 10 ダンパー線、 11 電子ビーム。
Claims (10)
- 平板に多数の細状素体のストリップが形成されることにより該各ストリップ間に多数の電子ビーム通過用のスリットが形成された色選別マスクと、該色選別マスクの上下端を溶接することにより架張された状態で保持するマスクフレームとからなるカラー陰極線管用のストリップ型マスク構体において、
前記色選別マスクは、少なくとも一部の前記スリットの長手方向の延長線方向であり、かつ、当該スリットの上端および下端と対応する上下のマスクフレーム溶接点との間に、当該スリットとは連続しないように隔壁部を設けて少なくとも1個の追加孔が各々設けられ、
前記追加孔と当該スリットの端部との間の隔壁部の幅が2mm以下である
ことを特徴とするカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体。 - 前記色選別マスクは、各スリットごとに前記追加孔が、張力分布の局部的な変化および各スリット幅の差に対応させて開口寸法および前記隔壁部の幅が変更するように設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体。 - 前記色選別マスクは、前記スリットが形成される領域の両水平端から略20mm以内に形成される各スリットに対応させて、前記追加孔が設けられる
ことを特徴とする請求項1または2に記載のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体。 - 前記色選別マスクは、少なくとも一部の前記追加孔の開口寸法を、管軸を基準にして所定以上の入射角度で入射する電子ビームが前記色選別マスクの厚み寸法により通過できない寸法に設定する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体。 - 前記色選別マスクの各ストリップは、隣り合うストリップとの間のスリットを形成する辺に、隣合うストリップと対向して上下位置が同位置となるように、熱膨張時に点接触する形状の突起部を設ける
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体。 - 前記色選別マスクの前記追加孔は、前記追加孔と当該スリットの端部との間に設けられる隔壁部の幅の範囲が、0.03mm以上2mm以下の範囲である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体。 - 前記色選別マスクの前記追加孔は、その形状が、スリットの幅と同寸法の対向する辺寸法を有する長方形である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体。 - 前記色選別マスクの前記追加孔は、その形状が、スリットの幅と同寸法の直径寸法を有する円形である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体。 - 前記色選別マスクの前記追加孔は、その形状が、スリットの幅と同寸法の対角線寸法を有する菱形である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体。 - 前記色選別マスクの前記追加孔の開口寸法を変更する場合には、スリットの長手方向の延長線方向の寸法を変更する
ことを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のカラー陰極線管用ストリップ型マスク構体。
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