JP2004295996A - 磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体製造装置および磁気記録媒体 - Google Patents
磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体製造装置および磁気記録媒体 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004295996A JP2004295996A JP2003086366A JP2003086366A JP2004295996A JP 2004295996 A JP2004295996 A JP 2004295996A JP 2003086366 A JP2003086366 A JP 2003086366A JP 2003086366 A JP2003086366 A JP 2003086366A JP 2004295996 A JP2004295996 A JP 2004295996A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- magnetic
- magnetic layer
- protective film
- recording medium
- polishing
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Magnetic Record Carriers (AREA)
- Manufacturing Of Magnetic Record Carriers (AREA)
Abstract
【解決手段】磁性層を研磨した後にCVD法で保護膜を形成することにより、磁性層表面に形成された異常突起を除去して、保護膜を形成した後の磁気記録媒体表面を平滑にする。磁性層の研磨と保護膜の形成とを同一の真空槽内で行い、磁性層を研磨するにあたって、非磁性支持体の磁性層が形成された面にテープ状の研磨テープを当接させ、非磁性支持体と研磨テープとを相対的に摺動させる。また、保護膜の形成をプラズマCVD法によって行い、保護膜にはダイヤモンド構造の炭素が含まれるようにする。保護膜の膜厚範囲が2nmより厚く14nmより薄くなるようにすることが望ましい。
【選択図】図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体製造装置および磁気記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、高密度の磁気記録に対応することが可能な磁気記録媒体としては、Co−Ni合金、Co−Cr合金、Co−O等の金属磁性材料を、メッキや真空薄膜形成手段(真空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法等)によって、ポリエステルフィルムやポリアミド、ポリイミドフィルム等の非磁性支持体上に直接被着した、いわゆる金属磁性薄膜型の磁気記録媒体が知られている。
【0003】
金属磁性薄膜型の磁気記録媒体は抗磁力や角形比等に優れ、磁性層の厚みを極めて薄くできるため、記録減磁や再生時の厚み損失が著しく小さく短波長での電磁変換特性に優れている。また、磁性層中に非磁性材であるバインダーを混入する必要がないために、磁性材料の充填密度を高めることができるなど数々の利点を有している。このように優れた磁気特性的を有するため、金属磁性薄膜型の磁気記録媒体は高密度磁気記録媒体の主流になりつつある。
【0004】
さらに、金属磁性薄膜型の磁気記録媒体としては、電磁変換特性を向上させて大きな出力を確保するために、金属磁性材料を斜め方向から蒸着することで磁性層を形成する、いわゆる斜方蒸着タイプの磁気記録媒体も提案され実用化されている。
【0005】
ところで、磁気記録媒体では高密度記録化が進行しており、それに対応すべくスペーシング損失を少なくするため、媒体表面は平滑化される傾向にある。しかし、媒体面の平滑化が進むとそれに伴いヘッドと媒体間の摩擦力が増大し、媒体に生ずる剪断応力が大きくなる。したがって、磁気記録媒体には、より大きな摺動耐久性が要求されるようになり、媒体の摺動耐久性を向上させる手法として、磁性層の表面に保護膜を形成する技術が検討されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
保護膜を成膜する方法としては、スパッタリング法が挙げられる。スパッタリング法では、Ar等のスパッタガスを電界や磁場を利用して電離(プラズマ化)し、加速することでターゲット表面に衝突させる。プラズマ粒子が衝突したターゲットからはターゲット原子がはじき出され、はじき出された原子が被処理体上に堆積することでスパッタ膜が形成される。
【0007】
【特許文献1】特開昭61−240435号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、スパッタリング法によって保護膜を形成した場合には、一般に膜の堆積速度が遅く、工業的見地から見たときに生産性に劣る。また、成膜される保護膜の表面は、保護膜の下に形成された磁性層の表面形状を緩やかにした形状になる。しかし、磁性層の表面に異常突起や異物等が存在する場合、異常突起や異物上に保護膜が形成されるため、磁気記録媒体上に異常突起が形成されてしまう。磁気記録媒体上に異常突起が形成されると、記録媒体の平滑性が悪化してスペーシングの原因となり電磁変換特性を悪化させる。また、異常突起がVTR(Video Tape Recorder)などの画像欠陥の原因になってしまう。
【0009】
上述した特許文献1では、磁性層中に粒子を混入して磁性層の形成後に研磨を行う技術が開示されている。しかし、特許文献1に開示された技術では、媒体表面を平滑化することは可能であるが、磁性層中に粒子を混入することで記録密度が低下してしまう。
【0010】
したがって本願発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、記録媒体の平滑化を図ってスペーシング損失を低減して高密度記録化を図ると共に、異常突起を原因とするエラーレートの劣化による画像欠陥を低減することが可能な磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体の製造装置および磁気記録媒体を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本願発明の磁気記録媒体の製造方法は、非磁性支持体上に磁性層を形成し、前記磁性層上に保護膜を形成する磁気記録媒体の製造方法であって、前記磁性層を形成した後に、前記磁性層の表面を研磨し、研磨した前記磁性層上に化学的気相成長法によって、保護膜を形成することを特徴とする。
【0012】
磁性層を研磨した後にCVD法で保護膜を形成することにより、磁性層表面に形成された異常突起を除去して、磁性層表面を平滑化することができ、保護膜を形成した後の磁気記録媒体表面を平滑にすることができる。これにより、磁気ヘッドと記録媒体との距離を接近させてスペーシングの問題を緩和させ、良好な電磁変換特性を有する磁気記録媒体を製造することができる。
【0013】
また、磁性層の研磨と保護膜の形成とを同一の真空槽内で行うことで、製造工程や製造装置の簡略化を図ると共に、研磨後の磁性層に汚れが付着することを防止でき、汚れに起因する欠陥を低減して製造の歩留まりを向上させることができる。さらに、磁性層を研磨するにあたって、非磁性支持体の磁性層が形成された面にテープ状の研磨テープを当接させ、非磁性支持体と研磨テープとを相対的に摺動させる。これにより、長いテープ状の磁気記録媒体を製造する場合でも、研磨テープを巻き取ることで常に清浄で磨耗していない研磨面を磁性層に当接させ、均一な研磨を行うことが可能となる。
【0014】
また、保護膜の形成をプラズマCVD法によって行い、保護膜にはダイヤモンド構造の炭素が含まれるようにすることで、保護膜の耐久性を向上させて長寿命の磁気記録媒体を製造することが可能となる。保護膜の膜厚範囲が2nmより厚く14nmより薄くなるようにすることで、磁気欠陥の少ない耐久性に優れた磁気記録媒体を製造することが可能となる。
【0015】
また、上記課題を解決するために本願発明の磁気記録媒体の製造装置は、非性支持体上に磁性層が形成され、前記磁性層上に保護膜が形成された磁気記録媒体を製造する装置であって、前記非磁性支持体の磁性層表面に当接されて前記磁性層の研磨を行う研磨手段と、前記非磁性支持体を前記研磨手段に対して相対的に移動させる搬送手段と、前記非磁性支持体の相対的移動方向で前記研磨手段よりも下流側に設けられて前記磁性層上に化学的気相成長法によって保護膜を形成する保護膜形成手段とを有することを特徴とする。
【0016】
また、上記課題を解決するために本願発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に磁性層が形成され、前記磁性層上に保護膜が形成された磁気記録媒体であって、前記磁性層表面は、前記保護膜が形成される前に研磨され、前記保護膜は化学的気相成長法によって形成されたことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体製造装置および磁気記録媒体について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は、以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明は、磁性層の研磨を行った後にプラズマCVD装置で硬質カーボン保護膜の形成を行って磁気記録媒体を製造するものである。
【0018】
図1は後述する磁気記録媒体の製造装置によって製造される磁気記録媒体の製造工程を模式的に説明する工程断面図である。図1(a)は、テープ状の非磁性支持体21上に磁性層22が形成された状態を示す工程断面図である。非磁性支持体21は、テープ状の樹脂で形成されており例えばポリエチレンテレフタレート(PET)を用いる。磁性層22は、例えば金属磁性材料を、真空薄膜形成技術によって非磁性支持体21上に被着させることで形成される金属磁性薄膜である。
【0019】
金属磁性材料としては、例えばFe,Co,Ni等の強磁性金属、Fe−Co,Co−O,Fe−Co−Ni,Fe−Cu,Co−Cu,Co−Au,Co−Pt,Mn−Bi,Mn−Al,Fe−Cr,Co−Cr,Ni−Cr,Fe−Co−Cr,Co−Ni−Cr,Fe−Co−Ni−Cr等の強磁性合金等が挙げられる。また、金属磁性薄膜としては、これらの単層膜であっても良いし、多層膜であっても良い。
【0020】
磁性層22として金属磁性薄膜を形成する真空薄膜形成技術としては、真空下で金属磁性材料を加熱蒸発させ非磁性支持体21上に被着せしめる真空蒸着法や、金属磁性材料の蒸発を放電中で行うイオンプレーティング法や、アルゴンを主成分とする雰囲気中でグロー放電を起こし生じたアルゴンイオンでターゲット表面の原子をたたき出すスパッタ法等、いわゆるPVD技術がいずれも使用可能である。
【0021】
また、非磁性支持体21と磁性層22の間、あるいは磁性層22が多層膜の場合には各層間に、付着力の向上並びに抗磁力の制御等の目的で下地層または中間層を設けても良い。更に、金属磁性薄膜表面近傍が耐食性の改善等のために酸化物となっていても良い。
【0022】
磁性層22には図1(a)に示したように、金属磁性材料が局所的に厚く形成された異常突起23や、磁性層22形成後に磁性層22上に付着した異物24が存在する場合がある。そこで磁性層22を形成した後に、図1(b)に示すように、研磨テープ9を磁性層22に当接させて摺動させ、磁性層22の表面を研磨して異常突起23および異物24を除去して、磁性層22表面を平滑化させる。磁性層22の研磨工程を、保護膜26の形成を行うプラズマCVDと同一の真空チャンバ内で行うことにより、製造工程や製造装置の簡略化を図ると共に、研磨後の磁性層22に汚れが付着することを防止でき、汚れに起因する欠陥を低減して製造の歩留まりを向上させることができる。
【0023】
非磁性支持体21の磁性層22が形成された面に研磨テープ9を当接させ、非磁性支持体21と研磨テープ9とを相対的に摺動させることにより、常に清浄で磨耗していない研磨面を磁性層22に当接させ、長いテープ状の磁気記録媒体を製造する場合でも、均一な研磨を行うことが可能となる。また、研磨テープ9を巻き取る速度や接触圧力を調整することで、磁性層22を研磨する量を調整することができる。
【0024】
次に、図1(c)に示すように、研磨により平滑化された磁性層22上にプラズマCVD法を用いて保護膜26の形成を行う。この保護膜26としては、例えばハードディスクにおいて既に使用されているカーボン膜や石英(SiO2)膜、ジルコニア(ZrO2)膜等が知られている。保護膜26の耐久性を向上させるためには、ダイヤモンド構造を有する硬質カーボン膜(いわゆるダイヤモンド状カーボン膜)を形成することが望ましい。すなわちカーボンには、グラファイト構造を有するもの、ダイヤモンド構造を有するもの等が知られており、ラマン分光スペクトルを測定すると、それぞれに由来するピークが観測される。ここで言うダイヤモンド状カーボン膜とは、少なくともその一部がダイヤモンド構造を有するもので、ラマン分光スペクトルにおいてダイヤモンド構造に由来するピークが観測されるものである。通常は、グラファイト構造に由来するピークとともに、ダイヤモンド構造に由来するピークが現れる。
【0025】
磁気記録媒体には、上述のように磁性層22の研磨を行った後に、磁性層22上にプラズマCVD法によって保護膜26が形成される。さらに、必要に応じて非磁性支持体21の磁性層22を形成した側とは反対側の面にバックコート層を形成してもよい。また、非磁性支持体21と磁性層22の間に下塗り層を形成したり、さらに磁性層22上に滑剤層を形成する等、付加的に各種層を形成することはなんら差し支えない。この場合、例えばバックコート層に含まれる非磁性顔料、樹脂結合剤あるいは潤滑剤層に含まれる材料等としては、従来公知のものがいずれも使用可能である。
【0026】
図2は本発明の磁気記録媒体を製造する製造装置の構成を示す模式図である。磁気記録媒体製造装置100は、磁性層22が一面に形成されたテープ状の非磁性支持体21を搬送する搬送系機構110と、非磁性支持体21上に形成されている磁性層22を研磨する研磨ユニット120と、磁性層22上に保護膜26を形成する気相成長部130とを一つの真空チャンバ2に収納し、真空チャンバ2内部の排気を行う排気系機構である真空ポンプ3を有している。
【0027】
搬送系機構110は、磁性層22が形成されてロール状に巻き取られたテープ状の非磁性支持体21を保持する巻出ロール4と、非磁性支持体21を搬送する経路に回転可能に配置されて搬送経路で非磁性支持体21を支持する複数のローラー5,7と、非磁性支持体21を周側面に支持して気相成長部130に非磁性支持体21の磁性層22が形成された面を対向させるように支持する成長部回転体6と、保護膜26が形成された非磁性支持体21を巻き取る巻取ロール8とから構成される。搬送系機構110を搬送される非磁性支持体21には、研磨ユニット120および気相成長部130に対向する面に磁性層22が形成されている。
【0028】
なお、巻出ロール4、巻取ロール8及び成長部回転体6は、それぞれ非磁性支持体21の幅とほぼ同じ軸方向長さの円筒形状を成し、円筒中心軸を回転中心として回転する。また、成長部回転体6は巻出ロール4および巻取ロール8の直径よりも大きな直径の円筒形状であり、図中時計回り方向に定速回転するように設けられている。ローラー5およびローラー7は、巻出ロール4側から巻取ロール8側に非磁性支持体21を走行させる中途に設けられ、非磁性支持体21を成長部回転体6および研磨ユニット120に適切なテンションで当接させ、非磁性支持体21を円滑に走行させる機能を担っている。
【0029】
研磨ユニット120は、巻出部10にロール状に巻き取られているテープ状の研磨テープ9を、巻取部12で一定の速度で巻き取り、研磨支持体11で研磨テープ9を磁性層22に一定のテンションで当接させる。巻取部12が研磨テープ9を巻き取る速さを調整することで、磁性層22に接する研磨テープ9の量を調整する。また、研磨支持体11の非磁性支持体21に対する位置を変化させることで、研磨テープ9と磁性層22との接触圧力を調整する。研磨テープ9の代わりに不織布を用いても良い。上述した搬送系機構110によって搬送される非磁性支持体21の磁性層22と研磨テープ9とが接触することにより、磁性層22の表面を研磨することができる。磁性層22を研磨することで、異常突起を除去して磁性層22表面を平滑化し、良好な電磁変換特性を実現することができる。
【0030】
気相成長部130は、成長部支持体6側が開放された容器である反応管13と、反応管13の内部に取り付けられた平板状の放電電極14を有して構成される。この反応管13は、石英やパイレックス(登録商標)ガラス、プラスチック等の絶縁材、または表面が絶縁処理された金属材料より構成される。反応管13の一端には真空チャンバ2の底部を貫通して炭素系ガス導入口16が形成され、炭素ガス導入口16から原料ガスが反応管13内に導入されるようになっている。一定量に計測された原料ガスは始めに炭素系ガス導入口16から緩衝ボックスに導入された後、反応管13内に導入されるようになっている。ここでは、保護膜26として硬質カーボン膜を成膜するために、原料ガスとしてはエチレン、プロパン等の炭化水素ガスやトルエン等の液体のものを気化させたものが用いられる。また、成長部回転体6の周辺に反応管13が複数設けられるとしても構わない。
【0031】
放電電極14は、ガスを透過しやすく、且つ電界を均一にかけることができ、さらに柔軟性が得られることからメッシュ状に形成されるのが望ましい。放電電極14の材料としては、例えば銅が代表的であるが、導電性を有する金属であればいずれでも良く、ステンレスや真鍮、金等も使用可能である。また放電電極14は、外部に配設された直流電源15に接続され、+500〜2000Vの電位が印加されるようになっている。直流電源15の代わりに高周波電源や直流に高周波を重畳した電源システムを用いるとしても良い。
【0032】
気相成長部130では、プラズマCVD(Chemical Vaper Deposition)によって、磁性層22が形成された非磁性支持体21を搬送させながら、磁性層22表面に保護膜26を連続的に形成する。このようなプラズマCVD法では、放電電極14に電圧が印加されることで、成長部回転体6に保持された非磁性支持体21上の磁性層22と放電電極14との間にプラズマが発生する。反応管13内に導入された原料ガスは、生じたプラズマのエネルギーによって分解され、非磁性支持体21の磁性層22上に保護膜26が被着堆積される。
【0033】
すなわちこの磁気記録媒体製造装置100では、真空チャンバ2内において、被処理体であるテープ状の非磁性支持体21が、巻出ロール4からローラー5に送出される。気相成長部130で保護膜26が磁性層22上に形成される前に、非磁性支持体21の磁性層22に研磨テープ9が当接されて磁性層22表面が研磨される。次に非磁性支持体21は、非磁性支持体21の搬送に伴って回転するローラー5に支持されながら成長部回転体6に送り出される。成長部回転体6の周側面に支持された非磁性支持体21は、図中の時計回り方向に回転して搬送されると共に気相成長部130で保護膜26が既に研磨テープ9で研磨された磁性層22上に形成される。したがって、保護膜26は平滑化された磁性層22上に形成され、保護膜26表面が平滑化された状態で形成される。その後非磁性支持体21は、非磁性支持体21の搬送に伴って回転するローラー7に支持されながら巻取ロール8に搬送され、巻取ロール部8が回転することでロール状に巻き取られていく。
【0034】
磁性層22表面を研磨テープ9で研磨した後に磁性層22上に保護膜26を形成することで、形成された保護膜26の表面は平滑化されたものとなる。したがって、保護膜26を形成した後の磁気記録媒体表面を平滑にすることができ、磁気記録装置や磁気再生装置の磁気ヘッドと磁気記録媒体との距離を接近させてスペーシングの問題を緩和させ、良好な電磁変換特性を有する磁気記録媒体を製造することができる。
【0035】
磁性層22の研磨工程を、図2を用いて説明したように、保護膜26の形成を行うプラズマCVDと同一の真空チャンバ2内で行うことにより、製造工程や製造装置の簡略化を図ると共に、研磨後の磁性層に汚れが付着することを防止でき、汚れに起因する欠陥を低減して製造の歩留まりを向上させることができる。
【0036】
[実施例]
【0037】
次に、実際に図2に示した構成を有する磁気記録媒体製造装置を使用して、研磨処理を施した磁性層22表面に保護膜26として硬質カーボン保護膜を形成し、エラーレート特性、画像欠陥数、シャトル及びスチル耐久性の評価を行った。
【0038】
エラーレート特性及び画像欠陥数の評価としては、DVCAMのDIGITAL VIDEOCASSETTE RECORDER、DSR−1800(ソニー社)を使用し、テープは184min.長(316m)、一条件当たり10巻のテープを評価した。Rec/Pbにおける、トータルエラーレートの1.0E−02以上の平均個数と欠陥検出インディケーターでの平均点灯回数を示した。また、これらは0個であることが理想ではあるが、それを作製することは研磨処理条件の変更等で可能ではあるものの、摩擦係数が高く走行が不安定になること等から歩留まりが著しく低下し、実際にそれらを生産することは不可能に等しく、画像への影響がほとんど出ない2個以下であることが望ましい。
【0039】
また、シャトル及びスチル耐久性の評価は、DVのDCR−VX2000(ソニー社)を使用し、テープは60min.長(71m)、一条件当たり2巻のテープを評価した。シャトル走行試験は40℃、30%RH環境下で1回記録した後99回再生させ、初期出力に対する100pass目の出力をdB表示した。このレベルダウン量が−3dB以内であれば、VTRに内蔵される信号増幅回路のマージンにより画質・音質に影響を与えない。スチル耐久試験は+5℃の環境下でスチル状態のまま保持し、結果を初期出力に対して−3dBになる時間で表示した。
【0040】
先ず、非磁性支持体21として、厚さ6μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなるベースフィルムを用い、ベースフィルム上に酸素ガスを導入しながらCo単層金属磁性膜を斜め蒸着法により成膜して磁性層22を形成した。
【0041】
成膜条件は、
入射角 :45〜90゜
導入ガス :酸素ガス
蒸着時真空度:2×10−2Pa
膜厚 :200nm
である。
【0042】
続いて、真空チャンバ2内に設置した研磨ユニット120を使用して磁性層22であるCo単層金属磁性膜の表面を研磨し、同じ真空チャンバ2内でプラズマCVD法を用いて保護膜26である硬質カーボン保護膜を成膜してサンプルテープ(実施例テープ)を作成した。尚、磁性層22の研磨および保護膜26の形成は図2に示して説明した磁気記録媒体製造装置を用いた。
【0043】
保護膜26の成膜条件および磁性層22の研磨条件は下記の条件である。また、成膜されたカーボン保護膜の厚みは2〜16nmの範囲とした。
【0044】
各膜厚での実施例のエラーレート特性、画像欠陥数の評価、シャトル耐久性およびスチル耐久性の測定結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
また、比較例1として図2に示される研磨ユニット120を設置せず、磁性層22の研磨を行わないでプラズマCVD法で保護膜26の形成を行って磁気記録媒体を作成した。成膜条件は膜厚を10nmとし、下記条件で作製した。
【0047】
比較例1のエラーレート特性、画像欠陥数の評価、シャトル耐久性およびスチル耐久性の測定結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
さらに比較例2として、比較例1と同様に磁性層の研磨をせずに保護膜を形成した後に下記の研磨条件にて保護膜上から研磨処理を行なった磁気記録媒体を作製した。
<研磨条件>
研磨テープ :WA4000
送り速度 :40mm/min.
抱き角 :20°
出口テンション:8及び12kg
【0050】
比較例2のエラーレート特性、画像欠陥数の評価、シャトル耐久性およびスチル耐久性の測定結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
表1および表2から、実施例の保護膜厚みが2〜14nmの磁気記録媒体では、比較例1と比較してトータルエラーレートの飛び出し回数が減少しており、画音の劣化を示す欠陥検出インディケーターでの点灯回数も少ない。これは、画像欠陥の原因の一つである異常突起や異物等が除去された為に抑制されていると考えられる。また、シャトル耐久性及びスチル耐久性も比較例1と同等のレベルであり問題ない。カーボン保護膜の膜厚が2nmの条件においては、シャトル耐久性及びスチル耐久性が劣化し、画音に支障をきたす可能性がある。また、膜厚が14nmと16nmの条件においては、エラーレート特性及び画像欠陥数が多く、画音に支障をきたすことが分かる。
【0053】
また、表2と表3を比較すると、磁性層上にプラズマCVD法で保護膜を形成した後に研磨処理を行なった比較例2では、出口テンションが8kgの研磨条件においては、エラーレート特性及び画像欠陥数の改善効果が不十分である。また、出口テンションが12kgの研磨条件においては、エラーレート特性及び画像欠陥数は改善されるが、シャトル耐久性及びスチル耐久性が悪化し、画音に支障をきたす可能性があることが分かる。
【0054】
このことから、磁性層を研磨した後にプラズマCVD法によって保護膜を形成した本発明の磁気記録媒体は、エラーレート特性および画像欠陥に優れ、耐久性も確保されていることが確認できる。このとき、保護膜の膜厚は2nmより厚く14nmよりも薄くすることが好ましい。また、磁気記録媒体の耐久性を向上させるためには、保護膜としてはダイヤモンド構造の炭素が含まれるようにすることが好ましい。
【0055】
以上の説明から明らかなように、本発明の磁気記録媒体の製造方法、製造装置、保護膜形成前に磁性層表面を研磨することで、保護膜形成前に磁性層表面の異常突起や異物等を除去し、平滑性が向上した磁性層に保護膜形成できる。したがって、例えば異常突起によるエラーレートの劣化を抑え、磁気記録媒体上の異常突起や異物に起因する画像欠陥が無い優れた磁気記録媒体を得ることが可能となる。
【0056】
【発明の効果】
磁性層を研磨した後にCVD法で保護膜を形成することにより、磁性層表面に形成された異常突起を除去して、磁性層表面を平滑化することができ、保護膜を形成した後の磁気記録媒体表面を平滑にすることができる。これにより、磁気ヘッドと記録媒体との距離を接近させてスペーシングの問題を緩和させ、良好な電磁変換特性を有する磁気記録媒体を製造することができる。
【0057】
また、磁性層の研磨と保護膜の形成とを同一の真空槽内で行うことで、製造工程や製造装置の簡略化を図ると共に、研磨後の磁性層に汚れが付着することを防止でき、汚れに起因する欠陥を低減して製造の歩留まりを向上させることができる。さらに、磁性層を研磨するにあたって、非磁性支持体の磁性層が形成された面にテープ状の研磨テープを当接させ、非磁性支持体と研磨テープとを相対的に摺動させる。これにより、長いテープ状の磁気記録媒体を製造する場合でも、研磨テープを巻き取ることで常に清浄で磨耗していない研磨面を磁性層に当接させ、均一な研磨を行うことが可能となる。
【0058】
また、保護膜の形成をプラズマCVD法によって行い、保護膜にはダイヤモンド構造の炭素が含まれるようにすることで、保護膜の耐久性を向上させて長寿命の磁気記録媒体を製造することが可能となる。保護膜の膜厚範囲が2nmより厚く14nmより薄くなるようにすることで、磁気欠陥の少ない耐久性に優れた磁気記録媒体を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録媒体の製造方法を説明する工程断面図である。
【図2】本発明の磁気記録媒体製造装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
100 磁気記録媒体製造装置
110 搬送系機構
120 研磨ユニット
130 気相成長部
1 非磁性支持体
2 真空チャンバ
3 真空ポンプ
4 巻出ロール
5,7 ローラー
6 成長部回転体
8 巻取ロール
9 研磨テープ
10 巻出部
11 研磨支持体
12 巻取部
13 反応管
14 放電電極
15 直流電源
16 炭素ガス導入口
21 非磁性支持体
22 磁性層
23 異常突起
24 異物
26 保護膜
Claims (12)
- 非磁性支持体上に磁性層を形成し、前記磁性層上に保護膜を形成する磁気記録媒体の製造方法であって、
前記磁性層を形成した後に、前記磁性層の表面を研磨し、
研磨した前記磁性層上に化学的気相成長法によって、保護膜を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。 - 前記磁性層の研磨と前記保護膜の形成とを同一の真空槽内で行うことを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体の製造方法。
- 前記非磁性支持体の前記磁性層が形成された面に、テープ状の研磨テープを当接させ、前記非磁性支持体と前記研磨テープとを相対的に摺動させて、前記磁性層の研磨を行うことを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体の製造方法。
- 前記保護膜の形成をプラズマCVD法によって行い、前記保護膜にはダイヤモンド構造の炭素が含まれることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体の製造方法。
- 前記保護膜の膜厚範囲が2nmより厚く14nmより薄くなるように前記保護膜を形成することを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体の製造方法。
- 非磁性支持体上に磁性層が形成され、前記磁性層上に保護膜が形成された磁気記録媒体を製造装置であって、
前記非磁性支持体上の磁性層表面に当接されて前記磁性層の研磨を行う研磨手段と、
前記非磁性支持体を前記研磨手段に対して相対的に移動させる搬送手段と、
前記非磁性支持体の相対的移動方向で前記研磨手段よりも下流側に設けられて前記磁性層上に化学的気相成長法によって保護膜を形成する保護膜形成手段と、
を有することを特徴とする磁気記録媒体の製造装置。 - 前記研磨手段と、前記搬送手段と、前記保護膜形成手段とが同一の真空槽内に配置されていることを特徴とする請求項6記載の磁気記録媒体の製造装置。
- 前記研磨手段は、テープ状の研磨テープを前記磁性層に当接させるとともに、前記研磨テープを前記非磁性支持体に対して相対的に摺動させることを特徴とする請求項6記載の磁気記録媒体の製造装置。
- 前記保護膜形成手段は、プラズマCVD法によりダイヤモンド構造の炭素を含む保護層の形成を行うことを特徴とする請求項6記載の磁気記録媒体の製造装置。
- 非磁性支持体上に磁性層が形成され、前記磁性層上に保護膜が形成された磁気記録媒体であって、
前記磁性層の表面は、前記保護膜が形成される前に研磨され、
前記保護膜は化学的気相成長法によって形成されたことを特徴とする磁気記録媒体。 - 前記保護膜はプラズマCVD法によって形成され、ダイヤモンド構造の炭素が含まれることを特徴とする請求項10記載の磁気記録媒体。
- 前記保護膜の膜厚が2nmより厚く14nmより薄いことを特徴とする請求項10記載の磁気記録媒体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003086366A JP2004295996A (ja) | 2003-03-26 | 2003-03-26 | 磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体製造装置および磁気記録媒体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003086366A JP2004295996A (ja) | 2003-03-26 | 2003-03-26 | 磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体製造装置および磁気記録媒体 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004295996A true JP2004295996A (ja) | 2004-10-21 |
Family
ID=33401046
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003086366A Pending JP2004295996A (ja) | 2003-03-26 | 2003-03-26 | 磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体製造装置および磁気記録媒体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004295996A (ja) |
-
2003
- 2003-03-26 JP JP2003086366A patent/JP2004295996A/ja active Pending
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4193268B2 (ja) | 薄膜形成装置および薄膜形成方法ならびに案内ガイドロール | |
US5589263A (en) | Magnetic recording medium having a ferromagnetic metal thin film, a dry etched layer, a carbonaceous film, and a lubricant film | |
JPH1011734A (ja) | 磁気記録媒体 | |
JPH1186275A (ja) | 磁気記録媒体 | |
JPH10251851A (ja) | 成膜方法及び成膜装置 | |
JP2004295996A (ja) | 磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体製造装置および磁気記録媒体 | |
JP3606416B2 (ja) | 磁気記録媒体の製造方法及びその製造装置 | |
JP3627284B2 (ja) | プラズマcvd装置 | |
JP3358352B2 (ja) | 成膜装置 | |
EP1345213B1 (en) | Magnetic recording medium and method and apparatus for manufacturing the same | |
JP3687117B2 (ja) | 磁気記録媒体及びその製造方法 | |
JPH11279765A (ja) | 薄膜形成装置および薄膜形成方法ならびに円筒キャン | |
JP2843252B2 (ja) | 磁気記録媒体の製造方法及び製造装置 | |
JP2008033996A (ja) | 磁気記録媒体 | |
JPH10237659A (ja) | 成膜方法及び成膜装置 | |
JP2004055114A (ja) | 磁気記録媒体及びその製造方法 | |
JP2004273084A (ja) | 磁気記録媒体の製造方法 | |
JPH1074319A (ja) | 磁気記録媒体の製造方法および製造装置 | |
JP2005129157A (ja) | 磁気記録媒体とその製造方法および製造装置 | |
JPH10255263A (ja) | 磁気記録媒体 | |
JPH09128744A (ja) | 磁気記録媒体の製造装置 | |
JPH07114731A (ja) | 磁気記録媒体の製造方法 | |
JPH103650A (ja) | 磁気記録媒体 | |
JPH10195664A (ja) | 成膜方法及び成膜装置 | |
JPH08129750A (ja) | 保護膜成膜方法及び保護膜成膜装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Effective date: 20050527 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 |
|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Effective date: 20050603 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 |
|
A621 | Written request for application examination |
Effective date: 20050908 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 |
|
A977 | Report on retrieval |
Effective date: 20080201 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Effective date: 20080325 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20080729 |