JP2004294512A - 液晶性ポリエステルおよび光学フィルム - Google Patents

液晶性ポリエステルおよび光学フィルム Download PDF

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Yoshihiro Kumagai
吉弘 熊谷
Hitoshi Mazaki
仁詩 真崎
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Abstract

【課題】液晶配向の固定化が容易で、小さな複屈折の波長分散を実現でき、かつ工業的に見て安価で容易に製造できる液晶性ポリエステルを提供し、さらに複屈折の波長分散等の光学特性を所望の値に正確に調整することができ、所望の配向状態が固定化され、均一で大面積化が可能な光学フィルムを提供する。
【解決方法】下記式で示される構造単位(a)1〜45モル%、(b)1〜45モル%、(c)10〜50モル%、(d)0〜44モル%および(e)0〜44モル%から構成される液晶性ポリエステルおよびこれから得られる光学フィルムが上記課題を解決できる。
【化11】
Figure 2004294512

【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶配向の固定化が容易で、複屈折の波長分散が小さく、位相差フィルム等の光学素子への応用に好適な液晶性ポリエステルおよびそれを用いた光学フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子液晶は、高い耐熱性、成形性などを利用したスーパーエンプラ分野、及び液晶の配向を利用した機能性材料分野において活発に研究開発されている。スーパーエンプラ分野においては電子・電気部品や自動車部品、OA・AV機器部品、封止材料など様々な分野で開発、商品化されている。一方、機能性材料分野では、光記録、非線形光学材料、光ファイバー、液晶表示装置用などの位相差フィルムなどへの応用を目指して活発に研究されており、液晶表示装置用位相差フィルムなどではすでに製品化がなされている。
【0003】
位相差フィルムは、STN(Super twisted nematic)方式やTFT(Thin film transistor)方式等の液晶表示装置において用いられ、色補償や視野角改善のために使用される。一般に色補償用の位相差フィルムとしては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン等の延伸フィルムやネマチック液晶を利用した液晶フィルム等が用いられ、視野角改善用にはネマチック液晶やディスコチック液晶のハイブリッド配向を利用した液晶フィルムが用いられている。
【0004】
液晶フィルムの利点は、配向秩序が高く、複屈折率Δnが延伸フィルムに用いられるポリカーボネート等のポリマー材料に比べて非常に大きいため、同じリターデーション(Δn・d)の位相差フィルムを作製した場合、厚みを非常に薄くすることができることが挙げられる。例えば、ポリカーボネートの位相差フィルムでは、波長590nmにおけるリターデーションΔn・d=400nmのフィルムを作製した場合、厚みは40〜100μmにもなるが、液晶フィルムでは光学的機能を担う部分の実質的厚みは数μmで済む。昨今の液晶表示装置は携帯電話等の小型機器に搭載されることが多く、位相差フィルムの薄型化に対する要求も非常に大きいことから、薄さの点で液晶フィルムの優位性は大きい。
【0005】
これら位相差フィルムに用いられる材料は複屈折に波長分散(波長依存性)を有している。すなわち、一般的な傾向として、位相差フィルムの複屈折Δnは次式(1)で表されるように、波長λに依存する。
Δn(λ)=A+B/(λ−λ ) (1)
ここでA,Bは定数、λは通常紫外線領域における吸収端波長を示す。
【0006】
式(1)から分かるように、複屈折Δnはλ=λで発散する単調減少の曲線となり、測定波長が短波長ほど大きく、長波長ほど小さい。特に液晶材料の分子構造としては液晶性を発現させるためのメソゲンとして、ベンゼン環やナフタレン環あるいはエステル基といった長い共役構造を持ち吸収端波長が長波長側にあるような構造を多数持つ場合が多く、複屈折率Δnの波長分散を大きく(すなわち測定波長が短波長ほど複屈折が大きく)制御することは比較的容易である。また、通常複屈折が大きいと波長分散も大きくなる傾向にある。
【0007】
例えば、吸収端波長が長波長側にあるような構造を持つポリエステルとして、共役構造の長い4−ヒドロキシ桂皮酸単位を導入した液晶ポリエステル(例えば、特許文献1および2参照。)や、p−フェニレンジアクリル酸単位を導入した液晶ポリエステル(例えば、特許文献3参照。)が提案されており、複屈折率Δnの波長分散を大きく制御できるとしている。また、高分子液晶中にスチルベン構造を導入することで、複屈折率が0.4にもなる液晶性ポリエステルが報告されている(例えば、特許文献4および5参照。)。一般的に、液晶物質においては、複屈折率Δnが大きくなれば波長分散は大きくなることが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0008】
これまで液晶フィルムは主としてSTN型液晶表示装置の色補償用位相差フィルムとして用いられてきた。STN型液晶表示装置はTFT型と比較して応答速度が遅いという欠点を有する。STN−LCDの応答速度はセル厚の2乗に反比例するので、高速化するためにはセル厚を薄くする必要がある。この時駆動セルのリターデーションは一定に保たなければならないため、駆動セル用の低分子液晶として、複屈折の大きな液晶を使用する必要がある。複屈折の大きな低分子液晶は先ほど述べたように波長分散が大きいので、すべての波長範囲に渡って良好な補償性能を得るためには、位相差フィルムの波長分散も駆動セルの波長分散に合わせて大きくする必要がある。したがって、高速応答タイプのSTN−LCDに対する位相差フィルムには、先に述べたように波長分散を大きく制御できる液晶フィルムが適している。
【0009】
一方、昨今の携帯電話やPDA(携帯情報端末)などの中小型携帯機器においては、屋外における視認性や低消費電力化の観点から、反射型カラーTFT−LCDや半透過型カラーTFT−LCDも使用されるようになってきた。これら反射型、半透過型TFT−LCDは円偏光モードを採用することが多く、位相差フィルムとしては、直線偏光を円偏光に、円偏光を直線偏光に変換できる四分の一波長板が使用される。さらには本用途における四分の一波長板としては、可視光領域全域において直線偏光を円偏光に、円偏光を直線偏光に変換できることが好ましい。これらの要求を位相差フィルム1枚だけで実現するためには小さな波長分散特性を持つことが好ましく、理想的には、測定波長λにおける位相差が常にλ/4にとなることが好ましい。
【0010】
また、1枚の高分子延伸フィルムで、測定波長が短波長側ほどリターデーションが小さくなるフィルムが提案されている(例えば、特許文献6参照。)。確かにポリカーボネートのような通常の位相差フィルムに比べて、四分の一波長板とした時の、可視光域における円偏光−直線偏光変換特性は良好であるが、測定波長が長波長側及び短波長側の部分は、波長分散特性が理想からずれており、完全な四分の一波長板にはならない。また延伸フィルムのため厚みは80〜140μmと非常に厚いものとなっている。
【0011】
また、同一の材料からなる四分の一波長板と二分の一波長板を適当な角度で貼り合わせる方法が提案されている(例えば、特許文献7参照。)。この方法は波長分散を理想的な四分の一波長板に近づけることができるという大きな利点があり、現在最も使用されている方法であるが、ポリカーボネートの延伸フィルムを2枚使用しているため、厚さの点では不利であり改善の余地は大きい。また、材料の波長分散は小さい方が好ましいとされている。
【0012】
液晶セルに用いる低分子液晶においては、複屈折の波長分散を小さくする場合、シクロヘキサン構造を導入することが有効とされている。シクロヘキサン構造は共役構造が無いため吸収端波長λが短波長側になり、したがって前記式(1)より、波長分散は小さくなると考えられる。また、複屈折の波長分散をより小さくすることや液晶性なども考慮した場合、フェニルシクロヘキサン構造は好ましい構造である。フェニルシクロヘキサン構造を有するポリエステルとしては、4−(4−カルボキシシクロヘキシル)安息香酸単位を有するポリエステルが報告されている(例えば、特許文献8および9参照。)。しかしながら、ここで開示されているポリエステルは、液晶性はなく、エンジニアリングプラスチックとして大量生産されているポリエチレンテレフタレートの染色性改善のために検討したものであり、波長分散についてもなんら触れられていない。
このように、従来の技術では小さな波長分散特性を有し、かつ液晶の配向を固定化できるような高分子液晶は開発された例はなく、検討例もほとんどないのが現状である。
【0013】
【特許文献1】
特開平7−188402号公報
【特許文献2】
特開平8−87008号公報
【特許文献3】
特開平7−179582号公報
【特許文献4】
特開平11−246652号公報
【特許文献5】
特開平11−246750号公報
【特許文献6】
国際公開第00/26705号パンフレット
【特許文献7】
特開平10−68816号公報
【特許文献8】
特公昭47−31715号公報
【特許文献9】
特公昭47−31953号公報
【非特許文献1】
山口留美子,「電子情報通信学会論文誌C」,1988年9月,Vol.J71−C,No.9,p.1241
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、液晶配向の固定化が容易で、小さな複屈折の波長分散を実現でき、かつ工業的に見て安価で容易に製造できる液晶性ポリエステルを提供することにある。
本発明のさらなる目的は、複屈折の波長分散等の光学特性を所望の値に正確に調整することができ、所望の配向状態が固定化され、均一で大面積化が可能な光学フィルムを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題について鋭意研究した結果、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明の第1は、下記式で示される構造単位(a)1〜45モル%、(b)1〜45モル%、(c)10〜50モル%、(d)0〜44モル%および(e)0〜44モル%から構成される液晶性ポリエステルに関する。
【0016】
【化6】
Figure 2004294512
【0017】
(ただし、式(b)中、Wは、下記式(w)で表される基からなる群より選ばれる2価の基を示し、置換基Rbは水素原子、F、Cl、Br、CF、フェニル基、炭素数1〜5のアルキル基もしくは炭素数1〜5のアルコキシ基を示し、qは1〜4であり、また、式(b)は異なる2種以上の構造単位で構成されていてもよく、また、式(c)中、Xは、下記式(x)で表される基からなる群より選ばれる2価の基を示し、置換基Rcは水素原子、F、Cl、Br、CF、炭素数1〜5のアルキル基もしくは炭素数1〜5のアルコキシ基を示し、rは1〜4であり、また、式(c)は異なる2種以上の構造単位で構成されていてもよく、また、式(d)中、Yは、下記式(y)で表される基からなる群より選ばれる2価の基を示し、Rdは水素原子、F、Cl、Br、CF、炭素数1〜5のアルキル基もしくは炭素数1〜5のアルコキシ基を示し、sは1〜4であり、mは2〜10であり、また、式(d)は異なる2種以上の構造単位で構成されていてもよく、また、式(e)中、Zは、下記式(z)で表される基からなる群より選ばれる2価の基を示し、Reは水素原子、F、Cl、Br、CF、シアノ基、炭素数1〜5のアルキル基もしくは炭素数1〜5のアルコキシ基を示し、tは1〜4であり、また、式(e)は異なる2種以上の構造単位で構成されていてもよい。)
【0018】
【化7】
Figure 2004294512
【0019】
【化8】
Figure 2004294512
【0020】
【化9】
Figure 2004294512
【0021】
【化10】
Figure 2004294512
【0022】
また本発明の第2は、本発明の第1の液晶性ポリエステルが、溶融時に液晶相を呈し、かつガラス転移温度以下に冷却することにより該液晶相の配向の固定化が可能であること特徴とする液晶性ポリエステルに関する。
また本発明の第3は、本発明の第1または第2の液晶性ポリエステルから形成されることを特徴とする光学フィルムに関する。
また本発明の第4は、本発明の第3の光学フィルムが、測定波長450nmの光に対する複屈折の値(Δn(450nm))と測定波長590nmの光に対する複屈折の値(Δn(590nm))との比をDとした時、Dが1.00<D<1.12の範囲にあることを特徴とする光学フィルムに関する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳述する。
本発明の液晶性ポリエステルは、前記式(a)、(b)および(c)で表される構造単位(以下、それぞれ構造単位(a)、構造単位(b)および構造単位(c)という。)を必須構造単位とし、必要に応じ、前記式(d)および(e)で表される任意構造単位(以下、それぞれ構造単位(d)および構造単位(e)という。)から少なくとも構成される主鎖型液晶性ポリエステルである。芳香族や環状脂肪族よりなる主鎖型液晶性ポリエステルは数多く知られているが、4−(4−カルボキシシクロヘキシル)安息香酸、カテコールに代表されるオルト体の芳香族ジオール系化合物およびヒドロキシ安息香酸に代表されるヒドロキシカルボン酸系化合物から合成される主鎖型ポリエステルであって、かつ液晶性を示すものは全く検討されていない。
【0024】
構造単位(a)は、液晶性の発現および複屈折の波長分散を小さくするための必須成分であり、4−(4−カルボキシシクロヘキシル)安息香酸またはその機能性誘導体(例えばジメチルエステル等のジアルキルエステルやジフェニルエステル、またはジクロリドのような酸クロリドなど)から誘導される単位である。
【0025】
4−(4−カルボキシシクロヘキシル)安息香酸の合成法としては、特公昭47−31715号公報、特公昭47−31953号公報等に記載のとおり、公知の方法にて容易に製造することができる。例えば4,4’−ビフェニルジカルボン酸のジエステル(例えばジメチルエステル)を、触媒を用いて部分核水添を行うことにより4−(4−カルボキシシクロヘキシル)安息香酸のジエステルを製造し、さらにエステルを加水分解することで得ることができる。触媒としては、ニッケル系触媒や、ルテニウム、パラジウム、ロジウム系触媒などが好ましく用いられる。表面積を大きくするために、活性炭、ケイソウ土、アルミナ、ゼオライト等の担体に坦持させて使用してもよい。通常反応温度は常温から200℃、反応圧力は常圧から20MPaで行うことが合成上好ましい。
【0026】
本発明の液晶性ポリエステルは、構造単位(a)を1〜45モル%、好ましくは2〜42モル%、より好ましくは5〜40モル%の割合で含む。
【0027】
本発明の液晶性ポリエステルにおいて、構造単位(b)は冷却下でガラス状態として液晶相の配向を固定化するための必須成分である。構造単位(b)中のWは、前記式(w)で表される基からなる群より選ばれる2価の基を示し、置換基Rbは水素原子、F、Cl、Br、CF、フェニル基、炭素数1〜5のアルキル基もしくは炭素数1〜5のアルコキシ基を示し、qは1〜4であり、また、式(b)は異なる2種以上の構造単位で構成されていてもよい。
【0028】
構造単位(b)の好ましい例としては、カテコール、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、3−エチルカテコール、4−エチルカテコール、3−n−プロピルカテコール、4−n−プロピルカテコール、3−iso−プロピルカテコール、4−iso−プロピルカテコール、3−n−ブチルカテコール、4−n−ブチルカテコール、3−t−ブチルカテコール、4−t−ブチルカテコール、3,5−ジ−t−ブチルカテコール、4−n−ペンチルカテコール、3−フルオロカテコール、4−フルオロカテコール、3,4−ジフルオロカテコール、3,4,5,6−テトラフルオロカテコール、3−クロロカテコール、4−クロロカテコール、3,4,5,6−テトラクロロカテコール、3−ブロモカテコール、4−ブロモカテコール、3,4,5,6−テトラブロモカテコール、4−フェニルカテコール、4−トリフルオロメチルカテコール、3−メトキシカテコール、4−メトキシカテコール、3−t−ブトキシカテコール、4−t−ブトキシカテコール、2,3−ナフタレンジオール、1,2−ナフタレンジオールまたはそれぞれの機能性誘導体(例えばジアセトキシ化合物など)から誘導される単位等を挙げることができる。
【0029】
本発明の液晶性ポリエステルは、構造単位(b)を1〜45モル%、好ましくは2〜42モル%、より好ましくは5〜40モル%の割合で含む。
【0030】
本発明の液晶性ポリエステルにおいて、構造単位(c)は液晶性の発現と液晶状態の安定化に寄与する必須構造単位である。構造単位(c)中のXは、前記式(x)で表される基からなる群より選ばれる2価の基を示し、置換基Rcは水素原子、F、Cl、Br、CF、炭素数1〜5のアルキル基もしくは炭素数1〜5のアルコキシ基を示し、rは1〜4であり、また、式(c)は異なる2種以上の構造単位で構成されていてもよい。
【0031】
構造単位(c)の好ましい例としては、4−ヒドロキシ安息香酸、2−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2−エチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−エチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2−フルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−フルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,3−ジフルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ジフルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,3,5,6−テトラクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2−ブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−ブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,3,5,6−テトラブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸、2−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジトリフルオロメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、2−エトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−エトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジエトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、2−t−ブトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−t−ブトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸、2’−フルオロ−4’−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸、3’−フルオロ−4’−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸、2−フルオロ−4’−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸、3−フルオロ−4’−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸、trans−p−クマル酸、trans−フェルラ酸、4’−ヒドロキシ−4−スチルベンカルボン酸、4’−ヒドロキシ−3’−メトキシ−4−スチルベンカルボン酸、または該カルボン酸の機能性誘導体(例えばアセトキシ化合物、メチルエステル等のアルキルエステル化合物やフェニルエステル化合物など)から誘導される単位を挙げることができる。
【0032】
本発明の液晶性ポリエステルは、構造単位(c)を10〜50モル%、好ましくは16〜44モル%、より好ましくは20〜40モル%の割合で含む。
【0033】
本発明の液晶性ポリエステルは、構造単位(a)、(b)および(c)に加えて、液晶性の発現と液晶状態の安定化に寄与する構造単位である構造単位(d)を任意で含むことができる。構造単位(d)中のYは、前記式(y)で表される基からなる群より選ばれる2価の基を示し、置換基Rdは水素原子、F、Cl、Br、CF、炭素数1〜5のアルキル基もしくは炭素数1〜5のアルコキシ基を示し、sは1〜4であり、また、式(d)は異なる2種以上の構造単位で構成されていてもよい。
【0034】
構造単位(d)の好ましい例としては、テレフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、2,5−ジフルオロテレフタル酸、2,3,5,6−テトラフルオロテレフタル酸、2,6−ジフルオロテレフタル酸、2,3,5,6−テトラフルオロテレフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2,5−ジクロロテレフタル酸、2−ブロモテレフタル酸、2,5−ジブロモテレフタル酸、2−トリフルオロメチルテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、2、5−ジメチルテレフタル酸、2−メトキシテレフタル酸、2、5−ジメトキシテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−スチルベンジカルボン酸、1,2−ビス(4−カルボキシフェノキシ)エタン、1,3−ビス(4−カルボキシフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ペンタン、1,6−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ヘキサン、1,7−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ヘプタン、1,8−ビス(4−カルボキシフェノキシ)オクタン、1,9−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ノナン、1,10−ビス(4−カルボキシフェノキシ)デカン、スクシン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、1,1’−ビシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸またはこれらジカルボン酸の機能性誘導体(例えば、ジメチルエステル等のジアルキルエステル化合物やジフェニルエステル化合物、またはジクロリドのような酸クロリドなど)から誘導される単位を挙げることができる。特に複屈折の波長分散を小さくする場合は、1,1’−ビシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸を使用することが好ましい。
【0035】
本発明の液晶性ポリエステルは、構造単位(d)を0〜44モル%、好ましくは0〜40モル%、より好ましくは0〜35モル%の割合で含んでもよい。
【0036】
本発明の液晶性ポリエステルは、構造単位(a)、(b)および(c)に加えて、液晶性の発現と液晶状態の安定化に寄与する構造単位(e)を任意で含むことができる。構造単位(e)中のZは、前記式(z)で表される基からなる群より選ばれる2価の基を示し、置換基Reは水素原子、F、Cl、Br、CF、シアノ基、炭素数1〜5のアルキル基もしくは炭素数1〜5のアルコキシ基を示し、tは1〜4であり、また、式(e)は異なる2種以上の構造単位で構成されていてもよい。
【0037】
構造単位(e)の好ましい例としては、ヒドロキノン、フルオロヒドロキノン、2,3−ジフルオロヒドロキノン、2,5−ジフルオロヒドロキノン、2,3,5,6−テトラフルオロヒドロキノン、クロロヒドロキノン、2,3−ジクロロヒドロキノン、2,5−ジクロロヒドロキノン、2,3,5,6−テトラクロロヒドロキノン、ブロモヒドロキノン、2,5−ジブロモヒドロキノン、2,3,5,6−テトラブロモヒドロキノン、トリフルオロメチルヒドロキノン、シアノヒドロキノン、2,3−ジシアノヒドロキノン、メチルヒドロキノン、2,5−ジメチルヒドロキノン、2,6−ジメチルヒドロキノン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラメチルヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ペンチルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、2−メトキ−5−メチルシヒドロキノン、2−メトキ−6−メチルシヒドロキノン、t−ブトキシヒドロキノン、4,4’−ビフェノール、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロビフェノール、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルビフェノール、2,6−ナフタレンジオール、1,4−ナフタレンジオール、2−フェニルヒドロキノン、2,5−ジヒドロキシ−4’−メチル−ビフェニル、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1’−ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、ビスフェノールA(2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン),ビスフェノールAF(2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)またはそれぞれの機能性誘導体(例えばジアセトキシ化合物などの誘導体)から誘導される単位等を挙げることができる。
【0038】
本発明の液晶性ポリエステルは、構造単位(e)を0〜44モル%、好ましくは0〜40モル%、より好ましくは0〜35モル%の割合で含んでもよい。
【0039】
本発明の液晶性ポリエステルの分子量は、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒(60/40重量比)中、30℃で測定した固有粘度〔ηinh〕で、通常0.05〜2.0、好ましくは0.07〜1.0、より好ましくは0.1〜0.5である。ηinhの値が0.05より低い場合には、強度が弱くなる恐れがあり、実用上問題となることがある。また2.0より高い場合、液晶状態における流動性が低下することがあり、均一な配向を得ることが困難となる恐れがある。
【0040】
また本発明の液晶性ポリエステルは、溶融時に液晶相を呈し、かつガラス転移温度以下に冷却することにより該液晶相の配向の固定化が可能であることが好ましい。配向固定化した後の配向の安定性を考えると、これら液晶性ポリエステルのガラス転移温度Tgは40℃以上が好ましく、とくに60℃以上が好ましく、また上限は特に限定されないが通常300℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。Tgが40℃より低くなると液晶配向の固定化が一度はできたとしても、高温での信頼性に欠けるようになり、工業材料として安定に使用しがたくなる場合がある。また、Tgが300℃より高くなると液晶を所望の配向状態に配向させることが困難になる。
【0041】
本発明の液晶性ポリエステルは、上記の構造単位に対応するモノマー成分を縮合共重合して得ることができる。重合方法は特に制限されるものではなく、当該分野で公知の重合法、例えば溶融重合法または溶液重合法を適用することにより合成することができる。
【0042】
溶融重合法により本発明の液晶性ポリエステルを合成する場合、所定量の構造単位(a)形成モノマー(例えば、4−(4−カルボキシシクロヘキシル)安息香酸)、(b)形成モノマー(例えば、カテコールジアセテート)、および構造単位(c)形成モノマー(例えば、4−アセトキシ安息香酸)を窒素等の不活性ガス雰囲気下において高温で重合させる脱酢酸法により、容易に目的のポリエステルを得ることができる。
【0043】
重合条件は特に限定されないが、通常、温度150〜350℃、好ましくは200〜300℃、反応時間は30分以上、好ましくは1時間〜40時間程度である。また重合反応は常圧下において行うことが望ましいが、重合後半においては減圧下または高真空下にすることにより反応を促進させても良い。なお重合反応を促進させるために、1−メチルイミダゾール、4−ジメチルアミノピリジン等のアミン、アルカリ金属塩、Ti、Zn、Sn、Pb、Ge、V、As、Sbなど、またはそれらの金属塩または金属酸化物を単独もしくは組み合わせて使用してもよい。また本発明の液晶性ポリエステルの分子量は、重合時間や重合温度、重合圧力をコントロールすること等により通常の縮合反応同様容易に調整しうる。
【0044】
さらに任意成分である構造単位(d)形成モノマー(例えば、テレフタル酸)および/または構造単位(e)形成モノマー(例えば、メチルヒドロキノンジアセテート)を含む場合も上記条件において本発明の液晶性ポリエステルを得ることができる。
【0045】
溶液重合法により本発明の液晶性ポリエステルを製造する例の1つとしては、活性化剤を用いた直接重合法を挙げることができる。例えば、所定量の構造単位(a)形成モノマー(例えば、4−(4−カルボキシシクロヘキシル)安息香酸)、構造単位(b)形成モノマー(例えば、カテコール)および構造単位(c)形成モノマー(例えば、4−ヒドロキシ安息香酸)をピリジンなどに溶解し、活性化剤として塩化アリールスルホニル/ジメチルホルムアミドやクロロリン酸ジフェニル/ジメチルホルムアミドに例示される活性化剤の存在下に60〜150℃で1時間〜10時間程度反応させることで、容易に目的のポリエステルを得ることができる。
また任意成分として構造単位(d)形成モノマー(例えば、テレフタル酸)、構造単位(e)形成モノマー(例えば、メチルヒドロキノン)を含む場合も上記条件において本発明の液晶性ポリエステルを得ることができる。
【0046】
以上のようにして得られる本発明の液晶性ポリエステルは、当該ポリエステルを構成する構造単位の組成比などにより異なるため一概には言えないが、通常液晶状態においてネマチック相またはスメクチック相を形成しうる。さらに液晶状態にある当該ポリエステルを任意の冷却速度にて冷却した際、結晶層への相転移が実質的に発生せず、ガラス転移温度以下においては、液晶状態における分子配向状態、具体的にはネマチック相、スメクチック相における分子配向状態をそのまま保持しうる特徴を有する。さらに本発明の液晶性ポリエステルは、他の液晶性高分子、非液晶性高分子、低分子液晶性化合物、低分子非液晶性化合物などと混合し、組成物として用いてもよい。また当該ポリエステルに、光学活性な低分子や高分子物質を配合して組成物とすることにより、液晶相としてキラルネマチック相(コレステリック相)を有する液晶性組成物などを得ることもできる。
【0047】
本発明の液晶性ポリエステルは、液晶状態における分子配向状態をそのまま保持しうる性質を利用することにより、ネマチック相やスメクチック相の配向を固定化した光学フィルムを得ることができる。一例としては、ホモジニアス配向、ホメオトロピック配向、ハイブリッド配向、傾斜配向、π配向、ねじれネマチック配向、またはコレステリック配向を固定化した光学フィルムを得ることができる。
【0048】
当該光学フィルムの製造方法の一例を以下に示す。まず、以下に説明する配向基板を使用しることが本発明においては好ましい。配向基板としては、具体的にはポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂、ノルボルネン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系プラスチックス、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、高分子液晶などからなるプラスチックフィルム基板;アルミ、鉄、銅などの金属基板;青板ガラス、アルカリガラス、無アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、フリントガラス、石英ガラス等のガラス基板;セラミック基板等の各種基板;シリコンウエハー等の各種半導体基板等を挙げることができる。また上記基板上に他の被膜、例えばポリイミド膜、ポリアミド膜、ポリビニルアルコール膜等有機膜を設けたもの、若しくは酸化珪素等の斜め蒸着膜を設けたものも好ましく使用できる。なお、上記プラスチックフィルム基板は1軸や2軸延伸されたものでもよい。
【0049】
これら各種基板には、必要に応じて配向処理を施してもよい。各種基板に施される配向処理としては、例えばラビング法、斜方蒸着法、マイクログルーブ法、延伸高分子膜法、LB(ラングミュア・ブロジェット)膜法、転写法、光照射法(光異性化、光重合、光分解等)、剥離法等が挙げられる。特に、製造工程の容易さの観点から、ラビング法、光照射法が本発明では望ましい。
【0050】
本発明の光学フィルムは、上記の如き基板上に均一に液晶性ポリエステルを塗布し、次いで均一配向過程、配向状態の固定化過程を経て得られる。該ポリエステルの配向基板への塗布は、通常、該組成物を各種溶媒に溶解した溶液状態または該組成物を溶融した溶融状態で行うことができる。製造プロセス上、液晶性ポリエステルを溶媒に溶解した溶液を用いて塗布する、溶液塗布が望ましい。
【0051】
以下に溶液塗布について説明する。
まず、本発明の液晶性ポリエステルを溶媒に溶かし、所定濃度の溶液を調製する。フィルムの膜厚(液晶性ポリエステルより形成される層の膜厚)は、該ポリエステルを基板に塗布する段階で決まるため、精密に濃度、塗布膜の膜厚などの制御をする必要がある。上記溶媒としては、本発明の液晶性ポリエステルの組成比などによって異なるため一概には言えないが、通常はクロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、フェノール、パラクロロフェノールなどのフェノール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキベンゼンなどの芳香族炭化水素類、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のグリコールエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、トリエチルアミン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ブチロニトリル、二硫化炭素、およびこれらの混合溶媒等が用いられる。これら溶媒には、溶液の表面張力を調整し、塗工性を向上させるなどために、必要に応じて界面活性剤等を添加することもできる。界面活性剤としては特に限定されないが、シリコーン系やフッ素系の界面活性剤が好ましく使用できる。
【0052】
溶液の濃度は、用いる液晶性ポリエステルの溶解性や最終的に目的とする液晶層の膜厚に依存するため一概には言えないが、通常3〜50重量%の範囲で使用され、好ましくは5〜30重量%の範囲である。上記の溶媒を用いて所望の濃度に調整した液晶性ポリエステルの溶液を、次に上述にて説明した配向基板上に塗布する。塗布の方法としては、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、マイヤーバーコート法、ドクターブレード法、ナイフコート法、ダイコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、オフセットグラビアコート法、リップコート法、スプレーコート法等を採用できる。塗布後、溶媒を除去し、配向基板上に膜厚の均一な該組成物の層を形成させる。溶媒除去条件は、特に限定されず、通常、室温での乾燥、乾燥炉での乾燥、温風や熱風の吹き付けなどを利用して溶媒を除去する。
【0053】
乾燥した後、通常50℃から300℃、好ましくは100℃から260℃の範囲において熱処理を行い、液晶状態において当該ポリエステルを配向させる。また熱処理時間は、液晶性ポリエステル組成物の組成比などによって異なるため一概にはいえないが、通常10秒から120分、好ましくは30秒から60分の範囲である。10秒より短い場合、液晶状態において均一配向が不十分となる恐れがある。また120分より長い場合は、生産性が低下する恐れがあり望ましくない。このようにして、まず液晶状態で配向基板上全面にわたって均一配向を得ることができる。なお、本発明においては上記の熱処理工程において、液晶性ポリエステルを均一配向させるために磁場や電場を利用してもよい。
【0054】
熱処理によって形成した均一配向を、次に該ポリエステルのガラス転移温度以下の温度に冷却することにより、該配向の均一性を全く損なわずに固定化することができる。上記冷却温度は、ガラス転移温度以下の温度であれば特に制限はない。たとえばガラス転移温度より10℃低い温度や室温などへ冷却することにより、均一配向を固定化することができる。冷却の手段は、特に制限はなく、熱処理工程における加熱雰囲気中からガラス転移温度以下の雰囲気中、例えば室温中に出すだけで固定化される。また、生産の効率を高めるために、空冷、水冷などの強制冷却、徐冷を行ってもよい。以上の工程によって、本発明の光学フィルムを得ることができる。
【0055】
該光学フィルムの使用形態としては、
(1)上述の基板を該フィルムから剥離して、液晶層単体で用いる、
(2)基板上に形成したそのままの状態で用いる、
(3)基板とは異なる別の基板に液晶層を積層して用いる、
などの形態を挙げることができる。
【0056】
液晶層単体として用いる場合には、基板を液晶層との界面で、ロールなどを用いて機械的に剥離する方法、構造材料すべてに対する貧溶媒に浸漬した後機械的に剥離する方法、貧溶媒中で超音波をあてて剥離する方法、基板と該フィルムとの熱膨張係数の差を利用して温度変化を与えて剥離する方法、基板そのもの、または基板上の配向膜を溶解除去する方法などによって、フィルム単体を得る。剥離性は、用いる液晶性ポリエステルの組成比などと基板との密着性によって異なるため、その系に最も適した方法を採用すべきである。
【0057】
次に、基板上に形成した状態で光学フィルムを用いる場合について説明する。基板が透明で光学的に等方であるか、あるいは光学フィルムとして用いる際に該基板が該素子にとって必要な部材である場合には、そのまま目的とする光学フィルムとして使用することができる。
【0058】
さらに基板上で液晶性ポリエステルを配向固定化して得られた本発明の光学フィルムは、該基板から剥離して、光学的により適した別の基板上に積層して使用することもできる。具体的な製造例としては、次のような方法を採ることができる。基板(以下、第1の基板という)上の液晶層と目的とする光学フィルムに適した基板(以下、第2の基板という)とを、例えば接着剤または粘着剤を用いて貼りつける。次いで、第1の基板を本発明の液晶層との界面で剥離し、該フィルムを光学フィルムに適した第2の基板側に転写して光学フィルムを得ることができる。
【0059】
転写に用いられる第2の基板としては、適度な平面性を有するものであれば特に限定されないが、ガラス基板や透明で光学的等方性を有するプラスチックフィルムが好ましく用いられる。かかるプラスチックフィルムの例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、アモルファスポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ノルボルネン系樹脂あるいはエポキシ樹脂などを挙げることができる。なかでもポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、トリアセチルセルロース、ノルボルネン系樹脂などが好ましく用いられる。また光学的に異方性であっても、光学フィルムにとって必要な部材である場合には、光学的異方性フィルムも用いることができる。このような例としては、先に挙げたプラスチックフィルムを1軸または2軸延伸して得られる位相差フィルム、本発明と同様に各種液晶状態の配向を固定化させた液晶フィルム、偏光フィルムなどがある。
【0060】
転写に用いられる第2の基板と、本発明の液晶層とを貼り付ける接着剤または粘着剤としては、光学グレードのものが好ましく、アクリル系、エポキシ系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、ゴム系、ウレタン系、およびこれらの混合系などを使用することができる。また接着剤としては、熱硬化型、光硬化型、電子線硬化型などのいずれの接着剤でも光学的等方性を有していれば問題なく使用することができる。本発明の液晶層を光学フィルムに適した第2の基板へ転写する方法としては、第2の基板を液晶層に接着した後、第1の基板を該液晶層との界面で剥離することにより行うことができる。剥離方法は、上述でも説明したが、ロールなどを用いて機械的に剥離する方法、貧溶媒中で超音波をあてて剥離する方法、配向基板と該フィルムとの熱膨張係数の差を利用して温度変化を与えて剥離する方法、第1の基板そのもの、または第1の基板上の配向膜を溶解除去する方法などを例示することができる。剥離性は、用いる液晶性ポリエステルの組成比などと第1の基板との密着性によって異なるため、その系に最も適した方法を採用すべきである。これらの技術の応用として特開平8−278491号公報記載のように、第2の基板に再剥離性基板を用いることで、最終的に第2の基板も除去した形態の光学フィルムを得ることもでき、光学フィルムを非常に薄くできる点で好ましい。
【0061】
また本発明の光学フィルムは、表面保護、強度増加、環境信頼性向上などの目的のためにさらに透明プラスチックフィルムや光硬化膜などの保護層を設けることもできる。
【0062】
以上説明した本発明の光学フィルムを特徴付ける光学パラメーターとしては、膜厚d、面内リターデーション値(Δn・d)、膜厚方向のリターデーション値(Δn・d)および複屈折Δnの波長分散値等を挙げることができる。これら光学パラメーターは、当該フィルムの用途により異なるため一概には言えないが、膜厚dとしては通常0.1μm〜20μmの範囲、好ましくは0.2μm〜15μmの範囲、特に好ましくは0.3μm〜10μmの範囲である。
【0063】
またフィルム面に対して液晶分子をホモジニアス配向させた場合、面内リターデーション値は、590nmの単色光に対して、通常10nm〜4000nmの範囲、好ましくは20nm〜2000nmの範囲、特に好ましくは50nm〜1000nmの範囲である。ここで面内リターデーション値とは、フィルム面内の複屈折率と膜厚との積(Δn・d)を意味する。
フィルム面に対して液晶分子をホメオトロピック配向させた場合、膜厚方向のリターデーション値は、590nmの単色光に対して、通常10nm〜4000nmの範囲、好ましくは20nm〜2000nmの範囲、特に好ましくは50nm〜1000nmの範囲である。ここで膜厚方向のリターデーション値とは、膜厚方向の複屈折率(フィルム膜厚方向の屈折率とフィルム面内の屈折率との差)と膜厚との積(Δn・d)を意味する。
【0064】
また複屈折Δnの波長分散値は、下記(2)式で示される測定波長450nmの光に対する複屈折の値(Δn(450nm))と測定波長590nmの光に対する複屈折の値(Δn(590nm))との比で表されるD値で定義する。
D=Δn(450nm)/Δn(590nm) (2)
【0065】
本発明の液晶性ポリエステルのD値は、主にポリマー中に導入された4−(4−カルボキシシクロヘキシル)安息香酸)単位の量によって支配されるが、通常1.00<D<1.12、好ましくは1.02<D<1.10、より好ましくは1.04<D<1.09の範囲にあり、4−(4−カルボキシシクロヘキシル)安息香酸)単位の量が増すとD値は小さくなる。したがって本発明のポリエステルは4−(4−カルボキシシクロヘキシル)安息香酸)単位の量を制御することによって、自在にD値を制御できる。
【0066】
本発明の光学フィルムにおいては、本発明の液晶性ポリエステルにさらに光学活性な低分子や高分子物質を配合することで、ねじれネマチック配向やコレステリック配向のようなねじれ構造を固定化した光学フィルムを作製することが可能である。ねじれネマチック配向を固定化した光学フィルムは液晶ディスプレイの光学補償フィルム等への適用が可能であり、コレステリック配向を固定化した光学フィルムは円偏光を選択反射する特性を利用することが可能である。ねじれネマチック配向もコレステリック配向もツイスト変形を内部に有するという点で本質的には同様の配向状態と言えるが、ねじれの度合いが異なり、得られる効果が異なるためここでは区別した。
本発明のねじれネマチック配向やコレステリック配向を固定化した光学フィルムを特徴付ける光学パラメーターとしては、先に挙げた膜厚d、面内リターデーション値(Δn・d)および複屈折Δnの波長分散値の他にねじれ角(ねじれの回転数)を挙げることができる。
【0067】
ねじれネマチック配向を固定化した光学フィルムにおいては、ねじれ角は、通常0度以上720度(2回転と等価)以下の範囲、好ましくは0度以上540度(1.5回転と等価)以下の範囲、特に好ましくは0度以上360度(1回転と等価)以下の範囲である。なお本発明の光学フィルムにおいて、当該フィルムを形成する液晶分子の配向ベクトルの向きは、フィルム膜厚方向で順次変化している。したがって本発明の光学フィルムで言うねじれ角とは、液晶層の一方の面から他方の面との間で、この配向ベクトルが回転した角度をねじれ角と定義する。ねじれ角と膜厚の関係を適宜調整することで、ねじれ構造を利用した位相差フィルムとして使用することが可能である。
同様にコレステリック配向を固定化した光学フィルムにおいては、ねじれ角は、通常360度(1回転と等価)以上7200度(20回転と等価)以下の範囲、好ましくは540度(1.5回転と等価)以上5400度(15回転と等価)以下の範囲、特に好ましくは360度(1回転と等価)以上3600度(10回転と等価)以下の範囲である。この円偏光を選択反射する性質を有する光学フィルムは、単独、もしくは1/4波長板と組み合わせて液晶表示素子に組み込むことで、カラー偏光板やコレステリック偏光板として使用することも可能である。
【0068】
本発明の光学フィルムにおいては、本発明の液晶性ポリエステル単独、もしくは他の低分子や高分子物質を配合することで、ハイブリッド配向を固定化した光学フィルムを作製することも可能である。ここでいうハイブリッド配向とは、液晶層の一方の面の配向ベクトルは水平配向に近いが、他方の面に近づくにしたがって配向ベクトルがフィルム面に対して徐々に傾いた構造となっているものをいう。別の言い方をすれば、液晶分子のダイレクターのフィルム面への投影ベクトルの大きさが膜厚方向で単調に変化するような構造を有している。
【0069】
本発明のハイブリッド配向を固定化した光学フィルムを特徴付ける光学パラメーターとしては、先に挙げた膜厚d、フィルム法線方向から観察した場合の面内リターデーション値(Δn・d)および複屈折Δnの波長分散値の他に、フィルム法線方向から前記投影ベクトル方向に40度傾いた角度から観察した場合の面内リターデーション値とフィルム法線方向の角度から観察した場合の面内リターデーション値の比(Δn・d比)を挙げることができる。ハイブリッド配向を固定化した光学フィルムにおいては、配向ベクトルは膜厚方向で連続的に変化しているが、このままでは定量化が難しいので、上記Δn・d比を用いることとする。この時、フィルム法線方向から40度の角度から観察した場合の面内リターデーション値には大小2つの値がありえるが、大きいほうの値を使用することと定義する。
このΔn・d比は通常0.85以上1.5以下、好ましくは1以上1.4以下、より好ましくは1.1以上1.35以下である。
【0070】
以上の如き本発明の光学フィルムは、配向能に優れることは無論のこと、液晶配向のガラス固定化が容易であり、かつ液晶配向状態の保持能力に優れている。したがって高温耐久性を要求される各種光学素子、例えば位相差フィルム、視野角改善用フィルム、色補償フィルム、旋光子フィルム、コレステリック偏光板などの用途に広く用いることができる。
【0071】
また、本発明の光学フィルムは偏光板と積層することで円偏光板や楕円偏光板を作製することができる。円偏光板とする場合、波長550nmにおける楕円率は0.7以上、好ましくは0.8以上より好ましくは0.9以上である。またこの時、本発明の光学フィルムは1枚でも良いし、2枚以上積層させても良い。例えば広帯域の円偏光板とする場合には、1/4波長および1/2波長の位相差を持つ光学フィルム2枚を積層させても良い。この時、2枚とも本発明の光学フィルムを使用しても良いし、1枚は前記プラスチックフィルムを1軸もしくは2軸延伸させたものでもよい。また、1/4波長の位相差をもつ光学フィルムとしてハイブリッド配向を有しているものを用いた場合は、視野角特性も改善可能な円偏光板として使用することもできる。
【0072】
さらにはそれら円偏光板や楕円偏光板は液晶表示装置や有機EL表示装置等の各種装置の形成に用いることができる。特に、偏光板を液晶セルの片側又は両側に配置してなる反射型や半透過型、透過型の各種液晶表示装置や、有機EL表示装置の反射防止等に好ましく用いることができる。なお、本発明の円偏光板や楕円偏光板を液晶セル等に実装する場合は、リターデーション値等のパラメーターや偏光板との交差角度を、光学補償しようとする液晶セルにあわせて適宜調整することで特性の良好な表示装置とすることができる。
【0073】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。なお実施例で用いた各分析法は以下の通りである。
【0074】
(1)固有粘度の測定
ウベローデ型粘度計を用い、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(60/40重量比)混合溶媒中、ポリマー濃度0.5g/dl、30℃で測定した。
(1)固有粘度の測定
ウベローデ型粘度計を用い、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(60/40重量比)混合溶媒中、ポリマー濃度0.5g/dl、30℃で測定した。
(2)化学構造の確認
液晶性ポリエステルを重水素化トリフルオロ酢酸に溶解し、400MHzのH−NMR(バリアン製UNITY INOVA 400MHz)で測定した。
(3)ガラス転移温度の測定
Perkin Elmer製 DSC−7を用いて測定した。
(4)光学組織観察
メトラー社製ホットステージFP80/82およびオリンパス光学(株)製BH2偏光顕微鏡を用いて観察した。
(5)屈折率の測定アッベ屈折計(アタゴ(株)製Type−4)によりNaD線(測定波長590nm)にて屈折率を測定した。
【0075】
(6)複屈折の波長分散の測定
ラビングしたポリイミド配向膜付きガラス上で熱処理したのち、冷却してガラス状態としてホモジニアス配向を固定化した光学フィルムを作製した。次にフィルム法線方向から観察した場合の面内リターデーションの測定を、モノクロメータから出射する各波長の単色光を用いてセナルモン法により行った。得られたデータはコーシーの式でフィッティングして波長分散を求めた。また複屈折の波長分散値を比較しやすくするため、前記式(2)で示される測定波長450nmの光に対する複屈折の値(Δn(450))と測定波長590nmの光に対する複屈折の値(Δn(590nm))との比で定義されるD値を求めた。
【0076】
(7)ねじれ角および面内リターデーションの測定
フィルムに直線偏光を入射し、透過光をエリプソメーター((株)溝尻光学工業所製DVA−36VWLD)により偏光解析することにより、ねじれ角および測定波長590nmにおける面内リターデーションを求めた。また、王子計測機器(株)製KOBRA−21ADHを使用して測定波長590nmにおけるフィルム法線方向および斜め方向から観察した場合の面内リターデーションを測定し、ホモジニアス配向か、ハイブリッド配向かの確認を行った。ハイブリッド配向の場合、フィルム法線方向から40度の角度から観察した場合とフィルム法線方向の角度から観察した場合の面内リターデーション値の比をΔn・d比と定義した。この時、フィルム法線方向から40度の角度から観察した場合の面内リターデーション値には大小2つの値がありえるが、大きいほうの値を使用することとする。
【0077】
[実施例1]
4−(4−カルボキシシクロヘキシル)安息香酸100mmol、カテコールジアセテート100mmolおよび4−アセトキシ安息香酸100mmolを、200mlの酢酸流出用冷却管付きフラスコ中で、窒素気流下に270℃で6時間、続いて同温度で毎分30mlの窒素気流下で2時間脱酢酸重合を行った。得られたポリマーをテトラクロロエタンに溶解して、大量のメタノール中に投入することにより、ポリマーを精製した。この液晶性ポリエステルの固有粘度は0.16dL/g、液晶相としてネマチック相を示し、ガラス転移点は112℃であった。また、偏光顕微鏡観察の結果、ガラス転移温度以下においてはネマチック液晶相の配向が完全に固定化されることが分かった。次に、この液晶性ポリエステルの8重量%フェノール/テトラクロロエタン(60/40重量比)混合溶媒溶液を調製した。該溶液をラビングポリイミド膜を有するガラス上にスピンコート法により塗布し、ホットプレート上において55℃で20分乾燥した。クリーンオーブン中において220℃で20分間熱処理したのち、クリーンオーブンから取り出し、自然空冷することでネマチック相の配向状態の固定化された光学フィルムを得た。得られた基板上の光学フィルムは透明で配向欠陥はなく均一であった。屈折率測定の結果は、n=1.540、n=1.695、Δn=0.155であった。光学測定の結果、光学フィルム中の液晶層はホモジニアス配向が固定化されており、フィルム法線方向から見た面内リターデーションは160nmであった。またこのポリマーのD値は1.099であった。
【0078】
[実施例2〜8、参考例1および比較例1]
モノマーの種類および仕込み比を変えた以外は、実施例1と同様の手法を用いて検討を行った。結果を表1に示す。また、図1に実施例3のポリエステルのH−NMRスペクトルを示す。これらのポリエステルはすべてガラス転移温度以上で均一なネマチック液晶相を示し、かつガラス転移温度以下に冷却しても結晶相への転移は認められず、ネマチック液晶相で形成している配向状態を固定化することが可能であった。
【0079】
【表1】
Figure 2004294512
【0080】
[合成例1]
攪拌装置、窒素導入管、液体トラップを備えた重合反応器に、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジメチル90mmol、テレフタル酸ジメチル10mmol、(S)−2−メチル−1,4−ブタンジオール(enantiomeric exess、e,e=93%)120mmol、およびテトラブトキシチタン1滴を仕込み、反応器内を窒素置換した。窒素雰囲気下、発生するメタノールを留去しながら210℃で2時間反応させて光学活性ポリエステルを得た。この光学活性ポリエステル(ポリマーA)の固有粘度は0.12dL/gであった。
【0081】
[合成例2]
ラセミ体の2−メチル−1,4−ブタンジオールを使用した以外は合成例1と同様の反応を行い、光学不活性なポリエステルを得た。この光学不活性なポリエステル(ポリマーB)の固有粘度は0.12dL/gであった。
【0082】
[実施例10]
実施例2で使用したポリマー19.80gと合成例1で得たポリマーAの0.20gを80gのN−メチル−2−ピロリドンに溶解させ溶液を調製した。ここで塗布性を良くする目的で、フッ素系界面活性剤(大日本インキ社製メガファックF142D)を0.02g(ポリマーの全重量に対して0.1重量%)加えた。この溶液を、レーヨン布にてラビング処理したポリイミドフィルム(デュポン社製、商品名カプトン)上に、バーコート法により塗布し、クリーンオーブン中55℃で溶媒を乾燥除去した後、さらに210℃で20分熱処理することでねじれネマチック配向構造を形成させた。熱処理後、オーブンから取り出して自然冷却することでねじれネマチック配向構造をガラス状態として固定化した(フィルム1)。
なお、このフィルム1の複屈折の波長分散値Dを求めるために、実施例3で使用したポリマー19.82gと合成例2で得たポリマーBの0.18gを80gのN−メチル−2−ピロリドンに溶解させ、実施例1と同様にねじれのないホモジニアス配向の光学フィルムを作製してD値を求めたところ、D=1.076で実施例2同様の値であった。
【0083】
フィルム1は不透明かつ光学的に異方性のあるポリイミドフィルム上に形成されているため、このままでは光学フィルムとして使用できない。このため、フィルム1の空気界面側にUV硬化型接着剤(東亞合成(株)製UV−3400)を約5μmの厚みに塗布し、この上に80μmの光学的等方性フィルムであるトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム(株)製フジタックT80SZ)をラミネートし、約600mJのUV照射により該接着剤を硬化させた。この後、トリアセチルセルロースフィルム/接着剤層/液晶層/ポリイミドフィルムが一体となった積層体からポリイミドフィルムを剥離することにより、液晶層をトリアセチルセルロースフィルム上に転写した。さらにポリイミドフィルムを剥離した側の液晶層表面にUV硬化型接着剤(東亞合成(株)製UV−3400)を約5μmの厚みに塗布し、酸素遮断状態で約600mJのUV光(高圧水銀灯)を照射して該接着剤を硬化させて、オーバーコート層を設け、光学フィルムとした。光学フィルムの△ndとねじれ角を測定したところ、それぞれ200nmと70度であった。
【0084】
[実施例11〜14]
実施例10と同様の手法を用いて各種パラメータの光学フィルムを作製した。結果を表2に示す。
【0085】
【表2】
Figure 2004294512
【0086】
[実施例15]
実施例3で使用したポリマー16.00gと参考例1で得たポリマーAの4.00gを80gのN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させ溶液を調製した。ここで塗布性を良くする目的で、フッ素系界面活性剤(セイミケミカル製サーフロンKH−40)を0.02g(ポリマーの全重量に対して0.1重量%)加えた。この溶液を、レーヨン布にてラビング処理したポリフェニレンスルフィドフィルム(東レ社製、商品名トレリナ)上に、スピンコート法により塗布し、オーブン中55℃で溶媒を乾燥除去した後、さらに230℃で10分熱処理することでハイブリッド配向構造を形成させた。熱処理後、オーブンから取り出して自然冷却することでハイブリッド配向構造をガラス状態として固定化した(フィルム2)。
【0087】
フィルム2は不透明かつ光学的に異方性のあるポリフェニレンスルフィドフィルム上に形成されているため、このままでは光学フィルムとして使用しにくい。このため、フィルム2の空気界面側にUV硬化型接着剤(東亞合成(株)製UV−3400)を約5μmの厚みに塗布し、この上に80μmの光学的等方性フィルムであるトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム(株)製フジタックT80SZ)をラミネートし、約600mJのUV照射により該接着剤を硬化させた。この後、トリアセチルセルロースフィルム/接着剤層/液晶層/ポリフェニレンスルフィドフィルムが一体となった積層体からポリフェニレンスルフィドフィルムを剥離することにより、液晶層をトリアセチルセルロースフィルム上に転写した。さらにポリフェニレンスルフィドフィルムを剥離した側の液晶層表面にUV硬化型接着剤(東亞合成(株)製UV−3400)を約5μmの厚みに塗布し、酸素遮断状態で約600mJのUV光(高圧水銀灯)を照射して該接着剤を硬化させて、オーバーコート層を設け、光学フィルムとした。この光学フィルムの複屈折の波長分散値Dを求めたところ、D=1.080であった。図2に王子計測機器(株)製KOBRA−21ADHを使用し、測定波長590nmにおけるフィルムの面内リターデーションの視野角依存性を測定した結果を示す。
【0088】
[実施例16]
配向基板としてポリイミドフィルムを用い、熱処理条件として230℃で10分、さらに190℃で6分行った以外は実施例15と同様に行った。結果を表3および図2に示す。
【0089】
【表3】
Figure 2004294512
【0090】
[実施例17]
偏光板(住友化学工業(株)製SRW−862AP)と実施例11に従って作製した光学フィルム1(Δn・d=135nm)のオーバーコート層側を約25μmの粘着剤層を用いてラミネートし、積層体1を得た。この時、偏光板の吸収軸と光学フィルム1中の配向軸を45度ずらして配置した。この積層体1をエリプソメーターで偏光解析したところ、波長550nmにおける楕円率が0.98となり円偏光板となることが確認できた。
【0091】
[実施例18]
偏光板(住友化学工業(株)製SRW−862AP)と実施例12に従って作製した光学フィルム2(Δn・d=272nm)のオーバーコート層側を約25μmの粘着剤層を用いてラミネートし、さらに実施例11に従って作製した光学フィルム1(Δn・d=136nm)のオーバーコート層側を約25μmの粘着剤層を用いてラミネートすることで積層体2を得た。この時、偏光板の吸収軸と光学フィルム1中の配向軸を60度ずらして配置し、光学フィルム1中の配向軸と光学フィルム2中の配向軸をさらに15度ずらして配置した。この積層体2をエリプソメーターで偏光解析したところ、波長550nmにおける楕円率が0.98となり円偏光板となることが確認できた。
【0092】
[実施例19]
偏光板(住友化学工業(株)製SRW−862AP)と実施例14に従って作製した光学フィルム3のオーバーコート層側を約25μmの粘着剤層を用いてラミネートし、積層体3を得た。この時、偏光板の吸収軸と光学フィルム3中のオーバーコート側の配向軸は45度ずらして配置した。この積層体3をエリプソメーターで偏光解析したところ、波長550nmにおける楕円率が0.10であり、また波長によって楕円率が異なる値をもつ楕円偏光板となることが確認できた。
【0093】
[実施例20]
ITO透明電極を設けたガラス基板と、微細な凹凸が形成されたアルミニウム反射電極を設けたガラス基板とを用意した。二枚のガラス基板の電極側に、それぞれポリイミド配向膜(日産化学(株)製SE−7992)を形成し、ラビング処理を行った。2.4μmのスペーサーを介して、二枚の基板を配向膜が向かい合うように重ねた。二つの配向膜のラビング方向は、反平行となるように基板の向きを調節した。基板の間隙に、液晶(Merck社製ZLI−1695)を注入し、液晶層を形成した。このようにして、Δndの値が150nmのねじれのないECB型液晶セルを作製した。ITO透明電極を設けたガラス基板の側に、実施例18の円偏光板を約25μmの粘着剤層を介して貼り付けた。作製した反射型液晶表示装置に、白表示0Vから黒表示6Vまで電圧を印加し、表示特性の評価を行ったところ、白表示においても、黒表示においても、中間調においても良好な表示が可能であることを確認できた。測定器(ミノルタ社製CM−3500d)を用いて反射輝度のコントラスト比を測定したところ、正面からのコントラスト比が22であった。本実施例では、カラーフィルターの無い形態で実験を行ったが、液晶セル中にカラーフィルターを設ければ、良好なマルチカラー、またはフルカラー表示が可能である。
【0094】
【発明の効果】
本発明の液晶性ポリエステルは、液晶配向の固定化が容易で、小さな複屈折の波長分散を実現でき、かつ工業的に見て安価で容易に製造できる。また本発明の液晶性ポリエステルから形成される光学フィルムは、複屈折の波長分散等の光学特性を所望の値に正確に調整することができ、所望の配向状態が固定化され、均一で大面積化が可能である。
【0095】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3の液晶性ポリエステルのH−NMRスペクトルを測定した結果である。
【図2】実施例15および16で得られた光学フィルムの測定波長590nmにおけるフィルムの面内リターデーションの視野角依存性を測定した結果である。

Claims (4)

  1. 下記式で示される構造単位(a)1〜45モル%、(b)1〜45モル%、(c)10〜50モル%、(d)0〜44モル%および(e)0〜44モル%から構成される液晶性ポリエステル。
    Figure 2004294512
    (ただし、式(b)中、Wは、下記式(w)で表される基からなる群より選ばれる2価の基を示し、置換基Rbは水素原子、F、Cl、Br、CF、フェニル基、炭素数1〜5のアルキル基もしくは炭素数1〜5のアルコキシ基を示し、qは1〜4であり、また、式(b)は異なる2種以上の構造単位で構成されていてもよく、また、式(c)中、Xは、下記式(x)で表される基からなる群より選ばれる2価の基を示し、置換基Rcは水素原子、F、Cl、Br、CF、炭素数1〜5のアルキル基もしくは炭素数1〜5のアルコキシ基を示し、rは1〜4であり、また、式(c)は異なる2種以上の構造単位で構成されていてもよく、また、式(d)中、Yは、下記式(y)で表される基からなる群より選ばれる2価の基を示し、Rdは水素原子、F、Cl、Br、CF、炭素数1〜5のアルキル基もしくは炭素数1〜5のアルコキシ基を示し、sは1〜4であり、mは2〜10であり、また、式(d)は異なる2種以上の構造単位で構成されていてもよく、また、式(e)中、Zは、下記式(z)で表される基からなる群より選ばれる2価の基を示し、Reは水素原子、F、Cl、Br、CF、シアノ基、炭素数1〜5のアルキル基もしくは炭素数1〜5のアルコキシ基を示し、tは1〜4であり、また、式(e)は異なる2種以上の構造単位で構成されていてもよい。)
    Figure 2004294512
    Figure 2004294512
    Figure 2004294512
    Figure 2004294512
  2. 溶融時に液晶相を呈し、かつガラス転移温度以下に冷却することにより該液晶相の配向の固定化が可能であること特徴とする請求項1記載の液晶性ポリエステル。
  3. 請求項1または2記載の液晶性ポリエステルから形成されることを特徴とする光学フィルム。
  4. 測定波長450nmの光に対する複屈折の値(Δn(450nm))と測定波長590nmの光に対する複屈折の値(Δn(590nm))との比をDとした時、Dが1.00<D<1.12の範囲にあることを特徴とする請求項3記載の光学フィルム。
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